説明

可変表示装置における表示用回転球体の支持構造

【目的】軽量化に伴って強度を低下させる可変表示装置の表示用回転球体につき、これに導入する回転力によって歪みを発生させることなく支持できるようにした支持構造を提供する。
【構成】内部を中空にする回転球体1には中心部を通る直径方向の軸線に沿って2つの透孔5,11を対向状に開設し、これに回転支軸23を挿通する。一方、前記透孔の一方11に回転力を導入するベベルギヤ14を添わせて回転球体1に固着する。そして、このベベルギヤ14の内面側から一体に延設する筒形の軸受部15を前記透孔11を通して回転球体1の内部に突き入れると共に、該軸受部15に前記回転支軸23を挿通してこの軸受部の内部に間隔を置いて装置する2つのボールベアリング16,24で回転自由に軸承し、これにより該ベベルギヤ14を介して前記回転支軸23に対して前記回転球体1を軸承するようにして間接的に回転支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パチンコ遊技機やスロットマシン等の遊技機に組込まれ使用される可変表示装置における表示用回転球体の支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
パチンコ遊技機やスロットマシン等の遊技機には遊技を演出する各種の表現手段を取り入れた可変形の表示装置、所謂可変表示装置が使用されている。この可変表示装置の中の一種に予め設定する条件、例えば当り役の条件等を遊技者に視覚的に確認させるための手段として表面に図柄(絵柄や文字、数字等)を表示した回転球体を使用するものがある。
この回転球体は、ドラム型の回転表示体に対抗するものとして登場したものであり、ドラム型回転表示体における一面的な表示形態に対して、球面を利用することによって多面的な表示を可能にするもので、目新しさに加えて遊技者に変化に富んだ表示装置を提供することができる。
【0003】
この回転球体を組み込む表示装置については、球体そのものを形成することに併せて、この球体の表面に図柄を表示形成するのが容易でないと言った基本的な問題がある外に、球体そのものを軽量化すること、そして軽量化された球体を安定的に支持し、且つこの回転球体に対して回転力をどの様にして導入するか、と言った問題がある。
特に回転球体の軽量化は大型化する上で解決しなければならない問題であり、また軽量化された回転球体を安定的に支持することは表示装置に組込む際の解決しておかなければならない課題である。
【0004】
従来、この様な事情を踏まえて回転球体の成形を助ける技術として、例えば特許文献1乃至3に記載されるような発明が提案されている。
【特許文献1】特開平8−191934号公報。その明細書の段落0032〜0039、そして図面の図1〜図9。
【特許文献2】特開平8−191935号公報。その明細書の段落0019〜0026、そして図面の図1〜図9。
【特許文献3】特開平8−191936号公報。その明細書の段落0025〜0032、の説明及び図面の図1〜図9。
【0005】
ここに開示される技術は、上記特許文献1〜3において基本的に記載を共通にしていてそれぞれ構造の説明に違いがないものとなっているので、ここでは特許文献1の説明に基づき見ることにすると、回転体56は一対の半球形の殻体62,64から構成されるものとなっており、これら殻体には半球面中央部に殻体の球面の中心から放射線方向(球心方向)に向けて筒状の軸筒部66を立設することが記載されている。そして、その一方の殻体62の円形開口端部には嵌合凹部72を、軸筒部66の自由端部には嵌合軸凸部74を形成し、また他方の殻体64の円形開口端部には嵌合凸部76を、そして軸筒部66には嵌合軸凹部78を設けて、球体を作るに当ってはこの2つの殻体62,64を合体させるに際して開口部の端縁同士を衝き合せて前記嵌合凹部72と嵌合凸部76とを嵌め付け、また前記嵌合軸凸部74と嵌合軸凹部78とを嵌め付けて組付け、球体とすることが説明されている。
【0006】
つまり、この特許文献には(球形の)回転体56を作るに当って、一対の半球形の殻体62,64を抱き合せること、この抱き合せに当って両殻体62,64の円形開口端部に設ける嵌合凹部72と嵌合凸部76とを嵌め合せて球形に組立てることが記載されている。
【0007】
この2つの殻体62,64を凹部72と凸部76とを嵌め合せによって合体し組合せる構造は、球体そのものを作る上で最も一般的な手法を採るものとなっているが、しかし、ここには組合った殻体62,64同士が分離することなく結合し、また結合した状態に保持することについての説明はされていない。
そして、軽量化すること、この軽量化によって大型の球体の成形を可能にすること、更には軽量化することに伴って問題となる回転球体の支持構造とこの回転球体に対する外部からの回転力の導入等と言った重要な事項についての技術の開示がされていない。勿論、これらの特許文献には球体の表面に表示する図柄の表示形態、表示方法についても開示されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、この様な状況に鑑み、例えばパチンコ機に使用される可変表示装置における表示用回転球体について、その軽量化に伴って強度が低下することから生じる支持構造における問題点を改善するため開発されたものである。
更に言えば、本発明は回転球体を回転させるため導入される回転力によって回転球体自体が歪み変形するのを有効に防止するようにした表示用回転球体の支持構造を提供しようとするものである。
【0009】
回転球体は、成形性から一般に合成樹脂を材料に形成されている。この回転球体を前述のように2つの殻体の組合せによって形成する場合も殻体そのものは合成樹脂を材料に型成形されるものとなっている。
一方、言うまでもないが、この回転球体は本来的に回転されるものであるが、可変表示装置に組込まれ使用される回転球体は、単に回転するだけではなく遊技性を高める上から急回転と急停止が求められるものである。従って、単に球体であるだけでなく軽量であって回転,停止の操作に対応して迅速に付いていけるものであることが求められている。また、この軽量化は駆動力、つまりモータを小型化する上でも重要な要素になっており、更には回転球体を大型化して迫力ある表示手段とする上でも欠かせない要素になっている。
【0010】
しかし、一般的に軽量化する方法としては、言うまでもなく球体そのものの重量を落すことになるが、実際には球体の肉厚を落すこと、つまりできるだけ肉薄の球体とすることによって対処している。
この球体を肉薄にすることは、別の観点から、つまり回転球体の表面に施す図柄を明瞭にするため背後から照明光源を当てる場合にも有利になることから選択されることにもなっているが、その反面、肉薄にすると、球体の強度が低下すると言った重大な問題が発生する。つまり、回転球体においてこの強度の低下は外部から導入する回転力によって回転されるとき、回転球体の部分から回転力が導入されることからこの回転が球体の全体に及ぶ際に表面に皺が発生すると言った歪が発生することになる。
【0011】
本発明は、この軽量化のため回転球体を肉薄に成形することに伴って強度が低下し、回転力の導入時に球体の表面に歪が発生するのを効果的に防止するため開発されたものであり、回転球体を可変表示装置内の一定位置に回転自由に支持しながらこの回転球体に歪を発生させることなく、安定的に回転力を導入できるようにした新たな支持構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記の様な従来の問題点に鑑み、これを改善するため開発されたもので、請求項1に係る発明は、表面に図柄を表示する中空の回転球体には中心部を通る直径方向の軸線に沿って2つの透孔を相対向して開設し、その一方の透孔を囲む外表面部にベベルギヤを一体に止着し、該ベベルギヤの内面側から突出する所要長さの筒形軸受体を前記軸線に沿って球体内部に突き入れ、その一方、回転球体を支持する支持枠体には回転支軸の両軸端部を渡してそれぞれ軸着し、且つ該一方の軸端部の近傍を前記ベベルギヤの前記筒形軸受体に挿通し回転自由に軸承し、また他方の軸端部の近傍を前記他方の透孔に挿通してこれにより前記回転支軸を前記回転球体の直径方向に貫通せしめ、前記筒形軸受体を介して前記回転球体を前記回転支軸に軸承支持することを特徴とした可変表示装置における表示用回転球体の支持構造を提供することにある。
【0013】
ここにおいて、前記ベベルギヤは外部から、つまり可変表示装置から回転球体を回転させるために回転力を導入する導入手段となるもので、また前記支持枠体は上記回転球体を可変表示装置に組込むための支持体となるものである。また、回転支軸は上記支持枠体に両軸端部を渡し、回転球体を回転自由に支持する支軸となものである。
【0014】
上記回転球体は、合成樹脂を素材に中空の球体に形成され、表面部には所定の図柄を回転する円周方向に沿って列状に配置することになる。
この回転球体は、軽量化のためできるだけ肉薄に形成し、球体の中心部を通る直径方向の1つの軸線上に前記2つの透孔を相対向状に開設し、この透孔に前記回転支軸を貫通する如く刺し通し、この支軸を中心にして回転球体を回転させ、また前記支持枠体に組込むのである。
【0015】
一方、前記ベベルギヤは外部からの回転力を回転球体に導入するための導入手段であって、合成樹脂を素材に形成し、その一面側(内面側)の中央部には所要長さの前記筒状の軸受体を一体に備える。
このベベルギヤは、前記回転球体の外表面部に添わせるのに併せてこの筒形軸受体を前記回転球体に開設する透孔の一方に刺し通し前記軸線に沿わせ、この状態で回転球体に固着することになる。そして、回転球体を支持する前記回転支軸は、一方の軸端部をこの軸受体に通すことで実質的にこの回転球体を貫通することになる。
【0016】
上記軸受体は、回転支軸との間に軸方向に間隔を置いて2つの軸受部、つまりベアリングを配置介挿し、実質的に回転球体をこの筒形の軸受体を介して回転支軸に軸承するようにしてあり、また回転支軸の他方の軸端部は他方の透孔に対して単に突き抜けるようにして直接回転球体との接触を回避している。
従って、上記回転球体は回転支軸を球体の中心部を貫通する状態で配置することになるが、この回転支軸とは前記軸受体を介して軸承されることになる。つまり、回転球体はこの軸受体を有するベベルギヤ側においてのみ回転支軸に支持され、この軸受体を回転させることによって回転支軸を中心にして回転することになっいているのである。
【0017】
請求項1に係る発明は、この様にして成ることから、外部から導入される回転力によって前記ベベルギヤが回転されると、このベベルギヤが止着する回転球体が回転することになる。そして、この回転は、ベベルギヤに一体に設けられる筒形軸受体が回転支軸に回転自由に軸承されることからこの回転支軸を中心にして軸受体が回転して行われることになる。つまり、本発明では回転球体は外部から導入される回転力によって回転されるベベルギヤの回転で回転すると同時に、この回転球体は回転支軸に対してベベルギヤの筒形軸受体を回転させることによって回転することから実質的には回転支軸に対してこの筒形軸受体を介して間接的に回転する構造になっている。
【0018】
従って、回転支軸を中心に外部からの回転力によって回転する回転球体は、回転の抵抗力を全て筒形軸受体を備えたベベルギヤが負担することになることから回転球体には回転力導入による負担が掛からず、球体表面に発生する歪を未然に防止することができる。
そして、上記ベベルギヤの軸受体は所要の長さを有し、回転支軸に対して被るように軸承されることから回転球体の中心部を通る軸線を中心に回転することになり、回転球体を安定した回転にすることができる。
【0019】
また、本発明の請求項2に係る発明は、前記回転球体は半球形にしてそれぞれの頂部に透孔を開設する2つの殻体から構成し、その開口部同士を衝き合せて中空の球体に組合せると共に、該球体の表面に熱収縮性合成樹脂の延伸フィルムからなる筒形の表示体を前記衝き合せた開口部に沿って被せ、これを加熱収縮して前記球体の表面に密着させることにより前記殻体相互を結束固定し、且つ同時に該球体の表面に前記表示体の表面に施す図柄を表示するようにしてなることを特徴とした可変表示装置における表示用回転球体の支持構造を提供することにある。
【0020】
この請求項2に係る発明は、前記請求項1に係る発明の回転球体について、その一つの成形構造と、その表面に表示される図柄の表示について具体的にしたものである。
この発明は、2つの半球形の殻体同士を衝き合わせて球体に組立てること、この殻体の成形時に回転支軸を通す透孔を形成し、更には両殻体の組合わせに先立って一方の殻体にベベルギヤを止着する作業を球体とする以前に行えるようにして作業をより容易にすること、また同時に安定した精度の高い回転球体を得られるようにしたものである。
そして更に、回転球体の表面に表示する図柄を筒形の表示体を使うことによって容易にし、しかも正確に表示できるようにする一方、この表示体の加熱収縮力を利用して2つの殻体を結束し、これにより球体とすることを通して安定した回転球体を容易に成形できるようにしたことにある。
【発明の効果】
【0021】
本発明は上述の様に構成されることから、特に請求項1の発明にあたっては、回転球体に対して外部から導入される回転力が回転球体自体に直接作用することがなく、ベベルギヤに作用し、しかもこのベベルギヤの筒形軸受部を介して回転する構造としたことから回転球体に導入される回転力が直接負担となって作用しないため、この負担のための強度が不要となる。
従って、本発明によれば、回転を受けるための強度を必要としないことから回転球体の肉厚を球体そのものを維持することができる肉厚を選択することができるものとなる。
この結果、本発明においては、回転球体の肉厚を最少にして安定した状態において軽量化を図ることができることから、回転及び停止の操作において迅速に且つ正確に対応することができると共に、この軽量化に伴い動力元を大型にすることなく回転球体そのものを大型化することが可能になる。
【0022】
また、この回転球体を成形するに当って、本発明では2つの殻体の組合せから回転球体を成形し、更にこの回転球体の表面に表示する図柄を表示体によって表示し、且つこの表示体の加熱収縮を利用して2つの殻体を結束し、組立てる構造としたことから容易に、且つ安定した回転球体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、本発明を図示する実施の形態に基づき説明し、その特徴とするところを詳述することにする。
ここに示す実施の形態は、本発明の一例であってパチンコ遊技機の遊技盤面に組込む可変表示装置に使用する場合を示したものである。図1は回転球体の完成状態における正面図であり、図2はこの回転球体を可変表示装置に組入れた状態を説明する一部断面とした右側面図、図3は可変表示装置の中央縦断右側面図である。
【0024】
本発明に係る回転球体1は、2つの半球形をなす殻体2a,2bの組合せからなる球体2と、この球体2の表面に図柄を表示すると共に前記2つの殻体2a,2bを一体に結合して球体とする筒形に形成される表示体3から構成されている。
【0025】
図4乃至図11は、上記2つの殻体2a,2bを詳細に示したものである。ここでは円球となる中空の球体2を形成するため2つの殻体2a,2bはそれぞれ半円球形の殻体にして内部を中空にしてある。
この2つの殻体2a,2bは熱可塑性の合成樹脂を素材にして形成してあり、軽量化を図るためここではシート状にした肉薄の素材を半円球形をなす凸型を利用して真空成形法によって吸引し形成している。
【0026】
この成形の実際を更に具体的に説明すると、図4は2つの殻体2a,2bを中央部で断面とした正面図であり、一方の殻体2aは全体を内部を中空にする半円球形に形成し、その頂部に当る部分、つまり、中心部分に真円形の平滑面部4を形成してこの中心位置に後述する回転支軸を通す透孔5を開設する。
また、この殻体2aは真円形をなす開口部6の縁を全周に亘って縮径させ、この開口部の外周面に環状の縮径凹部7を形成する。
【0027】
上記縮径凹部7は、後述する他方の殻体2bと結合して球体とするとき、この殻体2aの開口部6を嵌め付けるための連結部を構成するものであり、ここでは他方の殻体2bの開口部8を確実に嵌め付けられる深さ、つまり開口部8の縁から頂部に向けての深さを定めると共に、縮径の幅、つまり外周面からの内方への後退の幅を他方の殻体2bの肉厚に揃えてこの開口部8が縮径凹部7に嵌り付いたとき、2つの殻体2a,2b相互の外表面(外周面)同士が一つに揃い段差が生じないようにしてある。
そして、上記環状の縮径凹部7には凹部の底を外方に隆起させるようにして係合突起部9を形成してある。
【0028】
係合突起部9は、他方の殻体2bと組合ったとき、2つの殻体2a,2bの係合位置を決めるためのもので、この実施形態では環状方向に不等間隔に3ケ所に設けてある(図6を参照)が、1個でもよい。この係合突起部9は後述するように他方の殻体2bと組合うときに相互の組合位置が常に一定となるようにするものであり、そのため複数個とする場合には間隔に差を設け、また他方の殻体2bに設ける受け手となる後述する係合凹部もこれに一致するようにして常に相手となるものが特定の係合突起部9と結合するようにして2つの殻体2a,2b相互の位置関係が狂うことなく一定であるようにする。
ところで、この係合突起部9は表面が弧面をなすように肉厚の全体を外方に隆起させて図5及び図7に示すようにその頂部が外側面を超えて突き出すようにされる。
【0029】
その一方、他方の殻体2bは、図8及び図10に示したように開口部8の形状を除いて前記一方の殻体2aと同一形状に形成し、2つの殻体2a,2bが開口部6,8を衝き合せて組合ったとき、一つの円球体を完成することができるようにしてある。
そして、この殻体2bはその頂部となる位置に真円形の平滑面部10を形成し、この平滑面部10の中心部に透孔11を開設し、2つの殻体2a,2bを組合せて球体としたとき、この平滑面部10と前記平滑面部4とが、また透孔11と透孔5とが向い合せになるようにしてある。
【0030】
殻体2bの開口部8は、前記一方の殻体2aの開口部6に形成する縮径凹部7に密着した状態で嵌り付けるようにしてある。そして、この開口部8の縁には前記係合突起部9を受け入れ係合する係合凹部12が前述したようにそれぞれ対応する位置に3個設けてある。
この係合凹部12は開口部8の内周面を外に押し出すようにして形成してあり、この押し出された底部が外周面から隆起し突起部13を形成するようにしてある。
【0031】
上記係合凹部12は、2つの殻体2a,2bを組合せるとき、係合突起部9を受け入れることで殻体相互の結合位置を確定し、しっかりした組合せを確保するものとなるが、これに付随して形成される前記突起部13は後述するように表示体3との位置合せにも利用される。
【0032】
図12は、2つの殻体2a,2bを組合せる前の分解状態における中央縦断面図である。図中の符号14は球体2に組合せたのち、この球体を回転させるため外部からの回転力を導入するためのベベルギヤである。
ベベルギヤ14は内面側の中心部に円筒形の軸受部15を垂直に起立した状態で有し、この軸受部15の内部を貫通する孔の一方の端部に回転支軸を軸承する転がり軸受としてのボールベアリング16を備え、またこのベベルギヤの内面側には前記円形の平滑面部10の形状に合せた円形の取付台座17を形成してこの台座17に位置決め突起18を設けている。
【0033】
上記ベベルギヤ14は、上記筒形の軸受体15、台座17と共に合成樹脂によって一体成形し、2つの殻体2a,2bを組合せる前に殻体2bに取付けておくことになる。
図12は、この取付けの直前の姿を示している。ベベルギヤ14は、平滑面部10に台座17を接面させ、筒形軸受部15を透孔11に通して殻体2bに突き入れ、この台座17に設ける突起18を平滑面部10に穿つ小孔19に係入して位置決めする。次に殻体2bの内側から平滑面部10に穿つ小孔20を通してビス21を台座17のネジ穴22にねじ付けることで殻体2bに固定される。
【0034】
図13は、ベベルギヤ14を固着した殻体2bと、他方の殻体2aとを向い合せにして組合せる直前の姿を示している。この両殻体2a,2bを組合せるとき両者の間に回転支軸23を持ち込み、組込むことになる。
回転支軸23は軸の一端に前記ベベルギヤ14の筒形軸受部15に挿通し、軸受ベアリング16に滑合する軸端部23aを有している。
【0035】
この回転支軸23は、殻体2a,2bに組付ける際、最初に一方の軸端部23aを筒形軸受部15に差し入れ、ベアリング16に通すと同時に、この軸端部23aに予め装着しておくボールベアリング24を軸受部15内に持ち込み、入口部分に嵌合してこれによりこの軸受部15に貫通する上記軸端部23aを軸方向に間隔を置いて配置されることになる2つのベアリング16,24によって支持されることになる。
【0036】
この様にして一方の殻体2bに組込まれる回転支軸23は殻体2bの底から起立した状態となり、次にこの状態において他方の殻体2aを上記殻体2bに向い合せにすると、他方の軸端部23bが殻体2aの透孔5に突き抜け外に突き出すことになる。そして、このとき2つの殻体2a,2bの開口部6,8同士が嵌め合わせに結合して球体2を形成し、その直径方向の軸線に沿って回転支軸13の両軸端部23a,23bを球体の表面に突出させることになる。
【0037】
図14は、この2つの殻体2a,2bの結合によって球体2を形成した状態を示しており、このとき一方の殻体2aの開口部6に形成する環状の縮径凹部7に他方の殻体2bの開口部8の内周面が嵌り付き、両殻体の外周面(外表面)同士が一つの面に揃って平滑な面を形成する。
図15は、この開口部6,8同士が結合した状態を示す拡大断面図である。このとき、縮径凹部7に形成する係合突起部9と他方の殻体2bの開口部8に形成する係合凹部12とが係合して一方の殻体が他方の殻体に対して回転しないように位置規制されることになる。
【0038】
図17及び図18は、上記2つの殻体2a,2bの組合せによって球形に組立てられる球体2と、この球体2を球形に固定し、且つ球体の表面に所定の図柄25を表示する表示体3との組合せ関係を説明したものである。
表示体3は、加熱収縮性の合成樹脂製延伸フィルム、即ちシュリンクフィルムを素材に形成したものであり、前記球体2の円周に合せた長さの帯状のフィルムの一面に予め印刷等によって図柄25を表示しておき、この帯状のフィルム(シュリンクフィルム)を図柄25を外側にして円筒状にしたものである。
【0039】
表示体3は、ここでは上記フィルムの幅を図示するように球体2の略直径に等しくなるように揃えてあり、図17に示したように筒形にした表示体3の内部に前記球体2を嵌め入れる。そうした後、この表示体3をシュリンクフィルムが収縮する温度で加熱し、熱収縮させることで球体2の表面に密着させ、貼り付けるのである。そして同時に、この収縮力を利用して2つの殻体2a,2b同士を引き合わせ、結合させるのである。
【0040】
球体2に対しての表示体3の装着に際しては、表示体3の円周方向が球体2を形成する2つの殻体の開口部6,8の円周方向と一致するように被せることになる。そして同時に、この表示体2の外表面に予め表わしておく位置合せ用基点26と前記係合凹部12によって形成される突起部13とを合せて両者の位置を確定し、その後加熱収縮させて一体化し回転球体1を形成することになる。
【0041】
図1は、この様にして形成された回転球体1の正面図である。表示体3は、前述したように加熱収縮する(実際には100℃〜150℃の温度による加熱)ことによって球体2の表面に密着することになり、同時にこの加熱により表示帯3は開口部6,8同士を衝合せて球体となる2つの殻体2a,2bを近接方向に引き寄せ締め付けてこれらを一体化し、球体に拘束することになる。
ところで、表示体3は、前記球体2の軽量化に併せてここでは0.06mm厚のシュリンクフィルムを用いている。この厚みに関しては2つの殻体2a,2bを締め付ける強さを考慮して可能な限り肉薄のフィルムを選択するとよい。
またシュリンクフィルムの材料としては、ここではポリ塩化ビニルを選択しているが、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂等の熱収縮性フィルム、その他のフィルムであってもよい。
【0042】
次に、図2及び図3はこの様にして得られた本発明に係る回転球体1を可変表示装置Aに組込み使用する実際を示したものである。尚、これらの図面には回転球体1を回転駆動する機構部を中心に示し、表示装置全体を示すことを省略している。つまり、ここでは回転球体1を収める可変表示装置のケース部分が省略されている。各図面において装置の正面は左側となる。
【0043】
この可変表示装置Aは、回転球体1を自転運動と公転運動をさせるため2つの系統の駆動機構を備えており、図中の符号30は公転運動のためのモータを、31は自転運動のためのモータである。
モータ30は、出力軸のプーリ32に掛けるベルト33によって割出し板34を回転し、表示装置Aの背面部フレーム枠35を貫いて回転自由に支持される円筒状の回転軸36を回転する。
【0044】
上記回転軸36は、フレーム枠35に備える円筒形の軸受体37を貫き、フレーム枠35の前面側に先端部を突き出し、この先端部に半球形をなす椀形の軸支持体38を一体に連結する。
椀形の軸支持体38は、開口部の対称な位置に一対の軸受39a,39bを備え、この軸受39a,39bに前記回転球体1の中心に通した回転支軸23の両軸端部23a,23bを軸装してこの軸支持体38の内部に回転球体1を組付ける。
【0045】
従って、モータ30が外部からの指令を受けて回転駆動すると、ベルト33,割出し板34,回転軸36を介して軸支持体38がこの回転軸36を支点にして回転することになる。そして、この軸支持体38の回転に伴って回転球体1が同一方向に回転することになり、回転支軸23を垂直面に沿った方向、つまり両軸端部23a,23bを上下させる方向に回転させることになる。つまり、ここでは上記軸支持体38と共に回転球体1は公転運動をすることになる。
【0046】
一方、自転用のモータ31は、出力軸のプーリ40にベルト41が掛かり、割出し板42と連結する。この割出し板42は前記回転軸36の中空部を貫く第2の回転軸43に連結し、更にこの第2の回転軸43は前方に貫いた先端部にドライブベベルギヤ44を連結する。
上記ドライブベベルギヤ44は前記軸支持体38の内側に位置し、第2の回転軸43の回転に伴って回転するようにしてあり、更にこの軸支持体38の内部に備えられるアイドルベベルギヤ45に噛合する。そして、このアイドルベベルギヤ45は前記回転球体1に備えたベベルギヤ14に噛合するようにしてある。
【0047】
この結果、自転用のモータ31が駆動し、プーリ40が回転すると、ベルト41を介して割出し板42が回転し、回転軸43を回転させることになる。更に、ドライブベベルギヤ44,アイドルベベルギヤ45を回転させてベベルギヤ14を回転させることになり、このベベルギヤ14の回転で一体的に止着する回転球体1を回転させることになるのである。
上記回転球体1は、軸受39a,39bによって支持された回転支軸23を支点に自転運動することになり、2つの殻体2a,2bの衝き合った開口部6,8を中心にして回転することになる。そして、この回転によってその周面を軸支持体38に対して出し入れすることになり、この周面に沿って連続して配置した図柄25を回転方向に巡回させることになるのである。
【0048】
つまり、公転用モータ30が駆動すると、回転球体1は回転軸36の回転により軸支持体38と共にこの回転軸36を支点にして垂直面に沿った上下方向に回転することになり、また自転用のモータ31が駆動すると、第2の回転軸43が回転し、軸支持体38の内部に備えたドライブベベルギヤ44,アイドルベベルギヤ45を介してベベルギヤ14が回転して回転球体1を回転支軸23を支点にして前後方向に回転させ、その表面に表示する図柄25を軸支持体38から出し入れすることになるのである。
【0049】
尚、この自転運動における回転球体1は、回転支軸23を中心にして回転することになるが、この回転球体1はベベルギヤ14からのみ回転力を受けて回転し、回転支軸23の周りを回転することになる。
つまり、ここでは回転球体1は軸受39a,39bに支持固定された回転支軸23に支持される構造になるが、実際にはベベルギヤ14の円筒形の軸受部15を回転支軸23に軸承させることによって回転するようにしてあり、この軸受部15を介して間接的に軸承されるようになっているのである。
【0050】
前記ボールベアリング16,24は、この回転を円滑にするためと、円筒形の軸受部15の離れた両端部にこの2つのボールベアリング16,24を間隔を置いて配置することによって回転支軸23に対してブレのない安定した回転が得られるようにしてある。
従って、この意味から上記2つのボールベアリング16,24の間隔は所要の間隔をもって配置し、回転支軸23に対して安定的に支持するようにすることが求められる。
この様なことから上記回転球体1は、このベベルギヤ14の取付台座17にビス21を介して直接固定し、このベベルギヤ14を基点に回転支軸23に軸承される構造としてあるのである。
【0051】
従って上記の構成から、回転球体1は回転支軸23を中心にして回転することになり、このときモータ31からの駆動力は回転球体1に直接入ることなくベベルギヤ14を介して回転球体1に導入されることになる。つまり、ベベルギヤ14の回転に従って回転球体1が回転することになっていることから回転力の導入に伴う負荷が回転球体1の部分の1ヶ所、例えば回転支軸23に対する軸承部分に集中する等、ここに直接的に作用することが回避されることになるのである。
そして、この回転において回転支軸23に対する回転球体1は、ベベルギヤ14を介して、更に言うならば、その筒形軸受部15を介して回転することから回転支軸23に回転球体1を直接的に回転自由に支持させる必要がないものとなる。
【0052】
この様なことから、本発明によれば、外部から導入される回転力が直接回転球体1に、更に言えば、その部分に直接導入されて一部分に負荷が集中的に作用することがなく、球体全体に回転力が伝播するとき、この間に歪を発生することが極めて少なくなる。そして、この回転に当って、回転球体1は直接回転支軸23に接触する部分を持たないことから回転時の摩擦抵抗がなく、この結果、摩擦抵抗による球体の歪の発生も回避されるものとなる。
【0053】
従って、この様に本発明は、回転球体1を回転するため回転力を導入する際に、回転球体1自体に歪を発生させる負荷を与えない支持構造に係ることから回転球体の強度を落すこと、つまり、肉厚を薄くすることができ、これに伴って回転球体の軽量化を図ることが可能になる。
この回転球体の軽量化は、駆動源の小型化、回転球体自身の大型化を可能にし、これに伴って可変表示装置の設計の自由度を高めることになるが、当然のことではあるが、急回転は基より急停止にも対応することができることから迅速な変化に富んだ可変表示装置を提供することができる。
【0054】
また一方、回転球体を2つの半球形の殻体2a,2bの組合せによって形成する構造は中空の球体の成形を容易にすると共に、この球体に開設する透孔5,11の形成を容易にする。そしてまた、この殻体からの形成は、ベベルギヤ14の取付けを容易にし、このベベルギヤ14に対する回転支軸23の装着を容易にすることになり、全体として回転球体の製造製を高め、更には制度の高い製品とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明に係る回転球体の正面図。
【図2】回転球体を可変表示装置に組付けた使用状態を説明する一部断面とした右側面図。
【図3】回転球体を可変表示装置に組付けた使用状態を説明する中央縦断右側面図。
【図4】球体を形成する一方の殻体の中央縦断正面図。
【図5】図4のイ部の拡大断面図。
【図6】一方の殻体の開口部側から見た底面図。
【図7】図6のロ部の拡大図。
【図8】球体を形成する他方の殻体の中央縦断正面図。
【図9】図8のハ部の拡大図。
【図10】他方の殻体の開口部側から見た底面図。
【図11】図10のニ部の拡大図。
【図12】2つの殻体を分割した状態の中央縦断正面図。
【図13】2つの殻体間に回転支軸を組込む状態を説明する分解状態における中央縦断正面図。
【図14】2つの殻体を球体に結合した状態の中央縦断正面図。
【図15】図14のホ部の拡大図。
【図16】図14のヘ部の拡大図。
【図17】球体に筒形の表示体を被せる直前の中央縦断正面図。
【図18】球体に筒形の表示体を被せた状態の中央縦断正面図。
【符号の説明】
【0056】
1 回転球体
2 球体
2a,2b 殻体
3 表示体
4,10 円形の平滑面部
5,11 透孔
6,8 殻体の開口部
7 縮径凹部
9 係合凸部
12 係合凹部
13 突起部
14 ベベルギヤ
15 筒形の軸受部
16,24 ボールベアリング
17 取付台座
21 ビス
23 回転支軸
23a,23b 回転支軸の軸端部
25 図柄
30,31 モータ
38 軸支持体
39a,39b 軸受
A 可変表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に図柄を表示する中空の回転球体には中心部を通る直径方向の軸線に沿って2つの透孔を相対抗して開設し、その一方の透孔を囲む外表面部にベベルギヤを一体に止着して該ベベルギヤの内面側から突出する所要長さの筒形軸受体を前記軸線に沿って球体内部に突き入れる一方、回転球体を支持する支持枠体には回転支軸の両軸端部を渡してそれぞれ軸着し、且つ該一方の軸端部の近傍を前記ベベルギヤの筒形軸受体に挿通し回転自由に軸承し、また他方の軸端部の近傍を前記他方の透孔に挿通して前記回転支軸を前記回転球体の直径方向に貫通せしめて前記筒形軸受体を介して前記回転球体を前記回転支軸に軸承支持することを特徴とした可変表示装置における表示用回転球体の支持構造。
【請求項2】
請求項1に記載の可変表示装置における表示用回転球体の支持構造において、回転球体は半球形にしてそれぞれの頂部に透孔を開設する2つの殻体から構成し、その開口部同士を衝き合せて中空の球体に組合せると共に、該球体の表面に熱収縮性合成樹脂の延伸フィルムからなる筒形の表示体を前記衝き合せた開口部に沿って被せ、これを加熱収縮して前記球体の表面に密着させることにより前記殻体相互を結束固定し、且つ同時に該球体の表面に前記表示体の表面に施す図柄を表示するようにしてなることを特徴とした可変表示装置における表示用回転球体の支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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