台所用品殺菌装置
【課題】銀の使用量を増やさないで、台所用品の劣化または変形を生じさせることなく、台所用品を効果的に殺菌することが可能な台所用品殺菌装置を提供する。
【解決手段】台所用品殺菌装置100は、内部に台所用品200を収容する洗浄槽2と、洗浄槽2に水を供給する給水経路30と、給水経路30によって供給される水に銀イオンを添加する銀イオン溶出ユニット80とを備え、洗浄槽2内にて銀イオン溶出ユニット80によって銀イオンを添加された水が台所用品200に接することによって銀イオンが台所用品200に付着され、さらに、銀イオンが付着された台所用品200に光を照射する光源9とを備える。
【解決手段】台所用品殺菌装置100は、内部に台所用品200を収容する洗浄槽2と、洗浄槽2に水を供給する給水経路30と、給水経路30によって供給される水に銀イオンを添加する銀イオン溶出ユニット80とを備え、洗浄槽2内にて銀イオン溶出ユニット80によって銀イオンを添加された水が台所用品200に接することによって銀イオンが台所用品200に付着され、さらに、銀イオンが付着された台所用品200に光を照射する光源9とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般的には台所用品殺菌装置に関し、特定的には、台所用品に銀イオンを付着させて殺菌する台所用品殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、台所用品の殺菌装置としては、洗浄槽内において紫外線を照射して食器や洗浄槽内の細菌を殺菌するものや、抗菌性イオンである銀イオンを溶解した水を用いて台所用品を洗浄して殺菌するものがある。
【0003】
特開平4−364825号公報(特許文献1)に記載の食器洗い機においては、洗浄槽内に紫外線灯を設け、食器や洗浄槽の底部の食物残菜に紫外線を照射し、食器上の細菌を殺菌したり、洗浄槽内に残る食物残菜の腐敗を遅延させたりする。
【0004】
また、特開2001−340281号公報(特許文献2)に記載の食器洗い機においては、食器を洗浄する水に銀イオンを添加し、食器に銀イオンを付着させることによって、食器自体に抗菌力を付与する。
【特許文献1】特開平4―364825号公報
【特許文献2】特開2001―340281号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特開平4―364825号公報(特許文献1)に記載の食器洗い機のように、紫外線を使用する場合、食器や調理器具の樹脂が劣化したり、褪色したりしてしまうという問題がある。
【0006】
また、特開2001―340281号公報(特許文献2)に記載の食器洗い機のように、銀イオンを添加する場合、銀イオンの添加によって十分な殺菌効果を得ようとすると、消費する銀イオンの量が多くなる。
【0007】
また、高温で、すすぎや乾燥をすることによって殺菌する場合には、食器や調理器具の樹脂が劣化したり、変形したりするという問題がある。
【0008】
まな板などの調理器具は、洗浄や加熱調理をしていない食材が接触するため、菌の汚染を受けやすい。特に、調理器具が樹脂製の場合、樹脂が親油性であり、また、包丁などにより表面に傷が付きやすいため、従来の洗浄では菌の除去が不十分な場合がある。
【0009】
そこで、この発明の目的は、銀の使用量を増やさないで、台所用品の劣化または変形を生じさせることなく、台所用品を効果的に殺菌することが可能な台所用品殺菌装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に従った台所用品殺菌装置は、内部に台所用品を収容する洗浄槽と、洗浄槽に水を供給する水供給部と、水供給部によって供給される水に銀イオンを添加する銀イオン添加部とを備え、洗浄槽内にて銀イオン添加部によって銀イオンを添加された水が台所用品に接することによって銀イオンが台所用品に付着され、さらに、銀イオンが付着された台所用品に光を照射する光照射手段とを備える。
【0011】
銀イオンを付着させた台所用品に、さらに光を照射することによって殺菌作用を向上させることができる。このようにすることにより、殺菌対象となる台所用品を加熱しないで、必ずしも乾燥状態にする必要もなく、銀イオンを付着させた台所用品に光を照射するだけで殺菌作用を向上させることができる。したがって、殺菌対象となる台所用品が損傷することなく、簡単な工程で十分な殺菌作用を得ることができる。また、台所用品に銀イオンを付着させるだけの殺菌方法に比べて、本発明の台所用品殺菌装置によれば、少ない銀の使用量で所定の殺菌作用を得ることができる。
【0012】
この発明に従った台所用品殺菌装置においては、光照射手段が照射する光は可視光を含むことが好ましい。
【0013】
台所用品に照射される光が可視光を含むことにより、殺菌作用をより向上させることができるとともに、紫外線による台所用品の劣化、黄変、退色等の損傷を防止することができる。
【0014】
この発明に従った台所用品殺菌装置は、洗浄槽の内部に収容された台所用品を乾燥させる乾燥工程を行い、光照射手段は、乾燥工程中および/または乾燥工程後に光を照射することが好ましい。
【0015】
乾燥工程中や乾燥工程の終了後には、洗浄槽内に水が存在しないため、洗浄槽内の台所用品や洗浄槽に効率よく光を照射することができる。
【0016】
この発明に従った台所用品殺菌装置は、洗浄槽の内部に収容された台所用品を低温で洗浄する低温洗浄工程、および/または、洗浄槽の内部に収容された台所用品を低温で乾燥する低温乾燥工程を行うことが好ましい。
【0017】
銀イオンを付着させた台所用品に、さらに光を照射して殺菌効果を向上させると、低温でも十分な殺菌効果が得られる。そこで、台所用品の洗浄や乾燥を低温で行うことによって、温度を上げるためのエネルギーを抑えることができる。また、高温で洗浄や乾燥を行ったときに台所用品を形成する樹脂などに与えるダメージを抑えることができる。
【0018】
この発明に従った台所用品殺菌装置は、銀イオンの添加と不添加とを選択することが可能であり、光照射手段は、銀イオン添加部によって銀イオンが水に添加された場合に光を照射することが好ましい。
【0019】
台所用品に銀イオンが付着していない場合、台所用品に光を照射しても殺菌効果は得られない。そこで、たとえば、銀イオンを付着させないすすぎ工程を選択した場合には、乾燥工程においては、光照射手段を駆動せず、光を照射しないことにより、消費電力を節減することができる。また、光を照射する工程がなくなるために、全体の工程にかかる時間を短くすることができる。
【0020】
この発明に従った台所用品殺菌装置においては、光照射手段が可動であることが好ましい。
【0021】
光照射手段が可動であることによって、洗浄槽内において台所用品が動かなくても、より多くの部分に光を照射することができる。このようにすることにより、台所用品をより効果的に殺菌することができる。
【0022】
この発明に従った台所用品殺菌装置は、光照射手段によって照射された光を反射するための光反射手段を備え、光反射手段は可動であることが好ましい。
【0023】
台所用品殺菌装置が光反射手段を備え、光反射手段が可動であることによって、洗浄槽内において台所用品を動かさなくても、より多くの部分に光を照射することができる。このようにすることにより、台所用品をより効果的に殺菌することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、この発明によれば、銀の使用量を増やさないで、台所用品が損傷することなく、台所用品を効果的に殺菌する台所用品殺菌装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0026】
図1と図2は、この発明の一つの実施の形態として、台所用品殺菌装置の全体的な構成を示す垂直断面図である。図2は、図1の台所用品殺菌装置を右の方向から見た垂直断面図である。
【0027】
図1と図2に示すように、台所用品殺菌装置100は、キャビネット1の内部に、洗浄槽2と、水供給部として給水経路30と循環経路40と、回転ノズル50と、ヒータ6と、制御装置7と、銀イオン添加部として銀イオン溶出ユニット80と、光照射手段として光源9と、送風装置10(図2)を備える。
【0028】
洗浄槽2の内部には、台所用品200を載置するための籠11が配置されている。籠11は、前後方向(図1の紙面に垂直な方向)にスライドさせることができる。キャビネット1の前面ドア(図示しない)を開けて、籠11をスライドさせて洗浄槽2の外部に引き出し、台所用品200を籠11に載置したり、籠11から取り出したりすることができる。ここで、台所用品200とは、食器類の他に、まな板や包丁などの調理器具や布巾など、台所での作業に用いる物品を含む。
【0029】
給水経路30は、給水管31と、水道接続部32と、給水弁33と、給水口34とを含む。給水管31は、給水管31の一端である水道接続部32によって、台所用品殺菌装置100の外部の水道に接続されている。水道水は、水道接続部32から給水管31を通って台所用品殺菌装置100内に供給される。供給される水量は給水弁33によって調節される。給水管31の他端である給水口34は、洗浄槽2に接続されている。給水管31の途中には、銀イオン溶出ユニット80が配置されている。
【0030】
図3は、銀イオン溶出ユニット80の概略断面図である。図3(A)は水流の方向に沿った概略断面図、図3(B)は、図3(A)に直交し、水流の方向に沿った概略断面図である。
【0031】
図3(A)、図3(B)に示すように、銀イオン溶出ユニット80は、合成樹脂などの絶縁材料から形成されるケース81を有し、ケース81の内部には、板状の銀電極82a、82bが約5mmの距離を隔ててほぼ平行となるように配設されている。銀電極は、たとえば、大きさ20mm×50mm、厚さ1mm程度である。銀電極82a、82bにはそれぞれ接続端子83a、83bが一体に形成されている。接続端子83a、83bは、配線(図示せず)により制御装置7に接続されている。ケース81には、水が流入する流入口84、水が流出する流出口85が設けられており、流入口84からからケース81内に水が流入し、流出口85から水がケース81外に流出することができる。すなわち、銀電極82a、82bの長手方向と平行に水が流れることになる。
【0032】
銀電極82a、82bが水中に浸かり水が流れている状態で、制御装置7により銀電極82a、82b間に電圧が印加される。陽極側の銀電極において、Ag→Ag++e−の反応が起こり、水中に銀イオン(Ag+)が溶出する。銀イオン(Ag+)が溶出しつづければ陽極側の銀電極は減耗していく。銀電極82aまたは銀電極82bから溶出する銀イオンは、優れた殺菌効果及び防カビ効果を発揮する。従って、銀イオン水は、抗菌性を有する抗菌水として作用する。なお、ここでいう抗菌または殺菌とは、細菌や真菌を殺菌、抗菌することだけでなく、ウイルスを不活化することも含む。銀イオンによりウイルスが不活化されることは、「銀イオン水 L.A.クリスキー著 新日本鋳鍛造協会(出版会)1993年」に記載されている。
【0033】
一方、陰極側の銀電極では、H++e−→1/2H2の反応が生じ、水素が発生するとともに、水中に含まれるカルシウムなどが炭酸カルシウムなどのカルシウム化合物のスケールとして銀電極の表面に析出する。また電極の成分である銀の塩化物及び硫化物が表面に発生する。従って、使用が長期にわたると、炭酸カルシウムや塩化物や硫化物などのスケールが電極表面に厚く堆積し、銀イオンの溶出を妨げる。このため、銀イオンの溶出量が不安定になったり、電極の減耗が不均一になったりする。そこで、制御装置7は、銀イオン溶出ユニット80の銀電極82a、82b間の印加電圧の極性反転を周期的(例えば20秒毎)に行うことにより、銀電極82a、82bへのスケールの付着および、一方の銀電極のみが消耗してしまうことを防いでいる。
【0034】
電極は、純銀でなくても、銀を含有し、銀イオンを溶出可能な材料であればよい。
【0035】
また、銀イオンとともに、他の金属イオン溶出するものであってもよい。例えば、銅、亜鉛などと銀の合金でもよい。銅イオン、または亜鉛イオンは、防カビ効果があり、これらの金属と銀の合金を用いることで、両方の効果を得ることができる。
【0036】
また、電極の一方が銀イオンを溶出する電極で、もう一方が銀イオンを溶出しない電極であってもよい。電極形態が2枚以上の電極から構成される場合は、すべて銀イオンを溶出する電極であっても良いし、いずれかが銀イオンを溶出する電極で、他の電極が銀イオンを溶出しない電極(例えば、チタン電極、白金電極、炭素電極、導電性プラスチック電極など)であっても良い。
【0037】
銀イオンの溶出は、電流値が一定となるように定電流制御を行う。定電流制御とは、電極間の抵抗値変化に関わらず一定の電流値を保つように制御することであるが、電極表面での気泡の発生や、電極の振動による電極間の距離の変化などで電極間の抵抗値は常に変化するため、完全に一定にすることは困難で、多少の電流変動は発生する。また、抵抗値が著しく高いなどで、回路の許容範囲の電圧では一定の電流が流せず電流が低下することもある。ここでは、そのようなことがあっても、電極間の抵抗値の変化に対応して、電圧を変化させ、概ね抵抗値が上がれば電圧を上げ、抵抗値が下がれば電圧を下げて、電極間の電流値を安定させる制御を定電流制御とする。
【0038】
銀イオン水の銀イオン濃度は、電極間を流れる電気量と水の量などで制御することができる。例えば、90ppbの銀イオン水を得るには、銀イオン溶出ユニット80において、水量を20L/minに、電流を29mAにすればよい。また、600ppbの銀イオン水を得るには、水量を3L/min、電流を29mAにすればよい。なお、銀イオンの溶出量は、低電流域を除いて、電気量(C)=一定電流値(A)×時間(sec)に概ね比例する。また、水量が一定であれば、電気量と得られる銀イオン水の銀濃度には相関がある。このため、電流値や水量や通電時間を調節することで、所望濃度の銀イオン水を得ることができる。
【0039】
このように、銀電極82a、82bに所定電流を一定流量の水に流すことで所望の銀イオン濃度を得ることができる。また、給水弁の構造により、流量はほぼ固定できるため、一定電流を流すことにより、ほぼ一定の銀イオン水を生成することができる。様々な濃度の銀イオン水を得ることができるように、電流値と時間の組合せを、実験により予め求めておくことが好ましい。
【0040】
また、銀イオン溶出ユニット80においては、電圧の印加の有無で銀イオンの溶出/非溶出を選択でき、上述したように電流や電圧印加時間を制御することにより銀イオンの溶出量を制御することもできる。
【0041】
銀イオン溶出ユニット80としては、電気分解によるもの以外に、水に浸漬することにより銀イオンを徐放または溶解できる構造を持つ銀イオン含有物質を使用してもよい。銀イオン含有物質の具体例としては、銀イオンを担持しているゼオライト、シリカゲル、ガラス、りん酸カルシウム、りん酸ジルコニウム、ケイ酸塩、酸化チタン、ウィスカー、セラミックスなど、またはこれらの物質を含む樹脂や繊維などである。
【0042】
循環経路40は、残滓フィルター41と、吸込管42と、洗浄吐出管43と、ポンプ44と、モータ45と、排水吐出管46と、ケーシング47とを含む。ポンプ44は、ケーシング47の内部に配置されている。ケーシング47は、吸込管42と、洗浄吐出管43と、排水吐出管46とに接続されており、ケーシング47とそれぞれの管との接続部分には切替弁が設けられている。排水吐出管46は、排水管49の一端に接続されている。排水管49の他端は排水口48に接続されている。
【0043】
回転ノズル50は、洗浄槽2の内部に2個配置されている。回転ノズル50の上面には、所定の角度で水を噴出するための噴出口51が複数形成されている。
【0044】
ヒータ6は、洗浄槽2内の下部に配置され、洗浄槽2内に所定の深さまで水が溜まると水に浸る位置に配置されている。ヒータ6は、洗浄槽2内に溜められた水を所定の温度に加熱する。また、洗浄槽2内の気体を加熱して、台所用品200を乾燥させる。
【0045】
制御装置7は、洗浄槽2の底壁の下側に配置される。制御装置7は、使用者によって操作パネルより入力された操作指令と、センサ類(洗浄槽2内の水位センサや温度センサ、前面ドアの開閉センサなど)から制御信号を受けて、給水経路30と、循環経路40と、ヒータ6と、銀イオン溶出ユニット80と、光源9とに制御信号を送る。
【0046】
光源9としては、蛍光灯、電球、発光ダイオード(LED)等を用いることができる。光源9は、殺菌灯、紫外線(UV)ランプ等のように紫外域の光を主に含む光源、近紫外線を照射するブラックライト等のように近紫外域の光を主に含む光源、ハロゲンヒータ等のように赤外域の光を主に含む光源であってもよいが、蛍光灯、白熱灯、発光ダイオード(白色、青色、赤色、緑色などのLED)、可視光レーザー等のように可視光を主に含む光源を用いるのが好ましい。
【0047】
このように、台所用品200に照射される光が可視光を含むことにより、殺菌作用をより向上させることができるとともに、紫外線による台所用品200の劣化、黄変、退色等の損傷を防止することができる。
【0048】
図2に示すように、送風装置10は、吸込口12から気体を吸引し、送風口13から洗浄槽2内に気体を送風する。吸込口12から吸引される気体は、ヒータ6によって加熱される。
【0049】
続いて台所用品殺菌装置100の動作を、図1と図2を参照して、図4から図9に従って説明する。
【0050】
図4は、この発明の一つの実施の形態にかかる台所用品殺菌装置の制御関連の構成を示すブロック図である。
【0051】
図4に示すように、制御装置7は、操作パネル14、温度センサ16、水位センサ18から制御信号を受け、光源9、モータ45、銀イオン溶出ユニット80、給水弁33、送風機10に制御信号を送る。制御装置7は、計時部17とは制御信号の送受信を行う。
【0052】
図5から図9は、この発明の一つの実施の形態にかかる、台所用品殺菌装置の制御処理を順に示すフローチャートである。以下の工程において、所定の判断を行う主体は制御装置7である。
【0053】
図5は、この発明の一つの実施の形態として台所用品殺菌装置の全体的な制御処理の工程を順に示すフローチャートである。図5に示すように、ステップS100では洗浄工程が行われる。
【0054】
図6は、洗浄工程の制御処理を順に示すフローチャートである。
【0055】
使用者は、まず、キャビネット1の前面ドアを開けて、籠11をスライドさせて洗浄槽2の外部に引き出し、食器やまな板などの台所用品200を籠11に載置する。載置したら、籠11を洗浄槽2内に押し込み、洗浄槽2に洗剤を投入する。前面ドアを閉じて、操作パネルのスタートキーを押して、洗浄工程を開始する。
【0056】
洗浄工程が開始されると、ステップS101で、制御装置7は、給水弁33を開き、給水管31に水道水が流れ込むように制御する。給水された水は、給水口34を通って洗浄槽2内に流入し、洗浄槽2を底から所定の水位まで満たす。
【0057】
このとき、洗浄に用いられる水は、洗浄槽2内に入る前に銀イオン溶出ユニット80を通っている。しかし、電極には電圧を印加せず、銀イオンを溶出させない。
【0058】
ステップS102では、制御装置7は、水位センサ18から制御信号を受け、洗浄槽2内の水位が所定の水位に達したかどうかを確認する。洗浄槽2内の水が所定の水位に達していれば、ステップS103に進み、制御装置7は給水弁33を閉じるように制御し、ステップS104に進む。洗浄槽2内の水が所定の水位に達していなければ、ステップS102に戻る。
【0059】
ステップS104では、制御装置7は、モータ45を正回転させるように制御する。モータ45が正回転すると、ポンプ44は吸込管42を通じて吸い込んだ洗剤混じりの水を洗浄吐出口43から吐出する。洗浄吐出管43から吐出された水は2個の回転ノズル50に分配される。各回転ノズル50は噴出口51から斜め上方に水を噴射し、その反動でスプリンクラーのように回転する。回転ノズル50から噴射された水は、籠11に載置された台所用品200に衝突して、台所用品200を洗浄する。洗浄後の水は洗浄槽2の底部に落ちて、溜まっている水に混じり、再びポンプ44の吸引によって吸込管42に吸引される。台所用品200を洗浄した水には、台所用品200に付着していた食物残滓が混入するが、この食物残滓は残滓フィルター41に捕集され、ポンプ44に吸引される水には食物残滓が含まれない。残滓フィルター41を通った水は、再びポンプ44によって吸込管42内に吸引され、回転ノズル50から噴射され、洗浄槽2の底部に流れ落ちる、という循環が繰り返される。
【0060】
ステップS105では、使用者によってヒータ6の使用が選択されているかどうかを確認する。使用者は、操作パネル14を通して、ヒータ6を使用して加熱された水で洗浄するかどうかを選択することができる。また、ヒータ6による水の加熱の程度によって、高温洗浄工程と低温洗浄工程の二種類から選択することができる。
【0061】
低温洗浄工程においては、低温で洗浄することによって、温度を上げるためのエネルギーを抑えることができる。また、高温にしたときに台所用品200を形成する樹脂などに与えるダメージを抑えることができる。後のステップで、台所用品200に銀イオンを付着させ、さらに光を照射することによって殺菌効果を向上させているので、低温でも十分な殺菌効果が得られる。
【0062】
使用者によって、ヒータ6の使用が選択されていなければ、ステップS109に進む。ヒータ6の使用が選択されていれば、ステップS106で、制御装置7はヒータ6に通電するように制御し、計時部17が、ヒータ6への通電開始からの経過時間を計測開始する。
【0063】
ステップS106でヒータ6に通電すると、台所用品洗浄装置100内を循環する水が加熱される。回転ノズル50から噴射される水の物理的洗浄力及び洗剤の洗浄作用に高温が加わることにより、汚れは分離、溶解、分解されやすくなり、台所用品200は効果的に洗浄される。
【0064】
ステップS107では、制御装置7は、計時部17との送受信により、ヒータ6への通電から所定の時間が経過したかどうかを確認する。所定の時間が経過していれば、ステップS108で制御装置7はヒータ6への通電を停止するように制御し、洗浄工程を終了する。なお、この実施の形態では、ヒータ6への通電時間が所定時間に達したことによってヒータ6への通電を停止するが、温度センサ16によって水温が設定温度に達したことを検知してヒータ6への通電を停止し、洗浄工程を終了してもよい。
【0065】
ステップS109では、制御装置7は、計時部17との送受信により、モータ44の正回転開始から所定の時間が経過したかどうかを確認する。所定の時間が経過していなければ、ステップS109に戻る。所定の時間が経過していれば、洗浄工程を終了する。
【0066】
続いて、ステップS200の排水工程に進む。
【0067】
図7は、排水工程における制御処理を順に示すフローチャートである。
【0068】
図7に示すように、ステップS201で、制御装置7はモータ45を逆回転させるように制御し、洗浄槽2内の水を排水吐出管46から排水管49を通じて排水し、ステップS202に進む。
【0069】
ステップS202では、水位センサ18が洗浄槽2内の水位を検知し、制御装置7は水位センサ18から制御信号を受け、洗浄槽2内の水位が所定の水位以下であるかどうかを確認する。洗浄槽2内の水位が所定の水位以下でなければ、ステップS202に戻る。洗浄槽2内の水位が所定の水位以下であれば、排水工程を終了し、図5のステップS300に進む。
【0070】
図5のステップS300では、すすぎ工程を行う。
【0071】
図8は、すすぎ工程の制御処理を順に示すフローチャートである。
【0072】
図8に示すように、ステップS301で、制御装置7は給水弁33を開き、洗浄槽2にすすぎ水を導入するように制御する。
【0073】
ステップS302では、水位センサ18が洗浄槽2内の水位を検知し、洗浄槽2内の水位が所定の水位に達しているかどうかを確認する。洗浄槽2内の水位が所定の水位に達していなければ、ステップS302に戻る。洗浄槽2内の水位が所定の水位に達していれば、ステップS303に進み、給水弁33を閉じる。
【0074】
ステップS304では、制御装置7は、モータ44を正回転させるように制御して、回転ノズル50からすすぎ水を噴射させる。回転ノズル50から噴射された水は、台所用品200に衝突して、台所用品200をすすぐ。
【0075】
このとき、すすぎに用いられる水は、洗浄槽2内に入る前に銀イオン溶出ユニット80を通っている。このとき、電極に通電することで、銀イオンを溶出する。すすぎ水に混入した銀イオンは、台所用品200及び洗浄槽2の内部と、水の循環経路40を除菌する。
【0076】
ステップS305では、使用者によってヒータ6の使用が選択されているかどうかを確認する。使用者は、操作パネル14を通して、ヒータ6を使用して加熱された水ですすぐかどうかを選択することができる。また、ヒータ6による水の加熱の程度によって、高温すすぎ工程と低温すすぎ工程の二種類から選択することができる。
【0077】
低温すすぎ工程においては、低温ですすぐことによって、温度を上げるためのエネルギーを抑えることができる。また、高温にしたときに台所用品200を形成する樹脂などに与えるダメージを抑えることができる。このすすぎ工程において、台所用品200には銀イオンが付着される。後の工程において、銀イオンを付着された台所用品200にさらに光を照射して殺菌効果を向上させているので、低温ですすいでも十分な殺菌効果が得られる。
【0078】
使用者によって、ヒータ6の使用が選択されていなければ、ステップS309に進む。使用者によってヒータ6の使用が選択されていれば、ステップS306に進み、制御装置7はヒータ6に通電するように制御する。計時部17は、ヒータ6への通電開始からの経過時間を計測開始する。
【0079】
ステップS307では、制御装置7は計時部17との制御信号の送受信によって、ヒータ6への通電開始から所定の時間が経過したかどうかを確認する。所定の時間が経過していれば、ステップS308で制御装置7はヒータ6への通電を停止するように制御し、すすぎ工程を終了する。なお、この実施の形態では、ヒータ6への通電時間が所定時間に達したことによってヒータ6への通電を停止するが、温度センサ16によって水温が設定温度に達したことを検知してヒータ6への通電を停止し、すすぎ工程を終了してもよい。
【0080】
ステップS309では、制御装置7は、計時部17との送受信により、モータ44の正回転開始から所定の時間が経過したかどうかを確認する。所定の時間が経過していなければ、ステップS309に戻る。所定の時間が経過していれば、すすぎ工程を終了する。
【0081】
続いて、図5のステップS400の排水工程に進む。ステップS400の排水工程は、図7に示すステップS200の排水工程と同様の工程である。
【0082】
1回目のすすぎ工程の後、排水工程をはさんで、2回目のすすぎ工程に入る。所定回数だけすすぎ工程と排水工程を繰り返す。このようにすすぎ工程が何度も繰り返される場合、銀イオンの溶出は最終のすすぎ工程に限定してもよい。このようにすることにより、全てのすすぎ工程で銀イオンを溶出する場合に比べ、銀イオンの消費量を少なくすることができる。また、ヒータ6による水の加熱も最終のすすぎ工程に限定して、電力消費量を低減してもよい。
【0083】
所定の回数だけすすぎ工程と排水工程とが終了すれば、図5のステップS500の乾燥工程に進む。
【0084】
図9は、乾燥工程の制御処理を順に示すフローチャートである。
【0085】
図9に示すように、ステップS501で、制御装置7は送風機10を駆動させて洗浄槽2に送風口13から外気を送り込むように制御する。洗浄槽2内の気体は、前面ドア付近に設けた排気口(図示しない)から排気される。
【0086】
ステップS502では、制御装置7はヒータ6に断続的に通電し、洗浄槽2内の気体を加熱し、台所用品200や洗浄槽2の温度を高めるように制御する。このとき、使用者は、操作パネル14を通してヒータ6による気体の加熱の程度によって高温乾燥工程と低温乾燥工程の二種類から選択することができる。
【0087】
低温乾燥工程においては、低温で乾燥させることによって、温度を上げるためのエネルギーを抑えることができる。また、高温にしたときに台所用品200を形成する樹脂などに与えるダメージを抑えることができる。すすぎ工程において銀イオンを付着された台所用品200に、次のステップでさらに光を照射することによって、殺菌作用を向上させているので、低温で乾燥しても十分な殺菌効果が得られる。
【0088】
ステップS503では、制御装置7は、光源9を駆動し、光源9が洗浄槽2内に光を照射するように制御する。計時部17は光照射開始からの経過時間を計測開始する。
【0089】
乾燥工程において光を照射することにより、洗浄槽2内に水が存在しないため、洗浄槽2内の台所用品200や洗浄槽2に効率よく光を照射することができる。
【0090】
このように、銀イオンを付着させた台所用品200に、さらに光を照射することによって殺菌作用を向上させることができる。このようにすることにより、殺菌対象となる台所用品を加熱しないで、必ずしも乾燥状態にする必要もなく、銀イオンを付着させた台所用品に光を照射するだけで殺菌作用を向上させることができる。したがって、殺菌対象となる台所用品が損傷することなく、簡単な工程で十分な殺菌作用を得ることができる。また、台所用品に銀イオンを付着させるだけの殺菌方法に比べて、本発明の台所用品殺菌装置によれば、少ない銀の使用量で所定の殺菌作用を得ることができる。
【0091】
ステップS504では、制御装置7は計時部17と制御信号の送受信を行い、光照射開始から所定の時間が経過したかどうかを確認する。光照射開始から所定の時間が開始していなければ、ステップS504に戻る。光照射開始から所定の時間が経過していれば、ステップS505に進み、光の照射を停止する。続いて、ステップS506でヒータ6への通電を停止し、ステップS507で送風機10の駆動を停止して、全工程を終了する。
【0092】
乾燥後、台所用品の表面や洗浄槽の内面には銀の結晶が残り、その後も抗菌効果を発揮する。
【0093】
この実施の形態では、乾燥工程の中で光を照射するが、乾燥工程の中では光を照射せず、乾燥工程の終了後に光を照射してもよい。
【0094】
乾燥工程中や乾燥工程の終了後には、洗浄槽2内に水が存在しないため、洗浄槽2内の台所用品200や洗浄槽2に効率よく光を照射することができる。なお、乾燥工程以外の工程、例えばすすぎ工程において光を照射してもよい。
【0095】
また、この実施の形態においては、すすぎ工程で銀イオン溶出ユニット80を駆動させず、銀イオンが台所用品200に付着するようにしたが、銀イオンを付着させないすすぎ工程を選択することができるようにしてもよい。銀イオンを付着させないすすぎ工程を選択した場合には、乾燥工程においては、光源9を駆動せず、光を照射しない。
【0096】
台所用品200に銀イオンが付着していない場合、台所用品200に光を照射しても殺菌効果は得られない。そこで、銀イオンを付着させないすすぎ工程を選択した場合には、乾燥工程においては、光源9を駆動せず、光を照射しないことにより、消費電力を節減することができる。また、光の照射の工程がなくなるために、全体の工程にかかる時間を短くすることができる。
【0097】
図10は、この発明のもう一つの実施の形態として、台所用品殺菌装置の全体的な構成を示す垂直断面図である。
【0098】
図10に示すように、台所用品殺菌装置110は、台所用品殺菌装置100と異なる点としては、洗浄槽2の内壁が、光を反射する材料で形成されている。
【0099】
このようにすることにより、光源9から出た光は、洗浄槽2の内壁に当たると反射するので、洗浄槽2内に置かれた台所用品のより多くの部分に光を照射することができる。このようにすることにより、より効果的に殺菌することができる。
【0100】
図11は、この発明のさらにもう一つの実施の形態として、台所用品殺菌装置の全体的な構成を示す垂直断面図である。
【0101】
図11に示すように、台所用品殺菌装置120は、台所用品殺菌装置100と異なる点としては、洗浄槽2内の上部に光反射手段19を備える。
【0102】
光反射手段19は、光源9から照射された光を反射するためのパネルである。光反射手段19は、モータの駆動によって、図11中の一点鎖線で示す位置や二点鎖線で示す位置に動かすことができる。
【0103】
このように、光反射手段19が可動であることによって、洗浄槽2内において台所用品200を動かさなくても、より多くの部分に光を照射することができる。このようにすることにより、より効果的に殺菌することができる。
【0104】
図12は、この発明のさらに別の実施の形態として、台所用品殺菌装置の全体的な構成を示す垂直断面図である。
【0105】
図12に示すように、台所用品殺菌装置130は、台所用品殺菌装置100と異なる点としては、洗浄槽2内の上部に光反射手段19を備える。台所用品殺菌装置130の内壁は、光を反射する材料で形成されている。
【0106】
光反射手段19は、光源9から照射された光を反射するためのパネルである。光反射手段19は、送風機10の駆動によって発生する風が当たると、図12中の一点鎖線で示す位置や二点鎖線で示す位置に動く。このようにすることにより、光源9から出た光や、光源9から出て洗浄槽2の内壁で反射した光が光反射手段19に当たりやすくなり、光が様々な方向に反射される。
【0107】
このように、光反射手段19が可動であることによって、洗浄槽2内において台所用品200を動かさなくても、より多くの部分に光を照射することができる。このようにすることにより、より効果的に殺菌することができる。
【0108】
光反射手段19は、温度によって変形するバイメタルや形状記憶合金などを用い、温風などによる熱によって位置が変わるようにしてもよい。
【0109】
図13は、この発明のさらにまた別の実施の形態として、台所用品殺菌装置の全体的な構成を示す垂直断面図である。
【0110】
図13に示すように、台所用品殺菌装置140は、台所用品殺菌装置100と異なる点としては、洗浄槽2内に光反射手段19を備える。光反射手段19は、洗浄槽2内の送風口13に取り付けられている。
【0111】
光反射手段19は、光源9から照射された光を反射するためのパネルである。送風機10によって発生した風は、送風口13を通って洗浄槽2内に流入するが、この風が送風口13を通るときに、光反射手段19に当たる。光反射手段19は、風が当たると、図13中の一点鎖線で示す位置や二点鎖線で示す位置に動くことができる。
【0112】
このように、光反射手段19が可動であることによって、洗浄槽2内において台所用品200を動かさなくても、より多くの部分に光を照射することができる。このようにすることにより、より効果的に殺菌することができる。
【0113】
また、台所用品殺菌装置100〜140の光源9は、モータなどによって可動としてもよい。
【0114】
光源9が可動であることによって、洗浄槽2内において台所用品200が動かなくても、より多くの部分に光を照射することができる。このようにすることにより、より効果的に殺菌することができる。
【実施例】
【0115】
本発明の台所用品殺菌装置の殺菌効果を確認するために、殺菌対象の台所用品を構成する物質の一例としてポリエステルを用いて、銀イオンをポリエステルに付着させた後に、各種の光を照射することによって殺菌効果の有無を調べた。
【0116】
具体的には、銀イオンを付着させた試料に光を照射した後の抗菌効果の試験を行った。
【0117】
この試験に用いた試料は、平板状のポリエステルに銀イオン水を付着させ、乾燥させたものである。銀イオン水は、八尾市の水道水を用いて、銀電極から電解によって水中に銀イオンを溶出することによって作製した。
【0118】
光照射条件を、白色蛍光灯、ブラックライト、光照射なしの3条件とし、試料の表面への銀付着量を0(銀イオン水の付着処理なし)、5、10、20ng/cm2とした。抗菌試験は、抗菌製品技術協議会の光照射フィルム密着法にて行った。この方法は、試料に約1.0×105CFUの菌を含む菌液を付着させ、24時間経過後の菌数を測定する方法である。菌としては、黄色ブドウ球菌を用いた。白色蛍光灯は、20Wのものを使用し、サンプル付近の明るさ(照度)が5000ルクスとなる距離にサンプルを置いた。ブラックライトも同様に20Wのものを使用し、光源とサンプルの距離は、白色蛍光灯と同じになるようにした。
【0119】
その結果を表1と図14に示す。表1は、各光照射条件と銀付着量毎の試験後の菌数(単位:CFU)との関係を示す。図14は、試料への銀付着量と試料に存在する菌数との関係を示すグラフである。なお、グラフは、菌数の測定値が下限値(10CFU)以下のときの菌数を10CFUとみなして作図している。
【0120】
【表1】
【0121】
表1と図14に示したように、光を照射しなくても、銀付着量が20ng/cm2であれば、十分な殺菌作用が認められた。この試料では、表面に銀イオン水の蒸発残留物が付着し、それが菌液を滴下した時に再度溶解し、銀イオンによる殺菌作用が発揮されたと考えられる。
【0122】
また、光を照射することによって、殺菌作用が向上していることがわかる。銀付着量が10ng/cm2の試料では、ブラックライト、白色蛍光灯の照射で殺菌作用が向上しているが、銀付着量が5ng/cm2のような銀付着量が少ない条件では、主に可視光を含む白色蛍光灯を照射する方が、主に近紫外光を含むブラックライトを照射するよりも殺菌作用が向上することが認められた。
【0123】
本試験方法では、前述のように乾燥したサンプルに菌液という形で水を加えて評価している。そのため、表面に付着した銀イオン水の蒸発残留物が、溶解して銀イオンとなり、その銀イオンに光が照射されることにより、殺菌作用が向上したものと考えられる。
【0124】
基本的には、完全に乾燥した条件(たとえば水分活性が0.5以下となるような条件)では菌は死滅する。しかし、一般環境中においては、そこまで乾燥されることはない。
【0125】
例えば乾燥工程などで十分に乾燥した台所用品であっても、表面や内部に水分を含んでいる。そのため、特に湿潤な環境でなくても、一般環境中では至る所に菌が生息している。特に低温で乾燥したものであれば、このような形で含まれる水分はより大きい。
【0126】
従って、乾燥したサンプルにおける殺菌作用の評価方法として、水を加えることは、JIS Z2801、JIS L1902などでも行われている一般的な方法であり、不適切な方法ではない。また、本発明において乾燥した物が殺菌の対象であっても、菌が生存できる環境であれば、水分が存在するため、本試験で確認された効果も発揮される。菌が生存できない程度に完全に乾燥した環境であれば殺菌する必要はなく、問題ない。
【0127】
また、このような殺菌作用は、乾燥させずに銀イオン水が付着したままの試料に光を照射しても、銀イオン水には、今回の試験条件と同様に銀イオンが含まれているので、同様の殺菌作用の向上が得られると考えられる。したがって、銀イオン水に浸漬した状態の台所用品に光を照射しても殺菌作用を向上させることができ、たとえば、すすぎ工程にて銀イオン水を付着させた台所用品や、銀イオン水が付着した洗浄槽などの台所用品殺菌装置の部材に、光を照射しても殺菌作用を向上させることができると考えられる。
【0128】
また、上記の試験にて、銀付着量が5ng/cm2の試料に、主に可視光を含む白色蛍光灯を照射し、その照度(ルクス)を変化させた場合において試験後の菌数(単位:CFU)の変化を調べた。その結果を図15に示す。図15は、白色蛍光灯の照度と試料に存在する菌数との関係を示すグラフである。
【0129】
図15に示すように、光照射なしのときの菌数は8.0×104CFUであるのに対して、照度が1000ルクスのときの菌数は3.20×103CFUであり、照度が5000ルクスのときの菌数は10CFU以下程度であった。このように、光の強度(照度)によって本発明の方法による殺菌作用に変化が認められた。銀イオンを付着させた物質に少なくとも所定の照度以上で光を照射することにより、殺菌作用をより向上させることができることがわかる。
【0130】
また、グラフから読み取ると、光照射なしに対して菌数が2桁減少するのは1900ルクス付近であった。今回実施した光照射フィルム密着法では、抗菌効果の有無の判定を菌数が2桁減少しているか否かで判定する。また、菌数が2桁減少するというのは、JIS Z2801やJIS L1902などでも用いられており、一般的な抗菌効果の判断基準である。従って、殺菌作用を向上させるという観点から、所定の照度以上で光を照射するのが望ましいが、照射対象の位置での照度が1900ルクス以上であれば、より望ましい。
【0131】
以上に開示された実施の形態と実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の実施の形態と実施例ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正と変形を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】本発明の一つの実施の形態として、台所用品殺菌装置の全体的な構成を示す垂直断面図である。
【図2】本発明の一つの実施の形態として、台所用品殺菌装置の全体的な構成を示す垂直断面図である。
【図3】銀イオン溶出ユニットの概略断面図である。
【図4】本発明の一つの実施の形態にかかる台所用品殺菌装置の制御関連の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の一つの実施の形態として台所用品殺菌装置の全体的な制御処理の工程を順に示すフローチャートである。
【図6】洗浄工程の制御処理を順に示すフローチャートである。
【図7】排水工程における制御処理を順に示すフローチャートである。
【図8】すすぎ工程の制御処理を順に示すフローチャートである。
【図9】乾燥工程の制御処理を順に示すフローチャートである。
【図10】本発明のもう一つの実施の形態として、台所用品殺菌装置の全体的な構成を示す垂直断面図である。
【図11】本発明のさらにもう一つの実施の形態として、台所用品殺菌装置の全体的な構成を示す垂直断面図である。
【図12】本発明のさらに別の実施の形態として、台所用品殺菌装置の全体的な構成を示す垂直断面図である。
【図13】本発明のさらにまた別の実施の形態として、台所用品殺菌装置の全体的な構成を示す垂直断面図である。
【図14】試料への銀付着量と試料に存在する菌数との関係を示すグラフである。
【図15】白色蛍光灯の照度と試料に存在する菌数との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0133】
2:洗浄槽、9:光源、19:光反射手段、30:給水装置、80:銀イオン溶出ユニット、100,110,120,130,140:台所用品殺菌装置。
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般的には台所用品殺菌装置に関し、特定的には、台所用品に銀イオンを付着させて殺菌する台所用品殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、台所用品の殺菌装置としては、洗浄槽内において紫外線を照射して食器や洗浄槽内の細菌を殺菌するものや、抗菌性イオンである銀イオンを溶解した水を用いて台所用品を洗浄して殺菌するものがある。
【0003】
特開平4−364825号公報(特許文献1)に記載の食器洗い機においては、洗浄槽内に紫外線灯を設け、食器や洗浄槽の底部の食物残菜に紫外線を照射し、食器上の細菌を殺菌したり、洗浄槽内に残る食物残菜の腐敗を遅延させたりする。
【0004】
また、特開2001−340281号公報(特許文献2)に記載の食器洗い機においては、食器を洗浄する水に銀イオンを添加し、食器に銀イオンを付着させることによって、食器自体に抗菌力を付与する。
【特許文献1】特開平4―364825号公報
【特許文献2】特開2001―340281号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特開平4―364825号公報(特許文献1)に記載の食器洗い機のように、紫外線を使用する場合、食器や調理器具の樹脂が劣化したり、褪色したりしてしまうという問題がある。
【0006】
また、特開2001―340281号公報(特許文献2)に記載の食器洗い機のように、銀イオンを添加する場合、銀イオンの添加によって十分な殺菌効果を得ようとすると、消費する銀イオンの量が多くなる。
【0007】
また、高温で、すすぎや乾燥をすることによって殺菌する場合には、食器や調理器具の樹脂が劣化したり、変形したりするという問題がある。
【0008】
まな板などの調理器具は、洗浄や加熱調理をしていない食材が接触するため、菌の汚染を受けやすい。特に、調理器具が樹脂製の場合、樹脂が親油性であり、また、包丁などにより表面に傷が付きやすいため、従来の洗浄では菌の除去が不十分な場合がある。
【0009】
そこで、この発明の目的は、銀の使用量を増やさないで、台所用品の劣化または変形を生じさせることなく、台所用品を効果的に殺菌することが可能な台所用品殺菌装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に従った台所用品殺菌装置は、内部に台所用品を収容する洗浄槽と、洗浄槽に水を供給する水供給部と、水供給部によって供給される水に銀イオンを添加する銀イオン添加部とを備え、洗浄槽内にて銀イオン添加部によって銀イオンを添加された水が台所用品に接することによって銀イオンが台所用品に付着され、さらに、銀イオンが付着された台所用品に光を照射する光照射手段とを備える。
【0011】
銀イオンを付着させた台所用品に、さらに光を照射することによって殺菌作用を向上させることができる。このようにすることにより、殺菌対象となる台所用品を加熱しないで、必ずしも乾燥状態にする必要もなく、銀イオンを付着させた台所用品に光を照射するだけで殺菌作用を向上させることができる。したがって、殺菌対象となる台所用品が損傷することなく、簡単な工程で十分な殺菌作用を得ることができる。また、台所用品に銀イオンを付着させるだけの殺菌方法に比べて、本発明の台所用品殺菌装置によれば、少ない銀の使用量で所定の殺菌作用を得ることができる。
【0012】
この発明に従った台所用品殺菌装置においては、光照射手段が照射する光は可視光を含むことが好ましい。
【0013】
台所用品に照射される光が可視光を含むことにより、殺菌作用をより向上させることができるとともに、紫外線による台所用品の劣化、黄変、退色等の損傷を防止することができる。
【0014】
この発明に従った台所用品殺菌装置は、洗浄槽の内部に収容された台所用品を乾燥させる乾燥工程を行い、光照射手段は、乾燥工程中および/または乾燥工程後に光を照射することが好ましい。
【0015】
乾燥工程中や乾燥工程の終了後には、洗浄槽内に水が存在しないため、洗浄槽内の台所用品や洗浄槽に効率よく光を照射することができる。
【0016】
この発明に従った台所用品殺菌装置は、洗浄槽の内部に収容された台所用品を低温で洗浄する低温洗浄工程、および/または、洗浄槽の内部に収容された台所用品を低温で乾燥する低温乾燥工程を行うことが好ましい。
【0017】
銀イオンを付着させた台所用品に、さらに光を照射して殺菌効果を向上させると、低温でも十分な殺菌効果が得られる。そこで、台所用品の洗浄や乾燥を低温で行うことによって、温度を上げるためのエネルギーを抑えることができる。また、高温で洗浄や乾燥を行ったときに台所用品を形成する樹脂などに与えるダメージを抑えることができる。
【0018】
この発明に従った台所用品殺菌装置は、銀イオンの添加と不添加とを選択することが可能であり、光照射手段は、銀イオン添加部によって銀イオンが水に添加された場合に光を照射することが好ましい。
【0019】
台所用品に銀イオンが付着していない場合、台所用品に光を照射しても殺菌効果は得られない。そこで、たとえば、銀イオンを付着させないすすぎ工程を選択した場合には、乾燥工程においては、光照射手段を駆動せず、光を照射しないことにより、消費電力を節減することができる。また、光を照射する工程がなくなるために、全体の工程にかかる時間を短くすることができる。
【0020】
この発明に従った台所用品殺菌装置においては、光照射手段が可動であることが好ましい。
【0021】
光照射手段が可動であることによって、洗浄槽内において台所用品が動かなくても、より多くの部分に光を照射することができる。このようにすることにより、台所用品をより効果的に殺菌することができる。
【0022】
この発明に従った台所用品殺菌装置は、光照射手段によって照射された光を反射するための光反射手段を備え、光反射手段は可動であることが好ましい。
【0023】
台所用品殺菌装置が光反射手段を備え、光反射手段が可動であることによって、洗浄槽内において台所用品を動かさなくても、より多くの部分に光を照射することができる。このようにすることにより、台所用品をより効果的に殺菌することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、この発明によれば、銀の使用量を増やさないで、台所用品が損傷することなく、台所用品を効果的に殺菌する台所用品殺菌装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0026】
図1と図2は、この発明の一つの実施の形態として、台所用品殺菌装置の全体的な構成を示す垂直断面図である。図2は、図1の台所用品殺菌装置を右の方向から見た垂直断面図である。
【0027】
図1と図2に示すように、台所用品殺菌装置100は、キャビネット1の内部に、洗浄槽2と、水供給部として給水経路30と循環経路40と、回転ノズル50と、ヒータ6と、制御装置7と、銀イオン添加部として銀イオン溶出ユニット80と、光照射手段として光源9と、送風装置10(図2)を備える。
【0028】
洗浄槽2の内部には、台所用品200を載置するための籠11が配置されている。籠11は、前後方向(図1の紙面に垂直な方向)にスライドさせることができる。キャビネット1の前面ドア(図示しない)を開けて、籠11をスライドさせて洗浄槽2の外部に引き出し、台所用品200を籠11に載置したり、籠11から取り出したりすることができる。ここで、台所用品200とは、食器類の他に、まな板や包丁などの調理器具や布巾など、台所での作業に用いる物品を含む。
【0029】
給水経路30は、給水管31と、水道接続部32と、給水弁33と、給水口34とを含む。給水管31は、給水管31の一端である水道接続部32によって、台所用品殺菌装置100の外部の水道に接続されている。水道水は、水道接続部32から給水管31を通って台所用品殺菌装置100内に供給される。供給される水量は給水弁33によって調節される。給水管31の他端である給水口34は、洗浄槽2に接続されている。給水管31の途中には、銀イオン溶出ユニット80が配置されている。
【0030】
図3は、銀イオン溶出ユニット80の概略断面図である。図3(A)は水流の方向に沿った概略断面図、図3(B)は、図3(A)に直交し、水流の方向に沿った概略断面図である。
【0031】
図3(A)、図3(B)に示すように、銀イオン溶出ユニット80は、合成樹脂などの絶縁材料から形成されるケース81を有し、ケース81の内部には、板状の銀電極82a、82bが約5mmの距離を隔ててほぼ平行となるように配設されている。銀電極は、たとえば、大きさ20mm×50mm、厚さ1mm程度である。銀電極82a、82bにはそれぞれ接続端子83a、83bが一体に形成されている。接続端子83a、83bは、配線(図示せず)により制御装置7に接続されている。ケース81には、水が流入する流入口84、水が流出する流出口85が設けられており、流入口84からからケース81内に水が流入し、流出口85から水がケース81外に流出することができる。すなわち、銀電極82a、82bの長手方向と平行に水が流れることになる。
【0032】
銀電極82a、82bが水中に浸かり水が流れている状態で、制御装置7により銀電極82a、82b間に電圧が印加される。陽極側の銀電極において、Ag→Ag++e−の反応が起こり、水中に銀イオン(Ag+)が溶出する。銀イオン(Ag+)が溶出しつづければ陽極側の銀電極は減耗していく。銀電極82aまたは銀電極82bから溶出する銀イオンは、優れた殺菌効果及び防カビ効果を発揮する。従って、銀イオン水は、抗菌性を有する抗菌水として作用する。なお、ここでいう抗菌または殺菌とは、細菌や真菌を殺菌、抗菌することだけでなく、ウイルスを不活化することも含む。銀イオンによりウイルスが不活化されることは、「銀イオン水 L.A.クリスキー著 新日本鋳鍛造協会(出版会)1993年」に記載されている。
【0033】
一方、陰極側の銀電極では、H++e−→1/2H2の反応が生じ、水素が発生するとともに、水中に含まれるカルシウムなどが炭酸カルシウムなどのカルシウム化合物のスケールとして銀電極の表面に析出する。また電極の成分である銀の塩化物及び硫化物が表面に発生する。従って、使用が長期にわたると、炭酸カルシウムや塩化物や硫化物などのスケールが電極表面に厚く堆積し、銀イオンの溶出を妨げる。このため、銀イオンの溶出量が不安定になったり、電極の減耗が不均一になったりする。そこで、制御装置7は、銀イオン溶出ユニット80の銀電極82a、82b間の印加電圧の極性反転を周期的(例えば20秒毎)に行うことにより、銀電極82a、82bへのスケールの付着および、一方の銀電極のみが消耗してしまうことを防いでいる。
【0034】
電極は、純銀でなくても、銀を含有し、銀イオンを溶出可能な材料であればよい。
【0035】
また、銀イオンとともに、他の金属イオン溶出するものであってもよい。例えば、銅、亜鉛などと銀の合金でもよい。銅イオン、または亜鉛イオンは、防カビ効果があり、これらの金属と銀の合金を用いることで、両方の効果を得ることができる。
【0036】
また、電極の一方が銀イオンを溶出する電極で、もう一方が銀イオンを溶出しない電極であってもよい。電極形態が2枚以上の電極から構成される場合は、すべて銀イオンを溶出する電極であっても良いし、いずれかが銀イオンを溶出する電極で、他の電極が銀イオンを溶出しない電極(例えば、チタン電極、白金電極、炭素電極、導電性プラスチック電極など)であっても良い。
【0037】
銀イオンの溶出は、電流値が一定となるように定電流制御を行う。定電流制御とは、電極間の抵抗値変化に関わらず一定の電流値を保つように制御することであるが、電極表面での気泡の発生や、電極の振動による電極間の距離の変化などで電極間の抵抗値は常に変化するため、完全に一定にすることは困難で、多少の電流変動は発生する。また、抵抗値が著しく高いなどで、回路の許容範囲の電圧では一定の電流が流せず電流が低下することもある。ここでは、そのようなことがあっても、電極間の抵抗値の変化に対応して、電圧を変化させ、概ね抵抗値が上がれば電圧を上げ、抵抗値が下がれば電圧を下げて、電極間の電流値を安定させる制御を定電流制御とする。
【0038】
銀イオン水の銀イオン濃度は、電極間を流れる電気量と水の量などで制御することができる。例えば、90ppbの銀イオン水を得るには、銀イオン溶出ユニット80において、水量を20L/minに、電流を29mAにすればよい。また、600ppbの銀イオン水を得るには、水量を3L/min、電流を29mAにすればよい。なお、銀イオンの溶出量は、低電流域を除いて、電気量(C)=一定電流値(A)×時間(sec)に概ね比例する。また、水量が一定であれば、電気量と得られる銀イオン水の銀濃度には相関がある。このため、電流値や水量や通電時間を調節することで、所望濃度の銀イオン水を得ることができる。
【0039】
このように、銀電極82a、82bに所定電流を一定流量の水に流すことで所望の銀イオン濃度を得ることができる。また、給水弁の構造により、流量はほぼ固定できるため、一定電流を流すことにより、ほぼ一定の銀イオン水を生成することができる。様々な濃度の銀イオン水を得ることができるように、電流値と時間の組合せを、実験により予め求めておくことが好ましい。
【0040】
また、銀イオン溶出ユニット80においては、電圧の印加の有無で銀イオンの溶出/非溶出を選択でき、上述したように電流や電圧印加時間を制御することにより銀イオンの溶出量を制御することもできる。
【0041】
銀イオン溶出ユニット80としては、電気分解によるもの以外に、水に浸漬することにより銀イオンを徐放または溶解できる構造を持つ銀イオン含有物質を使用してもよい。銀イオン含有物質の具体例としては、銀イオンを担持しているゼオライト、シリカゲル、ガラス、りん酸カルシウム、りん酸ジルコニウム、ケイ酸塩、酸化チタン、ウィスカー、セラミックスなど、またはこれらの物質を含む樹脂や繊維などである。
【0042】
循環経路40は、残滓フィルター41と、吸込管42と、洗浄吐出管43と、ポンプ44と、モータ45と、排水吐出管46と、ケーシング47とを含む。ポンプ44は、ケーシング47の内部に配置されている。ケーシング47は、吸込管42と、洗浄吐出管43と、排水吐出管46とに接続されており、ケーシング47とそれぞれの管との接続部分には切替弁が設けられている。排水吐出管46は、排水管49の一端に接続されている。排水管49の他端は排水口48に接続されている。
【0043】
回転ノズル50は、洗浄槽2の内部に2個配置されている。回転ノズル50の上面には、所定の角度で水を噴出するための噴出口51が複数形成されている。
【0044】
ヒータ6は、洗浄槽2内の下部に配置され、洗浄槽2内に所定の深さまで水が溜まると水に浸る位置に配置されている。ヒータ6は、洗浄槽2内に溜められた水を所定の温度に加熱する。また、洗浄槽2内の気体を加熱して、台所用品200を乾燥させる。
【0045】
制御装置7は、洗浄槽2の底壁の下側に配置される。制御装置7は、使用者によって操作パネルより入力された操作指令と、センサ類(洗浄槽2内の水位センサや温度センサ、前面ドアの開閉センサなど)から制御信号を受けて、給水経路30と、循環経路40と、ヒータ6と、銀イオン溶出ユニット80と、光源9とに制御信号を送る。
【0046】
光源9としては、蛍光灯、電球、発光ダイオード(LED)等を用いることができる。光源9は、殺菌灯、紫外線(UV)ランプ等のように紫外域の光を主に含む光源、近紫外線を照射するブラックライト等のように近紫外域の光を主に含む光源、ハロゲンヒータ等のように赤外域の光を主に含む光源であってもよいが、蛍光灯、白熱灯、発光ダイオード(白色、青色、赤色、緑色などのLED)、可視光レーザー等のように可視光を主に含む光源を用いるのが好ましい。
【0047】
このように、台所用品200に照射される光が可視光を含むことにより、殺菌作用をより向上させることができるとともに、紫外線による台所用品200の劣化、黄変、退色等の損傷を防止することができる。
【0048】
図2に示すように、送風装置10は、吸込口12から気体を吸引し、送風口13から洗浄槽2内に気体を送風する。吸込口12から吸引される気体は、ヒータ6によって加熱される。
【0049】
続いて台所用品殺菌装置100の動作を、図1と図2を参照して、図4から図9に従って説明する。
【0050】
図4は、この発明の一つの実施の形態にかかる台所用品殺菌装置の制御関連の構成を示すブロック図である。
【0051】
図4に示すように、制御装置7は、操作パネル14、温度センサ16、水位センサ18から制御信号を受け、光源9、モータ45、銀イオン溶出ユニット80、給水弁33、送風機10に制御信号を送る。制御装置7は、計時部17とは制御信号の送受信を行う。
【0052】
図5から図9は、この発明の一つの実施の形態にかかる、台所用品殺菌装置の制御処理を順に示すフローチャートである。以下の工程において、所定の判断を行う主体は制御装置7である。
【0053】
図5は、この発明の一つの実施の形態として台所用品殺菌装置の全体的な制御処理の工程を順に示すフローチャートである。図5に示すように、ステップS100では洗浄工程が行われる。
【0054】
図6は、洗浄工程の制御処理を順に示すフローチャートである。
【0055】
使用者は、まず、キャビネット1の前面ドアを開けて、籠11をスライドさせて洗浄槽2の外部に引き出し、食器やまな板などの台所用品200を籠11に載置する。載置したら、籠11を洗浄槽2内に押し込み、洗浄槽2に洗剤を投入する。前面ドアを閉じて、操作パネルのスタートキーを押して、洗浄工程を開始する。
【0056】
洗浄工程が開始されると、ステップS101で、制御装置7は、給水弁33を開き、給水管31に水道水が流れ込むように制御する。給水された水は、給水口34を通って洗浄槽2内に流入し、洗浄槽2を底から所定の水位まで満たす。
【0057】
このとき、洗浄に用いられる水は、洗浄槽2内に入る前に銀イオン溶出ユニット80を通っている。しかし、電極には電圧を印加せず、銀イオンを溶出させない。
【0058】
ステップS102では、制御装置7は、水位センサ18から制御信号を受け、洗浄槽2内の水位が所定の水位に達したかどうかを確認する。洗浄槽2内の水が所定の水位に達していれば、ステップS103に進み、制御装置7は給水弁33を閉じるように制御し、ステップS104に進む。洗浄槽2内の水が所定の水位に達していなければ、ステップS102に戻る。
【0059】
ステップS104では、制御装置7は、モータ45を正回転させるように制御する。モータ45が正回転すると、ポンプ44は吸込管42を通じて吸い込んだ洗剤混じりの水を洗浄吐出口43から吐出する。洗浄吐出管43から吐出された水は2個の回転ノズル50に分配される。各回転ノズル50は噴出口51から斜め上方に水を噴射し、その反動でスプリンクラーのように回転する。回転ノズル50から噴射された水は、籠11に載置された台所用品200に衝突して、台所用品200を洗浄する。洗浄後の水は洗浄槽2の底部に落ちて、溜まっている水に混じり、再びポンプ44の吸引によって吸込管42に吸引される。台所用品200を洗浄した水には、台所用品200に付着していた食物残滓が混入するが、この食物残滓は残滓フィルター41に捕集され、ポンプ44に吸引される水には食物残滓が含まれない。残滓フィルター41を通った水は、再びポンプ44によって吸込管42内に吸引され、回転ノズル50から噴射され、洗浄槽2の底部に流れ落ちる、という循環が繰り返される。
【0060】
ステップS105では、使用者によってヒータ6の使用が選択されているかどうかを確認する。使用者は、操作パネル14を通して、ヒータ6を使用して加熱された水で洗浄するかどうかを選択することができる。また、ヒータ6による水の加熱の程度によって、高温洗浄工程と低温洗浄工程の二種類から選択することができる。
【0061】
低温洗浄工程においては、低温で洗浄することによって、温度を上げるためのエネルギーを抑えることができる。また、高温にしたときに台所用品200を形成する樹脂などに与えるダメージを抑えることができる。後のステップで、台所用品200に銀イオンを付着させ、さらに光を照射することによって殺菌効果を向上させているので、低温でも十分な殺菌効果が得られる。
【0062】
使用者によって、ヒータ6の使用が選択されていなければ、ステップS109に進む。ヒータ6の使用が選択されていれば、ステップS106で、制御装置7はヒータ6に通電するように制御し、計時部17が、ヒータ6への通電開始からの経過時間を計測開始する。
【0063】
ステップS106でヒータ6に通電すると、台所用品洗浄装置100内を循環する水が加熱される。回転ノズル50から噴射される水の物理的洗浄力及び洗剤の洗浄作用に高温が加わることにより、汚れは分離、溶解、分解されやすくなり、台所用品200は効果的に洗浄される。
【0064】
ステップS107では、制御装置7は、計時部17との送受信により、ヒータ6への通電から所定の時間が経過したかどうかを確認する。所定の時間が経過していれば、ステップS108で制御装置7はヒータ6への通電を停止するように制御し、洗浄工程を終了する。なお、この実施の形態では、ヒータ6への通電時間が所定時間に達したことによってヒータ6への通電を停止するが、温度センサ16によって水温が設定温度に達したことを検知してヒータ6への通電を停止し、洗浄工程を終了してもよい。
【0065】
ステップS109では、制御装置7は、計時部17との送受信により、モータ44の正回転開始から所定の時間が経過したかどうかを確認する。所定の時間が経過していなければ、ステップS109に戻る。所定の時間が経過していれば、洗浄工程を終了する。
【0066】
続いて、ステップS200の排水工程に進む。
【0067】
図7は、排水工程における制御処理を順に示すフローチャートである。
【0068】
図7に示すように、ステップS201で、制御装置7はモータ45を逆回転させるように制御し、洗浄槽2内の水を排水吐出管46から排水管49を通じて排水し、ステップS202に進む。
【0069】
ステップS202では、水位センサ18が洗浄槽2内の水位を検知し、制御装置7は水位センサ18から制御信号を受け、洗浄槽2内の水位が所定の水位以下であるかどうかを確認する。洗浄槽2内の水位が所定の水位以下でなければ、ステップS202に戻る。洗浄槽2内の水位が所定の水位以下であれば、排水工程を終了し、図5のステップS300に進む。
【0070】
図5のステップS300では、すすぎ工程を行う。
【0071】
図8は、すすぎ工程の制御処理を順に示すフローチャートである。
【0072】
図8に示すように、ステップS301で、制御装置7は給水弁33を開き、洗浄槽2にすすぎ水を導入するように制御する。
【0073】
ステップS302では、水位センサ18が洗浄槽2内の水位を検知し、洗浄槽2内の水位が所定の水位に達しているかどうかを確認する。洗浄槽2内の水位が所定の水位に達していなければ、ステップS302に戻る。洗浄槽2内の水位が所定の水位に達していれば、ステップS303に進み、給水弁33を閉じる。
【0074】
ステップS304では、制御装置7は、モータ44を正回転させるように制御して、回転ノズル50からすすぎ水を噴射させる。回転ノズル50から噴射された水は、台所用品200に衝突して、台所用品200をすすぐ。
【0075】
このとき、すすぎに用いられる水は、洗浄槽2内に入る前に銀イオン溶出ユニット80を通っている。このとき、電極に通電することで、銀イオンを溶出する。すすぎ水に混入した銀イオンは、台所用品200及び洗浄槽2の内部と、水の循環経路40を除菌する。
【0076】
ステップS305では、使用者によってヒータ6の使用が選択されているかどうかを確認する。使用者は、操作パネル14を通して、ヒータ6を使用して加熱された水ですすぐかどうかを選択することができる。また、ヒータ6による水の加熱の程度によって、高温すすぎ工程と低温すすぎ工程の二種類から選択することができる。
【0077】
低温すすぎ工程においては、低温ですすぐことによって、温度を上げるためのエネルギーを抑えることができる。また、高温にしたときに台所用品200を形成する樹脂などに与えるダメージを抑えることができる。このすすぎ工程において、台所用品200には銀イオンが付着される。後の工程において、銀イオンを付着された台所用品200にさらに光を照射して殺菌効果を向上させているので、低温ですすいでも十分な殺菌効果が得られる。
【0078】
使用者によって、ヒータ6の使用が選択されていなければ、ステップS309に進む。使用者によってヒータ6の使用が選択されていれば、ステップS306に進み、制御装置7はヒータ6に通電するように制御する。計時部17は、ヒータ6への通電開始からの経過時間を計測開始する。
【0079】
ステップS307では、制御装置7は計時部17との制御信号の送受信によって、ヒータ6への通電開始から所定の時間が経過したかどうかを確認する。所定の時間が経過していれば、ステップS308で制御装置7はヒータ6への通電を停止するように制御し、すすぎ工程を終了する。なお、この実施の形態では、ヒータ6への通電時間が所定時間に達したことによってヒータ6への通電を停止するが、温度センサ16によって水温が設定温度に達したことを検知してヒータ6への通電を停止し、すすぎ工程を終了してもよい。
【0080】
ステップS309では、制御装置7は、計時部17との送受信により、モータ44の正回転開始から所定の時間が経過したかどうかを確認する。所定の時間が経過していなければ、ステップS309に戻る。所定の時間が経過していれば、すすぎ工程を終了する。
【0081】
続いて、図5のステップS400の排水工程に進む。ステップS400の排水工程は、図7に示すステップS200の排水工程と同様の工程である。
【0082】
1回目のすすぎ工程の後、排水工程をはさんで、2回目のすすぎ工程に入る。所定回数だけすすぎ工程と排水工程を繰り返す。このようにすすぎ工程が何度も繰り返される場合、銀イオンの溶出は最終のすすぎ工程に限定してもよい。このようにすることにより、全てのすすぎ工程で銀イオンを溶出する場合に比べ、銀イオンの消費量を少なくすることができる。また、ヒータ6による水の加熱も最終のすすぎ工程に限定して、電力消費量を低減してもよい。
【0083】
所定の回数だけすすぎ工程と排水工程とが終了すれば、図5のステップS500の乾燥工程に進む。
【0084】
図9は、乾燥工程の制御処理を順に示すフローチャートである。
【0085】
図9に示すように、ステップS501で、制御装置7は送風機10を駆動させて洗浄槽2に送風口13から外気を送り込むように制御する。洗浄槽2内の気体は、前面ドア付近に設けた排気口(図示しない)から排気される。
【0086】
ステップS502では、制御装置7はヒータ6に断続的に通電し、洗浄槽2内の気体を加熱し、台所用品200や洗浄槽2の温度を高めるように制御する。このとき、使用者は、操作パネル14を通してヒータ6による気体の加熱の程度によって高温乾燥工程と低温乾燥工程の二種類から選択することができる。
【0087】
低温乾燥工程においては、低温で乾燥させることによって、温度を上げるためのエネルギーを抑えることができる。また、高温にしたときに台所用品200を形成する樹脂などに与えるダメージを抑えることができる。すすぎ工程において銀イオンを付着された台所用品200に、次のステップでさらに光を照射することによって、殺菌作用を向上させているので、低温で乾燥しても十分な殺菌効果が得られる。
【0088】
ステップS503では、制御装置7は、光源9を駆動し、光源9が洗浄槽2内に光を照射するように制御する。計時部17は光照射開始からの経過時間を計測開始する。
【0089】
乾燥工程において光を照射することにより、洗浄槽2内に水が存在しないため、洗浄槽2内の台所用品200や洗浄槽2に効率よく光を照射することができる。
【0090】
このように、銀イオンを付着させた台所用品200に、さらに光を照射することによって殺菌作用を向上させることができる。このようにすることにより、殺菌対象となる台所用品を加熱しないで、必ずしも乾燥状態にする必要もなく、銀イオンを付着させた台所用品に光を照射するだけで殺菌作用を向上させることができる。したがって、殺菌対象となる台所用品が損傷することなく、簡単な工程で十分な殺菌作用を得ることができる。また、台所用品に銀イオンを付着させるだけの殺菌方法に比べて、本発明の台所用品殺菌装置によれば、少ない銀の使用量で所定の殺菌作用を得ることができる。
【0091】
ステップS504では、制御装置7は計時部17と制御信号の送受信を行い、光照射開始から所定の時間が経過したかどうかを確認する。光照射開始から所定の時間が開始していなければ、ステップS504に戻る。光照射開始から所定の時間が経過していれば、ステップS505に進み、光の照射を停止する。続いて、ステップS506でヒータ6への通電を停止し、ステップS507で送風機10の駆動を停止して、全工程を終了する。
【0092】
乾燥後、台所用品の表面や洗浄槽の内面には銀の結晶が残り、その後も抗菌効果を発揮する。
【0093】
この実施の形態では、乾燥工程の中で光を照射するが、乾燥工程の中では光を照射せず、乾燥工程の終了後に光を照射してもよい。
【0094】
乾燥工程中や乾燥工程の終了後には、洗浄槽2内に水が存在しないため、洗浄槽2内の台所用品200や洗浄槽2に効率よく光を照射することができる。なお、乾燥工程以外の工程、例えばすすぎ工程において光を照射してもよい。
【0095】
また、この実施の形態においては、すすぎ工程で銀イオン溶出ユニット80を駆動させず、銀イオンが台所用品200に付着するようにしたが、銀イオンを付着させないすすぎ工程を選択することができるようにしてもよい。銀イオンを付着させないすすぎ工程を選択した場合には、乾燥工程においては、光源9を駆動せず、光を照射しない。
【0096】
台所用品200に銀イオンが付着していない場合、台所用品200に光を照射しても殺菌効果は得られない。そこで、銀イオンを付着させないすすぎ工程を選択した場合には、乾燥工程においては、光源9を駆動せず、光を照射しないことにより、消費電力を節減することができる。また、光の照射の工程がなくなるために、全体の工程にかかる時間を短くすることができる。
【0097】
図10は、この発明のもう一つの実施の形態として、台所用品殺菌装置の全体的な構成を示す垂直断面図である。
【0098】
図10に示すように、台所用品殺菌装置110は、台所用品殺菌装置100と異なる点としては、洗浄槽2の内壁が、光を反射する材料で形成されている。
【0099】
このようにすることにより、光源9から出た光は、洗浄槽2の内壁に当たると反射するので、洗浄槽2内に置かれた台所用品のより多くの部分に光を照射することができる。このようにすることにより、より効果的に殺菌することができる。
【0100】
図11は、この発明のさらにもう一つの実施の形態として、台所用品殺菌装置の全体的な構成を示す垂直断面図である。
【0101】
図11に示すように、台所用品殺菌装置120は、台所用品殺菌装置100と異なる点としては、洗浄槽2内の上部に光反射手段19を備える。
【0102】
光反射手段19は、光源9から照射された光を反射するためのパネルである。光反射手段19は、モータの駆動によって、図11中の一点鎖線で示す位置や二点鎖線で示す位置に動かすことができる。
【0103】
このように、光反射手段19が可動であることによって、洗浄槽2内において台所用品200を動かさなくても、より多くの部分に光を照射することができる。このようにすることにより、より効果的に殺菌することができる。
【0104】
図12は、この発明のさらに別の実施の形態として、台所用品殺菌装置の全体的な構成を示す垂直断面図である。
【0105】
図12に示すように、台所用品殺菌装置130は、台所用品殺菌装置100と異なる点としては、洗浄槽2内の上部に光反射手段19を備える。台所用品殺菌装置130の内壁は、光を反射する材料で形成されている。
【0106】
光反射手段19は、光源9から照射された光を反射するためのパネルである。光反射手段19は、送風機10の駆動によって発生する風が当たると、図12中の一点鎖線で示す位置や二点鎖線で示す位置に動く。このようにすることにより、光源9から出た光や、光源9から出て洗浄槽2の内壁で反射した光が光反射手段19に当たりやすくなり、光が様々な方向に反射される。
【0107】
このように、光反射手段19が可動であることによって、洗浄槽2内において台所用品200を動かさなくても、より多くの部分に光を照射することができる。このようにすることにより、より効果的に殺菌することができる。
【0108】
光反射手段19は、温度によって変形するバイメタルや形状記憶合金などを用い、温風などによる熱によって位置が変わるようにしてもよい。
【0109】
図13は、この発明のさらにまた別の実施の形態として、台所用品殺菌装置の全体的な構成を示す垂直断面図である。
【0110】
図13に示すように、台所用品殺菌装置140は、台所用品殺菌装置100と異なる点としては、洗浄槽2内に光反射手段19を備える。光反射手段19は、洗浄槽2内の送風口13に取り付けられている。
【0111】
光反射手段19は、光源9から照射された光を反射するためのパネルである。送風機10によって発生した風は、送風口13を通って洗浄槽2内に流入するが、この風が送風口13を通るときに、光反射手段19に当たる。光反射手段19は、風が当たると、図13中の一点鎖線で示す位置や二点鎖線で示す位置に動くことができる。
【0112】
このように、光反射手段19が可動であることによって、洗浄槽2内において台所用品200を動かさなくても、より多くの部分に光を照射することができる。このようにすることにより、より効果的に殺菌することができる。
【0113】
また、台所用品殺菌装置100〜140の光源9は、モータなどによって可動としてもよい。
【0114】
光源9が可動であることによって、洗浄槽2内において台所用品200が動かなくても、より多くの部分に光を照射することができる。このようにすることにより、より効果的に殺菌することができる。
【実施例】
【0115】
本発明の台所用品殺菌装置の殺菌効果を確認するために、殺菌対象の台所用品を構成する物質の一例としてポリエステルを用いて、銀イオンをポリエステルに付着させた後に、各種の光を照射することによって殺菌効果の有無を調べた。
【0116】
具体的には、銀イオンを付着させた試料に光を照射した後の抗菌効果の試験を行った。
【0117】
この試験に用いた試料は、平板状のポリエステルに銀イオン水を付着させ、乾燥させたものである。銀イオン水は、八尾市の水道水を用いて、銀電極から電解によって水中に銀イオンを溶出することによって作製した。
【0118】
光照射条件を、白色蛍光灯、ブラックライト、光照射なしの3条件とし、試料の表面への銀付着量を0(銀イオン水の付着処理なし)、5、10、20ng/cm2とした。抗菌試験は、抗菌製品技術協議会の光照射フィルム密着法にて行った。この方法は、試料に約1.0×105CFUの菌を含む菌液を付着させ、24時間経過後の菌数を測定する方法である。菌としては、黄色ブドウ球菌を用いた。白色蛍光灯は、20Wのものを使用し、サンプル付近の明るさ(照度)が5000ルクスとなる距離にサンプルを置いた。ブラックライトも同様に20Wのものを使用し、光源とサンプルの距離は、白色蛍光灯と同じになるようにした。
【0119】
その結果を表1と図14に示す。表1は、各光照射条件と銀付着量毎の試験後の菌数(単位:CFU)との関係を示す。図14は、試料への銀付着量と試料に存在する菌数との関係を示すグラフである。なお、グラフは、菌数の測定値が下限値(10CFU)以下のときの菌数を10CFUとみなして作図している。
【0120】
【表1】
【0121】
表1と図14に示したように、光を照射しなくても、銀付着量が20ng/cm2であれば、十分な殺菌作用が認められた。この試料では、表面に銀イオン水の蒸発残留物が付着し、それが菌液を滴下した時に再度溶解し、銀イオンによる殺菌作用が発揮されたと考えられる。
【0122】
また、光を照射することによって、殺菌作用が向上していることがわかる。銀付着量が10ng/cm2の試料では、ブラックライト、白色蛍光灯の照射で殺菌作用が向上しているが、銀付着量が5ng/cm2のような銀付着量が少ない条件では、主に可視光を含む白色蛍光灯を照射する方が、主に近紫外光を含むブラックライトを照射するよりも殺菌作用が向上することが認められた。
【0123】
本試験方法では、前述のように乾燥したサンプルに菌液という形で水を加えて評価している。そのため、表面に付着した銀イオン水の蒸発残留物が、溶解して銀イオンとなり、その銀イオンに光が照射されることにより、殺菌作用が向上したものと考えられる。
【0124】
基本的には、完全に乾燥した条件(たとえば水分活性が0.5以下となるような条件)では菌は死滅する。しかし、一般環境中においては、そこまで乾燥されることはない。
【0125】
例えば乾燥工程などで十分に乾燥した台所用品であっても、表面や内部に水分を含んでいる。そのため、特に湿潤な環境でなくても、一般環境中では至る所に菌が生息している。特に低温で乾燥したものであれば、このような形で含まれる水分はより大きい。
【0126】
従って、乾燥したサンプルにおける殺菌作用の評価方法として、水を加えることは、JIS Z2801、JIS L1902などでも行われている一般的な方法であり、不適切な方法ではない。また、本発明において乾燥した物が殺菌の対象であっても、菌が生存できる環境であれば、水分が存在するため、本試験で確認された効果も発揮される。菌が生存できない程度に完全に乾燥した環境であれば殺菌する必要はなく、問題ない。
【0127】
また、このような殺菌作用は、乾燥させずに銀イオン水が付着したままの試料に光を照射しても、銀イオン水には、今回の試験条件と同様に銀イオンが含まれているので、同様の殺菌作用の向上が得られると考えられる。したがって、銀イオン水に浸漬した状態の台所用品に光を照射しても殺菌作用を向上させることができ、たとえば、すすぎ工程にて銀イオン水を付着させた台所用品や、銀イオン水が付着した洗浄槽などの台所用品殺菌装置の部材に、光を照射しても殺菌作用を向上させることができると考えられる。
【0128】
また、上記の試験にて、銀付着量が5ng/cm2の試料に、主に可視光を含む白色蛍光灯を照射し、その照度(ルクス)を変化させた場合において試験後の菌数(単位:CFU)の変化を調べた。その結果を図15に示す。図15は、白色蛍光灯の照度と試料に存在する菌数との関係を示すグラフである。
【0129】
図15に示すように、光照射なしのときの菌数は8.0×104CFUであるのに対して、照度が1000ルクスのときの菌数は3.20×103CFUであり、照度が5000ルクスのときの菌数は10CFU以下程度であった。このように、光の強度(照度)によって本発明の方法による殺菌作用に変化が認められた。銀イオンを付着させた物質に少なくとも所定の照度以上で光を照射することにより、殺菌作用をより向上させることができることがわかる。
【0130】
また、グラフから読み取ると、光照射なしに対して菌数が2桁減少するのは1900ルクス付近であった。今回実施した光照射フィルム密着法では、抗菌効果の有無の判定を菌数が2桁減少しているか否かで判定する。また、菌数が2桁減少するというのは、JIS Z2801やJIS L1902などでも用いられており、一般的な抗菌効果の判断基準である。従って、殺菌作用を向上させるという観点から、所定の照度以上で光を照射するのが望ましいが、照射対象の位置での照度が1900ルクス以上であれば、より望ましい。
【0131】
以上に開示された実施の形態と実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の実施の形態と実施例ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正と変形を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】本発明の一つの実施の形態として、台所用品殺菌装置の全体的な構成を示す垂直断面図である。
【図2】本発明の一つの実施の形態として、台所用品殺菌装置の全体的な構成を示す垂直断面図である。
【図3】銀イオン溶出ユニットの概略断面図である。
【図4】本発明の一つの実施の形態にかかる台所用品殺菌装置の制御関連の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の一つの実施の形態として台所用品殺菌装置の全体的な制御処理の工程を順に示すフローチャートである。
【図6】洗浄工程の制御処理を順に示すフローチャートである。
【図7】排水工程における制御処理を順に示すフローチャートである。
【図8】すすぎ工程の制御処理を順に示すフローチャートである。
【図9】乾燥工程の制御処理を順に示すフローチャートである。
【図10】本発明のもう一つの実施の形態として、台所用品殺菌装置の全体的な構成を示す垂直断面図である。
【図11】本発明のさらにもう一つの実施の形態として、台所用品殺菌装置の全体的な構成を示す垂直断面図である。
【図12】本発明のさらに別の実施の形態として、台所用品殺菌装置の全体的な構成を示す垂直断面図である。
【図13】本発明のさらにまた別の実施の形態として、台所用品殺菌装置の全体的な構成を示す垂直断面図である。
【図14】試料への銀付着量と試料に存在する菌数との関係を示すグラフである。
【図15】白色蛍光灯の照度と試料に存在する菌数との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0133】
2:洗浄槽、9:光源、19:光反射手段、30:給水装置、80:銀イオン溶出ユニット、100,110,120,130,140:台所用品殺菌装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に台所用品を収容する洗浄槽と、
前記洗浄槽に水を供給する水供給部と、
前記水供給部によって供給される水に銀イオンを添加する銀イオン添加部とを備え、
前記洗浄槽内にて前記銀イオン添加部によって銀イオンを添加された水が台所用品に接することによって銀イオンが台所用品に付着され、さらに、
銀イオンが付着された台所用品に光を照射する光照射手段とを備える、台所用品殺菌装置。
【請求項2】
前記光照射手段が照射する光は可視光を含む、請求項1に記載の台所用品殺菌装置。
【請求項3】
前記洗浄槽の内部に収容された台所用品を乾燥させる乾燥工程を行い、前記光照射手段は、前記乾燥工程中および/または前記乾燥工程後に光を照射する、請求項1または請求項2に記載の台所用品殺菌装置。
【請求項4】
前記洗浄槽の内部に収容された台所用品を低温で洗浄する低温洗浄工程、および/または、前記洗浄槽の内部に収容された台所用品を低温で乾燥する低温乾燥工程を行う、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の台所用品殺菌装置。
【請求項5】
銀イオンの添加と不添加とを選択することが可能であり、前記光照射手段は、前記銀イオン添加部によって銀イオンが水に添加された場合に光を照射する、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の台所用品殺菌装置。
【請求項6】
前記光照射手段が可動である、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の台所用品殺菌装置。
【請求項7】
前記光照射手段によって照射された光を反射するための光反射手段を備え、前記光反射手段は可動である、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の台所用品殺菌装置。
【請求項1】
内部に台所用品を収容する洗浄槽と、
前記洗浄槽に水を供給する水供給部と、
前記水供給部によって供給される水に銀イオンを添加する銀イオン添加部とを備え、
前記洗浄槽内にて前記銀イオン添加部によって銀イオンを添加された水が台所用品に接することによって銀イオンが台所用品に付着され、さらに、
銀イオンが付着された台所用品に光を照射する光照射手段とを備える、台所用品殺菌装置。
【請求項2】
前記光照射手段が照射する光は可視光を含む、請求項1に記載の台所用品殺菌装置。
【請求項3】
前記洗浄槽の内部に収容された台所用品を乾燥させる乾燥工程を行い、前記光照射手段は、前記乾燥工程中および/または前記乾燥工程後に光を照射する、請求項1または請求項2に記載の台所用品殺菌装置。
【請求項4】
前記洗浄槽の内部に収容された台所用品を低温で洗浄する低温洗浄工程、および/または、前記洗浄槽の内部に収容された台所用品を低温で乾燥する低温乾燥工程を行う、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の台所用品殺菌装置。
【請求項5】
銀イオンの添加と不添加とを選択することが可能であり、前記光照射手段は、前記銀イオン添加部によって銀イオンが水に添加された場合に光を照射する、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の台所用品殺菌装置。
【請求項6】
前記光照射手段が可動である、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の台所用品殺菌装置。
【請求項7】
前記光照射手段によって照射された光を反射するための光反射手段を備え、前記光反射手段は可動である、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の台所用品殺菌装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2008−43392(P2008−43392A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−219269(P2006−219269)
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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