説明

可撓性接続端子

【課題】例えば互いに導電接続すべき給電側と受電側の電気機器または部材等を、相互間の熱応力や振動もしくは位置誤差等を吸収させ、或いは相対移動を許容した状態で電気的に接続する場合などに用いる可撓性接続端子に係り、可撓導体の全体厚さが増大しても容易に端子ブロックを接合できるようにする。
【解決手段】多数の導電性金属薄板21を積層してなる可撓導体2の両端部に導電性金属よりなる端子ブロック3a,3bを電磁波ビーム溶接または摩擦撹拌接合により導電接続した可撓性接続端子において、上記各端子ブロック3a,3bの可撓導体接続側端部に複数の段部31を階段状に形成し、その各段部31に所定厚さの可撓導体2を電磁波ビーム溶接または摩擦撹拌接合により導電接続したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば互いに導電接続すべき給電側と受電側の電気機器または部材等を、相互間の熱応力や振動もしくは位置誤差等を吸収させ、或いは相対移動を許容した状態で電気的に接続する場合などに用いる可撓性接続端子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記のような可撓性接続端子として、多数の導電性金属薄板を積層してなる可撓導体の両端部に、導電性の金属端子を電磁波ビーム溶接等により導電接続したものは知られている(例えば下記特許文献1参照)。
【0003】
図6は上記のような可撓性接続端子1の一例を示すもので、銅箔等の多数の導電性金属薄板21を積層してなる可撓導体2の両端部に、銅等の導電性金属よりなる端子ブロック3a,3bを突き合わせて電磁波ビーム溶接Wにより導電接続した構成である。なお、上記図6は可撓導体2の一端側に接続される端子ブロック3aのみを示し、上記可撓導体2の他端側にも上記とほぼ同様の要領で端子ブロック3bが接続されているが、図には省略した。図中、Tは上記の電磁波ビーム溶接を施すための溶接トーチを示す。
【0004】
【特許文献1】特開昭63−250082号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記のように可撓導体2の端部に、端子ブロック3a,3bを突き合わせて電磁波ビーム溶接W等で導電接続する場合、1回の溶接で端子ブロック3a,3bと接合し得る可撓導体2の厚さ(図6で上下方向の高さ)は溶接機の容量や能力で決まり、例えば1回の溶接で接合できる深さが25mmであれば、図6のように上下両側から溶接しても最大で50mmの厚さの可撓導体が限界であり、それ以上の厚さの可撓導体は接合することができない。
【0006】
そのため、例えば可撓性接続端子の通電容量を増大させるために、可撓導体2を構成する導電性金属薄板21の枚数を増やすと、それによって可撓導体2の全体厚さが増大して端子ブロック3a,3bに溶接接合することができない等の不具合があった。そこで、容量や能力の大きな溶接機を用いることが考えられるが、そのような溶接機は、それ自体が高価で費用が嵩むだけでなく、給電設備や安全対策にも多大な労力や設備が必要で製作コストが大幅に増大する等の問題があった。また、図6のような可とう導体を複数重ねて使用する方法もあるが、導体間に接触抵抗が発生するため、通電ロスとなる問題がある。
【0007】
本発明は上記の問題点に鑑みて提案されたもので、可撓導体の全体厚さが増大しても容易に端子ブロックと接合することのできる通電特性の優れた可撓性接続端子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために本発明による可撓性接続端子は、以下の構成としたものである。すなわち、多数の導電性金属薄板を積層してなる可撓導体の両端部に導電性の金属よりなる端子ブロックを電磁波ビーム溶接または摩擦撹拌接合により導電接続した可撓性接続端子において、上記各端子ブロックの可撓導体接続側端部に複数の段部を階段状に形成し、その各段部に所定厚さの可撓導体を電磁波ビーム溶接または摩擦撹拌接合により導電接続したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記のように可撓導体の両端部に接続される端子ブロックの可撓導体接続側端部に複数の段部を階段状に形成し、その各段部に所定厚さの可撓導体を電磁波ビーム溶接または摩擦撹拌接合により導電接続するようにしたことによって、可撓導体の全体厚さが増大しても上記各段部毎に所定厚さの可撓導体を端子ブロックに容易に接合することができる。その結果、例えば通電容量の大きな可撓性接続端子にあっても容易・安価に製作することが可能となる。
【0010】
なお、上記両端子ブロックの階段状の段部は、互いに対向させて設け、その互いに対向する段部の間隔をほぼ一定に形成して、その各対向する段部間にほぼ一定長さの可撓導体を導電接続するように構成するとよい。そのようにすると、上記一方の端子ブロックから他方の端子ブロックに上記各可撓導体を介して流れる電流の抵抗がほぼ一定となって、電流の片寄りや、局部的な発熱を防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を図に示す実施形態に基づいて具体的に説明する。図1(a)は本発明による可撓性接続端子の一実施形態を示す平面図、(b)はその正面図、図2は上記可撓性接続端子の一部の分解縦断面図であり、前記図6の従来例と同様の機能を有する部材には同一の符号を付して省略する。
【0012】
本実施形態の可撓性接続端子1は、図1および図2に示すように銅箔やアルミニウム箔等の可撓性を有する多数の導電性金属薄板21を積層してなる所定厚さの複数個の可撓導体2と、それらの可撓導体2の両端部に接続される銅やアルミニウム等の導電性金属よりなる端子ブロック3a,3bとよりなる。その各端子ブロック3a,3bの可撓導体2を接続する側の端部に複数の段部31を階段状に形成し、その各段部31に所定厚さの可撓導体2を電磁波ビーム溶接により導電接続したものである。
【0013】
特に図の実施形態は図1(b)に示すように両端子ブロック3a,3bの階段状の段部31を互いに対向させて設け、その互いに対向する段部31,31間の間隔をほぼ一定に形成して、その各対向する段部31,31間にほぼ一定長さの可撓導体2を電磁波ビーム溶接により導電接続したものである。その電磁波ビーム溶接としては、例えば電子ビーム溶接、レーザービーム溶接、またはプラズマ溶接等を適用することができる。図中、30は上記各端子ブロック3a,3bを不図示の電気機器や部材等に取付けるための取付孔である。
【0014】
なお、上記のように所定厚さに積層した可撓導体2を各段部31に導電接続する場合、上下に隣り合う可撓導体2・2間には、必要に応じて例えば図1(b)および図2に示すように適宜の間隔を有する隙間Sを設けるようにしてもよい。そのようにすると、可撓導体2と端子ブロック3a,3bとを電磁波ビーム溶接W等により接続した際、その溶接部Wの表面の溶接ビードを除去することなく各可撓導体2を良好に溶接することができる。
【0015】
次に、上記のような可撓性接続端子1を製造するプロセスは適宜であるが、例えば以下の要領で製造すればよい。図3および図4はその一例を示すもので、先ず、図3(a)に示すように端子ブロック3aの階段状の複数の段部31のうち最下位の段部31に可撓導体2の端部を溶接接合させる。そして上記段部31の立ち上がり部と上記可撓導体2の端面との溶接接合部に沿って溶接トーチTを移動させながら上記の溶接接合部を電磁波ビーム溶接Wにより接合して上記端子ブロック3aと可撓導体2とを導電接続する。
【0016】
その際、上記可撓導体2を構成する金属薄板21の積層厚さは、上記の電磁波ビーム溶接による1回の溶接工程で接合可能な厚さとする。また上記可撓導体2の積層厚さと、段部31の立ち上がり部の高さは図示例のようにほぼ同等に形成すると、電磁波ビームが可撓導体2と端子ブロックとにバランスよく照射されて両者を良好に溶接接合することができる。
【0017】
上記のようにして端子ブロック3aの最下位の段部31に可撓導体2を導電接続したら図3(b)のように次の段部31に可撓導体2を上記と同様の要領で導電接続して行く。そして図3(c)のように端子ブロック3aの全ての段部31に可撓導体2を導電接続したら、同図(d)のように上下反転する。
【0018】
次いで、図4に示すように上記端子ブロック3aを接続した可撓導体2の反対側の端部に、もう一方の端子ブロック3bを接続するもので、その場合にも図4(a)〜(c)のように下側の可撓導体2から順に溶接Wすると、その複数の可撓導体2と上記端子ブロック3bとを容易に導電接続することができる。
【0019】
そして上記図4(c)のように複数の可撓導体2の両端部に端子ブロック3aと3bとを導電接続したところで、同図(d)のように上下反転すれば、前記図1に示すような可撓性接続端子1が得られるものである。
【0020】
なお、上記実施形態は、端子ブロック3a,3bと可撓導体2とを電磁波ビーム溶接によって導電接続したが、摩擦撹拌接合によって導電接続してもよく、その場合にも上記と同様の作用効果が得られる。
【0021】
上記のようにして製造した可撓性接続端子1の各種電気機器や部材等への取付方法や取付手段は適宜であるが、例えば図5に示すように各種電気機器や部材M1,M2等に植設した取付ボルトBに、前記各端子ブロック3a,3bに形成した取付孔30を挿通嵌合して、上記取付ボルトBにナットNをねじ込むようにすれば容易に取付けることができる。その場合、可撓導体2を図5のように屈曲した状態で取付けると、例えば上記部材M1,M2間に図5で左右いずれの方向に振動やずれが生じても、それらを良好に吸収することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
以上のように本発明による可撓性接続端子は、端子ブロックの可撓導体接続側端部に複数の段部を階段状に形成して、その各段部の立ち上が部もしくは立ち下がり部に可撓導体を突き合わせて電磁波ビーム溶接または摩擦撹拌接合により導電接続するようにしたから、可撓導体の全体厚さが増大しても容易に端子ブロックと接合することができる。その結果、多数の金属薄板を積層した通電容量の大きな可撓性接続端子にあっても溶接機の容量や能力を増大させることなく、容易・安価に製作することが可能となり、産業上の利用可能性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)は本発明による可撓性接続端子の一実施形態を示す平面図、(b)はその正面図。
【図2】上記可撓性接続端子の一部の分解縦断面図。
【図3】(a)〜(d)は上記可撓性接続端子の製造プロセスの一例を示す説明図。
【図4】(a)〜(d)は上記可撓性接続端子の製造プロセスの一例を示す説明図。
【図5】上記可撓性接続端子の使用状態の一例を示す正面図。
【図6】従来の可撓性接続端子の一例を示す斜視図。
【符号の説明】
【0024】
1 可撓性接続端子
2 可撓導体
21 導電性金属薄板
3a、3b 端子ブロック
30 取付孔
31 段部
W 溶接
T 溶接トーチ
B 取付ボルト
N ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の導電性金属薄板を積層してなる可撓導体の両端部に導電性金属よりなる端子ブロックを電磁波ビーム溶接または摩擦撹拌接合により導電接続する可撓性接続端子において、上記各端子ブロックの可撓導体接続側端部に複数の段部を階段状に形成し、その各段部に所定厚さの可撓導体を電磁波ビーム溶接または摩擦撹拌接合により導電接続したことを特徴とする可撓性接続端子。
【請求項2】
上記両端子ブロックの階段状の段部を互いに対向させて設け、その互いに対向する段部の間隔をほぼ一定に形成して、その各対向する段部間にほぼ一定長さの可撓導体を導電接続してなる請求項1に記載の可撓性接続端子。
【請求項3】
上記電磁波ビーム溶接として、電子ビーム溶接、レーザービーム溶接、またはプラズマ溶接のいずれかを適用してなる請求項1または2に記載の可撓性接続端子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−199788(P2009−199788A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−38150(P2008−38150)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(000139872)株式会社井上製作所 (13)
【Fターム(参考)】