説明

可はく離性床コーティング並びに該コーティングの形成方法

【課題】多種の床材に適用しても、実用上剥がれることなく、汚れ防止性、耐摩耗性に
優れて長期間美観を保ち、なおかつ剥がしたい時には容易に剥がせる水性フロアポリッシュを用いた床コーティング並びに床コーティングの形成方法を提供する。
【解決手段】床面に適用される、ロウ類を主成分とする皮膜形成能を有する下塗り剤か
ら形成される下塗り層(A)と、水性エマルジョンを主成分とするフロアポリッシュ組成物から形成される可はく離性の上塗り層(B)とが順次積層されてなり、かつその下塗り層(A)が床面に対しその上塗り層(B)に対するよりも大きな接着性を形成することを特徴とする可はく離性床コーティング。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性フロアポリッシュを用いた可はく離性床コーティング並びに該コーティングの形成方法に関するものである。
さらに詳しくは、床の美観を長期にわたって維持できる耐久性を有し、はく離剤を使用しなくてもシートとして床から剥がすことができる、水性フロアポリッシュを用いた可はく離性床コーティング並びに該コーティングの形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
百貨店、量販店、スーパーマーケット、オフィスビルなどの床には水性ポリマータイプをその代表とする水性フロアポリッシュが使用されている。この水性フロアポリッシュにより形成されるコーティング層は、艶だし効果等によって美観、清潔感を維持するとともに、汚れの防止、及び床材の摩耗防止などの役割を果たしている。
このコーティング層は、その後人の歩行等によって汚れ、また、砂塵等によって傷つき、日々汚れや傷が蓄積していく。そこで、従来は、これを定期的に、洗剤を用いて洗浄し、その表面層の汚れを取り除き、フロアポリッシュを塗り足す作業をおこない、床面をきれいに保っていた。また、コーティング層の汚れがひどく、深く傷ついている場合等、洗浄ではメンテナンスが困難である場合には、はく離剤を用いてポリッシャーで洗浄し(以下、「はく離洗浄」ということがある。)、コーティング層全部をはく離して、新たにフロアポリッシュを塗布し、再びコーティング層をリフレッシュする作業をおこなう。
【0003】
このはく離洗浄作業はかなりの労力と時間を要する作業である。また、はく離剤を塗布した床面は非常にすべりやすく、転倒事故を起こすため、作業の安全性上問題があった。さらに、はく離剤は、コーティング層を形成する樹脂皮膜内の架橋結合を壊すためのアルカリ類(アミン類、アンモニア、苛性ソーダ等)、該樹脂皮膜を膨潤させるための有機溶剤(例えば、アルコール系溶剤、グリコール系溶剤)を主成分とし、作業環境の悪化及び建材の劣化の原因となっていた。加えて、フロアポリッシュをはく離洗浄した後の廃水処理は、環境保護の観点から大きな問題となっていた。
【0004】
そこで、これらの問題を解決するために、床被覆コーティング層(上塗り層)を手で引き剥がすタイプの水性フロアポリッシュ組成物(以下、「可はく離性水性フロアポリッシュ組成物」ということがある。)が、近年、種々検討されるようになった。
この可はく離性水性フロアポリッシュ組成物の一例が、特許文献1に開示されている。
また、塗り床材の分野においても、はく離コーティング(下塗り層)としてラテックスを用い、耐久性コーティング(上塗り層)としてエポキシ樹脂を用い、かつ両者が一体としてはく離される可はく離可能な塗り床材(特許文献2)が知られている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−231823号公報
【特許文献2】特開平11−199802号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、フロアポリッシュには、床面に適用された場合に人の歩行によって皮膜が剥がれない密着性が要求され、一方リフレッシュのため剥がしたいときには容易に剥がせる剥がし易さが要求され、これらのバランスをとることが非常に重要になる。さらには、ユーザーによって、フロアポリッシュが適用される床材が異なるため、様々な床材に対して適用できる汎用性が求められる。特許文献1に記載のような1液型の可はく離性水性フロアポリッシュ組成物では、様々な床材に対しては適用できず、実用性に乏しい。
また、特許文献2に記載の可はく離性塗り床材は、床面自体の更新の際に、はく離コ−ティング層と耐久性コーティング層とを一体のシートとして引き剥がすことができるものであるが、フロアポリッシュにおいては、比較的頻繁にコーティング層の塗り替えが行われるため、はく離層は床材表面に残ったまま、再度コーティング層を適用できるほうが、施工にかかる手間を削減できるため好ましい。特許文献2にはこの点について触れるところがなく、また水性フロアポリッシュ組成物に要求される性能についても何ら考慮や検討がされていない。
【0007】
本発明は、コンポジションビニル床タイル、ホモジニアスビニル床タイル、ビニル床シートなどの塩ビ系床材、リノリウム系床材、ゴム系床材、オレフィン系床材、石質系床材、木質系のフローリングやエポキシ系、ウレタン系等の塗り床など多種の床材に適用しても、実用上剥がれることなく、汚れ防止性、耐摩耗性に優れ、長期間床面の美観を保ち、且つ剥がしたい時には容易に剥がせる水性フロアポリッシュを用いた可はく離性床コ−ティング並びにその形成方法を提供するものである。そして、本発明の可はく離性床コ−ティングは、下塗り層(A)は床面と良く密着し上塗り層(B)に対してよりも大きな接着性を形成することから、上塗り層(B)を剥がす時は下塗り層(A)との界面から剥がれるため、再度下塗り層(A)を塗布しなくても、そのまま上塗り層(B)だけを塗布形成すれば、本発明の可はく離性床コ−ティングを再現することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、多種の床材に適用可能とするために、特定の組成を有する下塗り層(A)を設け、さらにその上に特定の組成を有する水性フロアポリッシュ組成物を適用した上塗り層(B)を設けることによって、さらに要すれば仕上げ層(C)、及びプライマー層(D)を設けることによって、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下のとおりである。
1.床面に適用される、ロウ類を主成分とする皮膜形成能を有する下塗り剤から形成される下塗り層(A)と、水性エマルジョンを主成分とするフロアポリッシュ組成物から形成される可はく離性の上塗り層(B)とが順次積層されてなり、かつその下塗り層(A)が床面に対しその上塗り層(B)に対するよりも大きな接着性を形成することを特徴とする可はく離性床コーティング。
【0009】
2.上塗り層(B)上に、さらに仕上げ層(C)が積層されたことを特徴とする上記1.記載の可はく離性床コーティング。
3.床面に予めプライマー層(D)が形成され、下塗り層(A)がプライマー層(D)に対し上塗り層(B)に対するよりも大きな接着性を形成することを特徴とする上記1.又は2.記載の可はく離性床コーティング。
4.下塗り層(A)が、酸化ポリオレフィン、天然ワックス、高級脂肪酸、高級アルコ−ル、高級脂肪酸と高級アルコ−ルとのエステルからなる群から選ばれる一種以上のロウ類を主成分とする乳化分散液(a1)により形成されるものであることを特徴とする上記1.〜3.のいずれかに記載の可はく離性床コーティング。
【0010】
5.下塗り層(A)が、(イ)酸価0であるパラフィン及び/又はポリエチレンと(ロ)樹脂エマルジョンからなる組成物(a2)により形成されるものであることを特徴とする上記1.〜3.のいずれかに記載の可はく離性床コーティング。
6.(ロ)樹脂エマルジョンが、エチレン−酢酸ビニル共重合体系エマルジョン、アクリル系エマルジョン、ウレタン系エマルジョンからなる群から選ばれる一種以上であることを特徴とする上記5.に記載の可はく離性床コーティング。
7.上塗り層(B)を形成するフロアポリッシュ組成物の主成分である水性エマルジョンが、ウレタン系エマルジョンであることを特徴とする上記1.〜6.のいずれかに記載
の可はく離性床コーティング。
8.仕上げ層(C)及び/又はプライマー層(D)が、アクリル系水性フロアポリッシュ組成物により形成されるものであることを特徴とする上記1.〜7.のいずれかに記載の可はく離性床コーティング。
【0011】
9.床面にロウ類を主成分とする皮膜形成能を有する下塗り剤を塗布し、これを乾燥して下塗り層(A)を形成する工程と、
該下塗り層(A)上に、水性エマルジョンを主成分とするフロアポリッシュ組成物を塗布し、これを乾燥して可はく離性の上塗り層(B)を形成する工程とからなり、かつその下塗り層(A)が床面に対しその上塗り層(B)に対するよりも大きな接着性を形成することを特徴とする可はく離性床コーティングの形成方法。
10.上塗り層(B)上に、さらに仕上げ層(C)を形成する工程とからなることを特徴とする上記9.に記載の可はく離性床コーティングの形成方法。
11.床面に予めプライマー層(D)が形成され、下塗り層(A)がプライマー層(D)に対し上塗り層(B)に対するよりも大きな接着性を形成することを特徴とする上記9.又は10.に記載の可はく離性床コーティングの形成方法。
【0012】
12.下塗り層(A)が、酸化ポリオレフィン、天然ワックス、高級脂肪酸、高級アルコ−ル、高級脂肪酸と高級アルコ−ルとのエステルからなる群から選ばれる一種以上のロウ類を主成分とする乳化分散液(a1)の下塗り剤により形成されるものであることを特徴とする上記9.〜11.のいずれかに記載の可はく離性床コーティングの形成方法。
13.下塗り層(A)が、(イ)酸価0であるパラフィン及び/又はポリエチレンと(ロ)樹脂エマルジョンからなる組成物(a2)の下塗り剤により形成されるものであることを特徴とする上記9.〜11.のいずれかに記載の可はく離性床コーティングの形成方法。
【0013】
14.(ロ)樹脂エマルジョンが、エチレン−酢酸ビニル共重合体系エマルジョン、アクリル系エマルジョン、ウレタン系エマルジョンからなる群から選ばれる一種以上であることを特徴とする上記13.に記載の可はく離性床コーティングの形成方法。
15.上塗り層(B)を形成するフロアポリッシュ組成物の主成分である水性エマルジョンが、ウレタン系エマルジョンであることを特徴とする上記9.〜14.のいずれかに記載の可はく離性床コーティングの形成方法。
16.仕上げ層(C)及び/又はプライマー層(D)が、アクリル系水性フロアポリッシュ組成物により形成されるものであることを特徴とする上記9.〜15.のいずれかに記載の可はく離性床コーティングの形成方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、以下のような効果が奏せられる。
本発明の可はく離性床コーティング又はその形成方法は、多種の床面に適用しても、上塗り層(B)が実用上剥がれることなく、優れた汚れ防止性、耐摩耗性を発揮し、長期間床面の美観を保ち、且つ上塗り層(B)を剥がしたい時には容易に剥がせるという優れた効果を奏する。
また、下塗り層(A)は床材と良く密着し上塗り層(B)に対してよりも大きな接着性を形成することから、上塗り層(B)を剥がす時は下塗り層(A)との界面から剥がれるため、再度下塗り層(A)を塗布しなくても、そのまま上塗り層(B)を塗布すれば、本発明の可はく離性床コーティングを再現することができる。
【0015】
さらに、上塗り層(B)に重ねて最表面に仕上げ層(C)を設けることによって、上塗り層(B)が容易に剥がせるという性能はそのままに、上塗り層(B)を保護し、光沢や汚れ防止性、耐摩耗性に優れ、長期間床面の美観を保てるという優れた効果を奏する。つ
まり、容易に剥がせる機能と美粧性機能をそれぞれのコーティング層に分けて付与させるものである。上塗り層(B)と仕上げ層(C)の違いは、上塗り層(B)は容易に剥がせる機能が重要であり、仕上げ層(C)には光沢や汚れ防止性等の機能が重要である点にある。なお、実施の態様によっては、仕上げ層(C)を形成した後に、さらに上塗り層(B)及び仕上げ層(C)を積層しても何ら差し支えない。
【0016】
また、床面に予めプライマー層(D)を設け、その上に下塗り層(A)を適用することによって、常に下塗り層(A)が適用される面が同一のものとなり、床材種による剥がし易さのバラツキがさらに少なくなるという優れた効果を発揮する。例えば、タイルにはタイル同士の繋ぎ目に目地があり、その目地には下塗り剤が塗布されにくく平滑面が形成され難く入り組んだ所が出来やすいため、その後塗布される上塗り剤が入り組んだ所に入り込むため、上塗り層(B)が剥がれにくく破れることがある。このような場合にプライマー層(D)を設けることにより、入り組んだ部分が埋まり、下塗り剤が塗布される面が平滑になることにより下塗り層(A)が平坦化し、その結果として上塗り層(B)を容易に剥がすことができる。このプライマー層(D)を設けるに当たり、下塗り層(A)は上塗り層(B)よりもプライマー層(D)に対してより大きな接着性を発揮できる様に、上記目地や多種床面が有する悪影響を排除できる組成とする必要がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明の実施の形態は、以下に例示する内容に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
尚、本発明において、「床面」とは「床材素地表面、及び該表面にフロアポリッシュ等のコーティングが施された表面」を意味する。
また、以下で「%」は「重量%」を意味する。
下塗り層(A)形成用下塗り剤
本発明の下塗り層(A)を形成する下塗り剤は、(1)ロウ類、(2)乳化剤、(3)水を含有するロウ類の乳化分散液(a1)、または、(1)ロウ類、(4)樹脂エマルジョンを含有する組成物(a2)である。
なお、上記ロウ類の下塗り剤中の濃度が0.1〜10%であることが好ましく、1〜8%であることが更に好ましい。
【0018】
(1)ロウ類
本発明の下塗り剤のうち、乳化分散液(a1)に用いられる上記ロウ類としては、酸価が3〜130で数平均分子量が400〜20000の酸化ポリオレフィン、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、木蝋、蜜蝋、モンタンワックスなどの天然ワックス、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチル酸、ステアリン酸、ベヘン酸などのカーボン数10〜34の高級脂肪酸、テトラデシルアルコール、セチルアルコール、オクタデシルアルコール、アラキルアルコールなどのカーボン数14〜30の高級アルコール、カーボン数10〜34の高級脂肪酸とカーボン数14〜30の高級アルコールのエステル、脂肪酸アミドからなる群から選ばれる一種以上が好適に用いられる。
なかでも、酸化ポリオレフィンとしては、酸価10〜130、数平均分子量500〜4000のものが、高級脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチル酸、ステアリン酸、ベヘン酸が、高級アルコールとしては、セチルアルコール、オクタデシルアルコール、アラキルアルコールがさらに好ましい。
一方、本発明の下塗り剤のうち、組成物(a2)に用いられる上記ロウ類としては、酸価0で数平均分子量が300〜5000のパラフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン等が好適に用いられる。
なかでも、数平均分子量400〜1000のパラフィン、ポリエチレンがさらに好ましい。
【0019】
(2)乳化剤
乳化剤の例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルなどの非イオン界面活性剤、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエ−テル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、脂肪酸塩などの陰イオン界面活性剤を使用することができる。上記乳化剤の下塗り剤中の濃度は0.1〜5%、好ましくは0.5〜3%である。
【0020】
(4)樹脂エマルジョン
樹脂エマルジョンの例としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体系エマルジョン、アクリル系エマルジョン、ウレタン系エマルジョン、スチレン−ブタジエン共重合系エマルジョン、天然ゴム系エマルジョン、シリコーン系エマルジョン等を使用することができる。なかでも、エチレン−酢酸ビニル共重合体系エマルジョン、アクリル系エマルジョン、ウレタン系エマルジョンが好適であり、これらのなかでもMFT(最低造膜温度)が0℃以下の柔軟な皮膜を与えるものがさらに好ましい。
なお、上記樹脂エマルジョンの樹脂濃度が10〜70%であることが好ましく、30〜65%であることが更に好ましい。
【0021】
上塗り層(B)形成用水性フロアポリッシュ組成物
本発明の上塗り層(B)を形成する水性フロアポリッシュ組成物は、従来公知の水性フロアポリッシュ組成物の中で、ウレタン系樹脂、アクリル・ウレタン系樹脂、シリル化ウレタン系樹脂(すなわち、架橋性珪素含有基を有するウレタン系樹脂)を使用することができるが、なかでもウレタン系樹脂を主成分とするものが好ましい。
また、上記ウレタン系樹脂を主成分とする水性フロアポリッシュ組成物は、(1)ウレタン系樹脂エマルジョン、(2)レベリング剤、(3)成膜助剤、(4)架橋剤を含有することが好ましい。
【0022】
(1)ウレタン系樹脂エマルジョン
本発明の上塗り剤に用いるウレタン系樹脂エマルジョンはポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリカーボネートジオール、グリコールならびにジアミンを含めたジオール成分と芳香族系ジイソシアネートや脂肪族・脂環族系ジイソシアネートのジイソシアネート成分のウレタン化反応により合成し、親水基の導入により自己乳化させてエマルジョン化して製造したもの、または、乳化剤により強制乳化してエマルジョン化して製造したものを使用することができる。 上記上塗り剤中のウレタン系樹脂濃度は10〜35%、好ましくは15〜25%である。
【0023】
(2)レベリング剤
平滑な皮膜を形成するためのレベリング剤の例としては、ヘキシルグリコール、オクチルグリコール、2−エチルヘキシルグリコール、デシルグリコール、ラウリルグリコール、ドデシルグリコールなどのグリコール類、ヘキシルジグリコール、オクチルジグリコール、2−エチルヘキシルジグリコール、デシルジグリコール、ドデシルジグリコールなどのジグリコール類、N−オクチル−2−ピロリドン、N−デシル−2−ピロリドン、N−ドデシル−2−ピロリドンなどのN−アルキル−2−ピロリドン類、トリブトキシエチルフォスフェート、ロジン変性アルキッド樹脂塩、スチレンマレイン酸塩などを使用することができる。上記レベリング剤の上記上塗り剤中の濃度は0.1〜10%、好ましくは0.5〜5%である。
【0024】
(3)成膜助剤
成膜助剤の例としては、ベンジルアルコール、3−メトキシ3−メチルブタノールなどのアルコール類、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ブチレングリコール、ヘキシレングリコールなどのグリコール類、N−メチル−2−ピロリドンなどを使用することができる。上記成膜助剤の上記上塗り剤中の濃度は2〜15%、好ましくは5〜10%である。
【0025】
(4)架橋剤
架橋剤の例としては、炭酸亜鉛アンモニア、炭酸カルシウムエチレンジアミン−アンモニア、グリシン亜鉛アンモニア、アラニン亜鉛アンモニア、アクリル酸亜鉛エチレンジアミンなどの多価金属錯体化合物、日清紡社製 商品名「カルボジライト」等のカルボジイミド基含有化合物が使用することができる。上記架橋剤の上記上塗り剤中の濃度はウレタン系樹脂の酸価に対して0.05〜0.9化学等量である。
仕上げ層(C)
本発明の仕上げ層(C)は、従来公知の水性フロアポリッシュ組成物を使用できるが、中でもアクリル系樹脂を主成分とするものが好ましい。
【0026】
また、上記アクリル系樹脂を主成分とする水性フロアポリッシュ組成物は、(1)アクリル系樹脂エマルジョン、(2)レベリング剤、(3)成膜助剤、(4)架橋剤、(5)ワックスエマルジョンを含有することが好ましい。
また、仕上げ層(C)は、抗菌性、耐薬品性、耐アルコール性、帯電防止性、防滑性、防虫忌避性能等の機能性を付加したものであってもよく、着色料や顔料等を含むものであってもよい。
プライマー層(D)
本発明のプライマー層(D)は、従来公知の水性、油性塗料及び水性フロアポリッシュを使用できる。
以下、本発明の実施の形態について、実施例に基づき説明する。
【実施例】
【0027】
下塗り層(A)](下塗り剤1〜11:実施例、下塗り剤12〜16:比較例)
下塗り剤1・・・酸化ポリオレフィン(イーストマンコダック社製「エポレンE−10」酸価15、数平均分子量1700)
100mlのステンレスビーカーに「エポレンE−10」、ポリオキシエチレンオレイルエーテル(E.O.=14)を入れて110℃で溶融した後、少量の水に溶解した精製苛性カリを加える。続いて、撹拌を行いながら溶融物を95〜98℃の水に徐々に加える。加え終わったら室温まで冷却して乳化分散液を得る。各成分の使用量(質量部)は下記の通りである。
エポレンE−10 50
ポリオキシエチレンオレイルエーテル 15
精製苛性カリ 1
水 934
──────────────────────────
合計 1000
【0028】
下塗り剤2・・・酸化ポリオレフィン(ベーカー・ペトロライト社製「セラマー67」酸価48、数平均分子量655)
200mlのステンレスビーカーに「セラマー67」、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(E.O.=8)、炭化水素系溶剤(エクソン・モ−ビル社製「エクソールD40」)を入れて110℃で溶融した後、少量の水に溶解した精製苛性カリを加える。続いて
、撹拌を行いながら溶融物を95〜98℃の水に徐々に加える。加え終わったら室温まで冷却して乳化分散液を得る。各成分の使用量(質量部)は下記の通りである。
セラマー67 50
ポリオキシエチレンラウリルエーテル 10
エクソールD40 40
精製苛性カリ 1
水 899
──────────────────────────
合計 1000
【0029】
下塗り剤3・・・酸化ポリオレフィン(ハネウエル社製「A−C580」酸価75、数平均分子量700)
200mlのステンレスビーカーに「A−C580」、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(E.O.=10)、炭化水素系溶剤(エクソン・モ−ビル社製「エクソールD40」)を入れて110℃で溶融した後、モルホリンを加える。 続いて、撹拌を行いながら溶融物を95〜98℃の水に徐々に加える。加え終わったら室温まで冷却して乳化分散液を得る。各成分の使用量(質量部)は下記の通りである。
A−C580 80
ポリオキシエチレンラウリルエーテル 10
エクソールD40 35
モルホリン 8
水 867
──────────────────────────
合計 1000
【0030】
下塗り剤4・・・酸化ポリオレフィン(ハネウエル社製「A−C5120」酸価120、数平均分子量700)
200mlのステンレスビーカーに「A−C5120」、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(E.O.=10)、炭化水素系溶剤(エクソン・モ−ビル社製「エクソールD40」)を入れて110℃で溶融した後、モルホリンを加える。続いて、撹拌を行いながら溶融物を95〜98℃の水に徐々に加える。加え終わったら室温まで冷却して乳化分散液を得る。各成分の使用量(質量部)は下記の通りである。
A−C5120 80
ポリオキシエチレンラウリルエーテル 10
エクソールD40 35
モルホリン 8
水 867
────────────────────────────
合計 1000
【0031】
下塗り剤5・・・カルナバワックス(天然ワックス)
200mlのステンレスビーカーにカルナバワックス、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(E.O.=8)、炭化水素系溶剤(出光興産社製「スーパーゾルLA25」)を入れて110℃で溶融した後、モノエタノールアミンを加える。続いて、撹拌を行いながら溶融物を95〜98℃の水に徐々に加える。加え終わつたら室温まで冷却して乳化分散液を得る。各成分の使用量(質量部)は下記の通りである。
カルナバワックス 50
ポリオキシエチレンラウリルエーテル 15
スーパーゾルLA25 40
モノエタノールアミン 3
水 892
──────────────────────────
合計 1000
【0032】
下塗り剤6・・・ステアリン酸(高級脂肪酸)
100mlのステンレスビーカーにステアリン酸、ポリオキシエチレンソルビタンステアレートを入れて110℃で溶融した後、少量の水に溶解した精製苛性カリを加える。続いて、撹拌を行いながら溶融物を95〜98℃の水に徐々に加える。加え終わったら室温まで冷却して乳化分散液を得る。各成分の使用量(質量部)は下記の通りである。
ステアリン酸 50
ポリオキシエチレンソルビタンステアレート 10
精製苛性カリ 2
水 938
──────────────────────────
合計 1000
【0033】
下塗り剤7・・・オクタデシルアルコール(高級アルコール)
200mlのステンレスビーカーにオクタデシルアルコール、ステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンソルビタンステアレート、「スーパーゾルLA25」を入れて110℃で溶融した後、撹拌を行いながら溶融物を95〜98℃の水に徐々に加える。加え終わったら室温まで冷却して乳化分散液を得る。各成分の使用量(質量部)は下記の通りである。
オクタデシルアルコール 50
スーパーゾルL A25 40
ステアリン酸ソルビタン 5
ポリオキシエチレンソルビタンステアレート 10
水 895
──────────────────────────
合計 1000
【0034】
下塗り剤8・・・ステアリン酸ステアリル(エステル)
200mlのステンレスビーカーにステアリン酸ステアリル、ステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンソルビタンステアレート、「スーパーゾルLA25」を入れて110℃で溶融した後、撹拌を行いながら溶融物を95〜98℃の水に徐々に加える。加え終わったら室温まで冷却して乳化分散液を得る。各成分の使用量(質量部)は下記の通りである。
ステアリン酸ステアリル 50
スーパーゾルLA25 40
ステアリン酸ソルビタン 5
ポリオキシエチレンソルビタンステアレート 10
水 895
──────────────────────────
合計 1000
【0035】
下塗り剤9・・・酸化0である固形パラフィンとエチレン−酢酸ビニル樹脂エマルジョン(固形パラフィン+エチレン−酢酸ビニル)からなる組成
200mlのステンレスビーカーに120°Fパラフィン、「エクソールD40」、ポリオキシエチレンソルビタンステアレート、ステアリン酸ソルビタンを入れて110℃で溶融した後、撹拌を行いながら溶融物を95〜98℃の水に徐々に加える。加え終わったら室温まで冷却して120°Fパラフィン乳化分散液を得る。各成分の使用量(質量部)
は下記の通りである。
120°Fパラフィン 50
エクソールD40 40
ポリオキシエチレンソルビタンステアレート 9
ステアリン酸ソルビタン 4
水 897
──────────────────────────
合計 1000
【0036】
上記120Fパラフィン乳化分散液をビーカーに取り、エチレン−酢酸ビニル系樹脂エマルジョン(住友化学工業社製「スミカフレックス400」固形分65%)、2−エチルヘキシルジグリコール、湿潤剤(セイミケミカル社製「サーフロンS−111N」を加えてパラフィンとエチレン−酢酸ビニル系樹脂エマルジョンからなる組成物を得る。各成分の使用量は(質量部)は下記の通りである。
120°Fパラフィン乳化分散液 900
エチレン−酢酸ビニル系樹脂エマルジョン 40
2−エチルヘキシルジグリコール 2
湿潤剤 0.5
水 57.5
────────────────────────────────
合計 1000
【0037】
下塗り剤10・・・酸化0であるポリエチレンとアクリル系樹脂エマルジョン(ポリエチレン+アクリル系樹脂)からなる組成
200mlのステンレスビーカーにポリエチレン(ペトロライト社製「POLYWAX500」)、ポリオキシエチレンソルビタンステアレート、ステアリン酸ソルビタン、「エクソールD40」を入れて110℃で溶融した後、撹拌を行いながら溶融物を95〜98℃の水に徐々に加える。加え終わったら室温まで冷却してポリエチレン乳化分散液を得る。各成分の使用量(質量部)は下記の通りである。
ポリエチレン 50
エクソールD40 40
ポリオキシエチレンソルビタンステアレート 15
ステアリン酸ソルビタン 7
水 888
──────────────────────────
合計 1000
【0038】
上記ポリエチレン乳化分散液をビーカーに取り、下記アクリル系樹脂エマルジョン、2−エチルヘキシルジグリコール、湿潤剤(セイミケミカル社製「サーフロンS−111N」を加えて得る。各成分の使用量は(質量部)は下記の通りである。
ポリエチレン乳化分散液 900
アクリル系樹脂エマルジョン 40
2−エチルヘキシルジグリコール 2
湿潤剤 0.5
水 57.5
────────────────────────────────
合計 1000
【0039】
アクリル系樹脂エマルジョンの作成
コンデンサー及び撹拌装置付きフラスコを温度制御できる湯煎中に浸し、その中に水3
80重量部、アニオン型界面活性剤(アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸ナトリウム、有効成分30%)、20重量部、ノニオン型界面活性剤(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、HLB=18.0)20重量部を仕込み溶解する。この後フラスコ内の温度を75℃に上昇させ、これにアクリル酸ブチルエステル310重量部、メタクリル酸メチルエステル260重量部、アクリル酸10重量部とγ−メタクリロキシプロピルメトキシシラン1重量部との混合物を、過硫酸アンモニウム10%水溶液11重量部とともに3時間かけて滴下し、エマルジョン重合して得た。このエマルジョンは、固形分59.8%、pHが3.8、粘度が1250mPa・sの物性を有していた。
【0040】
下塗り剤11・・・酸化0である固形パラフィンとウレタン系樹脂エマルジョン(固形パラフィン+ウレタン系樹脂)からなる組成
下塗り剤9の120°Fパラフィン乳化分散液をビーカーに取り、ウレタン系樹脂エマルジョン(ADEKA社製「アデカボンタイターHUX−822」固形分40%)、2−エチルヘキシルジグリコール、湿潤剤(セイミケミカル社製「サーフロンS−111N」を加えて得る。各成分の使用量は(質量部)は下記の通りである。
下塗り剤8の120°Fパラフィン乳化分散液 900
ウレタン系樹脂エマルジョン 70
2−エチルヘキシルジグリコール 2
湿潤剤 0.5
水 27.5
────────────────────────────────
合計 1000
【0041】
下塗り剤12・・・流動パラフィン
1000mlのステンレスビーカーに流動パラフィン、ポリオキシエチレンソルビタンステアレート、ステアリン酸ソルビタン、「エクソールD40」を入れて110℃で溶融した後、撹拌を行いながら溶融物を95〜98℃の水に徐々に加える。加え終わったら室温まで冷却して乳化分散液を得る。各成分の使用量(質量部)は下記の通りである。
流動パラフィン 50
エクソールD40 40
ポリオキシエチレンソルビタンステアレート 9
ステアリン酸ソルビタン 4
水 897
──────────────────────────
合計 1000
【0042】
下塗り剤13・・・120°Fパラフィン(固形パラフィン)
下塗り剤9の120°Fパラフィン乳化分散液を用いる。
下塗り剤14・・・ポリエチレン(ペトロライト社製「POLYWAX500」酸価0、数平均分子量500)
下塗り剤10のポリエチレン乳化分散液を用いる。
下塗り剤15・・・ポリプロピレン(三洋化成工業社製「ビスコール660−P」酸化0、数平均分子量3000)
200mlのステンレスビーカーにポリプロピレン、オレイン酸、「エクソールD40」を入れて110℃で溶融した後、モノエタノールアミンを加え撹拌を行いながら溶融物を95〜98℃の水に徐々に加える。加え終わったら室温まで冷却して乳化分散液を得る。各成分の使用量(質量部)は下記の通りである。
ポリプロピレン 50
エクソールD40 40
オレイン酸 15
モノエタノールアミン 5
水 888
──────────────────────────
合計 1000
【0043】
下塗り剤16・・・酸化ポリオレフィン(ハネウエル社製「A−C5180」酸価180、数平均分子量700)200mlのステンレスビーカーに「A−C5180」、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(E.O.=10)、炭化水素系溶剤(エクソン・モ−ビル社製「エクソールD40」)を入れて110℃で溶融した後、モルホリンを加える。続いて、撹拌を行いながら溶融物を95〜98℃の水に徐々に加える。加え終わったら室温まで冷却して乳化分散液を得る。各成分の使用量(質量部)は下記の通りである。
A−C5180 80
ポリオキシエチレンラウリルエーテル 10
エクソールD40 35
モルホリン 8
水 867
────────────────────────────
合計 1000
【0044】
上塗り層(B)](上塗り剤1〜3
上塗り剤1・・・ポリウレタン系樹脂エマルジョン組成
ウレタン系樹脂エマルジョン(注1 600
2−エチルヘキシルジグリコール 10
ジエチレングリコールモノメチルエーテル 70
5%亜鉛溶液(注2 20
湿潤剤(注3 0.3
防腐剤(注4 0.5
消泡剤(注5 0.2
水 299
──────────────────────────────
合計 1000
(注1 ユサ・テクニカ・ジャパン社製「ミケポリマ−M」固形分35%
(注2 酸化亜鉛を炭酸アンモニウムとアンモニア水で溶解した液
(注3 セイミケミカル社製「サーフロンS−111N」
(注4 タイショーテクノス社製「ビオサイド2100A」
(注5 ダウコーニング社製「FSアンチフォーム90」
【0045】
上塗り剤2・・・アクリルウレタン系エマルジョン組成
アクリル系樹脂エマルジョン(注6 300
ウレタン系樹脂エマルジョン(注1 300
2一工チルヘキシルジグリコール 20
ジエチレングリコールエチルエーテル 80
ワックスエマルション(注7 60
湿潤剤(注3 0.3
防腐剤(注4 0.5
消泡剤(注5 0.2
水 239
────────────────────────────
合計 1000
(注6 ローム&ハース社製「プライマルB−924」固形分38%
(注7 東邦化学工業社製「ハイテックE−4BS」固形分40%
【0046】
上塗り剤3・・・ポリウレタン系エマルジョン組成
ウレタン系樹脂エマルジョン(注8 550
TBEP(注9 10
ジエチレングリコールモノメチルエーテル 30
ワックスエマルション(注7 50
5%亜鉛溶液 10
湿潤剤(注3 0.3
防腐剤(注4 0.5
消泡剤(注5 0.2
水 299
────────────────────────────
合計 1000
(注8 ADEKA社製「アデカボンタイターHUX−822」固形分40% (注9
トリブトキシエチルホスフェイト
【0047】
仕上げ上層(C)](仕上げ剤1〜2)
仕上げ剤1・・・アクリル系樹脂エマルジョン組成
スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン(注10 450
TBEP 30
ジエチレングリコールモノメチルエーテル 85
ワックスエマルション(注7 90
固形分15%スチレン−マレイン酸樹脂溶液 10
湿潤剤(注3 0.3
防腐剤(注4 0.5
消泡剤(注5 0.2
水 299
────────────────────────────
合計 1000
(注10 ロームアンドハース社製「プライマルHPDR」固形分38%
仕上げ剤2・・・商品名「クリスタル響」(コニシ株式会社製、水性アクリルポリマータイプ 不揮発分23%)
プライマー(D)](プライマーA〜B)
プライマーA・・・商品名「バンテージY−2」(コニシ株式会社製、水性アクリルポリマータイプ 不揮発分25%)
プライマーB・・・商品名「イソラッカーつやあり」(ABC商会株式会社製、2液型ポリウレタン系塗料 ラッカーシンナーで不揮発分を20%に調整)
【0048】
[実施例1〜44]、[及び比較例1〜18]
評価床材としてJISA5705に定められた規格のコンポジションビニル床タイル(株式会社タジマ製、商品名「PタイルP−1」)、JISA5707に定められた規格のビニル床シート(ロンシール工業株式会社製、商品名「ロンリウムNo.159」)、及びJASに定められた規格の複合1種フローリング(東洋テックス株式会社製、商品名「セブンブラウン712」)を用いた。
この床材の表面に、表1〜6に記載のプライマー/下塗り剤/上塗り剤/仕上げ剤を塗布した。
【0049】
プライマーの塗布方法はフロアポリッシュ試験方法の塗布方法に準じた。すなわち、床材表面にガーゼで塗布量10±2ml/m2 になるように塗布し、1時問乾燥してプライ
マー層を形成した。下塗り剤の塗布方法は、床面及びプライマー層の上にガーゼで塗布量10±2ml/m2 になるように塗布し、1時問乾燥して下塗り層を形成した。上塗り剤の塗布は、ガ−ゼで塗布量15±2ml/m2 になるように塗布して1時間乾燥した。乾燥後、再度上塗り剤をガーゼで塗布量15±2ml/m2 になるように塗布して1時間乾燥した。この操作を繰り返して6回塗布まで行い、24時間乾燥させた。さらに、仕上げ剤の塗布は、ガーゼで塗布量10±2ml/m2 になるように塗布し、1時問乾燥して仕上げ層を形成し、可はく離床コーティングを形成した試験片を作成した。この試験片について以下の試験を行い、表1〜6に示される結果を得た。
【0050】
〈評価項目および評価方法〉
密着性
床材は、歩行により靴底のゴムで擦られすり傷がつく、歩行に耐える密着性があるかをJISK3920の16.耐ヒールマーク性に規定するヒールマーク試験器で評価した。試験片をヒールマーク試験機の所定位置に確実に取り付けた。試験ドラム内に標準ゴムブロック6個を入れ、毎分50回転で5分間回転させた。その後、逆方向に5分間回転させ、合計10分間回転を与えた。試験片をヒールマーク試験機から取り出し、起毛した綿布(フランネル)で表面を軽くなで、表面に付着したごみ、ほこりなどを除去し、皮膜の破れ及び浮きを評価した。
尚、耐ヒールマーク試験器とは六角柱状の試験ドラムの各面に試験片が保持でき、試験ドラムに回転軸が固定されており、電動機によって、この回転軸が毎分50回転の速度で回転できるものである。標準ゴムブロックとはJISS5050の6.2(表底及びかかと用材料)に規定するゴム製かかとの材質に適合するカーボンブラック配合の黒色ゴムを用い、50×50×50mmの立方体で質量170〜180gのものである。
(評価) 皮膜の破れ、浮きが全くない :◎
皮膜の破れはないが、わずかに浮きがある :○
皮膜の破れはないが、浮きがある :△
皮膜の破れがある。 :×
【0051】
耐ヒールマーク性
床材には、歩行によってすり傷が付き、靴底の黒色ゴムが付着する。黒色ゴムの付着に対する抵抗性を耐ヒールマーク性という。評価方法はフロアポリッシュ試験方法JISK3920に準じた。すなわち、上記密着性の試験に使用した試験片に付着した黒色ゴムの付着度合いを目視で評価した。
(評価) 黒色ゴムが付かない :◎
黒色ゴムが少し付く :○
黒色ゴムが付く :△
黒色ゴムが著しく付く :×
【0052】
はく離性
フロアポリッシュ皮膜(上塗り層(B))をシート状にしてはく離するときの剥がし易さを評価する方法は図1で示す次の方法でおこなった。試験片(床材)の角からヘラと手で少しずつ剥がして試験片の半分まで皮膜を剥がす。剥がした皮膜の床材面に市販のガムテープを半分貼り付け、床材幅の棒をガムテープで巻き、ガムテープの半分を皮膜の表面側に貼り付ける。棒の中間部下にバネ秤りのフックを掛けるための穴を開け、バネ秤りのフックを掛け、約10mm/秒のスピードで床材に対して垂直方向へ引っ張った。皮膜が剥がれる最大の力を測定した。なお、試験に供した皮膜の幅は225mmであった。
(評価) 0〜10N/225mm :◎
10〜20N/225mm :○
20〜30N/225mm :△
30N/225mm以上 :×
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
【表3】

【0056】
【表4】

【0057】
【表5】

【0058】
【表6】

【0059】
【表7】

【0060】
【表8】

【0061】
【表9】

【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の可はく離性床コーティング並びにその形成方法によれば、フロアポリッシュコーティング層をシート状にして手で簡単にはく離ができるため、従来のはく離洗浄作業に比べて省力化と作業時間の短縮が図れる。また、はく離剤を使用しないため、はく離作業中、転倒事故を起こすことがなく、作業の安全が図れる。また、作業環境の悪化及び建材に対する悪影響を起こすことがなく安心して使用できる。さらに、フロアポリッシュはく離洗浄廃水処理の手間を省き、環境保護に繋がる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】はく離試験の概要を説明する図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に適用される、ロウ類を主成分とする皮膜形成能を有する下塗り剤から形成される下塗り層(A)と、水性エマルジョンを主成分とするフロアポリッシュ組成物から形成される可はく離性の上塗り層(B)とが順次積層されてなり、かつその下塗り層(A)が床面に対しその上塗り層(B)に対するよりも大きな接着性を形成することを特徴とする可はく離性床コーティング。
【請求項2】
上塗り層(B)上に、さらに仕上げ層(C)が積層されたことを特徴とする請求項1記載の可はく離性床コーティング。
【請求項3】
床面に予めプライマー層(D)が形成され、下塗り層(A)がプライマー層(D)に対し上塗り層(B)に対するよりも大きな接着性を形成することを特徴とする請求項1又は2記載の可はく離性床コーティング。
【請求項4】
下塗り層(A)が、酸化ポリオレフィン、天然ワックス、高級脂肪酸、高級アルコ−ル、高級脂肪酸と高級アルコ−ルとのエステルからなる群から選ばれる一種以上のロウ類を主成分とする乳化分散液(a1)により形成されるものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の可はく離性床コーティング。
【請求項5】
下塗り層(A)が、(イ)酸価0であるパラフィン及び/又はポリエチレンと(ロ)樹脂エマルジョンからなる組成物(a2)により形成されるものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の可はく離性床コーティング。
【請求項6】
(ロ)樹脂エマルジョンが、エチレン−酢酸ビニル共重合体系エマルジョン、アクリル系エマルジョン、ウレタン系エマルジョンからなる群から選ばれる一種以上であることを特徴とする請求項5に記載の可はく離性床コーティング。
【請求項7】
上塗り層(B)を形成するフロアポリッシュ組成物の主成分である水性エマルジョンが、ウレタン系エマルジョンであることを特徴とする請求項1〜6ののいずれか1項に記載の可はく離性床コーティング。
【請求項8】
仕上げ層(C)及び/又はプライマー層(D)が、アクリル系水性フロアポリッシュ組成物により形成されるものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の可はく離性床コーティング。
【請求項9】
床面にロウ類を主成分とする皮膜形成能を有する下塗り剤を塗布し、これを乾燥して下塗り層(A)を形成する工程と、
該下塗り層(A)上に、水性エマルジョンを主成分とするフロアポリッシュ組成物を塗布し、これを乾燥して可はく離性の上塗り層(B)を形成する工程とからなり、かつその下塗り層(A)が床面に対しその上塗り層(B)に対するよりも大きな接着性を形成することを特徴とする可はく離性床コーティングの形成方法。
【請求項10】
上塗り層(B)上に、さらに仕上げ層(C)を形成する工程とからなることを特徴とする請求項9に記載の可はく離性床コーティングの形成方法。
【請求項11】
床面に予めプライマー層(D)が形成され、下塗り層(A)がプライマー層(D)に対し上塗り層(B)に対するよりも大きな接着性を形成することを特徴とする請求項9又は10に記載の可はく離性床コーティングの形成方法。
【請求項12】
下塗り層(A)が、酸化ポリオレフィン、天然ワックス、高級脂肪酸、高級アルコ−ル、高級脂肪酸と高級アルコ−ルとのエステルからなる群から選ばれる一種以上のロウ類を主成分とする乳化分散液(a1)の下塗り剤により形成されるものであることを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載の可はく離性床コーティングの形成方法。
【請求項13】
下塗り層(A)が、(イ)酸価0であるパラフィン及び/又はポリエチレンと(ロ)樹脂エマルジョンからなる組成物(a2)の下塗り剤により形成されるものであることを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載の可はく離性床コーティングの形成方法。
【請求項14】
(ロ)樹脂エマルジョンが、エチレン−酢酸ビニル共重合体系エマルジョン、アクリル系エマルジョン、ウレタン系エマルジョンからなる群から選ばれる一種以上であることを特徴とする請求項13に記載の可はく離性床コーティングの形成方法。
【請求項15】
上塗り層(B)を形成するフロアポリッシュ組成物の主成分である水性エマルジョンが、ウレタン系エマルジョンであることを特徴とする請求項9〜14のいずれか1項に記載の可はく離性床コーティングの形成方法。
【請求項16】
仕上げ層(C)及び/又はプライマー層(D)が、アクリル系水性フロアポリッシュ組成物により形成されるものであることを特徴とする請求項9〜15のいずれか1項に記載の可はく離性床コーティングの形成方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−56256(P2007−56256A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−204168(P2006−204168)
【出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(000133445)株式会社ダスキン (119)
【出願人】(000105648)コニシ株式会社 (217)
【Fターム(参考)】