説明

口腔内速崩錠の製造方法

【課題】従来から存する通常の医薬品製造設備をそのまま使用して、優れた崩壊性と通常の取り扱いにおいて十分な硬度と耐摩損性を有し、かつ服用感の良い口腔内速崩錠を製造できる方法を提供すること。
【解決手段】結晶乳糖の粒子核に、ポリビニルピロリドンK−30の50%エタノール水溶液を添加し、次いで、前記ポリビニルピロリドンK−30の50%エタノール水溶液上に、予めエテンザミドに無水ケイ酸を添加・混合し、前記エテンザミドの粉末物性を改質した難溶性薬物エテンザミドをかけて、粉末コーティングし、次いで、この粉末コーティングした粒子を乾燥・整粒して粉末コーティング粒子とし、次いで、この粉末コーティング粒子に、造粒乳糖、結晶セルロース、クロスポビドンおよびマルチトールを加え、混合して混合物とし、次いで、この混合物に、ステアリン酸マグネシュウムを添加・混合した後、打錠して口腔内速崩錠を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通常の設備で優れた口腔内速崩錠を製造する方法に関する。さらに詳しくは、糖類から成る粒子を核として、ここに水溶性高分子および/または水に不溶な高分子を含む溶液または分散液を用い、さらに、予め無水ケイ酸を添加・混合して得られた改質難溶性薬物を製剤原料として用い、この改質難溶性薬物または、改質難溶性薬物を含む粉体で粉末コーティングした粒子を含有する口腔内速崩錠の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
口腔内崩壊型製剤は、杉原らによる「厚生省厚生科学研究シルバーサイエンス研究」および英国R.P.SchererのZYDIS製剤の紹介が端緒となり、研究開発が盛んになった「すぐに役立つ粒子設計・加工技術(じほう)221頁、2003年」。
【0003】
そして、近年、通常の経口剤を服用することが困難な高齢者及び小児などの患者が容易に服用できる剤形として、口腔内で速やかに溶解或いは崩壊する錠剤についての研究が盛んに行われており、商品化されたものも多くみられる「Pharm.Tech.Japan,第14巻、第11号、111頁、1998年」。
【0004】
公知のように、口腔内崩壊型錠の製造方法は、3つに大別される。第一は、鋳型製剤である。これは薬物を分散あるいは溶解した液を予め成形されたPTPシールなどのポケットに充填し、凍結乾燥後シールを施す方法であり、第二は、湿製錠で、薬物を含む湿潤粉体を極めて低い圧力で成形し、乾燥して、強度のある錠剤とする方法である。第三の方法は、一般錠剤型製剤である。これは多孔質成形体製剤、易成形性添加剤使用製剤および崩壊機構工夫製剤に分けることができる。多孔質成形体製剤は、薬物、糖類等の混合造粒物を低圧で成形後、加湿乾燥処理、加熱処理等により錠剤強度の向上を図るものである。
易成形性添加物使用製剤は、結晶セルロース等の易成形性添加物、糖類等添加物の微細化等により成形性の向上を図るものである。
また、崩壊機構工夫製剤は、超崩壊剤の利用、滑沢剤微量化(外部滑沢)、酸塩基反応による発泡作用利用により崩壊性の向上を図るものである「すぐに役立つ粒子設計・加工 技術(じほう)221頁、2003年及びPharm.Tech.Japan,第14巻、第11号、111頁、1998年」。
【0005】
特許文献1には、薬物として、アニセラセムを用い、表面張力低下能を有する水溶性高分子を含有した口腔内速崩錠が開示されている。
【0006】
この特許文献1においては、口腔内の付着やぬめり感のない製剤を提供することを目的に、一般に結合剤として用いられているポリビニルピロリドンおよび表面張力低下能を有する水溶性高分子にヒドロキシプロピルメチルセルロース等が併用して使われおり、また、界面活性剤スルホコハク酸ジオクチルナトリウムも配合されている。試験例中には崩壊の様子は観察しているが、崩壊時間につていの記載はない。水溶性高分子を合わせて2.5〜3.0重量%用いていることから崩壊性の影響、さらに緩下作用をもつ界面活性剤が0.04重量%含有されていることから健康面への影響が懸念される。
【0007】
特許文献2には、ビタミンKを吸着した結晶セルロースを溶媒により造粒し、乾燥させて、ここに糖類を加え、結合剤を含む水溶液を添加し、混練合し、湿式打錠する製剤法が開示されている。
【0008】
しかしながら、この製剤法は、湿式打錠法を用いて錠剤としているので、通常の設備ではなく、特別な製剤化装置を必要とする。
【0009】
また、特許文献3には、薬物が実質上水に不溶性で無機賦形薬、崩壊剤、水溶性賦形薬、結晶セルロースからなる錠剤が開示されている。
【0010】
しかしながら、この特許文献3に記載のものは、水に不溶な無機賦形薬を含むことから口腔内でのざらつき等の服用感の点で、問題である。
【特許文献1】特開平11−130662号公報
【特許文献2】特開2000−344664号公報
【特許文献3】特表2002−505269号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする問題点は、従来から存する通常の設備ではなく、特別な製造設備でないと優れた有用性を有する口腔内速崩錠を製造できないという点である。
【0012】
従って、本発明の目的は、特別新規な製造設備を要することなく、従来から存する公知の通常の製造設備により、優れた崩壊性と通常の取り扱いにおいて十分な硬度と耐摩損性を有し、かつ服用感の良い口腔内速崩錠を製造できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、親水性の薬物アスコルビン酸を用いた口腔内速崩錠の製造方法について、既に取得した特許第3884056号(特願2006−018342)で開示している。この特許に係る製剤技術により、水に溶けにくい難溶性薬物エテンザミドを用いて、口腔内速崩錠を製造したところ、従来の製造法(湿式打錠法)と比較して、崩壊性の優位性は確認できなかった。
【0014】
そこで、難溶性薬物エテンザミドの口腔内速崩錠の製造について、改めて検討した。
【0015】
予め、エテンザミドに無水ケイ酸を添加・混合し、エテンザミドの粉末物性を改善した。これを改質エテンザミドとする。この改質エテンザミドを用いて、口腔内速崩錠を製造した。
【0016】
先ず、結晶乳糖を核として、ポリビニルピロリドンK−30のエタノール溶液を添加し、次いで、そこに改質エテンザミドを散布して粒子核を粉末コーティングし、この粉末コーティングの操作を繰り返した後、乾燥・整粒して粉末コーティング粒子とした。
【0017】
次いで、この粉末コーティングした粒子に、造粒乳糖、コリドン−CLおよびマルチトールを配合し、均一に混合する。さらにステアリン酸マグネシウムを添加し、二次混合する。この混合粉末を直径8mm、1錠200mgとして、ロータリー打錠機で打錠して錠剤とした。
【0018】
しかしながら、未改質エテンザミドで製造したときと同様に、従来の製造法(湿式打錠法)と比較して、崩壊性の優位性は確認できなかった。
【0019】
次に、ポリビニルピロリドンK−30のエタノール溶液の替わりにポリビニルピロリドンK−30の水エタノール混合溶液を用いて、同様にして、改質エテンザミドを含有した口腔内速崩錠を製造したところ、偶然にも従来の製造法(湿式打錠法)と比較して、飛躍的に優れた崩壊性をもつ口腔内速崩錠を製造できることが確認できた。
【0020】
また、エテンザミドは経時的に錠剤表面にウイスカーが発生することが知られているが、本発明により製造した口腔内速崩錠では、経時的にウイスカーの発生はみられなかった。
【0021】
本発明の請求項1に記載の口腔内速崩錠の製造方法は、結晶乳糖の粒子核に、ポリビニルピロリドンK−30の50%エタノール水溶液を添加し、
次いで、前記ポリビニルピロリドンK−30の50%エタノール水溶液上に、予めエテンザミドに無水ケイ酸を添加・混合し、前記エテンザミドの粉末物性を改質した難溶性薬物エテンザミドをかけて、前記粒子核を粉末コーティングし、
次いで、この粉末コーティングした粒子を乾燥・整粒して粉末コーティング粒子とし、
次いで、この粉末コーティング粒子に、造粒乳糖、結晶セルロース、クロスポビドンおよびマルチトールを加え、混合して混合物とし、
次いで、この混合物に、ステアリン酸マグネシュウムを添加・混合した後、打錠して口腔内速崩錠を得ることを特徴とするものである。
【0022】
請求項2に記載の口腔内速崩錠の製造方法は、結晶乳糖の粒子核に、ポリビニルピロリドンK−30の50%エタノール水溶液を添加し、
次いで、前記ポリビニルピロリドンK−30の50%エタノール水溶液上に、予めエテンザミドに無水ケイ酸を添加・混合し、前記エテンザミドの粉末物性を改質した難溶性薬物エテンザミドをかけて、前記粒子核を粉末コーティングし、
次いで、この粉末コーティングした粒子を乾燥・整粒して粉末コーティング粒子とし、
次いで、この粉末コーティング粒子に、造粒乳糖、結晶セルロース、クロスポビドンおよびマルチトールを加え、混合して混合物とし、
次いで、この混合物に、予めステアリン酸マグネシュウムを杵および臼に付着させた打錠機により打錠して口腔内速崩錠を得ることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、特別新規な製造設備を要することなく、従来から存する通常の医薬品製造設備をそのまま使用して、優れた崩壊性と通常の取り扱いにおいて十分な硬度と耐摩損性を有し、かつ服用感の良い口腔内速崩錠を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明に係る口腔内速崩錠の製造方法は、錠剤中に結晶化した糖類、または造粒した糖類を5〜40重量%含有した粒子を核として、そこに水溶性高分子および/または水に不溶な高分子を含む溶液を用いて、難溶性薬物エテンザミドで粉末コーティングした粒子と、1〜30重量%のクロスポビドン、カルボキシメチルセルロース、部分アルファー化デンプン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースおよびトウモロコシデンプンの崩壊剤と、0.1〜5重量%のステアリン酸マグネシウム、蔗糖脂肪酸エステルおよびタルクの滑沢剤を混合し、内部滑沢打錠法または、外部滑沢打錠法により錠剤とする。
【0025】
なお、本発明は医薬品分野をはじめ、医薬部外品、食品などの分野にも適用することができる。
【0026】
本発明に用いられる糖類からなる粒子(核)とは、乳糖、果糖、ブドウ糖などの糖、マルチトール、キシリトール、マンニトールなどの糖アルコール、それぞれの結晶、または、糖、糖アルコールの粉末を予め造粒して製した粒子などである。
【0027】
本発明に用いられる水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、プルランなどが挙げられる。これらの水溶性高分子は単独、または2種以上を併用して用いることもできる。
【0028】
また、必要に応じて香料、安定化剤等を配合しても良い。
【0029】
本発明に用いられる糖類からなる粒子(核)の含有量は、錠剤全体に対し5〜40重量%であるが、糖類からなる粒子(核)の含有量は5〜20重量%が好ましい。
【0030】
また、本発明に用いられる崩壊剤の含有量は、1〜30重量%であるが、好ましくは、1〜10重量%である。
【0031】
また、本発明に用いられる滑沢剤の含有量は、0.1〜5重量%であるが、滑沢剤であるステアリン酸マグネシウムの配合量が、0重量%では打錠用粉体の流動性が悪く、2.0重量%では崩壊度の遅延傾向がみられたので、滑沢剤の含有量は、0.1〜1.0重量%が好ましい。
【0032】
本発明の製造方法における錠剤の打錠圧は、摩損性、崩壊性を考慮して、0.1〜0.5tonであるが、0.1、0.2、0.3、0.4および0.5tonの打錠圧で錠剤とし、その物性を測定した結果、崩壊度10秒以内で、錠剤硬度が30N以上であり、さらに摩損度0.5%以下で満足させるには、0.3〜0.5tonの打錠圧で錠剤とすることが好ましい。
【0033】
本発明における滑沢剤の添加方法は、従来行われている打錠用粉体に配合し、混合する内部滑沢打錠法でも良いが、好ましくは、打錠機に装着された杵、臼に滑沢剤を塗付する外部滑沢打錠法である。
【0034】
本発明の錠剤には、用途に応じて種々の成分を配合することができる。医薬品分野においては、例えば、難溶性の医薬品成分として、フマル酸クレマスチン、パモ酸ヒドロキシジン、ジフェンヒドラミン、塩酸シプロヘプタジンなどの抗ヒスタミン剤。
臭化水素酸デキストロメトルファン、グアイフェネシン、チオフィリンなどの鎮咳去痰。
スピロノラクトン、トリアムテレン、メチルドパ、レセルピンなどの血圧降下剤。
アジマリン、硫酸キニジンなどの不整脈用剤。
ヒドロクロロチアジド、フロセミドなどの利尿剤。
塩化ベルベリンなどの止瀉剤。
シメジチン、ファモチジンなどのH2−受容体拮抗剤。
アセトアミノフェン、イプブロフェン、エテンザミドなどの解熱鎮痛消炎剤。
ジアゼパム、ニトラゼパム、フェノバルビタールなどの催眠鎮静剤。
【0035】
滋養強壮保健薬には、例えば、生薬、漢方薬などの天然由来物質。タンパク。アミノ酸。ビタミンA、ビタミンB12、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKなどのビタミンなどが含まれる。
【実施例】
【0036】
以下に実施例をあげて本発明をさらに詳しく説明するが、これらの説明により本発明は限定されるものではない。
【0037】
本発明に係る口腔内速崩錠の製造方法は、エテンザミドの粉末物性を改質した難溶性薬物エテンザミドを用いることを大きな特徴とするものである。
【0038】
そこで、エテンザミドの改質に関して、軽質無水ケイ酸の添加によるエテンザミドの粒度分布について説明する。エテンザミドおよび予めエテンザミド9.9gおよび9.5gに軽質無水ケイ酸を添加し、混合したエテンザミドそれぞれの粒体の粒度分布を30〜200メッシュの篩を用いて測定した。その結果を表1に示す。
【0039】
表1中の検討例1は、0.1%軽質無水ケイ酸添加によるエテンザミドの粒度分布であり、検討例2は、0.5%軽質無水ケイ酸添加によるエテンザミドの粒度分布であり、比較例1は、エテンザミドの粒度分布である。
【0040】
【表1】

注) 30M ONは、30メッシュの篩を通過しない粉末の割合(%)
200M PASSは、200メッシュの篩を通過した粉末の割合(%)
【0041】
表1の結果から、比較例1のエテンザミドでは、30メッシュおよび50メッシュの篩を通過しない粉末の割合が大きい。エテンザミドが凝集していると思われる。
【0042】
一方、軽質無水ケイ酸を添加した検討例1および検討例2では、30メッシュおよび50メッシュの篩を通過しない粉の割合は、極めて少なくなり、検討例1では、140メッシュの篩を通過しない粉の割合が70%を占めている。また、検討例2は、200メッシュの篩を通過した粉末の割合が35%であり、エテンザミドの凝集は改善したものと思われる。
【0043】
以上の検討結果から、軽質無水ケイ酸の添加量0.5%を最適添加量とした。
【0044】
次に、結合液組成によるエテンザミド粉末コーティング粒子の粒度分布について説明する。結晶乳糖10gに、ポリビニルピロリドン(PVP)K−30(固形分0.045g)の結合液を添加する。ここに、予めエテンザミド9.5gに軽質無水ケイ酸を0.5g添加し、混合した改質エテンザミドを加える。この操作を10回繰り返し、粉末コーティングした後、乾燥・整粒し、コーティング粒子とした。それぞれの結合液組成で製したコーティング粒子について、その粒度分布を30〜200メッシュの篩を用いて測定した。その結果を表2に示す。
【0045】
表2中の検討例3は、結合液組成が、エタノール:水=75:25であり、検討例4は、結合液組成が、エタノール:水=50:50であり、検討例5は、結合液組成が、エタノール:水=25:75であり、比較例2は、エタノール100%である。
【0046】
【表2】

【0047】
表2の結果から、比較例2の結合液組成が、エタノール100%では、200メッシュの篩を通過した粉末の割合が50%程度を占めている。これは、エテンザミドがエタノールに溶解することから、エテンザミドは粉末コーティングされることなく、エタノールにより溶解し、エテンザミド同士で凝集した為と思われる。
【0048】
一方、結合液組成に水を含有した検討例3〜5では、200メッシュの篩を通過した粉末の割合が比較例2の結合液組成エタノール100%に比べて大きく減少している。
【0049】
従って、結晶乳糖にエテンザミドが粉末コーティングされていると思われる。検討例4の結合液組成がエタノール:水=50:50では、200メッシュの篩を通過した粉末の割合が10%以下である。
【0050】
以上の検討結果から、結合液組成がエタノール:水=50:50を最適結合組成とした。
【0051】
次に、以下の表3に示す原料成分を用いた本発明の口腔内速崩錠の製造方法の実施例について説明する。
【0052】
【表3】

1)軽質無水ケイ酸(日本アエロジル(株) 商品名:アエロジル200)
2)造粒乳糖(旭化成(株) 商品名:Super Tab)
3)結晶セルロース(旭化成(株) 商品名:アビセルPH102)
4)クロスボビドン(BASF武田ビタミン(株) 商品名:コリドンCL)
5)マルチトール(東和化成工業(株) 商品名:粉末マルチトールG3)
【0053】
実施例1
結晶乳糖10gを混合機に投入し、ここにポリビニルピロリドン(PVP)−30(固形成分0.045g)の50%エタノール水溶液を添加する。そこに、予めエテンザミド9.5gに0.5%軽質無水ケイ酸を添加し、混合した改質エテンザミドを加える。この操作を10回繰り返し、粉末コーティングした後、乾燥し、コーティング粒子とする。このコーティング粒子に造粒乳糖16.5g、結晶セルロース38.5g、クロスボビドン3gおよびマルチトール22gを加え混合する。この混合物に滑沢剤であるステアリン酸マグネシウム0.3gを添加・混合し、打錠機を使用し、打錠圧0.1tonで直径8mm、錠剤重量200mgの口腔内速崩錠剤を得た。
【0054】
実施例2
表3の実施例1に示す原料成分を用い、打錠機の打錠圧を0.2tonとした以外は実施例1と同様の操作を行い、直径8mm、錠剤重量200mgの口腔内速崩錠剤を得た。
【0055】
実施例3
表3の実施例1に示す原料成分を用い、打錠機の打錠圧を0.3tonとした以外は実施例1と同様の操作を行い、直径8mm、錠剤重量200mgの口腔内速崩錠剤を得た。
【0056】
実施例4
表3の実施例1に示す原料成分を用い、打錠機の打錠圧を0.4tonとした以外は実施例1と同様の操作を行い、直径8mm錠剤重量200mgの口腔内速崩錠剤を得た。
【0057】
実施例5
表3の実施例1に示す原料成分を用い、打錠機の打錠圧を0.5tonとした以外は実施例1と同様の操作を行い、直径8mm、錠剤重量200mgの口腔内速崩錠剤を得た。
【0058】
実施例6
結晶乳糖10gを混合機に投入し、ここにポリビニルピロリドン(PVP)−30(固形成分0.045g)の50%エタノール水溶液を添加する。そこに、予めエテンザミド9.5gに0.5%軽質無水ケイ酸を添加し、混合した改質エテンザミドを加える。この操作を10回繰り返し、粉末コーティングした後、乾燥し、コーティング粒子とする。このコーティング粒子に造粒乳糖16.5g、結晶セルロース38.5g、クロスボビドン3gおよびマルチトール22gを加え混合する。次いで、この混合物を、予め滑沢剤であるステアリン酸マグネシウム0.3gを杵および臼に付着させた打錠機により、打錠圧0.1tonで打錠して直径8mm、錠剤重量200mgの口腔内速崩錠剤を得た。
【0059】
実施例7
表3の実施例1に示す原料成分を用い、打錠機の打錠圧を0.2tonとした以外は実施例6と同様の操作を行い、直径8mm、錠剤重量200mgの口腔内速崩錠剤を得た。
【0060】
実施例8
表3の実施例1に示す原料成分を用い、打錠機の打錠圧を0.3tonとした以外は実施例6と同様の操作を行い、直径8mm、錠剤重量200mgの口腔内速崩錠剤を得た。
【0061】
実施例9
表3の実施例1に示す原料成分を用い、打錠機の打錠圧を0.4tonとした以外は実施例6と同様の操作を行い、直径8mm、錠剤重量200mgの口腔内速崩錠剤を得た。
【0062】
実施例10
表3の実施例1に示す原料成分を用い、打錠機の打錠圧を0.5tonとした以外は実施例6と同様の操作を行い、直径8mm、錠剤重量200mgの口腔内速崩錠剤を得た。
【0063】
比較例3
予めエテンザミド9.5gに0.5%軽質無水ケイ酸を添加し、混合した改質エテンザミド、結晶乳糖10g、造粒乳糖16.5g、結晶セルロース38.5g、クロスポビドン3gおよびマルチトール22gのそれぞれを混合機に投入し、混合して均一な混合物とする。この混合物にポリビニルピロリドン(PVP)K−30(固形分0.045g)の50%エタノール水溶液を添加し、練合する。これを造粒し、乾燥後、整粒し、この造粒物に滑沢剤であるステアリン酸マグネシウム0.3gを添加・混合し、打錠機により打錠圧0.3tonで打錠して直径8mm、錠剤重量200mgの口腔内速崩錠剤を得た。
【0064】
試験例1
実施例1〜実施例5で得られた内部滑沢打錠法による錠剤と、実施例6〜実施例10で得られた外部滑沢打錠法による錠剤のそれぞれについて、その物性を測定した。その結果を表4に示す。
【0065】
【表4】

【0066】
表4の結果から、実施例6〜実施例10の外部滑沢打錠法では、日局崩壊度に関して、実施例1〜実施例5の内部滑沢打錠法に比べ錠剤は速やかに崩壊した。また、打錠圧0.3ton以上では錠剤の日局崩壊度が10秒以内で、錠剤の硬度が約30N以上、摩損度が0.5%以下であった。よって、外部滑沢打錠法は口腔内速崩錠の製造方法として優れた方法である。
【0067】
試験例2
実施例3および比較例3で得られた錠剤の崩壊度等の物性について測定した。
【0068】
なお、錠剤の崩壊度は、日本薬局方記載崩壊試験法に従い、水を試験液として行い、6錠の平均値を算出した。口腔内崩壊時間は健常人4人で各錠剤について、3回の試験結果の平均値を算出した。錠剤硬度は、錠剤硬度計(エルベッカ社製 TBH200)を用い、各錠剤10錠の平均値を算出した。また、錠剤摩損度は、日本薬局方記載錠剤摩損度試験器(富山産業社製 TFT120)を用い、1分間25回転で4分間回転し、摩損度を測定した。その結果を表5に示す。
【0069】
【表5】

【0070】
表5の結果から、従来の湿式打錠法(比較例3)では、日局崩壊度が本発明の製造方法(実施例3)の6倍であった。また、口腔内崩壊時間は湿式打錠法(比較例3)が本発明の製造方法(実施例3)の5倍の時間を要した。
【0071】
従って、本発明の製造方法により得られた口腔内速崩錠は、日局崩壊度が10秒以内で、錠剤の硬度が30N以上、摩損度が0.5%以下であり、従来の湿式打錠法に比べて優れた方法である。
【0072】
次に、本発明に係る製造方法により得られた口腔内速崩錠のウイスカーの観察について説明する。
【0073】
検討例6
結晶乳糖10gを混合機に投入し、ここにポリビニルピロリドン(PVP)K−30(固形分0.045g)のエタノール溶液を添加する。そこに、エテンザミド10gを加える。この操作を10回繰り返し、粉末コーティングした後、乾燥・整粒し、コーティング粒子とする。次いで、このコーティング粒子に造粒乳糖16.5g、結晶セルロース38.5g、クロスポビドン3gおよびマルチトール22gを加え混合する。次いで、この混合物に滑沢剤であるステアリン酸マグネシウム0.3gを添加して混合し、打錠機を使用し、打錠圧0.3tonで直径8mm、錠剤重量200mgの口腔内速崩錠剤を得た。
【0074】
検討例7
エテンザミド10g、結晶乳糖10g、造粒乳糖16.5g、結晶セルロース38.5g、クロスポビドン3gおよびマルチトール22gのそれぞれを混合機に投入し、混合して均一な混合末とする。次いで、この混合末にポリビニルピロリドン(PVP)K−30(固形分0.045g)のエタノール溶液を添加し、練合する。次いで、この練合物を造粒し、乾燥後、整粒する。この造粒物に滑沢剤であるステアリン酸マグネシウム0.3gを添加して混合し、打錠機を使用し、打錠圧0.3tonで直径8mm、錠剤重量200mgの口腔内速崩錠剤を得た。
【0075】
試験例3
エテンザミド含有錠および改質エテンザミド含有錠、それぞれの口腔内速崩錠をガラス容器に入れ、プラスチック製のキャップをした。さらに、キャップとガラス容器とを合成樹脂製のシートを用いて、包み込み密封し、40℃と60℃で28日間保存した。保存後、それぞれのサンプルの錠剤およびガラス容器の外観をルーペ(倍率:5倍)で観察した。その結果を表6に示す。
【0076】
【表6】

0:エテンザミド結晶の析出はみられない。
1:錠剤の表面およびガラス瓶表面・底部に、極めて僅かにエテンザミド結晶の析出がみられる。
2:錠剤の表面およびガラス瓶表面・底部に、僅かにエテンザミド結晶の析出がみられる。
3:錠剤の表面およびガラス瓶表面・底部に、エテンザミド結晶の析出がみられる。
【0077】
表6の結果から、保存条件40℃と60℃では、エテンザミド結晶の析出に関して差がみられなかった。
【0078】
実施例3の改質エテンザミド含有錠は、エテンザミド結晶の析出がみられず、ウイスカーの発生が抑制された。
【0079】
一方、エテンザミド含有錠のコーティング粒子を含む錠剤(検討例6)では、エテンザミド結晶の析出の程度が最も多くみられた。
【0080】
従って、本発明の方法により製造した実施例3の口腔内速崩錠では、40℃および60℃の保存状態でのウイスカーの発生も抑制することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶乳糖の粒子核に、ポリビニルピロリドンK−30の50%エタノール水溶液を添加し、
次いで、前記ポリビニルピロリドンK−30の50%エタノール水溶液上に、予めエテンザミドに無水ケイ酸を添加・混合し、前記エテンザミドの粉末物性を改質した難溶性薬物エテンザミドをかけて、前記粒子核を粉末コーティングし、
次いで、この粉末コーティングした粒子を乾燥・整粒して粉末コーティング粒子とし、
次いで、この粉末コーティング粒子に、造粒乳糖、結晶セルロース、クロスポビドンおよびマルチトールを加え、混合して混合物とし、
次いで、この混合物に、ステアリン酸マグネシュウムを添加・混合した後、打錠して口腔内速崩錠を得ることを特徴とする口腔内速崩錠の製造方法。
【請求項2】
結晶乳糖の粒子核に、ポリビニルピロリドンK−30の50%エタノール水溶液を添加し、
次いで、前記ポリビニルピロリドンK−30の50%エタノール水溶液上に、予めエテンザミドに無水ケイ酸を添加・混合し、前記エテンザミドの粉末物性を改質した難溶性薬物エテンザミドをかけて、前記粒子核を粉末コーティングし、
次いで、この粉末コーティングした粒子を乾燥・整粒して粉末コーティング粒子とし、
次いで、この粉末コーティング粒子に、造粒乳糖、結晶セルロース、クロスポビドンおよびマルチトールを加え、混合して混合物とし、
次いで、この混合物に、予めステアリン酸マグネシュウムを杵および臼に付着させた打錠機により打錠して口腔内速崩錠を得ることを特徴とする口腔内速崩錠の製造方法。

【公開番号】特開2008−189634(P2008−189634A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−28701(P2007−28701)
【出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【特許番号】特許第3967767号(P3967767)
【特許公報発行日】平成19年8月29日(2007.8.29)
【出願人】(504008933)秋山錠剤株式会社 (3)
【Fターム(参考)】