説明

受容体チロシンキナーゼ阻害(RTKi)化合物の目への送達のための医薬製剤

本発明は、治療有効量の貧水溶性活性化合物と、眼新生血管形成および増大した血管透過性に基づく疾患の治療または予防に適した量のポリエチレン共溶媒とを含む有効な眼科用医薬組成物の開発に関する。その組成物はゲルの形態であり、好ましい活性化合物は、多標的受容体チロシンキナーゼ阻害剤N−[4−(3−アミノ−1H−インダゾール−4−イル)フェニル]−N’−(2−フルオロ−5−メチルフェニル)尿素である。本発明の浸食性ゲル組成物は、好ましくは、新生血管形成、炎症、または血管透過性により特徴づけられる障害に罹患している患者の眼に、後強膜近傍投与または硝子体内注射により投与される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
本願は、2005年12月23日に出願された米国仮特許出願第60/753,749号への優先権を主張する。
【0002】
(1.発明の分野)
本発明は、AMD、DR、糖尿病性黄斑浮腫などの眼の血管新生および血管漏出により生ずるまたは悪化する病態を治療するために有用な組成物および方法、より具体的には血管新生眼障害治療に使用するための少なくとも1つの抗血管新生剤、抗炎症剤、または抗血管透過剤(anti−vascular permeability agent)を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
(2.先行技術)
異常な新生血管形成すなわち血管新生および増大した透過性は、加齢関連黄斑変性症(AMD)、未熟児網膜症(ROP)、虚血性網膜静脈閉塞症および糖尿病性網膜症(DR)を含む多くの眼障害の主原因である。AMDおよびDRは重症の不可逆的視覚喪失の最も一般的な原因に含まれる。網膜静脈閉塞症などのこれらのおよび関連疾患において、中心部視覚喪失は、血管新生、既存血管網からの新血管発生および血管透過性の変化の続発症である。
【0004】
血管新生過程は、既存血管中の静止性内皮細胞の活性化により知られる。正常網膜循環は新生血管刺激に抵抗性であり、網膜血管における内皮細胞増殖は非常に少ししか起こらない。組織低酸素、炎症性細胞浸潤および透過障壁破壊を含む網膜新生血管形成に対する多くの刺激があるように思われるが、全て、サイトカイン類(VEGF、PDGF、FGF、TNF、IGFなど)、インテグリンおよびプロテイナーゼの局所濃度を増大させる結果、新血管の形成を生じさせ、続いてそれが神経網膜の組織化された構造を破壊するか、または内境界膜を通して硝子体中に貫通する。上昇したサイトカインレベルは、内皮細胞密着接合を破壊することもでき、血管漏出および網膜浮腫の増大、ならびに神経網膜の組織化された構造の破壊に至る。VEGFが炎症性細胞浸潤、内皮細胞増殖および血管漏出の主たる媒介物質であると考えられているが、PDGF、FGF、TNF、およびIGFなどの他の増殖因子がこれらの過程に関与している。したがって、増殖因子阻害剤は、眼内への局所送達によりまたは経口投与により、網膜損傷、およびそれに伴う視覚喪失を阻止することに重要な役割を果たすことができる。
【0005】
眼新生血管形成および増大した血管透過性により惹起された疾患に治癒はない。AMDの現在の治療方法は、レーザー光凝固および光線力学的療法(PDT)を含む。眼新生血管形成および増大した血管透過性に対する光凝固の効果は、網膜細胞の熱的破壊によってのみ達成される。PDTは、通常、色素の緩徐な注入とそれに続く非熱的レーザー光の適用を必要とする。治療は、通常、異常血管のその漏出を一時的に停止または減少させる。PDT治療は、最初の1年間に3カ月毎に3から4回繰り返さなければならない可能性がある。PDT治療に伴う可能性のある問題には、頭痛、視覚における不鮮明、鮮明さの減少および間隙、ならびに1〜4%の患者における実質的視力低下が含まれ、多くの患者で部分的回復がある。その上、PDT治療の直後、患者は日焼けを避けるために5日間直射日光を避けなければならない。最近、加齢関連黄斑変性症を有する患者の治療のために、米国において、組換えヒト化IgGモノクローナル抗体フラグメント(ラニビズマブ)が承認された。この薬品は、通常、月に1回硝子体内注射により投与される。
【0006】
眼新生血管形成および増大した血管透過性に関連する障害および他の障害の治療に可能性として有用であると考えられ得る多くの化合物は、水に貧溶性である。貧水溶性化合物は、薬学的に許容される水性媒体に治療的有効濃度で溶解性でない物質である。水溶解度は貧水溶性化合物の製剤開発に重要なパラメーターである。必要とされるものは、化合物の増大した溶解度を提供する一方で、その治療的可能性を維持するのに十分な化合物のバイオアベイラビリティを提供する製剤である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、内皮細胞増殖、血管漏出、炎症および血管新生により惹起された眼疾患の治療のための貧溶性化合物の眼投与のための安全で効果的な製剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本発明は、血管新生および増大した血管透過性に基づく眼疾患を治療するための組成物を提供することにより、先行技術のこれらのおよび他の欠点を克服する。本発明の一態様において、浸食性ゲル組成物が提供される。本発明の組成物は、(a)活性薬剤、および(b)高分子量ポリエチレングリコール(すなわち、PEG1500からPEG8000)または高分子量と低分子量のPEGのブレンドなどの適切な共溶媒を、浸食性ゲルを得るのに適当な量で含む。共溶媒の量および分子量は、局所送達後の製剤の効力に非常に重要な役割を果たす。
【0009】
広範囲の分子、特に非常に低い溶解度を有するこれらの分子が、本発明の範囲内で利用され得る。本明細書で使用される用語「貧溶性」は、10マイクログラム/mL未満の水中溶解度を有する化合物を指して使用される。本発明の組成物中で使用するための活性薬剤は、抗血管新生剤、抗炎症剤もしくは抗血管透過剤、または眼障害の治療に有用な任意の他の貧水溶性活性薬剤であってよい。
【0010】
本発明の浸食性ゲル組成物は、好ましくは、新生血管形成、炎症、または血管透過性により特徴づけられる障害に罹患している患者の眼に、後強膜近傍(posterior juxtascleral)投与または硝子体内注射により投与される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(発明の詳細な説明)
上記のように、本発明は、内皮細胞増殖、増大した血管透過性、炎症、または血管新生により惹起された眼障害の治療に使用するための活性薬剤を含有する組成物を提供する。本発明の組成物は、そのような眼障害に伴う新生血管形成および血管漏出の予防または抑制に有用である。ある場合には、本発明の組成物は新生血管形成の退行を引き起こす。簡単にいえば、本発明の文脈では、活性薬剤は、血管増殖を抑制し、血管透過性を低下させ、および/または炎症を軽減するように作用する、合成または天然の任意の分子であると理解されるべきである。特に、本発明は、治療有効量の活性薬剤、懸濁化剤、および高分子量ポリエチレングリコール(すなわち、PEG1500からPEG8000)または高分子量と低分子量のPEGのブレンドなどの適切な量の共溶媒を、浸食性ゲルを得るのに適当な量で含む浸食性ゲル組成物を提供する。
【0012】
ポリエチレングリコール(PEG)は、一般化学式HOCH(CHOCHCHOHを有する。これは不揮発性、水溶性または水混和性の化合物であり、化学的に不活性で、分子量が数百から数千まで様々である。これは液体またはろう様の固体であり、それは分子量を概ね示す数によって特定される。PEG400は液体であるが、PEG4000はろう様の固体である。
【0013】
本発明の製剤における使用に好ましい共溶媒は、ポリエチレングリコールPEG1500からPEG8000である。本発明の製剤における使用に最も好ましい共溶媒は、PEG1500からPEG3350である。ある好ましい他の実施形態において、本発明のゲル製剤は、より良好な結果を達成する高分子量と低分子量のポリエチレングリコールのブレンドを含む。例えば、重量比4:6でのPEG3350およびPEG400は、水混和性の浸食性ゲルを形成する。
【0014】
共溶媒は、典型的には、70%から99.999%の量で本発明の製剤中に存在する。好ましくは、本発明の組成物は、90%から99.9%の共溶媒を含有する。最も好ましくは、硝子体内注射のための組成物は、99%の共溶媒を含有する。後強膜近傍、眼窩周囲および局所投与のための組成物は、最も好ましくは99%の共溶媒を含有する。
【0015】
ポリエチレングリコールまたは高分子量と低分子量のPEGのブレンドは、有効な硝子体内、眼窩周囲および後強膜近傍浸食性ゲル製剤の重要な賦形剤と見なされる。
【0016】
本発明の1つの利点は、PEG水混和性浸食性ゲル製剤が、制御された速度で水に溶解でき、その一方で、製剤中の活性薬剤が作用部位でコロイド分散物を形成することである。このことから、PEG水溶性担体を眼から除去できることが示唆される。使用後には、この系を回収する必要はない。このことにより、新生血管形成、血管透過性または他の眼障害の優れた治療をもたらしつつ侵襲手順が少なくなるため、これは、患者の眼に活性薬剤を送達する他の既存の形態を上回る著しい改善点である。低分子量と高分子量のPEGの比率によって、浸食を制御することができる。その場で形成されたコロイド粒子の浸食速度および溶解速度を制御することによって、望ましいバイオアベイラビリティを得ることができる。
【0017】
貧水溶性の任意の活性薬剤が本発明の組成物に含まれ得ると考えられる。例えば、抗血管新生剤、抗炎症剤、または抗血管透過剤が、本発明の組成物において有用である。
【0018】
好ましい抗血管新生剤には、受容体チロシンキナーゼ阻害剤(RTKi)、特に本明細書でさらに詳細に記載するような多標的受容体プロファイルを有するもの;血管新生抑制コルチゾン;MMP阻害剤;インテグリン阻害剤;PDGFアンタゴニスト;抗増殖性剤;HIF−1阻害剤;線維芽細胞増殖因子阻害剤;上皮細胞増殖因子阻害剤;TIMP阻害剤;インスリン様増殖因子阻害剤;TNF阻害剤;アンチセンスオリゴヌクレオチドなどおよび上述の薬剤の任意のもののプロドラッグが含まれるが、それらに限定されない。本発明における使用のために好ましい抗血管新生剤は、多標的受容体チロシンキナーゼ阻害剤(RTKi)である。最も好ましいのは、表1に列挙したものに実質的に類似する結合プロファイルを有するN−[4−(3−アミノ−1H−インダゾール−4−イル)フェニル]−N’−(2−フルオロ−5−メチルフェニル)尿素などの多標的結合プロファイルを有するRTKi類である。本発明の組成物中に使用を企図されるさらなる多標的受容体チロシンキナーゼ阻害剤が、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第2004/0235892号に記載されている。本明細書で使用する用語「多標的受容体チロシンキナーゼ阻害剤」は、表1に示した、および参照により本明細書に組み込まれる同時係属の米国特許出願第2006/0189608号に記載されているプロファイルのような、血管新生に重要であることが示されている、複数の受容体に選択性を示す受容体結合プロファイルを有する化合物を指す。本発明の製剤中に使用する化合物は、KDR(VEGFR2)、Tie−2およびPDGFRの受容体結合プロファイルを有することが最も好ましい。
【0019】
【表1】

本発明の組成物および方法において有用となる他の薬剤は、抗VEGF抗体(すなわちベバシズマブまたはラニビズマブ);VEGFトラップ;表1中の200nM未満のIC50値を有する少なくとも2つのチロシンキナーゼ受容体を標的とするsiRNA分子またはそれらの混合物;グルココルチコイド(すなわち、デキサメタゾン、フルオロメタロン、メドリゾン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、プレドニゾン、プレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、リメキソロン、および薬学的に許容されるそれらの塩;プレドニカルベート、デフラザコルト、ハロメタゾン、チキソコルトール、プレドニリデン(21−ジエチルアミノアセテート)、プレドニバル、パラメタゾン、メチルプレドニゾロン、メプレドニゾン、マジプレドン、イソフルプレドン、ハロプレドンアセテート、ハルシノニド、ホルモコルタール、フランドレノリド、フルプレドニゾロン、フルプレドニジンアセテート、フルペロロンアセテート、フルオコルトロン、フルオコルチンブチル、フルオシノニド、フルオシノロンアセトニド、フルニソリド、フルメタゾン、フルドロコルチゾン、フルクロリニド、エノキソロン、ジフルプレドネート、ジフルコルトロン、ジフロラゾンジアセテート、デソキシメタゾン(desoximetasoneまたはdesoxymethasone)、デソニド、デスシノロン、コルチバゾール、コルチコステロン、コルチゾン、クロプレドノール、クロコルトロン、クロベタゾン、クロベタゾール、クロロプレドニゾン、カフェストール、ブデソニド、ベクロメタゾン、アムシノニド、アロプレグナンアセトニド、アルクロメタゾン、21−アセトキシプレグネノロン、トラロニド、ジフロラゾンアセテート、デアシルコルチバゾール、RU−26988、ブデソニド、およびデアシルコルチバゾールオキセタノン);ナフトヒドロキノン抗生物質(すなわちリファマイシン);およびNSAID類(すなわちネパフェナク、アムフェナク)を含む。
【0020】
本明細書に記載した製剤は、局所的に、硝子体内注射により、後強膜近傍および眼窩周囲経路により送達することができる。本発明の組成物における使用に好ましい共溶媒には、エチレングリコール、プロピレングリコール、N−メチルピロリドン、2−ピロリジノン、3−ピロリジノール、1,4−ブタンジオール、ジメチルグリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ソルケタール、グリセロール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどがある。
【0021】
本発明者らは、ある特定の活性薬剤が、水中よりPEGの存在下で高い溶解度を有することを発見した。例えば、化合物N−[4−(3−アミノ−1H−インダゾール−4−イル)フェニル]−N’−(2−フルオロ−5−メチルフェニル)尿素は、PEGが約60℃から95℃の温度で融解したときに完全に溶解し、PEG3350およびPEG8000中に分散することができ、室温まで冷却したときにろう様のペレットを形成する。このペレットは、水中に溶解したときにコロイド様の懸濁物を形成する。さらに、高分子量と低分子量のPEGのブレンドを使用すると、化合物が中で均一に分散した浸食性ゲルを作製することができる(実施例を参照されたい)。これは、化合物の溶解度を高め、所望のバイオアベイラビリティを達成する、後強膜近傍または硝子体内投与による不溶性化合物の送達のための注射剤形をもたらす。本発明の製剤では、化合物は、PEGのマトリックス中で固溶体を形成する。
【0022】
ある好ましい実施形態において、本発明の製剤は、製剤の物理的な安定性を高める懸濁化剤として働くポリマーをさらに含む。ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カーボポール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン(PVP)、キサンタン、トラガカントゴム、アカシアゴム、アルギン酸ナトリウムおよびそのエステルなどの多くのポリマーをこの目的に使用することができる。
【0023】
任意の特定のヒトまたは動物のための具体的な投与量レベルは、使用される活性化合物の活性、年齢、体重、全般的健康状態、投与の時期および頻度、投与経路ならびに治療を受けている病状の重症度を含む種々の要因に依存する。
【0024】
硝子体内注射、眼窩周囲投与、後強膜近傍投与、眼局所投与による投与に好ましい本発明のゲル製剤は、
治療有効量の活性薬剤と、
浸食性ゲル製剤を得るのに有効な量の、共溶媒であるPEG400、PEG3350またはPEG8000と
を含有してよい。
【0025】
本発明のある好ましい他のゲル製剤は、
治療有効量の抗血管新生剤と、
ゲル溶液を形成するのに有効な量の、ある比率のポリエチレングリコール共溶媒と
を含有してよい。
【0026】
本発明のゲル製剤における使用に好ましい、ポリエチレングリコール共溶媒の高分子量PEGと低分子量PEGの比率は、7:3から1:8である。本発明のゲル製剤における使用に最も好ましいポリエチレングリコール化合物の比率は、7部のPEG3350対3部のPEG400(7:3)から、1部のPEG3350対8部のPEG400(1:8)である。本発明のゲル製剤における使用に最も好ましいポリエチレングリコール共溶媒の比率は、表2に示すように、約4部のPEG3350対約6部のPEG400である。
【0027】
(表2)
以下の表に、RTKiおよびPEG浸食性ゲルの製剤を示す。
【0028】
【表2】

意図した投与経路(IVTまたはPJ)が理由で、製剤の粒子サイズが、良好な注射可能性ならびに快適性を達成するほど小さくなければならないということは、非常に重要である。調製された製剤(IVTまたはPJ用)は、2μL〜10μLの製剤のみが動物の眼に注射されたときでさえ優れた注入可能性を示す。
【0029】
次の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示すために含まれる。以下の実施例で開示した技法は、本発明の実施においてよく機能する本発明者らにより見出された技法を示し、したがって、その実施の好ましい様式を構成すると見なされ得るということは、当業者により理解されるべきである。しかし、本発明の趣旨および範囲を逸脱せずに、開示された特定の実施形態において多くの変更をなすことができ、さらに類似のまたは同様な結果を得ることができるということを、当業者は、本開示を考慮して理解すべきである。
【実施例】
【0030】
(実施例1)
RTKi−PEG3350ペレットを作製する手順:
適切な容器中に、PEG3350粉末を秤量し加える。その容器を75〜80℃のウォーターバスに置き、混合しPEG3350を融解させる。RTKi(N−[4−(3−アミノ−1H−インダゾール−4−イル)フェニル]−N’−(2−フルオロ−5−メチルフェニル)尿素)をPEG融解物に加える。混合しRTKiを融解物に完全に溶解させる。RTKi−PEG融解混合物を含有する容器を室温に置く。硬質のろうペレットが形成される。それは吸湿性ではない。
【0031】
(実施例2)
RTKi−PEG水混和性浸食性ゲルを作製する手順:
適切な容器中に、2つの異なるグレードのPEGを秤量し加える。例えば、PEG3350粉末およびPEG400液を妥当な比率で加える。RTKi(N−[4−(3−アミノ−1H−インダゾール−4−イル)フェニル]−N’−(2−フルオロ−5−メチルフェニル)尿素)原料粉末を容器に加える。次いで、その容器を70〜90℃のウォーターバスに置き、混合しPEG3350を融解させかつRTKiを完全に溶解させる。RTKi−PEG融解混合物を含有する容器を室温まで冷ます。RTKi−PEG水混和性浸食性ゲルが形成される。
【0032】
本明細書において開示され請求された全て組成物および/または方法は、本開示を考慮して、不当な実験をせずに行いかつ実施することができる。本発明の組成物および方法を好ましい実施形態によって説明したが、本発明の概念、趣旨および範囲から逸脱せずに本明細書に記載した組成物および/または方法に対して、ならびに方法のステップもしくは一連のステップにおいて、変形を適用できることは当業者に明らかであろう。より具体的に、化学的および構造的に関係する特定の薬剤を、同様の結果を得るために本明細書に記載した薬剤と置換することができることは明らかであろう。当業者に明らかなそのような全ての置換および改変は、付記した特許請求の範囲により定義された本発明の趣旨、範囲および概念内にあると見なされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼新生血管形成を治療するための眼科用組成物であって、該組成物は、
i)0.01%から30%の量の活性薬剤と、
ii)1500から8000の分子量を有するポリエチレングリコール共溶媒または高分子量と低分子量のPEGのブレンドと
を含み、該共溶媒は、該組成物がゲルを形成するような量で存在する眼科用組成物。
【請求項2】
前記活性薬剤が、抗血管新生剤、抗炎症剤、および抗血管透過剤からなる群から選択される、請求項1に記載の眼科用組成物。
【請求項3】
前記活性薬剤が抗血管新生剤である、請求項2に記載の眼科用組成物。
【請求項4】
前記抗血管新生剤が多標的受容体チロシンキナーゼ(RTK)阻害剤である、請求項3に記載の眼科用組成物。
【請求項5】
前記RTK阻害剤がN−[4−(3−アミノ−1H−インダゾール−4−イル)フェニル]−N’−(2−フルオロ−5−メチルフェニル)尿素である、請求項4に記載の眼科用組成物。
【請求項6】
前記活性薬剤の濃度が1%から15%である、請求項1に記載の眼科用組成物。
【請求項7】
前記抗血管新生剤の濃度が1%から15%である、請求項3に記載の眼科用組成物。
【請求項8】
前記共溶媒がPEG3350である、請求項1に記載の眼科用組成物。
【請求項9】
前記PEG共溶媒がPEG400およびPEG3350を含むブレンドであり、PEG400とPEG3350の比率が、前記組成物が水混和性浸食性ゲルを形成するような比率である、請求項1に記載の眼科用組成物。
【請求項10】
製剤中のPEG400の濃度が30%から90%である、請求項9に記載の眼科用組成物。
【請求項11】
後強膜近傍投与のための眼科用ゲル組成物であって、
i)濃度が0.01%から30%である活性薬剤と、
ii)400から8000の分子量を有するポリエチレングリコール共溶媒または高分子量と低分子量のPEGのブレンドと
を含む眼科用ゲル組成物。
【請求項12】
前記活性薬剤が、抗血管新生剤、抗炎症剤、および抗血管透過剤からなる群から選択される、請求項11に記載の眼科用ゲル組成物。
【請求項13】
前記活性薬剤が抗血管新生剤である、請求項12に記載の眼科用ゲル組成物。
【請求項14】
前記抗血管新生剤が多標的受容体チロシンキナーゼ(RTK)阻害剤である、請求項13に記載の眼科用ゲル組成物。
【請求項15】
前記共溶媒がPEG3350である、請求項11に記載の眼科用ゲル組成物。
【請求項16】
前記共溶媒がPEG400およびPEG3350を含む高分子量と低分子量のPEGのブレンドであり、PEG400とPEG3350の比率が、前記組成物が水混和性浸食性ゲルを形成するような比率である、請求項11に記載の眼科用ゲル組成物。
【請求項17】
PEG400とPEG3350の比率が3:7から8:1である、請求項16に記載の眼科用ゲル組成物。
【請求項18】
PEG400とPEG3350の比率が約6:4である、請求項17に記載の眼科用ゲル組成物。
【請求項19】
眼新生血管形成を治療するための硝子体内注射用組成物であって、
0.1%から10%の多標的受容体チロシンキナーゼ阻害剤と、
該組成物が水混和性浸食性ゲルを形成するような比率のPEG400とPEG3350と
を含む組成物。
【請求項20】
前記RTK阻害剤がN−[4−(3−アミノ−1H−インダゾール−4−イル)フェニル]−N’−(2−フルオロ−5−メチルフェニル)尿素である、請求項19に記載の組成物。

【公表番号】特表2010−534201(P2010−534201A)
【公表日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−516954(P2010−516954)
【出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/062359
【国際公開番号】WO2009/014510
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(399054697)アルコン,インコーポレイテッド (102)
【Fターム(参考)】