説明

可塑性材料濾過装置

【課題】 スライドバーの加工が容易になり、濾過体の濾過面積が大きくなり、また、濾過体の肉厚を薄くできるので、圧損が低減される可塑性材料濾過装置を提供すること。
【解決手段】 流入側流路2と流出側流路3とが設けられたハウジング1に、前記流入側流路2と流出側流路3とを連通させる中間流路6が設けられたスライドバー5が軸方向移動自在に挿通され、前記中間流路6にスライドバー5と同心状の筒状の濾過体9が設けられた可塑性材料濾過装置において、前記濾過体9は、前記スライドバー5に軸方向に着脱自在に挟持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可塑性材料濾過装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
押出機から押し出される溶融樹脂等を濾過する装置においては、濾過面積を大きくすることが必要である。濾過面積を大きくするための従来技術として、例えば、特許文献1(特開昭61−57324号公報)や特許文献2(特開平7−299310号公報)に記載のものが公知である。
前記特許文献1記載のものは、フィルタケーシングを有するプラスチック融成物を処理するためのスクリュー押出機のためのフィルタ装置であって、前記フィルタケーシングが、貫通孔を介して接続されたそれぞれの流入孔と流出孔並びにケーシング孔を有しており、さらにシーブ体(濾過体)を受容するために円筒壁の外周にリング状の凹所を有していてフィルタケーシング内で融成物流に対して横方向に移動可能であり、且つ横断面が円形状の少なくとも1つの交換スライダを備えているものであった。
【0003】
前記シーブ体はシーブ布から構成され、前記交換スライダは、前記円筒壁を貫通する多数の流通孔を有し、該流通孔を覆うように前記シーブ布が前記凹所に巻かれている。そして、交換スライダの円筒壁の開口端部は押しのけ円錐部によって閉じられているものであった。
この従来技術では、プラスチック融成物は円筒壁に形成された多数の流通路を通過するものとされていたので、この流通路の断面積が濾過面積となっていた。
しかし、この流通路は円筒壁に形成されるものであるから、その断面積を可及的に大きなものにするのに限界があった。
【0004】
一方、前記特許文献2に記載のものは、貫通流路及び該貫通流路と交差する貫通孔を形成されたハウジングと、濾過部を形成されて前記貫通孔に軸封状態かつ往復動可能に挿入された柱状のスライドバーとにより、可塑化された材料が前記貫通流路の流入側流路から前記スライドバーの濾過部を通過して前記貫通流路の流出側流路へ流動するように構成される可塑性材料濾過装置において、前記濾過部は、濾過面が前記スライドバーの軸方向に沿って筒形状に形成されているものであった。
この前記特許文献2に記載のものでは、濾過部を濾網等の濾過体自体で構成することにより、濾過面積を前記特許文献1記載のものより大きなものにすることができる。
【特許文献1】特開昭61−57324号公報
【特許文献2】特開平7−299310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献2記載の従来のものにおいては、柱状のスライドバーは一体成形されたものであるので、円筒状の濾過部を取り付けるための構造が複雑になり、その加工が困難であった。
また、円筒形状の濾過部を構成する濾網等の濾過体を柱状のスライドバーに取り付けるためには、円筒形状の濾過体を径方向に分割した構造とする必要があり、濾過体を半円状の分割構造とすれば、それを円筒形状に保持するための保持構造が必要になるので、その保持構造のために濾過面積が減少するという問題があった。
【0006】
さらに、濾過部は、可塑性樹脂等が外周側から内周側に通過する際の圧力差により発生する外圧に耐える強度が必要であるが、分割構造とすることで円筒形とする場合よりも強度上肉厚を大きくする必要がある。このため、溶融樹脂が濾過部を通過する際の圧損が大きくなり、圧損上昇限界によるスクリーンの交換頻度が多くなると言う問題があった。
そこで、本発明は、上記問題点を解決することができる可塑性材料濾過装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は次の手段を講じた。
即ち、本発明の特徴とするところは、流入側流路と流出側流路とが設けられたハウジングに、前記流入側流路と流出側流路とを連通させる中間流路が設けられたスライドバーが軸方向移動自在に挿通され、前記中間流路にスライドバーと同心状の筒状の濾過体が設けられた可塑性材料濾過装置において、前記濾過体は、前記スライドバーに軸方向に着脱自在に挟持されている点にある。
本発明によれば、濾過体はスライドバーに軸方向に挟持される構造とされているので、従来の特許文献2に記載の濾過部のように径方向に分割する必要がないので、従来の問題点を解決することができる。
【0008】
前記スライドバーは、軸方向に分割された第1部材と第2部材とを有し、該第1部材と第2部材は締結手段により着脱自在に締結されていると共に、前記第1部材と第2部材間に前記濾過体が挟持されているのが好ましい。
前記締結手段は、前記第1部材と第2部材とに同心状に貫通するタイロッドにより構成されているのが好ましい。
前記締結手段は、前記第1部材と第2部材との間に設けられたスペーサにより構成され、該スペーサーはねじ締結手段を介して前記第1部材と第2部材に着脱自在に締結するものであっても良い。
【0009】
前記第1部材と第2部材間の軸方向距離を規制する距離規制手段が設けられているのが好ましい。
前記スライドバーには、前記濾過体を同心状に保持するための位置決め手段が設けられているのが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、スライドバーの加工が容易になり、濾過体の濾過面積が大きくなり、また、濾過体の肉厚を薄くできるので、圧損が低減される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1において例示する可塑性材料濾過装置は、二軸混連押出機等から押し出されてきた溶融樹脂を濾過し、次工程のペレタイザー等へ供給するものである。この濾過装置は、ハウジング1を有する。ハウジング1には、溶融樹脂の流入側流路2と流出側流路3とが設けられている。このハウジング1には断面円形の貫通孔4が設けられ、該貫通孔4にスライドバー5が軸方向移動自在に挿通されている。スライドバー5は円柱状に形成され、その軸方向中途部に前記流入側流路2と流出側流路3に連通する中間流路6が形成されている。前記流入側流路2と流出側流路3は、貫通孔4を介してその上流側と下流側とに分かれて設けられている。そして、前記流入側流路2と流出側流路3は、貫通孔4の軸方向に位置ずれして設けられている。
【0012】
前記中間流路6に、スライドバー5と同心状の筒状の濾過部7が設けられている。
溶融樹脂などの可塑化された材料は、前記流入側流路2から前記濾過部7を通過して前記流出側流路3へ流動するように構成されている。
そして、スライドバー5の外周面と貫通孔4の内周面は、図1の状態において、溶融樹脂が外部に漏洩しないように軸封状態で嵌合している。
前記スライドバー5を図1における状態から左方向へ移動させると、スライドバー5は前記流入側流路2と流出側流路3を閉じるように構成されている。
【0013】
前記濾過部7は、円筒状のブレーカプレート8と該ブレーカプレート8の外周を覆うように設けられた濾過体9とから構成されている。前記濾過体9は、濾網などから構成されている。この実施の形態では、濾過体9は、ブレーカプレート8の外周部に巻き付けられて、バンド等で固定されるものとなっている。濾過部7が目詰まりした際には、濾過体9のみをバンドなどを切って外周から取り外し、新しい濾過体9を外周に巻き付けることにより交換されるがこれに限定されるものではない。
前記濾過部7は、前記スライドバー5に軸方向に着脱自在に挟持されている。
【0014】
すなわち、前記スライドバー5は、軸方向に分割された第1部材10と第2部材11とを有する。この第1部材10と第2部材11間に前記濾過部7が挟持されている。第1部材10と第2部材11は締結手段12により着脱自在に締結されて、前記濾過部7を挟持している。
前記第2部材11の第1部材10の対向端面の軸心部に、所定深さの座ぐり部13が形成され、該座ぐり部13の側方において、前記流出側流路3に連通する流路孔14が設けられている。
【0015】
而して、第1部材10と第2部材11間の空間及び前記座ぐり部13及び流路孔14により、前記中間流路6が構成されている。
前記締結手段12は、この実施の形態では、前記第1部材10と第2部材11とに同心状に貫通するタイロッド15により構成されている。
タイロッド15は、その両端にねじ16が形成され、該ねじ16にナット17が螺合されて、前記第1部材10と第2部材11との間に同心状に配置された濾過部7を挟持おり、第1部材10と第2部材11間に生じる樹脂圧力による引き離し力を受けることで、前記特許文献2記載のような濾過部7のブレーカ8に引っ張り力が掛からないようになっている。
【0016】
前記スライドバー5の一端部に油圧等の流体圧シリンダ18のピストンロッド19が結合されている。この流体圧シリンダ18のシリンダーヘッド20は、前記ハウジング1に固定されている。
しかして、図1の状態において、流入側流路2より供給された溶融樹脂は、濾過部7を通過して流出側流路3より排出される。
濾過部7が目詰まり等した場合、濾過部7のクリーニングや交換をする必要があるが、ピストンロッド19を図1の左側へ移動させ、濾過部7を貫通孔4の外部へ露出させる。この状態で、流入側流路2と流出側流路3はスライドバー5の外周面によって閉じられる。この実施の形態では、濾過体9はブレーカプレート9の外周に巻き付けられたものとして構成されているので、バンド等を切り取り前述の如く交換する。
【0017】
また、分解時には、タイロッド15のどちらか一方のナット17を取り外し、第1部材10又は第2部材11をタイロッド15から抜き取ることにより、円筒状のブレーカプレート8はスライドバー5から軸方向に取り外すことができる。
組立時には前記とは逆の手順でスライドバー5に取り付けることにより、ブレーカプレート8を取り付けることができる。
前記実施の形態では、濾過部7のブレーカプレート8はスライドバー5から取り外しできる別体のものとされていたが、第1部材10又は第2部材11の何れか一方に一体的に設けられたものであっても良く、要は、筒状のブレーカプレート8に軸方向の外力が作用しないものであればよい。
【0018】
なお、前記ハウジング1には、2本の貫通孔4が平行に設けられ、それぞれの貫通孔4にスライドバー5が挿通されており、交互に使用するように構成されている。即ち、一方の濾過部7の交換作業中、他方の濾過部7で濾過作業可能なように構成されている。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
前記構成の本発明の実施の形態によれば、スライドバー5を分割構成としその中間部に中間流路6を形成しているので、一体もののスライドバーに比べ、材料長さが短くて足り、材料コストを低減できる。また、従来のように、中間流路の全てを加工する必要がないので、加工コストを低減できる。
【0019】
ブレーカプレート8を筒状の一体構造のものとすることができるので、ブレーカプレート8の厚みを薄くすることができ、より圧損を低くし、大きな濾過面積を確保することができる。
図2に示すものは、本発明の他に実施の形態であり、前記図1に示すものと異なる点は、前記第1部材10と第2部材11間の軸方向距離を規制する距離規制手段21が設けられている点にある。
即ち、前記距離規制手段21は、前記タイロッド15の軸方向中途部に設けられたフランジ22により構成されている。このフランジ22により第1部材10の軸方向位置が決められ、反シリンダ側のナット17の締め付け距離が規制され、その結果、濾過部7を挟持するための第1部材10と第2部材11間の軸方向距離が規制される。
【0020】
この距離規制手段21により、油圧シリンダ18でスライドバー5を軸方向に押し出す際に、第1部材10はフランジ22により押し出されるため、ブレーカプレート8には第1部材10からの軸方向力が作用することが防止される。
従って、ブレーカプレート8には軸方向応力が掛からないため、ブレーカプレート8には、可塑性樹脂が濾過部7を通過する際に発生する圧力差により発生する外圧に耐える強度のみを考慮すれば良く、軸方向応力を考慮する必要がないため、その厚みを薄くすることができる。
【0021】
図3に示すものは、前記距離規制手段21がスペーサ23により構成されている点が図2に示すものと異なる。このスペーサ23は、タイロッド15に套嵌され、前記第1部材10と第2部材11間の軸方向距離を規制し、濾過部7の挟持力の適正化を図っている。
なお、前記スペーサ23と同じ機能を有する距離規制手段21としては、タイロッド15の同軸上に配置されるもの(タイロッド15に套嵌されるもの)に限定されるものではなく、例えば、周方向適所に配置したロッドのようなものであっても良い。
図4〜7に示すものは、前記スライドバー5に、前記濾過部7を同心状に保持するための位置決め手段24を設けたものである。
【0022】
図4においては、前記位置決め手段24は、第1部材10及び第2部材11の対向端面に形成された段部25により構成されている。この段部25の外周面に前記ブレーカプレート8の内周面が外嵌するものとされている。
図5においては、前記段部25がリング状に形成されている。
図6においては、前記位置決め手段24は、タイロッドに15同心状に嵌合された別体のスペーサ26により構成されている。このスペーサ26の外周にブレーカプレート8の内周が嵌合するように構成されている。
【0023】
図7に示すものは、前記位置決め手段24は、第1部材10及び第2部材11の対向端面に形成されたリング状突出部27により構成されている。このリング状突出部27の内周面に、ブレーカプレート8の外周面が嵌合するように構成されている。
前記位置決め手段24を設けたものであれば、当該位置決め手段24により濾過部7をスライドバー5と同心状に保持することができる。
図8に示すものは、前記締結手段12として、前記第1部材10と第2部材11との間に設けられたスペーサ28により構成したものである。このスペーサ28の両端部にねじ締結手段29が設けられ、該ねじ締結手段29が前記第1部材10と第2部材11に着脱自在に螺合している。
【0024】
この実施の形態では、前記スペーサ28は円柱体よりなり、前記ネジ締結手段29は、スペーサ28の軸心部に突出形成された雄ねじからなる。この締結手段29は前記距離規制手段21を兼用する。
なお、前記締結手段12のスペーサ28は、第1部材10又は第2部材11と別体のものとして構成されているが、何れか一方と一体成形されたものであっても良い。
図9に示すものは、本発明の他の実施の形態であり、ハウジング1には流入側流路2と流出側流路3とが同じ側に形成されている。また、ハウジング1の流入側流路2の内周部には、リング状の凹部30が形成されている。このような凹部30を形成することにより、濾過部7の外周面をスライドバー5の外周面とほぼ同一に形成することができ、その外径をスライドバー5の外径より小さくするものに比べ、濾過面積の増大が図れる。
【0025】
尚、図1などに示す実施の形態において、流入側流路2と流出側流路3の位置は、貫通孔4の軸方向にずれたものに限定されるものではなく、例えば、特許文献2に示すように、軸方向同じ位置にあっても良い。
なお、本発明は、前記各実施の形態に示すものに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、溶融樹脂用スクリーン交換装置として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、本発明の実施の形態を示す断面図である。
【図2】図2は、本発明の他の実施の形態を示す断面図である。
【図3】図3は、本発明の他の実施の形態を示す断面図である。
【図4】図4は、位置決め手段の構成を示す断面図である。
【図5】図5は、位置決め手段の他の構成を示す断面図である。
【図6】図6は、位置決め手段の他の構成を示す断面図である。
【図7】図7は、位置決め手段の他の構成を示す断面図である。
【図8】図8は、本発明の他の実施の形態を示す断面図である。
【図9】図9は、本発明の他の実施の形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 ハウジング
2 流入側流路
3 流出側流路
5 スライドバー
6 中間流路
9 濾過体
10 第1部材
11 第2部材
12 締結手段
15 タイロッド
21 距離規制手段
24 位置決め手段
28 スペーサ
29 ねじ締結手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入側流路と流出側流路とが設けられたハウジングに、前記流入側流路と流出側流路とを連通させる中間流路が設けられたスライドバーが軸方向移動自在に挿通され、前記中間流路にスライドバーと同心状の筒状の濾過体が設けられた可塑性材料濾過装置において、
前記濾過体は、前記スライドバーに軸方向に着脱自在に挟持されていることを特徴とする可塑性材料濾過装置。
【請求項2】
前記スライドバーは、軸方向に分割された第1部材と第2部材とを有し、該第1部材と第2部材は締結手段により着脱自在に締結されていると共に、前記第1部材と第2部材間に前記濾過体が挟持されていることを特徴とする請求項1記載の可塑性材料濾過装置。
【請求項3】
前記締結手段は、前記第1部材と第2部材とに同心状に貫通するタイロッドにより構成されていることを特徴とする請求項2記載の可塑性材料濾過装置。
【請求項4】
前記締結手段は、前記第1部材と第2部材との間に設けられたスペーサにより構成され、該スペーサーはねじ締結手段を介して前記第1部材と第2部材に着脱自在に締結されていることを特徴とする請求項2記載の可塑性材料濾過装置。
【請求項5】
前記第1部材と第2部材間の軸方向距離を規制する距離規制手段が設けられていることを特徴とする請求項2〜4の何れか一つに記載の可塑性材料濾過装置。
【請求項6】
前記スライドバーには、前記濾過体を同心状に保持するための位置決め手段が設けられていることを特徴とする請求項1〜5の何れか一つに記載の可塑性材料濾過装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−7542(P2006−7542A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−186823(P2004−186823)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】