説明

口唇化粧料塗布装置

【課題】多量の化粧料を、決まった量だけ保持させることができる化粧料塗布具を提供すること。
【解決手段】化粧料4を口唇に塗布するための化粧料塗布用具2と、化粧料4を収容するための容器3とを備え、塗布用具2が容器3の口部33から容器3内に出入自在な口唇化粧料塗布装置1である。塗布用具2は、化粧料4を塗布するための塗布面21Aを有し、かつ扁平体からなる塗布部21と、先端に塗布部21を連結した支持軸22とを有している。塗布部21を正面視したとき、塗布部21は、最広幅部21Eを有し、かつ最広幅部21Eから先端に向けて漸次狭幅となっているとともに、塗布面21Aは、その中央部に窪み部21Cが形成された凹面となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口紅及びリップグロス等の口唇化粧料を塗布するために特に好適に用いられる口唇化粧料塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
口紅やリップグロス等の口唇化粧料を塗布するための塗布具として、支持軸の先端に塗布部を備えた構造のものが一般に利用されている。塗布部においては、化粧料の保持量を多くすることで、1回の操作によって化粧料を塗布できる面積を大きくし、塗布の操作を減らすことができる。塗布の操作を減らすことは、塗布のかすれを防止して、化粧料を均一に塗布できる点から有利である。
【0003】
化粧料の保持量を多くするための工夫として、例えば塗布部が、支持軸から横方向に突出し、かつプラスチック材料の少なくとも2つの分岐部を有するものが知られている(特許文献1及び2参照)。分岐部は、端部を有し、かつ該端部で接触してその間に空洞を形成している。この塗布部においては、空洞内に化粧料が保持されるので、保持量を多くすることができる。
【0004】
上述の技術とは別に、塗布部の形状として、例えば特許文献3には、支持軸よりも幅広で扁平な塗布部が記載されている。また同文献には、塗布部は、正面視したとき最広幅部から先端に向けて漸次狭幅となった形状を有していることや、支持軸に対して斜めに傾斜して設けられていることが記載されている。これらによって、塗布感触や仕上げ性、使い勝手の向上などが図られている。例えば塗布部の先端が細く尖っていると、化粧料を細かく塗布できるという利点があるので、唇の口角の部分に化粧料を塗り易くなる。
【0005】
一方、塗布用具は、一般に、化粧料を収容した円筒形状の容器と組み合わせて用いられる。塗布用具は、容器内の化粧料に浸漬された塗布部を引き抜くとともに、容器の口部の近傍部分に設けられたしごき弁で過剰量の化粧料をしごき落としてから、塗布部によって化粧料を塗布するようになっている。特許文献3の塗布用具においては、しごき弁を硬質若しくは半硬質のプラスチック材料を用いて形成して、実質上非変形性のものとするとともに、塗布部をしごき弁よりも変形し易くして、支持軸よりも幅広で扁平な塗布部をしごくようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−326320号公報
【特許文献2】特開2006−346469号公報
【特許文献3】特開2001−8727号公報(図12〜図14)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1及び2の記載によれば、前記の空洞を画成する分岐部は、実質的に変形しないように十分に剛性のものである。したがってこの空洞は、その実質的な変形がないので、化粧料を塗布するときに、空洞内に保持された化粧料が放出されにくいことがある。また、空洞部は塗布部背面まで貫通しているので、塗布対象部位に塗布部を押し当てたときの圧力で、化粧料が塗布面から空洞部を通過し塗布部背面へと逃げてしまい、塗布部に保持している化粧料を有効に使用することができない。
【0008】
更に、しごき孔の穴径は、支持軸への化粧料の付着を防ぐために、通常支持軸径に合わせて設計するところ、そうすると塗布部が支持軸から横方向に突出している場合には、塗布部を容器から抜き挿しする際に抵抗力が大きくなってしまい、使い勝手が低下してしまう。例えば塗布部に植毛加工(フロッキー加工)を施している場合などは、フロッキー剥がれなどが発生して塗布部の耐久性が下がることがある。
【0009】
また、特許文献3に記載のように、塗布部の先端が細いと、化粧料の入っている容器から塗布部を引き抜いて、容器に備えられたしごき弁で余剰の化粧料をしごき落とすときに、しごきを十分に行えないことがある。この理由は、塗布部の先端の断面が、しごき弁の孔の大きさに比べて小さいので、塗布部が十分にしごかれないためである。その結果、塗布部の先端に、余剰の化粧料の液溜まりが生じてしまうことがある。そのような液溜まりが生じた状態で塗布具を使用すると、化粧料が付き過ぎることに起因して、例えば塗布の際に化粧料が唇の輪郭からはみ出してしまう原因となる場合がある。あるいは、塗布具を容器から引き抜いたときに、化粧料が糸状に伸びて見栄えが悪くなったり、糸状になった化粧料が切れて落下し、周囲を汚したりする場合もある。
【0010】
本発明の課題は、上述した従来技術が有する種々の不都合を解消し得る口唇化粧料塗布装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、化粧料を口唇に塗布するための化粧料塗布用具と、該化粧料を収容するための容器とを備え、該塗布用具が該容器の口部から該容器内に出入自在な口唇化粧料塗布装置であって、
該塗布用具は、化粧料を塗布するための塗布面を有し、かつ扁平体からなる塗布部と、先端に該塗布部を連結した支持軸とを有しており、
該塗布部を正面視したとき、該塗布部は、最広幅部を有し、かつ該最広幅部から先端に向けて漸次狭幅となっているとともに、該塗布面は、その中央部に窪み部が形成された凹面となっている口唇化粧料塗布装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、塗布部をしごき弁でしごくだけの簡単な操作で、多量の化粧料を、決まった量だけ保持させることができる。しかも塗布部の塗布面の全域にわたって化粧料を保持させることができるので、化粧料を均一に塗布することができる。また、塗布部背面への化粧料の付着が抑制されるため、化粧料塗布の際に、望ましくない部位への付着を防止することができる。
【0013】
また、本発明によれば、口角等の細かな部位における化粧料の塗り易さを損なうことなく、化粧料の液だれや糸引きを効果的に防止することができる。
【0014】
更に本発明によれば、塗布部を抜き差しするときの抵抗を低減して塗布部への損傷を軽減しつつ、幅広で扁平な塗布部を効果的にしごいてゆくことができる。その結果、塗布部への化粧料の付着量及び分布が適正となり、簡便に美しく仕上げることができる。
【0015】
本発明の化粧料塗布装置によれば、上述の各効果が奏され、特に口紅、リップグロス等の口唇化粧料を唇に塗布する際に簡単に美しく仕上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の化粧料塗布具の一実施形態を示す一部破断正面図である。
【図2】図2は、図1に示す化粧料塗布具における塗布部を拡大して示す斜視図である。
【図3】図3(a)は図1に示す化粧料塗布具における塗布部の正面図であり、図3(b)は図1に示す化粧料塗布具における塗布部の側面図であり、図3(c)は図3(b)におけるc−c線断面図であり、図3(d)は図3(b)におけるd−d線断面図であり、図3(e)は図3(b)におけるe−e線断面図である。
【図4】図4(a)ないし(c)は、化粧料を保持した塗布部が、しごき弁のしごき孔を通過する前、通過中、及び通過した後の状態を示す模式図である。
【図5】図5(a)及び(b)は、化粧料を保持した塗布部が、しごき弁のしごき孔を通過中の状態を側面からみた模式図である。
【図6】図6は、図1に示す化粧料塗布具の使用状態の一例を示す説明図である。
【図7】図7(a)は、塗布部の別の実施形態を示す斜視図であり、図7(b)は、図7(a)の正面図である。
【図8】図8(a)は、塗布部の別の実施形態を示す斜視図であり、図8(b)は、図8(a)の側面図である。
【図9】図9(a)は、塗布部の別の実施形態を示す斜視図であり、図9(b)は、図9(a)におけるb−b線断面図であり、図9(c)は、図9(b)に示す塗布部が変形した状態を示す断面図である。
【図10】図10(a)ないし(e)は、塗布部の別の実施形態を示す図である。
【図11】図11は、本発明の口唇化粧料塗布装置の別の実施形態を示す一部破断正面図である。
【図12】図12(a)及び(b)は、図11に示す口唇化粧料塗布装置における塗布部を、その塗布面側及びそれと反対面側からみて拡大して示す斜視図である。
【図13】図13(a)は図11に示す口唇化粧料塗布装置における塗布部の正面図であり、図13(b)は図11に示す口唇化粧料塗布装置における塗布部の側面図であり、図13(c)は図13(b)におけるc−c線断面図であり、図13(d)は図13(b)におけるd−d線断面図であり、図13(e)は図13(b)におけるe−e線断面図である。
【図14】図14(a)は、化粧料を保持した塗布部が、しごき弁のしごき孔を通過中の状態を側面からみた模式図であり、図14(b)は、図14(a)に示す状態から更に塗布部が引き抜かれた状態を正面からみた模式図であり、図14(c)は、図14(b)に示す状態を側面からみた模式図である。
【図15】図15は、図11に示す口唇化粧料塗布装置の使用状態の一例を示す説明図である。
【図16】図16(a)は、塗布部の別の実施形態を示す正面図であり、図16(b)は、図16(a)におけるb−b線断面図であり、図16(c)は、図16(b)に示す塗布部が略C字状に変形した状態を示す断面図である。
【図17】図17(a)ないし(e)は、塗布部の別の実施形態を示す図である。
【図18】図18(a)は、本発明の口唇化粧料塗布装置の別の実施形態を示す一部破断正面図であり、図18(b)は、図18(a)に示す口唇化粧料塗布装置の一部破断側面図である。
【図19】図19(a)は塗布用具の塗布部を可撓性しごき弁によってしごく状況を説明する略示正面図であり、図19(b)は同略示側面図であり、図19(c)は同塗布部を省略して示す可撓性しごき弁の略示底面図である。
【図20】図20(a)は、他の形態の塗布部を可撓性しごき弁によってしごく状況を説明する略示正面図であり、図20(b)は同略示側面図であり、図20(c)は同塗布部を省略して示す可撓性しごき弁の略示底面図である。
【図21】図21(a)は、更に他の形態の塗布部を可撓性しごき弁によってしごく状況を説明する略示正面図であり、図21(b)は同略示側面図であり、図21(c)は同塗布部を省略して示す可撓性しごき弁の略示底面図である。
【図22】図22(a)は従来の技術において、可撓性しごき弁の下面に堆積した化粧料が塗布部に付着する状況の説明図であり、図22(b)は本発明の一実施形態において、可撓性しごき弁の下面に堆積した化粧料が塗布部に付着するのを回避する状況の説明図である。
【図23】図23(a)ないし(c)は、可撓性環状裾部の他の形態を例示する略示断面図である。
【図24】図24(a)ないし(e)は、可撓性環状裾部の他の形態を例示する略示断面図である。
【図25】図25(a)ないし(d)は、可撓性環状裾部及び可撓性しごき弁の他の形態を例示する略示断面図である。
【図26】図26は、可撓性環状裾部の他の形態を例示する略示断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の口唇化粧料塗布装置を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図示する実施形態の口唇化粧料塗布装置は、本発明の好ましい形態の一例を示すものであって、本発明はこの図面に限定されるものではない。図1には、本発明の口唇化粧料塗布装置の第1の実施形態の正面図が、一部破断した状態で示されている。同図に示す本実施形態の口唇化粧料塗布装置1は、化粧料4を塗布するための塗布用具2と、化粧料4を収容するための容器3とを備えている。以下、塗布用具2及び容器3についてそれぞれ説明する。
【0018】
まず、容器3について説明すると、容器3は有底の細長い円筒状のものである。容器3はその内部に液状化粧料4を収容できるようになっている。容器3は、その底部と対向して口部33を有する。口部33は上方に向けて開口している。口部33の外周面にはネジ部32が設けられている。このネジ部32は、後述する塗布用具2の蓋体23の内周面に設けられたネジ部(図示せず)と螺合可能になっている。
【0019】
容器3における口部33はその近傍にしごき弁31を有している。しごき弁31は、容器3の口部33から底部に向けて縮径した漏斗状の形状をしており、その下端の位置にしごき孔31Aを有している。しごき孔31Aは、しごき孔として用いられるものである。しごき孔31Aは、後述する塗布用具2における塗布部21及び支持軸22の通過が自在になっている。しごき孔31Aは、容器3の横断面視において、しごき弁31の略中央部に形成されている。またしごき孔31Aは円孔となっている。しかし、しごき孔31Aの形状はこれに限られない。しごき孔31Aは、塗布用具2の先端に位置する塗布部21を容器3内に挿入し、また容器3内から抜き出すことが可能な大きさを有している。しごき弁31は、塗布用具2の塗布部21や支持軸22に付着した過剰量の化粧料4を適度にしごき取るために用いられる。この目的のために、しごき弁31はゴム等の弾性変形可能な材料から構成されている。なお図1においては、しごき弁31は、口部33から若干離れた下方寄りに位置しているが、これに代えて、口部33の位置にしごき弁31を配置してもよい。容器本体3の口部33の近傍部分には、口部33から若干離れた箇所から口部33までの部分が含まれる。
【0020】
容器3に収容される化粧料4としては、使用環境下において流動性を有する口唇化粧料が用いられる。そのような化粧料は、当該技術分野においてよく知られたものである。その例としては、各種口紅、リップグロスやリップカラー等と称される仕上げ用の艶出し化粧料等が挙げられる。
【0021】
容器3と組み合わせて用いられる塗布用具2は、塗布部21と支持軸22とを有している。これらの部材は、容器3の口部33から該容器3内に出入自在となっている。塗布部21は化粧料4を口唇等に塗布するために用いられる。支持軸22は、その先端において塗布部21と連結している。塗布部21と支持軸22とは同一材料から一体的に構成されていてもよく、あるいは予め製造された2つの部材を所定の手段によって結合させて構成されていてもよい。
【0022】
塗布部21と支持軸22を別々に製造して結合させる場合、両者を嵌合させて結合することが好ましい。結合の方法としては、ポンチ打ちなどで塗布部21又は支持軸22を塑性変形させて固定する方法が挙げられる。また、接着剤による接着など公知の技術を適宜採用してもよい。
【0023】
塗布用具2は、更に蓋体23を有している。蓋体23は、支持軸22の後端と連結している。蓋体23は、上述のとおり、その内周面にネジ部(図示せず)を有している。このネジ部は、上述した容器3のネジ部32と螺合可能になっている。蓋体23が容器3のネジ部32と螺合した状態においては、塗布装置1は略円柱状の形状となる。この状態においては、塗布部21は容器3の底部よりも若干上方に位置している。
【0024】
図2には塗布部21の拡大図が示されている。なお、図1と図2では、塗布部21の上下関係が逆転している。同図に示すように、塗布部21は支持軸22よりも幅広な扁平体からなる。塗布部21は、支持軸の延びる方向に長手方向Xを有し、長手方向Xと直交する方向に幅方向Yを有する縦長の形状である。
【0025】
塗布部21は、これが容器3のしごき弁31を通過するときに、第1の面21Aを内側に変形できるようにするための特徴を、少なくとも一つ有する。塗布部21の変形は、しごき弁31の孔に沿って略C字状であることが後述のように好ましい。
【0026】
縦長の扁平形状からなる塗布部21は、塗布面である第1の面21Aとこれに対向する第2の面21Bとを有する。第1の面21Aは、塗布部21の幅方向Yに関して凹面になっている。一方、第2の面21Bは平面ないし若干凸面になっている。
【0027】
塗布部21は、凹面である第1の面21Aの中央部に窪み部21Cを有している。窪み部21Cは、第1の面21Aにおいて、化粧料4を主として保持する部位である。窪み部21Cは、塗布部21の長手方向に延びている。窪み部21Cにおける塗布部21の厚みは、窪み部21Cの周縁での厚みよりも小さくなっている。
【0028】
塗布部21は、支持軸22に対して所定の角度をもって傾斜している。詳細には、塗布部21は、塗布用具2が容器3内に挿入された状態において、塗布部21の凹面である第1の面21Aが容器3の底部方向を向くように、支持軸22の軸方向に対して傾斜している。塗布部21と支持軸22とがこのような傾斜関係で結合していることによって、塗布部21の変形を所望のものとすることができる。また、塗布用具2を用いた化粧料4の塗布を容易に行うことができる(これらのことについては、後ほど詳述する)。
【0029】
塗布部21は、その表面に植毛処理が施されている。植毛処理に用いられる繊維は、長さが0.1〜3mmで、太さが0.5〜5デシテックスのものが好ましい。長さ及び太さがこの範囲のなかで、異なる2種以上の繊維を組み合わせて用いることも可能である。繊維の材質は、塗布時に求められる感触に応じ、適切なものが選択される。一般にはポリアミド樹脂を用いることで、好ましいソフトな感触を得ることができる。塗布部の表面に植毛処理を施すためには、静電植毛法等の公知の技術を適宜採用すればよい。
【0030】
図3(a)ないし(e)には、図2に示す塗布部21の正面図、側面図及び横断面図が示されている。これらの図及び先に説明した図2から明らかなように、塗布部21は、植毛処理される前の状態での露出面の全域が先端を除き曲面のみで形成されている。換言すれば、植毛処理される前の状態での塗布部21は、先端を除き、角部を全く有していない滑らかなものである。
【0031】
更に塗布部21は、植毛処理される前の状態での露出面の全域が平滑になっている。換言すれば、植毛処理される前の状態での塗布部21は、皺状、シボ状、梨地状等を始めとする各種の微細な凹凸を、その露出面の全域において全く有していない。要するに、植毛処理される前の状態での塗布部21は「滑らか」で「つるつる」したものである。塗布部21がこのような特異な形状を有していることによって、本実施形態の塗布部具1を用いて化粧料を口唇等に塗る場合、先に塗られている化粧料を拭い取ったり削り取ったりすることなく、その上に別の化粧料を首尾良く塗り重ねることができる。また、使用後においては、塗布部21に残存した化粧料を容易に除去することができるので、容器3内に塗布部21を挿入した場合に、容器3内に収容されている化粧料の着色や変色を効果的に防止することができる。
【0032】
植毛処理される前の状態での塗布部21露出面の全域が先端を除き曲面のみで形成され、かつ平滑になっていることと、植毛処理を施すこととの相乗効果によって、化粧料の塗布時に塗布部21に保持可能な化粧料の量を多くすることができる。その結果、化粧料の塗布回数を減らすことが可能となる。また植毛処理された塗布部の別の利点として、化粧料の塗布時にソフトな感覚を付与することができるという利点も挙げられる。
【0033】
図2及び図3に示すように、塗布部21は、これを正面からみたときに(つまり、幅方向Yで断面視したときに)、最広幅部21Eを有している。最広幅部は、一点であることが好ましいが、2点以上であっても良いし、或る程度の長さにわたって存在しても良い。塗布部21は、最広幅部21Eから支持軸22との連結部24に向けて漸次幅が狭くなっている。ここで言う幅とは、図3(a)中、Y方向の長さのことである。連結部24においては、塗布部21の幅と支持軸22の幅(すなわち直径)とが略一致している。また最広幅部21Eは、塗布部21の先端21Dから離れた位置にある。最広幅部21Eから先端21Dに向けて、塗布部21は漸次幅が狭くなっている。先端21Dは略尖鋭になっていることが好ましい。先端21Dを尖鋭にすることで、塗布の細かな操作を容易に行うことができる。例えば口角における塗布を容易に行うことができる。このように塗布部21は、先端21Dから最広幅部21Eにかけては幅が漸次広くなっており、最広幅部21Eから連結部24にかけては幅が漸次狭くなっている。
【0034】
本実施形態の塗布装置1は、塗布部21の最広幅部21Eの幅と、しごき弁31のしごき孔31Aの大きさとの関係に特徴の一つを有する。詳細には、最広幅部21Eは、しごき孔31Aの最広幅部よりも大きくなされている。したがって、図1に示す状態にある塗布用具2を容器3から取り出す場合には、塗布部21の最広幅部21Eが、しごき弁31のしごき孔31Aに引っ掛かることになる。本実施形態においては、塗布部21を弾性変形可能な材料から構成することで、最広幅部21Eがしごき孔31Aに引っ掛かったときに塗布部21が変形するようにして、塗布部21がしごき孔31Aを通過できるようにしている。この場合、塗布部21の第1の面21Aを内側にして、塗布部21が略C字状に変形可能な構成としている。塗布部21をこのように変形させることの利点を、図4を参照しながら説明する。
【0035】
塗布部21が化粧料4内に浸っている状態(図1に示す状態)から引き上げられると、図4(a)に示すように、塗布部21の表面全体に化粧料4が保持される。
【0036】
この状態から塗布部21が更に引き抜かれ、塗布部21がしごき弁31に当接すると、しごき弁31によって塗布部21の引き抜きが阻害される。しかし、塗布部21は弾性変形可能な材料からなるので、塗布部21はしごき弁31のしごき孔31Aを通過できるように変形する。塗布部21は、化粧料4を主として保持している面である第1の面21Aが凹面になっているので、塗布部21の変形に際しては、図4(b)に示すように、常に第1の面21Aが内側になるように略C字状に変形する。しかも、第1の面21Aにおける窪み部21Cにおいては、塗布部21の厚みが薄くなっているので、第1の面21Aが内側になるような変形が一層起こりやすい。変形中においては、塗布部21は、第1の面21Aが内側になるように略C字状になっているので、略C字状の内側に保持されている化粧料4はその保持状態が維持される。略C字状に変形した塗布部21の外面、すなわち第2の面21Bは、凸面になり、該面に存在する化粧料4がしごき弁31によってしごき取られる(後述する図5参照)。したがって、多量の化粧料を、決まった量だけ保持させることができる。
【0037】
しごき弁31は弾性変形可能な材料でもよく、その場合には塗布部21としごき孔31Aとの両方が変形することで、抜き挿し抵抗力が低減し、使い勝手が一層向上する。この場合、塗布部21はしごき孔31A通過時にやや開いたC字状(塗布部21断面の外接円径が大きくなる状態)になり、図4(b)に示すしごき孔31Aの形状は、塗布部21により押し広げられ、横に長い略楕円形に変形する。塗布部21への化粧料4の付着量は例えば、塗布部21としごき弁31の硬度比、しごき孔31Aの大きさ、肉厚によって制御される。例えば、塗布部21のゴム硬度を一定に保ち、しごき弁31のゴム硬度を変化させる場合、しごき弁のゴム硬度が小さい(すなわち柔らかい)ほど、しごき孔31Aの変形量が増大し、塗布部21に付着する化粧料4の量が増大する傾向がある。塗布部21及びしごき弁31の好ましい硬度は各部剤の厚みや形状にも依存するが、両者ともにAスケール硬度で55〜70°の範囲であり、硬度差が少ないことがより好ましい。
【0038】
しかも、塗布部21は、支持軸22との連結部24から最広幅部21Eにかけて、その幅が漸次広くなっているので、塗布部21を引き抜いていくと、該塗布部21に変形の力が徐々に加わり、スムーズに略C字状に変形する。また、最広幅部21Eが、先端21Dと連結部24との間に位置していると、略C字状に変形した塗布部21内における化粧料4の保持状態を一層良好にすることができる。
【0039】
更に、最広幅部21Eから先端21Dに向けて、塗布部21は漸次幅が狭くなっているので、塗布部21をしごき孔31Aに挿入させる際にも、該塗布部21に変形の力が徐々に加わり、塗布部21の第1の面21Aを内側にして、スムーズに略C字状に変形する。これにより、塗布部21が、挿入時に第1の面21Aを内側にした略C字状以外の形状、例えば、塗布面である第1の面21Aが外向きの略C字状やW型、あるいは塗布部21が略中心軸に沿って「くの字」に折れ曲るなどの予期しない形状に変形することが効果的に防止される。このことは、塗布部21に予期しない形状のクセがつくことを防ぐ効果がある。クセづきによる変形は、予期しない形状への変形や、それによって無理な力が塗布部21に加わることで生じ、通常数10分ほどをかけてゆっくりと元の形状に復元するが、予期しない形状にクセがついた場合、塗布部21を挿入した後、時間を待たずにすぐ抜き出して使用する際、第1の面21Aを内側にして変形しない可能性があり、化粧料4の保持状態が不良となってしまう。最広幅部21Eから先端21Dに向けて、塗布部21の幅を漸次狭くすることで、塗布部21をしごき孔31Aに挿入させるときも、抜くときと同じように第1の面21Aを内側にして略C字状に変形するので、常に安定して化粧料4の保持状態を良好に保つことができる。この観点から、最広幅部21Eは、塗布部21の長さ(図2におけるX方向の長さ)を基準として、先端21Dから5〜95%、特に15〜85%の位置にあることが好ましい。
【0040】
塗布部21がしごき孔31Aを通過した後は、しごき孔31Aによる変形力が塗布部21に加わらなくなるので、変形していた塗布部21は、図4(c)に示すように、変形前の状態に復帰する。この変形回復に伴って、化粧料4は、塗布部21における第1の面21Aの全域に広がる。その結果、化粧料4を口唇等に塗布するときに、均一な塗布を行うことができる。このとき第2の面21Bには、ほとんど化粧料が保持されていないので、塗布対象部位以外の部位に不用意に化粧料を付着させてしまう心配がなく、使用者は安心して手早く塗布することができる。従来の単純な扁平塗布具では、面21Bへの化粧料の付着を防ぐことはできず、使用者は塗布時に所望していない場所に化粧料が付かないように、塗布していない側の面21Bを気にしながら使用していた。これに対し本実施形態によれば、塗布部21がしごき弁31に当接する際、略C字状に変形することで、この外側面の面21Bに付着している化粧料を極めてきれいにしごくことが可能になる。その結果、第2の面21Bにおける化粧料の付着は僅かとなり、使用者はこのわずらわしさから開放される。
【0041】
第2の面21Bに化粧料を付着させないようにするため、例えば塗布部21の断面において、第2の面21B側がしごき孔31Aの輪郭に沿うように、第2の面21B全体を円弧状に設計することが一案として考えられる。しかしその場合には、塗布部21が全体的に、特に塗布部の中心部分が厚くなり塗布部21の曲げ強度が増加してしまうため、塗布時のソフトな感触が損なわれてしまう。本実施形態の塗布装置1を口唇化粧料用の塗布に用いる場合、唇は特に敏感な部位なので、感触が硬いことは使用者に非常に大きな不快感を与えてしまうことになる。そもそも、断面をしごき孔31Aに合わせて円弧状にするということは、塗布部21の幅寸法にも制限を与えることになる。このことに起因して塗布部21の幅を広くすることができず、1回で塗布できる面積が減り、使い勝手も低下してしまう。
【0042】
塗布部21のゴム硬度としごき弁31のゴム硬度の組み合わせを変えることで、塗布部21での化粧料4の保持量を変えることが可能である。そうすることで、略C字状の変形度合いが変化して保持量が変わっても、塗布部21がしごき孔31Aを通過した後、変形前の状態に復帰したときに、化粧料4が第1の面21Aの全域に広がることに変わりはないので、口唇等に塗布するときに、均一な塗布を行うことができる。
【0043】
塗布部21の弾性変形及び元の状態への復帰を首尾良く行う観点から、塗布部21としては、例えば天然ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、シリコーン樹脂やポリウレタンなどの各種エラストマーを用いることができる。特に熱可塑性エラストマーを使用すると、射出成形によって製造することができるので好ましい。塗布部21を弾性変形可能な材料から構成することは、化粧料4を塗布する場合に、唇等への感触が良好であるという観点からも好ましい。
【0044】
本実施形態の塗布装置1を用いると、幅広い粘度の化粧料4に対応できるという利点がある。この理由は、略C字状に変形した塗布部21によって化粧料4が包み込まれるようにしてしごき孔31Aを通過するからである。これに対して、従来の技術では、粘度の低い化粧料を用いた場合には、該化粧料が必要以上にしごき弁によってしごき取られてしまい、多量の化粧料を塗布部に保持させることができない。
【0045】
図5(a)及び(b)には、しごき弁31によって塗布部21をしごく様子を側面からみた状態が示されている。図5(a)は、塗布部21が化粧料4内に浸っている状態(図1に示す状態)から引き上げられて、しごき弁31に当接し始めた状態である。この状態においては、まず塗布部21における第2の面21Bがしごき孔31Aの周縁と当接する。また、この状態においては、しごき孔31Aの中心位置と、支持軸22の中心位置とは一致している。
【0046】
図5(a)に示す状態から塗布部21を更に引き抜くと、塗布部21が傾斜していることに起因して、塗布部21における第2の面21Bがしごき孔31Aの周縁によってしごかれていく。それにしたがい、支持軸22の中心位置は、しごき孔31Aの中心位置から偏倚していく。このように、塗布部21を引き抜いていくと、塗布部21における第2の面21Bが必ずしごき孔31Aの周縁に接して、第2の面21Bに付着している余剰の化粧料4がしごき取られる。しかも第2の面21Bがしごき孔31Aの周縁に接するので、しごき孔31Aの周縁から受ける変形の力は、第2の面21Bから第1の面21Aに向けて作用する。その結果、塗布部21は必ず第1の面21Aを内側にして略C字状に変形する。要するに、塗布部21の第1の面21Aが容器3の底部方向を向くように、支持軸22の軸方向に対して傾斜していることで、塗布部21を引き抜いたときに、第2の面21Bがしごき孔31Aの周縁に必ず接するようになる。なお、図5(b)では、第2の面21Bとしごき孔31Aの周縁とが1点でのみ当接しているように表されているが、実際は、塗布部21が略C字状に変形しているので、第2の面21Bは、しごき孔31Aの形に沿った凸面(断面が円弧状である凸面)になり、第2の面21Bとしごき孔31Aの周縁とは線状に当接する。
【0047】
塗布部21を確実に略C字状に変形させる観点から、塗布部21と支持軸22とがなす角度θ(図5(a)参照)は10〜50度、特に20〜40度であることが好ましい。また、この範囲の角度とすることで、後述する図6に示すように、塗布用具2を把持する使用者の手の位置が使用者の顔と接触する可能性が低くなり、かつ塗布用具2の容器3からの抜き挿しがし易くなり、しかも容器直径も小さく携帯性にも優れたものとすることができる。
【0048】
以上のとおり、本実施形態の塗布用具1によれば、化粧料4を保持した塗布部21をしごき弁31でしごくだけの簡単な操作で、多量の化粧料4を、決まった量だけ塗布部21に保持させることができる。この効果を一層確実にする観点から、塗布部21の最広幅部21Eの幅/しごき孔31Aの最広幅部の幅の値を、塗布部21としごき弁31とを組んでいない状態、すなわち変形前の状態で、1.1〜5.0、特に1.4〜3.0に設定することが好ましい。この値が小さすぎると、塗布部21としごき孔31Aとの位置関係が変化しやすく、それに起因して塗布部21の変形の状態が定まりにくくなり、一定量の化粧料4を保持させにくくなる。また、この値が大きすぎると、塗布部21がしごき孔31Aを通過する際に、塗布部21を略C字状に変形させるために大きな力が必要になって使い勝手が低下し、更に値が一層大きい場合には、塗布部21が略C字状に変形した際、最広幅部21Eの両端のどうしが接触して塗布部21の変形を阻害することがある。あるいは、最広幅部21Eの両端どうしが重なり合って変形状態が安定しないことがある。その結果、一定量の化粧料4を第1の面21Aに均一に保持させにくくなる。
【0049】
塗布部21の最広幅部21Eの幅/しごき孔31Aの最広幅部の幅の値は、上述の範囲が好ましいところ、しごき孔31Aの最広幅部の幅は、該しごき孔31Aが円孔である場合、その直径が1.0〜10mm、特に2.0〜7.0mmであることが好ましい。本実施形態においては、塗布部21の略C字状への変形の程度を大きくすることで、しごき孔31Aを小さくしても、塗布部21に化粧料4を多量に保持させることができる。しごき孔31Aを小さくできることは、容器3の直径を小さくできることにつながる。容器3の直径を小さくできることは、容器3のスリム化や小型という利点をもたらす。
【0050】
しごき弁31は、塗布部21に付着している余剰の化粧料4のみならず、支持軸22に付着している化粧料4のしごき落としにも用いられる。支持軸22に付着している化粧料4のしごき落としを確実に行う観点から、円孔であるしごき孔31Aの直径d1と、円柱である支持軸22の直径d2との比d1/d2は、0.7〜1.0、特に0.80〜0.98であることが好ましい。
【0051】
なおしごき孔31Aは、本実施形態においては円孔であったが、これに代えて円形以外の形状、例えば楕円形や長孔等の異方性のある形状のしごき孔31Aを採用することもできる。
【0052】
図6には、本実施形態の塗布装置1の使用状態の一例が示されている。塗布用具2を容器3から抜き出すと、先に述べた機序によって、塗布部21に付着した化粧料4のうち、過剰量がしごき弁31によってしごき落とされ、適量の化粧料4が塗布部21の第1の面21Aに保持された状態となる。この状態の塗布部21は、化粧料4が保持されていることが使用者に対して一目瞭然となるので、初めて使う者でも、塗りたいポイントに必要な量だけ化粧料4を塗ることが簡単かつ確実にできる。この場合、塗布部21の色を、化粧料4の色に対してコントラストの高い色とすれば、化粧料4が保持されていることが一層明瞭となる。更に、第2の面21Bや支持軸22における化粧料4の付着は極めて少量なので、使用者は、塗布対象部位以外への不用意な化粧料4の付着(例えば、下唇を塗布しているときに上唇に化粧料4が付着してしまうことやその逆など)を心配することなく、安心して手早く化粧料4を塗布することができる。化粧料4を口唇に塗布する際には、図6に示すように、塗布部21における化粧料4の保持面である第1の面21Aを上唇5A又は下唇5Bに対向させる。この場合、先に述べたとおり、塗布部21は支持軸22の軸線に対して傾斜しているので、上唇5A及び下唇5Bのどちらに化粧料4を塗布する場合であっても、塗布用具2を把持する使用者の手の位置が、使用者の顔から離れるので、自然な状態で塗布の動作を行うことができる。
【0053】
また、窪み部21Cが凹面である第1の面21Aに形成されていることによって、該窪み部21Cに保持されている化粧料4をすべて口唇に塗布することができる。この凹面は口唇にぴったりとフィットするからである。
【0054】
次に、本発明の口唇化粧料塗布装置における塗布部21の別の実施形態を、図7ないし図17を参照しながら説明する。これら別の実施形態に関し、特に説明しない点については、先に述べた実施形態に関する説明が適宜適用される。また図7ないし図17において、図1〜図6と同じ部材には同じ符号を付してある。
【0055】
図7(a)及び(b)に示す実施形態では、塗布部21は、その最広幅部21Eから先端21Dに向けて漸次幅が狭くなっている。そして、塗布部21の先端21Dは、塗布部21を正面視して、円弧状になっている。先端21Dをこのように構成することの利点は次のとおりである。すなわち、塗布部21の最広幅部21Eから先端21D側において、該塗布部21の幅がしごき弁31のしごき孔31Aの直径より小さい範囲では、該しごき弁31によって化粧料4を効果的にしごき落とすことはできない。しかし、先端21Dを略円弧状にすることで、塗布部21において、該塗布部21の幅がしごき弁31のしごき孔31Aの直径以下になる位置から、先端21Dまでの長さを短くできる。その結果、しごき孔31Aでしごかれずに先端21D付近に付着する化粧料4の量を低減でき、先端21D付近に必要以上に化粧料4が付着するのを防ぐことができる。また、先端21Dを略円弧状にすることで、肌等に対する傷つきなども効果的に防ぐことができる。
【0056】
図8(a)及び(b)に示す実施形態では、塗布部21の第1の面21Aが、幅方向Yに関して凹面になっていることに加えて、長手方向Xに関しても凹面になっている。第1の面21Aが、長手方向Xに関して凹面になっていることで、容器3(図1参照)から塗布部21を引き抜くときに、第1の面21Aが内側になるように塗布部21が変形するのに伴い、第1の面21Aの長手方向Xに沿う中心線付近では、第1の面21Aの曲率が、しごき孔31Aを通過する前の曲率に比べて小さくなる(つまり直線に近くなる)。しごき孔31Aを通過した後は、第1の面21Aは元の曲率に復元するので、その際、化粧料4は第1の面21Aの長手方向Xの中央付近に集められることになる。この状態で化粧料4を塗布すれば、塗布した部位の中央付近に一層多くの化粧料を塗布することが可能になる。このことは、例えば口唇の中央部に一層艶を与えたい場合などに適している。また、長手方向X及び幅方向Yの両方に関して第1の面21Aが凹面になっていることで、該面21Aの曲率を、例えば口唇の曲率など、塗布対象の曲率に近い値に設定することが容易になり、塗布対象へのフィット感や塗り易さも向上させることができる。
【0057】
図9(a)及び(b)に示す実施形態の塗布部21は、塗布面である第1の面21Aと反対側の面である第2の面21Bに、塗布部21の長手方向に延びる直線状又は曲線状の溝40を、複数本(同図では2本)有している。2本の溝40は、塗布部21の縦中心線に対して対称の位置に、かつ対称形で設けられている。2本の溝40は、塗布部21が略C字状に変形するときの変形誘導線として作用する。すなわち図9(b)に示す状態の塗布部21がしごき孔31Aを通過するときには、塗布部21が溝40の位置を起点として図9(c)に示すように変形する。変形誘導線を有することで、塗り易さに影響する第1の面21Aの形状や幅寸法などは変えずに、略C字形への変形度合い、すなわち化粧料4の保持量を変えることができる。また、変形誘導線を有することで、少ない力で略C字形へ変形させられるようになるので、抜き挿しの抵抗力が減少し使い勝手が向上する。また更に、変形誘導線を有することで、第1の面21Aにおける凹部を取り囲む凸の部分が変形し易くなるので、塗布面21を塗布対象面に押し当てたときに、図9(c)の矢印の方向とは逆の方向に変形し易くなる。その結果、塗布の際の感触がソフトになるとともに、凹部の深さが相対的に浅くなるので、凹部に保持している化粧料4を塗布対称部位へ放出し易くなる。この場合、溝40は塗布部21の長手方向に延びているので、溝40があることでY方向の断面形状は変形し易いが、X方向の断面形状の変形には影響しないか、又は塗布対象面に押し当ててY方向の断面形状が変形しているときには、むしろX方向は一層変形しにくくなる。このことは、支持軸22に対する塗布部21の先端の相対的な位置が変形誘導線の有無で変化しないか、又は変形誘導線が無い場合に比べて変位しにくくなるということを意味しているので、塗布部21の先端が容易にぶれず、細かい部分を狙って塗布するときに好都合である。変形誘導線としての作用を顕著なものとする観点から、溝40の長さは、塗布部21の長さの30〜100%、特に75〜95%であることが好ましい。また、溝は1本の連続した線状でも良いし、部分的に溝の無い箇所を含んだ点線状に配置された溝(あるいは凹んだ点群)でも構わない。
【0058】
溝40の形状としては、図9(a)に示すものの他に、図10(a)ないし(e)に示すものを用いることもできる。図10(a)に示す実施形態では、塗布部21の縦中心線に対して対称の位置に、かつ対称形で2本の溝40aが形成されている。各溝40aは、塗布部21の縦中心線に向けて凸状に湾曲した曲線になっている。図10(b)に示す実施形態では、塗布部21の縦中心線に対して対称の位置に、かつ対称形で2本の溝40bが形成されている。各溝40bは、塗布部21の各側縁に向けて凸状に湾曲した曲線になっている。図10(c)に示す実施形態では、塗布部21の縦中心線の位置に、直線状の溝40cが1本形成されている。図10(d)に示す実施形態では、塗布部21の縦中心線の位置に、湾曲した溝40dが1本形成されている。図10(e)に示す実施形態では、塗布部21の縦中心線の位置に、波線状の曲線溝40dが1本形成されている。溝の形状、形成位置及び形成本数に応じ、塗布部21の変形の状態や程度が異なるので、化粧料4の保持量や第1の面21Aに付着させる化粧料の分布状態をコントロールすることができる。したがって、どのような形状の溝を、どの位置にどれだけの本数を形成するかは、塗布部21にどの程度の量の化粧料4を保持するかに応じて適切に決定すればよい。あるいは、第1の面21Aに付着させる化粧料の分布状態をあえて不均一にして(例えば化粧料4を第1の面21Aの周囲よりも中央部に多くなるように分布させて)、唇に塗布したときに唇の中央部に艶を出して唇の立体感を強調するなど、塗布対象部位へ加えたい演出によって、溝の形状や形成位置を適切に決定すればよい。
【0059】
図11には、本発明の口唇化粧料塗布装置1の別の実施形態が示されている。また図12(a)及び(b)には、図11に示す塗布装置1における塗布部21の拡大図が示されている。なお、図11と図12(a)及び(b)では、塗布部21の上下関係が逆転している。図12(a)及び(b)に示すように、塗布部21は扁平体からなる。塗布部21は、支持軸の延びる方向に長手方向Xを有し、長手方向Xと直交する方向に幅方向Yを有する縦長の形状である。
【0060】
縦長の扁平形状からなる塗布部21は、塗布面である第1の面21Aとこれに対向する第2の面21Bとを有する。第1の面21Aは凹面になっている。一方、第2の面21Bは平面ないし若干凸面になっている。
【0061】
図13(a)ないし(e)には、図12(a)及び(b)に示す塗布部21の正面図、側面図及び横断面図が示されている。図13(a)ないし(e)及び先に説明した図12(a)及び(b)から明らかなように、塗布部21は、植毛処理される前の状態での露出面の全域が先端を除き曲面のみで形成されている。換言すれば、植毛処理される前の状態での塗布部21は、先端以外には角部を全く有していない滑らかなものである。
【0062】
本実施形態の塗布装置1は、塗布用具2における塗布部21の先端域210が、最広幅部21Eよりも厚みが大きくなっている点に特徴の一つを有する。詳細には、先端域210が、塗布面である第1の面21Aと反対側の面21B側において突出した突出部211を有することで、厚みが大きくなっている。なお、ここでいう厚みとは、塗布部21の長手方向を含む面であって、かつ塗布部21の塗布面である第1の面21Aに対して直交する面内における塗布部21の長さのことである。
【0063】
塗布部21が上述のとおりの形状になっていることで、口角等における化粧料の塗り易さを損なうことなく、化粧料の液だれや糸曳きを効果的に防止することができるという有利な効果が奏される。この有利な効果を、図14を参照しながら説明する。
【0064】
図14(a)には、しごき弁31によって塗布部21をしごく様子を側面からみた状態が示されている。図14(a)は、塗布部21が化粧料4内に浸っている状態(図11に示す状態)から引き上げられて、しごき弁31に当接し始めた状態である。この状態においては、まず塗布部21における第2の面21Bがしごき孔31Aの周縁と当接する。また、この状態においては、しごき孔31Aの中心位置と、支持軸22の中心位置とはほぼ一致している。
【0065】
図14(a)に示す状態から塗布部21を更に引き抜くと、塗布部21が傾斜していることに起因して、塗布部21における第2の面21Bがしごき孔31Aの周縁によってしごかれていく。それにしたがい、支持軸22の中心位置は、しごき孔31Aの中心位置から偏倚していく。このように、塗布部21を引き抜いていくと、塗布部21における第2の面21Bが必ずしごき孔31Aの周縁に接して、第2の面21Bに付着している余剰の化粧料4がしごき取られる。この場合、塗布部21の先端域210は先細りになっているので、塗布部21の引き抜きが進行するとともに、図14(b)に示すように、先端域210がしごき弁31のしごき孔31Aの周縁と当接しづらくなっていく。つまり、余剰の化粧料がしごき落とされにくくなっていく。しかし、図14(c)に示すように、先端域210には厚みのある突出部211が形成されているので、先端域210が先細りになっていても、先端域210の第2の面21B側において、先端域210としごき孔31Aの周縁との当接が確保され、しごき弁31が撓んだ状態が持続するとともに、突出部211が存在しない塗布部の場合と比べて、先端域210が塗布面21A側(図14(c)では左側)へより大きく移動させられる。この先端域210の塗布面21A側への偏倚は、支持軸22を含む塗布部12全体の平行移動や角度の変化を伴う場合もあるし、塗布部12が弾性変形して撓んで角度θが小さくなる方向に変形する場合もあり、これらは使用者の引き抜き方によって変化するが、いずれの場合でも先端域210は必ず塗布面21A側へ移動することになる。
【0066】
この先端域210の塗布面21A側への移動によって、塗布面21Aとしごき孔31Aの周縁との隙間が小さくなるので、先端領域210の周囲に付着する化粧料4の量を減らすことができる。特に、塗布部21の第1の面21Aが容器3の底部方向を向くように支持軸22の軸方向に対して傾斜している場合は、通常、塗布面21Aとしごき孔31Aの周縁との隙間が大きくなる傾向が強く、傾斜していない塗布部に比べて先端領域210における塗布面21Aの化粧料4のしごき取り効果が弱かったが、本発明ではしごき取り効果を高められるので、余剰の化粧料4を減少させることが可能になる。
【0067】
突出部211がない場合、塗布部の側面部分で穴径よりも小さな幅となる箇所は、きれいにしごき落とすことができないことがある。これに対して、突出部211があることで、先端領域210が塗布面21A側へ移動するのに伴い、塗布部21の側面部としごき孔31Aの周縁における接点箇所も移動し、しごき孔31Aの最大径(直径部)以外の場所でも接触しやすくなるので、しごき孔31Aの穴径よりも小さな幅となる箇所も化粧料4をしごき落とすことが可能になる。つまり、漸次狭幅になっている塗布部において、突出部211が存在しない場合よりも、突出部211が存在する場合の方が、一層先端21Dに近い部分においても側面に付着している余剰の化粧料4をしごき取ることができる。
【0068】
このように、先端域210において、突出部211部の周囲、塗布面21A、及び塗布部側面と全ての領域で、塗布部21の引き抜き完了の直前まで、余剰の化粧料4がしごき取られる。
【0069】
特に、本実施形態においては、先端域210が、第1の面21Aと反対側の面21B側において突出した突出部211を有することで、厚みが大きくなっているので、先端21Dによる細かな塗布を妨げることなく、液だれや糸曳きを効果的に防止できる。また、塗布部21の幅方向Yの縦断面視における先端域210の形状が、図13(c)及び(d)に示すように、角が丸みを帯びた三角形になっているので、先端域210は、塗布面以外に2つの平面を有することになる。これら2つの平面は、口角などの細かな部分の塗布や、一度化粧料を塗布した部位の修正に用いる場合に有利である。
【0070】
突出部211を有する先端域210は、塗布部21の先端21Dから後端へ向けて厚みが漸増して最大厚み部211Aを有し、該最大厚み部211Aから後端へ向けて厚みが漸減し、最広幅部21Eにおける厚みに近づいていく。突出部211がこのような立体形状を有していることで、塗布部21を容器3のしごき弁31に対して出し入れし易くなる。また、容器3のしごき弁31に対して塗布部21の出し入れを多数回行っても、塗布部21の表面に施された植毛がダメージを受けづらくなる。
【0071】
塗布部21の先端域210に突出部211が形成されていることに加え、塗布用具2は、塗布部21の最広幅部21Eの幅と、しごき弁31のしごき孔31Aの大きさとの関係にも特徴の一つを有する。詳細には、最広幅部21Eは、しごき孔31Aの最広幅部よりも大きくなされている。したがって、図11に示す状態にある塗布用具2を容器3から取り出す場合には、塗布部21の最広幅部21Eが、しごき弁31のしごき孔31Aに引っ掛かることになる。本実施形態においては、塗布部21を弾性変形可能な材料から構成することで、最広幅部21Eがしごき孔31Aに引っ掛かったときに塗布部21が変形するようにして、塗布部21がしごき孔31Aを通過できるようにしている。この場合、塗布部21の第1の面21Aを内側にして、塗布部21が略C字状に変形可能な構成としている。塗布部21をこのように変形させることの利点は、先に図4を参照しながら説明したとおりである。特に本実施形態においては、塗布部21を引き抜くときに、第2の面21Bがしごき孔31Aの周縁に接するので、しごき孔31Aの周縁から受ける変形の力は、第2の面21Bから第1の面21Aに向けて作用する。その結果、塗布部21の変形に際しては、先に説明した図4(b)に示すように、塗布部21は常に第1の面21Aが内側になるように略C字状に変形する。
【0072】
最広幅部21Eから先端21Dに向けて、塗布部21の幅を漸次狭くすることで、塗布部21をしごき孔31Aに挿入させるときも、抜くときと同じように、塗布部21は、塗布面21Aを内側にして略C字状に変形する。その結果、常に安定して化粧料4の保持状態を良好に保つことができる。この効果は突出部211についても同様であり、突出部211を有する先端域210が、塗布部21の先端21Dから後端へ向けて厚みが漸増して最大厚み部211Aを有していることで、塗布部21の予期しない変形を効果的に防ぐことができ、常に安定して化粧料4の保持状態を良好に保つことができる。
【0073】
塗布部21の第2の面21Bをしごき孔31Aの周縁に接するようにして、しごき孔31Aの周縁から受ける変形の力を第2の面21Bから第1の面21Aに向けて作用させるようにするためには、塗布部21の第1の面21Aが容器3の底部方向を向くように、支持軸22の軸方向に対して傾斜していることが有利である。塗布部21を確実に略C字状に変形させる観点から、塗布部21と支持軸22とがなす角度θ(先に説明した図5(a)参照)は10〜50度、特に20〜40度であることが好ましい。
【0074】
以上のとおり、本実施形態の塗布用具1によれば、化粧料4を保持した塗布部21をしごき弁31でしごくだけの簡単な操作で、多量の化粧料4を、液だれや糸曳き等の不都合を防止しつつ、決まった量だけ塗布部21に保持させることができる。この効果を一層確実にする観点から、塗布部21の最広幅部21Eの幅/しごき孔31Aの最広幅部の幅の値を、塗布部21としごき弁31とが組んでいない状態、すなわち変形前の状態で、1.1〜5.0、特に1.4〜3.0に設定することが好ましい。
【0075】
また、これに関連して、塗布部21の先端域210における突出部211の最厚み部211Aの厚み/しごき孔31Aの最広幅部の幅の値は、0.3〜2.0、特に0.5〜1.5に設定することが好ましい。
【0076】
塗布部21の最広幅部21Eの幅/しごき孔31Aの最広幅部の幅の値や、突出部211の最厚み部211Aの厚み/しごき孔31Aの最広幅部の幅の値は、上述の範囲が好ましいところ、しごき孔31Aの最広幅部の幅は、該しごき孔31Aが円孔である場合、その直径が1.0〜10mm、特に2.0〜7.0mmであることが好ましい。本実施形態においては、塗布部21の略C字状への変形の程度を大きくすることで、しごき孔31Aを小さくしても、塗布部21に化粧料4を多量に保持させることができる。しごき孔31Aを小さくできることは、容器3の直径を小さくできることにつながる。容器3の直径を小さくできることは、容器3のスリム化や小型という利点をもたらす。
【0077】
図15には、本実施形態の塗布装置1の使用状態の一例が示されている。この使用状態は、先に図6を参照して説明した使用状態と同じである。特に本実施形態によれば、塗布部21に付着した化粧料4のうち、過剰量がしごき弁31によってしごき落とされ、適量の化粧料4が塗布部21の第1の面21Aに保持された状態となるという有利な効果が奏されることに加えて、化粧料4の液だれや糸曳きが防止されるという有利な効果も奏される。
【0078】
図16(a)及び(b)には、塗布部21の別の実施形態が示されている。同図に示す実施形態の塗布部21は、塗布面である第1の面21Aと反対側の面である第2の面21Bに、塗布部21の長手方向に延びる直線状曲線状の溝40を、複数本(同図では2本)有している。このような溝40を有する塗布部21に関しては、先に図9(a)ないし(c)を参照しながら説明したとおりである。
【0079】
溝40の形状としては、図16(a)に示すものの他に、図17(a)ないし(e)に示すものを用いることもできる。これらの図に示す溝40の形状は、先に図10(a)ないし(e)に示す実施形態と同様である。
【0080】
次に、本発明の口唇化粧料塗布装置における容器3の別の実施形態を、図18ないし図26を参照しながら説明する。これら別の実施形態に関し、特に説明しない点については、先に述べた実施形態に関する説明が適宜適用される。また図18ないし図26において、図1〜図17と同じ部材には同じ符号を付してある。図18ないし図26に示す実施形態の容器3は、図1〜17に示す実施形態の塗布部21のいずれにも適用できるものである。
【0081】
図18に示す本実施形態の口唇化粧料塗布装置1は、化粧料4を容器3に収容し、支持軸22の先端に当該支持軸22よりも幅広で扁平な塗布部21を備えた塗布用具2の塗布部21を、容器3内の化粧料4に浸した状態から引き抜いて、引き抜いた塗布部21によって化粧料4を口唇等に塗布するようにした化粧料容器であって、容器3の口部33の近傍部分にしごき孔31Aを有する可撓性しごき弁31が設けられており、可撓性しごき孔31Aの周縁部から下方に延設して、可撓性環状裾部34が可撓性しごき弁31と一体として設けられている。
【0082】
本実施形態では、しごき孔31Aの周縁部から下方に延設して、可撓性環状裾部34が可撓性しごき弁31と一体として設けられている。可撓性環状裾部34は、可撓性しごき弁31と同様のゴム等の弾性変形可能な材料から構成される。可撓性環状裾部34は、その開口形状を容易に変形可能な可撓性を備えている。これによって、例えばしごき孔31Aとの接合部分である上端部の開口形状と、下端部の開口形状とが、異なる形状となるように容易に変形できるようになっている。可撓性環状裾部34は、円筒状の容器3の中心軸と平行な面に沿って、直線状に下方に延設していることが好ましいが、その機能を損なわない範囲で、容器3の中心軸と平行な面から内側又は外側に若干傾いた状態で下方に延設していても良い。また可撓性環状裾部34は、後述するように湾曲するか、折れ曲った状態で下方に延設していても良い。更に可撓性環状裾部34は、後述するように一部に薄肉部や切欠き部等を設けて、所定の方向に変形しやすくすることもできる。
【0083】
本実施形態では、しごき孔31Aの内径を、塗布部21との接合面における支持軸22の外径で除した値((しごき孔31Aの内径)/(塗布部21との接合面における支持軸22の外径))が0.7〜1.0となっており、可撓性環状裾部34の裾長さを、塗布部21の長さで除した値((可撓性環状裾部34の裾長さ)/(塗布部21の長さ))が0.05〜0.5となっていることが好ましい。(しごき孔31Aの内径)/(塗布部21との接合面における支持軸22の外径)や(可撓性環状裾部34の裾長さ)/(塗布部21の長さ)をこのような範囲とすることにより、塗布部21を抜き差しする際の抵抗を低減して使用感に優れ、かつ塗布具やしごき部材が受ける損傷を軽減しつつ、支持軸及び塗布具を効果的にしごいてゆくことが可能になる。しごき孔31Aの内径や支持軸22の外径は、これらが円形や円形断面の場合はその直径であり、円形や円形断面以外の場合はその断面二次半径の2倍である。
【0084】
図19(a)には、可撓性しごき弁31によって塗布部21をしごく様子を正面からみた状態が示されており、図19(b)には、可撓性しごき弁31によって塗布部21をしごく様子を側面からみた状態が示されており、図19(c)には、可撓性しごき弁31によって塗布部21をしごく様子を、塗布部21を省略して底面からみた状態が示されている。なお、図19(c)では、中央部分の太線による環状線が可撓性環状裾部34の下端部における開口形状を示しており、中央部分の細線による環状線が可撓性環状裾部34の上端部における開口形状を示している。
【0085】
図19(a)、図19(b)及び図19(c)において、a−1、b−1、c−1は、塗布部21が化粧料4内に浸っている状態(図18に示す状態)から引き上げられて、可撓性しごき弁31に当接し始めた状態である。この状態においては、可撓性環状裾部34の可撓性しごき弁31と接合される上端部の開口形状、及び自由端となった下端部の開口形状は、いずれも変形することなく円形を保持している。
【0086】
図19(a)、図19(b)、及び図19(c)において、a−2、b−2、c−2は、塗布部21を更に引き抜いて、塗布部21の最広幅部21Eが、可撓性環状裾部34の内側に配置された状態である。この状態においては、塗布部21の幅は、可撓性しごき弁31のしごき孔31Aの内径よりも大きくなっているので、塗布部21は、しごき孔31Aを幅方向に押し拡げつつ、しごき孔31A及びこれに接合する可撓性環状裾部34の上端部の開口形状を、楕円状に変形させる。これに伴って、可撓性環状裾部34の下端部は、自由端となっていて上端部より可撓変形し易いことから、上端部の開口形状よりも更に扁平な楕円状に変形する。これによって、塗布部21の最広幅部21Eよりも下方の漸次幅が狭くなった部分は、扁平に狭まった開口形状によって可撓性環状裾部34に接触し易くなることで、a−3、b−3、c−3やa−4、b−4、c−4に示すように、効果的にしごかれてゆくことになる。
【0087】
また、本実施形態では、塗布部21は支持軸22に対して傾斜して取り付けられているが、塗布部21を引き抜いて行くのに従って、可撓性環状裾部34は、倒れ込むようにして傾斜する側に容易に変形することができるので、引き抜き時に過大な抵抗を生じることなく、塗布部21をしごきながらスムーズに引き抜いてゆくことが可能になる。
【0088】
また、引き抜いていく際、傾斜していることで背面は常に可撓性環状裾部34に接触するので、背面はほぼ全量しごき落とすことができる。塗布面21A側には可撓性環状裾部34と隙間が生じることで、化粧料を付着させることができるが、塗布部21の傾斜に合わせて可撓性環状裾部34も傾斜するので、見かけ上隙間が小さくなり、ワイパー効果が高まる。このことにより、先が細くなっている塗布部21でも効果的にしごき取ることが可能になり、塗布部21先端に余計な化粧料の液溜まりが生じることがない。
【0089】
これらによって、本実施形態の塗布装置1は、可撓性環状裾部34を変形させることで、単純に孔径を小さくするのに比べて、塗布部21を抜き差しする際の抵抗を低減してダメージを軽減しつつ、幅広で扁平な塗布部21を効果的にしごいてゆくことが可能になる。
【0090】
可撓性環状裾部34はその長さが長いほど、ワイパー効果は高まる。一般に、しごき孔31Aの内径を小さくすると、ワイパー効果を高めることができる。しかし、引き抜きのときの摩擦抵抗が過大になるまでしごき孔31Aの内径を小さくしすぎると、使い勝手が悪くなったり、塗布部21がダメージを受けたりすることがある。更に、摩擦抵抗が過大になることで、可撓性しごき弁31が過度に大きく変形し、その変形モードが一定でないため、1回ごとの付着量のばらつきが大きくなる可能性があり、この点でも使い勝手を損ねてしまうことがある。
【0091】
塗布部21への化粧料4の付着量は例えば、塗布部21と可撓性環状裾部34の硬度比、可撓性環状裾部34の大きさ、肉厚によって制御される。例えば、塗布部21が図18に示す形態で、かつ塗布面21Aの中央が凹んだものを用い、塗布部21のゴム硬度を一定に保ち、可撓性環状裾部34のゴム硬度を変化させる場合、可撓性環状裾部34のゴム硬度が小さい(すなわち柔らかい)ほど、しごき孔31Aの略円径から略楕円形への変形量が増大すると同時に、塗布部21が塗布面21Aを内側にして略C字状に変形する度合いが減少し、塗布部21に付着する化粧料4の量が増大する傾向がある。逆に、可撓性環状裾部34のゴム硬度が大きい(すなわち硬い)時には、しごき孔31Aの略円径から略楕円形への変形量が減少すると同時に、塗布部21が塗布面21Aを内側にして略C字状に変形する度合いが増すので、横断面(Xに垂直な断面)において、塗布部21としごき孔31Aとの隙間の面積が減少し、したがって塗布部21に付着する化粧料4の量が減少する傾向がある。塗布部21及び可撓性環状裾部34の好ましい硬度は各部材の厚みや形状にも依存するが、両者ともにAスケール硬度で55〜70°の範囲であり、硬度差が少ないことがより好ましい。
【0092】
塗布部21及び可撓性環状裾部34の材質としては例えば天然ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、シリコーン樹脂やポリウレタンなどの各種エラストマーを用いることができる。特に熱可塑性エラストマーを使用すると、射出成形によって製造することができるので好ましい。
【0093】
図20(a)には、可撓性しごき弁31によって他の形態の塗布部21’をしごく様子を正面からみた状態が示されており、図20(b)には、可撓性しごき弁31によって他の形態の塗布部21’をしごく様子を側面からみた状態が示されており、図20(c)には、可撓性しごき弁31によって他の形態の塗布部21’をしごく様子を、塗布部21’を省略して底面からみた状態が示されている。ここで、他の形態の塗布部21’は、上述の塗布部21の先端域における塗布面21Aとは反対側の面から突出する、厚みが大きくなった突出部211を有している。
【0094】
図20(a)、図20(b)、及び図20(c)において、a−1、b−1、c−1は、塗布部21’が化粧料4内に浸っている状態(図18に示す状態)から引き上げられて、突出部211が可撓性環状裾部34の上端部に至った状態である。またa−2、b−2、c−2は、塗布部21’を更に引き抜いて、塗布部21の突出部211が可撓性しごき弁31のしごき孔31Aを通過する状態である。
【0095】
このように、先端域に厚みが大きくなった突出部211を有する塗布部21’についても、可撓性環状裾部34を変形させることで塗布部21’を抜き差しする際の抵抗を低減して、上述と同様の作用効果が奏される。また、塗布部21’の先端域で突出部211によって可撓性環状裾部34が更に大きく変形するので、可撓性環状裾部34によるワイパー効果が増大して、化粧料4の糸引きを効果的に回避することが可能になる。
【0096】
図21(a)には、可撓性しごき弁31によって更に他の形態の塗布部21”をしごく様子を正面からみた状態が示されており、図21(b)には、可撓性しごき弁31によって更に他の形態の塗布部21”をしごく様子を側面からみた状態が示されており、図21(c)には、可撓性しごき弁31によって更に他の形態の塗布部21”をしごく様子を塗布部21”を省略して底面からみた状態が示されている。ここで、更に他の形態の塗布部21”は、支持軸22に対して傾斜することなく直線状に設けられていること以外は、上述の塗布部21と同様の構成を備えている。
【0097】
図21(a)、図21(b)及び図21(c)において、a−1、b−1、c−1は、塗布部21”が化粧料4内に浸っている状態(図18に示す状態)から引き上げられて、可撓性しごき弁31に当接し始めた状態である。この状態においては、可撓性環状裾部34の可撓性しごき弁31と接合される上端部の開口形状、及び自由端となった下端部の開口形状は、いずれも変形することなく円形を保持している。
【0098】
図21(a)、図21(b)及び図21(c)において、a−2、b−2、c−2は、塗布部21”を更に引き抜いて、塗布部21”の最広幅部21Eが、可撓性環状裾部34の内側に配置された状態である。この状態においては、塗布部21”の幅は、可撓性しごき弁31のしごき孔31Aの内径よりも大きくなっているので、塗布部21は、しごき孔31Aを幅方向に押し拡げつつ、しごき孔31A及びこれに接合する可撓性環状裾部34の上端部の開口形状を、楕円状に変形させる。これに伴って、可撓性環状裾部34の下端部は、自由端となっていて上端部より可撓変形し易いことから、上端部の開口形状よりも更に扁平な楕円状に変形する。これによって、塗布部21の最広幅部21Eよりも下方の漸次幅が狭くなった部分は、扁平に狭まった開口形状によって可撓性環状裾部34に接触し易くなることで、a−3、b−3、c−3やa−4、b−4、c−4に示すように、効果的にしごかれてゆくことになる。
【0099】
これらによって、上述の塗布部21や塗布部21’の場合と同様に、可撓性環状裾部34を変形させることで塗布部21”を抜き差しする際の抵抗を低減してダメージを軽減しつつ、幅広で扁平な塗布部21”を効果的にしごいてゆくことが可能になる。
【0100】
また、図22(a)に示すような最広幅部を有さない塗布部21”を、同図に示す可撓性環状裾部を有さないしごき弁31と組み合わせて用いた場合、例えば化粧料4の粘度が高いことに起因して、軸に付着していてしごかれた化粧料4や、前回の使用時にしごかれた化粧料4が可撓性しごき弁31の下面に付着したまま堆積していると、可撓性環状裾部が設けられていないことから、今回の使用時に塗布部21”をしごきながら引き抜く際に、下面に堆積した化粧料4を巻き込んで、塗布部21”の先端域での化粧料4の付着量が多くなり過ぎたり、糸引きが起こったりする原因になり易かった。
【0101】
これに対して、本実施形態では、図22(b)に示すように、可撓性しごき弁31のしごき孔31Aの周縁部から下方に延設する可撓性環状裾部34が設けられているので、可撓性しごき弁31の下面に堆積した化粧料4を巻き込み難くなり、塗布部21”の先端域に化粧料4が過剰に付着するのを効果的に回避することが可能になる。また、塗布部21”に付着した化粧料4と、可撓性しごき弁31の下面に堆積した化粧料4とが、可撓性環状裾部34が介在することによって分断され易くなるので、糸引きが生じるのを効果的に回避することが可能になる。
【0102】
前記の実施形態における化粧料塗布装置1では、可撓性しごき弁は、容器の口部から底部に向けて縮径した漏斗状のものであったが、これに代えて、中央部分にしごき孔が貫通形成された円盤形状等、その他の種々の形状のものを採用することができる。
【0103】
また、可撓性環状裾部は、円筒状に延設するものである必要は必ずしもなく、可撓性を向上させたり、所定の方向に変形し易くするために、種々の形状のものを用いることができる。例えば、図23(a)及び(b)のように蛇腹状に形成したり、図23(c)のように基端部に溝35を設けて変形しやすくすることもできる。可撓性環状裾部34を蛇腹状に形成することにより、塗布部の通過に伴ってその下端部をより大きく動かしたり、長さ方向に変形させたりすることが可能になる。
【0104】
また、図24(a)ないし(e)に示すように、可撓性環状裾部34の一部に薄肉部を設けたり(図24(a)及び(b))、厚肉部を設けたり(図24(c)及び(d))して可撓性環状裾部34の厚みを部分的に変えたり、あるいは切欠き部を設けたり(図24(e))することによって、可撓性環状裾部34を所定の方向に変形しやすくすることもできる。これらの実施形態では、可撓性環状裾部34の内面に力を加えた場合、斜視図の向きで見て、天地方向に力を加えたときと、左右方向に力を加えたときとで、変形し易さが異なる。その結果、塗布部21を容器から抜き取る場合に、塗布部21の側面(最広幅部21E)が、同じく図24の向きで見て、天地方向を向くときと、左右方向を向くときとで、塗布部21への化粧量4の付着量を変えることができる。更には、塗布部21の側面(最広幅部21E)が、天地方向、左右方向以外の向き、例えば斜め45度でも、塗布部21への化粧量4の付着量を変えることができる。これらの場合には、塗布用具や容器に、変形しやすい方向を示す目印を設けておくことが好ましい。
【0105】
また、可撓性環状裾部34が接合される可撓性しごき弁31の一部に薄肉部を設けたり(図25(a)及び(c))、厚肉部を設けたり(図25(b)及び(d))して、可撓性しごき弁31の厚みを部分的に変えたりすることによっても、同様に可撓性環状裾部34の変形に方向性を持たせることが可能である。
【0106】
図24及び図25では、厚みを変える部分が2箇所、面対称に描いてあるが、厚みを変える部分は1箇所でもよく、あるいは3箇所以上でもよい。更に、1つの可撓性環状裾部34若しくは1つの可撓性しごき弁31又はそれらの両方に、厚肉部と、薄肉部又は切欠き部とが混在していても構わない。
【0107】
更に、図26に示すように、しごき孔や可撓性環状裾部34を楕円形の中空断面を有するように形成して、可撓性環状裾部34の変形に方向性を持たせることもできる。また、しごき孔31Aの周縁に放射状のスリットを形成してもよい。
【0108】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば図2(a)及び(b)に示す実施形態の塗布用具2における塗布部21は、先端域210が、塗布面である第1の面21Aと反対側の面21B側において突出した突出部211を有していたが、これに代えて第1の面21A側において突出した突出部を有していてもよい。あるいは、第1の面21A及び第2の面21Bの両方の側において突出した突出部を有していてもよい。この場合、第1の面21A側における突出の程度と、第2の面21B側における突出の程度は同じでもよく、あるいは異なっていてもよい。
【符号の説明】
【0109】
1 口唇化粧料塗布装置
2 塗布用具
21,21’,21” 塗布部
21A 第1の面
21B 第2の面
21C 窪み部
21D 先端
21E 最広幅部
22 支持軸
23 蓋体
210 先端域
211 突出部
3 容器
31 しごき弁
31A しごき孔
33 口部
34 可撓性環状裾部
4 化粧料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧料を口唇に塗布するための化粧料塗布用具と、該化粧料を収容するための容器とを備え、該塗布用具が該容器の口部から該容器内に出入自在な口唇化粧料塗布装置であって、
該塗布用具は、化粧料を塗布するための塗布面を有し、かつ扁平体からなる塗布部と、先端に該塗布部を連結した支持軸とを有しており、
該塗布部を正面視したとき、該塗布部は、最広幅部を有し、かつ該最広幅部から先端に向けて漸次狭幅となっているとともに、該塗布面は、その中央部に窪み部が形成された凹面となっている口唇化粧料塗布装置。
【請求項2】
前記塗布部を正面視したとき、該塗布部の先端域の厚みが、前記最広幅部の厚みよりも大きくなっている請求項1に記載の口唇化粧料塗布装置。
【請求項3】
前記先端域が、前記塗布面と反対側の面側において突出した突出部を有することで、厚みが大きくなっている請求項2に記載の口唇化粧料塗布装置。
【請求項4】
前記先端域は、前記塗布部の先端から後端へ向けて厚みが漸増して最大厚み部を有し、該最大厚み部から後端へ向けて厚みが漸減している請求項2又は3に記載の口唇化粧料塗布装置。
【請求項5】
前記塗布部の幅方向縦断面視における前記先端域の形状が、角が丸みを帯びた三角形である請求項2又は3に記載の口唇化粧料塗布装置。
【請求項6】
前記塗布用具が前記容器内に挿入された状態において、前記塗布部の塗布面が該容器の底部方向を向くように、該塗布部が該支持軸の軸方向に対して傾斜している請求項1ないし5のいずれか一項に記載の口唇化粧料塗布装置。
【請求項7】
前記容器の口部又はその近傍に、しごき孔を有する可撓性しごき弁が設けられており、前記しごき孔の周縁部から下方に延設して、可撓性環状裾部が前記可撓性しごき弁と一体として設けられている請求項1ないし6のいずれか一項に記載の口唇化粧料塗布装置。
【請求項8】
前記しごき孔の内径を、前記塗布部との接合面における前記支持軸の外径で除した値が0.7〜1.0であり、前記可撓性環状裾部の裾長さを、前記塗布部の長さで除した値が0.05〜0.5である請求項7に記載の口唇化粧料塗布装置。
【請求項9】
前記容器は、その口部又はその近傍にしごき弁を備えており、該しごき弁の略中央部には、前記塗布部及び前記支持軸の通過が自在なしごき孔が形成されており、
前記塗布部の最広幅部は、前記しごき孔の最広幅部よりも大きくなされており、
前記塗布部は、該塗布部が前記しごき孔を通過するときに、前記塗布面を内側に変形可能になっている請求項1ないし6のいずれか一項に記載の口唇化粧料塗布装置。
【請求項10】
前記塗布部は、前記最広幅部から前記支持軸との連結部に向けて漸次幅が狭くなっており、該連結部においては、該塗布部の幅と該支持軸の幅とが略一致している請求項9に記載の口唇化粧料塗布装置。
【請求項11】
前記最広幅部が、前記塗布部の先端から離れた位置にある請求項9又は10に記載の口唇化粧料塗布装置。
【請求項12】
前記塗布部は、前記塗布面と反対側の面に、該塗布部の長手方向に延びる直線状又は曲線状の溝を1本又は複数本有する請求項9ないし11のいずれか一項に記載の口唇化粧料塗布装置。
【請求項13】
前記塗布部21は、その表面に植毛処理が施されている請求項1ないし12のいずれか一項に記載の口唇化粧料塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2011−131043(P2011−131043A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228981(P2010−228981)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【特許番号】特許第4713686号(P4713686)
【特許公報発行日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】