説明

口唇用油性化粧料

【課題】口唇用油性化粧料を唇に塗布した際、該化粧料が口に入っても前記口唇用油性化粧料に配合されている原料に起因する不快な味を感じさせることのない、安定な口唇用油性化粧料を提供すること。
【解決手段】水溶性甘味料を、微粒子シリカ及び液状油分とともに配合して口唇用油性化粧料を調製することにより、口唇用油性化粧料に分離、凝集、水溶性甘味料の沈降、凝集等が見られることなく水溶性甘味料を安定に配合することができ、さらに経時でも変化しない、配合成分である原料に起因する不快な味を感じさせることのない口唇用油性化粧料が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は口唇用油性化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
口唇用化粧料は、唇を乾燥等から保護し、唇につやを与えたり、色をつけたりして、唇を美しくすることを目的とした化粧料であり、なかでも、使用性もよく、前記効果を充分に発揮する点で油性の口唇用化粧料が好まれて使用されている。該口唇用油性化粧料は唇に塗布された化粧料が口に入ることが多いため、口唇用油性化粧料には味がよい、少なくとも不快な味がないことが要求されている。ところが、口唇用油性化粧料に配合される原料には味が悪いものも多く、口唇用油性化粧料の味を悪くしている。また、口唇用油性化粧料には賦香のために香料等の匂い成分が配合されるが、この匂い成分も口唇用油性化粧料の味を悪くしている。
【0003】
一般的に、味を改善するためには、水溶性の甘味料が用いられるが、水溶性甘味料は油に溶解しないため、口唇用油性化粧料に単純に配合すると水溶性甘味料の凝集、沈降等が発生し、剤型の安定性を悪くすることになる。この安定性を改善するために、例えば、水溶性甘味料を水性成分に溶解させて界面活性剤等で油と乳化して口唇用化粧料を調製する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、乳化系の口唇用化粧料は、油系としての前記効果が得られないばかりか、水性成分に起因して唇が荒れる等の問題が生じる。
【0004】
以上から、油系の口唇用油性化粧料において、水性成分を用いずに、安定に水溶性甘味料を配合して味の改善が図れる技術の開発が望まれていた。従来、口唇用油性化粧料の味の改善技術としては、口紅用組成物にフレーバーを添加し、匂いとともに味をも改善しようとする技術があるが(特許文献2参照。)、残念ながら味の改善効果は充分ではなかった。
【0005】
【特許文献1】特開2000−7547号公報
【特許文献2】特開平9−208429号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、口唇用油性化粧料を唇に塗布した際、該化粧料が口に入っても前記口唇用油性化粧料に配合されている原料に起因する不快な味(以下、単に「不快な味」ともいう。)を感じさせることのない、安定な口唇用油性化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、液状油分中に微粒子シリカとともに水溶性甘味料を配合することにより、安定な口唇用油性化粧料が得られ、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、第一発明は、水溶性甘味料、微粒子シリカ及び液状油分を含有する口唇用油性化粧料である。
【0009】
また、第二発明は、微粒子シリカの平均粒子径が1〜50nmである前記第一発明に記載の口唇用油性化粧料である。
【0010】
また、第三発明は、さらに、匂い成分を含有する前記第一発明又は第二発明に記載の口唇用油性化粧料である。
【0011】
本発明において、液状、半固形、固形等の用語は常温での状態を示す。なお、液状油分、半固形油分、固形油分等はいずれも当業者の間で認識されているものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、水溶性甘味料を微粒子シリカ及び液状油分とともに口唇用油性化粧料に配合したので、不快な味を感じさせることのない、安定な口唇用油性化粧料が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳述する。
【0014】
本発明における口唇用油性化粧料は、水溶性甘味料、微粒子シリカ及び液状油分を含有する。
【0015】
本発明において用いられる水溶性甘味料は、特に限定されないが、具体的には、例えば、ガラクトース、キシロース、マルトース、ラクトース、スクロース、グルコース、フルクトース、デンプン、デキストリン等の糖類、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、キシリトール、エリスリトール等の糖アルコール類、アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムカリウム(K)、ステビア、サッカリン(ナトリウム)等が挙げられる。
【0016】
これらの中では、口唇用油性化粧料の不快な味を改善する効果が優れている点でキシリトール、アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムカリウム(K)、サッカリン(ナトリウム)等が好ましく用いられる。水溶性甘味料は1種または2種以上が任意に選択されて用いられる。
【0017】
水溶性甘味料は、通常結晶状を呈しているが、結晶の大きさとして、あまり大きいと使用に際して唇に違和感を感じるようになり、口唇用油性化粧料の安定性も充分でなくなるので、平均粒子径が200μm以下のものを化粧料中に含有させることが好ましい。結晶の平均粒子径がこれより大きいときには、ロール処理等による粉砕等によって結晶を小さくして上記好ましい平均粒子径が200μm以下の粒子径にして含有させることができる。粒子径の下限は小さいものが好ましいが、市販の水溶性甘味料を用いる場合は平均粒子径で10μmが現実的である。なお、水溶性甘味料の径の測定には光学顕微鏡を用い、粒状、針状等の結晶性の水溶性甘味料の最も長い部分を測定し、本発明においてはこれを粒子径とした。
【0018】
水溶性甘味料は、口唇用油性化粧料の不快な味を改善する点から口唇用油性化粧料全量中0.01質量%以上配合することが好ましいが、口唇用油性化粧料に安定に配合できる点から、口唇用油性化粧料全量中20質量%以下の配合が好ましい。さらに好ましくは0.05〜10質量%である。
【0019】
本発明において用いられる微粒子シリカは、微粒子の無水ケイ酸であり、例えば、四塩化ケイ素の酸水素焔中での高温加水分解により得られるものであり、煙霧状無水ケイ酸等が含まれる。
【0020】
微粒子シリカの粒子径としては平均粒子径が1〜50nmであることが好ましい。さらに好ましくは3〜20nmである。また、微粒子シリカの比表面積(BET法による比表面積)が50〜500m/gのものが好ましい。さらに、好ましくは100〜400m/gである。これらの微粒子シリカを用いることにより本発明の効果を充分に発揮することができる。
【0021】
前記微粒子シリカは、疎水化処理した疎水性微粒子シリカでも構わない。疎水化処理の方法としては、ジメチルジクロルシランによるジメチルシリル化処理、トリメチルクロルシランやヘキサメチルジシラザンによるトリメチルシリル化処理、オクチルトリクロルシランによるオクチルシリル化処理、ジメチルポリシロキサンやメチルハイドロジェンポリシロキサンによるシリコーン処理、金属セッケン化合物による処理等が挙げられる。
【0022】
微粒子シリカは市販されているので、それらを用いることができる。市販品としては、微粒子シリカである、アエロジル(AEROSIL)130(比表面積130m/g、平均粒子径16nm)、アエロジル(AEROSIL)200(比表面積200m/g、平均粒子径12nm)、アエロジル(AEROSIL)300(比表面積300m/g、平均粒子径7nm)、アエロジル(AEROSIL)380(比表面積380m/g、平均粒子径7nm)(以上、日本アエロジル株式会社製)、疎水性微粒子シリカである、アエロジル(AEROSIL)RY200(比表面積100mm/g、平均粒子径12nm)、アエロジル(AEROSIL)R972(比表面積110m/g、平均粒子径16nm)、アエロジル(AEROSIL)R974(比表面積170m/g、平均粒子径12nm)、アエロジル(AEROSIL)R812(比表面積260m/g、平均粒子径7nm)(以上、日本アエロジル株式会社製)等が挙げられる。微粒子シリカは必要に応じ、一種又は二種以上を用いることができる。
【0023】
微粒子シリカの含有量は、口唇用油性化粧料の安定性の点から、口唇用油性化粧料全量中0.1〜10質量%が好ましい。
【0024】
本発明において用いられる液状油分としては、例えば、オリーブ油、ヒマシ油、マカデミアナッツ油、月見草油、ゴマ油、小麦胚芽油、サフラワー油、綿実油、大豆油、コメヌカ油、ホホバ油、液状ラノリン、スクワラン、ポリブテン、ポリイソブテン、重質流動イソパラフィン(水添ポリブテン)、水添ポリイソブテン、ミネラルオイル、揮発性炭化水素、パルミチン酸イソプロピル、2−エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ステアリン酸オクチル、イソノナン酸イソノニル、セバシン酸ジ2−エチルヘキシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ジグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリトリット、ジオクタン酸ペンタエリトリット、トリ2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、リンゴ酸ジイソステアリル、イソステアリン酸、オクチルドデカノール、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、アミノ変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン、パーフロロポリエーテル等が挙げられる。液状油分は1種又は2種以上が任意に選択されて配合される。
【0025】
本発明においては、ミネラルオイル、ポリブテン、ポリイソブテン、重質流動イソパラフィン(水添ポリブテン)、水添ポリイソブテン等の炭化水素系液状油分を用いることが好ましく、微粒子シリカの添加作用を有効に発揮させることができ、特に優れた本発明の効果を発揮する。炭化水素系液状油分の配合は、液状油分中の一部を構成してもよいが、液状油分の全てを炭化水素系液状油分として用いることが好ましい。商品の処方を組むに当たっては、液状油分が実質的に炭化水素系液状油分であるように配合することが実際的である。
【0026】
液状油分は、口唇用油性化粧料全量中60〜95質量%の範囲で含有されることが好ましい。特に、リップグロスのようなグロス効果を有する口唇用油性化粧料を調製する場合には、70〜95質量%の配合が好ましく、またリップクリーム、リップスティックのようなスティック状のものを調製する場合は60〜85質量%が好ましい。
【0027】
本発明においては、前記必須成分の配合により、不快な味を感じさせることのない口唇用油性化粧料が安定に得られるが、さらに、匂い成分を配合すると口唇用油性化粧料に香味を付与することができ、心地よい匂いで、不快な味を感じさせることのない、味のよい口唇用油性化粧料が安定に得られる。匂い成分としては、特に限定されることなく、例えば、フレグランス(香料)、フレーバー(食品香料)、精油等が挙げられる。これらの中では、フレーバーが口唇用油性化粧料にとって好ましい。
【0028】
フレーバーは、主として果物や野菜など自然界にある食べ物の香りを模倣し再現するものであり(日本香料工業会より)、フレーバーの配合により、香りの付与はもとより、味(風味)をも付与、改善することができる。具体的には、ブルーベリー、ストロベリー、ラズベリー、グレープ、ペア、プラム、ピーチ、アプリコット、カシス、チェリー、ライム、グレープフルーツ、オレンジ、レモン、マンゴ、アップル、メロン、シナモン、ジンジャー、ミント、トマト、アーモンド、ナッツ、ココナッツ、ミルク、ココア、コーヒー、ティー、チョコレート、ハニー、ゴマ、バニラ、バナナ、パイナップル、トロピカルフルーツ、ミルク等が挙げられる。
【0029】
匂い成分を配合する場合の配合量は、口唇用油性化粧料全量中0.05〜5質量%が好ましい。
【0030】
本発明における口唇用油性化粧料には、前記成分の他に、化粧料、医薬部外品等に通常用いられる他の成分を本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。前記他の成分としては、例えば、前記以外の油分、油ゲル化剤、粉体、着色剤、界面活性剤、保湿剤、多価アルコール、皮膜形成剤、高分子(合成樹脂)、低級アルコール、紫外線吸収剤、アミノ酸類、ビタミン類、血行促進剤等の薬剤、植物抽出物、有機酸、酸化防止剤、抗菌剤、清涼剤等を挙げることができる。
【0031】
これらの任意配合成分のうち、前記以外の油分としては、固形油分、半固形油分が挙げられる。固形油分としては、特に限定されないが、例えば、硬化油、モクロウ、カカオ脂、硬化ヒマシ油、ヤシ油、硬化ヤシ油、パーム油、パーム核油、モクロウ核油、パラフィンワックス、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、ミツロウ、ラノリン、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ホホバロウ、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ベへン酸、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、パルミチン酸セチル、トリミリスチン酸グリセリル等が挙げられる。固形油分は1種又は2種以上を任意に選択して配合することができる。
【0032】
固形油分を配合する場合の配合量は、口唇用油性化粧料全量中1〜20質量%が好ましい。
【0033】
固形油分を配合することにより、口唇用油性化粧料の形態に広がりをもたせることができ、例えば、スティック状の口唇用油性化粧料を調製することができる。また、口唇用油性化粧料の安定性を向上させることができる。
【0034】
また、油ゲル化剤としては、12−ヒドロキシステアリン酸、ショ糖脂肪酸エステル、デキストリン脂肪酸エステル、金属石鹸、有機変性粘土鉱物等が挙げられる。油ゲル化剤は1種又は2種以上を任意に選択して配合することができる。前記デキストリン脂肪酸エステルとしてはデキストリンと炭素数8〜22の高級脂肪酸とのエステルが好ましく、具体的にはラウリン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリン、パルミチン酸デキストリン、ステアリン酸デキストリン、ベヘニン酸デキストリン、ヤシ油脂肪酸デキストリン等が挙げられ、市販品としてはレオパールKE、レオパールKL、レオパールTT(いずれも千葉製粉社製)等があるのでそれらを用いることができる。
【0035】
油ゲル化剤を配合する場合の配合量は、口唇用油性化粧料全量中0.05〜15.0質量%が好ましい。さらに好ましくは0.1〜8.0質量%である。
【0036】
本発明においては、油ゲル化剤を微粒子シリカと併用することにより、口唇用油性化粧料の安定性をさらに向上させることができ、口唇用油性化粧料のつやを向上させることもできる。
【0037】
本発明の口唇用油性化粧料は前記成分を配合して常法にしたがって調製することができる。
【0038】
本発明における化粧料は医薬部外品を含む概念である。口唇用油性化粧料としては、例えば、リップスティック(口紅)、リップクリーム、リップグロス等が挙げられる。
【実施例】
【0039】
以下実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。配合量は質量%である。実施例の説明に先立ち本発明で用いた効果試験方法について説明する。
【0040】
[使用テスト]
20名のパネルによる使用テストにより各種官能テストを行った。口唇用油性化粧料の味については、口唇用油性化粧料を唇に塗布して唇をなめて、下記の評価点基準に基づいて評価した。次いで、20人がつけた評価点の平均点を計算し、下記評価基準に基づいて評価した。
【0041】
(評価点基準)
4点:不快な味を感じない。
3点:不快な味をほとんど感じない。
2点:どちらともいえない。
1点:不快な味をやや感じる。
0点:不快な味を感じる。
【0042】
(評価基準)
◎:平均点が3点を超える。
○:平均点が2点超3点以下である。
△:平均点が1点以上2点以下である。
×:平均点が1点未満である。
【0043】
[安定性]
製造直後の口唇用油性化粧料を観察し、化粧料の均一性を下記の評価基準にしたがって評価した(製造直後安定性)。次いで、この評価で均一で安定であった化粧料を試験試料とし、試験試料を、40℃(湿度85%)に保持された恒温槽(40℃恒温槽)、50℃に保持された恒温槽(50℃恒温槽)、−5℃で8時間保持した後に、20℃(湿度85%)で4時間保持し、次いで40℃(湿度85%)で8時間保持し、さらに20℃(湿度85%)で4時間保持するというサイクルで内部の雰囲気が変化する恒温槽(サイクル恒温槽)の3つの恒温槽それぞれに2ヶ月保存した。保存された試験試料につき、水溶性甘味料の状態の変化(水溶性甘味料の沈降、凝集等)の有無及び口唇用油性化粧料の状態の変化(剤形の分離、凝集等)の有無を、それぞれ下記の評価基準に従って評価した(経時保存安定性)。
【0044】
(評価基準)
(製造直後安定性)
○:化粧料が均一で安定である。
×:化粧料の分離、凝集、水溶性甘味料の沈降、凝集等何らかが見られ不安定である。
【0045】
(経時保存安定性)
◎:試験試料に全く変化がみられなかった。
○:試験試料に若干の変化がみられたが、許容(合格)範囲である。
△:試験試料にやや変化が見られ、許容範囲を超える(不合格)。
×:試験試料に明らかに変化が見られた。
【0046】
[実施例1、比較例1〜5]
表1に示した成分、配合量の処方(配合量合計100質量%)のリップグロスを以下の方法で調製した。
【0047】
ポリブテン、ミネラルオイルの液状成分(液状油)に微粒子シリカ、シリカ、マイクロクリスタリンワックス、パルミチン酸デキストリン、有機変性粘土鉱物を実施例1及び各比較例の処方に応じて混合した後加熱し、比較例5以外にアスパルテームを加え、ロールミルにて処理した。次いで、他の成分を配合した後、脱泡してリップグロスを得た。次いで、該リップグロスを容器に充填してリップグロス製品を得た。なお、得られたリップグロス中のアスパルテームの平均粒子径は100μmであった。
【0048】
【表1】

【0049】
[実施例2、比較例6〜9]
表2に示した成分、配合量の処方(配合量合計100質量%)のリップスティックを以下の方法で調製した。
【0050】
ポリブテン、ミネラルオイルの液状成分(液状油)に微粒子シリカ、シリカ、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、パルミチン酸デキストリンを実施例2及び各比較例の処方に応じて混合した後加熱し、比較例9以外にアスパルテームを加え、ロールミルにて処理した。次いで、他の成分を配合した後、脱泡してリップスティックバルクを得た。次いで、該リップスティックバルクを85℃で溶解し、金型に流し込み、冷却し、金型からリップスティックを取り出し、繰り出し式の容器に装着して製品とした。なお、得られたリップスティック中のアスパルテームの平均粒子径は100μmであった。
【0051】
【表2】

【0052】
表1、2中、
(注1)アエロジル(AEROSIL)300(比表面積300m/g、平均粒子径7nm)(日本アエロジル株式会社製)
(注2)レオパールKL(千葉製粉株式会社製)
(注3)ベントン38VCG(エレメンティス社製)
(注4)PAL SWEET DIET(味の素製)
【0053】
上記実施例1、比較例1〜5のリップグロス、実施例2、比較例6〜9のリップスティックにつき効果試験を行い、その評価結果を前記表1及び2にそれぞれ示した。
【0054】
表1及び2から分かるように、実施例1のリップグロス及び実施例2のリップスティックはいずれも製造直後安定性、経時保存安定性に優れ、不快な味を感じさせることのないものであった。これに対して、微粒子シリカに替えて微粒子でない平均粒子径5μm以上のシリカ又は固形油分を配合して調製した比較例1〜2のリップグロス及び比較例6〜7のリップスティックはいずれも安定性のよい口唇用油性化粧料が得られなかった。また、微粒子シリカに替えてパルミチン酸デキストリン及び有機変性粘土鉱物を用いて製造した比較例3〜4のリップグロス及び比較例8のリップスティックはいずれも安定性のよい口唇用油性化粧料が得られたが、経時保存安定性の悪いものであった。さらに水溶性甘味料の配合されていない比較例5のリップグロス及び比較例9のリップスティックは、いずれも不快な味を感じ、本発明の効果を発揮し得ないものであった。
【0055】
[実施例3〜9、比較例10]
表3に示した成分、配合量の処方(配合量合計100質量%)の口唇用油性化粧料を以下の方法で調製した。
【0056】
ポリブテン、ミネラルオイルの液状成分(液状油)に微粒子シリカ、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、パルミチン酸デキストリンを各実施例及び比較例10の処方に応じて混合した後加熱し、比較例10以外にアスパルテーム、キシリトールを各実施例の処方に応じて加え、ロールミルにて処理した。次いで、他の成分を配合した後、脱泡してリップグロス、リップクリームバルク又はリップスティックバルクを得た。さらに、リップクリームバルク及びリップスティックバルクについては、前記バルクを85℃で溶解し、金型に流し込み、冷却し、金型から取り出してリップクリーム又はリップスティックを得た。リップグロスは容器に充填し、またリップクリーム及びリップスティックは、繰り出し式の容器に装着して製品とした。なお、得られた口唇用油性化粧料中のアスパルテームの平均粒子径は100μm、キシリトールの平均粒子径は20μmであった。
【0057】
【表3】

【0058】
表3中、
(G);リップグロス (C);リップクリーム (S);リップスティック
(注1)アエロジル(AEROSIL)300(比表面積300m/g、平均粒子径7nm)(日本アエロジル株式会社製)
(注2)レオパールKL(千葉製粉株式会社製)
(注3)PAL SWEET DIET(味の素製)
(注4)キシリットP(東和化成工業製)
【0059】
上記実施例3〜9、比較例10の口唇用油性化粧料につき効果試験を行い、その評価結果を前記表3に示した。
【0060】
実施例3〜9のいずれの口唇用油性化粧料も製造直後安定性、経時保存安定性に優れ、不快な味を感じさせることのないものであることが分かる。さらに、匂い成分を配合しても匂い成分に起因する不快な味を抑え、不快な味を感じさせることがないことが分かる。実施例3〜9によって、心地よい匂いで、不快な味を感じさせることのない、味のよい口唇用油性化粧料が安定に得られた。また、固形油分(マイクロクリスタリンワックス)及び/又は油ゲル化剤(パルミチン酸デキストリン)を微粒子シリカと併用することにより、安定性、特に水溶性甘味料の状態の変化の有無に係る経時保存安定性が向上することが分かる。また、水溶性甘味料が配合されていない比較例10の口唇用油性化粧料は不快な味が感じられた。なお、匂い成分の配合によっては不快な味は改善されないことが分かる。
【0061】
以下、さらに本発明口唇用油性化粧料の実施例を示す。なお、製造は実施例1〜9の方法に準じて行った。また、前記効果試験をこれらにおいて行ったところ、いずれも本発明に係る優れた効果が得られた。なお、得られた口唇用油性化粧料中のスクラロースの平均粒子径は10μm、アセスルファムカリウム(K)の平均粒子径は50μm、サッカリンナトリウムの平均粒子径は30μmであった。
【0062】
〔実施例10〕リップグロス
成分 配合量(質量%)
ポリブテン 60.0
ミネラルオイル 残余
微粒子シリカ(注1) 3.0
スクラロース(注2) 0.05
オレンジフレーバー 0.5
酸化チタン 0.1
黄色4号 0.8
パール剤 3.0
合計100.0
【0063】
(注1)アエロジル(AEROSIL)R972(比表面積110m/g、平均粒子径16nm)(日本アエロジル株式会社製)
(注2)スクラロース(Tate&Lyle社製)
【0064】
〔実施例11〕リップグロス
成分 配合量(質量%)
ポリブテン 60.0
ミネラルオイル 残余
微粒子シリカ(注1) 5.0
マイクロクリスタリンワックス 3.0
スクラロース(注2) 0.1
オレンジフレーバー 0.5
酸化チタン 0.1
黄色4号 0.8
パール剤 3.0
合計100.0
【0065】
(注1)アエロジル(AEROSIL)200(比表面積200m/g、平均粒子径12nm)(日本アエロジル株式会社製)
(注2)スクラロース(Tate&Lyle社製)
【0066】
〔実施例12〕リップグロス
成分 配合量(質量%)
ポリブテン 60.0
ミネラルオイル 残余
微粒子シリカ(注1) 3.0
マイクロクリスタリンワックス 5.0
パルミチン酸デキストリン(注2) 0.5
キシリトール(注3) 3.0
オレンジフレーバー 0.5
酸化チタン 0.1
黄色4号 0.8
パール剤 3.0
合計100.0
【0067】
(注1)アエロジル(AEROSIL)R974(比表面積170m/g、平均粒子径12nm)(日本アエロジル株式会社製)
(注2)レオパールKL(千葉製粉株式会社製)
(注3)キシリットP(東和化成工業製)
【0068】
〔実施例13〕リップクリーム
成分 配合量(質量%)
ポリブテン 10.0
ミネラルオイル 残余
微粒子シリカ(注1) 1.0
マイクロクリスタリンワックス 5.0
パラフィンワックス 10.0
アセスルファムK(注2) 1.0
ピーチフレーバー 0.5
赤色202号 0.4
酸化チタン 1.0
合計100.0
【0069】
(注1)アエロジル(AEROSIL)R972(比表面積110m/g、平均粒子径16nm)(日本アエロジル株式会社製)
(注2)サネットD(ニュートリノヴァ社製)
【0070】
〔実施例14〕リップクリーム
成分 配合量(質量%)
ポリブテン 10.0
ミネラルオイル 残余
微粒子シリカ(注1) 0.5
マイクロクリスタリンワックス 5.0
パラフィンワックス 10.0
パルミチン酸デキストリン(注2) 0.1
アセスルファムK(注3) 0.5
ピーチフレーバー 0.5
赤色202号 0.4
酸化チタン 1.0
合計100.0
【0071】
(注1)アエロジル(AEROSIL)200(比表面積200m/g、平均粒子径12nm)(日本アエロジル株式会社製)
(注2)レオパールKL(千葉製粉株式会社製)
(注3)サネットD(ニュートリノヴァ社製)
【0072】
〔実施例15〕リップクリーム
成分 配合量(質量%)
ポリブテン 10.0
ミネラルオイル 残余
微粒子シリカ(注1) 1.0
マイクロクリスタリンワックス 5.0
パラフィンワックス 10.0
パルミチン酸デキストリン(注2) 0.1
キシリトール(注3) 7.0
ピーチフレーバー 0.5
赤色202号 0.4
酸化チタン 1.0
合計100.0
【0073】
(注1)アエロジル(AEROSIL)R974(比表面積170m/g、平均粒子径12nm)(日本アエロジル株式会社製)
(注2)レオパールKL(千葉製粉株式会社製)
(注3)キシリットP(東和化成工業製)
【0074】
〔実施例16〕リップスティック
成分 配合量(質量%)
ポリブテン 10.0
ミネラルオイル 残余
微粒子シリカ(注1) 1.0
マイクロクリスタリンワックス 5.0
パラフィンワックス 10.0
パルミチン酸デキストリン(注2) 5.0
キシリトール(注3) 10.0
メロンフレーバー 0.5
青色1号 0.2
酸化チタン 0.5
黄色4号 1.0
パール剤 5.0
合計100.0
【0075】
(注1)アエロジル(AEROSIL)R972(比表面積110m/g、平均粒子径16nm)(日本アエロジル株式会社製)
(注2)レオパールKL(千葉製粉株式会社製)
(注3)キシリットP(東和化成工業製)
【0076】
〔実施例17〕リップスティック
成分 配合量(質量%)
ポリブテン 10.0
ミネラルオイル 残余
微粒子シリカ(注1) 1.0
マイクロクリスタリンワックス 5.0
パラフィンワックス 5.0
パルミチン酸デキストリン(注2) 5.0
サッカリンナトリウム(注3) 0.05
メロンフレーバー 0.5
青色1号 0.2
酸化チタン 0.5
黄色4号 1.0
パール剤 5.0
合計100.0
【0077】
(注1)アエロジル(AEROSIL)200(比表面積200m/g、平均粒子径12nm)(日本アエロジル株式会社製)
(注2)レオパールKL(千葉製粉株式会社製)
(注3)サッカリンナトリウム(大和化成工業製)
【0078】
〔実施例18〕リップスティック
成分 配合量(質量%)
ポリブテン 10.0
ミネラルオイル 残余
微粒子シリカ(注1) 7.0
マイクロクリスタリンワックス 5.0
パラフィンワックス 10.0
パルミチン酸デキストリン(注2) 0.1
サッカリンナトリウム(注3) 0.1
メロンフレーバー 0.5
青色1号 0.2
酸化チタン 0.5
黄色4号 1.0
パール剤 5.0
合計100.0
【0079】
(注1)アエロジル(AEROSIL)R974(比表面積170m/g、平均粒子径12nm)(日本アエロジル株式会社製)
(注2)レオパールKL(千葉製粉株式会社製)
(注3)サッカリンナトリウム(大和化成工業製)
【0080】
〔実施例19〕リップグロス
成分 配合量(質量%)
ポリブテン 60.0
ミネラルオイル 残余
微粒子シリカ(注1) 3.0
スクラロース(注2) 0.05
スクロース 9.5
オレンジフレーバー 0.5
酸化チタン 0.1
黄色4号 0.8
パール剤 3.0
合計100.0
【0081】
(注1)アエロジル(AEROSIL)R972(比表面積110m/g、平均粒子径16nm)(日本アエロジル株式会社製)
(注2)スクラロース(Tate&Lyle社製)
【0082】
〔実施例20〕リップクリーム
成分 配合量(質量%)
ポリブテン 10.0
ミネラルオイル 残余
微粒子シリカ(注1) 0.5
マイクロクリスタリンワックス 5.0
パラフィンワックス 10.0
パルミチン酸デキストリン(注2) 0.1
キシリトール 15.0
アセスルファムK(注3) 0.5
ピーチフレーバー 0.5
赤色202号 0.4
酸化チタン 1.0
合計100.0
【0083】
(注1)アエロジル(AEROSIL)200(比表面積200m/g、平均粒子径12nm)(日本アエロジル株式会社製)
(注2)レオパールKL(千葉製粉株式会社製)
(注3)サネットD(ニュートリノヴァ社製)
【0084】
〔実施例21〕リップスティック
成分 配合量(質量%)
ポリブテン 10.0
ミネラルオイル 残余
微粒子シリカ(注1) 1.0
マイクロクリスタリンワックス 5.0
パラフィンワックス 5.0
パルミチン酸デキストリン(注2) 5.0
スクラロース(注3) 0.05
フルクトース 8.0
メロンフレーバー 0.5
青色1号 0.2
酸化チタン 0.5
黄色4号 1.0
パール剤 5.0
合計100.0
【0085】
(注1)アエロジル(AEROSIL)200(比表面積200m/g、平均粒子径12nm)(日本アエロジル株式会社製)
(注2)レオパールKL(千葉製粉株式会社製)
(注3)スクラロース(Tate&Lyle社製)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性甘味料、微粒子シリカ及び液状油分を含有する口唇用油性化粧料。
【請求項2】
微粒子シリカの平均粒子径が1〜50nmである請求項1記載の口唇用油性化粧料。
【請求項3】
さらに、匂い成分を含有する請求項1又は2記載の口唇用油性化粧料。

【公開番号】特開2008−214280(P2008−214280A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−54842(P2007−54842)
【出願日】平成19年3月5日(2007.3.5)
【出願人】(390041036)株式会社日本色材工業研究所 (37)
【Fターム(参考)】