説明

可搬型鍵盤楽器

【課題】 楽器本体を、身体に支持した場合も、据え置いた場合も、パネル上の操作子の操作を容易に行えるようにする。
【解決手段】 楽器本体10の左側後部に位置するブロックBL1は、その一部が切り欠かれ、平面視で斜めの角度の垂直壁10cが形成されて、楽器本体10は、外観上、板チョコの角を歯でかじったような状態に似ている。垂直壁10cは、ブロックBL1の上面23と連接すると共に、楽器本体10の背面10a及び左側面10bとも連接している。第1、第2割り当て操作子21、22は、ブロックBL1の上面23から垂直壁10cにかけて設けられ、楽器本体10の左側後部と鍵盤部KBの左右方向中央付近とを結ぶ方向F1に沿って操作可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型で持ち歩き可能な可搬型鍵盤楽器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、小型で持ち歩き可能な可搬型鍵盤楽器が知られている。例えば、下記特許文献1の可搬型鍵盤楽器は、ベルトで奏者の身体に吊り下げ、携帯したままでの演奏を可能としている。この可搬型鍵盤楽器では、楽音パラメータ等を制御する制御操作子が、パネル上面の後部左端部に配置されている。演奏者は、この可搬型鍵盤楽器を身体に装着して演奏する場合、楽器本体の底面側から左手を廻して、左手の指で上記制御操作子を操作する。上記制御操作子は、楽器本体に対して前後方向の動作により操作される。
【特許文献1】実開昭58−118491号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のように、可搬型鍵盤楽器を身体に装着して演奏する場合、底面側から左手を廻して上記制御操作子に指を添え、なおかつ上記制御操作子を前後方向に動かして操作するという動作は、熟練しないと容易でない。また、上記可搬型鍵盤楽器を据え置いて使用する場合は、上記制御操作子が左端後部にあるのに、操作方向が前後方向であることから、左手による操作がやりやすいとはいえない。
【0004】
ところで、種類の異なる操作子が複数存在する鍵盤楽器においては、一般に、初心者や子供にとって、どの操作子がどの位置にあるのかが覚えにくい。特に、外観が似たような操作子が多数隣接しているような場合は、演奏中に、操作すべき操作子を瞬時に認識して的確に操作することは容易なことではない。さらには、音楽教師が、操作子操作を含めた演奏指導を行う際に、操作すべき操作子を生徒に指示するとき、操作すべき操作子を、各操作子の名称や機能を称呼して指示しても、生徒が初心者や子供である場合は、指示された操作子がどれなのかがわかりにくい。
【0005】
本発明は上記従来技術の問題を解決するためになされたものであり、その第1の目的は、楽器本体を、身体に支持した場合も、据え置いた場合も、パネル上の操作子の操作を容易に行うことができる可搬型鍵盤楽器を提供することにある。
【0006】
また、本発明の第2の目的は、操作子の操作習得及び操作指導時の利便性を高めることができる可搬型鍵盤楽器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記第1の目的を達成するために本発明の請求項1の可搬型鍵盤楽器は、楽器本体と、前記楽器本体において前部に配置された複数の鍵からなる鍵盤部と、前記楽器本体において前記鍵盤部の後方に設けられたパネル部(20、41)と、前記楽器本体の左右一側の後部において、前記パネル部に設けられ、前記楽器本体の前記左右一側の後部と前記鍵盤部とを結ぶ方向(F1、F2)に沿う動作によって操作可能な操作子(21、22、42)とを有することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、例えば、楽器本体をベルト等で身体に装着して演奏する場合に、楽器本体の左右一側の後部を掌で把持したとき、前記左右一側の後部と前記鍵盤部とを結ぶ方向に指を動かすことが容易であり、そのような指の動作で、操作子を操作可能であるので、安定した操作が容易である。また、前記左右一側の後部と前記鍵盤部とを結ぶ方向に沿う動作によって操作可能であるので、楽器本体を据え置いて使用する場合も、手の動作方向が、左右一側の後部と奏者とを結ぶ方向とほぼ同じ方向となり、自然な動作で操作が可能である。よって、楽器本体を、身体に支持した場合も、据え置いた場合も、パネル上の操作子の操作を容易に行うことができる。
【0009】
上記第1の目的を達成するために本発明の請求項2の可搬型鍵盤楽器は、楽器本体と、前記楽器本体において前部に配置された複数の鍵からなる鍵盤部と、前記楽器本体において前記鍵盤部の後方に設けられたパネル部と、前記楽器本体の左右一側の後部に形成され、前記パネル部に連接した垂直壁(10c)と、前記パネル部から前記垂直壁にかけて設けられ、平面視で前記垂直壁より外方に突出した突出部(21a、22a)を有する操作子(21、22)とを有し、前記操作子は、その前記突出部に指を掛けて操作可能に構成されたことを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、操作子の突出部が外方に突出しているので、身体に装着する場合だけでなく、楽器本体を据え置いて使用する場合も、突出部に指を掛けやすく、操作しやすい。よって、楽器本体を、身体に支持した場合も、据え置いた場合も、パネル上の操作子の操作を容易に行うことができる。
【0011】
好ましくは、前記垂直壁は、前記楽器本体の前記左右一側の後部を切り欠いて形成され、前記操作子の前記突出部は、平面視において、前記楽器本体の前記左右一側の側面(10b)の延長線(L1)より内側であって且つ前記楽器本体の背面(10a)の延長線(L2)より前方に位置する(請求項3)。この構成によれば、運搬時等において、操作子の突出部に物体が接触しにくく、損傷しにくい。また、垂直壁は、楽器本体の前記左右一側の後部を切り欠いて形成されるので、操作子の突出部に手や指を添えやすく、操作が容易である。
【0012】
さらに好ましくは、前記操作子は、前記楽器本体の前記左右一側の後部と前記鍵盤部とを結ぶ方向(F1、F2)に手を動かす動作によって操作可能である(請求項4)。
【0013】
上記第2の目的を達成するために本発明の請求項5の可搬型鍵盤楽器は、楽器本体と、前記楽器本体において前部に配置された複数の鍵からなる鍵盤部と、前記楽器本体の上部に設けられたパネル部と、前記パネル部を、視覚的に認識可能に仕切って複数のブロックを形成し、前記複数のブロックのうち複数の特定ブロック(BL1、BL7、BL11)には、互いに種類が異なる操作子を配設したことを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、操作時には、各種類の操作子の位置をブロックの配置をたよりに認識できると共に、演奏指導時には、操作すべき操作子をブロックの位置で指示することができる。よって、操作子の操作習得及び操作指導時の利便性を高めることができる。
【0015】
好ましくは、前記複数のブロックのうち前記複数の特定ブロック以外のブロックに、キャラクタ(24)が描かれる(請求項6)。これにより、親しみが増すと共に、キャラクタが、各操作子を認識、指示する際の目印にもなる。
【0016】
あるいは、前記複数のブロックのうち前記複数の特定ブロック以外のブロックは、その上面(23)が平面的に形成され、且つ、前記上面に、同じ形状の複数のシールのうち所望のシール(31)を選択して貼り付け可能に構成されている(請求項7)。これにより、所望のシールを貼り付けることでオンリーワンの楽器となり、愛着が湧きやすい。
【0017】
なお、上記括弧内の符号は例示である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の請求項1、2に係る可搬型鍵盤楽器によれば、楽器本体を、身体に支持した場合も、据え置いた場合も、パネル上の操作子の操作を容易に行うことができる。
【0019】
本発明の請求項5に係る可搬型鍵盤楽器によれば、操作子の操作習得及び操作指導時の利便性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施の形態に係る可搬型鍵盤楽器の斜視図である。この可搬型鍵盤楽器(以下、「単に鍵盤楽器」と称する)100は、携帯が可能な程度に小型で軽量に構成される電子鍵盤楽器である。鍵盤楽器100は、据え置きで演奏できるだけでなく、不図示のベルト係合部を有し、該ベルト係合部に不図示のベルトを係合させ、該ベルトを奏者の肩等に掛けることで、肩掛け等の身体装着状態で演奏することもできる。以降、鍵盤楽器100の奏者側を前方(手前側)とし、左右方向は奏者を基準として呼称する。
【0022】
鍵盤楽器100において、その楽器本体10の前部に、複数の鍵から成る鍵盤部KBが配設される。楽器本体10の上面のうち鍵盤部KB以外の領域、すなわち、鍵盤部KBの後方及び左右側方の領域は、パネル部20となっている。鍵盤楽器100は、外観が板状のチョコレート(以下、「板チョコ」と称する)のような形態を呈するように造形されている。まず、パネル部20を、視覚的に認識可能なように、複数のブロックBL(BL1〜BL12)に仕切って、各々のブロックBLを、板チョコの各ブロックに似せてある。また、パネル部20は全体が褐色で、鍵盤部KBの白鍵に相当する鍵についても、黒鍵と区別可能な程度の褐色にされている。
【0023】
図2(a)は、楽器本体10の左側後部の平面図である。図2(b)は、鍵盤楽器100の制御構成のブロック図である。
【0024】
図1、図2(a)に示すように、ブロックBL2は、四角形の突条29で仕切られ、突条29の内側が、盆地状の平坦な面である上面23となっている。ただし、上面23には、キャラクタ24が付されている。このキャラクタ24は、溝部25で刻設されて成り、従って、上面23より突出していない。その他のブロックBLについても、基本形状は同じであるが、鍵盤部KBの左右に位置するブロックBL11、BL12だけは、他のブロックBLの半分に相当する形状をしている。ブロックBL1については後述する。
【0025】
ブロックBL3〜BL5及びブロックBL9には、ブロックBL2と同様にキャラクタ24が付されている。ブロックBL6、BL10には、キャラクタ24が付される代わりに、その上面に放音部11、12が設けられている。ブロックBL7には、電源付きのスライドボリュームスイッチ19が配設されている。ブロックBL8には、液晶等で成る表示部13が配設されている。ブロックBL11には、モード切り換えスイッチ14、オクターブ切り換えスイッチ17、18、オクターブ切り換え表示用のLED15、16が配設されている。
【0026】
図1、図2(a)に示すように、楽器本体10の左側後部に位置するブロックBL1は、他のブロックBLとは異なり、一部が切り欠かれている。すなわち、楽器本体10の左側後部の角部は切り欠かれて、その切り欠き面である垂直壁10cが形成されている。この切り欠きを設けることで、外観上、板チョコの角を歯でかじったような状態に似せている。垂直壁10cは、ブロックBL1の上面23と連接すると共に、楽器本体10の背面10a及び左側面10bとも連接している。
【0027】
楽器本体10の外装は、樹脂製で金型成形によって一体に形成される。従って、垂直壁10cも、ブロックBLも、共に一体に形成される。
【0028】
ブロックBL1には、第1割り当て操作子21、第2割り当て操作子22が設けられる。第1、第2割り当て操作子21、22は、ブロックBL1の上面23から垂直壁10cにかけて設けられる。第1、第2割り当て操作子21、22は回転式の操作子であり、手等で操作することで所定角度の範囲で回転する。第1、第2割り当て操作子21、22は、楽器本体10の左側後部(乃至垂直壁10c)と鍵盤部KBの左右方向中央付近(乃至奏者の位置)とを結ぶ方向F1(図2(a)参照)に沿って同軸に回転可能に、互いに平行に配設される。
【0029】
図2(a)に示すように、第1、第2割り当て操作子21、22の各後端位置である突出部21a、22aは、平面視で、垂直壁10cより外方である左方後方に常に突出している。また、第1、第2割り当て操作子21、22の上端位置は、ブロックBL1の上面23より常に上方に突出している。従って、第1、第2割り当て操作子21、22は、その上端から突出部21a、22aまでのどの部位でも操作することができる。すなわち、上端を操作する場合は、主に上記方向F1に沿う動作により操作でき、突出部21a、22aに指を掛けて操作する場合は、主に上下方向に沿う動作により操作することができ、両動作を交えて行うことも可能である。
【0030】
図2(a)に示すように、第1、第2割り当て操作子21、22の突出部21a、22aは、平面視において、楽器本体10の左側面10bの延長線L1より内側(右側)であって、且つ楽器本体10の背面10aの延長線L2より前方に位置する。これにより、鍵盤楽器100の持ち運び時等に、突出部21a、22aが他の物体が接触しにくく、損傷から保護される。また、垂直壁10cは、突出部21a、22aに指を掛ける際、手がしっくりフィットするように、平面視において若干の凹凸形状に形成されている。
【0031】
第1、第2割り当て操作子21、22には、所望の機能を各々割り当てることができ、例えば、モジュレーション、ピッチベンド等の楽音パラメータを変更制御する機能を割り当てることができる。
【0032】
図2(b)に示すように、鍵盤楽器100は、上記した鍵盤部KB、表示部13のほか、発音処理部28、操作子群26及び制御部27を有する。発音処理部28には、図示しない音源回路、効果回路、アンプ、スピーカ等が含まれ、発音処理部28の音響が上記放音部11、12から放音される。操作子群26には、第1、第2割り当て操作子21、22のほか、ブロックBL7、BL11のスイッチ19、14、17、18が含まれる。制御部27は、不図示のCPU及び記憶部を有し、鍵盤楽器100全体の制御を司る。
【0033】
かかる構成において、鍵盤楽器100を据え置いて演奏する際、第1、第2割り当て操作子21、22を操作するには、奏者は、第1、第2割り当て操作子21、22の上に左手を添えると共に、突出部21a、22aに2本の指の先端部を掛ける。その際、突出部21a、22aが垂直壁10cより外方に突出しているので、指を掛けやすい。そして、奏者は、方向F1及び/又は上下方向に沿う動作により、第1、第2割り当て操作子21、22を回転操作する。特に、方向F1は、垂直壁10cと奏者とを結ぶ方向とほぼ同じ方向であるので、方向F1への操作は、無理なく自然な姿勢で行える。
【0034】
一方、鍵盤楽器100を、例えば、上記特許文献1(実開昭58−118491号公報)で示されるのと同様の態様で、肩掛け等で身体に装着して演奏する際、第1、第2割り当て操作子21、22を操作するには、奏者は、鍵盤楽器100の底面側から左手を廻して、第1、第2割り当て操作子21、22に手を添える。この場合も、突出部21a、22aが垂直壁10cより外方に突出しているので、指を掛けやすい。手乃至指を添える際、第1、第2割り当て操作子21、22の上端にまで2本の指を掛けるのが好ましいが、最低限、突出部21a、22aに掛けるだけでも操作は可能である。そして、奏者は、上下方向及び/又は方向F1に沿う指の動作により、第1、第2割り当て操作子21、22を回転操作する。
【0035】
本実施の形態によれば、楽器本体10の左側後部に配設された第1、第2割り当て操作子21、22が、楽器本体10の左側後部と鍵盤部KBの左右方向中央付近とを結ぶ方向F1に沿って操作可能である。従って、身体に装着して演奏する際、楽器本体10の左側後部を掌で把持したとき、方向F1に指を動かすことが容易であり、そのような指の動作で、第1、第2割り当て操作子21、22を操作可能であるので、安定した操作が容易である。また、据え置き使用の場合も、垂直壁10cと奏者とを結ぶ方向に手を動かせばよいので、自然な動作で第1、第2割り当て操作子21、22の操作が可能である。
【0036】
また、楽器本体10の左側後部の角部を、平面視で斜めの角度に切り欠いて垂直壁10cが形成され、第1、第2割り当て操作子21、22が、ブロックBL1の上面23から垂直壁10cにかけて設けられる。従って、奏者は、楽器本体10を身体に装着する場合も、据え置き使用の場合も、左方後方に伸ばした左腕の掌を自然に曲げるだけで、垂直壁10c及び第1、第2割り当て操作子21、22に容易に指を添えることができる。しかも、第1、第2割り当て操作子21、22の突出部21a、22aが垂直壁10cより外方に突出しているので、身体に装着した場合だけでなく、据え置き使用の場合も、突出部21a、22aに指を掛けやすく、操作しやすい。
【0037】
よって、楽器本体10を、身体に支持した場合も、据え置いた場合も、第1、第2割り当て操作子21、22の操作を容易に行うことができる。
【0038】
本実施の形態によればまた、第1、第2割り当て操作子21、22の突出部21a、22aは、平面視において、延長線L1より内側であって、且つ延長線L2より前方に位置するので(図2(a)参照)、鍵盤楽器100の運搬時等において、突出部21a、22aが他の物体が接触して損傷する危険性を極力小さくすることができる。
【0039】
また、パネル部20を、視覚的に認識可能なように、複数のブロックBLに仕切り、複数のブロックBLのうち、複数の特定ブロックBLであるブロックBL1、BL7、BL11には、互いに種類が異なる操作子を配設した。これにより、各操作子の操作時には、各操作子の位置をブロックBLの配置をたよりに容易に認識することができる。また、音楽教師が、操作子操作を含めた演奏指導を行う際に、操作すべき操作子を生徒に指示するとき、操作子の名称や機能を称呼することなく、例えば、「次は左から○○番目のブロックの操作子を操作せよ」等のように、操作すべき操作子を、ブロックBLの位置を用いて指示することができる。従って、生徒が初心者や子供であっても、操作すべき操作子の指示が容易である。よって、操作子の操作習得及び操作指導時の利便性を高めることができる。このことを応用し、さらに他の複数のブロックBLにおいても、互いに種類の異なる操作子を配設するのが好ましく、配設する操作子が多いほど、その効果が顕著になる。
【0040】
さらに、上記特定のブロックBL以外のブロックBLであるブロックBL2〜BL5、BL9には、キャラクタ24を付したので、親しみやすい。なお、付すキャラクタ24の種類をブロックBL毎に異ならせることで、例えば、「次は○○(キャラクタ)の右のブロックBLの操作子を操作せよ」等のように、操作すべき操作子を、それの近くのキャラクタ24を目印にして指示することができる。この点でも、操作子の操作習得及び操作指導時の利便性を高めることができる。
【0041】
また、上述のように、パネル部20に形成された複数のブロックBLは、各操作子の操作習得及び操作指導の利便性向上に寄与し、垂直壁10cは、切り欠き状に形成されて、第1、第2割り当て操作子21、22の操作性向上に寄与している。しかし、複数のブロックBL及び垂直壁10cは、鍵盤楽器100全体を、角部がかじられた板チョコに似せるための形態でもある。従って、これらの形態は、意匠的効果を確保しつつも、操作性及び利便性の向上という技術的効果を得られるように工夫されたものである。
【0042】
ところで、本実施の形態では、ブロックBL2〜BL5、BL9には、キャラクタ24を刻設して設けたが、ブロックBL2〜BL5、BL9の各上面23にキャラクタシールを貼り付けてもよい。
【0043】
図3(a)は、ブロックBL2と、それに貼着されるキャラクタシールを示す斜視図である。キャラクタ24は、上述のように、溝部25で構成され、各上面23は溝部25を除けば平坦な面である。従って、この上面23に、キャラクタシール31を貼ることが可能で、それによって、視認されるキャラクタを実質的に変更することができる。
【0044】
同図(a)に示すように、キャラクタシール31の上面には、キャラクタ24とは別のキャラクタが描かれており、下面である貼着面には保護シート32が貼られている。キャラクタシール群30には、同じ形状の複数のキャラクタシール31が含まれ、描かれるキャラクタの内容は各キャラクタシール31毎に異なっている。なお、複数のキャラクタシール31間で、描かれるキャラクタが同じであってもよい。ユーザは、予め用意されたキャラクタシール群30を、鍵盤楽器100の購入時または購入後に入手する。そして、キャラクタシール群30の中から所望の1つのキャラクタシール31を、保護シート32を剥がしてブロックBL2の上面23に貼る。上面23は平坦であるので、キャラクタシール31を支障なく貼ることができる。他のブロックBL3〜BL5、BL9についても同様である。
【0045】
このように、所望のキャラクタシール31を貼ることで、ユーザにとっては、デザイン上、唯一となる鍵盤楽器100を実現することができ、愛着の湧く鍵盤楽器となる。
【0046】
なお、当初からキャラクタシール31を貼ることを予定するように構成する場合は、キャラクタ24の刻設は不要であり、上面23は完全な平坦としてもよい。一方、キャラクタシール31を貼ることを想定せず、キャラクタ24による親しみやすさの効果を得ることに限って言えば、キャラクタ24は、溝でなく凸状に設けてもよい。
【0047】
なお、本実施の形態では、パネル部20を突条29で仕切って各ブロックBLを形成したが、これに限るものではない。例えば、各ブロックBLが視覚的に認識可能となるように仕切ればよく、溝や、パネル部20上に描いた線によって仕切ってもよい。
【0048】
なお、本実施の形態では、垂直壁10c及び第1、第2割り当て操作子21、22を、楽器本体10の左側後部に設けたが、これとは左右逆にして、右側後部に設けてもよい。また、第1、第2割り当て操作子21、22に割り当てられる機能は上記例示した機能に限られるものではなく、また、これらの操作子を、固定の機能を有した操作子としてもよい。
【0049】
なお、本実施の形態では、鍵盤楽器100を電子鍵盤楽器として構成したが、これに限るものではない。例えば、図3(b)に示すように、吹奏式の鍵盤楽器にも適用可能である。すなわち、この可搬型鍵盤楽器200は、パイプ43から供給される空気を用いて鍵盤演奏ができるようになっている。可搬型鍵盤楽器200の左側後部には、切り欠き部44が形成され、切り欠き部44より少し左方後方に突出して、流量調整操作子42が設けられる。流量調整操作子42は、方向F2(上記方向F1と同じ)に操作され、不図示の弁構造に連結されており、パイプ43から供給される空気の流量を、流量調整操作子42の操作によって調節できるようになっている。切り欠き部44が上記垂直壁10cに相当し、流量調整操作子42が、上記第1、第2割り当て操作子21、22に相当する。
【0050】
また、パネル部41には、視覚的に認識可能に仕切られた複数のブロックBL13〜BL15が設けられている。これらブロックBL13〜BL15には、操作子を配設してもよいし、キャラクタを描いてもよい。
【0051】
なお、本実施の形態では、鍵盤楽器100の外観を板状のチョコレートに似せたが、側部後部に設けた操作子の操作を容易に行う観点、及び該操作子の損傷の危険性を小さくする観点に限れば、鍵盤楽器の形態は問わない。一方、操作子の操作習得及び操作指導時の利便性を高める観点に限れば、鍵盤楽器は、複数ブロックを有する形態であればよく、好ましくは、親しみやすさを得るために、最中(もなか)型アイスクリームのような菓子の形態としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施の形態に係る可搬型鍵盤楽器の斜視図である。
【図2】楽器本体の左側後部の平面図(図(a))、及び鍵盤楽器の制御構成のブロック図(図(b))である。
【図3】本実施の形態の変形例に係る、ブロックとそれに貼着されるキャラクタシールを示す斜視図(図(a))、及び吹奏式の可搬型鍵盤楽器の平面図(図(b))である。
【符号の説明】
【0053】
10…楽器本体、 10a…背面、 10b…左側面(左右一側の側面)、 10c…垂直壁、 20、41…パネル部、 21、22…第1、第2割り当て操作子(操作子)、 21a、22a…突出部、 23…上面、 24…キャラクタ、 30…キャラクタシール群、 31…キャラクタシール、 42…流量調整操作子(操作子)、 KB…鍵盤部、 BL…ブロック、 L1、L2…延長線、 F1、F2…方向、 100、200…可搬型鍵盤楽器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
楽器本体と、
前記楽器本体において前部に配置された複数の鍵からなる鍵盤部と、
前記楽器本体において前記鍵盤部の後方に設けられたパネル部と、
前記楽器本体の左右一側の後部において、前記パネル部に設けられ、前記楽器本体の前記左右一側の後部と前記鍵盤部とを結ぶ方向に沿う動作によって操作可能な操作子とを有することを特徴とする可搬型鍵盤楽器。
【請求項2】
楽器本体と、
前記楽器本体において前部に配置された複数の鍵からなる鍵盤部と、
前記楽器本体において前記鍵盤部の後方に設けられたパネル部と、
前記楽器本体の左右一側の後部に形成され、前記パネル部に連接した垂直壁と、
前記パネル部から前記垂直壁にかけて設けられ、平面視で前記垂直壁より外方に突出した突出部を有する操作子とを有し、
前記操作子は、その前記突出部に指を掛けて操作可能に構成されたことを特徴とする可搬型鍵盤楽器。
【請求項3】
前記垂直壁は、前記楽器本体の前記左右一側の後部を切り欠いて形成され、前記操作子の前記突出部は、平面視において、前記楽器本体の前記左右一側の側面の延長線より内側であって且つ前記楽器本体の背面の延長線より前方に位置することを特徴とする請求項2記載の可搬型鍵盤楽器。
【請求項4】
前記操作子は、前記楽器本体の前記左右一側の後部と前記鍵盤部とを結ぶ方向に手を動かす動作によって操作可能であることを特徴とする請求項2または3記載の可搬型鍵盤楽器。
【請求項5】
楽器本体と、
前記楽器本体において前部に配置された複数の鍵からなる鍵盤部と、
前記楽器本体の上部に設けられたパネル部と、
前記パネル部を、視覚的に認識可能に仕切って複数のブロックを形成し、前記複数のブロックのうち複数の特定ブロックには、互いに種類が異なる操作子を配設したことを特徴とする可搬型鍵盤楽器。
【請求項6】
前記複数のブロックのうち前記複数の特定ブロック以外のブロックに、キャラクタが描かれたことを特徴とする請求項5記載の可搬型鍵盤楽器。
【請求項7】
前記複数のブロックのうち前記複数の特定ブロック以外のブロックは、その上面が平面的に形成され、且つ、前記上面に、同じ形状の複数のシールのうち所望のシールを選択して貼り付け可能に構成されていることを特徴とする請求項5記載の可搬型鍵盤楽器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−267496(P2006−267496A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−84888(P2005−84888)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】