説明

可変オリフィス黒液ノズル

回収ボイラ内で黒液を噴霧するためのノズルは、噴霧の精密調整を可能にするために、ノズル本体全体の交換を必要とすることなく、ノズルのオリフィスのサイズおよび/または形状を変更することによって可変な噴霧パターンを提供するように、取り外し、他のインサートと交換することができる排出オリフィス・インサートを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学回収ボイラ内で燃焼される黒液の噴射および霧化のために使用されるノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
黒液は、パルプ化工程の副産物である液体である。この液体は、木のパルプ化の結果生じる有機および無機材料の両方を含んでいる。黒液は、特殊なボイラ内で燃焼され、そのボイラ内では、有機物による熱が蒸気を発生させるために使用され、無機物がパルプ化学物質を抽出するように還元され、次いでそのパルプ化学物質がパルプ化工程へ戻される。適切な燃焼および化学回収を確実にするために、液体は、最適なサイズに霧化されなければならない。このことは、ボイラの幾何形状、ならびに燃焼空気流、液体流速、噴射圧力および温度などの動作パラメータに依存する。
【0003】
従来技術によれば、黒液は、専用のノズルを通ってボイラ内へ噴霧される。図1は、最も広く使用されているノズル、スプラッシュプレート(splash plate)10の概略図である。使用されている他のノズル・タイプは、図2に示すVジェット20であり、ごく最近では、図3に示されている、ビール・カン30である。後者は、ボイラ燃焼における新しい開発の結果として生まれた。
【0004】
スプラッシュプレート・ノズルの場合には、黒液が、ノズル本体13上の取入オリフィス11に装着されたパイプ14を通って移送される。液体は、排出オリフィス12を通ってノズルから出る。取入オリフィス11および排出オリフィス12は共に、ノズル本体13の一体部品である。液体は、オリフィスから出る際、スプラッシュプレート15にあたり、そこでシート状に広がり、ついには分散し、燃焼する小滴になる。
【0005】
Vジェット・ノズル20については、液体が、ノズル本体23上の取入オリフィス21に装着されたパイプ24を通って移送される。液体は、排出オリフィス22を通ってノズルから出る。取入オリフィス21および排出オリフィス22は共に、ノズル本体23の一体部品である。排出オリフィスを通って移動する液体は、収縮して扇のように広がり薄いシートを形成し、ついには分散し、燃焼する小滴になる。
【0006】
ビール・カン・ノズル30については、液体は、ノズル本体33上の取入オリフィス31に装着されたパイプ34を通って移送される。液体は、排出オリフィス32を通ってノズルから出る。取入オリフィス31および排出オリフィス32は共に、ノズル本体33の一体部品である。取入オリフィス31を通って移動する液体は、小さい移行チャネル35を移動し、空洞壁に接する一点でノズル本体33の内部空洞36へ入る。液体は、空洞の周りを回旋し、ノズル本体の底部の排出オリフィス32を通って最終的にノズル本体33から出る。排出オリフィスから出る液体は、円錐のように広がり、ついには分散し、燃焼する小滴になる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、ノズルの排出オリフィスが、ノズル全体を変更する必要なしに容易に変更することができる、回収ボイラ内で黒液を噴霧するためのノズルが提供される。これにより、その時およびその場所で、特定の燃焼セットアップに対して霧化を精密調整することができる。
【0008】
本発明の主題が、本明細書の結末部分で特に指摘され、明確に特許請求されている。しかし、編成も動作方法も、そのさらなる利点および目的と共に、類似の符号が類似の要素を指す添付の図面に関して以下の説明を参照すれば最も良く理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】従来技術のスプラッシュプレート・ノズルの断面図である。
【図2】従来技術のVジェット・ノズルの断面図である。
【図3】従来技術のビール・カン・ノズルの概略図である。
【図4】可変オリフィス・ビール・カンの断面図である。
【図5】5Aは可変オリフィス・ビール・カンの排出端部の底面図であり、5Bは5Aからのロール・ピンおよびオリフィス・ディスクの詳細図である。
【図6】可変オリフィスVジェットの断面図である。
【図7】Vジェット・ノズルの別の変形形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
燃焼および化学還元を最適化するために、噴射圧力または流速を変化させるためにオリフィス(orifice)・サイズを変更することが必要である。上記の従来技術ノズルのすべてについては、排出オリフィスは、ノズル本体の一体部品であり、したがってオリフィスを変更するために、ノズル本体全体を変更することを必要とすることになる。別の例では、流面積の増加および/または形状の変化を引き起こす摩耗により、オリフィスを変更することが必要であることがある。ここに開示された本発明によるノズル構成では、オリフィス・サイズを変更するために排出オリフィス用の開口を支持する単一の部品を変更するだけでよい。
【0011】
図4および5は、本発明によるビール・カン・タイプ・ノズル40の構成を示している。図4は、ノズルを通る断面図を示しており、図5Aは、可変オリフィスについての詳細と共にノズル50の底端部の図を示している。図5Bは、図5Aの構成の断面の、より詳細な図を示している。ビール・カン・ノズル40の場合、液体が、ノズル本体42上の取入オリフィス45に装着されたパイプ41を通って移送される。図5Aによれば、41を通って入る液体が、通路51を通って移動し、ノズルの内部空洞46の上部で本体に入り、その壁に接して移動する。液体が、経路52によって示すように、内部空洞の周りを旋回し、オリフィス44を通って最終的に排出される。オリフィスは、オリフィス・ディスク43上に孔を穿孔することによって作製される。図3の従来技術30とは違って、このディスクは、ノズル本体42の一体部品ではない。これは、ノズルの出口端部のくぼみ内に配置された完全に独立した構成部品である。ノズルが使用中であるとき、オリフィス・ディスクは下を向いている。スナップ・リング48が、オリフィス・ディスクがノズル本体から落ちることを防止する。ノズルの内部の旋回流を達成するために、排出オリフィスは、取入オリフィスから最も遠い四分円内に回転自在にあるべきである。この位置を維持するために、オリフィス板は、その円周の一部分がディスク43と係合される一方、残りの部分がハウジング42と係合されているピン49によって、固定保持されている。ピンの代わりに、平らな面が、ディスクの周縁に切削されてもよい。対応する平らな面が同様にノズル本体内に切削される。いずれの場合も、ピンまたは平らな面とオリフィス孔は、180°離れて設置され、取入オリフィス54の中心線から45°の角度にあるライン52に沿っている。ピンは、ハウジング内の孔へ挿入されている。孔の深さは、ピンがディスクの表面の上に突き出さないように選択される。スナップ・リングを正確に着座させるために、ピンをディスクの外部表面と同一平面にすることが、重要である。ディスクの縁部上に雄ねじを切削することによってディスクを保持することが可能であるが、腐食および熱によりねじが劣化するので、それは実用的でない。オリフィス・ディスクを入れ替えることによってオリフィス直径を変更する性能を維持しながら化学回収ボイラの環境内でノズルを操作することを可能にするために、ノズル・ハウジングは、実質上異なる熱膨張係数を有する異なる材料からなる。ディスクの熱膨張係数は、ノズル・ハウジングの熱膨張係数よりも大きい。ディスク直径およびノズル本体内のくぼみの直径は、室温(約20℃)で、特定の隙間47がそれら2つの間で維持されるように注意深く制御される。ノズルへ移送される黒液は、100〜130℃の範囲内である。そのため、高い温度では、ディスクは、ハウジングよりも大きく膨張し、したがって隙間47を閉鎖し、内部チャンバ46の密封を確実にする。ノズルの使用を中止し、温度が室温まで下げられたとき、ディスクが、その元のサイズに収縮することになり、このことが、これら2つの構成要素の間の隙間をさらに拡大することになり、ディスクを交換し、それによってオリフィス直径を変更することを可能にする。
【0012】
図6は、本発明による方式で嵌合されたVジェット・ノズル60を示している。液体は、本体62上の取入オリフィス65に装着されたパイプ61を通ってノズルに入る。パイプ61とノズル本体62の間に、オリフィス・インサート63が挟置されている。液体は、パイプから内部空洞66内へ通過し、次に排出オリフィス64を通って排出される。インサートは、取入オリフィスに対向する端部に配置されたショルダ68と衝合するショルダ69を有する。Vジェットからの噴霧を特定の向きに保持するために、インサート63はノズル本体の内部で自由に回転する。オリフィス64の方向が最終決定された後、ノズル本体が、パイプおよびノズル本体上のねじを合わせることによりパイプに対して締付けられる。オリフィス・インサートとパイプの間の傾斜した接合部67が、液体がノズル本体から漏出しないことを確実にする。
【0013】
図7は、Vジェット・ノズルの別の変形形態を示している。
【0014】
このようにして、本発明によれば、本体全体の交換を必要とすることなく、流れおよび噴霧パターンを調節するためのオリフィス特性の変更を可能にするようなノズル構成が提供される。これは、たとえば、より低いコストの動作およびメンテナンス作業を提供することができる。さらに、オリフィス特性が、回収ボイラ内での最適な燃焼のために噴霧内の所望の滴サイズおよび飛沫速度を提供するように変更されてもよい。
【0015】
本発明の複数の実施形態が示され、説明されたが、多くの変更および修正が、そのより広い態様で本発明から逸脱することなく行われてもよいことを当業者なら理解されよう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の精神および範囲内にあるすべてのこのような変更および修正を網羅するように意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同じノズル本体を使用しながら複数のオリフィス・サイズおよび形状で動作することが可能な、回収ボイラ内で黒液を噴霧するためのノズル。
【請求項2】
ノズル本体と、
取入オリフィスと、
中に画定されたオリフィスを有する排出オリフィス・インサートと
を備える請求項1に記載のノズル。
【請求項3】
前記ノズル本体内に取外し可能に挿入するように構成された複数の前記排出オリフィス・インサートを備える請求項2に記載のノズル。
【請求項4】
前記複数の排出オリフィス・インサートのいくつかが、前記排出オリフィス・インサートの他のものとは異なるオリフィス構成を有する請求項3に記載のノズル。
【請求項5】
前記異なるオリフィス構成が、排出オリフィス・インサートを変更することによって異なる噴霧パターンを生成するために、異なる幾何形状を備える請求項4に記載のオリフィス・インサート。
【請求項6】
前記異なるオリフィス構成が、排出オリフィス・インサートを変更することによって異なる噴霧パターンを生成するために、所定の幾何形状に対して異なるサイズを備える請求項4に記載のオリフィス・インサート。
【請求項7】
中にオリフィス・インサート受け部分を有するノズルを提供するステップと、
所望の黒液噴霧特性を提供するオリフィスを有するオリフィス・インサートを選択し、かつその中に挿入するステップと
を含む、調節可能な黒液噴霧を提供する方法。
【請求項8】
前記インサートが、より高温の、動作温度では、前記インサートが、前記ノズル内に固定的に着座するために膨張し、より低温の、非動作温度では前記インサートが、その取外しおよび交換を可能にするために収縮する熱膨張特性を有する請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記インサートを取り外し、かつそれを第1のオリフィスとは異なる構成のオリフィスを有する別のインサートと交換し、それによって動作中に作成される噴霧パターンを変更するステップをさらに含む、請求項6に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−541703(P2009−541703A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−516710(P2009−516710)
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【国際出願番号】PCT/US2007/071714
【国際公開番号】WO2007/149950
【国際公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(508368194)クライド・ベルグマン・インク (1)
【Fターム(参考)】