説明

受容体リガンドを含む発酵乳又は植物性タンパク質及びその使用

本発明は、以下の:畜乳又は植物性タンパク質を含む食品原料を乳酸菌で発酵させて、特定のアドレナリン受容体及び/又はセロトニン受容体を含む発酵食品原料又は発酵飼料原料を得る、を含む方法によって得ることのできる受容体リガンドを含む組成物の使用に関する。発酵食品原料又は発酵飼料原料は、哺乳動物において心拍数を低下及び/又は安定化するためなどに有用である。さらにそれは、哺乳動物における勃起不全の治療及び/又は軽減並びに良性の前立腺肥大症(BPH)の治療及び/又は軽減のために使用されることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの乳酸菌で畜乳又は植物性タンパク質を含む食品原料を発酵させて、特定のアドレナリン受容体及び/又はセロトニン受容体に影響を与えることのできる活性成分を含み、かつ哺乳動物における心拍数の減少及び/又は安定化、勃起不全の治療及び/又は軽減、並びに/或いは良性の前立腺肥大症(BPH)の治療及び/又は軽減などに有用である発酵食品原料を得ることを含む方法によって得ることのできる受容体リガンドを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
いくつかの研究が、低い安静時心拍数が改善された生存につながるという概念を明らかに支持する。一般集団において、いくつかの研究が高い安静時心拍数と死亡率の増加の間の強い正の相関を示した。1分あたり88拍(bpm)超の安静時心拍数を有する男性において、65bpm未満の男性群に比べて2〜3倍の死亡率の増加が観察される。心拍数は、心血管系死亡率に関係するのみならず、癌などの他の原因による死にも関連するようである。概して低い心拍数と推定寿命の間に関係があるという仮説さえあった(Zaza et al., 2001)。
【0003】
今日の先進工業国における最も一般的な循環器疾患の形態は、心臓発作の主原因である、冠動脈疾患(CAD)又は冠動脈心疾患(CHD)である。CAD及びCHDは、心臓表面上の動脈の「硬化」であり、ここで、「硬化」という用語は動脈が狭くなりかつ硬化したために血液の自由な流れが遮断されるようになった状態をさす。
【0004】
より低い心拍数は、より良い結果、特に不整脈のリスクの低下と関連する。より高い心拍数は、より高い代謝率を反映し、そして迷走神経緊張を低下させることができるため、梗塞のリスクを増加させる。さらに、より高い心拍数は、心室機能を害することができる(Zaza et al., 2001中のLombardi, F)。したがって、CAD又はCHDに関連する重要なリスクファクターが高い心拍数であると報告されたことは驚くにあたらない。CAD又はCHDはしばしば薬物で治療される。これらの薬物は以下の異なるカテゴリーに分類される:
1.ある化学物質が心臓中のベータ受容体に結合することを遮断することによって心臓の負荷を減少させる、ベータブロッカー。
2.血管に直接作用し、弛緩させそしてより酸素に富む血液を心臓に到達させる、硝酸塩。
3.心臓中の血流を増加させ、カルシウムイオンによる血管を収縮又は締め付ける情報伝達をブロックすることにより心臓の負荷を減少させることができる、カルシウムチャンネルブロッカー。
4.(血液中に見出される微細粒子である)血小板の結合し血栓を形成する能力を低下させることによって血栓形成を阻害する、(アスピリンなどの)抗血小板剤。
【0005】
疾患の発症の初期段階における高い心拍数の予防は、高い心拍数の薬物による治療の代替手段であることができる。最近、多くの食物由来の生理活性化合物が一般的な健康に有益であるか又は健康を増進すると考えられている。
【0006】
乳酸菌(LAB)により発酵された乳が、乳酸菌のタンパク分解活性による乳中のカゼインからのペプチドの遊離による降圧作用を生じうることは知られている。これは例えば、ヨーロッパ特許第EP821968号(Calpis Food Industry)、同第EP1016709号(Calpis Food Industry)及びPCT国際特許出願公開第WO0132836号(Valio Ltd.)中に記載されている。
【0007】
Yamamoto et al.(1996)は、ラクトバシラス・ヘルヴェチカス(Lactobacillus helveticus)及びサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)を含むスターターで発酵させた乳が、収縮期及び拡張期血圧を低下させるが心拍数などの他の指標には変化が観察されないことを開示する。
【0008】
PCT国際特許出願公開第WO0185984号(Davisco International Foods, Inc.)も、降圧作用(血液を減少させる作用)を有するペプチドに関し、ここで、該ペプチドは、ホエー(乳漿)タンパク質の酵素消化によるペプチドである。心拍数及び血圧の変化が測定された。平均動脈圧の顕著な低下が観察され、心拍数の減少を生じた75mg/kg用量での観察を除き、30及び150mg/kgの用量においては心拍数の応答の間に顕著な違いはなかった。
【0009】
Fuglsang, A., et al(2002)の文献は、Yamamoto et al.,(1996)の文献と同様、発酵乳ペプチドが降圧特性を有することを記載している。しかしながら、それは、第3569頁、1.欄、2.パラグラフにおいて、被験サンプルに関して「心拍数に対する効果は、未発酵乳(すなわちプラセボ)のそれに比べて顕著でなかった」と述べ、心拍数に対する効果が顕著でないと考えられたと示唆した。
【0010】
上記のYamamoto et al. (1996)の文献及びFuglsang(2002)の文献及びPCT国際特許出願公開第WO0185984号は、乳酸菌発酵生成物が血圧低下特性を有するにもかかわらず、同様に心拍数低下特性も有すると考える根拠のないことを示唆している。
【発明の開示】
【0011】
発明の要約:
本発明により解決されるべき課題は、心拍数の減少並びに/或いは良性の前立腺肥大症(BPH)及び/又は勃起不全の軽減及び/又は治療に有用な代替組成物を提供することである。
【0012】
解決は、驚くべきことに食品原料、好ましくは乳、を乳酸菌(LAB)で発酵させることによって、いくつかの特定のアドレナリン受容体及びセロトニン受容体のリガンドであり、上記の病気及び状態に作用する活性成分を生じることを本発明者らが確認したことに基づく。
【0013】
したがって、本発明の第一の側面は、畜乳又は植物性タンパク質を含む食品原料を少なくとも1つの乳酸菌で発酵させて、アドレナリン又はセロトニン受容体のリガンドである少なくとも1つの成分を含む発酵食品原料を得ることを含む方法によって得られることのできる組成物の、哺乳動物において心拍数を低下させるための生成物の製造のための使用に関する。
【0014】
さらに、他の興味深い側面は、良性の前立腺肥大症(BPH)及び/又は勃起不全の治療及び/又は予防のための、本発明の第一の側面において記載された使用に関する。
【0015】
さらなる側面においては、本発明は、哺乳動物における心拍数低下特性を持ち、並びに/或いは良性の前立腺肥大症(BPH)及び/又は勃起不全の予防及び/又は治療に有用であり、そして食品原料を少なくとも1つの乳酸菌株によって発酵させることによって生成された、アドレナリン又はセロトニン受容体のリガンドである少なくとも1つの成分を含む発酵食品原料を提供する。ラクトバシラス・ヘルヴェチカス菌株CHCC5951(DSM14998)及び/又はストレプトコッカス・サーモフィラスによって発酵させた食品原料が好ましい実施態様である。
【0016】
生菌を含む食品はしばしば、摂取すると特に健康によい(すなわち、プロバイオティクス)とされる。したがって、さらなる側面において本発明は、生菌を含む発酵食品原料であって、哺乳動物において心拍数低下特性を有し、並びに/或いは良性の前立腺肥大症(BPH)及び/又は勃起不全の予防及び/又は治療に有用な発酵食品原料を提供する。発酵食品生成物の現在の好ましい実施態様は、ラクトバシラス・ヘルヴェチカス菌株DSM14998及び/又はストレプトコッカス・サーモフィラス又或いはそれらの突然変異体の生菌細胞を含む。
【0017】
用量応答実験(実施例2)からわかるように、組成物がより高濃度の心拍数低下化合物で作製された場合、さらに大きな応答を得ることが可能であるようである。したがって、興味深い側面においては、発酵食品原料から単離された活性成分が提供される。
【0018】
さらなる側面において本発明は、発酵食品原料或いはアドレナリン受容体のアルファ−若しくはベータ受容体及び/又はセロトニン受容体のリガンドであるそこから単離された成分の、狭心症、高血圧、動脈硬化、脳卒中、心筋梗塞、脳梗塞及び血管形成術後の再狭窄、不整脈、頻脈性不整脈、うっ血性心不全(CHF)、大動脈弁逆流症、慢性腎不全、脂質代謝異常、リポタンパク代謝異常などの冠動脈疾患(CAD)又は冠動脈心疾患(CHD)の治療又は軽減、並びに/あるいは良性の前立腺肥大症(BPH)及び/又は勃起不全の治療及び/又は軽減のための薬物の製造のための使用を記載する。
【0019】
定義
本発明の詳細な実施態様の検討の前に、本発明の主な側面に関する特定の用語の定義が提供される。
【0020】
「哺乳動物における心拍数を低下させるため」という用語は、本明細書に記載の組成物の投与の前の心拍数に対する心拍数の低下をさす。ヒトで試験する前に、好ましくは動物モデルにおいて心拍数低下特性が決定されることが好ましい。1つの有用な動物モデルにおいては、発酵生成物が本態性高血圧ラット(SHR)に強制経口投与され、強制経口投与後の24時間、異なる時間点で意識のあるSHRにおいてテレメトリーによって心拍数が測定される。プラセボは、未発酵乳などの対応する未発酵食品であることが好ましい。さらなる詳細については、本明細書中の実施例1を参照のこと。しかし、実施例4に記載の正常血圧のWistarラットも心拍数の低下を評価するために使用されることができる。
【0021】
本明細書中では、受容体の「リガンド」は、受容体に結合することができ、そしてそれによって刺激性(アゴニスト)又は阻害性(アンタゴニスト)に作用することのできる成分を記述するために使用される。最終的にそれは受容体について競合することができる。
【0022】
「アドレノレセプター」は、「アドレナリン受容体」としても知られ、ノルアドレナリン及びアドレナリンの受容体である。
【0023】
本明細書においては、「セロトニン受容体」という用語は、Peroutka(1979)により記載された[3H]5−ヒドロキシトリプタミンに結合するセロトニン受容体をさす。
【0024】
「乳酸菌」という用語は、糖を発酵させて優先的に生成される酸としての乳酸、酢酸、葉酸及びプロピオン酸を含む酸を生成する、グラム陽性、カタラーゼ陰性、非運動性、微好気性又は嫌気性細菌をさす。好ましくは、乳酸菌はファーミキュート(Firmicutes)門、より好ましくはバシリ(Bacilli)綱、さらにより好ましくはラクトバシラレス(Lactobacillales)目に属する。この目のうち、好ましい乳酸菌は、ラクトバシラセエ(Lactobacillaceae)科、より好ましくはラクトバシラス(Lactobacillus)属のものである。好ましくは、それはラクトバシラス・ヘルヴェチカス菌株である。分類学に関するさらなる詳細は、(Bergey's Manual of Systematic Bacteriology, Second Edition, Volume 1: The Archea and the Deeply Branching and Phototrophic Bacteria)を参照のこと。工業的に最も有用な乳酸菌は、ラクトコッカス(Lactococcus)種、ストレプトコッカス(Streptococcus)種、ラクトバシラス(Lactobacillus)種、ロイコノストック(Leuconostoc)種、ペディオコッカス(Pediococcus)種、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)種、及びプロピオニバクテリウム(Propionibacterium)種中にみいだされる。さらに、厳密な嫌気性菌の群に属する乳酸産生細菌、ビフィドバクテリア(bifidobacteria)、すなわちしばしば食品のスターター培養として単独又は乳酸菌と併用して使用されるビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)種は一般に乳酸菌の群に含まれる。
【0025】
本発明の実施態様を、例示のみのために以下に記載する。
【0026】
本発明の詳細な開示:
食品原料
食品原料は畜乳タンパク質又は植物性タンパク質を含まなければならない。
【0027】
好ましくは、それは畜乳タンパク質、好ましくは畜乳全体または脱脂畜乳又はミルクカゼインなどが列挙される乳タンパク成分を含む。最も好ましくは、乳はウシ由来である(Bos taurus)。
【0028】
食品原料と植物性タンパク質は、好ましくは、トウモロコシ、トウモロコシタンパク質、コムギ、コムギタンパク質、大豆、脱脂大豆又は大豆タンパク質などが列挙されることができる。
【0029】
心拍数の低下並びに/或いは良性の前立腺肥大症(BPH)及び/又は勃起不全の治療及び/又は軽減のために使用されることのできるアドレノレセプター又はセロトニン受容体のアンタゴニストである成分を1つ以上含む生成物
実施例5及び6に記載のとおり、本明細書に記載された乳酸菌の使用は、特定のアドレナリン受容体又はセロトニン受容体のリガンドである活性成分の有用な量を発酵後に直接提供する。
【0030】
アドレナリン受容体の多数のサブタイプが記載された。それらは3つの受容体ファミリー−(ベータ−1及びベータ−2を含む)ベータ受容体、アルファ−1受容体及びアルファ−2受容体に群分けされる。それらはすべて、アデニレートシクラーゼ及びホスホイノシシチダーゼセカンドメッセンジャー経路にさまざまに連結された7回膜貫通型Gタンパク質結合受容体である。カテコールアミンホルモン及び神経伝達物質:ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)及びエピネフリン(アドレナリン)は、アドレナリン受容体の正常な生理学的アゴニストであり、循環器系の制御に関連した多くの正常な並びに機能不全の生理学的応答がアドレナリン受容体により仲介される。
【0031】
アルファ−アドレナリン受容体は、交感神経系の応答、特に、そのすべてが血圧及び心拍数の上昇に導きうる細動脈平滑筋の収縮及び心臓の収縮などの循環器のホメオスタシスに関与する応答の重要なメディエーターである。ベータ−アドレナリン受容体も循環器系の制御に重要な役割を演ずる。心臓の収縮性の刺激は、例えば、ベータ−1アドレナリン受容体及びベータ−2アドレナリン受容体の活性化により仲介され、心拍数の増加はベータ−1アドレナリン受容体を介して誘発される。結論として、これらの受容体のアンタゴニストは、心拍数を低下させるかまたは安定化するために有用であることができる。
【0032】
セロトニン受容体アンタゴニストは中枢神経系の多くの作用の原因であるとされるが、それらは循環器系の制御にも関与すると思われる。臨床的に研究されたセロトニン受容体アンタゴニスト、ケタセリンは有効な降圧剤であることがわかっている。しかしながら、ケタセリンはアルファ−1アドレナリン受容体もブロックすることができるため(Borne、1994)、降圧効果は、ケタセリンのセロトニン受容体をアンタゴナイズする作用のみによるものではないかもしれない。
【0033】
したがって、本発明の1つの実施態様は、アルファ−アドレナリン受容体、ベータ−アドレナリン受容体及びセロトニン受容体を含む受容体群から選ばれる受容体に対するアンタゴニストを含む組成物の、哺乳動物において心拍数を低下させるための生成物を製造するための使用である。
【0034】
実施例5及び6からは、本発明による牛乳の発酵が、アルファ1A-、アルファ1B-、アルファ2A(h)-、アルファ2B(h)-、アルファ2C(h)-、ベータ1(h)-、ベータ2(h)-及びベータ3(h)-アドレナリン受容体及びさらにセロトニン受容体を含む多くのアルファ−及びベータ−アドレナリン受容体のリガンド(たいがいアンタゴニスト)である化合物を生成することが見られる。したがって、本発明のある実施態様は、アルファ1A-、アルファ1B-、アルファ2A(h)-、アルファ2B(h)-、アルファ2C(h)-、ベータ1(h)-、ベータ2(h)-及びベータ3(h)-アドレナリン受容体及びセロトニン受容体を含む受容体群から選ばれる受容体に対するアンタゴニストを含む組成物の使用である。最も好ましいのは、アルファ2A(h)-、アルファ2B(h)-、及びベータ2(h)-アドレナリン受容体を含む受容体群から選ばれる受容体に対するアンタゴニストを含む組成物の使用である。
【0035】
性的な健康及び機能が生活の質の重要な決定因子であることは確立されている。勃起不全(ED)及び女性の性的機能不全は、人口の高齢化の結果としてより重要になってきている。この主題がメディアで広く話題にされるため、すべての年齢の男性及び女性は性生活を満足させるかれらの関係及び経験を改善するための努力における指導を求めている。性的機能不全はしばしば糖尿病、高血圧、冠動脈疾患、神経学的障害、及びうつ病と関連する。何人かの患者においては、性的機能不全はかかる障害の主症状でありうる。さらに、EDはしばしば多くの薬物の副作用でもある。驚くべきことに、勃起不全の原因として、ホルモン欠乏症は糖尿病又は血管の疾患よりも少ない。血管の疾患は50歳を超える男性におけるEDの原因全体の半分近くを占める。血管の疾患は、動脈硬化、末梢血管の障害、心筋梗塞、及び動脈高血圧を含む。現在、勃起不全の治療に使用される経口薬物は、シルデナフィル(クエン酸シルデナフィル、Viagra(登録商標))、バルデナフィルHCl(Levitra(登録商標))、タダラフィル(Cialis(登録商標))及びヨヒンビン(Yohimbine(登録商標)、Yocon(登録商標))などの選択的酵素阻害剤を含む。
【0036】
フェントラミン及び類似の化合物によるアルファ−アドレナリン受容体の遮断は、ベニスの海綿体における血管拡張剤の有効性を高める(Kim, 2000)。特に、アルファ−2アドレナリン受容体アンタゴニストは、100年以上にわたってヨヒンビンなどの選択的薬物を用いる勃起不全の治療に使用されてきた。アルファ−1アドレナリン受容体に対する競合的かつ比較的選択的な遮断作用を有するチモキサミン(モキシシライト)も、海綿体内注射された場合に勃起を起こすことが示されている(Brindley, 1986)。結論として、アルファ−1及びアルファ−2アドレナリン受容体のアンタゴニストはどちらも勃起不全(インポテンス)の治療に使用されることができる。
【0037】
したがって、本発明のさらなる実施態様は、アルファ−アドレナリン受容体を含む受容体群から選ばれる受容体に対するアンタゴニストを含む組成物の、哺乳動物における勃起不全の治療又は予防のための生成物の製造のための使用である。
【0038】
循環器疾患が50歳を超える男性におけるEDの原因全体の半分近くを占めるため、アルファ−1及びアルファ−2アドレナリン受容体のアンタゴニストに加えて、ベータ−アドレナリン受容体アンタゴニスト及びさらにセロトニン受容体アンタゴニスト並びにガンマブチル酸(GABA)を含む組成物がEDの治療において有益であるとわかるであろうと考えられる。結論として、本発明のある実施態様は、アルファ−アドレナリン受容体、ベータ−アドレナリン受容体及びセロトニン受容体を含む受容体群から選ばれる受容体に対するアンタゴニストを含む組成物の、勃起不全の治療又は予防のための生成物の製造のための使用である。該生成物はさらに、GABA自体などのGABA受容体のアゴニストも含んでよい。
【0039】
良性の前立腺肥大症(BPH)は、高齢の男性における一般的な疾患である。それは、前立腺のサイズ、組成、及び機能の変化に特徴を有し、そして中年及び高齢の男性における膀胱及び尿道の閉塞に導く。主にアルファ−1アドレナリン受容体を介する前立腺平滑筋の緊張は、BPHの臨床症状の重要な要素であると思われる。結論として、アルファ−1アドレナリン受容体アンタゴニストは、BPH治療を外科的介入から薬理学的介入へと変換させた(Altwein, 1995; Barry and Roehrborn, 1997)。アルファ−2アドレナリン受容体アンタゴニストもBPHに有益な影響を与えると思われる。
【0040】
実施例6に見られるように、食品原料を本発明にしたがって発酵させると、アルファ1A-、アルファ1B-、アルファ2A(h)-、アルファ2B(h)-及びアルファ2C(h)-アドレノレセプターに対するアンタゴニストを含む、アルファ−1及びアルファ−2アドレノセプターに対する多数のアンタゴニストが生成される。したがって、本発明の重要な実施態様は、アルファ−アドレナリン受容体及びベータ−アドレナリン受容体を含む受容体群から選ばれる1つ以上の受容体に対するアンタゴニストを含む食品の発酵によって得られる組成物の、哺乳動物における良性の前立腺肥大症(BPH)の治療又は予防のための生成物の製造のための使用である。
【0041】
本発明の特に重要な実施態様は、アルファ1A-、アルファ1B-、アルファ2A(h)-、アルファ2B(h)-及びアルファ2C(h)-、ベータ1(h)-、ベータ2(h)-及びベータ3(h)-アドレナリン受容体及びセロトニン受容体を含む受容体群から選ばれる1つ以上の受容体に対するアンタゴニストを含む食品の発酵によって得られる組成物の使用である。特に、アルファ2A(h)-、アルファ2B(h)-又はベータ2(h)-アドレナリン受容体に対するアンタゴニストを含む生成物が好ましい。
【0042】
食品原料の発酵により得られる組成物が、発酵食品原料がアドレナリン受容体のリガンドである少なくとも1つの成分及びセロトニン受容体のリガンドである少なくとも1つの成分を含むか、又は発酵食品原料がアドレナリンアルファ受容体のリガンドである少なくとも1つの成分及びアドレナリンベータ受容体のリガンドである少なくとも1つの成分を含む場合など、異なる関連する受容体に対するより多くのアンタゴニストを含む場合、より高い有効性が得られると考えられる。最も適切なタイプのリガンドは、その受容体のアンタゴニストであるという特徴を有するリガンドであると予想される。
【0043】
実施例2〜5、及び特に実施例6からは、用量依存性の関係が確立されたとしても、未濃縮の発酵物も、特定の受容体の特異的な阻害を生じる量のアンタゴニストを含み、そしてしたがって哺乳動物におけるBPH及び/又は勃起不全の予防、軽減及び/又は治療、並びに心拍数の低下に有用であることがわかる。結局、本発明の効果を得るために、発酵食品由来のリガンドをさらに精製又は濃縮する必要はない。したがって、1つの実施態様においては、発酵食品原料は直接包装され、そして食品、好ましくは機能性食品またはフリーズドライ形態などの食品添加物として市場に提供されてよい。
【0044】
本発明の発酵乳生成物は、チーズ、ヨーグルト及び飲用ヨーグルトなどの任意の知られた又は未来の発酵生成物であってよい。
【0045】
本発明の生成物は全体的な健康に有益な効果を引き出す生きた微生物を含んでよいと理解されるべきである。したがって、該生成物はプロバイオティック製品として記述され、そして販売されてもよい。
【0046】
実施例1においてこれが実証される。すなわち、実施例1の結果は、さらなる処理をしない発酵乳自体が良好な心拍数低下効果を有することを示す。さらに凍結乾燥された発酵乳は、中性の乳中に懸濁されることができ、それによって本発明の効果を有する好適な食品となる。したがって、凍結乾燥された発酵乳は好適な食品添加物とみることもできる。
【0047】
実施例5からは、発酵乳生成物中及びホエー画分中の活性成分がアルファ−アドレナリン受容体に結合すると見られる。したがって、本発明の生成物がこの特定の受容体が関与する病気及び状態の予防、軽減及び/又は治療のために使用されうると考えられる。かかる病気及び状態は、心臓疾患、BPH及び勃起不全を含むがこれらに限定されない。
【0048】
さらに、本発明の活性成分がいくつかのアルファ−アドレナリン受容体、ベータ−アドレナリン受容体そしてさらにセロトニン受容体のリガンドアンタゴニストであるという事実は、他の作用様式を介する類似の効果を有する薬物、化合物、リガンドなどと本生成物の併用投与への道をひらく。さらなる心拍数低下化合物の場合、かかるさらなる化合物は、GABAと呼ばれるガンマブチル酸を含む。GABAの生成は、ピリドキサルリン酸がコファクターとして作用する、グルタメートデカルボキシラーゼ(GAD;EC4.1.1.15)によるグルタミン酸(Glu)の脱炭酸反応によりおこる。微生物、特にラクトバシラス種、ラクトコッカス種、ビフィドバクテリウム種及びストレプトコッカス種などの乳酸菌が、グルタミックアシッドデカルボキシラーゼ活性を有し、かつグルタミン酸からGABAを生成することが報告された。
【0049】
GABAは、その健康上の利益によって長年の間注目されてきた。この分子は、中枢神経系の主要な阻害性の神経伝達物質の一つを構成する。それは哺乳動物の脳および脊髄中に見出され、そして皮質のニューロン中に非常に広く分布して運動制御、視覚及び多くの他の皮質による機能に寄与することがわかっている。それは、脳内の血流を促進して、脳代謝を増加させるように酸素の供給を増加させる。さらに、GABAはバソプレシン(抗利尿ホルモン)の分泌を阻害して、その血管弛緩作用によって血圧を低下させ、そして脊髄の血管運動中枢に作用することによって血圧を低下させる。
【0050】
GABAは、GABA-A受容体及びGABA-B受容体を介して作用する。
【0051】
したがって、GABA-A及び/又はGABA-B受容体のアゴニスト(例えば、GABA自体)又はヒト体内でのGABAの遊離を増加させている任意の他の潜在的成分が、本発明の発酵乳生成物などの製品中に含まれてよい。
【0052】
好ましい実施態様においては、発酵食品又は飼料のGABA含量は、発酵を実施するのに使用される微生物の中でもGABA生成性微生物を含むことによって保証される。特に好ましい実施態様においては、GABA生成性のストレプトコッカス・サーモフィラスが含まれる。
【0053】
「機能性食品」という用語は、本明細書中で、本明細書中で先に示した病気及び/又は状態に関して有用な機能を有するという何らかの情報を消費者が得た食品を意味する。食品という用語が使用される場合、それは飼料であってもよい。しかしながら、食品が好ましい。
【0054】
したがって、組成物が以下のステップを含む方法によって得ることができると記載された性質を有する活性成分を含む食品である場合、本発明の実施態様は、本明細書中に記載の使用に関する:
(i)本明細書に記載の性質を有する活性成分の調製のための方法にしたがって発酵食品原料を製造し;
(ii)該発酵食品原料を乾燥させ;そして
(iii)それを適切なやり方で包装して、食品又は食品添加物を得る。
【0055】
ステップ(ii)は好ましくは凍結乾燥である。
【0056】
「包装」という用語は、広く理解されるべきである。それは、一旦食品原料が発酵されて、発酵食品原料が得られたら、該発酵食品原料は消費者に提供可能であるために包装されなければならないことを意味する。それは、瓶、テトラパック(登録商標)などの中に包装されてよい。好ましくは、パッケージ上又は対応するマーケティング材料中に、該製品が心拍数低下特性を有することが示される。これは、本明細書に記載の生成物の任意の側面または実施態様に当てはまる。
【0057】
実施例1に示すように、食品中の乳酸菌は、細菌の細胞として提供されてよい。熱処理された発酵食品原料も心拍数低下効果を引き出し、その結果として、乳酸菌の細胞を使用することから予定された効果が生じる。
【0058】
好ましい実施態様においては、発酵食品は哺乳動物宿主の健康に有益な生菌細胞を含む。かかる微生物はしばしばプロバイオティクスと呼ばれる。
【0059】
一般に、プロバイオティクスは動物又はヒト宿主に有益な影響を及ぼす生きた微生物として定義される微生物のクラスを構成する。一般に、乳酸菌は、プロバイオティクスとして有用であるか又はプロバイオティクスとして活性な生物体、特に、ラクトバシラス、ストレプトコッシ及びビフィドバクテリウム種であると理解される(Fuller (1989))。
【0060】
先に記載の性質を有する生成物の使用
実施例1に例解されるとおり、心拍数低下特性は、生成物を本態性高血圧ラット(SHR)に強制経口投与し、経口投与後の24時間、異なる時点で意識のあるSHRにおいてテレメトリーによって心拍数を測定することによって決定されることができる。しかしながら、他の動物モデルも、発酵生成物の心拍数に対する有効性を評価するために有用である。1つの例は、実施例4に記載の正常血圧Wisterラットのモデルである。
【0061】
該生成物は、狭心症、高血圧、動脈硬化、脳卒中、心筋梗塞、脳梗塞、及び血管形成術後の再狭窄、不整脈、頻脈性不整脈、うっ血性心不全(CHF)、大動脈弁逆流症、慢性腎不全、脂質代謝異常、リポタンパク質代謝異常などの冠動脈疾患(CAD)又は冠動脈心疾患(CHD)の治療に使用されることができる。そのような場合、該生成物は薬物であることが好ましい。好ましい病気は、狭心症、高血圧、及び動脈硬化である。
【0062】
上記の状態に加えて、心拍数の変動の問題が興味を引く。実施例1、2及び3においては、発酵生成物が有効に心拍数を低下させるが、驚くべきことに実験動物の活動期間中の心拍数の変動も減少させることが実証される。特に、顕著な心拍数の変動がしばしば観察されるストレスのかかった状況下では、心拍数の変化は実験モデルにおける死亡率と相関するため、心拍数の変動の減衰が重要な特徴であることができる(Zaza et al 2001)。
【0063】
冠動脈疾患は長期にわたって発症する傾向があるため、寿命の間中、それを予防又は制御する機会がある。予防的ケアは早期に開始することができ、したがって動脈硬化の発症速度を低下させることができる。したがって、生成物の他の好ましい使用は、予防的なやり方である。そのような場合、生成物は食品又は食品添加物であることが好ましく、人々はこれを毎日又は連続的なやり方で消費することができる。
【0064】
好ましくは、生成物はプラセボを少なくとも10%超える心拍数減少効果を有し、ここで、プラセボは対応する未発酵の食品原料と定義される。この定義を用いると、より好ましくは、生成物はプラセボよりも少なくとも15%高い心拍数低下効果を有し、より好ましくは生成物はプラセボよりも少なくとも20%高い心拍数低下効果を有し、そして最も好ましくは生成物はプラセボよりも少なくとも25%高い心拍数低下効果を有する。
【0065】
発酵食品原料からの受容体リガンドである成分のその後の精製
上記のとおり、本明細書に記載の乳酸菌の使用は、発酵後に非常に良好な心拍数低下特性ならびに先に示した他の状態及び病気に対する予定された効果を有する活性成分の有用な量を直接提供する。
【0066】
しかしながら、いくつかの状況においては、発酵食品原料からの活性成分のその後の精製又は濃縮を実施することが好ましいかもしれない。これは、例えば、活性成分が医薬錠剤又は活性成分の高度の濃縮を必要とする他の剤形などの薬剤中で使用されるべき場合であることができる。したがって、本発明のある実施態様においては、生成物は薬物である。
【0067】
さらに、実施例1は、心拍数低下効果が生成物の濃縮係数に比例することを示す。
【0068】
したがって、本発明のある実施態様は、発酵食品原料が、以下のステップを含む方法によってアルファ−アドレナリン受容体、ベータ−アドレナリン受容体又はセロトニン受容体のリガンドである活性成分を精製又は濃縮するやり方でさらに処理される、本明細書に記載の使用に関する。
(i)本明細書に記載の特性を有する活性成分を調製するための方法にしたがって発酵食品原料を製造し;
(ii)ステップ(i)の発酵食品原料を、心拍数低下特性を有する活性成分を精製又は濃縮する方法でさらに処理し、
(iii)それを好適な方法で包装して製品を得る。
【0069】
これは、製品中に比較的高濃度の所望の性質を有する活性成分があることが望まれる場合に相当する。
【0070】
生成物が食品である場合、該方法は、濃縮された(ii)の活性成分が食品に添加されるさらなるステップ(iv)を含んでよい。
【0071】
ステップ(ii)による濃縮についての好ましい実施態様は、活性成分を含む発酵食品原料が遠心分離され、そして活性成分を含む得られた上清が回収される。食品原料が乳である場合、かかる生成物がホエーであることができる。実施例1に見られるように、ホエーは優れた心拍数低下特性を有する生成物である。したがって、好ましい実施態様においては、生成物はホエーであるが、発酵食品原料又は飼料原料の他の画分も考慮されることができる。
【0072】
例えば、2,000〜20,000rpmで1〜20分間の遠心分離が行われることが好ましい。遠心分離は、遠心分離機中で行われてもよい。
【0073】
得られた上清は、その中の活性成分の含量が増加したサンプルを得るために、逆相樹脂によるさらなる精製処理に供されてもよい。逆相樹脂による精製処理は、逆相樹脂による吸着及び溶出によって、及び/又は逆相クロマトグラフィーによって実施されてよく、それによって活性成分の純度が増加する。
【0074】
この逆相樹脂プロトコールに関する技術的詳細については、ヨーロッパ特許第EP821968号を参照のこと。
【0075】
或いは、発酵食品原料はさらに処理され、ここで、発酵食品原料にナノ濾過が実施される。これは、発酵された食品原料からの乳酸又は一価のイオンを除去するために行われることができる。
【0076】
このナノ濾過プロトコールに関するさらなる技術的詳細については、PCT国際特許出願公開第WO01/32905号を参照のこと。
【0077】
実施例2に記載のとおり、21倍まで濃縮されたホエー生成物の心拍数に対する明らかな用量依存的な効果がある。実験中には、固定した又は漸近的なレベルに達したことを示唆する兆候はなく、高い量の活性成分を含む組成物が薬物としての重要な用途を有することができることを示している。
【0078】
発酵
本発明の方法において食品原料は、食品原料の種類及び/又は乳酸菌の組み合わせによって変動するかもしれない操作条件下で乳酸菌によって発酵させられる。好ましくは、食品原料がまだ水溶液でない場合、食品原料は好適な水溶液中に溶解され、これは次に乳酸菌と混合され、そして発酵によって培養される。
【0079】
乳酸菌の培養は、先に熱殺菌され、そしてインキュベーションのための所定の温度に冷却されていてよい食品原料培地に、予め培養された乳酸菌スターターカルチャーを加えることによって実施されてよい。乳酸菌スターターの接種量は、105〜107の乳酸菌細胞/ml培地であることが好ましいが、特定のスターターカルチャーに依存して他の量のスターターカルチャーも考慮されなければならない。インキュベーション温度は、通常20〜50℃、好ましくは30〜45℃である。インキュベーション時間は通常3〜48時間であり、好ましくは6〜24時間である。乳酸菌の培養を効率よく実施するためには、特に、好ましくは3.5〜7のpH、より好ましくは5〜6のpHを有する培地中で培養を行う。さらに、pHを4〜7の範囲に維持して、所謂「pH−スタット」培養を実施することが好ましい。インキュベーションは、制限なく、乳酸菌数が108細胞/mlを超えたら終了されてよい。
【0080】
好ましい実施態様は、本明細書に記載の方法に関し、ここで、食品原料の発酵は、100mlの食品原料あたり0.5〜25mgの活性成分、より好ましくは100mlの食品原料あたり1〜5mgの活性成分を生成する条件下で行われる。
【0081】
哺乳動物
哺乳動物は、(ネコ及びイヌなどの)家畜、ブタ、ウシ、ヒツジを含む。好ましい実施態様において哺乳動物はヒトである。
【0082】
乳酸菌
上記のとおり、「乳酸菌」という用語は、糖を発酵させて優先的に生成する酸としての乳酸、酢酸、葉酸及びプロピオン酸を含む酸を生成する、グラム陽性、カタラーゼ陰性、非運動性の、微好気性又は嫌気性細菌をさす。
【0083】
中でも、それは、ラクトバシラス・ヘルヴェチカス、ラクトバシラス・デルブルエキイ亜種ブルガリカス(Lactobacillus delbruekii subsp. bulgaricus)などのラクトバシラス属に属する乳酸菌種、ラクトコッカス・ラクチスなどのラクトコッカス属に属する乳酸菌、ストレプトコッカス・サリバリウス亜種サーモフィラス(Streptococcus salivarius subsp. thermophilus)などのストレプトコッカス属に属する乳酸菌、ロイコノストック・ラクチスなどのロイコノストック属に属する乳酸菌、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacteium longum)又はビフィドバクテリウム・ブレビなどのビフィドバクテリウム属に属する乳酸菌、及びペディオコッカス(Pediococcus)属に属する乳酸菌を含む。
【0084】
乳酸菌は、酵母などの他の微生物との混合物として使用されてよい。多数の異なる乳酸菌が当業者により公的に利用可能であり、特別に有用な混合物はラクトバシラス・ヘルヴェチカス及びストレプトコッカス・サーモフィラスの組み合わせを含むと考えられる。例えば、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSMZ);及び(出願日にhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/.で利用可能であった)NCBIのインターネットタキソノミーブラウザを参照のこと。
【0085】
特別に好ましいラクトバシラス・ヘルヴェチカス菌株CHCC5951のサンプルがDSMZ(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmgH)に、寄託番号DSM14998で2002年5月15日に寄託された。寄託は、International Recognition of the Deposit of Microorganisms for the Purposes of Patent Procedureの条件の下で行われた。
【0086】
したがって、特別に好ましい実施態様は、乳酸菌が寄託番号DSM14998であるラクトバシラス・ヘルヴェチカスが使用される、本明細書に記載の使用に関する。さらなる興味深い実施態様において、そして特に心拍数を減少させるためには、上記の菌株DSM14998がストレプトコッカス・サーモフィラス菌株とともに使用される。
【0087】
さらに、ラクトバシラス・ヘルヴェチカス菌株CHCC4080のサンプルがDSMZ(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH)に、寄託番号DSM14997で2002年5月15日に寄託された。寄託は、International Recognition of the Deposit of Microorganisms for the Purposes of Patent Procedureの条件の下で行われた。
【実施例】
【0088】
実施例1:心拍数低下特性のインビボ試験
材料及び方法
菌株及び培養
菌株をMRS寒天に画線し、嫌気的に37℃で48時間インキュベートした。単一のコロニーをとり、MRSブロス中に接種し、37℃で一夜培養した。保存培養をこの一夜培養から調製し、そして20%グリセロール中、−80℃で保存した。菌株を一夜、乳中でプレ培養し、発酵のために新しい乳中に1%(v/v)で接種した。
【0089】
サンプルの調製
ホエー:サンプル1
乳(タンパク含量9.5%)を個別培養の菌株で16時間、接種レベル1%(v/v)で発酵させた。発酵生成物を遠心分離し、ペレットを捨て、ホエーを0,45mmフィルターを通して濾過し、そして凍結乾燥した。最初のものと同条件で発酵させた第二の発酵物を遠心分離し、そしてホエー画分を得た。ペレットを捨て、そしてホエーを0,45mmフィルターで濾過して凍結した。ホエーを使用して凍結乾燥したホエー粉末を可溶化してこれをラットへの給餌前に係数21で濃縮した。
【0090】
ホエー中に溶解した凍結乾燥発酵乳:サンプル2
乳(タンパク含量9.5%)を個別培養の菌株で、16時間、接種レベル1%(v/v)で発酵させた。生成物全体を凍結乾燥した。最初のものと同条件の第二の発酵物を遠心分離した。ペレットを捨て、そしてホエーを0,45mmフィルターを通して濾過し、そして凍結した。ホエーを使用して凍結乾燥した発酵乳粉末を可溶化し、そしてラットへの給餌の前に係数5でそれを濃縮した。
【0091】
乳中に溶解した凍結乾燥発酵乳:サンプル3
乳(タンパク含量9.5%)を個別培養の菌株で、16時間、接種レベル1%(v/v)で発酵させた。生成物全体を凍結乾燥した。乳(タンパク含量9.5%)を使用して凍結乾燥した粉末を可溶化し、そしてラットへの給餌の前に係数5でそれを濃縮した。
【0092】
一夜発酵乳生成物:サンプル4
乳(タンパク含量9.5%)を個別培養の菌株で、16時間、接種レベル1%(v/v)で発酵させた。
【0093】
加熱処理した一夜発酵生成物:サンプル5
乳(タンパク含量9.5%)を個別培養の菌株で、16時間、接種レベル1%(v/v)で発酵させた。
【0094】
本態性高血圧ラット
本態性高血圧ラット(SHR)をIFFA CREDO(Charles River社)、Lyon, Franceから入手した。各処置を9時15分と9時30分の間に強制経口投与によって投与し、各動物は1匹あたり全部で2.5mlの体積を受容した。
【0095】
実験計画
3つの群を形成した:
第1群(n=16):処置1を受容する(乳;n=16)
第2群(n=12):連続的な処置を受容し、各投与は3日間の洗浄期間で分離された
群: 1)プラセボ(乳)
2)サンプル1(ホエー中に懸濁した凍結乾燥ホエー、係数21で濃縮して投与)
3)サンプル2(ホエー中に懸濁した凍結乾燥発酵乳、係数5で濃縮して投与)
4)サンプル3(中性pHの乳中に懸濁した凍結乾燥発酵乳、係数5で濃縮して投与)
5)サンプル4(単なる発酵乳生成物)
6)サンプル5(発酵後に加熱処理した発酵乳)
7)サンプル6(発酵されていないが生菌を含む乳)
【0096】
実験の前に、すべてのSHRを9週間動物施設に順化させた。さらに、すべての動物を強制経口投与に慣れさせ、そして最初の強制経口投与の3日前に収縮期血圧を測定した。
【0097】
試験パラメータ
強制経口投与後に24時間、異なる時点で意識のあるSHRにおいて収縮期血圧及び心拍数をテレメトリー(Data Sciences Int.)によって測定した。すなわち、収縮期、拡張期血圧及び心拍数の(1分間の)平均を投与前の24時間及び投与後の48時間の間、15分ごとに記録した。これらの追跡から、収縮期、拡張期血圧並びに心拍数の24時間の平均を、各群において計算した。
【0098】
さらに、未処置の値に比較した、各物質によって誘発された収縮期及び拡張期血圧の変動を強制経口投与後の24時間中、並びに強制経口投与後3〜6、12〜15及び21〜24時間の間について計算した。
【0099】
統計学
すべての結果を平均±平均の標準誤差として表した。未処置の値及び各物質の強制経口投与後に得られた値の間の相違を、対のあるスチューデントt−検定を用いて評価し、ここで、計算はSISTAT 8.0プログラムを用いて行った。
【0100】
結果
表1に、測定した心拍数の変動を示す。
【0101】
【表1】

【0102】
この結果は、係数21で濃縮されたホエー生成物(サンプル1)が最も強力な心拍数低下特性を有することを示す。
【0103】
上記結果は、発酵乳製品が既に顕著な心拍数低下効果を有し、濃縮する必要のないことも示す。サンプル4及び5は、一夜発酵させた発酵乳生成物であり、それらは心拍数低下効果を有する。しかしながら、心拍数低下効果は、生成物の濃縮係数に比例する。
【0104】
明らかに、ペプチド又は他の活性成分を含む生成物のホエー部分が、心拍数低下効果の決定因子である。生成物の用量−心拍数低下効果が観察される。
【0105】
サンプル3は、中性pHの乳中に懸濁した凍結乾燥発酵乳である。それは、心拍数を顕著に減少させる。これは、本明細書に記載の発酵生成物の広い用途を実証する、なぜなら、それは異なる液体に溶解されることができ、必要とされる最終的な適切な用途を得るからである。異なるpHなどの特徴は、生成物の心拍数低下活性に影響しない。
【0106】
発酵後のサンプル5による心臓の処置は心拍数も低下させる。実質的に、すべての細菌がこのサンプル中で殺される。したがって、これは、最終生成物中に生菌のある必要のないことを実証する。
【0107】
サンプル6は発酵されていないが、生菌を含む。それは心拍数を低下させない。これは、発酵ステップが必要であることを実証する。
【0108】
実施例2:用量応答実験
実施例1に表された結果をさらに実証するために、発酵乳由来のホエー中に懸濁した、発酵乳から得られたさまざまな量の凍結乾燥ホエーを含む組成物を本態性高血圧ラット(SHR)に投与することによって用量応答実験を実施した。
【0109】
概して、材料及び方法並びに実験計画は実施例1に記載のとおりである。
【0110】
すなわち、乳をラクトバシラス・ヘルヴェチカス菌株CHCC5951(DSM14998)で、16時間、1%(v/v)の接種レベルで発酵させた。発酵乳を遠心分離し、ペレットを捨て、そしてホエーを凍結乾燥した。最初のものと同条件での第二の発酵物を遠心分離した。ペレットを捨て、そしてホエーを4℃に置いた。凍結乾燥ホエー粉末を可溶化するためにホエーを用い、第二の発酵で得られたホエー中の固体ホエー成分の量に比べて、2、6及び14.3倍に濃縮した固体成分を含む組成物を得た。可溶化の最終ステップをラットへの組成物の給餌の直前に行った。
【0111】
実施例1のように、未発酵乳をプラセボとして使用した。
【0112】
最低濃度で開始して、用量を同じ実験動物において3つの別々の試験期間で試験した。各試験期間は、3日間の「洗浄」期間によって分けられ、ここで、先の投与の作用を除去するために動物は発酵ホエー生成物を受容しなかった。
【0113】
結果を表2に表で示す。
【0114】
【表2】

【0115】
図1中に、濃縮物3(14.3倍)の1つの完全な期間についての結果を示す。
【0116】
さらに、凍結乾燥ホエー粉末からは第二の発酵で得られたホエー中の固体ホエー成分の量に比較して21倍に濃縮した固体成分を含む組成物を得た。2、6、14.3並びに21倍に濃縮したホエー生成物を動物に与えた結果を図2に示す。
【0117】
結果は、21倍の濃縮係数で濃縮したホエー生成物の心拍数に対する明らかな用量依存性の効果を示す。ホエー生成物の用量が高いほど心拍数の低下が大きい。固定した又は漸近的なレベルには達しなかったと思われ、より高濃度の活性化合物を含む組成物が心拍数低下についてより有効性の高いことが期待できる。
【0118】
実施例3:活動性の高い期間中の心拍数の変動が低下される
動物の活動期間中は心拍数が増加する。この調査の動物の活動期間は、光のない期間、すなわち黒いバーで示された期間とほとんど一致した(図1を参照のこと)。しかしながら、図1に示す観察から判断して、心拍数のみならず、驚くべきことに心拍数の変動も14.3倍に濃縮した発酵ホエー生成物で処置した動物に比べて未処置動物のほうが大きい。
【0119】
心拍数における変動を定量化するために、12〜15時間の間の期間に観察された心拍数の値の分散を推定した。実施例1に記載のSISTAT8.0プログラムを用い、処置動物並びに未処置動物の両方について標準偏差を推定して、分散((標準偏差)2=分散)を計算した。
【0120】
処置動物の標準偏差を5.9と推定し、これは(5.9)2=34.8の分散に対応する。
【0121】
未処置動物の標準偏差を10.4と推定し、これは(10.4)2=108.2の分散に対応する。
【0122】
一次データが正規分布していると推定すると、34.8の分散は108.2の分散とは95%レベルで有意に異なる。
【0123】
したがって、(分散として測定した)活動期間中の心拍数の変動は、14.3倍に濃縮した発酵ホエー生成物で処置した動物の心拍数の変動に比べて、未処置動物において有意に大きい。
【0124】
結論として、心拍数の変動は、ラクトバシラス・ヘルヴェチカス菌株CHCC5951(DSM14998)で発酵させたホエー生成物によって安定化される。ウサギ実験モデルにおいて心拍数の変化と死亡率が相関することが観察されており(Zaza et al, 2001)、かつ特に、ストレスのかかった状況下で顕著な心拍数の変動がしばしば観察されるため、これは、生成物の重要な特徴であることができる。
【0125】
実施例4:L.ヘルヴェチカス菌株CHCC5951で発酵させた乳生成物と、異なる菌株で発酵させた類似の商品との比較
この実施例の目的は、血圧低下特性を有すると主張する市販の乳酸菌発酵乳製品とラクトバシラス・ヘルヴェチカス菌株CHCC5951(DSM14998)で発酵させた生成物とを比較することであった。
【0126】
2つの生成物の血圧及び心拍数に対する効果を、2つの組成物をWistarラットに投与して、麻酔下ラットにおける収縮期血圧、拡張期血圧及び心拍数を測定することによって評価した。
【0127】
特に言及しない限り、材料及び方法は実施例1に記載のとおりである。
【0128】
すなわち、乳をラクトバシラス・ヘルヴェチカス菌株CHCC5951(DSM14998)で、16時間、1%(v/v)の接種レベルで発酵させ、得られた生成物を凍結乾燥して、凍結乾燥乳粉末を得た。最初のものと同条件の第二の発酵を実施し、そして遠心分離した。ペレットを捨て、ホエーを0.45μmフィルターを通して濾過しそして凍結した。それをラットに与える直前に、凍結乾燥乳粉末をホエーに溶解した。溶解した粉末の量は、それが溶解されたホエーの体積の5倍の体積の発酵乳から得られた量に相当した(この場合には、30mlのホエー中4.28gの粉末)。われわれはこの実施例においてこの組成物を5倍濃縮物と呼ぶ。該組成物を一夜絶食した正常血圧のWistarラット(300〜320グラム)に、9時15分と9時30分の間に、1kgあたり7.5mlの5倍組成物の用量で強制経口投与した。組成物の効果を14時30分と16時30分の間で、すなわち経口投与の5〜7時間後に、動脈血圧及び心拍数を麻酔下動物において測定することによって評価した。
【0129】
得られた結果を表3に示す。
【0130】
【表3】

【0131】
上記のデータから、市販製品及びCHCC5951発酵生成物はどちらも血圧を低下させ、そしてさらにそれは同じ程度であったと結論できる。しかしながら、驚くべきことに、表3のデータは、CHCC5951発酵生成物のみが有意に心拍数を低下させたことを示す。
【0132】
実施例5:発酵生成物のアドレナリンアルファ受容体への結合
この実験の目的は、(もしあれば)どの特異的受容体にラクトバシラス・ヘルヴェチカス菌株CHCC5951(DSM14998)が結合できるかを、インビトロの受容体結合アッセイを用いて実証することである。
【0133】
すなわち、ラクトバシラス・ヘルヴェチカス菌株CHCC5951(DSM14988)で、16時間、1%(v/v)の接種レベルで乳を発酵させた。この発酵物を遠心分離し、ペレットを捨て、そしてホエーを2つの部分に分けた。ホエーの1つの部分は凍結乾燥した。ホエーの他の部分を+4℃で使用まで保存した。この部分を濃縮物1Xと呼ぶ。
【0134】
凍結乾燥組成物を−50℃で適切な希釈剤中で再構成するまで保存した。200X原液を、凍結乾燥粉末を一定体積の水に溶解し、ホエータンパクに関して、非凍結乾燥ホエー組成物に対して200倍濃縮された原液として調製した。
【0135】
インビトロの競合結合アッセイを以下の表4に記載の多数の受容体について行った。
【0136】
【表4】

【0137】
インビトロの競合結合アッセイの結果を以下の表5に示す。
【0138】
【表5】

【0139】
アドレナリンα1受容体の場合、IC50値(対照の最大の特異的結合の半分の結合を阻害する濃度)及びHill係数(nH)を、Hill方程式への回帰分析を用いた競合曲線の非線形回帰分析によって決定する。阻害定数(Ki)を、Cheng Prusoff方程式(Ki=IC50/(1+(L/KD))、ここで、L=アッセイ中での放射性リガンド濃度、及びKD=放射性リガンドの受容体への親和性)から計算する。結果は、IC50=1.2×10-9M、Ki=3.1×10-10M及びnH=0.7であった。
【0140】
データから、ラクトバシラス・ヘルヴェチカス菌株CHCC5951(DSM14998)で発酵させた食品原料は、ラット脳皮質から単離したα1アドレナリン受容体への用量依存的な特異的結合を示す成分を含むと結論することができる。
【0141】
実施例6:特異的なアドレナリン受容体及びムスカリン受容体への発酵生成物の結合
この実験の目的は、ラクトバシラス・ヘルヴェチカス菌株CHCC5951(DSM14998)で発酵させた発酵乳生成物が、アドレナリン及びムスカリン受容体のうちのどの特異的受容体に結合するかをインビトロの受容体結合アッセイを用いて実証することである。
【0142】
材料及び方法
すなわち、ラクトバシラス・ヘルヴェチカス菌株CHCC5951(DSM14998)で16時間、1%(v/v)の接種レベルで乳を発酵させた。この発酵物を遠心分離し、ペレットを捨て、そしてホエーを使用するまで+4℃で保存した。この部分を濃縮物1Xと呼ぶ。
【0143】
受容体結合アッセイを、本質的に表6に記載の通りで、表7に示す文献に記載の通りに実施した。受容体結合アッセイの結果を表8に示す。
【0144】
【表6】

【0145】
【表7】

【0146】
【表8】

【0147】
上記データから、ラクトバシラス・ヘルヴェチカス菌株CHCC5951(DSM14998)で発酵させた食品原料が、アドレナリン受容体及びセロトニン受容体に対する用量依存的な特異的結合を示す成分を含むと結論することができる。
【0148】
1つ以上の受容体が阻害され、上清の組成の複雑性を明らかにする。多様な効果が異なる標的プロフィールを有する異なるペプチドによってもたらされる可能性が高い。
【0149】
結論として、発酵物のホエー中に存在する化合物は、ベータ2(h)受容体(平均93%)及び5-HTns受容体(平均93%)に対して最も高い阻害活性を表し、続いてアルファ2B(h)(平均68%)>アルファ2A(h)(平均64%)>アルファ2C(h)(平均50%)及びアルファ1B(h)(平均47%)であった。より低レベルにおいて、化合物は受容体ベータ1(h)(平均39%)及びアルファ1A(h)(平均34%)を阻害した。化合物は受容体ベータ3(h)には活性がなかった。
【0150】
【表9】

【0151】
【表10】

【0152】
【表11】

【0153】
寄託された微生物に関して(エキスパートソルーション)
本特許出願中に示されたすべての寄託された微生物について以下が適用される。
【0154】
ヨーロッパ
ヨーロッパ特許を求めることが指定されるものに関しては、寄託された微生物のサンプルは、ヨーロッパ特許公報が発行されるか又は出願が拒絶若しくは取り下げ若しくは取り下げられたとみなされるまで、サンプルを要求する人によって指定された当業者であって、かつi)出願人により、及び/又はii)ヨーロッパ特許庁により許可されたものへのかかるサンプルの支給のみにより利用可能となるであろう(EPC規則28(4)及び28(5))。
【0155】
カナダ
出願人は、カナダ特許が出願に基づいて付与されるか又は出願が拒絶されるか、又は放棄されもはや回復しないか又は取り下げられるまで、特許庁長官のみが本願において言及された寄託された生物学的材料を長官によって指定された当業者に提供する権限を有し、出願人は書面によって国際事務局に国際公開の技術的準備が完了する前に知らせなければならない。
【0156】
ノルウェー
出願人はここに、本願が(ノルウェー特許庁により)一般閲覧に供され、又は閲覧に供されずにノルウェー特許庁によって最終的決定されるまで、サンプルの提供が当業者のみに行われるものとすることを請求する。この効果の請求は、本願がノルウェー特許法第22及び33(3)セクションにより、公衆に利用可能となるまでに出願人のノルウェー特許庁への提出によって行われければならない。もしかかる請求が出願人により提出された場合、第三者によるサンプルの提供に関するいかなる請求も使用する当業者を示さなければならない。該当業者はノルウェー特許庁により作成された認定された当業者のリストに載った個人又は個々のケースにおいて出願人により許可された任意の個人であってよい。
【0157】
オーストラリア
出願人はここに、本発明に権利を有さない当業者である個人に対して、微生物サンプルの提供が特許付与前又は出願の無効、拒絶又は取り下げの前のみに行われるものとすることを通知する(オーストラリア特許に関する規則の規則3.25(3))。
【0158】
フィンランド
出願人はここに、本願が(特許庁により)一般閲覧に供されるまで、又は一般閲覧に供されずに特許庁により最終決定されるまでにのみ、本分野の当業者にサンプルが提供されるものとすることを請求する。
【0159】
英国
出願人は、ここに、微生物サンプルの提供が、当業者のみに利用可能であるものとすることを請求する。この効果に対する請求は、本願の国際公開の技術的準備が完了する前に国際事務局に対して出願人により提出されなければならない。
【0160】
デンマーク
出願人はここに、本願が(デンマーク特許庁により)一般閲覧に供されるまで、又はデンマーク特許庁による最終決定が一般閲覧に供されずに行われるまでにのみ、サンプルの提供が当業者に行われるものとすることを請求する。この効果に対する請求は、本願がデンマーク特許法22及び33(3)セクションにより公衆に利用可能となるときまでにデンマーク特許庁に出願人によって提出されなければならない。かかる請求が出願人により提出された場合、サンプルの提供についての第三者によるいかなる請求も使用する当業者を示さなければならない。該当業者はデンマーク特許庁によって作成された認定された当業者のリストに載った任意の個人又は個々のケースにおいて出願人により許可された任意の個人であってよい。
【0161】
スウェーデン
出願人はここに、本願が(スウェーデン特許庁により)一般閲覧に供されるまで、又はスウェーデン特許庁による最終決定が一般閲覧に供されずに行われるまでにのみ、サンプルの提供が当業者に行われるものとすることを請求する。この効果に対する請求は、(好ましくは、PCT Applicant's GuideのVolume 1、附属書類Zに再現されたPCT/RO/134Formによって)出願人が提出しなければならない。かかる請求が出願人により提出された場合、サンプルの提供についての第三者によるいかなる請求も使用する当業者を示さなければならない。該当業者はスウェーデン特許庁によって作成された認定された当業者のリストに載った任意の個人又は個々のケースにおいて出願人により許可された任意の個人であってよい。
【0162】
オランダ
出願人はここに、オランダ特許の付与まで、又は本願が拒絶されるか若しくは取り下げられるか若しくは無効となるまで、特許規則の31F(1)に規定されたように、微生物が当業者へのサンプルの提供のみによって利用可能であることを請求する。この効果に対する請求は、どちらの日が先であるかに係らず、オランダ特許法セクション22C又はセクション25により本願が公衆に利用可能となる日前に、出願人によりオランダ工業所有権庁に対して提出されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0163】
【図1】濃縮物3(14.3倍の濃縮係数の固体ホエー成分を含むホエー組成物)又はプラセボで処置した動物における心拍数測定。各データポイントは、8匹の動物からの平均値を表す。動物の活動期が光のない期間、すなわち黒いバーで示した期間と一致することに注目のこと。
【図2】乳の発酵後に得られたホエー中の固体成分の量に対して2、6、14.3及び21倍に濃縮した固体ホエー成分を含むホエー組成物を動物が受容した後12〜15時間の期間の動物における心拍数の減少。動物は、強制経口投与、すなわち胃管による供給を受けた。(0)はプラセボを示す。心拍数は、実施例1に記載のとおりに動物において測定し、未処置動物における心拍数と比較した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の:
畜乳又は植物性タンパク質を含む食品原料を少なくとも1つの乳酸菌で発酵させて、アドレナリン受容体又はセロトニン受容体のリガンドである少なくとも1つの成分を含む発酵食品原料又は発酵飼料原料を得ること、
を含む方法によって得ることのできる組成物の、哺乳動物における心拍数の低下、或いは良性の前立腺肥大症(BPH)および/又は勃起不全の治療又は予防のための生成物の製造のための使用。
【請求項2】
前記受容体がアルファ−アドレナリン受容体、ベータ−アドレナリン受容体及びセロトニン受容体を含む受容体群から選ばれる、請求項1に記載の組成物の使用。
【請求項3】
前記受容体が、アルファ1A-、アルファ1B-、アルファ2A(h)-、アルファ2B(h)-、アルファ2C(h)-、ベータ1(h)-、ベータ2(h)-及びベータ3(h)-アドレナリン受容体及びセロトニン受容体を含む受容体群から選ばれる、請求項2に記載の組成物の使用。
【請求項4】
前記受容体が、アルファ2A(h)-、アルファ2B(h)-及びベータ2(h)-アドレナリン受容体を含む受容体群から選ばれる、請求項3に記載の組成物の使用。
【請求項5】
前記発酵食品原料が、アドレナリン受容体のリガンドである少なくとも1つの成分及びセロトニン受容体のリガンドである少なくとも1つの成分を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項6】
前記発酵食品原料が、アドレナリンアルファ受容体のリガンドである少なくとも1つの成分及びアドレナリンベータ受容体のリガンドである少なくとも1つの成分を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項7】
前記受容体の前記リガンドが該受容体のアンタゴニストであるという特徴を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
前記生成物が食品又は飼料である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
哺乳動物において心拍数を低下させるための生成物の製造のための、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項10】
GABA受容体のリガンドである少なくとも1つの成分をさらに含む請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物の、哺乳動物において心拍数を低下させるための生成物の製造のための使用。
【請求項11】
GABA受容体のリガンドである前記少なくとも1つの成分が、以下の:
畜乳又は植物性タンパク質を含む食品原料又は飼料原料を少なくとも1つの乳酸菌菌株で発酵させて、発酵食品原料を得る、
を含む方法によって得ることができる、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
心拍数を低下させるための生成物の製造のための、請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項13】
前記心拍数の低下が、狭心症、高血圧、動脈硬化、脳卒中、心筋梗塞、脳梗塞及び血管形成術後の再狭窄、不整脈、頻脈性不整脈、大動脈弁逆流症、慢性腎不全、脂質代謝異常、リポタンパク代謝異常などの冠動脈疾患(CAD)又は冠動脈心疾患(CHD)の治療又は軽減のために行われる、請求項1〜12のいずれか1項に記載の使用。
【請求項14】
前記治療が心拍数の変動の低下を生じる、請求項1〜13のいずれか1項に記載の使用。
【請求項15】
良性の前立腺肥大症(BPH)及び/又は勃起不全の治療又は予防のための生成物の製造のための、請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項16】
窒素酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1つの成分又はホスホジエステラーゼ−5若しくは5−アルファレダクターゼを阻害する成分をさらに含む、請求項15に記載の組成物の、良性の前立腺肥大症(BPH)及び/又は勃起不全の治療又は予防のための生成物の製造のための使用。
【請求項17】
前記発酵食品原料が、以下のステップ:
(i)請求項1〜16のいずれか1項に記載の心拍数低下特性を有する活性成分の調製のための方法にしたがって発酵食品原料を製造し;
(ii)ステップ(i)の発酵食品原料が、心拍数低下特性を有する上記活性成分を精製又は濃縮する方法でさらに処理され;
(iii)それを適切な方法で包装して、食品又は食品添加物を得る、
を含む方法により得ることのできる、心拍数低下特性を有する活性成分を精製又は濃縮する方法によってさらに処理される、請求項1〜16のいずれか1項に記載の使用。
【請求項18】
前記ステップ(ii)による濃縮が、遠心分離及び前記活性成分を含む得られた上清を回収することによって、行われる、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
前記食品原料が乳であり、前記生成物がホエーである、請求項17又は18のいずれか1項に記載の使用。
【請求項20】
前記乳酸菌がラクトバシラス属、ラクトコッカス属、ストレプトコッカス属、ロイコノストック属、ビフィドバクテリウム属及びペディオコッカス属から成る群から選ばれる乳酸菌である、請求項1〜19のいずれか1項に記載の使用。
【請求項21】
ラクトバシラス属の前記乳酸菌が特に、ラクトバシラス・ヘルヴェチカスである、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
ストレプトコッカス属の前記乳酸菌が特に、ストレプトコッカス・サーモフィラスである、請求項20に記載の使用。
【請求項23】
前記食品原料又は飼料原料が、少なくとも2つの乳酸菌の組み合わせを用いて発酵させられる、請求項1〜22のいずれか1項に記載の使用。
【請求項24】
前記食品原料又は飼料原料が、ラクトバシラス・ヘルヴェチカス属の乳酸菌及びストレプトコッカス・サーモフィラス属の乳酸菌を用いて発酵させられる、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
前記乳酸菌が登録番号DSM14998のラクトバシラス・ヘルヴェチカス又はその突然変異体である、請求項1〜24のいずれか1項に記載の使用。
【請求項26】
前記発酵食品原料又は発酵飼料原料が、生菌細胞を含む、請求項1〜25のいずれか1項に記載の使用。
【請求項27】
哺乳動物において心拍数低下特性を有する発酵食品原料であって、該食品原料が、該食品原料を少なくとも1つの乳酸菌で発酵させることによって生成される、アドレナリン受容体又はセロトニン受容体のリガンドである少なくとも1つの活性成分を含む、前記発酵食品原料。
【請求項28】
哺乳動物における良性の前立腺肥大症(BPH)及び/又は勃起不全の治療及び/又は予防のための発酵食品原料であって、前記食品原料が、前記食品原料を少なくとも1つの乳酸菌で発酵させることにより生成される、アドレナリン受容体のリガンドである少なくとも1つの活性成分を含む、前記発酵食品原料。
【請求項29】
前記リガンドが、アルファ−アドレナリン受容体又はベータ−アドレナリン受容体のリガンドである、請求項27又は28に記載の発酵食品原料。
【請求項30】
前記リガンドが、アルファ1A-、アルファ1B-、アルファ2A(h)-、アルファ2B(h)-、アルファ2C(h)-、ベータ1(h)-、ベータ2(h)-及びベータ3(h)-アドレナリン受容体を含む受容体群から選ばれる受容体のリガンドである、請求項27〜29のいずれか1項に記載の発酵食品原料。
【請求項31】
前記リガンドが、アルファ2A(h)-、アルファ2B(h)-及びベータ2(h)-アドレナリン受容体を含む受容体群から選ばれる受容体のリガンドである、請求項27〜30のいずれか1項に記載の発酵食品原料。
【請求項32】
前記受容体の前記リガンドが、前記受容体のアンタゴニストであるという特徴を有する、請求項27〜31のいずれか1項に記載の発酵食品原料。
【請求項33】
前記乳酸菌がラクトバシラス属、ラクトコッカス属、ストレプトコッカス属、ロイコノストック属、ビフィドバクテリウム属及びペディオコッカス属から成る群から選ばれる1つ以上の乳酸菌である、請求項27〜32のいずれか1項に記載の発酵食品原料。
【請求項34】
前記乳酸菌の少なくとも1つが、ラクトバシラス・ヘルヴェチカスである、請求項27〜33のいずれか1項に記載の発酵食品原料。
【請求項35】
前記乳酸菌の少なくとも1つが、ストレプトコッカス・サーモフィラスである、請求項27〜34のいずれか1項に記載の発酵食品原料。
【請求項36】
前記乳酸菌の少なくとも1つが、ラクトバシラス・ヘルヴェチカス菌株DSM14998又はその突然変異体である、請求項27〜35のいずれか1項に記載の発酵食品原料。
【請求項37】
生菌細胞を含む、請求項27〜36のいずれか1項に記載の発酵食品原料。
【請求項38】
ラクトバシラス・ヘルヴェチカス菌株DSM14998又はその突然変異体の生菌細胞を含む、請求項27〜37のいずれか1項に記載の発酵食品原料。
【請求項39】
哺乳動物における心拍数低下特性を有し、かつ、ラクトバシラス・ヘルヴェチカス菌株DSM14998又はその突然変異体の生菌細胞を含む、請求項27〜38のいずれか1項に記載の発酵食品原料。
【請求項40】
請求項1〜39のいずれか1項に記載の発酵食品原料から単離された、単離された心拍数低下成分。
【請求項41】
請求項1〜40のいずれか1項に記載の発酵食品原料から単離された、哺乳動物における良性の前立腺肥大症(BPH)及び/又は勃起不全の治療及び/又は予防に有用な、単離された成分。
【請求項42】
狭心症、高血圧、動脈硬化、脳卒中、心筋梗塞、脳梗塞及び血管形成術後の再狭窄、不整脈、頻脈性不整脈、大動脈弁逆流症、慢性腎不全、脂質代謝異常、リポタンパク代謝異常などの冠動脈疾患(CAD)又は冠動脈心疾患(CHD)の治療又は軽減のための薬物の製造のための、請求項27〜39のいずれか1項に記載の発酵食品原料の使用。
【請求項43】
良性の前立腺肥大症及び/又は勃起不全の治療及び/又は軽減のための薬物の製造のための、請求項27〜39のいずれか1項に記載の発酵食品原料の使用。
【請求項44】
狭心症、高血圧、動脈硬化、脳卒中、心筋梗塞、脳梗塞及び血管形成術後の再狭窄、不整脈、頻脈性不整脈、大動脈弁逆流症、慢性腎不全、脂質代謝異常、リポタンパク代謝異常などの冠動脈疾患(CAD)又は冠動脈心疾患(CHD)の治療又は軽減のための薬物の製造のための、請求項40に記載の発酵食品原料から単離された、心拍数低下活性を有する単離された成分の使用。
【請求項45】
良性の前立腺肥大症及び/又は勃起不全の治療及び/又は軽減のための薬物の製造のための、請求項41に記載の発酵食品原料から単離された、単離された活性成分の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−511593(P2008−511593A)
【公表日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−528888(P2007−528888)
【出願日】平成17年9月5日(2005.9.5)
【国際出願番号】PCT/EP2005/054363
【国際公開番号】WO2006/024673
【国際公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(501216034)セーホーエル.ハンセン アクティーゼルスカブ (8)
【Fターム(参考)】