説明

可溶化剤を含む導電性で接着性のヒドロゲル

皮膚と接触する接着剤として使用するのに適した、また特に使捨て用の医療用デバイスの電気的なインターフェースとして使用するのに適した、導電性で接着性のヒドロゲルを与える組成物をここに提供する。本発明のヒドロゲルは、低い皮膚刺激性および/または低い悪臭発生特性を与え、対象の皮膚を水和し、対象の皮膚表面の毛近傍を容易に湿潤し、しかもこのヒドロゲルを介する電気的刺激による、あるいはこの電気的刺激を与える際の、対象における火傷の発生を防止する。これらのヒドロゲルは、一般的にモノマー、第一の開始剤、可溶化剤、および架橋剤を含む。本発明のヒドロゲルは、また該ヒドロゲルの変色防止および/または該ヒドロゲルの加水分解防止を助け、しかも保存寿命を改善する目的で、バッファー系を含むことが望ましい。該ヒドロゲルには、その硬化前またはその後に、導電性増強剤、医薬、保湿剤、可塑剤、皮膚手当て剤、等の他の添加剤を添加することができる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
現在、導電性で、接着性の固体状ヒドロゲルおよび液状ゲルが、ある対象の皮膚と、該対象へのおよび/または該対象からのシグナル(例えば、診断および/または監視のための用途)、および/または該対象への電気刺激(例えば、治療および/または予防的な用途)とを連絡するための電気的なインターフェースを与える目的で、医療デバイスの分野において使用されている。しかし、現在のヒドロゲルおよび液状ゲルは、様々な面において不十分である。
従来のヒドロゲルは、皮膚に対して十分に接着せず、容易な除去を可能とするには不十分な凝集性を示し、および/またはそれ自体に対して接着性であって、遮断フィルム等により、分離性(直接的でない面対面、ゲル対ゲル配置)を保証すべく物理的に分離される必要があるという点において、その接着性および/または凝集性に関する問題を示す。これについては、例えばGilman等の米国特許第5,402,884号(2つのヒドロゲル部分間の電気的な連絡を与えるが、依然としてこれらヒドロゲル部分間の分離を必要とする、包装系)を参照のこと。従来のヒドロゲルに係る付随的な問題点は、ヒドロゲルと接している皮膚を十分に水和させることに係り、従って皮膚の電気抵抗を十分に下げることに関連する問題は、しばしば電気的に刺激する際に、皮膚を加熱して、点状の火傷を生じる。これについては、例えばE. McAdamsの、「表面バイオメディカル電極技術(Surface Biomedical Electrode Technology)」Int'l Med. Device & Diagnostic Indus., pp. 44-48 (9月/10月, 1990)を参照のこと。
【0002】
従来のヒドロゲルに関する更なる問題点は、皮膚の毛近傍における不十分な濡れ、またその結果生じる、皮膚との不十分な接触に関する問題点を包含する。これは、不十分な電気的接触に導き、結果的に高い頻度で、低効率の徐細動、および電気的刺激を与えた際の、皮膚の点状火傷の高い発生率をもたらし、および/または使用前に皮膚表面の処置を要し、結果的にこれら処置の速度を遅らせるといった問題をもたらす。更にまた、従来のヒドロゲルを介して患者に伝達される電気的パルスは、該ゲルの加水分解を引起こし、またこの問題は、徐細動および/または心臓調整のために使用される医療用の刺激装置に関しては、更にひどくなる。というのは、これらの型の刺激装置は、通常より高い電圧および/または電流を患者に加えており、これが加水分解率を高めるからである。例えば、徐細動装置は、典型的に、患者に対して最大電流60 Aにて、5,000Vまでの電圧を加え、また心臓調整装置は、通常、患者に対して最大電流0.2 Aにて、300Vまでの電圧を加えている。
【0003】
従来のヒドロゲルに関する更に別の問題は、該ヒドロゲルが、しばしばこれらに関連する不快な臭いを持つことである。幾つかの従来のヒドロゲルは、また患者の皮膚に刺激を与える特性を示す。この皮膚刺激の問題は、該ヒドロゲル中の官能性モノマーおよび/または他のモノマー残基の重合が完了していない場合に、しばしば見られる。幾つかの場合には、他の望ましからぬモノマー残基が存在し、製造後長期に渡り、これが患者の皮膚と直接接触する恐れがあり、そのため更なる皮膚刺激を起こす可能性がある。
液状ゲルも同様な問題点を有し、またその流動性のために、設定した所定の形状を所定期間に渡り維持せず、その使用の容易性および保存性に悪影響を及ぼすという、付随的な問題、およびその凝集強さの欠如のために、浄化するのにより多くの時間を要するという問題をも併せ持つ。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、皮膚接点および医療デバイスにおいて使用するのに適した、しかもこれらの問題点を扱い、かつこれらを解決する、新規なヒドロゲルの開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上で議論した様々な難点および問題点に応えて、本発明は、導電性ヒドロゲル用の組成物を開発した。この組成物は、モノマー、開始剤、架橋剤および可溶化剤を含んでいる。この組成物は、該可溶化剤が、該組成物中への開始剤の高濃度での可溶化を可能とし、またその結果として該組成物が、可溶化剤を含まない同様な組成物に比して、高い重合能力を持つことによって特徴付けられる。更に、この組成物は、可溶化剤を含まない同様な組成物に比して、より低い、該ヒドロゲル中に存在する残留モノマー化合物濃度を持つことができる。
あるいはまた、導電性ヒドロゲル用の組成物は、イオン性モノマー、第一の開始剤、架橋剤および可溶化剤を含むことができ、ここで該可溶化剤は、シクロデキストリンまたはシクロデキストリン誘導体からなる群から選択される。
【0006】
本発明の組成物は、数多くの製品に配合することができる。その一例は、モノマー、第一の開始剤、架橋剤および可溶化剤を含む組成物から作られる導電性で接着性のヒドロゲルを含む電極である。本発明の組成物は、該可溶化剤が、該組成物中への開始剤の高濃度での可溶化を可能とし、結果的に該組成物が、可溶化剤を含まない同様な組成物に比して、高い重合能力を持つことによって特徴付けられる。該電極は、また可溶化剤を含まない同様な組成物に比して、より低い、該ヒドロゲル中に存在する残留モノマー化合物濃度を持つことができる。
以下の本発明に係る例示的な局面および添付図面に関連する詳細な説明を参照することにより、本発明は更に一層十分に理解され、また本発明の更なる特徴並びに利点が明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、導電性で接着性のヒドロゲルに係り、またより詳しくは医療用デバイスの皮膚と接触する電気的インターフェースとして使用するのに適した、導電性で接着性のヒドロゲルに関するものである。
本発明のヒドロゲルプリカーサは皮膚接触型接着剤として使用するのに適したものであり、また例えば使捨て用の医療デバイスにおいて使用するのに適した、良好な電気的導体である、導電性で接着性のヒドロゲルを製造するのに使用することができる。望ましい皮膚接触型接着剤は、非-刺激性であり、十分に湿潤性乃至実質的に湿潤性であり、かつ皮膚に対して接着性であり、十分に凝集性であって、容易に除去できるものである。このような接着剤は、更に皮膚と十分に接触し、これを十分に湿潤し、該ヒドロゲルまたは皮膚に対して実質的に悪影響を及ぼすこと無しに、これに電流を通じることを可能とする。
【0008】
多数の様々なヒドロゲルプリカーサ処方物が、市販品として入手可能である。その少なくとも一つは、このプリカーサ中のモノマーの重合を促進する目的で開始剤を含んでいる。従来の処方物の多くは、皮膚刺激性、臭気、導電性、接着性等に関連する問題を含む、望ましからぬ特性を示す。これら問題の幾つかは、その大部分において、該ヒドロゲルプリカーサ中のモノマーの貧弱な重合性の結果であることが分かった。即ち、該ヒドロゲルプリカーサ中の該官能性モノマーおよび他のモノマーの残基は、完全に重合されておらず、従って上記の望ましからぬ諸特性の幾つかを生じ、またこれらを結果する残留モノマーおよび/または副生成物が残されている。
従来の工業的な重合方法は、殆ど完全な反応を生じず、その結果残留モノマーが残される。従って、従来のヒドロゲルプリカーサ中に、開始剤が存在してもしなくても、従来のヒドロゲル中のモノマーの重合は、しばしば不完全であり、かつ残留官能性モノマーおよびその他のモノマー残基が残されることになる。残留官能性モノマーおよび/またはその他のモノマー残基の存在は、悪臭の原因であると考えられ、および/または皮膚刺激をもたらす可能性があるので、残留官能性モノマーおよびその他のモノマー残基の存在を、望ましくは回避し、もしくは最小化する。例えば、ヒドロゲルプリカーサにおけるアクリル型の残留モノマー、例えばアクリル酸またはメチルアクリレートの存在は、臭気の問題および/または皮膚刺激に導く可能性があることが分かっている。
【0009】
本発明のヒドロゲルは、他の導電性ヒドロゲルに比して、特有の、改善された諸特性を持つ。より詳しくは、現在の重合処方物またはヒドロゲルプリカーサは、高い重合性を示し、そのため重合されておらず、従って生成するヒドロゲルの悪臭および/または対象の皮膚刺激の原因となり、もしくはこれらをもたらす、該ヒドロゲル中の残留官能性モノマーおよび/または他のモノマー残基の量が減じられる。
本明細書の開示全体を通して、最終生成物への言及に加えて、ヒドロゲルにも言及するが、ヒドロゲルなる用語は、また本明細書の至るところにおいて議論するように、ある条件下(例えば、UV硬化、加熱等)に曝された場合に、ヒドロゲルに転化する、重合性処方物またはヒドロゲルプリカーサをも意味することができる。
用語「同様な組成物」とは、本発明の組成物と同様な製法並びに材料を使用するが、発明としての項目に欠ける組成物を意味する。ウエブスターニューカレッジエートディクショナリー(Webster's New Collegiate Dictionary) (1980)によれば、「同様(similar)」とは、1) 共通の特性を持ち、厳密な意味で類似点があり、2) これに対応して、実質または主要点においてよく似ている(alike)ことを意味する。この用語の一般的に受容れられている意味を使用すると、この用語は、記述される発明としての条件を除き、製造上の許容度の範囲内で、全ての他の条件が、本質的に同一であることを意味する。
【0010】
少なくとも1種の公知の組成物(例えば、米国特許第5,800,685号;その開示全体を本発明の参考とする)は、モノマー、架橋剤および開始剤を含むことが知られている。しかし、この'685号特許に引用されている型の開始剤は、記載されているプリカーサ内で制限された水に対する溶解度を持つ。従って、より大量の(即ち、その溶解度限界を超える)開始剤が、より完全な重合を達成するために必要とされるが、これは、該'685号特許の教示では、達成し得ない。このように、該'685号特許は、開始剤の、モノマーを完全に重合するのに十分な可溶性形状での存在が、不可能であるような状況を提示している。あるいはまた、疎水性開始剤が高濃度で存在する場合、該ヒドロゲルは、該開始剤の添加により、溶解度限界に達し、かつこれを越えたために、白濁した。
ヒドロゲルプリカーサへの可溶化剤の添加は、モノマーの高い重合度の達成を可能とし、結果的に残留官能性モノマーおよび/または他のモノマー残基の存在量を減じ、あるいはこれらの存在の回避へと導くことを見出した。このような減少は、該ヒドロゲルにおける最初のモノマーおよび開始剤に依存して、幾つかの特性を与え、また他の特性を排除することができる。具体的には、上記した難点を示すことなく、該ヒドロゲルプリカーサ中に高濃度での開始剤の配合を可能とする目的で、可溶化剤を配合することにより、重合性が高められる場合には、残留官能性モノマーおよび/または他のモノマー残基の存在量を減じもしくはその存在を回避し、結果的に得られるヒドロゲルの臭気を減じまた使用者の皮膚刺激の可能性を減じることができる。
【0011】
本発明のヒドロゲルは、従来のヒドロゲルには見られない、本発明のヒドロゲルのもう一つの利点である、長い保存寿命と関連して、より一層安定性の高いものとなる。即ち、重合過程が完全であればある程、保存中の該ヒドロゲルの安定性はより高いものとなる。この安定性および延長された保存寿命は、製造後の不合格製品がより少なくなるために、大幅なコスト節減をもたらす可能性がある。その上、この高い安定性および延長された保存寿命は、期限切れで無い製品が選択されるという条件の下で、緊急の状況において、不良品または欠陥のある製品を得る機会を減じることに寄与するものと期待される。
適当な可溶化剤の幾つか(例えば、シクロデキストリン、シクロデキストリン誘導体等)も、錯化および安定化剤として機能し得ることを理解するであろう。このように、可溶化剤を添加してない場合には、該ヒドロゲルプリカーサ中の開始剤濃度が、その溶解度限界以下であり、また可溶化剤の添加が、これまで不要であるか、不適切であると考えられていたような、本発明の局面においてさえ、錯化剤であるか、あるいは錯化剤として機能する可溶化剤の添加は、該ヒドロゲル中の幾つかの分子(典型的には、悪臭と関連する分子)の揮発性を減じることができ、結果的にこのヒドロゲルの臭気を減じることができる。
【0012】
更に、適当な可溶化剤は、所定の疎水性成分(例えば、脂質、ビタミン類、酸化防止剤、薬物、香料、および他の皮膚手当て成分)に対する担体として機能して、これらの水への可溶化を助け、結果としてこれらの該ヒドロゲル内での、より均一な一体化を補助することができる。
上記のように、該ヒドロゲルプリカーサ中に存在する該開始剤が親水性であれ、疎水性であれ、錯化剤および/または担体としての可溶化剤の使用が可能である。しかし、親水性の開始剤を使用した場合、該錯化剤は、皮膚手当て成分(例えば、脂質等)等の疎水性薬剤の担体として機能し得る。更に、該ヒドロゲルプリカーサにおける溶解度限界に対する開始剤濃度の如何に係らず、可溶化剤が錯化剤および/または担体として機能し得ることを理解するであろう。
上に示したように、従来のヒドロゲルプリカーサは、疎水性開始剤を含むことができるが、過剰な疎水性開始剤の配合(該ヒドロゲルプリカーサにおけるその溶解度限界以上の量)は、一般に有利であるとは考えられず、また事実、これが該ヒドロゲルの白濁を起こし、あるいは相分離を引起こす可能性があるので、有害である可能性がある。
本発明は、その局面の少なくとも一つが、開始剤の変更されていない溶解度限界(可溶化剤を添加してない場合の、ヒドロゲルプリカーサにおける該開始剤の溶解度限界)を超える濃度にて、これを含み、結果として可溶化剤を添加してない同様な組成物と比較して、上記官能性モノマーおよび他のモノマー残基がより高い重合能力を持つことを可能とすることから、従来のヒドロゲルと関連する上記問題点の幾つかに対する解決策を提示する。
【0013】
例えば、イルガキュア(IRGACURETM) 184(NY州、タリータウンの、チバスペシャルティーケミカルズ社(Ciba Specialty Chemicals, Inc.)から入手できる)等の開始剤が、可溶化剤の添加なしに存在する場合、特定のヒドロゲルプリカーサにおけるこの開始剤の溶解度限界は、該ヒドロゲルプリカーサの約0.15質量%であり得る。この溶解度限界を越える量でのこのイルガキュア184の添加は、白濁および/または相分離の原因となり、またこれを引起こす過飽和をもたらすが、重合性は改善されないであろう。シクロデキストリンまたはシクロデキストリン誘導体等の可溶化剤の配合は、該ヒドロゲルプリカーサにおける該疎水性開始剤の溶解度レベルを高めることを可能とし、より完全な重合の見込みおよびより均質なヒドロゲル形成の可能性を高める。
可溶化剤の配合および可溶化された開始剤をより高濃度で含み得ることは、供給元から受け取った官能性モノマーが、一般に輸送中および/または保存中の、該モノマーの自発的な重合を防止する目的で、製造業社によって該モノマー中に添加された、モノメチルエーテルヒドロキノン(MEHQ)等の重合阻害剤を含んでいるという事実のために、本発明の幾つかの局面において重要であり得る。この阻害剤は該モノマーをより安定なものとするが、該阻害剤は、また該ヒドロゲルの製造工程において問題となる。即ち、この阻害剤は、この重合過程を妨害する。というのは、このものは、保存中の官能性モノマーの自発的な重合を阻害するのと同様にして、ラジカルの生成を抑制するからである。更に、モノマー溶液の調製中に溶け込んだ酸素も、該モノマーの重合過程全体に対して阻害作用を持つ可能性がある。従って、溶液中の阻害剤(例えば、MEHQ)および酸素の存在は、この阻害剤の作用を妨害する。そのため、この阻害剤は、該重合反応が、望ましくは完全に進行し、もしくはほぼ完全に進行するように、MEHQ、溶け込んだ酸素および他のラジカル捕獲成分等のあらゆる阻害剤の阻害作用を克服するための量で、溶解状態で存在することが望ましい。
【0014】
理解されるように、(過飽和のために、分離しているのではなく)溶液中にあり、従って重合を開始し得る、開始剤の量が、阻害剤によって消費または中和される場合には、より溶解性の低い阻害剤を、該モノマーの重合のために使用できる。従って、溶液中にあり、そのために該モノマーの重合のために使用できる阻害剤の量を高めることが望ましい。
更に、該ヒドロゲルプリカーサの水性環境における溶解度限界を超える量での、開始剤の配合は、該水性環境における通常のまたは変更されていない溶解度限界を越える量であり、しかも可溶化剤の添加によって生じる、変更されたまたは高い溶解度限界あるいはそれ以下の量での、開始剤の配合またはこれを配合する能力とは異なる。即ち、該可溶化剤の配合は、可溶化可能な、従って該開始過程を促進し、かつ該阻害剤のラジカル発生の抑制能を妨害するのに利用できる、阻害剤の量を高め、結果として該可溶化剤のない場合に存在するまたは重合に利用される量よりも多くの量の、該官能性モノマーおよび/または他のモノマー残基の重合において利用できる、可溶化された開始剤が残される。該ヒドロゲルプリカーサにおける、該官能性モノマーおよび他のモノマー残基(例えば、アクリル酸、メチルアクリレート等)の重合の促進は、該可溶化剤の不在下で生成したヒドロゲルと比較して、生成するヒドロゲルの臭気の低下および皮膚刺激の可能性の低下をもたらすことができる。
【0015】
本発明の一局面を一般的に記載したが、ここでは、これを更に詳しく議論する。具体的には、本発明の一局面は、モノマー、開始剤、架橋剤および可溶化剤を含む導電性ヒドロゲルの提供を目的とする。上記のように、この可溶化剤は、該官能性モノマーおよび他のモノマー残基の重合性を高めることを可能とする。幾つかの局面において、該可溶化剤は、上記のような困難を伴わずに、より高い可溶性開始剤濃度を与える。その他の局面では、この可溶化剤は、該ヒドロゲルの臭気を減じるための錯化剤として機能でき、および/またはこの可溶化剤は、疎水性成分(例えば、脂質、ビタミン類、酸化防止剤、薬物、香料、および他の皮膚手当て成分)の担体として機能して、該成分をこのヒドロゲルに均一に可溶化するのを助け、結果的にこれらの性質を有利なものとすることができる。
本発明における可溶化剤の添加またはその配合の唯一の機能が、より高い開始剤の可溶化レベルを達成し、あるいはその達成を可能とすることにあり、結果としてこの開始剤は疎水性開始剤に制限される。というのは、親水性開始剤は、一般的に本発明の意図した開始剤の量で、同一の結果を与えないからである。疎水性開始剤の使用への限定は、一種の開始剤のみが存在する場合に適用される。該ヒドロゲル中に一種を越える開始剤が存在する場合には、また可溶化剤の添加または配合の唯一の機能が、より高い開始剤の可溶化レベルを達成し、あるいはその達成を可能とすることにあり、結果として該開始剤の少なくとも1種が、特定のプリカーサにおける溶解度限界の問題を持つ開始剤であるはずである。しかし、親水性または疎水性開始剤の何れかを、可溶化剤が別の目的で(例えば、錯化剤または他の疎水性成分の担体として)または該ヒドロゲルプリカーサ中の開始剤の溶解度限界を変更または高める目的で配合されている場合に、使用することができる。
【0016】
該官能性モノマーと関連して、該ヒドロゲルは、任意の適当なモノマーから製造できるものとする。本発明の少なくとも一つの局面において、このヒドロゲルは、水の存在下でのフリーラジカル重合によって製造できる。このヒドロゲル生成は、開始剤および多官能性架橋剤を用いて、UV-硬化することによって開始することができる。ただ一つの開始剤のみが必要とされるが、該ヒドロゲルプリカーサは、1またはそれ以上の第二の開始剤を含むことができる。これら開始剤は、光開始剤または化学開始剤、例えば熱または還元/酸化(レドックス)反応によって活性化されるものであり得る。
【0017】
本発明では、任意の適当なモノマーの使用を意図するが、例示としての官能性モノマーは、N-ビニルピロリドン(NVP)、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、メタクリル酸(MA)またはその塩、スチレンスルホン酸(SSA)またはその塩、カリウムスルホプロピルアクリレート(KPSA)、ジメチルアクリルアミド(DMA)、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)またはその四級塩誘導体、アクリルアミノメチルプロパンスルホン酸(AMPS) またはその塩、および上記モノマーの任意の組合せを含む。望ましくは、本発明のヒドロゲルは、様々な群のモノマーから製造することができ、該モノマーは、アクリレート、ビニル、アミド、エステル等を含み、これらは電気的に中性、カチオン性、またはアニオン性であり得る。官能性モノマーの組合わせも、所定の物理的、化学的、機械的および電気的特性の達成を可能とする。従来のヒドロゲルと比較して、本発明の(例えば)アクリレートヒドロゲルは、より効率的にかつより満足に、これらが適用される対象の皮膚表面を水和し、その結果より効率的にかつより満足に、該皮膚表面の電気的抵抗を低下し、電気的刺激の際の熱の発生を低下し、かつ火傷の発生率を低下する。更に、本発明のヒドロゲルは、より効果的に皮膚の毛近傍を湿潤し、結果的により満足な、対象の皮膚との接触をもたらし、これは、徐細動等の手順における有効性を高め、しかも皮膚表面の加熱および火傷の発生を抑え、また一般に使用に先立つ皮膚表面の調整を必要としない。更に、本発明のヒドロゲルは、自己保存性であり、また滅菌の目的で放射線に暴露した際に、分解に対して抵抗性である。
【0018】
一般に、本発明のヒドロゲルプリカーサの一局面は、約10〜約80質量%なる範囲のモノマー、より望ましくは約40〜約75質量%なる範囲のモノマー、およびより一層望ましくは約50〜約75質量%なる範囲のモノマーを含む。
本発明者等が、市場で入手できることを見出している、具体的なカチオン性のアクリレートは、CPSケミカル社(Chemical Co.)(ニュージャージー州)またはアライドコロイド(Allied Colloid)社(U.K.)から容易に入手できる、塩化アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム;同様にCPSケミカル社またはアライドコロイド社から入手できる、メチル硫酸アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム;およびシュトックハウゼン(Stockhausen)社(ドイツ)から入手できる、塩化アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムである。これら例示したアクリレートを使用して、ヒドロゲルを製造する所定の方法を、以下に詳細に説明する。
【0019】
本発明に適したカチオン性アクリレートヒドロゲルは、その色において幾分透明であり、粘稠であり、また粘着性の手触りを持つ。該ヒドロゲルは、対象の皮膚に対して十分に接着性であり、しかも該対象の皮膚および該ゲル自体から容易に分離できる程に、十分な凝集性を持つ傾向にある。上記のように、本発明に適した該ヒドロゲルは、水の存在下で、望ましくは少なくとも1種の疎水性開始剤、多官能性架橋剤、および可溶化剤(例えば、シクロデキストリン等)と共にUV-硬化することにより、水溶性モノマーのその場でのフリーラジカル重合により製造できる。例えば、適当なアクリレートモノマー、水、場合により追加の導体(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウムまたはその他の塩)、疎水性開始剤または触媒(例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェノールケトン等)、多官能性架橋剤(例えば、メチレンビスアクリルアミド等)、および可溶化剤(例えば、シクロデキストリン等)を併合し、金型内に配置し、適当量のUV-放射線に暴露する。
【0020】
本発明において使用できるコモノマーの例は、水溶性のコモノマーであり、より望ましくはアニオン性コモノマーを包含する。使用すべきコモノマーの量は、使用する試薬の量を基準として、約5〜約50質量%なる範囲、望ましくは約10〜約30質量%なる範囲であり得る。適当なコモノマーの例は、不飽和有機カルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、およびシトラコン酸およびその塩、不飽和有機スルホン酸、例えばスチレンスルホン酸、メタアリルスルホン酸、2-スルホエチルアクリレート、2-スルホエチルメタクリレート、3-スルホプロピルアクリレート、3-スルホプロピルメタクリレート、アクリルアミド-メチルプロパンスルホン酸およびその塩、N,N-ジメチルアクリルアミド、酢酸ビニル、炭素-炭素二重結合を含む他のラジカル重合性イオン性モノマー、およびN-ビニルラクタムモノマー単位と共に有用な非-N-ビニルラクタムコモノマー、例えばN-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-バレロラクタム、N-ビニル-2-カプロラクタム、およびこれらの混合物を含む。上に例示したイオン性モノマーとして、特に望ましいものは、3-スルホプロピルアクリレートまたはメタクリレート、およびその塩から選択される。かかる塩の生成に関与するカチオンの例は、ナトリウム、カリウム、リチウムおよびアンモニウムイオンである。イオン性モノマーは、単独で、または2種またはそれ以上のモノマーの混合物として使用することができる。
【0021】
任意の適当な可溶化剤またはその組合わせの使用を意図する。ヒドロゲルプリカーサ中に含まれる、特定の可溶化剤および/またはその使用量の妥当性は、該ヒドロゲルプリカーサを製造するために選択される、他の成分およびその量によって変動し、あるいはこれらに部分的に依存する。例示としての可溶化剤は、シクロデキストリン、シクロデキストリン誘導体、およびヒドロトロープを含むが、これらに限定されない。本発明の少なくとも一つの局面において機能することが知られている、具体的な例としてのシクロデキストリン誘導体の可溶化剤は、ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリン(HP-CD)(MN州、ミネトンカの、カーギルダウ(Cargill Dow)社から入手できる)、γ-シクロデキストリン(γ-CD)(MI州、アドリアンの、ワッカーバイオケム社(Wacker Biochem Corporation)から入手できる)および他の重合性のシクロデキストリン誘導体、例えばメタクリロイルシクロデキストリンを包含する。
特定の開始剤を選択した場合、幾つかの可溶化剤が、他のものよりもより一層望ましい可能性がある。このことは、可溶化剤が、該ヒドロゲルプリカーサの約20質量%までの明確な量で存在でき、またより望ましくは該ヒドロゲルプリカーサの約0.5%〜約5質量%なる範囲の量で存在し得ることを意図している。
【0022】
本発明のヒドロゲルは、pHの制御、変色の防止、および/または長期に渡る水の存在による分解(即ち、加水分解)の防止を補助するために、バッファー系を含むことができる。本発明のヒドロゲルと共に、バッファー系を使用することは、変色無しに、工業的に適した保存寿命(即ち、1年を越える保存寿命)を持つヒドロゲルを製造するために望ましい。適当なバッファーは、酒石酸ナトリウムカリウム、および/または一塩基性リン酸ナトリウムを含むが、これらに限定されず、これら両者は、WI州、ミルウォーキーの、アルドリッチケミカル社(Aldrich Chemical Co., Inc.)から市販品として容易に入手できる。
更に、バッファーの使用は、またヒドロゲル電極対を通して電流が流された際の、pH変化および/またはシフトの防止を援助することによって、対象の電気化学的な火傷の発生の防止を助ける。典型的には、従来の系では、ヒドロゲル電極対を通して電流が流された際に、一方の電極がより酸性となり(即ち、そのpHが減少し)、また他方の電極がより塩基性となる(即ち、そのpHが増大する)。このpHシフトの問題は、長期間に渡り(例えば、1時間以上)、例えば患者の心臓の調整を行う手順中に、このような電極を通して電流が流された際には、特に顕著なものとなる。本発明において示唆するように、バッファー系の望ましい使用は、電流が該電極に流された際の、このようなpH変化に対する安全装置として機能し、結果として電気化学的な火傷を起こすこと無しに、長期間(例えば、24時間以上)に渡る、本発明のヒドロゲルで作成した電極の使用を可能とする。
【0023】
従って、生成するポリマーを安定化し、該ヒドロゲルの加水分解を回避し、また該ヒドロゲルを介する直流電流の通電によるpHシフトを回避するために、バッファーを含めることが望ましい。バッファーは、金属導体の腐食を減じもしくは防止するのに役立ちまたそれ自体導電性増強剤でもある。幾つかのバッファーは、該ヒドロゲルの望ましからぬ黄変を防止する。本発明のヒドロゲルは、そのpHを、約3〜約8なる範囲、およびより望ましくは約4〜約6なる範囲に維持するために、十分なバッファーを含むことができるが、該pHは、所望の通りに調節することができる。本発明の殆どの局面において、バッファーは、該ヒドロゲルプリカーサ中に、その質量を基準として、約10質量%までの量、およびより望ましくは約0〜約5質量%なる範囲の量で存在し得る。
また、バッファーは、導電性増強剤でもあり得るが、ここに記載する該バッファーおよび導電性増強剤の量は、相互に独立である。即ち、特定のヒドロゲルプリカーサが、1質量%の導電性増強剤および1質量%のバッファーを含むものとした場合、同様に導電性増強剤でもあり得る該バッファーは、一般的には、含まれる増強剤として計算することはできない。
【0024】
本発明は、また導電性増強剤、医薬、保湿剤、可塑剤、皮膚手当て剤等の他の添加剤の配合をも意図する。これらの他の添加剤は、硬化段階の前またはその後に配合することができる。このような添加剤の妥当性は、一般的に特定のヒドロゲルの意図した最終用途に依存する。
上に示唆したような、任意の適当な添加剤またはその組合わせの使用を意図する。特定の添加剤および/または含まれるその量は、該ヒドロゲルを製造するために選択された、他の成分およびその量により変動し、あるいは部分的にこれらに依存するものであり得る。皮膚手当て剤および/または皮膚手当て成分の例は、ビタミン類(例えば、B、D、E、Eアセテート等)、酸化防止剤、キトサン、アロエベラ、ヒアルロン酸(HA)、ヘパリン、コンドロイチン硫酸、デキストラン硫酸、およびコラーゲンIVを含むが、これらに限定されない。更に別の添加物の例は、抗-炎症性薬剤、酸化防止剤、審美性付与剤(例えば、該ヒドロゲルの外観を変えるための着色染料)、または芳香剤を含むが、これらに限定されない。
【0025】
上記のように、任意の適当な導電性増強剤の使用を意図している。特定の増強剤および/または該ヒドロゲルに配合するその量は、該ヒドロゲルを製造するために選択された、他の成分およびその量によって変動し、あるいは部分的にこれらに依存するものであり得る。例示としての導電性増強剤は、塩化カリウム、塩化ナトリウム、硫酸カリウム等の塩を含むが、これらに限定されない。これらの塩は、ヒトの身体を電気伝導のために使用する限りにおいて望ましい。適当なものであり得る塩の追加の例は、塩化リチウム、過塩素酸リチウム、塩化アンモニウム、塩化カルシウム、および/または塩化マグネシウムである。その他の塩化物塩、ヨウ化物塩、臭化物塩および/またはハライド塩も適したものであり得る。
他の塩、例えば弱有機酸またはポリマー電解質の塩も、望ましいものであり得る。これらの塩はヒトの身体および本発明のヒドロゲルの化学的特性に対して相溶性であり、また望ましい塩化物塩が、該ヒドロゲルと医療装置とをインターフェースするのに使用する、アルミニウムおよび/またはステンレススチール金属部品を妨害(即ち、腐食)する恐れがある場合に、導電性増強剤として使用することができる。適当なものであり得る塩の例は、クエン酸ナトリウムまたは酢酸マグネシウムを包含する。
【0026】
導電性増強剤の使用は随意であるが、本発明のヒドロゲルにおける導電性増強剤の使用量は、ゼロから該ヒドロゲルの導電性を高める量までの範囲内にあり、またより望ましくは導電性増強剤は、該ヒドロゲルプリカーサの約0〜約15質量%なる範囲、およびより望ましくは該ヒドロゲルプリカーサの約5質量%未満の量で存在する。
導電性増強剤の添加は、本発明のヒドロゲルが、水中でイオン的に解離、即ち導電性の高分子電解質であったとしても、望ましいものであり得る。使用に際しては、より低い特定の量の高分子電解質(およびその結果として、対応するより低い粘度を持つヒドロゲル)が、該ヒドロゲルが、胸部の毛近傍を湿潤する必要がある場合等の状況において、望ましいものであり得る。このような場合には、導電性増強剤の添加は、有用であり得る。
【0027】
しかし、ヒドロゲルまたはヒドロゲルプリカーサへの、導電性増強剤の添加は、一般的に導電性増強剤を添加してないヒドロゲルに比して、良好な導電性を与えるものと考えられているが、添加された導電性増強剤を含まない本発明の少なくとも幾つかの局面では、導電性増強剤を含むヒドロゲルと比較して、使用に際して良好な導電性をもつことが分かっている。例えば、幾つかの例において、塩は、そのイオン性のために本来的に導電性であるが、反対に望ましからぬ作用、例えば相分離を生じおよび/または幾つかの処方物の低い導電性に寄与する可能性のある、「塩析」作用を引起こす可能性がある。このことは、特にヒドロゲルに長い保存寿命を付与する場合に見られる。
本明細書に示すように、バッファーおよび/または該随意の高分子電解質添加剤(例えば、HA、コンドロイチン硫酸、リン脂質等)の一種またはそれ以上は、導電性増強を示すことができるが、これらのバッファーおよび/または高分子電解質添加剤は、本発明のヒドロゲルにおける、導電性増強剤の量を決定する際に加算されない。というのは、該バッファーおよび/または高分子電解質添加剤は該ゲル内におよび該ゲルと皮膚との間に連続する通路を形成しないからである。
【0028】
上記のように、開始剤は、ここに記載する該ヒドロゲルプリカーサの重合の際に使用する。使用可能な開始剤の例は、イルガキュア(登録商標)184(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)、イルガキュア(登録商標)2959(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)ケトン)、およびイルガキュア(登録商標)1173(α-ヒドロキシ-α,α-ジメチルアセトフェノン)を含み、これらは全てチバスペシャルティーケミカルズ社から、市販品として入手できる。これらのUV開始剤は、これらが黄変を起こさないことから、望ましいものである。本発明のヒドロゲルの、所定のウォーターホワイト(water-white)およびウォータークリア(water-clear)状の外観を維持できる、他の開始剤も、望ましいものであり得る。適当な開始剤(光開始剤または熱的開始剤であり得る)の追加の例は、ベンゾイルパーオキシド、アゾビスイソブチロニトリル、ジ-t-ブチルパーオキシド、ブロミル(bromyl)パーオキシド、クミルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、イソプロピル過炭酸塩、メチルエチルケトンパーオキシド、シクロヘキサンパーオキシド、ブチルヒドロパーオキシド、ジ-t-アミルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、t-ブチルパーベンゾエート、ベンゾインアルキルエーテル類(例えば、ベンゾイン、ベンゾインイソプロピルエーテル、およびベンゾインイソブチルエーテル)、ベンゾフェノン類(例えば、ベンゾフェノンおよびメチル-o-ベンゾイルベンゾエート)、アセトフェノン類(例えば、アセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、p-t-ブチルトリクロロアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、およびp-ジメチルアミノアセトフェノン)、チオキサントン類(例えば、キサントン、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、および2-イソプロピルチオキサントン)、ベンジル2-エチルアンスラキノン、メチルベンゾイルホルメート、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-4'-イソプロピル-2-メチルプロピオフェノン、α-ヒドロキシケトン、テトラメチルチウラムモノスルフィド、アリルジアゾニウム塩、およびカンファーキノンとエチル4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンゾエートとの組み合わせを含むことができる。他の適当な開始剤は、例えばBerner等の「光開始剤-その一概説(Photo Initiators…An overview)」J. Radiation Curing (4月, 1979), pp.2-9に見出される。
【0029】
一種の開始剤のみが必須であるが、本発明のヒドロゲルは、1またはそれ以上の第二の開始剤を含むことができる。この1またはそれ以上の第二の開始剤は、光開始剤または熱的開始剤であり得る。
一種の開始剤のみが存在する場合、その量は、望ましくは該ヒドロゲルプリカーサの約0.01〜約5質量%なる範囲、より望ましくは該ヒドロゲルプリカーサの約0.05〜約2質量%なる範囲、およびより一層望ましくは該ヒドロゲルプリカーサの約0.1〜約0.5質量%なる範囲である。1またはそれ以上の第二の開始剤が存在する場合、これらの量は、望ましくは該ヒドロゲルプリカーサの約0.01〜約5質量%なる範囲、より望ましくは該ヒドロゲルプリカーサの約0.05〜約2質量%なる範囲、およびより一層望ましくは該ヒドロゲルプリカーサの約0.1〜約0.5質量%なる範囲である。しかし、複数の開始剤が存在する場合には、一般的には、該複数の開始剤の併合量が、該ヒドロゲルプリカーサの約5質量%以下、およびより望ましくは該ヒドロゲルプリカーサの約0.02〜約5質量%なる範囲にあることが望ましい。
【0030】
所定のポリマー特性を得るためのUV硬化パラメータは、当業者にとっては周知である。本発明の目的にとって、光開始剤は、UVの特定波長の光を吸収して、モノマーの重合を誘発する、ラジカル開始腫を生成することにより作用する傾向にある。これらの波長および硬化領域は、この硬化工程において使用されるUV電球の型を設定する。溶解した酸素、モノマー阻害剤、または他のラジカル捕獲成分による重合阻害は、出力の変更、パルス化、および/または開始剤用促進剤の使用により克服することができる。
各光開始剤は、UV光の特定の狭い波長範囲に対して応答するものであることを理解するであろう。本発明の少なくとも一つの局面は、この特性を利用しており、またヒドロゲルプリカーサ中に、2種またはそれ以上の光開始剤を配合する。ヒドロゲルプリカーサへの1種を越える光開始剤の添加は、広い範囲に及ぶ、UV光源により発せられる光エネルギーまたは波長の使用を可能とする。更に、複数の開始剤の使用は、溶解度限界に係る問題および関連する相溶性に係る問題を軽減することを可能とする。というのは、ヒドロゲルプリカーサ中に存在する2種の開始剤を用いることにより、同一の全体としての開始剤濃度にて、これら開始剤の何れかを単独で使用した場合に比して、より効果的な重合の達成が可能となるからである。
可溶化剤の使用は、溶解度に係る問題を軽減するためであるが、同様に、各々所定の重合を達成するには不十分であるような濃度で存在し得る、複数の開始剤の配合が、ヒドロゲルプリカーサにおけるその溶解度限界のために、以前はその使用が完全に排除されていた、付随的な開始剤の使用をも可能とするものと考えられる。
【0031】
開始剤の相乗効果は、如何なる開始剤であろうとも、一種の光開始剤を配合した、従来のヒドロゲルにおいて、以前は全く確認もしくは説明されていない。更に、異なる開始速度を持つ開始剤の配合、および/または相互に異なる時点においてモノマーの重合を開始し始める(これは、例えば複数の開始剤(例えば、熱的に活性化される化学的開始剤(TACI)および光開始剤によって経験できる事象))開始剤の配合は、より高い重合の収率達成に寄与するものと考えられる。即ち、例えば2種の光開始剤を配合した場合、その一方は、より低UV波長による開始を行うことができ、またより高UV波長またはその範囲によって促進される他方の開始剤よりも、一層高エネルギー的(より高速での開始および反応をもたらす)であり得る。該より迅速な開始剤は、また他方の開始剤よりも迅速に消滅または消耗し得る。様々な速度で、および/または一種の開始剤を用い、あるいは特定のヒドロゲルに対して適した開始剤を用いて達成することができない、混成速度で重合を生じさせることも有利であり得る。同時に促進されまたは活性化されることの無い開始剤の例は、本発明において見出すことができ、ここで光開始剤およびTACIはヒドロゲルプリカーサ内にあり、また該光開始剤は、UV源によって開始され、該プリカーサ中のモノマーと反応して、熱を発生し、該TACIを開始させる。
開始剤の多数の組合わせおよび変更が可能であるが、複数の開始剤の組合わせは、より好ましい速度論をもたらし、該モノマーおよび/または他のモノマー残基のより広範な重合の高い可能性を与える。
【0032】
勿論、望ましい場合には、または必要ならば、同様に複数の開始剤を、高い溶解度レベルにて存在させることも可能である。何れの例においても、複数の開始剤の配合は、より完全に重合されたヒドロゲルを与えることができる。
本発明が更に見出したことは、複数の開始剤による重合の利益を享受するために、TACIを配合できることである。TACIを開始させるためには、幾分かの熱が必要とされるので、一般にTACIは、これを開始させるのに十分な量の熱が、該ヒドロゲルプリカーサ中に存在するか、あるいはそこにおいて発生する場合においてのみ配合されるであろう。光開始剤によって誘発されるラジカル重合反応は、発熱反応であって、UVへの暴露に応答して熱を発生することが知られているので、本発明の少なくとも一つの局面は、ヒドロゲルプリカーサ中にTACIを配合する。ここで、該光開始剤は、同様に、光開始剤によって誘発される該ラジカル重合反応において発生する熱の、該TACIによる利用を可能とするために存在する。同様に、複数の光開始剤が存在する場合に、TACIを配合できるものとする。複数の光開始剤の存在は、上で論じた複数の開始剤の可能な利点を与え、更にまた一種の光開始剤によって発生した熱が、(含まれる該光開始剤およびTACIに依存して)該TACIの開始にとって不十分であるか、あるいはこれを完全に開始できる場合に、該TACIの開始をもたらし、これにより該TACIは、更にヒドロゲルプリカーサ中の、該官能性モノマーおよび他のモノマー残基の重合を促進または完結することができる。複数のTACIの使用も意図している。
【0033】
従来技術の文献または臨床的実験の何処にも、ヒドロゲルプリカーサのより完全な重合を達成し、結果的により安定な、悪臭を殆ど発しない、および/または皮膚刺激性の低いヒドロゲルの生成に導くための、1またはそれ以上の光開始剤およびTACIの組合せの使用に関する報告またはそのような知見は見られない。
同様に上述したように、本発明のヒドロゲルを架橋するために、架橋剤を使用することが望ましい。使用できる多官能性の架橋剤の例は、例えばメチレンビスアクリルアミドおよびジエチレングリコールジアクリレートを含み、これらは両者共にPa州、ワーリントンの、ポリサイエンスズ社(Polysciences, Inc.)から市販品として入手できる。本発明における使用が許される架橋剤の追加の例は、ポリ(エチレングリコール) ジアクリレート、トリエチレングリコールビスメタクリレート、エチレングリコールビスメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ビスアクリルアミド、トリエチレングリコールビスアクリレート、3,3'-エチリデンビス(N-ビニル-2-ピロリドン)、トリメチロールプロパントリメタクリレート、グリセロールトリメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、および他の多官能性ポリアクリレートおよびポリメタクリレート架橋剤を含む。
架橋剤の量は、望ましくは該ヒドロゲルプリカーサの約0.01〜約2質量%なる範囲、およびより望ましくは該ヒドロゲルプリカーサの約0.05〜約0.5質量%なる範囲内にある。
【実施例】
【0034】
次に、本発明のヒドロゲルの具体的、典型的な態様を説明する。幾つかの典型的な処方を、以下に与える。コントロールとして与えた処方1を除き、処方2-6の各々は、本発明の少なくとも一つの局面に関連する。これら処方の各々において、出発物質を、以下に与えられた順序で混合し、ヒュージョンシステム600WコンティニュアスUVランプ(Fusion Systems 600 Watt Continuous UV Lamp)の照射下に置いた。
UV硬化装置およびプロセスパラメータ:F600S UVランプ装置(Ultra-violet Lamp System)(MA州、ウォバーンのヒュージョンUVシステム社(Fusion UV Systems, Inc.)を、線量約5.084 J/cm2にて使用した。
処方1(コントロール)
48.64%のDI水;47.13%のモノマー(N,N-ジメチルアミノエチルアクリレートアンモニウムDMS(エージフレックス(AGEFLEXTM) FA1Q80DMSなる商品名で、チバスペシャルティーケミカルズ社から入手できる);0.1%の光開始剤(イルガキュア(登録商標) 184);0.09%の架橋剤(メチレンビスアクリルアミド(アルドリッチ社から入手できる);2.11%の電解質(硫酸アルミニウムカリウム);1.5%のバッファー(水酸化ナトリウム);0.43%のDMSO
【0035】
処方2
33%のDI水;63.8%のモノマー(エージフレックスFA1Q80DMS);0.1%の光開始剤(イルガキュア184);0.1%の光開始剤(イルガキュア(登録商標)2959);0.2%の架橋剤(ポリ(エチレングリコール)-400-ジアクリレート(PEG 400 DA));1%の電解質(硫酸カリウム);0.8%のバッファー(水酸化ナトリウム);1%の可溶化剤(ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリン)
処方3
35.78%のDI水;60.91%のモノマー(エージフレックスFA1Q80DMS);0.1%の光開始剤(イルガキュア184);0.1%の光開始剤(イルガキュア(登録商標)2959);0.1%の化学開始剤(メタ重亜硫酸ナトリウム);0.2%の架橋剤(PEG 400 DA);1%の可溶化剤(ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリン);1%の電解質(硫酸カリウム);0.8%のバッファー(水酸化ナトリウム);0.01%の着色用添加剤(FD&Cグリーン(Green) #3)
処方4
31.79%のDI水;65%のモノマー(エージフレックスFA1Q80DMS);0.1%の光開始剤(イルガキュア184); 0.1%の架橋剤(メチレンビスアクリルアミド); 1%の電解質(硫酸カリウム);0.8%のバッファー(水酸化ナトリウム);0.2%のアロエベラゲル;0.01%の着色用添加剤(FD&Cブルー(Blue) #1);1%の可溶化剤(ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリン)
【0036】
処方5
34.6%のDI水;62%のモノマー(エージフレックスFA1Q80DMS);0.1%の光開始剤(イルガキュア184);0.1%の光開始剤(イルガキュア2959);0.2%の架橋剤(PEG 400 DA);1%の可溶化剤(ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリン); 1%の電解質(硫酸カリウム);0.8%のバッファー(水酸化ナトリウム);0.2%のアロエベラゲル
処方6
35.49%のDI水;61%のモノマー(エージフレックスFA1Q80DMS);0.1%の光開始剤(イルガキュア184);0.1%の第二の開始剤(イルガキュア2959);0.1%の化学開始剤(メタ重亜硫酸ナトリウム);0.2%の架橋剤(PEG 400 DA);1%の可溶化剤(ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリン); 1%の電解質(硫酸カリウム);0.8%のバッファー(水酸化ナトリウム);0.2%のアロエベラゲル;0.01%の着色用添加剤(FD&Cグリーン(Green) #3)
【0037】
これらヒドロゲル各々の製造後、該ヒドロゲルを、1) 四級アクリルモノマー、2) アクリル酸、および3) メチルアクリレートの残留量に付きテストした。残留四級アクリルモノマー、残留アクリル酸、および残留メチルアクリレートの量各々を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によってテストした。
HPLC法:エージフレックス四級モノマー
約1gの上記ヒドロゲルを、マイクロ波抽出ライナーに配置した。IPA 10mlを添加した。該ライナーを、マイクロ波抽出容器に配置し、該マイクロ波オーブンに入れた。この抽出は、以下の条件下で行った:
抽出条件:装置:CEM MARSXマイクロ波1200W抽出装置;出力:100%;溶媒:IPA;ランプ(Ramp):10分;保持時間:5分/サンプル;温度:80℃
抽出の完了後、エージフレックス四級モノマーのHPLC分析を、以下の条件下で行った:装置:HP 110クァターナリー(Quaternary) HPLC;カラム:スペルコソル(Supelcosol) LC-SCX (4.6×250mm) Cat# 5-8997;移動層:62%アセトニトリル/38%の0.14M蟻酸アンモニウム;流量:1.0ml/分;検出器:アジレント1100シリーズ(Agilent 1100 Series) G1315A DAD, 210 nm,20 Ref=350nm,90;注入体積:2μl;溶出時間:7.9分
【0038】
HPLC法:アクリル酸およびメチルアクリレート
約0.1gのモノマーを、正確に10.0mlのメスフラスコに図り取った。イソプロピルアルコール(IPA)を、このフラスコに添加した後に、溶解のために超音波浴に入れた。溶解させた後、このフラスコの内容物を、IPAで所定体積とした。この可溶化したモノマーのアリコートを、0.45μmのPFTEメンブランフィルタを通して濾過し、HPLC用サンプルを作成した。
アクリル酸(アルドリッチ#14,723-0, 99%)の標準原液をIPAを用いて、950μg/mlなる濃度にて調製した。0.1、0.5、2.0および5.0mlの4種のアリコートを、該標準原液から採取し、4つの10.0mlメスフラスコに移し、濃度10〜480μg/mlの作業用の標準液を調製した。
メチルアクリレート(アルドリッチM2,730-1, 99%)の標準原液をIPAを用いて、730μg/mlなる濃度にて調製した。0.5、1.0、3.0および6.0mlの4種のアリコートを、該標準原液から採取し、4つの10.0mlメスフラスコに移し、濃度36〜440μg/mlの作業用の標準液を調製した。
アクリル酸およびメチルアクリレートに関するHPLC分析を、以下の条件下で行った:装置:HP 110クァターナリー(Quaternary) HPLC;カラム:フェノメネックスシネルジ(Phenomenex Synergi) 4μポーラー(Polar)-RP 80A(4.6×75mm);移動層:0.1%蟻酸/エタノール/メタノール(96/3/1);流量:1.5ml/分;検出器:HP 1100ダイオードアレイ(Diode Array), 波長210 nm,4 Ref=350nm,90;注入体積:2μl;溶出時間:1.3分(アクリル酸);3.6分(メチルアクリレート)
これらテストの結果を、以下の表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
表1から理解されるように、処方2-6に示したプリカーサ処方物から製造したヒドロゲルは、モノマー残渣における全体的な減少を明らかにしている。最も顕著な点は、該ヒドロゲルにおける残留アクリル酸の割合(%)の著しい減少である。幾つかの例においては、残留四級モノマーおよび/または残留メチルアクリレートの割合(%)における減少も見られる。残留四級モノマーおよび/または残留メチルアクリレートの割合(%)における減少は僅かであるか、あるいは幾つかの例においてはこの減少は見られないが、モノマー残渣における全体的な減少は、顕著である。
アクリル酸は皮膚刺激性であり、また刺激臭を発することが知られているが、本発明の得られたヒドロゲルは、殆ど悪臭を発せず、また皮膚に対する刺激も殆ど無いことが理解されよう。
更に、本発明は、それ自体、有機溶媒としてジメチルスルホキシド(DMSO)を配合した従来のヒドロゲルとは区別されることに注目すべきである。DMSOは、対象の皮膚を透過する優れた媒介物であり、また該対象の皮膚に水を搬送し、良好な電気伝導路を与え得るものと考えられていたが、刺激性の残留物をも皮膚の内部層に運搬し、結果として発疹またはその他の望ましからぬ身体の反応を引起こす可能性がある。
【0041】
本発明のヒドロゲルは、徐細動および心臓調整の高い電圧および電流に耐えることができる。本発明のヒドロゲルは、医療用のエレクトロニクスデバイス、例えば記録または監視(例えば、心電図、脳波図、または筋電図)用に使用する検知電極;対象を刺激するのに使用する(例えば、経皮電気的神経刺激、創傷の治癒、筋肉の刺激(例えば、物理的治療)、外部調整、徐細動用の)刺激電極;電気外科および/または分離接地(ablation grounding)電極;および電気伝達電極(例えば、薬物の対象内へのイオン導入または電気泳動用の)において使用するのに適している。
従来のこの種のデバイスに係る一つの問題は、使用するヒドロゲルが、アルミニウムまたはステンレススチールとの化学的相溶性を持たないことであり(該ヒドロゲルは、接触状態にあるこのような金属を腐食した)、あるいは該ヒドロゲルが該金属を腐食しない場合には、アッソシエーションフォーザアドバンスメントオブメディカルインスツルメンテーション(Association for the Advancement of Medical Instrumentation; AAMI)によって開発され、アメリカンナショナルスタンダーズインスティチュート(American National Institute)によって受容れられた、生体適合性および電気的特性に関する、標準テストに合格しなかったことである。従って、従来の許容されたヒドロゲルデバイスは、スズ電極または他の金属の電極を使用した。しかし、アルミニウム電極の使用が望ましい。というのは、このような電極が放射線透過性であり、従ってこのような電極を含む対象の放射線アッセイを妨害せず、一方スズまたは他の金属で作られた電極は、このようなアッセイを妨害するからである。本発明は、塩化物を含まず、従って該ヒドロゲルと接するアルミニウムまたはステンレススチール電極に対して化学的に相溶性のヒドロゲル群をも提示する。
【0042】
まとめると、本発明のヒドロゲルプリカーサが、従来のヒドロゲルに比して、臭気および皮膚刺激性の減じられたヒドロゲルを与えることを見出した。これらの新規な処方物は、長期間に渡り、該ヒドロゲルまたはこれを組込んだデバイス(例えば、電極)の使用を可能とし、しかも皮膚刺激性および/または悪臭に係る問題を排除し、またはこれら問題を軽減する。望ましくは、本発明の処方物は、少なくとも一つの以下に列挙するものを与え、あるいはこれらを意図する:より効率的な重合法、UV-活性化開始剤(光開始剤)および/または熱-活性化開始剤を含む、相乗的な開始剤系(または該系の少なくとも1種が相乗的な効果を持つ)、重合溶液の均質性を改善するための、可溶化剤を含む重合用のモノマー溶液、揮発性化合物の揮発性を減じる錯化剤、および望ましからぬ成分に対して皮膚を保護できる、皮膚手当て成分。
【0043】
本発明のヒドロゲルにおける、モノマーおよび/またはモノマー残基の高いまたはより完全な重合と関連する、皮膚刺激性および/または悪臭発生特性の低下に係る発見を説明するために、様々なメカニズムを本明細書に提示してきたが、この皮膚刺激および/または悪臭軽減法の正確な理由付けおよび/またはメカニズムは、完全には明らかにされていないことに注意すべきである。例えば、該ヒドロゲルの加水分解の役割および/または副生成物の製造が、ある役割を演じているものと考えられる。製造業者から受け取ったモノマー中の残留物の存在およびこのようなモノマー残留物の関与するその後の反応は、付随的に重要な関連因子であると考えられる。皮膚刺激性および/または悪臭軽減の正確な原因は完全には明らかになっていないが、それにも拘らず、本発明の係る劇的な発見の価値を何等減じるものではなく、換言すれば、ヒドロゲルモノマーの揮発性分子の高い重合率および/またはその様相(complexion)は、このヒドロゲルにおける悪臭発生特性および皮膚-毒性を劇的に軽減する。
また、上記の具体的な例は、本発明の特定の望ましい態様を示すものであるが、これら例における特定の成分と、ここに記載された材料および当分野において公知の材料との置換は、本発明の範囲を逸脱すること無しに行うことができることに注意すべきである。従って、本発明の様々な局面を提示し、説明してきたが、本発明の範囲を逸脱すること無しに、様々な改良を行うことができ、本発明は、このような改良並びに等価なもの全てをカバーするものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノマーと、開始剤と、架橋剤と可溶化剤とを含むことを特徴とする、導電性ヒドロゲル用組成物。
【請求項2】
更に、第二の開始剤を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
該第一および第二の開始剤が、化学開始剤または光開始剤である、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
該開始剤の少なくとも一方が、熱的に活性化される化学開始剤である、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
該熱的に活性化される化学開始剤が、ジスルフィドを主成分とする開始剤、過酸化物を主成分とする開始剤、および過硫酸塩を主成分とする開始剤からなる群から選択される、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
更に、皮膚手入れ剤を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
イオン性モノマーと、第一の開始剤と、可溶化剤と、架橋剤とを含み、該可溶化剤が、シクロデキストリン及びシクロデキストリン誘導体からなる群から選択されることを特徴とする、導電性ヒドロゲル用組成物。
【請求項8】
モノマーと、第一の開始剤と、可溶化剤と、架橋剤とを含む組成物から製造される、導電性で接着性のヒドロゲルを含むことを特徴とする電極。
【請求項9】
該開始剤が、該組成物に対して、約0.01〜約2質量%の量で含まれる、請求項1、2、7または8記載の組成物または電極。
【請求項10】
該架橋剤が、該組成物に対して、約0.01〜約2質量%の量で含まれる、請求項1、2、7または8記載の組成物または電極。
【請求項11】
該可溶化剤が、より高い濃度の開始剤を該組成物中に可溶化することを可能とし、結果として該組成物が、該可溶化剤を含まない同様の組成物よりも、高い重合能力を持つ、請求項1、7または8記載の組成物または電極。
【請求項12】
該可溶化剤を含まない同様なヒドロゲルの、残留モノマー化合物濃度よりも低い濃度で、残留モノマー化合物が、該ヒドロゲル中に存在する、請求項1、7または8記載の組成物または電極。
【請求項13】
該可溶化剤が、シクロデキストリン、シクロデキストリン誘導体、およびヒドロトロープからなる群から選択される、請求項1、7または8記載の組成物または電極。
【請求項14】
該可溶化剤が、ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、およびメタクリロイルシクロデキストリンからなる群から選択される、請求項13記載の組成物または電極。
【請求項15】
該可溶化剤が、該組成物に対して、約20質量%未満の量で含まれる、請求項1、7または8記載の組成物または電極。
【請求項16】
更に、導電性増強剤を含む、請求項1、7または8記載の組成物。
【請求項17】
更に、バッファーを含む、請求項1、7または8記載の組成物。
【請求項18】
該モノマーが、該組成物に対して、約10〜約80質量%の量で含まれる、請求項1、7または8記載の組成物または電極。
【請求項19】
該モノマーが、該組成物に対して、約40〜約75質量%の量で含まれる、請求項1、7または8記載の組成物または電極。
【請求項20】
該導電性増強剤が、該組成物に対して、約5質量%未満の量で含まれる、請求項16記載の組成物。
【請求項21】
該モノマーが、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレートアンモニウムDMS、ジエチルアミノエチルメタクリレート、アクリルアミノメチルプロパンスルホン酸およびこれらの塩からなる群から選択される、請求項1、7または8記載の組成物または電極。
【請求項22】
該開始剤の少なくとも1種が、疎水性開始剤である、請求項1、7または8記載の組成物または電極。
【請求項23】
該導電性増強剤が電解質である、請求項16記載の組成物。

【公表番号】特表2007−521385(P2007−521385A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−545324(P2006−545324)
【出願日】平成16年9月8日(2004.9.8)
【国際出願番号】PCT/US2004/029258
【国際公開番号】WO2005/061017
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(504460441)キンバリー クラーク ワールドワイド インコーポレイテッド (396)
【Fターム(参考)】