可動体の動作機構
【課題】可動体の動作機構において、その往動をよりスムースならしめると共に、その移動時の静音性を高める。
【解決手段】可動体Mに備えられるレール部材1と、本体Bに備えられるストッパ部材2とを備えている。レール部材1は、可動体Mの移動方向に沿って連続する平坦なトレースレーン10と、可動体Mの移動方向に沿って複数の被係合部11aを並列させてなる係合レーン11とを備えている。ストッパ部材2は、トレースレーン10に対する摺接部分22と、係合レーン11に対する係合部分23とを備える。可動体Mの往動時にトレースレーン10に摺接部分22が摺接して係合レーン11に対する係合部分23の係合が阻止されると共に、可動体Mの往動を停止したときに係合レーン11に対する係合部分23の係合が許容され、この係合が可動体Mを復動させることで解除される。
【解決手段】可動体Mに備えられるレール部材1と、本体Bに備えられるストッパ部材2とを備えている。レール部材1は、可動体Mの移動方向に沿って連続する平坦なトレースレーン10と、可動体Mの移動方向に沿って複数の被係合部11aを並列させてなる係合レーン11とを備えている。ストッパ部材2は、トレースレーン10に対する摺接部分22と、係合レーン11に対する係合部分23とを備える。可動体Mの往動時にトレースレーン10に摺接部分22が摺接して係合レーン11に対する係合部分23の係合が阻止されると共に、可動体Mの往動を停止したときに係合レーン11に対する係合部分23の係合が許容され、この係合が可動体Mを復動させることで解除される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、本体に対し往復動可能に組み合わされた可動体を、いずれの往動位置においても往動操作を止めたときにはその位置に安定的に停止させるようにする動作機構の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
本体に対し往復動可能に組み合わされた可動体を、任意の往動位置で安定的に停止させるようにした機構として、本出願人開示の特許文献1に示されるものがある。
【0003】
かかる機構にあっては、引き出しの側面にアームを回動可能に設けさせると共に、このアームの自由端側に当接体を備えさせている。また、引き出しの収納体の内側面に可動体の移動域に亘って凹凸を交互に備えてなるこの当接体の被当接部を形成させている。そして、かかる機構にあっては、引き出しを引き出し操作すると、当接部が被当接部に接して引き出しの往動を許容する向きに基準位置から傾動し、往動を停止すると当接体は基準位置に向けてやや回動して被当接部に当接部を圧接させ引き出しのこの停止状態を維持するようになっている。
【0004】
しかるに、かかる機構にあっては、次の二点の改善がさらに求められるところであった。
(1)前記当接部と被当接部との接触が引き出しの引き出し操作の抵抗となる。
(2)前記当接部と被当接部との接触により引き出しの往動時及び復動時に異音を生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−155891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、この種の可動体の動作機構において、その往動をよりスムースならしめると共に、その移動時の静音性を高める点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を達成するために、この発明にあっては、第一の観点から、可動体の動作機構を、本体に対し往復動可能に組み合わされた可動体の動作機構であって、
本体及び可動体のいずれか一方に備えられるレール部材と、
これらの他方に備えられるストッパ部材とを備えており、
レール部材は、可動体の移動方向に沿って連続する平坦なトレースレーンと、可動体の移動方向に沿って複数の被係合部を並列させてなる係合レーンとを備えており、
ストッパ部材は、前記トレースレーンに対する摺接部分と、前記係合レーンに対する係合部分とを備えており、
可動体の往動時にトレースレーンに摺接部分が摺接して係合レーンに対する係合部分の係合が阻止されると共に、可動体の往動を停止したときに係合レーンに対する係合部分の係合が許容されるようにしてあり、
この係合部分の係合が可動体を停止した状態から可動体を復動させることで解除されるようになっているものとした。
【0008】
可動体を往動させるときはストッパ部材の係合部分はレール部材の係合レーンには係合されず、ストッパ部材の摺接部分をトレースレーンに摺接させながら可動体のスムースな往動が許容される。可動体の往動操作を止めると係合レーンにストッパ部材の係合部分が係合して任意の往動位置において可動体が安定的に保持される。このように保持された可動体を復動させると係合レーンへのストッパ部材の係合部分の係合が解かれ可動体の復動が許容される。
【0009】
また、前記課題を達成するために、この発明にあっては、第二の観点から、可動体の動作機構を、ストッパ部材は、回動アームを有しており、
係合部分はこの回動アームの回動軸に対する近接及び離隔移動可能にこの回動アームの自由端側に組み合わされ、
かつ、摺接部分は前記回動軸に対する近接及び離隔移動可能に係合部分に組み合わされており、
しかも、ストッパ部材は、係合部分を回動軸から離隔させる向きに付勢する第一付勢手段と、
摺接部分を回動軸から離隔させる向きに付勢する第二付勢手段と、
回動アームの自由端をレール部材に最も近接させる基準位置に向かう力を回動アームに常時作用させる姿勢維持手段とを備えており、
回動アームは、可動体の往動時には第二付勢手段の付勢によりレール部材に摺接部分のみを当接させてこの可動体の往動を許容する向きに基準位置から傾動し、往動を停止したときは姿勢維持手段の作用により基準位置に向けてやや回動してレール部材に摺接部分及び係合部分を当接させ、
かつ、可動体を停止した状態から可動体を復動させると第一付勢手段の付勢に抗して係合部分を前記回動軸に近づける向きに一旦移動させながら可動体の復動を許容する向きに反転傾動するようになっているものとした。
【0010】
可動体を往動させるとレール部材のトレースレーンにストッパ部材の摺接部分が摺接して回動体は基準位置から傾動される。第二付勢手段により摺接部分は前記回動軸から離隔する向きに付勢され係合部分から突き出した位置に保持されるため、かかる摺接により可動体は係合部分を係合レーンに噛み合わせない回動位置に位置づけられる。可動体の往動操作を止めると姿勢維持手段により回動アームは摺接部分を第二付勢手段の付勢に抗して回動軸に近接する向きに移動させながら基準位置に向けてやや回動される。これにより係合部分が係合レーンに噛み合い可動体はこの往動操作を止めた位置において安定的に保持される。この位置から可動体を復動操作すると回動アームは第一付勢手段の付勢に抗して係合部分を回動軸に近接する向きに移動させながら基準位置まで回動され、さらにこの基準位置を超えて反転傾動される。このように回動アームが反転傾動されると第一付勢手段の付勢により係合部分は再び回動軸から離隔し摺接部分も第二付勢手段の付勢により係合部分から突き出しトレースレーンへのこの摺接部分の摺接により係合部分と係合レーンとの係合が阻止されて可動体の押し込みが許容される。
【0011】
かかる可動体を常時復動方向に付勢する付勢部材を備えさせておけば、この付勢部材の付勢により、可動体は往動前位置まで強制的に移動される。この場合、さらに、レール部材の係合レーンをラック状をなすように構成すると共に、ピニオンの回転に制動力を作用させるダンパー装置と、係合レーンに噛み合う第1ギヤ部とダンパー装置のピニオンに噛み合う第2ギヤ部とを備えた中間ギヤ体とを備えさせ、この中間ギヤ体を可動体の移動方向に沿って前記ピニオンに第2ギヤ部を噛み合わせる接続位置とこれを噛み合わせない非接続位置とに亘る移動可能に支持させるとと共に、係合レーンへの噛み合いにより可動体の往動時には前記非接続位置に位置され可動体の復動時には前記接続位置に位置されるようにしておくこともある。このようにすれば、前記付勢部材の付勢による可動体の強制的な復動時に限ってこの復動に前記ダンパー装置による制動力を作用させることができるようになっている。また、この場合さらに、可動体を往動前位置から所定往動位置まで往動させたときに係合レーンに中間ギヤ体が噛み合い始めるようにしておくと共に、中間ギヤ体におけるこの係合レーンに噛み合う第1ギヤ部を軟質材から構成させておくようにすれば、前記付勢部材による強制的な復動の最終局面においては、つまり、可動体が往動前位置に近づいた段階では、前記ダンパー装置の制動力が可動体に作用されないようにして、この付勢部材の付勢により復動終了位置、つまり、往動前位置まで可動体を確実に復動させることができる。また、前記所定往動位置において係合レーンに中間ギヤ体をスムースに噛み合わせることができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、可動体の移動時には摺接部分の作用によりストッパ部材の係合部分はレール部材の係合レーンには接しないことから、可動体の移動はスムースであり、また、その静音性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は動作機構を適用した引き出しとその収納体とを分離して示した斜視図である。
【図2】図2は動作機構を適用した引き出し及び収納体の斜視図である。
【図3】図3は動作機構を構成するストッパ部材側の部材の斜視構成図である。
【図4】図4はストッパ部材の要部破断斜視図である。
【図5】図5は動作機構を構成するレール部材側の部材の斜視構成図である。
【図6】図6は動作機構を構成する付勢部材の斜視構成図である。
【図7】図7は動作機構を構成する繋止部材の斜視構成図である。
【図8】図8は引き出しを引き出し操作する前の引き出し及び収納体の斜視図(a図)並びにこのときの動作機構の要部底面構成図(b図)である。
【図9】図9は図8の状態から引き出しを引き出し操作したときの引き出し及び収納体の斜視図(a図)並びにこのときの動作機構の要部底面構成図(b図)である。
【図10】図10は図9の状態から引き出しの引き出し操作を停止したときの引き出し及び収納体の斜視図(a図)並びにこのときの動作機構の要部底面構成図(b図)である。
【図11】図11は図10の状態から引き出しの押し込み操作を開始した直後の引き出し及び収納体の斜視図(a図)並びにこのときの動作機構の要部底面構成図(b図)である。
【図12】図12は引き出しが押し込み方向に移動されているときの引き出し及び収納体の斜視図(a図)並びにこのときの動作機構の要部底面構成図(b図)である。
【図13】図13は引き出しが押し込みきられたときの引き出し及び収納体の斜視図(a図)並びにこのときの動作機構の要部底面構成図(b図)である。
【図14】図14は引き出しが引き出し方向に移動しているときの動作機構の要部平面構成図である。
【図15】図15は引き出しが押し込み方向に移動しているときの動作機構の要部平面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1〜図15に基づいて、この発明の典型的な実施の形態について、説明する。この実施の形態にかかる可動体Mの動作機構は、本体Bに対し往復動可能に組み合わされた可動体Mを、いずれの往動位置においても往動操作を止めたときにはその位置に安定的に停止させるようにするものである。(いわゆるフリーストップ)
【0015】
また、この実施の形態にあっては、このように停止されたかかる可動体Mを、復動操作すると、前記フリーストップが解除され、可動体Mの復動が直ちに許容されるようになっている。また、かかる可動体Mは常時復動方向に付勢されるようになっており、このように復動が許容されると可動体Mは往動前位置まで強制的に復動されるようになっている。
【0016】
かかる可動体Mとしては、典型的には、引き出しや引き戸など、本体Bに対しスライド移動可能に組み合わされたものが予定される。図示の例では、かかる可動体Mを引き出しMaとし、本体Bをこの引き出しMaを納める前面を開放させた収納体Baとした例を示している。
【0017】
かかる動作機構は、レール部材1と、ストッパ部材2とを備えてなる。レール部材1は本体B及び可動体Mのいずれか一方に備えられ、ストッパ部材2はこれらの他方に備えられる。図示の例では、可動体Mとしての引き出しMaの側にレール部材1を備えさせ、本体Bとしての収納体Baの側にストッパ部材2を備えさせている。
【0018】
図1及び図2にその全体構成を示す。レール部材1は、引き出しMaの底板Mbの外面であって、その移動中心線xを挟んだ左側に備え付けられている。図示の例では、引き出しMaの底板Mbの外面であって、その移動中心線xを挟んだ右側には、付勢部材5を構成する後述するひも状の連繋体50の繋止部材6が備え付けられている。ストッパ部材2は、前記引き出しMaの底板Mb下に配されるブラケット20上に備えられている。このブラケット20の左端は収納体Baの左側の側板Bbの内面に止着されている。そして、図示の例では、往動前位置にある引き出しMaを所定往動位置まで往動、つまり引き出し動作させたときにストッパ部材2とレール部材1とが連係して前記フリーストップが実現されるようになっている。また、図示の例では、付勢部材5は、前記引き出しMaの底板Mb下に配されるブラケット51上に備えられている。このブラケット51の右端は収納体Baの右側の側板Bbの内面に止着されている。付勢部材5は、ケース52とこのケース52内から前方に繰り出されるひも状の連繋体50とを備えている。ケース52内には連繋体50を巻き取る図示しないボビン体と、このボビン体を連繋体50を巻き取る向きに常時付勢するゼンマイバネとが内蔵されている。連繋体50の繰り出し端にはストライカ50aが備えられており、このストライカ50aを前記繋止部材6に形成させた捕捉箇所60に解放可能に捕捉係合させることで、引き出しMaは常時復動方向、つまり、押し込み方向に付勢されるようになっている。繋止部材6には解除レバー61が備えられおり、この解除レバー61を操作するとストライカ50aの前記捕捉が解かれるようになっている。収納体Baから引き出しMaを取り外すときにはこの解除レバー61の操作を行うこととなる。また、図示の例では、かかる繋止部材6及びレール部材1にはそれぞれ、後方に向けて可動部分70を突き出させたピストンダンパー7が備え付けられており、引き出しMaの復動時にはその最終段階において、繋止部材6のピストンダンパー7の可動部分70が前記ブラケット51の前端部に突き当たり、かつ、レール部材1のピストンダンパー7の可動部分70が収納体Baの内奥部に突き当たって、付勢部材5による強制的な引き出しMaの復動の最終段階において両ピストンダンパー7の制動力を引き出しMaに作用するようになっている。かかるピストンダンパー7はピストン及びシリンダーを備え両者のいずれかの側を可動部分としこの可動部分の基準位置からの移動により移動又は相対的に移動されるピストンのこの移動に一体の抵抗力を作用させる構成となっている。図中、符号Bcで示されるのは収納体Baの側板に設けられた引き出しMaのガイドレールである。
【0019】
前記レール部材1は、可動体Mとしての引き出しMaの移動方向(前後方向)に沿って連続する平坦なトレースレーン10と、この移動方向に沿って複数の被係合部11a、11a…を並列させてなる係合レーン11とを備えている。
【0020】
図示の例では、かかるレール部材1は、細長い棒状体の長さ方向に沿った一方縁部に、前記トレースレーン10と係合レーン11とを備えさせてなる。そして、かかるレール部材1は、その長さ方向を引き出しMaの移動方向に沿わせ、且つ、前記トレースレーン10と係合レーン11とを備えた一方縁部をストッパ部材2が備えられる側、図示の例では左側に向けた状態で引き出しMaの底板Mbの外面に備えられるようになっている。
【0021】
図示の例では、上下二箇所の係合レーン11、11間にトレースレーン10が設けられている。係合レーン11はラック状をなすように構成されている。すなわち、図示の例では、レール部材1の厚さ方向において、その上面から約三分の一の厚さの位置までに上側の係合レーン11が形成され、また、その下面から約三分の一の厚さの位置までに下側の係合レーン11が形成され、この上側の係合レーン11と下側の係合レーン11との間にトレースレーン10が形成されている。係合レーン11を構成する前記被掛合部11aとなるラック歯11bの歯先はトレースレーン10のレーン面10aと略同面上に位置されている。また、図示の例では、レール部材1における引き出しMaの前面側に位置される端部には、トレースレーン10の前端部との間に、引き出しMaの往動時にストッパ部材2の後述する摺接部分22が当接される段差部10bが形成されている。この段差部10bはトレースレーン10のレーン面10aに近づくに連れて高まる傾斜を備えている。図中符号12で示すのは案内溝であり、ストッパ部材2を支持するブラケット20上に左右方向に若干のスライド移動可能に備え付けられたケース21’に形成された案内リブ21bがこの案内溝12に入り込むようになっており、ストッパ部材2とレール部材1との距離が変わることがないようにしてある。
【0022】
ストッパ部材2は、前記トレースレーン10に対する摺接部分22と、前記係合レーン11に対する係合部分23とを備えている。そして、可動体Mの往動時にトレースレーン10に摺接部分22が摺接して係合レーン11に対する係合部分23の係合が阻止されると共に、可動体Mの往動を停止したときに係合レーン11に対する係合部分23の係合が許容されるようにしてある。そして、さらに、この係合部分23の係合が可動体Mを停止した状態から可動体Mを復動させることで解除されるようになっている。
【0023】
図示の例では、収納体Ba内に収納された引き出しMaを引き出すときはストッパ部材2の係合部分23はレール部材1の係合レーン11には係合されず、ストッパ部材2の摺接部分22をトレースレーン10に摺接させながら引き出しMaのスムースな引き出し動作が許容される。引き出しMaの引き出し操作を止めると係合レーン11にストッパ部材2の係合部分23が係合して任意の引き出し位置において引き出しMaが安定的に保持される。このように保持された引き出しMaを押し込むと係合レーン11へのストッパ部材2の係合部分23の係合が解かれ引き出しMaの押し込みが許容される。
【0024】
この実施の形態にあっては、ストッパ部材2は、回動アーム24と、係合部分23と、摺接部分22とを備えている。かかるストッパ部材2は、前記ブラケット20の上面に備え付けられる上面及び右側面を開放させた前記ケース21’の底板に備えられている。このケース21’におけるストッパ部材2の備えられた箇所の後方には後述する中間ギヤ体3が備えられている。また、ケース21’の上面はこのケース21’に組み合わされるカバー21”で覆われるようになっている。このカバー21”には中間ギヤ体3の第2ギヤ部31に噛み合うダンパー装置4が備えられている。かかるケース21’とカバー21”とによって、ストッパ部材2、中間ギヤ体3、及びダンパー装置4がユニット化されている。ケース21’とカバー21”との間に、引き出しMaに設けられたレール部材1が入り込んでおり、(図8(a))このように入り込んでいるレール部材1が引き出しMaの所定の往動位置において中間ギヤ体3に噛み合い、次いで、ストッパ部材2に接するようになっている。
【0025】
前記係合部分23は回動アーム24の回動軸24bに対する近接及び離隔移動可能にこの回動アーム24の自由端24d側に組み合わされている。図示の例では、回動アーム24は、扁平な角筒状をなすように構成されている。回動アーム24の左端は閉塞され、回動アーム24の右端は開放されている。回動アーム24の左端には軸受け耳部24aが形成されており、この軸受け耳部24aに形成された軸孔24bにケース21’とカバー21”との間に亘る縦向きの回動軸24cを通すことで、回動アーム24、つまりストッパ部材2は本体Bつまり収納体Ba側に回動可能に支持されている。すなわち、回動アーム24は回動軸24cを中心に前後方向に自由端24dとなるその右端を振る回動をするようにケース21’に支持されている。係合部分23は回動アーム24内に隙間少なく納まる短寸の角筒状をなすように構成されている。係合部分23の左端は閉塞され、かつ、右端は開放されている。係合部分23はこの閉塞された左端側を回動アーム24内に納めて、この回動アーム24の中心軸に沿った向きのスライド移動可能に回動アーム24に支持されている。(図4)図示の例では、扁平に構成される回動アーム24の幅広の上下面には、自由端24d側においてこの回動アーム24の中心軸に沿った案内スリット24eが形成されており、係合部分23はその上下面にそれぞれ形成された摺動子23aをこの案内スリット24eに入れ込ませてこの案内スリット24eに沿って前記スライド移動をするようになっている。また、係合部分23の右端には、この右端の開放部を挟んだ上下にそれぞれこの開放部から前方に突き出す前記ラック歯11bの一つと略等しい形状の爪部23bが形成されている。このように形成される上側の爪部23bがレール部材1の上側の係合レーン11に係合可能とされ、下側の爪部23bがレール部材1の下側の係合レーン11に係合可能とされる。この爪部23bはレール部材1の係合レーン11を構成する隣り合うラック歯11b間に入り込み可能に構成されており、係合部分23はこの爪部23bをもってレール部材1の係合レーン11に係合するようになっている。また、係合部分23の閉塞された左端と回動アーム24の左端との間には圧縮コイルバネ25が介装されている。このバネ25の作用により係合部分23は前記摺動子23aを案内スリット24eの右端に位置させる突出位置に位置づけられるようになっている。すなわち、ストッパ部材2は係合部分23を前記回動軸24cから離隔させる向きに付勢する第一付勢手段を有している。
【0026】
前記摺接部分22は回動アーム24の回動軸に対する近接及び離隔移動可能に前記係合部分23に組み合わされている。図示の例では、かかる摺接部分22は、トップ22aとベース22cとから構成されている。トップ22aは軟質の合成樹脂あるいはゴムから構成され前方に頂端を向けた平面視略三角形状をなすように構成されている。ベース22cはこのトップ22aと一体化されていると共に、係合部分23の中心軸に沿った向きのスライド移動可能に係合部分23に支持されている。図示の例では、二色成形により硬質の合成樹脂からなるベース22cにトップ22aを一体化させている。また、図示の例では、係合部分23の上下面にはそれぞれ短寸の筒状をなすこの係合部分23の中心軸に沿った案内スリット23cが形成されており、ベース22cはその上下面にそれぞれ形成された摺動子22dをこの案内スリット23cに入れ込ませてこの案内スリット23cに沿って前記スライド移動をするようになっている。また、ベース22cの左端と係合部分23の左端との間には圧縮コイルバネ26が介装されている。このバネ26の作用により摺接部分22は前記摺動子22dを案内スリット23cの右端に位置させる突出位置に位置づけられるようになっている。この突出位置において摺接部分22のトップ22aは係合部分23の爪部23bよりも前方つまり右側に位置されるようになっている。(図8(b)、図8の上方が右側)すなわち、ストッパ部材2は摺接部分22を回動軸24cから離隔させる向きに付勢する第二付勢手段を有している。
【0027】
また、ストッパ部材2は、回動アーム24の自由端24dをレール部材1に最も近接させる基準位置に向かう力をこの回動アーム24に常時作用させる姿勢維持手段を備えている。この姿勢制御手段としては、バネなどの付勢体などを利用することができる。図示の例では、かかる姿勢制御手段をバネ一端を回動アーム24に止着させ、かつ、バネ他端をケース21’に止着させた図示しないねじりコイルバネによって構成させている。そして、図示の例では、回動アーム24の中心軸がレール部材1の長さ方向に直交する基準位置(図8(b))から、回動アーム24がその自由端24dを前方及び後方のいずれの向きに傾動してもかかるバネが弾性変形を生じさせるようにしている。また、この実施の形態にあっては、かかる基準位置においては、前記回動軸24cを通る仮想の前後方向の直線yとレール部材1におけるトレースレーン10及び係合レーン11のラック歯11bの刃先を通る仮想の前後方向の直線zとの間の間隔が、回動軸24cと回動アーム24の自由端24dとの間の間隔と略等しく、かつ、この回動軸24cと前記突出位置にある係合部分23の爪部23bの爪先との間の間隔よりも小さくなるようにしてある。(図8)
【0028】
そして、この実施の形態にあっては、かかる回動アーム24は、可動体Mの往動時には前記第二付勢手段の付勢によりレール部材1に摺接部分22のみを当接させてこの可動体Mの往動を許容する向きに基準位置から傾動し、往動を停止したときは姿勢維持手段の作用により基準位置に向けてやや回動してレール部材1に摺接部分22及び係合部分23を当接させ、かつ、可動体Mを停止した状態から可動体Mを復動させると第一付勢手段の付勢に抗して係合部分23を前記回動軸に近づける向きに一旦移動させながら可動体Mの復動を許容する向きに反転傾動するようになっている。
【0029】
具体的には、可動体Mとしての引き出しMaが収納体Baに納まりきった位置においては、回動アーム24はレール部材1の前記段差部10bの前方にあって、基準位置にある。(図8)この状態から引き出しMaを引き出すと段差部10bに摺接部分22のトップ22aが当たって回動体は自由端24dを前方に向ける向きに傾動されこのトップ22aをトレースレーン10に摺接させる。第二付勢手段により摺接部分22のトップ22aは回動軸から離隔する向きに付勢され係合部分23から突き出した位置に保持されるため、かかる摺接により可動体Mは係合部分23の爪部23bを係合レーン11のラック歯11bに噛み合わせない回動位置に位置づけられる。(図9)引き出しMaの引き出し操作を止めると姿勢維持手段により回動アーム24は摺接部分22を第二付勢手段の付勢に抗して回動軸24cに近接する向きに移動させながら基準位置に向けてやや回動される。これにより係合部分23の上下の爪部23b、23bがそれぞれ対応する係合レーン11のラック歯11bに噛み合い引き出しMaはこの引き出し操作を止めた位置において安定的に保持される。(図10)この位置から引き出しMaを押し込み操作すると回動アーム24は第一付勢手段の付勢に抗して係合部分23を回動軸24cに近接する向きに移動させながら基準位置まで回動され、さらにこの基準位置を超えてその自由端24dを後方に向けるように反転傾動される。このように回動アーム24が反転傾動されると第一付勢手段の付勢により係合部分23は突出位置に復帰し摺接部分22も第二付勢手段の付勢により突出位置に復帰しトレースレーン10への摺接部分22の摺接により係合部分23と係合レーン11との係合が阻止されて引き出しMaの押し込みが許容される。(図12)この実施の形態にあっては、前記付勢部材5の付勢により、引き出しMaは収納体Baに納まりきった引き出し操作前の位置まで強制的に移動される。引き出しMaがこの引き出し操作前の位置まで戻る途中でストッパ部材2よりもレール部材1の前端は後方に移動し、摺接部分22とレール部材1の摺接が解かれて回動アーム24は基準位置に復帰される。(図13)
【0030】
また、この実施の形態にあっては、動作機構はさらに、ダンパー装置4と、前記係合レーン11に噛み合う中間ギヤ体3とを備えている。
【0031】
ダンパー装置4は、ピニオン40を備え、このピニオン40の回転に制動力を作用させるものとして構成されている。図示の例では、かかるダンパー装置4は、ステーター体41と図示しないローター体とを備え、このローター体の回転又は相対的な回転に制動力を作用させるように構成されている。典型的には、ステーター体41の内部にシリコンオイルなどの粘性流体を封入しておき、かかる粘性流体の抵抗がローター体の回転に作用されるようにしておく。かかるローター体にピニオン40が備えられており、図示の例では、かかるダンパー装置4は前記ケース21’内にピニオン40を位置させるように前記カバー21”にステーター体41を固定させて備えられている。ピニオン40の回転軸、すなわち、ローター体の回転軸は縦方向に沿っている。
【0032】
中間ギヤ体3は、係合レーン11に噛み合う第1ギヤ部30と、ダンパー装置4のピニオン40に噛み合う第2ギヤ部31とを備えている。図示の例では、かかる中間ギヤ体3は、大径の第1ギヤ部30の一面、図示の例では上面に、これより小径の第2ギヤ部31を、第1ギヤ部30と一体に備えさせてなる。この中間ギヤ体3の回転軸も縦方向に沿っている。また、かかる中間ギヤ体3は、可動体Mの移動方向に沿って前記ピニオン40に第2ギヤ部31を噛み合わせる接続位置と、これを噛み合わせない非接続位置とに亘る移動可能に支持されている。そして、係合レーン11への第1ギヤ部30の噛み合いにより、可動体Mの往動時には前記非接続位置に位置され、可動体Mの復動時には前記接続位置に位置されるようになっている。
【0033】
具体的には、中間ギヤ体3はその回転中心にボス部32を備えており、このボス部32を前記ケース21’の底板に形成された可動体Mの移動方向に沿って長い長孔21aに納めてこのケース21’に支持されている。そして、可動体Mとしての引き出しMaの往動時となる引き出し操作時にはレール部材1の係合レーン11に噛み合ってこのボス部32を長孔21aの前端に位置させ、このときは第2ギヤと前記ピニオン40との噛み合いを解くようになっている。(図9、図14)また、可動体Mとしての引き出しMaの復動時となる押し込み操作時にはレール部材1の係合レーン11に噛み合ってこのボス部32を長孔21aの後端に位置させ、このときは第2ギヤ部31と前記ピニオン40とを噛み合わせるようになっている。(図15)
【0034】
これにより、この実施の形態にかかる動作機構にあっては、前記付勢部材5の付勢による可動体Mの強制的な復動時に限ってこの復動に前記ダンパー装置4による制動力を作用させることができるようになっている。
【0035】
また、この実施の形態にあっては、可動体Mを往動前位置から所定往動位置まで往動させたときに係合レーン11に中間ギヤ体3が噛み合い始めるようになっていると共に、中間ギヤ体3におけるこの係合レーン11に噛み合う第1ギヤ部30を軟質材から構成させている。具体的には、この実施の形態にあっては、引き出しMaの引き出し操作前の位置ではレール部材1の前記段差部10bを備えた端部の前方に中間ギヤ体3があってその第1ギヤ部30と係合レーン11を離隔させている。(図8)そして、引き出しMaの引き出し操作を開始すると中間ギヤ体3が係合レーン11に噛み合い始めるようになっている。
【0036】
これにより、この実施の形態にかかる動作機構にあっては、前記付勢部材5による強制的な復動の最終局面においては、つまり、可動体Mが往動前位置に近づいた段階では、前記ダンパー装置4の制動力が可動体Mに作用されないようにして、この付勢部材5の付勢により復動終了位置、つまり、往動前位置まで可動体Mを確実に復動させることができるようになっている。また、前記所定往動位置において係合レーン11に中間ギヤ体3をスムースに噛み合わせることができる。具体的には、中間ギヤ体3における第1ギヤ部30の歯部以外の箇所を硬質の合成樹脂から構成し、この歯部のみを軟質の合成樹脂から二色成形やインサート成形などにより構成させる。
【0037】
以上に説明した動作機構は、 図示は省略するが、可動体Mとしての引き出しMaの側面にレール部材1及びストッパ部材2のいずれか一方を備えさせ、これらの他方をこの側面に向き合う本体Bとしての収納体Baの側板に備えさせて、利用することもできる。この場合、ストッパ部材2の回動アーム24の回転軸は横向きとなり、前記姿勢制御手段は重りによって構成することもできる。また、以上に説明した動作機構におけるレール部材1の係合レーン11はトレースレーン10の片側のみに設けてあっても良く、この場合にはストッパ部材2の係合部分23の爪部23bも片側のみで足りる。
【符号の説明】
【0038】
M 可動体
B 本体
1 レール部材
10 トレースレーン
11 係合レーン
2 ストッパ部材
22 摺接部分
23 係合部分
【技術分野】
【0001】
この発明は、本体に対し往復動可能に組み合わされた可動体を、いずれの往動位置においても往動操作を止めたときにはその位置に安定的に停止させるようにする動作機構の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
本体に対し往復動可能に組み合わされた可動体を、任意の往動位置で安定的に停止させるようにした機構として、本出願人開示の特許文献1に示されるものがある。
【0003】
かかる機構にあっては、引き出しの側面にアームを回動可能に設けさせると共に、このアームの自由端側に当接体を備えさせている。また、引き出しの収納体の内側面に可動体の移動域に亘って凹凸を交互に備えてなるこの当接体の被当接部を形成させている。そして、かかる機構にあっては、引き出しを引き出し操作すると、当接部が被当接部に接して引き出しの往動を許容する向きに基準位置から傾動し、往動を停止すると当接体は基準位置に向けてやや回動して被当接部に当接部を圧接させ引き出しのこの停止状態を維持するようになっている。
【0004】
しかるに、かかる機構にあっては、次の二点の改善がさらに求められるところであった。
(1)前記当接部と被当接部との接触が引き出しの引き出し操作の抵抗となる。
(2)前記当接部と被当接部との接触により引き出しの往動時及び復動時に異音を生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−155891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、この種の可動体の動作機構において、その往動をよりスムースならしめると共に、その移動時の静音性を高める点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を達成するために、この発明にあっては、第一の観点から、可動体の動作機構を、本体に対し往復動可能に組み合わされた可動体の動作機構であって、
本体及び可動体のいずれか一方に備えられるレール部材と、
これらの他方に備えられるストッパ部材とを備えており、
レール部材は、可動体の移動方向に沿って連続する平坦なトレースレーンと、可動体の移動方向に沿って複数の被係合部を並列させてなる係合レーンとを備えており、
ストッパ部材は、前記トレースレーンに対する摺接部分と、前記係合レーンに対する係合部分とを備えており、
可動体の往動時にトレースレーンに摺接部分が摺接して係合レーンに対する係合部分の係合が阻止されると共に、可動体の往動を停止したときに係合レーンに対する係合部分の係合が許容されるようにしてあり、
この係合部分の係合が可動体を停止した状態から可動体を復動させることで解除されるようになっているものとした。
【0008】
可動体を往動させるときはストッパ部材の係合部分はレール部材の係合レーンには係合されず、ストッパ部材の摺接部分をトレースレーンに摺接させながら可動体のスムースな往動が許容される。可動体の往動操作を止めると係合レーンにストッパ部材の係合部分が係合して任意の往動位置において可動体が安定的に保持される。このように保持された可動体を復動させると係合レーンへのストッパ部材の係合部分の係合が解かれ可動体の復動が許容される。
【0009】
また、前記課題を達成するために、この発明にあっては、第二の観点から、可動体の動作機構を、ストッパ部材は、回動アームを有しており、
係合部分はこの回動アームの回動軸に対する近接及び離隔移動可能にこの回動アームの自由端側に組み合わされ、
かつ、摺接部分は前記回動軸に対する近接及び離隔移動可能に係合部分に組み合わされており、
しかも、ストッパ部材は、係合部分を回動軸から離隔させる向きに付勢する第一付勢手段と、
摺接部分を回動軸から離隔させる向きに付勢する第二付勢手段と、
回動アームの自由端をレール部材に最も近接させる基準位置に向かう力を回動アームに常時作用させる姿勢維持手段とを備えており、
回動アームは、可動体の往動時には第二付勢手段の付勢によりレール部材に摺接部分のみを当接させてこの可動体の往動を許容する向きに基準位置から傾動し、往動を停止したときは姿勢維持手段の作用により基準位置に向けてやや回動してレール部材に摺接部分及び係合部分を当接させ、
かつ、可動体を停止した状態から可動体を復動させると第一付勢手段の付勢に抗して係合部分を前記回動軸に近づける向きに一旦移動させながら可動体の復動を許容する向きに反転傾動するようになっているものとした。
【0010】
可動体を往動させるとレール部材のトレースレーンにストッパ部材の摺接部分が摺接して回動体は基準位置から傾動される。第二付勢手段により摺接部分は前記回動軸から離隔する向きに付勢され係合部分から突き出した位置に保持されるため、かかる摺接により可動体は係合部分を係合レーンに噛み合わせない回動位置に位置づけられる。可動体の往動操作を止めると姿勢維持手段により回動アームは摺接部分を第二付勢手段の付勢に抗して回動軸に近接する向きに移動させながら基準位置に向けてやや回動される。これにより係合部分が係合レーンに噛み合い可動体はこの往動操作を止めた位置において安定的に保持される。この位置から可動体を復動操作すると回動アームは第一付勢手段の付勢に抗して係合部分を回動軸に近接する向きに移動させながら基準位置まで回動され、さらにこの基準位置を超えて反転傾動される。このように回動アームが反転傾動されると第一付勢手段の付勢により係合部分は再び回動軸から離隔し摺接部分も第二付勢手段の付勢により係合部分から突き出しトレースレーンへのこの摺接部分の摺接により係合部分と係合レーンとの係合が阻止されて可動体の押し込みが許容される。
【0011】
かかる可動体を常時復動方向に付勢する付勢部材を備えさせておけば、この付勢部材の付勢により、可動体は往動前位置まで強制的に移動される。この場合、さらに、レール部材の係合レーンをラック状をなすように構成すると共に、ピニオンの回転に制動力を作用させるダンパー装置と、係合レーンに噛み合う第1ギヤ部とダンパー装置のピニオンに噛み合う第2ギヤ部とを備えた中間ギヤ体とを備えさせ、この中間ギヤ体を可動体の移動方向に沿って前記ピニオンに第2ギヤ部を噛み合わせる接続位置とこれを噛み合わせない非接続位置とに亘る移動可能に支持させるとと共に、係合レーンへの噛み合いにより可動体の往動時には前記非接続位置に位置され可動体の復動時には前記接続位置に位置されるようにしておくこともある。このようにすれば、前記付勢部材の付勢による可動体の強制的な復動時に限ってこの復動に前記ダンパー装置による制動力を作用させることができるようになっている。また、この場合さらに、可動体を往動前位置から所定往動位置まで往動させたときに係合レーンに中間ギヤ体が噛み合い始めるようにしておくと共に、中間ギヤ体におけるこの係合レーンに噛み合う第1ギヤ部を軟質材から構成させておくようにすれば、前記付勢部材による強制的な復動の最終局面においては、つまり、可動体が往動前位置に近づいた段階では、前記ダンパー装置の制動力が可動体に作用されないようにして、この付勢部材の付勢により復動終了位置、つまり、往動前位置まで可動体を確実に復動させることができる。また、前記所定往動位置において係合レーンに中間ギヤ体をスムースに噛み合わせることができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、可動体の移動時には摺接部分の作用によりストッパ部材の係合部分はレール部材の係合レーンには接しないことから、可動体の移動はスムースであり、また、その静音性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は動作機構を適用した引き出しとその収納体とを分離して示した斜視図である。
【図2】図2は動作機構を適用した引き出し及び収納体の斜視図である。
【図3】図3は動作機構を構成するストッパ部材側の部材の斜視構成図である。
【図4】図4はストッパ部材の要部破断斜視図である。
【図5】図5は動作機構を構成するレール部材側の部材の斜視構成図である。
【図6】図6は動作機構を構成する付勢部材の斜視構成図である。
【図7】図7は動作機構を構成する繋止部材の斜視構成図である。
【図8】図8は引き出しを引き出し操作する前の引き出し及び収納体の斜視図(a図)並びにこのときの動作機構の要部底面構成図(b図)である。
【図9】図9は図8の状態から引き出しを引き出し操作したときの引き出し及び収納体の斜視図(a図)並びにこのときの動作機構の要部底面構成図(b図)である。
【図10】図10は図9の状態から引き出しの引き出し操作を停止したときの引き出し及び収納体の斜視図(a図)並びにこのときの動作機構の要部底面構成図(b図)である。
【図11】図11は図10の状態から引き出しの押し込み操作を開始した直後の引き出し及び収納体の斜視図(a図)並びにこのときの動作機構の要部底面構成図(b図)である。
【図12】図12は引き出しが押し込み方向に移動されているときの引き出し及び収納体の斜視図(a図)並びにこのときの動作機構の要部底面構成図(b図)である。
【図13】図13は引き出しが押し込みきられたときの引き出し及び収納体の斜視図(a図)並びにこのときの動作機構の要部底面構成図(b図)である。
【図14】図14は引き出しが引き出し方向に移動しているときの動作機構の要部平面構成図である。
【図15】図15は引き出しが押し込み方向に移動しているときの動作機構の要部平面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1〜図15に基づいて、この発明の典型的な実施の形態について、説明する。この実施の形態にかかる可動体Mの動作機構は、本体Bに対し往復動可能に組み合わされた可動体Mを、いずれの往動位置においても往動操作を止めたときにはその位置に安定的に停止させるようにするものである。(いわゆるフリーストップ)
【0015】
また、この実施の形態にあっては、このように停止されたかかる可動体Mを、復動操作すると、前記フリーストップが解除され、可動体Mの復動が直ちに許容されるようになっている。また、かかる可動体Mは常時復動方向に付勢されるようになっており、このように復動が許容されると可動体Mは往動前位置まで強制的に復動されるようになっている。
【0016】
かかる可動体Mとしては、典型的には、引き出しや引き戸など、本体Bに対しスライド移動可能に組み合わされたものが予定される。図示の例では、かかる可動体Mを引き出しMaとし、本体Bをこの引き出しMaを納める前面を開放させた収納体Baとした例を示している。
【0017】
かかる動作機構は、レール部材1と、ストッパ部材2とを備えてなる。レール部材1は本体B及び可動体Mのいずれか一方に備えられ、ストッパ部材2はこれらの他方に備えられる。図示の例では、可動体Mとしての引き出しMaの側にレール部材1を備えさせ、本体Bとしての収納体Baの側にストッパ部材2を備えさせている。
【0018】
図1及び図2にその全体構成を示す。レール部材1は、引き出しMaの底板Mbの外面であって、その移動中心線xを挟んだ左側に備え付けられている。図示の例では、引き出しMaの底板Mbの外面であって、その移動中心線xを挟んだ右側には、付勢部材5を構成する後述するひも状の連繋体50の繋止部材6が備え付けられている。ストッパ部材2は、前記引き出しMaの底板Mb下に配されるブラケット20上に備えられている。このブラケット20の左端は収納体Baの左側の側板Bbの内面に止着されている。そして、図示の例では、往動前位置にある引き出しMaを所定往動位置まで往動、つまり引き出し動作させたときにストッパ部材2とレール部材1とが連係して前記フリーストップが実現されるようになっている。また、図示の例では、付勢部材5は、前記引き出しMaの底板Mb下に配されるブラケット51上に備えられている。このブラケット51の右端は収納体Baの右側の側板Bbの内面に止着されている。付勢部材5は、ケース52とこのケース52内から前方に繰り出されるひも状の連繋体50とを備えている。ケース52内には連繋体50を巻き取る図示しないボビン体と、このボビン体を連繋体50を巻き取る向きに常時付勢するゼンマイバネとが内蔵されている。連繋体50の繰り出し端にはストライカ50aが備えられており、このストライカ50aを前記繋止部材6に形成させた捕捉箇所60に解放可能に捕捉係合させることで、引き出しMaは常時復動方向、つまり、押し込み方向に付勢されるようになっている。繋止部材6には解除レバー61が備えられおり、この解除レバー61を操作するとストライカ50aの前記捕捉が解かれるようになっている。収納体Baから引き出しMaを取り外すときにはこの解除レバー61の操作を行うこととなる。また、図示の例では、かかる繋止部材6及びレール部材1にはそれぞれ、後方に向けて可動部分70を突き出させたピストンダンパー7が備え付けられており、引き出しMaの復動時にはその最終段階において、繋止部材6のピストンダンパー7の可動部分70が前記ブラケット51の前端部に突き当たり、かつ、レール部材1のピストンダンパー7の可動部分70が収納体Baの内奥部に突き当たって、付勢部材5による強制的な引き出しMaの復動の最終段階において両ピストンダンパー7の制動力を引き出しMaに作用するようになっている。かかるピストンダンパー7はピストン及びシリンダーを備え両者のいずれかの側を可動部分としこの可動部分の基準位置からの移動により移動又は相対的に移動されるピストンのこの移動に一体の抵抗力を作用させる構成となっている。図中、符号Bcで示されるのは収納体Baの側板に設けられた引き出しMaのガイドレールである。
【0019】
前記レール部材1は、可動体Mとしての引き出しMaの移動方向(前後方向)に沿って連続する平坦なトレースレーン10と、この移動方向に沿って複数の被係合部11a、11a…を並列させてなる係合レーン11とを備えている。
【0020】
図示の例では、かかるレール部材1は、細長い棒状体の長さ方向に沿った一方縁部に、前記トレースレーン10と係合レーン11とを備えさせてなる。そして、かかるレール部材1は、その長さ方向を引き出しMaの移動方向に沿わせ、且つ、前記トレースレーン10と係合レーン11とを備えた一方縁部をストッパ部材2が備えられる側、図示の例では左側に向けた状態で引き出しMaの底板Mbの外面に備えられるようになっている。
【0021】
図示の例では、上下二箇所の係合レーン11、11間にトレースレーン10が設けられている。係合レーン11はラック状をなすように構成されている。すなわち、図示の例では、レール部材1の厚さ方向において、その上面から約三分の一の厚さの位置までに上側の係合レーン11が形成され、また、その下面から約三分の一の厚さの位置までに下側の係合レーン11が形成され、この上側の係合レーン11と下側の係合レーン11との間にトレースレーン10が形成されている。係合レーン11を構成する前記被掛合部11aとなるラック歯11bの歯先はトレースレーン10のレーン面10aと略同面上に位置されている。また、図示の例では、レール部材1における引き出しMaの前面側に位置される端部には、トレースレーン10の前端部との間に、引き出しMaの往動時にストッパ部材2の後述する摺接部分22が当接される段差部10bが形成されている。この段差部10bはトレースレーン10のレーン面10aに近づくに連れて高まる傾斜を備えている。図中符号12で示すのは案内溝であり、ストッパ部材2を支持するブラケット20上に左右方向に若干のスライド移動可能に備え付けられたケース21’に形成された案内リブ21bがこの案内溝12に入り込むようになっており、ストッパ部材2とレール部材1との距離が変わることがないようにしてある。
【0022】
ストッパ部材2は、前記トレースレーン10に対する摺接部分22と、前記係合レーン11に対する係合部分23とを備えている。そして、可動体Mの往動時にトレースレーン10に摺接部分22が摺接して係合レーン11に対する係合部分23の係合が阻止されると共に、可動体Mの往動を停止したときに係合レーン11に対する係合部分23の係合が許容されるようにしてある。そして、さらに、この係合部分23の係合が可動体Mを停止した状態から可動体Mを復動させることで解除されるようになっている。
【0023】
図示の例では、収納体Ba内に収納された引き出しMaを引き出すときはストッパ部材2の係合部分23はレール部材1の係合レーン11には係合されず、ストッパ部材2の摺接部分22をトレースレーン10に摺接させながら引き出しMaのスムースな引き出し動作が許容される。引き出しMaの引き出し操作を止めると係合レーン11にストッパ部材2の係合部分23が係合して任意の引き出し位置において引き出しMaが安定的に保持される。このように保持された引き出しMaを押し込むと係合レーン11へのストッパ部材2の係合部分23の係合が解かれ引き出しMaの押し込みが許容される。
【0024】
この実施の形態にあっては、ストッパ部材2は、回動アーム24と、係合部分23と、摺接部分22とを備えている。かかるストッパ部材2は、前記ブラケット20の上面に備え付けられる上面及び右側面を開放させた前記ケース21’の底板に備えられている。このケース21’におけるストッパ部材2の備えられた箇所の後方には後述する中間ギヤ体3が備えられている。また、ケース21’の上面はこのケース21’に組み合わされるカバー21”で覆われるようになっている。このカバー21”には中間ギヤ体3の第2ギヤ部31に噛み合うダンパー装置4が備えられている。かかるケース21’とカバー21”とによって、ストッパ部材2、中間ギヤ体3、及びダンパー装置4がユニット化されている。ケース21’とカバー21”との間に、引き出しMaに設けられたレール部材1が入り込んでおり、(図8(a))このように入り込んでいるレール部材1が引き出しMaの所定の往動位置において中間ギヤ体3に噛み合い、次いで、ストッパ部材2に接するようになっている。
【0025】
前記係合部分23は回動アーム24の回動軸24bに対する近接及び離隔移動可能にこの回動アーム24の自由端24d側に組み合わされている。図示の例では、回動アーム24は、扁平な角筒状をなすように構成されている。回動アーム24の左端は閉塞され、回動アーム24の右端は開放されている。回動アーム24の左端には軸受け耳部24aが形成されており、この軸受け耳部24aに形成された軸孔24bにケース21’とカバー21”との間に亘る縦向きの回動軸24cを通すことで、回動アーム24、つまりストッパ部材2は本体Bつまり収納体Ba側に回動可能に支持されている。すなわち、回動アーム24は回動軸24cを中心に前後方向に自由端24dとなるその右端を振る回動をするようにケース21’に支持されている。係合部分23は回動アーム24内に隙間少なく納まる短寸の角筒状をなすように構成されている。係合部分23の左端は閉塞され、かつ、右端は開放されている。係合部分23はこの閉塞された左端側を回動アーム24内に納めて、この回動アーム24の中心軸に沿った向きのスライド移動可能に回動アーム24に支持されている。(図4)図示の例では、扁平に構成される回動アーム24の幅広の上下面には、自由端24d側においてこの回動アーム24の中心軸に沿った案内スリット24eが形成されており、係合部分23はその上下面にそれぞれ形成された摺動子23aをこの案内スリット24eに入れ込ませてこの案内スリット24eに沿って前記スライド移動をするようになっている。また、係合部分23の右端には、この右端の開放部を挟んだ上下にそれぞれこの開放部から前方に突き出す前記ラック歯11bの一つと略等しい形状の爪部23bが形成されている。このように形成される上側の爪部23bがレール部材1の上側の係合レーン11に係合可能とされ、下側の爪部23bがレール部材1の下側の係合レーン11に係合可能とされる。この爪部23bはレール部材1の係合レーン11を構成する隣り合うラック歯11b間に入り込み可能に構成されており、係合部分23はこの爪部23bをもってレール部材1の係合レーン11に係合するようになっている。また、係合部分23の閉塞された左端と回動アーム24の左端との間には圧縮コイルバネ25が介装されている。このバネ25の作用により係合部分23は前記摺動子23aを案内スリット24eの右端に位置させる突出位置に位置づけられるようになっている。すなわち、ストッパ部材2は係合部分23を前記回動軸24cから離隔させる向きに付勢する第一付勢手段を有している。
【0026】
前記摺接部分22は回動アーム24の回動軸に対する近接及び離隔移動可能に前記係合部分23に組み合わされている。図示の例では、かかる摺接部分22は、トップ22aとベース22cとから構成されている。トップ22aは軟質の合成樹脂あるいはゴムから構成され前方に頂端を向けた平面視略三角形状をなすように構成されている。ベース22cはこのトップ22aと一体化されていると共に、係合部分23の中心軸に沿った向きのスライド移動可能に係合部分23に支持されている。図示の例では、二色成形により硬質の合成樹脂からなるベース22cにトップ22aを一体化させている。また、図示の例では、係合部分23の上下面にはそれぞれ短寸の筒状をなすこの係合部分23の中心軸に沿った案内スリット23cが形成されており、ベース22cはその上下面にそれぞれ形成された摺動子22dをこの案内スリット23cに入れ込ませてこの案内スリット23cに沿って前記スライド移動をするようになっている。また、ベース22cの左端と係合部分23の左端との間には圧縮コイルバネ26が介装されている。このバネ26の作用により摺接部分22は前記摺動子22dを案内スリット23cの右端に位置させる突出位置に位置づけられるようになっている。この突出位置において摺接部分22のトップ22aは係合部分23の爪部23bよりも前方つまり右側に位置されるようになっている。(図8(b)、図8の上方が右側)すなわち、ストッパ部材2は摺接部分22を回動軸24cから離隔させる向きに付勢する第二付勢手段を有している。
【0027】
また、ストッパ部材2は、回動アーム24の自由端24dをレール部材1に最も近接させる基準位置に向かう力をこの回動アーム24に常時作用させる姿勢維持手段を備えている。この姿勢制御手段としては、バネなどの付勢体などを利用することができる。図示の例では、かかる姿勢制御手段をバネ一端を回動アーム24に止着させ、かつ、バネ他端をケース21’に止着させた図示しないねじりコイルバネによって構成させている。そして、図示の例では、回動アーム24の中心軸がレール部材1の長さ方向に直交する基準位置(図8(b))から、回動アーム24がその自由端24dを前方及び後方のいずれの向きに傾動してもかかるバネが弾性変形を生じさせるようにしている。また、この実施の形態にあっては、かかる基準位置においては、前記回動軸24cを通る仮想の前後方向の直線yとレール部材1におけるトレースレーン10及び係合レーン11のラック歯11bの刃先を通る仮想の前後方向の直線zとの間の間隔が、回動軸24cと回動アーム24の自由端24dとの間の間隔と略等しく、かつ、この回動軸24cと前記突出位置にある係合部分23の爪部23bの爪先との間の間隔よりも小さくなるようにしてある。(図8)
【0028】
そして、この実施の形態にあっては、かかる回動アーム24は、可動体Mの往動時には前記第二付勢手段の付勢によりレール部材1に摺接部分22のみを当接させてこの可動体Mの往動を許容する向きに基準位置から傾動し、往動を停止したときは姿勢維持手段の作用により基準位置に向けてやや回動してレール部材1に摺接部分22及び係合部分23を当接させ、かつ、可動体Mを停止した状態から可動体Mを復動させると第一付勢手段の付勢に抗して係合部分23を前記回動軸に近づける向きに一旦移動させながら可動体Mの復動を許容する向きに反転傾動するようになっている。
【0029】
具体的には、可動体Mとしての引き出しMaが収納体Baに納まりきった位置においては、回動アーム24はレール部材1の前記段差部10bの前方にあって、基準位置にある。(図8)この状態から引き出しMaを引き出すと段差部10bに摺接部分22のトップ22aが当たって回動体は自由端24dを前方に向ける向きに傾動されこのトップ22aをトレースレーン10に摺接させる。第二付勢手段により摺接部分22のトップ22aは回動軸から離隔する向きに付勢され係合部分23から突き出した位置に保持されるため、かかる摺接により可動体Mは係合部分23の爪部23bを係合レーン11のラック歯11bに噛み合わせない回動位置に位置づけられる。(図9)引き出しMaの引き出し操作を止めると姿勢維持手段により回動アーム24は摺接部分22を第二付勢手段の付勢に抗して回動軸24cに近接する向きに移動させながら基準位置に向けてやや回動される。これにより係合部分23の上下の爪部23b、23bがそれぞれ対応する係合レーン11のラック歯11bに噛み合い引き出しMaはこの引き出し操作を止めた位置において安定的に保持される。(図10)この位置から引き出しMaを押し込み操作すると回動アーム24は第一付勢手段の付勢に抗して係合部分23を回動軸24cに近接する向きに移動させながら基準位置まで回動され、さらにこの基準位置を超えてその自由端24dを後方に向けるように反転傾動される。このように回動アーム24が反転傾動されると第一付勢手段の付勢により係合部分23は突出位置に復帰し摺接部分22も第二付勢手段の付勢により突出位置に復帰しトレースレーン10への摺接部分22の摺接により係合部分23と係合レーン11との係合が阻止されて引き出しMaの押し込みが許容される。(図12)この実施の形態にあっては、前記付勢部材5の付勢により、引き出しMaは収納体Baに納まりきった引き出し操作前の位置まで強制的に移動される。引き出しMaがこの引き出し操作前の位置まで戻る途中でストッパ部材2よりもレール部材1の前端は後方に移動し、摺接部分22とレール部材1の摺接が解かれて回動アーム24は基準位置に復帰される。(図13)
【0030】
また、この実施の形態にあっては、動作機構はさらに、ダンパー装置4と、前記係合レーン11に噛み合う中間ギヤ体3とを備えている。
【0031】
ダンパー装置4は、ピニオン40を備え、このピニオン40の回転に制動力を作用させるものとして構成されている。図示の例では、かかるダンパー装置4は、ステーター体41と図示しないローター体とを備え、このローター体の回転又は相対的な回転に制動力を作用させるように構成されている。典型的には、ステーター体41の内部にシリコンオイルなどの粘性流体を封入しておき、かかる粘性流体の抵抗がローター体の回転に作用されるようにしておく。かかるローター体にピニオン40が備えられており、図示の例では、かかるダンパー装置4は前記ケース21’内にピニオン40を位置させるように前記カバー21”にステーター体41を固定させて備えられている。ピニオン40の回転軸、すなわち、ローター体の回転軸は縦方向に沿っている。
【0032】
中間ギヤ体3は、係合レーン11に噛み合う第1ギヤ部30と、ダンパー装置4のピニオン40に噛み合う第2ギヤ部31とを備えている。図示の例では、かかる中間ギヤ体3は、大径の第1ギヤ部30の一面、図示の例では上面に、これより小径の第2ギヤ部31を、第1ギヤ部30と一体に備えさせてなる。この中間ギヤ体3の回転軸も縦方向に沿っている。また、かかる中間ギヤ体3は、可動体Mの移動方向に沿って前記ピニオン40に第2ギヤ部31を噛み合わせる接続位置と、これを噛み合わせない非接続位置とに亘る移動可能に支持されている。そして、係合レーン11への第1ギヤ部30の噛み合いにより、可動体Mの往動時には前記非接続位置に位置され、可動体Mの復動時には前記接続位置に位置されるようになっている。
【0033】
具体的には、中間ギヤ体3はその回転中心にボス部32を備えており、このボス部32を前記ケース21’の底板に形成された可動体Mの移動方向に沿って長い長孔21aに納めてこのケース21’に支持されている。そして、可動体Mとしての引き出しMaの往動時となる引き出し操作時にはレール部材1の係合レーン11に噛み合ってこのボス部32を長孔21aの前端に位置させ、このときは第2ギヤと前記ピニオン40との噛み合いを解くようになっている。(図9、図14)また、可動体Mとしての引き出しMaの復動時となる押し込み操作時にはレール部材1の係合レーン11に噛み合ってこのボス部32を長孔21aの後端に位置させ、このときは第2ギヤ部31と前記ピニオン40とを噛み合わせるようになっている。(図15)
【0034】
これにより、この実施の形態にかかる動作機構にあっては、前記付勢部材5の付勢による可動体Mの強制的な復動時に限ってこの復動に前記ダンパー装置4による制動力を作用させることができるようになっている。
【0035】
また、この実施の形態にあっては、可動体Mを往動前位置から所定往動位置まで往動させたときに係合レーン11に中間ギヤ体3が噛み合い始めるようになっていると共に、中間ギヤ体3におけるこの係合レーン11に噛み合う第1ギヤ部30を軟質材から構成させている。具体的には、この実施の形態にあっては、引き出しMaの引き出し操作前の位置ではレール部材1の前記段差部10bを備えた端部の前方に中間ギヤ体3があってその第1ギヤ部30と係合レーン11を離隔させている。(図8)そして、引き出しMaの引き出し操作を開始すると中間ギヤ体3が係合レーン11に噛み合い始めるようになっている。
【0036】
これにより、この実施の形態にかかる動作機構にあっては、前記付勢部材5による強制的な復動の最終局面においては、つまり、可動体Mが往動前位置に近づいた段階では、前記ダンパー装置4の制動力が可動体Mに作用されないようにして、この付勢部材5の付勢により復動終了位置、つまり、往動前位置まで可動体Mを確実に復動させることができるようになっている。また、前記所定往動位置において係合レーン11に中間ギヤ体3をスムースに噛み合わせることができる。具体的には、中間ギヤ体3における第1ギヤ部30の歯部以外の箇所を硬質の合成樹脂から構成し、この歯部のみを軟質の合成樹脂から二色成形やインサート成形などにより構成させる。
【0037】
以上に説明した動作機構は、 図示は省略するが、可動体Mとしての引き出しMaの側面にレール部材1及びストッパ部材2のいずれか一方を備えさせ、これらの他方をこの側面に向き合う本体Bとしての収納体Baの側板に備えさせて、利用することもできる。この場合、ストッパ部材2の回動アーム24の回転軸は横向きとなり、前記姿勢制御手段は重りによって構成することもできる。また、以上に説明した動作機構におけるレール部材1の係合レーン11はトレースレーン10の片側のみに設けてあっても良く、この場合にはストッパ部材2の係合部分23の爪部23bも片側のみで足りる。
【符号の説明】
【0038】
M 可動体
B 本体
1 レール部材
10 トレースレーン
11 係合レーン
2 ストッパ部材
22 摺接部分
23 係合部分
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体に対し往復動可能に組み合わされた可動体の動作機構であって、
本体及び可動体のいずれか一方に備えられるレール部材と、
これらの他方に備えられるストッパ部材とを備えており、
レール部材は、可動体の移動方向に沿って連続する平坦なトレースレーンと、可動体の移動方向に沿って複数の被係合部を並列させてなる係合レーンとを備えており、
ストッパ部材は、前記トレースレーンに対する摺接部分と、前記係合レーンに対する係合部分とを備えており、
可動体の往動時にトレースレーンに摺接部分が摺接して係合レーンに対する係合部分の係合が阻止されると共に、可動体の往動を停止したときに係合レーンに対する係合部分の係合が許容されるようにしてあり、
この係合部分の係合が可動体を停止した状態から可動体を復動させることで解除されるようになっていることを特徴とする可動体の動作機構。
【請求項2】
ストッパ部材は、回動アームを有しており、
係合部分はこの回動アームの回動軸に対する近接及び離隔移動可能にこの回動アームの自由端側に組み合わされ、
かつ、摺接部分は前記回動軸に対する近接及び離隔移動可能に係合部分に組み合わされており、
しかも、ストッパ部材は、係合部分を回動軸から離隔させる向きに付勢する第一付勢手段と、
摺接部分を回動軸から離隔させる向きに付勢する第二付勢手段と、
回動アームの自由端をレール部材に最も近接させる基準位置に向かう力をこの回動アームに常時作用させる姿勢維持手段とを備えており、
回動アームは、可動体の往動時には第二付勢手段の付勢によりレール部材に摺接部分のみを当接させてこの可動体の往動を許容する向きに基準位置から傾動し、往動を停止したときは姿勢維持手段の作用により基準位置に向けてやや回動してレール部材に摺接部分及び係合部分を当接させ、
かつ、可動体を停止した状態から可動体を復動させると第一付勢手段の付勢に抗して係合部分を前記回動軸に近づける向きに一旦移動させながら可動体の復動を許容する向きに反転傾動するようになっていることを特徴とする請求項1に記載の可動体の動作機構。
【請求項3】
可動体を常時復動方向に付勢する付勢部材を備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の可動体の動作機構。
【請求項4】
レール部材の係合レーンがラック状をなすように構成されていると共に、
ピニオンの回転に制動力を作用させるダンパー装置と、
係合レーンに噛み合う第1ギヤ部と、ダンパー装置のピニオンに噛み合う第2ギヤ部とを備えた中間ギヤ体とを備えており、
中間ギヤ体は、可動体の移動方向に沿って前記ピニオンに第2ギヤ部を噛み合わせる接続位置と、これを噛み合わせない非接続位置とに亘る移動可能に支持されていると共に、
係合レーンへの噛み合いにより、可動体の往動時には前記非接続位置に位置され、可動体の復動時には前記接続位置に位置されるようになっていることを特徴とする請求項3に記載の可動体の動作機構。
【請求項5】
可動体を往動前位置から所定往動位置まで往動させたときに係合レーンに中間ギヤ体が噛み合い始めるようになっていると共に、
中間ギヤ体におけるこの係合レーンに噛み合う第1ギヤ部を軟質材から構成させていることを特徴とする請求項4に記載の可動体の動作機構。
【請求項1】
本体に対し往復動可能に組み合わされた可動体の動作機構であって、
本体及び可動体のいずれか一方に備えられるレール部材と、
これらの他方に備えられるストッパ部材とを備えており、
レール部材は、可動体の移動方向に沿って連続する平坦なトレースレーンと、可動体の移動方向に沿って複数の被係合部を並列させてなる係合レーンとを備えており、
ストッパ部材は、前記トレースレーンに対する摺接部分と、前記係合レーンに対する係合部分とを備えており、
可動体の往動時にトレースレーンに摺接部分が摺接して係合レーンに対する係合部分の係合が阻止されると共に、可動体の往動を停止したときに係合レーンに対する係合部分の係合が許容されるようにしてあり、
この係合部分の係合が可動体を停止した状態から可動体を復動させることで解除されるようになっていることを特徴とする可動体の動作機構。
【請求項2】
ストッパ部材は、回動アームを有しており、
係合部分はこの回動アームの回動軸に対する近接及び離隔移動可能にこの回動アームの自由端側に組み合わされ、
かつ、摺接部分は前記回動軸に対する近接及び離隔移動可能に係合部分に組み合わされており、
しかも、ストッパ部材は、係合部分を回動軸から離隔させる向きに付勢する第一付勢手段と、
摺接部分を回動軸から離隔させる向きに付勢する第二付勢手段と、
回動アームの自由端をレール部材に最も近接させる基準位置に向かう力をこの回動アームに常時作用させる姿勢維持手段とを備えており、
回動アームは、可動体の往動時には第二付勢手段の付勢によりレール部材に摺接部分のみを当接させてこの可動体の往動を許容する向きに基準位置から傾動し、往動を停止したときは姿勢維持手段の作用により基準位置に向けてやや回動してレール部材に摺接部分及び係合部分を当接させ、
かつ、可動体を停止した状態から可動体を復動させると第一付勢手段の付勢に抗して係合部分を前記回動軸に近づける向きに一旦移動させながら可動体の復動を許容する向きに反転傾動するようになっていることを特徴とする請求項1に記載の可動体の動作機構。
【請求項3】
可動体を常時復動方向に付勢する付勢部材を備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の可動体の動作機構。
【請求項4】
レール部材の係合レーンがラック状をなすように構成されていると共に、
ピニオンの回転に制動力を作用させるダンパー装置と、
係合レーンに噛み合う第1ギヤ部と、ダンパー装置のピニオンに噛み合う第2ギヤ部とを備えた中間ギヤ体とを備えており、
中間ギヤ体は、可動体の移動方向に沿って前記ピニオンに第2ギヤ部を噛み合わせる接続位置と、これを噛み合わせない非接続位置とに亘る移動可能に支持されていると共に、
係合レーンへの噛み合いにより、可動体の往動時には前記非接続位置に位置され、可動体の復動時には前記接続位置に位置されるようになっていることを特徴とする請求項3に記載の可動体の動作機構。
【請求項5】
可動体を往動前位置から所定往動位置まで往動させたときに係合レーンに中間ギヤ体が噛み合い始めるようになっていると共に、
中間ギヤ体におけるこの係合レーンに噛み合う第1ギヤ部を軟質材から構成させていることを特徴とする請求項4に記載の可動体の動作機構。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−140780(P2011−140780A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1182(P2010−1182)
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】
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