説明

受信装置、移動端末、通信システムおよび通信方法

【課題】信号処理量を低減すること。
【解決手段】受信装置120は、受信部121と、推定部122と、算出部123と、送信部124と、を備えている。受信部121は、互いに異なる各偏波面の信号を受信する各アンテナを含む。推定部122は、移動端末110との間の伝搬特性を推定する。算出部123は、推定部122の推定結果に基づいて、受信部121により受信される信号が各偏波面になる各ビームフォーミングのウェイトの少なくとも一方を算出する。送信部124は、算出部123によって算出されたウェイトを移動端末110へ送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信を行う受信装置、移動端末、通信システムおよび通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信においてさらなる周波数の有効活用を図るための空間多重技術としてMIMO(Multiple Input Multiple Output:多元入力多元出力)が検討されている(たとえば、下記特許文献1,2参照。)。MIMOには、一つのユーザ端末が複数ストリームを多重して送信することで周波数利用効率を向上させるSU(Single User)−MIMOと、複数のユーザ端末が同時に送信した各ストリームを多重するMU(Multi User)−MIMOと、がある。
【0003】
SU−MIMOとMU−MIMOでは、MU−MIMOの方が伝搬路空間に対する自由度が高く取れるために、制御の複雑度は増すものの周波数利用効率が高いことが知られている。また、アップリンクにおいては受信端で複数のユーザ端末から同一周波数の送信信号を受信するため、ストリーム間で干渉が発生する。各送信信号を精度良く分離するためには非常に大きな計算複雑度を伴うことも分かっている。各送信信号を分離する方法としては、たとえばSVD(Single Value Decomposition)−Assistedがあげられる(たとえば、下記非特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−80353号公報
【特許文献2】特開2008−124974号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】W.Liu,L.L.Yang,L..Hanzo”SVD−Assisted Multiuser Transmitter and Multiuser Detector Design for MIMO Systems.”,IEEE Transactions on Vehicular Technology,vol.58 No.2,February 2009、p.1016−1021
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来技術では、各移動端末からの送信信号を分離するための受信端における信号処理量が大きいという問題がある。特に、受信端において同時に信号を受信する移動端末の数が増加すると、受信端の信号処理量が指数関数的に増加する。
【0007】
開示の受信装置、移動端末、通信システムおよび通信方法は、上述した問題点を解消するものであり、信号処理量を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この受信装置は、互いに異なる各偏波面の信号を受信する各アンテナを含む受信部と、移動端末との間の伝搬特性を推定する推定部と、前記推定部の推定結果に基づいて、前記受信部により受信される信号が前記各偏波面になる各ビームフォーミングのウェイトの少なくとも一方を算出する算出部と、前記算出部によって算出されたウェイトを前記移動端末へ送信する送信部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
開示の受信装置、移動端末、通信システムおよび通信方法によれば、信号処理量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施の形態にかかる通信システムの処理を示すブロック図である。
【図2】図1に示した通信システムの具体例を示す図である。
【図3】図2に示した基地局のアンテナの一例を簡略化して示す図である。
【図4】図2に示した通信システムの動作の一例を示すシーケンス図である。
【図5】図2に示した基地局の構成の一例を示す図である。
【図6】図5に示した算出部の処理の一例を示す図である。
【図7】ユーザ端末の構成の一例を示す図である。
【図8】基地局とユーザ端末との間の各パスと偏波面を示す図である。
【図9】図5に示した算出部の処理の他の一例を示す図である。
【図10】参照信号の送信周期の設定動作の一例を示すシーケンス図である。
【図11】偏波変動に基づく選択周期の設定を示す図である。
【図12】ドップラー周波数に基づく選択周期の決定処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を参照して、この受信装置、移動端末、通信システムおよび通信方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0012】
(実施の形態)
(通信システムの処理)
図1は、実施の形態にかかる通信システムの処理を示すブロック図である。図1に示すように、実施の形態にかかる通信システム100は、移動端末110と、受信装置120と、を含んでいる。移動端末110は、移動通信が可能な携帯電話などの端末である。受信装置120は、移動端末110と無線通信を行う基地局(BS:Base Station)や中継局(RN:Relay Node)などの通信装置である。
【0013】
移動端末110は、受信装置120によって送信されたウェイトによって、送信する信号に対してビームフォーミングを行う。具体的には、移動端末110は、送信部111と、受信部112と、乗算部113と、を備えている。送信部111は、ユーザデータなどの信号を受信装置120へ送信する。
【0014】
また、送信部111は、あらかじめ定められたパターンの参照信号(Reference Signal)を受信装置120へ送信するようにしてもよい。また、送信部111は、複数のアンテナを含み、乗算部113によって重み付けされた各信号をそれぞれのアンテナから送信することでビームフォーミングを行う。
【0015】
受信部112は、ビームフォーミングのウェイトを受信装置120から受信する。受信部112が受信するウェイトは、送信部111によって送信される信号が、受信装置120の各アンテナに対応する各偏波面で受信装置120によって受信されるビームフォーミングのウェイトである。受信部112は、受信したウェイトを乗算部113へ出力する。
【0016】
乗算部113は、受信部112から出力されたウェイトによって、送信部111によって送信される信号に対してビームフォーミングを行う。具体的には、乗算部113は、受信部112から出力されたウェイトによって、送信部111の各アンテナによって送信される各信号に対して重み付けする。乗算部113は、たとえばDSP(Digital Signal Processor)などの演算回路によって実現することができる。
【0017】
受信装置120は、互いに異なる各偏波面の信号を受信する各アンテナを有する。互いに異なる各偏波面とは、たとえば互いに直交する各偏波面である。以下の説明において、互いに異なる各偏波面は、互いに直交するV偏波面(垂直偏波面)とH偏波面(水平偏波面)であるとする。受信装置120は、受信する信号がV偏波面とH偏波面のいずれかになるビームフォーミングのウェイトを移動端末110との間の伝搬特性(伝搬路特性)に基づいて算出し、算出したウェイトを移動端末110へ送信する。
【0018】
具体的には、受信装置120は、受信部121と、推定部122と、算出部123と、送信部124と、を備えている。受信部121は、互いに異なる各偏波面(ここではV偏波面とH偏波面)の信号を受信する各アンテナを含み、移動端末110から送信された信号(参照信号やユーザデータ)を受信する。受信部121は、受信した参照信号を推定部122へ出力するようにしてもよい。
【0019】
推定部122は、受信装置120と移動端末110の間の伝搬特性を推定する。たとえば、推定部122は、受信部121から出力された参照信号に基づいて伝搬特性を推定する。推定部122は、推定した伝搬特性(推定結果)を算出部123へ通知する。推定部122は、たとえばDSPなどの演算回路によって実現することができる。
【0020】
算出部123は、推定部122から通知された伝搬特性に基づいて、移動端末110におけるビームフォーミングのウェイトを算出する。具体的には、算出部123は、受信部121によって受信される信号が、V偏波面およびH偏波面になる各ウェイトのいずれかを算出する。または、算出部123は、受信部121によって受信される信号が、V偏波面およびH偏波面になる各ウェイトの両方を算出するようにしてもよい。
【0021】
算出部123は、算出したウェイトを送信部124へ出力する。算出部123は、たとえばDSPなどの演算回路によって実現することができる。送信部124は、算出部123から出力されたウェイトを移動端末110へ送信する。これにより、移動端末110によって送信される信号が、受信装置120においてV偏波面またはH偏波面の状態で受信されるようにすることができる。
【0022】
(通信システムの具体例)
図2は、図1に示した通信システムの具体例を示す図である。図2に示す通信システム200は、図1に示した通信システム100の具体例である。通信システム200は、ユーザ端末210(UE:User Equipment)と、ユーザ端末220と、基地局230と、を含んでいる。図1に示した移動端末110は、たとえばユーザ端末210とユーザ端末220のそれぞれに適用することができる。図1に示した受信装置120は、たとえば基地局230に適用することができる。
【0023】
ユーザ端末210は、基地局230へ信号を無線により送信する。また、ユーザ端末210は、アンテナ211,212を有し、送信する信号に対してアンテナ211,212によりビームフォーミングを行う。ユーザ端末220は、基地局230へ信号を無線により送信する。また、ユーザ端末220は、アンテナ221,222を有し、送信する信号に対してアンテナ221,222によりビームフォーミングを行う。
【0024】
基地局230は、複数のアンテナを備えており、ユーザ端末210と基地局230の間の通信と、ユーザ端末220と基地局230の間の通信と、の各通信はそれぞれMIMOによって行われる。たとえば、基地局230に対して、ユーザ端末210とユーザ端末220とが同時に信号を送信する場合について説明する。
【0025】
たとえば、基地局230は、ユーザ端末210から受信する信号がV偏波面になるビームフォーミングのウェイトをユーザ端末210へ送信する。また、基地局230は、ユーザ端末220から受信する信号がH偏波面になるビームフォーミングのウェイトをユーザ端末220へ送信する。これに対して、ユーザ端末210およびユーザ端末220のそれぞれは、基地局230から送信されたウェイトによりビームフォーミングを行った信号を基地局230へ送信する。
【0026】
これにより、基地局230は、ユーザ端末210から送信された信号については、V偏波面の信号を受信するアンテナ(たとえば図3のV偏波アンテナ311〜316)により受信することができる。また、基地局230は、ユーザ端末220から送信された信号については、H偏波面の信号を受信するアンテナ(たとえば図3のH偏波アンテナ321〜326)により受信することができる。
【0027】
したがって、基地局230は、ユーザ端末210および基地局230から送信された各信号を空間多重分離した状態で受信することができる。このため、基地局230における干渉MUI(Multi−User Interference)除去処理を省くことが可能になる。また、同時に信号を受信するユーザ端末の数が2以上になっても、各ユーザ端末からの信号をV偏波面とH偏波面に分離することができるため、基地局230における干渉除去処理を低減することが可能になる。
【0028】
図3は、図2に示した基地局のアンテナの一例を簡略化して示す図である。図2に示した基地局230は、たとえば図3に示すアンテナ部300を備えている。アンテナ部300は、各アンテナ部を補強するボード部301と、給電が行われるV偏波アンテナ311〜316およびH偏波アンテナ321〜326と、を備えている。
【0029】
V偏波アンテナ311〜316は、垂直方向に配置され、V偏波面の信号を受信する。H偏波アンテナ321〜326は、水平方向に配置され、H偏波面の信号を受信する。なお、V偏波アンテナ311とH偏波アンテナ321、V偏波アンテナ312とH偏波アンテナ322、V偏波アンテナ313とH偏波アンテナ323、…が互いに交差している状態を図示しているが、各アンテナは互いに交差していなくてもよい。
【0030】
また、ここではV偏波面とH偏波面の信号を受信する各アンテナについて説明するが、各アンテナが受信する偏波面はV偏波面とH偏波面に限らない。たとえば、V偏波アンテナ311〜316およびH偏波アンテナ321〜326をそれぞれ45度回転させた構成としてもよい。また、各アンテナが受信する各偏波面は完全に直交する場合に限らず、干渉しない程度に互いに異なる各偏波面であればよい。
【0031】
(ビームフォーミングのウェイトの算出)
つぎに、推定した伝搬特性に基づいて、基地局230において受信される信号がV偏波面またはH偏波面になるビームフォーミングのウェイトを算出できることについて説明する。ここでは、図2に示したように、ユーザ端末の数を2(ユーザ端末210,220)とし、各ユーザ端末の送信アンテナをそれぞれ2本とし、各ユーザ端末のストリーム数をそれぞれ1とする。また、基地局230の受信アンテナを2本(たとえばV偏波アンテナ311とH偏波アンテナ321)とする。
【0032】
図2に示した通信システム200において、特定の周波数に着目した場合の上りリンクにおける基地局230の受信信号は下記(1)式によって示すことができる。
【0033】
y=HTx+n …(1)
【0034】
yは、基地局230における受信信号(位相及び振幅)を示すベクトルである。Hは、基地局230と各ユーザ端末の間の伝搬特性(電波伝搬路)を示す行列である。Tは、各ユーザ端末におけるビームフォーミングのウェイトを示す行列である。xは、各ユーザ端末からの送信信号を示すベクトルである。nは、基地局230と各ユーザ端末の間で生じた雑音を示すベクトルである。V偏波アンテナ311およびH偏波アンテナ321の受信信号は、たとえば下記(2)式によって示すことができる。
【0035】
【数1】

【0036】
上記(2)式において、ymは、基地局230の受信アンテナmにおける受信信号を示す行列である。具体的には、y1は、基地局230においてV偏波面の信号を受信するV偏波アンテナ311の受信信号を示している。また、y2は、基地局230においてH偏波面の信号を受信するH偏波アンテナ321の受信信号を示している。
【0037】
mknは、ユーザ端末kの送信アンテナnから基地局230の受信アンテナmへの伝搬特性である。たとえば、h111は、ユーザ端末210のアンテナ211から基地局230のV偏波アンテナ311への伝搬特性である。また、h222は、ユーザ端末220のアンテナ222から基地局230のH偏波アンテナ321への伝搬特性である。
【0038】
knは、ビームフォーミングのウェイトであり、ユーザ端末kの送信アンテナnの送信信号に乗算するウェイトである。たとえば、w11は、ユーザ端末210のアンテナ211の送信信号に乗算するウェイトである。Wknには、|wkn2=1の制限がある。xkは、ユーザ端末kの送信信号である。たとえば、x1は、ユーザ端末210の送信信号である。nmは、基地局230の受信アンテナmにおける雑音である。
【0039】
上記(2)式をユーザ端末ごとに分離すると、下記(3)式のようになる。
【0040】
【数2】

【0041】
上記(3)式においては、ユーザ端末210の送信信号は基地局230のV偏波アンテナ311で受信させ、ユーザ端末220の送信信号は基地局230のH偏波アンテナ321で受信させる場合を示している。上記(3)式において、V偏波アンテナ311の受信信号を示すy1に関する項は、下記(4)式のように展開することができる。
【0042】
【数3】

【0043】
上記(4)式により、ユーザ端末210からの送信信号のH偏波面の応答が基地局230において0となるウェイトは、下記(5)式によって算出することができる。
【0044】
0=h21111+h21212 …(5)
【0045】
同様に、ユーザ端末220からの送信信号のV偏波面の応答が基地局230において0となるウェイトは下記(6)式によって算出することができる。
【0046】
0=h12121+h12222 …(6)
【0047】
上記(5)式および(6)式において、主要パラメータはh211,h212,h121,h122の4つであり、変数はw11,w12,w21,w22の4つである。このため、上記(5)式および(6)式を満たすw11,w12,w21,w22を算出することができる。そして、算出したw11,w12をユーザ端末210におけるビームフォーミングに用い、算出したw21,w22をユーザ端末220におけるビームフォーミングに用いる。
【0048】
たとえば、ユーザ端末210は、アンテナ211から送信する信号にw11を乗算するとともに、アンテナ212から送信する信号にw12を乗算する。また、ユーザ端末220は、アンテナ221から送信する信号にw21を乗算するとともに、アンテナ222から送信する信号にw22を乗算する。
【0049】
これにより、ユーザ端末210からの送信信号をV偏波面で基地局230によって受信させ、ユーザ端末220からの送信信号をH偏波面で基地局230によって受信させることができる。このため、ユーザ端末210からの送信信号をV偏波アンテナ311によって受信させ、ユーザ端末220からの送信信号をH偏波アンテナ321によって受信させることができるため、各送信信号を空間多重分離した状態で受信することができる。
【0050】
ここでは、図2,3に示したように、ユーザ端末の数を2とし、各ユーザ端末の送信アンテナをそれぞれ2本とし、各ユーザ端末のストリーム数をそれぞれ1とし、基地局230の受信アンテナを2本とする例について説明した。つぎに、他の例として、ユーザ端末の数を4とし、各ユーザ端末の送信アンテナをそれぞれ3本とし、各ユーザ端末のストリーム数をそれぞれ1とし、基地局230の受信アンテナを4本とする場合について説明する。基地局230の受信アンテナは、図3に示したV偏波アンテナ311,312およびH偏波アンテナ321,322であるとする。
【0051】
この場合は、上記(2)式をユーザ端末ごとに分離すると下記(7)式のようになる。
【0052】
y=HTx+n={UE1}+{UE2}+{UE3}+{UE4}+n …(7)
【0053】
ここで、奇数番目のユーザ端末(UE1とUE3)からの送信信号をV偏波面で受信し、偶数番目のユーザ端末(UE2とUE4)からの送信信号をH偏波面で受信する場合について説明する。また、基地局230における、V偏波アンテナ311における受信信号をy1とし、V偏波アンテナ312における受信信号をy2とし、H偏波アンテナ321における受信信号をy3とし、H偏波アンテナ322における受信信号をy4とする。この場合は、y1,y2は、下記(8)式によって示すことができる。
【0054】
【数4】

【0055】
ここで、y1,y2に対して直交する偏波面になるy3,y4の干渉を低減させるウェイトは、下記(9)式によって算出することができる。下記(9)式において、干渉電力の大きさを評価するために、各アンテナの振幅値を電力へ変更する。
【0056】
【数5】

【0057】
上記(9)式において、主要パラメータがh311,h312,h313,h411,h412,h413の6つであり、変数はw11,w12,w13の3つであるため、主要の干渉要因となる3要素をキャンセルすることができる。なお、基地局230において、V偏波アンテナ311,312およびH偏波アンテナ321,322がアレイアンテナとなっている場合は、隣接するアンテナ間の相関が高いために、下記(10)式のような関係が成り立つ。
【0058】
【数6】

【0059】
ここで、δ/δλは隣接アンテナをアンテナ相関が高い範囲内でわずかにずらすことを示し、Δは伝搬の主要成分である第一項(hmkn)に対して非常に小さい影響であることを示している。また、mとm+1は隣接アンテナであることを示している。上記(9)式は、上記(10)式により下記(11)式のように置き換えることができる。
【0060】
【数7】

【0061】
ここで、主要パラメータがh311,h312,h313の3つであり、微小パラメータがΔ311,Δ312,Δ313の3つであり、変数がw11,w12,w13の3つであるため、微小パラメータを無視すれば主要成分をキャンセルすることができる。このように、V偏波アンテナ311,312およびH偏波アンテナ321,322がアレイアンテナとなっている場合は、直交偏波間の干渉をほとんど抑えることが可能である。
【0062】
干渉を抑えた場合のw11,w12,w13をそれぞれW11,W12,W13とすると、上記(8)式は下記(12)式のようになる。
【0063】
【数8】

【0064】
上記(12)式において、gmkは、ユーザ端末kから基地局のアンテナmへの伝搬パスであり、伝搬特性を示すhmknと、ビームフォーミングのウェイトを示すwknと、を含むパラメータである。V偏波面となるy1,y4については、奇数番目のユーザ端末(UE1とUE3)の各送信信号(x1とx3)が混信している状態である。
【0065】
ただし、基地局230で受信した際に伝搬要素gmkについて既知ならば、ML(最尤法)推定復調やMMSE(最小二乗誤差法)復調などでそれぞれの信号を分離することが可能となる。また、この信号の分離復号処理において、各ユーザ端末は少なくともV偏波面とH偏波面とで分離されているため、分離復号処理が大幅に低減される。
【0066】
つぎに、上記(11)式を満たすw11,w12,w13の算出の一例について説明する。上記(10)式の条件を利用して、ウェイトによる影響が小さい項をσ(Δ)と置き換える(hmkn>>Δijk)と、下記(13)式のようになる。
【0067】
【数9】

【0068】
つぎに、下記(14)式のように、上記(10)式において最も影響が大きい第一項(hmkn)を最小化するw11,w12,w13を算出する。
【0069】
【数10】

【0070】
ここで、下記(15)式のように、w11,w12,w13に係る係数h311,h312,h313について、振幅の大きさによってソートする。なお、係数h311,h312,h313は、振幅と位相を持つベクトルである。たとえば、係数h311は、a1jθ1のように分解することができる。
【0071】
【数11】

【0072】
上記(15)式によって、係数h311,h312,h313が|h311|>|h312|>|h313|のようにソートされたとする。ここで、表記を簡略化するために、パラメータpを下記(16)式のように定義する。
【0073】
【数12】

【0074】
1>b2>b3と置き換えると、上記(11)式は下記(17)式のようになる。
【0075】
【数13】

【0076】
また、ビームフォーミングのウェイトについての制限|wkn2=1により、w1n=ejαnとすると、上記(17)式は下記(18)式のようになる。
【0077】
【数14】

【0078】
ウェイトパラメータαjの値によりベクトルの向きが変えられるため、以下のような指標に置き換えて上記(18)式の評価が可能になる。すなわち、三角形の成立条件が成り立つならば、下記(19)式を満たすパラメータが存在する。
【0079】
【数15】

【0080】
三角形の成立条件により、b1≦b2+b3とすると、α1=−Ψ1として上記(19)式を満たす唯一解(α2,α3)が得られる。一方、b1≦b2+b3(三角形の成立条件がない)とすると、α1=−Ψ1として、b1のベクトルに対してb2,b3を逆方向にして加算することで上記(19)式の左辺を(b1−b2−b3)にする最小解(α2=−Ψ2+π,α3=−Ψ3+π)が得られる。なお、各ユーザ端末のアンテナ構成によってはウェイトパラメータが4つ以上の場合もあり得る。この場合は、たとえば、上記(11)式は下記(20)式のようになる。ただし、b1>b2>b3>b4とする。
【0081】
【数16】

【0082】
下記(21)式の条件を満たす場合は、b1のベクトルに対してb2,b3,b4を逆方向にして加算することで、上記(20)式の解を(b1−b2−b3−b4)にする最小解(α2,α3,α4)を得ることができる。
【0083】
1>b2+b3+b4 …(21)
【0084】
上記(21)式の条件を満たさない場合は、α1=−Ψ1α4=−Ψ4+πとする。この場合は、上記(20)式は下記(22)式のようになる。
【0085】
【数17】

【0086】
ここで、(b1−b4)>b2であれば、上記(21)式の背反条件であるb1<b2+b3+b4であるので、三角形の成立条件(b1−b4)<b2+b3が成立する。このため、上記(11)式のアルゴリズムの最小値0とする解を唯一求められる。
【0087】
これに対して、(b1−b4)<b2であれば、b1>b2>b3>b4により、三角形の成立条件b2<(b1−b4)+b3=b1+(b3−b4)が成立する。このため、上記(11)式のアルゴリズムの最小値0とする解を唯一求められる。このように、パラメータが増えた場合も上記(11)式の解を得ることができる。
【0088】
(通信システムの動作の一例)
図4は、図2に示した通信システムの動作の一例を示すシーケンス図である。ここではユーザ端末210と基地局230との通信について説明するが、ユーザ端末220と基地局230との通信についても同様である。まず、ユーザ端末210が基地局230へ参照信号を送信する(ステップS401)。つぎに、基地局230が、ステップS401によって送信された参照信号に基づいて伝搬特性を推定する(ステップS402)。
【0089】
つぎに、基地局230が、ステップS402によって推定された伝搬特性に基づいて、基地局230によって受信される信号がV偏波面またはH偏波面になるビームフォーミングのウェイトを算出する(ステップS403)。つぎに、基地局230が、ユーザ端末210から基地局230へのアップリンクに対して無線リソースを割り当てるスケジューリングを行う(ステップS404)。
【0090】
つぎに、基地局230が、ステップS404のスケジューリングによって割り当てられた無線リソースを示す割当情報と、ステップS403によって算出されたウェイトと、をユーザ端末210へ送信する(ステップS405)。つぎに、ユーザ端末210が、ステップS405によって送信されたウェイトを、ユーザ端末210から基地局230へ送信する送信信号のビームフォーミングに適用する(ステップS406)。
【0091】
つぎに、ユーザ端末210が、ステップS405によって送信された割当情報が示す無線リソースによって送信信号(たとえばユーザデータ)を基地局230へ送信し(ステップS407)、一連の動作を終了する。基地局230は、ステップS407によって送信された送信信号を、ステップS404のスケジューリングの結果に基づいて復号する。
【0092】
(基地局の構成)
図5は、図2に示した基地局の構成の一例を示す図である。図5に示すように、基地局230は、V偏波アンテナ511と、H偏波アンテナ512と、V偏波デュプレクサ521と、H偏波デュプレクサ522と、V偏波分離部531と、H偏波分離部532と、ULデータ受信部541,542と、伝搬路トレーニング部550と、ULスケジューラ560と、DLデータ生成部570と、信号送信部580と、を備えている。
【0093】
V偏波アンテナ511は、V偏波面の信号を受信し、受信した信号をV偏波デュプレクサ521へ出力する。また、V偏波アンテナ511は、V偏波デュプレクサ521から出力されたV偏波面の信号をユーザ端末(ユーザ端末210やユーザ端末220)へ送信する。H偏波アンテナ512は、H偏波面の信号を受信し、受信した信号をH偏波デュプレクサ522へ出力する。また、H偏波アンテナ512は、H偏波デュプレクサ522から出力されたH偏波面の信号をユーザ端末へ送信する。
【0094】
V偏波デュプレクサ521は、V偏波アンテナ511によって受信されたV偏波面の信号をV偏波分離部531へ出力するとともに、信号送信部580から出力されたV偏波面の信号をV偏波アンテナ511へ出力する。H偏波デュプレクサ522は、H偏波アンテナ512によって受信されたH偏波面の信号をH偏波分離部532へ出力するとともに、信号送信部580から出力されたH偏波面の信号をH偏波アンテナ512へ出力する。
【0095】
V偏波分離部531は、V偏波デュプレクサ521から出力された信号を、参照信号とUL(Up Link)データとに分離する。V偏波分離部531は、ULデータをULデータ受信部541へ出力するとともに、参照信号を伝搬路トレーニング部550へ出力する。H偏波分離部532は、H偏波デュプレクサ522から出力された信号を、参照信号とULデータとに分離する。H偏波分離部532は、ULデータをULデータ受信部542へ出力するとともに、参照信号を伝搬路トレーニング部550へ出力する。
【0096】
ULデータ受信部541は、V偏波分離部531から出力されたULデータを復号する。ULデータ受信部542は、H偏波分離部532から出力されたULデータを復号する。なお、ULデータ受信部541およびULデータ受信部542における復号は、たとえばULスケジューラ560において過去に行ったスケジューリング結果に基づいて行う。
【0097】
伝搬路トレーニング部550は、V偏波分離部531およびH偏波分離部532から出力された各参照信号をトレーニング信号として、各ユーザ端末と基地局230との間の伝搬特性を推定する。また、伝搬路トレーニング部550は、基地局230へ信号を送信するユーザ端末ごとの伝搬特性を推定する。
【0098】
たとえば、参照信号のパターンがユーザ端末ごとにあらかじめ定められており、伝搬路トレーニング部550は、取得した参照信号のパターンに基づいて送信元のユーザ端末を判定する。また、伝搬路トレーニング部550は、取得した参照信号の振幅および伝搬路の変化に基づいて伝搬特性を推定する。伝搬路トレーニング部550は、推定した伝搬特性を示す伝搬特性推定値(伝搬路推定値)をULスケジューラ560へ出力する。
【0099】
ULスケジューラ560は、ユーザ端末ごとに、ユーザ端末から基地局230へのアップリンクのスケジューリングを行う。具体的には、ULスケジューラ560は、伝搬特性平均化部561と、算出部562と、V偏波スケジューラ563と、H偏波スケジューラ564と、選択周期設定部565と、スケジューラ情報生成部566と、を備えている。
【0100】
伝搬特性平均化部561は、選択周期設定部565から通知される選択周期ごとに、伝搬路トレーニング部550から出力される伝搬特性推定値の平均化を行う。これにより、伝搬特性推定値の精度を向上させることができる。伝搬特性平均化部561は、平均化した伝搬特性推定値を算出部562へ出力する。
【0101】
算出部562は、伝搬特性平均化部561から伝搬特性推定値が出力されると、出力された伝搬特性推定値に基づいて、ユーザ端末へ送信する送信ウェイトとしてV偏波ウェイトまたはH偏波ウェイトを算出する。V偏波ウェイトは、基地局230により受信される信号がV偏波面になるビームフォーミングのウェイトである。H偏波ウェイトは、基地局230により受信される信号がH偏波面になるビームフォーミングのウェイトである。
【0102】
算出部562は、ユーザ端末へ送信するウェイトとしてV偏波ウェイトを算出した場合は、伝搬特性推定値およびV偏波ウェイトをV偏波スケジューラ563へ出力する。また、算出部562は、ユーザ端末へ送信するウェイトとしてH偏波ウェイトを算出した場合は、伝搬特性推定値およびH偏波ウェイトをH偏波スケジューラ564へ出力する。ユーザ端末へ送信するウェイトとして算出部562が算出する偏波ウェイトは、ユーザ端末ごとにあらかじめ設定してもよいし、伝搬特性に基づいて選択(図6参照)してもよい。
【0103】
V偏波スケジューラ563は、算出部562から出力された伝搬特性推定値に基づいて、ユーザ端末から基地局230へのアップリンクに対して無線リソースを割り当てる。V偏波スケジューラ563は、割り当て結果を示す割当情報をスケジューラ情報生成部566へ出力する。また、V偏波スケジューラ563は、算出部562から出力されたV偏波ウェイトをスケジューラ情報生成部566へ出力する。
【0104】
H偏波スケジューラ564は、算出部562から出力された伝搬特性推定値に基づいて、ユーザ端末から基地局230へのアップリンクに対して無線リソースを割り当てる。H偏波スケジューラ564は、割り当て結果を示す割当情報をスケジューラ情報生成部566へ出力する。また、H偏波スケジューラ564は、算出部562から出力されたH偏波ウェイトをスケジューラ情報生成部566へ出力する。
【0105】
また、V偏波スケジューラ563およびH偏波スケジューラ564は、伝搬特性推定値に基づいてユーザ端末と基地局230との間の伝搬路の変動(たとえばドップラー周波数Fd)を算出するようにしてもよい。たとえば、V偏波スケジューラ563およびH偏波スケジューラ564は、算出したドップラー周波数に基づいて、ユーザ端末に割り当てる偏波面の選択周期を決定し、決定した周期を選択周期設定部565へ通知する。
【0106】
スケジューラ情報生成部566は、V偏波スケジューラ563から出力された割当情報とV偏波ウェイトを含むスケジューラ情報を生成する。また、スケジューラ情報生成部566は、H偏波スケジューラ564から出力された割当情報とH偏波ウェイトを含むスケジューラ情報を生成する。スケジューラ情報生成部566は、生成したスケジューラ情報を信号送信部580へ出力する。
【0107】
DLデータ生成部570は、たとえば基地局230の送信バッファからデータを読み出してDL(Down Link)データを生成し、生成したDLデータを信号送信部580へ出力する。信号送信部580は、スケジューラ情報生成部566からのスケジューラ情報と、DLデータ生成部570からのDLデータと、を多重する。信号送信部580は、多重した信号をV偏波デュプレクサ521とH偏波デュプレクサ522へ出力する。
【0108】
なお、ULデータ受信部541、ULデータ受信部542、伝搬路トレーニング部550、ULスケジューラ560、DLデータ生成部570および信号送信部580は、たとえばDSPなどの演算回路によって実現することができる。
【0109】
上記の構成において、各ユーザ端末からの各送信信号がV偏波面とH偏波面に割り振られ、V偏波アンテナ511およびH偏波アンテナ512のうちの偏波面に応じたアンテナによって受信される。これにより、ULデータ受信部541とULデータ受信部542には、互いに異なるユーザ端末からのULデータが入力され、ULデータ受信部541とULデータ受信部542の復号処理を独立して行うことができる。また、ULデータ受信部541とULデータ受信部542のそれぞれにおいて分離するユーザ端末の数が、たとえば半減する。このため、復号処理量を低減することができる。
【0110】
また、ULスケジューラ560は、V偏波アンテナ311およびV偏波アンテナ312による各通信の各スケジューリングをそれぞれ行う各スケジューラ(V偏波スケジューラ563およびH偏波スケジューラ564)を備えている。そして、各ユーザ端末のアップリンクがV偏波面とH偏波面に割り振られるため、V偏波スケジューラ563およびH偏波スケジューラ564は互いに異なるユーザ端末のスケジューリングを行う。
【0111】
これにより、V偏波スケジューラ563およびH偏波スケジューラ564のスケジューリング処理を独立して行うことができる。また、V偏波スケジューラ563およびH偏波スケジューラ564においてスケジューリングを行うユーザ端末の数が、たとえば半減する。このため、スケジューリング処理量を低減することができる。
【0112】
図6は、図5に示した算出部の処理の一例を示す図である。図6において、図5に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図6に示すように、図5に示した基地局230の算出部562は、V偏波ウェイト算出部611と、H偏波ウェイト算出部612と、V偏波SIR算出部621と、H偏波SIR算出部622と、偏波選択部630と、を備えている。
【0113】
V偏波ウェイト算出部611は、伝搬特性平均化部561から出力された伝搬特性推定値に基づいてV偏波ウェイトを算出し、算出したV偏波ウェイトおよび伝搬特性推定値をV偏波SIR算出部621へ出力する。H偏波ウェイト算出部612は、伝搬特性平均化部561から出力された伝搬特性推定値に基づいてH偏波ウェイトを算出し、算出したH偏波ウェイトおよび伝搬特性推定値をH偏波SIR算出部622へ出力する。
【0114】
V偏波SIR算出部621は、V偏波ウェイト算出部611から出力された伝搬特性推定値に基づいてV偏波SIR(伝搬品質)を算出し、算出したV偏波SIRおよびV偏波ウェイトを偏波選択部630へ出力する。V偏波SIRは、V偏波ウェイトに対応するSIR(Signal to Interference Ratio)である。すなわち、V偏波SIRは、ユーザ端末のビームフォーミングにV偏波ウェイトを用いることで、基地局230によって受信される信号がV偏波面になるときの信号のSIRである。
【0115】
H偏波SIR算出部622は、H偏波ウェイト算出部612から出力された伝搬特性推定値に基づいてH偏波SIR(伝搬品質)を算出し、算出したH偏波SIRおよびH偏波ウェイトを偏波選択部630へ出力する。H偏波SIRは、H偏波ウェイトに対応するSIRである。すなわち、H偏波SIRは、ユーザ端末のビームフォーミングにH偏波ウェイトを用いることで、基地局230によって受信される信号がH偏波面になるときの信号のSIRである。このように、V偏波SIR算出部621およびH偏波SIR算出部622(品質算出部)は、各ウェイトに対応する各伝搬品質を算出する。
【0116】
偏波選択部630は、V偏波SIR算出部621から出力されたV偏波ウェイトと、H偏波SIR算出部622から出力されたH偏波ウェイトと、のうちのユーザ端末へ送信するウェイトを選択する。具体的には、偏波選択部630は、V偏波SIR算出部621から出力されたV偏波SIRと、H偏波SIR算出部622から出力されたH偏波SIRと、に基づいてウェイトを選択する。
【0117】
たとえば、偏波選択部630は、V偏波SIRがH偏波SIRより高い場合は、V偏波ウェイトをユーザ端末へ送信するウェイトとして選択する。また、偏波選択部630は、V偏波SIRがH偏波SIRより低い場合は、H偏波ウェイトをユーザ端末へ送信するウェイトとして選択する。また、偏波選択部630は、V偏波SIRとH偏波SIRが同じ場合は、たとえばV偏波面とH偏波面のうちのあらかじめ定められた偏波面を選択する。
【0118】
偏波選択部630は、V偏波スケジューラ563とH偏波スケジューラ564のうちの、選択したウェイトに対応する偏波のスケジューラへ、選択したウェイトと伝搬特性推定値を出力する。たとえば、偏波選択部630は、V偏波ウェイトを選択した場合は、V偏波スケジューラ563へV偏波ウェイトと伝搬特性推定値を出力する。また、偏波選択部630は、H偏波ウェイトを選択した場合は、H偏波スケジューラ564へH偏波ウェイトと伝搬特性推定値を出力する。
【0119】
このように、V偏波ウェイト算出部611およびH偏波ウェイト算出部612によってV偏波ウェイトおよびH偏波ウェイトを算出する。また、V偏波SIR算出部621およびH偏波SIR算出部622(品質算出部)によってV偏波ウェイトおよびH偏波ウェイトに対応するV偏波SIRおよびH偏波SIRを算出する。
【0120】
また、V偏波SIRおよびH偏波SIRに基づいて、偏波選択部630によってV偏波ウェイトおよびH偏波ウェイトのうちのユーザ端末へ送信するウェイトを選択する。これにより、V偏波面とH偏波面のうちの伝搬品質の高い偏波面をユーザ端末へ割り当てるとともに、割り当てた偏波面で基地局230に送信信号を受信させるためのウェイトをユーザ端末へ送信することができる。このため、通信品質の向上および基地局230における信号処理量の低減を図ることができる。
【0121】
(伝搬品質の算出)
伝搬品質としてSIRを算出する方法の一例について説明する。ここでは、表記を簡単にするために、送受信1×1のSISO(Single Input and Single Output)構成を例として説明する。受信アンテナへの入力をy、伝搬特性をh、パイロットチャネルをp、雑音をnとすると、下記(23)式のようになる。
【0122】
y=hp+n …(23)
【0123】
高精度にSIRを算出するためには、伝搬路の相関が高い状態(伝搬路変動が少ない時間や周波数)でパイロットチャネルのパイロットパターンを連続して受信するとよい。たとえば、時間方向にT回連続してパイロットパターンを送信する場合は、上記(23)式を下記(24)式のように示すことができる。
【0124】
y=hp+n y=[y1,y2,…,y3T …(24)
【0125】
上記(24)式においては時間方向にT回連続してパイロットパターンを送信する場合を示したが、周波数方向に連続してパイロットパターンを送信する場合も同様である。下記(25)式のように、基地局230においてパイロットパターンの逆パターンを乗算することで伝搬特性推定値^h(チャネル推定値)を算出できる。
【0126】
【数18】

【0127】
上記(25)式において、E<n>は、振幅次元の雑音を平均化した値であり、平均数が大きいと0に収束する。このように、雑音に影響されにくいチャネル推定を行うとよい。なお、このチャネル推定により得られた伝搬特性推定値^hは、既知のパイロットパターンに対する伝搬路の利得を示すため、受信信号の大きさを示す。
【0128】
SIRは、上記(25)式を電力次元に変換し、下記(26)式によって算出することができる。
【0129】
【数19】

【0130】
上記(25)式において、分子は信号の電力を示しており、分母は全体の受信電力から信号の電力を引き算して得られる雑音の電力を示している。このように、SIRは、受信信号とその伝搬特性推定値^hに基づいて算出することができる。
【0131】
(ウェイト設定自由度がある場合のSIR改善)
基地局230が同じ偏波の信号を受信するアンテナを複数有する場合は、V偏波ウェイトとH偏波ウェイトの算出によって送信側のウェイト設定を行った後に、さらに受信側のウェイト設定の自由度がある。たとえば、水平方向に複数のアンテナを持つ場合は、スペースダイバーシティ受信を行い、SIRを改善することが可能である。同じ偏波のアンテナがR本ある場合は、上記(23)式を下記(27)式のように示すことができる。
【0132】
y=hd+n y=[y1,y2,…,yRT …(27)
【0133】
あるアンテナから送信された信号dが、このR本のアンテナによって受信されるとする。この場合は、一つのアンテナで受信した信号を基準に、残りの信号を合成することができる。この場合はウェイト設定自由度がR−1である。SIRを向上させる合成方法には様々な方法があるが、一般的な方法としてMRC(Maximum Ratio Combining)合成がある。MRC合成においては、伝搬特性推定値^hを用いて下記(28)式のように信号を復号する。
【0134】
【数20】

【0135】
上記(28)式により、SIRは下記(29)式のように改善する。
【0136】
【数21】

【0137】
(ユーザ端末の構成)
図7は、ユーザ端末の構成の一例を示す図である。図7においてはユーザ端末210の構成について説明するが、ユーザ端末220の構成についても同様である。図7に示すように、ユーザ端末210は、V偏波アンテナ711と、V偏波アンテナ712と、デュプレクサ721と、デュプレクサ722と、信号分離部730と、DLデータ受信部740と、スケジューラ情報抽出部750と、ULデータ生成部760と、ウェイト乗算部770と、参照信号生成部780と、信号送信部790と、を備えている。
【0138】
V偏波アンテナ711は、V偏波面の信号を受信し、受信した信号をデュプレクサ721へ出力する。また、V偏波アンテナ711は、デュプレクサ721から出力された信号を基地局230へ送信する。V偏波アンテナ712は、V偏波面の信号を受信し、受信した信号をデュプレクサ722へ出力する。また、V偏波アンテナ712は、デュプレクサ722から出力されたH偏波面の信号を基地局230へ送信する。
【0139】
デュプレクサ721は、V偏波アンテナ711によって受信された信号を信号分離部730へ出力する。また、デュプレクサ721は、信号送信部790から出力された信号をV偏波アンテナ711へ出力する。デュプレクサ722は、V偏波アンテナ712によって受信された信号を信号分離部730へ出力する。また、デュプレクサ722は、信号送信部790から出力された信号をV偏波アンテナ712へ出力する。
【0140】
信号分離部730は、デュプレクサ721から出力された信号を、DLデータとスケジューラ情報とに分離する。信号分離部730は、分離したDLデータをDLデータ受信部740へ出力する。また、信号分離部730は、分離したスケジューラ情報をスケジューラ情報抽出部750へ出力する。DLデータ受信部740は、信号分離部730から出力されたDLデータを復号する。
【0141】
スケジューラ情報抽出部750は、信号分離部730から出力されたスケジューラ情報から、ユーザ端末210を宛先とするスケジューラ情報を抽出する。スケジューラ情報抽出部750は、抽出したスケジューラ情報に含まれる割当情報をULデータ生成部760へ出力する。スケジューラ情報抽出部750は、抽出したスケジューラ情報に含まれるビームフォーミングのウェイトをウェイト乗算部770へ通知する。
【0142】
ULデータ生成部760は、スケジューラ情報抽出部750から出力された割当情報が示すフォーマットに従ってユーザ端末210の送信バッファから必要な量のデータを読み出し、読み出したデータを符号化することでULデータを生成する。ULデータ生成部760は、生成したULデータをウェイト乗算部770へ出力する。
【0143】
ウェイト乗算部770は、ULデータ生成部760から出力されたULデータから、V偏波アンテナ711とV偏波アンテナ712にそれぞれ対応する2系統のUL信号を生成する。そして、ウェイト乗算部770は、生成した各UL信号に対して、スケジューラ情報抽出部750から通知されたウェイトを乗算する。ウェイト乗算部770は、ウェイトを乗算した各UL信号を信号送信部790へ出力する。参照信号生成部780は、あらかじめ定められたパターンの参照信号を生成して信号送信部790へ出力する。
【0144】
信号送信部790は、参照信号生成部780から出力された参照信号を、デュプレクサ721およびデュプレクサ722へ出力する。これにより、参照信号が、V偏波アンテナ711およびV偏波アンテナ712によって基地局230へ送信される。また、信号送信部790は、ウェイト乗算部770から出力された各UL信号をそれぞれデュプレクサ721およびデュプレクサ722へ出力する。これにより、V偏波アンテナ711に対応するUL信号がV偏波アンテナ711から基地局230へ送信され、V偏波アンテナ712に対応するUL信号がV偏波アンテナ712から基地局230へ送信される。
【0145】
なお、DLデータ受信部740、スケジューラ情報抽出部750、ULデータ生成部760、ウェイト乗算部770、参照信号生成部780および信号送信部790は、たとえばDSPなどの演算回路によって実現することができる。
【0146】
(ビームフォーミングのウェイトの算出の変形例)
図8は、基地局とユーザ端末との間の各パスと偏波面を示す図である。図8に示すように、ユーザ端末210から基地局230へ送信される信号は、通常、マルチパスとなる。ここでは、ユーザ端末210から基地局230へ送信される信号のマルチパスが、パスpath1〜path4であるとする。
【0147】
ユーザ端末210からの信号は、パスpath1〜path4においてそれぞれ異なる反射を経て基地局230に到達する。このため、ユーザ端末210からの信号は、パスごとに異なる偏波振動を持つ。偏波面811〜814は、それぞれパスpath1〜path4における信号の偏波面である。偏波面811〜814において、横軸はH偏波面の振幅を示し、縦軸はV偏波面の振幅を示している。
【0148】
図8に示す状態においては、V偏波面またはH偏波面に最も近い偏波面812(V偏波面とほぼ同じ)となるパスpath2の方向にユーザ端末210がビームを絞って送信することで、基地局230において受信する信号をV偏波面にすることができる。このように、特定のパスに絞ってユーザ端末210がビームフォーミングを行うことで、基地局230において受信する信号の偏波面を制御することができる。
【0149】
基地局230は、ユーザ端末210におけるビームフォーミングのウェイトを示す複数のプリコーディングウェイトを取得する。複数のプリコーディングウェイトは、ユーザ端末210から基地局230への複数のパス(たとえばパスpath1〜path4)に対応するビームフォーミングのウェイトを示している。複数のプリコーディングウェイトは、たとえば基地局230のメモリにあらかじめ記憶されている。
【0150】
基地局230は、取得した複数のプリコーディングウェイトのうちの、基地局230において受信される信号がV偏波面またはH偏波面に最も近い偏波面となるプリコーディングウェイトを選択する。そして、基地局230は、選択したプリコーディングウェイトをユーザ端末210へ送信する。ユーザ端末210は、基地局230から受信したプリコーディングウェイトによってビームフォーミングを行った信号を基地局230へ送信する。
【0151】
図9は、図5に示した算出部の処理の他の一例を示す図である。図9において、図5に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図9に示すように、図5に示した基地局230の算出部562は、プリコーディング応答算出部911,912,…と、直交性比較部920と、プリコーディング決定部930と、SIR算出部940と、を備えている。
【0152】
プリコーディング応答算出部911,912,…は、複数の1,2,…番目のプリコーディングウェイトにそれぞれ対応している。たとえば、プリコーディング応答算出部911は、1番目のプリコーディングウェイトに対して伝搬特性推定値を乗算することで、1番目のプリコーディングウェイトにおける受信信号の応答値を算出する。同様に、プリコーディング応答算出部912,…は、それぞれ2,…番目のプリコーディングウェイトにおける受信信号の応答値を算出する。プリコーディング応答算出部911,912,…は、算出した応答値を直交性比較部920へ出力する。
【0153】
直交性比較部920は、プリコーディング応答算出部911,912,…から出力された各応答値の直交性を比較する。直交性比較部920は、直交性の比較結果をプリコーディング決定部930へ出力する。直交性比較部920における直交性の比較については後述する。
【0154】
プリコーディング決定部930は、直交性比較部920から出力された比較結果に基づいて、ユーザ端末へ送信するプリコーディングウェイトを決定する。具体的には、プリコーディング決定部930は、受信信号の応答値がH偏波面またはV偏波面のいずれかに最も近くなるプリコーディングウェイトを決定する。
【0155】
また、プリコーディング決定部930は、V偏波面とH偏波面のうちの、決定したプリコーディングにおける受信信号の応答値が近い偏波面を、プリコーディングウェイトに対応する偏波面として決定する。プリコーディング決定部930は、決定したプリコーディングウェイトおよび偏波面と、伝搬特性推定値と、をSIR算出部940へ出力する。
【0156】
SIR算出部940は、プリコーディング決定部930から出力されたプリコーディングウェイトに対応するSIRを算出する。プリコーディングウェイトに対応するSIRは、ユーザ端末のビームフォーミングにプリコーディングウェイトを用いる場合のSIRである。SIR算出部940は、V偏波スケジューラ563とH偏波スケジューラ564のうちの、プリコーディングウェイトに対応する偏波のスケジューラへ、算出したSIR、プリコーディングウェイトおよび伝搬特性推定値を出力する。
【0157】
たとえば、SIR算出部940は、プリコーディング決定部930によって応答値がV偏波面に近いプリコーディングウェイトが選択された場合は、V偏波スケジューラ563へSIR、プリコーディングウェイトおよび伝搬特性推定値を出力する。また、SIR算出部940は、プリコーディング決定部930によって応答値がH偏波面に近いプリコーディングウェイトが選択された場合は、H偏波スケジューラ564へSIR、プリコーディングウェイトおよび伝搬特性推定値を出力する。
【0158】
図9の直交性比較部920においては、たとえば下記(30)式に示すアルゴリズムによって直交性の比較を行う。
【0159】
【数22】

【0160】
上記(30)式において、rnH(Pi)は、i番目のプリコーディングウェイトをビームフォーミングに用いた場合の、基地局230のH偏波アンテナ321〜326のうちのn番目のアンテナの受信信号を示している。rnV(Pi)は、i番目のプリコーディングウェイトをビームフォーミングに用いた場合の、基地局230のV偏波アンテナ311〜316のうちのn番目のアンテナの受信信号を示している。
【0161】
ここでは、プリコーディングウェイトはX個(たとえば64個)あるとする。また、V偏波面の信号とH偏波面の信号を受信するアンテナがそれぞれN本(たとえば6本)あるとする。上記(30)式によって、i番目のプリコーディングウェイトを用いた場合の偏波面ごとの信号の合計電力を求め、(H偏波面の総電力)/(V偏波面の総電力)と(V偏波面の総電力)/(H偏波面の総電力)のうちの最も大きい値が算出される。
【0162】
算出されたプリコーディングウェイト(i=x)と、分子が示す偏波面(H偏波面またはV偏波)が、選択すべきプリコーディングウェイトと、基地局230において受信される信号の偏波面となる。なお、プリコーディングウェイトについては、適用可能なもの全ての応答値を算出してもよいし、一定の角度間隔のビームに対応するプリコーディングウェイトのみの応答値を算出してもよい。
【0163】
このように、伝搬特性推定値に対して所定の複数のプリコーディングウェイトを乗算し、乗算結果がV偏波面とH偏波面のいずれかに最も近くなるプリコーディングウェイトを、ユーザ端末へ送信するウェイトとして算出する。これにより、プリコーディングウェイトの選択によって最適な偏波面を決定することができる。また、複数のプリコーディングウェイトから選択したプリコーディングウェイトをユーザ端末へ送信すればよいため、ユーザ端末へ送信するウェイトを決定するための処理を低減することができる。
【0164】
(選択周期の設定例1)
図10は、参照信号の送信周期の設定動作の一例を示すシーケンス図である。ここでは、ユーザ端末210における送信周期の設定動作について説明するが、ユーザ端末220における送信周期の設定動作についても同様である。まず、基地局230が、ユーザ端末210へ周期設定要求を送信する(ステップS1001)。つぎに、ユーザ端末210が、ステップS1001によって送信された周期設定要求に基づいて、参照信号の送信周期を設定する(ステップS1002)。
【0165】
つぎに、ユーザ端末210が、ステップS1002によって参照信号の送信周期を設定したことを示す設定完了報告を基地局230へ送信し(ステップS1003)、一連の設定動作を終了する。ユーザ端末210の参照信号生成部780は、ステップS1002によって設定された送信周期によって参照信号を出力する。
【0166】
基地局230の選択周期設定部565は、ステップS1001によって送信した周期設定要求が示す周期を設定する。これにより、ステップS1002によって設定された送信周期によって、ユーザ端末210から基地局230へ参照信号が送信されるとともに、基地局230においてユーザ端末へ送信するウェイトが選択される。これにより、基地局230の算出部562において、ユーザ端末210から参照信号が送信される周期ごとに、ユーザ端末210へ送信するウェイトを算出することができる。
【0167】
なお、たとえば3GPP(3rd Generation Partnership Project)の規格においては、周期設定要求はRRC Connection Configuraionの一部として送信される。また、設定完了報告はRRC Connection Configuraion Completeの一部として送信される。また、周期設定要求や設定完了報告は、たとえば、基地局230とユーザ端末210との間における通信の制御を司る上位レイヤ情報として、DLデータやULデータの一部として送受信される。
【0168】
(選択周期の設定例2)
図11は、偏波変動に基づく選択周期の設定を示す図である。図11に示すテーブル1100において、符号1110は、ユーザ端末(ユーザ端末210,220)と基地局230との間のドップラー周波数Fdを示している。符号1120は、ユーザ端末の移動速度を示している。符号1110,1120に示すように、ユーザ端末の移動速度が大きいほど、ユーザ端末と基地局230との間のドップラー周波数Fdが大きくなる。
【0169】
符号1130は、ドップラー周波数Fdに基づくウェイトの選択周期を示している。符号1130に示すウェイトの選択周期は、ドップラー周波数Fdが大きくなるほど小さい。たとえば、符号1130に示すウェイトの選択周期は、符号1120に示すユーザ端末の移動速度において、平均的な建物の全長である8mを移動するためにかかる時間である。
【0170】
V偏波スケジューラ563およびH偏波スケジューラ564のそれぞれは、平均化された伝搬特性推定値に基づいてドップラー周波数Fdを算出する。たとえば、伝搬特性推定値を複数のサンプル時間で取得し、取得した伝搬特性推定値の時間的な変動に基づく特性変更量からドップラー周波数Fdを推定することができる。
【0171】
たとえば、伝搬特性推定値に基づく計算によってドップラー周波数Fdを推定することができる。または、伝搬特性推定値の時間的な変動とドップラー周波数Fdとを基地局230において対応付けて記憶しておき、取得した伝搬特性推定値に対応するドップラー周波数Fdを検索することによってドップラー周波数Fdを推定してもよい。この場合は、計算によってドップラー周波数Fdを推定するよりも処理量を低減することができる。
【0172】
また、伝搬特性推定値に基づくドップラー周波数Fdの算出については、上記の方法に限らない。たとえば、非特許文献(宮崎俊治,大渕一央,中村隆治,「W−CDMA移動機におけるチャネル推定値によるフェージング周波数推定」,電子通信情報学会2002,Sept)に記載の方法によりドップラー周波数Fdの算出を行うことも可能である。
【0173】
V偏波スケジューラ563およびH偏波スケジューラ564のそれぞれは、算出したドップラー周波数Fdを選択周期設定部565へ通知する。選択周期設定部565は、V偏波スケジューラ563およびH偏波スケジューラ564によって通知されたドップラー周波数Fdに基づいて選択周期を決定する。選択周期設定部565は、決定した周期を伝搬特性平均化部561における平均化の周期として伝搬特性平均化部561へ通知する。
【0174】
図12は、ドップラー周波数に基づく選択周期の決定処理の一例を示すフローチャートである。ここでは、基地局230におけるユーザ端末210と間の選択周期の決定処理について説明するが、基地局230におけるユーザ端末220と間の選択周期の決定処理についても同様である。基地局230は、まず、ユーザ端末210へ送信した周期設定要求が示す周期(第一周期とする)を取得する(ステップS1201)。
【0175】
つぎに、ドップラー周波数Fdを算出し、図11に示したテーブル1100に基づいて、ドップラー周波数Fdに基づく周期(第二周期とする)を取得する(ステップS1202)。つぎに、ステップS1201によって取得された第一周期が、ステップS1202によって取得された第二周期よりも長いか否かを判断する(ステップS1203)。
【0176】
ステップS1203において、第一周期が第二周期より長い場合(ステップS1203:Yes)は、ステップS1201によって取得された第一周期を選択周期として設定し(ステップS1204)、一連の動作を終了する。第一周期が第二周期以下である場合(ステップS1203:No)は、ステップS1202によって取得された第二周期を選択周期として設定し(ステップS1205)、一連の動作を終了する。
【0177】
また、基地局230は、ステップS1204またはステップS1205によって設定された選択周期を示す周期設定要求をユーザ端末210へ送信することで、設定した選択周期によってユーザ端末210から参照信号を受信するようにしてもよい。
【0178】
このように、基地局230の算出部562は、伝搬特性推定値に基づいてユーザ端末との間のドップラー周波数Fdを算出し、算出したドップラー周波数Fdに基づく周期ごとに、ユーザ端末へ送信するウェイトを算出する。たとえば、算出部562は、ドップラー周波数Fdが大きいほど、ユーザ端末へ送信するウェイトを算出する周期を短くする。
【0179】
これにより、ユーザ端末の移動速度が遅く、ユーザ端末と基地局230との間の伝搬環境の変化が小さい場合は、ユーザ端末のウェイトの算出頻度を下げることができる。このため、ウェイトの算出処理を低減することができる。また、ユーザ端末の移動速度が速く、ユーザ端末と基地局230との間の伝搬環境の変化が大きい場合は、ユーザ端末のウェイトを頻繁に算出することができる。このため、ユーザ端末からの送信信号を基地局230において精度よくV偏波面またはH偏波面で受信することができる。
【0180】
以上説明したように、実施の形態にかかる受信装置、移動端末、通信システムおよび通信方法は、伝搬特性に基づいて、受信装置が受信する信号がV偏波面またはH偏波面になるビームフォーミングのウェイトを算出して移動端末へ通知する。これにより、受信装置における処理量を低減することが可能になる。
【0181】
なお、上述した実施の形態においては、受信装置を基地局に適用する場合について説明したが、受信装置は基地局に限らず、移動端末からの送信信号を受信する受信装置であればよい。たとえば、受信装置を、移動端末からの送信信号を受信し、受信した送信信号を基地局へ転送する中継局に適用することもできる。
【0182】
上述した実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0183】
(付記1)互いに異なる各偏波面の信号を受信する各アンテナを含む受信部と、
移動端末との間の伝搬特性を推定する推定部と、
前記推定部の推定結果に基づいて、前記受信部により受信される信号が前記各偏波面になる各ビームフォーミングのウェイトの少なくとも一方を算出する算出部と、
前記算出部によって算出されたウェイトを前記移動端末へ送信する送信部と、
を備えることを特徴とする受信装置。
【0184】
(付記2)前記算出部は、前記各ビームフォーミングの各ウェイトを算出し、
前記各ウェイトに対応する各伝搬品質を算出する品質算出部と、
前記品質算出部によって算出された各伝搬品質に基づいて、前記算出部によって算出された前記各ウェイトのうちの、前記送信部が送信するウェイトを選択する選択部と、
を備えることを特徴とする付記1に記載の受信装置。
【0185】
(付記3)前記算出部は、前記推定部の推定結果を示す伝搬特性推定値に対して所定の複数のプリコーディングウェイトを乗算し、乗算結果が前記各偏波面のいずれかに最も近くなるプリコーディングウェイトを前記ウェイトとして算出することを特徴とする付記1または2に記載の受信装置。
【0186】
(付記4)前記推定部は、前記移動端末から送信される参照信号に基づいて前記伝搬特性を推定することを特徴とする付記1〜3のいずれか一つに記載の受信装置。
【0187】
(付記5)前記算出部は、前記移動端末から前記参照信号が送信される周期ごとに前記ウェイトを算出することを特徴とする付記4に記載の受信装置。
【0188】
(付記6)前記算出部は、前記推定部の推定結果に基づいて前記移動端末との間のドップラー周波数を算出し、算出したドップラー周波数に基づく周期ごとに前記ウェイトを算出することを特徴とする付記4に記載の受信装置。
【0189】
(付記7)前記算出部は、算出したドップラー周波数が大きいほど前記ウェイトを算出する周期を短くすることを特徴とする付記6に記載の受信装置。
【0190】
(付記8)前記各アンテナによる各通信の各スケジューリングをそれぞれ行う各スケジューラを備えることを特徴とする付記1〜7のいずれか一つに記載の受信装置。
【0191】
(付記9)互いに異なる各偏波面の信号を受信する各アンテナを有する受信装置へ信号を送信する送信部と、
前記受信装置によって受信される信号が、前記各偏波面のいずれかの偏波面になるビームフォーミングのウェイトを前記受信装置から受信する受信部と、
前記受信部によって受信されたウェイトによって、前記送信部によって送信される信号のビームフォーミングを行う乗算部と、
を備えることを特徴とする移動端末。
【0192】
(付記10)互いに異なる各偏波面の信号を受信する各アンテナを有し、受信する信号が前記各偏波面のいずれかになるビームフォーミングのウェイトを移動端末との間の伝搬特性に基づいて算出し、算出したウェイトを前記移動端末へ送信する受信装置と、
前記受信装置によって送信されたウェイトによって、送信する信号に対してビームフォーミングを行う移動端末と、
を含むことを特徴とする通信システム。
【0193】
(付記11)互いに異なる各偏波面の信号を受信する各アンテナを有する受信装置の通信方法において、
移動端末との間の伝搬特性を推定する推定工程と、
前記推定工程の推定結果に基づいて、前記受信装置により受信される信号が前記各偏波面になる各ビームフォーミングのウェイトの少なくとも一方を算出する算出工程と、
前記算出工程によって算出されたウェイトを前記移動端末へ送信する送信工程と、
を含むことを特徴とする通信方法。
【0194】
(付記12)互いに異なる各偏波面の信号を受信する各アンテナを有する受信装置へ信号を送信する送信工程と、
前記受信装置によって受信される信号が、前記各偏波面のいずれかの偏波面になるビームフォーミングのウェイトを前記受信装置から受信する受信工程と、
前記受信工程によって受信されたウェイトによって、前記送信工程によって送信される信号のビームフォーミングを行う乗算工程と、
を含むことを特徴とする通信方法。
【0195】
(付記13)互いに異なる各偏波面の信号を受信する各アンテナを有する受信装置と移動端末における通信方法において、
前記受信装置と前記移動端末との間の伝搬特性を推定する推定工程と、
前記推定工程の推定結果に基づいて、前記受信装置が受信する信号が前記各偏波面のいずれかになるビームフォーミングのウェイトを算出する算出工程と、
前記算出工程によって算出されたウェイトによって、前記移動端末が送信する信号に対してビームフォーミングを行う乗算工程と、
を含むことを特徴とする通信方法。
【符号の説明】
【0196】
100,200 通信システム
210,220 ユーザ端末
211,212,221,222 アンテナ
230 基地局
300 アンテナ部
301 ボード部
311〜316 V偏波アンテナ
321〜326 H偏波アンテナ
511,711,712 V偏波アンテナ
512 H偏波アンテナ
521 V偏波デュプレクサ
522 H偏波デュプレクサ
721,722 デュプレクサ
811〜814 偏波面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる各偏波面の信号を受信する各アンテナを含む受信部と、
移動端末との間の伝搬特性を推定する推定部と、
前記推定部の推定結果に基づいて、前記受信部により受信される信号が前記各偏波面になる各ビームフォーミングのウェイトの少なくとも一方を算出する算出部と、
前記算出部によって算出されたウェイトを前記移動端末へ送信する送信部と、
を備えることを特徴とする受信装置。
【請求項2】
前記算出部は、前記各ビームフォーミングの各ウェイトを算出し、
前記各ウェイトに対応する各伝搬品質を算出する品質算出部と、
前記品質算出部によって算出された各伝搬品質に基づいて、前記算出部によって算出された前記各ウェイトのうちの、前記送信部が送信するウェイトを選択する選択部と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の受信装置。
【請求項3】
前記算出部は、前記推定部の推定結果を示す伝搬特性推定値に対して所定の複数のプリコーディングウェイトを乗算し、乗算結果が前記各偏波面のいずれかに最も近くなるプリコーディングウェイトを前記ウェイトとして算出することを特徴とする請求項1または2に記載の受信装置。
【請求項4】
前記推定部は、前記移動端末から送信される参照信号に基づいて前記伝搬特性を推定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の受信装置。
【請求項5】
前記算出部は、前記移動端末から前記参照信号が送信される周期ごとに前記ウェイトを算出することを特徴とする請求項4に記載の受信装置。
【請求項6】
前記算出部は、前記推定部の推定結果に基づいて前記移動端末との間のドップラー周波数を算出し、算出したドップラー周波数に基づく周期ごとに前記ウェイトを算出することを特徴とする請求項4に記載の受信装置。
【請求項7】
前記各アンテナによる各通信の各スケジューリングをそれぞれ行う各スケジューラを備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の受信装置。
【請求項8】
互いに異なる各偏波面の信号を受信する各アンテナを有する受信装置へ信号を送信する送信部と、
前記受信装置によって受信される信号が、前記各偏波面のいずれかの偏波面になるビームフォーミングのウェイトを前記受信装置から受信する受信部と、
前記受信部によって受信されたウェイトによって、前記送信部によって送信される信号のビームフォーミングを行う乗算部と、
を備えることを特徴とする移動端末。
【請求項9】
互いに異なる各偏波面の信号を受信する各アンテナを有し、受信する信号が前記各偏波面のいずれかになるビームフォーミングのウェイトを移動端末との間の伝搬特性に基づいて算出し、算出したウェイトを前記移動端末へ送信する受信装置と、
前記受信装置によって送信されたウェイトによって、送信する信号に対してビームフォーミングを行う移動端末と、
を含むことを特徴とする通信システム。
【請求項10】
互いに異なる各偏波面の信号を受信する各アンテナを有する受信装置と移動端末における通信方法において、
前記受信装置と前記移動端末との間の伝搬特性を推定する推定工程と、
前記推定工程の推定結果に基づいて、前記受信装置が受信する信号が前記各偏波面のいずれかになるビームフォーミングのウェイトを算出する算出工程と、
前記算出工程によって算出されたウェイトによって、前記移動端末が送信する信号に対してビームフォーミングを行う乗算工程と、
を含むことを特徴とする通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−4056(P2011−4056A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−144306(P2009−144306)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】