説明

受信装置および受信方法

【課題】放送品質が劣化した場合、劣化が回復するか否かを識別して受信チャンネルを切替えること。
【解決手段】チャンネル切替制御部101は、AGC電圧の時間変化量が第1の閾値以上に増加した場合、受信電波の瞬断による放送品質の劣化であると識別して受信チャンネルを保持し、時間変化量が第1の閾値以上に増加した後、AGC電圧が第2の閾値以上である状態が第1の所定の切替時間以上継続した場合、受信電波の瞬断による放送品質の劣化であっても受信チャンネルを切替え、また、AGC電圧の時間変化量が第1の閾値未満であり、AGC電圧が上昇している状態が第2の所定の切替時間以上継続した場合、車両の移動による放送品質の劣化であると識別して受信チャンネルを切替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、受信装置および受信方法に関し、特に、放送品質が劣化した場合、劣化が回復するか否かを識別してチャンネルを切替える受信装置および受信方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、移動体放送の多様化と共にアナログ放送もしくはデジタル放送、または、その両方を受信する受信装置を車両に搭載することが可能になってきた。また、このような受信装置において、車両の周囲環境によって電界が変動し、画質や音質などの放送品質が劣化した場合に、アナログ放送とデジタル放送の切替またはチャンネルの切替を行う従来技術が開示されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、デジタル放送の受信時に放送品質の劣化を検出すると同一内容のアナログ放送の受信に切替える従来技術が開示されている。また、特許文献2では、複数のチューナで複数のチャンネルの電波を受信して、一つのチャンネルの放送品質が劣化した場合、放送品質が良好な他のチャンネルに切替える従来技術が開示されている。また、特許文献3では、自動利得制御電圧(以下においては、「AGC電圧」という。)に基づいて放送品質の劣化を判定する従来技術が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平11−234227号公報
【特許文献2】特開平11−284925号公報
【特許文献3】特開平09−307823号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の従来技術では、車両が放送サービスのエリア外に向かって移動している場合、デジタル放送の放送品質の劣化を検出し、同一内容のアナログ放送の受信に切替えることができる。しかし、車両が遮蔽物に隠れて電波から遮蔽され、電波が瞬断した場合、車両が遮蔽物の陰から出てくることによって放送品質の劣化が回復するにも関わらず、デジタル放送をアナログ放送に切替えてしまうという課題があった。
【0006】
また、特許文献2の従来技術では、複数のチューナで複数のチャンネルの電波を受信して、一つのチャンネルの放送品質が劣化した場合、放送品質が良好な他のチャンネルに切替ることができる。しかし、上記の場合と同様に、電波の瞬断による放送品質の劣化と車両の移動による放送品質の劣化を識別できないので、放送品質の劣化が回復する場合でも他のチャンネルに切替えてしまうという課題があった。
【0007】
特許文献3の従来技術では、AGC電圧に基づいて放送品質の劣化を判定することができる。しかし、上記の場合と同様に、電波の瞬断による放送品質の劣化と車両の移動による放送品質の劣化を識別できないので、放送品質の劣化が回復する場合でも放送品質が劣化する前の画面にフリーズし、または、ミュートにするよう切替えてしまうという課題があった。
【0008】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するためになされたものであり、放送品質が劣化した場合、劣化が回復するか否かを識別してチャンネルを切替える受信装置および受信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、請求項1の発明に係る受信装置は、放送を切替えるチャンネルを備え、移動体に搭載された受信装置であって、前記チャンネルで受信した電波強度の時間変化に基づいて前記放送の品質である放送品質の劣化を評価する品質評価信号を生成する品質評価信号生成手段と、前記品質評価信号生成手段によって生成された品質評価信号を用いて電波の瞬断による前記放送品質の劣化と前記移動体の移動による前記放送品質の劣化を識別し、前記チャンネルの切替を制御するチャンネル切替制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
この請求項1の発明に係る受信装置は、受信する放送を切替える選局部を備えた受信装置であって、選局部で選局された放送の放送信号における電波強度に基づいて選局部の切替を制御するチャンネル切替制御手段と、チャンネル切替制御手段における選局切替条件が成立する場合において、受信放送を切り替えた場合に受信する放送に関する情報を表示する放送情報表示手段とを有することを特徴とする。
【0011】
この請求項1の発明によれば、受信チャンネルを切替える場合、アナログ放送またはデジタル放送を出力する出力装置に受信チャンネルに関する切替え後のチャンネルの識別情報、切替時間からなる切替情報を表示させることとしたので、ユーザフレンドリーなテレビ画像表示が可能になる。
【0012】
また、請求項2及び3の発明に係る受信装置は、受信する放送を切替える選局部を備えた受信装置であって、選局部で選局された放送の放送信号における電波強度に基づいて選局部の切替を制御するチャンネル切替制御手段と、チャンネル切替制御手段における選局切替条件が成立する場合、受信放送を切替えるか否かの応答要求を表示する応答要求表示手段とを有し、チャンネル切替制御手段は、応答要求に対する応答に基づいて選局部の切替を制御することを特徴とする。また、応答要求に対して所定時間応答しなかった場合、前記選局部の切り替えを制御することを特徴とする。
【0013】
この請求項2及び3の発明によれば、受信チャンネルを切替える場合、アナログ放送またはデジタル放送を出力する出力装置に受信チャンネルに関する切替え後のチャンネルの識別情報、切替時間、切替えるか否かの応答要求からなる切替情報を表示させることとしたので、ユーザフレンドリーなテレビ画像表示が可能になる。また、出力装置から切替情報に対する応答に応じて受信チャンネルを切替えることとしたので、ユーザフレンドリーなテレビ画像表示が可能になる。
【0014】
また、請求項4の発明に係る受信装置は、受信する放送を切替える選局部を備えた受信装置であって、選局部で選局された放送の放送信号における電波強度に基づいて選局部の切替を制御するチャンネル切替制御手段を備え、チャンネル切替制御手段における選局切替条件が成立する場合、受信放送に関する情報を入力する切替情報入力手段とを有し、チャンネル情報は、切替情報入力手段で入力された受信放送情報に基づき、選局部の切り替えを制御することを特徴とする。
【0015】
この請求項4の発明によれば、受信チャンネルを切替える場合、アナログ放送またはデジタル放送を出力する出力装置に受信チャンネルを選択入力する切替情報を表示させ、切替情報に選択入力された受信チャンネルに切替えることとしたので、ユーザフレンドリーなテレビ画像表示が可能になる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、受信チャンネルを切替える場合、アナログ放送またはデジタル放送を出力する出力装置に受信チャンネルに関する切替え後のチャンネルの識別情報、切替時間からなる切替情報を表示させるよう構成したので、ユーザフレンドリーなテレビ画像表示が可能になるという効果を奏する。
【0017】
また、請求項2の発明によれば、受信チャンネルを切替える場合、アナログ放送またはデジタル放送を出力する出力装置に受信チャンネルに関する切替え後のチャンネルの識別情報、切替時間、切替えるか否かの応答要求からなる切替情報を表示させるよう構成したので、ユーザフレンドリーなテレビ画像表示が可能になるという効果を奏する。
【0018】
また、請求項3の発明によれば、出力装置から切替情報に対する応答に応じて受信チャンネルを切替えるよう構成したので、ユーザフレンドリーなテレビ画像表示が可能になるという効果を奏する。
【0019】
また、請求項4の発明によれば、受信チャンネルを切替える場合、アナログ放送またはデジタル放送を出力する出力装置に受信チャンネルを選択入力する切替情報を表示させ、切替情報に選択入力された受信チャンネルに切替えるよう構成したので、ユーザフレンドリーなテレビ画像表示が可能になるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る車載テレビ装置の好適な実施の形態を以下の実施例1、2について詳細に説明する。実施例1では、中間周波増幅器の利得を制御するAGC電圧およびAGC電圧の変化量に基づいて電波の瞬断による放送品質の劣化と車両の移動による放送品質の劣化を識別し、受信チャンネルを切替える場合について説明する。また、実施例2では、高周波増幅器の利得を制御するAGC電圧およびAGC電圧の変化量に基づいて電波の瞬断による放送品質の劣化と車両の移動による放送品質の劣化を識別し、受信チャンネルを切替える場合について説明する。
【実施例1】
【0021】
本実施例1では、中間周波増幅器の利得を制御するAGC電圧およびAGC電圧の変化量に基づいて電波の瞬断による放送品質の劣化と車両の移動による放送品質の劣化を識別し、受信チャンネルを切替える場合について説明する。ここでは、(1)車載テレビ装置の概要と特徴、(2)車載テレビ装置の構成、(3)車載テレビ装置の受信電波強度、AGC電圧、AGC電圧の変化量に関する時間変化の一例、(4)切替情報の表示画像の例、(5)電波の瞬断による放送品質の劣化と車両の移動による放送品質の劣化を識別する場合のチャンネル切替制御手順、(6)受信電波の瞬断前の車両位置、受信時間、受信チャンネルを記憶する場合のチャンネル切替制御手順、(7)車両の移動による放送品質の劣化を複数回確認する場合のチャンネル切替制御手順、(8)AGC電圧の変化量の時間平均値に基づいて車両の移動による放送品質の劣化を確認する場合のチャンネル切替制御手順、(9)車両速度に応じて受信チャンネルの切替時間を変更する場合のチャンネル切替制御手順、(10)受信チャンネルに応じて切替時間を変更する場合のチャンネル切替制御手順の順番に説明する。
【0022】
(1)車載テレビ装置の概要と特徴
まず、本実施例1の車載テレビ装置の概要と特徴について説明する。また、図1は、本実施例1に係る受信装置の構成を示す機能ブロック図である。同図に示すように、本実施例1の車載テレビ装置1は、放送を切替えるチャンネルを備え、車両に搭載された受信装置であって、放送品質が劣化した場合、劣化が回復するか否かを識別して受信チャンネルを切替えることを特徴とする。
【0023】
車載テレビ装置1は、チャンネルで受信した電波強度の時間変化に基づいて放送の品質である放送品質の劣化を評価する品質評価信号を生成し、生成された品質評価信号を用いて電波の瞬断による放送品質の劣化と車両の移動による放送品質の劣化を識別し、チャンネルの切替を制御することとしたので、放送品質が劣化した場合、電波強度の時間変化に基づいて劣化が回復するか否かを識別して受信チャンネルを切替えることができる。
【0024】
アナログ放送またはデジタル放送に関わらず放送品質の劣化の最大の要因は、受信電波強度のレベルの低下である。したがって、アナログチューナまたはデジタルチューナの受信チャンネルの電波強度の時間変化から受信電波強度のレベルを直接計測できれば都合が良いが、受信電波の周波数が高いのでレベルの変化を見るためには直流成分を検波する必要がある。AGC検波器は、増幅器で増幅した受信電波を検波して増幅器のゲインを制御するAGC電圧を出力しているので、本実施例1ではAGC電圧を用いて放送品質の劣化を識別する。
【0025】
(2)車載テレビ装置の構成
図1に示すように、車載テレビ装置1は、アンテナ2、4、アナログテレビ受信機20、デジタルテレビ受信機40、MPEGデコーダ46、品質評価信号生成回路30、50、主制御部10、記憶部11、表示制御部12、ディスプレイ13、GPS受信機14、車速センサ15、通信端末装置16を有する。
【0026】
アナログテレビ受信機20は、アンテナ2と接続され、アナログ放送を受信して表示制御部12に出力する。また、デジタルテレビ受信機40は、アンテナ4と接続され、デジタル放送を受信して表示制御部12に出力する。
【0027】
品質評価信号生成回路30は、アナログテレビ受信機20から出力されるAGC電圧とAGC電圧の変化量をデジタル量に変換して主制御部10に出力する回路である。また、品質評価信号生成回路50は、デジタルテレビ受信機40から出力されるAGC電圧とAGC電圧の変化量をデジタル量に変換して主制御部10に出力する回路である。
【0028】
主制御部10は、車載テレビ装置1を全体制御する制御部であり、具体的には、チャンネル切替制御部101、車両位置取得部102、平均値算出部103、車速検出部104を有する。チャンネル切替制御部101は、アナログテレビ受信機20またはデジタルテレビ受信機40が受信した電波強度の時間変化量に応じて電波の瞬断による放送品質の劣化と車両の移動による放送品質の劣化を識別し、表示制御部12を制御してアナログテレビ受信機20またはデジタルテレビ受信機40から出力されるビデオ信号の切替え、または、アナログテレビ受信機20またはデジタルテレビ受信機40のチャンネルの切替えを制御する処理部である。
【0029】
車両位置取得部102は、GPS受信機14または通信端末装置16から車両の位置を取得する処理部である。また、平均値算出部103は、AGC電圧の時間変化量の平均値を算出する処理部である。また、車速検出部104は、車速センサ15を用いて車両の速度を検出する処理部である。
【0030】
記憶部11は、RAMなどのメモリであり、受信チャンネル位置対応表111、受信チャンネル距離対応表112を有する。受信チャンネル位置対応表111は、受信電波の瞬断前におけるチャンネルの識別情報、受信時間を車両位置取得部102によって取得された車両の位置に対応付けて記憶する表であり、受信電波の瞬断前の位置に車両が戻った場合に、車両の位置から該当する受信チャンネルを検索するデータを記憶する。また、受信チャンネル距離対応表112は、受信チャンネルと基地局からの受信距離とを対応付ける表であり、車両が放送サービスの受信エリア内にあるか否かを判断するためのデータを記憶する。受信チャンネルは、それぞれ周波数が相違する。電波の周波数が高いほど、電波強度の減衰も大きいので、基地局からの受信距離は、短くなる。
【0031】
表示制御部12は、チャンネル切替制御部101の要求に基づいてアナログテレビ受信機20またはデジタルテレビ受信機40から出力されるビデオ信号を切替えると共に、受信チャンネルに関する切替え後のチャンネルの識別情報、切替時間、切替えるか否かの応答要求からなる切替情報をディスプレイ13に表示する画像を生成する。また、受信チャンネルを選択入力する切替情報をディスプレイ13に表示する画像を生成する。
【0032】
ディスプレイ13は、アナログテレビ受信機20、または、デジタルテレビ受信機40からのビデオ信号を出力する出力装置であり、具体的には、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)などである。また、GPS受信機14は、GPS衛星からの測位情報を受信する受信機である。また、車速センサ15は、車両の速度を計測するセンサである。また、通信端末装置16は、無線通信を行う端末装置であり、主制御部10の要求に基づいて車両の現在位置、地図情報などを取得する。
【0033】
アナログテレビ受信機20は、その内部にアナログチューナ21、IF検波器22、IF増幅器23、復調部24、AGC検波器25を有する。
【0034】
アナログチューナ21は、アンテナで受信した電波をチャンネル切替制御部101によって指定されたチャンネルに切替えると共に、電波を高周波増幅する回路である。また、IF検波器22は、アナログチューナ21で切替え、高周波増幅した電波を中間周波数に変換する周波数変換回路である。また、IF増幅器23は、IF検波器22で周波数変換された電波を増幅する増幅器である。また、復調部24は、受信電波から搬送波とビデオ信号を分離してビデオ信号だけを取り出し、取り出したビデオ信号を低周波増幅する回路である。
【0035】
AGC検波器25は、IF増幅器23で増幅された中間周波数の電波のレベル変動を制御する回路である。AGC検波器25は、AGC電圧をIF増幅器23に出力し、弱い受信電波に対してはIF増幅器23のゲインを上げ、強い受信電波に対してはIF増幅器23のゲインを抑えてアナログテレビ受信機20の出力を一定に制御すると共に、AGC電圧を品質評価信号生成回路30に出力する。
【0036】
品質評価信号生成回路30は、AGC電圧とAGC電圧の変化量の絶対値をデジタル量に変換して、主制御部10に出力する回路であり、遅延回路31、減算器32、ABS回路33、D/A変換器34、35を有する。
【0037】
遅延回路31は、AGC電圧を時間遅延させる回路である。また減算器32は、遅延回路31で時間遅延されたAGC電圧と遅延回路31を通らないAGC電圧の差をとる回路である。また、ABS回路33は、減算器32から出力されるAGC電圧の差を絶対値に変換する回路である。また、D/A変換器34は、ABS回路33から出力されるAGC電圧の差の絶対値をデジタル量に変換する回路であり、D/A変換器35は、AGC電圧をデジタル量に変換する回路である。
【0038】
デジタルテレビ受信機40は、その内部にデジタルチューナ41、IF検波器42、IF増幅器43、復調部44、AGC検波器45を有する。
【0039】
デジタルチューナ41は、アンテナで受信した電波をチャンネル切替制御部101によって指定されたチャンネルに切替えると共に、電波を高周波増幅する回路である。IF検波器42は、デジタルチューナ41で切替え、高周波増幅した電波を中間周波数に変換する周波数変換回路である。また、IF増幅器43は、IF検波器42で周波数変換された電波を増幅する増幅器である。また、復調部44は、受信電波から搬送波とビデオ信号を分離してビデオ信号だけを取り出し、取り出したビデオ信号を低周波増幅する回路である。また、MPEGデコーダ46は、圧縮符号化されたビデオ信号を復号化し、表示制御部12に出力する装置である。
【0040】
AGC検波器45は、IF増幅器43で増幅された中間周波数の電波のレベル変動を制御する回路である。AGC検波器45は、AGC電圧をIF増幅器43に出力し、弱い受信電波に対してはIF増幅器43のゲインを上げ、強い受信電波に対してはIF増幅器43のゲインを抑えてデジタルテレビ受信機40の出力を一定に制御すると共に、AGC電圧を品質評価信号生成回路50に出力する。
【0041】
品質評価信号生成回路50は、AGC電圧とAGC電圧の変化量の絶対値をデジタル量に変換して、主制御部10に出力する回路であり、遅延回路51、減算器52、ABS回路53、D/A変換器54、55を有する。
【0042】
遅延回路51は、AGC電圧を時間遅延させる回路である。また、減算器52は、遅延回路51で時間遅延されたAGC電圧と遅延回路51を通らないAGC電圧の差をとる回路である。また、ABS回路53は、減算器52から出力されるAGC電圧の差を絶対値に変換する回路である。また、D/A変換器54は、ABS回路53から出力されるAGC電圧の差の絶対値をデジタル量に変換する回路であり、D/A変換器55は、AGC電圧をデジタル量に変換する回路である。
【0043】
(3)車載テレビ装置の受信電波強度、AGC電圧、AGC電圧の変化量に関する時間変化の一例
次に、図2を参照して、車載テレビ装置1の受信電波強度、AGC電圧、AGC電圧の変化量に関する時間変化の一例について説明する。図2は、車載テレビ装置1の受信電波強度、AGC電圧、AGC電圧の変化量に関する時間変化の一例を示す図である。なお、移動体放送のサービスエリア内における車載テレビ装置1の受信電波強度のレベルは、基地局アンテナの高さ、受信アンテナの高さ、送信電波の周波数、基地局からの距離の関数として与えられるが、ここでは、受信電波強度のレベルは基地局からの距離にのみ依存すると考える。また、受信電波強度は、基地局からの距離の2乗に反比例するが、図2では、受信電波のレベル低下の定性的な傾向を示す。
【0044】
図2に示すように、アナログテレビ受信機20またはデジタルテレビ受信機40の受信電波強度のレベルは、車両が移動して基地局から遠ざかるにつれて低下する。また、進行途中に受信電波を遮蔽する遮蔽物があり、車両が遮蔽物に隠れると、車載テレビ装置の電波強度のレベルは、急激に低下し、受信電波の瞬断が生じる。
【0045】
このような場合、AGC検波器25、45は、電波強度のレベル低下を検出して、IF増幅器23、43のゲインを上げて、出力を一定に保とうとする。したがって、図2に示すように、AGC検波器25、45から出力されるAGC電圧は、車両が移動して基地局から遠ざかるにつれて、次第にレベルが上昇する。また、車両が遮蔽物に隠れて受信電波強度のレベルが急激に低下すると、AGC電圧は、急激に上昇し、車両が遮蔽物から出て受信電波のレベルが元に戻ると、AGC電圧は、急激に下降する。
【0046】
また、品質評価信号生成回路30、50は、AGC検波器25、45から出力されるAGC電圧と、AGC電圧から変換したAGC電圧の差の絶対値のデジタル量、すなわち、AGC電圧の変化量とを主制御部10に出力する。したがって、図2に示すように、品質評価信号生成回路30,50から出力されるAGC電圧の変化量は、車両が移動して基地局から遠ざかる間は、第1の閾値未満の値を保つ。また、車両が遮蔽物に隠れて受信電波強度のレベルが急激に低下する瞬間と、車両が遮蔽物から出て受信電波強度のレベルが元に戻る瞬間に、AGC電圧の変化量は、第1の閾値を超えるピークを形成する。
【0047】
同図に示すように、AGC電圧の変化量が第1の閾値以上になったとき、車両が遮蔽物に隠れて、受信電波が一時的に瞬断したと判断することができる。したがって、AGC電圧の変化量が第1の閾値以上になったときは画質の劣化は回復するので受信チャンネルを保持する。しかし、AGC電圧が第2の閾値以上である状態、すなわち受信電波の瞬断が第1の所定の切替時間以上継続する場合、例えば、長いトンネルに入った場合は、受信チャンネルを切替える。
【0048】
ここで、第1の閾値および第2の閾値は、受信電波強度のレベル低下により放送品質の劣化が視聴に耐えられなくなったときのAGC電圧の変化量およびAGC電圧の値として設定する。また、第1の所定の切替時間は、車両が走行中に遮蔽物の陰に入るような、または、信号待ちで遮蔽物の陰に停止し、すぐ発進するような、受信電波の瞬断が短時間で終わる場合と、車両が長いトンネルに入って受信電波の瞬断が継続する場合を識別するための設定値である。
【0049】
また、AGC電圧の変化量が第1の閾値未満であり、AGC電圧が上昇している状態が第2の所定の切替時間以上継続した場合、車両の移動による受信電波強度のレベル低下であり、画質の劣化は回復しないので、受信チャンネルを切替える。
【0050】
ここで、第2の所定の切替時間は、移動体放送のサービスエリアを車両がある走行速度、例えば、道路の走行速度の上限で横断する横断時間である。第2の所定の切替時間は、車両の走行速度とサービスエリアの広さに依存する。また、移動体放送のサービスエリアの広さは、電波の受信距離によって決まる。また、電波の受信距離は、電波の周波数に依存する。すなわち、周波数が高いほど、電波の減衰が大きいので、受信距離は、狭くなる。したがって、第2の所定の切替時間は、車両の走行速度と受信チャンネルの周波数とに応じてサービスエリア内における車両の位置関係を考慮して変更される。
【0051】
このように、AGC電圧およびAGC電圧の変化量は、アナログテレビ受信機20またはデジタルテレビ受信機40の受信電波強度の時間変化に対応しているので、AGC電圧およびAGC電圧の変化量に基づいて電波の瞬断による放送品質の劣化と車両の移動による放送品質の劣化を識別し、受信チャンネルを切替えることができる。
【0052】
以上のように、品質評価信号生成回路30,50は、チャンネルで受信した電波強度の時間変化に基づいて放送の品質である放送品質の劣化を評価する品質評価信号を生成し、チャンネル切替制御部101は、生成された品質評価信号を用いて電波の瞬断による放送品質の劣化と移動体の移動による放送品質の劣化を識別し、チャンネルの切替を制御することとしたので、放送品質が劣化した場合、受信電波強度の時間変化に基づいて劣化が回復するか否かを識別して受信チャンネルを切替えることができる。
【0053】
また、品質評価信号生成回路30,50は、電波強度の時間変化に対する制御を行うためのAGC電圧を用いて品質評価信号を生成することとしたので、放送品質が劣化した場合、AGC電圧の時間変化に基づいて劣化が回復するか否かを識別して受信チャンネルを切替えることができる。
【0054】
また、チャンネル切替制御部101は、AGC電圧の時間変化量が第1の閾値以上に増加した場合、電波の瞬断による放送品質の劣化であると判断し受信チャンネルを保持し、時間変化量が第1の閾値以上に増加した後、AGC電圧が第2の閾値以上である状態が第1の所定の切替時間以上継続した場合、電波の瞬断による放送品質の劣化であっても受信チャンネルを切替ることとしたので、電波の瞬断による放送品質の劣化が一時的であれば、放送品質の劣化は回復するとして受信チャンネルを切替えずに保持することができる。
【0055】
また、チャンネル切替制御部101は、AGC電圧の時間変化量が第1の閾値未満であり、AGC電圧が上昇している状態が第2の所定の切替時間以上継続した場合、受信チャンネルを切替えることとしたので、車両の移動による放送品質の劣化であるとして受信チャンネルを切替えることができる。
【0056】
また、車両の位置を取得する車両位置取得部102と、受信チャンネルの識別情報、受信時間を車両の位置に対応付けて記憶する受信チャンネル位置対応表111と、をさらに備えることとしたので、チャンネル切替制御部101は、受信チャンネルを保持した場合、AGC電圧の時間変化量が第1の閾値以上に増加する前の受信チャンネルの識別情報、受信時間を車両位置取得部102によって取得された車両の位置に対応付けて受信チャンネル位置対応表111に記憶して、受信エリア外から受信エリア内の記憶していた車両の位置に戻ったときに、受信チャンネル位置対応表111から受信チャンネルを検索して受信チャンネルに復帰することもできる。または記憶した受信時間の受信チャンネルに復帰することができる。
【0057】
また、チャンネル切替制御部101は、AGC電圧の時間変化量が第1の閾値未満であり、AGC電圧が上昇している状態が第2の所定の切替時間以上継続していることがN回検出された場合、受信チャンネルを切替えることとしたので、チャンネル切替制御部101は、車両が受信エリア外にいるか否かを精度良く判定できる。
【0058】
また、AGC電圧の時間変化量の平均値を算出する平均値算出部103をさらに備えることとしたので、チャンネル切替制御部101は、平均値算出部103によって算出されたAGC電圧の時間変化量の平均値が第1の閾値未満であり、AGC電圧が上昇している状態が第2の所定の切替時間以上継続している場合、受信チャンネルを切替える。したがって、チャンネル切替制御部101は、車両が受信エリア外にいるか否かを精度良く判定できる。
【0059】
また、車両の速度を検出する車速検出部104を備えることとしたので、チャンネル切替制御部101は、車速検出部104によって検出された車両の速度に対応付けて第2の所定の切替時間を変更することができる。したがって、車両の速度に応じて経過時間を変えて、移動距離から受信エリア外となるまでの時間を正確に判断できる。
【0060】
また、受信チャンネルと基地局からの受信距離とを対応付けて記憶する受信チャンネル距離対応表112をさらに備えることとしたので、チャンネル切替制御部101は、受信チャンネル距離対応表112に記憶された該当する受信チャンネルに対応付けて第2の所定の切替時間を変更することができる。したがって、したがって、該当するチャンネルの受信距離に応じて経過時間を変えて、移動距離から受信エリア外となるまでの時間を正確に判断できる。
【0061】
(4)切替情報の表示画像の例
次に、図3〜図5を参照して、車載テレビ装置1の表示制御部12が生成する切替情報の表示画像の例について説明する。図3は、車載テレビ装置1の表示制御部12が生成する切替情報の表示画像の一例を示す図である。また、図4は、車載テレビ装置1の表示制御部12が生成する切替情報の表示画像の別の例を示す図である。また、図5は、車載テレビ装置1の表示制御部12が生成する切替情報の表示画像のさらに別の例を示す図である。
【0062】
チャンネル切替制御部101は、受信チャンネルを切替える場合、表示制御部12に“xx秒後にyychに切替えます”という切替情報をディスプレイ13に表示するように要求し、表示制御部12は、図3に示すように切替情報をディスプレイ13に表示させる。
【0063】
その後、表示制御部12は、図4に示すようにzz秒後に“yychに変更してよいですか? YES/NO”の確認メッセージをディスプレイ13に表示する。ユーザが“YES”をクリックすると、チャンネル切替制御部101は、表示制御部12を経由して応答を受け付け、yychに切替え、ユーザが“NO”をクリックすると、チャンネル切替制御部101は、チャンネル切替えを行わない。または、チャンネル切替制御部101は、ユーザがcc秒間“YES”も“NO”もクリックしなかった場合、自動的にyychに切替える。または、切替えないようにすることができる。
【0064】
また、チャンネル切替制御部101は、受信チャンネルを切替える場合、表示制御部12に要求し、図5に示すような切替情報をディスプレイ13に表示させる。同図に示すように、アナログ/デジタルチューナ切替ボタン201、チャンネルアップ/ダウンボタン202、チャンネルサーチアップ/ダウンボタン203をクリックすることによって切替チャンネルを選択することができる。アナログ/デジタルテレビ受信機表示204およびチャンネル表示205をクリックすることによって切替えられる受信機またはチャンネルが確定する。チャンネル切替制御部101は、表示制御部12を経由して応答を受け付けて、受信チャンネルを切替える。
【0065】
以上のように、チャンネル切替制御部101は、受信チャンネルを切替る場合、ディスプレイ13に受信チャンネルに関する切替え後のチャンネルの識別情報、切替時間からなる切替情報を表示させるので、ユーザフレンドリーなテレビ画像表示が可能になる。
【0066】
また、チャンネル切替制御部101は、受信チャンネルを切替える場合、ディスプレイ13に受信チャンネルに関する切替え後のチャンネルの識別情報、切替時間、切替えるか否かの応答要求からなる切替情報を表示させるので、ユーザフレンドリーなテレビ画像表示が可能になる。
【0067】
また、チャンネル切替制御部101は、ディスプレイ13から切替情報に対する応答に応じて受信チャンネルを切替えるので、ユーザフレンドリーなテレビ画像表示が可能になる。
【0068】
また、チャンネル切替制御部101は、受信チャンネルを切替える場合、ディスプレイ13に受信チャンネルを選択入力する切替情報を表示させ、切替情報に選択入力された受信チャンネルに切替えるので、ユーザフレンドリーなテレビ画像表示が可能になる。
【0069】
(5)電波の瞬断による放送品質の劣化と車両の移動による放送品質の劣化を識別する場合のチャンネル切替制御手順
次に、図6を参照して、車載テレビ装置1において電波の瞬断による放送品質の劣化と車両の移動による放送品質の劣化を識別する場合のチャンネル切替制御手順について説明する。図6は、車載テレビ装置1において電波の瞬断による放送品質の劣化と車両の移動による放送品質の劣化を識別する場合のチャンネル切替制御手順を示すフローチャートである。
【0070】
同図に示すように、品質評価信号生成回路30、50は、AGC検波器25、45から出力されたAGC電圧を用いてAGC電圧の変化量を生成し、チャンネル切替制御部101にAGC電圧およびAGC電圧の変化量を出力する(ステップS601)。そして、チャンネル切替制御部101は、AGC電圧の変化量が第1の閾値以上であるか否かを調べる(ステップS602)。その結果、AGC電圧の変化量が第1の閾値以上である場合は(ステップS602肯定)、さらに、チャンネル切替制御部101は、AGC電圧が第2の閾値以上である状態が第1の所定の切替時間以上継続しているか否かを調べる(ステップS603)。
【0071】
その結果、AGC電圧が第2の閾値以上である状態が第1の所定の切替時間以上継続していない場合は(ステップS603否定)、チャンネル切替制御部101は、受信チャンネルをそのまま保持し、本手順を終了する。一方、AGC電圧が第2の閾値以上である状態が第1の所定の切替時間以上継続している場合は(ステップS603肯定)、チャンネル切替制御部101は、受信チャンネルの切替情報の表示を要求する(ステップS604)。
【0072】
そして、ディスプレイ13は、図3〜図5に示すような切替情報表示する(ステップS605)。さらに、チャンネル切替制御部101は、図4または図5に示す切替情報に対するユーザからの応答を受け付けて(ステップS606)、応答に応じて受信チャンネルを切替える(ステップS607)。
【0073】
これに対して、AGC電圧の変化量が第1の閾値未満である場合は(ステップS602否定)、さらに、チャンネル切替制御部101は、AGC電圧が増加しているか否かを調べる(ステップS608)。その結果、AGC電圧が増加していない場合は(ステップS608否定)、チャンネル切替制御部101は、受信チャンネルを保持し、本手順を終了する。
【0074】
一方、AGC電圧が増加している場合は(ステップS608肯定)、さらに、チャンネル切替制御部101は、AGC電圧の増加が第2の所定の切替時間以上継続しているか否かを調べる(ステップS609)。その結果、AGC電圧の増加が第2の所定の切替時間以上継続していない場合は(ステップS609否定)、チャンネル切替制御部101は、受信チャンネルを保持し、本手順を終了する。一方、AGC電圧の増加が第2の所定の切替時間以上継続している場合は(ステップS609肯定)、チャンネル切替制御部101は、ステップS604〜ステップS607の手順を実施する。
【0075】
以上のように、品質評価信号生成回路30,50は、電波強度の時間変化に対する制御を行うためのAGC電圧を用いて品質評価信号を生成することとしたので、放送品質が劣化した場合、AGC電圧の時間変化に基づいて劣化が回復するか否かを識別して受信チャンネルを切替えることができる。
【0076】
また、チャンネル切替制御部101は、AGC電圧の時間変化量が第1の閾値以上に増加した場合、受信チャンネルを保持し、時間変化量が第1の閾値以上に増加した後、AGC電圧が第2の閾値以上である状態が第1の所定の切替時間以上継続した場合、受信チャンネルを切替ることとしたので、電波の瞬断による放送品質の劣化が一時的であれば、放送品質の劣化は回復するとして受信チャンネルを切替えずに保持することができる。
【0077】
また、チャンネル切替制御部101は、AGC電圧の時間変化量が第1の閾値未満であり、AGC電圧が上昇している状態が第2の所定の切替時間以上継続した場合、受信チャンネルを切替えることとしたので、車両の移動による放送品質の劣化であるとして受信チャンネルを切替えることができる。
【0078】
(6)受信電波の瞬断前の車両位置、受信時間、受信チャンネルを記憶する場合のチャンネル切替制御手順
次に、図7を参照して、車載テレビ装置1において受信電波の瞬断前の車両位置、受信時間、受信チャンネルを記憶する場合のチャンネル切替制御手順について説明する。図7は、車載テレビ装置1において受信電波の瞬断前の車両位置、受信時間、受信チャンネルを記憶する場合のチャンネル切替制御手順を示すフローチャートである。図6のチャンネル切替制御手順との相違は、ステップS704〜ステップS705であるので、ステップS704〜ステップS705について説明する。
【0079】
車両位置取得部102は、GPS受信機14または通信端末装置16用いて受信した測位情報または地図情報から車両の位置を取得する(ステップS704)。そして、受信チャンネルの識別情報、受信時間を車両の位置に対応付けて受信チャンネル位置対応表111に記憶する(ステップS705)。
【0080】
以上のように、車両の位置を取得する車両位置取得部102と、受信チャンネルの識別情報、受信時間を車両の位置に対応付けて記憶する受信チャンネル位置対応表111と、をさらに備えることとしたので、チャンネル切替制御部101は、受信チャンネルを保持した場合、AGC電圧の時間変化量が第1の閾値以上に増加する前の受信チャンネルの識別情報、受信時間を車両位置取得部102によって取得された車両の位置に対応付けて受信チャンネル位置対応表111に記憶して、受信エリア外から受信エリア内の記憶していた車両の位置に戻ったときに、受信チャンネル位置対応表111から受信チャンネルを検索して受信チャンネルに復帰することもできる。または、記憶していた受信時間の受信チャンネルに復帰することができる。
【0081】
(7)車両の移動による放送品質の劣化を複数回確認する場合のチャンネル切替制御手順
次に、図8を参照して、車載テレビ装置1において車両の移動による放送品質の劣化を複数回確認する場合のチャンネル切替制御手順について説明する。図8は、車載テレビ装置1において車両の移動による放送品質の劣化を複数回確認する場合のチャンネル切替制御手順を示すフローチャートである。図6のチャンネル切替制御手順との相違は、ステップS809であるので、ステップS809について説明する。
【0082】
チャンネル切替制御部101は、AGC電圧の増加が第2の所定の切替時間以降N回継続したか否かを確認する(ステップS809)。その結果、AGC電圧の増加が第2の所定の切替時間以降N回継続しなかった場合は(ステップS809否定)、チャンネル切替制御部101は、受信チャンネルを保持し、本手順を終了する。一方、AGC電圧の増加が第2の所定の切替時間以降N回継続した場合は(ステップS809肯定)、ステップS804〜ステップS807の手順を実行する。
【0083】
以上のように、チャンネル切替制御部101は、AGC電圧の時間変化量が第1の閾値未満であり、AGC電圧が上昇している状態が第2の所定の切替時間以上継続していることがN回検出された場合、受信チャンネルを切替えることとしたので、チャンネル切替制御部101は、車両が受信エリア外にいるか否かを精度良く判定できる。
【0084】
(8)AGC電圧の変化量の時間平均値に基づいて車両の移動による放送品質の劣化を確認する場合のチャンネル切替制御手順
次に、図9を参照して、車載テレビ装置1においてAGC電圧の変化量の時間平均値に基づいて車両の移動による放送品質の劣化を確認する場合のチャンネル切替制御手順について説明する。図9は、車載テレビ装置1においてAGC電圧の変化量の時間平均値に基づいて車両の移動による放送品質の劣化を確認する場合のチャンネル切替制御手順を示すフローチャートである。図6のチャンネル切替制御手順との相違は、ステップS908であるので、ステップS908について説明する。
【0085】
AGC電圧の変化量が第1の閾値未満である場合(ステップS902否定)、平均値算出部103は、AGC電圧の変化量の時間平均を算出する(ステップS908)。そして、チャンネル切替制御部101は、平均値算出部103によって算出されたAGC電圧の変化量の時間平均を用いてAGC電圧が増加しているか否かを調べる(ステップS909)。
【0086】
以上のように、AGC電圧の時間変化量の平均値を算出する平均値算出部103をさらに備えることとしたので、チャンネル切替制御部101は、平均値算出部103によって算出されたAGC電圧の時間変化量の平均値が第1の閾値未満であり、AGC電圧が上昇している状態が第2の所定の切替時間以上継続している場合、受信チャンネルを切替える。したがって、チャンネル切替制御部101は、車両が受信エリア外にいるか否かを精度良く判定できる。
【0087】
(9)車両速度に応じて受信チャンネルの切替時間を変更する場合のチャンネル切替制御手順
次に、図10を参照して、車載テレビ装置1において車両速度に応じて受信チャンネルの切替時間を変更する場合のチャンネル切替制御手順について説明する。図10は、車載テレビ装置1において車両速度に応じて受信チャンネルの切替時間を変更する場合のチャンネル切替制御手順を示すフローチャートである。図6のチャンネル切替制御手順との相違は、ステップS1009〜ステップS1010であるので、ステップS1009〜ステップS1010について説明する。
【0088】
AGC電圧が増加している場合は(ステップS1008肯定)、車速検出部104は、車速センサを用いて車両の速度データを取得する(ステップS1009)。そして、チャンネル切替制御部101は、車速検出部104によって検出された車両の速度に応じて第2の所定の切替時間を変更する(ステップS1010)。さらに、チャンネル切替制御部101は、AGC電圧の増加が変更された第2の所定の切替時間以上継続しているか否かを調べる(ステップS1011)。
【0089】
以上のように、車両の速度を検出する車速検出部104を備えることとしたので、チャンネル切替制御部101は、車速検出部104によって検出された車両の速度に対応付けて第2の所定の切替時間を変更することができる。したがって、車両の速度に応じて経過時間を変えて、移動距離から受信エリア外となるまでの時間を正確に判断できる。
【0090】
(10)受信チャンネルに応じて切替時間を変更する場合のチャンネル切替制御手順
次に、図11を参照して、車載テレビ装置1において受信チャンネルに応じて切替時間を変更する場合のチャンネル切替制御手順について説明する。図11は、車載テレビ装置1において受信チャンネルに応じて切替時間を変更する場合のチャンネル切替制御手順を示すフローチャートである。図6のチャンネル切替制御手順との相違は、ステップS1109〜ステップS1110であるので、ステップS1109〜ステップS1110について説明する。
【0091】
AGC電圧が増加している場合は(ステップS1108肯定)、チャンネル切替制御部101は、送受信チャンネル距離対応表112から該当するチャンネルの受信距離を取得する(ステップS1109)。そして、チャンネル切替制御部101は、取得したチャンネルの受信距離に応じて第2の所定の切替時間を変更する(ステップS1110)。さらに、チャンネル切替制御部101は、AGC電圧の増加が変更された第2の所定の切替時間以上継続しているか否かを調べる(ステップS1111)。
【0092】
以上のように、受信チャンネルと受信距離とを対応付けて記憶する受信チャンネル距離対応表112をさらに備えることとしたので、チャンネル切替制御部101は、受信チャンネル距離対応表112に記憶された該当する受信チャンネルに対応付けて第2の所定の切替時間を変更することができる。したがって、該当するチャンネルの受信距離に応じて経過時間を変えて、移動距離から受信エリア外となるまでの時間を正確に判断できる。
【実施例2】
【0093】
ところで、実施例1に係る車載テレビ装置1では、AGC検波器25、45がIF増幅器23、43で増幅された中間周波数の電波のレベル変動を制御する場合について説明したが、アナログ/デジタルチューナ21、41で高周波増幅された電波のレベル変動を制御する場合に適用することもできる。本実施例2に係る車載テレビ装置では、AGC検波器がアナログ/デジタルチューナ21、41で高周波増幅された電波のレベル変動を制御する場合について説明する。
【0094】
まず、図12を参照して、本実施例2に係る車載テレビ装置1aの構成について説明する。図12は、本実施例2に係る車載テレビ装置1aの構成を示す機能ブロック図である。同図に示すように、図1の実施例1の機能ブロック図との相違は、AGC検波器25a、45aであるので、AGC検波器25a、45aについて説明する。
【0095】
アナログチューナ21は、アンテナで受信した電波をチャンネル切替制御部101によって指定されたチャンネルに切替えると共に、電波を高周波増幅する回路である。AGC検波器25aは、アナログチューナ21で高周波増幅された電波のレベルを制御するAGC電圧をアナログチューナ21および品質評価信号生成回路30に出力する。
【0096】
また、デジタルチューナ41は、アンテナで受信した電波をチャンネル切替制御部101によって指定されたチャンネルに切替えると共に、電波を高周波増幅する回路である。AGC検波器45aは、デジタルチューナ41で高周波増幅された電波のレベルを制御するAGC電圧をデジタルチューナ41および品質評価信号生成回路50に出力する。
【0097】
以上のように、本実施例2に係る車載テレビ装置1aでは、AGC検波器25a、45aがそれぞれアナログチューナ21およびデジタルチューナ41で高周波増幅された電波のレベルを制御する点が実施例1に係る車載テレビ装置1と相違する。AGC検波器25a,45aから出力されたAGC電圧とAGC電圧の変化量によって電波の瞬断による放送品質の劣化と車両の移動による放送品質の劣化を識別する処理手順は、実施例1に係る車載テレビ装置1とまったく同様である。したがって、本実施例2に係る車載テレビ装置1aは、放送品質が劣化した場合、AGC電圧の時間変化に基づいて劣化が回復するか否かを識別して受信チャンネルを切替えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
以上のように、本発明にかかる受信装置は、移動体に搭載された放送受信装置に有用であり、特に、車両に搭載された放送受信装置に適している。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本実施例1に係る受信装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図2】車載テレビ装置の受信電波強度、AGC電圧、AGC電圧の変化量に関する時間変化の一例を示す図である。
【図3】車載テレビ装置の表示制御部が生成する切替情報の表示画像の一例を示す図である。
【図4】車載テレビ装置の表示制御部が生成する切替情報の表示画像の別の例を示す図である。
【図5】車載テレビ装置の表示制御部が生成する切替情報の表示画像のさらに別の例を示す図である。
【図6】車載テレビ装置において電波の瞬断による放送品質の劣化と車両の移動による放送品質の劣化を識別する場合のチャンネル切替制御手順を示すフローチャートである。
【図7】車載テレビ装置において受信電波の瞬断前の車両位置、受信時間、受信チャンネルを記憶する場合のチャンネル切替制御手順を示すフローチャートである。
【図8】車載テレビ装置において車両の移動による放送品質の劣化を複数回確認する場合のチャンネル切替制御手順を示すフローチャートである。
【図9】車載テレビ装置においてAGC変化量の時間平均値に基づいて車両の移動による放送品質の劣化を確認する場合のチャンネル切替制御手順を示すフローチャートである。
【図10】車載テレビ装置において車両速度に応じて受信チャンネルの切替時間を変更する場合のチャンネル切替制御手順を示すフローチャートである。
【図11】車載テレビ装置において受信チャンネルに応じて切替時間を変更する場合のチャンネル切替制御手順を示すフローチャートである。
【図12】本実施例2に係る車載テレビ装置の構成を示す機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0100】
1,1a 車載テレビ装置
2,4 アンテナ
10 主制御部
11 記憶部
12 表示制御部
13 ディスプレイ
14 GPS受信機
15 車速センサ
16 通信端末装置
20,20a アナログテレビ受信機
21 アナログチューナ
22 IF検波器
23 IF増幅器
24 復調部
25,25a AGC検波器
30,50 品質評価信号生成回路
31,51 遅延回路
32,52 減算器
33,53 ABS回路
34,35,54,55 D/A変換器
40,40a デジタルテレビ受信機
41 デジタルチューナ
42 IF検波器
43 IF増幅器
44 復調部
45,45a AGC検波器
46 MPEGデコーダ
101 チャンネル切替制御部
102 車両位置取得部
103 平均値算出部
104 車速検出部
111 受信チャンネル位置対応表
112 受信チャンネル距離対応表
201 アナログ/デジタルチューナ切替ボタン
202 チャンネルアップ/ダウンボタン
203 チャンネルサーチアップ/ダウンボタン
204 アナログ/デジタルテレビ受信機表示
205 チャンネル表示

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信する放送を切替える選局部を備えた受信装置であって、
前記選局部で選局された放送の放送信号における電波強度に基づいて前記選局部による受信放送局の切替を制御するチャンネル切替制御手段と、
前記チャンネル切替制御手段における選局切替条件が成立する場合において、前記受信放送を切り替えた場合に受信する放送に関する情報を表示する放送情報表示手段と、
を有することを特徴とする受信装置。
【請求項2】
受信する放送を切替える選局部を備えた受信装置であって、
前記選局部で選局された放送の放送信号における電波強度に基づいて前記選局部による受信放送局の切替を制御するチャンネル切替制御手段と、
前記チャンネル切替制御手段における選局切替条件が成立する場合、受信放送を切替えるか否かの応答要求を表示する応答要求表示手段とを有し、
前記チャンネル切替制御手段は、前記応答要求に対する応答に基づいて前記選局部による受信放送局の切替を制御することを特徴とする受信装置。
【請求項3】
前記応答要求に対して所定時間応答しなかった場合、前記選局部による受信放送局の切り替えを実行することを特徴とする請求項2に記載の受信装置。
【請求項4】
受信する放送を切替える選局部を備えた受信装置であって、
前記選局部で選局された放送の放送信号における電波強度に基づいて前記選局部による受信放送局の切替を制御するチャンネル切替制御手段を備え、
前記チャンネル切替制御手段における選局切替条件が成立する場合、受信放送に関する情報を入力する切替情報入力手段とを有し、
前記チャンネル情報は、前記切替情報入力手段で入力された受信放送情報に基づき、前記選局部の切り替えを制御することを特徴とする受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−159161(P2007−159161A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−15943(P2007−15943)
【出願日】平成19年1月26日(2007.1.26)
【分割の表示】特願2003−434741(P2003−434741)の分割
【原出願日】平成15年12月26日(2003.12.26)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】