説明

可搬型の放射線画像検出装置、放射線画像撮影システム、並びに可搬型の放射線画像検出装置の所在確認方法

【課題】作業負担を減らし、撮影をより円滑に進めること。
【解決手段】X線画像撮影システム2は、二台の電子カセッテ15a、15bを備える。電子カセッテ15a、15bは、所在を報せるための音声を出力するスピーカ42を有する。撮影制御装置12は、電子カセッテ15a、15bのうち、撮影に使用することが選択されなかった電子カセッテに第二起動信号を送信し、所定時間経過後、選択された電子カセッテに第一起動信号を送信する。第二起動信号を受信した電子カセッテのカセッテ制御部60は、音量が徐々に小さくなるようスピーカ42の音声出力を制御する。一方、第一起動信号を受信した電子カセッテのカセッテ制御部60は、音量が徐々に大きくなるようスピーカ42の音声出力を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可搬型の放射線画像検出装置、放射線画像撮影システム、並びに可搬型の放射線画像検出装置の所在確認方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線画像撮影システム、例えばX線画像撮影システムは、被検体(人体)に向けてX線を曝射するX線源、被検体を透過したX線を受けて画像を検出するX線検出器、および撮影制御装置や画像処理装置(コンソール)等を備え、これらが病院内の専用の撮影室等に設置される。
【0003】
X線検出器には、X線フィルムやイメージングプレート(IP)に代わり、フラットパネルディテクタ(FPD)を用いたものが最近普及している。また、X線検出器を直方体形状の筐体に内蔵した可搬型のX線画像検出装置(以下、カセッテという)も開発されている。カセッテには用途やサイズの異なる多くの種類があり、例えば臥位撮影用と立位撮影用とで病院でも何種類か用意されているのが普通である。X線撮影を行う際には、撮影条件等に合ったカセッテを、コンソールを介して放射線技師が適宜選択して用いている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−219585号公報
【特許文献2】特開2009−045150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、複数のカセッテを扱うシステムでは、各カセッテにLED等のインジケータを設け、放射線技師により使用することが選択されたカセッテのインジケータの表示を切り替えることで、所望のカセッテが確かに選択されているか否かを報せていた。
【0006】
しかし、インジケータによる報知では、臥位撮影用の寝台や立位撮影用のスタンドにカセッテをセットしたときにインジケータが隠れて視認不能となったり、インジケータの表示が遠目では分からない場合がある。このため、セットされたカセッテをわざわざ抜き出したり、カセッテの近くに寄って表示を確認する必要があった。この確認作業を怠ると、選択していないカセッテをセットしたまま誤って撮影を行ってしまうという事態が起こり兼ねないので、面倒で時間が掛かる作業ではあるが行わざるを得なかった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、その目的は、作業負担を減らし、撮影をより円滑に進めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の可搬型の放射線画像検出装置は、被検体を透過した放射線を受けて画像を検出する放射線検出器と、外部制御装置から各種制御信号を受け付ける受信手段と、当該放射線画像検出装置の所在を報せるための音声を出力するスピーカと、スピーカによる音声出力を制御する音声出力制御手段と、各部を収容する可搬型の筐体とを備え、前記音声出力制御手段は、当該放射線画像検出装置を撮影に使用することが選択され、前記受信手段で外部制御装置からの第一指示信号を受信した場合、または当該放射線画像検出装置を撮影に使用することが選択されず、前記受信手段で外部制御装置からの第二指示信号を受信した場合に、スピーカから音声を出力させることを特徴とする。
【0009】
前記音声出力制御手段は、前記受信手段で第一指示信号を受信した場合と第二指示信号を受信した場合とで、音量、音高、または音色の少なくともいずれか一つが異なる音声をスピーカから出力させる。
【0010】
例えば、前記受信手段で第一指示信号を受信した場合と第二指示信号を受信した場合とで、音量の大小、または音高の高低の増減の仕方を変更する。より具体的には、第一指示信号を受信した場合と第二指示信号を受信した場合の一方の音声の音量を大から小、他方を小から大、または一方の音声の音高を高から低、他方を低から高に変化させる。好ましい実施形態では、一方が第二指示信号を受信した場合、他方が第一指示信号を受信した場合である。
【0011】
本発明の放射線画像撮影システムは、被検体を透過した放射線を受けて画像を検出する放射線検出器と、外部制御装置から各種制御信号を受け付ける受信手段と、当該放射線画像検出装置の所在を報せるための音声を出力するスピーカと、スピーカによる音声出力を制御する音声出力制御手段と、各部を収容する可搬型の筐体とを有する複数の可搬型の放射線画像検出装置、複数の放射線画像検出装置のうち、撮影に使用する放射線画像検出装置を選択させる操作入力装置、および前記放射線画像検出装置に各種制御信号を送信して前記放射線画像検出装置の駆動を制御する外部制御装置とを備え、前記外部制御装置は、前記操作入力装置で選択された放射線画像検出装置、および選択されなかった放射線画像検出装置のうちの一つに対して、第一指示信号、および第二指示信号をそれぞれ送信し、前記受信手段で第一指示信号、および第二指示信号を受信した場合、前記放射線画像検出装置の音声出力制御手段は、スピーカから音声を出力させることを特徴とする。
【0012】
前記外部制御装置は、先に第二指示信号を送信し、所定時間経過後、第一指示信号を送信する。所定時間は、例えば前記操作入力装置で選択されなかった放射線画像検出装置のうちの一つの音声出力時間である。
【0013】
前記外部制御装置は、前記放射線画像検出装置の使用履歴を管理し、前記操作入力装置で選択されなかった放射線画像検出装置のうち、最近使用された放射線画像検出装置に第二指示信号を送信する。
【0014】
本発明の可搬型の放射線画像検出装置の所在確認方法は、複数の可搬型の放射線画像検出装置のうち、撮影に使用する放射線画像検出装置を操作入力装置で選択させる操作入力ステップと、前記操作入力ステップで選択された放射線画像検出装置、および選択されなかった放射線画像検出装置のうちの一つに対して、外部制御装置から音声出力の指示を送信する送信ステップと、前記送信ステップで指示を受けた放射線画像検出装置のスピーカから、当該放射線画像検出装置の所在を報せるための音声を出力する音声出力ステップとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、可搬型の放射線画像検出装置に所在を報せるための音声を出力するスピーカを搭載し、撮影に使用することが選択された放射線画像検出装置、および選択されなかった放射線画像検出装置のうちの一つのスピーカから音声を出力させるので、臥位撮影用の寝台や立位撮影用のスタンドにセットされた放射線画像検出装置を抜き出したり、放射線画像検出装置の近くに寄ってインジケータの表示を確認するといった確認作業が不要となる。従って、作業負担を減らし、撮影をより円滑に進めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】X線画像撮影システムの概略構成を示す斜視図である。
【図2】電子カセッテの構成を示す斜視図である。
【図3】X線画像撮影システムの電気的構成を示すブロック図である。
【図4】音声出力の例を示す図である。
【図5】音声出力処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】電子カセッテの使用履歴情報の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1において、X線画像撮影システム2は、病院の撮影室に設置される撮影装置10、吊り下げ式移動装置11、および撮影室の隣の小部屋等に設置される撮影制御装置12、コンソール13(ともに図3参照)からなり、臥位と立位の両方の撮影が可能である。
【0018】
撮影装置10は、X線源14、および二台の電子カセッテ15a、15bを有する。X線源14は、撮影制御装置12に有線接続され、撮影制御装置12から電力が供給される。X線源14は、立位、臥位撮影に兼用され、ドライバ51(高電圧発生器、図3参照)からの高電圧によりX線を発生するX線管16、およびX線管16が発生したX線の照射野を矩形状に規制するコリメータ17を有する。X線源14は、Z軸(鉛直軸)および水平軸回りに所定角度回動可能なアーム(図示せず)を介して、Z軸方向に伸縮する支柱18の下端に取り付けられている。X線源14は、アームおよび支柱18によって、XY平面(水平面)およびZ軸方向の所望の位置に移動させることができる。
【0019】
電子カセッテ15aは、臥位撮影用の寝台19のトレイ20にセットされている。電子カセッテ15aは、被検体(人体)の胸部全体をカバーする程度の面積をもち、撮影室の天井に受像面を向けて配置される。トレイ20は、Y軸方向に移動自在に設けられており、X線源14の移動や向きの変更に追従して移動する。
【0020】
寝台19は、例えば撮影室の四隅の一角に据え付けられ、その長手方向がY軸に沿って配置されている。寝台19は、床からの高さが調節できるように伸縮する可動性の支柱(図示せず)を有し、支柱18によるX線源14のZ軸方向の伸縮に追随して上下動する。寝台19の被検体が横たわる部分は、X線画像に寝台19が映り込まないように、X線源14から曝射されるX線が略完全に透過する材料からなる。
【0021】
一方、電子カセッテ15bは、立位撮影用のスタンド21のホルダ22にセットされている。スタンド21は、例えば撮影室の寝台19の対角の隅に置かれている。電子カセッテ15bは、電子カセッテ15aと同様、被検体の胸部全体をカバーする程度の面積をもち、受像面をスタンド21の正面に向けて配置されている。電子カセッテ15bは、Z軸方向に上下動可能、且つ水平軸回りに所定角度回動可能にホルダ22を介してスタンド21に支持されている。なお、ここでは便宜的に臥位撮影用の電子カセッテを15a、立位撮影用を15bとしたが、電子カセッテ15aを立位撮影、電子カセッテ15bを臥位撮影に利用することも有り得る。
【0022】
吊り下げ式移動装置11は、XY平面におけるX線源14の位置を変更するためのものである。吊り下げ式移動装置11は、各二本の固定レール23と可動レール24、およびこれらに繋がる一対の走行部25と台車26からなる。
【0023】
固定レール23は、その長手方向がY軸に沿うように撮影室の天井に固定されている。固定レール23には溝が形成されており、断面が略コの字状である。各固定レール23は、互いの溝が対向するように配置されている。
【0024】
可動レール24と走行部25は連結されており、可動レール24は、その長手方向がX軸に沿うように、走行部25によって固定レール23に連結される。走行部25は固定レール23の溝に嵌合するローラを有し、このローラが固定レール23の溝内で回転することにより、可動レール24が固定レール23に沿ってY軸方向に移動する。可動レール24には、固定レール23同様に溝が形成され、各可動レール24は、互いの溝が対向するように配置されている。
【0025】
台車26は、台車本体27と一対の走行部28からなる。台車本体27は、その下面が支柱18の上面と連結され、上面が走行部28によって可動レール24に連結される。走行部28は可動レール24の溝に嵌合するローラを有し、このローラが可動レール24の溝内で回転することにより、台車本体27が可動レール24に沿ってX軸方向に移動する。可動レール24および台車26の移動により、台車26と支柱18に保持されたX線源14がX軸またはY軸方向に移動する。
【0026】
図2において、電子カセッテ15aは略矩形の形状を有し、通常はケーブルレスで使用される。電子カセッテ15aはX線検出器35を内蔵している。X線検出器35は、例えば、薄膜トランジスタ(TFT)とX線検出素子からなる複数の画素が2次元に配列されたマトリクス基板を有するフラットパネルディテクタ(FPD)である。X線検出器35は、TFTがオフのときに入射したX線の量に応じた電荷をX線検出素子で蓄積する。そして、TFTをオンしてX線検出素子に蓄積した電荷を外部に読み出す。読み出した電荷を信号処理部62(図3参照)の積分アンプで電圧信号に変換し、変換した電圧信号を信号処理部62のA/D変換器でA/D変換することで、デジタルな画像データが生成される。
【0027】
電子カセッテ15aには、X線検出器35とともにバッテリ36、およびアンテナ37が内蔵されている。バッテリ36は、電子カセッテ15aの各部を動作させるための電力を供給する。バッテリ36は、薄型の電子カセッテ15a内に収まるよう比較的小型のものが使用される。バッテリ36は、電子カセッテ15aの一側面に設けられた蓋38を開けて外部に取り出すことができ、充電することが可能である。アンテナ37は、無線通信のための電波を撮影制御装置12との間で送受信する。
【0028】
電子カセッテ15aの一側面には、電源スイッチ39、ソケット40、インジケータ41、およびスピーカ42が配されている。ソケット40は撮影制御装置12と有線接続するために設けられており、ソケット40には撮影制御装置12に繋がれた通信ケーブル(図示せず)のコネクタが差し込まれる。通信ケーブルは、バッテリ36の残量不足等で電子カセッテ15aと撮影制御装置12との無線通信が不可能になった場合に使用される。通信ケーブルを使用した場合、撮影制御装置12との有線通信が可能になるとともに撮影制御装置12から電子カセッテ15aに給電することが可能となる。
【0029】
インジケータ41は例えば多色のLEDからなり、電子カセッテ15aの電源のオン/オフ、バッテリ36の残量、無線通信状況等を表示する。スピーカ42は、電子カセッテ15aの撮影室内の大凡の位置を報せるための音声(ビープ音等)を出力する。
【0030】
電子カセッテ15aは、非使用時は通信機能(通信制御部53等、図3参照)のみに給電し、他の各部への給電を停止して電力消費量を抑えるスリープモードで動作している。電子カセッテ15aは、撮影制御装置12からの第一起動信号(後述、第一指示信号に相当)を受けて、通信機能以外の各部にも給電を行ってX線検出器35等を動作させ、直ちにX線画像の出力が可能な撮影準備モードにスリープモードから移行する。一方、第二起動信号(第二指示信号に相当)を受けた場合は、通信機能の他にスピーカ42の機能に給電を行うお報せモードに移行する。スリープモードから撮影準備モードに切り替わると、インジケータ41の表示も例えば赤色から緑色に切り替わる。お報せモードの場合はインジケータ41の表示は切り替わらない。なお、電子カセッテ15bも電子カセッテ15aと同様の構成を有するため、説明を省略する。
【0031】
図3において、撮影制御装置12は、X線源14と電子カセッテ15a、15bの撮影動作を制御する。コンソール13は、撮影制御装置12に対して撮影指示の入力や撮影条件(X線管16の管電圧、管電流、曝射時間、電子カセッテ15a、15bのうちのいずれを使用するか等)の設定を行う際に操作される。
【0032】
撮影制御装置12は、コンソール13から受信した撮影条件や撮影指示に基づいて、X線源14および電子カセッテ15a、15bにそれぞれの動作タイミングが同期するように動作司令を与える。電子カセッテ15a、15bから電波にて出力された画像データは、撮影制御装置12を経由してコンソール13に入力される。コンソール13は、パーソナルコンピュータやワークステーションからなり、受信した画像データに対して画像処理を施す他、X線画像をディスプレイに表示させたり、画像データを画像蓄積サーバ等のデータストレージデバイスにアップロードする。
【0033】
撮影制御装置12は、各電子カセッテ15a、15bのうち、コンソール13で使用するとして選択された方に第一起動信号を、他方に第二起動信号を送信する。撮影制御装置12は、第二起動信号を先に送信し、所定時間(使用しない電子カセッテの音声出力時間、図4参照)経過後、第一起動信号を送信する。
【0034】
X線源制御部50は、X線源14の各部の動作を統括的に制御する。X線源制御部50は、ドライバ51を介してX線管16の動作を制御し、撮影制御装置12から指定された撮影条件および動作タイミングにてX線管16を動作させる。また、X線源制御部50には通信制御部53が接続されており、通信制御部53はソケット54で受信した撮影制御装置12からの各種情報、信号をX線源制御部50に入力する。
【0035】
カセッテ制御部60は、電子カセッテ15aの各部の動作を統括的に制御する。カセッテ制御部60は、ドライバ61を介してX線検出器35の動作を制御し、撮影制御装置12から指定された動作タイミングにてX線検出器35を動作させる。また、カセッテ制御部60は、積分アンプやA/D変換器を有する信号処理部62から画像データを受け取る。
【0036】
通信制御部63には、上述のアンテナ37およびソケット40が接続されている。通信制御部63は、アンテナ37またはソケット40とカセッテ制御部60間の画像データを含む各種情報、信号の送受信を媒介する。なお、ソケット40を使用して撮影制御装置12と通信ケーブルで接続した場合を点線の矢印で示す。
【0037】
電力供給部64は、バッテリ36からの電力、またはソケット40を介した撮影制御装置12からの電力を、カセッテ制御部60を介して電子カセッテ15aの各部に供給する。カセッテ制御部60は、スリープモード、お報せモード等の各モードに合わせて各部への選択的な給電を行う。
【0038】
電子カセッテ15aには、個々を識別可能なIDが記憶されたEEPROM65が内蔵されている。IDは各製品の製造出荷時に設定してもよいし、病院側で任意に設定してもよい。電子カセッテ15aは、撮影制御装置12から第一起動信号を受けて撮影準備モードに移行した際に、EEPROM65からIDを読み出し、これをコンソール13に送信する。
【0039】
カセッテ制御部60は、ドライバ66を介してスピーカ42の音声出力を制御する。図4に示すように、撮影制御装置12から第一起動信号を受けた場合(その電子カセッテを使用する場合)、カセッテ制御部60は、スピーカ42から出力する音声の音量(音の大きさ、音圧)が徐々に大きくなるよう制御する。一方、第二起動信号を受けた場合(その電子カセッテを使用しない場合)は、音量が徐々に小さくなるよう制御する。
【0040】
第二起動信号が送信されてから所定時間経過後に第一起動信号が送信されるので、各電子カセッテ15a、15bのスピーカ42からの音声は、使用しない電子カセッテの方が先に比較的大音量で鳴り、徐々に音量が小さくなって消える。その直後から使用する電子カセッテの方が小さい音量で鳴りはじめ、徐々に音量が大きくなって使用しない方と同じ時間鳴った後消える。
【0041】
人間は左右の耳に入る音の音量差等で音源の大凡の位置を把握することができる。このため、図4のように各電子カセッテ15a、15bのスピーカ42から音声を出力し、どの方角で音声が鳴っているかを聴けば、使用しない電子カセッテと使用する電子カセッテの相対位置、すなわち使用する電子カセッテが撮影室のどの位置(トレイ20あるいはホルダ22)にあるかを放射線技師が特定することができる。
【0042】
使用しない電子カセッテのカセッテ制御部60は、音声出力後、スピーカ42の機能への給電を停止し、お報せモードから再びスリープモードに移行させる。
【0043】
次に、上記構成による作用を、図5のフローチャートを参照して説明する。まず、アームや支柱18、寝台19の昇降機構またはスタンド21の上下動機構、吊り下げ式移動装置11等の制動を解除し、手動あるいは電動にてこれらを操作して、X線源14と電子カセッテ15aまたは電子カセッテ15bとの位置決めを行う。
【0044】
位置決め後、上記各移動機構、吊り下げ式移動装置11等を制動させる。そして、図5のステップ10(S10)に示すように、コンソール13を介して撮影条件等を入力する。撮影条件が入力されると、電子カセッテ15a、15bのうち、使用しない電子カセッテに撮影制御装置12から第二起動信号が送信される(S11)。
【0045】
第二起動信号を受けて、使用しない電子カセッテでは、スリープモードからスピーカ42の機能に給電するお報せモードに切り替わる。そして、カセッテ制御部60により、ドライバ66を介してスピーカ42から音声が出力される(S12)。音声ははじめ比較的大音量で鳴り、徐々に音量が小さくなって消える。音声出力後、使用しない電子カセッテは、スピーカ42の機能への給電が停止され、再びスリープモードに戻される(S13)。
【0046】
使用しない電子カセッテの音声出力時間に相当する所定時間経過後、電子カセッテ15a、15bのうち、撮影条件で使用するとされた電子カセッテに撮影制御装置12から第一起動信号が送信される(S14)。
【0047】
第一起動信号を受けて、使用する電子カセッテでは、スリープモードから無線通信機能以外の各部に給電する撮影準備モードに切り替わる。そして、カセッテ制御部60により、ドライバ66を介してスピーカ42から音声が出力される(S15)。このときの音声は、使用しない電子カセッテのスピーカ42からの音声の出力停止と略同時に鳴りはじめ、最初は音量が小さく、徐々に音量が大きくなって消える(S16)。
【0048】
放射線技師は、各電子カセッテ15a、15bのスピーカ42からの音声を聴き、その鳴った順番や音量差から各電子カセッテ15a、15bの撮影室内における位置を把握する。そして、自らが使用する電子カセッテとして選択したものが、これから撮影を行おうとする器具(寝台19またはスタンド21)にセットされているか否かを判断する。自らの意向と異なる場合は、各電子カセッテ15a、15bを交換(寝台19のトレイ20にセットされたものをスタンド21のホルダ22にセットし、ホルダ22にセットされていたものをトレイ20にセット)する。
【0049】
音声を聴いて判断した結果、自らの意向と同じだった場合は、所定位置に被検体を仰臥または立たせた後、曝射開始を指示する。曝射開始の指示に応じて、撮影制御装置12の制御の下、X線源14のX線管16から被検体に向けてX線が照射され、且つ各電子カセッテ15a、15bのうち選択された電子カセッテのX線検出器35でX線が検出される。X線検出器35で検出されたX線は信号処理部62でデジタルのX線画像に変換され、撮影制御装置12を通してコンソール13に送信される。X線画像はコンソール13のディスプレイに表示される他、そのデータが画像サーバ等のデータストレージに記録される。
【0050】
以上説明したように、本発明によれば、音声により使用する電子カセッテの所在を報せるので、本当に自らの意向に沿った電子カセッテが選択されているかを確認する作業がいらず、意向に沿っていた場合は直ちに曝射開始の指示をすることができ、撮影に掛かる時間が短縮化される。放射線技師に掛かる作業負担を減らすことができる。また、使用しない電子カセッテをセットしたまま誤って撮影を行ってしまうことを防ぐ効果もあり、再撮影による患者への負担も少なくて済む。
【0051】
電子カセッテにはインジケータがついており、スリープモードから撮影準備モードに移行した際にインジケータの表示を変更するため、インジケータを簡単に視認することができれば音声による報知は不要である。しかし、トレイやホルダに電子カセッテをセットすると、インジケータが隠れて視認不能となったり、インジケータの表示が遠目では分からない場合があり、こうした場合は電子カセッテをトレイやホルダから抜き出したり、近くに寄って表示を確認する必要がある。本発明によれば、このような面倒な確認作業が不要となる。逆にインジケータを廃してスピーカのみとしてもよい。
【0052】
はじめは使用しない電子カセッテから音声を出力し、徐々に音量を小さくして消した後、続けて使用する電子カセッテから音声を出力して徐々に音量を大きくし、音声出力の仕方にメリハリをつけるので、各電子カセッテの所在の特定がよりし易くなる。また、使用する電子カセッテの方を後に鳴らすので、その電子カセッテが選択されていることを放射線技師に印象付けることができる。
【0053】
電子カセッテの個数は上記実施形態の二台に限らない。二台以上の電子カセッテを扱う場合は、例えばコンソール13で図6に示す電子カセッテの使用履歴情報70を管理しておく。使用履歴情報70には、IDで区別される各電子カセッテの用途、サイズ等の基本項目と、現在使用中、前回使用といった各電子カセッテの使用ステータスを表す項目とが設けられている。使用ステータスを表す項目は、撮影条件の入力状況や撮影準備モードに移行した際に電子カセッテから送られるIDを元に更新される。複数の撮影室の電子カセッテを一元管理する場合は、どの撮影室で使用されているかも併せて使用履歴情報70に登録する。
【0054】
この場合、第二起動信号を送信して音を鳴らす使用しない電子カセッテとして、例えば使用が選択された電子カセッテと同じ撮影室にあり、ステータスが前回使用となっている電子カセッテを選択する。もちろん無作為に選択しても構わない。
【0055】
第二起動信号を送信して音を鳴らす使用しない電子カセッテが、偶然使用する電子カセッテの傍に置いてあった場合、各電子カセッテの音声の聴き分けがつかなくなる。また、放射線技師が不注意で音を聴き漏らすことも有り得る。この問題に対処するため、再確認ボタンを用意し、該ボタンが操作されたら音を鳴らす使用しない電子カセッテを他のものに選択し直す等して、再度音声出力を実行する。
【0056】
音声を鳴らす時間は、上記実施形態のように予め設定してもよいし、音声停止ボタンを設けて手動で停止させてもよい。予め設定しておく場合は、従来インジケータを視認するのに掛かる大体の作業時間よりも短いことが好ましい。
【0057】
使用しない電子カセッテの置き場所を寝台やスタンドから離れた位置に予め決めておいてもよい。電子カセッテの置き場所としてバッテリ充電用のクレードルを設置するのも可である。置き場所がある程度決まっていれば、使用しない電子カセッテと使用する電子カセッテからの音声を混同するおそれがなくなる。
【0058】
なお、前回使用した電子カセッテを引き続き選択して使用する場合は、既に音声による所在確認を済ませているので、音声を出力しなくともよい。前回使用した電子カセッテから他の電子カセッテの使用に切り替える選択をしたときのみ音声を出力すればよい。
【0059】
上記実施形態の音声出力方法は一例であり、本発明はこれに限定されない。例えば、上記実施形態とは逆に、使用する電子カセッテから先に音を鳴らしてもよいし、図4に示す音量の推移(音量大から小、小から大)を反対(音量小から大、大から小)にしてもよい。また、各電子カセッテから音声を所定時間重複して鳴らしてもよい。例えば使用する電子カセッテと使用しない電子カセッテから同じ音量で同時に鳴らし、使用しない電子カセッテの方の音量を徐々に小さくしてもよい。
【0060】
音量の変更に加えて、または代えて、音高(周波数)や音色を変更してもよい。例えば使用しない電子カセッテからの音声の音高を高くし、使用しない電子カセッテの方を低くする。上記実施形態の音量の推移に倣って、使用しない電子カセッテの音声の音高を高から低、使用する電子カセッテの音声の音高を低から高に変化させてもよい。あるいは、使用しない電子カセッテの方をビープ音、使用する電子カセッテの方を「選択されたカセッテです」といったメッセージにする。こうすることでも電子カセッテの所在を特定することが可能である。
【0061】
なお、本発明に係るX線画像撮影システムは、上記実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない限り種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【0062】
X線画像撮影システム2は病院の撮影室に据え置かれるタイプに限らず、回診車に搭載されるタイプや、X線源、電子カセッテ、移動装置、撮影制御装置等を事故、災害等の緊急医療対応が必要な現場や在宅診療を受ける患者の自宅に持ち運んでX線撮影を行うことが可能な可搬型のシステムに適用してもよい。
【0063】
上記実施形態では、撮影制御装置からの指令を受けてX線検出器を動作させる態様を説明したが、X線検出器でX線の照射を自己検出し、撮影制御装置からの指令を受けることなくX線検出器を動作させてもよい。
【0064】
X線検出器は上記実施形態の直接変換方式に限らず、入射したX線をシンチレータによって一旦可視光に変換した後、この可視光をアモルファスシリコン(a−Si)等の固体検出素子を用いて電気信号に変換する間接変換方式を用いてもよい。FPDではなくイメージングプレート等の周知のX線検出器を用いてもよい。
【0065】
電子カセッテと撮影制御装置とを無線接続しているが、これらを有線接続してもよい。カセッテ制御部やX線検出器のドライバの機能を、電子カセッテではなく撮影制御装置に設けてもよい。高電圧発生器であるドライバをX線源と別体で設けるのも可である。
【0066】
本発明は、X線に限らず、γ線等の他の放射線を使用する撮影システムにも適用することができる。
【符号の説明】
【0067】
2 X線画像撮影システム
10 撮影装置
12 撮影制御装置
13 コンソール
14 X線源
15a、15b 電子カセッテ
19 寝台
21 スタンド
35 X線検出器
41 インジケータ
42 スピーカ
50 X線源制御部
60 カセッテ制御部
66 ドライバ
70 使用履歴情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体を透過した放射線を受けて画像を検出する放射線検出器と、
外部制御装置から各種制御信号を受け付ける受信手段と、
当該放射線画像検出装置の所在を報せるための音声を出力するスピーカと、
スピーカによる音声出力を制御する音声出力制御手段と、
各部を収容する可搬型の筐体とを備え、
前記音声出力制御手段は、当該放射線画像検出装置を撮影に使用することが選択され、前記受信手段で外部制御装置からの第一指示信号を受信した場合、または当該放射線画像検出装置を撮影に使用することが選択されず、前記受信手段で外部制御装置からの第二指示信号を受信した場合に、スピーカから音声を出力させることを特徴とする可搬型の放射線画像検出装置。
【請求項2】
前記音声出力制御手段は、前記受信手段で第一指示信号を受信した場合と第二指示信号を受信した場合とで、音量、音高、または音色の少なくともいずれか一つが異なる音声をスピーカから出力させることを特徴とする請求項1に記載の可搬型の放射線画像検出装置。
【請求項3】
前記音声出力制御手段は、前記受信手段で第一指示信号を受信した場合と第二指示信号を受信した場合とで、音量の大小、または音高の高低の増減の仕方を変更することを特徴とする請求項1または2に記載の可搬型の放射線画像検出装置。
【請求項4】
前記音声出力制御手段は、第一指示信号を受信した場合と第二指示信号を受信した場合の一方の音声の音量を大から小、他方を小から大、または一方の音声の音高を高から低、他方を低から高に変化させることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の可搬型の放射線画像検出装置。
【請求項5】
一方が第二指示信号を受信した場合、他方が第一指示信号を受信した場合であることを特徴とする請求項4に記載の可搬型の放射線画像検出装置。
【請求項6】
被検体を透過した放射線を受けて画像を検出する放射線検出器と、外部制御装置から各種制御信号を受け付ける受信手段と、当該放射線画像検出装置の所在を報せるための音声を出力するスピーカと、スピーカによる音声出力を制御する音声出力制御手段と、各部を収容する可搬型の筐体とを有する複数の可搬型の放射線画像検出装置、
複数の放射線画像検出装置のうち、撮影に使用する放射線画像検出装置を選択させる操作入力装置、
および前記放射線画像検出装置に各種制御信号を送信して前記放射線画像検出装置の駆動を制御する外部制御装置とを備え、
前記外部制御装置は、前記操作入力装置で選択された放射線画像検出装置、および選択されなかった放射線画像検出装置のうちの一つに対して、第一指示信号、および第二指示信号をそれぞれ送信し、
前記受信手段で第一指示信号、および第二指示信号を受信した場合、前記放射線画像検出装置の音声出力制御手段は、スピーカから音声を出力させることを特徴とする放射線画像撮影システム。
【請求項7】
前記外部制御装置は、先に第二指示信号を送信し、所定時間経過後、第一指示信号を送信することを特徴とする請求項6に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項8】
所定時間は、前記操作入力装置で選択されなかった放射線画像検出装置のうちの一つの音声出力時間であることを特徴とする請求項7に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項9】
前記外部制御装置は、前記放射線画像検出装置の使用履歴を管理し、
前記操作入力装置で選択されなかった放射線画像検出装置のうち、最近使用された放射線画像検出装置に第二指示信号を送信することを特徴とする請求項6ないし8のいずれか一項に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項10】
複数の可搬型の放射線画像検出装置のうち、撮影に使用する放射線画像検出装置を操作入力装置で選択させる操作入力ステップと、
前記操作入力ステップで選択された放射線画像検出装置、および選択されなかった放射線画像検出装置のうちの一つに対して、外部制御装置から音声出力の指示を送信する送信ステップと、
前記送信ステップで指示を受けた放射線画像検出装置のスピーカから、当該放射線画像検出装置の所在を報せるための音声を出力する音声出力ステップとを備えることを特徴とする可搬型の放射線画像検出装置の所在確認方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−100962(P2012−100962A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253533(P2010−253533)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】