説明

可変動弁装置の制御装置

【課題】バルブタイミングを機関運転状態に応じて変更することが可能な状況をより多く確保することのできる可変動弁装置の制御装置を提供する。
【解決手段】内燃機関1の可変動弁装置20は、吸気バルブ21のバルブタイミングVTを変更する油圧式のバルブタイミング変更機構30と、バルブタイミングVTを中間角位相VTmdlに固定するバルブタイミング固定機構40と、バルブタイミング変更機構30の動作を制御する電子制御装置81とを備える。電子制御装置81は、バルブタイミング変更機構30の動作状態がバルブタイミングVTを変更することが可能な位相解除状態のとき、作動油の成分に応じてバルブタイミングVTの変更可能範囲を制限する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブタイミングを変更する油圧式の位相変更機構と、バルブタイミングを特定位相に固定する位相固定機構とを含む内燃機関の可変動弁装置のための制御装置であり、位相変更機構の動作を制御する可変動弁装置の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の可変動弁装置の制御装置は、バルブタイミングのフィードバック制御の安定性の点から、位相変更機構の作動油の温度が低いときには位相固定機構によりバルブタイミングを特定位相に固定する。すなわち、位相変更機構の作動油の温度が低いとき、位相変更機構の動作を制限するための制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−210424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作動油の温度および内燃機関の回転速度が互いに同じ大きさであることを前提として、高粘度の種類の作動油が用いられているときの位相変更機構の動作速度と、低粘度の種類の作動油が用いられているときの位相変更機構の動作速度とを比較したとき、高粘度の作動油の抵抗が大きいことから前者の動作速度が後者の動作速度よりも小さくなる。すなわち、位相変更機構の動作速度は、作動油の温度のみの影響を受けて変化するものではなく、作動油の種類等の違いによる粘度の影響も受けて変化する。
【0005】
一方、特許文献1の可変動弁装置の制御装置は、作動油の温度が低いときには一律に位相変更機構の動作を制限しているため、低粘度の種類の作動油が用いられているとき、すなわち位相変更機構の動作速度に対する作動油の粘度の影響が小さいと予測されるときにも、バルブタイミングを変更することが許容されない。
【0006】
この状態は、バルブタイミングを機関運転状態に応じて変更することが許容されるにもかかわらず、バルブタイミングの変更可能範囲が機関運転状態に見合う変更可能範囲に対して過度に制限されている状態に相当する。
【0007】
なお、ここでは位相変更機構の動作の制限として、位相固定機構により位相変更機構の動作を固定するものを例として挙げているが、作動油の粘度を考慮して位相変更機構の動作の制限するための制御を行なう可変動弁装置の制御装置あれば、上記と同様の問題が生じるものと考えられる。
【0008】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、バルブタイミングを機関運転状態に応じて変更することが可能な状況をより多く確保することのできる可変動弁装置の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための手段を以下に記載する。
(1)第1の手段は、請求項1に記載の発明すなわち、バルブタイミングを変更する油圧式の位相変更機構と、バルブタイミングを特定位相に固定する位相固定機構とを含む内燃機関の可変動弁装置のための制御装置であり、前記位相変更機構の動作を制御する可変動弁装置の制御装置において、前記位相変更機構の作動油の成分に応じて前記位相変更機構の動作を制限する制限制御を行なうことを要旨としている。
【0010】
この発明によれば、作動油の成分の違いによる作動油の粘度の違いが制限制御に反映されるため、作動油の温度が低い状態において位相変更機構の動作を一律に制限する構成と比較して、バルブタイミングを機関運転状態に応じて変更することが可能な状況をより多く確保することができる。
【0011】
(2)第2の手段は、請求項2に記載の発明すなわち、請求項1に記載の可変動弁装置の制御装置において、前記バルブタイミングが前記特定位相に固定されている前記位相変更機構の動作状態を位相固定状態とし、前記バルブタイミングを変更することが可能な前記位相変更機構の動作状態を位相解除状態とし、前記位相変更機構が前記位相解除状態のときに前記バルブタイミングの変更が可能な範囲を変更可能範囲として、前記制限制御において、前記位相変更機構の作動油の成分に応じて前記変更可能範囲を制限することを要旨としている。
【0012】
この発明によれば、作動油の成分の違いによる作動油の粘度の違いが変更可能範囲の制限に反映されるため、バルブタイミングを機関運転状態に応じて変更することが可能な状況をより多く確保することができる。
【0013】
(3)第3の手段は、請求項3に記載の発明すなわち、バルブタイミングを変更する油圧式の位相変更機構と、バルブタイミングを特定位相に固定する位相固定機構とを含む内燃機関の可変動弁装置のための制御装置であり、前記位相変更機構の動作を制御する可変動弁装置の制御装置において、前記バルブタイミングが前記特定位相に固定されている前記位相変更機構の動作状態を位相固定状態とし、前記バルブタイミングを変更することが可能な前記位相変更機構の動作状態を位相解除状態とし、前記位相変更機構が前記位相解除状態のときに前記バルブタイミングの変更が可能な範囲を変更可能範囲として、前記位相変更機構の動作を制限する制限制御を行なうこと、ならびに、前記制限制御において、前記位相変更機構の作動油の粘度に応じて前記変更可能範囲を制限することを要旨としている。
【0014】
この発明によれば、作動油の粘度の違いが変更可能範囲の制限に反映されるため、作動油の温度が低い状態において位相変更機構の動作を一律に制限する構成と比較して、バルブタイミングを機関運転状態に応じて変更することが可能な状況をより多く確保することができる。
【0015】
(4)第4の手段は、請求項4に記載の発明すなわち、請求項2または3に記載の可変動弁装置の制御装置において、前記位相変更機構の作動油の温度を油温度とし、前記位相変更機構の作動油の粘度を油粘度とし、前記油温度が所定の温度範囲内にある状態を所定油温時として、前記制限制御において、前記所定油温時かつ前記油粘度が高いときの前記変更可能範囲の大きさを前記所定油温時かつ前記油粘度が低いときの前記変更可能範囲の大きさよりも小さくすることを要旨としている。
【0016】
油粘度が高いほど位相変更機構の動作に対する作動油の抵抗が大きくなるため、位相変更機構を位相解除状態から位相固定状態に変更するまでにかかる期間は、油粘度が低いときよりも油粘度が高いときの方が長くなる。これにより、例えば、油粘度が高いときかつエンジンストールの発生時には油粘度が低いときかつエンジンストールの発生時と比較して、位相変更機構が位相固定状態に変更されることなく機関停止する可能性が高くなる。
【0017】
この発明では、油粘度が高いときの変更可能範囲を油粘度が低いときの変更可能範囲よりも小さくしているため、油粘度が高いときと油粘度が低いときとを比較したとき、制限制御の実行中においてのバルブタイミングと特定位相との最大の差が後者よりも前者の方が小さくなる。このため、位相変更機構が位相固定状態に変更されることなく機関停止する頻度を低減することができる。
【0018】
(5)第5の手段は、請求項5に記載の発明すなわち、請求項4に記載の可変動弁装置の制御装置において、前記特定位相が最遅角位相と最進角位相との間の位相であること、前記最遅角位相から前記特定位相までの範囲のうちの前記特定位相よりも遅角側の所定の位相を遅角側制限位相とし、前記特定位相から前記遅角側制限位相までの範囲を遅角側制限範囲として、前記変更可能範囲に前記遅角側制限範囲が含まれること、ならびに、前記制限制御において、前記所定油温時かつ前記油粘度が高いときの前記遅角側制限範囲の大きさを前記所定油温時かつ前記油粘度が低いときの前記遅角側制限範囲の大きさよりも小さくすることを要旨としている。
【0019】
カムシャフトのトルクは、進角方向および遅角方向に変動する。また、進角方向に作用するトルクよりも遅角方向に作用するトルクの方が大きい。このため、特定位相よりも遅角側のバルブタイミングを進角させる場合、特定位相よりも進角側のバルブタイミングを遅角させる場合と比較して、位相変更機構にかかる抵抗が大きい。このため、エンジンストールの発生時においてバルブタイミングが特定位相よりも遅角側にあるとき、バルブタイミングと特定位相との差が大きくなるにつれて位相変更機構が位相固定状態に変更されることなく機関停止する可能性が高くなる。
【0020】
この発明では、油粘度が高いときの遅角側制限範囲を油粘度が低いときの遅角側制限範囲よりも小さくしているため、油粘度が高いときと油粘度が低いときとを比較したとき、制限制御の実行中においてのバルブタイミングと特定位相との最大の差が後者よりも前者の方が小さくなる。このため、位相変更機構が位相固定状態に変更されることなく機関停止する頻度を低減することができる。
【0021】
(6)第6の手段は、請求項6に記載の発明すなわち、請求項4に記載の可変動弁装置の制御装置において、前記特定位相が最遅角位相と最進角位相との間の位相であること、前記最遅角位相から前記特定位相までの範囲のうちの前記特定位相よりも遅角側の所定の位相を遅角側制限位相とし、前記最進角位相から前記特定位相までの範囲のうちの前記特定位相よりも進角側の所定の位相を進角側制限位相とし、前記特定位相から前記遅角側制限位相までの範囲を遅角側制限範囲とし、前記特定位相から前記進角側制限位相までの範囲を進角側制限範囲として、前記変更可能範囲に前記遅角側制限範囲および前記進角側制限範囲が含まれること、ならびに、前記制限制御において、前記所定油温時かつ前記油粘度が高いときの前記遅角側制限範囲および前記進角側制限範囲の大きさを前記所定油温時かつ前記油粘度が低いときの前記遅角側制限範囲および前記進角側制限範囲の大きさよりも小さくすることを要旨としている。
【0022】
この発明では、油粘度が高いときの遅角側制限範囲および進角側制限範囲を油粘度が低いときの遅角側制限範囲および進角側制限範囲よりも小さくしているため、油粘度が高いときと油粘度が低いときとを比較したとき、制限制御の実行中においてのバルブタイミングと特定位相との最大の差が後者よりも前者の方が小さくなる。このため、位相変更機構が位相固定状態に変更されることなく機関停止する頻度を低減することができる。
【0023】
(7)第7の手段は、請求項7に記載の発明すなわち、請求項1〜6のいずれか一項に記載の可変動弁装置の制御装置において、前記制限制御において、前記制限制御を実行する期間を制限期間として、前記作動油の成分および粘度の少なくとも一方に応じて前記制限期間を変更することを要旨としている。
【0024】
この発明によれば、作動油の成分および粘度の少なくとも一方の違いが制限期間に反映されるため、作動油の温度が低い状態において位相変更機構の動作を一律に制限する構成と比較して、バルブタイミングを機関運転状態に応じて変更することが可能な状況をより多く確保することができる。
【0025】
(8)第8の手段は、請求項8に記載の発明すなわち、請求項7に記載の可変動弁装置の制御装置において、前記位相変更機構の作動油の温度を油温度とし、前記位相変更機構の作動油の粘度を油粘度とし、前記油温度が所定の温度範囲内にある状態を所定油温時として、前記所定油温時かつ前記油粘度が高いときの前記制限期間を前記所定油温時かつ前記油粘度が低いときの前記制限期間よりも大きくすることを要旨としている。
【0026】
この発明では、油粘度が高いときの制限期間を油粘度が低いときの制限期間よりも大きくしているため、油粘度が高いときと油粘度が低いときとを比較したとき、制限制御の実行中においての変更可能範囲が制限される期間が前者よりも後者の方が長くなる。このため、位相変更機構が位相固定状態に変更されることなく機関停止する頻度を低減することができる。
【0027】
(9)第9の手段は、請求項9に記載の発明すなわち、バルブタイミングを変更する油圧式の位相変更機構と、バルブタイミングを特定位相に固定する位相固定機構とを含む内燃機関の可変動弁装置のための制御装置であり、前記位相変更機構の動作を制御する可変動弁装置の制御装置において、前記バルブタイミングが前記特定位相に固定されている前記位相変更機構の動作状態を位相固定状態とし、前記バルブタイミングを変更することが可能な前記位相変更機構の動作状態を位相解除状態とし、前記位相変更機構が前記位相解除状態のときに前記バルブタイミングの変更が可能な範囲を変更可能範囲とし、前記位相変更機構の作動油の温度を油温度とし、前記変更可能範囲を制限する期間を制限期間とし、前記油温度が所定の温度範囲内にある状態を所定油温時として、前記所定油温時の前記位相変更機構の動作速度に応じて前記変更可能範囲および前記制限期間の少なくとも一方を変更する制限制御を行うことを要旨としている。
【0028】
この発明によれば、作動油の粘度の違いが反映される位相変更機構の動作速度に応じて制限制御を行なうため、作動油の温度が低い状態において位相変更機構の動作を一律に制限する構成と比較して、バルブタイミングを機関運転状態に応じて変更することが可能な状況をより多く確保することができる。
【0029】
(10)第10の手段は、請求項10に記載の発明すなわち、請求項9に記載の可変動弁装置の制御装置において、前記バルブタイミングが進角するとき、前記位相変更機構の動作速度を学習することを要旨としている。
【0030】
カムシャフトのトルクは、進角方向および遅角方向に変動する。また、進角方向に作用するトルクよりも遅角方向に作用するトルクの方が大きい。このため、バルブタイミングを進角させる場合にはバルブタイミングを遅角させる場合と比較して、位相変更機構にかかる抵抗が大きい。これにより、作動油の粘度の違いによる動作速度の違いは、バルブタイミングの遅角時よりもバルブタイミングの進角時の方が検出しやすい。上記発明ではこの点に着目して、バルブタイミングの進角時に動作速度を学習している。このため、位相変更機構の動作速度が適切に学習される頻度が高くなる。
【0031】
(11)第11の手段は、請求項11に記載の発明すなわち、請求項9または10に記載の可変動弁装置の制御装置において、前記バルブタイミングが変化しはじめるとき、前記位相変更機構の動作速度を学習することを要旨としている。
【0032】
この発明では、バルブタイミングの変化速度が「0」の状態を基準として、この状態からのバルブタイミングの変化速度に応じて位相変更機構の動作速度を学習するため、バルブタイミングの変化速度が変動している状態を基準として学習を行う構成と比較して、位相変更機構の動作速度が適切に学習される頻度が高くなる。
【0033】
(12)第12の手段は、請求項12に記載の発明すなわち、請求項9〜11のいずれか一項に記載の可変動弁装置の制御装置において、機関運転状態に応じて前記位相変更機構の動作状態が前記位相固定状態から前記位相解除状態に変更されるとき、前記位相変更機構の動作速度を学習することを要旨としている。
【0034】
この発明では、機関運転状態に応じて位相変更機構の動作状態が位相固定状態から位相解除状態に変更されるときに動作速度を学習するため、動作速度の学習のために位相変更機構を動作させる構成と比較して、動作速度の学習にともないバルブタイミングが機関運転状態に適していないものに変更される頻度を低減することができる。
【0035】
(13)第13の手段は、請求項13に記載の発明すなわち、請求項9〜12のいずれか一項に記載の可変動弁装置の制御装置において、前記位相変更機構の動作速度を学習するとき、前記位相変更機構に対する前記作動油の給排態様として前記位相変更機構を所定の動作速度以上の動作速度で駆動するための給排態様を選択することを要旨としている。
【0036】
(14)第14の手段は、請求項14に記載の発明すなわち、請求項9〜13のいずれか一項に記載の可変動弁装置の制御装置において、前記内燃機関の回転速度を加味して前記位相変更機構の動作速度を学習することを要旨としている。
【0037】
クランクシャフトのトルクにより作動油を位相変更機構に供給する内燃機関においては、位相変更機構の動作速度が内燃機関の回転速度に応じて変化する。上記発明では、内燃機関の回転速度を加味して位相変更機構の動作速度を学習するため、学習する動作速度に対する同回転速度の影響分を小さくすることが可能になる。このため、作動油の粘度の影響がより適切に反映された位相変更機構の動作速度を学習することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態の可変動弁装置の制御装置について、これを備える内燃機関の構造を模式的に示す模式図。
【図2】同実施形態のバルブタイミング変更機構について、その径方向に沿う断面構造を示す断面図。
【図3】同実施形態のバルブタイミング変更機構について、図2のA−A線に沿う断面構造を平面上に展開したものを示す断面図。
【図4】同実施形態のバルブタイミング変更機構について、図2のA−A線に沿う断面構造を平面上に展開したものを示す断面図。
【図5】同実施形態の電子制御装置により実行される「位相解除時制御」について、その手順を示すフローチャート。
【図6】同実施形態の電子制御装置により実行される「位相解除時制御」について、その実行態様の一例を示すタイミングチャート。
【図7】同実施形態の電子制御装置により実行される「動作速度学習制御」について、その手順を示すフローチャート。
【図8】同実施形態の電子制御装置により実行される「動作速度学習制御」について、同制御において参照される学習動作速度と変更可能範囲との関係を示すマップ。
【図9】同実施形態の電子制御装置により実行される「動作速度学習制御」について、その実行態様の一例を示すタイミングチャート。
【図10】本発明のその他の実施形態としての可変動弁装置の制御装置について、電子制御装置により実行される「位相解除時制御」の手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1を参照して、内燃機関1の構成について説明する。
内燃機関1は、混合気の燃焼によりクランクシャフト15を回転させる機関本体10と、動弁系の各要素を備える可変動弁装置20と、機関本体10等に作動油を供給する油圧機構70と、これら装置をはじめとする各種装置を統括的に制御する制御装置80とを備えている。
【0040】
機関本体10は、混合気の燃焼が行われるシリンダブロック11と、可変動弁装置20が設けられるシリンダヘッド12と、機関本体10の各部位に供給する作動油を貯留するオイルパン13とを備えている。
【0041】
可変動弁装置20は、燃焼室14の吸気ポートを開放および閉鎖する吸気バルブ21と、燃焼室14の排気ポートを開放および閉鎖する排気バルブ23と、吸気バルブ21を押し下げる吸気カムシャフト22と、排気バルブ23を押し下げる排気カムシャフト24とを備えている。またこの他に、クランクシャフト15の回転位相に対する吸気カムシャフト22の回転位相(以下、「バルブタイミングVT」)を変更するバルブタイミング変更機構30と、バルブタイミングVTを固定するバルブタイミング固定機構40とを備えている。
【0042】
バルブタイミング変更機構30は、バルブタイミングVTを最も進角側のバルブタイミング(以下、「最進角位相VTmax」)から最も遅角側のバルブタイミング(以下、「最遅角位相VTmin」)までの間で変更する。
【0043】
バルブタイミング固定機構40は、バルブタイミングVTを最遅角位相VTminと最進角位相VTmaxとの間の特定のバルブタイミング(以下、「中間角位相VTmdl」)に固定する。なお、中間角位相VTmdlは「特定位相」に相当する。
【0044】
中間角位相VTmdlとしては、寒冷地において内燃機関1を始動することが可能なバルブタイミングVTが設定されている。機関始動時においてバルブタイミングVTが中間角位相VTmdlに維持されている場合と、これよりも遅角側のバルブタイミングVTに維持されている場合とを比較したとき、後者よりも前者の方が機関始動性が高い。
【0045】
油圧機構70は、オイルパン13の作動油を吐出するオイルポンプ71と、バルブタイミング変更機構30についての作動油の供給態様および排出態様を制御するオイルコントロールバルブ72と、バルブタイミング固定機構40についての作動油の供給態様および排出態様を制御するオイルスイッチングバルブ73とを備えている。また、オイルポンプ71から吐出された作動油を内燃機関1の各部位に供給する作動油路74を備えている。
【0046】
作動油路74は、バルブタイミング変更機構30の進角室37とオイルコントロールバルブ72とを接続する進角油路75と、バルブタイミング変更機構30の遅角室38とオイルコントロールバルブ72とを接続する遅角油路76と、バルブタイミング固定機構40の第1解除室54および第2解除室64とオイルスイッチングバルブ73とを接続する位相固定油路77とを備えている。
【0047】
制御装置80は、内燃機関1を制御するための各種の演算処理等を行う電子制御装置81と、クランクポジションセンサ82、カムポジションセンサ83、冷却水温度センサ84、およびアクセルポジションセンサ85をはじめとする各種のセンサとを備えている。
【0048】
クランクポジションセンサ82は、クランクシャフト15の回転角度(以下、「クランク角度CA」)に応じた信号を電子制御装置81に出力する。カムポジションセンサ83は、吸気カムシャフト22の回転角度(以下、「カム角度DA」)に応じた信号を電子制御装置81に出力する。冷却水温度センサ84は、シリンダヘッド12の冷却水出口付近においての冷却水の温度(以下、「冷却水温度TW」)に応じた信号を電子制御装置81に出力する。アクセルポジションセンサ85は、アクセルペダル2の踏込量(以下、「アクセル踏込量AP」)に応じた信号を電子制御装置81に出力する。
【0049】
電子制御装置81により行なわれる制御について説明する。なお、以下では、内燃機関1の始動要求が設定されてからアイドル運転状態に移行するまでの期間を「機関始動時」とする。また、内燃機関1の停止要求が設定されてから内燃機関1の回転が停止するまでの期間を「機関停止時」とする。また、内燃機関1の回転が停止している期間を「機関停止中」とする。また、機関始動時と機関停止時との間の機関運転中においてアイドル運転時を除いた機関運転状態を「通常機関運転時」とする。
【0050】
電子制御装置81は、各センサの出力に基づいて以下の各パラメータを算出する。
(A)クランクポジションセンサ82の出力信号に基づいて、クランク角度CAに相当する演算値を算出する。
(B)クランク角度CAの演算値に基づいて、クランクシャフト15の回転速度(以下、「機関回転速度NE」)に相当する演算値を算出する。
(C)カムポジションセンサ83の出力信号に基づいて、カム角度DAに相当する演算値を算出する。
(D)クランク角度CAおよびカム角度DAに基づいて、バルブタイミングVTに相当する演算値を算出する。
(E)冷却水温度センサ84の出力信号に基づいて、冷却水温度TWに相当する演算値を算出する。
(F)アクセルポジションセンサ85の出力信号に基づいて、アクセル踏込量APに相当する演算値を算出する。
【0051】
電子制御装置81は、機関運転状態に基づいてバルブタイミング変更機構30およびバルブタイミング固定機構40の動作を制御するバルブタイミング制御、およびバルブタイミング変更機構30の動作速度を学習する動作速度学習制御を行なう。なお、機関運転状態を規定するパラメータとしては、機関回転速度NEおよび機関負荷等が用いられる。
【0052】
バルブタイミング制御は、通常機関運転時にバルブタイミングVTを進角するための位相進角制御、通常機関運転時にバルブタイミングVTを遅角するための位相遅角制御、および通常機関運転時にバルブタイミングVTを油圧により保持するための位相保持制御を含む。また、バルブタイミング固定機構40によりバルブタイミングVTを固定するための位相固定制御、およびバルブタイミングVTの変更が可能な範囲(以下、「変更可能範囲」)を制限する位相解除時制御を含む。
【0053】
位相進角制御および位相遅角制御は、別途実行される制御によりバルブタイミングVTを進角する要求(以下、「位相進角要求」)またはバルブタイミングVTを遅角する要求(以下、「位相遅角要求」)が設定されたとき、機関運転状態に基づいて目標のバルブタイミングVT(以下、「目標角位相VTtrg」)を設定する。
【0054】
そして、この目標角位相VTtrgおよびバルブタイミングVTの演算値に基づいて、バルブタイミング変更機構30を進角動作または遅角動作させるためのオイルコントロールバルブ72の制御を行なう。
【0055】
位相保持制御御は、別途実行される制御によりバルブタイミングVTを油圧により所定の位相に保持する要求(以下、「位相保持要求」)が設定されたとき、バルブタイミング変更機構30に保持動作を行なわせるためのオイルコントロールバルブ72の制御を行なう。
【0056】
位相固定制御御は、別途実行される制御によりバルブタイミングVTを中間角位相VTmdlに固定する要求(以下、「位相固定要求」)が設定されているとき、バルブタイミング固定機構40に固定動作を行わせるためのオイルスイッチングバルブ73の制御を行う。位相固定要求は、機関停止条件が成立していること、またはアイドル運転条件が成立していること基づいて設定される。なお、固定動作はバルブタイミングVTを中間角位相VTmdlに固定するためのバルブタイミング固定機構40の動作を示す。
【0057】
位相解除時制御では、変更可能範囲を制限する位相制限を行う。すなわち、位相制限が実行されているとき、制限された変更可能範囲内にバルブタイミングVTの目標角位相VTtrgが設定される。具体的には、制限された変更可能範囲内において最も進角側のバルブタイミングVT(以下、「進角側制限位相VTcmax」)よりも進角側にバルブタイミングVTを変更する要求があるとき、進角側制限位相VTcmaxを目標角位相VTtrgとして設定する。また、制限された変更可能範囲内において最も遅角側の位相(以下、「遅角側制限位相VTcmin」)よりも遅角側にバルブタイミングVTを変更する要求があるとき、遅角側制限位相VTcminを目標角位相VTtrgとして設定する。
【0058】
動作速度学習制御は、バルブタイミング変更機構30の動作速度の学習、および学習した動作速度に基づく変更可能範囲の制限を行う。変更可能範囲の制限においては、遅角側制限位相VTcminおよび進角側制限位相VTcmaxを動作速度に応じて変更する。
【0059】
バルブタイミング変更機構30の動作速度は、バルブタイミングVTが任意のバルブタイミングVTから別の任意のバルブタイミングVTに変化した場合において、そのときのバルブタイミングVTの変化量をバルブタイミングVTの変化に要した時間で除した値として評価することができる。
【0060】
なお、バルブタイミング変更機構30がバルブタイミング固定機構40により固定されている状態を基準として、この状態からバルブタイミングVTが中間角位相VTmdlとは別の任意のバルブタイミングVTに変更された場合には、次の時間が上記バルブタイミングVTの変化に要した時間として用いられる。すなわち、バルブタイミング変更機構30の動作状態が位相固定状態から位相解除状態に変化するまでの時間、およびバルブタイミングVTが中間角位相VTmdlから上記別の任意のバルブタイミングVTに変化するまでの時間を含む時間が上記バルブタイミングVTの変化に要した時間となる。
【0061】
図2を参照して、バルブタイミング変更機構30の構造について説明する。
バルブタイミング変更機構30は、クランクシャフト15に同期して回転するハウジングロータ31と、吸気カムシャフト22に同期して回転するベーンロータ35とを備えている。
【0062】
バルブタイミングVTは、ハウジングロータ31に対するベーンロータ35の回転位相に応じて変更される。なお、図中の矢印DRは、スプロケット33(クランクシャフト15)および吸気カムシャフト22の回転方向を示している。
【0063】
ハウジングロータ31は、その本体となるハウジング本体32と、ハウジング本体32の軸方向の一方の端部に取り付けられたスプロケット33と、ハウジング本体32の軸方向の他方の端部に取り付けられたカバー34(図3参照)とを備えている。
【0064】
ハウジング本体32には、ハウジングロータ31の回転軸の径方向に突出する3つの区画壁32Aが設けられている。ハウジング本体32、スプロケット33、およびカバー34は、これらの軸方向に挿入された3本のボルトにより互いに固定されている。
【0065】
ベーンロータ35は、ハウジング本体32内の空間に配置されている。また、吸気カムシャフト22の端部に固定されている。ベーンロータ35には、ハウジング本体32に向けて突出した3つのベーン35Aが設けられている。
【0066】
バルブタイミング変更機構30内には、3つの収容室36が形成されている。各収容室36は、ハウジング本体32の外周の壁部、隣り合う区画壁32A、ベーンロータ35のうちの回転軸の周囲の壁部、スプロケット33、およびカバー34に囲まれて形成されている。1つの収容室36には、1つのベーン35Aが配置されている。各収容室36は、対応するベーン35Aにより進角室37および遅角室38に区画されている。
【0067】
進角室37は、収容室36内においてベーン35Aよりも吸気カムシャフトの回転方向DRの後方側に形成されている。遅角室38は、収容室36内においてベーン35Aよりも吸気カムシャフト22の回転方向DRの前方側に形成されている。進角室37および遅角室38の容積は、バルブタイミング変更機構30に対する作動油の給排態様に応じて変化する。
【0068】
バルブタイミング固定機構40は、ハウジングロータ31に対するベーンロータ35の回転範囲を規制する第1固定機構50、およびハウジングロータ31に対するベーンロータ35の回転範囲を第1固定機構50とは異なる範囲に規制する第2固定機構60を備えている。第1固定機構50および第2固定機構60は、互いに異なるベーン35Aに配置されている。そして、ハウジングロータ31に対するベーンロータ35の回転位相が中間角位相VTmdlに対応する回転位相(以下、「中間回転位相」)のとき、第1固定機構50および第2固定機構60の協働によりバルブタイミングVTが中間角位相VTmdlに固定される。
【0069】
バルブタイミング変更機構30の動作について説明する。
進角室37への作動油の供給および遅角室38からの作動油の排出により、ベーンロータ35がハウジングロータ31に対して進角側すなわち回転方向DRに回転するとき、バルブタイミングVTが進角する。ベーンロータ35がハウジングロータ31に対して最も進角側に回転したとき、すなわちハウジングロータ31に対するベーンロータ35の回転位相が回転方向DRの最も前方側の回転位相のとき、バルブタイミングVTが最進角位相VTmaxに設定される。
【0070】
進角室37からの作動油の排出および遅角室38への作動油の供給により、ベーンロータ35がハウジングロータ31に対して遅角側すなわち回転方向DRとは反対側に回転するとき、バルブタイミングVTが遅角する。ベーンロータ35がハウジングロータ31に対して最も遅角側に回転したとき、すなわちハウジングロータ31に対するベーンロータ35の回転位相が回転方向DRの最も後方側の回転位相のとき、バルブタイミングVTが最遅角位相VTminに設定される。
【0071】
図3および図4を参照して、第1固定機構50および第2固定機構60の構成について説明する。なお、図3および図4は、図2のA−A線に沿うバルブタイミング変更機構30の断面構造を平面上に展開したものを示している。また、図3および図4においては、ハウジングロータ31に対するベーンロータ35の回転位相が中間回転位相にある状態を示している。また以下では、第1固定機構50の第1固定ピン51および第2固定機構60の第2固定ピン61がベーン35Aから突出する方向を「突出方向ZA」とし、第1固定ピン51および第2固定ピン61がベーン35Aに収容される方向を「収容方向ZB」とする。
【0072】
第1固定機構50の構成を以下に示す。
第1固定機構50は、ベーン35Aに対してベーンロータ35の軸方向に移動する第1固定ピン51と、第1固定ピン51を突出方向ZAに押すための第1固定ばね52とを備えている。またこの他に、第1固定ピン51および第1固定ばね52を収容する第1固定室53と、第1固定ピン51の周方向の軌跡に対応して形成された第1係合溝56とを備えている。
【0073】
第1固定室53は、ベーン35A内に形成されている。また、第1固定ピン51により第1解除室54および第1ばね室55に区画されている。なお、第1固定機構50を構成する各部品のクリアランスを介しての作動油の流れがないとしたとき、第1解除室54と第1ばね室55との間では作動油の流れが形成されない。
【0074】
第1係合溝56は、互いに深さの異なる2つの溝すなわち、相対的に深さの大きい第1下段溝57、および相対的に深さの小さい第1上段溝58により構成されている。第1上段溝58は、第1下段溝57よりも遅角側に設けられている。
【0075】
第1下段溝57の進角側の端部である第1進角端部56Aは、中間回転位相にあるベーンロータ35の第1固定ピン51について、その進角側の端面と対応する位置に形成されている。第1上段溝58の遅角側の端部である第1遅角端部56Bは、第1進角端部56Aよりも遅角側に形成されている。第1下段溝57の遅角側の端部である第2遅角端部56Cは、第1進角端部56Aと第1遅角端部56Bとの間に形成されている。
【0076】
第2固定機構60の構成を以下に示す。
第2固定機構60は、ベーン35Aに対してベーンロータ35の軸方向に移動する第2固定ピン61と、第2固定ピン61を突出方向ZAに押すための第2固定ばね62とを備えている。またこの他に、第2固定ピン61および第2固定ばね62を収容する第2固定室63と、第2固定ピン61の周方向の軌跡に対応して形成された第2係合溝66とを備えている。
【0077】
第2固定室63は、ベーン35A内に形成されている。また、第2固定ピン61により第2解除室64および第2ばね室65に区画されている。なお、第2固定機構60を構成する各部品のクリアランスを介しての作動油の流れがないとしたとき、第2解除室64と第2ばね室65との間では作動油の流れが形成されない。
【0078】
第2係合溝66は、互いに深さの異なる2つの溝すなわち、相対的に深さの大きい第2下段溝67、および相対的に深さの小さい第2上段溝68により構成されている。第2上段溝68は、第2下段溝67よりも遅角側に設けられている。
【0079】
第2下段溝67の遅角側の端部である第4遅角端部66Cは、中間回転位相にあるベーンロータ35の第2固定ピン61について、その遅角側の端面と対応する位置に形成されている。第2上段溝68の遅角側の端部である第3遅角端部66Bは、第4遅角端部66Cよりも遅角側に形成されている。第2下段溝67の進角側の端部である第2進角端部66Aは、第4遅角端部66Cよりも進角側に形成されている。
【0080】
図3および図4を参照して、バルブタイミング固定機構40の動作について説明する。
第1固定ピン51および第2固定ピン61は、第1解除室54または第2解除室64の油圧に基づいて第1固定ピン51または第2固定ピン61に作用する力と第1固定ばね52または第2固定ばね62のばね力との関係に応じて、軸方向において図3に示される収容位置から図4に示される突出位置までの範囲で動作する。
【0081】
なお、第1固定ピン51の突出位置は、第1固定ピン51の先端が第1係合溝56の第1下段溝57の底面に接触しているときの位置を示す。また、第2固定ピン61の突出位置は、第2固定ピン61の先端が第2係合溝66の第2下段溝67の底面に接触しているときの位置を示す。また、第1固定ピン51の収容位置は、第1固定ピン51の先端がベーン35A内に収容されているときの位置を示す。また、第2固定ピン61の収容位置は、第2固定ピン61の先端がベーン35A内に収容されているときの位置を示す。
【0082】
ベーン35Aに対する第1固定ピン51の具体的な動作態様を以下の(A)および(B)に示す。なお、第2固定ピン61も第1固定ピン51に準じた態様で動作するため、ここでは第2固定ピン61の動作についての説明を省略する。
【0083】
(A)第1解除室54の油圧に基づいて第1固定ピン51に作用する力が第1固定ばね52のばね力よりも小さいとき、第1固定ピン51を突出方向ZAに動作させる力(以下、「突出力」)が第1固定ピン51に継続して付与される。そして、第1固定ピン51が第1係合溝56の第1下段溝57と対応する位置にあり、かつベーン35Aに対する第1固定ピン51の位置が収容位置にあり、かつ第1固定ピン51に突出力が作用しているとき、第1固定ピン51の位置が収容位置から突出位置に変化する。
【0084】
(B)第1解除室54の油圧に基づいて第1固定ピン51に作用する力が第1固定ばね52のばね力よりも大きいとき、第1固定ピン51を収容方向ZBに動作させる力(以下、「収容力」)が第1固定ピン51に継続して付与される。そして、ベーン35Aに対する第1固定ピン51の位置が突出位置にあり、かつ第1固定ピン51に突出力が作用しているとき、第1固定ピン51の位置が突出位置から収容位置に変化する。
【0085】
バルブタイミング固定機構40は、次のようにバルブタイミングVTを固定する。
第1固定ピン51の位置が突出位置のとき、ベーンロータ35がハウジングロータ31に対して中間回転位相よりも進角方向に回転することが規制される。第2固定ピン61の位置が突出位置のとき、ベーンロータ35がハウジングロータ31に対して中間回転位相よりも遅角方向に回転することが規制される。
【0086】
このため、第1固定ピン51および第2固定ピン61が突出位置にあるとき、ベーンロータ35がハウジングロータ31に対して中間回転位相から進角方向および遅角方向に回転することができない。すなわち、第1固定ピン51および第2固定ピン61とハウジングロータ31とが互いに接触した状態にあることにより、バルブタイミングVTが中間角位相VTmdlに固定される。
【0087】
ここで、バルブタイミング変更機構30の動作状態およびバルブタイミング固定機構40の動作状態について、それぞれ以下のように「位相解除状態」および「位相固定状態」を定義する。
【0088】
第1固定ピン51および第2固定ピン61の位置が収容位置にあるときのバルブタイミング固定機構40の動作状態を「バルブタイミング固定機構40の位相解除状態」とする。また、バルブタイミング固定機構40の動作状態が位相解除状態に設定されていることにより、バルブタイミングVTの変更が可能なバルブタイミング変更機構30の動作状態を「バルブタイミング変更機構30の位相解除状態」とする。図3には、バルブタイミング変更機構30およびバルブタイミング固定機構40の動作状態が位相解除状態にあるときの一例が示されている。
【0089】
第1固定ピン51および第2固定ピン61の位置が突出位置にあるときのバルブタイミング固定機構40の動作状態を「バルブタイミング固定機構40の位相固定状態」とする。また、バルブタイミング固定機構40の動作状態が位相固定状態に設定されていることにより、バルブタイミングVTが中間角位相VTmdlに固定されているバルブタイミング変更機構30の動作状態を「バルブタイミング変更機構30の位相固定状態」とする。図4には、バルブタイミング変更機構30およびバルブタイミング固定機構40の位相固定状態が示されている。
【0090】
オイルコントロールバルブ72の制御について説明する。
電子制御装置81は、オイルコントロールバルブ72のアクチュエータに対する指令信号としてのDUTY比を変更することにより、オイルコントロールバルブ72の動作状態(以下、「OCV動作モード」)を変更する。
【0091】
具体的には、DUTY比が取りうる領域をDUTY比の大きさに応じて3つの領域に区分し、この区分した各領域とOCV動作モードとを予め対応付ける。そして、オイルコントロールバルブ72に適用するOCV動作モードを選択したとき、選択したOCV動作モードに対応するDUTY比をオイルコントロールバルブ72のアクチュエータに出力する。また、各OCV動作モードに対応するDUTY比の領域内においてDUTY比を変更することにより、作動油の給排態様としての供給速度および排出速度を変更する。
【0092】
各OCV動作モードとバルブタイミング変更機構30の動作との関係を以下に示す。
(A)OCV動作モードが進角モードに設定されているとき、進角室37に作動油が供給され、かつ遅角室38から作動油が排出される。このため、ベーンロータ35がハウジングロータ31に対して進角方向に回転する。また、進角モードに対応付けられたDUTY比の範囲内においてDUTY比を変更することにより、ベーンロータ35がハウジングロータ31に対して進角方向に回転する速度(以下、「進角速度」)を変更することができる。
【0093】
(B)OCV動作モードが保持モードに設定されているとき、進角室37および遅角室38が閉鎖される。このため、ハウジングロータ31に対するベーンロータ35の回転位置が保持される。
【0094】
(C)OCV動作モードが遅角モードに設定されているとき、進角室37から作動油が排出され、かつ遅角室38に作動油が供給される。このため、ベーンロータ35がハウジングロータ31に対して遅角方向に回転する。また、遅角モードに対応付けられたDUTY比の範囲内においてDUTY比を変更することにより、ベーンロータ35がハウジングロータ31に対して遅角方向に回転する速度(以下、「遅角速度」)を変更することができる。
【0095】
オイルスイッチングバルブ73の制御について説明する。
電子制御装置81は、オイルスイッチングバルブ73のアクチュエータに対する指令信号を変更することにより、オイルスイッチングバルブ73の動作状態(以下、「OSV動作モード」)を変更する。
【0096】
各OSV動作モードとバルブタイミング固定機構40の動作との関係を以下に示す。
(A)OSV動作モードが固定モードに設定されているとき、第1解除室54および第2解除室64から作動油が排出される。このため、第1固定ピン51および第2固定ピン61に対して突出力が作用する。
【0097】
(B)OSV動作モードが解除モードに設定されているとき、第1解除室54および第2解除室64に作動油が供給される。このため、第1固定ピン51および第2固定ピン61に収容力が作用する。
【0098】
電子制御装置81は、バルブタイミング制御において、以下の(A)〜(D)のように機関運転状態に応じてオイルコントロールバルブ72およびオイルスイッチングバルブ73を制御する。
【0099】
(A)通常機関運転時においては、機関運転状態に応じてOCV動作モードとして進角モード、保持モード、および遅角モードのいずれかを選択する。また、OSV動作モードを解除モードに設定する。
【0100】
(B)通常機関運転時において位相固定要求が設定されたとき、OSV動作モードを解除モードから固定モードに変更する。また、バルブタイミングVTを中間角位相VTmdlに変更するためのOCV動作モードを選択する。なお、通常機関運転時において位相固定要求が設定されるときの例としては、通常機関運転時に機関停止条件が成立したとき、および通常機関運転時にアイドル運転条件が成立したときが挙げられる。
【0101】
(C)機関始動時において、バルブタイミング変更機構30の動作状態が位相固定状態にあり、かつ始動時解除条件が成立していないとき、位相進角要求、位相遅角要求、または位相保持要求に基づくバルブタイミング変更機構30の動作状態の変更を禁止する。この制御は、以下の(D)の制御に優先して行なわれる。
【0102】
(D)機関始動時またはアイドル運転時において、バルブタイミング変更機構30の動作状態が位相固定状態にあり、かつ始動時解除条件が成立し、かつ位相進角要求または位相遅角要求が設定されたとき、OSV動作モードを固定モードから解除モードに変更する。また、OCV動作モードを保持モードから進角モードまたは遅角モードに変更する。
【0103】
なお、始動時解除条件は、機関始動時にバルブタイミング変更機構30の動作状態を位相解除状態に変更してもバルブタイミングVTが不安定な状態となるおそれが小さいことを確認するための条件として設定されている。また、バルブタイミングVTが不安定な状態とは、進角室37および遅角室38が作動油で満たされていないことによりバルブタイミングVTの変動が大きい状態を示す。
【0104】
上記(D)の制御において、機関始動時に始動時解除が成立していることに基づいてバルブタイミング変更機構30の動作状態を位相解除状態としたとき、動作速度学習制御により設定される変更可能範囲を用いて位相解除時制御を実行する。
【0105】
位相解除時制御のねらいについて説明する。
機関始動後においてバルブタイミング変更機構30の動作状態が位相固定状態から位相解除状態に変更された後、かつエンジンストールが生じたとき、位相固定要求が設定される。これにより、機関回転速度NEの低下中にバルブタイミングVTを中間角位相VTmdlに変更する制御が行なわれる。
【0106】
このとき、内燃機関1の燃焼が停止しているため、バルブタイミング変更機構30の油圧が次第に低下する。そして、バルブタイミング変更機構30の油圧が所定の油圧を下回るとき、バルブタイミングVTを油圧により制御することができなくなる。このため、エンジンストールの発生時においてバルブタイミング変更機構30の動作状態を位相固定状態にするためには、エンジンストールが発生してからの経過期間(以下、「ストール後期間」)が制御可能期間を超えるまでにバルブタイミングVTを中間角位相VTmdlに変更することが好ましい。なお、制御可能期間は、エンジンストールの発生後にバルブタイミング変更機構30の油圧が所定の油圧を下回るまでの期間を示す。この制御可能期間の長さは、エンジンストールが発生する毎に異なる。
【0107】
一方、エンジンストールの発生時のバルブタイミングVTと中間角位相VTmdlとの差が大きいときほど、制御可能期間においてバルブタイミングVTを中間角位相VTmdlに到達させるために必要となるバルブタイミングVTの変更量が大きくなる。このため、制御可能期間内にバルブタイミングVTが中間角位相VTmdlに到達しない可能性が高くなる。
【0108】
そこで位相解除時制御では、機関始動完了後にバルブタイミング変更機構30の動作状態を位相固定状態から位相解除状態に変更したとき、冷却水温度TWに応じて位相制限を実行する。
【0109】
位相制限が実行されているとき、バルブタイミングVTが中間角位相VTmdlよりも進角側にある場合において、中間角位相VTmdlとバルブタイミングVTとの最大の差は進角側制限位相VTcmaxと中間角位相VTmdlとの差となる。このバルブタイミングVTの差は、最進角位相VTmaxと中間角位相VTmdlとの差よりも小さい。
【0110】
また、バルブタイミングVTが中間角位相VTmdlよりも遅角側にある場合において、中間角位相VTmdlとバルブタイミングVTとの最大の差は遅角側制限位相VTcminと中間角位相VTmdlとの差となる。このバルブタイミングVTの差は、最遅角位相VTminと中間角位相VTmdlとの差よりも小さい。
【0111】
このため、位相制限の実行中においてエンジンストールが発生したとき、位相制限の非実行時においてエンジンストールが発生したときと比較して、バルブタイミングVTを中間角位相VTmdlに到達させるために必要となるバルブタイミングVTの最大の変更量が小さくなる。すなわち、位相制限を実行することにより、制御可能期間内にバルブタイミングVTが中間角位相VTmdlに到達する可能性が高くなる。
【0112】
図5を参照して、位相解除時制御の具体的な手順について説明する。
この制御は、電子制御装置81により所定の制御周期毎に繰り返し行われる。すなわち、最後のステップの処理が終了した後、所定の制御周期が経過するまでは同制御の実行が保留され、所定の制御周期が経過したときに再び最初のステップから動作速度学習制御が行われる。
【0113】
ステップS11では、バルブタイミング変更機構30の動作状態が位相解除状態か否かを判定する。ステップS11において、バルブタイミング変更機構30の動作状態が位相解除状態にある旨判定したとき、ステップS12に移行する。一方、ステップS11において、バルブタイミング変更機構30の動作状態が位相解除状態にない旨判定したとき、すなわちバルブタイミング変更機構30の動作状態が位相固定状態にある旨判定したとき、本処理を一旦終了する。
【0114】
ステップS12では、冷却水温度TWが所定の冷却水温度TW(以下、「所定水温度TWX」)以下か否かを判定する。なお、所定水温度TWXとしては、作動油の成分に関わらず、バルブタイミング変更機構30の動作速度が所定の速度以上となる温度が設定されている。また、所定の速度とは、通常機関運転時において要求されるバルブタイミング変更機構30の動作速度のうちの最も小さい動作速度に相当する。
【0115】
ステップS12において、冷却水温度TWが所定水温度TWX以下の旨判定したとき、ステップS13において変更可能範囲を制限する位相制限を実行する。一方、ステップS12において、冷却水温度TWが所定水温度TWXより大きい旨判定したとき、ステップS14において位相制限を解除する。
【0116】
図6を参照して、位相解除時制御の実行態様の一例について説明する。
時刻t10すなわち、始動時解除条件が成立したとき、バルブタイミング変更機構30の動作状態が位相固定状態から位相解除状態に変更される。また、冷却水温度TWが所定水温度TWX以下であることに基づいて位相制限が実行される。
【0117】
時刻t11すなわち、冷却水温度TWが所定水温度TWXを超えたとき、位相制限が解除される。以降は、機関運転状態に基づいて最進角位相VTmaxから最遅角位相VTminまでの間でバルブタイミングVTが変更される。
【0118】
ところで、異なる種類の作動油においては、作動油の成分が互いに異なる。また、作動油が劣化することにより作動油の成分は変化する。互いに成分が異なる作動油においては、同じ油温度においても作動油の粘度(以下、「油粘度」)が互いに異なる。
【0119】
ここで、油温度および機関回転速度NEが互いに同じ大きさであることを前提として、相対的に油粘度の高い作動油が用いられているとき(以下、「高粘度油使用時」)のバルブタイミング変更機構30の動作速度と、相対的に油粘度の低い作動油が用いられているとき(以下、「低粘度油使用時」)のバルブタイミング変更機構30の動作速度とを比較したとき、高粘度の作動油の抵抗が大きいことから前者の動作速度が後者の動作速度よりも小さくなる。すなわち、バルブタイミング変更機構30の動作速度は、油温度のみの影響を受けて変化するものではなく、作動油の成分の違いによる油粘度の影響も受けて変化する。
【0120】
このように、高粘度油使用時は低粘度油使用時と比較してバルブタイミング変更機構30の動作速度が小さいため、高粘度油使用時においてエンジンストールが発生したとき、制御可能期間内にバルブタイミングVTが中間角位相VTmdlに到達しない可能性が高い。
【0121】
一方、低粘度油使用時は高粘度油使用時と比較してバルブタイミング変更機構30の動作速度が大きいため、低粘度油使用時においてエンジンストールが発生したとき、制御可能期間内にバルブタイミングVTが中間角位相VTmdlに到達しない可能性が低い。このため、低粘度油使用時の変更可能範囲の大きさを高粘度油使用時の変更可能範囲の大きさよりも拡大することが許容される。そこで動作速度学習制御では、位相制限に用いる変更可能範囲の大きさをバルブタイミング変更機構30の動作速度に応じて変更する。
【0122】
図7を参照して、動作速度学習制御の具体的な手順について説明する。
この制御は、電子制御装置81により所定の制御周期毎に繰り返し行われる。すなわち、最後のステップの処理が終了した後、所定の制御周期が経過するまでは同制御の実行が保留され、所定の制御周期が経過したときに再び最初のステップから動作速度学習制御が行われる。
【0123】
ステップS21では、学習条件が成立したか否かを判定する。ここでは、以下の(A)〜(E)の全ての条件が成立していることに基づいて学習条件が成立している旨判定する。そして、ステップS21において学習条件が成立した旨判定したとき、ステップS22の処理に移行する。一方、ステップS21において学習条件が成立していない旨判定したとき、本処理を一旦終了する。
(A)バルブタイミング固定機構40が位相固定状態であること。
(B)冷却水温度TWが暖機の完了を示す温度以上であること。
(C)アイドル運転中であること。
(D)始動時解除条件が成立しかつ位相進角要求が設定されたこと。
(E)今回の機関始動後において動作速度学習制御が行われていないこと。
【0124】
ステップS22では、OCV動作モードとして進角モードを選択し、かつ進角速度として最大の進角速度を選択し、かつOSV動作モードを解除モードに設定する。
ステップS23では、バルブタイミングVTが所定のバルブタイミングVT(以下、「判定角位相VTjdg」)に達したか否かを判定する。バルブタイミングVTが判定角位相VTjdgに達した旨判定したとき、ステップS24に移行する。なお、バルブタイミングVTが判定角位相VTjdgに達するまではステップS23の判定処理を繰り返し実行する。
【0125】
ステップS24では、ステップS22の処理を実行してからバルブタイミングVTが判定角位相VTjdgに達するまでの経過期間、およびステップS22の処理を実行したときの機関回転速度NEに基づいて、バルブタイミング変更機構30の学習動作速度VMを算出する。学習動作速度VMは、バルブタイミングVTが判定角位相VTjdgに達するまでの経過期間が同じ大きさのとき、機関回転速度NEが大きくなるにつれて小さくなる。なお、上記経過期間には、バルブタイミング変更機構30の動作状態が位相固定状態から位相解除状態に変更されるまでの期間、およびバルブタイミングVTが中間角位相VTmdlから判定角位相VTjdgに変化するまでの期間が含まれる。
【0126】
ステップS25では、ステップS24で算出した学習動作速度VMを変更可能範囲マップ(図8参照)に適用することにより、学習動作速度VMに対応する変更可能範囲を位相制限に用いる変更可能範囲として設定する。
【0127】
図8を参照して、変更可能範囲マップの構成について説明する。
変更可能範囲マップにおいては、変更可能範囲のうち中間角位相VTmdlよりも遅角側の変更可能範囲(以下「遅角側制限範囲」)の大きさ、および変更可能範囲のうち中間角位相VTmdlよりも遅進角側の変更可能範囲(以下、「進角側制限範囲」)の大きさが学習動作速度VMに応じて規定されている。また、遅角側制限範囲および進角側制限範囲は、学習動作速度VMが大きくなるにつれて段階的に大きくなるようにそれぞれ規定されている。
【0128】
図9を参照して、低粘度油使用時および高粘度油使用時における動作速度学習制御の実行態様の一例について説明する。なお、図中の実線は低粘度油使用時の実行態様を示し、図中の破線は高粘度油使用時の実行態様を示している。また、各実行態様において、油温度および機関回転速度NEは等しいものとする。
【0129】
低粘度油使用時の動作速度学習制御の流れを以下に示す。
時刻t20すなわち、アクセルペダル2が踏み込まれたとき、これに基づいて位相進角要求が設定される。このため、OSV動作モードが固定モードから解除モードに変更される。また、OCV動作モードが保持モードから進角モードに変更される。また、進角モードにおいて最大の進角速度が設定される。
【0130】
時刻t21すなわち、固定ピン51,61が収容位置に移動したとき、バルブタイミング変更機構30の動作状態が位相固定状態から位相解除状態に変化する。これにより、バルブタイミングVTが中間角位相VTmdlから目標角位相VTtrgに向けて進角を開始する。
【0131】
時刻t23すなわち、バルブタイミングVTが判定角位相VTjdgに達したとき、時刻t20から時刻t23までの経過期間および機関回転速度NEに基づいて学習動作速度VMが算出される。
【0132】
時刻t25すなわち、バルブタイミングVTが目標角位相VTtrgに達したとき、OCV動作モードが進角モードから保持モードに変更される。以降は、機関運転状態に基づいて最進角位相VTmaxから最遅角位相VTminまでの間でバルブタイミングVTが変更される。
【0133】
高粘度油使用時の動作速度学習制御の流れを以下に示す。
時刻t22すなわち、固定ピン51,61が収容位置に移動したとき、バルブタイミング変更機構30の動作状態が位相固定状態から位相解除状態に変化する。これにより、バルブタイミングVTが中間角位相VTmdlから目標角位相VTtrgに向けて進角を開始する。
【0134】
時刻t24すなわち、バルブタイミングVTが判定角位相VTjdgに達したとき、時刻t20から時刻t24までの経過期間および機関回転速度NEに基づいて学習動作速度VMが算出される。
【0135】
時刻t26すなわち、バルブタイミングVTが目標角位相VTtrgに達したとき、OCV動作モードが進角モードから保持モードに変更される。以降は、機関運転状態に基づいて最進角位相VTmaxから最遅角位相VTminまでの間でバルブタイミングVTが変更される。
【0136】
上記のように、位相進角要求が設定されてからバルブタイミング変更機構30が位相固定状態から位相解除状態となるまでの期間は、高粘度油使用時のとき(時刻t20から時刻t22までの経過期間)よりも低粘度油使用時のとき(時刻t20から時刻t21までの経過期間)の方が小さい。
【0137】
また、バルブタイミング変更機構30の動作状態が位相固定状態から位相解除状態に変化してからバルブタイミングVTが判定角位相VTjdgに達するまでの期間は、高粘度油使用時のとき(時刻t22から時刻t24までの経過期間)よりも低粘度油使用時のとき(時刻t21から時刻t23までの経過期間)の方が小さい。
【0138】
そして、上記各期間を合わせた期間、すなわち位相進角要求が設定されてからバルブタイミングVTが判定角位相VTjdgに達するまでの期間は、高粘度油使用時のとき(時刻t20から時刻t24までの経過期間)よりも低粘度油使用時のとき(時刻t20から時刻t23までの経過期間)の方が小さい。
【0139】
(実施形態の効果)
本実施形態の内燃機関1によれば以下の効果が得られる。
(1)電子制御装置81は、バルブタイミング変更機構30の学習動作速度VMに応じて変更可能範囲を制限している。この構成によれば、油粘度の違いが反映される学習動作速度VMに基づいて変更可能範囲が制限されるため、油温度が低い状態においてバルブタイミング変更機構30の動作を一律に制限する構成と比較して、バルブタイミングVTを機関運転状態に応じて変更することが可能な状況をより多く確保することができる。
【0140】
(2)電子制御装置81は、高粘度油使用時の遅角側制限範囲の大きさを低粘度油使用時の遅角側制限範囲の大きさよりも小さくしている。この構成によれば、高粘度油使用時かつ位相制限の実行中においてバルブタイミングVTが中間角位相VTmdlよりも遅角側にあるとき、バルブタイミングVTと中間角位相VTmdlとの最大の差が低粘度油使用時よりも小さくなる。このため、バルブタイミングVTが中間角位相VTmdlよりも遅角側にあるときにおいて、バルブタイミング変更機構30の動作状態が位相固定状態に変更されることなく機関停止する頻度を低減することができる。
【0141】
(3)電子制御装置81は、高粘度油使用時の進角側制限範囲の大きさを低粘度油使用時の進角側制限範囲の大きさよりも小さくしている。この構成によれば、高粘度油使用時かつ位相制限の実行中においてバルブタイミングVTが中間角位相VTmdlよりも進角側にあるとき、バルブタイミングVTと中間角位相VTmdlとの最大の差が低粘度油使用時よりも小さくなる。このため、バルブタイミングVTが中間角位相VTmdlよりも進角側にあるときにおいて、バルブタイミング変更機構30の動作状態が位相固定状態に変更されることなく機関停止する頻度を低減することができる。
【0142】
(4)吸気カムシャフト22のトルクは、進角方向および遅角方向に変動する。また、進角方向に作用するトルクよりも遅角方向に作用するトルクの方が大きい。このため、バルブタイミングVTを進角させる場合にはバルブタイミングVTを遅角させる場合と比較して、バルブタイミング変更機構30にかかる抵抗が大きい。これにより、油粘度の違いによるバルブタイミング変更機構30の動作速度の違いは、バルブタイミングVTの遅角時よりもバルブタイミングVTの進角時の方が検出しやすい。上記実施形態の電子制御装置81は、バルブタイミングVTの進角時に学習動作速度VMを学習しているため、バルブタイミング変更機構30の動作速度が適切に学習される頻度が高くなる。
【0143】
(5)電子制御装置81は、バルブタイミングVTが進角しはじめるときに学習動作速度VMを学習している。この構成によれば、バルブタイミングVTの変化速度が「0」の状態を基準として、この状態からのバルブタイミングVTの変化速度に応じて学習動作速度VMを学習するため、バルブタイミングVTの変化速度が変動している状態を基準として学習を行う構成と比較して、学習動作速度VMが適切に学習される頻度が高くなる。
【0144】
(6)電子制御装置81は、始動時解除条件が成立しているときかつ位相進角要求が設定されたとき、バルブタイミング変更機構30の動作速度に応じて学習動作速度VMを学習している。この構成によれば、学習動作速度VMの学習のためにバルブタイミング変更機構30を動作させる構成と比較して、学習動作速度VMの学習にともないバルブタイミングVTが機関運転状態に適していないものに変更される頻度を低減することができる。
【0145】
また、アクセルペダル2の踏み込みによる位相進角要求に基づいて学習動作速度VMの学習を行うことにより、学習動作速度VMの学習のためにバルブタイミングVTを変更する構成と比較して、学習にともない運転者が違和感を覚えるおそれが小さい。
【0146】
(7)電子制御装置81は、学習動作速度VMを学習するとき、オイルコントロールバルブ72によるバルブタイミングVTの進角速度を最大の進角速度に設定している。この構成によれば、バルブタイミングVTが目標角位相VTtrgに到達するまでの時間が長くなることを抑制することができる。
【0147】
(8)クランクシャフト15のトルクにより作動油をバルブタイミング変更機構30に供給する内燃機関1においては、バルブタイミング変更機構30の動作速度が機関回転速度NEに応じて変化する。上記実施形態の電子制御装置81は、機関回転速度NEを加味して学習動作速度VMを学習するため、学習動作速度VMに対する機関回転速度NEの影響分を小さくすることが可能になる。このため、油粘度の影響がより適切に反映されたバルブタイミング変更機構30の動作速度を学習することができる。
【0148】
(その他の実施形態)
本発明の実施態様は上記実施形態に限られるものではなく、例えば以下に示すように変更することもできる。また以下の各変形例は、上記実施形態についてのみ適用されるものではなく、異なる変形例同士を互いに組み合わせて実施することもできる。
【0149】
・上記実施形態(図8)では、学習動作速度VMが大きくなるにつれて遅角側制限範囲の大きさおよび進角側制限範囲の大きさを段階的に大きくしているが、学習動作速度VMに関わらず進角側制限位相VTcmaxを一定の大きさに設定することもできる。
【0150】
・上記実施形態(図8)では、学習動作速度VMが大きくなるにつれて進角側制限範囲の大きさを大きくしているが、学習動作速度VMが大きくなるにつれて進角側制限範囲の大きさを小さくすることもできる。このように進角側制限範囲を小さくする場合の具体的な方法としては、例えば、学習動作速度VMの増加量に対する遅角側制限範囲の大きさの増加量よりも学習動作速度VMの増加量に対する進角側制限範囲の大きさの減少量を大きくするものが挙げられる。なお、この変形例においては、学習動作速度VMが小さくなるにつれて遅角側制限範囲が小さくなるため、実施形態の(2)の効果が得られる。
【0151】
・上記実施形態(図8)では、学習動作速度VMが大きくなるにつれて遅角側制限範囲の大きさを段階的に大きくしているが、学習動作速度VMの増加に対して遅角側制限範囲を連続的に大きくすることもできる。例えば、学習動作速度VMが大きくなるにつれて遅角側制限位相VTcminを直線的に増加させることができる。
【0152】
・上記実施形態(図8)では、学習動作速度VMが大きくなるにつれて進角側制限範囲の大きさを段階的に大きくしているが、学習動作速度VMの増加に対して進角側制限範囲を連続的に大きくすることもできる。例えば、学習動作速度VMが大きくなるにつれて進角側制限位相VTcmaxを直線的に増加させることもできる。
【0153】
・上記実施形態(図8)では、学習動作速度VMが大きくなるにつれて遅角側制限範囲の大きさおよび進角側制限範囲の大きさを段階的に大きくしているが、学習動作速度VMが所定の動作速度よりも小さいときに中間角位相VTmdlを変更可能範囲として設定することもできる。この場合、バルブタイミング変更機構30の動作状態を固定動作状態に設定することもできる。
【0154】
・上記実施形態(図7)では、冷却水温度TWが暖機の完了を示す温度以上であることを学習条件の1つとして用いているが、この条件に代えて、冷却水温度TWが暖機の完了を示す温度よりも小さいことを学習条件として用いることもできる。
【0155】
・上記実施形態(図7)では、バルブタイミング変更機構30が位相固定状態であること、およびアイドル運転状態であることをそれぞれ学習条件の1つとして用いているが、これらの条件に代えて、バルブタイミング変更機構30が位相解除状態であること、および通常機関運転時であることを学習条件として用いることもできる。
【0156】
・上記実施形態(図7)では、アイドル運転状態であること、および位相進角要求が設定されることをそれぞれ学習条件の1つとして用いているが、これらの条件に代えて、通常機関運転時であること、および位相遅角要求が設定されることを学習条件として用いることもできる。この場合、そのときのバルブタイミングVTよりも遅角側の所定のバルブタイミングVTに到達するまでの期間に基づいて学習動作速度VMが算出される。
【0157】
・上記実施形態(図7)では、機関回転速度NEに応じて学習動作速度VMを算出しているが、動作速度学習制御を行うときの冷却水温度TWに基づいて学習動作速度VMを補正することもできる。この場合、学習動作速度VMは冷却水温度TWが低くなるにつれて大きくなる。
【0158】
・上記実施形態(図7)では、学習動作速度VMを学習するとき、進角モードにおいて最大の進角速度を設定しているが、最大の進角速度よりも小さい進角速度を設定することもできる。
【0159】
・上記実施形態(図5)では、冷却水温度TWに基づいて位相制限を解除しているが、変更可能範囲の大きさを制限する期間としての「制限期間」を設定し、設定した制限期間に基づいて位相制限を解除することもできる。なお、制限期間は、学習動作速度VMが大きくなるにつれて短くなるように設定される。またこの場合、制限される変更可能範囲の大きさを学習動作速度VMに関わらず一定の大きさに設定することもできる。
【0160】
図10を参照して、制限期間を用いた位相解除時制御の内容について説明する。
この制御は、電子制御装置81により所定の制御周期毎に繰り返し行われる。すなわち、最後のステップの処理が終了した後、所定の制御周期が経過するまでは同制御の実行が保留され、所定の制御周期が経過したときに再び最初のステップから動作速度学習制御が行われる。
【0161】
ステップS31において位相解除状態の旨判定し、かつステップS32において冷却水温度TWが所定水温度TWX以下の旨判定したとき、ステップS33において位相制限を実行する。
【0162】
ステップS34では、位相制限の実行を開始してからの経過期間が学習動作速度VMに応じて設定される制限期間を超えたか否かを判定する。位相制限の実行を開始してからの経過期間が制限期間を超えていない旨判定したとき、所定周期後に再びステップS34の判定を行う。一方、位相制限の実行を開始してからの経過期間が制限期間を超えた旨判定したとき、ステップS35において位相制限を解除する。
【0163】
・上記実施形態(図5)では、冷却水温度TWが所定水温度TWX以下のときに位相制限を実行しているが、所定水温度TWXの大きさを学習動作速度VMに応じて変更することもできる。この場合、制限される変更可能範囲の大きさを学習動作速度VMに関わらず一定の大きさに設定することもできる。
【0164】
・上記実施形態(図7)では、学習動作速度VMに応じて変更可能範囲の大きさを設定しているが、変更可能範囲の大きさの設定方法を次のように設定することもできる。すなわち、作動油を交換したとき作動油の成分、作動油の種類、および油粘度の少なくとも1つの情報を電子制御装置81に入力する入力部を設ける。そして、入力された情報に基づいて変更可能範囲の大きさを設定する。この場合、作動油を交換してからの経過期間に基づいて作動油の劣化状態を推定し、推定した劣化状態を加味して変更可能範囲の大きさを設定する処理を追加することもできる。
【0165】
・上記実施形態(図1)では、オイルコントロールバルブ72により進角室37および遅角室38についての作動油の給排態様を制御し、オイルスイッチングバルブ73により各解除室54,64についての作動油の給排態様を制御しているが、進角室37、遅角室38、および各解除室54,64の作動油の給排態様を制御する単一のオイルコントロールバルブを備えることもできる。
【0166】
・上記実施形態(図3)では、第1下段溝57および第1上段溝58を含む第1係合溝56を第1固定機構50に形成しているが、第1係合溝56に対して次の(A)および(B)の少なくとも一方の変更を加えることもできる。
(A)第1下段溝57に代えて、第1固定ピン51を嵌め込むための穴を中間回転位相の第1固定ピン51と対応する位置に形成する。この場合には、第1上段溝58の端が同位置の穴まで延長される。
(B)第1上段溝58を省略する。
【0167】
・上記実施形態(図3)では、第2下段溝67および第2上段溝68を含む第2係合溝66を第2固定機構60に形成しているが、第2係合溝66に対して次の(A)および(B)の少なくとも一方の変更を加えることもできる。
(A)第2下段溝67に代えて、第2固定ピン61を嵌め込むための穴を中間回転位相の第2固定ピン61と対応する位置に形成する。
(B)第2上段溝68を省略する。
【0168】
・上記実施形態(図3)では、ベーンロータ35に第1固定ピン51および第2固定ピン61を設け、かつハウジングロータ31に第1係合溝56および第2係合溝66を形成しているが、各固定ピン51,61および各係合溝56,66に関する構成を次のように変更することもできる。すなわち、第1係合溝56および第2係合溝66の少なくとも一方をベーンロータ35に形成し、第1固定ピン51および第2固定ピン61の少なくとも一方をハウジングロータ31に設けることもできる。
【0169】
・上記実施形態(図2)では、バルブタイミング固定機構40として第1固定ピン51および第2固定ピン61がベーン35Aに対して軸方向に移動するものを採用しているが、各固定ピン51,61に関する構成を次のように変更することもできる。すなわち、第1固定ピン51および第2固定ピン61の少なくとも一方がベーン35Aに対して径方向に突出動作および収容動作するようにバルブタイミング固定機構40を構成することもできる。この場合には、ベーン35Aに対する第1固定ピン51および第2固定ピン61の動作に対応して、第1係合溝56に相当する係合溝および第2係合溝66に相当する係合溝の少なくとも一方がハウジングロータ31に形成される。
【0170】
・上記実施形態(図4)では、バルブタイミング固定機構40により固定するバルブタイミングVTを中間角位相VTmdlに設定しているが、これに代えて、他のバルブタイミングVTをバルブタイミング固定機構40により固定するバルブタイミングVTとして設定することもできる。
【0171】
・本発明の適用対象となる可変動弁装置の制御装置の構成は上記実施形態に例示の構成に限られるものではない。すなわち、位相変更機構および位相固定機構を備える可変動弁装置の制御装置であれば、いずれの構成を有する可変動弁装置の制御装置に対しても本発明を適用することができる。また、その場合にも上記実施形態の効果に準じた効果が得られる。
【符号の説明】
【0172】
1…内燃機関、2…アクセルペダル、10…機関本体、11…シリンダブロック、12…シリンダヘッド、13…オイルパン、14…燃焼室、15…クランクシャフト、20…可変動弁装置、21…吸気バルブ、22…吸気カムシャフト、23…排気バルブ、24…排気カムシャフト、30…バルブタイミング変更機構(位相変更機構)、31…ハウジングロータ、32…ハウジング本体、32A…区画壁、33…スプロケット、34…カバー、35…ベーンロータ、35A…ベーン、36…収容室、37…進角室、38…遅角室、40…バルブタイミング固定機構(位相固定機構)、50…第1固定機構、51…第1固定ピン、52…第1固定ばね、53…第1固定室、54…第1解除室、55…第1ばね室、56…第1係合溝、56A…第1進角端部、56B…第1遅角端部、56C…第2遅角端部、57…第1下段溝、58…第1上段溝、60…第2固定機構、61…第2固定ピン、62…第2固定ばね、63…第2固定室、64…第2解除室、65…第2ばね室、66…第2係合溝、66A…第2進角端部、66B…第3遅角端部、66C…第4遅角端部、67…第2下段溝、68…第2上段溝、70…油圧機構、71…オイルポンプ、72…オイルコントロールバルブ、73…オイルススイッチングバルブ、74…作動油路、75…位相変更油路、76…位相固定油路、80…制御装置、81…電子制御装置、82…クランクポジションセンサ、83…カムポジションセンサ、84…冷却水温度センサ、85…アクセルポジションセンサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブタイミングを変更する油圧式の位相変更機構と、バルブタイミングを特定位相に固定する位相固定機構とを含む内燃機関の可変動弁装置のための制御装置であり、前記位相変更機構の動作を制御する可変動弁装置の制御装置において、
前記位相変更機構の作動油の成分に応じて前記位相変更機構の動作を制限する制限制御を行なうこと
を特徴とする可変動弁装置の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の可変動弁装置の制御装置において、
前記バルブタイミングが前記特定位相に固定されている前記位相変更機構の動作状態を位相固定状態とし、前記バルブタイミングを変更することが可能な前記位相変更機構の動作状態を位相解除状態とし、前記位相変更機構が前記位相解除状態のときに前記バルブタイミングの変更が可能な範囲を変更可能範囲として、
前記制限制御において、前記位相変更機構の作動油の成分に応じて前記変更可能範囲を制限すること
を特徴とする可変動弁装置の制御装置。
【請求項3】
バルブタイミングを変更する油圧式の位相変更機構と、バルブタイミングを特定位相に固定する位相固定機構とを含む内燃機関の可変動弁装置のための制御装置であり、前記位相変更機構の動作を制御する可変動弁装置の制御装置において、
前記バルブタイミングが前記特定位相に固定されている前記位相変更機構の動作状態を位相固定状態とし、前記バルブタイミングを変更することが可能な前記位相変更機構の動作状態を位相解除状態とし、前記位相変更機構が前記位相解除状態のときに前記バルブタイミングの変更が可能な範囲を変更可能範囲として、
前記位相変更機構の動作を制限する制限制御を行なうこと、
ならびに、前記制限制御において、前記位相変更機構の作動油の粘度に応じて前記変更可能範囲を制限すること
を特徴とする可変動弁装置の制御装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の可変動弁装置の制御装置において、
前記位相変更機構の作動油の温度を油温度とし、前記位相変更機構の作動油の粘度を油粘度とし、前記油温度が所定の温度範囲内にある状態を所定油温時として、
前記制限制御において、前記所定油温時かつ前記油粘度が高いときの前記変更可能範囲の大きさを前記所定油温時かつ前記油粘度が低いときの前記変更可能範囲の大きさよりも小さくすること
を特徴とする可変動弁装置の制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の可変動弁装置の制御装置において、
前記特定位相が最遅角位相と最進角位相との間の位相であること、
前記最遅角位相から前記特定位相までの範囲のうちの前記特定位相よりも遅角側の所定の位相を遅角側制限位相とし、前記特定位相から前記遅角側制限位相までの範囲を遅角側制限範囲として、前記変更可能範囲に前記遅角側制限範囲が含まれること、
ならびに、前記制限制御において、前記所定油温時かつ前記油粘度が高いときの前記遅角側制限範囲の大きさを前記所定油温時かつ前記油粘度が低いときの前記遅角側制限範囲の大きさよりも小さくすること
を特徴とする可変動弁装置の制御装置。
【請求項6】
請求項4に記載の可変動弁装置の制御装置において、
前記特定位相が最遅角位相と最進角位相との間の位相であること、
前記最遅角位相から前記特定位相までの範囲のうちの前記特定位相よりも遅角側の所定の位相を遅角側制限位相とし、前記最進角位相から前記特定位相までの範囲のうちの前記特定位相よりも進角側の所定の位相を進角側制限位相とし、前記特定位相から前記遅角側制限位相までの範囲を遅角側制限範囲とし、前記特定位相から前記進角側制限位相までの範囲を進角側制限範囲として、前記変更可能範囲に前記遅角側制限範囲および前記進角側制限範囲が含まれること、
ならびに、前記制限制御において、前記所定油温時かつ前記油粘度が高いときの前記遅角側制限範囲および前記進角側制限範囲の大きさを前記所定油温時かつ前記油粘度が低いときの前記遅角側制限範囲および前記進角側制限範囲の大きさよりも小さくすること
を特徴とする可変動弁装置の制御装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の可変動弁装置の制御装置において、
前記制限制御において、前記制限制御を実行する期間を制限期間として、前記作動油の成分および粘度の少なくとも一方に応じて前記制限期間を変更すること
を特徴とする可変動弁装置の制御装置。
【請求項8】
請求項7に記載の可変動弁装置の制御装置において、
前記位相変更機構の作動油の温度を油温度とし、前記位相変更機構の作動油の粘度を油粘度とし、前記油温度が所定の温度範囲内にある状態を所定油温時として、
前記所定油温時かつ前記油粘度が高いときの前記制限期間を前記所定油温時かつ前記油粘度が低いときの前記制限期間よりも大きくすること
を特徴とする可変動弁装置の制御装置。
【請求項9】
バルブタイミングを変更する油圧式の位相変更機構と、バルブタイミングを特定位相に固定する位相固定機構とを含む内燃機関の可変動弁装置のための制御装置であり、前記位相変更機構の動作を制御する可変動弁装置の制御装置において、
前記バルブタイミングが前記特定位相に固定されている前記位相変更機構の動作状態を位相固定状態とし、前記バルブタイミングを変更することが可能な前記位相変更機構の動作状態を位相解除状態とし、前記位相変更機構が前記位相解除状態のときに前記バルブタイミングの変更が可能な範囲を変更可能範囲とし、前記位相変更機構の作動油の温度を油温度とし、前記変更可能範囲を制限する期間を制限期間とし、前記油温度が所定の温度範囲内にある状態を所定油温時として、
前記所定油温時の前記位相変更機構の動作速度に応じて前記変更可能範囲および前記制限期間の少なくとも一方を変更する制限制御を行うこと
を特徴とする可変動弁装置の制御装置。
【請求項10】
請求項9に記載の可変動弁装置の制御装置において、
前記バルブタイミングが進角するとき、前記位相変更機構の動作速度を学習すること
を特徴とする可変動弁装置の制御装置。
【請求項11】
請求項9または10に記載の可変動弁装置の制御装置において、
前記バルブタイミングが変化しはじめるとき、前記位相変更機構の動作速度を学習すること
を特徴とする可変動弁装置の制御装置。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれか一項に記載の可変動弁装置の制御装置において、
機関運転状態に応じて前記位相変更機構の動作状態が前記位相固定状態から前記位相解除状態に変更されるとき、前記位相変更機構の動作速度を学習すること
を特徴とする可変動弁装置の制御装置。
【請求項13】
請求項9〜12のいずれか一項に記載の可変動弁装置の制御装置において、
前記位相変更機構の動作速度を学習するとき、前記位相変更機構に対する前記作動油の給排態様として前記位相変更機構を所定の動作速度以上の動作速度で駆動するための給排態様を選択すること
を特徴とする可変動弁装置の制御装置。
【請求項14】
請求項9〜13のいずれか一項に記載の可変動弁装置の制御装置において、
前記内燃機関の回転速度を加味して前記位相変更機構の動作速度を学習すること
を特徴とする可変動弁装置の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−24089(P2013−24089A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158199(P2011−158199)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】