説明

可塑性材製の螺旋状部品及びその製造方法

【課題】 合成樹脂製コイルバネの本質的な問題を解消し、バネとして使用できるほか、他のフィーダ等としても利用可能な可塑性材製の螺旋状部品、特にバネ定数の大きな合成樹脂製のバネを提供する。
【解決手段】 可塑性材製の螺旋状部品は射出成形した可塑性材の断面が少なくとも一個所以上の角部を有した四角形、六角形、八角形、三角形等の形状とし、あるいはその一部にアール面を形成してあることとし、その製造方法は複数に分割された型材の合面に凹部を形成し、この凹部内に中子を密接状態で収容し、この中子の周囲であって、前記型材側に螺旋状部品成形用のキャビティを形成した金型装置に、溶融した可塑性材を射出成形して充填し、この可塑性材が所定の温度に到達された後に前記型材を開口して中子と共に可塑性材製の螺旋状部品を取り出すこととする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形による可塑性材製の螺旋状部品、特に合成樹脂製コイルバネ及びその製造方法に関し、実際の用途に使用できる高弾性のコイルバネに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、自動車や家電製品を始め、合成樹脂成形品を使用している製品は、合成樹脂部分とバネや金属片等の金属部分とを分別し、これらをそれぞれの原料工場において再生利用することが義務付けられる場合が多い。
【0003】
例えば、化粧液や洗剤を入れる合成樹脂製ボトルは一般に使い捨て容器として使用されている。そして、このボトルの頭部に小型ポンプを持つノズルが設けられており、このノズルの頭部を押圧してそのストロークに対応して少量の液体を吐出させるようにしている。このノズルの部分に前記小型ポンプを構成するプランジャ軸を復元するための弾発部材としてステンレス等の金属製の小型コイルバネが使用されている。また、各種の合成樹脂製玩具には腕等の可動部分を復元する部分にも前記と同様に金属製のコイルバネが使用されている場合が多い。
【0004】
これらのボトルは使用後に、また、玩具の場合は故障したり不要となった場合に廃棄される場合が多いが、これらの合成樹脂製品には、合成樹脂の本体部分と金属製コイルバネとが混在して組み立てられており、従って、廃棄する際にはこれらを分解して合成樹脂と金属とに分別することが前提となっている。
【0005】
しかし、前記ボトルの頭部の小型ポンプを構成しているノズル部分を分解するには、それなりの技術的知識と道具が必要で、主婦や子供にはこの分解操作が困難であり、また、男性でも面倒であり、従って、本体等の外形部分の合成樹脂部分とコイルバネの金属部分が混在した状態で廃棄せざるを得ないケースが多い。しかし、今後はこのような廃棄方法は厳しく規制される傾向にある。
【0006】
一方、液体を収容する合成樹脂製ボトルや玩具等は軽量化が検討されており、そのために金属製コイルバネに代えて合成樹脂製バネの使用が望まれてきた。従って、前記合成樹脂成形品を廃棄する際の環境上の規制と、前記ボトルや玩具の軽量化の問題から合成樹脂製コイルバネが必要となっている。
【0007】
合成樹脂製コイルバネは、一般には押出成形法によって断面円形の細い線条物を製造し、これが軟化状態にある間、あるいは固化した後に再加熱して軟化状態で回転する丸棒からなる芯棒(マンドレル)の表面に巻付けながらコイル状に形成し、これを所定の長さに切断して1個のコイルとして完成している。
【0008】
しかし、この押出方法による合成樹脂製のコイルバネは、金属製のコイルバネと比較すると合成樹脂自体の弾性が遙かに低いことから、バネとして使用するには制限があり、その用途はあまり多くないのが現状である。
【0009】
また、弾性力を増加させるように構成した合成樹脂製コイルバネとしては、同長さ、同旋回方向、同径、同ピッチのコイルバネを複数本並設し、その両端にリングを配置して各コイルバネの端部を前記リングで連結するように一体成形した構造のものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0010】
また、合成樹脂製薄肉円筒に、略等間隔で上下方向及び左右方向に透孔を開口した円筒壁を網状に形成したものも提案されている(例え特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平10−73138号公報
【特許文献2】特開平9−291955号公報
【特許文献3】特公平7−102591号公報
【特許文献4】特願2003−275588号出願書類
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする問題点は、文献として示していないが、押出成形した線条体をマンドレルの表面に巻付けてコイルバネに成形したものは、当然のことながら断面が円形のものしか適用できず、断面が矩形等の比較的大きな断面係数を持つものに変更することが実質的に困難であるという点である。
【0012】
そして、円形断面以外の三角断面や矩形断面の線条物を押出成形し、これをマンドレル上に巻付けてコイル状に成形しようとすると、線条物を一定の方向に正確に案内することが困難である上に断面が所定のものから変形やヘタリの部分が発生してしまい、見栄えが悪く、その上に所定のバネ特性をもつものを製造することが困難となる。さらに、円形断面に成形した合成樹脂製の線条体をコイル状に成形したものと、金属製のコイルバネとを比較すると、合成樹脂の剛性がステンレス等の金属に比較すると弱いことから、大きさに比較して著しく弱いバネ力しか発揮することができないという欠点があったという点である。
【0013】
また、特許文献1に記載された合成樹脂製バネは、複数本のコイルバネの両端部リングを配置した形に一体成形したものや、複数本のコイルバネの両端と中間部にリングを配置した形に一体成形したものが提案されているが、このコイルバネを製造する方法が全く記載されておらず、如何なる方法で製造するものか不明である。
【0014】
更に、特許文献2に記載された発明は、合成樹脂によって円筒形の網状物を成形し、これを長さ方向に圧縮するようなものであり、前記のように液体注出するポンプの圧縮コイルバネとして使用できるものであるが、これは液体注出ポンプ等の合成樹脂製品の分別廃棄の際に、分別しないでそのまま廃棄することができる利点がある。しかしながら、この構造の圧縮バネは構造が著しく複雑であり、従って、製造方法が煩雑である上に所定の圧縮強度のものを効率的に得ることは困難であるという点である。
【0015】
ところで、合成樹脂製ネジに共通する最大の問題は、合成樹脂の剛性、即ち、バネ定数が金属製のものに比較すると格段に低いことである。従って、この欠点を補うためにバネを大型化するとその用途に適合しない大きさのものとなる欠点がある。
【0016】
同じ材料を使用して製造されたコイルバネであっても、その断面を変更することによって力学的には弾性力を強くすることが可能である。例えば、外径寸法が同じものであっても、断面が円形のものから横幅の広い矩形断面にすると、その弾性力は大きくなる。さらに、高さを横幅より高くすると断面係数の増加がかなり大きいことから、その弾性力は更に増加する。さらに、その材料である合成樹脂の中に炭素繊維やガラス繊維の短繊維等の補強繊維を混入すると金属に近い弾性力を出させることも困難ではない。
【0017】
しかし、押出成形によって断面が矩形の平板を成形し、これをマンドレルの表面に巻付けてコイルバネを成形した場合は、その平板に捩じれが発生して正確な形状のものを製造することが困難となる。しかし、前記のように炭素繊維やガラス繊維を混入したプラスチックの場合は、一旦、冷却して固化すると、成形の段階で弾性力が向上していることから再加工が困難となる。
【0018】
本発明は、この合成樹脂製コイルバネの本質的な問題を解消し、バネとして使用できるほか、他のフィーダ等としても利用可能な可塑性材製の螺旋状部品、特にバネ定数の大きな合成樹脂製のバネを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記目的を達成するために本発明に係る可塑性材製の螺旋状部品は射出成形した可塑性材の断面が少なくとも一個所以上の角部を有した四角形、六角形、八角形、三角形等の形状とし、あるいはその一部にアール面を形成してあることを特徴とし、中央空間部に付加物を設けたことを特徴とし、少なくとも一端に弾発性以外の機能を持つ部分を一体に成形したことを特徴とし、本体の長さ方向にピッチ、外径、内径、厚さ、断面形状のうち、少なくとも一つを変更し、かつ一体成形としてあることを特徴とし、本体の少なくとも一方の端部にフックを一体的に備えたことを特徴としている。
【0020】
また、本発明に係る可塑性材製の螺旋状部品は本体コイルの断面は、上面と下面がほぼ平行しており、全圧縮の状態において、コイルの下面と隣接するコイルと上面とが接触状態となるように構成されていることを特徴とし、断面が矩形のコイルの角部を含む頂面部分において型材のパーティングラインが形成されていることを特徴とし、コイルの中間部分には隣接するコイル間を一体に連結するバーRを備え、バネとしての作用をしない部分を有していることを特徴とし、各コイルには軸芯方向に沿った突起状のスペーサを一体に備え、各コイル間の隙間を保持することができるようにしたことを特徴とし、前記した可塑性材は熱可塑性の合成樹脂であることを特徴としている。
【0021】
また、本発明に係る製造方法は複数に分割された型材の合面に凹部を形成し、この凹部内に中子を密接状態で収容し、この中子の周囲であって、前記型材側に螺旋状部品成形用のキャビティを形成した金型装置に、溶融した可塑性材を射出成形して充填し、この可塑性材が所定の温度に到達された後に前記型材を開口して中子と共に可塑性材製の螺旋状部品を取り出すことを特徴とし、第一型材2と、この第一型材2に接離する第二型材3と、これらの型材2、3の接合面に配置された中子8と、この中子8の周囲であって前記第一型材2と第二型材3に、合わせて螺旋状となるキャビティ6を形成した金型装置1を用い、前記第一型材2には、この第一型材2の接合面に平行して移動するスライドコア2c、2dを、前記第二型材3の接合面に平行して移動するスライドコア3c、3dが配置されており、前記螺旋状のキャビティ6は、螺旋の所定の長さを成形する型材側のキャビティとスライドコア側のキャビティとの組合せによって形成されており、この金型装置1のキャビティ6に可塑性材を充填してコイルバネSを成形する工程と、前記スライドコア2c、2d、3c、3dを第一型材2と第二型材3に対して後退させる工程と、更に、この第一型材2と第二型材3との一方あるいは双方を前記スライドコアの移動した方向と交差する方向に移動させて前記コイルバネSを第一型材2と第二型材3より離型する工程とからなることを特徴としている。
【0022】
さらに、本発明に係る製造方法は前記スライドコア2c、2d、3c、3dは、螺旋状のキャビティ6に沿って約90°間隔で配置されていることを特徴とし、前記中子8は、コイルバネSの内面を成形すると共に、このコイルバネSの内部に形成される空間部に各種の部材を一体的に成形するように構成されていることを特徴とし、前記コイルバネSの内部に形成される空間部に、円筒体を一体的に成形したことを特徴とし、中子8Aと、この中子8Aの周囲に接離する4個以上の金型片とからなり、この金型片の内面にコイルバネSを成形するための螺旋状のキャビティが形成されており、このキャビティの断面は三角形や台形や蒲鉾形の如く傾斜面あるいは円弧面を有している金型装置20に、射出成形機より熱可塑性合成樹脂を注入して成形することを特徴としている。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る可塑性材製の螺旋状部品の製造方法は、複数に分割された型材の合面に凹部を形成し、この凹部内に中子を密接状態で収容し、この中子の周囲であって、前記型材側にコイルバネ成形用のキャビティを穿設した金型装置に、溶融した可塑性材を射出成形して充填し、この可塑性材が所定の温度に到達された後に前記型材を開口して中子と共に可塑性材製の螺旋状部品を取り出すことを特徴としている。
【0024】
従って、射出成形によって可塑性材を製造するので、精度の良い可塑性材製の螺旋状部品、特に熱可塑性合成樹脂製コイルバネを大量生産することができる。
【0025】
また、第一型材2と、この第一型材2に接離する第二型材3と、これらの型材2、3の接合面に配置された中子8と、この中子8の周囲であって前記第一型材2と第二型材3に螺旋状のキャビティ6を形成した金型装置1において、前記第一型材2には、この第一型材2の接合面に平行して移動するスライドコア2c、2dを、前記第二型材3の接合面に平行して移動するスライドコア3c、3dが配置されており、前記螺旋状のキャビティ6は、螺旋の所定の長さを成形する型材側のキャビティとスライドコア側のキャビティとの組合せによって形成されている。
【0026】
従って、型材2、3と、この型材2、3に支持されているスライドコア2c、2d、3c、3dとの接合面にコイルバネSを構成する螺旋状のキャビティ6が形成されており、図5、図6、図9、図10に示したように、厚さに比較して幅の広い矩形断面を持つコイルバネのように、金型のキャビティに沿ってアンダーカット部分が多数発生するものでも、簡単に金型より成形品であるコイルバネを隔型して製造することができる。
【0027】
このようにコイルバネの断面に各種のものを採用できることから、合成樹脂製コイルバネであっても、矩形断面や偏平な板状等の各種の断面を持つコイルバネを成形することができる。
【0028】
従って、従来の円形断面のコイルバネに比較して遙かに大きな弾性係数を持ち、弾性力の強いコイルバネを成形することができ、従来の押出成形によって製造される合成樹脂製コイルバネでは使用できなかったような用途に使用することができる。
【0029】
また、コイルバネの幅に比較して遙かに厚い断面を持ち、高弾性のものを製造することができる。
【0030】
本発明のコイルバネの射出成形方法によると、目的に応じて下記のものを製造できる。
【0031】
不等ピッチのコイルバネ、螺旋を形成する部分に不等厚みを形成したコイルバネ、コイルバネの長さの中間部に突起部やブラケットを一体的に成形したコイルバネ、長さ方向の途中から厚さの異なるコイルバネを製造して圧縮する高さによって弾性力を変化させることができるコイルバネ、コイルバネの内部に各種の付加物、例えばストッパーとなる棒状物、保持棒を通すパイプ状の部材等を一体的に成形でき、その応用範囲の極めて広いものを提供できる。
【0032】
特に、従来の合成樹脂製コイルバネでは到底製造することができ得なかった、両端にフック等の留め具を一体的に成形したコイルバネでも容易に製造することができる。
【0033】
このように本発明によって製造されるコイルバネは、単なるコイルバネとしての機能のみならず、コイルバネの一部にあるいは、途中に固定部分やスペーサ部分を一体成形することができる。
【0034】
また、コイルバネの一端あるいは両端にそれぞれコイルバネとは異なる機能を持つ部材、例えば台板、断面円形あるいは角型の短軸、ネジ部、他の部材との連結部等を一体的に成形できる。また、長さ方向に直径の異なるコイルバネ、長さ方向に断面の異なるコイルバネ等、用途に応じた特性を持つものを効率的に成形することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
図面として示す実施例のように構成することで実現した。
【実施例1】
【0036】
次に、本発明の好ましい実施の例を図面を参照して説明する。
【0037】
まず、本発明により製造可能なコイルバネの構造について説明する。図6は本発明によって効率的に製造できる代表的なコイルバネSの斜視図であり、ポリプロピレン、ポリエステルあるいはポリカーボネート等の高弾性率を持ち、工業用途に使用される合成樹脂を用いて射出成形したコイルバネの一例を示している。このコイルバネSの特徴は、例えば、厚さtが2mm、幅bが5mmの薄板状の断面を持ち、外径が45mm、ピッチが7mmの螺旋状に形成したもので、平板状の断面係数を採用したことによる改良された弾性力により優れたバネ特性を発揮できるものである。
【0038】
また、この薄板をスパイラル状に射出成形したバネにおいては、殆ど圧縮された状態においても安定して弾性力を発揮できる効果がある。また、完全に圧縮された場合は一つの円筒体として作用する効果がある。この効果は液体、気体等の流体の流通量を制御する弁体としても利用できることを意味する。
【0039】
図7はコイルバネS1を構成するコイル部cと、その内部の円筒体Bを同心円状に配置して両者をフランジ部fで一体的に射出成形したもので、このコイル部cの端部に固定部として使用できる突出片dを形成したものを示している。この突出片dは、例えばコイル部cの弾性力を他に伝達する部分であり、また、円筒体Bはその内部に例えば支持軸や案内部材を貫通させて使用する場合等に使用できる。
【0040】
このように本発明は単なるコイルバネのみならず、コイルバネと他の機能を持つ部材と一体化したものも簡単に製造することが可能となる。
【0041】
図8は、スタンダード的なコイルバネS2の正面図であって、外径D、幅bに対して厚さtを比較的厚く、更にピッチpも比較的大きくしたもので、弾性変形するストロークを大きくし、比較的強い弾性力を発揮できる特性を持つものを示している。なお、前記各種のストロークや弾性力等の条件や寸法は任意に設計することが可能である。
【0042】
また、図9にコイルバネS2に採用する各種断面を示しており、(a)は縦梁状断面、(b)は横梁状断面、(c)は台形断面、(d)と(e)は蒲鉾形断面、(f)は山形断面をそれぞれ示している。これらの断面は金属のコイルバネとは異なって、射出成形の特徴を活かしてバネの用途に応じた断面を採用できる点が優れている。
【0043】
図10は、本発明によって製造できる特殊なバネ力の大きなコイルバネS3であり、厚みtに比較して幅bを広くしたものであり、しかも両端に端板(あるいは支持板)Tをそれぞれ一体成形して安定した状態で支持し易くしたものである。この構造のものは複数本を積み上げた状態で使用すると、長いコイルバネと同様に利用できる。
【0044】
また、図11に示すS4は前記図10のコイルバネS3の変形であって、端板Tを省略した簡易型のものを示している。このコイルバネは複数個並列して使用すると広い平面の圧力を受ける用途に使用することができる。
【0045】
次に、金型装置について説明する。図1は、本発明に係る合成樹脂製コイルバネを製造するための金型装置の要部を示す斜視図、図2は同横断面図、図3は型材とスライドコアと中子との関係を示す断面図、更に図4はスライドコアを除去した後、型材を後退させて目的とするコイルバネを取り出した状態を示す側面図である。なお、この図4においては中子は省略されている。
【0046】
また、図5は図1に示した金型装置1を更に具体化した装置の金型部材の分解図であって、一体化すべき部分を一体化している。また、中子8Aを前後に二分して成形品であるコイルバネSを取り出し易い構造としている。
【0047】
この実施の形態に係わる金型装置1は図6〜図11に例示した断面が矩形乃至平板状、あるいはリボン状のコイルバネを製造するのに適した装置であって、矩形断面や平板状断面等の断面形状を有するコイルバネを金型から断面変形しない状態で正確に抜出すようにしたものである。
【0048】
例えば、矩形乃至平板状の断面を持つコイルバネは、通常使用される2つの金型の合面に1/2づつキャビティを形成した場合は、金型に付着して抜けない「アンダーカット部分」が発生する。このアンダーカット部分は、成形品の抜出し方向の前部に金型の一部が突出している場合を意味しており、従って、金型の製作に際しては、金型の移動方向とコイルバネのような複雑な傾斜面を持つ成形品の抜出し方向との関係で、成形品が引っ掛かる部分が存在しないように金型の設計が必要である。
【0049】
その意味において本発明においては、金型装置1を第一型材(右型あるいは上型)第二型材(左型あるいは下型)の組合せからなる型材を基礎構造として構成している。この基礎構造の型材2、3は横方向X1、X2に移動する。そしてこの方向とは異なる方向、好ましくは直交する縦方向にY1、Y2に移動するスライドコア2c、2d、3c、3dを前記型材2、3に支持させている。前記第一型材2と第二型材3は、成形型部2a、2bと、3a、3bと前記スライドコア2c、2d、3c、3dで構成されている。
【0050】
本発明に係る金型装置1は、例えば、第一型材2と、第二型材3で構成され、そして、これらの型材2、3の合面に形成されている貫通孔5(あるいは凹部)の周囲にコイルバネSを成形するためのキャビティ6を形成している。前記貫通孔5に中子8が配置され、この中子8と前記型材2、3との間に形成されたキャビティ6によってコイルバネSが成形されるようになっている。
【0051】
前記中子8を中心として第一型材2と第二型材3とが矢印X1、X2の方向に、一方あるいは双方が移動する離型動作をするようになっている。また、中子8は上下と左右と中心部の部材の組合せで円柱状に構成されており、中心の部材を除去し、その両側の部材を除去すると上下の円弧状の表面を持つ部材を除去して分解し、成形されたコイルバネSを取り出すことができるようになっている。
【0052】
この実施の形態においては、第一型材2と第二型材3のコイルバネ状のキャビティ6の曲面の切削を容易にするために、二つに割った型材(成形型部2a、2bと3a、3b)で製作し、これらを凹凸状の嵌合部や連結板を使用して一個の部材に形成している。そして第一型材2と第二型材3には、合面に沿って移動するスライドコア2c、2dと3c、3dがそれぞれ設けられている。
【0053】
このスライドコア2cの端部は連結金具2eで、また、スライドコア2dの端部は連結金具2fでそれぞれ一体とされており、矢印Y1、Y2で示すように一斉に開口動作するようになっている。この構造は第二型材3側にも同様に採用されている。
【0054】
従って、コイルバネSの成形工程においては、第一型材2と第二型材3と、これらの第一型材2、第二型材3に支持されているスライドコア2c、2d及び3c、3dによって貫通孔5が形成され、この貫通孔5内に配置された丸棒状の中子8の周囲にコイルバネSを成形するための螺旋状のキャビティ6の壁面が連続的に形成されているのである。
【0055】
図5に示す金型装置1の場合は、図1の装置を著しく簡略化して金型の精度を向上させており、実際の装置にはこのような簡易型で、耐久性のあるものが使用される。
【0056】
型材2、3とスライドコアについて説明すると、図2と図3を参照して理解できるように、コイルバネSを形成する薄板の厚さの中間には次のように型材が配置されてキャビティ6を形成している。成形型部2aと、この成形型部2aに形成された間隙に案内されて矢印Y1の方向に移動するようにスライドコア2cが嵌合配置されている。同様に成形型部2bと、この成形型部2bに形成された間隙に案内されて矢印Y2の方向に移動するようにスライドコア2dが嵌合配置されている。また、成形型部3aと、この成形型部3aに形成された間隙に案内されて矢印のように上方に移動するスライドコア3c、成形型部3bと、この成形型部3bに形成された間隙に案内されて矢印のように下方に移動するスライドコア3dが嵌合配置されている。
【0057】
このように、コイルバネSの1ピッチを形成する型材は90°の範囲で異なる型材で構成され、また、このコイルバネSの厚さ方向には図3に示すように、成形型部2bとスライドコア2d、成形型部3bとスライドコア3d、成形型部3aとスライドコア3c、成形型部2aとスライドコア2cの合面に螺旋を90°の範囲で分割したキャビティ6が形成されている。
【0058】
この実施の形態においては、厚さに比較して幅の広い矩形断面を持つコイルバネSを成形する関係で、90°毎にアンダーカット部分が形成されることになるから、90°毎に2種類の金型(型材とスライドコアの組合せ)が配置されている。前記の如く、図3に示す1ピッチpのコイルバネSに着目すると、スライドコアで成形する部分は90°毎に配置され、第一型材2と第二型材3で成形される部分は前記スライドコアに続く90°毎の部分である。
【0059】
前記金型装置1で製造されるコイルバネSの頂面にはパーティングラインが形成されており、この頂面の部分で第一型材2とスライドコア2c、2d、第二型材3とスライドコア3c、3dが対面していることがわかる。
【0060】
図4は生成されたコイルバネSを金型装置1から取り出す状態(中子8を省略)を示しており、図1のように第一型材2の成形型部2a、2bとスライドコア2c、2dを集合させ、同様に第二型材3の各種型材を集合させ、前記中子8を中心として螺旋状のキャビティ6が形成される。
【0061】
このようにして金型装置1が集合状態となったならば、図示しない射出成形機に接続されたノズル10(図1)より金型装置1内に溶融樹脂を圧入し、所定の時間をおいて金型が所定の温度に冷却されたならば図1のように各型材を開口し、中子8の周囲にコイルバネSを成形した状態で取り出す。そして長さ方向に複数に分割されている中子8の周面を縮小させてコイルバネSを中子8より取り出すのである。
【0062】
本発明のコイルバネに使用する合成樹脂は弾性係数の高い工業用樹脂、例えばポリカーボネート、ナイロン、ABS等が使用できるが、これらの樹脂に炭素繊維やガラス繊維の短繊維、場合によっては金属ウイスカーを混合した原料を使用して射出成形することによって更に高反発力を持つコイルバネを成形することができる。
【0063】
図12は、図1のようにスライドコアを使用しない金型装置20によってコイルバネS5を成形する方法を示す斜視図であって、中子8Aと8個割りの型片(セグメント)21の間に螺旋状のキャビティを形成し、これに溶融樹脂を射出注入してコイルバネS5を成形するものである。なお、この種の金型装置の場合は型片21を4分割あるいは6分割したものでも十分に使用できる。
【0064】
この金型装置20の場合は、スライドコアを使用していないことから、コイルバネの断面はアンダーカット部分が発生しないように、台形、三角状、蒲鉾状等比較的大きな斜面を持ったものを効率的に成形する場合の装置に適している。
【0065】
本発明によって製造できる合成樹脂製コイルバネを例示すると次の通りである。断面が偏平な矩形断面のもの、台形断面のもの、頂部に凹部を持つ二山形断面のもの(図9)あるいは扇形等、押出成形では製造できない断面のコイルバネを簡単に製造できる。図7に示すように、コイルバネS1の端部に突出片dを形成したり、コイルバネの内部に円筒体B等の付加物を一体成形することができる。図13に示すように、コイルバネS5の両端にフックf等の固定手段等他の機能を持つ部材を一体的に設けたものを製造できる。図14は前記コイルバネS5を成形するための二つに分割された中子8B、8bを示しており、成形後はこれらの中子8B、8bを矢印のように抜き去ることで図13に示したコイルバネS5を取り出すことができるのである。
【0066】
また、金属バネと同様に使用できるものを製造できる。即ち、図10や図11に示すように、従来の成形方法では到底製造不可能な厚さに比較して幅の広いコイルバネS3、S4でも製造できる。そしてその材料に炭素繊維やガラス繊維、あるいは金属ウイスカー等の補強繊維を混入することによって高い弾性率を持つ合成樹脂素材とし、しかも、最大の断面係数を持つものを簡単に製造することが可能である。
【0067】
図1に示した金型装置を使用すると、不等厚さのコイルバネ、不等ピッチのコイルバネS6(図15)、コイルバネの途中に、コイルバネの間を連結する部材R(図16)を設けてコイルバネとして作用しない部分を形成したバネS7、コイルバネの端部あるいは中間部に固定部材を設けたコイルバネS8を一体成形できる。また、図18として示すようにコイルバネS9のピッチ間に突起状のスペーサ22、22‥を一体成形することもでき、かかる構成は、このコイルバネS9をコピー機等における廃トナーの搬送部材として使用した際、捻れ等の変形によってピッチ間が詰ってしまい、フィーダとして効を奏しなくなってしまうことを防止できる。
【0068】
また、図17に示すように、コイルバネの両端に短軸を突出させた固定部材k2と台板k1をそれぞれ設けたもの等、各種の用途に応じた機能を持つものを製造することができる。
【0069】
コイルバネとしては、金型装置の加工上の都合から、円形なスパイラル状のものが適している。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば断面として四角形、六角形、八角形等用途に応じて各種の形状のものでも製造することが可能である。
【0070】
例えば、矩形断面のコイルバネの場合、図10及び図11に示すように、高さ/厚さの比を大きく変えたものを、用途に応じて設計し、製造することが可能である。また、幅に比較して高さを大きくした弾性力の大きなコイルバネも用途によって容易に製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明に係る可塑性材製の螺旋状部品は、特に熱可塑性合成樹脂製のコイルスプリングを対象とし、弾発要素として用いることを主目的としているが、可塑性材は合成樹脂のほかにも金属、セラミック等も広く応用範囲とし、これによって断面を矩形状等とした金属製、セラミック製のバネを製造でき、特にセラミックの場合は、射出成形したものを焼結することで、弾性と硬性を併せもつ螺旋状部品とできる。加えて、螺旋状部品はバネのほか、前記したように、弁体やフィーダ等としても利用でき、成型時に薄膜や焼却できるような素材を介在させると引張バネの成形にも応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】型材とスライドコアを組み合わせた金型装置の分解斜視図である。
【図2】図3に示した金型装置の断面表示線で切断した横断面図である。
【図3】図2に示した金型装置の断面図である。
【図4】成形型部と成形したコイルバネとの関係を示す側面図である。
【図5】図1に示した金型装置を簡略化した装置の分解斜視図である。
【図6】偏平断面を持つコイルバネの斜視図である。
【図7】円筒体を中央部に持つコイルバネの斜視図である。
【図8】標準的なコイルバネの正面図である。
【図9】(a)〜(f)図は、図8のコイルバネに適用する各種断面図である。
【図10】本発明で製造できる広幅で弾性力の大きなコイルバネの斜視図である。
【図11】本発明で製造できる広幅で弾性力の大きなコイルバネの斜視図である。
【図12】スライドコアを使用しない金型装置を示す斜視図である。
【図13】両端にフックを形成したコイルバネの側面図である。
【図14】図13のコイルバネを製造する際の分解コアを示す図である。
【図15】異なる直径と、異なるピッチを持つコイルバネの斜視図である。
【図16】中間部にコイルとして機能しない部分を持つコイルバネの斜視図である。
【図17】一端に台座等を、他端に支持板等を設けたコイルバネの斜視図である。
【図18】一部にスペーサとしての突起を備えたコイルバネの斜視図である。
【符号の説明】
【0073】
1 金型装置
2 第一型材
2a、2b 成形型部
3 第二型材
3a、3b 成形型部
2c、2d、3c、3d スライドコア
5 貫通孔(凹部)
6 キャビティ
8、8a 中子
8B、8b 中子
S〜S9 コイルバネ
20 金型装置
21 型片
22 突起状のスペーサ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形した可塑性材の断面が少なくとも一個所以上の角部を有した四角形、六角形、八角形、三角形等の形状とし、あるいはその一部にアール面を形成してあることを特徴とする可塑性材製の螺旋状部品。
【請求項2】
中央空間部に付加物を設けたことを特徴とする請求項1に記載の可塑性材製の螺旋状部品。
【請求項3】
少なくとも一端に弾発性以外の機能を持つ部分を一体に成形したことを特徴とする請求項1に記載の可塑性材製の螺旋状部品。
【請求項4】
本体の長さ方向にピッチ、外径、内径、厚さ、断面形状のうち、少なくとも一つを変更し、かつ一体成形としてあることを特徴とする請求項1に記載の可塑性材製の螺旋状部品。
【請求項5】
本体の少なくとも一方の端部にフックを一体的に備えたことを特徴とする請求項1に記載の可塑性材製の螺旋状部品。
【請求項6】
本体コイルの断面は、上面と下面がほぼ平行しており、全圧縮の状態において、コイルの下面と隣接するコイルと上面とが接触状態となるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の可塑性材製の螺旋状部品。
【請求項7】
断面が矩形のコイルの角部を含む頂面部分において型材のパーティングラインが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の可塑性材製の螺旋状部品。
【請求項8】
コイルの中間部分には隣接するコイル間を一体に連結するバーRを備え、バネとしての作用をしない部分を有していることを特徴とする請求項1に記載の可塑性材製の螺旋状部品。
【請求項9】
各コイルには軸芯方向に沿った突起状のスペーサを一体に備え、各コイル間の隙間を保持することができるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の可塑性材製の螺旋状部品。
【請求項10】
前記した可塑性材は熱可塑性の合成樹脂であることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6、請求項7、請求項8または請求項9に記載の可塑性材製の螺旋状部品。
【請求項11】
複数に分割された型材の合面に凹部を形成し、この凹部内に中子を密接状態で収容し、この中子の周囲であって、前記型材側に螺旋状部品成形用のキャビティを形成した金型装置に、溶融した可塑性材を射出成形して充填し、この可塑性材が所定の温度に到達された後に前記型材を開口して中子と共に可塑性材製の螺旋状部品を取り出すことを特徴とする可塑性材製の螺旋状部品の製造方法。
【請求項12】
第一型材2と、この第一型材2に接離する第二型材3と、これらの型材2、3の接合面に配置された中子8と、この中子8の周囲であって前記第一型材2と第二型材3に、合わせて螺旋状となるキャビティ6を形成した金型装置1を用い、前記第一型材2には、この第一型材2の接合面に平行して移動するスライドコア2c、2dを、前記第二型材3の接合面に平行して移動するスライドコア3c、3dが配置されており、前記螺旋状のキャビティ6は、螺旋の所定の長さを成形する型材側のキャビティとスライドコア側のキャビティとの組合せによって形成されており、この金型装置1のキャビティ6に可塑性材を充填してコイルバネSを成形する工程と、前記スライドコア2c、2d、3c、3dを第一型材2と第二型材3に対して後退させる工程と、更に、この第一型材2と第二型材3との一方あるいは双方を前記スライドコアの移動した方向と交差する方向に移動させて前記コイルバネSを第一型材2と第二型材3より離型する工程とからなることを特徴とする可塑性材製の螺旋状部品の製造方法。
【請求項13】
前記スライドコア2c、2d、3c、3dは、螺旋状のキャビティ6に沿って約90°間隔で配置されていることを特徴とする請求項12に記載の可塑性材製の螺旋状部品の製造方法。
【請求項14】
前記中子8は、コイルバネSの内面を成形すると共に、このコイルバネSの内部に形成される空間部に各種の部材を一体的に成形するように構成されていることを特徴とする請求項11または請求項12に記載の可塑性材製の螺旋状部品の製造方法。
【請求項15】
前記コイルバネSの内部に形成される空間部に、円筒体を一体的に成形したことを特徴とする請求項11または請求項12に記載の可塑性材製の螺旋状部品の製造方法。
【請求項16】
中子8Aと、この中子8Aの周囲に接離する4個以上の金型片とからなり、この金型片の内面にコイルバネSを成形するための螺旋状のキャビティが形成されており、このキャビティの断面は三角形や台形や蒲鉾形の如く傾斜面あるいは円弧面を有している金型装置20に、射出成形機より熱可塑性合成樹脂を注入して成形することを特徴とする可塑性材製の螺旋状部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−25619(P2008−25619A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−195654(P2006−195654)
【出願日】平成18年7月18日(2006.7.18)
【出願人】(000134464)株式会社トスカ (23)
【出願人】(505064932)株式会社メックモールド (5)
【Fターム(参考)】