説明

可動台及びかかる可動台に装着されるX線機械

【課題】X線機械(10)を収容するように設計されている可動台(16)または、この可動台に装着されることが可能なX線機械を提供する。
【解決手段】本発明のX線機械には、ナビゲーション・システム(56、60、62)を付設した電動システムを用いた移動手段(52、36、37)が設けられる。本発明のナビゲーション・システムは、検査室、ハイブリッド型処置室又は手術室(9)の内部で一つの位置から他の位置へX線機械を自動的に且つ精密に移動させることを可能にする。このX線機械にはまた、放射線撮影を受けさせたい領域をX線ビームの内部に保ちつつ同時に患者の周りでの移動部材の自動的配置を行なう手段(65)が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の目的は、X線機械を収容するように設計されている可動台である。本発明の目的はまた、上述の可動台に装着され得るX線機械である。本発明は、医用撮像に特に有利に応用され、さらに具体的には、医療診断装置の分野に有利に応用される。
【0002】
本発明のX線機械は、特に外科病棟、麻酔処置室、診断ユニット、集中治療ユニット、又は血管撮影室及び手術室の両方の要件を満たすのに用いられるハイブリッド型処置室として公知の処置室のような病院病棟室向けに設計されている。
【背景技術】
【0003】
従来技術では、X線診断機械はX線画像取得機械である。これらの機械は、生体、特に人体の内部に位置する器官の画像又は画像系列を取得するのに用いられる。
【0004】
従来技術では、X線機械は、様々な方向において患者の周りを回転することを可能にする移動部材を有する。これらの移動部材は、空間の三つ全ての次元において移動することが可能である。これらの移動部材は一般的には、一端にX線管を有し、他端に検出器を有するアームから成る。X線管は、放出方向に沿ってX線ビームを送り出す。
【0005】
これらのX線機械は、診断目的又は侵襲処置目的のために血管撮影検査に用いられる。
【0006】
これらの検査の際に、診断又は介入処置を受ける領域のX線曝射を行なう必要がある。この目的のために、患者はX線管と検出器との間に配置され、さらに明確に述べると、患者はX線曝射領域が対向位置に位置するように配置される。
【0007】
現状では、放射線撮影曝射を行なうのに用いられる幾つもの形式のX線機械が存在し、例えば検査室の床に固定されたX線機械が存在している。これらのX線機械は、X線ビームを関心領域の前方に配置し得るようにする幾つもの自由度を有する。しかしながら、この形式のX線機械は手術室には不向きである。実際に、幾つかの検査の場合には、X線は手術の開始時及び終了時に必要とされるに過ぎない。これら二つの点の間では、患者への接近し易さに重点が置かれる。これら血管撮影機械は床に固定されているので、放射線撮影システムの存在が不要であるときにも患者支持テーブル又は寝台から遠ざけることができない。さらに、テーブルに患者を配置する段階及び移動させる段階が、この嵩高いシステムを遠ざけることができないのでさらに困難になる。
【0008】
また、手動で移動させることができる「移動式外科処置ユニット」と呼ばれるX線機械も存在する。これらの機械は一般的には、X線管に給電するのに用いられる多数のバッテリを支持する大型の台車を有する。しかしながら、この形式のX線機械には欠点がある。実際に、これらの機械は、血管撮影法手順には不向きである。X線管によって与えられる必要出力は、優れた画質を要求する血管撮影法手順を行なうのに不十分である。
【0009】
さらに、これらの移動式X線機械は、管及び検出器を支持するアームの径が十分に大きくないため、複雑な角度移動を提供しない。同様に、これらの移動式X線機械は、現在の血管撮影機械に必要とされるもののような高品質三次元(3D)画像再構成を可能にするのに十分な回転速度に達しない。これらの移動式X線機械はまた、幾つかの応用、特に3D再構成に必要とされる幾つかの自動化された動きを必要とする血管撮影法手順には不向きである。
【0010】
さらに、かかる機械の重量は血管撮影向けX線機械の2分の1であるが、それでも寸法及び重量が大きい(約300kg)ため移動させることは依然として極めて困難である。
【0011】
また、天井から懸吊されており、移動式滑車及び電気モータによって天井全体に沿って設けられたレールを移動し得る血管撮影用X線機械が存在している。しかしながら、この形式のX線機械には欠点がある。実際に、手術室は一般的には、患者の支持テーブル、照明手段、薬液分配システム、麻酔設備の支援品、電気メスの支援品及び灌流ポンプの支援品を有する。これらのシステムの殆どが、手術室の制約に依存して患者のテーブルの周囲で天井に固定されており、従って患者のテーブルの周囲で空間に分散している。結果的に、天井に固定されているレールの空間要件及びX線機械の容積のため、これらの機械を血管撮影機械として手術室に設置することは全く不可能である。
【0012】
さらに、天井にX線機械を装着すると患者の日和見感染のリスクがかなり増大する。実際に、天井に懸吊されているこれらのX線機械は、患者の上方又は直近に配置され、従って手術部位の直近に配置されるように設計されているため、微粒子が機械から落下するリスクが増大する。
【0013】
さらに、X線機械又は機械を懸吊していると、この機械を適正に清掃したり保守したりするのに困難が生ずる。従って、滅菌性が変化しているような環境に合わせてこの形式のX線機械を装着することは不可能になる。実際に、手術室は常に消毒されており、X線機械を摺動させるためのレールを患者の上方に設けると、これらの装置を清掃することが困難になるため院内疾患又は敗血症のリスクが増大する。
【0014】
さらに、幾つかの手術室では、患者の上方に滅菌性層流が設定されている。この場合には、レールによって機械が層流と共に天井を摺動することが可能になり、機械に存在している微粒子が吹き飛ばされて滅菌帯に入るという影響を有する。
【0015】
また、自動車工場設備に広く見受けられる産業用ロボットの技術に基づく血管撮影用のX線機械が存在する。しかしながら、この形式のX線機械には欠点がある。実際に、これらのロボットに装着されるアームは一般的には、手術室において利用可能な空間について相対的にかなりの空間要件を有する。結果的に、これらのアームの移動は、手術室で作業している人員の安全性にリスクを招く。結果的に、これらのロボットを血管撮影機械として手術室に設置することは全く不可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
近年、
・第一に、特に高画質及び3D再構成を可能にするのに十分な出力を有するX線管を備えたシステムによる血管撮影法の必要を満たし、また
・第二に、特にX線機械を移動させることが可能なシステムを通じて手術室の必要を満たすこと
を可能にする所謂ハイブリッド型処置室に適したX線機械が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、従来技術の以上に述べた欠点を克服しつつ同時に上述の必要を満たすことをまさに目的とする。この目的のために、本発明は、血管撮影法の要件に適合し、また手術環境に設置されることが可能なX線機械を提供する。
【0018】
本発明のX線機械には、ナビゲーション・システムを付設した電動式システムを通じた移動手段が設けられる。
【0019】
本発明のナビゲーション・システムを用いると、検査室又は手術室の内部で一つの位置から他の位置へX線装置を自動的に又は手動で、且つ精密に移動させることができる。この処置室は所謂ハイブリッド型処置室であってよく、すなわち、外科的介入処置と同時に血管撮影形式の検査を行なうように設計されている処置室であってよい。
【0020】
このX線機械にはまた、被撮像領域をX線ビームの内部に保ちつつ同時に患者の周りでの移動部材の自動的配置を行なう手段が設けられる。
【0021】
従って、本発明の目的は、
・放出方向に沿ってX線ビームを放出するX線管と、
・X線放出方向に整列しており管に対向配置されているX線検出器と
を備えたX線機械を装着させるための可動台であって、
この可動台は、
・主電動機(traction motor)及び方向電動機(direction motor)によってそれぞれ駆動される二つの配向自在型駆動輪を少なくとも含んでおり、
・上述の各電動機は処理ユニットに結合されており、
・処理ユニットは、目的地についての指示値、軌跡についての指定値、及びX線機械の位置についてのデータを入力するように構成されており、位置についてのデータは少なくとも一つのセンサによって与えられ、処理ユニットはまた、出力において各々の車輪のそれぞれの方向及び速度を発生するように構成されていることを特徴とする。
【0022】
有利には、本発明はまた、可動台がレーザ・ジャイロメータ(gyrolaser)を含んでおり、このレーザ・ジャイロメータは、処置室に予め設置されている反射体からの反射に基づいて、予め画定されている固定参照座標系でのX線機械の位置を算出することが可能な読み取りシステムを含むことを特徴とする。
【0023】
有利には、本発明はまた、反射体が反射屈折型(catadioptric)の反射体であることを特徴とする。
【0024】
有利には、本発明はまた、可動台が、主電動機及び方向電動機にそれぞれ装着されておりX線機械の位置に対するデータを提供することが可能な主エンコーダ(traction encoder)及び方向エンコーダ(direction encoder)を含むことを特徴とする。
【0025】
有利には、本発明はまた、可動台が支持構造を含んでおり、支持構造は、
・X線機械が固定されるように設計されている上端を含む支持アームと、
・車輪によって床に載置されて、支持アームと共に組み立てられている構造部材の組と
を含んでおり、
・上述の支持アーム及び部材の組は、支持アームに比較してユニットに機械的剛性を与えるように構成されていることを特徴とする。
【0026】
有利には、本発明はまた、上述の部材の組が、
・支持アームに固定されており、電動機を設置するための水平板を含む台板と、
・台板に固定的に接合されている横断材と、
・隅角を有し、横断材に固定的に接合されている2本のアームであって、装置の前部に位置している2本のアームを備えた要素と
を含んでいることを特徴とする。
【0027】
有利には、本発明はまた、2本のアームを備えた要素が、
・アームの前端が管の位置の何れにおいても管と衝突せず、また
・管と装置のアイソセンタとの間の距離が最大化される
ように所定の距離に配置されることを特徴とする。
【0028】
有利には、本発明はまた、アームの端辺及び横断材の端辺が、横方向の横断材に対応する鉛直強化部材によって補強されていることを特徴とする。
【0029】
有利には、本発明はまた、横断材と台板との間の固定的接合の位置にプラスチック型可撓性材料がさらに挿入され得ることを特徴とする。
【0030】
有利には、本発明はまた、自在輪が床面に面した面において各々のアームの一端に装着されており、この装着は、車輪の回転軸が床面において車輪の支持台に対して偏心して位置するように行なわれていることを特徴とする。
【0031】
有利には、本発明はまた、可動台が、上述の車輪の回転を阻止して停止した状態に保つように自在輪に装着された制動装置を含むことを特徴とする。
【0032】
有利には、本発明はまた、可動台が、支持構造に固定された下端と、レーザ・ジャイロメータを担持した上端とを有する連結柱を含むことを特徴とする。
【0033】
有利には、本発明はまた、可動台が、処理ユニットに接続されて目的地の指定値及び/又は軌跡の指定値を入力するためのマン・マシン・インタフェイスを含むことを特徴とする。
【0034】
有利には、本発明はまた、マン・マシン・インタフェイスが、上述の可動台に埋め込まれている、又は上述の可動台から一定の距離に位置していることを特徴とする。
【0035】
有利には、本発明はまた、マン・マシン・インタフェイスがタッチスクリーン、ジョイスティック及び/又は遠隔制御ユニットであることを特徴とする。
【0036】
有利には、本発明はまた、可動台がバッテリ又は主電源を通じて電力を供給されることを特徴とする。
【0037】
有利には、本発明はまた、可動台が衝突防止センサ及び傾斜センサを含む安全システムをさらに含むことを特徴とする。
【0038】
本発明の目的はまた、本発明の可動台に装着されるように設計されているX線機械である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
本発明は、以下の記載及び添付図面からさらに明確に理解されよう。これらの図面は単に指示のために掲げられているに過ぎず、本発明の範囲を制限するものではない。
【図1】本発明の一実施形態による可動台に装着された血管検査型X線機械の概略図である。
【図2】本発明の一実施形態による可動台に装着された血管検査型X線機械の概略図である。
【図3】本発明の一実施形態によるX線機械を装着させるための可動台の支持構造の概略図である。
【図4】本発明の一実施形態による処理ユニットによって制御されるX線機械の動作を具現化するモジュールの概略図である。
【図5】図4の処理ユニットの模式的詳細図である。
【図6】本発明の一実施形態による上述の装置について目的地の指定値を入力するのに用いられるX線機械のマン・マシン・インタフェイスの概略図である。
【図7】本発明の一実施形態による予め画定されている経路に沿って処置室において可動台によって移動されるX線機械の概略図である。
【図8】本発明の一実施形態による固定された参照デカルト座標系での可動台の絶対位置のグラフ図である。
【図9】本発明の一実施形態による自在輪システムの遠近図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1は、参照番号9の枠の形態で表現されている検査室又は手術室又はハイブリッド型処置室における血管検査型X線機械10を示す。X線機械10は、患者の周りで様々な方向に回転し得る移動部材を有する。これらの移動部材は、三つ全ての空間次元において移動することが可能である。これらの移動部材は、X線発生源であるX線管11を一端に含み、検出器12を他端に含むアーム13によって全体的に形成されている。この管11を用いて、X線ビームを放出方向に沿って送出する。一般的には、アーム13はC字形である。
【0041】
検出器12は、管11に対向して放出方向にアーム13に繋留されている。X線管11及び画像検出器12は、管11によって放出されるX線が画像検出器12に入射して画像検出器12によって検出されるように、アーム13の両端に装着されている。検出器12は、当該検出器を放出方向に上下させるのに用いられる昇降機19に連結されている。
【0042】
処置室9はまた、患者を横臥させるための検査台14すなわち寝台を有する。検査台14は、床面に固定されたフレーム15に装着され得る。検査台15はまた、可動フレーム付き手術台であってよい。
【0043】
放射線撮影検査時には、X線機械10は、被検器官がX線ビームの内部に配置されるように作動モード位置に移動させられる。
【0044】
アーム13は、支持要素17を通じて可動台16に装着されている。支持要素17は、可動台16に固定的に装着されている。アーム13は、回転アーム18によって支持要素17に連結されている。アーム13は、回転アーム18に対して摺動するように装着される。回転アーム18は、X線ビームを通る軸の周りに回転する。要素17に設けられたアーム18のこの回転アセンブリによって、X線管11及び画像検出器12は回転アーム18の円弧の周りに回転移動することが可能になる。このように、支持要素17、回転アーム18及びアーム13は、三つ全てが互いに対してヒンジ取り付けされている。このヒンジ取り付けによって、X線機械10は三つの次元において移動することが可能になる。X線機械10の移動部材のこの三次元移動を用いて、様々な入射角値での被検器官の画像を完成させる。
【0045】
X線機械10の各移動部材の回転運動を組み合わせることにより、X線ビームは、X線機械10のアイソセンタ69に近似的に対応する中心と、管11と検出器12との間の距離に実質的に等しい径とを有する球面の内部に含まれるX線の全放出方向を描くことができる。アイソセンタ69は、X線放出管11とX線受光検出器12との間に挟まれた空間に位置している。アイソセンタ69は、アーム13によって形成される円弧の中心に対応している。可動台16は、床面においてX線機械10を移動させるように設計されている。可動台16は、処理ユニット50によって自動的に制御される。この処理ユニット50は、可動台に埋め込まれていてもよいし、検査室9の外部に位置し得る制御室に一定の距離を置いて保持されていてもよい。後者の場合には、可動台16は、任意の形式の通信プロトコルを用いた無線型接続又は有線型接続を通じて制御され得る。
【0046】
図2は、可動台16の特徴の詳細図を掲げる。図3に示すように、可動台16は支持構造39を有する。この構造は、ねじ又ははんだによって接合された幾つもの部材を含み得る。この構造39は鋳造要素であってもよい。この支持構造39は、下記のように設計されている接合構成及び幾何学的構成を有する構造部材の組を有している。
【0047】
・支持構造39を形成する構造部材の組の変形によって床面での可動台16のための適当な支持が提供される。
【0048】
・可動台16には、床面に載置された可動台16の四つの車輪によって生じ得る不静定性の問題を解消するのに必要十分な剛性が与えられている。構造支持材30が、可動台16の四つ全ての車輪が床面に恒久的に接触することを保証する。
【0049】
・特に電動機、車輪、及びマン・マシン・インタフェイス等であり得る可動台16の各装置を支持している。支持構造39でのこれらの装置のレイアウトはまた、支持構造39の重量及び各装置の重量がX線機械10の重量と釣り合うように設計される。この釣り合いの目的は、当該機械の移動部材の移動時にもX線機械のX線安定性を確保することにある。このように、可動台16は釣り合いおもりの役割を有し、すなわち可動台16がX線機械10、各装置及び支持構造39の静的安定性及び動的安定性を保ち得ることを意味する。一例では、300kgの範囲にあり得るX線機械10の重量に対して移動台の重量は500kgの範囲にあり得る。
【0050】
支持構造39は、参照デカルト座標系Roの長手方向Yoに沿って延在する支持アーム20を有する。支持アーム20は、例えば実質的に管形状である。一実施形態では、支持アーム20は高さ1mであり、30cm×20cmの矩形断面を有する。
【0051】
一方の上端21では、支持アーム20は、支持要素17を収容するように幾何学的に及び構造的に設計されている接合手段22を有する。図面によって示す例では、接合手段22及び支持要素17は円形である。接合手段22は、例えばボルトねじ/ナット系又ははんだによって支持要素17に固定され得る。
【0052】
好適実施形態では、可動台16は、接合手段22の裏面23に収容手段を有する。これらの収容手段にマン・マシン・インタフェイス24を装着することが可能である。図6はマン・マシン・インタフェイス24の一例を示す。
【0053】
支持構造39は剛性金属構造の組26を有し、この組26が車輪36、37及び38によって床面に載置される。この組26は、支持アーム20に接合されている。組26の前部は、水平位置において実質的にY字形である。組26は、横断材(crossbar)40に固定的に接合されたY字形の後部に位置する台板27を有する。この台板27は、組26を支持アーム20に接続する構造部材である。
【0054】
横断材40は、隅角を有する2本のアーム28及び29によって形成される要素に固定的に接合されている。この固定的接合は、はんだ又は他の任意の形式の締結系によって得られ得る。耐応力性の理由から、アーム28及び29の端辺並びに横断材40の端辺を剛性横方向金属片である鉛直強化部材41によって補強(line)することが一般的には必要である。
【0055】
台板27は鉛直フレーム30を有し、鉛直フレーム30は、図4に示す二つのタレット(turret)特徴52を備えた水平板31を支持している。支持アーム20の下端25がフレーム30に固定されている。この締結は、はんだ又は他の任意の形式の締結系によって得られ得る。
【0056】
ユニット26の各部材及び鉛直強化片41の材質、寸法、形状及び厚みの選択、並びに内部構造の内部でのこれらの部材及び強化片のレイアウトによって、支持アーム20に比較してユニット26に機械的剛性を提供する。これらの機械的剛性は、可動台16によって支持される機械10の重量による形状変化を補償し、X線機械10の振動を吸収すると共に二次的に雑音を吸収するように設計される。これらの機械的特性は、アーム28及び29の端部並びに台板27でのX線機械10の安定点の形成を可能にする。
【0057】
一例では、2本のアーム28及び29によって形成される角度は90°程度であってよく、鉛直強化部材41の高さは20cm程度であってよい。
【0058】
一実施形態では、横断材40が台板27のフレーム30に固定的に接合されている点に、可撓性の無雑音材料がさらに挿入され得る。この可撓性材料の追加は、床面での四つの車輪に均衡支持を提供する支持構造39の変形を強化するように設計される。この可撓性材料の追加はまた、支持アーム20に比較して組26の機械的剛性を高める。一実施形態では、可撓性材料はゴムである。一実施形態では、支持アーム20及びY字形ユニット26は鋼製である。
【0059】
二つのタレット特徴52の各々が鉛直軸Vを中心として回転する。各々のタレットが、それぞれ主電動機34及び35、並びに方向電動機42及び43を備えている。車輪36は、二つの電動機すなわち主電動機34及び方向電動機42によって駆動される。車輪37は、二つの電動機すなわち主電動機35及び方向電動機43によって駆動される。方向電動機42及び43は、鉛直軸での車輪36及び37の回転をそれぞれ提供する。
【0060】
可動台16は、二つの駆動モータ・タレット特徴52を支持する。二つのタレット特徴52は水平板31に固定される。この目的のために、水平板31は、二つのタレット特徴52の一方をそれぞれ収容するように構成されている二つの孔32及び33を有する。二つのタレット特徴52の各々が他方とは独立に制御され得る。
【0061】
車輪36は速度Aで回転して角度αに配向され、車輪37は速度Bで回転して角度βに配向される。速度A及びBはしばしば異なっており、角度α及びβはしばしば異なっている。二つの駆動輪36及び37の速度及び角度がこのように異なっているので、上述の装置によって横断される容積を最大限に最小化しつつX線機械10を検査室9において移動させることが可能である。実際に、機械10の回転中心は、二つの車輪36及び37の異なる速度及び角度によって任意の位置に配置され得る。この独立はまた、機械10が組26に平行に移動することを可能にする。一般的には、二つの車輪36及び37の異なる速度及び角度は、検査室9における全ての可能な移動を提供する。
【0062】
可動台16はさらに、自在輪系を有する。この系は、釣り合いおもり系26の各々のアーム28及び29の一方の端部の床面に面した面にそれぞれ装着される二つの自在輪38を有する。回転装着されるこれら二つの自在輪38は、駆動輪36及び37によって生ずる回転移動を受けることが可能である。
【0063】
このように、可動台16は、機械10をあらゆる方向に移動させることを可能にするように四つの多方向輪を有する。これらの車輪は、前尾を構成する自在輪系と、後尾を構成する駆動輪及び方向輪36及び37との二つの組として対称に配置される。代替的な一実施形態では、これらの車輪が非対称に配置されていてもよい。
【0064】
図9は、アーム28に装着されている自在輪38の一例の拡大遠近図を示す。このアセンブリはアーム29についても同一であることが認められる。
【0065】
カバー44が、車輪38の回転ピン47を収容するように設計されている。カバー44の上部部材46が、鉛直回転軸48の周りに軸回転するようにアーム28の下方に装着されている。この軸回転アセンブリは、回転において一つの自由度を与えるボルトねじ/ナット締結系によって得られ得る。スペーサ45が、回転軸48の回転を可能にしつつ同時にナットを阻止するようにアーム28に形成される空間を貫通し得る。
【0066】
自在輪38の鉛直回転軸48は、床面の自在輪38の支持基盤に対してずれた軸を有するように固定される。可動台16が所定の方向に移動されるときに、各々の自在輪は、自在輪38が絡み合わないように鉛直回転軸48を中心とした回転によって配向される。
【0067】
自在輪系はさらに、第一に鉛直回転軸48を中心とし、また第二に回転軸47を中心とした自在輪38の回転を阻止するように設計されている制動装置を含んでいる。図9の例では、カバー44が、本書では下側部材の頂部に固定されている阻止ユニットを含む制動装置49を有している。この制動装置49は、例えば制御ユニット50によって手動で又は遠隔から制御され得る。制動装置49は、当該制動装置49の作動によって、軸48及び軸47の回転を阻止することにより車輪38の回転を停止させて不動にするように構成されている。
【0068】
このように、機械10が作動位置にあって停止すると、自在輪38が不動にされるので、機械10の移動部材の加速相及び減速相において自在輪38は移動しなくなる。
【0069】
制動装置49は、車輪38の回転軸47に装着されていてもよいし、スペーサ45において回転軸48に装着されていてもよい。制動装置49は、車輪38を停止させると共に停止した状態に保つ作用を有する任意の形式の既存の制動装置によって形成され得る。
【0070】
このように、本発明によれば、
・操縦自在の駆動輪36及び37によって可動台16を一つの作動位置から他の作動位置へ移動させて、
・被検器官をX線ビームの下方に保ちつつ同時に移動部材を他の所与の配向に移動させる
ことにより、検査される関心領域を容易に変化させることが可能である。
【0071】
アーム28及び29を備えた要素は、自在輪38を支持する要素の前端が、管11の取り得る如何なる位置においても管11のフードと衝突しないようにX線管から十分な距離に配置されることを銘記されたい。この構成は、管11とX線機械10のアイソセンタ69との間の距離を増大させることを可能にする。円弧に沿ったアーム13の移動を通じて、管11及び検出器12は、面対面の関係を保ちつつ同時にアイソセンタ69の周りを回転することができる。管11及び検出器12は、全体的にこれらの要素の一方が患者の上部に位置し他方がX線に対して透過性であるテーブル14の下方に位置するように、患者の両側に配置される。管11とアイソセンタ69との間の距離を増大させると、これらの要素の一方の配置を可能にするばかりでなく、異なる角度配置、場合によっては複雑な角度配置による要素の移動を可能にするために、アイソセンタに対してテーブル14の下方に位置する空間が解放される。
【0072】
管11とアイソセンタ69との間の距離をこのように増大させることにより、複雑な角度配置を遂行して人体の辺縁に位置する器官例えば患者の肝臓の3D再構成を遂行することが可能なX線機械10を得ることが可能になる。本発明のこの実施形態によれば、管11とアイソセンタ69との間の距離を、床面に固定されており同じ機械的な幾何学的構成を有する既存のX線機械と比較して約10%だけ増大させることができる。
【0073】
図4は、処理ユニット50によって制御される可動台16の動作のブロック図である。図4の例では、タレット特徴52の一方しか表現されていないが、表現されていない第二のタレット特徴も同等に作動することを理解されたい。この例では、図示されているタレット特徴52は、車輪36を駆動するように設計されている主電動機34及び方向電動機32を含んでいる。
【0074】
処理ユニット50は図5に詳細に示されている。処理ユニット50は、DC電源又は整流電源51に接続されている。この電源51は再充電可能型のバッテリであってもよい。
【0075】
処理ユニット50は特にインタフェイス24及び/又は監視コンピュータと連絡しており、監視コンピュータは処理ユニット50に特に目的地についての指定値を送信する。
【0076】
一実施形態では、処理ユニット50及びインタフェイス24は通信バス88を通じて接続されている。
【0077】
代替的な一実施形態では、インタフェイス24は、可動台16から離隔して設置され得る。この場合には、インタフェイス24は検査台14に配置され得る。処理ユニットと、一定の距離に設置されているインタフェイス24との間の通信は、無線リンクによって得られ得る。無線リンクは本発明の枠組みから逸脱しない任意の形式のものであってよい。例えばこの無線リンクは、例えばZigBee規格又は独自規格のような産業用規格に基づく赤外線リンク、超音波リンク、又は無線周波数リンクであってもよいし、Wifi及びBluetooth(商標)等のような所与のプロトコルと関連した周波数帯域において得られるものであってもよい。この目的のために、処理ユニット50は、当該処理ユニット50が、一定の距離に設定されているインタフェイス24との無線電気リンクを得ることを可能にするアンテナ52を有している。
【0078】
一定の距離に設定されているインタフェイス24と処理ユニット50との間の通信はまた、有線リンクによって得られてもよい。
【0079】
マン・マシン・インタフェイス24の表現を図6に示す。図6は、可動台16の上面図を示す。ここでのマン・マシン・インタフェイス24はタッチスクリーン53である。一変形では、このインタフェイス24が、キーボードを付設したスクリーンであってもよい。インタフェイス24は電源51によって給電され得る。一変形では、インタフェイス24は別個のエネルギ源によって給電されてもよい。
【0080】
このタッチスクリーン53は、画面に表示されたインタフェイス制御部54を有する。これらのインタフェイス制御部54は、処置室9におけるX線機械10の予め画定されている作動位置及び停止位置に対応している。制御部54は、文字、図形又はグラフ表現によって画面53に表示され得る。このインタフェイス24は、操作者がスクリーン53に表示されているインタフェイス制御部54の一つを押すことにより目的地の指定値を入力することを容易にし得るようにすることを目的とする。このインタフェイス54は、緊急停止ボタン55又は可動台16を始動させるボタンのような一組の制御ボタンによって補足される。
【0081】
処理ユニット50は、光学位置センサ56に結合されている。光学位置センサ56は連結柱57の上端に装着されている。連結柱57の下端は、可動台16の支持アーム20に固定されている。一変形では、連結柱57は、支持アーム20の近傍で水平板31に固定されていてもよい。柱57のこの形式の装着は、支持アーム20の振動をセンサ56に伝達する必要をなくす。
【0082】
光学センサ56を用いて、少なくとも一つの軸の周りでの角度又は角速度を測定する。また、光学センサ56を用いて予め画定されている固定参照座標系Ro(Xo,Yo)に対するX線機械10の位置の精密測定を行なうこともできる。
【0083】
図2に示す光学センサ56は公知の一般的な光学的構成を有するので、極く簡単に述べるに留める。光学センサ56を以下レーザ・ジャイロメータと呼び、この光学センサ56は一般的には、特にレーザ放出装置及びこの放出装置の回転のためのシステムを有する。放出装置はパルス型の入射レーザ・ビーム68を放出する。
【0084】
図7で分かるように、処置室9には予め決められた位置に配置されているレーザ・ビーム反射体58が予め設けられている。これらの反射体58は反射屈折型の反射体であってよい。反射体58は、処置室9の境界壁に入射レーザ・ビーム68を検出し得るような高さで配置されている。
【0085】
二つの連続した反射体58同士の間の配置距離は、レーザ・ジャイロメータ56の精度を高めるように決定される。一例では、反射体58は、床面から約2.5mの高さにあってよく、また二つの反射体同士の間の最小距離は2mの範囲にあってよい。表面積が約60m2の処置室9では、反射体58の数は10個程度であってよい。
【0086】
入射レーザ・ビーム68が反射体58と遭遇すると、この反射体58は反射したレーザ・ビームを読み取るシステムを有するレーザ・ジャイロメータ56へ向けて反射する。
【0087】
読み取りシステム59は、入射ビームがレーザ・ジャイロメータ56に帰投するまでに掛かる時間を測定する手段を有する。これらの測定手段は、測定された時間に基づいて精密に距離を決定することが可能である。測定手段は、10分の1度までの精度の光学エンコーダによって所定の距離を角度位置と関連付ける。この目的のために、一組の反射体58の位置(固定参照座標系での座標)を含むカードが読み取りシステム59のデータ・メモリ(図示されていない)に予め記録されている。受光される反射を放出していた反射体58の位置、及び角速度に依存して、読み取りシステム59は、機械10の配向角Ωを算出する。
【0088】
読み取りシステム59はまた、X線機械10の絶対位置に対応するレーザ・ジャイロメータ56の絶対位置を、放出装置の1回工程で受光される反射と、データ・メモリに記録されている反射体58の位置のチャートとの関数として決定することが可能な計算手段を有する。
【0089】
読み取りシステム59はコンピュータであってよい。この読み取りシステム59によって実行される動作は、マイクロプロセッサ(図示されていない)によって秩序立てて構成される。マイクロプロセッサは、メモリに記録されている命令コードに応答して、固定参照座標系でのX線機械の角度α及び座標を生成する。
【0090】
図8は、参照デカルト座標系におけるX線機械10のグラフ図である。機械10の配向は、固定参照座標系Ro(Xo、Yo)における局所的参照座標系R(x,y)の配向に対応する角度Ωによって特定される。固定参照座標系Roは、局所的参照座標系にある機械10の休止相での初期参照に対応している。局所的参照座標系R(x,y)における機械10の角度Ω及び座標は、レーザ・ジャイロメータ56によって与えられる。
【0091】
固定参照座標系Roは、軸OXo、OYoの方向をそれぞれ表わす一組の単位ベクトル(i,j)によって特徴付けられる。一実施形態では、固定参照座標系Roは、検査台14がフレーム15を通じて床面に固定されているときに当該検査台14に結び付けられる参照デカルト座標系である。この場合には、固定参照座標系のx軸OXoは検査台14の水平面に対応する。一変形では、固定参照座標系Roは処置室9における任意の不定の予め画定されている参照デカルト座標系であってよい。
【0092】
読み取りシステム59は通信バス88によって処理ユニット50に結合されており、角度Ω及び局所的参照座標系に対する機械10の座標についての情報要素を送信する。これらの情報要素は機械10の絶対位置を構成する。
【0093】
処理ユニット50は、機械10の絶対位置及び従うべき経路67の関数としてエネルギの供給を管理しつつ車輪36固有の主電動機34及び方向電動機42を駆動する。
【0094】
レーザ・ジャイロメータ56の完全な1回転時には可動台16が移動しているので、絶対位置の測定は、位置を改善するように他の測定によって補足されなければならない。
【0095】
これらの補足的測定を得るために、方向電動機42に角度位置センサ60を設ける。この角度センサ60を用いて、各々の瞬間での駆動輪及び方向輪36の配向を求める。角度位置センサ60は多くの形式のものであってよく、例えば光学センサ、及びレゾルバ形式又はシンクロ形式の回転変圧器センサ等であってよい。
【0096】
さらに、主電動機34には、車輪速度センサ61も設けられる。センサ60及び61の組の信号から入る情報は、機械10の相対的な位置を構成する。機械10のこの相対的な位置によって、処理ユニット50は、レーザ測定の精度に低下が生じた場合に絶対位置を更新することが可能になる。
【0097】
各々の時間点において、処理ユニット50は、機械10の相対的な位置についてのデータを絶対位置についてのデータと組み合わせることにより、床面に対する各々の車輪の速度の相対的に精密な推定を行なう。
【0098】
主電動機34は主バリエータ62によって制御される。方向電動機42は方向バリエータ63によって制御される。この主バリエータ62及び方向バリエータ63は、通信バス88を通じて処理ユニット50に接続される。バリエータ62及び63は、処理ユニット50から速度及び方向の各指定値をそれぞれ受け取って、各々のモータの電流及び電圧へ変換する。
【0099】
主バリエータ63及び方向バリエータ63を用いて、処理ユニットによって送られた命令の関数として電気的差分を生成する。
【0100】
これらの差分は、二つの車輪36及び37がプログラムされている経路67に沿って走行し得るように、推進力及び回転角度を車輪36と37との間で共有するように設計される。処理ユニット50はバリエータを用いて、特に駆動輪36及び37の測定された速度及び角度方向、並びに操作者の配置についての指定値、X線機械10の絶対位置及び従うべき経路67を表わす情報の関数として、主電動機及び方向電動機の電流を指令する。
【0101】
機械10にはさらに、通信バス88によって処理ユニットと結合された安全システム64が設けられている。安全システム64は一組のセンサ(図示されていない)を有し、これらのセンサの信号が処理ユニット50に伝達されると、このユニットが必要に応じて可動台16及び機械10の移動部材の緊急停止系を制御することが可能になる。これらのセンサは、傾斜計、衝撃センサ及びレーザ・センサ等によって形成され得る。
【0102】
処理ユニット50にはさらに、機械10の移動部材を制御する装置65が結合されている。処理ユニット50と制御装置65との結合は、通信バス88又は無線電気リンクを通じて得られ得る。この制御装置65は、ジョイスティック又はコンピュータであってよい。一変形では、この制御装置65はインタフェイス24に組み入れられていてよい。
【0103】
機械10にはさらに、移動部材の回転速度を検出するセンサ66が設けられている。センサ66は通信バス88を通じて処理ユニット50に結合される。このセンサ66によって処理ユニット50へ伝達される信号によって、処理ユニットは必要に応じて可動台16及び機械10の移動部材の緊急停止系を制御することが可能になる。
【0104】
一実施形態では、緊急停止系の作動には、音声及び/又は光による警報システムが伴い得る。
【0105】
通信バス88は「RS232」形式のシリアル・リンク又はADC(アナログ−ディジタル変換器)リンクであってよい。
【0106】
換言すると、機械10の自動駆動は、各々の主電動機34及び35におけるそれぞれ主エンコーダ61、並びに各々の方向電動機42及び43におけるそれぞれ方向エンコーダ60のような配置センサ、回転レーザ走査センサ56、コンピュータ50、各々のタレット特徴のための主バリエータ62及び方向バリエータ63、安全センサ、並びに最後に主電動機34及び35及び方向電動機42及び43であるアクチュエータから成るハードウェア系列によって具現化され得る。
【0107】
このように、本書で以上に記載された本発明の実施形態は二つの別個のナビゲーション・システムを具現化している。ナビゲーション・システムの一方は、主エンコーダ及び方向エンコーダから得られる。他方のナビゲーション・システムは、回転レーザ走査センサから得られる。このナビゲーション・システムの冗長性のため、X線機械の絶対位置を指定するのみならず機械10の安全システムを改善することが可能になっている。実際に、回転レーザ・センサによって与えられる位置とエンコーダによって与えられる位置との間の差が予め画定されている安全閾値よりも大きいときには、処理ユニットは機械10の移動部材及び可動台16の緊急停止系を作動させる。
【0108】
処理ユニット50は、プログラム可能な規準に従ってモータの電流を決定し、また機械10の管理及び安全性に関する付加的な作用を満たすようにプログラムされているコンピュータ装置、例えばマイクロコンピュータである。
【0109】
記載では、作用が各装置又は各プログラムに帰属するときには、これらの作用は当該装置又は当該プログラムを含む装置のマイクロプロセッサによって実行され、次いで、このマイクロプロセッサが装置のメモリに記録されている命令コードによって制御されることを意味する。これらの命令コードを用いて装置の手段を具現化し、従って担当される作用を果たす。
【0110】
図50に示すように、処理ユニット50は、アンテナ52に接続された電子回路70を含んでいる。この回路の役割は、処理ユニットと外部インタフェイスとの間の無線インタフェイスを提供することにある。
【0111】
処理ユニットはさらに、双方向バス74に接続されたマイクロプロセッサ71、プログラム・メモリ72及びデータ・メモリ73を含んでいる。プログラム・メモリ72は幾つものゾーンに分割され、各々のゾーンがX線機械10及び可動台16のプログラムの作用又は動作モードに対応する。同様に、作用がプログラムに帰属されるときに、この作用は、プログラムを形成する命令コードの全部又は一部として当該プログラムを記録したメモリに接続されているマイクロプロセッサによる具現化に対応する。
【0112】
本発明の実施形態に最も直接的に関わるメモリ72のゾーンのみを示す。
【0113】
ゾーン75は、X線機械10の配置又は目的地の指定値の入力に対応する移動信号を受け取る命令コードを含んでいる。配置の指定値は、停留位置又は作動位置を機械10の移動部材の配向と結合したものであってよい。
【0114】
ゾーン76は、移動信号の受信後にレーザ・ジャイロメータに命令する命令コードを含んでいる。
【0115】
ゾーン77は、固定参照座標系において受信信号に基づいてデータ・メモリ34からX線機械10によって達成されるべき位置の座標を抽出する命令コードを含んでいる。
【0116】
ゾーン78は、固定参照座標系での機械10の初期絶対位置を決定するためにレーザ・ジャイロメータによって与えられる情報を解釈する命令コードを含んでいる。
【0117】
決定される初期位置がデータ・メモリに予め記録されている如何なる停留位置又は作動位置にも対応しないときには、ゾーン78の命令コードは、位置の一方すなわち停留位置又は作動位置に達するために可動台16が取るべき経路を、エンコーダ及びレーザ・ジャイロメータによって与えられるデータに基づいて算出する。一実施形態では、処理ユニットは、初期位置に最も近い作動位置又は停留位置に達するのに必要とされる最短経路を算出する。ゾーン79は、初期位置をX線機械10が達すべき位置と結ぶために機械10が取らなければならない経路67をデータ・メモリ34から抽出する命令コードを含んでいる。
【0118】
ゾーン80は、機械10の相対位置を、可動台16に設置されるセンサによって与えられるデータの関数として決定する命令コードを含んでいる。
【0119】
ゾーン81は、各々の主電動機34及び35、並びに各々の方向電動機42及び43に対し、機械10の相対位置、初期位置及び従うべき経路67の関数として電流を電力バリエータを通じて与える命令コードを含んでいる。
【0120】
ゾーン82は、従うべき経路67全体にわたって予め画定されている計算周期において機械10の絶対位置及び相対位置を算出する命令コードを含んでいる。計算周期は数ミリ秒程度であってよい。
【0121】
ゾーン83は、データ・メモリ73から処置室9の予め決められたマッピングを抽出する命令コードを含んでいる。
【0122】
ゾーン84は、ゾーン83の命令コードによって与えられるデータの関数としてマッピングにおける機械10の位置を各々の計算周期において決定する命令コードを含んでいる。ゾーン84の命令コードは、従うべき経路をマッピングに重ねて、機械10の位置が実質的に経路内にあるか否かを決定する。偏向が生じた場合には、これらの命令コードは従うべき経路67への可動台16の移動を命令する補償命令をバリエータに送信する。
【0123】
このように、本実施形態では、本発明は、予め算出されている抽出された経路67に沿って機械10を移動させることを可能にする。ゾーン84の命令コードによって具現化されるガイド作用によって、位置決め動作から得られる測定と従っている経路との間の位置の差を評価しつつ経路における絶対位置を保つ。ここから得られる位置的方向命令をバリエータに印加すると、バリエータが自ら、位置及び速度についての電動機の自動帰還制御を設定する。
【0124】
ガイドに加えて、経路に沿った主速度のスケジューリングを行なうと共に呼応してバリエータに制御命令を送信するために、ゾーン84の命令コードによってナビゲーション作用を具現化することができる。このように、バリエータは主電動機と方向電動機との間の自動帰還制御を設定する。
【0125】
安全作用の一部は、方向と主との間の結合によってこのレベルで具現化される。この場合には、経路67において測定される絶対位置の偏りが予め画定されている偏差の閾値以上であるときに、完全停止するまで可動台16の速度を減速させる。
【0126】
ゾーン85は、機械10が目標位置に到達するとレーザ・ジャイロメータを停止させる命令コードを含んでいる。これらの命令コードはまた、車輪が予め画定されている休止位置に整列するように方向バリエータに制御命令を送る。
【0127】
ゾーン86は、配置指定値から、X線機械の到達した作動位置に対応する移動部材の動作配向信号を抽出する命令コードを含んでいる。ゾーン86の命令コードはまた、制御装置65の配向命令の作動に対応するX線機械の移動部材についての動作配向信号の受信を受け入れることが可能である。
【0128】
ゾーン87は、配向信号の関数として移動部材を駆動するシステムを制御する命令コードを含んでいる。この駆動系は、アーム13、回転アーム18、支持要素17及び可動台16を移動させることを可能にする。これらの部材の移動は配向信号の関数として行なわれ、診断を通じて被検器官がX線ビーム内に配置された状態になるような方法で行なわれる。一実施形態では、可動台16を移動させている相において駆動系を作動させてもよい。
【0129】
データ・メモリ73は、機械10の予め決められた停留位置及び作動位置が記録されたデータベース90を有する。これら予め決められた位置は、インタフェイス制御部によって画面に表示される。停留位置は、X線機械10が停留モードにあるときに配置される位置である。停留位置は、処置室9での作業に必要とされる限定された空間からX線機械を除去する。作動位置は、X線機械10が放射線撮影曝射の取得時に配置される位置である。
【0130】
データベース90は、例えば表の形態に構造化される。例えば、表の各々の行は、固定参照座標系でのX線機械の位置の座標に対応し、表の各々の列は、この位置についての情報に対応する。このように、データベース90は、
・固定参照座標系での位置の座標に対応する行90a、
・作動位置の信号が記録された第一の欄と、X線機械10の移動部材の予め決められた作動時配向に対応する配向信号が記録された第二の欄と、従うべき経路が記録された第三の欄とを含む列90b、並びに
・停留信号が記録された第一の欄と、従うべき経路が記録された第二の欄とを含む列90c
を含んでいる。
【0131】
作動時配向は、アーム13、回転アーム14、支持要素17及び可動台16が配向信号に従って放射線撮影位置まで移動させられるようなX線機械の構成である。この移動は、X線ビームに対する被検器官の位置には影響しない。
【0132】
データ・メモリ73はまた、処置室9のマッピングが記録されているデータベース91を有する。
【0133】
データベース/メモリ・ベースを、構成要素のレイアウト及びデータ記録の説明によってのみ表現した。実際には、これらのメモリは、データベースの容量の制約及び/又は所望の処理動作の速度に従って統合されたり分散されたりする。
【0134】
本発明は、本書で以上に記載された各実施形態に限定されない。実際に、一実施形態では、マン・マシン・インタフェイス24が、二つの直交する方向に沿った自由度及び角度θでの一つの回転自由度の三つの自由度を有するジョイスティック形式の制御桿によって補足され又は置き換えられてもよい。ジョイスティックは可動台16に装着されても一定の距離に隔設されていてもよい。
【0135】
ジョイスティックと処理ユニット50との間の通信は、本発明の各実施形態に依存して無線電気リンク又はシリアル・リンクのような有線リンクを通じて行なわれ得る。ジョイスティックは処理ユニット50に、バリエータ用の制御信号を送信する。
【0136】
ジョイスティックは、基台ユニットと、あらゆる方向に傾斜され得る可動把手を形成するユニットとを含んでいてよく、幾つもの自由度に沿って操縦され得る。基台ユニットに対して把手を形成するユニットを移動させる効果の下で、処理ユニットは主バリエータ62及び方向バリエータ63に対し、それぞれ速度の指定値及び方向の指定値を送り、これらの指定値は各々のモータについて電流及び電圧に変換される。基台ユニットに対して把手を形成するユニットを一つの方向に移動させると、処理ユニット50にプログラムされている移動の方向に依存して可動台16を一つの方向又は他の方向に移動させる命令が作動する。
【0137】
このように、ジョイスティックは、処理ユニット50によって受信される信号に従って処置室9での可動台16の移動を制御することが可能である。
【0138】
レーザ・ジャイロメータによって処理ユニット50に提供されるデータを用いて、例えば検査台14との衝突可能性を防ぐために処置室9での機械10の地理的位置を実時間で求めることができる。
【0139】
代替的な一実施形態では、インタフェイス24は、二つの直交する方向及び角度θによる回転において可動台16の移動を操縦することが可能な遠隔制御無線形式制御桿によって補足され又は置き換えられてもよい。
【符号の説明】
【0140】
9:ハイブリッド型処置室
10:血管検査型X線機械
11:X線管
12:検出器
13:アーム
14:検査台
15:フレーム
16:可動台
17:支持要素
18:回転アーム
19:昇降機
20:支持アーム
21:上端
22:接合手段
23:裏面
24:マン・マシン・インタフェイス
25:下端
26:剛性金属構造(Y字形ユニット)
27:台板
28、29:アーム
30:構造支持材
31:水平板
32、33:孔
34、35:主電動機
36:駆動輪
37:方向輪
38:自在輪
39:支持構造
40:横断材
41:鉛直強化部材
42、43:方向電動機
44:カバー
45:スペーサ
46:上部部材
47:回転ピン
48:鉛直回転軸
49:制動装置
50:処理ユニット
51:DC電源又は整流電源
52:タレット特徴
52(図4):アンテナ
53:タッチスクリーン
54:インタフェイス制御部
55:緊急停止ボタン
56:光学位置センサ
57:連結柱
58:レーザ・ビーム反射体
59:読み取りシステム
60:角度位置センサ
61:車輪速度センサ
62:主バリエータ
63:方向バリエータ
64:安全システム
65:移動部材制御装置
66:回転速度センサ
67:経路
68:パルス型の入射レーザ・ビーム
69:アイソセンタ
70:電子回路
71:マイクロプロセッサ
72:プログラム・メモリ
73:データ・メモリ
74:双方向バス
88:通信バス
90:データベース
90a:行
90b:列
90c:列
91:データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
・放出方向に沿ってX線ビームを放出するX線管(11)と、
・前記X線の放出方向に整列しており前記管に対向配置されているX線検出器(12)と
を備えたX線機械(10)を装着させるための可動台(16)であって、該可動台は、
・主電動機(34、35)及び方向電動機(42、43)によりそれぞれ駆動される二つの配向自在型駆動輪(36、37)を少なくとも含んでおり、
・前記電動機は処理ユニット(50)に結合されており、
・該処理ユニットは、目的地についての指示値、軌跡についての指定値、及び前記X線機械の位置についてのデータを入力するように構成されており、前記位置についてのデータは、少なくとも一つのセンサ(56、60、61)により与えられ、前記処理ユニットはまた、出力において各々の車輪のそれぞれの方向及び速度を発生するように構成されている
ことを特徴とする可動台。
【請求項2】
処置室(9)に予め設置されている反射体(58)からの反射に基づいて、予め画定されている固定参照座標系(Ro)での前記X線機械の位置を算出することが可能な読み取りシステム(59)を含むレーザ・ジャイロメータ(56)を含むことを特徴とする請求項1に記載の可動台。
【請求項3】
前記反射体は反射屈折型の反射体である、請求項1又は2に記載の可動台。
【請求項4】
前記主(61)電動機及び方向(60)電動機にそれぞれ装着されており、前記X線機械の位置に対するデータを提供することが可能な主エンコーダ及び方向エンコーダを含むことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の可動台。
【請求項5】
・前記X線機械が固定されるように設計されている上端(21)を含む支持アーム(20)と、
・車輪により前記床に載置されて、前記支持アームと共に組み立てられている構造部材の組(26)と
を含む支持構造(39)を含んでおり、
・前記支持アーム及び前記部材の組は、前記支持アームに比較して前記ユニットに機械的剛性を与えるように構成されている
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の可動台。
【請求項6】
前記構造部材の組は、
・前記支持アームに固定されており、前記電動機を設置するための水平板を含む台板(27)と、
・該台板に固定的に接合されている横断材(40)と、
・角度を有し、前記横断材に固定的に接合されている2本のアーム(28、29)であって、前記装置の前部に位置している2本のアームを備えた要素と
を含むことを特徴とする請求項5に記載の可動台。
【請求項7】
前記2本のアームを備えた要素は、
・当該アームの前端が前記管の位置の何れにおいても前記管と衝突せず、また
・前記管と前記装置のアイソセンタとの間の距離が最大化される
ように所定の距離に配置される
ことを特徴とする請求項6に記載の可動台。
【請求項8】
前記アームの端辺及び前記横断材の端辺は、横方向横断材に対応する鉛直強化部材(41)により補強されていることを特徴とする請求項6又は7に記載の可動台。
【請求項9】
前記横断材と前記台板との間の固定的接合の位置にプラスチック型可撓性材料がさらに挿入され得ることを特徴とする請求項6〜8の何れか一項に記載の可動台。
【請求項10】
自在輪(38)が前記床面に面した面において各々のアーム(28、28)の一端に装着されており、該装着は、前記車輪の回転軸(48)が前記床面において前記車輪の支持台に対して偏心して位置するように行なわれていることを特徴とする請求項6〜9の何れか一項に記載の可動台。
【請求項11】
前記自在輪の回転を阻止して停止した状態に保つように前記自在輪に装着された制動装置(49)を含むことを特徴とする請求項10に記載の可動台。
【請求項12】
前記支持構造に固定された下端と、前記レーザ・ジャイロメータを担持した上端とを有する連結柱(57)を含むことを特徴とする請求項5〜11の何れか一項に記載の可動台。
【請求項13】
前記処理ユニットに接続されて目的地の指定値及び/又は軌跡の指定値を入力するためのマン・マシン・インタフェイス(24)を含むことを特徴とする請求項1〜12の何れか一項に記載の可動台。
【請求項14】
前記マン・マシン・インタフェイスは、前記可動台に埋め込まれている、又は前記可動台から一定の距離に位置していることを特徴とする請求項13に記載の可動台。
【請求項15】
前記マン・マシン・インタフェイスはタッチスクリーン、ジョイスティック及び/又は遠隔制御ユニットであることを特徴とする請求項13又は14に記載の可動台。
【請求項16】
バッテリ(51)又は主電源を通じて電力を供給されることを特徴とする請求項1〜15の何れか一項に記載の可動台。
【請求項17】
衝突防止センサ及び傾斜センサ(66)を含む安全システムをさらに含むことを特徴とする請求項1〜16の何れか一項に記載の可動台。
【請求項18】
・放出方向に沿ってX線ビームを放出するX線管(11)と、
・該管に対向して前記X線の放出方向に配置されているX線検出器(12)と
を備えており、請求項1〜17の何れか一項に記載の可動台(16)に装着されていることを特徴とするX線機械(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2013−512065(P2013−512065A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541593(P2012−541593)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際出願番号】PCT/IB2010/003012
【国際公開番号】WO2011/067648
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】