説明

可撓性成形型を再使用する方法及び微細構造前駆体組成物

本発明は、可撓性成形型を用いた微細構造の製造方法、微細構造前駆体組成物及び物品に関する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
プラズマディスプレイパネル(PDP)及びプラズマアドレス液晶(PALC)ディスプレイも含めて、ディスプレイ技術における進歩により、ガラス基板の上に電気絶縁性バリヤーリブを形成させることに関心が寄せられることになった。バリヤーリブは、セルを分離するものであって、そのセルの中で、対向する電極の間で電場を印加することによって、不活性ガスを励起させることができる。ガス放電によって、セルの内部に紫外線(UV)が放出される。PDPの場合には、セルの内側に蛍光体がコーティングされていて、それがUV照射により励起されて赤、緑、青の可視光線を発する。セルのサイズによって、そのディスプレイの画素(ピクセル)のサイズが決まってくる。PDP及びPALCディスプレイは、たとえば、高精細度テレビジョン(HDTV)またはその他のデジタル電子ディスプレイ装置のためのディスプレイとして使用することができる。
【0002】
ガラス基板の上でのバリヤーリブ形成可能な一つの方法は、直接成形法である。これには、ガラス形成またはセラミック形成組成物の間に配してなる基材の上に成形型を積層することが含まれる。好適な組成物は、たとえば米国特許第6,352,763号明細書に記載されている。次いで、そのガラス形成性またはセラミック形成性組成物を固化させ、成形型を取り除く。最後に、そのバリヤーリブを約550℃〜約1600℃の温度で焼成させることによって、溶融または焼結させる。そのガラス形成性またはセラミック形成性組成物は、有機バインダーの中に分散されたマイクロメートルのオーダーのガラスフリット粒子を含む。有機バインダーを使用することによって、バリヤーリブをグリーン状態(green state)で固化させ、焼成によって、基板の位置にそれらのガラス粒子を溶融させることが可能となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
有機バインダーの中に分散された無機粒子を含む各種のガラス形成性及びセラミック形成性組成物が述べられてはいるが、新規な組成物、使用方法、及びたとえばディスプレイ構成要素のような物品があれば、業界においてのメリットとして見出されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一つの実施態様において記載されているのは、(たとえば、バリヤーリブを形成させるのに好適な)ポリマー微細構造表面を有する成形型を用意する工程と、その成形型の微細構造表面と(たとえば、電極のパターンの)基板との間に硬化性有機バインダー及び無機物質を含むリブ前駆体物質を置く工程と、その前駆体物質を硬化させる工程と、その成形型を除去する工程、とを含むディスプレイパネル構成要素を形成させるための方法であって、その方法が、同一のポリマー成形型を用いて繰り返される。
【0005】
一つの態様においては、そのポリマー成形型が、透明で10%未満のヘイズ値を有し、少なくとも2回から多くは30回またはそれ以上の範囲の各回数で再使用される。その成形型が可撓性であるのが望ましい。その成形型の微細構造表面には、たとえば、少なくとも1種の(メタ)アクリレートオリゴマー及び少なくとも1種の(メタ)アクリレートモノマーの反応生成物のような硬化されたポリマー材料が含まれていてよい。成形型の微細構造表面は、典型的には、ポリマー支持フィルムの上に配される。リブ前駆体物質には、光重合開始剤が含まれていてもよく、パターン化された基板を通し、成形型を通し、或いはその両方を組合わせることによって、光硬化させることができる。好ましい実施態様においては、その硬化性有機バインダー及び希釈剤がそれぞれ、ある溶解パラメーターを有していて、その希釈剤の溶解パラメーターが、その硬化性有機バインダーの溶解パラメーターよりも低く、たとえば2[MJ/m31/2を超える差がある。
【0006】
また別な態様においては、硬化性組成物には、少なくとも1種の無機粒子状物質、少なくとも1種の溶解パラメーターを有する硬化性有機バインダー、少なくとも1種のその硬化性有機バインダーの溶解パラメーターよりは低い溶解パラメーターを有する有機希釈剤、及び場合によっては光重合開始剤、安定剤、及びそれらの混合物以下のものが含まれる。その硬化性有機バインダーには、少なくとも2個の(メタ)アクリレート基、たとえば(メタ)アクリレート化エポキシ、(メタ)アクリレートウレタン、(メタ)アクリレート化ポリエーテル、(メタ)アクリレート化ポリエステル、(メタ)アクリレート化ポリオレフィン、(メタ)アクリレート化(メタ)アクリル化合物、及びそれらの混合物が含まれていてよい。更に詳しくは、その硬化性有機バインダーには、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、グリセリンジグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、及びそれらの混合物が含まれていてもよい。その有機希釈剤には、たとえば、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、ジアルキレングリコールモノアルキルエーテル、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル、アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、ジアルキルスクシネート、ジアルキルアジペート、ジアルキルグルタレート、及びそれらの混合物などが含まれていてもよい。
【0007】
別な実施態様においては、本発明は、ディスプレイ構成要素及びその中間体のような物品に関する。その中間体には、基板、及び基板の上に配された、本明細書に記載される各種の(たとえば、リブ)前駆体または硬化された組成物からなる複数のバリヤーリブが含まれる。前駆体を焼結させている間に、バインダー及び希釈剤は蒸発し、そのため最終生成物においては検出されない可能性がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、バリヤーリブを製造するのに好適な硬化性組成物、微細構造(たとえば、バリヤーリブ)を製造するための方法、更には微細構造を有する(たとえば、ディスプレイ)構成要素及び物品に関する。以後においては、(たとえば、可撓性)ポリマー成形型を用いてバリヤーリブ微細構造を製造する方法に関連させて、本発明の実施態様を説明する。その硬化性組成物を、たとえば、毛管路を有する電気泳動プレート及び照明用途など、他の(たとえば、微細構造化)装置及び物品に使用することもできる。更に詳しくは、成形されたガラス微細構造またはセラミック微細構造を使用することが可能な装置及び物品を、本明細書に記載された方法を用いて成形することができる。本発明はそのような限定を受けるものではないので、本発明の各種の態様の評価は、PDPのためのバリヤーリブを製造するための方法、装置、及び物品についての説明から得られるであろう。
【0009】
終点によって表される数値の範囲は、その範囲内に含まれるすべての数値を含む(たとえば、1〜10の範囲には、1、1.5、3.33、及び10が含まれる)。
特に断らない限り、本明細書及び請求項において使用される成分の量、性質の測定値などを表す数値はすべて、いずれの場合においても「約(about)」という用語で修飾されているものと理解されたい。
「(メタ)アクリル」という用語は、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、及びメタクリルアミドを含む官能基を指す。
「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリレート及びメタクリレート両方の化合物を指す。
【0010】
図1は、可撓性成形型100を示す、部分斜視図である。その可撓性成形型100は一般に、平面支持層110と、その支持体の上に設けられた(本明細書では形状付与層120と呼ぶ)微細構造表面との2層構造を有する。図1の可撓性成形型100は、プラズマディスプレイパネルの(たとえば、電極パターンの)バックパネルの上に、バリヤーリブのグリッド様のリブパターンを形成させるのに好適である。また別の一般的なバリヤーリブパターン(図示せず)には、互いに平行に配列された複数の(交差のない)リブが含まれる。
【0011】
支持体110には、場合によっては、たとえば、くぼみを充満するだけに必要な量を超える量でトランスファー成形型の上に重合性組成物をコーティングすることによって、形状付与層と同一の物質を含んでいてもよいが、その支持体は、典型的には、予備成形されたポリマーフィルムである。そのポリマー支持フィルム厚みは、典型的には少なくとも0.025ミリメートル、そして典型的には少なくとも0.075ミリメートルである。更に、そのポリマー支持フィルムの厚みは、一般的には0.5ミリメートル未満、典型的には0.175ミリメートル未満である。そのポリマー支持フィルムの引張強さは、一般的には少なくとも約5kg/m2、典型的には少なくとも約10kg/m2である。そのポリマー支持フィルムは典型的には、約60℃〜約200℃のガラス転移温度(Tg)を有する。可撓性成形型の支持体には、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、ポリエーテルスルホン、ポリメタクリル酸メチル、ポリウレタン、ポリエステル、及びポリ塩化ビニルを含む各種の物質を使用することができる。その支持体の表面を処理して、重合性樹脂組成物への接着性を向上させることもできる。好適なポリエチレンテレフタレート系物質の例としては、光グレード(photograde)のポリエチレンテレフタレート、ならびに米国特許第4,340,276号明細書に記載された方法に従って形成された表面を有するポリエチレンテレフタレート(PET)などが挙げられる。
【0012】
形状付与層の微細構造の深さ、ピッチ及び幅は、所望される仕上がり物品に依存して、大幅に変化させることができる。微細構造化(たとえば、溝)パターン125(バリヤーリブの高さに相当する)の深さは、一般的には少なくとも100μm、典型的には少なくとも150μmである。更にその深さは、典型的には500μm以下、典型的には300μm未満である。その微細構造化(たとえば、溝)パターンのピッチは、横方向に比較して、縦方向で変化させてもよい。そのピッチは、一般的には少なくとも100μm、典型的には少なくとも200μmである。そのピッチは、典型的には600μm以下、典型的には400μm未満である。特に、このようにして成形されたバリヤーリブがテーパーを有している場合には、その微細構造化(たとえば、溝)パターンの幅4は、上側表面と下側表面とでは異なっていてもよい。その幅は、一般的には少なくとも10μm、典型的には少なくとも50μmである。更に、その幅は、一般的には100μm以下、典型的には80μm未満である。
【0013】
形状付与層の厚みを例示すると、一般的には少なくとも5μm、典型的には少なくとも10μm、より典型的には少なくとも50μmである。更に、その形状付与層の厚みは、一般的には1,000μm以下、典型的には800μm未満、より典型的には700μm未満である。その形状付与層の厚みが5μmよりも薄いと、多くのPDPパネルで望まれるリブ高さを得ることができない。その形状付与層の厚みが1,000μmよりも厚いと、過度の収縮のために、成形物の反りや寸法正確性の低下が起こり得る。
【0014】
可撓性成形型は、典型的には、その可撓性成形型を逆転させたものに相当する微細構造表面パターンを有するトランスファー成形型から調製される。そのトランスファー成形型は、米国特許出願第11/030261号(出願日:2005年1月6日)に記載されているような、硬化させた(たとえば、シリコーンゴム)ポリマー材料からなる微細構造表面を有しているのがよい。
【0015】
可撓性成形型100を使用して、(たとえば、プラズマ)ディスプレイパネルの基板の上にバリヤーリブを形成させることができる。使用する前に、その可撓性成形型またはその構成要素を、温度及び湿度が調節されたチャンバー(たとえば、22℃/55%相対湿度)の中でコンディショニングさせておいて、使用時における寸法変化の発生を最小限になるようにしてもよい。可撓性成形型のそのようなコンディショニングについては、国際公開第2004/010452号;国際公開第2004/043664号、及び日本国特許出願第2004−108999号(出願日:2004年4月1日)に更に詳しく記載されている。
【0016】
図2Aを参照すると、(たとえば、筋状の)電極パターンを有する、平坦で透明な(たとえば、ガラス)基板41を備える。本発明の可撓性成形型100を、たとえば、センサー電荷結合装置カメラなどを使用して位置決めして、成形型のバリヤーパターンがパターン化された基板と一直線になるようにする。各種の方法で、たとえば硬化性セラミックペーストのようなバリヤーリブ前駆体45を、基板と可撓性成形型の形状付与層との間に備えることができる。硬化性物質を成形型のパターンの中に直接入れてからその成形型と物質とを基板の上に置くこともできるし、その物質を基板の上に置いてから基板の上の物質に成形型を押しつけることもできるし、あるいは、その物質を成形型と基板との間の隙間に導入して、その成形型と基板を機械的またはその他の手段を用いて合わせることもできる。図2Aに示したように、(たとえば、ゴム)ローラー43を用いて、可撓性成形型100をバリヤーリブ前駆体に押しつけてもよい。リブ前駆体45がガラス基板41と成形型100の形状付与表面との間で拡がって、成形型の溝の部分に充填される。別の言い方をすれば、リブ前駆体45で溝の部分の空気と連続的に置き換える。次いでそのリブ前駆体を硬化させる。リブ前駆体は、図2Bに示したように透明な基板41を通して、及び/または成形型100を通して、(たとえば、UV)光線の照射に暴露させることにより硬化させるのが好ましい。図2Cに示したように、可撓性成形型100は取り外される一方、得られる硬化されたリブ48は基板41に固着された状態に止まる。
【0017】
その可撓性成形型は、硬化性リブ前駆体に暴露されることによって損傷を受けやすいポリマー微細構造表面を有している。その可撓性成形型には他の(たとえば、硬化された)ポリマー材料が含まれていてもよいが、少なくともその可撓性成形型の微細構造表面は、典型的には重合性組成物の反応生成物を含み、一般的には少なくとも1種のエチレン性不飽和オリゴマー及び少なくとも1種のエチレン性不飽和希釈剤を含む。そのエチレン性不飽和希釈剤は、エチレン性不飽和オリゴマーとの共重合性を有する。そのオリゴマーは、一般的には、少なくとも1,000g/モル、典型的には50,000g/モル未満のゲル浸透クロマトグラフィー(実施例においてより詳しく説明する)によって測定した重量平均分子量(Mw)を有する。そのエチレン性不飽和希釈剤は、一般的には1,000g/モル未満、より典型的には800g/モル未満のMwを有する。
【0018】
可撓性成形型の重合性組成物は、放射線硬化性であるのが好ましい。「放射線硬化性」という用語は、適切な硬化エネルギー源に暴露されると反応する(たとえば、架橋する)ような、モノマー、オリゴマー、またはポリマー骨格(場合によっては)から直接的または間接的にペンダントしている、官能性を指す。放射線架橋性基の代表例としては、エポキシ基、(メタ)アクリレート基、オレフィン性炭素−炭素二重結合、アリルオキシ基、アルファ−メチルスチレン基、(メタ)アクリルアミド基、シアネートエステル基、ビニルエーテル基、それらの組合せなどが挙げられる。フリーラジカル重合性基が好ましい。これらの内でも、(メタ)アクリル官能基が典型的であり、(メタ)アクリレート官能基がより典型的である。典型的には重合性組成物の少なくとも1成分が、最も典型的にはオリゴマーが、少なくとも2個の(メタ)アクリル基を含む。
【0019】
(メタ)アクリル官能基を有する各種公知のオリゴマーを使用することができる。好適な放射線硬化性オリゴマーの例としては、(メタ)アクリレート化ウレタン(すなわち、ウレタン(メタ)アクリレート)、(メタ)アクリレート化エポキシ(すなわち、エポキシ(メタ)アクリレート)、(メタ)アクリレート化ポリエステル(すなわち、ポリエステル(メタ)アクリレート)、(メタ)アクリレート化(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリレート化ポリエーテル(すなわち、ポリエーテル(メタ)アクリレート)、及び(メタ)アクリレート化ポリオレフィンなどが挙げられる。オリゴマー(1種または複数)及びモノマー(1種または複数)は、それぞれ約−80℃〜約60℃のガラス転移温度(Tg)を有しているのが好ましいが、これは、それらのホモポリマーがそのようなガラス転移温度を有していることを意味している。
【0020】
オリゴマーは一般的には、その可撓性成形型の全重合性組成物の5重量%〜90重量%の量で、モノマー性希釈剤(1種または複数)と組み合わせる。オリゴマーの量は、典型的には少なくとも20重量%、より典型的には少なくとも30重量%、より典型的には少なくとも40重量%である。少なくともいくつかの好ましい実施態様においては、オリゴマーの量は、少なくとも50重量%、60重量%、70重量%、または80重量%である。
【0021】
各種の(メタ)アクリルモノマーが公知であって、たとえば、芳香族(メタ)アクリレートたとえばフェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルポリエチレングリコールアクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール、エチレンオキシド変性ビスフェノールの3−ヒドロキシル−3−フェノキシプロピルアクリレート及び(メタ)アクリレート;ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートたとえば4−ヒドロキシブチルアクリレート;アルキレングリコール(メタ)アクリレート及びアルコキシアルキレングリコール(メタ)アクリレートたとえばメトキシポリエチレングリコールモノアクリレート及びポリプロピレングリコールジアクリレート;ポリカプロラクトン(メタ)アクリレート;アルキルカルビトール(メタ)アクリレートたとえばエチルカルビトールアクリレート及び2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート;更には各種の多官能(メタ)アクリルモノマーたとえば、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート及びトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0022】
いくつかの実施態様においては、可撓性成形型の重合性組成物には、たとえばダイセル−ユーシービー(株)(Daicel-UCB Co.,Ltd.)から、商品名「EB270」及び「EB8402」として市販されている、1種または複数のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが含まれていてもよい。別な実施態様においては、可撓性成形型の重合性組成物には、たとえば大阪有機化学工業(株)(Osaka Organic Chemical Industry Ltd.)から商品名「SPDBA」として市販されているような、1種または複数のポリオレフィン(メタ)アクリレートオリゴマーが含まれていてもよい。その他好適な可撓性成形型組成物が公知である。好適な可撓性成形型組成物が、係属中の米国特許出願第11/107554号(出願日:2005年4月15日)に記載されている。
【0023】
その硬化性リブ前駆体(「スラリー」または「ペースト」と呼ぶこともある)には、少なくとも3つの組成物が含まれる。第一の要素は、ガラス形成性またはセラミック形成性粒子状物質(たとえば、粉体)である。その粉体は、最終的には焼成によって溶融または焼結されて、微細構造を形成する。第二の成分は、成形し、次いで硬化、加熱または冷却により固化させることが可能な硬化性有機バインダーである。そのバインダーによって、スラリーを成形して、硬質または半硬質の「グリーン状態(green state)」の微細構造とすることが可能となる。そのバインダーは典型的には、脱バインダー(debinding)及び焼成の際に蒸発するので、「消失性バインダー」と呼ぶこともできる。第三の成分は希釈剤である。その希釈剤は典型的には、バインダー物質を硬化させた後に成形型からの脱離を促進させる。別な方法、またはそれらに代わる方法として、希釈剤が、微細構造のセラミック物質を焼成するより前の脱バインダーの間に、バインダーの急速かつ実質的に完全な燃焼を促進させることもできる。希釈剤が、バインダーが硬化された後でも液状を維持して、固化に亘りその希釈剤がバインダー物質から相分離するのが好ましい。リブ前駆体は、好ましくは20Pa・s(20,000cps)未満、より好ましくは5Pa・s(5,000cps)未満の粘度を有していて、空気を閉じこめてしまうことなく、可撓性成形型の微細構造溝部分の全体に均一に充填されるようにする。そのリブ前駆体組成物は、0.1/秒の剪断速度で約20〜600Pa・s、100/秒の剪断速度で1〜20Pa・sの粘度を有しているのが好ましい。
【0024】
各種の硬化性有機バインダーを使用することができる。硬化性有機バインダーは、たとえば放射線または熱に暴露させることによって硬化させることが可能である。別な方法として、バインダーを、加熱することでバインダーが液体状態となって成形型の形に合致し、次いで冷却すると固化状態となって基板に密着した微細構造を形成する熱可塑性物質とすることも可能である。バインダーが、等温(すなわち、温度が変化しない)条件下で放射線硬化性であるのが、典型的には好ましい。このことによって、成形型と基板との間で熱膨張特性が異なることが原因の位置ずれや膨張の危険性が低下して、リブ前駆体を固化させる際に、成形型の位置や配列を維持することが可能となる。従って、リブ前駆体が光硬化性であるのが好ましい。
【0025】
一般的には、リブ前駆体組成物の硬化性有機バインダーは、先に可撓性成形型の重合性組成物における使用で述べたような光硬化性オリゴマー及びモノマーのいずれを含んでいてもよい。しかしながら、典型的には、無機粒子状物質と組み合わせた後でリブ前駆体組成物が適切な粘度を有しているようにするには、光硬化性オリゴマーよりも光硬化性モノマーの方が好ましい。
【0026】
希釈剤は、樹脂に対する単なる溶媒化合物ではない。希釈剤は、グリーン状態で樹脂混合物中に充分に組み入れられるだけの溶解性があるのが好ましい。スラリーのバインダーを硬化させると、その希釈剤がモノマー及び/またはオリゴマーから相分離して架橋性プロセスに加わるべきである。希釈剤相が分離して、硬化された樹脂の連続マトリックスの中に液状物質のばらばらになったポケットを形成し、その硬化された樹脂がスラリーのガラスフリットまたはセラミック粉体の粒子を結合させるのが好ましい。このようにすれば、かなり大量の希釈剤を使用したとき(すなわち、希釈剤対樹脂の比が約1:3を超えても)でさえも、硬化されたグリーン状態の微細構造の物理的な一体性が大きく損なわれることはない。これによって、二つの利点が得られる。第一には、バインダーを固化させたときに液状で残っていることで、その希釈剤が、その硬化させたバインダー物質が成形型に接着する危険性を低下させる。第二には、バインダーを固化させたときに液状で残っていることで、その希釈剤相がバインダー物質から分離し、それによって、硬化されたバインダーマトリックス全体に分散した、希釈剤の微小ポケットまたは液滴の相互貫入ネットワークを形成する。
【0027】
光硬化性リブ前駆体組成物には更に、重合性樹脂組成物の0.01重量%〜1.0重量%の範囲の濃度で1種または複数の光重合開始剤を含む。好適な光重合開始剤としては、たとえば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン;1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン;2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−1−プロパノン;ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィン−オキシド;2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィン−オキシド、及びそれらの混合物が挙げられる。貯蔵寿命を改良するためには、ホスフィン−オキシドを含む光重合開始剤をそのペーストが含んでいないのが好ましい。好適な光重合開始剤としては、2−ベンジル−2−N,N−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン;チオキサントン光重合開始剤たとえば2,4−ジエチルチオキサントン;及びショウノウキノンが挙げられる。
【0028】
場合によっては、分散剤及び/またはチクソトロープ剤が光硬化性リブ前駆体組成物に含まれていてもよい。それらの添加剤はそれぞれ、全リブ前駆体組成物の約0.05〜2.0重量%の量で含まれているのがよい。典型的には、それらの添加剤のそれぞれの量は、約0.5重量%以下である。
【0029】
一般的には、無機チクソトロープ剤としては、0.1μm未満の粒径を有するクレー(たとえば、ベントナイト)、シリカ、雲母、スメクタイトなどが挙げられる。一般的には、有機チクソトロープ剤としては、脂肪酸、脂肪酸アミン、水素化ヒマシ油、カシン(casin)、にかわ、ゼラチン、グルテン、ダイズタンパク質、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸ナトリウム、アラビアゴム、グアーゴム、ダイズレシチン、ペクチン酸、デンプン、寒天、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸アンモニウム、カリウム塩、(たとえば、変性アクリル系ポリマー及びコポリマー、ポリヒドロキシカルボン酸アミン及びアミド(たとえば、ビックケミー・カンパニー(BYK-Chemie Co.)から入手可能な商品名「BYK405」)、ポリビニルアルコール、ビニルポリマー(ビニルメチルエーテル/無水マレイン酸)、ビニルピロリドンコポリマー、ポリアクリルアミド、脂肪酸アミドまたはその他の脂肪族アミド化合物、ポリエチレンオキシドとして計算した分子量、カルボキシル化メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、キサントゲン酸セルロース、カルボキシル化デンプン、尿素ウレタン、オレイン酸、酸アンモニウム、またはケイ酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0030】
いくつかの態様においては、その分散剤は塩基性ポリマー、すなわち、少なくとも1種の中程度〜強度の極性のルイス塩基官能性共重合性モノマーのホモポリマー、オリゴマー、またはコポリマーである。極性(たとえば、水素またはイオン結合性能)は、「強い(strongly)」、「中程度(moderately)」、「弱い(poorly)」という用語を用いて表されることが多い。これら及びその他の溶解性に関する用語が記載されている文献としては以下のものが挙げられる:『溶媒塗料試験手引き(Solvents paint testing manual)第3版』(G.G.スアード(G.G.Seward)編、米国材料試験協会(American Society for Testing and Materials)、ペンシルバニア州フィラデルフィア(Philadelphia,Pennsylvania))、及び「溶解度への3次元アプローチ(A three-dimensional approach to solubility)」(ジャーナル・オブ・ペイント・テクノロジー(Journal of Paint Technology)、第38卷、第496号、p.269〜280。各種の塩基性ポリマー分散剤が公知であり、たとえば味の素ファインテクノ(株)(Ajinomoto-Fine-Techno Co.)から商品名「アジスパー(Ajisper)PB821」として市販されている、ポリマー分散剤をベースとするアニオン性ポリアミドが挙げられる。
【0031】
リブ前駆体には、場合によっては、当業者公知のたとえば界面活性剤、触媒などの各種の添加剤が含まれていてもよい(これらに限定される訳ではない)。たとえばリブ前駆体には、0.1〜1重量部のリン系化合物単独で、または0.1〜1重量部のスルホネート系化合物と組み合わせて含んでいてもよい。そのような化合物は、国際公開第2005/019934号に記載されている。更に、リブ前駆体には、基板(たとえば、PDPのガラスパネル)に対する接着性を向上させるための、シランカップリング剤のような接着促進剤が含まれていてもよい。
【0032】
リブ前駆体組成物における硬化性有機バインダーの量は、典型的には少なくとも2重量%、より典型的には少なくとも5重量%、より典型的には少なくとも10重量%である。リブ前駆体組成物における希釈剤の量は、典型的には少なくとも2重量%、より典型的には少なくとも5重量%、より典型的には少なくとも10重量%である。有機成分を合計して、典型的には少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、または少なくとも20重量%である。更に、有機成分の合計は、典型的には50重量%以下である。無機粒子状物質の量は、典型的には少なくとも40重量%、少なくとも50重量%、または少なくとも60重量%である。無機粒子状物質の量は、95重量%以下である。添加剤の量は一般的には10重量%未満である。
【0033】
ペーストは、慣用される混合方法によって調製することができる。たとえば、ガラス形成性またはセラミック形成性粒子状物質(たとえば、粉体)を、希釈剤及び分散剤(約10〜15重量部の希釈剤の割合で)と組み合わせ、次いで残りのペースト成分を添加することによって調製することができる。ペーストは典型的には、濾過して5ミクロンとする。
【0034】
本願出願人は、この可撓性成形型が再使用可能であることを見出した。可撓性成形型が再使用可能な回数は、微細構造を形成させるための方法で採用されるリブ前駆体組成物に関連する。本明細書に記載したように、リブ前駆体組成物を適切に選択することによって、可撓性成形型は少なくとも1回の再使用から少なくとも5回の再使用までの範囲の回数で使用することができる。好ましい実施態様においては、そのポリマートランスファー成形型は少なくとも10回、少なくとも20回、または少なくとも30回再使用することができる。トランスファー成形型は、その可撓性成形型の微細構造表面の膨潤の程度が、10%未満、より典型的には5%未満であれば再使用することが可能であるが、その程度は、顕微鏡を用いた目視検査によって求めることができる。
【0035】
可撓性成形型を通してそのリブ前駆体を硬化させるような実施態様では、可撓性成形型が充分に透明であれば、その可撓性成形型は、再使用するのに適している。充分に透明な可撓性成形型は、典型的には、1回使用した後で、15%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは5%以下の(実施例に記載の試験方法に従って測定した)ヘイズ値を有している。少なくとも5回の再使用の後で、その可撓性成形型が、上述のヘイズ値の基準を有していれば更に好ましい。
【0036】
好ましい実施態様においては、リブ前駆体には、硬化性有機バインダーよりも低い溶解パラメーターを有する希釈剤を含む。
各種のモノマーの溶解パラメーターδ(デルタ)は、以下の式を用いて便利に計算することができる:
δ=(ΔEv/V)1/2
式中、ΔEvは所定の温度における蒸発エネルギーであり、Vは対応するモル容積である。フェドールズ(Fedors)法に従えば、SPはその化学構造から計算することができる(R.F.フェドールズ(R.F.Fedors)、ポリマー・エンジニアリング・アンド・サイエンス(Polym.Eng.Sci.)、14(2)、p.147、1974;『ポリマー・ハンドブック(Polymer Handbook)第4版、「ソリュビリティ・パラメーター・バリューズ(Solubility Parametr Values)』(J.ブランドラップ(J.Brandrup)、E.H.インメルグート(E.H.Immergut)及びE.A.グルルケ(E.A.Grulke)編)。
【0037】
硬化性バインダーと希釈剤との間の溶解パラメーターの差は、少なくとも1[MJ/m31/2、典型的には少なくとも2[MJ/m31/2である。硬化性バインダーと希釈剤との間の溶解パラメーターの差は、好ましくは少なくとも3[MJ/m31/2、4[MJ/m31/2、または5[MJ/m31/2である。硬化性バインダーと希釈剤との間の溶解パラメーターの差は、より好ましくは少なくとも6[MJ/m31/2、7[MJ/m31/2、または8[MJ/m31/2である。硬化性バインダーと希釈剤との間の溶解パラメーターの差は、典型的には30[MJ/m31/2以下である。
【0038】
硬化性有機バインダーの選択に依存して、各種の有機希釈剤を使用することができる。一般的に好適な希釈剤としては、各種のアルコール及びグリコールたとえば、アルキレングリコール(たとえば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリプロピレングリコール)、アルキルジオール(たとえば、1、3ブタンジオール)、ならびにアルコキシアルコール(たとえば、2−ヘキシルオキシエタノール、2−(2−ヘキシルオキシ)エタノール、2−エチルヘキシルオキシエタノール);エーテルたとえば、ジアルキレングリコールアルキルエーテル(たとえば、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル);エステルたとえば、ラクテート及びアセテート、特にジアルキルグリコールアルキルエーテルアセテート(たとえば、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート);アルキルスクシネート(たとえば、ジエチルスクシネート)、アルキルグルタレート(たとえば、ジエチルグルタレート)、ならびにアルキルアジペート(たとえば、ジエチルアジペート)などが挙げられる。
【0039】
ガラス形成性またはセラミック形成性粒子状物質(たとえば、粉体)は、微細構造の最終的な用途、及びその微細構造が接着される基板の性質を基準にして選択する。一つの考慮点は、その基板物質(たとえば、PDPのガラスパネル)の熱膨張係数(CTE)である。本発明のスラリーのガラス形成性またはセラミック形成性物質のCTEが、基板物質(たとえば、PDPの電極パターン化ガラスパネル)のCTEとは、10%以下の差であるのが好ましい。基板物質が、微細構造のセラミック物質のCTEよりも、大幅に低いか、または大幅に高いCTEを有している場合、その微細構造が加工時に、反ったり、亀裂が生じたり、折れたり、位置がずれたり、あるいは基板から完全に剥がれたりする可能性がある。更に、基板が、基板と焼成した微細構造との間でのCTEの差が大きいために反ってしまうこともあり得る。本発明のスラリーにおいて使用するのに好適な無機粒子状物質は、約5×10−6/℃〜13×10−6/℃の熱膨張係数を有しているのが好ましい。
【0040】
本発明のスラリーにおいて使用するのに好適なガラス及び/またはセラミック物質は、典型的には、約600℃未満で、通常は400℃を超える軟化温度を有している。セラミック粉体の軟化温度とは、その粉体の物質を溶融または焼結させるために、到達しなければならない温度を指している。基板は一般的には、リブ前駆体のセラミック物質よりも高い軟化温度を有している。低い軟化温度を有するガラス及び/またはセラミック粉体を選択することによって、やはり比較的低い軟化温度を有する基板を使用することが可能となる。
【0041】
より低い軟化温度のセラミック物質は、その物質の中にある程度の量の鉛、ビスマス、またはリンを組み入れることによって得ることができる。好適な組成物としてはたとえば、i)ZnO及びB23;ii)BaO及びB23;iii)ZnO、BaO、及びB23;iv)La23及びB23;ならびにv)Al23、ZnO、及びP25が挙げられる。その他の低軟化温度セラミック物質も当業者には公知である。その他の完全溶解、不溶解、または部分溶解性の成分をスラリーのセラミック物質に組み入れて、各種の性質を変化させることができる。
リブ前駆体のガラス形成性またはセラミック形成性物質の粒子の好ましい大きさは、パターン化された基板の上に形成、配列される微細構造の大きさに依存する。粒子の平均サイズ、すなわち直径は、典型的には、形成、配列される微細構造の関心の対象の最小特性寸法(smallest characteristic dimension)の約10%〜15%以下である。たとえば、PDPバリヤーリブの平均粒径は、典型的には約2または3ミクロン以下である。
【0042】
本明細書に記載された本発明において使用することが可能な、各種その他の態様は、当業者には公知であって、下記の特許それぞれに記載がある(それらに限定される訳ではない):米国特許第6,247,986号;米国特許第6,537,645号;米国特許第6,352,763号;米国特許第6,843,952号、米国特許第6,306,948号;国際公開特許第99/60446号;国際公開特許第2004/062870号;国際公開特許第2004/007166号;国際公開特許第03/032354号;国際公開特許第03/032353号;国際公開特許第2004/010452号;国際公開特許第2004/064104号;米国特許第6,761,607号;米国特許第6,821,178号;国際公開特許第2004/043664号;国際公開特許第2004/062870号;国際公開特許第2005/042427;国際公開特許第2005/019934号;国際公開特許第2005/021260号;及び国際公開特許第2005/013308号。
【0043】
本発明を以下の非限定的な実施例により説明する。
【表1】

【0044】
ヘイズ値の測定
滑らかな表面の成形型の50mm×50mmのサイズのサンプルについて、ISO−14782に従って、日本電色工業(株)(Nippon Densyoku Industries,Co.)製のヘイズメーター(NDH−SENSOR)で測定した。これらの実施例で示されるヘイズ値は、5個のサンプル測定の平均値である。
【0045】
可撓性成形型Aの調製
80重量部(pbw)のエベクリル(Ebecryl)270アクリレート化ウレタンオリゴマー、20pbwのフェノキシエチルアクリレートモノマー、及び1pbwのダロキュア(Darocur)−1173光重合開始剤を、周囲温度で混合し、188ミクロンのポリエステルフィルム(PET)支持体の上に、300ミクロンの厚みでコーティングした。そのコーティングした表面を38ミクロンの剥離PETライナーに積層させ、352nmにピーク波長を有する蛍光ランプ(三菱電機オスラム(株)(Mitsubishi Electric Osram LTD.)製)を使用して、PETライナーを通して、1,000mj/cm2の紫外光線で硬化させた。剥離ライナーを除去すると、成形型A(PET支持体の上に硬化させた重合性樹脂を有する)が得られた。成形型Aのヘイズ値は4.2%であった。
【0046】
成形型Bの調製
成形型Aの場合と同様にして成形型Bを調製したが、ただし、その重合性組成物には、80pbwのエベクリル(Ebecryl)8402、20pbwのFA2Dモノマー、及び1pbwのイルガキュア(Irgacure)2959光重合開始剤が含まれていた。成形型Bのヘイズ値は4.0%であった。
【0047】
成形型Cの調製
成形型Aの場合と同様にして成形型Bを調製したが、ただし、その重合性組成物には、90pbwのSPBDAオリゴマー、10pbwのラウリルアクリレートモノマー、及び1pbwのダロキュア(Darocur)1173光重合開始剤が含まれていた。成形型Cのヘイズ値は4.7%であった。
【表2】

【表3】

【0048】
リブ前駆体の硬化性有機バインダーの調製
表IIIの第3列の(メタ)アクリレート硬化性バインダー50pbw、表3の第4列の希釈剤50pbw、及び0.7pbwのイルガキュア(Irgacure)819を周囲温度で混合した。有機バインダー組成物を、2枚の38ミクロンのPETフィルムの間に、250ミクロンの厚みで塗布した。そのリブ前駆体を、400〜500nmのピーク波長を有する蛍光ランプ(フィリップス(Philips)製)を用いて、3分間0.16mW/cm2の光に露光させることにより、硬化させた。硬化させた物質は、硬化の後に相分離が起きている(「有」)と濁りが起き、硬化の後に相分離が起きていない(「無」)と、透明なままである。相分離の結果については、表IIIの第7列に記載した。
【0049】
リブ前駆体の調製
100.7pbwの表3〜5において言及した未硬化の硬化性有機バインダー、100.7pbwの表3〜5において言及した希釈剤、3.5pbwのPOCA II(スリー・エム(3M)製のホスフェート安定剤、)、3.5pbwのネオプペレックス(Neopelex)(商標)No.25(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、花王株式会社(Kao Corporation)製)、及び595.9pbwのガラスフリット(RFW−030)を、コンディショニング・ミキサー(Conditioning Mixer)AR−250((株)シンキー(THINKY Corporation)製)を用いて周囲温度で均一になるまで混合した。
【0050】
粘度
粘度は、東京計器工業(株)(Tokyo Keiki Co.)製商品名「BM−タイプ」の回転粘度計を用い、22℃で測定した。表3〜5に記載のそれぞれのリブ前駆体組成物の粘度は、8.0〜15.0Pa・sの範囲であった。
【0051】
可撓性成形型の再使用性試験
表3のリブ前駆体組成物のそれぞれを、2.8mmガラス基板(PD200、旭硝子(株)(Asahi Glass Co.,Ltd.)製)の上に250ミクロンの厚みでコーティングした。そのコーティングしたガラスに、ローラーを使用して可撓性成形型を積層させた。そのリブ前駆体を、400〜500nmにピーク波長を有する蛍光ランプ(フィリップス(Philips)製)を用いて、その可撓性成形型を通過させて、3分間0.16mW/cm2の光を照射させることにより硬化させた。次いでその成形型を分離させると、ガラス基板に接着された硬化したバリヤーリブが残った。
【0052】
各種異なったリブ組成物(すなわち、表3におけるそれぞれの行)について、同一の可撓性成形型を使用してその手順を5回繰り返した。1回使用及び5回再使用の後での可撓性成形型のヘイズ値を表3〜5の第8列及び第9列に示す。表3には成形型Aの場合の結果を示し、表4には成形型Bの場合の結果を示し、表5では、表に示したように成形型A〜Cを使用した。
【表4】

【表5】

【表6】

【0053】
フェドー方法((Fedors method)R.F.Fedors, Polym. Eng. Sci., 14(2), P.147, 1974)を使用して計算された計算値:
【0054】
【表7】

【表8】

【0055】
実施例34、36及び38のためのリブ前駆体組成物
実施例34
50pbwのエポキシエステル(Epoxyester)80MFA、50pbwのDPGPE、及び0.7pbwのイルガキュア(Irgacure)819を混合した。100.7pbwのその溶液、7.0pbwのDOPA−17、及び571.5pbwのガラスフリット(RFW−030)を、コンディショニング・ミキサー(Conditioning Mixer)AR−250を用いて混合した。そのリブ前駆体の粘度は10.0Pa・sであった。
【0056】
実施例36
50pbwのエポキシエステル(Epoxyester)80MFA、50pbwのDPGPE、4.4pbwの分散剤(味の素ファインテクノ(株)(Ajinomoto-Fine-Techno Co.,Inc.)から商品名「アジスパー(Ajisper)PB821」として市販されているもの)、及び0.7pbwのイルガキュア(Irgacure)819を混合した。その溶液と、474.41pbwのガラスフリット(RFW−030)とを、コンディショニング・ミキサー(Conditioning Mixer)AR−250を用いて混合した。そのリブ前駆体の粘度は23.0Pa・sであった。
【0057】
実施例38
50pbwのエポキシエステル(Epoxyester)80MFA、50pbwのDPGPE、7.0pbwのDOPA33、及び1.4pbwのルシリン(Lucirin)TPOを混合した。その溶液と、572.3pbwのガラスフリット(RFW−030)とを、コンディショニング・ミキサー(Conditioning Mixer)AR−250を用いて混合した。そのペーストの粘度は10.0Pa・sであった。
【0058】
実施例39
微細構造成形型の再使用性を評価した。
成形型Bの、同一の組成物を用いて、以下の格子凹面パターンを有する長方形(幅400mm×長さ700mm)を調製した。
縦方向の溝;1,845本、ピッチ300ミクロン、高さ210ミクロン、溝底部幅(リブ頂上幅)110ミクロン、溝頂上幅(リブ底部幅)200ミクロン、
横方向の溝;608本、ピッチ510ミクロン、高さ210ミクロン、溝底部幅(リブ頂上幅)40ミクロン、溝頂上幅(リブ底部幅)200ミクロン。
400mm×700mm×2.8mmのガラスプレートを準備して、基板として使用した。そのガラスプレートにプライマー処理を行った(日本ユニカー(株)(Nippon Unicar Company LTD)製のA−174、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランをコーティング)。
上述のようにして得られた、ガラス基板の上で硬化させた微細構造リブ前駆体を、550℃で1時間かけて焼結させた。硬化前駆体の有機成分は完全に焼失されており、顕微鏡で調べたところ、焼結の後の微細構造には欠陥が全く観察されなかった。
その成形型の再使用性を、実施例24のリブ前駆体組成物を使用して、露光時間を60秒とした以外は前述の場合と同様にして評価した。同一の微細構造成形型を用いて、この手順を繰り返した。その成形型は、30回の再使用の後でも使用するのに適していた。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】バリヤーリブを製造するために好適な可撓性成形型を説明する斜視図。
【図2A】可撓性成形型を使用して、微細構造(たとえば、バリヤーリブ)を製造するための方法を連続的に説明する断面図。
【図2B】可撓性成形型を使用して、微細構造(たとえば、バリヤーリブ)を製造するための方法を連続的に説明する断面図。
【図2C】可撓性成形型を使用して、微細な構造(たとえば、バリヤーリブ)を製造するための方法を連続的に説明する断面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイパネル構成要素を製造するための方法であって、
バリヤーリブを製造するために好適なポリマー微細構造表面を有する成形型を用意する工程と、
前記成形型の微細構造表面と基板との間に硬化性有機バインダー及び無機物質を含むリブ前駆体組成物を置く工程と、
前記前駆体物質を硬化させる工程と、
前記成形型を除去する工程、
とを含み、同一のポリマー成形型を用いて少なくとも5回繰り返される方法。
【請求項2】
前記ポリマー成形型が透明であって、単一回使用後に8%未満のヘイズ値を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリマー成形型が、少なくとも5回の使用後に8%未満のヘイズ値を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記成形型が可撓性である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記成形型の微細構造表面が、硬化されたポリマー材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリマー材料が、少なくとも1種の(メタ)アクリレートオリゴマー及び少なくとも1種の(メタ)アクリレートモノマーの反応生成物である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記微細構造表面がポリマー支持フィルム上に配される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記リブ前駆体組成物が光重合開始剤を含み、前記組成物が、前記パターン化された基板を通し、前記成形型を通し、或いはその両方の組合せによって光硬化される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記硬化性有機バインダーがある溶解パラメーターを有し、前記リブ前駆体が、前記硬化性有機バインダーの溶解パラメーターよりも低い溶解パラメーターを有する有機希釈剤を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記希釈剤の溶解パラメーターが前記硬化性有機バインダーよりも低く、2[MJ/m31/2を越える差がある、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記希釈剤の溶解パラメーターが前記硬化性有機バインダーよりも低く、少なくとも5[MJ/m31/2を越える差がある、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記希釈剤の溶解パラメーターが前記硬化性有機バインダーよりも低く、8[MJ/m31/2を越える差がある、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記硬化されたリブ前駆体を、前記有機バインダーが蒸発するような温度で焼結させる工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
硬化性ペースト組成物であって、
少なくとも1種の無機粒子状物質と、
ある溶解パラメーターを有する少なくとも1種の硬化性有機バインダーと、
前記硬化性有機バインダーの溶解パラメーターよりも低い溶解パラメーターを有する少なくとも1種の希釈剤と、
場合によっては、光重合開始剤、分散剤、及びそれらの混合物、
とを含む、組成物。
【請求項15】
前記分散剤が塩基性ポリマーである、請求項14に記載の硬化性ペースト。
【請求項16】
前記硬化性有機バインダーが、少なくとも2個の(メタ)アクリレート基を含む、請求項14に記載の硬化性ペースト。
【請求項17】
前記硬化性有機バインダーが、(メタ)アクリレート化エポキシ、(メタ)アクリレートウレタン、(メタ)アクリレート化ポリエーテル、(メタ)アクリレート化ポリエステル、(メタ)アクリレート化ポリオレフィン、(メタ)アクリレート化(メタ)アクリル化合物、及びそれらの混合物である、請求項16に記載の硬化性ペースト。
【請求項18】
前記硬化性有機バインダーが、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、グリセリンジグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、及びそれらの混合物から選択される、請求項16に記載の硬化性ペースト。
【請求項19】
前記希釈剤が、350℃未満の沸点を有する、請求項14に記載の硬化性ペースト。
【請求項20】
前記希釈剤が、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、ジアルキレングリコールモノアルキルエーテル、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル、アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、ジアルキルスクシネート、ジアルキルアジペート、ジアルキルグルタレート、及びそれらの混合物から選択される、請求項14に記載の硬化性ペースト。
【請求項21】
a)前記硬化性有機バインダーが、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリレートを含み、そして前記希釈剤がジエチレングリコールモノエチルエーテル、2−ヘキシルオキシエタノール、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、及びそれらの混合物から選択されるか;
b)前記硬化性有機バインダーが、エチレングリコールジグリシジルエーテル(メタ)アクリレートを含み、そして前記希釈剤がジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、及びそれらの混合物から選択されるか;または
c)前記硬化性有機バインダーが、グリセリンジグリシジルエーテル(メタ)アクリレートを含み、そして前記希釈剤がブタンジオール、2−ヘキシルオキシエタノール、ジエチルスクシネート、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、及びそれらの混合物から選択される、
請求項14に記載の硬化性ペースト。
【請求項22】
ホスフィンオキシドを含まない光重合開始剤を更に含む、請求項14に記載の硬化性ペースト。
【請求項23】
少なくとも1種のチクソトロープ剤を更に含む、請求項14に記載の硬化性ペースト。
【請求項24】
基板、及び前記透明な基板の上に配された硬化された組成物を含んでなる複数のバリヤーリブを含み、前記硬化された組成物が、請求項14の反応生成物を含む、ディスプレイ構成要素。
【請求項25】
微細構造化構成要素を製造するための方法であって、
適切な微細構造表面を有するポリマー成形型を用意する工程と、
前記成形型の微細構造表面と基板との間に硬化性有機バインダー及び無機物質を含む硬化性物質を置く工程と、
前記硬化性物質を硬化させる工程と、
前記成形型を除去する工程、
とを含み、同一のポリマー成形型を用いて少なくとも2回繰り返される方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【公表番号】特表2008−538445(P2008−538445A)
【公表日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−506729(P2008−506729)
【出願日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際出願番号】PCT/US2006/014031
【国際公開番号】WO2006/113413
【国際公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】