説明

可視光応答型酸化チタン光触媒とその製造方法および用途

【課題】可視光によって高い光触媒作用を発現できる可視光応答型酸化チタン光触媒を提供する。
【解決手段】酸性チタン化合物を含窒素塩基で中和させて得た酸化チタンおよび/または水酸化チタンを、加水分解性金属化合物(例、ハロゲン化チタン)を含む雰囲気で熱処理した後、さらに水分量0.5〜4.0vol%のガス中で350℃以上の温度で熱処理して、窒素を含有する酸化チタン光触媒を製造する。この酸化チタンの昇温脱離ガス分析による質量数mとイオンの電荷数eの比m/eが28のマスフラグメントスペクトル図は、600℃以上に実質的ピークを有さず、かつ半値幅が最も小さいピークが400〜600℃の範囲にある。また、XPS測定によるN1s殻結合エネルギースペクトル図で400eV±1.0eVに現れるピークから算出される窒素量が、化学分析による窒素量の20倍以上大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外光のみならず、可視光の照射によっても高い光触媒作用を発揮しうる、高活性の可視光応答型酸化チタン光触媒とその製造方法、ならびにこの光触媒を利用した可視光応答型光触媒機能部材、分散液およびコーティング液に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、室内空間や弱光下での適用を目的に、紫外光だけでなく可視光によっても光触媒作用を示す酸化チタン光触媒の開発が進められている。可視光応答性を示す酸化チタン光触媒には、金属イオンドープ型、酸素欠陥型、窒素(窒素化合物)ドープ型などが知られている。
【0003】
窒素(窒素化合物)ドープ型については、Chem. Phys. Lett. 123, 126 (1986)及びApp. Cat. A: General, 284, 131 (2005)に、湿式法で調製した水酸化チタンを焼成すると酸化チタンにNOがドープされ、可視光応答型の光触媒になることが報告されている。また、特開2001−205103号公報には、乾式法で作成したTi−N結合を有する可視光応答型の酸化チタン光触媒が開示されている。一方、特開2004−75528号公報には、熱天秤質量分析同時測定法により求められるマスフラグメントスペクトル図について、m/e=28である成分の脱離ピークが600℃以上であることを特徴とする酸化チタン光触媒が報告されている。
【非特許文献1】Chem. Phys. Lett. 123, 126 (1986)
【非特許文献2】App. Cat. A: General, 284, 131 (2005)
【特許文献3】特開2001−205103号公報
【特許文献4】特開2004−75528号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
窒素や酸化窒素をドープする方法は、酸化チタンに可視光活性を付与する方法として有効であるが、酸化チタン中の窒素の含有量、存在状態などが最適化されていないため、十分な可視光活性を有する酸化チタン光触媒を確実に得ることはできなかった。
【0005】
本発明の課題は、可視光によって高い光触媒作用を発現できる酸化チタン光触媒と、量産に適したその製造方法、その光触媒を基材表面に設けた機能部材及びコーティング液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、可視光活性を高めるために、酸化チタン中の窒素の存在状態、含有量の最適化を検討した結果、昇温脱離ガス分析(thermal desorption spectroscopy, TDS)により質量数mとイオンの電荷数eとの比、m/eを28に設定して室温〜800℃の温度範囲で測定したマスフラグメントスペクトル図において、半値幅が300℃以下である実質的なピークを600℃より高温には有しておらず、かつ半値幅が最も小さいピークが400℃から600℃の温度範囲にあると、可視光触媒活性の高い可視光応答型酸化チタン光触媒となることを見出した。
【0007】
好適態様においては、この半値幅が最も小さいピークは、半値幅が100℃以下のシャープなピークであり、より好ましくはこの半値幅が最も小さいピークが最も高温に位置するピークである。それにより一層高い可視光触媒活性を発現することができる。
【0008】
昇温脱離ガス分析は、真空容器内で試料を加熱して昇温させ、昇温中に試料から発生するガス成分を質量分析計で検出する分析法である。質量分析計での検出方式により、特定質量数のスペクトルのみを測定するマスフラグメントスペクトル(マスクロマトグラムともいう)と、すべての質量数について測定するスキャンスペクトルのいずれかのスペクトル図を得ることができる。
【0009】
昇温脱離ガス分析により測定されたm/e=28のマスフラグメントスペクトル図で現れるピークの源は窒素分子(N)である。即ち、このピークは窒素分子の脱離により現れる。この窒素分子は、酸化チタン表面に吸着した空気中の窒素ではなく、酸化チタンの構造中に含まれた窒素化合物の脱離によるものと見られる。窒素化合物としては、窒素、酸化窒素、アンモニアなどが挙げられる。
【0010】
本発明における昇温脱離ガス分析は、真空度10−6torr以下、昇温速度10℃/分以下の条件で行う。言うまでもないが、昇温脱離ガス分析により得られたマスフラグメントスペクトル図におけるピークとは脱離ピーク(脱離成分により生ずるピーク)である。昇温脱離ガス分析の測定温度は室温から800℃までとする。800℃を超えると、ノイズが多くなる場合があるからである。
【0011】
m/e=28のマスフラグメントスペクトル図において600℃より高温に現れる半値幅が300℃を超えるようなブロードなピークは、ベースラインの乱れなどが原因で生ずるピークであり、触媒に関わる実質的なピークではない。そのため、本発明においては、このようなピークは考慮せずに、実質的なピーク(即ち、半値幅が300℃以下のピーク)が600℃より高温には存在しないことを要件の1つとする。
【0012】
光触媒の窒素量(触媒全体の窒素量、化学分析により求められる)は、0.1wt%以下が好ましい。光触媒の窒素量がこれ以上になると、光触媒活性が低下し、また光触媒の着色が強くなるので、製品とする場合の色の調整が難しくなる。
【0013】
本発明の酸化チタン光触媒の構造については、現状ではまだ不明な点があるが、昇温脱離ガス分析により得られるm/e=28のマスフラグメントスペクトル図に示される脱離挙動は、触媒中に含まれる窒素の存在状態(脱離挙動)を反映したものである。このマスフラグメントスペクトル図において本発明で規定するピークを有することが高活性を示すためには必須である。
【0014】
本発明における可視光応答型光触媒とは、410nm以上の光を吸収し、その光によって、程度の差はあっても少なくとも測定可能な光触媒作用を発現することができる触媒である。これは、一般的な紫外線応答型の酸化チタン光触媒(たとえば石原産業製ST−01等)とは異なるものである。
【0015】
本発明の酸化チタン光触媒は、酸化チタンおよびその前駆体から選ばれた原料を、加水分解性金属化合物(例、加水分解性チタン化合物)を含む雰囲気で熱処理した後、熱処理された材料を水分量が0.5〜4.0vol%の範囲のガス中で350℃以上の温度でさらに熱処理する方法により製造することができる。
【0016】
この方法に使用する好ましい原料は、四塩化チタン、硫酸チタンなどの酸性チタン化合物の水溶液をアンモニアなどの含窒素塩基で、反応終了時の反応液のpHが7以下となる条件で中和することを含む方法により得られた酸化チタンおよび/または水酸化チタン(含水酸化チタンも含む)である。この中和については、中和反応終了後の反応液を20℃で72時間放置して熟成させた時の熟成前後のpH低下が0.5以内となるように行うことが好ましい。
【0017】
上記方法で製造された可視光応答型の酸化チタン光触媒について、XPS(X線光電子分光法)により窒素に関係するスペクトルを調査したところ、N1s殻結合エネルギースペクトル図において400eV±1.0eVの範囲に現れるピークに基づいて算出される窒素量が大きく、この窒素量が化学分析から求められる窒素量の20倍以上であるという特徴を示すことがわかった。
【0018】
すなわち、本発明の可視光応答型酸化チタン光触媒は、昇温脱離ガス分析を行わなくても、XPS測定によるN1s殻結合エネルギースペクトル図を求め、そのスペクトル図の400eV±1.0eVの範囲に現れるピークに基づいて窒素量を算出し、算出された窒素量が化学分析から算出される窒素量の20倍以上であることを確認することによっても、同定することができる。もちろん、両方の方法で本発明の酸化チタン光触媒の同定を行うことも可能である。
【0019】
XPS測定は表面分析法の1種であって、物質の最表面に近い部位が分析される。一方、化学分析値は物質全体の平均値である。従って、XPSスペクトル図に基づいて算出される窒素量が化学分析から算出される窒素量の20倍以上であるということは、窒素が表面に濃化され、局在化していることを意味する。
【0020】
XPS測定はレーザースパッタリングにより表面を除去しながら行うことがある。その場合は、スパッタリング前に測定されたXPSスペクトル図の上記ピークに基づいて窒素量を算出し、化学分析から算出される窒素量と比較する。化学分析値は質量分析法でも求めることができるが、本発明では後述するケルダール法などの化学分析法により求めた値とする。一般に、XPS測定で求めた元素含有量はat%で表示されるのに対し、化学分析ではwt%で組成が求められるので、比較する前に窒素含有量の単位を同じ単位に揃える必要がある。
【0021】
本発明の可視光応答型酸化チタン光触媒は、XPS測定によるN1s殻結合エネルギースペクトルにおいて400eV±1eVの範囲にのみ明確なピークを有する。このピークは、公知文献〔App. Cat. A: General, 284, 131 (2005)〕で指摘されているように、酸化状態にある窒素、すなわちNOに由来するものである。一方、本発明の酸化チタン光触媒にはTi−N結合とされる396〜397eVの範囲にピークはない。
【0022】
本発明に係る可視光応答型の酸化チタン光触媒の製造方法は上記方法に制限されるものではない。前述した昇温脱離ガス分析においてm/e=28のマスフラグメントスペクトル図が本発明で規定する要件を満たすか、あるいはXPS測定から上記のように求めた窒素量とし、好ましくはさらには化学分析で求めた窒素量が本発明の要件を満たす酸化チタンを生成することができれば、他の製造方法を採用することもできる。
【0023】
本発明の酸化チタン光触媒は、粉末状、被膜状(薄膜を含む)、液状、繊維状など様々な形態で利用できる。特に、この光触媒を基材表面に付着させて固定化したものは、可視光活性を有する光触媒機能部材として利用することができる。
【0024】
好ましい光触媒機能部材は、バインダー成分中に上記酸化チタン光触媒を含有する被膜を基材表面に有し、被膜中の酸化チタン光触媒の含有量が5〜95質量%の範囲内であるものである。
【0025】
本発明は、またこのような機能部材を製造するのに利用できる光触媒分散液ならびにコーティング液も提供する。
本発明の可視光応答型の光触媒機能部材は、前記コーティング液を、金属板その他の基材表面に塗布することによって製造することができる。別の方法として、酸化チタンおよびその前駆体から選ばれた原料を耐熱性基材の表面に付着させた後、基材を、加水分解性化合物を含む雰囲気で熱処理した後、所定の水分量を有するガス中で350℃以上の温度で熱処理することを特徴とする方法によっても、本発明の可視光応答型の光触媒機能部材を製造することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、可視光の照射により高い光触媒作用を安定して示す、可視光応答型の高活性の酸化チタン光触媒と、この光触媒を利用した光触媒機能部材が提供される。この光触媒および光触媒機能部材は、量産に適した方法で効率よく確実に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明に係る可視光応答型の酸化チタン光触媒は、質量数mとイオンの電荷数eとの比(m/e)を28に設定した昇温脱離ガス分析で得られるマスフラグメントスペクトル図(これは前述のように窒素の脱離挙動を示す)のピーク(脱離ピーク)が特定の挙動を示す。
【0028】
具体的には、m/e=28のマスフラグメントスペクトル図において実質的なピークが600℃より高温には現れず、かつ半値幅が最も小さいピークが400℃から600℃の温度範囲にある。実質的なピークとは、上述した通り、半値幅が300℃以下のピークを意味する。
【0029】
特開2004−75528号公報では、熱天秤質量分析同時測定においてm/e=28の成分のマスクロマトグラムが600℃以上に脱離ピークを有することが要件となっている。このことは、触媒中の窒素の存在状態が、本発明の酸化チタン光触媒とこの特許文献に記載のものとでは全く異なることを意味している。この特許文献に記載されているような、600℃より高温に実質的なピークを有するものに比べて、本発明の酸化チタン光触媒は可視光触媒活性が高くなる。なお、熱天秤質量分析同時測定と昇温脱離ガス分析は、いずれも加熱しながらガス成分の重量分析を行うもので、前者は主にヘリウムなどのキャリアガス下大気圧で、後者は主に真空で、分析が行われる。
【0030】
半値幅が最も小さいピークが400〜600℃の範囲に現れるということは、一つの可能性として窒素が結晶性の高い酸化チタン構造中に取り込まれた状態であることを意味すると考えられ、それにより高い可視光触媒活性が得られる。
【0031】
また、本発明では、400℃から600℃の範囲に位置する半値幅が最も小さいピークの半値幅が100℃以下とシャープであることが非常に好ましい。脱離ピークの半値幅がこのようにシャープであることは、触媒中の窒素或いは窒素化合物が単一性の高い状態で酸化チタン中に存在することを意味する。
【0032】
さらに、この半値幅が最も小さいピークがm/e=28のマスフラグメントスペクトル図において最も高温に位置するピークであることが好ましい。これは、可視光活性に有効な窒素が酸化チタンと強固に結合していることを示す。
【0033】
この窒素分子の脱離挙動は、窒素原子に相当するm/e=14の脱離ピークについても当てはまる。即ち、m/e=14のマスフラグメントスペクトル図でも、600℃より高温に実質的なピーク(半値幅が300℃以下のピーク)を有さず、かつ半値幅が最も小さいピークが400℃から600℃の範囲にあり、好ましくはこの半値幅が最も小さいピークの半値幅が100℃以下であって、さらに好ましくはこの半値幅の低いピークが最も高温に位置すると、可視光触媒活性の高い酸化チタン光触媒となる。しかし、m/e=14のマスフラグメントスペクトル図は、m/e=28の場合に比べてピーク強度が低く、評価がより困難になるので、本発明ではm/e=28のマスフラグメントスペクトル図で評価する。
【0034】
昇温脱離ガス分析で得られるスペクトルにおいて、複数のピークが重なることがある。この場合は市販のソフトなどを用いて適宜ピーク分離してからピーク情報(ピーク温度、半値幅など)を得ることが好ましい。
【0035】
本発明の可視光応答型光触媒は、XPS分析においても特異な結果を与える。すなわち、XPS測定によるN1s殻結合エネルギースペクトル図において400eV±1.0eVの範囲に現れるピークに基づいて算出される窒素量が非常に大きく、この窒素量を化学分析から算出される窒素量と比べた場合に、20倍以上になるという特徴を示す。前述したように、この特徴は、本発明の酸化チタン光触媒では窒素が表面に濃化して偏在していることを意味する。
【0036】
このXPSスペクトル図において、本発明の可視光応答型酸化チタン光触媒は、400eV±1eVの範囲にのみ明確なピークを有する。このピークは、NO(酸化状態にある窒素)に由来するものである。一方、本発明の酸化チタン光触媒の上記XPSスペクトル図では、Ti−N結合とされる396〜397eVの範囲にピークはない。このことから、本発明の光触媒中の窒素は、Tiと置換した状態やTiO2の格子間位置に存在するなど、Ti−N結合ではなくN−O結合として主に存在すると推測される。
【0037】
このXPS分析結果を昇温脱離ガス分析結果と合わせて考えると、酸化チタン中のNは限定された比較的単一の化学結合状態で、かつ酸化チタンの表面近傍に濃化されて存在していると推測される。
【0038】
本開発の酸化チタン光触媒は、前述した昇温脱離ガス分析およびXPS測定でのスペクトル図に関する説明から明らかなように、酸化チタン中に窒素を含有する触媒である。XPS測定で求めた窒素含有量は、前述したように表面に近い部位での含有量である。光触媒全体の触媒の窒素含有量は、化学分析により求められる。本発明において、化学分析により求めた窒素量とは、一般的な窒素分析法であるケルダール法などの化学分析法により定量された窒素量を意味する。ケルダール法とは窒素含有試料を分解促進剤の存在下で酸により分解して、その分解物にアルカリを加えて生じたアンモニアを蒸留して捕捉し、その量を滴定により測定して、アンモニア量から窒素量を算出する方法である。なお窒素の定量は全窒素を溶出、抽出できる化学分析方法であるならば限定されない。
【0039】
光触媒中の窒素含有量(窒素の化学分析値)は0.1wt%以下が好ましい。窒素含有量が0.1wt%を上回ると、可視光触媒活性が低下する。窒素が増えると光触媒の可視光域での吸収強度は高くなるが、それ自体が再結合中心となり、電荷分離の効率が低下するためであると考えられる。光触媒中の窒素含有量は、より好ましくは0.05wt%以下である。0.05wt%以下では触媒の着色も適正で、高い可視光活性が得られる。窒素含有量の下限は特に制限されないが、好ましくは0.001wt%以上である。
【0040】
酸化チタン光触媒への窒素の導入は、例えば、酸化チタンの製造過程において、酸性チタン化合物の中和に含窒素塩基を使用して原料を調製する方法、熱処理を窒素ガス雰囲気中で行う方法、それらの組み合わせなどが可能である。m/e=28のマスフラグメントスペクトル図が本発明に従ったピークを示すか、および/またはXPS測定でのN1s殻結合エネルギースペクトル図から求めた窒素量が本発明で規定する条件を満たす酸化チタンが得られる限り、窒素の導入(ドープ)方法は制限されない。但し、これまでの知見によると、中和に含窒素塩基を使用して原料中に窒素を導入する方法が特に有効である。
【0041】
本発明の酸化チタン光触媒の結晶学的構造は結晶質でも非晶質でのいずれでもよく、またその両方が混在したものでもよい。光触媒が結晶質酸化チタンを含む場合、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型があるが、いずれでもよく、またそれらが混在したものであってもよい。また、酸化チタンは酸素欠陥を有するものであってもよい。最も高い可視光触媒活性を得るには、酸化チタンが結晶質であって、その構造がアナターゼ型および/またはルチル型であることが有利であり、アナターゼ型であることがより有利である。
【0042】
本発明の酸化チタン光触媒は、原料となる酸化チタンまたはその前駆体を熱処理するか、あるいは化学蒸着や湿式合成などによっても製造することができる。中でも、酸化チタンまたはその前駆体からなる原料を熱処理する方法が好ましい。
【0043】
ここで、原料の酸化チタンは、合成した酸化チタン、市販の酸化チタンを含め各種の酸化チタンを包含し、特に限定されない。酸化チタンの前駆体とは、熱処理により、主構造が酸化チタンに変化するチタン化合物を意味する。このような前駆体は、水酸化チタン、含水酸化チタン、ならびに各種の加水分解性のチタン化合物を包含する。加水分解性チタン化合物の具体例としては、チタンオキシクロライドや塩化チタンといった塩素化チタン化合物、チタンアルコキシドおよびその部分加水分解物などが挙げられる。なお、水酸化チタンと含水酸化チタンとの境界は不明確であるので、本発明において「水酸化チタン」とは含水酸化チタンも包含するものとする。
【0044】
原料が酸化チタンまたは水酸化チタンである場合、その形態は非晶質でも結晶質のいずれでもよく、これらが混合したものでもよい。原料として特に好ましいのは、硫酸チタニル、硫酸チタン、四塩化チタンといった1種または2種以上の酸性チタン化合物の水溶液(少量の有機溶媒、特に水混和性有機溶媒を含有していてもよい)を、アンモニアまたはアミンといった含窒素塩基により中和する方法で得られた水酸化チタン、酸化チタンまたはその両者(以下、これらをまとめて(水)酸化チタンと表記する)である。通常は、中和により水酸化チタンが沈殿するので、中和終了後に沈殿を分離し、乾燥することによって、原料として用いる(水)酸化チタンを得ることができる。
【0045】
この(水)酸化チタンは、中和に用いた含窒素化合物がそのまま、或いはイオン状態や別の反応物、例えば、チタン酸アンモニウムとして、取り込まれていてもよく、通常はそのようになる。それにより、熱処理後に窒素を含有する酸化チタンが得られる。中和時のpHは、酸性、中性、アルカリ性のいずれでも良い。しかし、アルカリ性になるまで中和を進めると、得られた原料中の窒素濃度が過大になり、熱処理後に得られた触媒にも窒素が多く含まれるようになる。そのため、熱処理条件をコントロールして窒素量を適正値に持ってくる必要があり、熱処理の操業が煩雑になり、製造効率が低下する。一方、中和反応の終点をpH7以下とすると、得られる(水)酸化チタンに含まれる窒素量も適正で、通常の熱処理で高活性な可視光応答型光触媒を得ることができるので好ましい。中和反応の終点のpHは、より好ましくは3.5〜7である。
【0046】
本発明で用いる原料は、中和反応終了後、反応液を20℃で72時間放置して熟成させた時の熟成前後のpHの低下が0.5以内であるように、中和反応を行わせて得た(水)酸化チタンであることが好ましい。中和が不完全であると、中和反応後に反応液を放置して熟成させると、未反応の酸性加水分解性チタン化合物が加水分解して、反応液のpHが低下する。従って、このpH低下の大きさは中和反応の完全度の指標となる。このpH低下が大きい、中和が不完全な反応液から得られた(水)酸化チタンの原料を用いても可視光活性が十分に高い光触媒は得られないことが多い。そのため、中和終了後の反応液を20℃で72時間熟成した時のpH変化が0.5以内に収まるように十分に加水分解させてある原料を使用することが好ましく、それにより高活性な可視光触媒をより確実に得ることができる。
【0047】
なお、本発明の酸化チタン光触媒の実際の製造工程では、この中和反応後の放置(20℃で72時間)による熟成は必要ない。この熟成は、単に中和の完全度を評価するものである。最初に中和条件を設定し、その中和条件で得られた反応液について、72時間またはそれより長い熟成を行って、熟成前後のpH低下が0.5以内であることを確認した後は、同じ条件で中和を実施すればよい。
【0048】
原料の酸化チタンまたはその前駆体は、加水分解性金属化合物を含む雰囲気中で熱処理する。以下では、この熱処理を第一段の熱処理とも言う。この熱処理により、雰囲気中の加水分解性金属化合物が原料の酸化チタンまたは水酸化チタン表面と反応し、それに結合する。第一段の熱処理後、場合により水との接触処理を行って表面の加水分解性化合物を加水分解させた後、水分量0.5〜4.0vol%の範囲のガス中で350℃以上の温度で第二段の熱処理を行うことにより、可視光照射により高い光触媒活性を示す、上記の脱離ピークの条件を満たした本発明の酸化チタン光触媒が得られる。
【0049】
第一段の熱処理において雰囲気中に含有させる加水分解性金属化合物としては、四塩化チタン、三塩化チタン、チタンオキシクロライドなどのチタン塩化物、硫酸チタン、硫酸チタニル、フッ化チタンなどの他のチタン塩、チタンブトキシド、チタンイソプロキシドなどのチタンアルコキシドといった加水分解性チタン化合物を利用することが好ましい。しかし、SnCl4,SiCl4,BiCl4などのチタン以外の元素のハロゲン化物や他の加水分解性金属化合物も使用できる。第一段の熱処理温度において十分な量が蒸発するような蒸気圧を示す加水分解性化合物を使用することが好ましい。
【0050】
第一段の熱処理における加熱温度は50〜600℃の広い範囲から選択することができる。より好ましい温度範囲は100〜400℃である。第一段の熱処理の温度が低すぎると、原料と加水分解性金属化合物との反応が十分に起こらず、熱処理温度が高すぎると、酸化チタンが過度に還元され、光触媒活性が低下することがある。
【0051】
加水分解性金属化合物を含有させる雰囲気は特に制限されない。例えば、水素、アルゴン、窒素、一酸化炭素、アンモニア、酸素、水蒸気、酸化窒素、二酸化窒素、空気、水蒸気等の1種または2種以上とすることができる。即ち、酸化性、還元性、不活性のいずれの雰囲気でもよい。コスト面からは空気(大気)雰囲気で十分である。雰囲気中の加水分解性金属化合物の含有率は、雰囲気温度やその化合物の蒸気圧によって制限されるが、おおむね10vol%以下とすることが好ましい。この含有率の下限も特に制限されるものではないが、含有率が低すぎると、原料表面と反応する加水分解性金属化合物の量が少なくなるので、好ましくは0.1vol%以上、より好ましくは0.5vol%以上である。
【0052】
第一段の熱処理後、所望により、第一段の熱処理を施した原料を水と接触させてもよい。それにより、表面に反応・結合した加水分解性金属化合物(例、ハロゲン化物)が加水分解して、ハロゲン基がOH基に転化される。この接触処理は、水中に原料を浸漬して、静置または攪拌することにより実施することができる。あるいは、水の散布といった別の方法でもよい。使用する水は、純水でもよいが、アンモニアなどの含窒素塩基を含有させてもよい。この時の処理温度は室温で十分であるが、加温下または冷却下で処理を行うことも可能である。また、水蒸気または水を発生する成分を含有する雰囲気中で原料を加熱する方法により、水との接触処理を行うこともできる。水と接触させた場合には、原料を必要に応じて乾燥してから、次の第二段の熱処理を施す。
【0053】
第二段の熱処理の雰囲気は非還元性であればよく、大気雰囲気を含む酸素含有雰囲気、真空、不活性雰囲気のいずれでもよい。還元性雰囲気は可視光触媒活性を低下させる傾向があるので好ましくない。本発明に従った昇温脱離ガス分析のマスフラグメントスペクトル図またはXPSスペクトル図を示す酸化チタン光触媒は、第二段の熱処理雰囲気が窒素を含有していなくても得ることができるが、大気または窒素ガスのように低コストの窒素ガスを含有する雰囲気とするほうが好ましい
本発明ではこの第二段の熱処理を0.5〜4.0vol%の水分を含有するガス雰囲気で350℃以上の温度で行うことが重要である。この範囲外では、得られた光触媒の可視光活性が低下し、高活性な触媒は得られない。その理由は現状では定かでないが、次のように考えられる。第二段の熱処理中に窒素が触媒に取りこまれると考えられ、その際に水が多すぎると、窒素化合物との反応が主となるのに対し、適正な量とすることで窒素が触媒中に残留し、昇温脱離ガス分析のマスフラグメントスペクトル図またはXPS分析のスペクトル図が本発明に従ったものになると考えられる。
【0054】
第二段の熱処理の温度は350℃以上、好ましくは400℃以上であり、上限については600℃以下とすることが好ましい。熱処理温度が350℃より低いと、2段熱処理の効果がほとんどなく、一方、熱処理温度が高すぎると、触媒から窒素が脱離するため、十分な可視光活性が得られない。第二段の好ましい熱処理温度は400〜500℃である。熱処理時間は、温度や原料の種類(前駆体であるか、酸化チタンであるか)にも依存するが、第一段および第二段のいずれについても通常は30分〜6時間の範囲内である。
【0055】
本発明に係る可視光応答型の酸化チタン光触媒は、酸化チタンによる光触媒作用を実質的に受けることがない物質、例えば、シリカ、アルミナ、ゼオライト、不活性なチタニアなど、に担持してもよい。また、反応の効率向上などを目的に、白金、ルテニウム、パラジウムなどの貴金属類、鉄、ニッケルなどのなどの遷移金属類を助触媒としてドープしたり、さらにシリカ、アルミナ、酸化ニオブ、酸化鉄などのセラミック類を共酸化物として加えても良い。すなわち、酸化チタン光触媒とは、このようなドーパントおよび/または共酸化物を含有する酸化チタンからなる光触媒も包含する意味である。
【0056】
光触媒の形状は、粒子状、繊維状、薄膜状などが挙げられ、用途に応じて使い分けるのが好ましい。粒子状の場合、数ナノメートル程度の微粉末から数十ミリメートル程度の造粒体までの粒径が可能であり、その大きさ、形態などは限定されない。薄膜の場合、基材の上に固定することが一般的であるが、その厚みなどは限定されない。薄膜や繊維状など触媒を任意の形に成形する場合は、本発明の酸化チタン光触媒の粒子に加えて、成形助材や結着材(バインダー)などを添加することが望ましい。これらの添加によって、その薄膜の厚みや繊維径を増したり、また膜や繊維の強度、加工性などを上げることが可能である。
【0057】
本発明の酸化チタン光触媒は、これを基材表面に付着させて固定化することにより、光触媒機能部材として利用することができる。固定化の形態は、基材の表面形状や用途などに応じて選択すればよく、特に限定されないが、代表的には被膜(薄膜を含む)である。
【0058】
基材としては、炭素鋼、メッキ鋼、クロメート処理鋼、琺瑯、ステンレス、アルミ、チタン、アルミニウムなどの金属材料、セラミック、ガラス、陶磁器、石英などの無機材料や、プラスチック、樹脂、活性炭などの有機材料など、その材質はいずれでもよい。又、これらが複合した材料、例えば塗装鋼板などであってもよい。ただし、全体又は表面が有機材料の基材を用いるときは、光触媒の酸化力により劣化ないし分解することがあるので、そのような場合には、基材表面を、光触媒で分解しない材料を用いて予め被覆しておくことが好ましい。ただし光量が弱いときは事前の被覆が不要なときもあり、実際の使用環境などに合わせて塗装構成を設計すればよい。
【0059】
基材の形状も特に限定されず、薄板、厚板、繊維状(編織物、不織布を含む)、網状、筒状など、任意の形状でよい。そのまま製品として使用されるような複雑な形状の物体、さらには既設または使用中の物体であってもよい。基材の表面は、多孔質でも、緻密質でもよい。
【0060】
本発明の可視光応答型光触媒機能部材の製造方法については、(1)本発明に係る可視光応答型酸化チタン光触媒の粒子を溶媒中に分散させた分散液またはコーティング液を基材に塗布する方法、または(2)熱処理前の酸化チタンまたはその前駆体を基材に付着させた後、光触媒の製造方法に関して述べたのと同様の2段熱処理を基材表面で行う方法、によって製造することができる。
【0061】
(1)のコーティング液を用いる方法についてまず説明する。コーティング液は、実質的に光触媒と分散媒(媒質)のみからなるものでもよいが、好ましくはバインダーを含有する。
【0062】
本発明の酸化チタン光触媒を単に媒質およびバインダーと十分に混合することによりコーティング液を調製することも可能である。しかし、上述した方法では製造された酸化チタン光触媒は、一般に平均一次粒子系が数nmから百nmと微細であるため、非常に凝集し易く、凝集体となると、その径は数十μmと大きくなり、媒質中に均質に分散させることが困難となる。
【0063】
そのため、本発明の好適態様においては、酸化チタン光触媒の粒子を予め媒質中で十分に分散処理して、光触媒粒子の分散液を調製する。この分散液を利用して、これにバインダーを含有させることによりコーティング液を調製することが好ましい。こうすると、より薄くより均質な光触媒被膜の形成が可能となり、被膜特性や光触媒活性が向上する。
【0064】
分散液中の光触媒の平均粒子径(凝集体の粒子径)は、500nm以下であることが好ましい。この粒子径より大きいと、被膜の粉化や保存安定性が低下する。光触媒の平均粒子径は、より好ましくは300nm以下、さらに一層好ましくは200nm以下である。
【0065】
光触媒粒子を分散させる媒質としては、蒸留水、イオン交換水、超純水などの水;メタノール、エタノール、2−プロパノールなどのアルコール類;メチルエチルケトンなどのケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、などが挙げられる。これらは任意に混合して使用してもよいが、その場合には互いに相溶性の溶媒の組合わせを使用する。
【0066】
分散処理は、光触媒を固形分濃度が数質量%〜30質量%の範囲となるように媒質と混合して行うことが好ましい。固形分濃度がこの範囲外では、分散性が低下することがある。必要に応じて、分散剤や解膠剤を添加してもよい。分散剤としてはカルボニル系、スルホン系などが、解膠割としては塩酸、硫酸などが例示される。また、pH調整のため、塩基や酸を添加してもよい。
【0067】
分散処理は、コーティング液の調製に慣用されているペイントシェーカーを用いて行うこともできるが、例えば、メディアミル、ジェットミル、回転刃を用いた剪断、薄膜旋回、超音波といった、より強力な分散手段により実施することが好ましい。2種以上の分散手段を組合わせて利用してもよい。
【0068】
得られた分散液が凝集した粗大粒子を含んでいる場合、それらを濾過または遠心分離によって除去することが好ましい。粗大粒子は、被膜中で剥離や粉化の起点となり易いからである。分散処理後の分散液に溶媒を加えて、固形分濃度を調整することもできる。
【0069】
この分散液をそのままコーティング液として使用し、基材に塗布することもできる。光触媒が平均粒子径500nm以下の微粒子になると、バインダーがなくても被膜形成が可能となり、実質的に光触媒粒子のみからなる被膜を形成することができる。しかし、そのままでは被膜強度と密着性が低いので、その上にバインダー溶液を塗布して、光触媒の粒子問にバインダーを含浸させてもよい。
【0070】
好ましいコーティング液は、光触媒と媒質に加え、さらにバインダーを含有する。媒質は、上記の分散液に対して述べたものと同様でよいが、バインダーが溶解または乳化するように選択する。上記の酸化チタン光触媒を含有する分散液にバインダーを混合することによってコーティング液を調製すると、光触媒粒子の分散性に優れ、保存安定性が良好で、光触媒活性の高い被膜を形成できるコ−ティング液を得ることができる。
【0071】
バインダーの量は、生成する被膜中の酸化チタン光触媒の含有量が5〜95質量%となるように調整する。光触媒の含有量が5質量%未満の被膜は、可視光照射による光触媒活性をほとんど示さない。この含有量が95質量%を超えると、バインダー成分が少なすぎて成膜性が悪化し、被膜が剥離し易くなる。光触媒の含有量は好ましくは30〜90質量%であり、光触媒活性を十分に得るには50質量%以上であることがより好ましい。
【0072】
バインダー成分としては、シリカ、アルミナ、チタニア、マグネシア、ジルコニアなどの金属酸化物ゾル(被膜中ではゲルになる)、有機シラン化合物、ならびにシリコーン樹脂、フッ素樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂などの有機樹脂が利用できる。ただし、光触媒の酸化力によりバインダー成分の分解が起こるときは、金属酸化物ゾルやシリコーン樹脂なとの難分解性のものを用いることが望ましい。また、光触媒機能部材に強い加工性や高い強度が要求される場合には、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂などの有機樹脂を前記難分解性のバインダー成分に適量添加することによって、要求される特性を確保することができる。
【0073】
好ましいバインダー成分は、シリカ(例、シリカゾル)、有機シラン化合物の加水分解/縮合物、シリコーン樹脂などといったケイ素化合物である。シリカは、ケイ醍エステル(例、エチルシリケート)の加水分解と縮合により生成させたシリカゾル(シリカコロイ ド)でもよい。有機シラン化合物としては、被膜形成性のある加水分解性の有機シラン化合物、例えば、アルコキシシラン類やシランカップリング剤を使用することができる。
【0074】
コーティング液は、上記以外の他の成分を含有していてもよい。そのような他の成分としては、可視光応答型ではない酸化チタン光触媒(例、従来の酸化チタン光触媒)、光触媒が担持粒子である場合の担体が挙げられる。また、着色材(好ましくは無機顔料)などの少量成分も被膜中に含有させうる。
【0075】
コーティング液の塗布は、コーティング液の性状や基材の形状に合わせて、周知の各種方法から選択することができる。塗布後、必要に応じて加熱しながら塗膜を乾燥(場合によりさらに硬化)させる。乾燥(硬化)温度は、コーティング液の組成(溶媒やバインダーの種類)、基材の耐熱温度などに合わせて決めればよい。
【0076】
基材上に形成された光触媒を含有する被膜の厚みは0.5μm以上とすることが好ましい。被膜が0.5μmより薄いと、光触媒の量が少なすぎて、可視光照射による光触媒活性が非常に低くなる。被膜の厚みは、必要とする触媒性能やコストによって適宜選択しうるが、触媒性能の安定性や触媒活性の点から、より好ましくは3μm以上であり、5μm以上とするのが一層好ましい。厚みの上限は特に規定されないが、コストや効果の飽和を考慮すると、30μm以下、好ましくは25μm以下である。
【0077】
光触媒機能部材の上記(2)の方法は、基材表面に予め原料の酸化チタンおよび/またはその前駆体を付着させた後、本発明の光触媒粒子の製造と同様の処理、即ち、加水分解性化合物を含有する雰囲気中での第一段の熱処理、場合により水との接触処理、および350℃以上での第二段の熱処理を順に行う方法である。熱処理を基材表面で行うことから、それに耐える耐熱性の基材(例、金属またはセラミック)を使用する。
【0078】
(2)の方法において、基材表面への酸化チタンおよび/またはその前駆体の付着は、酸化チタンおよび/またはその前駆体からなる原料を含有するコーティング液を調製して、既に述べたのと同様に塗布および乾燥することによって実施できる。次工程で、付着させた原料を熱処理する必要があるので、バインダーは使用しないか、その量を少なくすることが望ましい。
【0079】
好ましい付着方法は、部分加水分解させたチタン化合物(例、チタンアルコキシドの部分加水分解物)またはチタニアゾルを溶媒に溶解させた溶液型のコーティング液を調製し、これを基材表面に塗布して、乾燥後に実質的に酸化チタン前駆体のみからなる被膜を基材表面に形成することである。別の好ましい方法として、酸化チタンまたはその不溶性前駆体の粒子とバインダーのチタニアゾルとから調製したコーティング液を使用すれば、実質的に酸化チタンおよび/またはその前駆体のみからなる被膜が基材表面に形成される。基材表面に酸化チタンおよび/またはその前駆体を付着させる方法は、上記のコーティング法に限られるものではなく、操作が煩雑で高コストになるが、周知のCVD、PVDなどの気相成膜法を利用してもよい。
【0080】
その後、本発明の光触媒の製造方法について説明したのと同様に、加水分解性化合物を含有する雰囲気中での第一段の熱処理、その後の水との接触処理、および最後の第二段の熱処理を基材に対して行うと、基材表面の光触媒原料は、可視光応答型の酸化チタン光触媒になり、本発明の光触媒機能部材が得られる。付着物がバインダーを含有していない場合、あるいは被膜強度が不足する場合には、後からバインダー含有液を塗布して、被膜強度を高めることができる。
【0081】
基材に付着させるのは、原料に対して上記の第一段熱処理だけを行った粒子であってもよい。その場合には、好ましくは水を含む媒質中にこの粒子を分散させ、バインダーを含有させ、または含有させずに、基材に塗布して、この粒子を基材に付着させることが好ましい。それにより、水との接触処理と基材への付着とを同時に行うことができる。その後、第二段の熱処理を基材に対して行い、必要であればバインダーを含浸させると、本発明の光触媒機能部材を製造することができる。
【0082】
以上に説明した本発明の酸化チタン光触媒および光触媒機能部材は、紫外線のみならず、波長400nm以上の可視光だけを照射することによっても、光触媒作用を発現し、様々な有害物質、付着物質などの分解、除去、無害化などに優れた効果を発揮する。
【0083】
実際の使用に際しては、光触媒が分解対象となる物質と接触可能で、同時に光触媒に可視光を照射できる環境下で使用すればよい。光源は、少なくとも400nm以上の可視光を含むものであればよく、例えば、太陽光、蛍光灯、ハロゲンランプ、ブラックライト、キセノンランプ、水銀ランプなどが利用できる。
【0084】
前記有害物質としては、NOx、SOx、フロン、アンモニア、硫化水素などの大気中に含まれるガス;アルデヒド類、アミン類、メルカプタン類、アルコール類、BTX、フェノール類などの有機化合物;トリハロメタン、トリクロロエチレン、フロンなどの有機ハロゲン化合物;除草剤、殺菌剤、殺虫剤などの種々の農薬;蛋白質やアミノ酸などの種々の生物学的酸素要求物質;界面活性剤のほか、シアン化合物、硫黄化合物などの無機化合物、種々の重金属イオン、さらには細菌、放線菌、菌類、藻類、ウイルスなどの生物が挙げられる。これらの物質は、水中に存在するものであってもよい。付着物質は、光触媒または光触媒機能部材の表面に直接付着したものを意味し、大腸菌、ブドウ球菌、緑膿菌、カビなどの菌類、油、タバコのヤニ、指紋、雨筋、泥などが例示される。
【0085】
また、本発明の可視光応答型酸化チタン光触媒は、光の照射によって超親水性を呈する。本発明の光触媒を表面に有する機能部材では、超親水化作用によって防曇性、防汚性、防塵性などが得られる。
【実施例】
【0086】
以下の実施例は、本発明を例示するものであって、本発明をいかなる意味でも制限するものではない。
[実際例1]
[酸化チタン光触媒の合成]
TiCl4の水溶液(Ti金属濃度で9.3%)に、室温で攪拌しながら、アンモニア水(14%)をpHが4.2になるまで滴下して中和した。その後、中和反応液を20±3℃に1週間(168時間)放置して熟成させた。熟成終了後のpHは4.0であり、熟成前後のpH低下は0.2であった。その後、沈殿物をろ紙(5B)を用いて濾取し、水洗した後、80℃で真空乾燥して、原料となる(水)酸化チタンの粉末を得た。
【0087】
こうして得た原料粉末200gをキルン式熱処理装置に入れ、系内を窒素置換した後、350℃まで昇温した。次いで、加水分解性金属化合物としてTiCl4を2.0vol%含有する水素ガスを装置に導入し、原料粉末に20分間接触させながら第一段の熱処理を行った。その後、系内を再び窒素ガスに置換し、室温まで徐冷した。
【0088】
取り出した粉末を室温で蒸留水中に入れ攪拌しながらよく洗浄した。固形物をろ過し、ろ液が中性になるまで同様の洗浄を繰り返した。得られた固形物を80℃で乾燥して乾燥粉末を得た。
【0089】
水と接触処理させた乾燥粉末をキルン式熱処理装置に入れ、約2.0vol%(誤差±0.5%以内)の水分を含む大気雰囲気中450℃で2時間の熱処理を行い、酸化チタン光触媒を作製した。この光触媒の窒素含有量は、ケルダール法(硫酸で分解し、水蒸気蒸留によってアンモニアガスを取り出し、それをホウ酸溶液に吸収させて、スルファミン酸で中和滴定することにより窒素含有量を定量)により分析したところ、約0.008wt%であった。
【0090】
[昇温脱離ガス分析]
昇温脱離ガス分析(TDS)は、宇部興産社製高精度昇温脱離ガス分析装置(EMD−WA1000S型)を用いて行った。測定は、石英製の試料ポートに入れた試料を、真空(≦10−6Torr)下、10℃/分の速度で昇温しながら行った。実施例1で作成した酸化チタン光触媒についてこの方法で測定することにより作製された、m/e=28での温度800℃までのマスフラグメントスペクトル図を図1に示す。
【0091】
[光触媒活性の測定(アセトアルデヒドの分解試験)]
試料(0.3g)を40mm角の皿に置き、この皿を石英製反応セルに入れ、反応セルを閉鎖循環ラインに接続し(合計内体積約3.8L)、酸素を20vol%含む窒素ガスで希釈したアセトアルデヒド(約240ppm)を系内に導入した。ガスを循環させながら500Wキセノン灯から、紫外線カットフィルター(東芝製L42)を通して光照射を行った。反応の追跡は、アセトアルデヒドが分解して生成する二酸化炭素(CO)の濃度を、循環ラインに接続した自動ガスクロマトグラフで経時的に測定することによって行った。光触媒性能は二酸化炭素の生成速度から評価した。結果を表1にまとめた。
【0092】
[比較例1]
市販の一般的な可視光応答型酸化チタン光触媒について、実施例1と同様の方法でTDS分析と光触媒活性の測定を行った。TDSの結果(m/e=28でのマスフラグメントスペクトル図)を図2に、光触媒活性の結果を表1に示す。この光触媒の窒素含有量は約0.05wt%であった。
【0093】
【表1】

【0094】
実施例1の酸化チタンのTDS測定により得られたm/e=28のマスフラグメントスペクトル図には、600℃より高温にピークはなく、半値幅が最も小さいピークは400〜600℃の範囲にあり、さらにそのピークの半値幅は約40℃であった。また、このピーク以外にピークがなく(従って、これが最も高温のピークであり)、酸化チタン中の窒素の存在状態が実質的に均一であることが示唆される。
【0095】
一方、比較例1の酸化チタンは、上記マスフラグメントスペクトル図において600℃より高温にピークはなかったが、半値幅が最も小さいピークが370℃にあり、本発明で規定する要件を満たしていなかった。
【0096】
光触媒活性を見ると、実施例1の酸化チタン光触媒のCO2生成速度は、比較例の酸化チタン光触媒のそれより1.5倍近く高い。このことから、昇温脱離ガス分析におけるマスフラグメントスペクトル図において本発明に規定する要件を満たすことによって高い光触媒活性が得られることがわかる。
【0097】
[実際例2]
第二段の熱処理雰囲気を窒素雰囲気とし、その水分量を変えること以外、実施例1と同様の方法で酸化チタン光触媒を調製し、光源を500W水銀灯にすること以外同様の方法で、光触媒活性を測定した。結果を図3にまとめた。水分量が0.5〜4.0vol%の範囲のガス雰囲気中で熱処理すると、高い可視光光触媒活性を有する酸化チタンが得られることが分かる。
【0098】
[比較例2]
実施例2において第二段熱処理の雰囲気の水分量が5%であった試料のTDSスペクトルを図4に示す。この酸化チタンは、m/e=28のマスフラグメントスペクトル図において最も半値幅の小さいピークが約360℃にあり、本発明で規定する要件を満たしていなかった。水分量が5%以上であると、図3に示すように可視光触媒活性が低くなるが、その理由はこのマスフラグメントスペクトル図により示される窒素の存在形態の変化であると考えられる。
【0099】
[実施例3]
本例は、本発明の光触媒機能部材の製造を例示する。
メディアミルを用いて、実施例1で作製した酸化チタン光触媒20部を180部の蒸留水中で直径0.1mmのジルコニアビーズと一緒に分散処理し、固形分10%の光触媒分散液を作製した。この分散液中の酸化チタン光触媒の粒度を堀場製作所製粒度測定器(LA700)を用いて測定したところ、約65nmであった。分散処理前の光触媒粒子の平均粒径は約35μmであった。
【0100】
この光触媒分散液100部に、硝酸を用いて部分的に加水分解させたメチルトリエトキシシラン含有水溶液40部(SiO換算で固形分20質量%)、シリコーン樹脂5部、エタノール50部、および微量のシリコーン系界面活性剤を加え、ペイントシェーカを用いて60分間よく混合して、コーティング液を作製した。このコーティング液に含まれる酸化チタン光触媒の含有量は、コーティング液中の不揮発成分の合計量に対して43.4%であった。
【0101】
このコーティング液を以下のように塗装鋼板に塗布することによって光触媒塗布鋼板を製造した。まず、塗装鋼板(厚み0.3mm、ポリエステル系塗装)に市販のシリコーン樹脂を主成分とするプライマー層を厚み0.6μmで形成した。このプライマー層の上に、本発明のコーティング液をバーコータを用いて塗布し、200℃で1分間乾燥して、基材の塗装鋼板の上に本発明の酸化チタン光触媒を含んだ被膜を有する光触媒機能鋼板を得た。被膜の厚みは約2.5μmであった。
【0102】
この光触媒機能鋼板の試料を用いて、実施例1に記載したのと同様の方法(但し、40mm角の試料を使用)でアセトアルデヒドの分解を行った。その結果、CO生成速度は0.08ppm/分であった。
【0103】
[比較例3]
酸化チタン光触媒粉末として、従来の酸化チタン光触媒粉末(紫外線タイプ、具体的には石原産業株式会社製ST01)を用い、実施例3と同様に光触媒分散液、コーティング液、および光触媒機能鋼板の作製を行った。
【0104】
この光触媒機能鋼板を用いて、実施例3と同様に可視光照射下でのアセトアルデヒド分解試験を行った。アセトアルデヒド分解試験におけるCOの生成速度は0.01ppm/分未満であった。
【0105】
[実際例4]
実施例1で作製した、化学分析で窒素0.008wt%を含有する酸化チタン光触媒について、XPS測定を行った。
【0106】
[XPSの測定]
XPS測定は、アルバック・ファイ社製の走査型X線光電子分光分析器(PHI Quantum 2000型)を用いて行った。測定条件は次の通りであった:
使用X線源:モノAlKα線(44.8W、17kV)、
取出し角:45°、
X線ビーム径:約200μm、
中和銃:1.0V、20mA(Ar+低速イオン銃を併用)、
エネルギー分解能:純AgのAg3d 5/2ピーク(368.1eV)の半値幅が約0.75eVとなる条件、
真空度:約2.0×10-8torr、
Arスパッタリング:有(10秒間)または無。
【0107】
得られたスパッタリング前のN−1s内殻準位のXPSスペクトル図を図5に示す。XPSスペクトル図に基づいて算出された窒素含有量は、スパッタリング前および後でそれぞれ1.7at%および1.4at%であった。
【0108】
[比較例4]
第一段の熱処理とその後の水との接触処理を行わなかった点を除いて、実施例1と同じ方法で比較用の酸化チタン光触媒を調製した。すなわち、実施例1で原料粉末として調製された(水)酸化チタンの粉末を、約2.0vol%(誤差±0.5%以内)の水分を含む大気雰囲気中450℃で2時間の熱処理を行って、酸化チタン光触媒を得た。この酸化チタン光触媒の窒素含有量を実施例1と同様の化学分析により求めたところ、0.007wt%であった。
【0109】
得られた酸化チタン光触媒の昇温脱離ガス分析によるm/e=28でのマスフラグメントスペクトル図では、600℃より高温にピークはなかったが、半値幅が最も小さいピークが380℃にあり、本発明の要件を満たしていなかった。
【0110】
この比較用の酸化チタン光触媒で得られたスパッタリング前のN−1s内殻準位のXPSスペクトル図を図5に一緒に示す。XPSスペクトル図に基づいて算出された窒素含有量は、スパッタリング前および後のいずれも0.5at%であった。
【0111】
図5に示すように、本発明の酸化チタン光触媒(実施例4)では、400eV±1.0eV付近にピークが現れた。一方、比較例4の酸化チタン光触媒でも、ほぼ同じ位置にピークが認められたが、本発明の光触媒に比べてピーク強度は小さかった。いずれの光触媒も、400eV±1.0eV付近のピーク以外にはピークは観測されなかった。本発明の酸化チタン光触媒では、スパッタリング後にもこのピークは確認されたが、比較例4の酸化チタン光触媒ではスパッタリング後にはこのピークは判別できなかった。
【0112】
実施例4と比較例4のスパッタリング前後のN−1s内殻準位XPSスペクトル図から算出された窒素含有量を、化学分析による窒素含有量(wt%での結果をat%に変換した数値)ならびに表面窒素濃化度(XPSによるN含有量/化学分析によるN含有量)と一緒に表2にまとめて示す。表2には、実施例1に記載の方法で求めた光触媒活性の測定結果も併記する。
【0113】
【表2】

【0114】
本発明に係る実施例4の酸化チタン光触媒では、化学分析により求めたN含有量に対するXPS測定から算出されたN含有量の比が、スパッタリング前で37.0、スパッタリング後は30.4と20を超えていた。一方、比較例4の酸化チタン光触媒では、この比はスパッタリング前と後のいずれも12.2であり、20より小さかった。XPS測定は表層部の測定であることから、この結果は、本発明の酸化チタン光触媒では、表面近傍の窒素の偏在の程度が大きいことを意味している。可視光光触媒活性は、本発明の酸化チタン(実施例4)では比較例4の2倍近い高さとなった。
【0115】
図6に、原料の(水)酸化チタン、実施例4で得られた本発明に係る酸化チタン光触媒、および比較例4で得られた酸化チタン光触媒の紫外〜可視域の光吸収スペクトルを示す。測定装置は大塚電子製MCPD2000であった。
【0116】
図6からわかるように、本発明の光触媒(実施例4)の可視光吸収(380nmより長波長)は、比較例4の光触媒に比べて強い。両者の光触媒の化学分析で得られた窒素含有量にほぼ同じレベルである。このことから、本発明の光触媒では、表面に窒素が濃化することによって、可視光の吸収が強化されていると推測される。光吸収の増大は、光の利用効率の面から活性向上に有利である。窒素の表面への濃化は、光触媒の活性低下原因の一つとされるバルク内のキャリア再結合を起こりにくくする作用もあると予想される。本発明の酸化チタン光触媒は、これらの効果(可視光吸収の強化、キャリア再結合抑制)によって高い可視光触媒活性を示すのではないかと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】実施例1で得られた酸化チタン光触媒の昇温脱離ガス分析におけるm/e=28のマスフラグメントスペクトル図である。
【図2】比較例1の市販可視光応答型酸化チタン光触媒の昇温脱離ガス分析におけるm/e=28のマスフラグメントスペクトル図である。
【図3】第二段熱処理(焼成)雰囲気中の水分量と得られた酸化チタン光触媒の活性との関係を示すグラフである。
【図4】本発明の範囲外の条件で製造された酸化チタン光触媒の昇温脱離ガス分析におけるm/e=28のマスフラグメントスペクトル図である。
【図5】実施例4および比較例4の酸化チタン光触媒のスパッタリング前のN−1s内殻準位XPSスペクトル図を示す。
【図6】実施例4および比較例4の酸化チタン光触媒と原料の水酸化チタンの光吸収スペクトルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇温脱離ガス分析により質量数mとイオンの電荷数eとの比(m/e)を28に設定して室温〜800℃で測定したマスフラグメントスペクトル図において、半値幅が300℃以下のピークを600℃より高温には有しておらず、かつ、半値幅が最も小さいピークが400℃から600℃の温度範囲にあることを特徴とする、可視光応答型酸化チタン光触媒。
【請求項2】
XPS測定によるN1s殻結合エネルギースペクトル図において400eV±1.0eVの範囲に現れるピークに基づいて算出した窒素量が、化学分析から求めた窒素量の20倍以上大きいことを特徴とする、可視光応答型酸化チタン光触媒。
【請求項3】
前記半値幅が最も小さいピークの半値幅が100℃以下である請求項1に記載の可視光応答型光触媒。
【請求項4】
前記半値幅が最も小さいピークが最も高温に位置するピークである請求項1または3に記載の可視光応答型光触媒。
【請求項5】
化学分析で求めて触媒中に0.1wt%以下の窒素を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の酸化チタン光触媒。
【請求項6】
酸化チタンおよびその前駆体から選ばれた原料を、加水分解性金属化合物を含む雰囲気で熱処理する工程と、熱処理された材料を水分量0.5〜4.0vol%の範囲のガス中で350℃以上の温度でさらに熱処理する工程とを含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の酸化チタン光触媒の製造方法。
【請求項7】
熱処理された材料をさらに熱処理する工程の前に、この熱処理された材料を水と接触させる工程を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記原料が、酸性チタン化合物の水溶液を反応終了時の反応液のpHが7以下となる条件で含窒素塩基により中和することを含む方法によって得られた酸化チタンおよび/または水酸化チタンである、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記中和を、中和反応終了後の反応液を20℃で72時間放置して熟成させた時の熟成前後のpH低下が0.5以内となるように行う、請求項8に記載の酸化チタン光触媒の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の酸化チタン光触媒が基材表面に付着していることを特徴とする、可視光応答型光触媒機能部材。
【請求項11】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の酸化チタン光触媒とバインダー成分とを含有する被膜を基材表面に有し、被膜中の該光触媒の含有量が5〜95質量%であることを特徴とする、可視光応答型光触媒機能部材。
【請求項12】
基材が主として金属からなる、請求項10または11に記載の光触媒機能部材。
【請求項13】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の酸化チタン光触媒を分散質とすることを特徴とする光触媒分散液。
【請求項14】
請求項13に記載の光触媒分散液を用いて調製されたことを特徴する、光触媒コーティング液。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−289933(P2007−289933A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−75189(P2007−75189)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【出願人】(397064944)住友チタニウム株式会社 (133)
【Fターム(参考)】