説明

口腔用組成物

【課題】アプリケーター一体型容器に用いるための、毎回有効量を当該アプリケーター一体型容器の塗布部に簡便かつ安定して供給することができる、難水溶性粉体成分を含有する口腔用組成物を提供すること。
【解決手段】
(A)難水溶性粉体成分を0.1〜10質量%
(B)キサンタンガムを0.5〜5質量%
(C)水を50質量%以上
含有する、アプリケーター一体型容器に用いるための口腔用組成物。
当該口腔用組成物は、増粘剤としてキサンタンガムを含有することにより、難水溶性粉体成分を組成物中に安定に分散させることができ、かつ、アプリケーター一体型容器からの薬液吐出に適した粘性挙動を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アプリケーター一体型容器に用いるための口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より効率的に罹患した部位に薬剤を塗布したり、その部位を清浄にするために、アプリケーター一体型容器が用いられる。当該容器は、薬剤を貯蔵する貯蔵部、罹患部位へ当該薬物を塗布するための塗布部、必要に応じて、該貯留部から該塗布部へと該薬物を輸送するための送路部、等を備える。
【0003】
罹患部位が口腔内である場合、当該容器の塗布部を口腔内へ入れる必要がある。すると容易に罹患部位まで塗布部を届かせるためには、塗布部が口腔内へ入れることができる程度の大きさであって、当該塗布部に細長い筒状(棒状)のものが連結した形態を有するものであることが好ましい。また、貯蔵部には、口腔用組成物を適切な量貯蔵できる容量が求められる。
【0004】
このような口腔疾患用のアプリケーター一体型容器に用いるための口腔用組成物には、当該容器に応じた適切な物性を有することが求められる。すなわち、当該口腔用組成物は、適当な押圧で適量が塗布部から吐出されるものであることが好ましい。また、当該口腔用組成物は、吐出遅れが無いことが好ましい。さらに、当該口腔用組成物は塗布部や送路部等で目詰まりを起こすことがないものが好ましい。
【0005】
口腔用のアプリケーター一体型容器に用いるための口腔用組成物として、例えば特許文献1には、組成物収容用内蔵型貯蔵器を備えた歯ブラシに用いるための口腔用組成物が記載されている。また、特許文献2には、電動歯ブラシを用いて少量使用するための液体歯磨剤組成物が記載されている。
【0006】
しかしながら、口腔用のアプリケーター一体型容器に用いるための、口腔疾患部に適用する有用成分を含有した口腔用組成物は、これまでに開発されていない。
【0007】
口腔用途でアプリケーター一体型容器を用いて効率的、実用的に活用するためには、毎回有効量の口腔用組成物が塗布部から供給されることが好ましく、従って当該容器に予め充填される(すなわち、プレフィルドされる)組成物の特性が重要となる。特に、適当な押圧により有効量が吐出され、吐出遅れが少なく、塗布部や送路部において目詰まりしない組成物であることが重要である。
【0008】
特に、有用成分として難水溶性粉体成分を用いた場合は、時間の経過にともなって有用成分が沈殿し、所期の効果が得られず、外観も損なわれるおそれがある。また、組成物がアプリケーター一体型容器の特に送路部で目詰まりを起こしやすくなる等の問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第04/032674号
【特許文献2】国際公開第04/032889号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、アプリケーター一体型容器に用いるための、毎回有効量を当該アプリケーター一体型容器の塗布部に簡便かつ安定して供給することができる、難水溶性粉体成分を含有する口腔用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、驚くべき事に、増粘剤としてキサンタンガムを用い、所定の剪断速度での粘度をコントロールすることで、アプリケーター一体型容器から、一定の押圧にて有効量が吐出され吐出遅れが少なく、組成物の安定性にも優れ(すなわち、有用成分が安定に配合され)、かつ目詰まりのない、難水溶性粉体成分を含有する口腔用組成物を提供できることを見出し、さらに改良を重ねて本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明は例えば以下の項1〜5に記載の口腔用組成物に係るものである。
項1.
(A)難水溶性粉体成分を0.1〜10質量%
(B)キサンタンガムを0.5〜5質量%
(C)水を50質量%以上
含有する、アプリケーター一体型容器に用いるための口腔用組成物。
項2.
難水溶性粉体成分が酸化亜鉛、酸化チタン、群青、紺青及びヒドロキシアパタイトからなる群より選択される少なくとも1種である、項1に記載の口腔用組成物。
項3.
難水溶性粉体成分の平均粒子径が0.5μm以下である、項1又は2に記載の口腔用組成物。
項4.
剪断速度8s−1のとき剪断応力が120N/m以下であり、剪断速度0.2s−1のとき剪断応力が20N/m以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の口腔用組成物。
項5.
前記アプリケーター一体型容器が、塗布部、送路部、貯蔵部及び貯蔵部に隣接した送り出し機構を備え、
前記口腔用組成物が、前記貯蔵容器から前記送路部を介して前記塗布部に輸送される、
項1〜4のいずれかに記載のアプリケーター一体型容器に用いるための口腔用組成物。
【発明の効果】
【0013】
本発明のアプリケーター一体型容器に用いるための口腔用組成物であれば、難水溶性粉体成分を含有するにもかかわらず、有用成分を安定に配合でき、アプリケーター一体型容器において繰り返し使用しても、当該容器の塗布部や送路部を目詰まりさせることがなく、毎回有効量を当該容器の塗布部に簡便かつ安定して供給することができる。
【0014】
さらに、当該口腔用組成物は、口腔内患部への薬剤滞留性に優れている。すなわち、患部に塗布した際、すぐに唾液中に分散することなく、長時間患部に留まることができる。これにより、組成物中の有用成分が患部に持続的に効果を発揮し得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1a】アプリケーター一体型容器の一態様である吐出試験用容器の、外観概略図を示す。
【図1b】アプリケーター一体型容器の一態様である吐出試験用容器の、断面概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について、さらに詳細に説明する。
【0017】
本発明の口腔用組成物は、アプリケーター一体型容器に用いるためのものである。当該口腔用組成物は、アプリケーター一体型容器に用いた際、目詰まりをおこさず、毎回有効量が簡便かつ安定して供給されるものである。
【0018】
本発明の口腔用組成物は、難水溶性粉体成分を含む。難水溶性粉体成分は、特に制限されないが、通常口腔用組成物に配合される、難水溶性の粉体である有用成分が好ましい。このような難水溶性粉体成分としては、例えば、酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、酸化チタン、群青、紺青等が例示できる。この中でも、安定性の観点から酸化亜鉛、酸化チタンが好ましく、特に再石灰化促進作用を有する酸化亜鉛が最も好ましい。難水溶性粉体成分は、1種又は2種以上を組合せて用いることができる。なお、「酸化チタン」は酸化チタン(II)[一酸化チタン]、酸化チタン(III)[三酸化二チタン]、酸化チタン(IV)[二酸化チタン]の総称であり、これら3種の酸化チタンを1種単独で又は2種以上を組み合わせて「酸化チタン」として用いることができる。言い換えれば、「酸化チタン」は酸化チタン(II)、酸化チタン(III)、及び酸化チタン(IV)からなる群から選択される少なくとも1種をいう。
【0019】
また、難水溶性粉体成分の平均粒子径は、通常1.0μm以下、好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.4μm以下、さらに好ましくは0.3μm以下である。平均粒子径はレーザー回折・散乱法により求めることができる。
【0020】
さらにまた、比重が大きい成分は組成物中で沈降しやすく、組成物の分散性が損なわれやすいところ、本願の口腔用組成物に含有される難水溶性粉体成分は、比較的比重が大きいものであっても分散性が損なわれない。例えば、研磨剤として通常口腔用組成物に含有されるシリカは比重が2.2〜2.7程度であり、比較的組成物中に分散しやすい。一方、酸化亜鉛の比重は5.4〜5.7程度あるが、本願の口腔用組成物では酸化亜鉛を含んでいても長期間安定して分散されたままの状態を維持することができる。本願の口腔用組成物に含有される難水溶性粉体成分の比重が7以下であれば分散性は良好に保たれ得、6以下であれば分散性はより良好に保たれ得、2〜6であれば分散性はさらに良好に保たれ得る。
【0021】
なお、“難水溶性”とは、25℃において水100gに対する溶解量が0.5g未満であることをいい、全く溶解しないものも含まれる。
【0022】
難水溶性粉体成分の配合量は、口腔用組成物全量に対して、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.2〜5質量%、さらに好ましくは0.3〜4質量%、よりさらに好ましくは0.5〜2質量%である。
【0023】
特に難水溶性粉体成分として酸化亜鉛を用いる場合は、粒子径が小さく、比表面積が大きい粒子のほうが、味の観点で好ましく、具体的には平均粒子径が0.3μm以下で、かつBET比表面積が10m/g以上のものが好ましい。0.5μmを超える平均粒子径を有するものは渋味が強い。好ましい酸化亜鉛を市販品として入手することもでき、例えば堺化学工業株式会社製の微細酸化亜鉛が例示できる。
【0024】
酸化亜鉛には再石灰化促進効果があり、これを含有する口腔用組成物は特にう蝕予防用に好適に用いることができる。
【0025】
また、本発明の口腔用組成物は、増粘剤としてキサンタンガムを含有する。キサンタンガムを含有することにより、難水溶性粉体成分を組成物中に安定に分散させることができ、かつ、アプリケーター一体型容器からの薬液吐出に適した粘性挙動を得ることができる。
【0026】
キサンタンガムの配合量としては、口腔用組成物全量に対して、好ましくは0.5〜5質量%、より好ましくは0.5〜4質量%、さらに好ましくは1〜2.5質量%である。
【0027】
本発明の口腔用組成物は、ゲル製剤、乳化製剤等、いずれの形態であってもよいが、特にゲル製剤であることが好ましい。
【0028】
また、本発明の口腔用組成物には、上記のものの他に、一般に口腔用組成物に添加される任意成分を配合することもできる。
【0029】
例えば、界面活性剤として、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤または両性界面活性剤を配合することができる。具体的には、ノニオン界面活性剤としてはショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル、ラクトース脂肪酸エステル等の糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド類、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、ポリオキシエチレン付加係数が8〜10、アルキル基の炭素数が13〜15であるポリオキシエチレンアルキルエーテル系またはポリオキシエチレン付加係数が10〜18、アルキル基の炭素数が9であるポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、セバシン酸ジエチル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン等が挙げられる。アニオン界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩、ラウリルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルスルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸塩、ココイルサルコシンナトリウム、ラウロイルメチルアラニンナトリウム等のアシルアミノ酸塩、ココイルメチルタウリンナトリウム等が挙げられる。両性イオン界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の酢酸ベタイン型活性剤、N−ココイル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム等のイミダゾリン型活性剤、N−ラウリルジアミノエチルグリシン等のアミノ酸型活性剤等が挙げられる。これらの界面活性剤は、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。その配合量は、通常、組成物全量に対して0.1〜5質量%である。
【0030】
香味剤として、メントール、カルボン酸、アネトール、オイゲノール、サリチル酸メチル、リモネン、オシメン、n−デシルアルコール、シトロネール、α−テルピネオール、メチルアセタート、シトロネニルアセタート、メチルオイゲノール、シネオール、リナロール、エチルリナロール、チモール、スペアミント油、ペパーミント油、レモン油、オレンジ油、セージ油、ローズマリー油、珪皮油、シソ油、冬緑油、丁子油、ユーカリ油、ピメント油、d−カンフル、d−ボルネオール、ウイキョウ油、ケイヒ油、シンナムアルデヒド、ハッカ油、バニリン等の香料を、単独または2種以上を組み合わせて組成物全量に対して0.01〜1質量%配合することができる。
【0031】
また、サッカリンナトリウム、アセスルファームカリウム、ステビオサイド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、グリチルリチン、ペリラルチン、タウマチン、アスパラチルフェニルアラニルメチルエステル、p−メトキシシンナミックアルデヒド等の甘味剤を、組成物全量に対して0.01〜1質量%配合することができる。
【0032】
さらに、湿潤剤として、ソルビット、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3―ブチレングリコール、ポリプロピレングリコール、キシリット、マルチット、ラクチット、ポリオキシエチレングリコール等を単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0033】
なお、本発明の口腔用組成物には、薬効成分として、酢酸dl−α−トコフェロール、コハク酸トコフェロール、またはニコチン酸トコフェロール等のビタミンE類、ドデシルジアミノエチルグリシン等の両性殺菌剤、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール等の非イオン性殺菌剤、デキストラナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、ムタナーゼ、リゾチーム、溶菌酵素(リテックエンザイム)等の酵素、モノフルオロリン酸ナトリウム、モノフルオロリン酸カリウム等のアルカリ金属モノフルオロフォスフェート、フッ化ナトリウム、フッ化第一錫等のフッ化物、トラネキサム酸やイプシロンアミノカプロン酸、アルミニウムクロルヒドロキシルアラントイン、ジヒドロコレステロール、グリチルレチン酸、グリセロフォスフェート、クロロフィル、塩化ナトリウム、カロペプタイド、グリチルリチン酸ジカリウム、アラントイン、カルバゾクロム、ヒノキチオール、硝酸カリウム、パラチニット等を、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0034】
特に特開2000−247852号公報に開示されるように、パラチニット及びフッ化物を配合することにより、再石灰化が促進される効果が得られるため好ましい。
【0035】
本発明の口腔用組成物は、通常50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上の水を含むものが好ましい。さらに、本発明の口腔用組成物には、湿潤剤としてグリセリンを加えることが好ましく、その配合量は口腔用組成物全量に対して、5〜25質量%、好ましくは10〜20質量%である。なお、グリセリンを配合することで、組成物が目詰まりをおこしにくくなり、味も改善される。
【0036】
さらに、本発明の口腔用組成物は、適切な粘度を有するものが好ましい。ここで、
粘度(mPa・s)=剪断応力(N/m)×1000/剪断速度(s−1
である。本発明の口腔用組成物は難水溶性粉体成分を含有するため、剪断速度が小さい場合でも、当該粉体成分が組成物下方に沈殿しない程度に剪断応力があることが好ましい。また、アプリケーター一体型容器に用いることから、目詰まりを起こさないようにするため、剪断速度が大きくなっても剪断応力がそれほど上昇しないことが好ましい。言い換えれば、剪断速度が小さい場合に粘度が高く、剪断速度が大きい場合に粘度が低いことが好ましい。
【0037】
具体的には、常温(25℃)おいて、剪断速度0.2s−1で剪断応力が20N/m以上(好ましくは25N/m以上)であり、かつ、剪断速度8s−1で剪断応力が120N/m以下(好ましくは100N/m以下、より好ましくは80N/m以下)であることが好適である。言い換えれば、常温(25℃)おいて、剪断速度0.2s−1で粘度が100000mPa・s以上(好ましくは125000mPa・s以上)であり、かつ、剪断速度8s−1で粘度が15000Pa・s以下(好ましくは12500Pa・s以下、より好ましくは10000Pa・s以下)であることが好適である。
【0038】
なお、剪断応力及び粘度は、E型粘度計により測定・算出することができる。
【0039】
本発明の口腔用組成物を充填するアプリケーター一体型容器は、口腔用組成物を充填、貯蔵するための貯蔵部と、口腔用組成物を口腔疾患部に塗布するための塗布部を備えるものである。また、必要に応じて、当該貯蔵部と塗布部とを連結し、口腔用組成物を輸送するための送路部を備える。当該容器において、貯蔵部は取り外し及び反復充填が可能であってもよく、予め充填(プレフィルド)された状態で上市され使い捨てされるものであってもよい。
【0040】
当該塗布部は、口腔内に適用するために適切な大きさであることが好ましい。また、塗布部は、送路部の出口そのものであってもよいし、ブラシ(例えば、1又は2以上の毛束を植えた歯ブラシ又は歯間ブラシのようなブラシ)やはけ、筆、スポンジ等の、組成物を塗布しやすい形態であってもよく、特に制限はされない。
【0041】
また、当該貯蔵部は貯蔵できる口腔用組成物量を多くするためには大きめのものが好ましい。しかし、当該アプリケーター一体型容器が手に持って使用するものである場合は、当該容器が手に握ることができるよう貯蔵部の大きさを設定することが好ましい。具体的には、例えば貯蔵部が筒状である場合には、容積が3〜15mL、長さが30〜80mm程度のものが好ましい。
【0042】
また、当該アプリケーター一体型容器は、塗布部と貯蔵部とを連結して口腔用組成物の輸送を行う送路部を備えていてもよい。口腔用アプリケーター一体型容器は、使用する際、塗布部を口腔内の奥まで到達させる必要がある。よって、送路部は細い管状であることが好ましい。しかし、あまりに細い形状であると、貯蔵部から塗布部まで組成物を輸送するのに不適である。また、あまりに太い形状であると、使用後、送路部に多くの組成物が残ることになり、有効使用量の確保の点から好ましくない上、その太さのため口腔内に適用しづらくなる。当業者であれば、このような状況を考慮しつつ適当な送路部を設定することができるが、例えば長さ40〜80mm、容積が0.025〜0.2mlであることが好ましい。
【0043】
上述したような範囲に貯蔵部および送路部を設定すると、貯蔵部の底面積と送路部の断面積が大幅に異なることとなる。例えば、容器が筒状である場合、(貯蔵部の底面積:送路部の断面積)が、上記の貯蔵部の大きさと送路部の要件を満たしつつ、(1000:5以上)であることが好ましく、(1000:5〜50)であることがより好ましく、(1000:5〜20)であることがさらに好ましく、(1000:10〜15)であることがよりさらに好ましい。
【0044】
このような貯蔵部の底面積に比べ送路部の断面積が小さい場合には、貯蔵部から送路部に口腔用組成物が送り出される際、口腔用組成物の輸送スピードが急激に増すことになるため、毎回安定した量を送路部を介して塗布部へ供給することが難しい。
【0045】
このため、本発明に係るアプリケーター一体型容器は、貯蔵部内の口腔用組成物を一定量送路部を介して塗布部へと送り出すことのできる送り出し機構を備えることが好ましい。特に、貯蔵部に隣接して備えることが好ましい。
【0046】
このような送り出し機構は特に制限されるものではなく、公知のものを適宜選択して用いることができる。例えば、特許文献1(国際公開第04/032674号)に記載のように電気的に作動するポンプ輸送システム又は手動操作によるポンプ輸送を実現する機構を用いることができる。また、特開2007−319392号公報に開示される、容器の一部に位置する回動体を一方向に回転させることによって収納部内に貯蔵した組成物を押圧して当該組成物を吐出口から外方に押し出し可能にする機構が好適である。好ましい一態様では、貯蔵部に接してピストン体等の中皿が設けられており、アプリケーター一体型容器末端に設けられた回動体と当該中皿が接続されていて、この回動体を一方向に回転させることにより、中皿が貯蔵部を押圧して、貯蔵部内の組成物が送路部を通じて塗布部へと供給される。
【0047】
上述した本発明に係る口腔用組成物は、特にこのようなアプリケーター一体型容器にプレフィルドして用いるのに好適である。当該口腔用組成物であれば、当該アプリケーター一体型容器の貯蔵部から送路部に送り出される際、輸送スピードが急激に増すが塗布部への供給量は安定する。また、繰り返し長期にわたり塗布部へ供給されても、塗布部や送路部での目詰まりを起こさない。さらに、送り出し機構により安定した量が毎使用時に塗布部に供給される。
【0048】
例えば塗布部がブラシ形態である場合は、ブラシの付け根部分に送路部の出口が存在し、当該出口から口腔用組成物が吐出されることで当該ブラシ形態の塗布部に口腔用組成物が供給される。そして、当該ブラシにて口腔疾患部位に口腔用組成物を塗布できる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
<口腔用組成物の調製>
表1に示す組成に従い、以下のようにして各例(各組成物)を製造した。なお、表1の値も含め、以下、%は特に断らない限り質量%を示す。
【0050】
具体的には、次のようにして各組成物を調製した。まず、グリセリン15gに各種増粘剤(1〜3g)を加え、分散させた。これとは別に、フッ化ナトリウム0.2g及びパラチニット10gを精製水に溶解し、プロピレングリコール3gを加えて撹拌した。さらにこれに酸化亜鉛1gを分散させた後、、上記のようにして調製した増粘剤を分散させたグリセリンを加えて撹拌し、ゲル製剤を調製した。なお、各例の増粘剤の種類及び配合量については表2に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
<口腔用組成物の評価>
各組成物において、以下の項目について、下記の評価基準にて評価を行った。評価結果を表2に併せて示す。
[酸化亜鉛の安定分散性]
各組成物を55℃で3ヶ月放置し、酸化亜鉛が沈殿しないかを目視で確認した。沈殿せず均一分散しているものは「○」、沈殿が認められたものは「×」と評価した。 [吐出性]
〔吐出試験用容器〕
内径14mm、長さ50mmの円柱状の貯蔵容器に、内径1mm、長さ60mmの円管状路を連結し、さらに当該貯蔵容器を特開2007−319392号公報の図面に開示される送り出し機構を組み込み、組成物の吐出試験用容器とした。すなわち、当該吐出試験用容器はアプリケーター一体型容器の一態様であり、グリップ部分及び送路部からなり、グリップ部分内部には貯蔵部に接してピストン体の中皿が設けられており、その中皿にはグリップ部分内をピストン状に移動するための機構がグリップ部分末端に設けられた回動体から接続されている。この回動体を一方向に回転させることにより、中皿が貯蔵部を押圧して、貯蔵部内の組成物が送路部を通じて送路部末端から吐出される。当該吐出試験用容器の外観概略図を図1aに、断面概略図を図1bに、それぞれ示す。
【0053】
この貯蔵容器内に、調製した各組成物を充填した。
〔吐出試験〕
上記の吐出試験用容器において、0.04g/sの速度で組成物が吐出されるよう送り出し機構の回動体を回転させ、回動体を回転させ終えてから0.04gの組成物が吐出されるまでに要する時間を計測した。当該計測値が大きいものほど、組成物の後引き性が高くなるため(すなわち、タイムラグを生じて吐出されるため)、好ましくないことがわかる。具体的には、当該計測値が0.5秒未満のものを「○」、0.5秒以上1.0秒未満のものを「△」、1.0秒以上のものを「×」と評価した。
[患部への滞留性]
組成物は口腔内の患部に適用された後、すぐに唾液中に分散されずに患部へとどまることが望まれるため、滞留性が高いことが好ましい。そこで、次のようにして組成物の滞留性を評価した。
ポリプロピレン製50mLチューブの壁面に組成物を0.5g付着させ、水を20mLを加え、2分間水平に振とうさせた。2分後にチューブ内の水を回収し、吸光度(600nm)を測定し、0.9以上であれば「○」、0.5以上0.9未満であれば「△」、0.5未満であれば「×」と評価した。
[総合判定]
薬液吐出性、酸化亜鉛分散、患部滞留性の項目において、全て○評価のものを「○」、一つでも×評価があるものを「×」、それ以外は「△」と評価した。
【0054】
【表2】

【0055】
<口腔用組成物の剪断応力測定>
ブルックフィールド社粘度計HVDV-II、RVDV-II、LVDV-II(E型粘度計)にて、25℃で剪断速度0.2〜10.0s−1にて剪断応力を測定した。剪断速度0.2s−1及び8.0s−1における結果を表2に併せて示す。
【0056】
以下に本発明に係る口腔用組成物の処方例を示す。
【0057】
【表3】

【0058】
【表4】

【0059】
【表5】

【0060】
【表6】

【0061】
【表7】

【符号の説明】
【0062】
1:塗布部
2:送路部
3:貯蔵部
4:送り出し機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)難水溶性粉体成分を0.1〜10質量%
(B)キサンタンガムを0.5〜5質量%
(C)水を50質量%以上
含有する、アプリケーター一体型容器に用いるための口腔用組成物。
【請求項2】
難水溶性粉体成分が酸化亜鉛、酸化チタン、群青、紺青及びヒドロキシアパタイトからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項3】
難水溶性粉体成分の平均粒子径が0.5μm以下である、請求項1又は2に記載の口腔用組成物。
【請求項4】
剪断速度8s−1のとき剪断応力が120N/m以下であり、剪断速度0.2s−1のとき剪断応力が20N/m以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の口腔用組成物。

【図1a】
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【図1b】
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【公開番号】特開2011−51927(P2011−51927A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−201834(P2009−201834)
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【出願人】(000106324)サンスター株式会社 (200)
【Fターム(参考)】