説明

可動接点付シートおよびプッシュスイッチ

【課題】突起部を構成している樹脂塊をシート部材から取れにくくすることができる可動接点付きシート、および、これを用いたプッシュスイッチを提供すること。
【解決手段】ドーム状の可動接点5をシート部材7が覆っている。可動接点5とシート部材7は粘着されている。可動接点5の頂部と重なって位置するシート部材7の部分に突起部10が設けられている。この突起部10は、可動接点5の方向とは反対方向に突出し可動接点5側に底部11bが位置するようシート部材7に形成された凹状の充填部11と、この充填部11に充填されて硬化した樹脂塊12と、充填部11と樹脂塊12を係合させる係合手段14とを有する。係合手段14は、充填部11の筒状面11bに形成された溝14aと、この溝14a内で硬化した樹脂塊12の一部である鍔状部14bとから構成され、樹脂塊12が充填部11から抜け出るのを阻止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話等の電子機器に実装されるプッシュスイッチであって、シート部材で覆われた可動接点をそのシート部材越しに押圧し弾性変形させることで固定接点に接触させるプッシュスイッチ、および、そのプッシュスイッチの部品である可動接点付きシートに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のプッシュスイッチにおいて、固定接点は基板に設けられている。可動接点は弾性を有するドーム状の部材であり、固定接点を覆って基板上に位置する。この可動接点はシート状のスペーサ部材に包囲されていて、このスペーサ部材は基板に対して固定されている。シート部材は可動接点およびスペーサ部材を覆って位置する。このシート部材には、可動接点の頂部およびスペーサ部材が貼り付けられている。
【0003】
可動接点が固定接点に接触する際の弾性変形のとき、操作者にはクリック感触が与えられる。そのクリック感触は、可動接点の頂部が押圧されれば鋭く適切な感触として操作者に与えられるが、可動接点が頂部から外れて押圧された場合には鈍い不適切な感触として操作者に与えられたり、クリック感触としては認識されない感触になったりする。そこで、可動接点の頂部と重なって位置するシート部材の部分に、可動接点の方向とは反対方向に突起した突起部を設けて、キーから可動接点に伝達される押圧操作力を可動接点の頂部に集中させるようにしたものがある。
【0004】
その突起部は樹脂塊から成っている。この樹脂塊は、シート部材に形成された椀状の凹部に紫外線硬化樹脂等の溶融樹脂を盛り付け、硬化させたものである。
【0005】
この種のプッシュスイッチについては、例えば特許文献1を参照されたい。
【0006】
なお、この種のプッシュスイッチの作製時には、一方の面に粘着層が設けられたシート部材と、その粘着層によりシート部材に貼り付けられた可動接点とを有し、固定接点および基板を有さない可動接点付きシートが、1つの部品として扱われる。この可動接点付きシートを、固定接点が設けられた基板に貼り付けることによって、可動接点およびスペーサ部材を基板に容易に設けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】登実第3021191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
シート部材越しに可動接点を押し動かすことが繰り返されると、シート部材と樹脂塊との間の接着力が弱まって、樹脂塊が剥がれ取れてしまう。
【0009】
本発明は前述の事情を考慮してなされたものであり、その目的は、突起部を構成している樹脂塊をシート部材から取れにくくすることができる可動接点付きシートおよびプッシュスイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述の目的を達成するために本発明は次のように構成されている。
【0011】
〔1〕 本発明の可動接点付きシートは、ドーム状の可動接点と、この可動接点を覆って位置し前記可動接点が粘着されたシート部材とを有し、前記可動接点の頂部と重なって位置する前記シート部材の部分に、前記可動接点の方向とは反対方向に突起した突起部が設けられた可動接点付きシートであって、前記突起部は、前記シート部材に形成され前記可動接点の方向に凹んだ充填部と、この充填部に充填されて硬化した樹脂塊と、前記充填部の内面と前記樹脂塊を係合させて、前記樹脂塊が前記充填部から抜け出るのを阻止する係合手段と、を有することを特徴とする。
【0012】
この「〔1〕」に記載された本発明は、係合手段により充填部から樹脂塊が抜け出るのを阻止するので、樹脂塊をシート部材から取れにくくすることができる。
【0013】
〔2〕 本発明の可動接点付きシートは、「〔1〕」に記載の可動接点付きシートにおいて、前記係合手段は、前記充填部の内面に形成されて前記充填部の凹み方向に対し交差する方向に凹んだ溝と、この溝内で硬化した樹脂塊の一部とから成っていることを特徴とする。
【0014】
この「〔2〕」に記載された可動接点付きシートは、樹脂塊に充填部から抜け出る方向の力が作用したとき、充填部内面の溝と、この溝内に位置する樹脂塊の一部とが引っ掛かることになり、これによって、充填部から樹脂塊が抜け出るのを阻止できる。
【0015】
〔3〕 本発明の可動接点付きシートは、「〔1〕」に記載の可動接点付きシートにおいて、前記充填部の周囲に位置する前記シート部材の部分と前記可動接点の部分との間に空隙が形成されていることを特徴とする。
【0016】
この「〔3〕」に記載された可動接点付きシートにおいては、可動接点が固定接点の方向に凹んだ状態からドーム状に復元する際、シート部材が突っ張って可動接点の円滑な復元の妨げになることを防止できる。
【0017】
〔4〕 本発明のプッシュスイッチは、「〔1〕」〜「〔3〕」のいずれか1に記載の可動接点付きシートと、基板と、前記基板の一方の面に設けられた固定接点とを有し、前記可動接点付きシートは、前記可動接点と前記固定接点とが対向して位置した状態で前記基板に貼り付けられていることを特徴とする。
【0018】
この「〔4〕」に記載されたプッシュスイッチによれば、「〔1〕」〜「〔3〕」のいずれか1に記載の可動接点付きシートを有するので、樹脂塊をシート部材から取れにくくすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、前述のように、突起部を構成している樹脂塊をシート部材から取れにくくすることができる。したがって、プッシュスイッチの長寿命化および信頼性の向上に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係るプッシュスイッチの断面図である。
【図2】図1に示したプッシュスイッチからキーを省いた断面図である。
【図3】図2に示した状態のプッシュスイッチが複数、平面状に一体化されたものを示す上面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る可動接点付きシートが保管されるときの状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施形態に係るプッシュスイッチおよび可動接点付きシートついて図1〜図4を用いて説明する。
【0022】
図1に示すように、プッシュスイッチ1は、基板2を有する。この基板2の一方の面には、中央固定接点3と、この中央固定接点3を包囲して位置する環状固定接点4とが設けられている。
【0023】
中央固定接点3は可動接点5で覆われている。この可動接点5は、ドーム状に形成された金属部材が良導電性材料でメッキされたものであり、中央固定接点3から離れる方向に膨らんだ皿状部5aと、この皿状部5aの縁部全体に形成されて、環状固定接点4の方向に末広がり状を成した環状部5bとを有する。環状部5bは環状固定接点4に接触して位置する。可動接点5は、頂部が凹む弾性変形により、すなわち皿状部5aが中央固定接点3の方向に膨らんだ状態に反転することにより中央固定接点3に接触し、この結果、中央固定接点3と環状固定接点4とが可動接点5を介して導通する。
【0024】
可動接点5および環状固定接点4はシート状のスペーサ部材6により包囲されている。スペーサ部材6は、例えば絶縁材料であるPET(ポリエチレンテレフタレート)から成形されたものである。このスペーサ部材6には粘着剤が塗布されて形成された粘着層6aが設けられていて、この粘着層6aによりスペーサ部材6は基板2に貼り付けられている。可動接点5とスペーサ部材6は、基板2とは反対側の面を、すなわち図1における上側の面をシート部材7により覆われている。このシート部材7は、例えば絶縁材料であるPET(ポリエチレンテレフタレート)から成形されて、伸縮性を有する。シート部材7の可動接点5およびスペーサ部材6側の面全体には、粘着剤が塗布されて形成された粘着層7aが設けられている。可動接点5の頂部は、その粘着層7aによりシート部材7に貼り付けられている。スペーサ部材6も粘着層7aによりシート部材7に貼り付けられている。可動接点5がシート部材7に貼り付けられ、スペーサ部材6がシート部材7に貼り付けられた状態で基板2に貼り付けられていることによって、可動接点5は中央固定接点4を覆い環状固定接点4に接触した状態に位置決めされている。
【0025】
シート部材7は、可動接点5およびスペーサ部材6側とは反対側の面を、シート状のライトガイド部材9により覆われている。シート部材7とライトガイド部材9も粘着剤により貼り付けられている。
【0026】
可動接点5の頂部と重なって位置するシート部材7の部分には、可動接点5の方向とは反対方向に突起した突起部10が設けられている。この突起部10は、シート部材7に形成され可動接点5の方向に凹んだ充填部11と、この充填部11に充填されて硬化した樹脂塊12とを有する。
【0027】
充填部11の内面は、充填部11の凹み方向に対し略平行に広がった内側面11aと、凹み方向に対し略直交する方向に平坦に広がって形成された底部11bとから構成され、全体として有底の筒状を成している。
【0028】
樹脂塊12は、例えば紫外線硬化樹脂を硬化したものである。この樹脂塊12の成形の手順としては、まず、充填部11に紫外線硬化樹脂(溶融樹脂)を充填し、次に、充填部11に充填された紫外線硬化樹脂に紫外線を照射して硬化させる、という手順が採られる。
【0029】
突起部10には、充填部11の内面と樹脂塊12とを係合させる係合手段14が設けられている。この係合手段14は、充填部11の内側面11aに形成されて充填部11の凹み方向に交差する方向に凹んだ溝14aと、この溝14a内で硬化した樹脂塊12の一部である鍔状部14bとから成っている。溝14aは、開口部11cの縁11dと底部11bとの間の位置に形成されている。溝14aを有する充填部11の成形手順としては、まず、溝14aをシート部材7にエンボス加工により成形し、次に、内側面11aおよび底部11bをエンボス加工により成形する、という手順が採られた。
【0030】
可動接点5は、充填部11の底部11bに対向して位置する頂部と、充填部11の底部11bの外周側に位置する部分とにおいて、粘着層7aによりシート部材7に貼り付けられている。これにより、可動接点5が貼り付けられた部分の間において、シート部材7には充填部11の縁11dから基板2の方向に傾斜した傾斜部8が形成されるようになる。つまり、充填部11の周囲に位置するシート部材7の部分と可動接点5との間に空隙13が形成されることとなる。
【0031】
基板2側と反対側に位置するライトガイド部材9の面に対しては、キー16(押釦)が対向して位置する。このキー16と突起部10は、ライトガイド部材9を挟んで対向して位置する。キー16は、突起部10の方向に突出した押し子16aを有する。キー16が矢印P方向に押圧操作されると、押し子16aがライトガイド部材9およびシート部材7を弾性変形させつつ、ライトガイド部材9および突起部10越しに可動接点5を押圧し、これにより、可動接点5は反転して中央固定接点3に接触する。キー16に対する押圧操作力が除去されると、ライトガイド部材9およびシート部材7は復元し、可動接点5も反転した状態から復元して中央固定接点3から離れる。
【0032】
複数のプッシュスイッチ1が携帯電話等の電子機器に平面状に配列されて設けられる場合、それら複数のプッシュスイッチ1は平面状に一体化された状態でその電子機器に設けられるのが一般的である。その一体化においては、可動接点5、中央固定接点3および環状固定接点4を一組とする複数の組が、基板2、シート部材7およびライトガイド部材9を共有する形態が採られる(図3参照)。なお、ライトガイド部材9は端面から受光した光をその内部で導くものであり、上面視において可動接点5を包含する円形の光放射領域15から光を放つようになっている。図2は図3A−A断面を拡大した図である。
【0033】
また、シート部材7に可動接点5、スペーサ部材6およびライトガイド部材9が貼り付けられ、スペーサ部材6に粘着層6aが設けられたもの、すなわち、プッシュスイッチ1から、基板2、中央固定接点3、環状固定接点4、およびキー16を除いたものは、可動接点付きシート20を構成している。この可動接点付きシート20は、プッシュスイッチ1の作製の際に1つの部品として扱われる。可動接点付きシート20を、中央固定接点3および環状固定接点4が設けられた基板2に貼り付けることによって、スペーサ部材6、ライトガイド部材9および可動接点5を基板2に容易に設けることができる。
【0034】
図4に示すように、可動接点付きシート20は基板2に貼り付けられる前、ライトガイド部材9とは反対側の面全体が保護シート部材21により覆われた状態で保管されている。その保護シート部材21は粘着層6aによりスペーサ部材6に貼り付けられている。保護シート部材21のスペーサ部材6側の面は、プッシュスイッチ1の作製の際、粘着層6aをスペーサ部材6に残した状態で剥がすことができるよう加工されている。
【0035】
本実施形態に係るプッシュスイッチ1および可動接点付きシート20によれば次の効果を得られる。
【0036】
可動接点付きシート20およびプッシュスイッチ1は、係合手段14により充填部11から樹脂塊12が抜け出るのを阻止するので、樹脂塊12をシート部材から取れにくくすることができる。これにより、プッシュスイッチ1の長寿命化および信頼性の向上に貢献できる。
【0037】
可動接点付きシート20およびプッシュスイッチ1において、係合手段14は、充填部11の内面に形成されて充填部11の凹み方向に交差する方向に凹んだ溝14aと、樹脂塊12の鍔状部14bとから成っている。つまり、樹脂塊12に充填部11から抜け出る方向の力が作用したとき、充填部11内面の溝14aと、この溝14a内に位置する鍔状部14bとが引っ掛かることになり、これによって充填部11から樹脂塊12が抜け出るのを阻止できる。
【0038】
可動接点付きシート20およびプッシュスイッチ1において、溝14aの位置は開口部11cの縁11dと底部11bとの間の位置に設定されている。つまり、可動接点5に対する突起部10の接触面積を広げることなく係合手段14を設けることができ、係合手段14を設けたことに伴ってクリック感触が鈍くなることを防止できる。
【0039】
可動接点付きシート20およびプッシュスイッチ1において、充填部11の周囲に位置するシート部材7の部分と、頂部の周囲に位置する可動接点5の部分との間には、空隙13が形成されている。これにより、可動接点5が中央固定接点3の方向に凹んだ反転状態からドーム状に復元する際、シート部材7が突っ張って可動接点5の円滑な復元の妨げになることを防止できる。
【符号の説明】
【0040】
1 プッシュスイッチ
2 基板
3 中央固定接点
4 環状固定接点
5 可動接点
5a 皿状部
5b 環状部
6 スペーサ部材
6a 粘着層
7 シート部材
7a 粘着層
8 傾斜部
9 ライトガイド部材
10 突起部
11 充填部
11a 内側面
11b 底部
11c 開口部
11d 縁
12 樹脂塊
13 空隙
14 係合手段
14a 溝
14b 鍔状部
15 光放射領域
16 キー
16a 押し子
20 可動接点付きシート
21 保護シート部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドーム状の可動接点と、この可動接点を覆って位置し前記可動接点が粘着されたシート部材とを有し、前記可動接点の頂部と重なって位置する前記シート部材の部分に、前記可動接点の方向とは反対方向に突起した突起部が設けられた可動接点付きシートであって、
前記突起部は、前記シート部材に形成され前記可動接点の方向に凹んだ充填部と、この充填部に充填されて硬化した樹脂塊と、前記充填部の内面と前記樹脂塊を係合させて、前記樹脂塊が前記充填部から抜け出るのを阻止する係合手段と、を有する
ことを特徴とする可動接点付きシート。
【請求項2】
請求項1に記載の可動接点付きシートにおいて、
前記係合手段は、前記充填部の内面に形成されて前記充填部の凹み方向に交差する方向に凹んだ溝と、この溝内で硬化した樹脂塊の一部とから成っている
ことを特徴とする可動接点付きシート。
【請求項3】
請求項1に記載の可動接点付きシートにおいて、
前記充填部の周囲に位置する前記シート部材の部分と前記可動接点の部分との間に空隙が形成されている
ことを特徴とする可動接点付きシート。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の可動接点付きシートと、基板と、前記基板の一方の面に設けられた固定接点とを有し、
前記可動接点付きシートは、前記可動接点と前記固定接点とが対向して位置した状態で前記基板に貼り付けられている
ことを特徴とするプッシュスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−257600(P2010−257600A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−103169(P2009−103169)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】