説明

受信装置、プログラム、半導体装置、通信システム

【課題】拡散変調された送信データに妨害波が重畳した状況下であっても、相関ピーク値による同期検出が可能になる受信装置、プログラム、半導体装置、通信システムを提供する。
【解決手段】通信装置Aは、受信した通信データに基づいて生成される基本符号列において、第1の部分符号列の特定領域に窓関数1−Wkを乗じる窓関数処理部62と、基本符号列において、第1の部分符号列から同期シンボルのシンボル長の整数倍だけ離れた第2の部分符号列の特定領域に窓関数Wkを乗じる窓関数処理部63と、窓関数処理部62,63の各乗算結果を合成した合成符号列を生成する合成部64と、特定領域を合成符号列に置き換えた第1の部分符号列と拡散符号との相関値を演算する相関器1と、相関器1が演算した相関値から相関ピーク値を抽出することによって、同期タイミングの検出処理を行う同期検出部K10とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡散符号を用いた通信に用いる受信装置、プログラム、半導体装置、通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
通信無線に関する規格であるIEEE802.15.4規格等では、直接拡散変調通信(Direct Sequence SpreadSpectrum、DSSS)が用いられている。直接拡散変調通信において、送信装置は、拡散符号を用いて拡散変調したパケットで構成される通信データを送信する。受信装置は、通信データに含まれる既知の同期シンボルと拡散符号との相関値に基づいて、受信時の同期タイミングを検出する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図12は、IEEE802.15.4規格における通信データDTのパケット構成を示す。通信データDTは、プリアンブル部D1と、SFD(Start Frame Delimiter)部D2と、PHYヘッダ部D3と、データ本体部D4とから構成されている。
【0004】
プリアンブル部D1は、既知のビット信号を拡散変調した同期シンボルSaが複数連続して設けられており、受信時の同期タイミング検出に用いられる。この同期シンボルSaは、4ビットのシンボル「0000」をIEEE802.15.4規格で定められている拡散符号で拡散変調したものであり、既知のシンボルとなる。IEEE802.15.4規格では、図13に示すように、4ビットのビット列の各々に、32チップの拡散符号が対応付けられており、同期シンボルSaの拡散変調には、ビット列「0000」に対応する32チップの拡散符号Cが用いられる。
【0005】
SFD部D2は、1つ以上のSFDシンボルSbで構成されており(図12では、2つのSFDシンボルSb)、SFDシンボルSbによって、プリアンブル部D1の終了とPHYヘッダ部D3の開始とが検出される。
【0006】
PHYヘッダ部D3は、1つ以上のヘッダシンボルScで構成されており(図12では、2つのヘッダシンボルSc)、ヘッダシンボルScには、IEEE802.15.4規格の場合、通信データDTのパケット長の情報が格納されている。
【0007】
データ本体部D4は、送信情報が格納されており、1つ以上のシンボルで構成されている。
【0008】
上述のSFDシンボルSb、ヘッダシンボルSc、データ本体部D4を構成するシンボルも、図13に示すビット列と拡散符号との対応表にしたがって、ビット列を拡散符号で拡散変調したものである。
【0009】
図14は、従来の通信装置の同期回路K101を示すブロック図である。同期回路K101は、相関器101と、既知シンボル生成部102と、ピーク検出部103と、最大値検出部104と、カウンタ105とを備え、同期回路K101の後段には復調回路K102が接続されている。
【0010】
同期回路K101は、既知の同期シンボルSaとのみ相関をとるので、同期回路K101に用いられる既知シンボル生成部102は、図13に示す16パターンの拡散符号のうち、同期シンボルSaの拡散変調に用いた拡散符号Cを相関器101へ出力する。
【0011】
相関器101は、順次入力される受信符号列と既知シンボル生成部102が生成する拡散符号Cとの相互相関をとり、相関値を出力する。この相関値を時系列に沿って並べることで相関パターンが形成されるが、相関パターンは、受信符号列における同期シンボルSaの起点が、拡散符号Cの起点に一致したときに、相関値が最大(相関ピーク値)となる。
【0012】
ピーク検出部103は、相関パターンにおける相関値の各々を、予め決められた閾値と比較し、この閾値以上の相関値が相関ピーク値であると判定する。ピーク検出部103は、通信データDTを受信していないときも、相関ピーク値の検出動作を行っており、雑音による相関値を通信データDTによる相関値であると誤検出しないように、上記閾値による相関ピーク値の判定処理を行う。
【0013】
さらに、最大値検出部104は、相関ピーク値の最尤判定を行うため、相関ピーク値の最大値を逐次更新し、カウンタ105は、相関ピーク値の最大値が更新されてからのサンプル数をカウントする。そして、相関ピーク値の最大値が更新されてから、拡散符号長に相当するサンプル数以内に、相関ピーク値の最大値が更新されず、且つ相関ピーク値の最大値が更新されてから、拡散符号長に相当するサンプル数が経過した時点で、相関値が閾値以上になったとする。この場合、最大値検出部104は、この相関ピーク値の最大値を最大尤度のピーク値であると判断し、この相関ピーク値の発生タイミングを同期タイミングとし、同期確立信号を出力する。
【0014】
復調回路K102は、検出した同期タイミングに同期させて、受信した通信データDTに拡散符号を乗算することによって、通信データDTを逆拡散させた変調信号を生成し、逆拡散された変調信号から情報を復調(デジタル復調)する。すなわち、通信データDTからSFD部D2(SFDシンボルSb)を検出し、SFD部D2の検出後に、PHYヘッダ部D3(ヘッダシンボルSc)、データ本体部D4を復調する。
【0015】
また、従来、OFDM(Orthogonal Frequency DivisionMultiplexing)のように、FFT(Fast Fourier Transform)を用いた変調方式では、FFT処理の際に、受信符号列の周期性を確保するために窓関数を用いるものがあった(例えば、特許文献2,3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2008−271053号公報
【特許文献2】特開平8−223132号公報
【特許文献3】特開2000−22660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、受信符号列に妨害波am(k)を含む場合、上記特許文献1のような従来技術では、同期タイミングを正しく検出できない。なお、kはサンプル番号を示す。
【0018】
具体的に、拡散符号Cの符号列c(以降、拡散符号系列cと称す)は、拡散符号Cのチップ周期をTcとすると、[数1]で表される。
【0019】
【数1】

さらに、妨害波周波数をfAM、妨害波の複素振幅をAM、妨害波の複素位相をexp
(jΘ)とすると、妨害波am(k)は、[数2]で表される。
【0020】
【数2】

そして、妨害波am(k)が重畳した受信符号列をc’とした場合、相互相関値Rxxは、[数3]で表される。
【0021】
【数3】

ここで、mは、同期シンボルSaのインデックス(m=0,1,2,...,7)を示し、Nは、拡散符号系列の長さ(拡散符号長)を示し、mNは、各同期シンボルSaの先頭のサンプルを与え、cは複素共役を表す。なお、IEEE802,15.4規格の場合、プリアンブル部D1を構成する同期シンボルSaの数は「8」であるので、同期シンボルSaのインデックスmは、「0〜7」の整数になる。
【0022】
[数3]において、右辺の第1項は、妨害波am(k)がない場合の相互相関値であるので、ここでは右辺の第2項のみに注目する。この第2項を展開したものを、[数4]に示す。
【0023】
【数4】

そして、拡散符号Cは、[数5]を満たすように設計されており、この場合、[数4]の結果は0になる。しかしながら、妨害波am(k)によって与えられる位相回転exp(j2πfAMkT)によって、[数4]の結果は0にならなくなる。
【0024】
【数5】

すなわち、妨害波am(k)がないと仮定すると、実数成分1,−1、虚数成分j,−jがそれぞれ、拡散符号長N内で同数存在し、各成分のサンメンションが0になるように設計されている。しかし、妨害波am(k)によって与えられる上述の位相回転によって、実数成分1+α,−1+β、虚数成分j+γ,−j+ηのようになり、各成分のサンメンションが0ではなくなる。
【0025】
このようなα,β,γ,ηの各値は、サンプル時間によって刻々と変化するため、拡散符号長N毎に発生する相関ピーク値にうねりを発生させる。
【0026】
例えば、妨害波am(k)が重畳されていない場合、図15(a)に示すように、略一定の相関ピーク値が、同期シンボルSaの送信周期(拡散符号長N)毎に検出されるので、初期同期補足において、相関閾値K100を用いて正しい同期を確立することができる。
【0027】
しかし、妨害波am(k)が重畳されている場合、図15(b)に示すように、妨害波am(k)の信号強度の変動に応じて相関ピーク値も変動するうねりが発生し、相関ピーク値が相関閾値K100を下回る虞がある。而して、同期シンボルSaの送信周期毎に相関ピーク値を検出できなくなり、正しい同期を確立することができないという問題が発生する。すなわち、拡散変調された送信データに妨害波が重畳することによって、相関ピーク値を閾値比較によって検出することが困難になり、同期性能が劣化してしまう。
【0028】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、拡散変調された送信データに妨害波が重畳した状況下であっても、相関ピーク値による同期検出が可能になる受信装置、プログラム、半導体装置、通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明の受信装置は、拡散符号で既知のビット信号を拡散変調した同期シンボルを複数連続させた通信データを受信する受信装置であって、受信した前記通信データに基づいて生成される基本符号列において、前記同期シンボルの長さに相当するシンボル長で構成される第1の部分符号列の特定領域に第1の窓関数を乗じる第1の窓関数処理部と、前記基本符号列において、前記第1の部分符号列から前記シンボル長の整数倍だけ離れて、前記シンボル長で構成される第2の部分符号列の前記特定領域に第2の窓関数を乗じる第2の窓関数処理部と、前記第1,第2の窓関数処理部の各乗算結果を合成した合成符号列を生成する合成部と、前記特定領域を前記合成符号列に置き換えた前記第1の部分符号列と前記拡散符号との相関値を演算する相関器と、前記相関器が演算した相関値から相関ピーク値を抽出することによって、同期タイミングの検出処理を行う同期検出部とを備えることを特徴とする。
【0030】
この発明において、前記第2の部分符号列は、前記基本符号列において、前記第1の部分符号列から前記シンボル長だけ離れて構成されることが好ましい。
【0031】
この発明において、前記第1の部分符号列と前記第2の部分符号列との間の距離は、ランダムに設定されることが好ましい。
【0032】
この発明において、前記基本符号列は、受信した前記通信データを構成する受信符号列において、前記シンボル長で構成される第3の部分符号列と、前記受信符号列において、前記第3の部分符号列から前記シンボル長の整数倍だけ離れて、前記シンボル長で構成される第4の部分符号列とを加算して生成されることが好ましい。
【0033】
この発明において、前記第4の部分符号列は、前記受信符号列において、前記第3の部分符号列から前記シンボル長だけ離れて構成されることが好ましい。
【0034】
この発明において、前記第3の部分符号列と前記第4の部分符号列との間の距離は、ランダムに設定されることが好ましい。
【0035】
本発明のプログラムは、拡散符号で既知のビット信号を拡散変調した同期シンボルを複
数連続させた通信データを送信装置が送信し、受信装置が前記通信データを受信する通信システムに用いられ、コンピュータを、前記受信装置が受信した前記通信データに基づいて生成される基本符号列において、前記同期シンボルの長さに相当するシンボル長で構成される第1の部分符号列の特定領域に第1の窓関数を乗じる第1の窓関数処理手段と、前記基本符号列において、前記第1の部分符号列から前記シンボル長の整数倍だけ離れて、前記シンボル長で構成される第2の部分符号列の前記特定領域に第2の窓関数を乗じる第2の窓関数処理手段と、前記第1,第2の窓関数処理手段の各乗算結果を合成した合成符号列を生成する合成手段と、前記特定領域を前記合成符号列に置き換えた前記第1の部分符号列と前記拡散符号との相関値を演算する相関検出手段と、前記相関検出手段が演算した相関値から相関ピーク値を抽出することによって、同期タイミングの検出処理を行う同期検出手段として機能させることを特徴とする。
【0036】
本発明の半導体装置は、拡散符号で既知のビット信号を拡散変調した同期シンボルを複数連続させた通信データを送信装置が送信し、受信装置が前記通信データを受信する通信システムに用いられ、前記受信装置が受信した前記通信データに基づいて生成される基本符号列において、前記同期シンボルの長さに相当するシンボル長で構成される第1の部分符号列の特定領域に第1の窓関数を乗じる第1の窓関数処理部と、前記基本符号列において、前記第1の部分符号列から前記シンボル長の整数倍だけ離れて、前記シンボル長で構成される第2の部分符号列の前記特定領域に第2の窓関数を乗じる第2の窓関数処理部と、前記第1,第2の窓関数処理部の各乗算結果を合成した合成符号列を生成する合成部と、前記特定領域を前記合成符号列に置き換えた前記第1の部分符号列と前記拡散符号との相関値を演算する相関器と、前記相関器が演算した相関値から相関ピーク値を抽出することによって、同期タイミングの検出処理を行う同期検出部とを備えることを特徴とする。
【0037】
本発明の通信システムは、拡散符号で既知のビット信号を拡散変調した同期シンボルを複数連続させた通信データを送信装置が送信し、受信装置が前記通信データを受信する通信システムであって、前記受信装置は、受信した前記通信データに基づいて生成される基本符号列において、前記同期シンボルの長さに相当するシンボル長で構成される第1の部分符号列の特定領域に第1の窓関数を乗じる第1の窓関数処理部と、前記基本符号列において、前記第1の部分符号列から前記シンボル長の整数倍だけ離れて、前記シンボル長で構成される第2の部分符号列の前記特定領域に第2の窓関数を乗じる第2の窓関数処理部と、前記第1,第2の窓関数処理部の各乗算結果を合成した合成符号列を生成する合成部と、前記特定領域を前記合成符号列に置き換えた前記第1の部分符号列と前記拡散符号との相関値を演算する相関器と、前記相関器が演算した相関値から相関ピーク値を抽出することによって、同期タイミングの検出処理を行う同期検出部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0038】
以上説明したように、本発明では、拡散変調された送信データに妨害波が重畳した状況下であっても、相関ピーク値による同期検出が可能になるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】実施形態1の通信装置の同期回路の構成の一部を示すブロック図である。
【図2】同上の通信システムの構成を示すブロック図である。
【図3】同上の同期回路の構成を示すブロック図である。
【図4】(a)(b)同上の窓関数処理を示す概略図である。
【図5】(a)〜(c)同上の窓関数を示す時間波形図である。
【図6】実施形態2の通信装置の同期回路の構成の一部を示すブロック図である。
【図7】(a)〜(c)同上の窓関数処理を示す概略図である。
【図8】実施形態3の通信装置の同期回路の構成の一部を示すブロック図である。
【図9】(a)(b)同上の窓関数処理を示す概略図である。
【図10】実施形態4の通信装置の同期回路の構成の一部を示すブロック図である。
【図11】(a)〜(c)同上の窓関数処理を示す概略図である。
【図12】通信データを示すフレーム構造図である。
【図13】ビット列と拡散符号との対応を示すテーブル図である。
【図14】従来の同期回路の構成を示すブロック図である。
【図15】(a)(b)従来の同期確立処理を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0041】
(実施形態1)
本実施形態の通信システムは、図2に示すように、直接拡散変調通信(Direct Sequence SpreadSpectrum、DSSS)を用いて、互いに通信を行う複数の通信装置A(図2では、通信装置A1,A2を示す)で構成される。例えば、通信装置A1(送信装置)が、拡散符号を用いて拡散変調したパケットで構成される通信データを送信する。通信装置A2(受信装置)は、通信データに含まれる既知の同期シンボルと拡散符号との相関値に基づいて、受信時の同期タイミングを検出する。
【0042】
図12は、IEEE802.15.4規格における通信データDTのパケット構成を示す。通信データDTは、プリアンブル部D1と、SFD(Start Frame Delimiter)部D2と、PHYヘッダ部D3と、データ本体部D4とから構成されている。
【0043】
プリアンブル部D1は、既知のビット信号を拡散変調した同期シンボルSaが複数連続して設けられており、受信時の同期タイミング検出に用いられる。この同期シンボルSaは、4ビットのシンボル「0000」をIEEE802.15.4規格で定められている拡散符号で拡散変調したものであり、既知のシンボルとなる。IEEE802.15.4規格では、図13に示すように、4ビットのビット列の各々に、32チップの拡散符号が対応付けられており、同期シンボルSaの拡散変調には、ビット列「0000」に対応する32チップの拡散符号Cが用いられる。
【0044】
SFD部D2は、1つ以上のSFDシンボルSbで構成されており(図12では、2つのSFDシンボルSb)、SFDシンボルSbによって、プリアンブル部D1の終了とPHYヘッダ部D3の開始とが検出される。
【0045】
PHYヘッダ部D3は、1つ以上のヘッダシンボルScで構成されており(図12では、2つのヘッダシンボルSc)、ヘッダシンボルScには、IEEE802.15.4規格の場合、通信データDTのパケット長の情報が格納されている。
【0046】
データ本体部D4は、送信情報が格納されており、1つ以上のシンボルで構成されている。
【0047】
上述のSFDシンボルSb、ヘッダシンボルSc、データ本体部D4を構成するシンボルも、図13に示すビット列と拡散符号との対応表にしたがって、ビット列を拡散符号で拡散変調したものである。
【0048】
そして、図3は、通信装置Aの同期回路K1を示すブロック図である。同期回路K1は、相関器1と、既知シンボル生成部2と、ピーク検出部3と、最大値検出部4と、カウンタ5と、窓関数演算部6とを備え、同期回路K1の後段には復調回路K2が接続されている。また、ピーク検出部3、最大値検出部4、カウンタ5は、同期検出部K10を構成す
る。
【0049】
図1は、相関器1、窓関数演算部6のブロック構成を示しており、以下、相関器1、窓関数演算部6の各動作について説明する。
【0050】
まず、相関器1は、既知の同期シンボルSaとのみ相関をとるので、同期回路K1に用いられる既知シンボル生成部2は、図13に示す16パターンの拡散符号のうち、同期シンボルSaの拡散変調に用いた拡散符号Cを相関器1へ出力する。
【0051】
相関器1は、32個の格納領域を有する参照信号レジスタ11と、4個の格納領域を有するレジスタ12と、乗算器13と、演算器14とを備えており、拡散符号Cの符号列c(以降、拡散符号系列cと称す)が、参照信号レジスタ11に格納される。
【0052】
また、窓関数演算部6は、基本符号列生成部61、窓関数処理部62(第1の窓関数処理部)、窓関数処理部63(第2の窓関数処理部)、合成部64を備えている。そして、基本符号列生成部61は、36個の格納領域を有するシフトレジスタ61aを具備しており、他の通信装置Aからの通信データDTをサンプリングし、このサンプリングデータが、シフトレジスタ61aに時系列に沿って順次格納される。このシフトレジスタ61aに格納されている36チップの符号列が、基本符号列Xoを構成する。なお、本実施形態では、通信データDTのサンプリングデータからなる受信符号列が、基本符号列Xoを構成している。
【0053】
サンプリング周期は、通信データDTのチップ毎のデータが、シフトレジスタ61aの格納領域に順次格納される周期に設定されており、通信データDTのチップ毎のデータをサンプリング可能に構成されている。そして、シフトレジスタ61aでは、新規のサンプリングデータが格納される度に、既に格納されている後段のデータが前段にシフトする。なお、本実施形態の窓関数演算部6は、オーバーサンプル処理を行わないものとし、同期シンボルSaの1シンボルあたりのサンプル数は、拡散符号Cのチップ数に等しく、この場合、1シンボルあたりのシンボル長は32サンプル(32チップ)となる。
【0054】
但し、拡散符号Cがアナログ信号で表される場合、サンプリング周期は、サンプリング定理にしたがって、チップ周期Tcの1/2以下に設定される。この場合、シフトレジスタ61aのレジスタ長(格納領域の数)は、チップ周期/サンプリング周期の比率にしたがって、拡大する必要がある。
【0055】
すなわち、基本符号列Xoにおいて、同期シンボルSaの長さに相当するシンボル長(チップ数)は、サンプリング周期によって異なり、本実施形態において、同期シンボルSaの長さに相当するシンボル長は、32チップになる。
【0056】
そして、窓関数処理部62は、シフトレジスタ61aの後端の4チップで構成される符号列X1に窓関数1−Wk(kは、窓関数のサンプルインデックス)を乗じる。窓関数処理部63は、シフトレジスタ61aの前端の4チップで構成される符号列X2に窓関数Wkを乗じる。
【0057】
すなわち、図4(a)に示すように、窓関数処理部62は、n番目のシンボルに相当する部分符号列X(n)の後端の符号列X1に窓関数1−Wkを乗じる。窓関数処理部63は、n−1番目のシンボルに相当する部分符号列X(n−1)の後端の符号列X2に窓関数Wkを乗じる。なお、窓関数処理部62,63は、窓関数処理の対象となる符号列X1,X2の符号長を4チップとしている。しかし、符号列X1,X2の符号長は、拡散符号Cの符号長の1/2を超えない範囲で、窓関数Wk,1−Wkのサンプル数に応じて任意
に設定すればよい。
【0058】
ここで、部分符号列X(n)が、本発明の第1の部分符号列に相当し、部分符号列X(n−1)が、本発明の第2の部分符号列に相当する。また、部分符号列X(n),X(n−1)の各々における後端の4チップが、本発明の特定領域に相当する。さらに、窓関数1−Wkは、本発明の第1の窓関数に相当し、窓関数Wkは、本発明の第2の窓関数に相当する。なお、図4において、基本符号列Xoのサンプル番号を、便宜的に前端から−4,−3,−2,−1,1,2,3,4,......,32と付す。
【0059】
窓関数1−Wkは、図5(a)に示すように、時間の経過に伴って0から1へ徐々に増加する時間波形で構成される。窓関数Wkは、図5(b)に示すように、時間の経過に伴って1から0へ徐々に減少する時間波形で構成される。窓関数Wkと窓関数1−Wkとを併せると、図5(c)に示すように、中央が1、両端が0の時間波形になる。
【0060】
合成部64は、窓関数処理部62および窓関数処理部63の各乗算結果を足し合わせて4チップの合成符号列X3を生成し、相関器1へ出力する。このとき、窓関数処理部62および窓関数処理部63の各乗算結果は、窓関数のサンプルインデックスが同じもの同士を足し合わせる。すなわち、合成符号列X3は、窓関数処理を施した本発明の特定領域(部分符号列X(n),X(n−1)の各々における後端の4チップ)を、互いに合成したものである。
【0061】
相関器1は、4個の格納領域を有するレジスタ12を備えており、合成符号列X3はレジスタ12に格納される。而して、図4(b)に示すように、シフトレジスタ61aに格納されている基本符号列Xoのサンプル番号1(先頭から5チップ目)からサンプル番号28(先頭から32チップ目)で形成される符号列Xo1の後段を、合成符号列X3に置き換えた部分符号列Xa(n)が構成される。
【0062】
そして、乗算器13は、シフトレジスタ61aから取得した符号列Xo1とレジスタ12から取得した合成符号列X3とで、部分符号列Xa(n)を形成する。さらに、乗算器13は、参照信号レジスタ11から拡散符号系列cを取得する。そして、乗算器13は、部分符号列Xa(n)と拡散符号系列cとを乗算して、演算器14へ出力する。演算器14は、乗算器13の乗算結果に基づいて、部分符号列Xa(n)と拡散符号系列cとの和算をとり、相関値を出力する。この相関値を時系列に沿って並べることで相関パターンが形成されるが、相関パターンは、受信符号列における同期シンボルSaの起点が、拡散符号Cの起点に一致したときに、相関値が最大(相関ピーク値)となる。
【0063】
本実施形態では、上記のように窓関数Wk、1−Wkを用いて、受信符号列の一部に窓関数処理を施したので、拡散変調された送信データDTに妨害波が重畳した状況下であっても、同期検出部K10によって、相関ピーク値による同期検出が可能になる。
【0064】
具体的には、窓関数Wk、1−Wkの窓長をNwで表し、窓関数Wk、1−Wkによって更新される部分のみを数式化すると、[数4]は、[数6]のようになる。すなわち、[1−Wi{1−exp(j2πfAM(Nc−1)Tc)}]によって、妨害波の複素振幅AMは一定振幅ではなく、単調に減少する振幅を有することになる。したがって、窓関数Wk、1−Wkを用いた窓関数処理を施した部分について、相関値のうねりの原因となっていた妨害波の複素振幅AMの影響を抑制することができる。
【0065】
【数6】

而して、妨害波am(k)の信号強度の変動に応じて相関ピーク値が変動するうねりの発生を抑制できるので、拡散変調された送信データDTに妨害波が重畳した状況下であっても、相関ピーク値による同期検出が、以下の処理によって可能となる。
【0066】
ピーク検出部3は、相関パターンにおける相関値の各々を、予め決められた閾値と比較し、この閾値以上の相関値が相関ピーク値であると判定する。ピーク検出部3は、通信データDTを受信していないときも、相関ピーク値の検出動作を行っており、雑音による相関値を通信データDTによる相関値であると誤検出しないように、上記閾値による相関ピーク値の判定処理を行う。
【0067】
さらに、最大値検出部4は、相関ピーク値の最尤判定を行うため、相関ピーク値の最大値を逐次更新し、カウンタ5は、相関ピーク値の最大値が更新されてからのサンプル数をカウントする。そして、相関ピーク値の最大値が更新されてから、拡散符号長に相当するサンプル数以内に、相関ピーク値の最大値が更新されず、且つ相関ピーク値の最大値が更新されてから、拡散符号長に相当するサンプル数が経過した時点で、相関値が閾値以上になったとする。この場合、最大値検出部4は、この相関ピーク値の最大値を最大尤度のピーク値であると判断し、この相関ピーク値の発生タイミングを同期タイミングとし、同期確立信号を出力する。
【0068】
復調回路K2は、検出した同期タイミングに同期させて、受信した通信データDTに拡散符号を乗算することによって、通信データDTを逆拡散させた変調信号を生成し、逆拡散された変調信号から情報を復調(デジタル復調)する。すなわち、通信データDTからSFD部D2(SFDシンボルSb)を検出し、SFD部D2の検出後に、PHYヘッダ部D3(ヘッダシンボルSc)、データ本体部D4を復調する。
【0069】
また、本実施形態において、第1の部分符号列として部分符号列X(n)を用い、第2の部分符号列として部分符号列X(n−1)を用いている。すなわち、部分符号列X(n−1)は、同期シンボルSaのシンボル長(32チップ)だけ、部分符号列X(n)から離して構成されている。しかし、第2の部分符号列として、部分符号列X(n−2),X(n−3),...,X(n+2),X(n+3),...のように、部分符号列X(n)から、同期シンボルSaのシンボル長(32チップ)のn倍(n=2,3,4,...)離れた部分符号列を用いてもよい。
【0070】
さらに、第1の部分符号列と第2の部分符号列との間の距離は、同期シンボルSaのシンボル長(32チップ)の整数倍という条件下で、通信データDTの受信動作毎にランダムに設定してもよい。
【0071】
(実施形態2)
本実施形態の通信システムは、実施形態1と略同様の構成を備えており、同様の構成には同一の符号を付して説明は省略する。
【0072】
実施形態1では、受信した通信データDTのサンプリングデータ(受信符号列)が、基本符号列Xoとして、シフトレジスタ61aに格納される。しかし、本実施形態では、基本符号列Xoを、以下のように作成する。
【0073】
まず、図6は、本実施形態の相関器1、窓関数演算部6のブロック構成を示す。窓関数演算部6の基本符号列生成部61は、シフトレジスタ61bと、合成部61cと、レジスタ61dとを備える。
【0074】
シフトレジスタ61bは、68個の格納領域を有しており、受信した通信データDTのサンプリングデータは、シフトレジスタ61bに時系列に沿って順次格納される。このシフトレジスタ61bに格納されている68チップの符号列が、受信符号列を構成する。受信符号列は、n+1番目のシンボルに相当する部分符号列X(n+1)の全領域(32チップ)、n番目のシンボルに相当する部分符号列X(n)の全領域(32チップ)、n−1番目のシンボルに相当する部分符号列X(n−1)の後端の4チップで構成される。
【0075】
そして、合成部61cは、受信符号列の前端寄りの36チップと後端寄りの36チップとを足し合わせて36チップの基本符号列Xoを生成し、36個の格納領域を有するレジスタ61dに格納する。
【0076】
本実施形態の窓関数演算部6による上記処理の概念を、図7に示す。
【0077】
まず、図7(a)に示すように、n−1番目のシンボルに相当する部分符号列X(n−1)とn番目のシンボルに相当する部分符号列X(n)とを加算して、部分符号列X(n−1,n)が構成される。さらに、n番目のシンボルに相当する部分符号列X(n)とn+1番目のシンボルに相当する部分符号列X(n+1)とを加算して、部分符号列X(n,n+1)が構成される。上記のように構成された部分符号列X(n−1,n)は、部分符号列X(n−1)と部分符号列X(n)との平均に相当し、部分符号列X(n,n+1)は、部分符号列X(n)と部分符号列X(n+1)との平均に相当する。ここで、部分符号列X(n)が、本発明の第3の部分符号列に相当し、部分符号列X(n−1)および部分符号列X(n+1)が、本発明の第4の部分符号列に相当する。
【0078】
而して、合成部61cの上記処理によってレジスタ61dに格納された基本符号列Xoは、部分符号列X(n,n+1)の全領域(32チップ)と、部分符号列X(n−1,n)の後端の4チップとで構成される。
【0079】
そして、窓関数処理部62は、レジスタ61dの後端の4チップで構成される符号列X1に窓関数1−Wkを乗じる。窓関数処理部63は、レジスタ61dの前端の4チップで構成される符号列X2に窓関数Wkを乗じる。
【0080】
すなわち、図7(b)に示すように、窓関数処理部62は、部分符号列X(n,n+1)の後端の4チップで構成される符号列X1に窓関数1−Wkを乗じる。窓関数処理部63は、部分符号列X(n−1,n)の後端の4チップで構成される符号列X2に窓関数Wkを乗じる。なお、図7において、基本符号列Xoのサンプル番号を、便宜的に前端から−4,−3,−2,−1,1,2,3,4,......,32と付す。
【0081】
合成部64は、窓関数処理部62および窓関数処理部63の各乗算結果を足し合わせて4チップの合成符号列X3を生成し、相関器1へ出力する。このとき、窓関数処理部62および窓関数処理部63の各乗算結果は、窓関数のサンプルインデックスが同じもの同士を足し合わせる。
【0082】
相関器1は、4個の格納領域を有するレジスタ12を備えており、合成符号列X3はレジスタ12に格納される。而して、図7(c)に示すように、レジスタ61dに格納されている基本符号列Xoのサンプル番号1(先頭から5チップ目)からサンプル番号28(
先頭から32チップ目)で形成される符号列Xo1の後段を、合成符号列X3に置き換えた部分符号列Xa(n,n+1)が構成される
そして、乗算器13は、レジスタ61dから取得した符号列Xo1とレジスタ12から取得した合成符号列X3とで、部分符号列Xa(n,n+1)を形成する。さらに、乗算器13は、参照信号レジスタ11から拡散符号系列cを取得する。そして、乗算器13は、部分符号列Xa(n,n+1)と拡散符号系列cとを乗算して、演算器14へ出力する。演算器14は、乗算器13の乗算結果に基づいて、部分符号列Xa(n,n+1)と拡散符号系列cとの和算をとり、相関値を出力する。以降の同期検出部K10、復調回路K2の各動作は、実施形態1と同様であり、説明は省略する。
【0083】
このように、本実施形態では、隣り合う2つの部分符号列X(n−1),X(n)を平均化した部分符号列X(n−1,n)、隣り合う2つの部分符号列X(n),X(n+1)を平均化した部分符号列X(n,n+1)から、基本符号列Xoを構成する。したがって、AM信号のように、同期シンボルSaの周期と異なる周期で変化する妨害波だけでなく、ランダムに変化する妨害波に対してもロバストな同期方式となる。
【0084】
なお、本実施形態では、部分符号列の平均化処理の後に、窓関数処理を行っているが、窓関数処理を行った後に、部分符号列の平均化処理を行ってもよい。
【0085】
また、本実施形態において、第3の部分符号列として部分符号列X(n)を用い、第4の部分符号列として部分符号列X(n−1),X(n+1)を用いている。すなわち、部分符号列X(n−1),X(n+1)は、同期シンボルSaのシンボル長(32チップ)だけ、部分符号列X(n)から離して構成されている。しかし、第4の部分符号列として、部分符号列X(n−2),X(n−3),...,X(n+2),X(n+3),...のように、部分符号列X(n)から、同期シンボルSaのシンボル長(32チップ)のn倍(n=2,3,4,...)離れた部分符号列を用いてもよい。
【0086】
さらに、第3の部分符号列と第4の部分符号列との間の距離は、同期シンボルSaのシンボル長(32チップ)の整数倍という条件下で、通信データDTの受信動作毎にランダムに設定してもよい。
【0087】
(実施形態3)
本実施形態の通信システムは、実施形態1と略同様の構成を備えており、実施形態1と同様の構成には同一の符号を付して説明は省略する。
【0088】
実施形態1では、基本符号列Xo内の1箇所のみに窓関数処理を施したが、本実施形態では、基本符号列Xo内の2箇所に窓関数処理を施す。
【0089】
図8は、本実施形態の相関器1、窓関数演算部6のブロック構成を示す。
【0090】
相関器1は、実施形態1の構成に加えて、4個の格納領域を有するレジスタ15を備える。
【0091】
窓関数演算部6は、実施形態1の構成に加えて、窓関数処理部65,66、合成部67を備えており、さらにシフトレジスタ61aは、40個の格納領域を具備する。そして、他の通信装置Aからの通信データDTをサンプリングし、このサンプリングデータが、シフトレジスタ61aに時系列に沿って順次格納される。このシフトレジスタ61aに格納されている40チップの符号列が、基本符号列Xoを構成する。なお、本実施形態では、通信データDTのサンプリングデータからなる受信符号列が、基本符号列Xoを構成している。
【0092】
そして、窓関数処理部62は、シフトレジスタ61aの後端側の5〜8チップ目で構成される符号列X1に窓関数1−Wk(kは、窓関数のサンプルインデックス)を乗じる。窓関数処理部63は、シフトレジスタ61aの前端の4チップで構成される符号列X2に窓関数Wkを乗じる。次に、合成部64は、窓関数処理部62および窓関数処理部63の各乗算結果を、同じサンプルインデックス同士を足し合わせて4チップの合成符号列X3を生成し、合成符号列X3は相関器1のレジスタ12に格納される。この合成符号列X3の生成処理は、実施形態1と同様である。
【0093】
さらに、本実施形態において、窓関数処理部65は、シフトレジスタ61aの前端側の5〜8チップ目で構成される符号列X4に窓関数Wkを乗じる。窓関数処理部66は、シフトレジスタ61aの後端の4チップで構成される符号列X5に窓関数1−Wkを乗じる。
【0094】
すなわち、図9(a)に示すように、窓関数処理部65は、n番目のシンボルに相当する部分符号列X(n)の前端の符号列X4に窓関数Wkを乗じる。窓関数処理部66は、n+1番目のシンボルに相当する部分符号列X(n+1)の前端の符号列X5に窓関数1−Wkを乗じる。ここで、部分符号列X(n)が、本発明の第1の部分符号列に相当し、部分符号列X(n+1)が、本発明の第2の部分符号列に相当する。この場合、部分符号列X(n),X(n+1)の各々における前端の4チップが、本発明の特定領域に相当し、さらに窓関数Wkが、本発明の第1の窓関数に相当し、窓関数1−Wkが、本発明の第2の窓関数に相当する。なお、図9において、基本符号列Xoのサンプル番号を、便宜的に前端から−4,−3,−2,−1,1,2,3,4,......,32,...,36と付す。
【0095】
合成部67は、窓関数処理部65および窓関数処理部66の各乗算結果を、同じサンプルインデックス同士を足し合わせて4チップの合成符号列X6を生成し、合成符号列X6は相関器1のレジスタ15に格納される。
【0096】
上記処理によって、相関器1のレジスタ12,15には、合成符号列X3,X6の各々が格納されている。そして、基本符号列Xo、合成符号列X3,X6を用いて、図9(b)に示す部分符号列Xb(n)が構成される。部分符号列Xb(n)は、基本符号列Xoのサンプル番号5(前端から9チップ目)からサンプル番号28(前端から32チップ目)で形成される符号列Xo2の後段を、合成符号列X3に置き換え、さらに符号列Xo2の前段を、合成符号列X6に置き換えている。
【0097】
そして、乗算器13は、シフトレジスタ61aから取得した符号列Xo2と、レジスタ12から取得した合成符号列X3と、レジスタ15から取得した合成符号列X6とで、部分符号列Xb(n)を形成する。さらに、乗算器13は、参照信号レジスタ11から拡散符号系列cを取得する。そして、乗算器13は、部分符号列Xb(n)と拡散符号系列cとを乗算して、演算器14へ出力する。演算器14は、乗算器13の乗算結果に基づいて、部分符号列Xb(n)と拡散符号系列cとの和算をとり、相関値を出力する。以降の同期検出部K10、復調回路K2の各動作は、実施形態1と同様であり、説明は省略する。
【0098】
本実施形態では、上記のように窓関数Wk、1−Wkを用いて、符号列の2箇所に窓関数処理を施したので、妨害波am(k)の信号強度の変動に応じて相関ピーク値が変動するうねりの発生をより抑制できる。したがって、妨害波が存在する環境下であっても、相関ピーク値による同期検出の精度がさらに向上する。
【0099】
なお、本実施形態では、符号列の2箇所に窓関数処理を施しているが、3箇所以上に窓関数処理を施してもよい。
【0100】
なお、他の構成は実施形態1と同様であり、説明は省略する。
【0101】
(実施形態4)
本実施形態の通信システムは、実施形態3と略同様の構成を備えており、同様の構成には同一の符号を付して説明は省略する。
【0102】
実施形態3では、受信した通信データDTのサンプリングデータが、基本符号列Xoとして、シフトレジスタ61aに格納される。しかし、本実施形態では、基本符号列Xoを、以下のように作成する。
【0103】
まず、図10は、本実施形態の相関器1、窓関数演算部6のブロック構成を示す。窓関数演算部6の基本符号列生成部61は、シフトレジスタ61bと、合成部61cと、レジスタ61dとを備える。
【0104】
シフトレジスタ61bは、72個の格納領域を有しており、受信した通信データDTのサンプリングデータは、シフトレジスタ61bに時系列に沿って順次格納される。このシフトレジスタ61bに格納されている72チップの符号列が、受信符号列を構成する。受信符号列は、n+2番目のシンボルに相当する部分符号列X(n+2)の前端の4チップ、n+1番目のシンボルに相当する部分符号列X(n+1)の全領域(32チップ)、n番目のシンボルに相当する部分符号列X(n)の全領域(32チップ)、n−1番目のシンボルに相当する部分符号列X(n−1)の後端の4チップで構成される。
【0105】
そして、合成部61cは、受信符号列の前端寄りの40チップと後端寄りの40チップとを足し合わせて40チップの基本符号列Xoを生成し、40個の格納領域を有するレジスタ61dに格納する。
【0106】
本実施形態の窓関数演算部6による上記処理の概念を、図11に示す。
【0107】
まず、図11(a)に示すように、n−1番目のシンボルに相当する部分符号列X(n−1)とn番目のシンボルに相当する部分符号列X(n)とを加算して、部分符号列X(n−1,n)が構成される。さらに、n番目のシンボルに相当する部分符号列X(n)とn+1番目のシンボルに相当する部分符号列X(n+1)とを加算して、部分符号列X(n,n+1)が構成される。さらに、n+1番目のシンボルに相当する部分符号列X(n+1)とn+2番目のシンボルに相当する部分符号列X(n+2)とを加算して、部分符号列X(n+1,n+2)が構成される。上記のように構成された部分符号列X(n−1,n)は、部分符号列X(n−1)と部分符号列X(n)との平均に相当し、部分符号列X(n,n+1)は、部分符号列X(n)と部分符号列X(n+1)との平均に相当する。さらに、部分符号列X(n+1,n+2)は、部分符号列X(n+1)と部分符号列X(n+2)との平均に相当する。ここで、部分符号列X(n−1)、部分符号列X(n)、部分符号列X(n+1)、部分符号列X(n+2)が、本発明の第3の部分符号列、第4の部分符号列に各々相当する。
【0108】
而して、レジスタ61dに格納された基本符号列Xoは、部分符号列X(n+1,n+2)の前端の4チップと、部分符号列X(n,n+1)の全領域(32チップ)と、部分符号列X(n−1,n)の後端の4チップとで構成される。
【0109】
そして、窓関数処理部62は、レジスタ61dの後端側の5〜8チップ目で構成される
符号列X1に窓関数1−Wkを乗じる。窓関数処理部63は、レジスタ61dの前端の4チップで構成される符号列X2に窓関数Wkを乗じる。次に、合成部64は、窓関数処理部62および窓関数処理部63の各乗算結果を、同じサンプルインデックス同士を足し合わせて4チップの合成符号列X3を生成し、合成符号列X3は相関器1のレジスタ12に格納される。この合成符号列X3の生成処理は、実施形態1と同様である。
【0110】
さらに、本実施形態において、窓関数処理部65は、レジスタ61dの前端側の5〜8チップ目で構成される符号列X4に窓関数Wkを乗じる。窓関数処理部66は、レジスタ61dの後端の4チップで構成される符号列X5に窓関数1−Wkを乗じる。
【0111】
すなわち、図11(b)に示すように、窓関数処理部65は、部分符号列X(n,n+1)の前端の符号列X4に窓関数Wkを乗じる。窓関数処理部66は、部分符号列X(n+1,n+2)の前端の符号列X5に窓関数1−Wkを乗じる。
【0112】
ここで、部分符号列X(n,n+1)が、本発明の第1の部分符号列に相当し、部分符号列X(n+1,n+2)が、本発明の第2の部分符号列に相当する。この場合、部分符号列X(n,n+1),X(n+1,n+2)の各々における前端の4チップが、本発明の特定領域に相当し、さらに窓関数Wkが、本発明の第1の窓関数に相当し、窓関数1−Wkが、本発明の第2の窓関数に相当する。なお、図11において、基本符号列Xoのサンプル番号を、便宜的に前端から−4,−3,−2,−1,1,2,3,4,......,32,...,36と付す。
【0113】
合成部67は、窓関数処理部65および窓関数処理部66の各乗算結果を、同じサンプルインデックス同士を足し合わせて4チップの合成符号列X6を生成し、合成符号列X6は相関器1のレジスタ15に格納される。
【0114】
上記処理によって、相関器1のレジスタ12,15には、合成符号列X3,X6の各々が格納されている。そして、基本符号列Xo、合成符号列X3,X6を用いて、図11(c)に示す部分符号列Xb(n,n+1)が構成される。部分符号列Xb(n,n+1)は、基本符号列Xoのサンプル番号5(前端から9チップ目)からサンプル番号28(前端から32チップ目)で形成される符号列Xo2の後段を、合成符号列X3に置き換えている。さらに、部分符号列Xb(n,n+1)は、符号列Xo2の前段を、合成符号列X6に置き換えている。
【0115】
そして、乗算器13は、レジスタ61dから取得した符号列Xo2と、レジスタ12から取得した合成符号列X3と、レジスタ15から取得した合成符号列X6とで、部分符号列Xb(n,n+1)を形成する。さらに、乗算器13は、参照信号レジスタ11から拡散符号系列cを取得する。そして、乗算器13は、部分符号列Xb(n,n+1)と拡散符号系列cとを乗算して、演算器14へ出力する。演算器14は、乗算器13の乗算結果に基づいて、部分符号列Xb(n,n+1)と拡散符号系列cとの和算をとり、相関値を出力する。以降の同期検出部K10、復調回路K2の各動作は、実施形態1と同様であり、説明は省略する。
【0116】
このように、本実施形態では、隣り合う2つの部分符号列X(n−1),X(n),X(n+1),X(n+2)を平均化した部分符号列X(n−1,n),X(n,n+1),X(n+1,n+2)から、基本符号列Xoを構成する。したがって、AM信号のように、同期シンボルSaの周期と異なる周期で変化する妨害波だけでなく、ランダムに変化する妨害波に対してもロバストな同期方式となる。
【0117】
なお、本実施形態では、部分符号列の平均化処理の後に、窓関数処理を行っているが、
窓関数処理を行った後に、部分符号列の平均化処理を行ってもよい。
【0118】
なお、他の構成は実施形態3と同様であり、説明は省略する。
【0119】
上述の各実施形態において、汎用のマイクロコンピュータ等のコンピュータに同期回路K1の各機能を実行させるためのプログラムを作成し、このプログラムを読み取り可能な記録媒体(例えば、ROM、RAM等のメモリ装置)に記録してもよい。この場合、通話装置Aは、記録媒体およびCPU(Central Processing Unit)を有するマイクロコンピュータを搭載し、CPUが、記録媒体からプログラムを読み取って実行することによって、同期回路K1の各機能が動作する。このように同期回路K1の各機能をソフトウェアが実現することによって、アルゴリズムの変更が容易になる。
【0120】
また、上述の各実施形態において、同期回路K1の各機能を備えた半導体装置を通話装置Aに搭載してもよい。半導体装置は、ASIC(Application SpecificIntegrated Circuit)等の集積回路で構成されており、各機能の処理遅延を抑制でき、さらにはソフトウェアを利用する方法に比べて低コスト化を図ることができる。
【符号の説明】
【0121】
A 通信装置(受信装置、送信装置)
1 相関器
11 参照信号レジスタ
12 レジスタ
13 乗算器
14 演算器
6 窓関数演算部
61 基本符号列生成部
62 窓関数処理部(第1の窓関数処理部)
63 窓関数処理部(第2の窓関数処理部)
64 合成部
K10 同期検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡散符号で既知のビット信号を拡散変調した同期シンボルを複数連続させた通信データを受信する受信装置であって、
受信した前記通信データに基づいて生成される基本符号列において、前記同期シンボルの長さに相当するシンボル長で構成される第1の部分符号列の特定領域に第1の窓関数を乗じる第1の窓関数処理部と、
前記基本符号列において、前記第1の部分符号列から前記シンボル長の整数倍だけ離れて、前記シンボル長で構成される第2の部分符号列の前記特定領域に第2の窓関数を乗じる第2の窓関数処理部と、
前記第1,第2の窓関数処理部の各乗算結果を合成した合成符号列を生成する合成部と、
前記特定領域を前記合成符号列に置き換えた前記第1の部分符号列と前記拡散符号との相関値を演算する相関器と、
前記相関器が演算した相関値から相関ピーク値を抽出することによって、同期タイミングの検出処理を行う同期検出部と
を備えることを特徴とする受信装置。
【請求項2】
前記第2の部分符号列は、前記基本符号列において、前記第1の部分符号列から前記シンボル長だけ離れて構成されることを特徴とする請求項1記載の受信装置。
【請求項3】
前記第1の部分符号列と前記第2の部分符号列との間の距離は、ランダムに設定されることを特徴とする請求項1記載の受信装置。
【請求項4】
前記基本符号列は、受信した前記通信データを構成する受信符号列において、前記シンボル長で構成される第3の部分符号列と、前記受信符号列において、前記第3の部分符号列から前記シンボル長の整数倍だけ離れて、前記シンボル長で構成される第4の部分符号列とを加算して生成されることを特徴とする請求項1乃至3いずれか記載の受信装置。
【請求項5】
前記第4の部分符号列は、前記受信符号列において、前記第3の部分符号列から前記シンボル長だけ離れて構成されることを特徴とする請求項4記載の受信装置。
【請求項6】
前記第3の部分符号列と前記第4の部分符号列との間の距離は、ランダムに設定されることを特徴とする請求項4記載の受信装置。
【請求項7】
拡散符号で既知のビット信号を拡散変調した同期シンボルを複数連続させた通信データを送信装置が送信し、受信装置が前記通信データを受信する通信システムに用いられ、
コンピュータを、
前記受信装置が受信した前記通信データに基づいて生成される基本符号列において、前記同期シンボルの長さに相当するシンボル長で構成される第1の部分符号列の特定領域に第1の窓関数を乗じる第1の窓関数処理手段と、
前記基本符号列において、前記第1の部分符号列から前記シンボル長の整数倍だけ離れて、前記シンボル長で構成される第2の部分符号列の前記特定領域に第2の窓関数を乗じる第2の窓関数処理手段と、
前記第1,第2の窓関数処理手段の各乗算結果を合成した合成符号列を生成する合成手段と、
前記特定領域を前記合成符号列に置き換えた前記第1の部分符号列と前記拡散符号との相関値を演算する相関検出手段と、
前記相関検出手段が演算した相関値から相関ピーク値を抽出することによって、同期タイミングの検出処理を行う同期検出手段と
して機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項8】
拡散符号で既知のビット信号を拡散変調した同期シンボルを複数連続させた通信データを送信装置が送信し、受信装置が前記通信データを受信する通信システムに用いられ、
前記受信装置が受信した前記通信データに基づいて生成される基本符号列において、前記同期シンボルの長さに相当するシンボル長で構成される第1の部分符号列の特定領域に第1の窓関数を乗じる第1の窓関数処理部と、
前記基本符号列において、前記第1の部分符号列から前記シンボル長の整数倍だけ離れて、前記シンボル長で構成される第2の部分符号列の前記特定領域に第2の窓関数を乗じる第2の窓関数処理部と、
前記第1,第2の窓関数処理部の各乗算結果を合成した合成符号列を生成する合成部と、
前記特定領域を前記合成符号列に置き換えた前記第1の部分符号列と前記拡散符号との相関値を演算する相関器と、
前記相関器が演算した相関値から相関ピーク値を抽出することによって、同期タイミングの検出処理を行う同期検出部と
を備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項9】
拡散符号で既知のビット信号を拡散変調した同期シンボルを複数連続させた通信データを送信装置が送信し、受信装置が前記通信データを受信する通信システムであって、
前記受信装置は、
受信した前記通信データに基づいて生成される基本符号列において、前記同期シンボルの長さに相当するシンボル長で構成される第1の部分符号列の特定領域に第1の窓関数を乗じる第1の窓関数処理部と、
前記基本符号列において、前記第1の部分符号列から前記シンボル長の整数倍だけ離れて、前記シンボル長で構成される第2の部分符号列の前記特定領域に第2の窓関数を乗じる第2の窓関数処理部と、
前記第1,第2の窓関数処理部の各乗算結果を合成した合成符号列を生成する合成部と、
前記特定領域を前記合成符号列に置き換えた前記第1の部分符号列と前記拡散符号との相関値を演算する相関器と、
前記相関器が演算した相関値から相関ピーク値を抽出することによって、同期タイミングの検出処理を行う同期検出部と
を備えることを特徴とする通信システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate