説明

可動パネル構造及び取付方法

【課題】 装置を薄型化することができ、スライドを静音化でき、可動パネル、可動パネルの開閉機構及びその駆動部を含めた装置前面部を、装置本体と機構的に切り離すことができ、表面意匠の変更をすることなく本体装置、例えばCDユニットからDVDユニットへの変更ができる可動パネル構造及び取付方法を提供すること。
【解決手段】 装置本体2の前面を覆う可動パネル32の構造であって、可動パネル32を有する前面部3を装置本体2と着脱自在な構造にし、可動パネル32を開閉させる開閉機構33と、開閉機構33を駆動させる駆動部34を前面部3に備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置の前面を覆う可動パネル構造に関し、車載装置の操作スイッチや表示部を備えたものに、特に有用な可動パネル構造及び取付方法の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来においては、筐体の下面開口部を覆う底面板の一部に相当する大きさの摺動板を、筐体内部に設けたモータと歯車、ラックの機構により前進させ、摺動板の先端部を筐体の前面を覆う前面部材の下端部にボルトで連結することにより、摺動板の前進に伴って前面部材を直立状態から傾斜状態にし、前面部材で覆っていたカセット挿入口を開き、カセットの挿入・取り出しを可能にしている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平5−64349号公報(第2−6頁、全図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の構造にあっては、前面部材をスライドさせるための駆動モータ、変速ギア及び摺動部材(トレー)は、例えば、オーディオの本体(ヘッドユニット)方向に設置しており、そのスライド量の設定に合わせた寸法以上の奥行きを持って設置している。このように従来では、前面部材の機構や駆動部は本体内部で構成しなければならず、一体で分離が不可能であった。そのために、ユーザによって例えばCDユニットからDVDユニットに変更される場合には、装置全体が変更されることになり、表面意匠も変更される可能性が高く、変更時にユーザは操作に戸惑ったり、操作手順を覚えなくてはならず、ユーザに煩わしさを与える可能性があった。
【0004】
本発明は、上記問題点に着目してなされたもので、その目的とするところは、表面意匠の変更をすることなく本体装置、例えばCDユニットからDVDユニットへの変更ができる可動パネル構造及び取付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明では、車載装置本体の前面を覆う可動パネルの構造であって、可動パネルを有する前面部を前記車載装置本体と着脱自在な構造にし、可動パネルを開閉させる開閉機構と、同開閉機構を駆動させる駆動部を前記前面部に備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
よって、本発明にあっては、表面意匠を構成する前面部を変更することなく、装置全体を変更することができるので、装置本体の変更時にユーザに煩わしさを与える可能性を低くできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の可動パネル構造及び取付方法を実現する実施の形態を、請求項1,2,3,4に係る発明に対応する実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0008】
まず、構成を説明する。
図1は実施例1の可動パネル構造及び取付方法を用いた車載装置の斜視図である。図2は実施例1の可動パネル構造及び取付方法を用いた車載装置の前面部の斜視図である。図3は実施例1の可動パネル構造及び取付方法を用いた車載装置の正面図である。図4は実施例1の可動パネル構造及び取付方法を用いた車載装置の前面部の側面図及び一部切欠側面図である。図5は実施例1の可動パネル構造及び取付方法を用いた車載装置の前面部において可動パネルを開いた状態を示す説明図である。図6は実施例1の可動パネル構造及び取付方法を用いた車載装置の前面部において可動パネルをやや開いた状態を示す説明図である。図7は実施例1の可動パネル構造及び取付方法の説明図である。図8は実施例1の可動パネル構造及び取付方法の説明図である。
【0009】
実施例1の可動パネル構造及び取付方法を用いた車載装置1は、図1、図2に示すように、装置本体2と前面部3で主に構成される。
前面部3はシャーシ31(枠体に相当する)、可動パネル32、ベルト等からなる開閉機構33、開閉機構の駆動部34、固定パネル35を主要な構成にしている。
シャーシ31は、図7に示すように中央に貫通し大きく開口した開口部311と、この開口部311の下端部分と仕切られた下方空間を形成する下部312、開口部311及び下部312の左右の側面部313からなる。
【0010】
可動パネル32は、図7,図8に示す矩形のブラケット321に、液晶表示画面となる表示部322を設け、表示部322の左右側方のブラケット321上に各種スイッチ323を設けたものである(図3参照)。
【0011】
開閉機構33は、まず、図4,図7,図8に示すように、シャーシ31の左右それぞれの側部下部の所定位置に回転自在なドライブプーリ331を設ける。次に、シャーシ31の左右それぞれの側部上部でドライブプーリ331より後方となる所定位置に回転自在なセカンドプーリ332を設ける。
さらに、左右それぞれのドライブプーリ331とセカンドプーリ332に、ベルト333を掛け渡す。ベルト333の一部は、テンションプーリ334により、内側に押えられることにより、ベルト333が所定の張りで保持される。
このベルト333の前側の一部に取付部335を設け、ベルト333の駆動で上下動可能にする。
取付部335の内側上端部分は、可動パネル32のブラケット321の左右上端に回転自在にそれぞれ取りつける。
【0012】
次に、可動パネル32のブラケット321の側部の上下の中間位置には、アーム336の前端を回転自在に取りつける。また、アーム336の後端は、可動パネル32の下端位置に相当する高さ位置のシャーシ31に回転自在に取りつけるようにし、このアーム336は可動パネルのブラケット321の左右に設ける。
【0013】
次に、駆動部34は、シャーシ31の開口部311の下方にモータ341を設け、左右のドライブプーリ331をドライブシャフト342で接続し、ドライブシャフトに342モータ341の駆動を減速して伝達する減速ギア部343を設けて、モータ341の出力を減速してドライブシャフト342を駆動して左右のドライブプーリ331を回転させる。
なお、シャーシ31の開口部311の下部312には、図示しないがモータ341の制御基板が設けられるものとする。
【0014】
固定パネル35は、可動パネル32の下方で駆動部34が配置されたシャーシ31の下部312の前面を覆うよう設けられ、ダイアルスイッチや押しスイッチなどを備えている。
【0015】
次に、装置本体2は、円盤状のメディア挿入口を有する車載ユニット21を図1に示すように上下に2つ収容し、前面部3の可動パネル32を開くと、車載ユニット21のメディア挿入口が露出する構成である。
【0016】
次に、作用を説明する。
[可動パネルの開閉作用]
実施例1の車載装置1において、例えばCD等のメディアを入れ替えるなどする際には、モータ341を所定の回転方向に駆動する。モータ341の駆動は、減速ギア部343を介して、ドライブシャフト342に伝達され、左右のドライブプーリ331が回転する。これにより、左右のベルト333が回転し、左右の取付部335の位置を降下させる。取付部335の位置が降下すると、可動パネル32のブラケット321の上端左右を取付部335に接続しているので、可動パネル32の上端位置が下降することになる。
【0017】
この動きにより可動パネル32全体が下降しようとするが、可動パネル32は、左右側部をアーム336で支持され、アーム336による支持ポイントが前方に進出する回転軌跡となるため、この支持ポイントと、上端を結ぶ角度に従って、可動パネル32は、上端はベルト333の前部の張り渡し方向に沿って下降し、下端が徐々に前に進出して、傾斜していく動きとなる。図では、図4→図6→図5で示す動きとなる。
つまり、言い換えれば、可動パネル32は、表示部やスイッチのある前面を操作者に見えるように上向きにしたまま、傾斜して装置本体2のメディア挿入口を露出するのである。
【0018】
可動パネル32にこの動きをさせると、表示を使用する際に、日射等による反射のない角度に傾斜させて見やすく使用でき、メディアの入れ替え等を行う際にも、表示や操作スイッチを有効に使用でき、スペースを有効利用して使い勝手のよい車載装置になるのである。
【0019】
[車載装置の前面部と装置本体の着脱]
実施例1では、図2に示すように可動パネルを開閉させる機構や駆動させるものを全て前面部3に備えるようにしたことにより、前面部3を装置本体2と切り離すように着脱可能な構成にしている。
すると、図1から分かるように、前面部3を脱離させた状態では、装置本体内部に収容するユニットは交換可能な構成となる。よって、使用する人の好みに応じて、表示部や操作スイッチへ変更の負担を加えることなく、装置内部のユニット構成を変更する。
【0020】
また、前面部3を装置本体2から脱離可能にし、装置内部のユニット構成を変更可能にすることによって、前面部3の意匠を変更しなくて済むことになる。
車載装置が車両のインストルメントパネルの一部を構成するものとなっている場合、インストルメントパネルのデザインや操作性などからそのスイッチや表示部のレイアウトが決定している場合がある。このような場合には、ユーザの嗜好により車載装置を例えばCDユニットからDVDユニットに変更する場合において、表面意匠が変更されずに済むと、新しいDVDユニットに変更された後でも、ユーザは長く慣れ親しんだ操作手順にて操作をすることが可能であり、煩わしさを感じる可能性が少ない。よって、実施例1のように前面部3に変更の必要がないことは非常に有用である。
さらに、説明しておく。前面部3は、可動パネル32、開閉機構33、駆動部34を有しながらも上記構成により薄型化し、装置本体2から脱離可能であることが非常に有利である。これにより装置本体2側は、従来のように可動パネルの開閉機構や駆動を考慮することがなくなるのである。よって、従来ではスペース上、搭載できなかったものが搭載できる。また、従来ではできなかった高品質化のための構成にすることができる。またさらに、他の機能を付加する構成の追加を行うこともできる。
この装置本体2の設計自由度の向上作用は、前面部3が薄型であることによるところが大きい。例えば、薄型化したが装置本体側に大きな突出部分があるような場合には、装置本体2の設定自由度の向上作用は、著しく制限されたものとなるからである。
また、車室内から見て、手前側の前面部3と奥側の装置本体2が、機構的な係合部を持つことなく分離することは、車両への取り付け、取り外しを容易にすることにつながる。つまり、前面部3と装置本体2の機械的な係合を考慮することなく着脱作業が行えること、重量的にも分割されること、装置本体2の取り付けの際に手前側に空きスペースが生じることから、車両への取り付け、取り外しを容易にする。
【0021】
[静音化及び安定した駆動]
実施例1の可動パネル構造では、ベルト333をドライブさせて、可動パネル32の開閉を行うため、従来のようなトレーをラック機構で駆動させるのに比べて静音化となる。
さらに、ベルト333による可動パネルの開閉は、左右のベルト333で行うため、開閉する動きはスムーズとなる。
【0022】
[省スペース化]
実施例1の可動パネル構造では、前面部3は表示部322の側面に開閉機構を備え、下部312に駆動部34を備える構成であるので、従来のような広いトレーとトレーを進退させる構成を取らないため、省スペース化となる。特に進退方向への薄型化になる。
【0023】
次に、効果を説明する。
実施例1の可動パネル構造及び取付方法にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0024】
(1)装置本体2の前面を覆う可動パネル32の構造であって、可動パネル32を有する前面部3を装置本体2と着脱自在な構造にし、可動パネル32を開閉させる開閉機構33と、開閉機構33を駆動させる駆動部34を前面部3に備えるため、装置本体2や装置内部のユニットを変更することができるので、ユーザに煩わしさを与える可能性を低くすることができる。
【0025】
(2)可動パネル32は、車載装置1のための操作スイッチ及び表示部を備え、前面部3は、車載装置1のメディア挿入口を露出させる貫通した開口を有し、装置本体2の前面部分に着脱自在に取り付けたシャーシ31を備え、開口の側方に開閉機構33を配置し、開口部311の下方に駆動部34を配置し、可動パネル32が少なくとも開口を覆うものであるため、装置本体2や装置内部のユニットを変更することができるので、ユーザに煩わしさを与える可能性を低くすることができる。
【0026】
(3)開閉機構33は、上下に張り渡して設けられ、駆動部34により駆動させるベルトと、可動パネル32の左右それぞれの側部に第1の端部を回転自在に取り付け、第2の端部をシャーシ31に回転自在に取り付けたアーム336と、ベルト333の一部に取り付けて上下動を行い、且つ可動パネル32の上端側部に回転自在に取り付けた取付部335とからなるため、省スペースで、薄型な開閉機構にでき、装置の省スペース化、薄型化、静音化を行うことができる。
【0027】
(4)開閉機構33は、左右それぞれにベルト333と取付部335を備えるため、よりスムーズに可動パネル32の開閉を行うことができる。
【0028】
(5)可動パネル32を有する前面部3を装置本体2と分離し、可動パネル32を前面部3内の開閉機構33で開閉自在にし、開閉機構33を前面部3内の駆動部34で駆動させ、装置本体2の前面を覆うように前面部3を着脱自在に取り付け、前面部3を変更することなく装置本体2を変更するため、(1)と同様の効果を有する。
【0029】
以上、本発明の可動パネル構造及び取付方法を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0030】
例えば、実施例1では、開閉機構としてベルトとアームによるものを用いたが、別の構成であってもよい。
可動パネルは、表示部だけのもの、操作スイッチだけのものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施例1の可動パネル構造及び取付方法を用いた車載装置の斜視図である。
【図2】実施例1の可動パネル構造及び取付方法を用いた車載装置の前面部の斜視図である。
【図3】実施例1の可動パネル構造及び取付方法を用いた車載装置の正面図である。
【図4】実施例1の可動パネル構造及び取付方法を用いた車載装置の前面部の側面図及び一部切欠側面図である。
【図5】実施例1の可動パネル構造及び取付方法を用いた車載装置の前面部において可動パネルを開いた状態を示す説明図である。
【図6】実施例1の可動パネル構造及び取付方法を用いた車載装置の前面部において可動パネルをやや開いた状態を示す説明図である。
【図7】実施例1の可動パネル構造及び取付方法の説明図である。
【図8】実施例1の可動パネル構造及び取付方法の説明図である。
【符号の説明】
【0032】
1 車載装置
2 装置本体
21 車載ユニット
3 前面部
31 シャーシ
311 開口部
312 下部
313 側面部
32 可動パネル
321 ブラケット
322 表示部
323 各種スイッチ
33 開閉機構
331 ドライブプーリ
332 セカンドプーリ
333 ベルト
334 テンションプーリ
335 取付部
336 アーム
34 駆動部
341 モータ
342 ドライブシャフト
35 固定パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載装置本体の前面を覆う可動パネルの構造であって、
可動パネルを有する前面部を前記車載装置本体と着脱自在な構造にし、
可動パネルを開閉させる開閉機構と、同開閉機構を駆動させる駆動部を前記前面部に備える、
ことを特徴とする可動パネル構造。
【請求項2】
請求項1に記載の可動パネル構造において、
前記可動パネルは、車載装置のための操作スイッチ及び表示部を備え、
前記前面部は、
車載装置のメディア挿入口を露出させる貫通した開口部を有し、車載装置本体の前面部分に着脱自在に取り付けた枠体を備え、
前記開口部の側方に前記開閉機構を配置し、
前記開口部の下方に前記駆動部を配置し、
前記可動パネルが少なくとも前記開口部を覆うものである、
ことを特徴とする可動パネル構造。
【請求項3】
請求項2に記載の可動パネル構造において、
前記開閉機構は、
上下に張り渡して設けられ、前記駆動部により駆動させるベルトと、
前記可動パネルの左右それぞれの側部に第1の端部を回転自在に取り付け、第2の端部を前記枠体に回転自在に取り付けたアームと、
ベルトの一部に取り付けて上下動を行い、且つ前記可動パネルの上端側部に回転自在に取り付けた取付部と、
からなることを特徴とする可動パネル構造。
【請求項4】
請求項3に記載の可動パネル構造において、
前記開閉機構は、
左右それぞれに前記ベルトと前記取付部を備える、
ことを特徴とする可動パネル構造。
【請求項5】
可動パネルを有する前面部を車載装置本体と分離し、前記可動パネルを前記前面部内の開閉機構で開閉自在にし、前記開閉機構を前記前面部内の駆動部で駆動させ、前記車載装置本体の前面を覆うように前記前面部を着脱自在に取り付け、前記前面部を変更することなく前記車載装置本体を変更することを特徴とする可動パネルの取付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−88772(P2006−88772A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−273987(P2004−273987)
【出願日】平成16年9月21日(2004.9.21)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】