説明

受信装置の等化部

【課題】同じ信号が周期的に含まれる周期性のあるデジタル変調信号を受信する受信装置の等化部4で、複雑な遅延プロファイルの環境下においても高精度な等化処理を行う。
【解決手段】主波検出手段15では、伝送路特性について初期位相を検出し、伝送路特性について信号の重心を検出し、重心が直交座標系の原点となるように伝送路特性の信号をシフトさせ、シフトさせられた信号を極座標系の信号へ変換し、変換結果の位相の平均化された傾きを検出し、変換結果の振幅を平均化し、位相の平均化された傾きと振幅の平均化結果と初期位相に基づいて直交座標系の主波成分の信号を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信装置の等化部に関し、特に、複雑な遅延プロファイルの環境下においても、高精度な等化処理を行う受信装置の等化部に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、直交周波数分割多重(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調方式(OFDM方式)が地上デジタル放送などに採用されている。例えば、地上デジタル放送のOFDM方式では、ガードインターバルが付加されているため、マルチパスの遅延時間がガードインターバル期間内であれば、適切な位置にFFT(Fast Fourier Transform)時間窓を設けることによりシンボル間干渉が生じることはない。
【0003】
例えば、OFDM信号の主波と反射波のガードインターバルの差分から雑音レベルと反射波の遅延時間を検出するガード差分検出部と、この雑音レベルと反射波の遅延時間から制御信号を算出する第1のマルチパス算出部と、SP(Scattered Pilot)をIFFT(Inverse FFT)して主波及び反射波の振幅レベルと遅延時間から制御信号を算出する第2のマルチパス算出部と、SPをFFTして検出した振幅レベルとドップラー周波数から制御信号を算出するドップラー周波数算出部を備え、これらによる各々の制御信号と、移動体からの速度情報に基づいて、時間内挿処理部を制御する、ことが検討されている(特許文献1参照。)。
【0004】
また、地上デジタル放送のOFDM方式では、シンボル長が長い特徴により、単一周波数ネットワーク(SFN:Single Frequency Network)を構築することを可能としている。SFNの構築の一例として、放送波を受信して同一チャンネルにて再送信する方式がある。
【0005】
しかしながら、このような方式では、再送信した信号が放送波を受信するアンテナに受けられてしまう「回り込み」が生じてしまう。この回り込みの影響により、再送信する放送波の信号品質が劣化してしまうこと、また、再送信するシステム、増幅器などが発振してしまうこと、が考えられる。これを回避するためには、送受信のアンテナを十分な間隔に離すことや、回り込み波が生じないようにアンテナ指向性を調整することや、回り込み波を打ち消すキャンセラー装置(回り込みキャンセラー)が必要となる。なお、このようなキャンセラー装置は、例えば、等化部(等化器)により実現される。
【0006】
従来例に係る等化部は、概略的には、例えば、本発明に係る実施例で参照される図1に示されるものと同様な構成を有しているが、等化部における主波検出部が、本発明に係る実施例で参照される図2に示されるものとは異なっている。
図9には、従来例に係る等化部における主波検出部101の構成例を示してある。
本例の主波検出部101は、初期位相検出部111、極座標変換部112、位相直線化部113、位相検出部114、平均値算出部115、直交座標変換部116、遅延補正部117を備えている。
本例の主波検出部101は、概略的には、本発明に係る実施例で参照される図2に示されるものと比べて、信号重心シフト部や信号重心検出部が備えられていない点で異なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−096626号公報
【特許文献2】特開2007−036549号公報
【特許文献3】特開2009−005227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来例に係る等化部では、例えば、低遅延且つ低D/U(Desired to Undesired signal)のマルチパスが原因となって、伝送路推定部からの出力信号が座標系の原点付近を通る場合には、直交座標から極座標へ変換すると大きな計算誤差を生じる。また、直交座標から極座標へ変換した後に位相補正を行って再び直交座標へ戻す構成であるため、後段で求める誤差の算出結果に、変換による演算誤差が重畳され、主波成分の検出精度が劣化するといった問題があった。
本発明は、このような従来の事情に鑑み為されたもので、例えば、複雑な遅延プロファイルの環境下においても、高精度な等化処理を行うことができる受信装置の等化部を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明では、同じ信号(例えば、ガードインターバルやプリアンブルやNULLなど)が周期的に含まれる周期性のあるデジタル変調信号を受信する受信装置の等化部において、次のような構成とした。
すなわち、誤差補正手段が、前記受信された信号について誤差(例えば、回り込み波による誤差や、マルチパスによる誤差)を補正する。FFT手段が、前記誤差補正手段により誤差が補正された信号に対してFFTを行う。伝送路特性検出手段が、前記FFT手段によるFFT結果に基づいて、伝送路特性を検出(例えば、推定的に検出)する。主波検出手段が、前記伝送路特性検出手段により検出された伝送路特性に基づいて、主波成分を検出する。ここで、前記誤差補正手段は、前記伝送路特性及び前記主波検出手段により検出された主波成分に基づいて、前記受信された信号について誤差を補正する。
【0010】
また、前記主波検出手段は、次のような構成とした。
すなわち、初期位相検出手段が、前記伝送路特性検出手段により検出された伝送路特性について、初期位相を検出する。重心検出手段が、前記伝送路特性について、信号の重心を検出する。重心シフト手段が、前記重心検出手段により検出された重心が直交座標系の原点となるように、前記伝送路特性の信号をシフトさせる。極座標変換手段が、前記重心シフト手段によりシフトさせられた信号を極座標系の信号へ変換する。位相傾検出手段が、前記極座標変換手段による変換結果の位相の平均化された傾きを検出する。振幅平均化手段が、前記極座標変換手段による変換結果の振幅を平均化する。直交座標変換手段が、前記位相傾検出手段により検出された位相の平均化された傾き、前記振幅平均化手段による平均化結果、及び前記初期位相検出手段により検出された初期位相に基づいて、直交座標系の主波成分の信号を生成する。
【0011】
従って、例えば、複雑な遅延プロファイルの環境下においても、高精度な等化処理を行うことができる。
ここで、変調方式としては、種々なものが用いられてもよく、例えば、OFDM方式や、シングルQAM(Quadrature Amplitude Modulation)方式などを用いることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によると、例えば、複雑な遅延プロファイルの環境下においても、高精度な等化処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施例に係る中継装置の構成例を示す図である。
【図2】本発明の一実施例に係る主波検出部の構成例を示す図である。
【図3】(a)は伝送路推定出力結果の一例を示す図であり、(b)は使用したマルチパスの設定を示す図である。
【図4】信号重心シフト部の入出力信号の一例を示す図である。
【図5】位相検出部の入出力信号の一例を示す図である。
【図6】位相傾の検出結果の比較の一例を示す図である。
【図7】I成分について主波検出部の入出力の一例を示す図である。
【図8】Q成分について主波検出部の入出力の一例を示す図である。
【図9】従来例に係る等化部における主波検出部の構成例を示す図である。
【図10】従来例に係る位相検出部の入出力信号の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る実施例を図面を参照して説明する。
図1には、本発明の一実施例に係る等化部(キャンセル部)を用いたOFDM受信装置を含む中継装置の構成例を示してある。
本例の中継装置は、アンテナ1、ダウンコンバータ2、A/D(Analog to Digital)変換器3、等化部4、再変調部5、D/A(Digtal to Analog)変換器6、アップコンバータ7、アンテナ8を備えている。
また、等化部4には、同期部(同期回路)11、加算器12、FFT部13、伝送路推定部14、主波検出部15、誤差算出部16、IFFT部17、係数更新部18、フィルタ19を備えている。
【0015】
本例の中継装置における動作の例を示す。
なお、本例の中継装置は、主に主波検出部15の構成や動作に特徴があり、他の部分については例えば従来と同様な構成や動作を用いることが可能である。
【0016】
本例の中継装置では、例えば、地上デジタル放送システムにおいて、放送局等から無線送信されたOFDM方式の信号を中継する。
アンテナ1で無線受信された地上デジタル放送での中継回線の高周波受信信号が、ダウンコンバータ2で中間周波数の受信信号へ変換され、A/D変換器3によりサンプリングされる。その結果について、等化部4で、伝送路で生じた歪みを補正し、受信信号の先行波や遅延波などのマルチパス波や、受信アンテナ(本例では、アンテナ1)に再送信信号が受信されて生ずる回り込み波をキャンセルする等化処理を行う。
【0017】
等化部4からの出力信号が、再変調部5に入力されて、波形整形後のOFDM信号が再生成され、D/A変換器6でデジタル−アナログ変換されて中間周波数の中継信号としてアナログ信号が出力される。この中間周波数の中継信号が、アップコンバータ7で地上デジタル放送での中継回線の高周波信号へ変換され、アンテナ8で無線により送信される。
【0018】
等化部4では、次のような動作が行われる。
A/D変換器3からの信号(受信された信号)が、同期部11を通って、加算器12に入力されてその信号からフィルタ19からの出力信号が減算(逆位相で加算)され、当該減算結果の信号が再変調部5、FFT部13、フィルタ19へ出力される。
ここで、同期部11では、A/D変換器3からの信号(受信された信号)について、例えば、シンボルの開始位置を見つけて、信号の同期を取り、以降の処理の基準となる制御信号を生成する。なお、同期部11では、例えば、ガードバンドを見つけて、1フレームの同期(例えば、先頭と最後)により時間の同期を取ることや、また、周波数及び位相の同期を取ることができる。
【0019】
FFT部13は、加算器12からの出力信号を入力して、FFTにより、時間軸信号から周波数軸信号へ変換して、伝送路推定部14へ出力する。
伝送路推定部14は、FFT部13からの出力信号を入力して、当該信号からパイロット信号を抽出して、伝送路特性を推定し、これにより得られた伝送路特性の信号F(ω)を主波検出部15へ出力する。ここで、伝送路推定部14は、例えば、パイロット信号の基準値からの振幅と位相のずれ(誤差)を検出して、時間方向(シンボル方向)と周波数方向(キャリア方向)の両方の補正値を得ることができる。なお、パイロット信号としては、例えば、SP(Scattered Pilot)や、CP(Continual Pilot)を用いることができる。
【0020】
主波検出部15は、伝送路推定部14から出力される伝送路特性の信号F(ω)を入力して、これに基づいて、主波成分D(ω)を検出して、F(ω)、D(ω)を誤差算出部16へ出力する。
誤差算出部16は、主波検出部15から出力されたF(ω)、D(ω)を入力して、主波成分(主波検出部15により補正されたデータ)について、誤差Ec(ω)、Em(ω)を算出して、その結果をIFFT部16へ出力する。なお、fを周波数とすると、f=ω/2πとなる。
【0021】
IFFT部17は、誤差算出部16からの出力信号を入力して、IFFTにより、Ec(ω)、Em(ω)のそれぞれを周波数軸信号から時間軸信号へ変換して、係数更新部18へ出力する。
係数更新部18は、IFFT部17から出力された信号を入力して、これに基づいて、フィルタ19の係数(フィルタ係数)を更新する。このフィルタ係数は、Ec(ω)、Em(ω)の両方を打ち消すためのものであり、本例では、Ec(ω)、Em(ω)に対応する成分(擬似的な回り込み波やマルチパスの信号)を実現するものである。
【0022】
フィルタ19は、係数更新部18により更新されたフィルタ係数(例えば、係数更新部18から入力されたフィルタ係数)を用いて、加算器12からの出力をフィルタリングすることにより、擬似的に回り込み波やマルチパスの信号を生成して、加算器12へ出力する。
これにより、加算器12では、同期部11からの受信信号(等化部4への入力信号)からフィルタ19からの信号(擬似的な回り込み波やマルチパスの信号)が減算され、回り込み波やマルチパスがキャンセルされる。
【0023】
本例の主波検出部15について詳しく説明する。
図2には、本発明の一実施例に係る主波検出部15の構成例を示してある。
本例の主波検出部15は、初期位相検出部21、信号重心検出部22、信号重心シフト部23、極座標変換部24、位相直線化部25、位相検出部26、平均値算出部27、直交座標変換部28、遅延補正部29を備えている。
【0024】
本例の主波検出部15において行われる動作の例を示す。
伝送路推定部14から出力された直交座標系の信号F(ω)=I+jQが初期位相検出部21に入力される。ここで、jは虚数を表し、I、Qは複素信号となる。
初期位相検出部21は、伝送路推定部14から入力された信号F(ω)について初期位相を検出し、信号F(ω)を信号重心検出部22、信号重心シフト部23、遅延補正部29へ出力する。
なお、本例では、初期位相検出部21により検出された初期位相は、直交座標変換部28へ出力(通知)される。
【0025】
信号重心検出部22は、初期位相検出部21から入力された信号F(ω)の信号重心Isft、Qsftを検出して信号重心シフト部23へ出力する。ここで、信号重心Isft、Qsftは(式1)のように表される。nは周波数f方向のサンプル数である。
【0026】
【数1】

【0027】
信号重心シフト部23は、初期位相検出部21から入力された信号F(ω)=I+jQ及び信号重心検出部22から入力された信号重心Isft、Qsftに基づいて、この信号重心Isft、Qsftの位置を直交座標系の原点へシフトさせて、その結果の信号Fs(ω)=Is+jQsを極座標変換部24へ出力する。ここで、信号Is、Qsは(式2)のように表される。
【0028】
【数2】

【0029】
極座標変換部24は、極座標変換により、信号重心シフト部23から入力されたシフト後の信号Is、Qsを振幅信号rと位相信号θへ変換し、得られた位相信号θを位相直線化部25へ出力し、得られた振幅信号rを平均値算出部27へ出力する。ここで、振幅信号rは(式3)のように表され、位相信号θは(式4)のように表される。
【0030】
【数3】

【数4】

【0031】
位相直線化部25は、直線化により、極座標変換部24から入力された位相信号θのとびを直して、その結果の位相信号θ’を位相検出部26へ出力する。
位相検出部26は、平均化を用いて、位相直線化部25から入力された位相信号θ’の傾き(位相傾)dθ’を検出(例えば、計算)して、直交座標変換部28へ出力する。ここで、平均化された位相傾dθ’は(式5)のように表される。
【0032】
【数5】

【0033】
平均値算出部27は、極座標変換部24から入力された振幅信号rを平均化して平均振幅raveを算出(計算)して、直交座標変換部28へ出力する。ここで、平均振幅raveは(式6)のように表される。
【0034】
【数6】

【0035】
直交座標変換部28は、位相検出部26から入力された位相傾dθ’及び平均値算出部27から入力された平均振幅raveに基づいて、直交座標変換により、これらを直交座標系の信号D(ω)=I’+jQ’へ変換し、主波成分D(ω)として誤差算出部16へ出力する。ここで、主波成分D(ω)は、F(ω)に対して平均化により干渉の影響が無くなった(或いは、低減された)とみなされるものであり、理想的な特性とみなされる。
なお、本例では、直交座標変換部28は、直交座標への変換において、初期位相検出部21により検出された初期位相の補正(例えば、挿入)を行う。
遅延補正部29は、初期位相検出部21から入力された信号F(ω)=I+jQを遅延させて、誤差算出部16へ出力する。この遅延量としては、例えば、D(ω)とF(ω)のタイミングを合わせるための量が設定される。
【0036】
ここで、等化部4で回り込みのキャンセルを行う場合、回り込みのキャンセル誤差Ec(ω)は、伝送路特性F(ω)及び主波成分D(ω)を用いて、特性式(式7)により求められる。
同様に、等化部4でマルチパスのキャンセルを行う場合、マルチパスのキャンセル誤差Em(ω)は、伝送路特性F(ω)及び主波成分D(ω)を用いて、特性式(式8)により求められる。
【0037】
【数7】

【数8】

【0038】
次に、本例の信号重心シフトの効果について、波形例を挙げて詳しく説明する。
図3(a)には、伝送路推定部14からの出力信号(伝送路推定出力結果)の一例である複素信号I、Qを示してある。横軸は、サンプル数(周波数f)を示しており、縦軸は振幅を示している。本例では、受信信号にマルチパスが混入していることから、歪みを生じている。
図3(b)の表には、本例で使用したマルチパスの設定を示してある。
【0039】
図4には、信号重心シフト部23の入出力信号(入力信号F(ω)、出力信号Fs(ω))の一例を示してある。横軸はI成分を示しており、縦軸はQ成分を示している。信号重心検出部22により検出された受信信号の重心点を座標系の原点へシフトさせている。
【0040】
図5には、位相検出部26の入出力信号(入力信号である位相θ’、出力信号である位相傾dθ’)の一例を示してある。横軸はサンプル数を示しており、縦軸は位相[°]を示している。
図10には、図9に示されるような従来例に係る主波検出部101における位相検出部114の入出力信号(入力信号である位相θ’、出力信号である位相傾dθ’)の一例を示してある。横軸はサンプル数を示しており、縦軸は位相[°]を示している。従来例は、信号重心シフトを行わない場合の例である。図10に示されるA点で、極座標変換における誤差が生じている。
【0041】
図6には、図5に示される本例の位相傾dθ’(信号重心シフトあり)と図10に示される従来例に係る位相傾dθ’(信号重心シフト無し)を比較した結果の一例を示してある。横軸はサンプル数を示しており、縦軸は位相[°]を示している。
図7には、I成分について、主波検出部15の入出力の一例を示してあり、具体的には、伝送路特性I、本例の主波成分I、従来例に係る主波成分Iを示してある。横軸はサンプル数を示しており、縦軸は位相[°]を示している。
図8には、Q成分について、主波検出部15の入出力の一例を示してあり、具体的には、伝送路特性Q、本例の主波成分Q、従来例に係る主波成分Qを示してある。横軸はサンプル数を示しており、縦軸は位相[°]を示している。
【0042】
図7では、伝送路特性Iのピーク位置、本例の主波成分Iのピーク位置、従来例に係る主波成分Iのピーク位置の順に、a1、b1、c1でマークしている。
同様に、図8では、伝送路特性Qのピーク位置、本例の主波成分Qのピーク位置、従来例に係る主波成分Qのピーク位置の順に、a2、b2、c2でマークしている。
本例の主波成分では、従来例に係るものよりも、ピーク位置が伝送路特性に近付いていることから、本例のように信号の重心へ原点をシフトすることにより、受信信号の位相をより正確に検出することができている。
【0043】
具体的には、本例では、信号の重心へ原点をシフトすることにより、原点付近に信号が(なるべく)通らないようにしており、原点付近(θが小さく誤差の影響が大きいところ)に信号が通って象限のとびが生じてしまうことを抑制している。なお、従来例のように信号の重心へ原点をシフトしない場合には、干渉によって原点付近に信号が通って、図10に示されるA点のようなとびが生じてしまう可能性が本例より高いと考えられる。
【0044】
このように、本例では、座標系を変換する際の計算誤差を抑えた主波推定を行うことができ、例えば、複雑な遅延プロファイル環境下においても、品質良く中継伝送することが可能となる。具体的には、本例では、受信したOFDM信号のマルチパス成分が伝送路特性F(ω)に重畳されているため、主波成分D(ω)を検出する際に、伝送路特性F(ω)の信号重心を考慮した主波成分D(ω)の検出(推定)を行う。
【0045】
また、本例では、地上デジタル放送のOFDM受信装置の復調部のFFTを例として説明したが、本例のような構成や動作は、必ずしも地上デジタル放送のOFDMに限られず、例えば、ガードインターバル期間があるデジタル変調方式の受信装置或いはその等化部或いはその位相回転部や、ガードインターバル期間があるデジタル変調方式の受信装置を用いた中継装置などに適用することができる。
【0046】
以上のように、本例では、有効シンボルにガードインターバルが付加されるデジタル変調方式で変調された信号(例えば、映像信号や音声信号やデータ信号)を伝送する伝送システムにおいて、次のような構成とした。
すなわち、変調された信号を受信する受信装置における復調用のFFT窓の取り出し位置のずれにより生じる位相回転を検出する処理部(位相回転検出処理部)において、伝送路特性について、信号重心検出部22、信号重心シフト部23、極座標変換部24、位相直線化部25、位相検出部26、直交座標変換部28で構成された位相回転量の推定回路を有する。
【0047】
また、本例では、有効シンボルにガードインターバルが付加されて変調された信号を受信する受信装置で、受信信号の先行波や遅延波などのマルチパス波をキャンセルする装置(マルチパス波キャンセル装置)において、上記のような位相回転検出処理部を有し、当該位相回転検出処理部を用いて主波成分を検出する。
また、本例では、有効シンボルにガードインターバルが付加されて変調された受信信号を同じ周波数で再送信する中継装置で、受信アンテナに再送信信号が受信されて生じる回り込み波をキャンセルする装置(回り込み波キャンセル装置)において、上記のような位相回転検出処理部を有し、当該位相回転検出処理部を用いて主波成分を検出する。
【0048】
また、本例では、受信装置において、上記のような位相回転検出処理部又は上記のようなマルチパス波キャンセル装置の少なくとも一方を用いる。
また、本例では、このような受信装置において、変調方式として、直交周波数分割多重(OFDM)変調方式を用いる。
また、本例では、中継装置において、上記のような位相回転検出処理部又は上記のようなマルチパス波キャンセル装置又は上記のような回り込み波キャンセル装置の少なくとも1つを用いる。
また、本例では、このような中継装置において、変調方式として、直交周波数分割多重(OFDM)変調方式を用いる。
本例では、上記のようなマルチパス波キャンセル装置や上記のような回り込み波キャンセル装置を用いる等化部を実施することができる。
【0049】
従って、本例のOFDM受信装置などでは、信号重心を考慮した位相回転の推定を行って主波成分の位相を決定することで、例えば、複雑な遅延プロファイルの環境下(具体例として、低遅延且つ低D/Uの遅延プロファイルの環境下)においても、複雑なマルチパスが含まれる受信したOFDM信号の主波成分を正確に検出することができ、これにより、安定したキャンセル動作を行うことができ、品質良く中継伝送することができる。
【0050】
ここで、本例では、本例に特徴的な構成や動作を、OFDM方式を使用する装置等に適用した場合を示したが、他の例として、シングルQAMなどのようにOFDM方式を用いない方式を使用する装置等に適用することも可能である。
また、本例では、繰り返しのある(周期性のある)デジタル変調信号に周期的に含まれる同じ信号として、ガードインターバルを用いた場合を示したが、他の例として、プリアンブルやNULLなどが用いられてもよい。QAM(シングルQAM)では、例えば、繰り返されるプリアンブルやNULLが使用される。
【0051】
なお、本例の中継装置が有する受信装置の等化部4では、誤差算出部16やIFFT部17や係数更新部18やフィルタ19や加算器12の機能により誤差補正手段が構成されており、FFT部13の機能によりFFT手段が構成されており、伝送路推定部14の機能により伝送路特性検出手段が構成されており、主波検出部15の機能により主波検出手段が構成されている。また、本例の主波検出部15では、初期位相検出部21の機能により初期位相検出手段が構成されており、信号重心検出部22の機能により重心検出手段が構成されており、信号重心シフト部23の機能により重心シフト手段が構成されており、極座標変換部24の機能により極座標変換手段が構成されており、位相直線化部25や位相検出部26の機能により位相傾検出手段が構成されており、平均値算出部27の機能により振幅平均化手段が構成されており、直交座標変換部28の機能により直交座標変換手段が構成されている。
【0052】
ここで、本発明に係るシステムや装置などの構成としては、必ずしも以上に示したものに限られず、種々な構成が用いられてもよい。また、本発明は、例えば、本発明に係る処理を実行する方法或いは方式や、このような方法や方式を実現するためのプログラムや当該プログラムを記録する記録媒体などとして提供することも可能であり、また、種々なシステムや装置として提供することも可能である。
また、本発明の適用分野としては、必ずしも以上に示したものに限られず、本発明は、種々な分野に適用することが可能なものである。
また、本発明に係るシステムや装置などにおいて行われる各種の処理としては、例えばプロセッサやメモリ等を備えたハードウエア資源においてプロセッサがROM(Read Only Memory)に格納された制御プログラムを実行することにより制御される構成が用いられてもよく、また、例えば当該処理を実行するための各機能手段が独立したハードウエア回路として構成されてもよい。
また、本発明は上記の制御プログラムを格納したフロッピー(登録商標)ディスクやCD(Compact Disc)−ROM等のコンピュータにより読み取り可能な記録媒体や当該プログラム(自体)として把握することもでき、当該制御プログラムを当該記録媒体からコンピュータに入力してプロセッサに実行させることにより、本発明に係る処理を遂行させることができる。
【符号の説明】
【0053】
1、8・・アンテナ、 2・・ダウンコンバータ、 3・・A/D変換器、 4・・等化部、 5・・再変調部、 6・・D/A変換器、 7・・アップコンバータ、 11・・同期部、 12・・加算器、 13・・FFT部、 14・・伝送路推定部、 15、101・・主波検出部、 16・・誤差算出部、 17・・IFFT部、 18・・係数更新部、 19・・フィルタ、 21、111・・初期位相検出部、 22・・信号重心検出部、 23・・信号重心シフト部、 24、112・・極座標変換部、 25、113・・位相直線化部、 26、114・・位相検出部、 27、115・・平均値算出部、 28、116・・直交座標変換部、 29、117・・遅延補正部、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同じ信号が周期的に含まれる周期性のあるデジタル変調信号を受信する受信装置の等化部において、
前記受信された信号について誤差を補正する誤差補正手段と、
前記誤差補正手段により誤差が補正された信号に対してFFTを行うFFT手段と、
前記FFT手段によるFFT結果に基づいて伝送路特性を検出する伝送路特性検出手段と、
前記伝送路特性検出手段により検出された伝送路特性に基づいて主波成分を検出する主波検出手段と、を備え、
前記誤差補正手段は、前記伝送路特性及び前記主波検出手段により検出された主波成分に基づいて、前記受信された信号について誤差を補正し、
更に、
前記主波検出手段は、前記伝送路特性検出手段により検出された伝送路特性について初期位相を検出する初期位相検出手段と、
前記伝送路特性について信号の重心を検出する重心検出手段と、
前記重心検出手段により検出された重心が直交座標系の原点となるように前記伝送路特性の信号をシフトさせる重心シフト手段と、
前記重心シフト手段によりシフトさせられた信号を極座標系の信号へ変換する極座標変換手段と、
前記極座標変換手段による変換結果の位相の平均化された傾きを検出する位相傾検出手段と、
前記極座標変換手段による変換結果の振幅を平均化する振幅平均化手段と、
前記位相傾検出手段により検出された位相の平均化された傾き、前記振幅平均化手段による平均化結果、及び前記初期位相検出手段により検出された初期位相に基づいて、直交座標系の主波成分の信号を生成する直交座標変換手段と、を有する、
ことを特徴とする受信装置の等化部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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