説明

受光素子

【課題】受光部の内部抵抗を増加させることなく、特に、405nm帯の青色波長における受光感度が向上可能な受光素子を提供する。
【解決手段】受光素子20であって、半導体基板1と、この半導体基板上に設けられて受光領域Aとこの受光領域で受光した光を電荷に光電変換する光電変換部とを有する半導体層2と、半導体層上に受光領域を覆うように設けられた光透過性を有する絶縁層3と、絶縁層上の受光領域に対応する範囲に設けられた光透過性を有する電極部6と、半導体層における受光領域の外側に設けられて光電変換部で光電変換された電荷を取り出す電荷取り出し電極10と、を有する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受光素子に係り、特に短波長例えば405nm帯の青色波長の光に対しても高感度を有する受光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)等の光ディスクにレーザ光を照射し、その反射光を受光して光電変換することによって、光ディスクに記録されている情報を電気信号として再生する光ディスク再生装置が普及している。
光ディスクに照射されるレーザ光の発光波長は再生する光ディスクによって異なり、例えば、CDに用いられるレーザ光の発振波長は780nm帯の近赤外波長であり、DVDに用いられるレーザ光の発振波長は635nm帯または650nm帯の赤色波長である。
通常、光ディスク再生装置は、これら各種光ディスクに対応できるように、上記各発振波長のレーザ光をそれぞれ照射する複数の半導体レーザ素子と、上記各発振波長に対して高感度を有する受光素子とを備えている。
このような受光素子の一例が特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開平9−237912号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、近年、CDやDVDよりもさらに情報記録容量の大きい次世代光ディスクとしてBlu-ray Disc(以下、BDと称す)が着目されている。
BDに用いられるレーザ光の発振波長は、CDやDVDに用いられるレーザ光の発振波長よりもさらに短い405nm帯の青色波長である。
しかしながら、発明者が鋭意実験した結果、特許文献1に記載されているような受光素子では、405nm帯の青色波長における受光感度が、上述の780nm帯の近赤外波長や635nm帯または650nm帯の赤色波長における受光感度と比較して低いことが確認されており、この405nm帯の青色波長における受光感度の向上が望まれている。
【0004】
405nm帯の青色波長における受光感度が低い原因について説明する。
受光素子に照射されるレーザ光の発振波長が短いほど、その受光領域は受光素子の表面を含むより浅い領域となる。この表面を含むより浅い領域に高ドーパント濃度の拡散層が存在すると、この拡散層中での少数キャリアの再結合が発生する。この少数キャリアの再結合によって光電変換効率が悪化するため、受光感度が低くなる。
【0005】
また、高ドーパント濃度の拡散層の領域を削減して受光感度の低下を防止しようとすると、受光部の内部抵抗が増加するため、応答速度が悪化する場合がある。
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、受光部の内部抵抗を増加させることなく、特に、405nm帯の青色波長における受光感度が向上可能な受光素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本願各発明は次の手段を有する。
1)半導体基板(1)と、前記半導体基板上に設けられて、受光領域(A)と該受光領域で受光した光を電荷に光電変換する光電変換部とを有する半導体層(2)と、前記半導体層上に前記受光領域を覆うように設けられた光透過性を有する絶縁層(3)と、前記絶縁層上の前記受光領域に対応する範囲に設けられた光透過性を有する電極部(6)と、前記半導体層における前記受光領域の外側に設けられて、前記光電変換部で光電変換された電荷を取り出す電荷取り出し電極(10)と、を有することを特徴とする受光素子(20)である。
2)前記電極部と前記半導体基板との間に電位差が生じた際に、前記半導体層における前記電極部に対応する範囲に空乏層を発生することを特徴とする1)項記載の受光素子である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、受光部の内部抵抗を増加させることなく、特に、405nm帯の青色波長における受光感度が向上するという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施の形態を、好ましい実施例により図1〜図5を用いて説明する。
図1〜図4は本発明の受光素子の実施例を説明するための模式的断面図であり、図5は本発明の受光素子において空乏層が形成される様子を示す模式図である。
【0010】
<実施例>
実施例の受光素子を、図1〜図4を用いて、製造工程毎に第1工程〜第4工程として順を追って説明する。
【0011】
[第1工程](図1参照)
高ドーパント濃度を有するn型シリコン(Si)基板1上に形成されてn型シリコン基板1よりも低ドーパント濃度のn型エピタキシャル層2に、熱酸化処理を行ってn型エピタキシャル層2の表面を含む表面近傍部を酸化させ、光透過性を有する酸化絶縁層3を形成する。
実施例では、n型エピタキシャル層2の比抵抗が40Ω・cmとなるようにn型エピタキシャル層2のドーパント濃度を1E14/cmとし、その厚さを10μmとした。
また、酸化絶縁層3の厚さを12nmとした。
【0012】
[第2工程](図2参照)
酸化絶縁層3上に光透過性及び電気導電性を有するポリシリコン膜5を成膜した後、フォトリソ法を用いてこのポリシリコン膜5をパターニングして光透過性を有する電極部6とする。
実施例では、ポリシリコン膜5の比抵抗を約1mΩ・cmとし、その厚さを50nmとした。
ポリシリコンは、半導体プロセスで一般的に用いられる材料であり、例えば薄膜トランジスタのゲート電極材料として用いられている。
従って、後述する受光部Aで光電変換された信号電荷を増幅するための薄膜トランジスタを形成する場合、この薄膜トランジスタのゲート電極と上述の電極部6とを同じ工程で一括して形成することができる。
【0013】
[第3工程](図3参照)
第3工程を図3を用いて説明する。図3中の(a)〜(c)は第3工程における各過程をそれぞれ示している。
【0014】
まず、図3(a)に示すように、フォトリソ法を用いて、電極部6の近傍に開口部8aを有するパターン化されたレジスト層8を形成する。
【0015】
次に、図3(b)に示すように、レジスト層8をマスクとして、開口部8aにおけるn型エピタキシャル層2にイオン注入を行って、イオン注入部9を形成する。
実施例では、導入ガスとしてBF(2フッ化ホウ素)を用い、印加電圧を50eVとして、イオン注入部9におけるB(ホウ素)濃度を2E15atoms/cm2とした。
【0016】
さらに、図3(C)に示すように、レジスト層8を除去した後、このn型エピタキシャル層2に熱処理を行い、イオン注入部9中のB原子をn型エピタキシャル層2中に拡散させて、信号電荷(ホールともいう)の取り出し電極であるp電極10を形成する。
実施例では、p電極10の厚さ、即ちB原子の拡散深さが約0.25μmとなるように熱処理条件を設定した。
【0017】
また、図示しないが、n型エピタキシャル層2に接続するn電極を周知の方法、例えば上記p電極10と同様の方法により形成する。
【0018】
[第4工程](図4参照)
電極部6を含む酸化絶縁層3上に、SiN(窒化シリコン)層を例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いて成膜する。
そして、このSiN層をフォトリソ法を用いてパターニングすることにより、受光部Aとなる領域に反射防止膜12を形成する。
【0019】
上述した第1工程〜第4工程により、実施例の受光素子20を得る。
【0020】
次に、上述した受光素子20の受光部Aに光を照射した際の空乏層の形成について、図5を用いて説明する。
図5に示すように、n型シリコン基板1と電極部6との間に電位差を生じさせることによって、電極部6に対応する範囲におけるn型エピタキシャル層2の表面を含む表面近傍に空乏層が発生する。
例えば、n型シリコンに基板1に5Vの電圧を印加し、電極部6に2Vの電圧を印加すると、その電位差は3Vとなり、このときに形成される空乏層の幅は約6.3μmとなる。この幅はBD等に用いられる405nm帯の青色波長の光を受光するのに十分な幅である。
そして、受光素子20の受光部Aに照射された光はこの受光部Aで光電変換されて信号電荷になり上記空乏層の電界で移動し、さらに高ドーパント濃度を有するp電極10を介して外部に出力される。
【0021】
前述したように、本発明の受光素子によれば、受光部の内部抵抗を増加させることなく、特に、405nm帯の青色波長における受光感度を向上させることができる。
【0022】
本発明の実施例は、上述した構成及び手順に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変形例としてもよいのは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の受光素子の実施例における第1工程を説明するための模式的断面図である。
【図2】本発明の受光素子の実施例における第2工程を説明するための模式的断面図である。
【図3】本発明の受光素子の実施例における第3工程を説明するための模式的断面図である。
【図4】本発明の受光素子の実施例、及び実施例における第4工程を説明するための模式的断面図である。
【図5】本発明の受光素子において空乏層が形成される様子を示す模式図である。
【符号の説明】
【0024】
1 n型シリコン基板、 2 n型エピタキシャル層、 3 酸化絶縁層、 5 ポリシリコン膜、 6 電極部、 8a 開口部、 8 レジスト層、 9 イオン注入部、 10 p電極、 12 反射防止膜、 20 受光素子、 A 受光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板上に設けられて、受光領域と該受光領域で受光した光を電荷に光電変換する光電変換部とを有する半導体層と、
前記半導体層上に前記受光領域を覆うように設けられた光透過性を有する絶縁層と、
前記絶縁層上の前記受光領域に対応する範囲に設けられた光透過性を有する電極部と、
前記半導体層における前記受光領域の外側に設けられて、前記光電変換部で光電変換された電荷を取り出す電荷取り出し電極と、
を有することを特徴とする受光素子。
【請求項2】
前記電極部と前記半導体基板との間に電位差が生じた際に、前記半導体層における前記電極部に対応する範囲に空乏層を発生することを特徴とする請求項1記載の受光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−187081(P2008−187081A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−20719(P2007−20719)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】