説明

可動柵装置

【課題】可動柵の数に対して少ない駆動装置で動作させることができ、しかも車両のドア位置の違いに対応して必要な箇所を開閉できる可動柵装置を提供する。
【解決手段】平行な第1、第2、第3の移動路4と、第1の移動路に沿って往復移動する第1の可動柵5aと、第2の移動路に沿って往復移動する第2の可動柵5bと、第3の移動路に沿って往復移動する第3の可動柵5cと、これら第1、第2、第3の可動柵を上記第1、第2、第3の移動路のそれぞれ一端部、中央部、他端部に順次ずらせて直列的に配置することにより閉塞状態を形成し、これら第1、第2、第3の可動柵の内、少なくとも任意の2つを移動させて、該第1、第2、第3の可動柵を上記第1、第2、第3の移動路の長さ方向における任意の1箇所に集合させることにより複数の開放状態を形成させる駆動装置7とを備えるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鉄道の旅客乗降のためのプラットホームと列車が走行する軌道とを隔離する可動柵装置に関し、特に停車する列車によって車両のドア位置やドア数などが異なる場合にも対応可能な可動柵装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の可動柵装置としては、例えば、プラットホームの長手方向に直交する方向に複数のホームドアをずらせて2列に配設し、両列のホームドアによって前記列車の軌道上の空 間とプラットホーム上の空間とを仕切る。複数のホームドアすべてをリニアモータにて移動可能となるように構成する。プラットホームに停止する列車の種別及び停止位置に応じて、移動させるホームドアを選択して、停止する列車のドア開口位置に対向するホームドアを移動(開動作)させて、列車のドア開口位置に対応するホームドア開放区間を形成するようにしたものがある(例えば特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−362354号公報(第1頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来の可動柵装置においては、ドア位置やドア数などが異なる場合にも適用できるように構成されているが、ホームドア、即ち可動柵の全てにリニアモータを設ける必要があるため、制御装置が大掛かりとなり、コストも嵩むという課題があった。
【0005】
この発明は、上記のような従来技術の課題を解消するためになされたものであり、可動柵の数に対して少ない駆動装置で動作させることができ、しかも車両のドア位置の違いに対応して必要な箇所を開閉できる可動柵装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明による可動柵装置は、互いに平行で所定長に設けられた第1、第2、及び第3の移動路と、上記第1の移動路に沿って往復移動するように設けられた第1の可動柵と、上記第2の移動路に沿って往復移動するように設けられた第2の可動柵と、上記第3の移動路に沿って往復移動するように設けられた第3の可動柵と、これら第1、第2、及び第3の可動柵を上記第1、第2、及び第3の移動路のそれぞれ一端部、中央部、及び他端部に順次ずらせて直列的に配置することにより閉塞状態を形成し、これら第1、第2、及び第3の可動柵の内、少なくとも任意の2つを移動させて、該第1、第2、及び第3の可動柵を上記第1、第2、及び第3の移動路の長さ方向における任意の位置に集合させることにより開放状態を形成させる駆動装置とを備えるようにしたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明においては、第1、第2、及び第3の可動柵の内、少なくとも任意の2つを移動させて、第1、第2、及び第3の移動路の長さ方向における任意の位置に集合させるように駆動装置を構成したことにより、駆動装置の数を可動柵の数よりも少なく構成することができ、しかも車両のドア位置に応じて所望の箇所を開閉することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1〜図4は、この発明の実施の形態1による可動柵装置の要部を概念的に示すもので、図1(a)は平面図、図1(b)は正面図、図1(c)は側面図、図2〜図4は図1に示す可動柵装置の動作説明図である。なお、各図を通じて同一符号は同一もしくは相当部分を示すものとする。図において、可動柵装置1はプラットホーム2の車両3が通行する軌道寄り端部に設置されている。該可動柵装置1は、互いに平行で所定長に設けられた第1、第2、及び第3の移動路4a、4b、4cと、第1の移動路4aに沿って往復移動するように設けられた第1の可動柵5aと、第2の移動路4aに沿って往復移動するように設けられた第2の可動柵5bと、第3の移動路4cに沿って往復移動するように設けられた第3の可動柵5cと、これら第1、第2、及び第3の可動柵5a、5b、5cを駆動する駆動ユニット6からなる。
【0009】
駆動ユニット6はプラットホーム2の下部に設けられ、第1、第2、及び第3の可動柵5a、5b、5cは、駆動ユニット6内に設けられた第1、第2、及び第3の移動路4a、4b、4cを構成する所定長の第1、第2、及び第3の案内レール41a、41b、41cに対して、それぞれドアローラ54により往復移動可能に設けられ、パネル部材51a、51b、51cがプラットホーム2の上部に突き出るように設けられている。なお、ドアローラ54は、パネル部材51a、51b、51cを固定している基体52a、52b、52cに回動自在に設けられて案内レール41a、41b、41cの上部をそれぞれ走行する主輪541と、同じく該基体52a、52b、52cに回動自在に設けられて案内レール41a、41b、41cの下部側にそれぞれ配設された浮き上がり防止用の補助輪542からなっている。
【0010】
上記第1、第2、及び第3の案内レール41a、41b、41cの長さは、図1(b)に示すように、第1の可動柵5aを第1の案内レール41aの一端部(図の左端部)に、第2の可動柵5bを第2の案内レール41bの中央部に、そして第3の可動柵5cを第3の案内レール41cの他端部(図の右端部)に、それぞれ若干の重ね代を設けて直列的に配設し、プラットホーム2側と軌道側の間を閉塞したときの長さよりも若干短く形成されている。なお、本書では第1、第2、及び第3の区別を、数字の符号にa、b、cを付加することにより行い、以下、特に区別を必要としないときは、例えば移動路4、案内レール41、可動柵5のように呼ぶこととする。
【0011】
上記案内レール41の一端部側下部には第1の駆動モータ81が、案内レール41の他端部側下部には第2の駆動モータ82がそれぞれ設けられ、また、第1の駆動モータ81の下部には第1の張り車931が、第2の駆動モータ82の上部には第2の張り車932がそれぞれ回動自在に設けられている。さらに上記基体52a、52b、52cの下部には、アーム部材53a、53b、53cが下方向にそれぞれ突設されており、図の中央部のアーム部材53bには、動滑車971、972がそれぞれ独立に回動自在に水平方向に並設されている。そして、伝達手段としてのタイミングベルト98の一端部がアーム部材53a下部の固定部121に固定され、他端部方向に順次、動滑車971、第1の駆動モータ81に設けられた第1の駆動ローラ91R、第2の張り車932、動滑車972、第2の駆動モータ82に設けられた第2の駆動ローラ92R、及び第1の張り車931に巻き掛けられ、他端部は上記一端部と同じアーム部材53a下部の固定部121に固定されている。なお、上記タイミングベルト98は無端状のものでもよい。
【0012】
上記第3の可動柵5cに固定されたアーム部材53cは、可動柵5の閉塞状態では上記タイミングベルト98の第2の張り車932と動滑車972との間における第2の張り車932近傍に固定部122で固定されている。また、第1及び第2の駆動モータ81、82には、図示を省略しているロック機構が具備されている。なお、上記第1及び第2の2つの駆動モータ81、82で駆動モータ8が構成され、上記第1及び第2の駆動ローラ91R、92R、第1の張り車931、第2の張り車932、動滑車971、972、及び伝達手段であるタイミングベルト98で伝達機構9が構成され、該駆動モータ8と伝達機構9で駆動装置7が構成されている。
【0013】
プラットホーム2の内側に位置する第1の可動柵5aの上部には緊急時等に係員が当該1組の可動柵装置の開閉を操作することができる個別操作盤13が設けられ、プラットホーム2の外側に位置する第3の可動柵5cの軌道側には、可動柵5が開いたときの通路に残された乗客等を検知するための支障物センサ装置14が取付けられている。また、駆動ユニット6には、上記個別操作盤13及び支障物センサ装置14に対するケーブル類を保持するための移動ケーブルラック15、可動柵5の移動端部からの逸脱を防ぐストッパ161、162、及び、敷居溝状の移動路4を形成すると共に、プラットホーム2上の乗客等の荷重を支えるための所定数のビーム材17などが設けられている。
【0014】
次に、上記のように構成された実施の形態1の基本的な動作について図2〜図4を参照して説明する。なお、図2〜図4において、可動柵5は上から見た状態を示し、駆動装置7を構成する第1及び第2の駆動モータ81、82、第1、第2の張り車931、932、タイミングベルト98などは、理解を容易にするために図1(b)の正面図と同じ向きに示している。先ず、第1、第2、第3の可動柵5a、5b、5cを移動路4の一端部(図の左端部)側に集合させる場合について説明する。図2(a)に示す閉塞時の状態で、右側の第2の駆動モータ82をロックした後、左側の第1の駆動モータ81を矢印Aで示す時計方向に回転させると、第1の可動柵5aは第2の駆動モータ82がロックされていることにより動かず、第2、第3の可動柵5b、5cは、図2(b)に示すようにタイミングベルト98が矢印A1、A2、A3の方向に送られることにより、図の左方向に移動し、図2(c)のように移動路4の中央部と他端部(右端部)が開放された状態となる。
【0015】
図の右側の第3の可動柵5cは、第1の駆動モータ81で駆動されるタイミングベルト98の矢印A3方向の移動速度で左に動き、中央部の第2の可動柵5bはタイミングベルト98の張り方から、その半分の移動速度で図の左方向に動くものである。なお、可動柵5を閉めるときには、右側の第2の駆動モータ82をロックしたままで、左側の第1の駆動モータ81を反時計周りに回転させることで可動柵5を閉鎖することができる。可動柵5を閉める時に乗客などが取り残されていた場合には、支障物センサ装置14が働いて動作している駆動モータの回転を反転させて危険を回避する。なお、開放スパンが狭くてもよいときは、途中で停止させればよい。なお、矢印Cは第2の駆動モータ82をロックしていることによるタイミングベルト98に働く抗力を示す。また、第2の駆動モータ82をロックする代わりに、第1の可動柵5aをロックしてもよい。
【0016】
図3は、図2とは逆に3つの可動柵5a、5b、5cを移動路4の他端部(図の右端部)に集合させる場合を示し、閉塞時(図3(a)の状態)左側の第1の駆動モータ81をロックし、右側の第2の駆動モータ82を矢印Bで示す時計方向に回転させると、第3の可動柵5cは動かず、第1、第2の可動柵5a、5bは、図3(b)に示すようにタイミングベルト98が矢印B1、B2、B3の方向に送られることにより、図の右方向に移動し、図3(c)のように移動路4の中央部と一端部(左端部)が開放された状態となる。なお、矢印Dは第1の駆動モータ81をロックしていることによるタイミングベルト98に働く抗力を示す。
【0017】
図4は、3つの可動柵5a、5b、5cの内、両側の可動柵5a、5cを同時に開き、3つの可動柵5a、5b、5cを移動路4の中央部に集合させる場合を示している。この場合、図4(a)の閉塞状態から、左右の第1、及び第2の駆動モータ81、82を同時に同じ速度で矢印A、Bで示す時計回りに回転させる。タイミングベルト98は、矢印E1、E2、E3、E4、E5、E6の方向に移動し、中央部の第2の可動柵5bは両側から同じ速度で引かれるために移動せずに留まっており、両側の第1の可動柵5a、第3の可動柵5cが移動路4の中央部の方向に移動し、図4(c)で示すように3つの可動柵5a、5b、5cが何れも移動路4の中央部に集合する。第1、及び第2の駆動モータ81、82は必要な広さに開いたところで停止、あるいは図4(c)の状態で停止させればよい。
【0018】
なお、開いた可動柵を図4(a)の閉塞状態に戻す場合には、左右の第1、及び第2の駆動モータ81、82を同時に同じ速度で反時計回りに回転させればよい。また、上記動作説明では第1、第2、及び第3の3つの可動柵5a、5b、5cを移動路4の一端部(左端部)、中央部、他端部(右端部)に集合させる場合について説明したが、図示省略しているロック機構を解除し、第1、及び第2の駆動モータ81、82の回転速度または回転数、回転方向などを同時に制御することにより、移動路4内の任意の位置に3つの可動柵5a、5b、5cを重ねることもできる。その場合、例えば中央部の第2の可動柵5bの位置を検出する位置センサなどを設けてもよい。なお、実際のプラットホームに設置する際には、上記図1に示す3つの可動柵5a、5b、5cからなる可動柵装置1を1組として、必要な長さ分の可動柵装置1をプラットホーム2の長さ方向に沿って直列に設け、停車する列車の乗降扉位置に対応する可動柵を選択的に開閉すればよい。
【0019】
上記のように、この実施の形態1によれば、第1、第2、及び第3の可動柵5a、5b、5cの内、少なくとも任意の2つを移動させて、移動路4の一端部、中央部、及び他端部の何れか1箇所に集合させるようにしたことにより、3つの可動柵5a、5b、5cを2つの駆動モータで開閉することができ、しかも車両の乗降扉位置に応じて所望の箇所を開閉することができる。また、軌道側の第3の可動柵5cに支障物センサ装置14を設けたので、安全が確保できる。また、内側の可動柵5aには個別操作盤13が設けられているので、緊急時等に個別の対応が可能である。
【0020】
実施の形態2.
図5〜図7はこの発明の実施の形態2による可動柵装置の要部を概念的に説明するもので、図5(a)は車両約1両分の可動柵を全閉した状態を示す平面図、図5(b)はその正面図、図6(a)は通勤電車などの乗降扉31が片側に4枚設けられた4扉車が停車したときの可動柵の開放例を示す平面図、図6(b)はその正面図、図7(a)は車両の長さが図6の場合とは異なり、しかも1扉車が停車したときの可動柵の開放例を示す平面図、図7(b)はその正面図である。図において、奇数の符号で示す可動柵装置1A1、1A3、1A5、及び1A7は、図1に示す可動柵装置1と同様のものである。
【0021】
偶数の符号で示す可動柵装置1A2、1A4、1A6、及び1A8は、図1(a)に示す可動柵装置1における3つの可動柵5a、5b、5cにより閉塞状態を形成するときの順番を左側から5c、5b、5aのように変更した他は、図1に示す可動柵装置1と同様のものである。要するにプラットホーム2の幅方向中心部側から軌道側に閉塞するときの配置の異なる2組の可動柵を交互に直列的に配置して、全閉時に隣接する組の可動柵の端部相互が段違いにならないように配置されている。また、それぞれ公知の技術を利用した列車種別を検知する検知手段と、検知された列車種別と可動柵の開閉位置を対応させたテーブル情報、このテーブル情報に基づいて複数組の可動柵を制御する制御装置、この制御装置に可動柵の開動作または閉動作を指示する開閉スイッチ等を有する集中制御盤とを備えているが、何れも図示省略している。その他の符号は上記実施の形態1と同様であるので説明を省略する。
【0022】
上記のように構成された実施の形態2においては、例えば通勤電車などで多く用いられている4扉車が停車したときは、図6に示すように可動柵装置1A1、1A3、1A5、1A7は3つの可動柵5a、5b、5cを全て移動路4の一端部(左端部)側に集合させ、可動柵装置1A2、1A4、1A6、及び1A8は、3つの可動柵5c、5b、5aを全て移動路4の他端部(右端部)側に集合させることにより、車両3の各乗降扉31に対応する位置を開放することができる。
【0023】
一方、特急用電車で図7に示す1扉車の場合は、図7に示すように車両側に扉がないところに対応する可動柵装置1A1、1A4〜1A6は閉じた状態を保持し、車両3の乗降扉31に凡そ対応している可動柵装置の内、可動柵装置1A2、1A7は3つの可動柵5a、5b、5cを全て左端部側に重ね、可動柵装置1A3、1A8は3つの可動柵5a、5b、5cを全て右端部側に重ねることにより、車両3の乗降扉31前を開くことができる。なお、上記説明のほか、1組の可動柵装置で少なくとも3つの開放状態を作れるので、さらに多様な開放状態を実現できることは明らかである。なお、図示省略している集中制御盤は、可動柵5の開閉動作を列車側の開閉動作と連動させるように構成してもよい。
【0024】
上記のようにこの実施の形態2によれば、列車のドア位置やドア数が異なる場合にも到着した列車の乗降ドアの位置に合わせて、複数組の可動柵装置における個々の可動柵の開く態様を選択的に選ぶことにより、多様な列車に合わせて容易に対応することができる。また、例えば臨時列車やイベント列車などで、テーブル情報にない列車が停車した場合にも個別操作盤13を備えていることにより、該当する可動柵を個別に開閉することができる。また、各組の可動柵装置に支障物センサ装置14を備えているので、駆け込み乗車や、列車のドアが閉まった後に可動柵の中にいる乗客の検知も容易である。
【0025】
実施の形態3.
図8〜図10はこの発明の実施の形態3による可動柵装置の要部を概念的に説明するもので、図8(a)は可動柵を全閉した状態を示す平面図、図8(b)はその正面図、図9(a)は通勤電車などで乗降扉31が片側に6枚設けられた6扉車が停車したときの可動柵の開放例を示す平面図、図9(b)はその正面図、図10(a)は同じ位置に車両の長さが同じでもドア数の異なる4扉車が停車したときの可動柵の開放例を示す平面図、図10(b)はその正面図である。この実施の形態3は、図5に示す可動柵装置1A1、1A7の位置に、可動柵5の横幅L2が他の可動柵装置1A2〜1A6における可動柵5の横幅L1よりも狭い可動柵装置1B1、1B3を配設したものに相当し、その他の構成は略実施の形態2と同様である。
【0026】
上記のように構成された実施の形態3においては、例えば6扉車が停車したとき、図9に示すように、可動柵装置1B1は可動柵5を左端部に集合させ、可動柵装置1B3は可動柵5を右端部に集合させ、他の可動柵装置1A2〜1A6は可動柵5を何れも移動路4の中央部に集めることにより、列車側の6枚の乗降扉31の位置に対応して可動柵5を開閉することができる。一方、同じ位置に4扉車が停車したときは、図10に示すように、可動柵装置1B1、1A3、1A6は可動柵5を移動路4の左端部に集合させ、可動柵装置1A2、1A5、1B3は可動柵5を移動路4の右端部に集合させ、可動柵装置1A4のみ可動柵5を移動路4の中央部に集合させることにより、列車側の4枚の乗降扉31に対応する部分の可動柵5を開閉できる。
【0027】
実施の形態4.
図11〜図13はこの発明の実施の形態4による可動柵装置の要部を概念的に説明するもので、図11(a)は可動柵を全閉した状態を示す平面図、図11(b)はその正面図、図12(a)は乗降扉31が片側に4枚設けられた4扉車が停車したときの可動柵の開放例を示す平面図、図12(b)はその正面図、図13(a)は同じ位置に車両の長さが短く、しかも1扉車が停車したときの可動柵の開放例を示す平面図、図13(b)はその正面図である。この実施の形態4は、本発明の可動柵装置の他に、従来の戸袋を持ち、該戸袋の両側に柵が進退して開閉するものを混在させた例である。図において、可動柵装置1A3と1A4の間には、戸袋181を有し、その両側に可動柵182が出入りする従来技術によるホーム柵18が2組配置されている。その他の構成は上記実施の形態2と同様である。
【0028】
上記のように構成された実施の形態4においては、図11に示す全閉状態に対し、4扉車が停車したときは図12に示すように2組のホーム柵18の可動柵182を全て戸袋181内に収納し、可動柵装置1A1、1A3は可動柵5を左端部に集合させ、可動柵装置1A2、1A4は可動柵5を右端部に集合させることにより対応できる。また、1扉車が停車したときは図13に示すように2組のホーム柵18の内、図の最右端部の可動柵182のみを戸袋181内に収納し、可動柵装置1A2は可動柵5を左端部に集合させ、可動柵装置1A3、1A4は可動柵5を右端部に集合させることにより対応できる。この実施の形態4は、例えば運行列車の編成車両に6扉車が含まれない場合、ドア位置が異なる列車の種類が限られている場合などに有効であり、設置費用も安価にできるなどの利点がある。
【0029】
実施の形態5.
図14はこの発明の実施の形態5による可動柵装置の要部を概念的に説明するもので、図14(a)は3つの可動柵を全閉したときの伝達機構の状態を示す斜視図、図14(b)は3つの可動柵を他端部(右端部)に集合させたときの状態を示す斜視図、図14(c)は3つの可動柵を中央部に集合させたときの状態を示す斜視図である。この実施の形態5は、1つの駆動モータにより3つの可動柵5の内の所定の2つを同時に駆動し、移動路4の中央部または右端部に集合させられるようにしたものである。図において、図示省略している第1の可動柵5aに固定される牽引部材55aが図の左端部側に、第3の可動柵5cに固定される牽引部材55cが図の右端部側に配設され、中央部には同じく図示省略している第2の可動柵5bに対して回動自在に設けられた2つのベルト反転車991、992を有し、該第2の可動柵5bに取り付けられる牽引部材55bが配設されている。
【0030】
左側の牽引部材55aよりも更に左端部側には、駆動ローラ9Rを有する駆動モータ8、及び張り車941、942が配設され、右側の牽引部材55cよりも更に右端部側には、3つの張り車951、952、96が何れも回動自在に配設されている。そして、伝達手段である第1のタイミングベルト981の一端部は、左側の牽引部材55aに固定され、他端部方向に、駆動ローラ9R、張り車951、張り車952、及びベルト反転車991に順次巻き掛けられた後、右側の牽引部材55cに固定されている。また、伝達手段である第2のタイミングベルト982の一端部は、左側の牽引部材55aに固定され、他端部方向に、ベルト反転車992、張り車941、張り車942、及び張り車96に順次巻き掛けられた後、右側の牽引部材55cに固定されている。その他の構成は上記図1に示す実施の形態1と同様である。
【0031】
上記のように構成された実施の形態5の動作について説明する。図14(a)に示す全閉時の状態から図示省略している3つの可動柵5を図の右端部側に集合させて、左端部と中央部を開くには、第3の可動柵5、即ち牽引部材55cを図示省略しているロック機構によりロックし、駆動モータ8を図14(b)の矢印で示す時計方向に回転させる。右側の牽引部材55cがロックされていることにより、第1のタイミングベルト981は中央部のベルト反転車991を介して牽引部材55b、即ち第2の可動柵を右方向に引き寄せる。
【0032】
牽引部材55bが右方向に牽引されると、第2のタイミングベルト982に対してベルト反転車992を介して引張力が作用するが、該第2のタイミングベルト982の他端部は右側の牽引部材55cに固定され、ロックされていることにより、張り車941、942に巻き掛けられた部分は固定状態となり、結局駆動ローラ9Rによる第1のタイミングベルト981の矢印方向への繰り出し速度と同じスピードで左側の牽引部材55aを右方向に引き寄せ、第1の可動柵5aを矢印Fのように右方向に移動させる。なお、中央部の第2の可動柵5bに固定された牽引部材55bは2:1のローピングでタイミングベルト981により引かれるので、第1の可動柵に対してその半分の速度で第2の可動柵が移動することは自明である。また、開いた可動柵を閉じるときは駆動モータ8を反時計方向に回転させればよい。
【0033】
一方、図14(a)に示す3つの可動柵の閉塞状態から、3つの可動柵を中央部に集合させるときは、中央部の第2の可動柵に結合された牽引部材55bを図示省略しているロック機構によりロックし、駆動モータ8を時計方向に回転させる。第1のタイミングベルト981に、図14(c)に示す矢印Gの方向の引張力が作用すると、牽引部材55bはロックされているので移動せず、ベルト反転車991は回転自在となっているので、牽引部材55cを矢印Hの方向に移動させ、図示省略している第3の可動柵を中央部に移動させる。
【0034】
牽引部材55cには、第2のタイミングベルト982の他端部が固定されているので、上記牽引部材55cの矢印H方向(図の左方向)への移動に伴って第2のタイミングベルト982が張り車96を介して矢印Iで示す右方向に引かれ、その引張力が張り車942、941及びベルト反転車992を介して一端部側に結合された第1の牽引部材55aを矢印Jで示すように右方向に移動させ、図示省略している第1の可動柵5aを移動路4の中央部に集合させる。
【0035】
なお、閉じるときは駆動モータ8を反時計方向に回転させることはいうまでもない。なお、図の構成では3つの可動柵を左端部に集合させることはできないが、駆動モータ8が1つで、3つの可動柵を中央部と右端部(または左端部)に集合させることができるので、用途に応じて上記実施の形態1や既存の可動柵装置と組み合わせて用いることにより、安価に提供することができる。また、第2及び第3の可動柵にはロック機構が必要であるが、可動柵の閉鎖中にも柵を固定することは有用であるので、無駄ではない。
【0036】
なお、上記実施の形態の説明では、伝達機構9としてタイミングベルトなどの伝達手段98と、これに噛み合う張り車やローラなどを用いたが、これに限定されるものではない。例えば、チェーンやロープ、ギヤなど他の伝達手段を用いて構成しても同様の効果が得られる。また、駆動装置7などを収容する駆動ユニット6をプラットホーム2の下部に設けたが、上部に設けることもできる。その他、この発明の精神の範囲内で種々の変形や変更が可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】この発明の実施の形態1による可動柵装置の要部を概念的に示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図。
【図2】図1に示す可動柵装置の動作説明図。
【図3】図1に示す可動柵装置の動作説明図。
【図4】図1に示す可動柵装置の動作説明図。
【図5】この発明の実施の形態2による可動柵装置の要部を概念的に説明する図であり、(a)は車両約1両分の可動柵を全閉した状態を示す平面図、(b)はその正面図。
【図6】図5の可動柵装置の動作例を示す図であり、(a)は4扉車が停車したときの可動柵の開放例を示す平面図、(b)はその正面図。
【図7】図5の可動柵装置の動作例を示す図であり、(a)は1扉車が停車したときの可動柵の開放例を示す平面図、(b)はその正面図。
【図8】この発明の実施の形態3による可動柵装置の要部を概念的に説明する図であり、(a)は可動柵を全閉した状態を示す平面図、(b)はその正面図。
【図9】図8の可動柵装置の動作例を示す図であり、(a)は6扉車が停車したときの可動柵の開放例を示す平面図、(b)はその正面図。
【図10】図8の可動柵装置の動作例を示す図であり、(a)は4扉車が停車したときの可動柵の開放例を示す平面図、(b)はその正面図。
【図11】この発明の実施の形態4による可動柵装置の要部を概念的に説明する図であり、(a)は可動柵を全閉した状態を示す平面図、(b)はその正面図。
【図12】図11の可動柵装置の動作例を示す図であり、(a)は4扉車が停車したときの可動柵の開放例を示す平面図、(b)はその正面図。
【図13】図11の可動柵装置の動作例を示す図であり、(a)は1扉車が停車したときの可動柵の開放例を示す平面図、(b)はその正面図。
【図14】この発明の実施の形態5による可動柵装置の要部を概念的に説明する図であり、(a)は3つの可動柵を全閉したときの伝達機構の状態を示す斜視図、(b)は3つの可動柵を他端部(右端部)に集合させたときの状態を示す斜視図、(c)は3つの可動柵を中央部に集合させたときの状態を示す斜視図。
【符号の説明】
【0038】
1、1A1〜1A8、1B1、1B3 可動柵装置、 2 プラットホーム、 3 車両、 31 乗降扉、 4 移動路、 4a 第1の移動路、 4b 第2の移動路、 4c 第3の移動路、 41 案内レール、 41a 第1の案内レール、 41b 第2の案内レール、 41c 第3の案内レール、 5 可動柵、 5a 第1の可動柵、 5b 第2の可動柵、 5c 第3の可動柵、 55a、55b、55c 牽引部材、 51a、51b、51c パネル部材、 52a、52b、52c 基体、 53a、53b、53c アーム部材、 54 ドアローラ、 541 主輪、 542 補助輪、 6 駆動ユニット、 7 駆動装置、 8 駆動モータ、 81 第1の駆動モータ、 82 第2の駆動モータ、 9 伝達機構、 9R 駆動ローラ、 91R 第1の駆動ローラ、 92R 第2の駆動ローラ、 931 第1の張り車、 932 第2の張り車、 941、942、951、952、96 張り車、 971、972 動滑車、 98 伝達手段(タイミングベルト)、 981 第1のタイミングベルト、 982 第2のタイミングベルト、 991、992 ベルト反転車、 121、122 固定部、 13 個別操作盤、 14 支障物センサ装置、 15 移動ケーブルラック、 161、162 ストッパ、 17 ビーム材、 18 ホーム柵、 181 戸袋、 182 可動柵。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行で所定長に設けられた第1、第2、及び第3の移動路と、上記第1の移動路に沿って往復移動するように設けられた第1の可動柵と、上記第2の移動路に沿って往復移動するように設けられた第2の可動柵と、上記第3の移動路に沿って往復移動するように設けられた第3の可動柵と、これら第1、第2、及び第3の可動柵を上記第1、第2、及び第3の移動路のそれぞれ一端部、中央部、及び他端部に順次ずらせて直列的に配置することにより閉塞状態を形成し、これら第1、第2、及び第3の可動柵の内、少なくとも任意の2つを移動させて、該第1、第2、及び第3の可動柵を上記第1、第2、及び第3の移動路の長さ方向における任意の位置に集合させることにより開放状態を形成させる駆動装置とを備えたことを特徴とする可動柵装置。
【請求項2】
上記第1、第2、及び第3の可動柵を1組の可動柵装置として、複数組の可動柵装置を駅のプラットホームの長さ方向に沿って直列に設置し、停車する列車の乗降扉位置に対応する可動柵を開くようにしたことを特徴とする請求項1に記載の可動柵装置。
【請求項3】
上記1組の可動柵装置が、上記プラットホームの幅方向中心部側から列車の軌道側に向けて第1、第2、及び第3の可動柵の順に配設されているときに、上記移動路の一端部側から他端部側に第1、第2、及び第3の可動柵の順に閉じて閉塞状態を形成する組と、上記移動路の一端部側から他端部側に第3、第2、及び第1の可動柵の順に閉じて閉塞状態を形成する組とを上記プラットホームの長さ方向に交互に設けてなることを特徴とする請求項2に記載の可動柵装置。
【請求項4】
上記第1、第2、及び第3の移動路は、上記プラットホームの下部に設けられた上記第1、第2、及び第3の可動柵の下部を支持するドアローラを介して移動可能に保持する案内レールを用いてなることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れかに記載の可動柵装置。
【請求項5】
上記駆動装置は少なくとも1つの駆動モータと、この駆動モータの駆動力を上記第1、第2、及び第3の可動柵に伝達する伝達機構により構成されてなることを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れかに記載の可動柵装置。
【請求項6】
上記駆動モータは上記第1、第2、及び第3の移動路の一端部及び他端部にそれぞれ設けられた第1及び第2の駆動モータからなり、上記伝達機構は、上記第1の駆動モータの出力軸に固定された第1の駆動ローラと、上記第2の駆動モータの出力軸に固定された第2の駆動ローラと、上記第2の可動柵に対して回動自在に設けられた2つの動滑車と、上記第1の駆動モータの近傍に設けられた第1の張り車と、上記第2の駆動モータの近傍に設けられた第2の張り車と、これら第1、第2の駆動ローラ、2つの動滑車、並びに第1及び第2の張り車の間に順次巻き掛けられ、所定部で上記第1の可動柵及び第2の可動柵に固定された伝達手段と、上記第1及び第3の可動柵または第1及び第2の駆動モータに設けられたロック機構とからなることを特徴とする請求項5に記載の可動柵装置。
【請求項7】
上記伝達手段として、タイミングベルトを用いるようにしたことを特徴とする請求項6に記載の可動柵装置。
【請求項8】
上記第1の駆動モータと、上記第2の駆動モータとを同時に制御することにより上記第1、第2、及び第3の可動柵を上記第1、第2、及び第3の移動路の長さ方向における任意の位置に集合させるようにしたことを特徴とする請求項6または請求項7に記載の可動柵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−290076(P2006−290076A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−111162(P2005−111162)
【出願日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】