口腔組織の再生および修復
培養組織構築物を口腔組織に移植することによって、被験者の口腔条件を治療する方法。該培養組織構築物は、培養された細胞および内因的に作製された細胞外マトリックス成分を含み、外因性のマトリックス成分またはネットワーク支持体またはスカホード部材を必要としない。本発明のいくつかの組織構築物は、複数のタイプの多数の細胞層を含む。該組織構築物は、それらの細胞が由来する組織に類似する形態学的特徴と機能を持ち、それらの強度のために、取り扱いが容易である。本発明の好ましい培養構築物は、ヒト組織に由来する細胞を含む。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、組織工学の分野に属する。特に、口腔組織の再生および修復のための培養組織構築物の利用に関する。
【0002】
発明の背景
組織工学の分野は、生物工学的方法と生命科学の原理を組み合わせて、正常な哺乳動物組織と病理的な哺乳動物組織の構造的および機能的関係を理解する。組織工学の目的は、生物学的代替物を開発し、組織機能を回復、維持、または改善するために最終的に適用をすることである。したがって、組織工学によって、実験室レベルで生物工学処理された組織を設計および製造することができる。生物工学的処理された組織は、通常、天然の哺乳動物組織またはヒト組織と合成もしくは外因性のマトリクススカホードとを関連づけた細胞を含むことができる。
【0003】
生物工学処理された組織は、ホストに移植されたとき機能的でなければならず、またホストの体に永久に組み込まれていなければならない。またはレシピエントホスト患者からの細胞によって積極的に生体内でリモデルされなければならない。サポート部材やスカホードを用いずに組織等価物を作製することは、新たな生物工学処理された組織を作製する際の科学的課題である。
【0004】
口腔軟組織の移植処置の大部分は、口蓋からの自己組織を用いて行われる。処置によっては、これは非常によく機能するかもしれないが、患者にとってはかなり痛みを伴いうる「ドナー部位」を作る必要があるという不利を伴う。このさらなるドナー部位はまた、組織が限定されてしまう。つまり、1度に処置できるのはわずか2〜3本の歯にとどまる。この結果、多数の手術が必要な場合、または移植処置によって恩恵を受けることができるであろう未処置の歯が複数存在するもしれない場合でも、歯科医師が「最も悪い歯」のみを治療することになる。
【0005】
発明の概要
本発明は、培養組織構築物を被験者の口腔組織に移植することによって、被験者の口腔の状態を治療するための方法に関する。
【0006】
本発明の培養組織構築物は、培養された細胞および内因的に作製された細胞外細胞外マトリックス成分を含み、外因性のマトリックス成分またはネットワーク支持体またはスカホード部材を必要としない。したがって本発明は、完全にヒト細胞およびヒトにおいて使用されるそれらの細胞によって作製されるヒト・マトリックス成分から作製することができる。
【0007】
培養組織構築物の移植物は、細胞外マトリックス成分を生成する線維芽細胞を含み、外因性のマトリックス成分またはネットワーク支持体またはスカホード部材を添加しない。
【0008】
当該培養組織構築物は、細胞外マトリックス成分を生成する線維芽細胞を限定された培地系の中に含み、および/または限定されていない、もしくは非ヒト由来の生物学的成分、例えば、ウシ血清もしくは臓器抽出物を含まない。
【0009】
さらに、培養組織構築物は、天然組織の細胞組成や組織構造に似た培養組織構築物を生成する、異なるタイプの細胞を連続的に播くことによって作製することができる。特に、この培養組織構築物は、培養された線維芽細胞細胞の少なくとも1層の上皮細胞を含む。さらにまた、該組織構築物は、スカホード支持体や外因性の細胞外マトリックス成分の添加を必要とせずに、作製し、自己集合させる。
【0010】
本発明の培養組織構築物の移植物はまた、収縮性の作用物質を含有するコラーゲン溶液のゲル混合物を含む。
【0011】
また、本発明の培養組織構築物の移植物は、無細胞コラーゲンゲルの層の上に配置される収縮性の作用物質を含有するコラーゲンを含むコラーゲンゲルの層を含む。
【0012】
本発明のさらに別の実施態様においては、コラーゲンゲルおよび収縮性の作用物質を含む前記層に上皮細胞が添加される。
【0013】
当該組織構築物の強度特性によって、それが形成され、臨床または試験に適用される場合、いかなる支持体も担体も必要とせず、直接的に埋め込まれている培養装置から容易かつ剥離可能に除去できるように取扱うことができる。本発明の組織構築物は、口腔歯肉の後退、歯間の乳頭状突起の欠損、歯茎音の欠陥、口腔インプラントの不全、歯分岐部欠陥など、口腔組織に違和を持つ患者、および上顎顔面の腫瘍切除後の組織再構築が必要な患者に治療に適応がある。
【0014】
(本発明の詳細な説明)
本発明は、被験者の口腔の状態を、培養組織構築物を移植することによって治療することに関する。
【0015】
「培養組織構築物」、「工学的に処理された生体組織」、「細胞−マトリックス構築物」、「細胞−マトリックス層」、「皮膚等価物」、「生体組織」、および「生体結合組織」は、本発明の培養組織構築物の態様として交換可能に用いられることに留意すべきである。
【0016】
これまで、現在の工学的に処理された生体組織構築物は、完全に細胞の集合したものではなく、構造または支持体、またはその両方において、外因性のマトリックス成分または合成部材の添加または組み込みに依存していた。
【0017】
本明細書に記載の生物工学処理された組織構築物は、それらの細胞が由来する組織の天然の特徴の多くを示すものである。こうして作製された該組織構築物は、患者の口腔の状態を治療するために用いることができる。
【0018】
1つの好ましい実施態様は、第1の細胞タイプと内因的に作製された細胞外マトリックスを含む細胞−マトリックス構築物である。第1の細胞タイプは、細胞外マトリックスを合成および分泌して、細胞−マトリックス構築物を作成することが可能である。
【0019】
別の好ましい実施態様は、第1の細胞タイプ、内因的に生成された細胞外マトリックス、およびその上にまたは第1の細胞タイプによって形成された細胞−マトリックス構築物の中に配置された、第2のタイプの細胞層を含む二層構築物である。
【0020】
より好ましい実施態様は、真皮に由来するものなどの線維芽細胞を含み真皮構築物を形成する細胞−マトリックス構築物である。
【0021】
より好ましい実施態様は、真皮に由来するものなどの線維芽細胞を含み、真皮構築物を形成し、その上で培養されたケラチノサイト層を持ち、表皮を形成して、結果として二層の皮膚構築物となった細胞−マトリックス構築物である。本発明の培養された皮膚構築物は、天然の皮膚のもつ身体的、形態学的、および生化学的特徴を示す。
【0022】
さらに好ましい実施態様において、該細胞−マトリックス構築物は、皮膚の真皮層に類似した組織構築物、ヒト由来の細胞を含み、培養物中に化学的に未定義の成分を含まない、定義されたシステムの中で形成されるヒト真皮構築物である。
【0023】
最も好ましい実施態様においては、本発明の組織構築物は、ヒト由来の細胞であり、化学的に未定義もしくは非ヒト生物学的成分もしくは細胞を含まない化学的に定義されたシステムにおいて作成される。
【0024】
本発明の別の実施態様においては、培養組織構築物は、コラーゲン溶液および収縮性の作用物質を含むゲル混合物を含む。
【0025】
本発明の実施態様においては、培養組織構築物は、無細胞コラーゲンゲルを含む第1の層および該第1の層の上に配置された第2の層を含む。前記第2の層は、コラーゲンおよび収縮性の作用物質を含有する第2のコラーゲンゲルを含む。本発明のさらにいっそう好ましい実施態様においては、収縮性の作用物質を持つ第2のコラーゲンは、ケラチノサイトを播種されたものである。
【0026】
A:培養組織構築物の用途
本発明の培養組織構築物は、口腔歯肉の後退、歯間の乳頭状突起の欠損、歯茎音リッジの欠陥、口腔インプラントの不全の結果、または上顎顔面の腫瘍切除などの口腔の状態を治療するために適用される。
【0027】
各歯のまわりに付着した歯肉の機能的領域は健康にとって必要であることは一般に認められているところである。この組織がなければ、歯肉の後退が頻繁に起こり、その結果、皮質プレートの部分の欠損を引き起こし、歯の予後を悪化させる。さらに、歯に面する粘膜は、歯肉の機能的領域がなければ、被験者の自己ケアがよくても、頻繁に炎症が起こる。この炎症は、歯の周りの骨の欠損を引きおこす可能性もある。
【0028】
1960年代後半以降、この種の問題は常にフリーな自家移植によって修正されてきた。粘膜を顔面から問題の歯にかけて除去し、角化した組織を口蓋から回収し、移植床に縫合する。まず、移植物を形質循環(plasmotic circulation)によって支持し、その後周りの床から再血管化する。このタイプの移植の成功はほぼ100%である。しかし、多くの被験者からは、口蓋組織の代わりに使うことができるドナー材料を同定するという強い要望がある。もちろんこれによって、この処置のために必要な手術の部位数を半減させる。代替ドナー材料は何年もの間使用されてきた。過去においてはフリーズドライの死体皮膚が用いられていた。また、最近では、無細胞の真皮移植物がドナー材料として用いられている。極めて、かけ離れているにもかかわらず、これらのタイプの真皮材料に関連する感染(主にエイズや肝炎)の可能性のために、それらの使用が抑止されている。それに加えて、こうしたドナー材料を用いる移植物の最終的な美的効果は、通常理想より低い。
【0029】
B.少なくとも1つのタイプの細胞外層形成細胞の構造層を内因的に産生された細胞外マトリックスとともに含む培養組織構築物
本発明のある好ましい実施態様は、少なくとも1つのタイプの細胞外マトリックス産生細胞および内因的に産生された細胞外マトリックス成分の構造層(より簡単には「マトリックス」と呼ぶ)を含む。該マトリックスは完全に細胞合成され、細胞を培養することによって組み立てられる。この層を本明細書においては、「細胞−マトリックス構築物」または「細胞−マトリックス層」と呼んでいる。なぜなら、該細胞は、マトリックス内およびマトリックスを通して細胞自身を分泌および含有するからである。2000年3月3日(原語:03/03/200)に出願された共係属の米国特許出願第09/523,809号(その内容を本明細書において引用によって援用する)に記載されているように、該培養組織構築物は、外因性のマトリックス成分、すなわち、培養された細胞によって産生されたものではない、他の手段によって導入されたマトリックス成分を必要とせず、したがってそれを含まない。より好ましい実施態様においては、ヒト真皮線維芽細胞によって作製された細胞−マトリックス構築物が、天然の皮膚に類似した有力なコラーゲン濃度を持つことが示された。電子顕微鏡から明らかなように、該マトリックスは、線維状の性質を持ち、4分の1差の67nmバンディングパターンを示すコラーゲンを含み、また、天然のコラーゲンに類似した原線維および原線維束の結合構成を示す。
【0030】
遅延還元SDS−PAGEは、生来のヒト皮膚に見られる優勢なコラーゲン型であるこれらの構築物中のI型およびIII型コラーゲンの両方の存在を検出した。標準免疫組織化学(IHC)技術を用いて、皮膚の細胞−マトリックス構築物は、コラーゲン原線維に結合されることが知られ、そしてin
vivoで原線維の直径を調節すると思われているデルマタン硫酸プロテオグリカンである、デコリンに対して陽性に染色する。デコリンは、TEMを用いて構築物中で可視化もされうる。産生した組織は、例えば、修復中の間葉または組織で見られる細胞外マトリックス糖タンパク質であるテナスシンに対して陽性に染色もする。生体内で修復中の組織とより同様に、培養基中で産生された組織は、マトリックスが形成されるときにI型対III型コラーゲンのそれの比を増大することが示された。
【0031】
理論に束縛されることを望むわけではないが、細胞は、それらの間の開放空間に、主にIII型コラーゲンおよびフィブロネクチンから構成される顆粒組織に類似のゆるいマトリックスで、すばやく充填し、そしてその後、このゆるいマトリックスを、主にI型コラーゲンから構成される周密マトリックスで再生すると思われる。産生された細胞−マトリックスは、ヒアルロン酸(HA)のようなグリコサアミノグリカン(GAG);フィブロネクチン;ビグリカンおよびベルシカンのようなデコリンに加えてプロテオグリカン;およびジヒアルロン酸;ジコンドロイチン−O−硫酸;ジコンドロイチン−4−硫酸;ジコンドロイチン−6−硫酸;ジコンドロイチン−4,6−硫酸;ジコンドロイチン−4−硫酸−UA−2S;およびジコンドロイチン−6−硫酸−UA−2Sのような硫酸グリコサアミノグリカンのプロファイルを含むことが示された。これらの構造的および生化学的特性は、構築物が培養基中で発生するとき、それら自身を示し、そして構築物がその最終形態に近づくときに明らかに明白である。十分に形成された培養皮膚の細胞−マトリックス構築物でのこれらの成分の存在は、その構築物が、正常な真皮のものに近づく構造的および生化学的特性を示すことを示す。
【0032】
前述のリストが、培養細胞−マトリックス構築物の生化学的および構造的特性のリストであるときに、真皮の線維芽細胞から形成され、他の型の線維芽細胞から形成される培養細胞−マトリックス構築物が、これらの特性の多く、およびそれらが起源する組織型についての他の表現型を生じることが認識されるべきである。いくつかの場合において、線維芽細胞は、化学的曝露または接触、物理的ストレスのいずれかにより、またはトランスジェニック手段により非表現型成分を発現するように誘導されうる。
【0033】
本発明の別の好ましい実施態様は、その上に置かれた細胞の第二層を有する細胞−マトリックス層である。細胞の第二層を、細胞−マトリックス層で培養して、生物工学的に処理された二層の組織構築物を形成する。さらに好ましい実施態様では、第二層の細胞は、上皮起源のものである。最も好ましい実施態様では、第二層は、第一の細胞−マトリックス層と一緒に、皮膚層を形成する皮膚の線維芽細胞および内因性マトリックスから形成された細胞−マトリックス構築物が、生きた皮膚構築物を包含する培養ヒト・ケラチノサイトを包含する。十分に形成されたときに、表皮層は、基質層、超基質層、顆粒層および角質層を示すケラチノサイトの多層化となり、層にされ、そして十分に分化された層となる。皮膚構築物は、透過型電子顕微鏡(TEM)から明らかなように、皮膚−表皮接合部に存在する十分に発達した基底膜を有する。基底膜は、TEMによって可視化されるときにIII型コラーゲンから構成される原線維に足場をつけることにより印される、ヘミデスモソームの周囲で最も厚くみえる。固着用原線維は、基底膜から出ること、および皮膚層中のコラーゲン原線維を捕捉することがわかる。他の基底膜成分と同様に、これらの固着用原線維は、ケラチノサイトによって分泌されることも知られている。ケラチノサイトは、それら自身での基底膜成分を分泌する能力がある場合、認識可能な基底膜は、線維芽細胞の不在下で形成しないことも知られている。本発明の皮膚構築物の免疫組織化学的染色は、基底膜タンパク質であるラミニンが存在することも示した。
【0034】
細胞−マトリックス構築物を形成するための本発明の好ましい方法では、第一の細胞タイプである、細胞外マトリックス産生細胞タイプを、基質に播き、培養および誘導して、それらの周囲に組織化細胞外マトリックスを合成および分泌して、細胞−マトリックス構築物を形成する。本発明の別の好ましい方法では、細胞−マトリックス構築物の表面に、第二の細胞タイプの細胞を播き、培養して、二層の組織構築物を形成する。より好ましい方法では、元来のヒト皮膚に類似の特性を示す十分な厚みの皮膚構築物が、ケラチノサイトのようなヒト上皮細胞が、播種され、そして、十分に分化した層化表皮層を形成するのに十分な条件下で培養される真皮層である、真皮細胞およびマトリックスの細胞−マトリックスを形成するマトリックス合成を誘導するのに十分な条件下で、ヒト皮膚の線維芽細胞のような線維芽細胞を培養することによって形成される。
【0035】
したがって、本発明の組織構築物を得る1つの方法は、以下のステップを含む。
(a)外因性細胞外マトリックス成分または構造的支持体部材の不在下で、少なくとも1つの細胞外マトリックス産生細胞タイプを培養すること;および
(b)ステップ(a)の細胞を刺激して、細胞外マトリックス成分を合成、分泌および組織化させ、それらの細胞により合成される細胞およびマトリックスから構成される組織構築物を形成し、ステップ(a)および(b)が、同時にまたは連続して行われる。
【0036】
細胞−マトリックス構築物およびその上の第二の層を含む二層組織構築物を形成するために、さらに、方法は、(c)形成された組織−構築物の表面で第二の型の細胞を培養して、二層組織構築物を産生するステップを包含する。
【0037】
本発明に使用するための細胞外マトリックス産生細胞タイプは、細胞外マトリックス成分を産生および分泌し、そして細胞外マトリックス成分を組織化して、細胞−マトリックス構築物を形成する能力のある任意の細胞タイプでありうる。1以上の細胞外マトリックス産生細胞タイプを、培養して、細胞−マトリックス構築物を形成しうる。異なる細胞タイプまたは組織起源の細胞を、混合物として一緒に培養して、生来の組織で見られるものと類似の相補的成分および構造を生じうる。例えば、細胞外マトリックス産生細胞タイプは、それと混合した他の細胞タイプを有して、第一の細胞タイプによって正常に産生されない多量の細胞外マトリックスを産生しうる。別法として、細胞外マトリックス産生細胞タイプは、本発明の特定の皮膚構築物でのようなマトリックス態様の細胞−マトリックス構築物の全般的形成に実質的に寄与することなしに、組織中に特殊化された組織構造を形成する他の細胞タイプと混合することもできる。
【0038】
任意の細胞外マトリックス産生細胞タイプが、本発明によって使用されうる場合、本発明に使用するための好ましい細胞タイプは、間葉から由来する。さらに好ましい細胞タイプは、線維芽細胞、間質細胞、および他の支持結合接触性組織細胞であり、最も好ましくは、ヒトの真皮構築物の産生のためにヒト真皮で見られるヒト真皮の線維芽細胞である。線維芽細胞は、一般に、主にコラーゲンである、多量の細胞外マトリックスタンパク質を産生する。線維芽細胞によって産生される数種の型のコラーゲンがあるが、しかし、I型コラーゲンは、in
vivoで最も有効である。ヒト線維芽細胞株は、制限されないが、新生男児包皮、真皮、腱、肺、臍帯、軟骨、尿道、角膜基質、口腔粘膜、および腸を含めた多数の起源から誘導することができる。ヒト細胞としては、線維芽細胞に限定されず、平滑筋細胞、軟骨細胞、および間葉起源の他の結合組織細胞が挙げられる。組織構築物の産生に使用されるマトリックス産生細胞の起源が、本発明の培養法を使用した後に類似または模倣すべき組織タイプに由来する必要はないが、そうであることが好ましい。例えば、皮膚構築物が産生される実施態様では、好ましいマトリックス産生細胞は、線維芽細胞、好ましくは真皮起源のものである。
【0039】
別の好ましい実施態様では、毛包の皮膚乳頭からの顕微解剖によって単離される線維芽細胞は、マトリックス単独、または他の線維芽細胞に結合して産生するように使用することができる。角膜構築物が産生される実施態様では、マトリックス産生細胞は、角膜間質に由来する。細胞供与体は、発達および年齢で変化しうる。細胞は、胚、新生児、または成人を含めた、より年齢の高い個体の供与組織に由来しうる。間葉幹細胞のような胚性先祖細胞を本発明に使用して、所望の組織に発達するまで分化を誘導してもよい。
【0040】
ヒト細胞が、本発明に使用するのに好ましいが、その方法に使用されるべき細胞は、ヒト起源の細胞に限定されない。他の哺乳動物種から得られる細胞を用いてもよく、その例としては、限定されないが、ウマ、イヌ、ブタ、ウシ、およびヒツジ起源が挙げられる;またはマウスまたはラットのようなげっ歯類種を使用してもよい。さらに、自発的に、化学的に、またはウイルスで形質移入または組換え細胞または遺伝子操作した細胞である細胞も、本発明に使用されうる。1つ以上の細胞タイプを組込む実施態様については、2つまたはそれ以上の起源から得られる正常な細胞のキメラ混合物;正常かつ遺伝的に修飾した、または形質移入した細胞の混合物;または2つまたはそれ以上の種または組織起源の細胞の混合物が使用されうる。
【0041】
組換えまたは遺伝子操作された細胞は、自然の細胞産物または治療薬を用いた治療法のレベルを増大させる必要のある患者についての薬物送達用の移殖片として作用する組織構築物を作製する細胞−マトリックス構築物の産生に使用しうる。細胞は、連続時間量、または患者に存在する症状により生物学的、化学的、または熱的に信号発生されるときに必要とされる場合、移殖片組換え細胞産物、成長因子、ホルモン、ペプチドまたはタンパク質を介して患者に生成および送達しうる。長期または短期のいずれかの遺伝子産物発現は、培養組織構築物の使用説明に基づくことが望ましい。長期発現は、培養組織構築物が、期間を延長して、患者に治療用製品を植え付けて送達するときに望ましい。
【0042】
逆に、短期発現は、培養組織構築物が、培養組織構築物の細胞が正常なまたは正常に近い治癒を促進するか、または創傷部位の乱切りを減少させることにある創傷を示す患者に移植される例で望ましい。いったん創傷が治癒すれば、培養組織構築物から得られる遺伝子産物は、もはや必要とされないか、その部位ではもはや望ましくない。細胞は、遺伝子処理されてタンパク質を発現してもよく、または、「正常」だが高いレベルで異なるタイプの細胞外マトリックスを発現してもよく、または、そして改善された創傷治癒にとって治療的に有利である生きた細胞を含ませた移殖片デバイスを、新生血管形成を促進または指示するか、または瘢痕またはケロイド形成を最小限にさせるある種の方法で修飾してもよい。これらの手段は、一般に、当業界で知られ、そしてSambrookら、分子クローニング、実験室マニュアル、コールド・スプリング・ハーバー・プレス、コールド・スプリング・ハーバー、ニューヨーク(1989年)に記述され、参照してここに組込まれる。上述型の細胞の全ては、本発明に使用される場合、「マトリックス産生細胞」の定義の範囲内に含まれる。
【0043】
線維芽細胞により産生される優勢な主要な細胞外マトリックス成分は、原線維コラーゲン、特にコラーゲンI型である。原線維コラーゲンは、細胞−マトリックス構築物での主要な成分である;しかし、本発明は、このタンパク質またはタンパク質型のみから構成されるマトリックスに限定されない。例えば、他のコラーゲン、すなわち、コラーゲン型II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、XIV、XV、XVI、XVII、XVIII、XIXのようなコラーゲンファミリーから得られる原線維性および非原線維性コラーゲンの両方は、適切な細胞タイプの使用によって産生されうる。同様に、本方法を用いて産生および配置することができる他のマトリックスタンパク質としては、限定されないが、エラスチン;デコリンまたはビグリカンのようなプロテオグリカン;またはテナスシンのような糖タンパク質;ビトロネクチン;フィブロネクチン;ラミニン、スロボスポリンI、およびヒアルロン酸(HA)のようなグリコサアミノグリカン(GAG)が挙げられる。
【0044】
マトリックス産生細胞は、三次元組織様構造の形成に対処する培養皿、フラスコ、または回転ボトルのような動物細胞または組織培養物に好適な容器中で培養される。細胞が育成されうる適切な細胞成長表面は、細胞が、付着でき、そして細胞−マトリックス構築物を形成するための固着用手段を提供できる、任意の生物学的に適合性のある材料でありうる。ガラス;ステンレススチール;ポリカルボネート、ポリスチレン、塩化ポリビニル、ポリビニリデン、ポリジメチルシロキサン、フルオロポリマー、およびフッ化エチレンプロピレンを含めた重合体;および融合シリカ、ポリシリコン、またはシリコン結晶を含めたシリコン基質のような材料が、細胞成長表面として使用しうる。細胞成長表面材料は、化学的に処理されるか、または修飾されるか、静電気的に負荷されるか、またはポリリシンまたはペプチドのような生物学的製品で被覆されうる。ペプチド被覆の例は、RGDペプチドである。
【0045】
本発明の組織構築物が、固形細胞成長表面で育成されうる場合、発達組織構築物への培地の二層接触を可能にするか、または培養のみからの接触に対処する膜の頂部および底部表面の両方を連通する孔を有する細胞成長表面が好ましい。二層接触は、培地に、培地中に含まれる栄養に曝露する最大限の表面領域についての発達中の構築物の頂部および基質の両方を接触させる。培地は、形成培養組織構築物の底部のみとも接触し、頂部表面は、培養皮膚構築物が発達するにつれて、空気にさらされることになる。
【0046】
好ましい培養容器は、担体挿入物、培地を含む培養容器中で懸濁される多孔性膜のような培養処理透過部材を利用するものである。典型的には、膜は、蓋で覆われることができるペトリ皿または培養皿のような基質内に挿入され、そして干渉する環状部材またはフレームワークの一方の末端に確保される。多孔性膜を有する担体挿入物を組み込む培養容器は、当業界で知られており、本発明を行うのに好ましく、この分野の多くの米国特許、例えば、第5,766,937号、第5,466,602号、第5,366,893号、第5,358,871号、第5,215,920号、第5,026,649号、第4,871,674号、第4,608,342号に記載されている。そしてそのいくつかは、市販で入手可能である。それらの開示を引用によって本明細書に援用する。これらの型の培養容器が使用される場合、組織構築物は、膜の一方の表面で産生され、好ましくは上方に向かう表面である頂部で産生されることが好ましい。そして培養物は、頂部および基質表面の両方で細胞培地と接触される。
【0047】
成長表面での孔は、膜を通した望ましくない培養物に栄養を供給するための培養培地の継代に対処し、したがって、細胞が、二層にまたは、基質側から唯一供給させる。好ましい孔サイズは、膜を通した細胞の成長に対処しないだけ十分に小さく、さらに、毛管作用によるように、細胞−マトリックス構築物の基質表面まで培養培地で含有される栄養の自由な通路に対処するのみ十分大きなものである。
【0048】
好ましい孔サイズは、約3ミクロン未満であるが、約0.1ミクロンから約3ミクロンの間、さらに好ましくは約0.2ミクロンから約1ミクロンまでの間、そして最も好ましくは約0.4ミクロンから約0.6ミクロンサイズの孔が使用される。ヒト皮膚の線維芽細胞の場合には、最も好ましい材料は、孔サイズが約0.4から約0.6ミクロンの間であることを示すポリカーボネートである。最大限の孔サイズは、細胞のサイズのみならず、その形状を変化し、そして膜を通過する細胞の能力にも依存する。組織様構築物が、表面に付着するが、基質を組み込んだり、または包んだりせず、それにより、最小限の力で剥ぎ取ることによるように、それから脱着可能であることが重要である。
【0049】
形成された組織構築物のサイズおよび形状は、それが成長する容器表面または膜のサイズによって検出される。基質は、丸であるか、角ばっているか、または丸いコーナー角を有する形状、または不規則な形状でありうる。基質は、平坦であるか、または創傷と接触する、生来の組織の物理的構造を模倣する形状構築物を産生する型として輪郭を描くこともできる。成長基質の表面積の大部分を占めるように、比較的に多い細胞を、表面に播き、そして多量の培地が、細胞を十分に包みそして栄養分を与えることが必要とされる。組織構築物が、最終的に形成される場合、単独層細胞−マトリックス構築物または二層構築物であろうとなかろうと、患者に移植する前に膜基質から剥ぎ取ることによって除去される。
【0050】
本発明の培養組織構築物は、組織構築物の形成のための、メッシュ部材のような合成または生体吸収性部材に依存しない。メッシュ部材は、織物、編物またはフェルト材料として組織化される。メッシュ部材が使用されるシステムでは、細胞は、メッシュ部材上で培養され、そしてメッシュの間隙の側面および範囲内で成長して、培養組織構築物内にメッシュを包み、そして組込む。このようなメッシュを組込む方法によって形成される最終構築物は、物理的支持体として、そして嵩を得るため、メッシュに依存している。合成メッシュ部材に依存する培養組織構築物の例としては、Naughtonらに対する米国特許番号第5,580,781号、第5,443,950号、第5,266,480号、第5,032,508号、第4,963,489号に記載がある。
【0051】
細胞−マトリックス層の産生のためのシステムは、静電気的であるか、または培養培地への灌流手段を使用しうる。静電気的システムでは、培養培地は、培地が運動中である灌流システムと対照的になお、そして比較的運動性がない。培地の灌流は、細胞の生存性に影響し、そしてマトリックス層の発達を増大する。灌流手段としては、限定されないが、培地を攪拌するために、培養膜を含む基質担体のすぐ下(下に)に、または隣接する培養皿中に磁性攪拌棒または動力付き圧縮器を使用すること;培養皿またはチャンバー内に、またはを通して培地を引き抜くこと;振蘯または回転プラットホーム上で培養皿を温和に曝気すること;またはローラーボトル中で作製する場合、回転させることが挙げられる。他の灌流手段は、本発明の方法に使用するために当業者によって決定されうる。
【0052】
本発明に使用するのに適する培養培地形成は、培養されるべき細胞タイプおよび産生されるべき組織構造に基づいて選択される。使用される培養培地、および細胞成長を促進するのに必要とされる特定培養条件、マトリックス合成、および生存性は、育成される細胞のタイプによる。
【0053】
本発明の生物工学的二層皮膚構築物の作製のようなある種の例では、培地組成は、様々な補足が様々な目的のための必要である場合、作製の各段階で変化する。好ましい方法では、細胞−マトリックス層は、定義された条件下で形成される、すなわち、化学的に定義された培地で培養される。別の好ましい方法では、組織構築物は、両方の細胞タイプが、定義された培養培地で培養され、そこに配置され、培養された細胞の第二の層を備えた細胞−マトリックス層を包含する。代替的に、組織構築物は、定義された培地条件下で作製された細胞−マトリックス層、および未定義の培地条件下でそこに形成される第二の層を包含する。逆に、組織構築物は、未定義の培地条件下で作製されうる細胞−マトリックス層、および定義された培地条件下でその上に形成される第二の層を包含する。
【0054】
化学的に定義された培養培地の使用が好ましく、すなわち、未定義の動物臓器を含まない培地または、組織抽出物例えば、血清、下垂体抽出物、視床下部抽出物、胎盤抽出物、または胚抽出物、および供給細胞によって分泌されるタンパク質および因子である。最も好ましい実施態様において、培地は、未定義の成分および非ヒト起源から由来する定義された生物学的成分を含まない。未定義の成分の添加は、好ましくないが、それらは、組織構築物を首尾よく作製するために、培養基中で任意の時点で開示の方法によって使用してもよい。本発明は、非ヒト動物源に由来する化学的に定義した成分を用いてスクリーニングしたヒト細胞を利用することを行うときに、結果物である組織構築物は、定義されたヒト組織構築物である。合成機能的当量を添加して、最も好ましい作製方法において使用するために化学的に定義された定義の全範囲内の化学的に定義された培地を補足しうる。一般に、細胞培養の当業者は、適切な自然のヒト、ヒト組換え体、または過度の調査または実験なしに、本発明の培養培地を補足する一般に公知の動物成分に対する合成等価物を決定できる。診療所でこのような構築物を使用する上での利点は、偶発的動物または交雑種ウイルス混入および感染の関係が減少することである。試験のシナリオで、化学的に定義された構築物の利点は、試験されるときに、未定義の成分の存在により、混乱されるべき結果の機会がないことである。
【0055】
培養培地は、通常さらに、他の成分で補足された栄養塩基から構成される。習熟者は、本発明の組織構築物を首尾よく産生することについて理にかなった見込みを動物細胞培養の分野で適切な栄養塩基を決定できる。多くの市販で入手可能な栄養源は、本発明の実施の上で有用である。これらとしては、ダルベッコ改良イーグル培地(DMEM);最小必須培地(MEM);M199;RPMI1640;イスコフのダルベッコ改良培地(EDMEM)のような無機塩、エネルギー源、アミノ酸、およびB−ビタミンを供給する市販で入手可能な栄養源が挙げられる。最小必須培地(MEM)およびM199は、リン脂質前駆体および非必須アミノ酸での追加の補足を必要とする。追加のアミノ酸、核酸、酵素コファクター、リン脂質前駆体、および無機塩を供給する市販で入手可能なビタミン富化混合物としては、ハムのF−12、ハムのF−10、NCTC109、およびNCTC135が挙げられる。濃度を変化させても、全ての基本培地は、他の基本培地成分と一緒に、グルコース、アミノ酸、ビタミンおよび無機イオンの境内で細胞についての基礎的栄養源を提供する。本発明の最も好ましい基本培地は、カルシウム不含または低カルシウムのダルベッコ改良イーグル培地(DMEM)のいずれかの栄養塩基、または代替的に、それぞれ3対1の比から1対3の比までの間のDMEMおよびハムのF−12を包含する。
【0056】
基本培地は、アミノ酸、成長因子およびホルモンのような成分で補足される。本発明の細胞の培養のための定義培養培地は、Parenteauに対する米国特許番号第5,712,163号、および国際PCT公報番号WO95/31473号に記述され、それらの開示を本明細書に引用によって援用する。他の培地は、HamおよびMcKeehan、Methods
in Enzymology、58巻:44−93頁(1979年)で開示されるもののように当業界で公知であるか、または他の適切な化学的に定義された培地については、Bottensteinらで、Methods
in Enzymology、58巻:94−109頁(1979年)に開示される。好ましい具体例では、基本培地は、動物細胞培養で習熟者に知られている以下の成分で補足される。インシュリン、トランスフェリン、トリヨードチロニン(T3)、および補足についての濃度および置換が、当業者によって決定されうる、いずれかまたは両方のエタノールアミンおよびo−ホスホリル−エタノールアミン。
【0057】
インシュリンは、多重継代より長期間利点を供するグルコースおよびアミノ酸の摂取を促進するポリペプチドホルモンである。インシュリンまたはインシュリン様成長因子(IGF)の補足は、グルコースおよびアミノ酸を取込む細胞の能力の最終的枯渇、および細胞表現型の可能性のある分解がある場合に長期培養に必要である。インシュリンは、動物、例えばウシ、ヒト源または、ヒト組換えインシュリンのような組換え手段によって誘導されうる。したがって、ヒト・インシュリンは、非ヒト生物学的源から由来しない化学的に定義された成分の資格がある。インシュリン補足は、一連の培養に適切であり、そして広範な濃度で培地に供給される。好ましい濃度範囲は、約0.1μg/mlから約500μg/mlまでの間、さらに好ましくは約5μg/mlから約400μg/ml、そして最も好ましくは約375μg/mlである。IGF−1またはIGF−2のようなインシュリン様成長因子の補足のための濃度は、培養のために選択された細胞について当業者によって容易に決定されうる。
【0058】
トランスフェリンは、鉄輸送調節のための培地内にある。鉄は、血清に見られる必須の痕跡要素である。鉄は、その遊離形態で細胞に毒性でありうるので、血清中では、好ましくは約0.05から約50μg/mlの間、さらに好ましくは約5μg/mlの濃度範囲でトランスフェリンに結合した細胞に供給される。
【0059】
トリヨードチロニン(T3)は、基本的成分であり、そして細胞代謝の速度を維持する培地中に含まれるチロイドホルモンの活性形態である。トリヨードチロニンは、約0から約400pMの間の、さらに好ましくは約2から約200pMの間の濃度範囲で、そして最も好ましくは約20pMで培地に補足される。
【0060】
リン脂質であるエタノールアミンおよびo−ホスホリル−エタノールアミンのいずれかまたは両方を、その機能が、イノシトール経路および脂肪酸代謝での重要な前駆体であるものに添加する。血清に正常に見られる脂質の補足は、無血清培地で必要である。エタノールアミンおよびo−ホスホリル−エタノールアミンは、約10−6から約10−2Mまでの間の濃度範囲で、さらに好ましくは約1×10−4Mで培地に供される。
【0061】
培養期間中に、基本培地に、合成または分化を誘導するか、またはヒドロコルチゾン、セレニウムおよびL−グルタミンのような細胞成長を改善する他の成分をさらに補足される。
【0062】
ヒドロコルチゾンは、ケラチノサイト表現型を促進する、したがって、被膜およびケラチノサイトトランスグルタミナーゼ含有量のような分化した特徴を増強するケラチノサイト培養で見られた(Rubinら、J.Cell
Physiol.、138巻:208−214頁(1986年))。したがって、ヒドロコルチゾンは、ケラチノサイトシート状移殖片または皮膚構築物の形成でのようなこれらの特徴が、有益である例で、望ましい添加剤である。ヒドロコルチゾンは、約0.01μg/mlから約4.0μg/mlの濃度範囲で、最も好ましくは約0.4μg/mlから16μg/mlの間で提供されうる。
【0063】
セレニウムを、無血清培地に添加して、血清によって正常に供給されるセレニウムの痕跡要素を再補足する。セレニウムは、約10−9から約10−7Mまでの濃度範囲で、最も好ましくは約5.3×10−8Mで培地に供されうる。
【0064】
アミノ酸L−グルタミンは、ある種の栄養基本に存在し、そして存在しないか、または不十分な量存在する場合に添加されうる。L−グルタミンは、グルタMAX−I(登録商標)(ジブコ・ビーアールエル、ニューヨーク州グランドアイランド)として販売されるもののような安定な形態で供給もされる。グルタMAX−I(登録商標)は、L−アラニル−L−グルタミンの安定なジペプチド形態であり、そしてL−グルタミンと相互交換的に使用でき、そしてL−グルタミンに対する置換基として当モル濃度で供給される。ジペプチドは、保存での時間を超えて、そして培地中のL−グルタミンの有効な濃度での不確かさに至りうるインキュベーション期間中、分解からのL−グルタミンに対する安定性を提供する。典型的には、基本培地に、好ましくは約1mMから約6mMの間、さらに好ましくは約2mMから約5mMまでの間、そして最も好ましくは4mMのL−グルタミンまたはグルタMAX−I(登録商標)を補足する。
【0065】
表皮成長因子(EGF)のような成長因子は、細胞規模拡大および播種を通して培養物の確立の助けになる培地にも添加されうる。生来の形態でのEGFまたは組換え形態が使用されうる。ヒト形態、生来の、または組換え体のEGFは、非ヒト生物学的成分を含まない皮膚等価物を作成するときに、培地で使用することが好ましい。EGFは、任意の成分であり、そして約1ng/mL乃至約15ng/mLの間、さらに好ましくは約5ng/mL乃至10ng/mLの間の濃度で供される。
【0066】
上に記述される培地は、一般に、下に規定されるとおり製造される。しかしながら、本発明の成分が、それらの物理的特性に匹敵する従来の方法論を用いて作製および組み立てられうると解釈されるべきである。入手可能性または経済性の目的で、特定の成分を、適切な類似体または機能的に等価な作用剤に置換し、そして類似の結果を達することが当業者によく知られている。自然に発生する成長因子は、本発明の作業に使用される場合に、類似の質および結果を示す組換えまたは合成成長因子に置換されうる。
【0067】
本発明による培地は、無菌である。無菌成分は、無菌のものを購入するか、または製造後の濾過のような従来の手段によって無菌にする。適切な防腐手段は、以下の実施例を通して使用された。DMEMおよびF−12を、最初に合わせ、そしてその後、個々の成分を添加して培地を完成させる。全ての成分の保存溶液は、4℃で保存されうる栄養源を除いて、−20℃で保存できる。全ての保存溶液は、上に列記される500×最終濃度で作製される。インシュリン、トランスフェリンおよびトリヨードチロニン(全てシグマから入手した)の保存溶液は、以下のとおり作製される:トリホードチロニンは、2:1の比で1N塩酸(HCl)中の絶対エタノールに最初に溶解される。インシュリンは、希釈HCl(およそ0.1N)で溶解され、そしてトランスフェリンは、水に溶解される。その後、3つは、水で500×濃度まで混合および希釈される。エタノールアミンおよびo−ホスホリル−エタノールアミンは、水で500×濃度まで溶解され、そして濾過して無菌化する。プロゲステロンを、絶対エタノールに溶解し、そして水で希釈する。ヒドロコルチゾンを、絶対エタノールに溶解し、そしてリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で希釈する。セレニウムを、水で500×濃度まで溶解し、そして濾過して無菌化する。EGFは、無菌を購入し、そしてPBSに溶解させる。アデニンは、溶解するのが困難であるが、当業者に知られる任意の数の方法によって溶解されうる。血清アルブミンは、それらを溶液中で安定化するために、ある種の成分に添加でき、そして現在、ヒトまたは動物源のいずれから誘導される。例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)またはウシ血清アルブミン(BSA)を、長期保存のために、添加して、プロゲステロンおよびEGF保存溶液の活性を維持しうる。培地は、作製直後に使用するか、または4℃で保存されるかのいずれかでありうる。保存の場合、EGFは、使用時まで添加されるべきでない。
【0068】
マトリックス産生細胞の培養により細胞−マトリックス層を形成するために、培地に、細胞によるマトリックス合成および沈着を促進する追加の剤を補足する。これらの補足剤は、細胞適合性があり、高度の純度に定義され、そして混入を含まない。細胞−マトリックス層を生成するのに使用される培地は、「マトリックス産生培地」と称される。
【0069】
マトリックス産生培地を作製するために、基本培地に、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸のようなアスコルベート誘導体、またはL−アスコルビン酸ホスフェートマグネシウム塩n−ハイドレートのようなそのいっそう化学的に安定な誘導体の内の1つを補足する。アスコルベートを添加して、沈着コラーゲン分子に対する可溶性前駆体である、プロリンの水酸化およびプロコラーゲンの分泌を促進する。アスコルベートは、I型およびIII型コラーゲン合成のアップレギュレーターと同様に、他の酵素後期翻訳過程のための重要なコファクターであることも示された。
【0070】
理論に束縛されることを望むわけではないが、タンパク質合成に関与したアミノ酸を有する培地を補足することで、細胞にアミノ酸それら自身を生成させる必要のないことにより、細胞エネルギーを保存する。プロリンおよびグリシンの添加は、プロリンの水酸化形態、ヒドロキシプロリンと同様に、それらが、コラーゲンの構造を作る基本的アミノ酸である場合好ましい。
【0071】
必要とされない場合、マトリックス産生培地に、都合により、中性高分子を補足する。本発明の細胞−マトリックス構築物は、中性高分子なしに生成され得るが、しかし、理論に束縛されることを望むわけではないが、マトリックス産生培地でのその存在は、コラーゲン過程およびサンプルの間にいっそう一定な沈着でありうる。1つの好ましい中性高分子は、マトリックス沈着コラーゲンに対して、培養細胞により産生される可溶性先駆体プロコラーゲンの生体外での過程を促進することが示されたポリエチレングリコール(PEG)である。約1000から約4000MW(分子量)の間、さらに好ましくは約3400から約3700MWの間の範囲内の組織培養グレードのPEGは、本発明の培地に好ましい。好ましいPEG濃度は、約5%w/vまたは未満の濃度で、好ましくは約0.01%w/vから約0.5%w/vまで、さらに好ましくは約0.025%w/vから約0.2%w/vまでの間、最も好ましくは約0.05%w/vでありうる方法で使用するためのものである。デキストランのような、好ましくはデキストランT−40、またはポリビニルピロリドン(PVP)、好ましくは30,000−40,000MWの範囲内の他の培養グレードの中性高分子も、約5%w/vまたは未満の濃度で、好ましくは約0.01%w/vから約0.5%w/vまで、さらに好ましくは約0.025%w/vから約0.2%w/vまでの間、最も好ましくは約0.05%w/vで使用することもできる。他の細胞培養グレードおよびコラーゲン過程および沈着を増強する細胞適合性剤は、哺乳動物細胞培養の技術の当業者によって確定されうる。
【0072】
細胞産生細胞が、融合され、そして培養培地に、マトリックス合成、分泌、または組織化で支援する成分を補足する場合、細胞は、それらの細胞によって合成された細胞およびマトリックスから構成される組織構築物を形成するのを刺激すると言われている。
【0073】
したがって、好ましいマトリックス産生培地処方としては、ダルベッコ改良イーグル培地(DMEM)(高グルコース処方、L−グルタミンなし)および4mMのL−グルタミンまたは等価物、5ng/ml上皮成長因子、0.4μg/mlヒドロコルチゾン、1×10−4Mのo−ホスホリル−エタノールアミン、5μg/mlインシュリン、5μg/mlトランスレリン、20pMトリヨードチロニン、6.78ng/mlセレニウム、50ng/mlのL−アスコルビン酸、0.2μg/mlのL−プロリン、および0.1μg/グリシンで補足されたハムF−12培地の基本的3:1混合物を包含する。産生培地のために、他の薬理学的剤を、培養物に添加して、分泌される細胞外マトリックスの特性、量、または型を変化させることができる。これらの剤としては、ポリペプチド成長因子、転写因子、またはコラーゲン転写をアップレギュレートする無機塩が挙げられる。ポリペプチド成長因子の例としては、形質転換成長因子β1(TGF−β1)および組織−プラスミノーゲンアクチベーター(TPA)が挙げられ、その両方は、コラーゲン合成をアップレギュレートすることが知られている。Raghowら、Journal
of Clinical
Investigation、79巻:1285−1288頁(1987年);Pardesら、Journal
of Investigative
Dermatology、100巻:549頁(1993年)。コラーゲン産生を刺激する無機塩の例は、セリウムである。Shivakumarら、Journal
of Molecular
and Cellular
Cardiology、24巻:775−780頁(1992年)。
【0074】
培養は、インキュベーターで維持されて、細胞の培養について制御温度、湿度、および気体混合物の十分な環境条件を確保する。好ましい条件は、約5−10±1%CO2の間の雰囲気および約80−90%の間の相対湿度(Rh)で、約34℃から約38℃までの間、さらに好ましくは37±1℃である。
【0075】
好ましい実施態様では、細胞−マトリックス構築物は、皮膚線維芽細胞およびそれらの分泌マトリックスから形成される皮膚構築物である。好ましくは、ヒト皮膚線維芽細胞が使用され、真皮から得られるか、またはいっそう好ましくは樹立細胞保存液またはウイルスおよび細菌混入に対してスクリーニングされ、そして純度について試験されたバンクから連続して継代されるか、または二次培養されるものから得られる一次細胞として誘導される。細胞を、育成培地中で十分な条件下で培養して、それらを、細胞−マトリックス構築物を形成する細胞を培養基質に播くのに適切な数まで増殖させる。別法としては、凍結細胞保存液から得られる細胞を、培養基質に直接播いてもよい。
【0076】
いったん十分な細胞数が得られたら、細胞を回収し、適切な培養表面に播き、そして適切な成長条件下で培養して、細胞の融合シートを形成する。好ましい具体例では、細胞を、孔を通して、そして上に直接培養物の下から培地を接触させるために隠されている多孔性膜に播く。好ましくは、細胞を、基本または育成培地のいずれかに懸濁させ、そして細胞培養表面に、約1×105細胞/cm5から約6.6×105細胞/cm2までの間、さらに好ましくは約3×105細胞/cm2から約6.6×105細胞/cm2までの間、そして最も好ましくは約6.6×105細胞/cm2(表面の平方センチメートル当たりの細胞)の密度で播く。培養物を、育成培地で培養して、培養物を樹立し、そしてそれらが、培地を、細胞外マトリックスの合成および分泌を上昇調節するために、マトリックス産生培地に交換することによって、化学的に誘導される時に、約80%から100%のコンフルエントの状態に培養する。選択的方法では、細胞を産生培地に直接播いて、基本培地から産生培地に交換する必要性がなくなるが、それは、高い播種密度を必要とする方法である。
【0077】
培養の間じゅう、線維芽細胞は、分泌されたマトリックス分子を組織化して、三次元組織様構造を形成するが、形成する細胞−マトリックス構築物に、培養基質からそれ自身を接触および剥ぎ取りさせる明らかな収縮力を示さない。培地交換は、新たなマトリックス産生培地で2〜3日毎に行われ、やがて、分泌マトリックスは、厚みおよび組織化において増大する。細胞−マトリックス構築物を作製するのに必要な時間は、当初の播種濃度の能力、細胞タイプ、セルラインの年齢、およびマトリックスを合成および分泌するセルラインの能力に依存する。十分に形成された場合、本発明の構築物は、細胞によって産生および組織化される線維性マトリックスにより塊状厚みを示す;それらは、細胞が、互いにゆるく粘着性でありうる場合、通常にコンフルエントであったり、または過度にコンフルエントである細胞培養であったりしない。線維性品質は、それらが、医療設定での日常の取扱いで亀裂またはクラッキングのような物理的損傷に抵抗するので、通常の培養と違って、構築物に粘着性組織様特性を付与する。培養皮膚構築物の作製で、細胞は、細胞培養表面上でそれら自身の周囲に、膜の表面を越えて、好ましくは少なくとも厚み約30ミクロンまたはそれ以上、さらに好ましくは厚み約60から約120ミクロンの間の組織化マトリックスを形成する;しかし、厚みは、120ミクロンの過剰で得られ、そしてこのような厚み増大が必要とされる試験または医療用途に使用するのに適している。
【0078】
いっそう好ましい方法で、上皮細胞層を、1つの表面に、好ましくは細胞−マトリックス構築物の上向きに面する表面である頂部に塗布される。細胞−マトリックス構築物に、上皮細胞を、その上に播き、そして培養して、多層組織構築物を形成しうる。最も好ましい方法では、皮膚から由来するケラチノサイトは、その細胞構築物上で育成して、皮膚構築物を形成する。他の好ましい実施態様では、角膜ケラチノサイトとも称される角膜上皮細胞を、細胞−マトリックス構築物上に播いて、角膜構築物を形成しうる。口腔粘膜から得られる上皮細胞を、細胞−マトリックス構築物上で育成して、口腔粘膜の構築物を形成しうる。食道から得られる上皮細胞を、細胞−マトリックス構築物上に播いて、食道組織の構築物を形成しうる。尿生殖器管から得られる尿管上皮細胞を、細胞−マトリックス構築物上で育成して、尿管上皮の構築物を形成しうる。上皮由来の他の細胞を選択して、それらの細胞が由来する組織の構築物を形成しうる。
【0079】
表皮細胞を皮膚基質に供給する方法、および分化および角質化の誘導を含めたそれらを培養して、分化したケラチノサイト層を形成する方法は、当業界に知られており、そしてParenteauらに対する米国特許番号第5,712,163号に、そしてKempらに対する米国特許番号第5,536,656号に記述され、その内容は、参照してここに組込まれる。細胞−マトリックス構築物の表皮化生を行うために、ケラチノサイトを、細胞−マトリックス構築物に播き、そしてその層が、厚み約1から3個の細胞層であるまで、その上で培養する。その後、ケラチノサイトを、分化に誘導して、多層真皮を形成し、そしてその後、角質化を誘導して、角質層を形成する。
【0080】
分化表皮層を形成する方法で、二次培養ケラチノサイトを、細胞保存液から取り、そしてそれらの細胞数を拡大する。必要数の細胞が得られるときに、それらは、培養基質から放出され、懸濁され、計数され、希釈され、そしてその後、細胞−マトリックス構築物の頂部表面に、約4.5×103細胞/cm2から約5.0×105細胞/cm2までの間、さらに好ましくは約1.0×104細胞/cm2から約1.0×105細胞/cm2までの間、そして最も好ましくは約4.5×104細胞/cm2の密度で、播かれる。その後、構築物を、約60分から約90分の間、37±1℃、10%CO2でインキュベートして、ケラチノサイトを付着させる。インキュベーション後、構築物を、表皮化生培地で浸水させる。培養物での十分な長い時間の後、ケラチノサイト増殖し、そして拡大して、細胞−マトリックス構築物を越えてコンフルエントの単層を形成する。いったんコンフルエントとなると、細胞培地処方を、分化培地に交換して、細胞分化を誘導する。多層上皮が形成されたときに、その後、角質化培地を使用し、そして培養物に空気−液体界面にかける。ケラチノサイトの分化および角質化について、細胞を、乾燥または低湿度空気−液体界面に曝す。乾燥または低湿度界面は、皮膚の低湿度レベルを複写する試みとして特徴づけうる。やがて、ケラチノサイトは、これらの条件に曝された場合に、生来の皮膚で見られるほとんどまたは全ての角質および他の特徴を表す。
【0081】
上に記述されるとおり、細胞−マトリックス構築物の産生のためのシステムは、角膜の構築物の形成に使用しうる。角膜の上皮細胞は、様々な哺乳動物源から由来しうる。好ましい上皮細胞は、ウサギまたはヒトの角膜上皮細胞(角膜のケラチノサイト)であるが、しかし任意の哺乳動物角膜ケラチノサイトが使用されうる。眼の強膜または上皮から由来するもののような他の上皮ケラリノサイトは、置換されうるが、しかし角膜のケラチノサイトが好ましい。角膜の構築物を形成する方法では、バイオセンサー位置を、培養挿入物(細胞−マトリックス構築物を含む)およびその周囲から除去した。正常なウサギの角膜の上皮細胞を、継代培養を介して拡張され、トリプシン分解して、それらを培養基質から除去し、培養培地に懸濁し、そして約7.2×104細胞/cm2から約1.4×105細胞/cm2までの間の密度で、膜の頂部に播種する。その後、構築物を、37±1℃で、約4時間、10%CO2で、培地なしにインキュベートして、上皮細胞を付着させる。インキュベーション後、構築物を、角膜の維持培地(CMM)(Johnsonら、1992年)に継代培養する。細胞−マトリックス構築物が、上皮細胞で覆われるまで、上皮細胞を培養する。上皮被覆の完全性は、硫酸ニルブルーの溶液(リン酸緩衝生理食塩水中で1:10,000)で培養物を染色することによる例示として、多様な方法によって確証される。およそ7日後、いったん細胞−マトリックス構築物が覆われると、構築物を、無菌で、ちょうど構築物の表面までの液体レベルに達するのに十分な角膜維持培地(CMM)を有する新たな培養トレイに移し、上皮層の浸水なしに湿潤界面を維持する。構築物を、37±1℃、0%CO2で、60%湿度より大きくて、CMMを用いて、必要な場合、典型的には週当たり3回、培地交換しながら、インキュベートする。
【0082】
角膜構築物の産生に必要な場合、上皮細胞層の角質化なしに分化については、上皮細胞表面を、湿潤な空気−液体界面に曝す。湿潤な空気−液体界面を提供する方法は、Parenteauに対する米国特許番号第5,374,515号に記述されている。ここで使用される場合、用語「湿潤な界面」は、調節され、その結果構築物の表面が、高湿度であって、乾燥または浸水でない湿潤である培養環境を意味することが意図される。培養環境での湿気および湿度の正確なレベルは、重要でないが、角質化細胞の形成を避けるのに十分に湿潤でそして湿度であるべきである。湿潤な界面は、ヒトの眼の類似の湿気レベルを複写する試みとして特徴づけることができる。
【0083】
代替の好ましい実施態様では、第二のマトリックス産生細胞の播種が、第一の形成細胞−マトリックス構築物で行われて、厚みのある細胞−マトリックス構築物または二層細胞−マトリックス構築物を得ることができる。第二の播種は、望ましい結果によって、同じ細胞タイプまたは染色で、または異なる細胞タイプまたは染色で行われる。第一層の産生に使用された手段およびマトリックス産生培地を用いて、同じ条件下で、第二の播種を行う。異なる細胞タイプで第二の種付けを行う上での1つの結果は、構築物が、患者に移植されるときに、創傷治癒に影響を及ぼす異なるマトリックス成分プロファイルまたはマトリックスパッケージング密度で形成されるマトリックスを有することである。第一の細胞播種は、真皮の網状層、いっそう周密に包装されたI型コラーゲンの層、および構成成分の細胞外マトリックス成分に類似のマトリックスを生じる。第二の細胞種付けは、ゆるいコラーゲン原線維および細胞外マトリックスによって特徴づけられる真皮の平行層に類似のマトリックスを生じる。第二の細胞タイプでの別の結果は、改善された試験片摂取または試験片介入または瘢痕形成の最小化または防止のような創傷治癒に影響する治療用物質生じうる。
【0084】
別の好ましい実施態様では、使用される少なくとも1つの細胞タイプが、細胞外マトリックスを合成する能力がある場合、2つまたはそれ以上の細胞タイプの混合細胞集団は、細胞−マトリックス構築物の形成の間じゅう一緒に培養されうる。第二の細胞タイプは、他の組織機能を行うか、または組織構築物の特定の構造的特性を発生するのに必要とされるものでありうる。例えば、皮膚構築物の産生では、付属器から得られる皮膚の乳頭細胞または上皮細胞を、マトリックス産生細胞で培養して、上皮付属器またはそれらの成分の形成を可能にしうる。汗腺または皮脂腺構造または成分または毛包構造または成分のような上皮付属器は、マトリックス産生細胞と一緒に培養したときに、形成しうる。上皮細胞は、腺の付属器構造から由来でき、そして毛髪は、顕微解剖によるように、深部真皮に配置され、そして外分泌細胞、筋上皮細胞、腺の分泌細胞、毛包幹細胞が挙げられる。メラノサイト、ランゲルハンス細胞、およびメルケル細胞のような皮膚を構築する皮膚で見られる他の細胞タイプも、加えられうる。同様に、血管内皮細胞を、同時培養して、新たな脈管構造形成についての痕跡成分を生じうる。脂肪細胞を、マトリックス産生細胞と培養して、再構築手術のために使用される構築物を形成しうる。この第二の細胞タイプの送達の代替的態様として、細胞を、これらの構造の局在発生について、形成または完全に形成された細胞−組織マトリックス上で、または内にスポットとして、または細胞の任意の数のスポットの配列として局所に播種しうる。細胞−マトリックス構築物内に細胞を播くために、細胞−マトリックス内に、成長する細胞のために、細胞を、頂部と基質の表面の間に注入して、特定化構造を形成し、それらの特定機能を作用させうる。三層組織構築物を生じるために、マトリックス産生細胞タイプまたは非マトリックス産生細胞タイプを含む第一の種付けを、細胞−マトリックス構築物または細胞層を生じるのに十分な時間、培養基質に播く。いったん第一の細胞−マトリックス構築物または細胞層が形成されると、マトリックス産生細胞タイプを含む細胞の第二の播種を、第一の細胞−マトリックス構築物または細胞層の頂部表面に播き、そして第一の構築物上に第二の細胞−マトリックス構築物を形成するのに十分な条件下で、一回、培養する。第二の細胞−マトリックス構築物上で、第三の播種を、播き、そして第三の層を生じるのに十分な条件下で培養する。例として、第三の層の角膜構築物を生じるために、第一の細胞タイプの細胞は、角膜内皮細胞のような内皮起源から構成されうる;第二の細胞タイプは、角膜のケラチノサイトのような結合組織起源の細胞から構成されうる;そして第三の細胞タイプは、角膜の表皮細胞のような表皮起源の細胞を包含しうる。皮膚の三層構築物の別の例として、第一の播種の細胞は、脈管構造についての成分を供する血管起源のものであり得て、第二の播種の細胞は、皮膚構築物として役割を果す細胞−マトリックス構築物を形成する皮膚の線維芽細胞を包含でき、そして第三の播種の細胞は、表皮層を形成する表皮のケラチノサイトでありうる。
【0085】
本発明の組織構築物は、透化または低温保存法が使用される場合、低温で保存されうる。組織構築物の透化のための方法は、米国特許番号第5,518,878号に記述され、そして低温保存の方法は、米国特許番号第5,689,961号および第5,891,617号に、そして国際PCT出願WO96/24018号に記述され、それらの開示を引用によって本明細書に援用する。
【0086】
C.コラーゲン溶液と収縮性の作用物質との混合物を含む培養組織構築物
本発明の別の実施態様において、当該培養組織構築物は、コラーゲン溶液と収縮性の作用物質とからなる、ゲル混合物を含む。
【0087】
この培養組織構築物は、Bellの米国特許第4,485,096号に記載されているように、in vivoで水和したコラーゲンラティスを形成することによって作製される。この内容全体を引用によって本明細書に援用する。このラティスは、収縮性の作用物質をその中に組み込んだ培養組織構築物によって構築される。収縮性の作用物質の例としては、線維芽細胞や血小板があげられる。
【0088】
皮膚等価物は、ケラチノサイトを生結合組織基質上に植えこみ、成長させることによって、生結合組織基質から作製することができる。この皮膚等価物は、これまでに述べた人口皮膚とは異なり、独特である。なぜならその基礎的組織が皮膚のものと類似しているからである。その構成生細胞は、移植レシピエントとなる可能性のある被験者から供給されることもある。
【0089】
腺/臓器等価物または小胞等価物を、本明細書に記載の構築された水和コラーゲンラティスから作成することができる。
【0090】
本発明によって作製された培養組織構築物は、多くのタイプおよび機能を持つ生体組織、腺および臓器等価物を作製する可能性を提供することがわかる。そのような等価物は、それらを用いる必要が生じるまで在庫として保管しておいてもよい。
【0091】
そのような培養組織構築物の主な利点の1つは、当該細胞のドナー以外のホストに用いることができ、予測される深刻な拒絶反応がない培養組織構築物を作製することができる点である。生体組織の作成に用いた細胞が本発明のように伝播したとき、レシピエントの免疫系による拒絶にかかわる細胞を選択する。さらに、最近の研究方向によれば、特定の細胞は、特定の条件下で組織培養物中に保存された場合、拒絶を促進する能力を失う。
【0092】
水和コラーゲンラティスは、ラット尾の腱に由来するコラーゲンやウシ皮膚コラーゲンを用いて作製することができる。コラーゲンの他のソースとしては、ヒト胎児性皮膚が用いられていた。さらに他のソースが好適であろう。コラーゲンのソースは、弱産生条件のもとで調製および維持される。ラティスは、線維芽細胞を栄養培地およびコラーゲン原線維を溶液から析出させるのに十分なpHに高める塩基に添加することによって作製される。水和したコラーゲンラティスの析出については、下記の引用文献にさらに詳細に記載されている。その教示を引用によって本明細書に援用する:Elsdale, T. and Bard, J., "Collagen Substrata For Studies On
Cell Behavior," J. Cell Biol. 54, 626-637 (1972); Ehrmann, R. L. and Gey, G. 0., "The Growth of Cells on A
Transparent Gel of Reconstituted Rat-Tail Collagen," J. Natl. Cancer
Inst., 16, 1375-1403 (1956); Emermann, J. T. and Pitelka, D. R., "Hormonal Effects on
Intracellular and Secreted Casein in Cultures of Mouse Mammary Epithelial Cells
on Floating Collagen Membranes," In Vitro, 13, 316- 328 (1977); Michalopoulous, G. and Pitot, H. C, "Primary Culture of
Parenchymal Liver Cells on Collagen Membranes," Exp. Cell Res. 94, 70-78 (1975); Gey, G. 0. Svotelis, M., Foard, M. and Bang, F. B.,
"Long-Term Growth of Chicken Fibroblasts On A Collagen Substrate,"
Exp. Cell Res., 84, 63-71 (1974); and Hillis, W. D. and Band, F. B., "The Cultivation of Human
Embryonic Liver Cells," Exp. Cell Res., 26, 9-36 (1962)。
【0093】
本明細書に記載の実験において、収縮性の作用物質として実際に使われる線維芽細胞は、ヒト包皮線維芽細胞およびモルモット真皮線維芽細胞であった。他のソースからの線維芽細胞を使用することもできる。実際、あらゆる脊椎動物の線維芽細胞を、水和コラーゲンラティスの構築に好適に使用することができると考えられる。ラティスの作製と細胞の植え込みを同時に行う都合のよい技術は、培養皿に、線維芽細胞を含有する栄養培地とともに維持された酸性コラーゲン溶液を中和することを含む。コラーゲン原線維は中和すると溶液から析出し、線維芽細胞が全体に均等に行きわたったラティスが作製される。次いで、該細胞およびコラーゲンラティスを、細胞をコラーゲンラティスに付着させ、それを収縮させて元のサイズの分画にする条件で維持する。こうして生体組織が提供される。
【0094】
線維芽細胞細胞を水和したコラーゲンラティスへ組み込むと、捕捉した水が絞り出されるので、ラティスが収縮する。ラティスが形成された表面が非水和性、例えば、疎水性プレートであれば、得られた組織は、通常の形態をもつ。組織培養プレート上で、いくつかの細胞がラティスからプレートに移動し、該ラティスの収縮は定期的とは限らない。非水和表面、
例えば、バクテリアのペトリ皿を用いた場合、ラティスはその半径が細胞によって縮小されるので、ほぼ完全にディスク形を維持する。線維芽細胞は、ラティス表面だけでなく、コラーゲンラティス全体に均等に広がっているのがわかる。次いで、これによって、ヒトおよび他の哺乳動物の真皮層を刺激する。
【0095】
細胞の不存在下で、ラティスの半径は変化しない。例えば、1×106個のヒト包皮線維芽細胞を5日間栄養培地で成長させることによって調製した調製培地は、細胞が存在しない場合は収縮しない。
【0096】
細胞によって収縮したコラーゲンラティスは、皮膚または真皮に類似している。さらに部分的に収縮させると、適切な粘度を持ち、容易に取り扱うことができる。細胞を用いて最初に作製したとき、ラティスはほぼ透明であるが、水が除去されるにつれて徐々に不透明になり、その直径が小さくなる。ラティス領域内で20倍乃至30倍に縮んだ時、それらは硬化した粘度の、白ピンク色となり、破れたり、変形することもなくやや伸縮させることができる。
【0097】
ラティスの最初の直径を、使用する材料の量およびそれを形成するプレートから測定する。したがって、最大収縮は任意の測定値であるが、細胞数やタンパク質収縮に関連している。
【0098】
最も収縮した水和コラーゲンラティスは、シートとして形成されるが、他の形状にすることもできる。例えば、筒型を形成することもできる。収縮したラティスを、円形成型体に形成することによって、または
適切な成型によって皮膚の球形に調製してもよい。
【0099】
バイオプシー中で得たヒト皮膚ケラチノサイトを収縮した水和したコラーゲンラティス上に置く。インビトロで培養したケラチノサイトについても同様にする。ケラチノサイトの植え込みは、マトリックスゲル形成と同時、ラティス収縮のあらゆる時期、または収縮完了後のあらゆる時期に行うことができる。解離したケラチノサイト懸濁の植え込みの3日以内にラティス表面上はコンフルエントに達し、ケラチン化のプロセスが始まり、角化層の組織液の損失を防ぐ。
【0100】
線維芽細胞の他にも細胞性収縮性の作用物質が存在する。それらには平滑筋細胞、横紋筋細胞、および心筋細胞がある。
【0101】
線維芽細胞や血小板などの収縮性の作用物質によるラティス収縮によって、100%相対湿度条件下で維持したとき、コラーゲンラティスは、収縮性の作用物質を用いずに形成したコラーゲンラティスと比較して比較的高い引張力をもつ組織等価物に変換される。収縮性の作用物質を用いずに形成した場合、コラーゲンラティスは、新鮮なゼラチンと同程度の粘度を有し、処理の際、はがれおちる。血小板または細胞によって収縮したラティスは、傷つけることなく処理、伸長、および縫合することができる。
【0102】
収縮したラティス上に懸濁し得る所与の時間の間の最大重量を測定することによって引張力を調べた。一例では、5ml体積のラティスを5.3cm直径皿に形成し、3.5グラムで7分間支持した維芽細胞によって、2cm直径まで収縮した。5ml体積のラティスを5.3cm直径皿の別のラティスも、0.23cmの高さから0.09cmの高さまで、直径を変形せずに血小板によって収縮し、11グラムで10分間支持した。
【0103】
引張力および他の特性は、使用したコラーゲンおよび収縮性の作用物質および他の添加物の種類や量を含めた多くのパラメーターの関数であることがわかる。本明細書に記載の機能では、例えば、I型コラーゲンを採用した。しかしながら、III型コラーゲンが皮膚や血管にさらなる引張力を付与することが知られており、本明細書に記載のコラーゲンラティス中にIII型コラーゲンを使用すると、引張力を増加させることが期待される。同様に、ヒアルロン酸、コンドロイチン4−サルフェート、およびデルマタン硫酸などのグリコサミノグリカン類では、引張力および水分保持力が向上することがわかった。
【0104】
望ましければ、細菌感染を阻止するためにペニシリン、ストレプトマイシンおよびファンギゾンといった抗体を添加することもできる。
【0105】
本明細書に記載の機能の多くは皮膚等価物に関するものであるが、収縮したコラーゲンラティス上にケラチノサイトを成長させることによって、他の細胞タイプをラティス上で成長させることもできるであろう。そういった細胞の例としては、平滑筋細胞、横紋筋細胞、軟骨、骨細胞、膵臓細胞、肝臓細胞などがあげられる。
【0106】
いくつかの方法および誘導体が開発されており、収縮したコラーゲンラティスを、直径を調整可能および/または種々の形状をもつシートに成型するのを助けている。収縮性の作用物質として線維芽細胞を用いた場合、非収縮コラーゲンラティスは、典型的にあらゆる方向に収縮する。しかしながら、その境界が固定されているシートの場合、収縮は、厚み方向に限られる。
【0107】
境界を限定するための好適なデバイスは、あらゆる形状のステンレススチールメッシュのシートから作製することができる。成型された望ましい形状は、シートの過剰分を切り捨てて、形状のまわりに適切な1.5インチボーダーとしてステンレススチールメッシュの中心から切り出される。これは、非接着性の物質、例えば、テフロン(登録商標)RTM、ポリテトラフルオロエチレンでコーティングされたパンに入れることができるステンレススチールメッシュの枠を形成する。その後この成分を用いて形成したラティスを導入する。該成分を注入し、ラティスを形成すると、それが固着用スチールメッシュの小腔に注入される。ラティスの細胞要素は、コラーゲン原線維どうしが引き合うことによって緻密になり、ラティスの容量は減少が、縁が固定されているので減少した寸法は厚みである。該プロセスにおいて、ラティスは水分を失う。
【0108】
スチールフレームの特別な利点は、組織等価物の最終的なサイズが正確に枠の内部の大きさとなり、特に、ラティスは、フレームによって限定することによって向上した細胞の方向性によって、更に強度が高くなる。さらに、ラティスの大きさは、フレームから切り出した後でさえ、長方形のフレームに投入した場合、幅方向または長さ方向には変化しないので、後者を投入したらすぐ皮膚等価物の表皮成分を真皮等価物に適用することができ、皮膚等価物移植物を患者のバイオプシーから調製するための時間を少なくとも4日間縮小することができる。
【0109】
ラティスの成分を注入して拘束するメッシュを被覆することができる。ラティスを設定すると、それがメッシュ中で固着用となり、収縮によって長さ、幅は変更しない。厚みのみ減少する。厚みの最大寸法は、以下の関数となる。(1)ラティスの初期堆積、(2)細胞濃度、および(3)コラーゲン含有量。ヒアルロン酸や硫酸コンドロイチンなどのプロテオグリカン類が存在することによって、収縮が増加し、ラティス厚みが減少する。その上に表皮細胞が播かれたラティスまたは真皮等価物を保有する長方形のメッシュを、皮膚を必要とする創傷に対してそのままの状態で適用する。配置すると、メッシュの周辺の内部からすぐに、または、その存在が移植物の完全性を維持するのを助けてしばらくしてから、切り出すことができる。
【0110】
皮膚等価物の調製物の真皮等価物上の表皮を固着するのを助ける別の技術および方法は以下のとおりである。真皮等価物をまず投入し、貼り先が通過し、正常なパターンを維持することができる、プラスチックシート、例えば、テフロン(登録商標)RTM、ポリテトラフルオロエチレンを新鮮な投入物上に置く。該プラスチックシートおよび針は、表皮細胞を播いた1−4日後に除去する。この結果、表皮細胞が流れるピットが形成される。それによって、表皮と真皮等価物の間の表面接触がより大きくなる。
【0111】
酵素解離技術によって単離し得る小胞および腺細胞を、表皮細胞の懸濁液を用いて播種し、そのようなピット占有してもよい。
【0112】
本明細書に記載の生体組織の主な利点は、レシピエントが、組織等価物を作製するために用いられる細胞のドナーと異なる場合に見られる拒絶反応がないことである。例えば、移植のレシピエントのもの以外の細胞で構築した皮膚等価物移植物を動物ホストに対して行った。上記のようにして作製するが、スプレーク・ドーリー(Sprague−Dawley)株のラットのメスからの細胞によって構成した皮膚等価物移植物を、雄フィッシャー(Fischer)ラットホストに移植し、様々な時間の間その場に維持した。一般に、天然の組織の至る所に存在し、特定の免疫細胞を含まないあらゆる種類の等価物移植物は、拒絶されないであろう。なぜなら移植拒絶の原因となる抗原決定基は、等価物組織に組み込まれた細胞の表面上では発現しないからである。それらの不存在によって、ホストの免疫細胞は、外来細胞を見つけだすことが不可能になる。なぜなら、レシピエント自身が欠けているもしくは存在しないため、これは、レシピエントが必要とする細胞のタイプ、組織、もしくは臓器に取って代わる可能性をもつものである。
【0113】
D:コラーゲンゲル状に積層されたコラーゲンゲルを含む培養組織構築物
本実施形態の培養組織構築物は、水和コラーゲンラティスを含むものと、その調製方法および使用方法が似ているが、さらに、コラーゲンの層を含むものである。
【0114】
透過性部材と接触した、無細胞水和コラーゲンゲル上に投入されたコラーゲンラティスは、厚み寸法には収縮するが、放射方向および横方向の収縮をしないことが発見された。このため、例えば、ステンレススチール枠上で、コラーゲンラティスを固着させるために使用する必要がない。上記のようにして、固着用手段を用いずに投入された、例えば、直径24mmのコラーゲンラティスは、放射上に収縮して、直径5mm以下となる。対照的に、透過性部材と接触した無細胞水和コラーゲンゲル上に投入された直径24mmのコラーゲンラティスは通常放射状に収縮して約15mmとなる。固着用手段を除いたことで、横方向/放射方向の収縮が、コスト上の利点をもたらし、また、組織等価物の作製を容易にした。そのような固着用手段は、望ましければ透過性部材と接触した水和コラーゲンゲルと組み合わせて用いられる。
【0115】
本発明の組織等価物を取得するための1つの方法は、
(a)コラーゲンおよび少なくとも1つの収縮性の作用物質を含む混合物を形成するステップ;および
(b)ステップ(a)で取得した混合物を、透過性部材と接触した無細胞水和コラーゲンゲルに適用し、組織等価物の形成を可能とする条件下で該混合物およびゲルを維持するステップ、を含む。
【0116】
本発明のいくつかの実施態様において、限定されないが、線維状パッド、コットンパッド、およびゲル、アガロースなどの1以上の吸収性の部材が上記コラーゲンゲルと組み合わせて用いられる。そのような吸収性の部材は、一貫した平坦な物理的支持体を提供し、組織等価物と細胞培養培地との間の接触の均一化を促進することが分かっている。典型的には、該吸収性の部材は、水和したコラーゲンラティスに対向するコラーゲンゲルに隣接している。吸収性の部材自身がゲル、例えば、アガロースである場合、該ゲルは、組織等価物に栄養を提供するために栄養培地とともに提供される。
【0117】
水和コラーゲンゲルおよび/または吸収性の部材を用いて、および用いないで維持された組織等価物中で、皮膚組織等価物の発達の種々の相において、下記の実験的エンドポイントをモニターした:
1.グルコース利用度
2.表皮の層状化および角質化の程度および量
3.培地のpH
【0118】
吸収性の部材を用いて維持された組織等価物から取得した培地の観察したpHは、これらの部材の不存在下で維持された組織等価物と比較して、一貫して高く、組織等価物の生理的pHに近かった。さらに、グルコース利用度は、吸収性の部材とともに維持された組織等価物中において一般的に低いことが観察された。
【0119】
十分発達した角質化は、そのような部材を用いずに作製された対照皮膚等価物と比較して、吸収性の部材を用いて作製された皮膚組織等価物中で促進される。これらの吸収性の部材が表皮の分化に及ぼす影響のメカニズムは知られていないが、そのような部材が拡散バリア、例えば、透過バリアとして機能し、培地を濾過し、組織等価物に近接する分泌細胞産物を保持するのではないかと仮定さている。
【0120】
本発明の生皮膚等価物は、本実施形態においては、水和したコラーゲンラティスを無細胞水和コラーゲンゲル上に投入することを除いて、上記と同様に調製される。
【0121】
本発明の組織等価物を作製するための1つの方法は、
(a)コラーゲンおよび少なくとも1つの収縮性の作用物質を含む混合物を形成するステップ;
(b)ステップ(a)で取得した混合物を、透過性部材と接触した無細胞水和コラーゲンゲルに適用し、組織等価物の形成を可能とする条件下で該混合物およびゲルを維持するステップ、および
(c)ステップ(b)で取得した組織等価物をケラチノサイトとともに播くステップ、を含む。
【0122】
背景によれば、本発明の組織等価物を投入するため便利なプロトコルは、pHが約3〜4のコラーゲンの酸性溶液と栄養培地を迅速に混合するステップ、必要であれば、得られた溶液のpHをpH6.6〜pH7.8に調整するステップ、線維芽細胞を添加するステップ、得られた混合物(「鋳造混合物」)を、無細胞水和コラーゲンゲルが置かれた適切な成型または装置に移すステップ、次いで、好ましくは約35℃乃至38℃の温度でインキュベートするステップを含む。pHの調整と、鋳造混合物の成分の組み合わせを同時に行うことが最も都合がよい。しかしながら、これらのステップは、鋳造混合物が適切な設定の成型に移されるようにステップを完了するのであれば、どのような所望の順序で行われてもよい。溶液を加温し、pHを高めた結果、コラーゲン原線維が鋳造混合物から析出し、収縮性の作用物質によって収縮され、水和コラーゲンゲル上に配置された水和コラーゲンゲルを形成する。
【0123】
本実施形態によって生体組織を作製する方法は、一般的な組織等価物の作製に適用することが可能である。これらの方法を、皮膚移植適用および皮膚等価物を組み込んだテストシステムにおいて使用する皮膚等価物と組み合わせて説明する。
【0124】
図を参照すれば、図13乃至15は、皮膚組織等価物を本発明によって仕様することによる、皮膚と1以上の作用物質との相互作用を測定するための装置のある実施形態を示す図である。ここでは、本発明の組織等価物を内部に含む複数の容器10、22をベースまたはホルダー中に配置する。図13乃至15に示されている装置にはカバー手段2も備えられている。いくつかの実施態様において、カバリング(図示せず)が各容器に設けられている。該カバリングは、容器を封着する、あらゆる生体適合材から選択される。許容されるカバリングとしては、装置に接着材や加熱によって封着されるホイル類およびバリアフィルム類がある。加熱封着ポリエステルフィルムは、本発明のプラクティスにおいて特に有用である。
【0125】
組織等価物用の容器は、外側容器10と内側容器20を含む。内側容器20には、外側容器10中に内側容器20を位置づける手段を提供するリム50が設けられており、それによって、外側領域14と内側領域22を画定している。内側容器20中、皮膚組織等価物26、28が、透過性部材24に近接しておかれている水和コラーゲンゲル25上に置かれている。透過性部材は、内側容器20に封着可能に付着し、その底部を形成している。該皮膚組織等価物は、2つの層26、28を有しており、層28は、表皮の層、真皮層を含む層26を有している。いくつかの実施態様においては、封着部材30は、内側容器20の内壁と皮膚等価物26、28の間を封着し、組織等価物26、28の外縁が水和コラーゲンゲル25の内部に位置づけられている場合は、水和コラーゲンゲル25の周囲を封着する。図に示された実施態様においては、容器10には、外側領域14につながる開口21がある。
【0126】
図15に示された装置は、吸収性の部材32をさらに備えている。さらに別の実施態様においては、外側チャンバー14は、ゲル(図示せず)を内部に有していてもよい。
【0127】
図16乃至18は、皮膚組織等価物を本発明によって仕様することによる、皮膚と1以上の作用物質との相互作用を測定するための装置の別の実施態様を示す図である。上記他の実施態様と類似の要素は、同じ符号を用いて示す。本実施形態において、外側ウェル10は、四角形であり、内側容器20を配置してもよい底部に高い断面60を備えている。装置の底面から上に向かって突き出している外側ウェル10は、装置の外部からのポケットとして形成される。
【0128】
外側ウェル10は、組織等価物のための栄養培地を備えている。そのような培地は、当業で公知である。好ましくは、米国特許第361,041号に記載された無血清栄養培地である。培地の容積は、培地が透過部材24、水和コラーゲンゲル25、組織等価物26、28を通り抜けて内側容器20にいたるような圧力をかけないように、外側容器14を適切なレベルで充填するために選択しなければならない。
【0129】
本発明のある実施態様において、外側容器10には、外側容器10内に配置された吸収性の部材32が備えられており、透過性部材24の外側表面に接触している。吸収性の部材32は、生体組織等価物と適合性をもつものでなければならない。吸収性の部材の好ましい材料としては、コットン、ポリエステル、およびレイヨンがある。特に好ましい材料は、吸収性コットンである。一般に、吸収性の部材は、界面活性剤のような添加物を含まないことが好ましい。
【0130】
本発明の別の実施態様において、外側ウェル10は、培地を捕捉する働きをするアガロースのようなゲル(図示せず)を備えている。アガロースは、開口21のすぐ下に添加することができるので、より多くの栄養培地が組織等価物として利用可能であり、組織等価物26、28への栄養供給は、すぐに廃棄されない。そのようなゲルを使用することによって、培地の漏れ、組織等価物の混入の可能性を最小限にするという点で、本発明の装置を保存および運送する際に利点がある。
【0131】
外側容器10および内側容器20は、組織等価物を含む、アッセイの成分と反応しない、もしくは望ましくない効果をもたらす、あらゆる所望の材料で作製することができる。例えば、生体組織等価物の鋳造混合物は、収縮中、内側容器の内壁に付着して、組織等価物の形成と干渉することはない。
【0132】
内側容器20を殺菌するために使用する方法が組織等価物に影響を及ぼすことがわかった。例えば、酸化エチレンによってではなく、電子ビームによって殺菌される場合、形成組織はポリスチレンに付着する。対照的に、K−RESIN.RTM.ブタジエン−スチレンポリマー、ポリスチレンとブタジエンの合金、内側容器の特に好ましい材料は、形成する組織等価物の付着を引き起こすことなく電子ビームによって殺菌される(K−RE
SIN.RTM.ブタジエン−スチレンポリマーは、Phillips
Petroleumの登録商標である)。いくつかの実施態様において、容器は、組織等価物が容器、例えば、容器の壁または容器の窓を介して見えるように作られていることが望ましい。容器10の好ましい材料としては、ポリスチレンおよびPETGがある。
【0133】
内側容器20は、所望の組織等価物の大きさおよび形状を収容するものであれば、あらゆる形状および容積をとることができる。容器の寸法も、所望の組織等価物の大きさおよび形状および所望のアッセイ容量に依存する。例えば、外径約25mm、容量約5mlの容器が、本発明を実施する上で有用である。図13乃至15に示された実施態様においては、複数の容器がベースまたはホルダーに設けられている。
【0134】
透過性部材24は、無細胞水和コラーゲンゲル25および組織等価物26、28を支持するのに十分な強度を有していなければならない。多孔質膜が本発明の実施に有用である。そのような膜の孔径は、無細胞水和コラーゲンゲル25を付着させるように選択される。好ましい膜は、親水性であり、厚みが約1mm〜10mmであり、孔径が約1〜約10ミクロン(原語:.mu.)である。透過性部材24の好ましい材料としては、ポリカーボネートがある。特に好ましい透過性部材は、好ましくは湿潤剤を含まないポリカーボネート膜であり、これは、Nucleporeから市販されている。その孔径は、約3〜10ミクロン(原語:.mu.)である。
【0135】
封着剤30は、アッセイの条件や用いられている組織等価物に不活性であり、ならびに内側容器20と組織等価物間の封着を良好にする、あらゆる材料から作製することができる。好ましい材料としては、ポリエチレン、TEFLON.RTM.PTFEポリテトラフルオロエチレン(E.I.Du
Pont de
Nemours and
Companyの登録商標)、ポリカーボネートおよびナイロンがあげられる。封着剤は、外側容器の内容物をあらゆる溶液、または表皮25に付与される物質から分離して保持することが望ましい場合、例えば、組織等価物を介しての物質の拡散または透過を測定する場合、特に有用である。
【0136】
本発明の組織等価物および無細胞水和コラーゲンゲルの双方は、ラット尾の腱、ウシ皮膚コラーゲンおよびウシ伸筋の腱を含む、皮膚や腱に由来するコラーゲンを用いて作製することができる。コラーゲンの他のソースも好適に使用される。コラーゲン組成物は、通常のウシ指状伸筋の腱に由来する組成物が特に好ましく、そのようなコラーゲン組成物を誘導する方法は、コペンディングの米国特許出願第07/407,465号(02/09/1994出願)に記載されている。その開示を本明細書において引用によって援用する。
【0137】
本発明のある方法においては、無細胞水和コラーゲンゲル25は、約0.5〜2.0mg/ml、好ましくは、約0.9〜1.1mg/mlの濃度のコラーゲンと、栄養培地とを含むコラーゲン組成物から調製される。このコラーゲン組成物を内側容器20に添加し、コラーゲン組成物を、好適な寸法、典型的には約1〜5mmの厚み、好ましくは約2〜約3mmの厚みの無細胞水和コラーゲンゲルを作製できる条件下で維持する。無細胞水和コラーゲンゲル25は、細胞が、その一部が組織等価物から無細胞水和コラーゲンゲルに移動する間、無細胞を維持するような十分な厚みであり、組織等価物が外側容器10に設けられた栄養源から好ましくなくて除去されることがないように十分薄い厚みを持つことが好ましい。
【0138】
次に、真皮等価物を無細胞水和コラーゲンゲル上に、前記特許文献および以下に記載のような処置を用いて投入する。コラーゲンおよび線維芽細胞を含有する鋳造混合物を内側容器20の、無細胞水和コラーゲンゲル25上に添加し、組織等価物が形成されうる条件下で維持する。該組織等価物は、無細胞水和コラーゲンゲル25を形成するとき、急速に収縮する。しかしながら、無細胞、水和コラーゲンゲル25は、テクスチュアド金属やプラスチックやVELCRO.RTM.Hook
and Loop
Fasteners(Velcro Corporationの登録商標)といった、機械的に抑制する手段を必要とせずに、組織等価物の過度の放射方向への収縮を阻止する。
【0139】
典型的には、組織等価物26の側面は水和コラーゲンゲル25の外側周辺部に向かって傾斜し、図15および6の52に示されたメサを形成している。組織等価物26に、上皮細胞を播いて表皮層28を形成する。該表皮細胞を、約0.3×106乃至30×106細胞/mlの濃度で培養培地に播いた。播いた表皮細胞の量はメサの大きさに依存するであろう。
【0140】
コラーゲンの濃度および鋳造混合物の量は、生体組織等価物の直径および厚みを最適にするように制御することができる。該鋳造混合物は、細胞を約1.25〜5×104細胞/mlの濃度で、コラーゲンを約0.5〜2.0mg/mlの濃度で栄養培地中に含む。好ましい細胞濃度は、2.5×104細胞/mlである。組織等価物のための鋳造混合物の量と無細胞水和コラーゲンゲルのための鋳造混合物の比率は、細胞の生産能力と分化に栄養を及ぼすことが分かっている。組織等価物の鋳造混合物とコラーゲンゲル鋳造混合物との有用な比率(v/v)は、約3:1乃至1:3である。コラーゲンラティス中の細胞濃度が約2.5×104細胞である場合の好ましい比率は3:1である。
【0141】
本発明は、以下の実施例を参照することによって、さらに理解することができるであろう。これらの実施例は、本質的に単なる例示であり、本発明の範囲を制限するために用いられるものではない。
【0142】
以下の実施例において用いられる物質は、実施例に記載のソースから取得した。または前記文献にしたがって作製した。実施例を通して、無菌で処置を行った。該組織等価物は、インキュベーター中10%CO2で維持し、全体を通して無菌処置を用いた。
【0143】
以下の実施例は、本発明のプラクティスをより十分に説明するためのものであり、あらゆる意味においても、本発明の範囲を制限するためのものと解釈すべきでない。本明細書に記載の方法には、本発明の精神と範囲を超えない限り、種々の改変が可能であることを当業者は理解するであろう。
【0144】
実施例
実施例1:ヒト新生児包皮繊維芽細胞によるコラーゲンマトリックスの形成 ヒト新生児包皮繊維芽細胞(Organogenesis、Inc.Canton、MAより入手)は、162cm2組織培養用シャーレ(Costar
Corp.、Cambridge、MA、カタログ番号3150)に5×105細胞を接種し培養液で培養した。成長培地の組成は、10%ウシ胎児血清(NBCS)(HyClone
Laboratories、Inc.、Logan、Utah)および4mM
L−グルタミン(BioWhittaker、Walkersville、MD)を含むダルベッコ改良イーグル培地(DMEM)(高グルコース濃度、L−グルタミン無添加、BioWhittaker、Walkersville、MD)である。細胞は10±1%
CO2中で37±1℃のインキュベーターで培養した。培地は2〜3日ごとに新鮮なものと交換した。培養8日後に、細胞がコンフルエンス状態、すなわち組織培養用シャーレの底面いっぱいの単層になった時に、培地をフラスコから吸引した。単層細胞を洗浄するために、無菌濾過したリン酸緩衝液生理食塩水を各フラスコの底に添加してその後吸引した。トリプシン−バーゼン液グルタミン(BioWhittaker、Walkersville、MD)を各フラスコに5mL添加し、単層細胞に完全に行き渡るようにゆっくりと回転させることで、フラスコから細胞を遊離させた。培養物はインキュベーターに戻した。細胞が遊離すると同時に、トリプシン−バーゼン液の作用を停止するために、SBTI(大豆トリプシンインヒビター)5mlを各フラスコに添加し細胞懸濁液と混合した。細胞懸濁液をフラスコから取り出し、無菌の円錐遠心管に等分した。細胞を約800−1000xgで5分間遠心して集めた。
【0145】
細胞は、新鮮な培地に3.0×106細胞/mlの濃度になるように再懸濁し、6ウェルトレーの0.4ミクロンポアサイズの24mm直径組織培養用挿入体(TRANSWELL(登録商標)、Corning
Coastar)に3.0×106細胞/挿入体(6.6×105細胞/cm2)の濃度で接種した。細胞は10±1%
CO2で37±1℃のインキュベーター内に静置して、培地は2〜3日ごとに新鮮なものと交換し21日間培養した。産生培地の組成は、DMEMおよびハムF−12培地(Quality
Biologics Gaithersburg、MD)の3:1混合物、4mM GlutaMAX−1(登録商標)(Gibco
BRL、Grand Island、NY)および最終濃度が以下のようになる添加物を含む;5ng/ml ヒトリコンビナント表皮成長因子(Upstate Biotechnology、Lake
Placid、NY)、2% 新生子牛血清(HyClone Laboratories、Inc.、Logan、Utah)、0.4μg/ml
ハイドロコーチゾン(Sigma、St.Louis、MO)、1×10−4M
エタノールアミン(Fulka、Ronkonkoma、NY、ACSグレード)、1×10−4M
O−フォスフォリルエタノールアミン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml
インスリン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml
トランスフェリン(Sigma、St.Louis、MO)、20pM
トリヨードサイロニン(Sigma、St.Louis、MO)、6.78ng/ml
セレン(Sigma Aldrich Fine Chemicals Co.、Milwaukee、WI)、50ng/ml
L−アスコルビン酸(WAKO Chemicals USA、Inc.
#013−12061)、0.2μg/ml L−プロリン(Sigma、St.Louis、MO)、0.1μg/ml グリシン(Sigma、St.Louis、MO)、および0.05% ポリエチレングリコール(PEG)3400−3700MW(細胞培養グレード)(Sigma、St.Louis、MO)。
【0146】
組織学的解析のためのサンプルは、培養7、14および21日目に採集し、ホルマリンで固定し、パラフィン包埋した。ホルマリン固定したサンプルはパラフィン包埋して、5μm切片をヘマトキシリン−エオシン(H&E)で既知の方法に従って染色した。H&E染色スライドを用いて、10mm/100μmレティクルのついた10x接眼レンズを用いて無作為に選んだ10カ所の顕微鏡視野での厚さを測定した。
【0147】
真皮線維芽細胞の2つの異なる細胞株から得られた結果を表1にまとめた。細胞−マトリックス構築物が成長したときの厚みを示している。
【表1】
【0148】
サンプルは、培養7、14および21日目にコラーゲン濃度解析を行った。コラーゲン含有量は、既知の方法(Woessner、1961)でのヒドロキシプロリンを比色定量する方法を用いて算出した。同じ時点において細胞数も測定した。前述の操作に用いた2つの異なる細胞種(B156およびB119)で得られた細胞−マトリックス構築物からの、表2はコラーゲン濃度を、表3は細胞データの概要を示している。
【0149】
【表2】
【表3】
【0150】
培養7、14および21日目のヒト細胞由来皮膚マトリックスのサンプルを遅延還元SDS−PAGEで解析して、サンプル中のタイプIおよびタイプIIIコラーゲンアルファバンドで示されるコラーゲン組成を測定した。
【0151】
皮膚マトリックスの生化学的特性について組織化学的手法を用いて検討した。フィブロネクチンの同定はパラフィン固定した切片についてZymed
Histostain ストレパビジン−ビオチン システム(Zymed
Laboratories Inc.、South San
Fransisco、CA)を用いて行った。テナシンの存在の有無は、抗テナシン一次抗体染色(Dako、Carpintheria、CA)および続く二次抗体としての抗マウス西洋ワサビペルオキシダーゼ標識抗体(Calbiochem)を用いて、確認した。サンプルは、ジアミノベンジン(Sigma、St.Louis、MO)を適用しNucler
Fast Redで逆染色することにより可視化した。
【0152】
グリコサミノグリカン(GAG)定量を、以前に報告された方法(Farndale、1986)を用いて21日目のサンプルについて行った。結果は、接種後21日目のヒト細胞由来皮膚マトリックスサンプル中には1cm2あたり0.44gのGAGが存在した。
【0153】
実施例2:皮膚構築物全体の厚み
実施例1で示した方法で作成した真皮構築物を用いて、正常ヒト新生児包皮表皮ケラチノサイト(Organogenesis、Inc.Canton、MAより入手)を細胞−マトリックス構築物上に播種し、皮膚構造の表皮層を形成した。
【0154】
培地を無菌的に培養挿入体およびその周辺から取り除いた。正常ヒト表皮ケラチノサイトを、凍結細胞ストックからコンフルエント状態までに4継代培養してスケールアップさせた。細胞を、トリプシン−バーゼン液を用いてシャーレ底面から遊離させ、プールし、遠心分離して細胞ペレットを形成させ、表皮化培地中に再懸濁させ、カウントして4.5×104細胞/cm2の密度で膜の上に接種した。構築物を37±1℃、10±1%CO2中で90分間インキュベートし、ケラチノサイト細胞を付着させた。インキュベーション後、該構築物を表皮化培地に浸した。表皮化培地の組成は、ダルベッコ改良イーグル培地(DMEM)(高グルコース濃度、L−グルタミン無添加、BioWhittaker、Walkersville、MD)およびハムF−12培地(Quality
Biologics Gaithersburg、MD)の3:1混合物で、0.4μg/ml ハイドロコーチゾン(Sigma、St.Louis、MO)、1×10−4M エタノールアミン(Fulka、Ronkonkoma、NY)、1×10−4M O−フォスフォリルエタノールアミン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml インスリン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml トランスフェリン(Sigma、St.Louis、MO)、20pM トリヨードサイロニン(Sigma、St.Louis、MO)、6.78ng/ml セレン(Aldrich)、24.4μg/ml アデニン(Sigma
Aldrich Fine
Chemicals Co.、Milwaukee、WI)、4mM L−グルタミン(BioWhittaker、Walkersville、MD)、0.3%
キレート化新生子牛血清(HyClone Laboratories、Inc.、Logan、Utah)、0.628ng/ml プロゲステロン(Amersham Arlington
Heights、IL)、50μg/ml L−アスコルビン酸ナトリウム塩(Sigma Aldrich
Fine Chemicals
Co.、Milwaukee、WI)、10ng/ml 表皮成長因子(Life Technology
Inc.、MD)、および50μg/ml 硫酸ゲンタマイシン(Amersham Arlington
Heights、IL)である。構築物は表皮化培地中で37±1℃、10%CO2中で2日間培養した。
【0155】
2日後、構築物は以下の組成の培地に浸した;ダルベッコ改良イーグル培地(DMEM)(高グルコース濃度、L−グルタミン無添加、BioWhittaker、Walkersville、MD)およびハムF−12培地(Quality
Biologics Gaithersburg、MD)の3:1混合物で、0.4μg/ml ハイドロコーチゾン(Sigma、St.Louis、MO)、1×10−4M エタノールアミン(Fulka、Ronkonkoma、NY)、1×10−4M O−フォスフォリルエタノールアミン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml インスリン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml トランスフェリン(Sigma、St.Louis、MO)、20pM トリヨードサイロニン(Sigma、St.Louis、MO)、6.78ng/ml セレン(Sigma Aldrich
Fine Chemicals
Co.、Milwaukee、WI)、24.4μg/ml アデニン(Sigma Aldrich
Fine Chemicals
Company)、4mM L−グルタミン(BioWhittaker、Walkersville、MD)、0.3% キレート化新生子牛血清(BioWhittaker、Walkersville、MD)、0.628ng/ml プロゲステロン(Amersham Arlington
Heights、IL)、50μg/ml L−アスコルビン酸ナトリウム塩、265μg/ml 塩化カルシウム(Mallinckrodt、Chesterfield、MO)、および50μg/ml
硫酸ゲンタマイシン(Amersham Arlington Heights、IL)である。構築物を再び37±1℃、10%CO2中で2日間培養した。
【0156】
2日後、構築物を含むキャリヤーを無菌的に、十分な量の角化培地を入れた新しい培養トレーに移した。その量は9mLで、キャリヤー膜の表面と一致する水面になり、乾燥界面が上皮層を層状化させるのを維持することが出来る。構築物を、37±1℃、10% CO2中、および低湿度中で、2〜3日毎に培地を交換しながら7日間培養した。この培地の組成は;ダルベッコ改良イーグル培地(DMEM)(高グルコース濃度、L−グルタミン無添加、BioWhittaker、Walkersville、MD)およびハムF−12培地(Quality
Biologics Gaithersburg、MD)の1:1混合物で、0.4μg/ml ハイドロコーチゾン(Sigma、St.Louis、MO)、1×10−4M エタノールアミン(Fulka、Ronkonkoma、NY)、1×10−4M O−フォスフォリルエタノールアミン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml インスリン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml トランスフェリン(Sigma、St.Louis、MO)、20pM トリヨードサイロニン(Sigma、St.Louis、MO)、6.78ng/ml セレン(Aldrich)、24.4μg/ml アデニン(Sigma
Aldrich Fine
Chemicals Co.、Milwaukee、WI)、4mM L−グルタミン(BioWhittaker、Walkersville、MD)、2%新生子牛血清(BioWhittaker、Walkersville、MD)、50μg/ml
L−アスコルビン酸ナトリウム塩(Sigma Aldrich Fine Chemicals Co.、Milwaukee、WI)、および50μg/ml
硫酸ゲンタマイシン(Amersham Arlington Heights、IL)である。7日目に構築物を供給し、2〜3日毎に維持培地を交換しながら更に10日間培養した。この維持培地の組成は;ダルベッコ改良イーグル培地(DMEM)(高グルコース濃度、L−グルタミン無添加、BioWhittaker、Walkersville、MD)およびハムF−12培地(Quality
Biologics Gaithersburg、MD)の1:1混合物で、0.4μg/ml ハイドロコーチゾン(Sigma、St.Louis、MO)、1×10−4M エタノールアミン(Fulka、Ronkonkoma、NY)、1×10−4M O−フォスフォリルエタノールアミン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml インスリン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml トランスフェリン(Sigma、St.Louis、MO)、20pM トリヨードサイロニン(Sigma、St.Louis、MO)、6.78ng/ml セレン(Sigma Aldrich
Fine Chemicals
Co.、Milwaukee、WI)、24.4μg/ml アデニン(Sigma
Aldrich Fine
Chemicals Co.、Milwaukee、WI)、4mM L−グルタミン(BioWhittaker、Walkersville、MD)、1%
新生子牛血清(BioWhittaker、Walkersville、MD)、および50μg/ml
硫酸ゲンタマイシン(Amersham Arlington Heights、IL)である。
【0157】
最終サンプルを実施例1で述べたように、ヘマトキシリンおよびエオシン染色にかけ光学顕微鏡下で目視測定した。得られた構築物は、実施例1で述べた性質を持つマトリックスで囲まれた繊維芽細胞からなる低(真皮)層を形成し、多層化し、よく分化したケラチノサイトにより完全に覆われていた。このケラチノサイトは、生体内皮膚と同様に、基質層、上基質層、顆粒層、および角質層を示した。皮膚構築物は、透過型電子顕微鏡(TEM)から明らかなように、皮膚−表皮接合部に存在する十分に発達した基底膜を有する。基底膜は、TEMによって可視化されるときにIII型コラーゲンから構成される原線維に足場をつけることにより印される、ヘミデスモソームの周囲で最も厚くみえる。固着用原線維は、基底膜から出ること、および皮膚層中のコラーゲン原線維を捕捉することが容易にわかる。基底膜糖蛋白であるラミニンの存在が以前に報告されたアビジン−ビオチン免疫酵素法(Guesdon、1979)を用いて確認された。
【0158】
実施例3:化学的に限定した培地中でのヒト新生児包皮線維芽細胞によるコラーゲンマトリックスのIn Vitro形成
実施例1に記載した処置を用いてヒト新生児包皮線維芽細胞を増殖させた。次いで細胞を3.0×106細胞/mlの濃度になるように再懸濁し、6ウェルトレーの0.4ミクロンポアサイズの24mm直径組織培養用挿入体に、3.0×106細胞/TW(6.6×105細胞/cm2)の濃度で播種した。その後これらの細胞を、新生子ウシ血清を除いた培地で実施例1と全く同様に維持した。より詳細には、培地の組成は、DMEMおよびハムF−12培地(Quality
Biologics Gaithersburg、MD)の3:1混合物、4mM GlutaMAX−1TM(Gibco
BRL、Grand Island、NY)および以下の添加物を含む;5ng/ml ヒトリコンビナント表皮成長因子(Upstate
Biotechnology、Lake Placid、NY)、0.4μg/ml ハイドロコーチゾン(Sigma、St.Louis、MO)、1×10−4M
エタノールアミン(Fulka、Ronkonkoma、NY、カタログNo.2400ACSグレード)、1×10−4M O−フォスフォリルエタノールアミン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml インスリン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml トランスフェリン(Sigma、St.Louis、MO)、20pM トリヨードサイロニン(Sigma、St.Louis、MO)、6.78ng/ml セレン(Sigma Aldrich
Fine Chemicals
Co.、Milwaukee、WI)、50ng/ml L−アスコルビン酸(WAKO Chemicals
USA)、0.2μg/ml L−プロリン(Sigma、St.Louis、MO)、0.1μg/ml グリシン(Sigma、St.Louis、MO)、および0.05% ポリエチレングリコール(PEG)(Sigma、St.Louis、MO)。サンプルは、前述の方法で、培養7、14および21日目にコラーゲン濃度および細胞数をチェックした。結果を、表4(細胞数)および表5(コラーゲン)にまとめた。サンプルはホルマリンで固定し、実施例1で述べたように、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色し、光学顕微鏡分析を行った。組織学的な評価で、構造体は限定培地で2%新生子ウシ血清存在下と同様に生育することが証明された。サンプルはまた、実施例1で述べた処置を用いてフィブロネクチンの陽性染色を行った。
【0159】
【表4】
【表5】
【0160】
また、細胞−マトリックス構築物中には内因的に産生される筋原線維のコラーゲン、デコリン、およびグリコサミノグリカンが存在した。
【0161】
実施例4:化学的に限定した培地を用いて形成される皮膚構造全体の厚さ
実施例3で示した方法に類似した化学的に限定した条件下で、ヒト皮膚線維芽細胞により形成された25日目の真皮構築物を用いて、正常ヒト新生児包皮表皮ケラチノサイトを細胞−マトリックス構築物の表面上に接種し、皮膚構造の表皮層を形成した。
【0162】
培地を無菌的に培養挿入体およびその周辺から取り除いた。正常ヒト表皮ケラチノサイトを、凍結継代培養細胞ストックからコンフルエント状態までに4継代培養してスケールアップさせた。細胞を、トリプシン−バーゼン液を用いて培養皿底面から遊離させ、プールし、遠心分離して細胞ペレットを形成させ、表皮化培地中に再懸濁させ、カウントして4.5×104細胞/cm2の密度で膜の上に播種した。構築物は、37±1℃、10±1% CO2中で90分間インキュベートし、ケラチノサイトを付着させた。インキュベーション後、構築物を表皮化培地に浸した。表皮化培地の組成は、ダルベッコ改良イーグル培地(DMEM)(グルコース、カルシウム無添加、BioWhittaker、Walkersville、MD)およびハムF−12培地(Quality
Biologics Gaithersburg、MD)の3:1混合物で、0.4μg/ml ハイドロコーチゾン(Sigma、St.Louis、MO)、1×10−4M エタノールアミン(Fulka、Ronkonkoma、NY)、1×10−4M O−フォスフォリルエタノールアミン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml インスリン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml トランスフェリン(Sigma、St.Louis、MO)、20pM トリヨードサイロニン(Sigma、St.Louis、MO)、6.78ng/ml セレン(Aldrich)、24.4μg/ml アデニン(Sigma Aldrich Fine Chemicals Co.、Milwaukee、WI)、4mM
L−グルタミン(BioWhittaker、Walkersville、MD)、50μg/ml
L−アスコルビン酸ナトリウム塩(Sigma Aldrich Fine Chemicals Co.、Milwaukee、WI)、16μM
リノール酸(Sigma、St.Louis、MO)、1μM 酢酸トコフェロール(Sigma、St.Louis、MO)、および50μg/ml 硫酸ゲンタマイシン(Amersham Arlington
Heights、IL)である。構築物は、表皮化培地中で37±1℃、10±1%CO2中で2日間培養した。
【0163】
2日後、培地を上述の組成の新鮮なものに交換し、37±1℃、10±1%
CO2中、インキュベーターで2日間培養した。2日後、構築物を含むキャリヤーを無菌的に十分な量の培地を入れた新しい培養トレーに移し、キャリヤー膜の表面と一致する水面になり、空気−液体界面で構築物が発達するのを維持することが出来るようにした。形成される表皮層の表面に接触する空気は、上皮細胞層の層状化を促す。構築物は37±1℃、10%CO2中で、低湿度で2〜3日毎に培地を交換しながら7日間培養した。この培地の組成は;ダルベッコ改良イーグル培地(DMEM)(高グルコース濃度、L−グルタミン無添加、BioWhittaker、Walkersville、MD)およびハムF−12培地(Quality
Biologics Gaithersburg、MD)の1:1混合物で、0.4μg/ml ハイドロコーチゾン(Sigma、St.Louis、MO)、5×10−4M エタノールアミン(Fulka、Ronkonkoma、NY)、5×10−4M O−フォスフォリルエタノールアミン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml インスリン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml トランスフェリン(Sigma、St.Louis、MO)、20pM トリヨードサイロニン(Sigma、St.Louis、MO)、6.78ng/ml セレン(Sigma Aldrich
Fine Chemicals
Co.、Milwaukee、WI)、24.4μg/ml アデニン(Sigma
Aldrich Fine
Chemicals Co.、Milwaukee、WI)、4mM L−グルタミン(BioWhittaker、Walkersville、MD)、2.65μg/ml
塩化カルシウム(Mallinckrodt、Chesterfield、MO)、16μM
リノール酸(Sigma、St.Louis、MO)、1μM 酢酸トコフェロール(Sigma、St.Louis、MO)、1.25mM セリン(Sigma、St.Louis、MO)、0.64mM塩化コリン(Sigma、St.Louis、MO)、および50μg/ml
硫酸ゲンタマイシン(Amersham Arlington Heights、IL)である。2〜3日毎に培地を交換しながら14日間培養した。
【0164】
3部のサンプルを、構築物を空気−液体界面に引き上げた後、10、12、および14日目に採取し、実施例1で述べたようにヘマトキシリンおよびエオシンで染色し、光学顕微鏡下で目視測定した。得られた構築物は、実施例3で述べた性質を持つマトリックスで囲まれた線維芽細胞からなる低(真皮)層を形成し、多層化し、よく分化したケラチノサイトの層により覆われていた。
【0165】
実施例5:ヒトアキレス腱線維芽細胞によるコラーゲンマトリックスの In
Vitro形成
実施例1で述べたのと同じ方法を用いて、ヒト新生児包皮線維芽細胞をヒトアキレス腱線維芽細胞(HATF)に代えて細胞−マトリックス構築物を形成した。産生培地で21日間培養した後に、実施例1に記載した処置を用いてサンプルをH&E染色し、厚さを測定した。得られた構築物は、厚さ75.00±27.58ミクロン(n=2)の細胞−マトリックス組織様構築物として可視化された。また、この構築物中には内因的に産生される筋原線維コラーゲン、デコリン、およびグリコサミノグリカンが存在した。
【0166】
実施例6:トランスフェクトしたヒト新生児包皮線維芽細胞によるコラーゲンマトリックスのIn Vitro形成
トランスフェクトしたヒト真皮線維芽細胞を以下の処置によって産生させた。1バイアルのjCRIP−43血小板由来成長因子(PDGF)ウイルス発生体(Morgan、J.ら)を溶解し、細胞を2×106細胞/フラスコ162cm2(Corming
Costar、Cambridge、MA)の密度で播種した。これらのフラスコには成長培地を入れ、10±1%CO2中で37±1℃でインキュベーターに静置した。成長培地の組成は、ダルベッコ改良イーグル培地(DMEM)(高グルコース濃度、L−グルタミン無添加、BioWhittaker、Walkersville、MD)で、10%
新生子ウシ血清(HyClone Laboratories、Inc.、Logan、Utah)、および4mM L−グルタミン(BioWhittaker、Walkersville、MD)を含む。同じ日に、1バイアルのヒト新生児包皮線維芽細胞(HDFB156)も溶解し、1.5×106細胞/フラスコ162cm2(Corning
Costar、Cambridge、MA)の密度で播種した。3日後にjCRIP
PDGF−43ウイルス発生体に新鮮な成長培地を与えた。HDFB156は上述の成長培地プラス8μg/ml
ポリブレン(Sigma、St.Louis、MO)で培養した。次の日にHDFB156細胞を以下のように感染させた。jCRIP
PDGF−43ウイルス発生体からの培養液を集めて0.45ミクロンフィルターで濾過した。8μg/ml
ポリブレンをこの濾過した培養液に添加した。それから培養液をHDFの上に置いた。次の2日間、HDFを新鮮な成長培地で培養した。HDFが5代から6代の継代をした翌日に2.5×106細胞/フラスコ162cm2(Corning
Costar、Cambridge、MA)の密度で播種した。細胞は以下のように継代培養し、培養液は吸引した。フラスコをリン酸緩衝液生理食塩水で洗浄し、残存する新生子ウシ血清を除いた。トリプシン−バーゼン液を各フラスコに5ml添加し、単層に完全に行き渡るようにゆっくりと回転させることで、フラスコ底面から細胞を遊離させた。培養物はインキュベーターに戻した。細胞が遊離すると同時に、トリプシン−バーゼン液の作用を停止するために、SBTI(大豆トリプシンインヒビター)5mlを各フラスコに添加し細胞懸濁液と混合した。細胞/トリプシン/SBTI懸濁液をフラスコから取り出し、無菌の円錐遠心管に等分した。細胞を約800〜1000xgで5分間遠心して集めた。該細胞を、播種用に成長培地に上記リストした濃度になるように再懸濁した。2日後に細胞に新鮮な培地を与えた。翌日上記のように細胞を集め、10%
新生子牛血清(NBCS)と10% ジメチルスルフォキサイド(DMSO)(Sigma、St.Louis、MO)を含む成長培地で1.5×106細胞/mlに希釈した。該細胞を1ml/凍結バイアルに入れて−80℃で保存した。
【0167】
本実施例のコラーゲンマトリックス形成には、実施例1および3で述べたのと同じ操作を用いて、ヒト新生児包皮線維芽細胞の代わりに、上記のように高レベルの血小板由来成長因子(PDGF)を産生するように形質転換したヒト新生児包皮線維芽細胞を用いて行った。播種後18日目に、上記のようにサンプルをH&E染色に呈した。また、サンプルを、実施例10に記載したファイブロネクチンの有無を確認するためにアビジン−ビオチン法を用いて染色した。実施例1で述べたように、播種後18日目にサンプルをH&E染色に呈し、実施例1で得られたものと同様な、厚さ123.6ミクロン(N=1)の細胞−マトリックスが肉眼で観察された。トランスフェクトされた細胞から細胞−マトリックス構築物中に排出されるPDGF量は、培養中を通じて(18日間)ELISAで測定して100
ng/mLであった。一方、対照ではPDGFの排出は検出できなかった。
【0168】
実施例7:移植物質としての真皮構築物の使用
実施例1の方法に従って、新生児包皮に由来するヒト真皮線維芽細胞を用いて細胞−マトリックス構築物を形成し、無胸腺ヌードマウスに作成した全切開創に移植した。マウスは、Parenteauら(1996)の方法に従って移植した。その開示を本明細書に引用によって援用する。移植は、14、28、および56日目に、切開口の接着、切開創の縮小、移植損失部分、および血管新生(色)で観察した。移植部分はマウスで完全に残っている間に写真を撮った。各時点で多くのマウスを屠殺して、移植部分およびその周辺部を、マウス皮膚の周辺縁に沿って少なくとも皮下脂肪肉部まで切開した。移植物とマウス皮膚との接合部はサンプルごとに保存した。体外移植組織サンプルを、リン酸緩衝液10%ホルマリンおよびメタノールで固定した。ホルマリン固定したサンプルを、実施例1で述べた操作に従ってH&E染色に呈した。移植物は、顕著な縮小もなくマウスの皮膚に取り込まれた。移植の14日以内にマウスの表皮は移植物を覆った。H&E染色サンプルでは、14日目の移植物には血管が明らかに認められた。そして実験全体を通じて認められた。肉眼での観察およびH&E染色により、移植物は実験期間中を通して健全である(生存している細胞を含みマトリックスの異常は、肉眼的には認められない、等)ように見えた。
【0169】
実施例8:皮膚移植としての皮膚構築物の使用
実施例2の方法に従って、真皮層の新生児包皮に由来するヒト真皮線維芽細胞および別の表皮層の新生児包皮に由来するヒト角質実質細胞を用いて、2層皮膚構造を形成した。この皮膚構築物は、膜から手で剥がし、キャリアサポートを用いずに処理し、移植部位に置くことができた。この2層皮膚構築物を、Parenteauら(1966)の方法に従って無胸腺ヌードマウスに形成した全切開創に移植した。その開示を本明細書において引用によって援用する。サンプルの採取は、移植後7、14、28、56、および184日目に行った。移植部分はマウスで完全に残っている間に写真を撮った。各時点で多くのマウスを屠殺して、移植部分およびその周辺部を、マウス皮膚の周辺縁に沿って少なくとも皮下脂肪肉部まで切開した。移植物とマウス皮膚との接合部は各サンプルで保存した。体外移植組織サンプルはリン酸緩衝液10%ホルマリンおよびメタノールで固定した。ホルマリン固定したサンプルを、実施例1で述べた操作に従ってH&E染色に呈した。
【0170】
移植物は7日以内にマウスの皮膚に取り込まれたことが、組織学的観察と同様に肉眼観察でも確かめられた。H&E染色により、移植後7日目以内に宿主の組織から移植物へ血管が伸びているのが認められた。移植物は、顕著な縮小もなく実験期間中を通して健全であった。抗ヒトインボルクリン染色を用いてヒト表皮細胞が全移植期間中存在していることが認められた。
【0171】
実施例9:ヒト角膜ケラチノサイトによるマトリックスのIn Vitro形成
ヒト角膜のケラチノサイト(Organogenesis、Inc.Canton、MAより入手)を角膜の基質構築物の形成に用いた。コンフルエントになったヒトケラチノサイト培養物を、トリプシン−バーゼン液を用いて培養基質から遊離させた。細胞が遊離した時、大豆トリプシンインヒビターを用いてトリプシン−バーゼン液の作用を中和し、細胞懸濁液を遠心し、上清は捨てて細胞は新鮮な培地に3.0×106/mlの濃度になるように基礎培地に再懸濁させた。細胞は、6ウェルトレーの0.4ミクロンポアサイズの24mm直径組織培養用トランスウェルに3×106細胞/TW(6.6×105細胞/cm2)の濃度で播いた。これらの培養物を、播種培地で一晩放置した。播種培地の組成は;ダルベッコ改良イーグル培地(DMEM)およびハムF−12培地(Quality
Biologics Gaithersburg、MD)の3:1混合物、4mM GlutaMAX(Gibco
BRL、Grand Island、NY)および以下の添加物を含む;5ng/ml ヒトリコンビナント表皮成長因子(EFG)(Upstate
Biotechnology、Lake Placid、NY)、0.4μg/ml ハイドロコーチゾン(Sigma、St.Louis、MO)、1×10−4M
エタノールアミン(Fulka、Ronkonkoma、NY)、1×10−4M
O−フォスフォリルエタノールアミン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml
インスリン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml
トランスフェリン(Sigma、St.Louis、MO)、20pM
トリヨードサイロニン(Sigma、St.Louis、MO)、および6.78ng/ml
セレン(Sigma Aldrich Fine Chemicals Co.、Milwaukee、WI)である。続いてこの培養物に新鮮な産生培地を与えた。産生培地の組成は;DMEM)およびF−12培地(Quality
Biologics Gaithersburg、MD)の3:1混合物、4mM GlutaMAX(Gibco
BRL、Grand Island、NY)および以下の添加物を含む;5ng/ml ヒトリコンビナント表皮成長因子(Upstate
Biotechnology、Lake Placid、NY)、2% 新生子牛血清(HyClone
Laboratories、Logan、Utah)、0.4μg/ml
ハイドロコーチゾン(Sigma、St.Louis、MO)、1×10−4M
エタノールアミン(Fulka、Ronkonkoma、NY)、1×10−4M
O−フォスフォリルエタノールアミン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml
インスリン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml
トランスフェリン(Sigma、St.Louis、MO)、20pM
トリヨードサイロニン(Sigma、St.Louis、MO)、6.78ng/ml
セレン(Sigma Aldrich Fine Chemicals Co.、Milwaukee、WI)、50ng/ml
L−アスコルビン酸(WAKO Pure Chemicals)、0.2μg/ml
L−プロリン(Sigma、St.Louis、MO)、0.1μg/ml
グリシン(Sigma、St.Louis、MO)、および0.05%
ポリエチレングリコール(PEG)3400−3700 MW(細胞培養グレード)(Sigma、St.Louis、MO)である。
【0172】
細胞は37±1℃、10±1%CO2中で培養し、2〜3日毎に新鮮な培地に交換して20日間(合計21日間)培養した。培養21日後にケラチノサイトを、実施例1に示した方法で測定して、厚さ約40ミクロンのマトリックス層を形成した。また、細胞−マトリックス構築物中には内因的に産生される筋原線維コラーゲン、デコリン、およびグリコサミノグリカンが存在した。
【0173】
実施例10:産生培地中でのヒト新生児包皮線維芽細胞によるコラーゲ ンマトリックスのIn
Vitro形成
ヒト新生児包皮線維芽細胞(Organogenesis、Inc.Canton、MAより入手)は、6ウェルトレーの0.4ミクロンポアサイズの24mm直径組織培養用キャリヤー(TRANSWELL(登録商標)、Costar
Corp.、Cambridge、MA)に1×105細胞/TWの濃度で播き、成長培地で培養した。成長培地の組成は、10%
新生子ウシ血清(HyClone Laboratories、Inc.、Logan、Utah)および4mM L−グルタミン(BioWhittaker、Walkersville、MD)を含むダルベッコ改良イーグル培地(DMEM)(高グルコース濃度、L−グルタミン無添加、BioWhittaker、Walkersville、MD)である。細胞は10±1%
CO2中で37±1℃のインキュベーターで培養した。培地は2〜3日毎に新鮮なものと交換し21日間培養した。産生培地の組成は、DMEMおよびハムF−12培地(Quality
Biologics Gaithersburg、MD)の3:1混合物、4mM GlutaMAX(Gibco
BRL、Grand Island、NY)および以下の添加物を含む;5ng/ml ヒトリコンビナント表皮成長因子(Upstate
Biotechnology、Lake Placid、NY)、2% 新生子牛血清(HyClone
Laboratories、Inc.、Logan、Utah)、0.4μg/ml
ハイドロコーチゾン(Sigma、St.Louis、MO)、1×10−4M
エタノールアミン(Fulka、Ronkonkoma、NY、ACSグレード)、1×10−4M
O−フォスフォリルエタノールアミン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml
インスリン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml
トランスフェリン(Sigma、St.Louis、MO)、20pM
トリヨードサイロニン(Sigma、St.Louis、MO)、6.78ng/ml
セレン(Sigma Aldrich Fine Chemicals Co.、Milwaukee、WI)、50ng/ml
L−アスコルビン酸(WAKO Pure Chemicals)、0.2μg/ml
L−プロリン(Sigma、St.Louis、MO)、0.1μg/ml
グリシン(Sigma、St.Louis、MO)、および0.05%
ポリエチレングリコール(PEG)(細胞培養グレード)(Sigma、St.Louis、MO)。
【0174】
サンプルは、培養21日で採集し、ホルマリンで固定しパラフィンで包埋した。ホルマリン固定したサンプルはパラフィン包埋して、5μm切片をヘマトキシリン−エオシン(H&E)で当業でルーチンに行われている方法によって染色した。H&E染色スライドを用いて、10mm/100μm格子(Olympus
America Inc.、Melville、NY)のついた10x接眼レンズ(Olympus
America Inc.、Melville、NY)を用いて任意に選んだ10カ所の顕微鏡視野で測定した。この方法によって作製した該構築物は、構造および生化学的組成において、実施例1において作成したものと類似しており、厚みの測定値は、82.00±7.64である。
【0175】
実施例11:ブタ真皮線維芽細胞によるコラーゲンマトリックスのIn Vitro形成
ブタ真皮線維芽細胞(Organogenesis、Inc.Canton、MAより入手)を5×105細胞/162cm2組織培養用フラスコ(Corming
Costar、Cambridge、MA、カタログ番号3150)の密度で播き、以下のように培養した。成長培地の組成は、10%
新生子牛血清(HyClone Laboratories、Inc.、Logan、Utah)および4mM L−グルタミン(BioWhittaker、Walkersville、MD)を含むダルベッコ改良イーグル培地(DMEM)(高グルコース濃度、L−グルタミン無添加、BioWhittaker、Walkersville、MD)である。細胞は10±1%
CO2中で37±1℃のインキュベーターで培養した。培地は2〜3日毎に新鮮なものと交換した。コンフルエンスに達したら、すなわち、細胞が組織培養用フラスコの底部にぎっしり詰まった状態の層を形成したら、培地を吸引した。単層を洗浄するために、無菌濾過したリン酸緩衝液生理食塩水を単層に添加してその後培養皿から吸引した。トリプシン−バーゼン液グルタミン(BioWhittaker、Walkersville、MD)を各フラスコに5ml添加し、単層細胞に完全に行き渡るようにゆっくりと回転させることで、フラスコから細胞を遊離させた。培養物はインキュベーターに戻した。細胞が遊離するとすぐ、トリプシン−バーゼン液の作用を停止するために、SBTT(大豆トリプシンインヒビター)5mlを各フラスコに添加し細胞懸濁液と混合した。細胞懸濁液をフラスコから取り出し、無菌の円錐遠心管に等分した。細胞を約800〜1000xgで5分間遠心して集めた。細胞を再懸濁し3.0×106/mlの濃度になるように希釈し、6ウェルトレーの0.4ミクロンポアサイズの24mm直径トランスウェルに3.0×106細胞/TW(6.6×105細胞/cm2)の濃度で播いた。細胞を播種培地中で一晩維持した。播種培地の組成は;DMEMおよびハムF−12培地(Quality
Biologics Gaithersburg、MD)の3:1混合物、4mM GlutaMAX(Gibco
BRL、Grand Island、NY)および以下の添加物を含む;5ng/ml ヒトリコンビナント表皮成長因子(EFG)(Upstate
Biotechnology、Lake Placid、NY)、0.4μg/ml ハイドロコーチゾン(Sigma、St.Louis、MO)、1×10−4M
エタノールアミン(Fulka、Ronkonkoma、NY)、1×10−4M
O−フォスフォリルエタノールアミン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml
インスリン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml
トランスフェリン(Sigma、St.Louis、MO)、20pM
トリヨードサイロニン(Sigma、St.Louis、MO)、6.78ng/ml
セレン(Sigma Aldrich Fine Chemicals Co.、Milwaukee、WI)、50ng/ml
L−アスコルビン酸(WAKO Pure Chemicals)、0.2μg/ml
L−プロリン(Sigma、St.Louis、MO)、および0.1μg/ml
グリシン(Sigma、St.Louis、MO)である。細胞は10±1%
CO2中で37±1℃のインキュベーター内に静置して、培地は2〜3日ごとに新鮮なものと交換しながら7日間培養した。産生培地の組成は、DMEMおよびハムF−12培地(Quality
Biologics Gaithersburg、MD)の3:1混合物、4mM GlutaMAX(Gibco
BRL、Grand Island、NY)および以下の添加物を含む;5ng/ml ヒトリコンビナント表皮成長因子(Upstate
Biotechnology、Lake Placid、NY)、2% 新生子ウシ血清(HyClone、Logan、Utah)、0.4μg/ml
ハイドロコーチゾン(Sigma、St.Louis、MO)、1×10−4M
エタノールアミン(Fulka、Ronkonkoma、NY)、1×10−4M
O−フォスフォリルエタノールアミン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml
インスリン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml
トランスフェリン(Sigma、St.Louis、MO)、20pM
トリヨードサイロニン(Sigma、St.Louis、MO)、6.78ng/ml
セレン(Sigma Aldrich Fine Chemicals Co.、Milwaukee、WI)、50ng/ml
L−アスコルビン酸(WAKO Pure Chemicals)、0.2μg/ml
L−プロリン(Sigma、St.Louis、MO)、0.1μg/ml
グリシン(Sigma、St.Louis、MO)、および0.05%
ポリエチレングリコール(PEG)(細胞培養グレード)(Sigma、St.Louis、MO)である。7日後に産生培地を新生子牛血清を含まないものに代えた。この培地は2〜3日毎に新鮮なものと交換しながら、更に20日間、計28日間培養した。
【0176】
サンプルは、培養21日で採集し、ホルマリンで固定し、パラフィン包埋した。ホルマリン固定したサンプルはパラフィン包埋して、5μm切片をヘマトキシリン−エオシン(H&E)で既知の通常の方法に従って染色した。H&E染色スライドを用いて、10mm/100μmレティクル(Olympus
America Inc.、Melville、NY)のついた10x接眼レンズ(Olympus
America Inc.、Melville、NY)を用いて任意に選んだ10カ所の顕微鏡視野で測定した。サンプルは細胞とマトリックスから成る構造を有し、厚さが71.20±9.57ミクロンであった。また、細胞−マトリックス構築物中には内因的に産生される筋原線維コラーゲン、デコリン、およびグリコサミノグリカンが存在した。
【0177】
実施例12:真皮乳頭細胞を含む2層皮膚構築物のIn Vitro形成
一次マトリックス産生細胞タイプとして正常ヒト新生児包皮線維芽細胞を用いて、実施例1で示した方法に従って細胞−マトリックスを作成した。この細胞−マトリックスを二次産生細胞としての真皮乳頭細胞に局所的に播種した。次にこれを三次産生細胞としての角質実質細胞に播種し、細胞−マトリックスおよび真皮乳頭細胞の上を覆う連続的な表皮層を形成した。
【0178】
最初に新生児包皮に由来するヒト真皮線維芽細胞(HDF)を用いて細胞−マトリックス構築物を形成した。HDFは成長培地中に5×105細胞/162cm2組織培養用フラスコ(Costar
Corp.、Cambridge、MA)の密度で接種した。成長培地の組成は、10%
新生子ウシ血清(NBCS)(HyClone Laboratories、Inc.、Logan、Utah)および4mM L−グルタミン(BioWhittaker、Walkersville、MD)を含むダルベッコ改良イーグル培地(DMEM)(高グルコース濃度、L−グルタミン無添加、BioWhittaker、Walkersville、MD)である。コンフルエントに達したら、HDFをトリプシン−バーゼン液を用いてプレートから遊離させた。細胞は新鮮な培地に3.0×106/mlの濃度になるように再懸濁させ、6ウェルトレーの0.4ミクロンポアサイズの24mm直径組織培養用挿入体(TRANSWELL(登録商標)、Corning
Corstar)に3×106細胞/挿入体(6.6×105細胞/cm2)の濃度で播いた。HDF培養物は、10±1%
CO2中で37±1℃のインキュベーターで培養した。実施例1で示した方法に従って、新鮮な産生培地を2−3日毎に与えて23日間培養した。
【0179】
細胞−マトリックス構築物が形成されたら、二次細胞集団として真皮乳頭に播いた。真皮乳頭細胞は毛髪胞の毛髪根に囲まれている特殊な線維芽細胞の個別分布をしており、毛髪育成の支持的な役割を果たしている。真皮乳頭は、以前に報告されたMessenger、A.G.の方法(ヒト毛髪胞からの真皮乳頭細胞の培養。Br.J.Dermatol.110:685−9(1984))を用いて毛髪法の微小切開により単離できてin
vitroで培養できる。この方法を本明細書において引用によて援用する。真皮乳頭細胞はコンフルエントになったら凝集し、フラスコ上では代わって新たな凝集を作る。真皮乳頭を4週齢のブタでの皮膚バイオプシーにより単離した。真皮乳頭からの細胞(PDP)は、20%NBCSを含むDMEMで8代まで継代培養した。培養3週間後、PDP細胞は真皮乳頭様構造を呈し、あるいは凝集し、各々の直径は約90〜210ミクロンであった。その後培地を激しくピペッティングをすることによって、プレートから凝集物を培養プレートから採り、ヒトコラーゲンマトリックス上に200凝集物/cm2の濃度で播いた。凝集物は、20%NBCSを含むDMEMで更に15日間、新鮮な培地を2c3日毎に与えて培養した。
【0180】
その上に真皮乳頭細胞を含有する細胞−マトリックス培養物に、ケラチノサイトを播き、培養して細胞−マトリックスおよび真皮乳頭細胞の上を覆う連続的な表皮層を形成させた。2つの異なる構築物を形成した:1つはヒトケラチノサイトとのものであり、他はブタケラチノサイトとのものである。初代培養を確立するために正常な表皮ケラチノサイトを体外移植によってヒト新生児包皮(HEP)およびブタ角質実質細胞(PEP)から単離した。次いで、これらの細胞を培養して、ブタ株で継代3まで、ヒト株で継代4まで増殖させた。培養約5〜6日後に、細胞をトリプシン−バーゼン液を用いてシャーレ底面から遊離させ、プールし、遠心分離して細胞をペレット化し、表皮化培地中に再懸濁させ、カウントして、HEP細胞で4.5×104細胞/cm2、PEP細胞で1.6×105細胞/cm2密度で膜の上に播いた。表皮化した培養物を、実施例2で述べたように12日間培養した。
【0181】
最終サンプルをヘマトキシリン−エオシン染色に呈し、光学顕微鏡観察を行った。得られた皮膚構造は、皮膚に類似した基礎形態学的組織を示した。一つは真皮層で内因的に産生されたマトリックスにより取り囲まれた線維芽細胞から成っている。このマトリックスは内因性に産生される筋原線維コラーゲン、デコリン、およびグリコサミノグリカンを含んでいる。真皮層は、真皮乳頭細胞の場所に局在している。他の一つは細胞−マトリックス構築物および真皮乳頭を横切る層状化した角質実質細胞層である。ヒトあるいはブタケラチノサイトに覆われた両方の組織構築物において、真皮乳頭は、覆っているケラチノサイトの小さな波動を惹起する充填構造を維持していた。真皮乳頭細胞の付近には、分化した表皮細胞が存在することが多い。
【0182】
実施例13:サンドイッチELISA法によるヒアルロン酸の測定
実施例1および3の方法に従って、それぞれ、血清含有培地および化学的に限定した培地中で、真皮線維芽細胞により形成された細胞−マトリックス構築物中のヒアルロン酸(HA)を測定した。
【0183】
細胞−マトリックス構築物を、多孔性膜(TRANSWELL(登録商標)、Corning Corstar)に取り込んだ75 mm直径の円形キャリヤー上に形成した。細胞−マトリックス構築物からの抽出物は、細胞−マトリックス構築物を入れた試験管に10mLの酢酸アンモニウム緩衝液および0.5mg/mlのプロテナーゼKを添加することによって調製した。該混合物を60℃で一晩インキュベートした。消化が完全に終わったら、該混合物を遠心分離し上清をヒアルロン酸アッセイ用の個別の試験管に入れた。96ウェルプレートを0.1M
NaHCO3溶液に溶かした20μg/ml
HA結合タンパク質の50μlでコーティングし、4℃で一晩保存した。プレートは0.05% Tween20を含有する0.85%食塩水で3回洗浄した。その後、各ウェルに250μlのブロッキング液(3%
BSAおよび0.9%塩化ナトリウムを含む10mM リン酸緩衝液、pH7.4)を添加し、プレートを室温で2時間インキュベートした。その後、プレートを、0.05%
Tween20を含有する0.85%食塩水で3回洗浄した。次いで、プレートに50μlの標準HA液および両方の実験条件での抽出サンプルを、種々の希釈を含めて、添加した。プレートを、室温(約20℃)で2時間インキュベートした。それから、プレートを、0.05% Tween20を含有する0.85%食塩水で3回洗浄して、各ウェルに50μlのビオチン化HA(1:2000希釈)を添加し、室温で2時間インキュベートした。その後、プレートを、0.05%
Tween20を含有する0.85%食塩水で3回洗浄し、各ウェルに50μlのHRP−アビジンD(1:3000希釈)を添加した。次いで、プレートを室温で45分間インキュベートした。それから、プレートを、0.05%
Tween20を含有する0.85%食塩水で3回洗浄して、各ウェルに100μlのオルソ−フェニレンジアミン基質溶液を添加し、37℃で10分間インキュベートした。反応は1M 塩酸50μlを添加することで停止した。最終的にプレートリーダーを用いて492nmの吸光度を読み記録した。
【0184】
吸光度の測定値は平均を取り、質量測定値に変換した。血清含有培地で形成された円形の細胞−マトリックス構築物(直径75mm)は、それぞれ約200μgのヒアルロン酸を含有し、化学的に限定された培地で形成されたものにはそれぞれ約1.5mgのヒアルロン酸が含有していた。
【0185】
実施例14:産生された細胞−マトリックス構築物の物理的試験および機械的特性
実施例1(細胞−マトリックス構築物)、実施例2(ケラチノサイト層に覆われた細胞−マトリックス構築物)、および実施例3(限定培地で作成した細胞−マトリックス構築物)の各組織構造物の機械的特性を膜膨張法で定量した。これらの試験は臨床的に用いられているアッセイ(例、Dermaflex(登録商標)、Cyberderm
Inc.、Media、PAおよびCutameter(登録商標)、Courage
Khazaka、Colonge、Germany)に類似しているが、膜を破裂できる圧を含めてより高い圧を使っている。サンプルの細胞−マトリックス構築物を、等張の生理食塩水を満たした直径10mmの円柱状ウェルの中心に置いたポリカーボネートブロックの上に水平に置いた。円柱状ウェルの直径に対応した円形の穴を持つ金属プレートを、サンプルの上に置きブロックに留めた。そして、シリンジポンプで追加の食塩水を注入することによりサンプルを膨張させた。圧伝導計を用いて得られた圧を測定した。装置が破壊されるまで加圧を続け破裂強度、実施例1の方法で得た細胞−マトリックス構築物では439.02mmHg;実施例2のケラチノサイト層に覆われた細胞−マトリックス構築物では998.52mmHg;および実施例3の限定培地で作成した細胞−マトリックス構築物では1542.26mmHgを得た。
【0186】
真皮マトリックスの熱溶解温度を求めるために、サンプル(細胞−マトリックス構築物)を実施例1の処置によって21日目に採取した。サンプル変性温度をMettler
Toledo(Highston、NJ)示差走査熱量計(DSC製品
#DSC12E)を用いて解析した。目的のために、溶解温度はサンプルを45℃から80℃まで毎分1℃の割合で加温することによって求めた。サンプルの平均変性温度は、60.8±1.2℃(n=3)であった。
【0187】
実施例1(細胞−マトリックス構築物)および実施例3(限定培地で作成した細胞−マトリックス構築物)の処置によって作成した表皮化マトリックスの縫合維持および引張力を、一定の臨床状況での構築物の縫合力を求めるために測定した。21日目のヒト真皮マトリックスの縫合維持力を、Mini−Bionex858試験システム(MTS
systems Corporation、Minneapolis、Minn.)を用いて、血管移植人工補綴のためのアメリカ国家標準出版(American National standards publication for Vascular Graft
Prosthesis)(Instruments、1986)に記載されている方法により測定した。
【0188】
実施例1のサンプル(細胞−マトリックス構築物)では、引張力は365N/mであり、実施例2に従って調製したサンプル(角質実質細胞層に覆われた細胞−マトリックス構築物)では、引張力は2720N/mであった。
【0189】
縫合維持力は、実施例1のサンプルでは、0.14Nであり、実施例2に従って調製したサンプルでは、0.22Nであった。
【0190】
実施例1、2、および3に記述した構築物を、24mmおよび75mmの直径の両方で作成した。3つの方法全ての培養操作で作成した構築物は密着性のある組織様構築物であり、最小の力で膜より剥がすことが可能である。従って、「剥がし可能」であり、試験や使用において、損傷を与えることなく取り扱うことができる。
【0191】
実施例15:化学的に限定した培地中でのヒト新生児包皮線維芽細胞による コラーゲンマトリックスのIn
Vitro形成
実施例1で述べた処置を用いてヒト新生児包皮線維芽細胞を増殖させた。細胞を3.0×106/ml濃度になるように再懸濁し、6ウェルトレーの0.4ミクロンポアサイズの24mm直径組織培養用挿入体に3.0×106細胞/TW(6.6×105細胞/cm2)の濃度で播いた。この実施例では、実施例を通して細胞は全て化学的に限定した培地で培養した。
【0192】
培地の組成は、DMEMおよびハムF−12培地(Quality Biologics Gaithersburg、MD)の3:1混合物、4mM
GlutaMAX−1TM(Gibco BRL、Grand Island、NY)および以下の添加物を含む;5ng/ml
ヒトリコンビナント表皮成長因子(Upstate Biotechnology、Lake Placid、NY)、1×10−4M
エタノールアミン(Fulka、Ronkonkoma、NY、ACSグレード)、1×10−4M
O−フォスフォリルエタノールアミン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml
トランスフェリン(Sigma、St.Louis、MO)、20pM
トリヨードサイロニン(Sigma、St.Louis、MO)、6.78ng/ml
セレン(Sigma Aldrich Fine Chemicals Company、Milwaukee、WI)、50ng/ml
L−アスコルビン酸(WAKO Chemicals USA、Inc.)、0.2μg/ml
L−プロリン(Sigma、St.Louis、MO)、および0.1μg/ml
グリシン(Sigma、St.Louis、MO)。
【0193】
上記基礎培地に加え、個別の条件で下記の添加物を加えた。
1.5μg/ml インスリン(Sigma、St.Louis、M
O)、0.4μg/ml ハイドロコーチゾン(Sigma、St.L ouis、MO)、および0.05%
ポリエチレングリコール(PE G)(Sigma、St.Louis、MO)。
2.5μg/ml インスリン(Sigma、St.Louis、M O)および0.4μg/ml
ハイドロコーチゾン(Sigma、St .Louis、MO)。
3.375μg/ml インスリン(Sigma、St.Louis
、MO)および6μg/ml ハイドロコーチゾン(Sigma、St .Louis、MO)。
【0194】
サンプルはホルマリンで固定し、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色して、光学顕微鏡検査を行った。可視化した組織学的な観察評価で、PEGを含有しない条件2でもPEGが存在する条件1とかなり類似したマトリックスを形成することが証明された。構造物のコラーゲン含量を生化学的に測定すると、PEGが存在する条件1では168.7±7.98μg/cm2;PEGのない条件2では170.88±9.07μg/cm2、と両方でほとんど同量の値を示した。高濃度のインスリンとハイドロコーチゾンを含む条件3では、他の2つの条件よりも早い時点でコラーゲンを含んでマトリックスの発現が大きいことが示された。また、全ての条件下で細胞−マトリックス構築物体中には内因的に産生される線維性コラーゲン、デコリン、およびグリコサミノグリカンが存在した。本実施例の条件2の方法で作成した培養真皮構造体を図2に示した。化学的に限定した培地で培養した21日目の培養ヒト真皮線維芽細胞から形成した細胞−マトリックス構築物体の、固定、パラフィン包埋、ヘマトキシリンおよびエオシン染色した切片の写真を図2に示した。多孔性の膜は構造物の下に、薄い半透明のバンドのように見える。細胞は膜の表面上で成長し、膜をマトリックスの中に取り込まないことが分かる。
【0195】
図3は、本実施例の条件2の方法で作成した21日目の培養真皮構築物の伝導電子顕微鏡(TEM)の2つの倍率での像を示す。図3Aは、線維芽細胞間の内因的性コラーゲン線維の列を示している7600倍率の像である。図3Bは、完全に形成された内因性コラーゲン線維の19000倍率の像であり、原線維の配列と束を示している。
【0196】
本実施例の全ての条件下で、培養真皮構築物は、構成する皮膚線維芽細胞および内因的に産生するマトリックスを形成した。全てに完全に形成されたコラーゲン線維が細胞間で配列され束ねられた形で存在することが示された。これら線維の性質、厚さ、および完全な密着性は、培養膜から剥離可能に除去できるようにし、それらを患者へ移植するときに取り扱いし易くするために、構築物にかなりの強度を与えた。
【0197】
実施例16:皮膚構築物の全体の厚さ
上記、実施例15で述べた条件2(PEGなし)の方法でヒト真皮線維芽細胞により作成した21日目の皮膚構造を用いて、正常ヒト新生児包皮表皮ケラチノサイトを細胞−マトリックス構築物上に接種し皮膚構造の表皮層を形成した。
【0198】
培地を無菌的に培養挿入体およびその周辺から取り除いた。正常ヒト表皮ケラチノサイトを、凍結細胞ストックからコンフルエント状態までに4継代培養してスケールアップさせた。細胞を、トリプシン−バーゼン液を用いて培養皿から遊離させ、プールし、遠心分離して細胞ペレットを形成し、表皮化培地中に再懸濁させ、カウントして4.5×104細胞/cm2の密度で膜の上に播いた。構築物を37±1℃、10±1% CO2中で90分間インキュベートし、ケラチノサイトが付着するようにした。インキュベーション後、構築物を表皮化培地に浸した。表皮化培地の組成は、ダルベッコ改良イーグル培地(DMEM)(高グルコース濃度、L−グルタミン無添加、BioWhittaker、Walkersvillc、MD)およびハムF−12培地(Quality
Biologics Gaithersburg、MD)の3:1混合物で、0.4μg/ml ハイドロコーチゾン(Sigma、St.Louis、MO)、1×10−4M エタノールアミン(Fulka、Ronkonkoma、NY)、1×10−4M O−フォスフォリルエタノールアミン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml インスリン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml トランスフェリン(Sigma、St.Louis、MO)、20pM トリヨードサイロニン(Sigma、St.Louis、MO)、6.78ng/ml セレン(Aldrich)、24.4μg/ml アデニン(Sigma
Aldrich Fine
Chemicals Company、Milwaukee、WI)、4mM L−グルタミン(BioWhittaker、Walkersville、MD)、50μg/ml
L−アスコルビン酸ナトリウム塩(Sigma Aldrich Fine Chemicals Company、Milwaukee、WI)、16μM
リノール酸(Sigma、St.Louis、MO)、1μM 酢酸トコフェロール(Sigma、St.Louis、MO)、および50μg/ml 硫酸ゲンタマイシン(Amersham Arlington
Heights、IL)である。構築物は表皮化培地中で37±1℃、10±1%CO2中で2日間培養した。
【0199】
2日後、構築物は上記組成の新鮮な培地に交換し、インキュベーターに返し37±1℃、10±1%CO2中で2日間培養した。2日後、構築物を含むキャリヤーを無菌的に十分な量の培地を入れた新しい培養トレーに移し、キャリヤー膜の表面と一致する水面になり、空気−液体境界のところで構築物が発達するのを維持することが出来るようにした。形成される表皮層の表面に接触する空気は上皮細胞層の層化を促す。構築物は37±1℃、10%CO2中、および低湿度中で、2〜3日毎に培地を交換しながら7日間培養した。この培地の組成は;ダルベッコ改良イーグル培地(DMEM)(高グルコース濃度、L−グルタミン無添加、BioWhittaker、Walkersville、MD)およびハムF−12培地(Quality
Biologics Gaithersburg、MD)の1:1混合物で、0.4μg/ml ハイドロコーチゾン(Sigma、St.Louis、MO)、5×10−4M エタノールアミン(Fulka、Ronkonkoma、NY)、5×10−4M O−フォスフォリルエタノールアミン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml インスリン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml トランスフェリン(Sigma、St.Louis、MO)、20pM トリヨードサイロニン(Sigma、St.Louis、MO)、6.78ng/ml セレン(Sigma Aldrich
Fine Chemicals
Company)、24.4μg/ml アデニン(Sigma Aldrich
Fine Chemicals
Company)、4mM L−グルタミン(BioWhittaker、Walkersville、MD)、2.65μg/ml 塩化カルシウム(Mallinckrodt,Chesterfield、MO)、16μM リノール酸(Sigma、St.Louis、MO)、1μM 酢酸トコフェロール(Sigma、St.Louis、MO)、1.25mM
セリン(Sigma、St.Louis、MO)、0.64mM 塩化コリン(Sigma、St.Louis、MO)、および50μg/ml 硫酸ゲンタマイシン(Amersham Arlington
Heights、IL)である。2〜3日毎に培地を交換し14日間培養した。
【0200】
3部のサンプルを、構築物を空気−液体界面に引き上げた後、10、12、および14日目に採取し、実施例1で述べたようにヘマトキシリンおよびエオシン染色し、光学顕微鏡下で目視測定した。得られた構築物は、マトリックスで囲まれた真皮線維芽細胞からなる低真皮層と、それを覆う多層化し、よく分化したケラチノサイトの表皮層とからなる2層の皮膚構築物であった。本実施例の2層皮膚構築物を図4に示す。図4は、化学的に限定した培地で培養した真皮線維芽細胞から形成した細胞−マトリックス構築物と化学的に限定した培地で培養したヒトケラチノサイトから形成した多層化した分化した表皮からなる、化学的に限定した培地で外因性マトリックス成分なしで形成した培養皮膚構築物の、固定、パラフィン包埋、ヘマトキシリンおよびエオシン染色した切片の写真を示す。
【0201】
実施例17:ヒト頬線維芽細胞によるコラーゲンマトリックスの形成
本実験の目的はヒト頬組織から単離した頬線維芽細胞から細胞−マトリックス構築物を産生することである。頬線維芽細胞を10%NBCS含有DM培地でT−150フラスコ中で培養した。7日後に更に細胞数を増やすために、頬線維芽細胞を採集して、各4.0x106細胞を9個のT−150フラスコに入れ10%NBCS含有DMEM培地中でコンフルエントになるまで培養し、採取した。
【0202】
細胞を採取するために、培地を培養フラスコから吸引した。単層細胞を洗浄するために、無菌濾過したリン酸緩衝液生理食塩水を各フラスコの底部に添加してその後吸引した。トリプシン−バーゼン液グルタミン(BioWhittaker、Walkersville、MD)を各フラスコに5mlずつ添加し、単層細胞に完全に行き渡るようにゆっくりと回転させることで、フラスコから細胞を遊離させた。培養物をインキュベーターに戻した。細胞が遊離すると同時に、トリプシン−バーゼン液の作用を停止するために、SBTT(大豆トリプシンインヒビター)5mlを各フラスコに添加し、細胞懸濁液と混合した。この細胞懸濁液をフラスコから取り出し、無菌の円錐遠心管に等分した。細胞を約800−1000xgで5分間遠心して集めた。
【0203】
細胞は再懸濁し3.0×106/mlの濃度になるように希釈し、6ウェルトレーの0.4ミクロンポアサイズの24mm直径トランスウェルに3.0×106細胞/TW(6.6×105細胞/cm2)の濃度で播種した。細胞を37±1℃、10±1%CO2中でインキュベーターに静置し、以下の培地で培養した。培地の組成は、DMEMおよびハムF−12培地(Quality
Biologics Gaithersburg、MD)の3:1混合物、4mM GlutaMAX(Gibco
BRL、Grand Island、NY)および以下の添加物を含む;5ng/ml ヒトリコンビナント表皮成長因子(EFG)(Upstate
Biotechnology、Lake Placid、NY)、0.4μg/ml ハイドロコーチゾン(Sigma、St.Louis、MO)、1×10−4M
エタノールアミン(Fulka、Ronkonkoma、NYカタログNo.2400ACSグレード)、1×10−4M O−フォスフォリルエタノールアミン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml インスリン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml トランスフェリン(Sigma、St.Louis、MO)、20pM トリヨードサイロニン(Sigma、St.Louis、MO)、6.78ng/ml セレン(Sigma Aldrich
Fine Chemicals
Company、Milwaukee、WI)、50ng/ml L−アスコルビン酸(WAKO ChemicalsUSA、Inc.)、0.2μg/ml
L−プロリン(Sigma、St.Louis、MO)、0.1μg/ml
グリシン(Sigma、St.Louis、MO)、および0.05%
ポリエチレングリコール(PEG)(Sigma、St.Louis、MO)である。
【0204】
播種後1日目に、培地を血清無添加産生培地に交換し、以後2〜3日毎に新鮮なものと交換しながら21日間培養した。21日目にサンプルを組織学的な検討のためにホルマリンで固定した。タンパクおよびコラーゲン生成量の解析のために3個のサンプルを使用した。
【0205】
24mm直径の構造物のコラーゲン生成量は、培養21日目に構造物あたり519μgであった。24mm直径の構築物の総タンパク生成量は、培養21日目に構築物あたり210μgであった。形態学的には、頬線維芽細胞の細胞−マトリックス構築物は、口腔の結合組織の培養した培養組織構築物であるが、マトリックスにより取り囲まれた頬の線維芽細胞を示した。一方、物理的には、構造体は物理的な嵩容量と完全さを有している。
【0206】
実施例18:線維芽細胞細胞を播いたコラーゲンラティスを収縮することによる組織等価物の調製
粗コラーゲン溶液を下記のようにして調製した。450gmラットから凍結ラット尾を70%EtOH中、20分間解凍した。層流フードの中で70%EtOH中、腱束を刺激した。腱鞘から個々の腱を引き出し、切り刻み、1つの尾につき250mlずつ、希釈酢酸中に入れた(1 :1 ,000)。この溶液を4℃で48時間放置した。その時点で、切り刻んだ腱が容積全体を占めるほどに膨張した。この粘性溶液を、SW25ローター中にあるBeckman L超遠心分離機にて、23krpmで1時間遠心分離にかけた。該上清を引き出し、粗コラーゲン溶液(タンパク質「C」)として4℃で保存した。
【0207】
粗コラーゲン溶液と0.1MのNaOHとを6:1の比率で混合して、コラーゲンが析出したとき酢酸を中和することによって、精製コラーゲン溶液を調製した。この溶液を、臨床遠心分離において、1500rpmで5分間遠心分離にかけた。上清を捨て、等量の新鮮な酢酸(1:1,000)を導入して、コラーゲンを再び溶かした。この溶液を精製コラーゲン溶液(タンパク質「R」)として4℃で保存した。
【0208】
タンパク質の濃度は、Lowry et al. See Lowry, O.
H., Rosebrough, N. J., Farr, N. J. and Randall, R. J., J. Biol. Chem., 193,
265-275 (1951) and Waddel, W. J., J. Lab and
Clin. Med. 48, 311-314 (1956)に記載の方法によって測定した。
【0209】
タンパク質ラティスを、線維芽細胞が弱く接着している60mmのFalconバクテリア皿中で調製した。各皿は、IX
McCoyの培地中に懸濁させた1.0mlの5X McCoyの5a培地、1.0mlのウシ胎児血清、0.25mlの0.1M NaOH、1.5mlのコラーゲン溶液および1.0mlの線維芽細胞を含有している。該皿にまず上記量のMcCoyの培地、血清およびNaOHを注入し、その後取り除き、線維芽細胞懸濁液を調製した。ゲルはすぐ硬化するため、コラーゲン溶液と線維芽細胞を同時に添加する際には、速度が重要である。皿を、37℃、5%CO2雰囲気、100%湿度でインキュベーターに入れた。線維芽細胞を取り込んだゲルは、10分後には完全に硬化していた。
【0210】
線維芽細胞として、ヒト包皮線維芽細胞、株1519を採用した。これは、Human
Genetic Cell Repository at the Institute for Medical Research in Camden, N.J.から取得した。これらの細胞を成長させ、20%血清、ペニシリンおよびストレプトマイシンを含むMcCoyの5a改良培地にて維持した。培養物は、マイコプラスマを含んでいなかった。M.I. T. Cell Culture Centerでは、10番目の集団ごとに濃度を倍にして細胞を調製、冷凍した(PDL)。
【0211】
ラティスの直径を測定するために、皿を暗い所で透明なメートルルーラー上に配置した。皿の端部に白光を水平に照らすことによって、光学的に可視化されたゲルの端部を取得した。収縮したゲルは、十分に形成された円板形として表れた。種々のポイントでの直径の違いは非常に小さなものだった。長軸と短軸の平均をとって平均径とした。
【0212】
実施例19:線維芽細胞による水和コラーゲンラティスの収縮の測定
実施例18に記載の処置によって作製した、570μg/mlタンパク質「C」、7.5×106ヒト包皮線維芽細胞、株1519、19th
PDL含有する水和コラーゲンラティスの収縮を測定した。皿中で培地を、1、4および8日目に変えた。取得日を図3にプロットで示す。それによれば、ラティスの面積がわずか7日間で112倍に減少することを示している。1日以内に、面積が7倍に収縮することが認められた。
【0213】
実施例20:異なるタンパク質濃度の水和コラーゲンラティスの収縮
水和コラーゲンラティスのタンパク質濃度がラティスの収縮に及ぼす影響を下記のようにして測定した。3種の水和コラーゲンラティスを、それぞれが含有するタンパク質「R」の濃度を異ならせた以外、実施例18と同様の処置によって調製した。ヒト包皮線維芽細胞、株1519、19th
PDLを用い、4日目に培地を取り換えた。
【0214】
得られたデータを図4にプロットで示した。ラティスの収縮率が、ゲルタンパク質濃度と逆向きに変化することがわかった。ラティス領域は経時的に減少した。
【0215】
実施例21:細胞数が水和コラーゲンラティスの収縮に及ぼす影響
細胞数が水和コラーゲンラティスの収縮に及ぼす影響を下記のようにして測定した。720μg/mlタンパク質「R」を含有する多くの水和コラーゲンラティスを実施例18に記載の処置によって測定した。ヒト包皮線維芽細胞、株1519を用い、3、7および10日目に培地を取り換えた。
【0216】
細胞を添加しない対照を用いた。さらに、細胞数を変えて4つの連続的な実験を行った。得られたデータを図5にプロットで示した。各点は、3または4のラティスの収縮を表している。偏差は非常に小さかったので示していない(<±1.0mm)。
【0217】
時間の関数として表された収縮の相違は些細であったが、細胞数がラティス収縮の収縮率に影響を及ぼしていることが分かる。ラティス径は、最低値よりやや上の小さい共通の数の濃度に近づいた。最低値以下では、ラティスの収縮率と細胞数の関係は、はっきりと線形を示した。8.1×104個の細胞を有するラティスは、24時間の間に収縮を開始しなかった。これらのまばらに分散するラティスは、高密度のものに比べて、実験期間中ずっと非常に遅れていた。
【0218】
実施例22:異なる集団倍加数(PDL)の細胞の水和コラーゲンラティスにおける収縮能
異なる集団倍加数(PDL)の細胞の水和コラーゲンラティスにおける収縮能、すなわち、異なる数の細胞分割を行う細胞を下記のようにして、測定した。培養物を、実施例18に記載の処置によって調製し、720μg/mlのタンパク質「R」を含有する水和コラーゲンラティスから形成した。3、7および10日目に培地を取り換えた。
【0219】
細胞を添加しない対照培養物を用いた。さらに、細胞数を変えて4つの連続的な実験を行った。
【0220】
回収したデータを図5にプロットで示した。各点は、3または4のラティスの収縮を表している。偏差は非常に小さかったので示していない(<±1.0mm)。19th PDLのものと同様、35th
PDLの細胞は、同量の比率でラティスを収縮できたが、50th PDLはできなかった。
【0221】
実施例23:サイトカラシンBが細胞の水和コラーゲンラティス収縮能に及ぼす影響
サイトカラシンBが細胞の水和コラーゲンラティス収縮能に及ぼす影響を下記のようにして測定した。水和コラーゲンラティスを実施例18のようにして作製した。タンパク質「C」含有量は、570μg/mlとした。線維芽細胞(ヒト包皮、株1519、19th
PDL)細胞の培養物中の濃度は、5×l05であった。10.0μg/mlサイトカラシンBを各培養物に添加し、培地を4日目と8日目に取り換えた。
【0222】
得られたデータを図6にプロットで示した。サイトカラシンBの濃度は、比較的高い細胞濃度のときでさえ、ラティス収縮によって完全にブロックされた。
【0223】
実施例24:コルセミドがコラーゲンラティス濃度に及ぼす影響
インヒビターコルセミドがタンパク質ラティスの収縮に及ぼす影響を下記のようにして測定した。水和コラーゲンラティスを含有する培養物を、実施例18に記載の処置によって調製した。それは、570μg/mlタンパク質「C」を含有していた。コルセミドを含有しない対照を除き、それぞれに0.36μg/mlコルセミドを添加した。試験培養物と対照培養物の双方に同数の細胞を添加し、得られた結果を図7にプロットで示した。45th
PDL細胞は、19th PDL細胞を追い抜いた。一方、45th PDL未処理細胞は、19th
PDL未処理細胞に遅れをとっていた。ラティスの収縮の率および程度を調節するためにコルセミドを使用できることは明らかである。
【0224】
実施例25:サイトシンアラビノサイドが異なるPDLの細胞によるコラーゲンラティス収縮に及ぼす影響
1.0μg/mlサイトシンアラビノサイドが異なるPDLの細胞によるコラーゲンラティス収縮に及ぼす影響を以下のようにして測定した。タンパク質「C」を570μg/mlで含有する水和コラーゲンラティスを含む培養物を調製した。ヒト包皮線維芽細胞、株1519、19th
PDLまたは47th PDLを、サイトシンアラビノサイドを含有しない対照とサイトシンアラビノサイドを含有する試験培養物の双方に添加した。得られたデータを図8にプロットして示した。47th
PDL細胞が、下のPCL細胞よりも少数であるにも関わらずすぐれた特性を示すことがわかった。これらの実験においては、サイトシンアラビノサイドを用いて、DNA合成を遮断し、それによって、細胞数をラティス定数内に維持した。
【0225】
実施例26:ヒト包皮線維芽細胞とケラチノサイトを用いた皮膚等価物の形成
実施例18の処置によって、水和コラーゲンラティスを作製した。それは500μg/mlタンパク質「C」を含有していた。バイオプシーによって取得したヒト包皮線維芽細胞を、EDTAとトリプシンの溶液を用いて培養プレートから除去した。単一細胞の懸濁液を遠心分離して、細胞をペレット化し、その後、該細胞を培養培地中に再度懸濁させ、水和コラーゲンマトリックス上に、線維芽細胞導入後7日間置いた。3日以内に、ケラチノサイトがラティス基質に付着した。ケラチン化のプロセスが開始し、引き続き、不透明のcorniumを形成した。電子顕微鏡を用いて組織学的観察を行った。
【0226】
実施例27:モルモット皮膚線維芽細胞とケラチノサイトを用いた皮膚等価物を用いたin vivo研究
皮膚生検材料をモルモットから取得し、真皮を表皮から外科手術的に分離した。真皮を酵素的に乖離して構成細胞中に入れ、それを組織培養皿に入れ、増殖させた。各実験動物からの細胞を個別の培養皿で成長させ、同一性を保存した。組織を、モルモットからの線維芽細胞を採用した以外は、実施例18の処置と同様に収縮した水和コラーゲンラティスをin
vitroで作製した。収縮させた後、ラティスのいくつかを、第2の生検材料からの表皮細胞またはケラチノサイトを用いて実施例26によって配置した。各移植物中の線維芽細胞を、移植物のレシピエントとなる動物から取得した。
【0227】
これらの皮膚等価物の移植物を実験動物(モルモット)の背中に作製したところ、そのような移植物は、1週間以内にすべてのレベルで完全に統合されることがわかった。下から血管化し、真皮のレベルで、移植物のコラーゲン原線維がまわりの宿主の組織に織り込まれた。偏光顕微鏡で観察したところ、組織学的断片において、まわりの皮膚と比較して移植物は線維芽細胞密度が高く、複屈折の程度が低いことで際立っている。表皮に付与される宿主の移植物さえ、表皮細胞層(ケラチノサイト)の多くの細胞で完全に覆われていた。該層を近接する皮膚に連像させた。自己移植の場合に起こるのと同様、真皮の傷の収縮が皮膚等価物の移植物によって阻害されることもわかる。
【0228】
実施例28:ラット皮膚線維芽細胞を用いた皮膚等価物を用いたin vivio研究、真皮等価物の真皮および表皮細胞の形成
移植の可能性のあるレシピエントからの小さな生検材料を1.0mm2断片に切断した。線維芽細胞は、断片から成長させ、Lux組織培養皿に置いた。4〜7日後、該断片を除去して、捨てるか、または新たなプレートに移した。1以上のプレートの細胞をほぼコンフルエントになるまで広げた。細胞がトリプシンとの反応により除去された時点で、洗浄し、その後、組織−培養フラスコに広げた。真皮等価物1平方センチメートルあたり5×104細胞が必要であった。そして、適切な数の細胞を、トリプシンを用いて基質から除去することによって投入した。その後、細胞をコラーゲン溶液、ラット血清および組織培養培地と結合させた。コラーゲンをラット尾の腱を0.02M酢酸中に抽出し、遠心分離によって精製することによって取得した。酸性pH、タンパク質1.5mg/mlに維持したら、コラーゲンは粘性で、やや不透明な溶液となった。それはI型コラーゲンのみからなり、検出可能なSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動によって検出可能なタンパク質を含有していなかった。コラーゲンが細胞および他の成分と結合した瞬間に、コラーゲンを原線維の形状で溶液から析出させるNaOHを用いてpHを7.2に調節した。このようにして、流体が捕捉されたラティスが形成された。ラティス中のサンプルをある程度均一に分散させた。コラーゲン原線維の活性短縮のプロセスによって、ラティスを固い粘度の組織に変換した。その結果、捕捉された流体が失われ、もとのラティスの量の何倍も減少した。組織が得られ、それは真皮等価物(DE)を含んでいた。
【0229】
表皮の追加
生検材料断片からトリプシンを用いて分離した表皮細胞を真皮等価物上に懸濁液として分散させた。2〜4日以内に、表皮細胞は、連続シートを形成し、真皮基層を覆った。この間に、細胞のコンフルエントシートが分化を始めた。デスモソーム結合、トノフィラメント(tonofilament)、およびケラトヒアリン顆粒剤が明らかになり、ケラチン化のプロセスが進み、透過性の角質層を形成した。可能であれば全体のプロセスがin
vitroでDEに起こるが、この研究では、表皮細胞が、皮膚等価物(SE)として機能するコンフルエントシートを形成するとすぐ、二層化組織を移植に供した。
【0230】
皮膚等価物を、多くのラットに移植し、下記の結果を得た。まず、組織移植の3〜5日後、移植物の体内移植、血管新生化が始まり、壊死や虚血が起こることなく急速に続いた。第二に、少数の例外はあるが、移植物が収縮を阻害するであろう。移植物を作製する際、移植物に隣接する正常皮膚にタトゥーをして、移植物の限界をマークした。この処置は、移植物の寸法を経時的にモニターすることを可能とするものである。傷の収縮が起こらなかったのは、表皮による真皮等価物の最初の被覆の不十分さ、動物による移植物の拒絶、または用いられるコリン製剤の量の関数としての不適切なラティスの形成に起因するものであった。
【0231】
ある研究では、31のそのような移植物を、包帯を外したときに調べた(9−14日)たところ、傷の収縮は、7例が完全に阻害されており、15例で75%以上阻害されており、23例で50%以上阻害されていた。
【0232】
別の研究では、52の移植物において、傷の収縮が移植物全体の少なくとも75〜80%が阻害されていた。
【0233】
多くの移植物は、経時的に小さくなるが、60日以上経過しても安定しており、拒絶されたものはなかった。良好な表皮の被覆を持つ大きなサイズの移植物(約8×l2cm)は、傷の収縮を有効に阻害し(75%以上)、火傷皮膚にとって代替として良好に機能していた。
【0234】
移植物は、長期間維持された。最も長いものは、2年以上維持された。
【0235】
良好に血管化が開始することに加えて、真皮等価物のマトリックスは、移植後の最初の数ヶ月間でかなり改造された。組織学的断片の複屈折を調べることによって構造の変化を調べたところ、マトリックスが移植の1週間後複屈折を示すことが明らかになった。匹敵する齢の顆粒組織においてはその現象は認められなかった。
一方、複屈折は、時間とともに強度を増加させ、そのパターンは一般的に、正常真皮のバスケット織の形状特徴を有していた。しかしながら、移植物が正常組織と接するトランジション領域においては、10週目までに、バスケット織パターンが成長し始めていた。
【0236】
In vivoで、移植の10週後でさえ、表皮過形成は隣接する正常組織よりかなり厚かった。舌または円錐歯または表皮が、真皮等価物を突き抜けるのが認められる。外部的に、または数ヶ月の期間、表皮がややうろこ状に現われ、移植物は赤みがかった色合いとなった。約3か月後までに、移植物は、平滑になり、白ねずみの正常な皮膚と似たピンクがかった色となるが、毛が抜けている。うろこの程度は、さらに7ヶ月続いた。それは、皮脂腺がないことに起因するのかもしれない。
【0237】
実施例29:血小板をもつコラーゲンラティスの収縮による組織等価物の調製
マサチューセッツ州ボストンの赤十字センターから期限切れの血小板濃縮物を入手した。ラットおよびブタの尾の腱のコラーゲンを実施例18に記載のようにして抽出した。ブタ皮膚コラーゲンは、Shriners’ Burns Institute(ボストン)のPaul Ehrlich博士から供給してもらった。そして、テロゲン、ウシコラーゲンをCollagen Corporation, Palo Alto, Califから取得した。Waddelに記載の方法 (Waddel, W. J., J. Lab and Clin. Med. 48, 311−14 (1956)を参照されたい)による改良を用いてコラーゲン濃度を測定した。以下の式を採用した:μg/ml=0.D.215−0.D.225/64.6。
【0238】
赤十字から入手した60倍濃縮の血小板濃縮物を、253ローターを使って、IEC PR−2遠心分離を、50分間500rpmで4℃で行うことによって、さらに濃縮し、赤血球を除去した。次いで、上清をさらに50分間1500rpmで同じローターを使って遠心分離し、血小板を濃縮した。上清を抜き出し、それを用いて得られた血小板ペレットを再懸濁させた。血小板の絶対濃度は、1つの実験から次の実験までの間に、ドナーの血液中の血小板濃度に依存して変化したが、各実験のすべての濃度は、濃縮し、その後希釈した1つもしくはプールしてあるサンプルに基づくものである。1×血小板濃度は、1.0mlの血液中の血小板濃度と等しい。
【0239】
以下の成分をこの順序で組み合わせることによって血小板ラティスを鋳造した:2.3mlのDMEM 1.76x培地(Flow
Laboratories)、1.5mlのラット尾の腱のコラーゲン、0.25mlの0.1N
NaOH(コラーゲンを中和するのに必要なNaOHの濃度は、用いられるコラーゲン調製物の酸性度に依存してやや変化する)、0.45mlのFBS(Flow
Laboratories)。この混合物を、0.5mlの5x血小板濃縮物とともに、60mmのFalcon0007ペトリ皿の表面に小滴ずつ注いだ。別法として、すべての成分を別々の容器で組み合わせてから、空のペトリ皿に注いだ。得られたラティスを37℃で90%空気/10%CO2雰囲気で、湿度100%でインキュベートした。鋳造されたラティスの合計量を増減させることによってラティスの厚みを調節した。鋳造処置の関数としてのラティスの収縮率には相違は認められなかった。
【0240】
収縮率は、ラティスが、放出された流体をまず1mlピペット中へ、次に大きなものへ引き抜き、次いで引き抜いた流体量を記録することによって、測定した。その後、引き抜いた流体を培養皿に戻した。これらの測定を1時間ごとに、ラティスの収縮が最大となるまで繰り返し行った。血小板濃度が1x以下のラティスにおいて、まずラティス端部をメスで培養皿からはがし、ラティスの下に捕捉されている流体を遊離させ測定する。ラティスは、裂けると、さらに流体を放出するので、血小板の収縮のみによって放出される流体の測定値を得るためには、ラティスを傷つけないように注意が必要である。DMEMコラーゲン、NaOHおよびFBSの組み合わせを追加する前に、別個の液滴のトロンビンと血小板濃縮物をペトリ皿中に見つけることによって、トロンビン(Sigma
Chemicals)の追加の効果を調べる実験も行った。
【0241】
図9は、得られたデータをプロットして示した図であり、トロンビン濃度が4.0単位/mlであるとき、トロンビンがコラーゲンラティスの血小板による収縮に及ぼす影響を示す図である。
【0242】
図10は、濃度が4.0単位/mlであるときの、血小板濃度およびトロンビンの有無の関数として得られるラティスの収縮を示すプロットである。
【0243】
見てわかるように、反応はかなり急速に行われる。1xの血小板濃度では、発言する流体全体の80−90%がラティス鋳造の最初の3時間で生じる。6時間までに、その反応は本質的に官僚詩、平衡状態が達成される。すなわち、湿度100%の条件下では、更なる流体の放出は観察されない。この時点では、最初の流体量の20−80%がラティスから発現され、その正確な量は血小板やコラーゲン濃度に依存し、また、他の鋳造培地変数に依存する。血小板ラティスの収縮の結果、血小板を含まないコラーゲンラティス鋳造のものと比較して、比較的高い引張力の組織等価物が形成された。
【0244】
トロンビンが十分な数の血小板とともに鋳造混合物に含まれている場合、組織等価物は、図2に示されているように、より早く形成される。トロンビンを含有する組織等価物は、それを含有しない組織等価物とはやや異なる特性を有しており、その引張力はやや低く、その流体定数はより低い。引張力は、
鋳造および破壊時間の測定後、組織等価物に対するグラム重量を試すことによって測定した。
【0245】
血小板ラティスの収縮率は、血小板の濃度に関連している。血小板の濃度の上昇によってラティス収縮が早まり、その結果、図10からわかるように、ラティスの流体が比例的に減少する。
【0246】
実施例30:タンパク質の濃度とタイプが血小板による収縮に及ぼす影響
タンパク質の濃度とソースが血小板によるラティスの収縮に及ぼす影響を、様々な濃度の異なるソースから得たコラーゲンを用いて調べた。他に記載がなければ実施例29に記載の方法で行った。得られたデータを図11A乃至11Dにプロットで示した。
【0247】
見てわかるように、鋳造培地のコラーゲン含有量を増加させると、収縮率と、絞り出される流体の量が減少する。これらの結果は通常、線維芽細胞が収縮性の作用物質として使用されたときのそれに対応している。
【0248】
4つの異なるソースからのコラーゲンは、テロゲンが他の3つのソースからのコラーゲンに比べて収縮に対する抵抗がかなり少ないことを除いて、同様の機能を示した。
【0249】
実施例31:インヒビターサイトカラシンBおよびコルセミドが血小板によるコラーゲンラティスの収縮に及ぼす影響
インヒビターサイトカラシンBおよびコルセミドが血小板による水和コラーゲンラティスの収縮に及ぼす影響を、下記の点を除き、実施例29に記載の一般的な処置にしたがって測定した。
【0250】
サイトカラシンB(Sigma Chemicals)およびコルセミド(CIBA
Pharmaceutical Company)を、濃縮DMEM培地に直接添加し、5mlのラティス量中の最終濃度をそれぞれ10μg/ml、5μg/mlとした。得られたデータを図12にプロットで示した。
【0251】
見てわかるように、サイトカラシンBの存在下で血小板とともに鋳造したラティスは、収縮できなかった。一方、コルセミドは、ラティスの収縮に対して明らかな影響を示さなかった。このことは、コルセミドがヒト血小板のフィブリンクロットを収縮させる能力に影響を及ぼさないことが既知であるので、予期されていたことであった。一方、サイトカラシンBは、血小板の円板形を安定させ、偽足の形成を阻害する。
【0252】
実施例32:ウサギ移植物
血小板によって収縮させた水和コラーゲンラティスから形成され、ウサギの耳への移植に適した組織等価物を以下のようにして調製した。移植の可能性のあるレシピエントから心臓穿刺によって取得した10mlのウサギ血液から血小板を採取し、実施例29に記載のように、分画遠心分離法によって濃縮した。さらに実施例29に記載の方法にしたがってウサギ血小板ゲルを鋳造した。収縮後、実施例28に記載の処置にしたがって、ラティスに同じウサギから得た生検材料に由来する表皮細胞を播いた。
【0253】
麻酔したウサギを、移植部位に毛をクリップすることによって、移植用に調製した。移植床の輪郭を描き、その輪郭の外周のちょうど外側にタトゥーマークを付けた。この部位を70%エタノールで洗浄し、軟骨を覆っている筋膜上にあるすべての組織を除去した。組織等価物を培養皿から剥がし、移植床に置き、移植物の端部を移植床の端部とわずかに重ね合わせた。移植物を、テルファ(Telfa)パッドにワセリンを含浸させることによって調製したツルグラの上に置いた。アール(Earle)の塩溶液に浸漬させたテルファ(Telfa)パッドをツルグラ上に置いた。耳には発泡性のパッドを用いて、形状を維持し、3インチの粘剤付き包帯で耳に包帯を巻いた。ウサギが包帯を外さないように、両方の耳を3インチの粘剤付き包帯にテープで留めた。移植の7日目に包帯を外した。引っ掻かないようにさらに2日間、ウサギをエリザベス調の襟に固定した。
【0254】
移植領域と正常皮膚の縁とを合わせて、単一片としてウサギの耳から摘出し、0.03Mリン酸緩衝液中の10%ホルマリンに浸した。その皮膚を一晩固定し、蒸留水で洗浄し、酢酸アミル、次にトルエンで洗浄し、次いで、Paraplast
t.Sevenミクロン切片中に包埋し、回転式マイクロトームで切断し、これらをヘマトキシリンおよびエオシンで染色した。
【0255】
すべての実験において移植物は受け入れられ、傷の収縮を阻害した。概して、この移植物は、周りの皮膚より白く見え、表面は幾分鱗状であり、毛はなかった。6週間経ても、中心に位置する瘡蓋は残っていた。
【0256】
6週間存在した移植物を組織学的に調べ、移植物に周辺線維芽細胞に浸透する程度を部分的に測定した。移植物中の線維芽細胞の密度は、隣接組織の密度と比べてかなり大きかった。移植物は、光学顕微鏡で観察したとき、複屈折のレベルが低いため、隣接組織から区別された。移植物は、2次誘導体、すなわち、毛嚢および皮脂腺が存在しないことから、さらに周りの組織から区別された。移植物の表皮の被覆は、顕著に肥大していた。
【0257】
実施例33:ラットでの皮膚等価物の形成における、皮膚等価物拒絶に関するin vitro研究
皮膚の小片をメスフィッシャー(Fischer)344ラットの背中から除去した(Charles
River Breeding
Labs)。これらの生検材料を外部組織からトリミングし、2〜3mm3片とし、Lux組織培養皿の表面で乾燥させた。生検材料から成長した該線維芽細胞を、10%ウシ胎児血清、ペニシリン、ストレプトマイシンおよびファンギゾン(Flow
Laboratories)を添加したダルベッコ改良イーグル最小基本培地(DMEM)中で10%CO2雰囲気で37℃で培養した。
【0258】
コラーゲンラティスを実施例28に記載の処置に従って調製した。簡単にいえば、2−8×105の線維芽細胞を100mmのプラスチック皿中で、濃縮DMEMおよび10%ウシ胎児血清、抗生物質および6mgのラット尾コラーゲンを1:1000希釈の酢酸水溶液中で結合させた。1週間以内に、線維芽細胞はコラーゲンラティスを収縮させ、新鮮な生検材料から解離させた表皮細胞の懸濁液をラティス表面上に積層させた。10−10Mコレラトキシン、20μg/ml表皮成長因子、および0.4μg/mlヒドロコルチゾンを培地に添加し、表皮細胞の成長を促進させ、皿を5%CO2雰囲気に移した。1週間以内に、表皮細胞は、コラーゲンラティス表面上にコンフルエントシートを形成し、皮膚等価物を移植できる状態とした。
【0259】
アロ移植を試験するために、ラティスをスプレーク・ドーリー(Sprague−Dawley)雌ラットから得た細胞を用いて調製し、雄フィシャー(Fisher)ラットに移植した。
【0260】
移植処置
体重約350〜400gの雄フィシャー(Fisher)ラットを、フェノバルビタールナトリウムで麻酔した。ラティスとほぼ同じ大きさの移植床を各動物の背中からの全厚の皮膚を除去することによって調製した。該ラティスを傷の部位に置き、ワセリン含浸テルファ(Telfa)パッドで被覆し、テルファ(Telfa)パッドをアール(Earle)の塩溶液に浸漬させた。多層の粘剤付き包帯を体に巻くことによって、これらの包帯を巻いた。移植物を最初に塗布した後、9〜13ヶ月間隔で、動物に再び麻酔をかけ、移植物全体を切除した。移植物の半分をリン酸緩衝ホルマリンに固定し、エタノール中で脱水し、パラフィン包埋を行った。移植物の他方の半分の中央部の被覆脂肪組織をトリミングして、2〜3mm3片とし、組織培養物中に置き、残留線維芽細胞を成長させた。
【0261】
カリオタイプの調製
移植物から成長した線維芽細胞集団を継代培養して、3〜6本のT−150フラスコ中の急速に分解した細胞を得た。線維芽細胞を2μg/mlコルヒチンで4時間処理し、フラスコを振り、低張培地(1部のDMEMから3部の希釈H2O)中で膨張させ、ガラススライド上で空気乾燥させ、アセトオルセインで染色した。各時点での20乃至30の完全染色体を撮影し、カリオタイプを調製し、線維芽細胞集団全体中の雌細胞の割合を測定した。
【0262】
スプレーク・ドーリー(Sprague−Dawley)雌ラット細胞を用いたドラフトを受け、宿主としての雄フィシャー(Fisher)ラットに保持させ、1〜2か月後、移植物中の雌細胞の有無を測定した。
【0263】
実施例34:皮膚組織等価物試験システムの調製
A.図16に記載の装置と類似の装置を用いて、以下に記載の作業を行った。操作を行うためにカバーをはずすが、それ以外では、無菌性を保持するため所定位置に保った。装置に関連する情報を以下に記載する:
【0264】
外側容器10:
直径38mm
容量35ml
内側容器20:
直径24mm
容量4ml
透過性部材24:
Nucleporeのポリカーボネート膜、孔径3ミクロン、厚さ5ミクロン
【0265】
B.無細胞、水化コラーゲンゲルを、透過性部材24を以下のように形成した
(1)プレミックス:
10×MEM 16.2ml
L−グルタミン(200mM) 1.6ml
ゲンタマイシン(50mg/ml) 0.2ml
ウシ胎児血清 18.0ml
炭酸水素ナトリウム(71.2mg/ml) 5.0ml
【0266】
上記順序で組み合わせて、37℃で保存溶液を混合し、4℃で30分間50ml中試験管中に保存した(気体は供給しない)。(2)27.8gの1mg/mlコラーゲン(ウシ指屈筋から酸によって抽出)の0.05%v/v酢酸中溶液の重さを量り、4℃で30分間50ml中試験管中で保存した。(3)8.2mlの上記プレミックスと4mlのDMEM完成物(10%FBS、4mM L−グルタミン、50μg/mlゲンタマイシンを含有する)を添加し(そして1mlアリコートを内側容器20中にピペットし、フード中でゲル化させた)。
【0267】
C. ヒト真皮線維芽細胞を用いて組織等価物を鋳造し、ヒト表皮(上皮)細胞を下記のよう播いた。処置や試薬についての一般的な説明は、1989年6月5日出願の第07/361,041号の特許やコペンディングの書類に見出すことができる。
【0268】
8.2mlの上記プレミックスを27.8gの1mg/mlコラーゲンの0.05%v/v酢酸中溶液に上記ステップAのようにして添加し、4mlのヒト真皮線維芽細胞(2.5×105細胞/ml)を組み合わせた。3mlのアリコートを内側容器20中の上記ステップBで作製された無細胞、水化コラーゲンゲルにピペットした。4.5mlのDMEM完成物を外側容器20に添加し、次いで、36℃/CO2で、一般的には4〜8日間インキュベートした。
【0269】
下記の培地を用いた
【表6】
【0270】
使用した2つの異なる培地は、mSBMと以下に記載の点を除いて同一である。
【表7】
【0271】
いくつかの例では、塩化カルシウムを1.8mMで培地に添加した。これを培地プラスカルシウム、例えば、mSBMプラスカルシウムと示す。
【0272】
D.組織等価物の鋳造後6日目で表皮化が開始した。
【0273】
(1)表皮化
内部容器20および外部容器10の双方から、ステップCに記載の培地を除去した。50μlのヒト表皮細胞懸濁液(3.33×106細胞/ml)を、上記ステップCで形成した組織等価物中に入れた。次いで、該容器を36℃、10%CO2で4時間インキュベートした。次いで、12.0mlのmSBMを外部チャンバーに、4mlをウェルに添加した。そして、該装置を同じインキュベーターに戻した。
【0274】
分化
表皮化の2日後、培地を除去し、mSBMプラスカルシウムと取り換えた。
【0275】
エアリフティング
表皮化の2日後、下記の処置を行った:内部および外部のチャンバーから培地を除去した。内側容器20を除去し、2体積分のcSBMプラスカルシウムをしみこませたコットンパッドを外部チャンバー10の底部に置き、9.0mlのcSBMプラスカルシウムを添加した。そして内側容器20を取り換え、35.5℃、10%CO2でインキュベートした。
【0276】
(4)維持
4日ごとに培地を除去し、新鮮な主SBMプラスカルシウムと取り換えた。
【0277】
実施例35:アガロースを組み込んだテストシステムの調製
2%アガロース水溶液を、高圧蒸気滅菌法によって殺菌し、40℃に冷却し、等量の2倍濃縮主SBMと混合した。吸収コットンパッドを除去し、13mlの混合物を外側領域14に注ぎ、36℃(10%CO2)に設定し、装置をインキュベーターに戻して、出荷まで保存した。
【0278】
本明細書に記載の実施例および実施の形態は、例示の目的で示したにすぎず、これに照らして当業者が提案するであろう種々の改変もしくは変更も、本願および認められた請求の範囲の精神および範囲に含まれることが理解される。
【0279】
実施例36:陥没した口腔歯肉の治療のための培養組織構築物の有効性
培養組織構築物がフリーの自家移植に匹敵する、付着した歯肉の機能的領域を提供し得るかどうかを判断することを主な目的とする。
【0280】
この研究の間、25名までの被験者をコントロールした。被験者の年齢は少なくとも18〜70歳とした。最初の3名の被験者には、外科的マテリアルハンドリング技術で測定し、数値分析には含めなかった。続く被験者を、これらの3名の患者の対照として登録し、4週間のフォローアップを完全に行った。登録した被験者は、少なくとも2つの歯肉の不十分なゾーンに付着しておらず、組織移植が必要な歯を有していた。歯根の被覆については指示がなく、または、移植時には望ましくない。被験者は、本発明の培養組織構築物またはフリーの自家移植によって処置しなければならない。移植物を臨床的に評価して、付着した歯肉の変化を測定し、生検材料の小片を取り出して、双方の移植物の組織学的評価と比較を行った。第2の有効性変数は、移植物された組織の、広範な角化組織、陥没の深さ、炎症の刻み目、色またはテクスチュアの隣接組織との整合性、口腔筋の引っ張りに対する抵抗、臨床的付着レベル、探針深さおよび被験者の不快感のベースラインからの変動である。
【0281】
本研究は、無作為化、対照治療比較を被験者間で行った。培養組織構築物とフリーの自家移植を通して生成された、付着歯肉の量と質を手術後1週目、1、2および6カ月後に評価した。最初のエンドポイントは、6カ月後に起こった。すべての術後評価は、行われた外科手術手順について知らない研究コーディネーターによって行われた。色、テクスチャー、炎症、および筋肉の引っ張りに対する抵抗性は、キャリブレートリサーチコーディネータによって個別に刻み目をつけられた。
【0282】
上述の発明について、明確さと理解を深めるために図および実施例で詳細に説明してきたが、請求項の範囲内で一定の変化や修飾を行ってもよいことが当業者には明かであろう。
【図面の簡単な説明】
【0283】
【図1】図1は、ヒドロキシプロリンアッセイによって測定されたコラーゲン濃度の上昇を、実施例1に記載のヒト新生児包皮細胞に由来する真皮構築物における細胞数と比較して示すグラフである。
【図2】図2は、水和コラーゲンラティスの線維芽細胞を用いた構築を示すデータのプロットを示す図である。
【図3】図3は、コラーゲン含有量が異なる水和コラーゲンラティスの線維芽細胞を用いた構築を示すデータのプロットを示す図である。
【図4】図4は、線維芽細胞数が異なる水和コラーゲンラティスの線維芽細胞を用いた構築を示すデータのプロットを示す図である。
【図5】図5は、2倍の濃度の異なるポピュレーションの細胞を用いた、水和コラーゲンラティス上の線維芽細胞の収縮性の容量を示すデータのプロットを示す図である。
【図6】図6は、水和コラーゲンラティスを収縮するために、10.0μg/mlのインヒビターサイトカラシンBが線維芽細胞の容量に及ぼす影響を示すデータのプロットを示す図である。
【図7】図7は、水和コラーゲンラティスを収縮するために、0.36μg/mlのインヒビターコルセミドが線維芽細胞の容量に及ぼす影響を示すデータのプロットを示す図である。
【図8】図8は、水和コラーゲンラティスを収縮するために、サイトシンアラビノサイドが線維芽細胞の容量に及ぼす影響を示すデータのプロットを示す図である。
【図9】図9は、トロンビン濃度4.0ユニット/mlで、トロンビンがコラーゲンラティスの血小板による収縮に及ぼす影響を示すプロットである。
【図10】図10は、トロンビン濃度4.0ユニット/mlで、血小板濃度およびトロンビンの有無の関数として、コラーゲンラティスの収縮を示すプロットである。
【図11】図11A乃至11Dは、用いるコラーゲンの種類およb濃度の関数として、コラーゲンラティスのラティス収縮を示すプロットである。
【図12】図12は、インヒビター、サイトカラシンBおよびコルセミドが血小板による水和コラーゲンラティスの濃度に及ぼす影響を示すプロットである。
【図13】図13は、本発明の1つの装置の一部切り欠き等角投影図である。
【図14】図14は、図13に示す装置の分解等角投影図である。
【図15】図15は、図13に示す装置の3−3に沿った断面図である。
【図16】図16は、本発明の別の装置の一部切り欠き等角投影図である。
【図17】図17は、図16に示す装置の分解上面図である。
【図18】図18は、図16に示す装置の6−6に沿った断面図である。
【背景技術】
【0001】
本発明は、組織工学の分野に属する。特に、口腔組織の再生および修復のための培養組織構築物の利用に関する。
【0002】
発明の背景
組織工学の分野は、生物工学的方法と生命科学の原理を組み合わせて、正常な哺乳動物組織と病理的な哺乳動物組織の構造的および機能的関係を理解する。組織工学の目的は、生物学的代替物を開発し、組織機能を回復、維持、または改善するために最終的に適用をすることである。したがって、組織工学によって、実験室レベルで生物工学処理された組織を設計および製造することができる。生物工学的処理された組織は、通常、天然の哺乳動物組織またはヒト組織と合成もしくは外因性のマトリクススカホードとを関連づけた細胞を含むことができる。
【0003】
生物工学処理された組織は、ホストに移植されたとき機能的でなければならず、またホストの体に永久に組み込まれていなければならない。またはレシピエントホスト患者からの細胞によって積極的に生体内でリモデルされなければならない。サポート部材やスカホードを用いずに組織等価物を作製することは、新たな生物工学処理された組織を作製する際の科学的課題である。
【0004】
口腔軟組織の移植処置の大部分は、口蓋からの自己組織を用いて行われる。処置によっては、これは非常によく機能するかもしれないが、患者にとってはかなり痛みを伴いうる「ドナー部位」を作る必要があるという不利を伴う。このさらなるドナー部位はまた、組織が限定されてしまう。つまり、1度に処置できるのはわずか2〜3本の歯にとどまる。この結果、多数の手術が必要な場合、または移植処置によって恩恵を受けることができるであろう未処置の歯が複数存在するもしれない場合でも、歯科医師が「最も悪い歯」のみを治療することになる。
【0005】
発明の概要
本発明は、培養組織構築物を被験者の口腔組織に移植することによって、被験者の口腔の状態を治療するための方法に関する。
【0006】
本発明の培養組織構築物は、培養された細胞および内因的に作製された細胞外細胞外マトリックス成分を含み、外因性のマトリックス成分またはネットワーク支持体またはスカホード部材を必要としない。したがって本発明は、完全にヒト細胞およびヒトにおいて使用されるそれらの細胞によって作製されるヒト・マトリックス成分から作製することができる。
【0007】
培養組織構築物の移植物は、細胞外マトリックス成分を生成する線維芽細胞を含み、外因性のマトリックス成分またはネットワーク支持体またはスカホード部材を添加しない。
【0008】
当該培養組織構築物は、細胞外マトリックス成分を生成する線維芽細胞を限定された培地系の中に含み、および/または限定されていない、もしくは非ヒト由来の生物学的成分、例えば、ウシ血清もしくは臓器抽出物を含まない。
【0009】
さらに、培養組織構築物は、天然組織の細胞組成や組織構造に似た培養組織構築物を生成する、異なるタイプの細胞を連続的に播くことによって作製することができる。特に、この培養組織構築物は、培養された線維芽細胞細胞の少なくとも1層の上皮細胞を含む。さらにまた、該組織構築物は、スカホード支持体や外因性の細胞外マトリックス成分の添加を必要とせずに、作製し、自己集合させる。
【0010】
本発明の培養組織構築物の移植物はまた、収縮性の作用物質を含有するコラーゲン溶液のゲル混合物を含む。
【0011】
また、本発明の培養組織構築物の移植物は、無細胞コラーゲンゲルの層の上に配置される収縮性の作用物質を含有するコラーゲンを含むコラーゲンゲルの層を含む。
【0012】
本発明のさらに別の実施態様においては、コラーゲンゲルおよび収縮性の作用物質を含む前記層に上皮細胞が添加される。
【0013】
当該組織構築物の強度特性によって、それが形成され、臨床または試験に適用される場合、いかなる支持体も担体も必要とせず、直接的に埋め込まれている培養装置から容易かつ剥離可能に除去できるように取扱うことができる。本発明の組織構築物は、口腔歯肉の後退、歯間の乳頭状突起の欠損、歯茎音の欠陥、口腔インプラントの不全、歯分岐部欠陥など、口腔組織に違和を持つ患者、および上顎顔面の腫瘍切除後の組織再構築が必要な患者に治療に適応がある。
【0014】
(本発明の詳細な説明)
本発明は、被験者の口腔の状態を、培養組織構築物を移植することによって治療することに関する。
【0015】
「培養組織構築物」、「工学的に処理された生体組織」、「細胞−マトリックス構築物」、「細胞−マトリックス層」、「皮膚等価物」、「生体組織」、および「生体結合組織」は、本発明の培養組織構築物の態様として交換可能に用いられることに留意すべきである。
【0016】
これまで、現在の工学的に処理された生体組織構築物は、完全に細胞の集合したものではなく、構造または支持体、またはその両方において、外因性のマトリックス成分または合成部材の添加または組み込みに依存していた。
【0017】
本明細書に記載の生物工学処理された組織構築物は、それらの細胞が由来する組織の天然の特徴の多くを示すものである。こうして作製された該組織構築物は、患者の口腔の状態を治療するために用いることができる。
【0018】
1つの好ましい実施態様は、第1の細胞タイプと内因的に作製された細胞外マトリックスを含む細胞−マトリックス構築物である。第1の細胞タイプは、細胞外マトリックスを合成および分泌して、細胞−マトリックス構築物を作成することが可能である。
【0019】
別の好ましい実施態様は、第1の細胞タイプ、内因的に生成された細胞外マトリックス、およびその上にまたは第1の細胞タイプによって形成された細胞−マトリックス構築物の中に配置された、第2のタイプの細胞層を含む二層構築物である。
【0020】
より好ましい実施態様は、真皮に由来するものなどの線維芽細胞を含み真皮構築物を形成する細胞−マトリックス構築物である。
【0021】
より好ましい実施態様は、真皮に由来するものなどの線維芽細胞を含み、真皮構築物を形成し、その上で培養されたケラチノサイト層を持ち、表皮を形成して、結果として二層の皮膚構築物となった細胞−マトリックス構築物である。本発明の培養された皮膚構築物は、天然の皮膚のもつ身体的、形態学的、および生化学的特徴を示す。
【0022】
さらに好ましい実施態様において、該細胞−マトリックス構築物は、皮膚の真皮層に類似した組織構築物、ヒト由来の細胞を含み、培養物中に化学的に未定義の成分を含まない、定義されたシステムの中で形成されるヒト真皮構築物である。
【0023】
最も好ましい実施態様においては、本発明の組織構築物は、ヒト由来の細胞であり、化学的に未定義もしくは非ヒト生物学的成分もしくは細胞を含まない化学的に定義されたシステムにおいて作成される。
【0024】
本発明の別の実施態様においては、培養組織構築物は、コラーゲン溶液および収縮性の作用物質を含むゲル混合物を含む。
【0025】
本発明の実施態様においては、培養組織構築物は、無細胞コラーゲンゲルを含む第1の層および該第1の層の上に配置された第2の層を含む。前記第2の層は、コラーゲンおよび収縮性の作用物質を含有する第2のコラーゲンゲルを含む。本発明のさらにいっそう好ましい実施態様においては、収縮性の作用物質を持つ第2のコラーゲンは、ケラチノサイトを播種されたものである。
【0026】
A:培養組織構築物の用途
本発明の培養組織構築物は、口腔歯肉の後退、歯間の乳頭状突起の欠損、歯茎音リッジの欠陥、口腔インプラントの不全の結果、または上顎顔面の腫瘍切除などの口腔の状態を治療するために適用される。
【0027】
各歯のまわりに付着した歯肉の機能的領域は健康にとって必要であることは一般に認められているところである。この組織がなければ、歯肉の後退が頻繁に起こり、その結果、皮質プレートの部分の欠損を引き起こし、歯の予後を悪化させる。さらに、歯に面する粘膜は、歯肉の機能的領域がなければ、被験者の自己ケアがよくても、頻繁に炎症が起こる。この炎症は、歯の周りの骨の欠損を引きおこす可能性もある。
【0028】
1960年代後半以降、この種の問題は常にフリーな自家移植によって修正されてきた。粘膜を顔面から問題の歯にかけて除去し、角化した組織を口蓋から回収し、移植床に縫合する。まず、移植物を形質循環(plasmotic circulation)によって支持し、その後周りの床から再血管化する。このタイプの移植の成功はほぼ100%である。しかし、多くの被験者からは、口蓋組織の代わりに使うことができるドナー材料を同定するという強い要望がある。もちろんこれによって、この処置のために必要な手術の部位数を半減させる。代替ドナー材料は何年もの間使用されてきた。過去においてはフリーズドライの死体皮膚が用いられていた。また、最近では、無細胞の真皮移植物がドナー材料として用いられている。極めて、かけ離れているにもかかわらず、これらのタイプの真皮材料に関連する感染(主にエイズや肝炎)の可能性のために、それらの使用が抑止されている。それに加えて、こうしたドナー材料を用いる移植物の最終的な美的効果は、通常理想より低い。
【0029】
B.少なくとも1つのタイプの細胞外層形成細胞の構造層を内因的に産生された細胞外マトリックスとともに含む培養組織構築物
本発明のある好ましい実施態様は、少なくとも1つのタイプの細胞外マトリックス産生細胞および内因的に産生された細胞外マトリックス成分の構造層(より簡単には「マトリックス」と呼ぶ)を含む。該マトリックスは完全に細胞合成され、細胞を培養することによって組み立てられる。この層を本明細書においては、「細胞−マトリックス構築物」または「細胞−マトリックス層」と呼んでいる。なぜなら、該細胞は、マトリックス内およびマトリックスを通して細胞自身を分泌および含有するからである。2000年3月3日(原語:03/03/200)に出願された共係属の米国特許出願第09/523,809号(その内容を本明細書において引用によって援用する)に記載されているように、該培養組織構築物は、外因性のマトリックス成分、すなわち、培養された細胞によって産生されたものではない、他の手段によって導入されたマトリックス成分を必要とせず、したがってそれを含まない。より好ましい実施態様においては、ヒト真皮線維芽細胞によって作製された細胞−マトリックス構築物が、天然の皮膚に類似した有力なコラーゲン濃度を持つことが示された。電子顕微鏡から明らかなように、該マトリックスは、線維状の性質を持ち、4分の1差の67nmバンディングパターンを示すコラーゲンを含み、また、天然のコラーゲンに類似した原線維および原線維束の結合構成を示す。
【0030】
遅延還元SDS−PAGEは、生来のヒト皮膚に見られる優勢なコラーゲン型であるこれらの構築物中のI型およびIII型コラーゲンの両方の存在を検出した。標準免疫組織化学(IHC)技術を用いて、皮膚の細胞−マトリックス構築物は、コラーゲン原線維に結合されることが知られ、そしてin
vivoで原線維の直径を調節すると思われているデルマタン硫酸プロテオグリカンである、デコリンに対して陽性に染色する。デコリンは、TEMを用いて構築物中で可視化もされうる。産生した組織は、例えば、修復中の間葉または組織で見られる細胞外マトリックス糖タンパク質であるテナスシンに対して陽性に染色もする。生体内で修復中の組織とより同様に、培養基中で産生された組織は、マトリックスが形成されるときにI型対III型コラーゲンのそれの比を増大することが示された。
【0031】
理論に束縛されることを望むわけではないが、細胞は、それらの間の開放空間に、主にIII型コラーゲンおよびフィブロネクチンから構成される顆粒組織に類似のゆるいマトリックスで、すばやく充填し、そしてその後、このゆるいマトリックスを、主にI型コラーゲンから構成される周密マトリックスで再生すると思われる。産生された細胞−マトリックスは、ヒアルロン酸(HA)のようなグリコサアミノグリカン(GAG);フィブロネクチン;ビグリカンおよびベルシカンのようなデコリンに加えてプロテオグリカン;およびジヒアルロン酸;ジコンドロイチン−O−硫酸;ジコンドロイチン−4−硫酸;ジコンドロイチン−6−硫酸;ジコンドロイチン−4,6−硫酸;ジコンドロイチン−4−硫酸−UA−2S;およびジコンドロイチン−6−硫酸−UA−2Sのような硫酸グリコサアミノグリカンのプロファイルを含むことが示された。これらの構造的および生化学的特性は、構築物が培養基中で発生するとき、それら自身を示し、そして構築物がその最終形態に近づくときに明らかに明白である。十分に形成された培養皮膚の細胞−マトリックス構築物でのこれらの成分の存在は、その構築物が、正常な真皮のものに近づく構造的および生化学的特性を示すことを示す。
【0032】
前述のリストが、培養細胞−マトリックス構築物の生化学的および構造的特性のリストであるときに、真皮の線維芽細胞から形成され、他の型の線維芽細胞から形成される培養細胞−マトリックス構築物が、これらの特性の多く、およびそれらが起源する組織型についての他の表現型を生じることが認識されるべきである。いくつかの場合において、線維芽細胞は、化学的曝露または接触、物理的ストレスのいずれかにより、またはトランスジェニック手段により非表現型成分を発現するように誘導されうる。
【0033】
本発明の別の好ましい実施態様は、その上に置かれた細胞の第二層を有する細胞−マトリックス層である。細胞の第二層を、細胞−マトリックス層で培養して、生物工学的に処理された二層の組織構築物を形成する。さらに好ましい実施態様では、第二層の細胞は、上皮起源のものである。最も好ましい実施態様では、第二層は、第一の細胞−マトリックス層と一緒に、皮膚層を形成する皮膚の線維芽細胞および内因性マトリックスから形成された細胞−マトリックス構築物が、生きた皮膚構築物を包含する培養ヒト・ケラチノサイトを包含する。十分に形成されたときに、表皮層は、基質層、超基質層、顆粒層および角質層を示すケラチノサイトの多層化となり、層にされ、そして十分に分化された層となる。皮膚構築物は、透過型電子顕微鏡(TEM)から明らかなように、皮膚−表皮接合部に存在する十分に発達した基底膜を有する。基底膜は、TEMによって可視化されるときにIII型コラーゲンから構成される原線維に足場をつけることにより印される、ヘミデスモソームの周囲で最も厚くみえる。固着用原線維は、基底膜から出ること、および皮膚層中のコラーゲン原線維を捕捉することがわかる。他の基底膜成分と同様に、これらの固着用原線維は、ケラチノサイトによって分泌されることも知られている。ケラチノサイトは、それら自身での基底膜成分を分泌する能力がある場合、認識可能な基底膜は、線維芽細胞の不在下で形成しないことも知られている。本発明の皮膚構築物の免疫組織化学的染色は、基底膜タンパク質であるラミニンが存在することも示した。
【0034】
細胞−マトリックス構築物を形成するための本発明の好ましい方法では、第一の細胞タイプである、細胞外マトリックス産生細胞タイプを、基質に播き、培養および誘導して、それらの周囲に組織化細胞外マトリックスを合成および分泌して、細胞−マトリックス構築物を形成する。本発明の別の好ましい方法では、細胞−マトリックス構築物の表面に、第二の細胞タイプの細胞を播き、培養して、二層の組織構築物を形成する。より好ましい方法では、元来のヒト皮膚に類似の特性を示す十分な厚みの皮膚構築物が、ケラチノサイトのようなヒト上皮細胞が、播種され、そして、十分に分化した層化表皮層を形成するのに十分な条件下で培養される真皮層である、真皮細胞およびマトリックスの細胞−マトリックスを形成するマトリックス合成を誘導するのに十分な条件下で、ヒト皮膚の線維芽細胞のような線維芽細胞を培養することによって形成される。
【0035】
したがって、本発明の組織構築物を得る1つの方法は、以下のステップを含む。
(a)外因性細胞外マトリックス成分または構造的支持体部材の不在下で、少なくとも1つの細胞外マトリックス産生細胞タイプを培養すること;および
(b)ステップ(a)の細胞を刺激して、細胞外マトリックス成分を合成、分泌および組織化させ、それらの細胞により合成される細胞およびマトリックスから構成される組織構築物を形成し、ステップ(a)および(b)が、同時にまたは連続して行われる。
【0036】
細胞−マトリックス構築物およびその上の第二の層を含む二層組織構築物を形成するために、さらに、方法は、(c)形成された組織−構築物の表面で第二の型の細胞を培養して、二層組織構築物を産生するステップを包含する。
【0037】
本発明に使用するための細胞外マトリックス産生細胞タイプは、細胞外マトリックス成分を産生および分泌し、そして細胞外マトリックス成分を組織化して、細胞−マトリックス構築物を形成する能力のある任意の細胞タイプでありうる。1以上の細胞外マトリックス産生細胞タイプを、培養して、細胞−マトリックス構築物を形成しうる。異なる細胞タイプまたは組織起源の細胞を、混合物として一緒に培養して、生来の組織で見られるものと類似の相補的成分および構造を生じうる。例えば、細胞外マトリックス産生細胞タイプは、それと混合した他の細胞タイプを有して、第一の細胞タイプによって正常に産生されない多量の細胞外マトリックスを産生しうる。別法として、細胞外マトリックス産生細胞タイプは、本発明の特定の皮膚構築物でのようなマトリックス態様の細胞−マトリックス構築物の全般的形成に実質的に寄与することなしに、組織中に特殊化された組織構造を形成する他の細胞タイプと混合することもできる。
【0038】
任意の細胞外マトリックス産生細胞タイプが、本発明によって使用されうる場合、本発明に使用するための好ましい細胞タイプは、間葉から由来する。さらに好ましい細胞タイプは、線維芽細胞、間質細胞、および他の支持結合接触性組織細胞であり、最も好ましくは、ヒトの真皮構築物の産生のためにヒト真皮で見られるヒト真皮の線維芽細胞である。線維芽細胞は、一般に、主にコラーゲンである、多量の細胞外マトリックスタンパク質を産生する。線維芽細胞によって産生される数種の型のコラーゲンがあるが、しかし、I型コラーゲンは、in
vivoで最も有効である。ヒト線維芽細胞株は、制限されないが、新生男児包皮、真皮、腱、肺、臍帯、軟骨、尿道、角膜基質、口腔粘膜、および腸を含めた多数の起源から誘導することができる。ヒト細胞としては、線維芽細胞に限定されず、平滑筋細胞、軟骨細胞、および間葉起源の他の結合組織細胞が挙げられる。組織構築物の産生に使用されるマトリックス産生細胞の起源が、本発明の培養法を使用した後に類似または模倣すべき組織タイプに由来する必要はないが、そうであることが好ましい。例えば、皮膚構築物が産生される実施態様では、好ましいマトリックス産生細胞は、線維芽細胞、好ましくは真皮起源のものである。
【0039】
別の好ましい実施態様では、毛包の皮膚乳頭からの顕微解剖によって単離される線維芽細胞は、マトリックス単独、または他の線維芽細胞に結合して産生するように使用することができる。角膜構築物が産生される実施態様では、マトリックス産生細胞は、角膜間質に由来する。細胞供与体は、発達および年齢で変化しうる。細胞は、胚、新生児、または成人を含めた、より年齢の高い個体の供与組織に由来しうる。間葉幹細胞のような胚性先祖細胞を本発明に使用して、所望の組織に発達するまで分化を誘導してもよい。
【0040】
ヒト細胞が、本発明に使用するのに好ましいが、その方法に使用されるべき細胞は、ヒト起源の細胞に限定されない。他の哺乳動物種から得られる細胞を用いてもよく、その例としては、限定されないが、ウマ、イヌ、ブタ、ウシ、およびヒツジ起源が挙げられる;またはマウスまたはラットのようなげっ歯類種を使用してもよい。さらに、自発的に、化学的に、またはウイルスで形質移入または組換え細胞または遺伝子操作した細胞である細胞も、本発明に使用されうる。1つ以上の細胞タイプを組込む実施態様については、2つまたはそれ以上の起源から得られる正常な細胞のキメラ混合物;正常かつ遺伝的に修飾した、または形質移入した細胞の混合物;または2つまたはそれ以上の種または組織起源の細胞の混合物が使用されうる。
【0041】
組換えまたは遺伝子操作された細胞は、自然の細胞産物または治療薬を用いた治療法のレベルを増大させる必要のある患者についての薬物送達用の移殖片として作用する組織構築物を作製する細胞−マトリックス構築物の産生に使用しうる。細胞は、連続時間量、または患者に存在する症状により生物学的、化学的、または熱的に信号発生されるときに必要とされる場合、移殖片組換え細胞産物、成長因子、ホルモン、ペプチドまたはタンパク質を介して患者に生成および送達しうる。長期または短期のいずれかの遺伝子産物発現は、培養組織構築物の使用説明に基づくことが望ましい。長期発現は、培養組織構築物が、期間を延長して、患者に治療用製品を植え付けて送達するときに望ましい。
【0042】
逆に、短期発現は、培養組織構築物が、培養組織構築物の細胞が正常なまたは正常に近い治癒を促進するか、または創傷部位の乱切りを減少させることにある創傷を示す患者に移植される例で望ましい。いったん創傷が治癒すれば、培養組織構築物から得られる遺伝子産物は、もはや必要とされないか、その部位ではもはや望ましくない。細胞は、遺伝子処理されてタンパク質を発現してもよく、または、「正常」だが高いレベルで異なるタイプの細胞外マトリックスを発現してもよく、または、そして改善された創傷治癒にとって治療的に有利である生きた細胞を含ませた移殖片デバイスを、新生血管形成を促進または指示するか、または瘢痕またはケロイド形成を最小限にさせるある種の方法で修飾してもよい。これらの手段は、一般に、当業界で知られ、そしてSambrookら、分子クローニング、実験室マニュアル、コールド・スプリング・ハーバー・プレス、コールド・スプリング・ハーバー、ニューヨーク(1989年)に記述され、参照してここに組込まれる。上述型の細胞の全ては、本発明に使用される場合、「マトリックス産生細胞」の定義の範囲内に含まれる。
【0043】
線維芽細胞により産生される優勢な主要な細胞外マトリックス成分は、原線維コラーゲン、特にコラーゲンI型である。原線維コラーゲンは、細胞−マトリックス構築物での主要な成分である;しかし、本発明は、このタンパク質またはタンパク質型のみから構成されるマトリックスに限定されない。例えば、他のコラーゲン、すなわち、コラーゲン型II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、XIV、XV、XVI、XVII、XVIII、XIXのようなコラーゲンファミリーから得られる原線維性および非原線維性コラーゲンの両方は、適切な細胞タイプの使用によって産生されうる。同様に、本方法を用いて産生および配置することができる他のマトリックスタンパク質としては、限定されないが、エラスチン;デコリンまたはビグリカンのようなプロテオグリカン;またはテナスシンのような糖タンパク質;ビトロネクチン;フィブロネクチン;ラミニン、スロボスポリンI、およびヒアルロン酸(HA)のようなグリコサアミノグリカン(GAG)が挙げられる。
【0044】
マトリックス産生細胞は、三次元組織様構造の形成に対処する培養皿、フラスコ、または回転ボトルのような動物細胞または組織培養物に好適な容器中で培養される。細胞が育成されうる適切な細胞成長表面は、細胞が、付着でき、そして細胞−マトリックス構築物を形成するための固着用手段を提供できる、任意の生物学的に適合性のある材料でありうる。ガラス;ステンレススチール;ポリカルボネート、ポリスチレン、塩化ポリビニル、ポリビニリデン、ポリジメチルシロキサン、フルオロポリマー、およびフッ化エチレンプロピレンを含めた重合体;および融合シリカ、ポリシリコン、またはシリコン結晶を含めたシリコン基質のような材料が、細胞成長表面として使用しうる。細胞成長表面材料は、化学的に処理されるか、または修飾されるか、静電気的に負荷されるか、またはポリリシンまたはペプチドのような生物学的製品で被覆されうる。ペプチド被覆の例は、RGDペプチドである。
【0045】
本発明の組織構築物が、固形細胞成長表面で育成されうる場合、発達組織構築物への培地の二層接触を可能にするか、または培養のみからの接触に対処する膜の頂部および底部表面の両方を連通する孔を有する細胞成長表面が好ましい。二層接触は、培地に、培地中に含まれる栄養に曝露する最大限の表面領域についての発達中の構築物の頂部および基質の両方を接触させる。培地は、形成培養組織構築物の底部のみとも接触し、頂部表面は、培養皮膚構築物が発達するにつれて、空気にさらされることになる。
【0046】
好ましい培養容器は、担体挿入物、培地を含む培養容器中で懸濁される多孔性膜のような培養処理透過部材を利用するものである。典型的には、膜は、蓋で覆われることができるペトリ皿または培養皿のような基質内に挿入され、そして干渉する環状部材またはフレームワークの一方の末端に確保される。多孔性膜を有する担体挿入物を組み込む培養容器は、当業界で知られており、本発明を行うのに好ましく、この分野の多くの米国特許、例えば、第5,766,937号、第5,466,602号、第5,366,893号、第5,358,871号、第5,215,920号、第5,026,649号、第4,871,674号、第4,608,342号に記載されている。そしてそのいくつかは、市販で入手可能である。それらの開示を引用によって本明細書に援用する。これらの型の培養容器が使用される場合、組織構築物は、膜の一方の表面で産生され、好ましくは上方に向かう表面である頂部で産生されることが好ましい。そして培養物は、頂部および基質表面の両方で細胞培地と接触される。
【0047】
成長表面での孔は、膜を通した望ましくない培養物に栄養を供給するための培養培地の継代に対処し、したがって、細胞が、二層にまたは、基質側から唯一供給させる。好ましい孔サイズは、膜を通した細胞の成長に対処しないだけ十分に小さく、さらに、毛管作用によるように、細胞−マトリックス構築物の基質表面まで培養培地で含有される栄養の自由な通路に対処するのみ十分大きなものである。
【0048】
好ましい孔サイズは、約3ミクロン未満であるが、約0.1ミクロンから約3ミクロンの間、さらに好ましくは約0.2ミクロンから約1ミクロンまでの間、そして最も好ましくは約0.4ミクロンから約0.6ミクロンサイズの孔が使用される。ヒト皮膚の線維芽細胞の場合には、最も好ましい材料は、孔サイズが約0.4から約0.6ミクロンの間であることを示すポリカーボネートである。最大限の孔サイズは、細胞のサイズのみならず、その形状を変化し、そして膜を通過する細胞の能力にも依存する。組織様構築物が、表面に付着するが、基質を組み込んだり、または包んだりせず、それにより、最小限の力で剥ぎ取ることによるように、それから脱着可能であることが重要である。
【0049】
形成された組織構築物のサイズおよび形状は、それが成長する容器表面または膜のサイズによって検出される。基質は、丸であるか、角ばっているか、または丸いコーナー角を有する形状、または不規則な形状でありうる。基質は、平坦であるか、または創傷と接触する、生来の組織の物理的構造を模倣する形状構築物を産生する型として輪郭を描くこともできる。成長基質の表面積の大部分を占めるように、比較的に多い細胞を、表面に播き、そして多量の培地が、細胞を十分に包みそして栄養分を与えることが必要とされる。組織構築物が、最終的に形成される場合、単独層細胞−マトリックス構築物または二層構築物であろうとなかろうと、患者に移植する前に膜基質から剥ぎ取ることによって除去される。
【0050】
本発明の培養組織構築物は、組織構築物の形成のための、メッシュ部材のような合成または生体吸収性部材に依存しない。メッシュ部材は、織物、編物またはフェルト材料として組織化される。メッシュ部材が使用されるシステムでは、細胞は、メッシュ部材上で培養され、そしてメッシュの間隙の側面および範囲内で成長して、培養組織構築物内にメッシュを包み、そして組込む。このようなメッシュを組込む方法によって形成される最終構築物は、物理的支持体として、そして嵩を得るため、メッシュに依存している。合成メッシュ部材に依存する培養組織構築物の例としては、Naughtonらに対する米国特許番号第5,580,781号、第5,443,950号、第5,266,480号、第5,032,508号、第4,963,489号に記載がある。
【0051】
細胞−マトリックス層の産生のためのシステムは、静電気的であるか、または培養培地への灌流手段を使用しうる。静電気的システムでは、培養培地は、培地が運動中である灌流システムと対照的になお、そして比較的運動性がない。培地の灌流は、細胞の生存性に影響し、そしてマトリックス層の発達を増大する。灌流手段としては、限定されないが、培地を攪拌するために、培養膜を含む基質担体のすぐ下(下に)に、または隣接する培養皿中に磁性攪拌棒または動力付き圧縮器を使用すること;培養皿またはチャンバー内に、またはを通して培地を引き抜くこと;振蘯または回転プラットホーム上で培養皿を温和に曝気すること;またはローラーボトル中で作製する場合、回転させることが挙げられる。他の灌流手段は、本発明の方法に使用するために当業者によって決定されうる。
【0052】
本発明に使用するのに適する培養培地形成は、培養されるべき細胞タイプおよび産生されるべき組織構造に基づいて選択される。使用される培養培地、および細胞成長を促進するのに必要とされる特定培養条件、マトリックス合成、および生存性は、育成される細胞のタイプによる。
【0053】
本発明の生物工学的二層皮膚構築物の作製のようなある種の例では、培地組成は、様々な補足が様々な目的のための必要である場合、作製の各段階で変化する。好ましい方法では、細胞−マトリックス層は、定義された条件下で形成される、すなわち、化学的に定義された培地で培養される。別の好ましい方法では、組織構築物は、両方の細胞タイプが、定義された培養培地で培養され、そこに配置され、培養された細胞の第二の層を備えた細胞−マトリックス層を包含する。代替的に、組織構築物は、定義された培地条件下で作製された細胞−マトリックス層、および未定義の培地条件下でそこに形成される第二の層を包含する。逆に、組織構築物は、未定義の培地条件下で作製されうる細胞−マトリックス層、および定義された培地条件下でその上に形成される第二の層を包含する。
【0054】
化学的に定義された培養培地の使用が好ましく、すなわち、未定義の動物臓器を含まない培地または、組織抽出物例えば、血清、下垂体抽出物、視床下部抽出物、胎盤抽出物、または胚抽出物、および供給細胞によって分泌されるタンパク質および因子である。最も好ましい実施態様において、培地は、未定義の成分および非ヒト起源から由来する定義された生物学的成分を含まない。未定義の成分の添加は、好ましくないが、それらは、組織構築物を首尾よく作製するために、培養基中で任意の時点で開示の方法によって使用してもよい。本発明は、非ヒト動物源に由来する化学的に定義した成分を用いてスクリーニングしたヒト細胞を利用することを行うときに、結果物である組織構築物は、定義されたヒト組織構築物である。合成機能的当量を添加して、最も好ましい作製方法において使用するために化学的に定義された定義の全範囲内の化学的に定義された培地を補足しうる。一般に、細胞培養の当業者は、適切な自然のヒト、ヒト組換え体、または過度の調査または実験なしに、本発明の培養培地を補足する一般に公知の動物成分に対する合成等価物を決定できる。診療所でこのような構築物を使用する上での利点は、偶発的動物または交雑種ウイルス混入および感染の関係が減少することである。試験のシナリオで、化学的に定義された構築物の利点は、試験されるときに、未定義の成分の存在により、混乱されるべき結果の機会がないことである。
【0055】
培養培地は、通常さらに、他の成分で補足された栄養塩基から構成される。習熟者は、本発明の組織構築物を首尾よく産生することについて理にかなった見込みを動物細胞培養の分野で適切な栄養塩基を決定できる。多くの市販で入手可能な栄養源は、本発明の実施の上で有用である。これらとしては、ダルベッコ改良イーグル培地(DMEM);最小必須培地(MEM);M199;RPMI1640;イスコフのダルベッコ改良培地(EDMEM)のような無機塩、エネルギー源、アミノ酸、およびB−ビタミンを供給する市販で入手可能な栄養源が挙げられる。最小必須培地(MEM)およびM199は、リン脂質前駆体および非必須アミノ酸での追加の補足を必要とする。追加のアミノ酸、核酸、酵素コファクター、リン脂質前駆体、および無機塩を供給する市販で入手可能なビタミン富化混合物としては、ハムのF−12、ハムのF−10、NCTC109、およびNCTC135が挙げられる。濃度を変化させても、全ての基本培地は、他の基本培地成分と一緒に、グルコース、アミノ酸、ビタミンおよび無機イオンの境内で細胞についての基礎的栄養源を提供する。本発明の最も好ましい基本培地は、カルシウム不含または低カルシウムのダルベッコ改良イーグル培地(DMEM)のいずれかの栄養塩基、または代替的に、それぞれ3対1の比から1対3の比までの間のDMEMおよびハムのF−12を包含する。
【0056】
基本培地は、アミノ酸、成長因子およびホルモンのような成分で補足される。本発明の細胞の培養のための定義培養培地は、Parenteauに対する米国特許番号第5,712,163号、および国際PCT公報番号WO95/31473号に記述され、それらの開示を本明細書に引用によって援用する。他の培地は、HamおよびMcKeehan、Methods
in Enzymology、58巻:44−93頁(1979年)で開示されるもののように当業界で公知であるか、または他の適切な化学的に定義された培地については、Bottensteinらで、Methods
in Enzymology、58巻:94−109頁(1979年)に開示される。好ましい具体例では、基本培地は、動物細胞培養で習熟者に知られている以下の成分で補足される。インシュリン、トランスフェリン、トリヨードチロニン(T3)、および補足についての濃度および置換が、当業者によって決定されうる、いずれかまたは両方のエタノールアミンおよびo−ホスホリル−エタノールアミン。
【0057】
インシュリンは、多重継代より長期間利点を供するグルコースおよびアミノ酸の摂取を促進するポリペプチドホルモンである。インシュリンまたはインシュリン様成長因子(IGF)の補足は、グルコースおよびアミノ酸を取込む細胞の能力の最終的枯渇、および細胞表現型の可能性のある分解がある場合に長期培養に必要である。インシュリンは、動物、例えばウシ、ヒト源または、ヒト組換えインシュリンのような組換え手段によって誘導されうる。したがって、ヒト・インシュリンは、非ヒト生物学的源から由来しない化学的に定義された成分の資格がある。インシュリン補足は、一連の培養に適切であり、そして広範な濃度で培地に供給される。好ましい濃度範囲は、約0.1μg/mlから約500μg/mlまでの間、さらに好ましくは約5μg/mlから約400μg/ml、そして最も好ましくは約375μg/mlである。IGF−1またはIGF−2のようなインシュリン様成長因子の補足のための濃度は、培養のために選択された細胞について当業者によって容易に決定されうる。
【0058】
トランスフェリンは、鉄輸送調節のための培地内にある。鉄は、血清に見られる必須の痕跡要素である。鉄は、その遊離形態で細胞に毒性でありうるので、血清中では、好ましくは約0.05から約50μg/mlの間、さらに好ましくは約5μg/mlの濃度範囲でトランスフェリンに結合した細胞に供給される。
【0059】
トリヨードチロニン(T3)は、基本的成分であり、そして細胞代謝の速度を維持する培地中に含まれるチロイドホルモンの活性形態である。トリヨードチロニンは、約0から約400pMの間の、さらに好ましくは約2から約200pMの間の濃度範囲で、そして最も好ましくは約20pMで培地に補足される。
【0060】
リン脂質であるエタノールアミンおよびo−ホスホリル−エタノールアミンのいずれかまたは両方を、その機能が、イノシトール経路および脂肪酸代謝での重要な前駆体であるものに添加する。血清に正常に見られる脂質の補足は、無血清培地で必要である。エタノールアミンおよびo−ホスホリル−エタノールアミンは、約10−6から約10−2Mまでの間の濃度範囲で、さらに好ましくは約1×10−4Mで培地に供される。
【0061】
培養期間中に、基本培地に、合成または分化を誘導するか、またはヒドロコルチゾン、セレニウムおよびL−グルタミンのような細胞成長を改善する他の成分をさらに補足される。
【0062】
ヒドロコルチゾンは、ケラチノサイト表現型を促進する、したがって、被膜およびケラチノサイトトランスグルタミナーゼ含有量のような分化した特徴を増強するケラチノサイト培養で見られた(Rubinら、J.Cell
Physiol.、138巻:208−214頁(1986年))。したがって、ヒドロコルチゾンは、ケラチノサイトシート状移殖片または皮膚構築物の形成でのようなこれらの特徴が、有益である例で、望ましい添加剤である。ヒドロコルチゾンは、約0.01μg/mlから約4.0μg/mlの濃度範囲で、最も好ましくは約0.4μg/mlから16μg/mlの間で提供されうる。
【0063】
セレニウムを、無血清培地に添加して、血清によって正常に供給されるセレニウムの痕跡要素を再補足する。セレニウムは、約10−9から約10−7Mまでの濃度範囲で、最も好ましくは約5.3×10−8Mで培地に供されうる。
【0064】
アミノ酸L−グルタミンは、ある種の栄養基本に存在し、そして存在しないか、または不十分な量存在する場合に添加されうる。L−グルタミンは、グルタMAX−I(登録商標)(ジブコ・ビーアールエル、ニューヨーク州グランドアイランド)として販売されるもののような安定な形態で供給もされる。グルタMAX−I(登録商標)は、L−アラニル−L−グルタミンの安定なジペプチド形態であり、そしてL−グルタミンと相互交換的に使用でき、そしてL−グルタミンに対する置換基として当モル濃度で供給される。ジペプチドは、保存での時間を超えて、そして培地中のL−グルタミンの有効な濃度での不確かさに至りうるインキュベーション期間中、分解からのL−グルタミンに対する安定性を提供する。典型的には、基本培地に、好ましくは約1mMから約6mMの間、さらに好ましくは約2mMから約5mMまでの間、そして最も好ましくは4mMのL−グルタミンまたはグルタMAX−I(登録商標)を補足する。
【0065】
表皮成長因子(EGF)のような成長因子は、細胞規模拡大および播種を通して培養物の確立の助けになる培地にも添加されうる。生来の形態でのEGFまたは組換え形態が使用されうる。ヒト形態、生来の、または組換え体のEGFは、非ヒト生物学的成分を含まない皮膚等価物を作成するときに、培地で使用することが好ましい。EGFは、任意の成分であり、そして約1ng/mL乃至約15ng/mLの間、さらに好ましくは約5ng/mL乃至10ng/mLの間の濃度で供される。
【0066】
上に記述される培地は、一般に、下に規定されるとおり製造される。しかしながら、本発明の成分が、それらの物理的特性に匹敵する従来の方法論を用いて作製および組み立てられうると解釈されるべきである。入手可能性または経済性の目的で、特定の成分を、適切な類似体または機能的に等価な作用剤に置換し、そして類似の結果を達することが当業者によく知られている。自然に発生する成長因子は、本発明の作業に使用される場合に、類似の質および結果を示す組換えまたは合成成長因子に置換されうる。
【0067】
本発明による培地は、無菌である。無菌成分は、無菌のものを購入するか、または製造後の濾過のような従来の手段によって無菌にする。適切な防腐手段は、以下の実施例を通して使用された。DMEMおよびF−12を、最初に合わせ、そしてその後、個々の成分を添加して培地を完成させる。全ての成分の保存溶液は、4℃で保存されうる栄養源を除いて、−20℃で保存できる。全ての保存溶液は、上に列記される500×最終濃度で作製される。インシュリン、トランスフェリンおよびトリヨードチロニン(全てシグマから入手した)の保存溶液は、以下のとおり作製される:トリホードチロニンは、2:1の比で1N塩酸(HCl)中の絶対エタノールに最初に溶解される。インシュリンは、希釈HCl(およそ0.1N)で溶解され、そしてトランスフェリンは、水に溶解される。その後、3つは、水で500×濃度まで混合および希釈される。エタノールアミンおよびo−ホスホリル−エタノールアミンは、水で500×濃度まで溶解され、そして濾過して無菌化する。プロゲステロンを、絶対エタノールに溶解し、そして水で希釈する。ヒドロコルチゾンを、絶対エタノールに溶解し、そしてリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で希釈する。セレニウムを、水で500×濃度まで溶解し、そして濾過して無菌化する。EGFは、無菌を購入し、そしてPBSに溶解させる。アデニンは、溶解するのが困難であるが、当業者に知られる任意の数の方法によって溶解されうる。血清アルブミンは、それらを溶液中で安定化するために、ある種の成分に添加でき、そして現在、ヒトまたは動物源のいずれから誘導される。例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)またはウシ血清アルブミン(BSA)を、長期保存のために、添加して、プロゲステロンおよびEGF保存溶液の活性を維持しうる。培地は、作製直後に使用するか、または4℃で保存されるかのいずれかでありうる。保存の場合、EGFは、使用時まで添加されるべきでない。
【0068】
マトリックス産生細胞の培養により細胞−マトリックス層を形成するために、培地に、細胞によるマトリックス合成および沈着を促進する追加の剤を補足する。これらの補足剤は、細胞適合性があり、高度の純度に定義され、そして混入を含まない。細胞−マトリックス層を生成するのに使用される培地は、「マトリックス産生培地」と称される。
【0069】
マトリックス産生培地を作製するために、基本培地に、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸のようなアスコルベート誘導体、またはL−アスコルビン酸ホスフェートマグネシウム塩n−ハイドレートのようなそのいっそう化学的に安定な誘導体の内の1つを補足する。アスコルベートを添加して、沈着コラーゲン分子に対する可溶性前駆体である、プロリンの水酸化およびプロコラーゲンの分泌を促進する。アスコルベートは、I型およびIII型コラーゲン合成のアップレギュレーターと同様に、他の酵素後期翻訳過程のための重要なコファクターであることも示された。
【0070】
理論に束縛されることを望むわけではないが、タンパク質合成に関与したアミノ酸を有する培地を補足することで、細胞にアミノ酸それら自身を生成させる必要のないことにより、細胞エネルギーを保存する。プロリンおよびグリシンの添加は、プロリンの水酸化形態、ヒドロキシプロリンと同様に、それらが、コラーゲンの構造を作る基本的アミノ酸である場合好ましい。
【0071】
必要とされない場合、マトリックス産生培地に、都合により、中性高分子を補足する。本発明の細胞−マトリックス構築物は、中性高分子なしに生成され得るが、しかし、理論に束縛されることを望むわけではないが、マトリックス産生培地でのその存在は、コラーゲン過程およびサンプルの間にいっそう一定な沈着でありうる。1つの好ましい中性高分子は、マトリックス沈着コラーゲンに対して、培養細胞により産生される可溶性先駆体プロコラーゲンの生体外での過程を促進することが示されたポリエチレングリコール(PEG)である。約1000から約4000MW(分子量)の間、さらに好ましくは約3400から約3700MWの間の範囲内の組織培養グレードのPEGは、本発明の培地に好ましい。好ましいPEG濃度は、約5%w/vまたは未満の濃度で、好ましくは約0.01%w/vから約0.5%w/vまで、さらに好ましくは約0.025%w/vから約0.2%w/vまでの間、最も好ましくは約0.05%w/vでありうる方法で使用するためのものである。デキストランのような、好ましくはデキストランT−40、またはポリビニルピロリドン(PVP)、好ましくは30,000−40,000MWの範囲内の他の培養グレードの中性高分子も、約5%w/vまたは未満の濃度で、好ましくは約0.01%w/vから約0.5%w/vまで、さらに好ましくは約0.025%w/vから約0.2%w/vまでの間、最も好ましくは約0.05%w/vで使用することもできる。他の細胞培養グレードおよびコラーゲン過程および沈着を増強する細胞適合性剤は、哺乳動物細胞培養の技術の当業者によって確定されうる。
【0072】
細胞産生細胞が、融合され、そして培養培地に、マトリックス合成、分泌、または組織化で支援する成分を補足する場合、細胞は、それらの細胞によって合成された細胞およびマトリックスから構成される組織構築物を形成するのを刺激すると言われている。
【0073】
したがって、好ましいマトリックス産生培地処方としては、ダルベッコ改良イーグル培地(DMEM)(高グルコース処方、L−グルタミンなし)および4mMのL−グルタミンまたは等価物、5ng/ml上皮成長因子、0.4μg/mlヒドロコルチゾン、1×10−4Mのo−ホスホリル−エタノールアミン、5μg/mlインシュリン、5μg/mlトランスレリン、20pMトリヨードチロニン、6.78ng/mlセレニウム、50ng/mlのL−アスコルビン酸、0.2μg/mlのL−プロリン、および0.1μg/グリシンで補足されたハムF−12培地の基本的3:1混合物を包含する。産生培地のために、他の薬理学的剤を、培養物に添加して、分泌される細胞外マトリックスの特性、量、または型を変化させることができる。これらの剤としては、ポリペプチド成長因子、転写因子、またはコラーゲン転写をアップレギュレートする無機塩が挙げられる。ポリペプチド成長因子の例としては、形質転換成長因子β1(TGF−β1)および組織−プラスミノーゲンアクチベーター(TPA)が挙げられ、その両方は、コラーゲン合成をアップレギュレートすることが知られている。Raghowら、Journal
of Clinical
Investigation、79巻:1285−1288頁(1987年);Pardesら、Journal
of Investigative
Dermatology、100巻:549頁(1993年)。コラーゲン産生を刺激する無機塩の例は、セリウムである。Shivakumarら、Journal
of Molecular
and Cellular
Cardiology、24巻:775−780頁(1992年)。
【0074】
培養は、インキュベーターで維持されて、細胞の培養について制御温度、湿度、および気体混合物の十分な環境条件を確保する。好ましい条件は、約5−10±1%CO2の間の雰囲気および約80−90%の間の相対湿度(Rh)で、約34℃から約38℃までの間、さらに好ましくは37±1℃である。
【0075】
好ましい実施態様では、細胞−マトリックス構築物は、皮膚線維芽細胞およびそれらの分泌マトリックスから形成される皮膚構築物である。好ましくは、ヒト皮膚線維芽細胞が使用され、真皮から得られるか、またはいっそう好ましくは樹立細胞保存液またはウイルスおよび細菌混入に対してスクリーニングされ、そして純度について試験されたバンクから連続して継代されるか、または二次培養されるものから得られる一次細胞として誘導される。細胞を、育成培地中で十分な条件下で培養して、それらを、細胞−マトリックス構築物を形成する細胞を培養基質に播くのに適切な数まで増殖させる。別法としては、凍結細胞保存液から得られる細胞を、培養基質に直接播いてもよい。
【0076】
いったん十分な細胞数が得られたら、細胞を回収し、適切な培養表面に播き、そして適切な成長条件下で培養して、細胞の融合シートを形成する。好ましい具体例では、細胞を、孔を通して、そして上に直接培養物の下から培地を接触させるために隠されている多孔性膜に播く。好ましくは、細胞を、基本または育成培地のいずれかに懸濁させ、そして細胞培養表面に、約1×105細胞/cm5から約6.6×105細胞/cm2までの間、さらに好ましくは約3×105細胞/cm2から約6.6×105細胞/cm2までの間、そして最も好ましくは約6.6×105細胞/cm2(表面の平方センチメートル当たりの細胞)の密度で播く。培養物を、育成培地で培養して、培養物を樹立し、そしてそれらが、培地を、細胞外マトリックスの合成および分泌を上昇調節するために、マトリックス産生培地に交換することによって、化学的に誘導される時に、約80%から100%のコンフルエントの状態に培養する。選択的方法では、細胞を産生培地に直接播いて、基本培地から産生培地に交換する必要性がなくなるが、それは、高い播種密度を必要とする方法である。
【0077】
培養の間じゅう、線維芽細胞は、分泌されたマトリックス分子を組織化して、三次元組織様構造を形成するが、形成する細胞−マトリックス構築物に、培養基質からそれ自身を接触および剥ぎ取りさせる明らかな収縮力を示さない。培地交換は、新たなマトリックス産生培地で2〜3日毎に行われ、やがて、分泌マトリックスは、厚みおよび組織化において増大する。細胞−マトリックス構築物を作製するのに必要な時間は、当初の播種濃度の能力、細胞タイプ、セルラインの年齢、およびマトリックスを合成および分泌するセルラインの能力に依存する。十分に形成された場合、本発明の構築物は、細胞によって産生および組織化される線維性マトリックスにより塊状厚みを示す;それらは、細胞が、互いにゆるく粘着性でありうる場合、通常にコンフルエントであったり、または過度にコンフルエントである細胞培養であったりしない。線維性品質は、それらが、医療設定での日常の取扱いで亀裂またはクラッキングのような物理的損傷に抵抗するので、通常の培養と違って、構築物に粘着性組織様特性を付与する。培養皮膚構築物の作製で、細胞は、細胞培養表面上でそれら自身の周囲に、膜の表面を越えて、好ましくは少なくとも厚み約30ミクロンまたはそれ以上、さらに好ましくは厚み約60から約120ミクロンの間の組織化マトリックスを形成する;しかし、厚みは、120ミクロンの過剰で得られ、そしてこのような厚み増大が必要とされる試験または医療用途に使用するのに適している。
【0078】
いっそう好ましい方法で、上皮細胞層を、1つの表面に、好ましくは細胞−マトリックス構築物の上向きに面する表面である頂部に塗布される。細胞−マトリックス構築物に、上皮細胞を、その上に播き、そして培養して、多層組織構築物を形成しうる。最も好ましい方法では、皮膚から由来するケラチノサイトは、その細胞構築物上で育成して、皮膚構築物を形成する。他の好ましい実施態様では、角膜ケラチノサイトとも称される角膜上皮細胞を、細胞−マトリックス構築物上に播いて、角膜構築物を形成しうる。口腔粘膜から得られる上皮細胞を、細胞−マトリックス構築物上で育成して、口腔粘膜の構築物を形成しうる。食道から得られる上皮細胞を、細胞−マトリックス構築物上に播いて、食道組織の構築物を形成しうる。尿生殖器管から得られる尿管上皮細胞を、細胞−マトリックス構築物上で育成して、尿管上皮の構築物を形成しうる。上皮由来の他の細胞を選択して、それらの細胞が由来する組織の構築物を形成しうる。
【0079】
表皮細胞を皮膚基質に供給する方法、および分化および角質化の誘導を含めたそれらを培養して、分化したケラチノサイト層を形成する方法は、当業界に知られており、そしてParenteauらに対する米国特許番号第5,712,163号に、そしてKempらに対する米国特許番号第5,536,656号に記述され、その内容は、参照してここに組込まれる。細胞−マトリックス構築物の表皮化生を行うために、ケラチノサイトを、細胞−マトリックス構築物に播き、そしてその層が、厚み約1から3個の細胞層であるまで、その上で培養する。その後、ケラチノサイトを、分化に誘導して、多層真皮を形成し、そしてその後、角質化を誘導して、角質層を形成する。
【0080】
分化表皮層を形成する方法で、二次培養ケラチノサイトを、細胞保存液から取り、そしてそれらの細胞数を拡大する。必要数の細胞が得られるときに、それらは、培養基質から放出され、懸濁され、計数され、希釈され、そしてその後、細胞−マトリックス構築物の頂部表面に、約4.5×103細胞/cm2から約5.0×105細胞/cm2までの間、さらに好ましくは約1.0×104細胞/cm2から約1.0×105細胞/cm2までの間、そして最も好ましくは約4.5×104細胞/cm2の密度で、播かれる。その後、構築物を、約60分から約90分の間、37±1℃、10%CO2でインキュベートして、ケラチノサイトを付着させる。インキュベーション後、構築物を、表皮化生培地で浸水させる。培養物での十分な長い時間の後、ケラチノサイト増殖し、そして拡大して、細胞−マトリックス構築物を越えてコンフルエントの単層を形成する。いったんコンフルエントとなると、細胞培地処方を、分化培地に交換して、細胞分化を誘導する。多層上皮が形成されたときに、その後、角質化培地を使用し、そして培養物に空気−液体界面にかける。ケラチノサイトの分化および角質化について、細胞を、乾燥または低湿度空気−液体界面に曝す。乾燥または低湿度界面は、皮膚の低湿度レベルを複写する試みとして特徴づけうる。やがて、ケラチノサイトは、これらの条件に曝された場合に、生来の皮膚で見られるほとんどまたは全ての角質および他の特徴を表す。
【0081】
上に記述されるとおり、細胞−マトリックス構築物の産生のためのシステムは、角膜の構築物の形成に使用しうる。角膜の上皮細胞は、様々な哺乳動物源から由来しうる。好ましい上皮細胞は、ウサギまたはヒトの角膜上皮細胞(角膜のケラチノサイト)であるが、しかし任意の哺乳動物角膜ケラチノサイトが使用されうる。眼の強膜または上皮から由来するもののような他の上皮ケラリノサイトは、置換されうるが、しかし角膜のケラチノサイトが好ましい。角膜の構築物を形成する方法では、バイオセンサー位置を、培養挿入物(細胞−マトリックス構築物を含む)およびその周囲から除去した。正常なウサギの角膜の上皮細胞を、継代培養を介して拡張され、トリプシン分解して、それらを培養基質から除去し、培養培地に懸濁し、そして約7.2×104細胞/cm2から約1.4×105細胞/cm2までの間の密度で、膜の頂部に播種する。その後、構築物を、37±1℃で、約4時間、10%CO2で、培地なしにインキュベートして、上皮細胞を付着させる。インキュベーション後、構築物を、角膜の維持培地(CMM)(Johnsonら、1992年)に継代培養する。細胞−マトリックス構築物が、上皮細胞で覆われるまで、上皮細胞を培養する。上皮被覆の完全性は、硫酸ニルブルーの溶液(リン酸緩衝生理食塩水中で1:10,000)で培養物を染色することによる例示として、多様な方法によって確証される。およそ7日後、いったん細胞−マトリックス構築物が覆われると、構築物を、無菌で、ちょうど構築物の表面までの液体レベルに達するのに十分な角膜維持培地(CMM)を有する新たな培養トレイに移し、上皮層の浸水なしに湿潤界面を維持する。構築物を、37±1℃、0%CO2で、60%湿度より大きくて、CMMを用いて、必要な場合、典型的には週当たり3回、培地交換しながら、インキュベートする。
【0082】
角膜構築物の産生に必要な場合、上皮細胞層の角質化なしに分化については、上皮細胞表面を、湿潤な空気−液体界面に曝す。湿潤な空気−液体界面を提供する方法は、Parenteauに対する米国特許番号第5,374,515号に記述されている。ここで使用される場合、用語「湿潤な界面」は、調節され、その結果構築物の表面が、高湿度であって、乾燥または浸水でない湿潤である培養環境を意味することが意図される。培養環境での湿気および湿度の正確なレベルは、重要でないが、角質化細胞の形成を避けるのに十分に湿潤でそして湿度であるべきである。湿潤な界面は、ヒトの眼の類似の湿気レベルを複写する試みとして特徴づけることができる。
【0083】
代替の好ましい実施態様では、第二のマトリックス産生細胞の播種が、第一の形成細胞−マトリックス構築物で行われて、厚みのある細胞−マトリックス構築物または二層細胞−マトリックス構築物を得ることができる。第二の播種は、望ましい結果によって、同じ細胞タイプまたは染色で、または異なる細胞タイプまたは染色で行われる。第一層の産生に使用された手段およびマトリックス産生培地を用いて、同じ条件下で、第二の播種を行う。異なる細胞タイプで第二の種付けを行う上での1つの結果は、構築物が、患者に移植されるときに、創傷治癒に影響を及ぼす異なるマトリックス成分プロファイルまたはマトリックスパッケージング密度で形成されるマトリックスを有することである。第一の細胞播種は、真皮の網状層、いっそう周密に包装されたI型コラーゲンの層、および構成成分の細胞外マトリックス成分に類似のマトリックスを生じる。第二の細胞種付けは、ゆるいコラーゲン原線維および細胞外マトリックスによって特徴づけられる真皮の平行層に類似のマトリックスを生じる。第二の細胞タイプでの別の結果は、改善された試験片摂取または試験片介入または瘢痕形成の最小化または防止のような創傷治癒に影響する治療用物質生じうる。
【0084】
別の好ましい実施態様では、使用される少なくとも1つの細胞タイプが、細胞外マトリックスを合成する能力がある場合、2つまたはそれ以上の細胞タイプの混合細胞集団は、細胞−マトリックス構築物の形成の間じゅう一緒に培養されうる。第二の細胞タイプは、他の組織機能を行うか、または組織構築物の特定の構造的特性を発生するのに必要とされるものでありうる。例えば、皮膚構築物の産生では、付属器から得られる皮膚の乳頭細胞または上皮細胞を、マトリックス産生細胞で培養して、上皮付属器またはそれらの成分の形成を可能にしうる。汗腺または皮脂腺構造または成分または毛包構造または成分のような上皮付属器は、マトリックス産生細胞と一緒に培養したときに、形成しうる。上皮細胞は、腺の付属器構造から由来でき、そして毛髪は、顕微解剖によるように、深部真皮に配置され、そして外分泌細胞、筋上皮細胞、腺の分泌細胞、毛包幹細胞が挙げられる。メラノサイト、ランゲルハンス細胞、およびメルケル細胞のような皮膚を構築する皮膚で見られる他の細胞タイプも、加えられうる。同様に、血管内皮細胞を、同時培養して、新たな脈管構造形成についての痕跡成分を生じうる。脂肪細胞を、マトリックス産生細胞と培養して、再構築手術のために使用される構築物を形成しうる。この第二の細胞タイプの送達の代替的態様として、細胞を、これらの構造の局在発生について、形成または完全に形成された細胞−組織マトリックス上で、または内にスポットとして、または細胞の任意の数のスポットの配列として局所に播種しうる。細胞−マトリックス構築物内に細胞を播くために、細胞−マトリックス内に、成長する細胞のために、細胞を、頂部と基質の表面の間に注入して、特定化構造を形成し、それらの特定機能を作用させうる。三層組織構築物を生じるために、マトリックス産生細胞タイプまたは非マトリックス産生細胞タイプを含む第一の種付けを、細胞−マトリックス構築物または細胞層を生じるのに十分な時間、培養基質に播く。いったん第一の細胞−マトリックス構築物または細胞層が形成されると、マトリックス産生細胞タイプを含む細胞の第二の播種を、第一の細胞−マトリックス構築物または細胞層の頂部表面に播き、そして第一の構築物上に第二の細胞−マトリックス構築物を形成するのに十分な条件下で、一回、培養する。第二の細胞−マトリックス構築物上で、第三の播種を、播き、そして第三の層を生じるのに十分な条件下で培養する。例として、第三の層の角膜構築物を生じるために、第一の細胞タイプの細胞は、角膜内皮細胞のような内皮起源から構成されうる;第二の細胞タイプは、角膜のケラチノサイトのような結合組織起源の細胞から構成されうる;そして第三の細胞タイプは、角膜の表皮細胞のような表皮起源の細胞を包含しうる。皮膚の三層構築物の別の例として、第一の播種の細胞は、脈管構造についての成分を供する血管起源のものであり得て、第二の播種の細胞は、皮膚構築物として役割を果す細胞−マトリックス構築物を形成する皮膚の線維芽細胞を包含でき、そして第三の播種の細胞は、表皮層を形成する表皮のケラチノサイトでありうる。
【0085】
本発明の組織構築物は、透化または低温保存法が使用される場合、低温で保存されうる。組織構築物の透化のための方法は、米国特許番号第5,518,878号に記述され、そして低温保存の方法は、米国特許番号第5,689,961号および第5,891,617号に、そして国際PCT出願WO96/24018号に記述され、それらの開示を引用によって本明細書に援用する。
【0086】
C.コラーゲン溶液と収縮性の作用物質との混合物を含む培養組織構築物
本発明の別の実施態様において、当該培養組織構築物は、コラーゲン溶液と収縮性の作用物質とからなる、ゲル混合物を含む。
【0087】
この培養組織構築物は、Bellの米国特許第4,485,096号に記載されているように、in vivoで水和したコラーゲンラティスを形成することによって作製される。この内容全体を引用によって本明細書に援用する。このラティスは、収縮性の作用物質をその中に組み込んだ培養組織構築物によって構築される。収縮性の作用物質の例としては、線維芽細胞や血小板があげられる。
【0088】
皮膚等価物は、ケラチノサイトを生結合組織基質上に植えこみ、成長させることによって、生結合組織基質から作製することができる。この皮膚等価物は、これまでに述べた人口皮膚とは異なり、独特である。なぜならその基礎的組織が皮膚のものと類似しているからである。その構成生細胞は、移植レシピエントとなる可能性のある被験者から供給されることもある。
【0089】
腺/臓器等価物または小胞等価物を、本明細書に記載の構築された水和コラーゲンラティスから作成することができる。
【0090】
本発明によって作製された培養組織構築物は、多くのタイプおよび機能を持つ生体組織、腺および臓器等価物を作製する可能性を提供することがわかる。そのような等価物は、それらを用いる必要が生じるまで在庫として保管しておいてもよい。
【0091】
そのような培養組織構築物の主な利点の1つは、当該細胞のドナー以外のホストに用いることができ、予測される深刻な拒絶反応がない培養組織構築物を作製することができる点である。生体組織の作成に用いた細胞が本発明のように伝播したとき、レシピエントの免疫系による拒絶にかかわる細胞を選択する。さらに、最近の研究方向によれば、特定の細胞は、特定の条件下で組織培養物中に保存された場合、拒絶を促進する能力を失う。
【0092】
水和コラーゲンラティスは、ラット尾の腱に由来するコラーゲンやウシ皮膚コラーゲンを用いて作製することができる。コラーゲンの他のソースとしては、ヒト胎児性皮膚が用いられていた。さらに他のソースが好適であろう。コラーゲンのソースは、弱産生条件のもとで調製および維持される。ラティスは、線維芽細胞を栄養培地およびコラーゲン原線維を溶液から析出させるのに十分なpHに高める塩基に添加することによって作製される。水和したコラーゲンラティスの析出については、下記の引用文献にさらに詳細に記載されている。その教示を引用によって本明細書に援用する:Elsdale, T. and Bard, J., "Collagen Substrata For Studies On
Cell Behavior," J. Cell Biol. 54, 626-637 (1972); Ehrmann, R. L. and Gey, G. 0., "The Growth of Cells on A
Transparent Gel of Reconstituted Rat-Tail Collagen," J. Natl. Cancer
Inst., 16, 1375-1403 (1956); Emermann, J. T. and Pitelka, D. R., "Hormonal Effects on
Intracellular and Secreted Casein in Cultures of Mouse Mammary Epithelial Cells
on Floating Collagen Membranes," In Vitro, 13, 316- 328 (1977); Michalopoulous, G. and Pitot, H. C, "Primary Culture of
Parenchymal Liver Cells on Collagen Membranes," Exp. Cell Res. 94, 70-78 (1975); Gey, G. 0. Svotelis, M., Foard, M. and Bang, F. B.,
"Long-Term Growth of Chicken Fibroblasts On A Collagen Substrate,"
Exp. Cell Res., 84, 63-71 (1974); and Hillis, W. D. and Band, F. B., "The Cultivation of Human
Embryonic Liver Cells," Exp. Cell Res., 26, 9-36 (1962)。
【0093】
本明細書に記載の実験において、収縮性の作用物質として実際に使われる線維芽細胞は、ヒト包皮線維芽細胞およびモルモット真皮線維芽細胞であった。他のソースからの線維芽細胞を使用することもできる。実際、あらゆる脊椎動物の線維芽細胞を、水和コラーゲンラティスの構築に好適に使用することができると考えられる。ラティスの作製と細胞の植え込みを同時に行う都合のよい技術は、培養皿に、線維芽細胞を含有する栄養培地とともに維持された酸性コラーゲン溶液を中和することを含む。コラーゲン原線維は中和すると溶液から析出し、線維芽細胞が全体に均等に行きわたったラティスが作製される。次いで、該細胞およびコラーゲンラティスを、細胞をコラーゲンラティスに付着させ、それを収縮させて元のサイズの分画にする条件で維持する。こうして生体組織が提供される。
【0094】
線維芽細胞細胞を水和したコラーゲンラティスへ組み込むと、捕捉した水が絞り出されるので、ラティスが収縮する。ラティスが形成された表面が非水和性、例えば、疎水性プレートであれば、得られた組織は、通常の形態をもつ。組織培養プレート上で、いくつかの細胞がラティスからプレートに移動し、該ラティスの収縮は定期的とは限らない。非水和表面、
例えば、バクテリアのペトリ皿を用いた場合、ラティスはその半径が細胞によって縮小されるので、ほぼ完全にディスク形を維持する。線維芽細胞は、ラティス表面だけでなく、コラーゲンラティス全体に均等に広がっているのがわかる。次いで、これによって、ヒトおよび他の哺乳動物の真皮層を刺激する。
【0095】
細胞の不存在下で、ラティスの半径は変化しない。例えば、1×106個のヒト包皮線維芽細胞を5日間栄養培地で成長させることによって調製した調製培地は、細胞が存在しない場合は収縮しない。
【0096】
細胞によって収縮したコラーゲンラティスは、皮膚または真皮に類似している。さらに部分的に収縮させると、適切な粘度を持ち、容易に取り扱うことができる。細胞を用いて最初に作製したとき、ラティスはほぼ透明であるが、水が除去されるにつれて徐々に不透明になり、その直径が小さくなる。ラティス領域内で20倍乃至30倍に縮んだ時、それらは硬化した粘度の、白ピンク色となり、破れたり、変形することもなくやや伸縮させることができる。
【0097】
ラティスの最初の直径を、使用する材料の量およびそれを形成するプレートから測定する。したがって、最大収縮は任意の測定値であるが、細胞数やタンパク質収縮に関連している。
【0098】
最も収縮した水和コラーゲンラティスは、シートとして形成されるが、他の形状にすることもできる。例えば、筒型を形成することもできる。収縮したラティスを、円形成型体に形成することによって、または
適切な成型によって皮膚の球形に調製してもよい。
【0099】
バイオプシー中で得たヒト皮膚ケラチノサイトを収縮した水和したコラーゲンラティス上に置く。インビトロで培養したケラチノサイトについても同様にする。ケラチノサイトの植え込みは、マトリックスゲル形成と同時、ラティス収縮のあらゆる時期、または収縮完了後のあらゆる時期に行うことができる。解離したケラチノサイト懸濁の植え込みの3日以内にラティス表面上はコンフルエントに達し、ケラチン化のプロセスが始まり、角化層の組織液の損失を防ぐ。
【0100】
線維芽細胞の他にも細胞性収縮性の作用物質が存在する。それらには平滑筋細胞、横紋筋細胞、および心筋細胞がある。
【0101】
線維芽細胞や血小板などの収縮性の作用物質によるラティス収縮によって、100%相対湿度条件下で維持したとき、コラーゲンラティスは、収縮性の作用物質を用いずに形成したコラーゲンラティスと比較して比較的高い引張力をもつ組織等価物に変換される。収縮性の作用物質を用いずに形成した場合、コラーゲンラティスは、新鮮なゼラチンと同程度の粘度を有し、処理の際、はがれおちる。血小板または細胞によって収縮したラティスは、傷つけることなく処理、伸長、および縫合することができる。
【0102】
収縮したラティス上に懸濁し得る所与の時間の間の最大重量を測定することによって引張力を調べた。一例では、5ml体積のラティスを5.3cm直径皿に形成し、3.5グラムで7分間支持した維芽細胞によって、2cm直径まで収縮した。5ml体積のラティスを5.3cm直径皿の別のラティスも、0.23cmの高さから0.09cmの高さまで、直径を変形せずに血小板によって収縮し、11グラムで10分間支持した。
【0103】
引張力および他の特性は、使用したコラーゲンおよび収縮性の作用物質および他の添加物の種類や量を含めた多くのパラメーターの関数であることがわかる。本明細書に記載の機能では、例えば、I型コラーゲンを採用した。しかしながら、III型コラーゲンが皮膚や血管にさらなる引張力を付与することが知られており、本明細書に記載のコラーゲンラティス中にIII型コラーゲンを使用すると、引張力を増加させることが期待される。同様に、ヒアルロン酸、コンドロイチン4−サルフェート、およびデルマタン硫酸などのグリコサミノグリカン類では、引張力および水分保持力が向上することがわかった。
【0104】
望ましければ、細菌感染を阻止するためにペニシリン、ストレプトマイシンおよびファンギゾンといった抗体を添加することもできる。
【0105】
本明細書に記載の機能の多くは皮膚等価物に関するものであるが、収縮したコラーゲンラティス上にケラチノサイトを成長させることによって、他の細胞タイプをラティス上で成長させることもできるであろう。そういった細胞の例としては、平滑筋細胞、横紋筋細胞、軟骨、骨細胞、膵臓細胞、肝臓細胞などがあげられる。
【0106】
いくつかの方法および誘導体が開発されており、収縮したコラーゲンラティスを、直径を調整可能および/または種々の形状をもつシートに成型するのを助けている。収縮性の作用物質として線維芽細胞を用いた場合、非収縮コラーゲンラティスは、典型的にあらゆる方向に収縮する。しかしながら、その境界が固定されているシートの場合、収縮は、厚み方向に限られる。
【0107】
境界を限定するための好適なデバイスは、あらゆる形状のステンレススチールメッシュのシートから作製することができる。成型された望ましい形状は、シートの過剰分を切り捨てて、形状のまわりに適切な1.5インチボーダーとしてステンレススチールメッシュの中心から切り出される。これは、非接着性の物質、例えば、テフロン(登録商標)RTM、ポリテトラフルオロエチレンでコーティングされたパンに入れることができるステンレススチールメッシュの枠を形成する。その後この成分を用いて形成したラティスを導入する。該成分を注入し、ラティスを形成すると、それが固着用スチールメッシュの小腔に注入される。ラティスの細胞要素は、コラーゲン原線維どうしが引き合うことによって緻密になり、ラティスの容量は減少が、縁が固定されているので減少した寸法は厚みである。該プロセスにおいて、ラティスは水分を失う。
【0108】
スチールフレームの特別な利点は、組織等価物の最終的なサイズが正確に枠の内部の大きさとなり、特に、ラティスは、フレームによって限定することによって向上した細胞の方向性によって、更に強度が高くなる。さらに、ラティスの大きさは、フレームから切り出した後でさえ、長方形のフレームに投入した場合、幅方向または長さ方向には変化しないので、後者を投入したらすぐ皮膚等価物の表皮成分を真皮等価物に適用することができ、皮膚等価物移植物を患者のバイオプシーから調製するための時間を少なくとも4日間縮小することができる。
【0109】
ラティスの成分を注入して拘束するメッシュを被覆することができる。ラティスを設定すると、それがメッシュ中で固着用となり、収縮によって長さ、幅は変更しない。厚みのみ減少する。厚みの最大寸法は、以下の関数となる。(1)ラティスの初期堆積、(2)細胞濃度、および(3)コラーゲン含有量。ヒアルロン酸や硫酸コンドロイチンなどのプロテオグリカン類が存在することによって、収縮が増加し、ラティス厚みが減少する。その上に表皮細胞が播かれたラティスまたは真皮等価物を保有する長方形のメッシュを、皮膚を必要とする創傷に対してそのままの状態で適用する。配置すると、メッシュの周辺の内部からすぐに、または、その存在が移植物の完全性を維持するのを助けてしばらくしてから、切り出すことができる。
【0110】
皮膚等価物の調製物の真皮等価物上の表皮を固着するのを助ける別の技術および方法は以下のとおりである。真皮等価物をまず投入し、貼り先が通過し、正常なパターンを維持することができる、プラスチックシート、例えば、テフロン(登録商標)RTM、ポリテトラフルオロエチレンを新鮮な投入物上に置く。該プラスチックシートおよび針は、表皮細胞を播いた1−4日後に除去する。この結果、表皮細胞が流れるピットが形成される。それによって、表皮と真皮等価物の間の表面接触がより大きくなる。
【0111】
酵素解離技術によって単離し得る小胞および腺細胞を、表皮細胞の懸濁液を用いて播種し、そのようなピット占有してもよい。
【0112】
本明細書に記載の生体組織の主な利点は、レシピエントが、組織等価物を作製するために用いられる細胞のドナーと異なる場合に見られる拒絶反応がないことである。例えば、移植のレシピエントのもの以外の細胞で構築した皮膚等価物移植物を動物ホストに対して行った。上記のようにして作製するが、スプレーク・ドーリー(Sprague−Dawley)株のラットのメスからの細胞によって構成した皮膚等価物移植物を、雄フィッシャー(Fischer)ラットホストに移植し、様々な時間の間その場に維持した。一般に、天然の組織の至る所に存在し、特定の免疫細胞を含まないあらゆる種類の等価物移植物は、拒絶されないであろう。なぜなら移植拒絶の原因となる抗原決定基は、等価物組織に組み込まれた細胞の表面上では発現しないからである。それらの不存在によって、ホストの免疫細胞は、外来細胞を見つけだすことが不可能になる。なぜなら、レシピエント自身が欠けているもしくは存在しないため、これは、レシピエントが必要とする細胞のタイプ、組織、もしくは臓器に取って代わる可能性をもつものである。
【0113】
D:コラーゲンゲル状に積層されたコラーゲンゲルを含む培養組織構築物
本実施形態の培養組織構築物は、水和コラーゲンラティスを含むものと、その調製方法および使用方法が似ているが、さらに、コラーゲンの層を含むものである。
【0114】
透過性部材と接触した、無細胞水和コラーゲンゲル上に投入されたコラーゲンラティスは、厚み寸法には収縮するが、放射方向および横方向の収縮をしないことが発見された。このため、例えば、ステンレススチール枠上で、コラーゲンラティスを固着させるために使用する必要がない。上記のようにして、固着用手段を用いずに投入された、例えば、直径24mmのコラーゲンラティスは、放射上に収縮して、直径5mm以下となる。対照的に、透過性部材と接触した無細胞水和コラーゲンゲル上に投入された直径24mmのコラーゲンラティスは通常放射状に収縮して約15mmとなる。固着用手段を除いたことで、横方向/放射方向の収縮が、コスト上の利点をもたらし、また、組織等価物の作製を容易にした。そのような固着用手段は、望ましければ透過性部材と接触した水和コラーゲンゲルと組み合わせて用いられる。
【0115】
本発明の組織等価物を取得するための1つの方法は、
(a)コラーゲンおよび少なくとも1つの収縮性の作用物質を含む混合物を形成するステップ;および
(b)ステップ(a)で取得した混合物を、透過性部材と接触した無細胞水和コラーゲンゲルに適用し、組織等価物の形成を可能とする条件下で該混合物およびゲルを維持するステップ、を含む。
【0116】
本発明のいくつかの実施態様において、限定されないが、線維状パッド、コットンパッド、およびゲル、アガロースなどの1以上の吸収性の部材が上記コラーゲンゲルと組み合わせて用いられる。そのような吸収性の部材は、一貫した平坦な物理的支持体を提供し、組織等価物と細胞培養培地との間の接触の均一化を促進することが分かっている。典型的には、該吸収性の部材は、水和したコラーゲンラティスに対向するコラーゲンゲルに隣接している。吸収性の部材自身がゲル、例えば、アガロースである場合、該ゲルは、組織等価物に栄養を提供するために栄養培地とともに提供される。
【0117】
水和コラーゲンゲルおよび/または吸収性の部材を用いて、および用いないで維持された組織等価物中で、皮膚組織等価物の発達の種々の相において、下記の実験的エンドポイントをモニターした:
1.グルコース利用度
2.表皮の層状化および角質化の程度および量
3.培地のpH
【0118】
吸収性の部材を用いて維持された組織等価物から取得した培地の観察したpHは、これらの部材の不存在下で維持された組織等価物と比較して、一貫して高く、組織等価物の生理的pHに近かった。さらに、グルコース利用度は、吸収性の部材とともに維持された組織等価物中において一般的に低いことが観察された。
【0119】
十分発達した角質化は、そのような部材を用いずに作製された対照皮膚等価物と比較して、吸収性の部材を用いて作製された皮膚組織等価物中で促進される。これらの吸収性の部材が表皮の分化に及ぼす影響のメカニズムは知られていないが、そのような部材が拡散バリア、例えば、透過バリアとして機能し、培地を濾過し、組織等価物に近接する分泌細胞産物を保持するのではないかと仮定さている。
【0120】
本発明の生皮膚等価物は、本実施形態においては、水和したコラーゲンラティスを無細胞水和コラーゲンゲル上に投入することを除いて、上記と同様に調製される。
【0121】
本発明の組織等価物を作製するための1つの方法は、
(a)コラーゲンおよび少なくとも1つの収縮性の作用物質を含む混合物を形成するステップ;
(b)ステップ(a)で取得した混合物を、透過性部材と接触した無細胞水和コラーゲンゲルに適用し、組織等価物の形成を可能とする条件下で該混合物およびゲルを維持するステップ、および
(c)ステップ(b)で取得した組織等価物をケラチノサイトとともに播くステップ、を含む。
【0122】
背景によれば、本発明の組織等価物を投入するため便利なプロトコルは、pHが約3〜4のコラーゲンの酸性溶液と栄養培地を迅速に混合するステップ、必要であれば、得られた溶液のpHをpH6.6〜pH7.8に調整するステップ、線維芽細胞を添加するステップ、得られた混合物(「鋳造混合物」)を、無細胞水和コラーゲンゲルが置かれた適切な成型または装置に移すステップ、次いで、好ましくは約35℃乃至38℃の温度でインキュベートするステップを含む。pHの調整と、鋳造混合物の成分の組み合わせを同時に行うことが最も都合がよい。しかしながら、これらのステップは、鋳造混合物が適切な設定の成型に移されるようにステップを完了するのであれば、どのような所望の順序で行われてもよい。溶液を加温し、pHを高めた結果、コラーゲン原線維が鋳造混合物から析出し、収縮性の作用物質によって収縮され、水和コラーゲンゲル上に配置された水和コラーゲンゲルを形成する。
【0123】
本実施形態によって生体組織を作製する方法は、一般的な組織等価物の作製に適用することが可能である。これらの方法を、皮膚移植適用および皮膚等価物を組み込んだテストシステムにおいて使用する皮膚等価物と組み合わせて説明する。
【0124】
図を参照すれば、図13乃至15は、皮膚組織等価物を本発明によって仕様することによる、皮膚と1以上の作用物質との相互作用を測定するための装置のある実施形態を示す図である。ここでは、本発明の組織等価物を内部に含む複数の容器10、22をベースまたはホルダー中に配置する。図13乃至15に示されている装置にはカバー手段2も備えられている。いくつかの実施態様において、カバリング(図示せず)が各容器に設けられている。該カバリングは、容器を封着する、あらゆる生体適合材から選択される。許容されるカバリングとしては、装置に接着材や加熱によって封着されるホイル類およびバリアフィルム類がある。加熱封着ポリエステルフィルムは、本発明のプラクティスにおいて特に有用である。
【0125】
組織等価物用の容器は、外側容器10と内側容器20を含む。内側容器20には、外側容器10中に内側容器20を位置づける手段を提供するリム50が設けられており、それによって、外側領域14と内側領域22を画定している。内側容器20中、皮膚組織等価物26、28が、透過性部材24に近接しておかれている水和コラーゲンゲル25上に置かれている。透過性部材は、内側容器20に封着可能に付着し、その底部を形成している。該皮膚組織等価物は、2つの層26、28を有しており、層28は、表皮の層、真皮層を含む層26を有している。いくつかの実施態様においては、封着部材30は、内側容器20の内壁と皮膚等価物26、28の間を封着し、組織等価物26、28の外縁が水和コラーゲンゲル25の内部に位置づけられている場合は、水和コラーゲンゲル25の周囲を封着する。図に示された実施態様においては、容器10には、外側領域14につながる開口21がある。
【0126】
図15に示された装置は、吸収性の部材32をさらに備えている。さらに別の実施態様においては、外側チャンバー14は、ゲル(図示せず)を内部に有していてもよい。
【0127】
図16乃至18は、皮膚組織等価物を本発明によって仕様することによる、皮膚と1以上の作用物質との相互作用を測定するための装置の別の実施態様を示す図である。上記他の実施態様と類似の要素は、同じ符号を用いて示す。本実施形態において、外側ウェル10は、四角形であり、内側容器20を配置してもよい底部に高い断面60を備えている。装置の底面から上に向かって突き出している外側ウェル10は、装置の外部からのポケットとして形成される。
【0128】
外側ウェル10は、組織等価物のための栄養培地を備えている。そのような培地は、当業で公知である。好ましくは、米国特許第361,041号に記載された無血清栄養培地である。培地の容積は、培地が透過部材24、水和コラーゲンゲル25、組織等価物26、28を通り抜けて内側容器20にいたるような圧力をかけないように、外側容器14を適切なレベルで充填するために選択しなければならない。
【0129】
本発明のある実施態様において、外側容器10には、外側容器10内に配置された吸収性の部材32が備えられており、透過性部材24の外側表面に接触している。吸収性の部材32は、生体組織等価物と適合性をもつものでなければならない。吸収性の部材の好ましい材料としては、コットン、ポリエステル、およびレイヨンがある。特に好ましい材料は、吸収性コットンである。一般に、吸収性の部材は、界面活性剤のような添加物を含まないことが好ましい。
【0130】
本発明の別の実施態様において、外側ウェル10は、培地を捕捉する働きをするアガロースのようなゲル(図示せず)を備えている。アガロースは、開口21のすぐ下に添加することができるので、より多くの栄養培地が組織等価物として利用可能であり、組織等価物26、28への栄養供給は、すぐに廃棄されない。そのようなゲルを使用することによって、培地の漏れ、組織等価物の混入の可能性を最小限にするという点で、本発明の装置を保存および運送する際に利点がある。
【0131】
外側容器10および内側容器20は、組織等価物を含む、アッセイの成分と反応しない、もしくは望ましくない効果をもたらす、あらゆる所望の材料で作製することができる。例えば、生体組織等価物の鋳造混合物は、収縮中、内側容器の内壁に付着して、組織等価物の形成と干渉することはない。
【0132】
内側容器20を殺菌するために使用する方法が組織等価物に影響を及ぼすことがわかった。例えば、酸化エチレンによってではなく、電子ビームによって殺菌される場合、形成組織はポリスチレンに付着する。対照的に、K−RESIN.RTM.ブタジエン−スチレンポリマー、ポリスチレンとブタジエンの合金、内側容器の特に好ましい材料は、形成する組織等価物の付着を引き起こすことなく電子ビームによって殺菌される(K−RE
SIN.RTM.ブタジエン−スチレンポリマーは、Phillips
Petroleumの登録商標である)。いくつかの実施態様において、容器は、組織等価物が容器、例えば、容器の壁または容器の窓を介して見えるように作られていることが望ましい。容器10の好ましい材料としては、ポリスチレンおよびPETGがある。
【0133】
内側容器20は、所望の組織等価物の大きさおよび形状を収容するものであれば、あらゆる形状および容積をとることができる。容器の寸法も、所望の組織等価物の大きさおよび形状および所望のアッセイ容量に依存する。例えば、外径約25mm、容量約5mlの容器が、本発明を実施する上で有用である。図13乃至15に示された実施態様においては、複数の容器がベースまたはホルダーに設けられている。
【0134】
透過性部材24は、無細胞水和コラーゲンゲル25および組織等価物26、28を支持するのに十分な強度を有していなければならない。多孔質膜が本発明の実施に有用である。そのような膜の孔径は、無細胞水和コラーゲンゲル25を付着させるように選択される。好ましい膜は、親水性であり、厚みが約1mm〜10mmであり、孔径が約1〜約10ミクロン(原語:.mu.)である。透過性部材24の好ましい材料としては、ポリカーボネートがある。特に好ましい透過性部材は、好ましくは湿潤剤を含まないポリカーボネート膜であり、これは、Nucleporeから市販されている。その孔径は、約3〜10ミクロン(原語:.mu.)である。
【0135】
封着剤30は、アッセイの条件や用いられている組織等価物に不活性であり、ならびに内側容器20と組織等価物間の封着を良好にする、あらゆる材料から作製することができる。好ましい材料としては、ポリエチレン、TEFLON.RTM.PTFEポリテトラフルオロエチレン(E.I.Du
Pont de
Nemours and
Companyの登録商標)、ポリカーボネートおよびナイロンがあげられる。封着剤は、外側容器の内容物をあらゆる溶液、または表皮25に付与される物質から分離して保持することが望ましい場合、例えば、組織等価物を介しての物質の拡散または透過を測定する場合、特に有用である。
【0136】
本発明の組織等価物および無細胞水和コラーゲンゲルの双方は、ラット尾の腱、ウシ皮膚コラーゲンおよびウシ伸筋の腱を含む、皮膚や腱に由来するコラーゲンを用いて作製することができる。コラーゲンの他のソースも好適に使用される。コラーゲン組成物は、通常のウシ指状伸筋の腱に由来する組成物が特に好ましく、そのようなコラーゲン組成物を誘導する方法は、コペンディングの米国特許出願第07/407,465号(02/09/1994出願)に記載されている。その開示を本明細書において引用によって援用する。
【0137】
本発明のある方法においては、無細胞水和コラーゲンゲル25は、約0.5〜2.0mg/ml、好ましくは、約0.9〜1.1mg/mlの濃度のコラーゲンと、栄養培地とを含むコラーゲン組成物から調製される。このコラーゲン組成物を内側容器20に添加し、コラーゲン組成物を、好適な寸法、典型的には約1〜5mmの厚み、好ましくは約2〜約3mmの厚みの無細胞水和コラーゲンゲルを作製できる条件下で維持する。無細胞水和コラーゲンゲル25は、細胞が、その一部が組織等価物から無細胞水和コラーゲンゲルに移動する間、無細胞を維持するような十分な厚みであり、組織等価物が外側容器10に設けられた栄養源から好ましくなくて除去されることがないように十分薄い厚みを持つことが好ましい。
【0138】
次に、真皮等価物を無細胞水和コラーゲンゲル上に、前記特許文献および以下に記載のような処置を用いて投入する。コラーゲンおよび線維芽細胞を含有する鋳造混合物を内側容器20の、無細胞水和コラーゲンゲル25上に添加し、組織等価物が形成されうる条件下で維持する。該組織等価物は、無細胞水和コラーゲンゲル25を形成するとき、急速に収縮する。しかしながら、無細胞、水和コラーゲンゲル25は、テクスチュアド金属やプラスチックやVELCRO.RTM.Hook
and Loop
Fasteners(Velcro Corporationの登録商標)といった、機械的に抑制する手段を必要とせずに、組織等価物の過度の放射方向への収縮を阻止する。
【0139】
典型的には、組織等価物26の側面は水和コラーゲンゲル25の外側周辺部に向かって傾斜し、図15および6の52に示されたメサを形成している。組織等価物26に、上皮細胞を播いて表皮層28を形成する。該表皮細胞を、約0.3×106乃至30×106細胞/mlの濃度で培養培地に播いた。播いた表皮細胞の量はメサの大きさに依存するであろう。
【0140】
コラーゲンの濃度および鋳造混合物の量は、生体組織等価物の直径および厚みを最適にするように制御することができる。該鋳造混合物は、細胞を約1.25〜5×104細胞/mlの濃度で、コラーゲンを約0.5〜2.0mg/mlの濃度で栄養培地中に含む。好ましい細胞濃度は、2.5×104細胞/mlである。組織等価物のための鋳造混合物の量と無細胞水和コラーゲンゲルのための鋳造混合物の比率は、細胞の生産能力と分化に栄養を及ぼすことが分かっている。組織等価物の鋳造混合物とコラーゲンゲル鋳造混合物との有用な比率(v/v)は、約3:1乃至1:3である。コラーゲンラティス中の細胞濃度が約2.5×104細胞である場合の好ましい比率は3:1である。
【0141】
本発明は、以下の実施例を参照することによって、さらに理解することができるであろう。これらの実施例は、本質的に単なる例示であり、本発明の範囲を制限するために用いられるものではない。
【0142】
以下の実施例において用いられる物質は、実施例に記載のソースから取得した。または前記文献にしたがって作製した。実施例を通して、無菌で処置を行った。該組織等価物は、インキュベーター中10%CO2で維持し、全体を通して無菌処置を用いた。
【0143】
以下の実施例は、本発明のプラクティスをより十分に説明するためのものであり、あらゆる意味においても、本発明の範囲を制限するためのものと解釈すべきでない。本明細書に記載の方法には、本発明の精神と範囲を超えない限り、種々の改変が可能であることを当業者は理解するであろう。
【0144】
実施例
実施例1:ヒト新生児包皮繊維芽細胞によるコラーゲンマトリックスの形成 ヒト新生児包皮繊維芽細胞(Organogenesis、Inc.Canton、MAより入手)は、162cm2組織培養用シャーレ(Costar
Corp.、Cambridge、MA、カタログ番号3150)に5×105細胞を接種し培養液で培養した。成長培地の組成は、10%ウシ胎児血清(NBCS)(HyClone
Laboratories、Inc.、Logan、Utah)および4mM
L−グルタミン(BioWhittaker、Walkersville、MD)を含むダルベッコ改良イーグル培地(DMEM)(高グルコース濃度、L−グルタミン無添加、BioWhittaker、Walkersville、MD)である。細胞は10±1%
CO2中で37±1℃のインキュベーターで培養した。培地は2〜3日ごとに新鮮なものと交換した。培養8日後に、細胞がコンフルエンス状態、すなわち組織培養用シャーレの底面いっぱいの単層になった時に、培地をフラスコから吸引した。単層細胞を洗浄するために、無菌濾過したリン酸緩衝液生理食塩水を各フラスコの底に添加してその後吸引した。トリプシン−バーゼン液グルタミン(BioWhittaker、Walkersville、MD)を各フラスコに5mL添加し、単層細胞に完全に行き渡るようにゆっくりと回転させることで、フラスコから細胞を遊離させた。培養物はインキュベーターに戻した。細胞が遊離すると同時に、トリプシン−バーゼン液の作用を停止するために、SBTI(大豆トリプシンインヒビター)5mlを各フラスコに添加し細胞懸濁液と混合した。細胞懸濁液をフラスコから取り出し、無菌の円錐遠心管に等分した。細胞を約800−1000xgで5分間遠心して集めた。
【0145】
細胞は、新鮮な培地に3.0×106細胞/mlの濃度になるように再懸濁し、6ウェルトレーの0.4ミクロンポアサイズの24mm直径組織培養用挿入体(TRANSWELL(登録商標)、Corning
Coastar)に3.0×106細胞/挿入体(6.6×105細胞/cm2)の濃度で接種した。細胞は10±1%
CO2で37±1℃のインキュベーター内に静置して、培地は2〜3日ごとに新鮮なものと交換し21日間培養した。産生培地の組成は、DMEMおよびハムF−12培地(Quality
Biologics Gaithersburg、MD)の3:1混合物、4mM GlutaMAX−1(登録商標)(Gibco
BRL、Grand Island、NY)および最終濃度が以下のようになる添加物を含む;5ng/ml ヒトリコンビナント表皮成長因子(Upstate Biotechnology、Lake
Placid、NY)、2% 新生子牛血清(HyClone Laboratories、Inc.、Logan、Utah)、0.4μg/ml
ハイドロコーチゾン(Sigma、St.Louis、MO)、1×10−4M
エタノールアミン(Fulka、Ronkonkoma、NY、ACSグレード)、1×10−4M
O−フォスフォリルエタノールアミン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml
インスリン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml
トランスフェリン(Sigma、St.Louis、MO)、20pM
トリヨードサイロニン(Sigma、St.Louis、MO)、6.78ng/ml
セレン(Sigma Aldrich Fine Chemicals Co.、Milwaukee、WI)、50ng/ml
L−アスコルビン酸(WAKO Chemicals USA、Inc.
#013−12061)、0.2μg/ml L−プロリン(Sigma、St.Louis、MO)、0.1μg/ml グリシン(Sigma、St.Louis、MO)、および0.05% ポリエチレングリコール(PEG)3400−3700MW(細胞培養グレード)(Sigma、St.Louis、MO)。
【0146】
組織学的解析のためのサンプルは、培養7、14および21日目に採集し、ホルマリンで固定し、パラフィン包埋した。ホルマリン固定したサンプルはパラフィン包埋して、5μm切片をヘマトキシリン−エオシン(H&E)で既知の方法に従って染色した。H&E染色スライドを用いて、10mm/100μmレティクルのついた10x接眼レンズを用いて無作為に選んだ10カ所の顕微鏡視野での厚さを測定した。
【0147】
真皮線維芽細胞の2つの異なる細胞株から得られた結果を表1にまとめた。細胞−マトリックス構築物が成長したときの厚みを示している。
【表1】
【0148】
サンプルは、培養7、14および21日目にコラーゲン濃度解析を行った。コラーゲン含有量は、既知の方法(Woessner、1961)でのヒドロキシプロリンを比色定量する方法を用いて算出した。同じ時点において細胞数も測定した。前述の操作に用いた2つの異なる細胞種(B156およびB119)で得られた細胞−マトリックス構築物からの、表2はコラーゲン濃度を、表3は細胞データの概要を示している。
【0149】
【表2】
【表3】
【0150】
培養7、14および21日目のヒト細胞由来皮膚マトリックスのサンプルを遅延還元SDS−PAGEで解析して、サンプル中のタイプIおよびタイプIIIコラーゲンアルファバンドで示されるコラーゲン組成を測定した。
【0151】
皮膚マトリックスの生化学的特性について組織化学的手法を用いて検討した。フィブロネクチンの同定はパラフィン固定した切片についてZymed
Histostain ストレパビジン−ビオチン システム(Zymed
Laboratories Inc.、South San
Fransisco、CA)を用いて行った。テナシンの存在の有無は、抗テナシン一次抗体染色(Dako、Carpintheria、CA)および続く二次抗体としての抗マウス西洋ワサビペルオキシダーゼ標識抗体(Calbiochem)を用いて、確認した。サンプルは、ジアミノベンジン(Sigma、St.Louis、MO)を適用しNucler
Fast Redで逆染色することにより可視化した。
【0152】
グリコサミノグリカン(GAG)定量を、以前に報告された方法(Farndale、1986)を用いて21日目のサンプルについて行った。結果は、接種後21日目のヒト細胞由来皮膚マトリックスサンプル中には1cm2あたり0.44gのGAGが存在した。
【0153】
実施例2:皮膚構築物全体の厚み
実施例1で示した方法で作成した真皮構築物を用いて、正常ヒト新生児包皮表皮ケラチノサイト(Organogenesis、Inc.Canton、MAより入手)を細胞−マトリックス構築物上に播種し、皮膚構造の表皮層を形成した。
【0154】
培地を無菌的に培養挿入体およびその周辺から取り除いた。正常ヒト表皮ケラチノサイトを、凍結細胞ストックからコンフルエント状態までに4継代培養してスケールアップさせた。細胞を、トリプシン−バーゼン液を用いてシャーレ底面から遊離させ、プールし、遠心分離して細胞ペレットを形成させ、表皮化培地中に再懸濁させ、カウントして4.5×104細胞/cm2の密度で膜の上に接種した。構築物を37±1℃、10±1%CO2中で90分間インキュベートし、ケラチノサイト細胞を付着させた。インキュベーション後、該構築物を表皮化培地に浸した。表皮化培地の組成は、ダルベッコ改良イーグル培地(DMEM)(高グルコース濃度、L−グルタミン無添加、BioWhittaker、Walkersville、MD)およびハムF−12培地(Quality
Biologics Gaithersburg、MD)の3:1混合物で、0.4μg/ml ハイドロコーチゾン(Sigma、St.Louis、MO)、1×10−4M エタノールアミン(Fulka、Ronkonkoma、NY)、1×10−4M O−フォスフォリルエタノールアミン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml インスリン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml トランスフェリン(Sigma、St.Louis、MO)、20pM トリヨードサイロニン(Sigma、St.Louis、MO)、6.78ng/ml セレン(Aldrich)、24.4μg/ml アデニン(Sigma
Aldrich Fine
Chemicals Co.、Milwaukee、WI)、4mM L−グルタミン(BioWhittaker、Walkersville、MD)、0.3%
キレート化新生子牛血清(HyClone Laboratories、Inc.、Logan、Utah)、0.628ng/ml プロゲステロン(Amersham Arlington
Heights、IL)、50μg/ml L−アスコルビン酸ナトリウム塩(Sigma Aldrich
Fine Chemicals
Co.、Milwaukee、WI)、10ng/ml 表皮成長因子(Life Technology
Inc.、MD)、および50μg/ml 硫酸ゲンタマイシン(Amersham Arlington
Heights、IL)である。構築物は表皮化培地中で37±1℃、10%CO2中で2日間培養した。
【0155】
2日後、構築物は以下の組成の培地に浸した;ダルベッコ改良イーグル培地(DMEM)(高グルコース濃度、L−グルタミン無添加、BioWhittaker、Walkersville、MD)およびハムF−12培地(Quality
Biologics Gaithersburg、MD)の3:1混合物で、0.4μg/ml ハイドロコーチゾン(Sigma、St.Louis、MO)、1×10−4M エタノールアミン(Fulka、Ronkonkoma、NY)、1×10−4M O−フォスフォリルエタノールアミン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml インスリン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml トランスフェリン(Sigma、St.Louis、MO)、20pM トリヨードサイロニン(Sigma、St.Louis、MO)、6.78ng/ml セレン(Sigma Aldrich
Fine Chemicals
Co.、Milwaukee、WI)、24.4μg/ml アデニン(Sigma Aldrich
Fine Chemicals
Company)、4mM L−グルタミン(BioWhittaker、Walkersville、MD)、0.3% キレート化新生子牛血清(BioWhittaker、Walkersville、MD)、0.628ng/ml プロゲステロン(Amersham Arlington
Heights、IL)、50μg/ml L−アスコルビン酸ナトリウム塩、265μg/ml 塩化カルシウム(Mallinckrodt、Chesterfield、MO)、および50μg/ml
硫酸ゲンタマイシン(Amersham Arlington Heights、IL)である。構築物を再び37±1℃、10%CO2中で2日間培養した。
【0156】
2日後、構築物を含むキャリヤーを無菌的に、十分な量の角化培地を入れた新しい培養トレーに移した。その量は9mLで、キャリヤー膜の表面と一致する水面になり、乾燥界面が上皮層を層状化させるのを維持することが出来る。構築物を、37±1℃、10% CO2中、および低湿度中で、2〜3日毎に培地を交換しながら7日間培養した。この培地の組成は;ダルベッコ改良イーグル培地(DMEM)(高グルコース濃度、L−グルタミン無添加、BioWhittaker、Walkersville、MD)およびハムF−12培地(Quality
Biologics Gaithersburg、MD)の1:1混合物で、0.4μg/ml ハイドロコーチゾン(Sigma、St.Louis、MO)、1×10−4M エタノールアミン(Fulka、Ronkonkoma、NY)、1×10−4M O−フォスフォリルエタノールアミン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml インスリン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml トランスフェリン(Sigma、St.Louis、MO)、20pM トリヨードサイロニン(Sigma、St.Louis、MO)、6.78ng/ml セレン(Aldrich)、24.4μg/ml アデニン(Sigma
Aldrich Fine
Chemicals Co.、Milwaukee、WI)、4mM L−グルタミン(BioWhittaker、Walkersville、MD)、2%新生子牛血清(BioWhittaker、Walkersville、MD)、50μg/ml
L−アスコルビン酸ナトリウム塩(Sigma Aldrich Fine Chemicals Co.、Milwaukee、WI)、および50μg/ml
硫酸ゲンタマイシン(Amersham Arlington Heights、IL)である。7日目に構築物を供給し、2〜3日毎に維持培地を交換しながら更に10日間培養した。この維持培地の組成は;ダルベッコ改良イーグル培地(DMEM)(高グルコース濃度、L−グルタミン無添加、BioWhittaker、Walkersville、MD)およびハムF−12培地(Quality
Biologics Gaithersburg、MD)の1:1混合物で、0.4μg/ml ハイドロコーチゾン(Sigma、St.Louis、MO)、1×10−4M エタノールアミン(Fulka、Ronkonkoma、NY)、1×10−4M O−フォスフォリルエタノールアミン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml インスリン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml トランスフェリン(Sigma、St.Louis、MO)、20pM トリヨードサイロニン(Sigma、St.Louis、MO)、6.78ng/ml セレン(Sigma Aldrich
Fine Chemicals
Co.、Milwaukee、WI)、24.4μg/ml アデニン(Sigma
Aldrich Fine
Chemicals Co.、Milwaukee、WI)、4mM L−グルタミン(BioWhittaker、Walkersville、MD)、1%
新生子牛血清(BioWhittaker、Walkersville、MD)、および50μg/ml
硫酸ゲンタマイシン(Amersham Arlington Heights、IL)である。
【0157】
最終サンプルを実施例1で述べたように、ヘマトキシリンおよびエオシン染色にかけ光学顕微鏡下で目視測定した。得られた構築物は、実施例1で述べた性質を持つマトリックスで囲まれた繊維芽細胞からなる低(真皮)層を形成し、多層化し、よく分化したケラチノサイトにより完全に覆われていた。このケラチノサイトは、生体内皮膚と同様に、基質層、上基質層、顆粒層、および角質層を示した。皮膚構築物は、透過型電子顕微鏡(TEM)から明らかなように、皮膚−表皮接合部に存在する十分に発達した基底膜を有する。基底膜は、TEMによって可視化されるときにIII型コラーゲンから構成される原線維に足場をつけることにより印される、ヘミデスモソームの周囲で最も厚くみえる。固着用原線維は、基底膜から出ること、および皮膚層中のコラーゲン原線維を捕捉することが容易にわかる。基底膜糖蛋白であるラミニンの存在が以前に報告されたアビジン−ビオチン免疫酵素法(Guesdon、1979)を用いて確認された。
【0158】
実施例3:化学的に限定した培地中でのヒト新生児包皮線維芽細胞によるコラーゲンマトリックスのIn Vitro形成
実施例1に記載した処置を用いてヒト新生児包皮線維芽細胞を増殖させた。次いで細胞を3.0×106細胞/mlの濃度になるように再懸濁し、6ウェルトレーの0.4ミクロンポアサイズの24mm直径組織培養用挿入体に、3.0×106細胞/TW(6.6×105細胞/cm2)の濃度で播種した。その後これらの細胞を、新生子ウシ血清を除いた培地で実施例1と全く同様に維持した。より詳細には、培地の組成は、DMEMおよびハムF−12培地(Quality
Biologics Gaithersburg、MD)の3:1混合物、4mM GlutaMAX−1TM(Gibco
BRL、Grand Island、NY)および以下の添加物を含む;5ng/ml ヒトリコンビナント表皮成長因子(Upstate
Biotechnology、Lake Placid、NY)、0.4μg/ml ハイドロコーチゾン(Sigma、St.Louis、MO)、1×10−4M
エタノールアミン(Fulka、Ronkonkoma、NY、カタログNo.2400ACSグレード)、1×10−4M O−フォスフォリルエタノールアミン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml インスリン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml トランスフェリン(Sigma、St.Louis、MO)、20pM トリヨードサイロニン(Sigma、St.Louis、MO)、6.78ng/ml セレン(Sigma Aldrich
Fine Chemicals
Co.、Milwaukee、WI)、50ng/ml L−アスコルビン酸(WAKO Chemicals
USA)、0.2μg/ml L−プロリン(Sigma、St.Louis、MO)、0.1μg/ml グリシン(Sigma、St.Louis、MO)、および0.05% ポリエチレングリコール(PEG)(Sigma、St.Louis、MO)。サンプルは、前述の方法で、培養7、14および21日目にコラーゲン濃度および細胞数をチェックした。結果を、表4(細胞数)および表5(コラーゲン)にまとめた。サンプルはホルマリンで固定し、実施例1で述べたように、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色し、光学顕微鏡分析を行った。組織学的な評価で、構造体は限定培地で2%新生子ウシ血清存在下と同様に生育することが証明された。サンプルはまた、実施例1で述べた処置を用いてフィブロネクチンの陽性染色を行った。
【0159】
【表4】
【表5】
【0160】
また、細胞−マトリックス構築物中には内因的に産生される筋原線維のコラーゲン、デコリン、およびグリコサミノグリカンが存在した。
【0161】
実施例4:化学的に限定した培地を用いて形成される皮膚構造全体の厚さ
実施例3で示した方法に類似した化学的に限定した条件下で、ヒト皮膚線維芽細胞により形成された25日目の真皮構築物を用いて、正常ヒト新生児包皮表皮ケラチノサイトを細胞−マトリックス構築物の表面上に接種し、皮膚構造の表皮層を形成した。
【0162】
培地を無菌的に培養挿入体およびその周辺から取り除いた。正常ヒト表皮ケラチノサイトを、凍結継代培養細胞ストックからコンフルエント状態までに4継代培養してスケールアップさせた。細胞を、トリプシン−バーゼン液を用いて培養皿底面から遊離させ、プールし、遠心分離して細胞ペレットを形成させ、表皮化培地中に再懸濁させ、カウントして4.5×104細胞/cm2の密度で膜の上に播種した。構築物は、37±1℃、10±1% CO2中で90分間インキュベートし、ケラチノサイトを付着させた。インキュベーション後、構築物を表皮化培地に浸した。表皮化培地の組成は、ダルベッコ改良イーグル培地(DMEM)(グルコース、カルシウム無添加、BioWhittaker、Walkersville、MD)およびハムF−12培地(Quality
Biologics Gaithersburg、MD)の3:1混合物で、0.4μg/ml ハイドロコーチゾン(Sigma、St.Louis、MO)、1×10−4M エタノールアミン(Fulka、Ronkonkoma、NY)、1×10−4M O−フォスフォリルエタノールアミン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml インスリン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml トランスフェリン(Sigma、St.Louis、MO)、20pM トリヨードサイロニン(Sigma、St.Louis、MO)、6.78ng/ml セレン(Aldrich)、24.4μg/ml アデニン(Sigma Aldrich Fine Chemicals Co.、Milwaukee、WI)、4mM
L−グルタミン(BioWhittaker、Walkersville、MD)、50μg/ml
L−アスコルビン酸ナトリウム塩(Sigma Aldrich Fine Chemicals Co.、Milwaukee、WI)、16μM
リノール酸(Sigma、St.Louis、MO)、1μM 酢酸トコフェロール(Sigma、St.Louis、MO)、および50μg/ml 硫酸ゲンタマイシン(Amersham Arlington
Heights、IL)である。構築物は、表皮化培地中で37±1℃、10±1%CO2中で2日間培養した。
【0163】
2日後、培地を上述の組成の新鮮なものに交換し、37±1℃、10±1%
CO2中、インキュベーターで2日間培養した。2日後、構築物を含むキャリヤーを無菌的に十分な量の培地を入れた新しい培養トレーに移し、キャリヤー膜の表面と一致する水面になり、空気−液体界面で構築物が発達するのを維持することが出来るようにした。形成される表皮層の表面に接触する空気は、上皮細胞層の層状化を促す。構築物は37±1℃、10%CO2中で、低湿度で2〜3日毎に培地を交換しながら7日間培養した。この培地の組成は;ダルベッコ改良イーグル培地(DMEM)(高グルコース濃度、L−グルタミン無添加、BioWhittaker、Walkersville、MD)およびハムF−12培地(Quality
Biologics Gaithersburg、MD)の1:1混合物で、0.4μg/ml ハイドロコーチゾン(Sigma、St.Louis、MO)、5×10−4M エタノールアミン(Fulka、Ronkonkoma、NY)、5×10−4M O−フォスフォリルエタノールアミン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml インスリン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml トランスフェリン(Sigma、St.Louis、MO)、20pM トリヨードサイロニン(Sigma、St.Louis、MO)、6.78ng/ml セレン(Sigma Aldrich
Fine Chemicals
Co.、Milwaukee、WI)、24.4μg/ml アデニン(Sigma
Aldrich Fine
Chemicals Co.、Milwaukee、WI)、4mM L−グルタミン(BioWhittaker、Walkersville、MD)、2.65μg/ml
塩化カルシウム(Mallinckrodt、Chesterfield、MO)、16μM
リノール酸(Sigma、St.Louis、MO)、1μM 酢酸トコフェロール(Sigma、St.Louis、MO)、1.25mM セリン(Sigma、St.Louis、MO)、0.64mM塩化コリン(Sigma、St.Louis、MO)、および50μg/ml
硫酸ゲンタマイシン(Amersham Arlington Heights、IL)である。2〜3日毎に培地を交換しながら14日間培養した。
【0164】
3部のサンプルを、構築物を空気−液体界面に引き上げた後、10、12、および14日目に採取し、実施例1で述べたようにヘマトキシリンおよびエオシンで染色し、光学顕微鏡下で目視測定した。得られた構築物は、実施例3で述べた性質を持つマトリックスで囲まれた線維芽細胞からなる低(真皮)層を形成し、多層化し、よく分化したケラチノサイトの層により覆われていた。
【0165】
実施例5:ヒトアキレス腱線維芽細胞によるコラーゲンマトリックスの In
Vitro形成
実施例1で述べたのと同じ方法を用いて、ヒト新生児包皮線維芽細胞をヒトアキレス腱線維芽細胞(HATF)に代えて細胞−マトリックス構築物を形成した。産生培地で21日間培養した後に、実施例1に記載した処置を用いてサンプルをH&E染色し、厚さを測定した。得られた構築物は、厚さ75.00±27.58ミクロン(n=2)の細胞−マトリックス組織様構築物として可視化された。また、この構築物中には内因的に産生される筋原線維コラーゲン、デコリン、およびグリコサミノグリカンが存在した。
【0166】
実施例6:トランスフェクトしたヒト新生児包皮線維芽細胞によるコラーゲンマトリックスのIn Vitro形成
トランスフェクトしたヒト真皮線維芽細胞を以下の処置によって産生させた。1バイアルのjCRIP−43血小板由来成長因子(PDGF)ウイルス発生体(Morgan、J.ら)を溶解し、細胞を2×106細胞/フラスコ162cm2(Corming
Costar、Cambridge、MA)の密度で播種した。これらのフラスコには成長培地を入れ、10±1%CO2中で37±1℃でインキュベーターに静置した。成長培地の組成は、ダルベッコ改良イーグル培地(DMEM)(高グルコース濃度、L−グルタミン無添加、BioWhittaker、Walkersville、MD)で、10%
新生子ウシ血清(HyClone Laboratories、Inc.、Logan、Utah)、および4mM L−グルタミン(BioWhittaker、Walkersville、MD)を含む。同じ日に、1バイアルのヒト新生児包皮線維芽細胞(HDFB156)も溶解し、1.5×106細胞/フラスコ162cm2(Corning
Costar、Cambridge、MA)の密度で播種した。3日後にjCRIP
PDGF−43ウイルス発生体に新鮮な成長培地を与えた。HDFB156は上述の成長培地プラス8μg/ml
ポリブレン(Sigma、St.Louis、MO)で培養した。次の日にHDFB156細胞を以下のように感染させた。jCRIP
PDGF−43ウイルス発生体からの培養液を集めて0.45ミクロンフィルターで濾過した。8μg/ml
ポリブレンをこの濾過した培養液に添加した。それから培養液をHDFの上に置いた。次の2日間、HDFを新鮮な成長培地で培養した。HDFが5代から6代の継代をした翌日に2.5×106細胞/フラスコ162cm2(Corning
Costar、Cambridge、MA)の密度で播種した。細胞は以下のように継代培養し、培養液は吸引した。フラスコをリン酸緩衝液生理食塩水で洗浄し、残存する新生子ウシ血清を除いた。トリプシン−バーゼン液を各フラスコに5ml添加し、単層に完全に行き渡るようにゆっくりと回転させることで、フラスコ底面から細胞を遊離させた。培養物はインキュベーターに戻した。細胞が遊離すると同時に、トリプシン−バーゼン液の作用を停止するために、SBTI(大豆トリプシンインヒビター)5mlを各フラスコに添加し細胞懸濁液と混合した。細胞/トリプシン/SBTI懸濁液をフラスコから取り出し、無菌の円錐遠心管に等分した。細胞を約800〜1000xgで5分間遠心して集めた。該細胞を、播種用に成長培地に上記リストした濃度になるように再懸濁した。2日後に細胞に新鮮な培地を与えた。翌日上記のように細胞を集め、10%
新生子牛血清(NBCS)と10% ジメチルスルフォキサイド(DMSO)(Sigma、St.Louis、MO)を含む成長培地で1.5×106細胞/mlに希釈した。該細胞を1ml/凍結バイアルに入れて−80℃で保存した。
【0167】
本実施例のコラーゲンマトリックス形成には、実施例1および3で述べたのと同じ操作を用いて、ヒト新生児包皮線維芽細胞の代わりに、上記のように高レベルの血小板由来成長因子(PDGF)を産生するように形質転換したヒト新生児包皮線維芽細胞を用いて行った。播種後18日目に、上記のようにサンプルをH&E染色に呈した。また、サンプルを、実施例10に記載したファイブロネクチンの有無を確認するためにアビジン−ビオチン法を用いて染色した。実施例1で述べたように、播種後18日目にサンプルをH&E染色に呈し、実施例1で得られたものと同様な、厚さ123.6ミクロン(N=1)の細胞−マトリックスが肉眼で観察された。トランスフェクトされた細胞から細胞−マトリックス構築物中に排出されるPDGF量は、培養中を通じて(18日間)ELISAで測定して100
ng/mLであった。一方、対照ではPDGFの排出は検出できなかった。
【0168】
実施例7:移植物質としての真皮構築物の使用
実施例1の方法に従って、新生児包皮に由来するヒト真皮線維芽細胞を用いて細胞−マトリックス構築物を形成し、無胸腺ヌードマウスに作成した全切開創に移植した。マウスは、Parenteauら(1996)の方法に従って移植した。その開示を本明細書に引用によって援用する。移植は、14、28、および56日目に、切開口の接着、切開創の縮小、移植損失部分、および血管新生(色)で観察した。移植部分はマウスで完全に残っている間に写真を撮った。各時点で多くのマウスを屠殺して、移植部分およびその周辺部を、マウス皮膚の周辺縁に沿って少なくとも皮下脂肪肉部まで切開した。移植物とマウス皮膚との接合部はサンプルごとに保存した。体外移植組織サンプルを、リン酸緩衝液10%ホルマリンおよびメタノールで固定した。ホルマリン固定したサンプルを、実施例1で述べた操作に従ってH&E染色に呈した。移植物は、顕著な縮小もなくマウスの皮膚に取り込まれた。移植の14日以内にマウスの表皮は移植物を覆った。H&E染色サンプルでは、14日目の移植物には血管が明らかに認められた。そして実験全体を通じて認められた。肉眼での観察およびH&E染色により、移植物は実験期間中を通して健全である(生存している細胞を含みマトリックスの異常は、肉眼的には認められない、等)ように見えた。
【0169】
実施例8:皮膚移植としての皮膚構築物の使用
実施例2の方法に従って、真皮層の新生児包皮に由来するヒト真皮線維芽細胞および別の表皮層の新生児包皮に由来するヒト角質実質細胞を用いて、2層皮膚構造を形成した。この皮膚構築物は、膜から手で剥がし、キャリアサポートを用いずに処理し、移植部位に置くことができた。この2層皮膚構築物を、Parenteauら(1966)の方法に従って無胸腺ヌードマウスに形成した全切開創に移植した。その開示を本明細書において引用によって援用する。サンプルの採取は、移植後7、14、28、56、および184日目に行った。移植部分はマウスで完全に残っている間に写真を撮った。各時点で多くのマウスを屠殺して、移植部分およびその周辺部を、マウス皮膚の周辺縁に沿って少なくとも皮下脂肪肉部まで切開した。移植物とマウス皮膚との接合部は各サンプルで保存した。体外移植組織サンプルはリン酸緩衝液10%ホルマリンおよびメタノールで固定した。ホルマリン固定したサンプルを、実施例1で述べた操作に従ってH&E染色に呈した。
【0170】
移植物は7日以内にマウスの皮膚に取り込まれたことが、組織学的観察と同様に肉眼観察でも確かめられた。H&E染色により、移植後7日目以内に宿主の組織から移植物へ血管が伸びているのが認められた。移植物は、顕著な縮小もなく実験期間中を通して健全であった。抗ヒトインボルクリン染色を用いてヒト表皮細胞が全移植期間中存在していることが認められた。
【0171】
実施例9:ヒト角膜ケラチノサイトによるマトリックスのIn Vitro形成
ヒト角膜のケラチノサイト(Organogenesis、Inc.Canton、MAより入手)を角膜の基質構築物の形成に用いた。コンフルエントになったヒトケラチノサイト培養物を、トリプシン−バーゼン液を用いて培養基質から遊離させた。細胞が遊離した時、大豆トリプシンインヒビターを用いてトリプシン−バーゼン液の作用を中和し、細胞懸濁液を遠心し、上清は捨てて細胞は新鮮な培地に3.0×106/mlの濃度になるように基礎培地に再懸濁させた。細胞は、6ウェルトレーの0.4ミクロンポアサイズの24mm直径組織培養用トランスウェルに3×106細胞/TW(6.6×105細胞/cm2)の濃度で播いた。これらの培養物を、播種培地で一晩放置した。播種培地の組成は;ダルベッコ改良イーグル培地(DMEM)およびハムF−12培地(Quality
Biologics Gaithersburg、MD)の3:1混合物、4mM GlutaMAX(Gibco
BRL、Grand Island、NY)および以下の添加物を含む;5ng/ml ヒトリコンビナント表皮成長因子(EFG)(Upstate
Biotechnology、Lake Placid、NY)、0.4μg/ml ハイドロコーチゾン(Sigma、St.Louis、MO)、1×10−4M
エタノールアミン(Fulka、Ronkonkoma、NY)、1×10−4M
O−フォスフォリルエタノールアミン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml
インスリン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml
トランスフェリン(Sigma、St.Louis、MO)、20pM
トリヨードサイロニン(Sigma、St.Louis、MO)、および6.78ng/ml
セレン(Sigma Aldrich Fine Chemicals Co.、Milwaukee、WI)である。続いてこの培養物に新鮮な産生培地を与えた。産生培地の組成は;DMEM)およびF−12培地(Quality
Biologics Gaithersburg、MD)の3:1混合物、4mM GlutaMAX(Gibco
BRL、Grand Island、NY)および以下の添加物を含む;5ng/ml ヒトリコンビナント表皮成長因子(Upstate
Biotechnology、Lake Placid、NY)、2% 新生子牛血清(HyClone
Laboratories、Logan、Utah)、0.4μg/ml
ハイドロコーチゾン(Sigma、St.Louis、MO)、1×10−4M
エタノールアミン(Fulka、Ronkonkoma、NY)、1×10−4M
O−フォスフォリルエタノールアミン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml
インスリン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml
トランスフェリン(Sigma、St.Louis、MO)、20pM
トリヨードサイロニン(Sigma、St.Louis、MO)、6.78ng/ml
セレン(Sigma Aldrich Fine Chemicals Co.、Milwaukee、WI)、50ng/ml
L−アスコルビン酸(WAKO Pure Chemicals)、0.2μg/ml
L−プロリン(Sigma、St.Louis、MO)、0.1μg/ml
グリシン(Sigma、St.Louis、MO)、および0.05%
ポリエチレングリコール(PEG)3400−3700 MW(細胞培養グレード)(Sigma、St.Louis、MO)である。
【0172】
細胞は37±1℃、10±1%CO2中で培養し、2〜3日毎に新鮮な培地に交換して20日間(合計21日間)培養した。培養21日後にケラチノサイトを、実施例1に示した方法で測定して、厚さ約40ミクロンのマトリックス層を形成した。また、細胞−マトリックス構築物中には内因的に産生される筋原線維コラーゲン、デコリン、およびグリコサミノグリカンが存在した。
【0173】
実施例10:産生培地中でのヒト新生児包皮線維芽細胞によるコラーゲ ンマトリックスのIn
Vitro形成
ヒト新生児包皮線維芽細胞(Organogenesis、Inc.Canton、MAより入手)は、6ウェルトレーの0.4ミクロンポアサイズの24mm直径組織培養用キャリヤー(TRANSWELL(登録商標)、Costar
Corp.、Cambridge、MA)に1×105細胞/TWの濃度で播き、成長培地で培養した。成長培地の組成は、10%
新生子ウシ血清(HyClone Laboratories、Inc.、Logan、Utah)および4mM L−グルタミン(BioWhittaker、Walkersville、MD)を含むダルベッコ改良イーグル培地(DMEM)(高グルコース濃度、L−グルタミン無添加、BioWhittaker、Walkersville、MD)である。細胞は10±1%
CO2中で37±1℃のインキュベーターで培養した。培地は2〜3日毎に新鮮なものと交換し21日間培養した。産生培地の組成は、DMEMおよびハムF−12培地(Quality
Biologics Gaithersburg、MD)の3:1混合物、4mM GlutaMAX(Gibco
BRL、Grand Island、NY)および以下の添加物を含む;5ng/ml ヒトリコンビナント表皮成長因子(Upstate
Biotechnology、Lake Placid、NY)、2% 新生子牛血清(HyClone
Laboratories、Inc.、Logan、Utah)、0.4μg/ml
ハイドロコーチゾン(Sigma、St.Louis、MO)、1×10−4M
エタノールアミン(Fulka、Ronkonkoma、NY、ACSグレード)、1×10−4M
O−フォスフォリルエタノールアミン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml
インスリン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml
トランスフェリン(Sigma、St.Louis、MO)、20pM
トリヨードサイロニン(Sigma、St.Louis、MO)、6.78ng/ml
セレン(Sigma Aldrich Fine Chemicals Co.、Milwaukee、WI)、50ng/ml
L−アスコルビン酸(WAKO Pure Chemicals)、0.2μg/ml
L−プロリン(Sigma、St.Louis、MO)、0.1μg/ml
グリシン(Sigma、St.Louis、MO)、および0.05%
ポリエチレングリコール(PEG)(細胞培養グレード)(Sigma、St.Louis、MO)。
【0174】
サンプルは、培養21日で採集し、ホルマリンで固定しパラフィンで包埋した。ホルマリン固定したサンプルはパラフィン包埋して、5μm切片をヘマトキシリン−エオシン(H&E)で当業でルーチンに行われている方法によって染色した。H&E染色スライドを用いて、10mm/100μm格子(Olympus
America Inc.、Melville、NY)のついた10x接眼レンズ(Olympus
America Inc.、Melville、NY)を用いて任意に選んだ10カ所の顕微鏡視野で測定した。この方法によって作製した該構築物は、構造および生化学的組成において、実施例1において作成したものと類似しており、厚みの測定値は、82.00±7.64である。
【0175】
実施例11:ブタ真皮線維芽細胞によるコラーゲンマトリックスのIn Vitro形成
ブタ真皮線維芽細胞(Organogenesis、Inc.Canton、MAより入手)を5×105細胞/162cm2組織培養用フラスコ(Corming
Costar、Cambridge、MA、カタログ番号3150)の密度で播き、以下のように培養した。成長培地の組成は、10%
新生子牛血清(HyClone Laboratories、Inc.、Logan、Utah)および4mM L−グルタミン(BioWhittaker、Walkersville、MD)を含むダルベッコ改良イーグル培地(DMEM)(高グルコース濃度、L−グルタミン無添加、BioWhittaker、Walkersville、MD)である。細胞は10±1%
CO2中で37±1℃のインキュベーターで培養した。培地は2〜3日毎に新鮮なものと交換した。コンフルエンスに達したら、すなわち、細胞が組織培養用フラスコの底部にぎっしり詰まった状態の層を形成したら、培地を吸引した。単層を洗浄するために、無菌濾過したリン酸緩衝液生理食塩水を単層に添加してその後培養皿から吸引した。トリプシン−バーゼン液グルタミン(BioWhittaker、Walkersville、MD)を各フラスコに5ml添加し、単層細胞に完全に行き渡るようにゆっくりと回転させることで、フラスコから細胞を遊離させた。培養物はインキュベーターに戻した。細胞が遊離するとすぐ、トリプシン−バーゼン液の作用を停止するために、SBTT(大豆トリプシンインヒビター)5mlを各フラスコに添加し細胞懸濁液と混合した。細胞懸濁液をフラスコから取り出し、無菌の円錐遠心管に等分した。細胞を約800〜1000xgで5分間遠心して集めた。細胞を再懸濁し3.0×106/mlの濃度になるように希釈し、6ウェルトレーの0.4ミクロンポアサイズの24mm直径トランスウェルに3.0×106細胞/TW(6.6×105細胞/cm2)の濃度で播いた。細胞を播種培地中で一晩維持した。播種培地の組成は;DMEMおよびハムF−12培地(Quality
Biologics Gaithersburg、MD)の3:1混合物、4mM GlutaMAX(Gibco
BRL、Grand Island、NY)および以下の添加物を含む;5ng/ml ヒトリコンビナント表皮成長因子(EFG)(Upstate
Biotechnology、Lake Placid、NY)、0.4μg/ml ハイドロコーチゾン(Sigma、St.Louis、MO)、1×10−4M
エタノールアミン(Fulka、Ronkonkoma、NY)、1×10−4M
O−フォスフォリルエタノールアミン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml
インスリン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml
トランスフェリン(Sigma、St.Louis、MO)、20pM
トリヨードサイロニン(Sigma、St.Louis、MO)、6.78ng/ml
セレン(Sigma Aldrich Fine Chemicals Co.、Milwaukee、WI)、50ng/ml
L−アスコルビン酸(WAKO Pure Chemicals)、0.2μg/ml
L−プロリン(Sigma、St.Louis、MO)、および0.1μg/ml
グリシン(Sigma、St.Louis、MO)である。細胞は10±1%
CO2中で37±1℃のインキュベーター内に静置して、培地は2〜3日ごとに新鮮なものと交換しながら7日間培養した。産生培地の組成は、DMEMおよびハムF−12培地(Quality
Biologics Gaithersburg、MD)の3:1混合物、4mM GlutaMAX(Gibco
BRL、Grand Island、NY)および以下の添加物を含む;5ng/ml ヒトリコンビナント表皮成長因子(Upstate
Biotechnology、Lake Placid、NY)、2% 新生子ウシ血清(HyClone、Logan、Utah)、0.4μg/ml
ハイドロコーチゾン(Sigma、St.Louis、MO)、1×10−4M
エタノールアミン(Fulka、Ronkonkoma、NY)、1×10−4M
O−フォスフォリルエタノールアミン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml
インスリン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml
トランスフェリン(Sigma、St.Louis、MO)、20pM
トリヨードサイロニン(Sigma、St.Louis、MO)、6.78ng/ml
セレン(Sigma Aldrich Fine Chemicals Co.、Milwaukee、WI)、50ng/ml
L−アスコルビン酸(WAKO Pure Chemicals)、0.2μg/ml
L−プロリン(Sigma、St.Louis、MO)、0.1μg/ml
グリシン(Sigma、St.Louis、MO)、および0.05%
ポリエチレングリコール(PEG)(細胞培養グレード)(Sigma、St.Louis、MO)である。7日後に産生培地を新生子牛血清を含まないものに代えた。この培地は2〜3日毎に新鮮なものと交換しながら、更に20日間、計28日間培養した。
【0176】
サンプルは、培養21日で採集し、ホルマリンで固定し、パラフィン包埋した。ホルマリン固定したサンプルはパラフィン包埋して、5μm切片をヘマトキシリン−エオシン(H&E)で既知の通常の方法に従って染色した。H&E染色スライドを用いて、10mm/100μmレティクル(Olympus
America Inc.、Melville、NY)のついた10x接眼レンズ(Olympus
America Inc.、Melville、NY)を用いて任意に選んだ10カ所の顕微鏡視野で測定した。サンプルは細胞とマトリックスから成る構造を有し、厚さが71.20±9.57ミクロンであった。また、細胞−マトリックス構築物中には内因的に産生される筋原線維コラーゲン、デコリン、およびグリコサミノグリカンが存在した。
【0177】
実施例12:真皮乳頭細胞を含む2層皮膚構築物のIn Vitro形成
一次マトリックス産生細胞タイプとして正常ヒト新生児包皮線維芽細胞を用いて、実施例1で示した方法に従って細胞−マトリックスを作成した。この細胞−マトリックスを二次産生細胞としての真皮乳頭細胞に局所的に播種した。次にこれを三次産生細胞としての角質実質細胞に播種し、細胞−マトリックスおよび真皮乳頭細胞の上を覆う連続的な表皮層を形成した。
【0178】
最初に新生児包皮に由来するヒト真皮線維芽細胞(HDF)を用いて細胞−マトリックス構築物を形成した。HDFは成長培地中に5×105細胞/162cm2組織培養用フラスコ(Costar
Corp.、Cambridge、MA)の密度で接種した。成長培地の組成は、10%
新生子ウシ血清(NBCS)(HyClone Laboratories、Inc.、Logan、Utah)および4mM L−グルタミン(BioWhittaker、Walkersville、MD)を含むダルベッコ改良イーグル培地(DMEM)(高グルコース濃度、L−グルタミン無添加、BioWhittaker、Walkersville、MD)である。コンフルエントに達したら、HDFをトリプシン−バーゼン液を用いてプレートから遊離させた。細胞は新鮮な培地に3.0×106/mlの濃度になるように再懸濁させ、6ウェルトレーの0.4ミクロンポアサイズの24mm直径組織培養用挿入体(TRANSWELL(登録商標)、Corning
Corstar)に3×106細胞/挿入体(6.6×105細胞/cm2)の濃度で播いた。HDF培養物は、10±1%
CO2中で37±1℃のインキュベーターで培養した。実施例1で示した方法に従って、新鮮な産生培地を2−3日毎に与えて23日間培養した。
【0179】
細胞−マトリックス構築物が形成されたら、二次細胞集団として真皮乳頭に播いた。真皮乳頭細胞は毛髪胞の毛髪根に囲まれている特殊な線維芽細胞の個別分布をしており、毛髪育成の支持的な役割を果たしている。真皮乳頭は、以前に報告されたMessenger、A.G.の方法(ヒト毛髪胞からの真皮乳頭細胞の培養。Br.J.Dermatol.110:685−9(1984))を用いて毛髪法の微小切開により単離できてin
vitroで培養できる。この方法を本明細書において引用によて援用する。真皮乳頭細胞はコンフルエントになったら凝集し、フラスコ上では代わって新たな凝集を作る。真皮乳頭を4週齢のブタでの皮膚バイオプシーにより単離した。真皮乳頭からの細胞(PDP)は、20%NBCSを含むDMEMで8代まで継代培養した。培養3週間後、PDP細胞は真皮乳頭様構造を呈し、あるいは凝集し、各々の直径は約90〜210ミクロンであった。その後培地を激しくピペッティングをすることによって、プレートから凝集物を培養プレートから採り、ヒトコラーゲンマトリックス上に200凝集物/cm2の濃度で播いた。凝集物は、20%NBCSを含むDMEMで更に15日間、新鮮な培地を2c3日毎に与えて培養した。
【0180】
その上に真皮乳頭細胞を含有する細胞−マトリックス培養物に、ケラチノサイトを播き、培養して細胞−マトリックスおよび真皮乳頭細胞の上を覆う連続的な表皮層を形成させた。2つの異なる構築物を形成した:1つはヒトケラチノサイトとのものであり、他はブタケラチノサイトとのものである。初代培養を確立するために正常な表皮ケラチノサイトを体外移植によってヒト新生児包皮(HEP)およびブタ角質実質細胞(PEP)から単離した。次いで、これらの細胞を培養して、ブタ株で継代3まで、ヒト株で継代4まで増殖させた。培養約5〜6日後に、細胞をトリプシン−バーゼン液を用いてシャーレ底面から遊離させ、プールし、遠心分離して細胞をペレット化し、表皮化培地中に再懸濁させ、カウントして、HEP細胞で4.5×104細胞/cm2、PEP細胞で1.6×105細胞/cm2密度で膜の上に播いた。表皮化した培養物を、実施例2で述べたように12日間培養した。
【0181】
最終サンプルをヘマトキシリン−エオシン染色に呈し、光学顕微鏡観察を行った。得られた皮膚構造は、皮膚に類似した基礎形態学的組織を示した。一つは真皮層で内因的に産生されたマトリックスにより取り囲まれた線維芽細胞から成っている。このマトリックスは内因性に産生される筋原線維コラーゲン、デコリン、およびグリコサミノグリカンを含んでいる。真皮層は、真皮乳頭細胞の場所に局在している。他の一つは細胞−マトリックス構築物および真皮乳頭を横切る層状化した角質実質細胞層である。ヒトあるいはブタケラチノサイトに覆われた両方の組織構築物において、真皮乳頭は、覆っているケラチノサイトの小さな波動を惹起する充填構造を維持していた。真皮乳頭細胞の付近には、分化した表皮細胞が存在することが多い。
【0182】
実施例13:サンドイッチELISA法によるヒアルロン酸の測定
実施例1および3の方法に従って、それぞれ、血清含有培地および化学的に限定した培地中で、真皮線維芽細胞により形成された細胞−マトリックス構築物中のヒアルロン酸(HA)を測定した。
【0183】
細胞−マトリックス構築物を、多孔性膜(TRANSWELL(登録商標)、Corning Corstar)に取り込んだ75 mm直径の円形キャリヤー上に形成した。細胞−マトリックス構築物からの抽出物は、細胞−マトリックス構築物を入れた試験管に10mLの酢酸アンモニウム緩衝液および0.5mg/mlのプロテナーゼKを添加することによって調製した。該混合物を60℃で一晩インキュベートした。消化が完全に終わったら、該混合物を遠心分離し上清をヒアルロン酸アッセイ用の個別の試験管に入れた。96ウェルプレートを0.1M
NaHCO3溶液に溶かした20μg/ml
HA結合タンパク質の50μlでコーティングし、4℃で一晩保存した。プレートは0.05% Tween20を含有する0.85%食塩水で3回洗浄した。その後、各ウェルに250μlのブロッキング液(3%
BSAおよび0.9%塩化ナトリウムを含む10mM リン酸緩衝液、pH7.4)を添加し、プレートを室温で2時間インキュベートした。その後、プレートを、0.05%
Tween20を含有する0.85%食塩水で3回洗浄した。次いで、プレートに50μlの標準HA液および両方の実験条件での抽出サンプルを、種々の希釈を含めて、添加した。プレートを、室温(約20℃)で2時間インキュベートした。それから、プレートを、0.05% Tween20を含有する0.85%食塩水で3回洗浄して、各ウェルに50μlのビオチン化HA(1:2000希釈)を添加し、室温で2時間インキュベートした。その後、プレートを、0.05%
Tween20を含有する0.85%食塩水で3回洗浄し、各ウェルに50μlのHRP−アビジンD(1:3000希釈)を添加した。次いで、プレートを室温で45分間インキュベートした。それから、プレートを、0.05%
Tween20を含有する0.85%食塩水で3回洗浄して、各ウェルに100μlのオルソ−フェニレンジアミン基質溶液を添加し、37℃で10分間インキュベートした。反応は1M 塩酸50μlを添加することで停止した。最終的にプレートリーダーを用いて492nmの吸光度を読み記録した。
【0184】
吸光度の測定値は平均を取り、質量測定値に変換した。血清含有培地で形成された円形の細胞−マトリックス構築物(直径75mm)は、それぞれ約200μgのヒアルロン酸を含有し、化学的に限定された培地で形成されたものにはそれぞれ約1.5mgのヒアルロン酸が含有していた。
【0185】
実施例14:産生された細胞−マトリックス構築物の物理的試験および機械的特性
実施例1(細胞−マトリックス構築物)、実施例2(ケラチノサイト層に覆われた細胞−マトリックス構築物)、および実施例3(限定培地で作成した細胞−マトリックス構築物)の各組織構造物の機械的特性を膜膨張法で定量した。これらの試験は臨床的に用いられているアッセイ(例、Dermaflex(登録商標)、Cyberderm
Inc.、Media、PAおよびCutameter(登録商標)、Courage
Khazaka、Colonge、Germany)に類似しているが、膜を破裂できる圧を含めてより高い圧を使っている。サンプルの細胞−マトリックス構築物を、等張の生理食塩水を満たした直径10mmの円柱状ウェルの中心に置いたポリカーボネートブロックの上に水平に置いた。円柱状ウェルの直径に対応した円形の穴を持つ金属プレートを、サンプルの上に置きブロックに留めた。そして、シリンジポンプで追加の食塩水を注入することによりサンプルを膨張させた。圧伝導計を用いて得られた圧を測定した。装置が破壊されるまで加圧を続け破裂強度、実施例1の方法で得た細胞−マトリックス構築物では439.02mmHg;実施例2のケラチノサイト層に覆われた細胞−マトリックス構築物では998.52mmHg;および実施例3の限定培地で作成した細胞−マトリックス構築物では1542.26mmHgを得た。
【0186】
真皮マトリックスの熱溶解温度を求めるために、サンプル(細胞−マトリックス構築物)を実施例1の処置によって21日目に採取した。サンプル変性温度をMettler
Toledo(Highston、NJ)示差走査熱量計(DSC製品
#DSC12E)を用いて解析した。目的のために、溶解温度はサンプルを45℃から80℃まで毎分1℃の割合で加温することによって求めた。サンプルの平均変性温度は、60.8±1.2℃(n=3)であった。
【0187】
実施例1(細胞−マトリックス構築物)および実施例3(限定培地で作成した細胞−マトリックス構築物)の処置によって作成した表皮化マトリックスの縫合維持および引張力を、一定の臨床状況での構築物の縫合力を求めるために測定した。21日目のヒト真皮マトリックスの縫合維持力を、Mini−Bionex858試験システム(MTS
systems Corporation、Minneapolis、Minn.)を用いて、血管移植人工補綴のためのアメリカ国家標準出版(American National standards publication for Vascular Graft
Prosthesis)(Instruments、1986)に記載されている方法により測定した。
【0188】
実施例1のサンプル(細胞−マトリックス構築物)では、引張力は365N/mであり、実施例2に従って調製したサンプル(角質実質細胞層に覆われた細胞−マトリックス構築物)では、引張力は2720N/mであった。
【0189】
縫合維持力は、実施例1のサンプルでは、0.14Nであり、実施例2に従って調製したサンプルでは、0.22Nであった。
【0190】
実施例1、2、および3に記述した構築物を、24mmおよび75mmの直径の両方で作成した。3つの方法全ての培養操作で作成した構築物は密着性のある組織様構築物であり、最小の力で膜より剥がすことが可能である。従って、「剥がし可能」であり、試験や使用において、損傷を与えることなく取り扱うことができる。
【0191】
実施例15:化学的に限定した培地中でのヒト新生児包皮線維芽細胞による コラーゲンマトリックスのIn
Vitro形成
実施例1で述べた処置を用いてヒト新生児包皮線維芽細胞を増殖させた。細胞を3.0×106/ml濃度になるように再懸濁し、6ウェルトレーの0.4ミクロンポアサイズの24mm直径組織培養用挿入体に3.0×106細胞/TW(6.6×105細胞/cm2)の濃度で播いた。この実施例では、実施例を通して細胞は全て化学的に限定した培地で培養した。
【0192】
培地の組成は、DMEMおよびハムF−12培地(Quality Biologics Gaithersburg、MD)の3:1混合物、4mM
GlutaMAX−1TM(Gibco BRL、Grand Island、NY)および以下の添加物を含む;5ng/ml
ヒトリコンビナント表皮成長因子(Upstate Biotechnology、Lake Placid、NY)、1×10−4M
エタノールアミン(Fulka、Ronkonkoma、NY、ACSグレード)、1×10−4M
O−フォスフォリルエタノールアミン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml
トランスフェリン(Sigma、St.Louis、MO)、20pM
トリヨードサイロニン(Sigma、St.Louis、MO)、6.78ng/ml
セレン(Sigma Aldrich Fine Chemicals Company、Milwaukee、WI)、50ng/ml
L−アスコルビン酸(WAKO Chemicals USA、Inc.)、0.2μg/ml
L−プロリン(Sigma、St.Louis、MO)、および0.1μg/ml
グリシン(Sigma、St.Louis、MO)。
【0193】
上記基礎培地に加え、個別の条件で下記の添加物を加えた。
1.5μg/ml インスリン(Sigma、St.Louis、M
O)、0.4μg/ml ハイドロコーチゾン(Sigma、St.L ouis、MO)、および0.05%
ポリエチレングリコール(PE G)(Sigma、St.Louis、MO)。
2.5μg/ml インスリン(Sigma、St.Louis、M O)および0.4μg/ml
ハイドロコーチゾン(Sigma、St .Louis、MO)。
3.375μg/ml インスリン(Sigma、St.Louis
、MO)および6μg/ml ハイドロコーチゾン(Sigma、St .Louis、MO)。
【0194】
サンプルはホルマリンで固定し、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色して、光学顕微鏡検査を行った。可視化した組織学的な観察評価で、PEGを含有しない条件2でもPEGが存在する条件1とかなり類似したマトリックスを形成することが証明された。構造物のコラーゲン含量を生化学的に測定すると、PEGが存在する条件1では168.7±7.98μg/cm2;PEGのない条件2では170.88±9.07μg/cm2、と両方でほとんど同量の値を示した。高濃度のインスリンとハイドロコーチゾンを含む条件3では、他の2つの条件よりも早い時点でコラーゲンを含んでマトリックスの発現が大きいことが示された。また、全ての条件下で細胞−マトリックス構築物体中には内因的に産生される線維性コラーゲン、デコリン、およびグリコサミノグリカンが存在した。本実施例の条件2の方法で作成した培養真皮構造体を図2に示した。化学的に限定した培地で培養した21日目の培養ヒト真皮線維芽細胞から形成した細胞−マトリックス構築物体の、固定、パラフィン包埋、ヘマトキシリンおよびエオシン染色した切片の写真を図2に示した。多孔性の膜は構造物の下に、薄い半透明のバンドのように見える。細胞は膜の表面上で成長し、膜をマトリックスの中に取り込まないことが分かる。
【0195】
図3は、本実施例の条件2の方法で作成した21日目の培養真皮構築物の伝導電子顕微鏡(TEM)の2つの倍率での像を示す。図3Aは、線維芽細胞間の内因的性コラーゲン線維の列を示している7600倍率の像である。図3Bは、完全に形成された内因性コラーゲン線維の19000倍率の像であり、原線維の配列と束を示している。
【0196】
本実施例の全ての条件下で、培養真皮構築物は、構成する皮膚線維芽細胞および内因的に産生するマトリックスを形成した。全てに完全に形成されたコラーゲン線維が細胞間で配列され束ねられた形で存在することが示された。これら線維の性質、厚さ、および完全な密着性は、培養膜から剥離可能に除去できるようにし、それらを患者へ移植するときに取り扱いし易くするために、構築物にかなりの強度を与えた。
【0197】
実施例16:皮膚構築物の全体の厚さ
上記、実施例15で述べた条件2(PEGなし)の方法でヒト真皮線維芽細胞により作成した21日目の皮膚構造を用いて、正常ヒト新生児包皮表皮ケラチノサイトを細胞−マトリックス構築物上に接種し皮膚構造の表皮層を形成した。
【0198】
培地を無菌的に培養挿入体およびその周辺から取り除いた。正常ヒト表皮ケラチノサイトを、凍結細胞ストックからコンフルエント状態までに4継代培養してスケールアップさせた。細胞を、トリプシン−バーゼン液を用いて培養皿から遊離させ、プールし、遠心分離して細胞ペレットを形成し、表皮化培地中に再懸濁させ、カウントして4.5×104細胞/cm2の密度で膜の上に播いた。構築物を37±1℃、10±1% CO2中で90分間インキュベートし、ケラチノサイトが付着するようにした。インキュベーション後、構築物を表皮化培地に浸した。表皮化培地の組成は、ダルベッコ改良イーグル培地(DMEM)(高グルコース濃度、L−グルタミン無添加、BioWhittaker、Walkersvillc、MD)およびハムF−12培地(Quality
Biologics Gaithersburg、MD)の3:1混合物で、0.4μg/ml ハイドロコーチゾン(Sigma、St.Louis、MO)、1×10−4M エタノールアミン(Fulka、Ronkonkoma、NY)、1×10−4M O−フォスフォリルエタノールアミン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml インスリン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml トランスフェリン(Sigma、St.Louis、MO)、20pM トリヨードサイロニン(Sigma、St.Louis、MO)、6.78ng/ml セレン(Aldrich)、24.4μg/ml アデニン(Sigma
Aldrich Fine
Chemicals Company、Milwaukee、WI)、4mM L−グルタミン(BioWhittaker、Walkersville、MD)、50μg/ml
L−アスコルビン酸ナトリウム塩(Sigma Aldrich Fine Chemicals Company、Milwaukee、WI)、16μM
リノール酸(Sigma、St.Louis、MO)、1μM 酢酸トコフェロール(Sigma、St.Louis、MO)、および50μg/ml 硫酸ゲンタマイシン(Amersham Arlington
Heights、IL)である。構築物は表皮化培地中で37±1℃、10±1%CO2中で2日間培養した。
【0199】
2日後、構築物は上記組成の新鮮な培地に交換し、インキュベーターに返し37±1℃、10±1%CO2中で2日間培養した。2日後、構築物を含むキャリヤーを無菌的に十分な量の培地を入れた新しい培養トレーに移し、キャリヤー膜の表面と一致する水面になり、空気−液体境界のところで構築物が発達するのを維持することが出来るようにした。形成される表皮層の表面に接触する空気は上皮細胞層の層化を促す。構築物は37±1℃、10%CO2中、および低湿度中で、2〜3日毎に培地を交換しながら7日間培養した。この培地の組成は;ダルベッコ改良イーグル培地(DMEM)(高グルコース濃度、L−グルタミン無添加、BioWhittaker、Walkersville、MD)およびハムF−12培地(Quality
Biologics Gaithersburg、MD)の1:1混合物で、0.4μg/ml ハイドロコーチゾン(Sigma、St.Louis、MO)、5×10−4M エタノールアミン(Fulka、Ronkonkoma、NY)、5×10−4M O−フォスフォリルエタノールアミン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml インスリン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml トランスフェリン(Sigma、St.Louis、MO)、20pM トリヨードサイロニン(Sigma、St.Louis、MO)、6.78ng/ml セレン(Sigma Aldrich
Fine Chemicals
Company)、24.4μg/ml アデニン(Sigma Aldrich
Fine Chemicals
Company)、4mM L−グルタミン(BioWhittaker、Walkersville、MD)、2.65μg/ml 塩化カルシウム(Mallinckrodt,Chesterfield、MO)、16μM リノール酸(Sigma、St.Louis、MO)、1μM 酢酸トコフェロール(Sigma、St.Louis、MO)、1.25mM
セリン(Sigma、St.Louis、MO)、0.64mM 塩化コリン(Sigma、St.Louis、MO)、および50μg/ml 硫酸ゲンタマイシン(Amersham Arlington
Heights、IL)である。2〜3日毎に培地を交換し14日間培養した。
【0200】
3部のサンプルを、構築物を空気−液体界面に引き上げた後、10、12、および14日目に採取し、実施例1で述べたようにヘマトキシリンおよびエオシン染色し、光学顕微鏡下で目視測定した。得られた構築物は、マトリックスで囲まれた真皮線維芽細胞からなる低真皮層と、それを覆う多層化し、よく分化したケラチノサイトの表皮層とからなる2層の皮膚構築物であった。本実施例の2層皮膚構築物を図4に示す。図4は、化学的に限定した培地で培養した真皮線維芽細胞から形成した細胞−マトリックス構築物と化学的に限定した培地で培養したヒトケラチノサイトから形成した多層化した分化した表皮からなる、化学的に限定した培地で外因性マトリックス成分なしで形成した培養皮膚構築物の、固定、パラフィン包埋、ヘマトキシリンおよびエオシン染色した切片の写真を示す。
【0201】
実施例17:ヒト頬線維芽細胞によるコラーゲンマトリックスの形成
本実験の目的はヒト頬組織から単離した頬線維芽細胞から細胞−マトリックス構築物を産生することである。頬線維芽細胞を10%NBCS含有DM培地でT−150フラスコ中で培養した。7日後に更に細胞数を増やすために、頬線維芽細胞を採集して、各4.0x106細胞を9個のT−150フラスコに入れ10%NBCS含有DMEM培地中でコンフルエントになるまで培養し、採取した。
【0202】
細胞を採取するために、培地を培養フラスコから吸引した。単層細胞を洗浄するために、無菌濾過したリン酸緩衝液生理食塩水を各フラスコの底部に添加してその後吸引した。トリプシン−バーゼン液グルタミン(BioWhittaker、Walkersville、MD)を各フラスコに5mlずつ添加し、単層細胞に完全に行き渡るようにゆっくりと回転させることで、フラスコから細胞を遊離させた。培養物をインキュベーターに戻した。細胞が遊離すると同時に、トリプシン−バーゼン液の作用を停止するために、SBTT(大豆トリプシンインヒビター)5mlを各フラスコに添加し、細胞懸濁液と混合した。この細胞懸濁液をフラスコから取り出し、無菌の円錐遠心管に等分した。細胞を約800−1000xgで5分間遠心して集めた。
【0203】
細胞は再懸濁し3.0×106/mlの濃度になるように希釈し、6ウェルトレーの0.4ミクロンポアサイズの24mm直径トランスウェルに3.0×106細胞/TW(6.6×105細胞/cm2)の濃度で播種した。細胞を37±1℃、10±1%CO2中でインキュベーターに静置し、以下の培地で培養した。培地の組成は、DMEMおよびハムF−12培地(Quality
Biologics Gaithersburg、MD)の3:1混合物、4mM GlutaMAX(Gibco
BRL、Grand Island、NY)および以下の添加物を含む;5ng/ml ヒトリコンビナント表皮成長因子(EFG)(Upstate
Biotechnology、Lake Placid、NY)、0.4μg/ml ハイドロコーチゾン(Sigma、St.Louis、MO)、1×10−4M
エタノールアミン(Fulka、Ronkonkoma、NYカタログNo.2400ACSグレード)、1×10−4M O−フォスフォリルエタノールアミン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml インスリン(Sigma、St.Louis、MO)、5μg/ml トランスフェリン(Sigma、St.Louis、MO)、20pM トリヨードサイロニン(Sigma、St.Louis、MO)、6.78ng/ml セレン(Sigma Aldrich
Fine Chemicals
Company、Milwaukee、WI)、50ng/ml L−アスコルビン酸(WAKO ChemicalsUSA、Inc.)、0.2μg/ml
L−プロリン(Sigma、St.Louis、MO)、0.1μg/ml
グリシン(Sigma、St.Louis、MO)、および0.05%
ポリエチレングリコール(PEG)(Sigma、St.Louis、MO)である。
【0204】
播種後1日目に、培地を血清無添加産生培地に交換し、以後2〜3日毎に新鮮なものと交換しながら21日間培養した。21日目にサンプルを組織学的な検討のためにホルマリンで固定した。タンパクおよびコラーゲン生成量の解析のために3個のサンプルを使用した。
【0205】
24mm直径の構造物のコラーゲン生成量は、培養21日目に構造物あたり519μgであった。24mm直径の構築物の総タンパク生成量は、培養21日目に構築物あたり210μgであった。形態学的には、頬線維芽細胞の細胞−マトリックス構築物は、口腔の結合組織の培養した培養組織構築物であるが、マトリックスにより取り囲まれた頬の線維芽細胞を示した。一方、物理的には、構造体は物理的な嵩容量と完全さを有している。
【0206】
実施例18:線維芽細胞細胞を播いたコラーゲンラティスを収縮することによる組織等価物の調製
粗コラーゲン溶液を下記のようにして調製した。450gmラットから凍結ラット尾を70%EtOH中、20分間解凍した。層流フードの中で70%EtOH中、腱束を刺激した。腱鞘から個々の腱を引き出し、切り刻み、1つの尾につき250mlずつ、希釈酢酸中に入れた(1 :1 ,000)。この溶液を4℃で48時間放置した。その時点で、切り刻んだ腱が容積全体を占めるほどに膨張した。この粘性溶液を、SW25ローター中にあるBeckman L超遠心分離機にて、23krpmで1時間遠心分離にかけた。該上清を引き出し、粗コラーゲン溶液(タンパク質「C」)として4℃で保存した。
【0207】
粗コラーゲン溶液と0.1MのNaOHとを6:1の比率で混合して、コラーゲンが析出したとき酢酸を中和することによって、精製コラーゲン溶液を調製した。この溶液を、臨床遠心分離において、1500rpmで5分間遠心分離にかけた。上清を捨て、等量の新鮮な酢酸(1:1,000)を導入して、コラーゲンを再び溶かした。この溶液を精製コラーゲン溶液(タンパク質「R」)として4℃で保存した。
【0208】
タンパク質の濃度は、Lowry et al. See Lowry, O.
H., Rosebrough, N. J., Farr, N. J. and Randall, R. J., J. Biol. Chem., 193,
265-275 (1951) and Waddel, W. J., J. Lab and
Clin. Med. 48, 311-314 (1956)に記載の方法によって測定した。
【0209】
タンパク質ラティスを、線維芽細胞が弱く接着している60mmのFalconバクテリア皿中で調製した。各皿は、IX
McCoyの培地中に懸濁させた1.0mlの5X McCoyの5a培地、1.0mlのウシ胎児血清、0.25mlの0.1M NaOH、1.5mlのコラーゲン溶液および1.0mlの線維芽細胞を含有している。該皿にまず上記量のMcCoyの培地、血清およびNaOHを注入し、その後取り除き、線維芽細胞懸濁液を調製した。ゲルはすぐ硬化するため、コラーゲン溶液と線維芽細胞を同時に添加する際には、速度が重要である。皿を、37℃、5%CO2雰囲気、100%湿度でインキュベーターに入れた。線維芽細胞を取り込んだゲルは、10分後には完全に硬化していた。
【0210】
線維芽細胞として、ヒト包皮線維芽細胞、株1519を採用した。これは、Human
Genetic Cell Repository at the Institute for Medical Research in Camden, N.J.から取得した。これらの細胞を成長させ、20%血清、ペニシリンおよびストレプトマイシンを含むMcCoyの5a改良培地にて維持した。培養物は、マイコプラスマを含んでいなかった。M.I. T. Cell Culture Centerでは、10番目の集団ごとに濃度を倍にして細胞を調製、冷凍した(PDL)。
【0211】
ラティスの直径を測定するために、皿を暗い所で透明なメートルルーラー上に配置した。皿の端部に白光を水平に照らすことによって、光学的に可視化されたゲルの端部を取得した。収縮したゲルは、十分に形成された円板形として表れた。種々のポイントでの直径の違いは非常に小さなものだった。長軸と短軸の平均をとって平均径とした。
【0212】
実施例19:線維芽細胞による水和コラーゲンラティスの収縮の測定
実施例18に記載の処置によって作製した、570μg/mlタンパク質「C」、7.5×106ヒト包皮線維芽細胞、株1519、19th
PDL含有する水和コラーゲンラティスの収縮を測定した。皿中で培地を、1、4および8日目に変えた。取得日を図3にプロットで示す。それによれば、ラティスの面積がわずか7日間で112倍に減少することを示している。1日以内に、面積が7倍に収縮することが認められた。
【0213】
実施例20:異なるタンパク質濃度の水和コラーゲンラティスの収縮
水和コラーゲンラティスのタンパク質濃度がラティスの収縮に及ぼす影響を下記のようにして測定した。3種の水和コラーゲンラティスを、それぞれが含有するタンパク質「R」の濃度を異ならせた以外、実施例18と同様の処置によって調製した。ヒト包皮線維芽細胞、株1519、19th
PDLを用い、4日目に培地を取り換えた。
【0214】
得られたデータを図4にプロットで示した。ラティスの収縮率が、ゲルタンパク質濃度と逆向きに変化することがわかった。ラティス領域は経時的に減少した。
【0215】
実施例21:細胞数が水和コラーゲンラティスの収縮に及ぼす影響
細胞数が水和コラーゲンラティスの収縮に及ぼす影響を下記のようにして測定した。720μg/mlタンパク質「R」を含有する多くの水和コラーゲンラティスを実施例18に記載の処置によって測定した。ヒト包皮線維芽細胞、株1519を用い、3、7および10日目に培地を取り換えた。
【0216】
細胞を添加しない対照を用いた。さらに、細胞数を変えて4つの連続的な実験を行った。得られたデータを図5にプロットで示した。各点は、3または4のラティスの収縮を表している。偏差は非常に小さかったので示していない(<±1.0mm)。
【0217】
時間の関数として表された収縮の相違は些細であったが、細胞数がラティス収縮の収縮率に影響を及ぼしていることが分かる。ラティス径は、最低値よりやや上の小さい共通の数の濃度に近づいた。最低値以下では、ラティスの収縮率と細胞数の関係は、はっきりと線形を示した。8.1×104個の細胞を有するラティスは、24時間の間に収縮を開始しなかった。これらのまばらに分散するラティスは、高密度のものに比べて、実験期間中ずっと非常に遅れていた。
【0218】
実施例22:異なる集団倍加数(PDL)の細胞の水和コラーゲンラティスにおける収縮能
異なる集団倍加数(PDL)の細胞の水和コラーゲンラティスにおける収縮能、すなわち、異なる数の細胞分割を行う細胞を下記のようにして、測定した。培養物を、実施例18に記載の処置によって調製し、720μg/mlのタンパク質「R」を含有する水和コラーゲンラティスから形成した。3、7および10日目に培地を取り換えた。
【0219】
細胞を添加しない対照培養物を用いた。さらに、細胞数を変えて4つの連続的な実験を行った。
【0220】
回収したデータを図5にプロットで示した。各点は、3または4のラティスの収縮を表している。偏差は非常に小さかったので示していない(<±1.0mm)。19th PDLのものと同様、35th
PDLの細胞は、同量の比率でラティスを収縮できたが、50th PDLはできなかった。
【0221】
実施例23:サイトカラシンBが細胞の水和コラーゲンラティス収縮能に及ぼす影響
サイトカラシンBが細胞の水和コラーゲンラティス収縮能に及ぼす影響を下記のようにして測定した。水和コラーゲンラティスを実施例18のようにして作製した。タンパク質「C」含有量は、570μg/mlとした。線維芽細胞(ヒト包皮、株1519、19th
PDL)細胞の培養物中の濃度は、5×l05であった。10.0μg/mlサイトカラシンBを各培養物に添加し、培地を4日目と8日目に取り換えた。
【0222】
得られたデータを図6にプロットで示した。サイトカラシンBの濃度は、比較的高い細胞濃度のときでさえ、ラティス収縮によって完全にブロックされた。
【0223】
実施例24:コルセミドがコラーゲンラティス濃度に及ぼす影響
インヒビターコルセミドがタンパク質ラティスの収縮に及ぼす影響を下記のようにして測定した。水和コラーゲンラティスを含有する培養物を、実施例18に記載の処置によって調製した。それは、570μg/mlタンパク質「C」を含有していた。コルセミドを含有しない対照を除き、それぞれに0.36μg/mlコルセミドを添加した。試験培養物と対照培養物の双方に同数の細胞を添加し、得られた結果を図7にプロットで示した。45th
PDL細胞は、19th PDL細胞を追い抜いた。一方、45th PDL未処理細胞は、19th
PDL未処理細胞に遅れをとっていた。ラティスの収縮の率および程度を調節するためにコルセミドを使用できることは明らかである。
【0224】
実施例25:サイトシンアラビノサイドが異なるPDLの細胞によるコラーゲンラティス収縮に及ぼす影響
1.0μg/mlサイトシンアラビノサイドが異なるPDLの細胞によるコラーゲンラティス収縮に及ぼす影響を以下のようにして測定した。タンパク質「C」を570μg/mlで含有する水和コラーゲンラティスを含む培養物を調製した。ヒト包皮線維芽細胞、株1519、19th
PDLまたは47th PDLを、サイトシンアラビノサイドを含有しない対照とサイトシンアラビノサイドを含有する試験培養物の双方に添加した。得られたデータを図8にプロットして示した。47th
PDL細胞が、下のPCL細胞よりも少数であるにも関わらずすぐれた特性を示すことがわかった。これらの実験においては、サイトシンアラビノサイドを用いて、DNA合成を遮断し、それによって、細胞数をラティス定数内に維持した。
【0225】
実施例26:ヒト包皮線維芽細胞とケラチノサイトを用いた皮膚等価物の形成
実施例18の処置によって、水和コラーゲンラティスを作製した。それは500μg/mlタンパク質「C」を含有していた。バイオプシーによって取得したヒト包皮線維芽細胞を、EDTAとトリプシンの溶液を用いて培養プレートから除去した。単一細胞の懸濁液を遠心分離して、細胞をペレット化し、その後、該細胞を培養培地中に再度懸濁させ、水和コラーゲンマトリックス上に、線維芽細胞導入後7日間置いた。3日以内に、ケラチノサイトがラティス基質に付着した。ケラチン化のプロセスが開始し、引き続き、不透明のcorniumを形成した。電子顕微鏡を用いて組織学的観察を行った。
【0226】
実施例27:モルモット皮膚線維芽細胞とケラチノサイトを用いた皮膚等価物を用いたin vivo研究
皮膚生検材料をモルモットから取得し、真皮を表皮から外科手術的に分離した。真皮を酵素的に乖離して構成細胞中に入れ、それを組織培養皿に入れ、増殖させた。各実験動物からの細胞を個別の培養皿で成長させ、同一性を保存した。組織を、モルモットからの線維芽細胞を採用した以外は、実施例18の処置と同様に収縮した水和コラーゲンラティスをin
vitroで作製した。収縮させた後、ラティスのいくつかを、第2の生検材料からの表皮細胞またはケラチノサイトを用いて実施例26によって配置した。各移植物中の線維芽細胞を、移植物のレシピエントとなる動物から取得した。
【0227】
これらの皮膚等価物の移植物を実験動物(モルモット)の背中に作製したところ、そのような移植物は、1週間以内にすべてのレベルで完全に統合されることがわかった。下から血管化し、真皮のレベルで、移植物のコラーゲン原線維がまわりの宿主の組織に織り込まれた。偏光顕微鏡で観察したところ、組織学的断片において、まわりの皮膚と比較して移植物は線維芽細胞密度が高く、複屈折の程度が低いことで際立っている。表皮に付与される宿主の移植物さえ、表皮細胞層(ケラチノサイト)の多くの細胞で完全に覆われていた。該層を近接する皮膚に連像させた。自己移植の場合に起こるのと同様、真皮の傷の収縮が皮膚等価物の移植物によって阻害されることもわかる。
【0228】
実施例28:ラット皮膚線維芽細胞を用いた皮膚等価物を用いたin vivio研究、真皮等価物の真皮および表皮細胞の形成
移植の可能性のあるレシピエントからの小さな生検材料を1.0mm2断片に切断した。線維芽細胞は、断片から成長させ、Lux組織培養皿に置いた。4〜7日後、該断片を除去して、捨てるか、または新たなプレートに移した。1以上のプレートの細胞をほぼコンフルエントになるまで広げた。細胞がトリプシンとの反応により除去された時点で、洗浄し、その後、組織−培養フラスコに広げた。真皮等価物1平方センチメートルあたり5×104細胞が必要であった。そして、適切な数の細胞を、トリプシンを用いて基質から除去することによって投入した。その後、細胞をコラーゲン溶液、ラット血清および組織培養培地と結合させた。コラーゲンをラット尾の腱を0.02M酢酸中に抽出し、遠心分離によって精製することによって取得した。酸性pH、タンパク質1.5mg/mlに維持したら、コラーゲンは粘性で、やや不透明な溶液となった。それはI型コラーゲンのみからなり、検出可能なSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動によって検出可能なタンパク質を含有していなかった。コラーゲンが細胞および他の成分と結合した瞬間に、コラーゲンを原線維の形状で溶液から析出させるNaOHを用いてpHを7.2に調節した。このようにして、流体が捕捉されたラティスが形成された。ラティス中のサンプルをある程度均一に分散させた。コラーゲン原線維の活性短縮のプロセスによって、ラティスを固い粘度の組織に変換した。その結果、捕捉された流体が失われ、もとのラティスの量の何倍も減少した。組織が得られ、それは真皮等価物(DE)を含んでいた。
【0229】
表皮の追加
生検材料断片からトリプシンを用いて分離した表皮細胞を真皮等価物上に懸濁液として分散させた。2〜4日以内に、表皮細胞は、連続シートを形成し、真皮基層を覆った。この間に、細胞のコンフルエントシートが分化を始めた。デスモソーム結合、トノフィラメント(tonofilament)、およびケラトヒアリン顆粒剤が明らかになり、ケラチン化のプロセスが進み、透過性の角質層を形成した。可能であれば全体のプロセスがin
vitroでDEに起こるが、この研究では、表皮細胞が、皮膚等価物(SE)として機能するコンフルエントシートを形成するとすぐ、二層化組織を移植に供した。
【0230】
皮膚等価物を、多くのラットに移植し、下記の結果を得た。まず、組織移植の3〜5日後、移植物の体内移植、血管新生化が始まり、壊死や虚血が起こることなく急速に続いた。第二に、少数の例外はあるが、移植物が収縮を阻害するであろう。移植物を作製する際、移植物に隣接する正常皮膚にタトゥーをして、移植物の限界をマークした。この処置は、移植物の寸法を経時的にモニターすることを可能とするものである。傷の収縮が起こらなかったのは、表皮による真皮等価物の最初の被覆の不十分さ、動物による移植物の拒絶、または用いられるコリン製剤の量の関数としての不適切なラティスの形成に起因するものであった。
【0231】
ある研究では、31のそのような移植物を、包帯を外したときに調べた(9−14日)たところ、傷の収縮は、7例が完全に阻害されており、15例で75%以上阻害されており、23例で50%以上阻害されていた。
【0232】
別の研究では、52の移植物において、傷の収縮が移植物全体の少なくとも75〜80%が阻害されていた。
【0233】
多くの移植物は、経時的に小さくなるが、60日以上経過しても安定しており、拒絶されたものはなかった。良好な表皮の被覆を持つ大きなサイズの移植物(約8×l2cm)は、傷の収縮を有効に阻害し(75%以上)、火傷皮膚にとって代替として良好に機能していた。
【0234】
移植物は、長期間維持された。最も長いものは、2年以上維持された。
【0235】
良好に血管化が開始することに加えて、真皮等価物のマトリックスは、移植後の最初の数ヶ月間でかなり改造された。組織学的断片の複屈折を調べることによって構造の変化を調べたところ、マトリックスが移植の1週間後複屈折を示すことが明らかになった。匹敵する齢の顆粒組織においてはその現象は認められなかった。
一方、複屈折は、時間とともに強度を増加させ、そのパターンは一般的に、正常真皮のバスケット織の形状特徴を有していた。しかしながら、移植物が正常組織と接するトランジション領域においては、10週目までに、バスケット織パターンが成長し始めていた。
【0236】
In vivoで、移植の10週後でさえ、表皮過形成は隣接する正常組織よりかなり厚かった。舌または円錐歯または表皮が、真皮等価物を突き抜けるのが認められる。外部的に、または数ヶ月の期間、表皮がややうろこ状に現われ、移植物は赤みがかった色合いとなった。約3か月後までに、移植物は、平滑になり、白ねずみの正常な皮膚と似たピンクがかった色となるが、毛が抜けている。うろこの程度は、さらに7ヶ月続いた。それは、皮脂腺がないことに起因するのかもしれない。
【0237】
実施例29:血小板をもつコラーゲンラティスの収縮による組織等価物の調製
マサチューセッツ州ボストンの赤十字センターから期限切れの血小板濃縮物を入手した。ラットおよびブタの尾の腱のコラーゲンを実施例18に記載のようにして抽出した。ブタ皮膚コラーゲンは、Shriners’ Burns Institute(ボストン)のPaul Ehrlich博士から供給してもらった。そして、テロゲン、ウシコラーゲンをCollagen Corporation, Palo Alto, Califから取得した。Waddelに記載の方法 (Waddel, W. J., J. Lab and Clin. Med. 48, 311−14 (1956)を参照されたい)による改良を用いてコラーゲン濃度を測定した。以下の式を採用した:μg/ml=0.D.215−0.D.225/64.6。
【0238】
赤十字から入手した60倍濃縮の血小板濃縮物を、253ローターを使って、IEC PR−2遠心分離を、50分間500rpmで4℃で行うことによって、さらに濃縮し、赤血球を除去した。次いで、上清をさらに50分間1500rpmで同じローターを使って遠心分離し、血小板を濃縮した。上清を抜き出し、それを用いて得られた血小板ペレットを再懸濁させた。血小板の絶対濃度は、1つの実験から次の実験までの間に、ドナーの血液中の血小板濃度に依存して変化したが、各実験のすべての濃度は、濃縮し、その後希釈した1つもしくはプールしてあるサンプルに基づくものである。1×血小板濃度は、1.0mlの血液中の血小板濃度と等しい。
【0239】
以下の成分をこの順序で組み合わせることによって血小板ラティスを鋳造した:2.3mlのDMEM 1.76x培地(Flow
Laboratories)、1.5mlのラット尾の腱のコラーゲン、0.25mlの0.1N
NaOH(コラーゲンを中和するのに必要なNaOHの濃度は、用いられるコラーゲン調製物の酸性度に依存してやや変化する)、0.45mlのFBS(Flow
Laboratories)。この混合物を、0.5mlの5x血小板濃縮物とともに、60mmのFalcon0007ペトリ皿の表面に小滴ずつ注いだ。別法として、すべての成分を別々の容器で組み合わせてから、空のペトリ皿に注いだ。得られたラティスを37℃で90%空気/10%CO2雰囲気で、湿度100%でインキュベートした。鋳造されたラティスの合計量を増減させることによってラティスの厚みを調節した。鋳造処置の関数としてのラティスの収縮率には相違は認められなかった。
【0240】
収縮率は、ラティスが、放出された流体をまず1mlピペット中へ、次に大きなものへ引き抜き、次いで引き抜いた流体量を記録することによって、測定した。その後、引き抜いた流体を培養皿に戻した。これらの測定を1時間ごとに、ラティスの収縮が最大となるまで繰り返し行った。血小板濃度が1x以下のラティスにおいて、まずラティス端部をメスで培養皿からはがし、ラティスの下に捕捉されている流体を遊離させ測定する。ラティスは、裂けると、さらに流体を放出するので、血小板の収縮のみによって放出される流体の測定値を得るためには、ラティスを傷つけないように注意が必要である。DMEMコラーゲン、NaOHおよびFBSの組み合わせを追加する前に、別個の液滴のトロンビンと血小板濃縮物をペトリ皿中に見つけることによって、トロンビン(Sigma
Chemicals)の追加の効果を調べる実験も行った。
【0241】
図9は、得られたデータをプロットして示した図であり、トロンビン濃度が4.0単位/mlであるとき、トロンビンがコラーゲンラティスの血小板による収縮に及ぼす影響を示す図である。
【0242】
図10は、濃度が4.0単位/mlであるときの、血小板濃度およびトロンビンの有無の関数として得られるラティスの収縮を示すプロットである。
【0243】
見てわかるように、反応はかなり急速に行われる。1xの血小板濃度では、発言する流体全体の80−90%がラティス鋳造の最初の3時間で生じる。6時間までに、その反応は本質的に官僚詩、平衡状態が達成される。すなわち、湿度100%の条件下では、更なる流体の放出は観察されない。この時点では、最初の流体量の20−80%がラティスから発現され、その正確な量は血小板やコラーゲン濃度に依存し、また、他の鋳造培地変数に依存する。血小板ラティスの収縮の結果、血小板を含まないコラーゲンラティス鋳造のものと比較して、比較的高い引張力の組織等価物が形成された。
【0244】
トロンビンが十分な数の血小板とともに鋳造混合物に含まれている場合、組織等価物は、図2に示されているように、より早く形成される。トロンビンを含有する組織等価物は、それを含有しない組織等価物とはやや異なる特性を有しており、その引張力はやや低く、その流体定数はより低い。引張力は、
鋳造および破壊時間の測定後、組織等価物に対するグラム重量を試すことによって測定した。
【0245】
血小板ラティスの収縮率は、血小板の濃度に関連している。血小板の濃度の上昇によってラティス収縮が早まり、その結果、図10からわかるように、ラティスの流体が比例的に減少する。
【0246】
実施例30:タンパク質の濃度とタイプが血小板による収縮に及ぼす影響
タンパク質の濃度とソースが血小板によるラティスの収縮に及ぼす影響を、様々な濃度の異なるソースから得たコラーゲンを用いて調べた。他に記載がなければ実施例29に記載の方法で行った。得られたデータを図11A乃至11Dにプロットで示した。
【0247】
見てわかるように、鋳造培地のコラーゲン含有量を増加させると、収縮率と、絞り出される流体の量が減少する。これらの結果は通常、線維芽細胞が収縮性の作用物質として使用されたときのそれに対応している。
【0248】
4つの異なるソースからのコラーゲンは、テロゲンが他の3つのソースからのコラーゲンに比べて収縮に対する抵抗がかなり少ないことを除いて、同様の機能を示した。
【0249】
実施例31:インヒビターサイトカラシンBおよびコルセミドが血小板によるコラーゲンラティスの収縮に及ぼす影響
インヒビターサイトカラシンBおよびコルセミドが血小板による水和コラーゲンラティスの収縮に及ぼす影響を、下記の点を除き、実施例29に記載の一般的な処置にしたがって測定した。
【0250】
サイトカラシンB(Sigma Chemicals)およびコルセミド(CIBA
Pharmaceutical Company)を、濃縮DMEM培地に直接添加し、5mlのラティス量中の最終濃度をそれぞれ10μg/ml、5μg/mlとした。得られたデータを図12にプロットで示した。
【0251】
見てわかるように、サイトカラシンBの存在下で血小板とともに鋳造したラティスは、収縮できなかった。一方、コルセミドは、ラティスの収縮に対して明らかな影響を示さなかった。このことは、コルセミドがヒト血小板のフィブリンクロットを収縮させる能力に影響を及ぼさないことが既知であるので、予期されていたことであった。一方、サイトカラシンBは、血小板の円板形を安定させ、偽足の形成を阻害する。
【0252】
実施例32:ウサギ移植物
血小板によって収縮させた水和コラーゲンラティスから形成され、ウサギの耳への移植に適した組織等価物を以下のようにして調製した。移植の可能性のあるレシピエントから心臓穿刺によって取得した10mlのウサギ血液から血小板を採取し、実施例29に記載のように、分画遠心分離法によって濃縮した。さらに実施例29に記載の方法にしたがってウサギ血小板ゲルを鋳造した。収縮後、実施例28に記載の処置にしたがって、ラティスに同じウサギから得た生検材料に由来する表皮細胞を播いた。
【0253】
麻酔したウサギを、移植部位に毛をクリップすることによって、移植用に調製した。移植床の輪郭を描き、その輪郭の外周のちょうど外側にタトゥーマークを付けた。この部位を70%エタノールで洗浄し、軟骨を覆っている筋膜上にあるすべての組織を除去した。組織等価物を培養皿から剥がし、移植床に置き、移植物の端部を移植床の端部とわずかに重ね合わせた。移植物を、テルファ(Telfa)パッドにワセリンを含浸させることによって調製したツルグラの上に置いた。アール(Earle)の塩溶液に浸漬させたテルファ(Telfa)パッドをツルグラ上に置いた。耳には発泡性のパッドを用いて、形状を維持し、3インチの粘剤付き包帯で耳に包帯を巻いた。ウサギが包帯を外さないように、両方の耳を3インチの粘剤付き包帯にテープで留めた。移植の7日目に包帯を外した。引っ掻かないようにさらに2日間、ウサギをエリザベス調の襟に固定した。
【0254】
移植領域と正常皮膚の縁とを合わせて、単一片としてウサギの耳から摘出し、0.03Mリン酸緩衝液中の10%ホルマリンに浸した。その皮膚を一晩固定し、蒸留水で洗浄し、酢酸アミル、次にトルエンで洗浄し、次いで、Paraplast
t.Sevenミクロン切片中に包埋し、回転式マイクロトームで切断し、これらをヘマトキシリンおよびエオシンで染色した。
【0255】
すべての実験において移植物は受け入れられ、傷の収縮を阻害した。概して、この移植物は、周りの皮膚より白く見え、表面は幾分鱗状であり、毛はなかった。6週間経ても、中心に位置する瘡蓋は残っていた。
【0256】
6週間存在した移植物を組織学的に調べ、移植物に周辺線維芽細胞に浸透する程度を部分的に測定した。移植物中の線維芽細胞の密度は、隣接組織の密度と比べてかなり大きかった。移植物は、光学顕微鏡で観察したとき、複屈折のレベルが低いため、隣接組織から区別された。移植物は、2次誘導体、すなわち、毛嚢および皮脂腺が存在しないことから、さらに周りの組織から区別された。移植物の表皮の被覆は、顕著に肥大していた。
【0257】
実施例33:ラットでの皮膚等価物の形成における、皮膚等価物拒絶に関するin vitro研究
皮膚の小片をメスフィッシャー(Fischer)344ラットの背中から除去した(Charles
River Breeding
Labs)。これらの生検材料を外部組織からトリミングし、2〜3mm3片とし、Lux組織培養皿の表面で乾燥させた。生検材料から成長した該線維芽細胞を、10%ウシ胎児血清、ペニシリン、ストレプトマイシンおよびファンギゾン(Flow
Laboratories)を添加したダルベッコ改良イーグル最小基本培地(DMEM)中で10%CO2雰囲気で37℃で培養した。
【0258】
コラーゲンラティスを実施例28に記載の処置に従って調製した。簡単にいえば、2−8×105の線維芽細胞を100mmのプラスチック皿中で、濃縮DMEMおよび10%ウシ胎児血清、抗生物質および6mgのラット尾コラーゲンを1:1000希釈の酢酸水溶液中で結合させた。1週間以内に、線維芽細胞はコラーゲンラティスを収縮させ、新鮮な生検材料から解離させた表皮細胞の懸濁液をラティス表面上に積層させた。10−10Mコレラトキシン、20μg/ml表皮成長因子、および0.4μg/mlヒドロコルチゾンを培地に添加し、表皮細胞の成長を促進させ、皿を5%CO2雰囲気に移した。1週間以内に、表皮細胞は、コラーゲンラティス表面上にコンフルエントシートを形成し、皮膚等価物を移植できる状態とした。
【0259】
アロ移植を試験するために、ラティスをスプレーク・ドーリー(Sprague−Dawley)雌ラットから得た細胞を用いて調製し、雄フィシャー(Fisher)ラットに移植した。
【0260】
移植処置
体重約350〜400gの雄フィシャー(Fisher)ラットを、フェノバルビタールナトリウムで麻酔した。ラティスとほぼ同じ大きさの移植床を各動物の背中からの全厚の皮膚を除去することによって調製した。該ラティスを傷の部位に置き、ワセリン含浸テルファ(Telfa)パッドで被覆し、テルファ(Telfa)パッドをアール(Earle)の塩溶液に浸漬させた。多層の粘剤付き包帯を体に巻くことによって、これらの包帯を巻いた。移植物を最初に塗布した後、9〜13ヶ月間隔で、動物に再び麻酔をかけ、移植物全体を切除した。移植物の半分をリン酸緩衝ホルマリンに固定し、エタノール中で脱水し、パラフィン包埋を行った。移植物の他方の半分の中央部の被覆脂肪組織をトリミングして、2〜3mm3片とし、組織培養物中に置き、残留線維芽細胞を成長させた。
【0261】
カリオタイプの調製
移植物から成長した線維芽細胞集団を継代培養して、3〜6本のT−150フラスコ中の急速に分解した細胞を得た。線維芽細胞を2μg/mlコルヒチンで4時間処理し、フラスコを振り、低張培地(1部のDMEMから3部の希釈H2O)中で膨張させ、ガラススライド上で空気乾燥させ、アセトオルセインで染色した。各時点での20乃至30の完全染色体を撮影し、カリオタイプを調製し、線維芽細胞集団全体中の雌細胞の割合を測定した。
【0262】
スプレーク・ドーリー(Sprague−Dawley)雌ラット細胞を用いたドラフトを受け、宿主としての雄フィシャー(Fisher)ラットに保持させ、1〜2か月後、移植物中の雌細胞の有無を測定した。
【0263】
実施例34:皮膚組織等価物試験システムの調製
A.図16に記載の装置と類似の装置を用いて、以下に記載の作業を行った。操作を行うためにカバーをはずすが、それ以外では、無菌性を保持するため所定位置に保った。装置に関連する情報を以下に記載する:
【0264】
外側容器10:
直径38mm
容量35ml
内側容器20:
直径24mm
容量4ml
透過性部材24:
Nucleporeのポリカーボネート膜、孔径3ミクロン、厚さ5ミクロン
【0265】
B.無細胞、水化コラーゲンゲルを、透過性部材24を以下のように形成した
(1)プレミックス:
10×MEM 16.2ml
L−グルタミン(200mM) 1.6ml
ゲンタマイシン(50mg/ml) 0.2ml
ウシ胎児血清 18.0ml
炭酸水素ナトリウム(71.2mg/ml) 5.0ml
【0266】
上記順序で組み合わせて、37℃で保存溶液を混合し、4℃で30分間50ml中試験管中に保存した(気体は供給しない)。(2)27.8gの1mg/mlコラーゲン(ウシ指屈筋から酸によって抽出)の0.05%v/v酢酸中溶液の重さを量り、4℃で30分間50ml中試験管中で保存した。(3)8.2mlの上記プレミックスと4mlのDMEM完成物(10%FBS、4mM L−グルタミン、50μg/mlゲンタマイシンを含有する)を添加し(そして1mlアリコートを内側容器20中にピペットし、フード中でゲル化させた)。
【0267】
C. ヒト真皮線維芽細胞を用いて組織等価物を鋳造し、ヒト表皮(上皮)細胞を下記のよう播いた。処置や試薬についての一般的な説明は、1989年6月5日出願の第07/361,041号の特許やコペンディングの書類に見出すことができる。
【0268】
8.2mlの上記プレミックスを27.8gの1mg/mlコラーゲンの0.05%v/v酢酸中溶液に上記ステップAのようにして添加し、4mlのヒト真皮線維芽細胞(2.5×105細胞/ml)を組み合わせた。3mlのアリコートを内側容器20中の上記ステップBで作製された無細胞、水化コラーゲンゲルにピペットした。4.5mlのDMEM完成物を外側容器20に添加し、次いで、36℃/CO2で、一般的には4〜8日間インキュベートした。
【0269】
下記の培地を用いた
【表6】
【0270】
使用した2つの異なる培地は、mSBMと以下に記載の点を除いて同一である。
【表7】
【0271】
いくつかの例では、塩化カルシウムを1.8mMで培地に添加した。これを培地プラスカルシウム、例えば、mSBMプラスカルシウムと示す。
【0272】
D.組織等価物の鋳造後6日目で表皮化が開始した。
【0273】
(1)表皮化
内部容器20および外部容器10の双方から、ステップCに記載の培地を除去した。50μlのヒト表皮細胞懸濁液(3.33×106細胞/ml)を、上記ステップCで形成した組織等価物中に入れた。次いで、該容器を36℃、10%CO2で4時間インキュベートした。次いで、12.0mlのmSBMを外部チャンバーに、4mlをウェルに添加した。そして、該装置を同じインキュベーターに戻した。
【0274】
分化
表皮化の2日後、培地を除去し、mSBMプラスカルシウムと取り換えた。
【0275】
エアリフティング
表皮化の2日後、下記の処置を行った:内部および外部のチャンバーから培地を除去した。内側容器20を除去し、2体積分のcSBMプラスカルシウムをしみこませたコットンパッドを外部チャンバー10の底部に置き、9.0mlのcSBMプラスカルシウムを添加した。そして内側容器20を取り換え、35.5℃、10%CO2でインキュベートした。
【0276】
(4)維持
4日ごとに培地を除去し、新鮮な主SBMプラスカルシウムと取り換えた。
【0277】
実施例35:アガロースを組み込んだテストシステムの調製
2%アガロース水溶液を、高圧蒸気滅菌法によって殺菌し、40℃に冷却し、等量の2倍濃縮主SBMと混合した。吸収コットンパッドを除去し、13mlの混合物を外側領域14に注ぎ、36℃(10%CO2)に設定し、装置をインキュベーターに戻して、出荷まで保存した。
【0278】
本明細書に記載の実施例および実施の形態は、例示の目的で示したにすぎず、これに照らして当業者が提案するであろう種々の改変もしくは変更も、本願および認められた請求の範囲の精神および範囲に含まれることが理解される。
【0279】
実施例36:陥没した口腔歯肉の治療のための培養組織構築物の有効性
培養組織構築物がフリーの自家移植に匹敵する、付着した歯肉の機能的領域を提供し得るかどうかを判断することを主な目的とする。
【0280】
この研究の間、25名までの被験者をコントロールした。被験者の年齢は少なくとも18〜70歳とした。最初の3名の被験者には、外科的マテリアルハンドリング技術で測定し、数値分析には含めなかった。続く被験者を、これらの3名の患者の対照として登録し、4週間のフォローアップを完全に行った。登録した被験者は、少なくとも2つの歯肉の不十分なゾーンに付着しておらず、組織移植が必要な歯を有していた。歯根の被覆については指示がなく、または、移植時には望ましくない。被験者は、本発明の培養組織構築物またはフリーの自家移植によって処置しなければならない。移植物を臨床的に評価して、付着した歯肉の変化を測定し、生検材料の小片を取り出して、双方の移植物の組織学的評価と比較を行った。第2の有効性変数は、移植物された組織の、広範な角化組織、陥没の深さ、炎症の刻み目、色またはテクスチュアの隣接組織との整合性、口腔筋の引っ張りに対する抵抗、臨床的付着レベル、探針深さおよび被験者の不快感のベースラインからの変動である。
【0281】
本研究は、無作為化、対照治療比較を被験者間で行った。培養組織構築物とフリーの自家移植を通して生成された、付着歯肉の量と質を手術後1週目、1、2および6カ月後に評価した。最初のエンドポイントは、6カ月後に起こった。すべての術後評価は、行われた外科手術手順について知らない研究コーディネーターによって行われた。色、テクスチャー、炎症、および筋肉の引っ張りに対する抵抗性は、キャリブレートリサーチコーディネータによって個別に刻み目をつけられた。
【0282】
上述の発明について、明確さと理解を深めるために図および実施例で詳細に説明してきたが、請求項の範囲内で一定の変化や修飾を行ってもよいことが当業者には明かであろう。
【図面の簡単な説明】
【0283】
【図1】図1は、ヒドロキシプロリンアッセイによって測定されたコラーゲン濃度の上昇を、実施例1に記載のヒト新生児包皮細胞に由来する真皮構築物における細胞数と比較して示すグラフである。
【図2】図2は、水和コラーゲンラティスの線維芽細胞を用いた構築を示すデータのプロットを示す図である。
【図3】図3は、コラーゲン含有量が異なる水和コラーゲンラティスの線維芽細胞を用いた構築を示すデータのプロットを示す図である。
【図4】図4は、線維芽細胞数が異なる水和コラーゲンラティスの線維芽細胞を用いた構築を示すデータのプロットを示す図である。
【図5】図5は、2倍の濃度の異なるポピュレーションの細胞を用いた、水和コラーゲンラティス上の線維芽細胞の収縮性の容量を示すデータのプロットを示す図である。
【図6】図6は、水和コラーゲンラティスを収縮するために、10.0μg/mlのインヒビターサイトカラシンBが線維芽細胞の容量に及ぼす影響を示すデータのプロットを示す図である。
【図7】図7は、水和コラーゲンラティスを収縮するために、0.36μg/mlのインヒビターコルセミドが線維芽細胞の容量に及ぼす影響を示すデータのプロットを示す図である。
【図8】図8は、水和コラーゲンラティスを収縮するために、サイトシンアラビノサイドが線維芽細胞の容量に及ぼす影響を示すデータのプロットを示す図である。
【図9】図9は、トロンビン濃度4.0ユニット/mlで、トロンビンがコラーゲンラティスの血小板による収縮に及ぼす影響を示すプロットである。
【図10】図10は、トロンビン濃度4.0ユニット/mlで、血小板濃度およびトロンビンの有無の関数として、コラーゲンラティスの収縮を示すプロットである。
【図11】図11A乃至11Dは、用いるコラーゲンの種類およb濃度の関数として、コラーゲンラティスのラティス収縮を示すプロットである。
【図12】図12は、インヒビター、サイトカラシンBおよびコルセミドが血小板による水和コラーゲンラティスの濃度に及ぼす影響を示すプロットである。
【図13】図13は、本発明の1つの装置の一部切り欠き等角投影図である。
【図14】図14は、図13に示す装置の分解等角投影図である。
【図15】図15は、図13に示す装置の3−3に沿った断面図である。
【図16】図16は、本発明の別の装置の一部切り欠き等角投影図である。
【図17】図17は、図16に示す装置の分解上面図である。
【図18】図18は、図16に示す装置の6−6に沿った断面図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の口腔状態を治療する方法であって、前記方法は、培養組織構築物を前記被験者の口腔組織に移植することを含み、前記培養組織構築物は、1層の細胞外マトリックスを含み、前記細胞外マトリックスは、培養された線維芽細胞を含み、外因性のマトリックス成分またはスカホード支持体を含まない、方法。
【請求項2】
前記口腔の状態は、口腔歯肉の後退、歯間の乳頭状突起の欠損、歯茎音の欠陥、口腔インプラントの不全、歯分岐部欠陥、および上顎顔面の腫瘍切除からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細胞外マトリックスは、
(i)4分の1差の67nm結合パターンを示す原線維および原線維束の結合構成を示す原線維性コラーゲン;
(ii)デコリン;および
(iii)グリコサミノグリカンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記培養線維芽細胞は、新生男児包皮、真皮、腱、肺、尿道、臍帯、角膜基質、口腔粘膜、および腸からなる群から選択される組織に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記培養線維芽細胞は、真皮の線維芽細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記培養線維芽細胞は、ヒト組織に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
被験者の口腔の状態を治療する方法であって、前記方法は、培養組織構築物を被験者の口腔組織に移植するステップを含み、前記培養組織構築物は、細胞外マトリックスの第一の層および前記第一の層の上に配置された第二の細胞層を含み、前記細胞外マトリックスは、外因性のマトリックス成分およびスカホード支持体の不存在下で培養された線維芽細胞を含み、前記第二の細胞層は上皮細胞を含む、方法。
【請求項8】
前記口腔の状態は、口腔歯肉の後退、歯間の乳頭状突起の欠損、歯茎音の欠陥、口腔インプラントの不全、歯分岐部欠陥、および上顎顔面の腫瘍切除からなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記細胞外マトリックスは、
(i)4分の1差の67nm結合パターンを示す原線維および原線維束の結合構成を示す原線維性コラーゲン;
(ii)デコリン;および
(iii)グリコサミノグリカンを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記上皮細胞が、ケラチノサイト、角膜の上皮細胞、口腔粘膜から得られる上皮細胞、食道の上皮細胞、および尿道上皮細胞から構成される群から選択される請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の層に含有される前記培養線維芽細胞は、新生男児包皮、真皮、腱、肺、軟骨、尿道、角膜基質、口腔粘膜、および腸からなる群から選択される組織に由来する、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の層に含有される前記培養線維芽細胞は、真皮線維芽細胞である、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記細胞外マトリックスはさらに、フィブロネクチンおよびテナシンを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記培養された線維芽細胞および前記上皮細胞は、ヒト組織に由来する、請求項7に記載の方法。
【請求項15】
前記培養組織構築物は、前記第1の層の上に配置されて表皮細胞層を形成する第2のケラチノサイト細胞の層を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項16】
前記表皮細胞層は、基質層、超基質層、顆粒層および角質層を示す多層化、層化、分化された層であり、前記二層の培養皮膚構築物が、第一および第二層の接合点に存在する基底膜を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
被験者の口腔の状態を治療するための方法であって、前記方法は、培養組織構築物を被験者の口腔組織に移植するステップを含み、前記培養組織構築物は、コラーゲン溶液と収縮性の作用物質からなるゲル混合物を含む、方法。
【請求項18】
前記口腔の状態は、口腔歯肉の後退、歯間の乳頭状突起の欠損、歯茎音の欠陥、口腔インプラントの不全、歯分岐部欠陥、および上顎顔面の腫瘍切除からなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記収縮性の作用物質は、線維芽細胞を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記線維芽細胞は、ヒト組織に由来する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記線維芽細胞は、新生男児包皮、真皮、腱、肺、尿道、臍帯、角膜基質、口腔粘膜、および腸からなる群から選択される組織に由来する、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
被験者の口腔の状態を治療するための方法であって、前記方法は、培養組織構築物を前記被験者の口腔組織に移植するステップを含み、前記培養組織構築物は、細胞を含まずにコラーゲンゲルを含む第1の層と、第1の層上に配置された第2の層とを含み、前記第2の層は、コラーゲンと収縮性の作用物質を含有する第2のコラーゲンゲルを含む、方法。
【請求項23】
前記口腔の状態は、口腔歯肉の後退、歯間の乳頭状突起の欠損、歯茎音の欠陥、口腔インプラントの不全、歯分岐部欠陥、および上顎顔面の腫瘍切除からなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記収縮性の作用物質は、線維芽細胞を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記線維芽細胞は、新生男児包皮、真皮、腱、肺、尿道、臍帯、角膜基質、口腔粘膜、および腸からなる群から選択される組織に由来する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記第2の層は、ヒト表皮細胞を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記線維芽細胞は、ヒト組織に由来する、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記線維芽細胞は、遺伝子的に修飾され、細胞外マトリックス成分を生成する、請求項1、7、17および22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記線維芽細胞は、遺伝子的に修飾され、成長因子、ホルモン、ペプチド、またはタンパク質を生成する、請求項28に記載の方法。
【請求項1】
被験者の口腔状態を治療する方法であって、前記方法は、培養組織構築物を前記被験者の口腔組織に移植することを含み、前記培養組織構築物は、1層の細胞外マトリックスを含み、前記細胞外マトリックスは、培養された線維芽細胞を含み、外因性のマトリックス成分またはスカホード支持体を含まない、方法。
【請求項2】
前記口腔の状態は、口腔歯肉の後退、歯間の乳頭状突起の欠損、歯茎音の欠陥、口腔インプラントの不全、歯分岐部欠陥、および上顎顔面の腫瘍切除からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細胞外マトリックスは、
(i)4分の1差の67nm結合パターンを示す原線維および原線維束の結合構成を示す原線維性コラーゲン;
(ii)デコリン;および
(iii)グリコサミノグリカンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記培養線維芽細胞は、新生男児包皮、真皮、腱、肺、尿道、臍帯、角膜基質、口腔粘膜、および腸からなる群から選択される組織に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記培養線維芽細胞は、真皮の線維芽細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記培養線維芽細胞は、ヒト組織に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
被験者の口腔の状態を治療する方法であって、前記方法は、培養組織構築物を被験者の口腔組織に移植するステップを含み、前記培養組織構築物は、細胞外マトリックスの第一の層および前記第一の層の上に配置された第二の細胞層を含み、前記細胞外マトリックスは、外因性のマトリックス成分およびスカホード支持体の不存在下で培養された線維芽細胞を含み、前記第二の細胞層は上皮細胞を含む、方法。
【請求項8】
前記口腔の状態は、口腔歯肉の後退、歯間の乳頭状突起の欠損、歯茎音の欠陥、口腔インプラントの不全、歯分岐部欠陥、および上顎顔面の腫瘍切除からなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記細胞外マトリックスは、
(i)4分の1差の67nm結合パターンを示す原線維および原線維束の結合構成を示す原線維性コラーゲン;
(ii)デコリン;および
(iii)グリコサミノグリカンを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記上皮細胞が、ケラチノサイト、角膜の上皮細胞、口腔粘膜から得られる上皮細胞、食道の上皮細胞、および尿道上皮細胞から構成される群から選択される請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の層に含有される前記培養線維芽細胞は、新生男児包皮、真皮、腱、肺、軟骨、尿道、角膜基質、口腔粘膜、および腸からなる群から選択される組織に由来する、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の層に含有される前記培養線維芽細胞は、真皮線維芽細胞である、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記細胞外マトリックスはさらに、フィブロネクチンおよびテナシンを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記培養された線維芽細胞および前記上皮細胞は、ヒト組織に由来する、請求項7に記載の方法。
【請求項15】
前記培養組織構築物は、前記第1の層の上に配置されて表皮細胞層を形成する第2のケラチノサイト細胞の層を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項16】
前記表皮細胞層は、基質層、超基質層、顆粒層および角質層を示す多層化、層化、分化された層であり、前記二層の培養皮膚構築物が、第一および第二層の接合点に存在する基底膜を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
被験者の口腔の状態を治療するための方法であって、前記方法は、培養組織構築物を被験者の口腔組織に移植するステップを含み、前記培養組織構築物は、コラーゲン溶液と収縮性の作用物質からなるゲル混合物を含む、方法。
【請求項18】
前記口腔の状態は、口腔歯肉の後退、歯間の乳頭状突起の欠損、歯茎音の欠陥、口腔インプラントの不全、歯分岐部欠陥、および上顎顔面の腫瘍切除からなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記収縮性の作用物質は、線維芽細胞を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記線維芽細胞は、ヒト組織に由来する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記線維芽細胞は、新生男児包皮、真皮、腱、肺、尿道、臍帯、角膜基質、口腔粘膜、および腸からなる群から選択される組織に由来する、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
被験者の口腔の状態を治療するための方法であって、前記方法は、培養組織構築物を前記被験者の口腔組織に移植するステップを含み、前記培養組織構築物は、細胞を含まずにコラーゲンゲルを含む第1の層と、第1の層上に配置された第2の層とを含み、前記第2の層は、コラーゲンと収縮性の作用物質を含有する第2のコラーゲンゲルを含む、方法。
【請求項23】
前記口腔の状態は、口腔歯肉の後退、歯間の乳頭状突起の欠損、歯茎音の欠陥、口腔インプラントの不全、歯分岐部欠陥、および上顎顔面の腫瘍切除からなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記収縮性の作用物質は、線維芽細胞を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記線維芽細胞は、新生男児包皮、真皮、腱、肺、尿道、臍帯、角膜基質、口腔粘膜、および腸からなる群から選択される組織に由来する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記第2の層は、ヒト表皮細胞を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記線維芽細胞は、ヒト組織に由来する、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記線維芽細胞は、遺伝子的に修飾され、細胞外マトリックス成分を生成する、請求項1、7、17および22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記線維芽細胞は、遺伝子的に修飾され、成長因子、ホルモン、ペプチド、またはタンパク質を生成する、請求項28に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公表番号】特表2009−528856(P2009−528856A)
【公表日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−557528(P2008−557528)
【出願日】平成19年3月5日(2007.3.5)
【国際出願番号】PCT/US2007/063301
【国際公開番号】WO2007/103865
【国際公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(500557473)オルガノジェネシス インク. (5)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月5日(2007.3.5)
【国際出願番号】PCT/US2007/063301
【国際公開番号】WO2007/103865
【国際公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(500557473)オルガノジェネシス インク. (5)
【Fターム(参考)】
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