説明

受信装置及びIQ偏差補償方法

【課題】IQブランチ間偏差による性能劣化を改善することができる受信装置及びIQ偏差補償方法を提供すること。
【解決手段】受信装置100は、スケジューリングによって一部の周波数帯域を割り当てる通信システムに適用され、RB位置通知部115は、復号部114により復号されたCCH情報に基づいて、RB位置情報を抽出して通知する。IQ差調整制御部116は、帯域割当情報を解析し、特定の周波数帯域に割り当てがない場合に、IFフィルタ103の帯域除去フィルタ102をONするとともに、除去した帯域に現れるイメージ成分が最小となるようにIQ差調整部113を制御する。帯域除去フィルタ102は、帯域を狭くしてRBの割り当てられていない帯域の信号を除去する。IQ差調整部113は、FFT後の周波数領域信号に対して、上記イメージ成分が最小になるようにIQ差を自動調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スケジューリングによって一部の周波数帯域を割り当てる通信システムにおいて使用される受信装置及びIQ偏差補償方法に関し、詳細には、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)方式に好適な受信装置及びIQ偏差補償方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、3GPP RAN LTE(3rd Generation Partnership Project Radio Access Network Long Term Evolution)においては、高速大容量通信を実現するために、多くの技術が検討されている。例えば、移動通信システムのマルチパス干渉に強いOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)、フェージング変動する伝搬路品質に応じて変調方式及び符号化率を変化させるAMC(Adaptive Modulation and Coding:適応変調符号化)、OFDM帯域を複数のRB(Resource Block)に分割し、伝搬路状態の良好なRBに優先的に送信パケットを割り当てる周波数スケジューリング、符号化技術と再送技術とを組み合わせて効率的に再送を行うハイブリッド自動再送要求(HARQ:Hybrid Automatic Repeat Request)、及び送受信装置において複数のアンテナを用いて通信を行うMIMO(Multiple-Input Multiple-Output)などの技術がある。
【0003】
OFDMは、多数のサブキャリアを用いてデータを並列伝送するマルチキャリア伝送技術であり、高い周波数利用効率、マルチパス環境下のシンボル間干渉低減などの特徴を持ち、伝送効率の向上に有効であることが知られている。このOFDM方式において複数のサブキャリアを束ねたRB毎に適応変調や周波数スケジューリングを適用し周波数利用効率を改善する技術が検討されている。
【0004】
端末に対する周波数帯域上でのRBの割当方法として、(1)回線品質に応じたスケジューリング、つまり、周波数スケジューリングによってRBを割り当てる方法(Frequency Scheduled Allocation:FSA)と、(2)予め定められた割当パターンに従ってRBを割り当てる方法(Persistent Scheduled Allocation:PSA)との2種類がある。ここでのRBは、サブキャリアをいくつかまとめてブロック化したものである。
【0005】
FSAでは、各端末に割り当てられるRBが各端末のRB毎の回線品質に応じてRB割当の都度変化するため、基地局から各端末へのスケジューリング結果の通知は必要となるが、大きなマルチユーザダイバーシチ効果を得ることができる。また、PSAでは、各端末に割り当てられるRBは時間軸上の送信タイミングと周波数軸上の送信RBとで表される予め定められた割当パターンに従ったRBに固定されるため、FSAに比べマルチユーザダイバーシチ効果は小さくなるが、基地局から各端末へのスケジューリング結果の通知は不要となる。また、PSAでは基地局から端末に割当パターンが予め通知されており、端末ではその通知により自端末に割り当てられたRBを判断することができる。
【0006】
図4は、OFDM方式のリソースブロック(RB)の配置例を示す図であり、縦軸に周波数を、横軸に時間をとる。図4において、1ブロックが1サブキャリア(SC)を示し、周波数軸上から見た場合、この周波数帯(例えば10MHz)はN個のサブキャリア(SC)であり、時間軸上から見ると1サブフレームは14シンボルである。また、1サブフレームのうち7シンボルが1ダウンリンク・スロットである。1リソースブロックは連続するM個のサブキャリアからなり、1スロットに対して周波数方向に複数のリソースブロックが配置される。図4のハッチングがリソースブロック(RB)である。
【0007】
一方、特許文献1には、BB−LPFの特性込みでIFフィルタの特性をトランスバーサルフィルタで補正するマルチキャリア変調方式の受信装置が記載されている。特許文献1記載の受信装置は、振幅及び遅延時間差を補償するもので、以下の技術要素を持つ。
【0008】
(1)IFフィルタ(SAW等)の群遅延特性を、直交検波後、その逆フィルタ特性を持つベースバンドトランスバーサルフィルタで補償する。
【0009】
(2)トランスバーサルフィルタのタップ係数は自動計算する。IFフィルタの入力を切り換え、正弦波(掃引)を入力してI/Q−BB−LPF出力を測定し、その逆特性を計算し、逆フーリエ変換により求める。
【0010】
(3)IFフィルタフィルタの周波数特性補償を目的とする。しかし、BB−LPF込みで逆フィルタ特性を求め適用する構成となっているため、IQ振幅/遅延差も同時に補償される。これは、アナログLPFの特性(差)を逆特性のディジタルフィルタで補償することにもなっている。
【特許文献1】特開平10−200500号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、このような従来の受信装置にあっては、起動時あるいは受信動作開始前のキャリブレーションを想定したものであり受信中の調整ができないという欠点がある。また、直交復調用IFローカル発振器が周波数特性測定のための信号源を兼ねているため、信号帯域幅分の周波数可変範囲が必要となりローカル信号の低雑音化が難しくなるという欠点がある。
【0012】
上述したように、LTEは、既存の3GPPの周波数帯を用いて、システム(基地局)に応じて複数の帯域(1.4M/3M/5M/10M/15M/20M)のシステム帯域に対応する。したがって、基地局間ハンドオーバーによって、システム帯域が変わることがあり、その場合であっても受信装置は受信動作を継続しなければならない。この時、受信装置はシステム帯域に応じてアナログBB−LPFの帯域を切り替えるため、IQ差が変化する。従来の受信装置では受信を完全停止しないとキャリブレーションできないので、IQ差による性能劣化が発生した状態で受信し続けることになってしまう。
【0013】
また、妨害波レベルに応じてBB−LPFの特性を適応的に変える場合がある。図5は、妨害波レベルに応じてBB−LPFの特性を適応的に変える場合の一例を示す図である。図5(a)は妨害波が大きい場合のBB−LPF特性を示しており、大きな減衰量を得るために高次のフィルタ特性となっている。図5(b)は妨害波が小さい場合を示しており、減衰量が小さくてよいため低次のフィルタ特性になっている。高次フィルタは消費電力が大きいため、妨害波が小さいときは低次フィルタに切り替えることによって、低消費電力化が図れる。上記のようなフィルタ切り替えを行うと、フィルタ特性のばらつきによりIQ差が変化する。従来の受信装置では受信を完全停止しないとキャリブレーションできないので、IQ差による性能劣化が発生した状態で受信し続けることになってしまう。
【0014】
上記課題に加えて、LTE端末では以下のような課題がある。
【0015】
LTEでは、ユーザデータは、リソースブロック単位(例えば1RB=180kHz、1RB=12サブキャリア)で伝送される(図4参照)。一般にBB−LPFは信号帯域端ほど特性ばらつきが大きくなるため、IQ間の振幅/遅延差も帯域端で大きくなる。したがって、帯域端近傍の1RBだけが割り当てられると極端に性能が劣化してしまうという課題がある。
【0016】
これまでのシステム設計検討により、所望の受信性能(スループット、BER)を確保するためには、従来例以上にIQ間振幅/位相偏差の影響が大きいことがわかった。
【0017】
1つの劣化要因に対して各々EVM=3%を割り当てた場合、
・IQ振幅差 <0.45dB
・IQ遅延差 <0.025sample(FFT)
であった。したがって、システム帯域20MHzの場合には、FFTのサンプリング周波数が30.72MHzとなるので、0.025sampleは0.82nsとなる。信号帯域端サブキャリアの離調周波数(9MHZ)における位相差に換算すると2.7degとなる。これは、アナログBB−LPFに対しては非常に厳しい仕様であり、個別調整や選別によるI/Qペアリング等が必要になってしまう。
【0018】
以下、IQ遅延差、IQ振幅差とEVMの関係について図6及び図7を参照して説明する。
【0019】
図6は、IQ遅延差[ns]とEVM(Error Vector Magnitude)[%]の関係を示す特性図である。システム帯域=20MHz、1RB受信の最悪条件を示す。また、図7は、IQ振幅差[dB]とEVM[%]の関係を示す特性図である。システム帯域=20MHz、full−RB受信を示す。IQ振幅差においては、1RB受信の場合も同等のEVMとなる。
【0020】
図6及び図7に示すように、IQ遅延差及びIQ振幅差とEVMの関係において、例えばEVM=3%を配分しても、IQ遅延差≒0.8ns,IQ振幅差≒0.45dBとなることが分かる。これは、アナログBB−LPFには非常に厳しい仕様である。
【0021】
また、LTE信号は、広帯域であるため、高速なADCが必要であり、これはコスト及び消費電流の増大に加えて、ビット数が10bit程度に制限される。ADCのビット数が10bit程度に制限されると、妨害波電力に十分なビット数を配分できない。したがって、A/D変換前にアナログLPFでの抑圧が必要となるため、フィルタを軽くすることができず、アナログLPFのばらつきによってI/Q不均衡(振幅,遅延)が大きくなる。
【0022】
上述したように、従来の受信装置にあっては、(1)IQ差の所要仕様が非常に厳しい。(2)全システム帯域でIQ差の所要仕様を満たす必要がある。すなわち、LPFは帯域切替を行ってもIQ差の所要仕様を満たす必要がある。(3)BB−AGCアンプのIQ差(主にIQ振幅差)も含む全てのゲイン設定で満たす必要がある。(4)温度特性も考慮する必要がある。したがって、何らかの調整機能が必要である。その調整機能は、システム帯域毎/AGCゲイン設定毎/温度毎に行うことが考えられる。
【0023】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、IQブランチ間偏差による性能劣化を改善することができる受信装置及びIQ偏差補償方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明の受信装置は、通過帯域幅を切り換え可能なフィルタ手段と、帯域通過した受信信号をIQベースバンド信号に周波数変換するミキサ手段と、デジタル化された前記IQベースバンド信号を周波数領域信号に変換する時間・周波数変換手段と、前記周波数領域信号に対してIQ差の調整を行うIQ差調整手段と、IQ差調整された受信データを復号化する復号手段と、前記復号手段により復号された制御情報に基づいて、予めスケジューリングされた帯域割当情報を抽出する帯域割当情報抽出手段と、抽出された前記帯域割当情報を解析し、特定の周波数帯域が割り当てられていない場合に、前記フィルタの帯域を狭くして前記特定の周波数帯域の信号を除去するとともに、その除去した帯域に現れるイメージ成分が最小なるようとなるように前記IQ差調整手段を制御するIQ差調整制御手段と、を備える構成を採る。
【0025】
本発明のIQ偏差補償方法は、スケジューリングによって一部の周波数帯域を割り当てる通信システムのIQ偏差補償方法であって、フィルタにより受信信号を所定帯域のみ通過させるステップと、帯域通過した受信信号をIQベースバンド信号に周波数変換するステップと、デジタル化された前記IQベースバンド信号を周波数領域信号に変換するステップと、前記周波数領域信号に対してIQ差の調整を行うステップと、IQ差調整された受信データを復号化するステップと、復号された制御情報に基づいて、予めスケジューリングされた帯域割当情報を抽出するステップと、抽出された前記帯域割当情報を解析し、特定の周波数帯域が割り当てられていない場合に、前記フィルタの帯域を狭くして前記特定の周波数帯域の信号を除去するとともに、その除去した帯域に現れるイメージ成分が最小なるようとなるように制御するステップとを有する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、特定の周波数帯域が割り当てられていない場合に、フィルタの帯域を狭くし、かつIQ差調整を制御することにより、受信動作中のIQ差調整を実現して温度変化や経時変化、あるいはシステム帯域切り換え等のBB回路の動作モード変化によらず、安定した改善効果を維持することができる。また、IQブランチ間偏差による性能劣化を改善することができ、アナログBB回路の仕様を緩和し、IC化に適した無線受信回路を提供することができる。また、IFローカル発振器の周波数可変幅を大きくする必要がないため、ローカル信号の低雑音化が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0028】
(実施の形態)
図1は、本発明の一実施の形態に係る受信装置の構成を示す図である。本実施の形態は、スケジューリングによって一部の周波数帯域を割り当てる通信システムであって、RB割当情報を通知する制御チャネル(CCH)が周波数分割多重され、かつ、割当情報は少なくとも1サブフレーム以上前のサブフレームのCCHで通知される通信システムに対応した受信装置に適用した例である。サブフレーム構成の例を図8に示す。CCHはサブフレームの前半のスロットの中央のRBに配置されている。
【0029】
図1において、受信装置100は、バンドパスフィルタ(BPF)101、帯域除去フィルタ102、直交ミキサ部104、I信号可変利得アンプ105、Q信号可変利得アンプ106、I信号チャネル選択フィルタ107、Q信号チャネル選択フィルタ108、I信号ADコンバータ(ADC)109、Q信号ADコンバータ(ADC)110、ガードインターバル(GI)除去部111、高速フーリエ変換部(FFT)112、IQ差調整部113、復号部114、RB位置通知部115、及びIQ差調整制御部116を備えて構成される。上記BPF101及び帯域除去フィルタ102は、IFフィルタ103を構成する。なお、上記GI除去部111、FFT112、IQ差調整部113、復号部114、RB位置通知部115、及びIQ差調整制御部116は、デジタルベースバンド処理部(DBB)を構成する。
【0030】
BPF101は、IF信号から所望の周波数帯域の信号のみを通過させる。
【0031】
帯域除去フィルタ102は、IQ差調整制御部116からの制御信号によりON/OFF制御され、ON時には受信信号のCCHの帯域より低周波数側を除去する。スーパーヘテロダイン方式の場合、周波数固定となるIFフィルタ103で処理する方が実現性が高い。本実施の形態では、IFフィルタ103により除去する。帯域除去フィルタ102は、CCHの帯域近傍から除去できる特性であればよく、システム帯域によらず同一フィルタを用いることができるが、システム帯域によって特性を変えてもよい。
【0032】
直交ミキサ部104は、IFフィルタ103から入力したIF周波数(中間周波数)の受信信号をアナログ直交検波して、I成分をI信号可変利得アンプ105に出力するとともに、Q成分をQ信号可変利得アンプ106に出力する。直交検波の際に、π/2移相回路の不完全性により直交誤差が生じる。
【0033】
可変利得アンプ105,106は、可変利得機能を有し直交ミキサ部104から出力されるI信号及びQ信号の振幅を予め設定された振幅に調整する。
【0034】
チャネル選択フィルタ107,108は、帯域可変フィルタからなり可変利得アンプ105,106の出力信号であるI,Q信号を帯域制限することにより自己チャネル信号を選択する。この際に、チャネル選択フィルタ107とチャネル選択フィルタ108との個体差により、I成分とQ成分との間に振幅差及び遅延時間差が生じる。
【0035】
ADC109,110は、IQ−BB信号をデジタル変換してGI除去部111に出力する。なお、図示は省略するが、ADC109,110出力は、RSSI(Received Signal Strength Indicator)に入力され、RSSIで得られた信号振幅に応じてAGC(Automatic Gain Control)が高周波アンプ(図示略)及び可変利得アンプ105,106の利得を制御する。
【0036】
GI除去部111は、ADC109,110から入力したI,Q信号からGIを除去してFFT112に出力する。
【0037】
FFT112は、GIが除去されたN系列の並列信号に対して、NポイントのFFT演算を行うことにより、N系列の並列信号を周波数領域から時間領域に変換する。そして、FFT112は、FFT演算後の複素数である並列信号をIQ差調整部113に出力する。
【0038】
IQ差調整部113は、FFT後の周波数領域信号に対してIQ差を自動調整する。IQ差補正は、FFT後でI又はQ信号にのみ関与する成分に分離し、一方にIQ差分に相当する複素補正係数を乗算する。詳細については、図2により後述する。なお、周波数領域でのIQ差補正方法それ自体に特徴があるのではなく、IQ差調整制御部116が、RB割り当て状況に応じて、IQブランチ間偏差の調整動作が可能か否かを判定し、可能な場合にIQ差調整部113により調整を行うことにある。また、IQ差調整部113は、IQ差調整制御部116から、除去した帯域に現れるイメージ成分が最小になるよう自動調整された補正係数が供給されることに特徴がある。
【0039】
復号部114は、IQ差調整部113によりIQ差が調整された復調信号を伝播路補償とデインタリーブ及び誤り訂正等の復号処理し、復号処理後の信号を外部に出力するとともに、制御CH情報(CCH情報)をRB位置通知部115に出力する。
【0040】
RB配置通知部115は、復号したCCH情報に基づいてRB位置情報を抽出し、抽出したRB位置情報をIQ差調整制御部116に通知する。
【0041】
IQ差調整制御部116は、RB位置情報からIQ差調整が可能な状態を検出し、IFフィルタ103の帯域除去フィルタ102のON/OFFと、IQ差調整部113のIQ差調整の開始を制御する。
【0042】
具体的には、IQ差調整制御部116は、RBが帯域除去フィルタ102の減衰域に割り当てられていない時、帯域除去フィルタ102をONするとともに、IQ差調整部113に対して除去した帯域に現れるイメージ成分が最小になるように補償パラメータ(複素係数)を最適化し、最適化した補正係数をIQ差調整部113に出力する。IQ不均衡(振幅差,遅延差)があると、除去した帯域にイメージ成分が発生する。IQ差調整制御部116は、LMS(Least Means Square:最小自乗法)アルゴリズム等により、このイメージ成分が最小となるように補正パラメータを最適化する。なお、これらの制御は、必ずしも毎回行なわなくてもよい。
【0043】
図2は、IQ差調整部113の詳細な構成を示す図である。
【0044】
図2において、IQ差調整部113は、分離部201、IQ差補正部202、合成部203、IQ不均衡検出部204、補正係数算出部205、及び補正係数記憶部206を備えて構成される。
【0045】
分離部201は、FFT後の周波数領域信号をI系から得られる成分とQ系から得られる成分とに、1OFDMシンボル単位で、2つの複素受信信号に分離してIQ差補正部202に出力する。
【0046】
IQ差補正部202は、分離部201により分離された、少なくともいずれか一方の信号に対して、振幅差/位相差に対応する複素補正係数を乗算することで、振幅差/位相差を補正する。
【0047】
合成部203は、IQ差補正部202から入力したIQ差補正後の受信信号同士を加算により合成し、分離部201で分離する前のI信号とQ信号とからなる複素受信信号を再生成する。合成部203は、再生成したI信号とQ信号とからなる複素受信信号を復号部114(図1)に出力するとともに、IQ不均衡検出部204に出力する。
【0048】
IQ不均衡検出部204は、IQ不均衡を検出する。具体的には、IQ不均衡検出部204は、中心周波数に対して対称位置にあるキャリア同士の電力比を算出する。
【0049】
補正係数算出部205は、調整開始時に、システム帯域設定に対応する複素補正係数の初期値を補正係数記憶部206からロードし、検出されたIQ不均衡検出結果を基に、振幅差/位相差に対応する複素補正係数を算出し、IQ差補正部202に出力する。また、補正係数算出部205は、調整終了時の複素補正係数を補正係数記憶部206に出力する。
【0050】
補正係数記憶部206は、補正係数算出部205から出力された複素補正係数をシステム帯域毎に記憶するメモリである。なお、同一システム帯域であってもフィルタの特性を切り替える場合、例えばフィルタ次数を変える場合は、フィルタ設定状態毎に記憶してもよい。
【0051】
IQ差補正部202は、分離部201により分離された、少なくともいずれか一方の信号に対して振幅差/位相差に対応する複素補正係数を乗算する。
【0052】
なお、上記周波数領域でのIQ差補正方法は従来公知である。また、補正係数の最適化は、どのような方法でもよい。例えば、サブキャリア毎に、イメージ成分と元信号の電力比を検出し、これが小さくなるようLMSアルゴリズム等を用いて複素補正係数の最適化を行う。このイメージの検出は、割り当てられたRB以外のRBを用いてもよい。
【0053】
以下、上述のように構成された受信装置100の動作について説明する。
【0054】
受信・復調の基本動作は、従来と同様であるため説明を省略し、本実施の形態の特徴的な動作について述べる。
【0055】
本発明者は、RB割り当て状況に応じて、IQブランチ間偏差の調整動作が可能か否かを判定し、可能な場合に随時自動的に調整を行うことで、温度変化や経時変化、あるいはシステム帯域切り換え等のBB回路の動作モード変化によらず、安定した改善効果を維持するとともに、アナログBB回路の仕様を緩和し、IC化に適した無線受信回路を提供できることに想到した。
【0056】
例えば、RB割り当て状況に応じて、IQブランチ間偏差の調整動作が可能か否かを判定する。RF信号又はIF信号の割り当てられていない帯域を除去して受信し、除去した帯域に現れるイメージ成分が最小になるよう補正係数を自動調整する。これにより、受信動作中の調整が可能になる。また、BB回路の動作モード(システム帯域,BB−LPFの妨害波による可変等)によらず、常に良好な補償状態を保つことができる。また、I/Q不均衡(主にBB−LPFの振幅/遅延のばらつき)による性能劣化改善、及びBB仕様の緩和が可能になる。
【0057】
図3は、IQブランチ間偏差の調整動作を説明する図である。
【0058】
図3(a)において、中心周波数より低域側信号はなくても受信できることから、中心周波数より高域側のRBのみが割り当てられた場合を想定する。図3(a)のハッチングの帯域のRBが割り当てられたとする。
【0059】
(1)RB位置通知部115は、復号したCCH情報に基づいてRB位置情報を抽出し、抽出したRB位置情報をIQ差調整制御部116に通知する。
【0060】
IQ差調整制御部116は、RB位置情報からIQ差調整が可能な状態を検出し、IFフィルタ103の帯域除去フィルタ102のON/OFFと、IQ差調整部113のIQ差調整の開始を制御する。図3(a)に示すように、IQ差調整制御部116は、割り当てられたRB位置が、帯域除去フィルタ102の減衰域に無い時、帯域除去フィルタ102をONする。
【0061】
IQ差調整制御部116はまた、IQ差調整部113に対して除去した帯域に現れるイメージ成分が最小になるように補償パラメータ(複素係数)を最適化し、最適化した補正係数をIQ差調整部113に出力する。IQ不均衡(振幅差,遅延差)があると、除去した帯域にイメージ成分が発生する。IQ差調整制御部116は、LMS(Least Means Square:最小自乗法)アルゴリズム等により、このイメージ成分が最小となるように補正パラメータを最適化する。なお、これらの制御は、必ずしも毎回行なわなくてもよい。
【0062】
(2)帯域除去フィルタ102は、IQ差調整制御部116によりONし、RB割り当てのない帯域、すなわち図3(a)の制御チャネルより低域側を除去する。
【0063】
(3)BBのIQ不均衡があると、FFT後のスペクトルにおいて、除去した帯域にイメージ成分が現れる。図3(b)に示すように、IQ不均衡によって、中心周波数に対して対称の位置にイメージ成分が発生する。
【0064】
(4)IQ差調整制御部116は、割り当てられたRB位置が、帯域除去フィルタ102の減衰域に無い時、帯域除去フィルタ102をONするとともに、IQ差調整部113に対してIQ不均衡によって発生したイメージ成分が最小になるように補正係数を最適化し、最適化した補正係数をIQ差調整部113に出力する。
【0065】
(5)IQ差調整部113は、DBBでFFT後に、I又はQ信号にのみ関与する成分に分離し、一方にIQ差分に相当する複素補正係数を乗算するIQ差補正を行う。この補正係数は、高域側すなわちFFT後では正周波数側を求めれば、低域側すなわち負周波数側も一意に決まる。BB−LPFに対する補正係数は、正周波数と負周波数とが複素共役の関係になるからである。
【0066】
また、妨害レベルに応じてBB−LPF特性を変化させるような場合、IQ差(振幅,位相)が変化し性能劣化が起こる。本実施の形態によれば、受信を継続しながら調整することができ、運用中に補正できる。
【0067】
ここで、IQ差の影響は帯域の端ほど大きく、帯域中央は影響が小さい。このため、帯域の端の方だけ補償できれば実用上十分である。これは、帯域除去フィルタ102はラフな特性でよいことにつながる。
【0068】
以上のように、本実施の形態の受信装置100は、スケジューリングによって一部の周波数帯域を割り当てる通信システムに適用され、RB位置通知部115は、復号部114により復号されたCCH情報に基づいて、RB位置情報を抽出して通知する。IQ差調整制御部116は、帯域割当情報を解析し、特定の周波数帯域に割り当てがない場合に、IFフィルタ103の帯域除去フィルタ102をONするとともに、除去した帯域に現れるイメージ成分が最小なるようとなるようにIQ差調整部113を制御する。帯域除去フィルタ102は、帯域を狭くしてRBの割り当てられていない帯域の信号を除去する。IQ差調整部113は、FFT後の周波数領域信号に対して、上記イメージ成分が最小になるようにIQ差を自動調整する。
【0069】
特に、IQ差調整制御部116が、RB割り当て状況に応じて、IQブランチ間偏差の調整動作が可能か否かを判定し、可能な場合に随時自動的に調整を行うことで、温度変化や経時変化、あるいはシステム帯域切り換え等のBB回路の動作モード変化によらず、安定した改善効果を維持することができる。また、IQブランチ間偏差による性能劣化を改善することができ、アナログBB回路の仕様を緩和し、IC化に適した無線受信回路を提供することができる。効果をまとめると以下である。
【0070】
(1)受信動作中の調整が可能である。従来例では、起動時にしか適用できなかった。本実施の形態では、常時IQ差が調整できる点で格段に優れている。また、受信動作中に調整できることは、受信動作中に発生する温度変化や経時変化に起因するIQ不均衡についても補償できることを意味する。
【0071】
(2)BB回路の動作モード(システム帯域,BB−LPFの妨害波による可変等)によらず、常に良好な補償状態を保つことができる。
【0072】
(3)I/Q不均衡(主にBB−LPFの振幅/遅延のばらつき)による性能劣化を改善することができ、またBB仕様の緩和が可能になる。
【0073】
このように、端末受信部において、IQブランチ間偏差による性能劣化を改善することができ、受信性能を大きく改善することができる。更に、広帯域化された場合に特に優れたIQ偏差補償方法になることが期待される。
【0074】
また、本実施の形態では、帯域除去フィルタ102を設ける必要があるが、小型チューナブルフィルタを適用することもできる。
【0075】
以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されることはない。
【0076】
なお、上記実施の形態では、OFDM方式の場合について述べたが、スケジューリングによって一部の周波数帯域を割り当てる通信システムに対応した受信装置であればどのような受信装置にも適用することができる。例えば、S3Gや4Gのような広帯域かつ送信信号の帯域幅(RB数)が可変のシステムに適用される。
【0077】
また、本実施の形態では、RB割り当てを例に採り説明したが、特定の周波数帯域が割り当てられた場合であればよく、RBには限定されない。
【0078】
また、本実施の形態では、RB割り当てのない帯域をIFフィルタ103で除去する例について説明したが、RFフィルタにより実現してもよい。但し、周波数固定となるIFフィルタで処理する方が使用し易い。また、IFフィルタ103は、中心周波数近傍から除去できる特性であればよく、システム帯域によらず同一フィルタでもよい。さらに、帯域除去フィルタ102は、ON/OFFだけに限らずシステム帯域によって特性を変えてもよい。
【0079】
また、周波数帯域も本実施の形態で述べた帯域に限定されるものではなく、各変調方式で適宜適当な周波数帯域を使用することにより、同様の効果を得ることができる。
【0080】
また、上記実施の形態では、受信装置及びIQ偏差補償方法という名称を用いたが、これは説明の便宜上のものであり、マルチキャリア受信装置及び無線通信装置、RB受信方法などであってもよい。
【0081】
さらに、上記受信装置を構成する各回路部、例えばBPF101,帯域除去フィルタ102,ADC109,110の種類そのビット数及び接続方法など、さらにはFB系のIQ差調整制御部116の制御方法などは前述した実施の形態に限られない。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明に係る受信装置及びIQ偏差補償方法は、スケジューリングによって一部の周波数帯域を割り当てる通信システムなどの広帯域の無線機器おいて受信性能を改善できる効果を有し、3G端末やS3G端末の受信装置を搭載する携帯電話機等の携帯端末装置に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の実施の形態に係る受信装置の構成を示す図
【図2】本実施の形態に係る受信装置のIQ差調整部の詳細な構成を示す図
【図3】本実施の形態に係る受信装置のIQブランチ間偏差の調整動作を説明する図
【図4】OFDM方式のRBの配置例を示す図
【図5】妨害波レベルに応じてBB−LPFの特性を適応的に変える場合の一例を示す図
【図6】IQ遅延差とEVMの関係を示す特性図
【図7】IQ振幅差とEVMの関係を示す特性図
【図8】制御チャネルの配置例と示す図
【符号の説明】
【0084】
100 受信装置
101 バンドパスフィルタ(BPF)
102 帯域除去フィルタ
103 IFフィルタ
104 直交ミキサ部
105 I信号可変利得アンプ
106 Q信号可変利得アンプ
107 I信号チャネル選択フィルタ
108 Q信号チャネル選択フィルタ
109 I信号ADコンバータ(ADC)
110 Q信号ADコンバータ(ADC)
111 ガードインターバル(GI)除去部
112 高速フーリエ変換部(FFT)
113 IQ差調整部
114 復号部
115 RB位置通知部
116 IQ差調整制御部
201 分離部
202 IQ差補正部
203 合成部
204 IQ不均衡検出部
205 補正係数算出部
206 補正係数記憶部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
通過帯域幅を切り換え可能なフィルタ手段と、
帯域通過した受信信号をIQベースバンド信号に周波数変換するミキサ手段と、
デジタル化された前記IQベースバンド信号を周波数領域信号に変換する時間・周波数変換手段と、
前記周波数領域信号に対してIQ差の調整を行うIQ差調整手段と、
IQ差調整された受信データを復号化する復号手段と、
前記復号手段により復号された制御情報に基づいて、予めスケジューリングされた帯域割当情報を抽出する帯域割当情報抽出手段と、
抽出された前記帯域割当情報を解析し、特定の周波数帯域が割り当てられていない場合に、前記フィルタの帯域を狭くして前記特定の周波数帯域の信号を除去するとともに、その除去した帯域に現れるイメージ成分が最小なるようとなるように前記IQ差調整手段を制御するIQ差調整制御手段と、
を備える受信装置。
【請求項2】
前記フィルタ手段は、システム帯域の中央周波数より低周波数側の帯域を除去する請求項1記載の受信装置。
【請求項3】
スケジューリングによって一部の周波数帯域を割り当てる通信システムのIQ偏差補償方法であって、
フィルタにより受信信号を所定帯域のみ通過させるステップと、
帯域通過した受信信号をIQベースバンド信号に周波数変換するステップと、
デジタル化された前記IQベースバンド信号を周波数領域信号に変換するステップと、
前記周波数領域信号に対してIQ差の調整を行うステップと、
IQ差調整された受信データを復号化するステップと、
復号された制御情報に基づいて、予めスケジューリングされた帯域割当情報を抽出するステップと、
抽出された前記帯域割当情報を解析し、特定の周波数帯域が割り当てられていない場合に、前記フィルタの帯域を狭くして前記特定の周波数帯域の信号を除去するとともに、その除去した帯域に現れるイメージ成分が最小なるようとなるように制御するステップと
を有するIQ偏差補償方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−41570(P2010−41570A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−204322(P2008−204322)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(000187725)パナソニック モバイルコミュニケーションズ株式会社 (38)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】