説明

受信装置

【課題】 放送信号の受信不良を防ぐことができる受信装置を提供する。
【解決手段】 BS(Broadcasting Satellite)デジタル放送及び110度CS(Communications Satellite)デジタル放送をともに受信する受信装置において、入力多波デジタル放送信号からBSデジタル放送及び110度CSデジタル放送の周波数帯域を取り出すフィルタ回路12を備え、フィルタ回路12は、BSデジタル放送以外の少なくとも一部のチャンネルが選局された場合、BSデジタル放送の周波数帯域を減衰させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレビ放送などの高周波信号を受信する受信装置に関し、特に、BS(Broadcasting Satellite)デジタル放送及び110度CS(Communications Satellite)デジタル放送をともに受信する受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
2002年3月1日よりBS軌道上(東経110度)に打上げられたCS衛星(N-SAT-110)から110度CSデジタル放送が順次開始された。110度CSデジタル放送では、BSデジタル放送と同じ右旋円偏波の電波で放送されているため、110度CSデジタル用アンテナとチューナでBSデジタル放送が受信可能となっており、110度CSデジタル放送対応のアンテナとチューナ(内蔵テレビ)を揃えれば、BSデジタル放送に加えて110度CSデジタル放送を視聴できる。
【0003】
実際、BS専用アンテナでも周波数帯域が高周波側に伸びている場合があり、伝送路の周波数特性が極端にハイ落ち、例えば図8に示したレベル配分になっていたとしても、110度CSデジタル放送の例えばND-24の放送がチューナの感度以上のレベルであれば受信可能である。
【0004】
また、BS・110度CSデジタル放送の宅内配線は、従来から偏波切り換えや衛星切り換えが行われずに、分配、分岐、増幅等が行われていることが多く、このような配線のロスによって例えば図8に示すようなレベル配分であっても、110度CSデジタル放送を全チャンネル受信可能なことが多い。この図8に示す受信レベルは、110度CSデジタル放送の受信レベルがBS放送よりも小さく、いわゆる「ハイ下がり」をなす受信環境であるが、チューナで充分受信処理することが可能であり、110度CS用のアンテナを特に設置せずにBSデジタル専用のアンテナのみでCSデジタル放送を利用する視聴者も多い。
【0005】
従来のバリキャップ・ダイオード(可変容量ダイオード)に流す電圧を変化させて選局するシンセサイザー方式のチューナにおいては(例えば、特許文献1を参照のこと)、バリキャップ・ダイオードの選局用電圧の上限を32Vにするとともに、同調フィルタを可変にして、妨害波のレベルを下げることで、BSデジタル放送の強入力レベルを下げて110度CSデジタル放送の低レベル信号に対する歪による被りを改善して、BSデジタル放送のアンテナ環境下でも110度CSデジタル放送を受信することができる。
【0006】
また、チューナ内では、通常、高周波の放送信号をベースバンド信号にダウンコンバートするが、デジタル放送用チューナにおいては、中間周波数としてゼロ周波数(Zero−IF)を用いるダイレクト・コンバージョン方式が一般的となってきている(例えば、特許文献2参照。)。ダイレクト・コンバージョン方式によれば、IFフィルタを用いないため広帯域化が容易となり、回路構成の柔軟性が向上させることができる。このダイレクト・コンバージョン方式を用いた場合、同調フィルタの必要がなくなり、例えば5V程度の高い電源電圧にすることで、歪による被りを防止し、BSデジタル放送のアンテナ環境下でも110度CSデジタル放送を受信することができる。
【0007】
図9は、従来のダイレクト・コンバージョンによる周波数変換方式並びにバンク切り換えによる選局方式を採用した受信装置の構成を示す図である。この受信装置は、BSデジタル放送及び110度CSデジタル放送の多波デジタル放送を受信するチューナとして動作する。
【0008】
図示しないBSアンテナで受信された放送波は、第一IF周波数(1022MHz〜2072MHz)に変換された後、例えばF型コネクタの入力端子11から当該受信装置に入力される。この入力信号は、ハイパス・フィルタ(HPF)112にて地上波放送などの不要成分を除去し、RFアンプ13にて約10dBだけ増幅される。その後、外付けAGCアンプに相当する可変アッテネータ14で信号レベルのダイナミック・レンジを狭めて、ダウンコンバータ27に入力される。
【0009】
ダウンコンバータ27内では、まずAGCアンプ15により入力信号のレベルを一定にし、このレベルでミキサ16a,16bに入力される。ミキサ16a,16bには、PLL(Phase locked loop)回路17,18,19,20から同一周波数のCW(Continuous Wave:無変調波状態)信号が注入される。ここで、一方のミキサ16bには、移相回路21で位相が90°変更されたCW信号が注入され、ミキサ16a,16bからは、それぞれ位相が90°異なるベースバンドのI信号及びQ信号が出力される。
【0010】
ダウンコンバートされたベースバンド信号(I信号,Q信号)は、ベースバンド・アンプ22a,22bで増幅され、ローパス・フィルタ(LPF)23a,23bで隣接周波数帯域の不要信号成分が除去され、さらにベースバンド・アンプ24a,24bを通過し、ダウンコンバータ27から出力される。
【0011】
ダウンコンバータ27から出力されるアナログ・ベースバンド信号は、外付けローパス・フィルタ(LPF)25a,25bで隣接信号を除去した後に、PSK復調部26に入力される。
【0012】
PSK復調部26では、アナログ信号をデジタル信号に変換してから、8PSK(8 Phase Shift Keying)、QPSK(Quadrature PSK)、又はBPSK(Biphase PSK)といったPSK復調処理が施される。また、PSK復調部26では、可変アッテネータ14及びAGCアンプ15における自動利得制御(Auto Gain Control)なども行われる。
【0013】
【特許文献1】特開2000−278042号公報
【特許文献2】特開2002−326864号公報
【特許文献3】特開2001−53570号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、例えば、上述のようなダイレクト・コンバージョンを用いたバンク切り替え方式のチューナにおいて、消費電力低減の観点から電源電圧が3.3Vと低くなった場合、歪に弱くなることから、従来受信可能であった110度CSデジタル放送のハイ側が受信不能になる虞がある。
【0015】
特に、BSデジタル専用アンテナ使用時やマンション共聴などにより受信信号が極端なハイ下がりになっている環境では、110度CSデジタル放送帯域の損失が大きくなるため、110度CSデジタル放送信号の劣化を招来し、レベル差から生じる歪みの被りにより110度CSデジタル放送の受信が不可能となる。
【0016】
また、ダイレクト・コンバージョンを用いたバンク切り替え方式のチューナ回路を構成した場合には、同調フィルタが使用できなくなることから、BSデジタル放送の強入力レベルを下げるという操作を行なうことができない。
【0017】
このようにダイレクト・コンバージョンによる周波数変換方式やバンク切り換えによる選局方式を採用し、BSデジタル衛星放送用のチューナとしての性能を向上させる結果として、これまでは特に設計を考慮しなくとも受信できていた110度CSデジタル放送が受信不能になるという事態が生じている。
【0018】
これらの対策の1つとして、例えば、特許文献3に記載されているように、高周波数の110度CSデジタル放送から低周波数のBSデジタル放送にかけてロー下がりのチルトを形成するBS・CSイコライザを、BSデジタル放送用チューナの前段に外付けするという方法が挙げられるが、この種の接栓タイプのイコライザを外付けする場合、1.2dB程度の挿入損があり、感度劣化を招来するという問題がある。
【0019】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、放送信号の受信不良を防ぐことができる受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明に係る受信装置は、BS(Broadcasting Satellite)デジタル放送及び110度CS(Communications Satellite)デジタル放送をともに受信する受信装置において、入力多波デジタル放送信号から上記BSデジタル放送及び上記110度CSデジタル放送の周波数帯域を取り出すフィルタ回路を備え、上記フィルタ回路は、上記BSデジタル放送以外の少なくとも一部のチャンネルが選局された場合、上記BSデジタル放送の周波数帯域を減衰させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、BSデジタル放送以外の少なくとも一部のチャンネルが選局された場合、BSデジタル放送の周波数帯域を減衰させることにより、それ以降の能動素子で発生する複合3次歪を低減してC/Nの劣化を防ぎ、放送信号の受信不良を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。本発明の具体例として示す受信装置は、多波デジタル放送信号の減衰周波数帯域を選局に応じて切り換えるようにしたものである。
【0023】
〔第1の実施の形態〕
図1は、本発明の一実施形態に係る受信装置の構成例を示す図である。この受信装置は、ダイレクト・コンバージョンによる周波数変換方式並びにバンク切り換えによる選局方式を採用した、BSデジタル放送及び110度CSデジタル放送の多波デジタル放送を受信するチューナとして動作する。なお、図9に示す従来の受信装置と同様な構成には、同一符号を付して説明する。
【0024】
図示しないBSアンテナで受信された放送波、第一IF周波数(1022MHz〜2072MHz)に変換された後、例えばF型コネクタの入力端子11から当該受信装置に入力される。この入力信号は、所定周波数帯域を減衰させるフィルタ回路12にて地上波放送などの不要成分が除去され、RFアンプ13にて約10dBだけ増幅される。このフィルタ回路12は、後述するように、入力信号の減衰周波数帯域を選局に応じて切り換えることができる。
【0025】
その後、外付けAGCアンプに相当する可変アッテネータ14で信号レベルのダイナミック・レンジを狭めて、ダウンコンバータ27に入力される。このダウンコンバータ27は、RF信号をダイレクト・コンバージョン方式によりアナログ・ベースバンド信号にダウンコンバートする。
【0026】
ダウンコンバータ27内では、まずAGCアンプ15により入力信号のレベルを一定にし、このレベルでミキサ16a,16bに入力される。ミキサ16a,16bには、PLL(Phase locked loop)回路17,18,19,20から同一周波数のCW(Continuous Wave:無変調波状態)信号が注入される。ここで、一方のミキサ16bには、移相回路21で位相が90°変更されたCW信号が注入され、ミキサ16a,16bからは、それぞれ位相が90°異なるベースバンドのI信号及びQ信号が出力される。
【0027】
ダウンコンバートされたベースバンド信号(I信号,Q信号)は、ベースバンド・アンプ22a,22bで増幅され、ローパス・フィルタ(LPF)23a,23bで隣接周波数帯域の不要信号成分が除去され、さらにベースバンド・アンプ24a,24bを通過し、ダウンコンバータ27から出力される。
【0028】
ダウンコンバータ27から出力されるアナログ・ベースバンド信号は、外付けローパス・フィルタ(LPF)25a,25bで隣接信号を除去した後に、PSK復調部26に入力される。
【0029】
PSK復調部26では、アナログ信号をデジタル信号に変換してから、8PSK(8 Phase Shift Keying)、QPSK(Quadrature PSK)、又はBPSK(Biphase PSK)といったPSK復調処理が施される。また、PSK復調部26では、可変アッテネータ14及びAGCアンプ15における自動利得制御(Auto Gain Control)なども行う。このPSK復調部26は、例えば、μPD61522GCといった復調用ICチップで構成することができる。
【0030】
このような受信装置において、例えば図8のように、入力多波デジタル信号がBSデジタル放送及び110度CSデジタル放送の放送信号を含み、レベルが高周波側になるにつれて減衰している場合においてND−24を受信しようとした場合、このチャンネルに対してAGCアンプ15が働くので、BSデジタル放送信号が強入力状態で回路を通過することになる。このような強入力状態では、ダウンコンバータ27内の特にミキサ16a,16bが影響を受け、複合3次歪みが生じてしまう。
【0031】
3次歪み(IM3、相互変調妨害)は、希望波に対して均等に2波が並ぶと希望波と近接又は同一周波数に被る妨害信号である。これが更に多波あると、均等に並ぶ組み合わせは複数になり、複合3次歪みになる。
【0032】
例えば、希望波 A=1000MHz、妨害波 B=1050MHz C=1100MHzとすると、3次歪みは以下のようになる。
【0033】
3次歪み=B×2−C, 1050×2−1100=1000MHz=A
また、希望波 A=1000MHz、妨害波 B=950MHz C=900MHzとすると、3次歪みは以下のようになる。
【0034】
3次歪み=B×2−C, 950×2−900=1000MHz=A
また、現在の放送信号により具体的に説明する。表1A〜表1Dに現在の放送信号における妨害波の組み合わせを示す。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
【表3】

【0038】
【表4】

【0039】
上述のように図8に示すような受信環境では、希望波のレベルが低いND−18〜ND−24に関係するBSデジタル放送信号の影響が大きく、3次歪みにより帯域内妨害波が発生してしまう。例えば、3次歪みが受信帯域の17.2MHz(絶対値)以内に被ると受信が困難となる。
【0040】
ND−22(第一中間周波数:2013MHz)の場合、ND−2(1613MHz)及びBS−9(1202.92MHz)が妨害波となる。
【0041】
2013−(1613×2−1202.92)= −10.08MHz
また、ND−4(1653MHz)及びBS−13(1279.64MHz)も妨害波となる。
【0042】
2013−(1653×2−1279.64)= −13.36MHz
また、同様にND−18(第一中間周波数:1933MHz)の場合、ND−2(1613MHz)及びBS−13(1279.64MHz)が妨害波となる。また、ND−20(第一中間周波数:1933MHz)の場合、ND−2(1613MHz)及びBS−11(1241.28MHz)が妨害波となる。また、ND−24(第一中間周波数:2053MHz)の場合、ND−2(1613MHz)及びBS−7(1164.56MHz)が妨害波となり、ND−4(1653MHz)及びBS−11(1241.28MHz)も妨害波となる。
【0043】
このため、本実施の形態の受信装置では、多波デジタル放送信号の減衰周波数帯域を選局に応じて切り換えるフィルタ回路12を設けて、ダウンコンバータ27のポート端子28からの制御信号(フィルタスイッチ)に応じてフィルタ特性を切り換え、110度CSデジタル放送受信時は、ある関数fによって0に移される点である零点又は最大利得から−3dBの減衰となるカットオフ周波数を高周波側に移動させて、BSデジタル放送帯域のゲインを落とす。
【0044】
例えば、ND−24受信時、上述したBS放送帯域の影響により発生する複数の3次歪が複合3次歪みとなって、同一チャンネル妨害D/U(Desired to Undesired)として被ってくることで、C/N(Carrier to Noise ratio:キャリア対ノイズ比)が劣化して受信障害となるが、フィルタ回路12にてBSデジタル放送帯域のゲインを減少させることにより、ダウンコンバータ27内のミキサ16a,16bへのBSデジタル放送帯域の入力レベルが抑制され、複合3次歪みの影響を軽減し、C/Nの劣化を防ぐことができる。
【0045】
図2は、受信装置におけるフィルタ回路例を示す図である。なお、図1に示す受信装置と同様な構成には、同一符号を付して説明を省略する。
【0046】
このフィルタ回路12において、フィルタスイッチがLOWの時、+Bから供給される電圧により、ダイオードD1,D2に電流が流れる。これにより2つのコンデンサC2,C3の合成容量と、2つのコンデンサC4,C5の合成容量となる。この時のフィルタ特性は、BSデジタル放送帯域及び110度CSデジタル放送帯域を通過させるHPFとなる。
【0047】
また、フィルタスイッチがHIGHの時、ダイオードD1,D2には逆電圧がかかり電流は流れない。このため2つのコンデンサC2,C5の容量となる。この時のフィルタ特性は、BSデジタル放送帯域を減衰させ、110度CSデジタル放送帯域を通過させるHPFとなる。
【0048】
なお、このフィルタ構成において、ダウンコンバータ27の複合3次歪への耐性に応じてダイオードD1のみに電流が流れるフィルタ特性としてもよい。
【0049】
図3は、フィルタ特性の切り換え動作を示すフローチャートである。フィルタスイッチ(HIGH/LOW)切り換えは、汎用出力ポート、D/Aコンバータ出力等、端子電圧出力を可変できる端子を用いてソフトウェア制御によって行うことができる。この実施の形態では、フィルタ切り換え用端子としてダウンコンバータ27のポート端子28を用いている。
【0050】
ステップS1において、選局された放送チャンネルの第一IF周波数がBS帯か否かを判定する。BSデジタル放送を受信する場合、ステップS2に進み、ポート端子28の出力をLOWにして、BSデジタル放送帯域及び110度CSデジタル放送帯域を通過させるHPFとする。
【0051】
また、ステップS1において、BSデジタル放送以外、例えば110度CSデジタル放送を受信する場合、ステップS3に進み、ポート端子28の出力をHIGHにして、BSデジタル放送帯域を減衰させ、110度CSデジタル放送帯域を通過させるHPFとする。なお、ダウンコンバータ27の複合3次歪への耐性によっては、110度CS放送の高帯域チャンネルの選局により切り換えるようにしてもよい。
【0052】
次に、図4及び図5を参照してフィルタ回路12の切り換えによるフィルタ特性の変化について、説明する。図4はフィルタ回路の構成を示す模式図であり、図5はフィルタ特性を示す模式図である。
【0053】
フィルタ回路12は、トラップ回路12aと、直列誘導m型ハイパス・フィルタ回路12bと、定K型ハイパス・フィルタ回路12cとを備えている。
【0054】
トラップ回路12aは、UHF帯域又はVHF帯域を任意に減衰させ、衛星放送受信アンテナのLNB(Low Noise Block Converter)電源供給用のチョークコイル又はパターンコイルをインダクタL1としてコンデンサC8との直列共振で構成されている。
【0055】
直列誘導m型ハイパス・フィルタ回路12bは、主に零点移動に寄与し、BS−15以下の周波数を効率的に減衰させる。ダイオードD1をONとすることで、2つのコンデンサC2,C3の合成容量となる。また、ダイオードD1をOFFとすることで、1つのコンデンサC2の容量のみとなる。
【0056】
定K型ハイパス・フィルタ回路12cは、主にカットオフ周波数の移動に寄与し、BSデジタル放送帯域をさらに減衰させる。ダイオードD2は、ダイオードD1の切り換えと連動して動作するスイッチとなる。ダイオードD2をONとすることで、2つのコンデンサC4,C5の合成容量となる。また、ダイオードD1をOFFとすることで、1つのコンデンサC5の容量のみとなる。
【0057】
ここで、BSデジタル放送のチャンネルが選局された場合、ダイオードD1,D2をON、すなわちフィルタスイッチをLOWとすることで2つのコンデンサC2,C3の合成容量と、2つのコンデンサC4,C5の合成容量となり、図5に示す線aのように零点(Null Point)がUHF帯域に設定される。これによりBS−1〜ND−24を通過域とするフィルタとなる。
【0058】
また、BSデジタル放送以外の少なくとも一部のチャンネルが選局された場合、ダイオードD1をOFFとすることで、コンデンサC2の容量と、2つのコンデンサの合成容量C4,C5となり、図5に示す線bのように零点をBS−15付近に移動させ、BSデジタル放送帯域を効率的に減衰させるフィルタになる。この時、最大利得から−3dBの減衰となるカットオフ周波数もBS−15方向へ移動する。
【0059】
また、BSデジタル放送以外の少なくとも一部のチャンネルが選局された場合、ダイオードD1,D2をOFF、すなわちフィルタスイッチをHIGHとすることで、コンデンサC2の容量と,コンデンサC5の容量となり、図5に示す線cのようにBSデジタル放送帯域をさらに減衰させることができる。
【0060】
なお、BSデジタル放送が関係する複合3次歪みによる妨害が、ダイオードD1の切り換えのみで所望の特性を得られる場合はコンデンサC4及びダイオードD2を削除し、ダイオードD1のみON/OFFの切り換えを行ってもよい。
【0061】
このようにBSデジタル放送以外のチャンネルが選局された場合、BSデジタル放送の周波数帯域を減衰させるフィルタ回路12を備えることにより、図6に示すようなレベル配分の多波デジタル信号を得ることができ、それ以降の能動素子で発生する複合3次歪を低減してC/Nの劣化を防ぎ、放送信号の受信不良を防ぐことができる。
【0062】
〔第2の実施の形態〕
また、地上波デジタル・アナログ放送チューナと、BS・110度CSデジタル放送チューナとが一体となった受信装置においても、地上波デジタル・アナログ放送のチャンネルを選局した場合、BSデジタル放送帯域の強入力が妨害となることがある。
【0063】
図7は、地上波デジタル・アナログ放送チューナと、BS・110度CSデジタル放送チューナとが一体となった受信装置の構成例を示す図である。なお、図1に示す従来の受信装置と同様な構成には、同一符号を付して説明する。
【0064】
この一体型受信装置において、地上波デジタル・アナログ放送信号は、入力端子31から入力され、IFフィルタ32を通り、同調回路(BPF)33で所望のチャンネル周波数(VHF、CATV、UHF)をある程度選択する。
【0065】
RFAGC電圧でレベルをコントロールされているAGCアンプ34で一定のレベルへ揃え、その信号はMOPLL(mixer-oscillator/phase locked loop)IC35へ入力される。
【0066】
MOPLLIC35では、入力信号が局部発振器37によりミキサ36で中間周波数(IF、57MHz中心)へダウンコンバートされ、IFアンプ38でさらに増幅された後、出力される。この出力信号は、SAW(Surface Acoustic Wave)フィルタ39で帯域外の不要な信号の削除を行い、IFアンプ40を通りVIF/MPX(Multiplex)回路41へと入力される。
【0067】
一方、BS・110度CSデジタル放送信号は、入力端子11から入力され、上述したフィルタ回路12に入力される。その後、RFアンプ13で増幅される。
【0068】
RFアンプ13の周辺回路は、増幅されることで信号が輻射しやすく、この信号が地上波デジタル・アナログ放送チューナのAGCアンプ34からMOPLLIC35間に飛び込むと、局部発振器37の高調波とミキサ36とでIF信号が生成され、この周波数が地上波デジタル・アナログ放送で利用している中間周波数と同一又は近似であった場合に妨害となる。例を挙げると、以下のとおりである。
【0069】
地上8chローカル 252MHz × 高調波 5 ― BS9 1202.92MHz = 57.1MHz
したがって、地上波デジタル・アナログ放送チューナと、BS・110度CSデジタル放送チューナとが一体となった受信装置において、マンション等の共聴システムによって、低周波数帯域のBSデジタル放送が強入力されている場合であっても、地上波デジタル・アナログ放送の受信時にフィルタ回路12を110度CSデジタル放送帯域のみの通過に切り換えることで、BSデジタル放送帯域のレベルを下げて地上波デジタル・アナログ放送信号への妨害を軽減することができる。
【0070】
このように複合3次歪を発生する能動素子の前段で、高いレベルのBSデジタル放送信号を減衰させるため、従来の対策と比較しても副作用がなく、また、選局ソフトウェアと同時にフィルタ切り換えを行うため、切り換えによる副作用もなくすことができる。さらに、BS・CSイコライザ等を後付しないで済むため、感度劣化を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】第1の実施の形態に係る受信装置の構成を示す図である。
【図2】受信装置におけるフィルタ回路例を示す図である。
【図3】フィルタ特性の切り換え動作を示すフローチャートである。
【図4】フィルタ回路の構成を示す模式図である。
【図5】フィルタ特性を示す模式図である。
【図6】悪受信環境における放送信号のレベル配分を示す模式図である。
【図7】第2の実施の形態に係る受信装置の構成を示す図である。
【図8】悪受信環境における放送信号のレベル配分を示す模式図である。
【図9】従来の受信装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0072】
11 入力端子、 12 フィルタ回路、 13 RFアンプ、 14 可変アッテネータ、 15 AGCアンプ、 16a,16b ミキサ、 17,18,19,20 PLL回路、 21 移相回路、 22a,22b ベースバンド・アンプ、 23a,23b ローパス・フィルタ、 24a,24b ベースバンド・アンプ、 25a,25b 外付けローパス・フィルタ、 26 復調部、 27 ダウンコンバータ、 28 出力ポート、 31 入力端子、 32 フィルタ、 34 アンプ、 36 ミキサ、 37 局部発振器、 38 IFアンプ、 39 SAWフィルタ、 40 IFアンプ、 41 VIF/MPX回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
BS(Broadcasting Satellite)デジタル放送及び110度CS(Communications Satellite)デジタル放送をともに受信する受信装置において、
入力多波デジタル放送信号から上記BSデジタル放送及び上記110度CSデジタル放送の周波数帯域を取り出すフィルタ回路を備え、
上記フィルタ回路は、上記BSデジタル放送以外の少なくとも一部のチャンネルが選局された場合、上記BSデジタル放送の周波数帯域を減衰させることを特徴とする受信装置。
【請求項2】
上記フィルタ回路は、上記110度CSデジタル放送のチャンネルが選局された場合、上記BSデジタル放送の周波数帯域を減衰させることを特徴とする請求項1記載の受信装置。
【請求項3】
地上波デジタル・アナログ放送を受信するチューナをさらに備え、
上記フィルタ回路は、上記地上波デジタル・アナログ放送のチャンネルが選局された場合、上記BSデジタル放送の周波数帯域を減衰させることを特徴とする請求項1記載の受信装置。
【請求項4】
上記入力多波デジタル放送信号は、上記BSデジタル放送及び上記110度CSデジタル放送の放送信号を含み、レベルが高周波側になるにつれて減衰していることを特徴とする請求項1記載の受信装置。
【請求項5】
上記フィルタ回路は、零点を高周波側に移動させ、上記BSデジタル放送の周波数帯域を減衰させることを特徴とする請求項1記載の受信装置。
【請求項6】
上記フィルタ回路は、トラップ回路と、直列誘導m型ハイパス・フィルタ回路と、定K型ハイパス・フィルタ回路とを備えることを特徴とする請求項1記載の受信装置。
【請求項7】
上記直列誘導m型ハイパス・フィルタ回路は、コンデンサの容量が切り換え可能であることを特徴とする請求項6記載の受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−206732(P2009−206732A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−46086(P2008−46086)
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】