説明

台所用液体洗浄剤組成物

【課題】従来の台所用液体洗浄剤組成物と同等以上の洗浄力を有しつつ、耐腐食性及び除菌力を有し、保存安定性を向上させた台所用液体洗浄剤組成物を提供すること。
【解決手段】(A)酸化亜鉛又は水酸化亜鉛と、(B)スルファミン酸と、(C)アニオン界面活性剤と、(D)両性又は半極性界面活性剤とを含有し、(B)成分と(A)成分とのモル当量比が、(B)/(A)=1.0以上で、かつ25℃でのpHが5.5以上である台所用液体洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、台所用液体洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
亜鉛イオンは、液体洗浄組成物において少量で様々な効果を付与できる優れた基材である(特許文献1〜4)。亜鉛イオンを液体洗浄組成物に安定に溶解させるために、塩化物や硫酸化物のような形態の水溶性の亜鉛化合物が用いられてきた(特許文献1〜4)。
しかし、亜鉛を塩化物や硫酸化物の形態で使用すると、液体洗浄剤組成物の製造タンクや一般家庭におけるシンクがステンレス鋼材から構成されるものであっても塩化物イオンにより腐食してしまったり、硫酸イオンが液体洗浄剤組成物に存在するナトリウムイオンと一緒になって硫酸Naを形成し、保存時、特に低温保存時に析出してしまったりするという問題があった。
このため、製造設備等を耐腐食性とする必要があり、液体洗浄剤組成物への亜鉛化合物の配合量が制限されていたりした。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−79700号公報
【特許文献2】特許第4024446号公報
【特許文献3】特開2004−277554号公報
【特許文献4】特開2005−336384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来の台所用液体洗浄剤組成物と同等以上の洗浄力を有しつつ、耐腐食性及び除菌力を有し、保存安定性を向上させた台所用液体洗浄剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らが鋭意検討した結果、亜鉛化合物として酸化亜鉛又は水酸化亜鉛を採用し、これを特定比のスルファミン酸存在下で水に溶解させることにより、上記目的を達成できることを見出した。
すなわち、本発明は、(A)酸化亜鉛又は水酸化亜鉛と、
(B)スルファミン酸と、
(C)アニオン界面活性剤と、
(D)アミンオキシド型界面活性剤と
を含有し、
(B)成分と(A)成分とのモル当量比が、(B)/(A)=1.0以上であり、かつ、25℃におけるpHが5.5以上である台所用液体洗浄剤組成物を提供する。
本発明はまた、(I)(A)酸化亜鉛又は水酸化亜鉛と(B)スルファミン酸とを、(B)/(A)=1.0以上のモル当量比で水に溶解させて混合物を得る工程、及び
(II)得られた混合物と、(C)アニオン界面活性剤と、(D)アミンオキシド型界面活性剤とを混合する工程
を含む、台所用液体洗浄剤組成物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、製造設備やシンクの腐食を抑制し、除菌力及び保存安定性を向上させた、従来の台所用液体洗浄剤組成物と同等以上の洗浄力、特に油汚れ洗浄力を有する台所用液体洗浄剤組成物を提供することができる。本発明の組成物は、一般的には洗浄剤組成物が泡立ちにくい、洗浄剤濃度が低くかつ油濃度が高い環境下でも泡立ちやすく、しかもいったん立った泡が壊れずに長く持続するので、同量の他の洗浄剤組成物を使用したときに比べて多量の食器等を洗浄することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
〔(A)成分:酸化亜鉛及び/又は水酸化亜鉛〕
本発明で使用する酸化亜鉛は水に不溶の化合物であり、水酸化亜鉛は水に難溶の化合物である。酸化亜鉛及び/又は水酸化亜鉛は、台所用液体洗浄剤組成物の洗浄力を向上させたり、該組成物へ除菌力を付与することができる。
本発明の組成物の全量を基準として、(A)成分は、好ましくは0.01〜2質量%、より好ましくは0.05〜1.5質量%、さらに好ましくは0.1〜1.0質量%の量で含まれるのが好ましい。このような量で含まれると、除菌効果および洗浄力向上効果を十分に発揮できる。これより多い量が含まれると増粘してしまう。
【0008】
〔(B)成分:スルファミン酸〕
本発明で使用するスルファミン酸は、酸化亜鉛及び水酸化亜鉛を溶解させることができる。
本発明の組成物の全量を基準として、(B)成分は、好ましくは0.025〜5質量%、より好ましくは0.05〜4質量%、さらに好ましくは0.1〜3質量%の量で含まれるのが好ましい。このような量で含ませると、酸化亜鉛又は水酸化亜鉛とスルファミン酸とを混合したとき肉眼で観察できる溶け残りがない。加えて、製造タンクやシンクの腐食を抑制することができる。
(B)スルファミン酸と(A)酸化亜鉛及び/又は水酸化亜鉛とのモル当量比が、1.0より小さいと酸化亜鉛及び/又は水酸化亜鉛が溶解しない場合がある。また、3.0より大きいと(B)スルファミン酸で(A)酸化亜鉛及び/又は水酸化亜鉛を溶解させるためのタンクが腐食することがあるので、(B)/(A)は3.0以下であるのが好ましい。(B)/(A)は1.0より大きく、2.0以下がより好ましい。
ここで、モル当量比とは、以下の式によって計算される。
【0009】
【数1】

【0010】
例えば、(B)成分のスルファミン酸(分子量:97.1、酸の価数:1)を0.65質量%と(A)成分の酸化亜鉛(分子量:81.4、塩基の価数:2)0.25質量%含有する場合,
【0011】
【数2】

【0012】
〔(C)成分:アニオン界面活性剤〕
本発明で使用することのできるアニオン界面活性剤としては、台所用液体洗浄剤組成物に通常用いられているものであれば特に制限なく使用することができる。
具体的には、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、アミノ酸系アニオン性界面活性剤等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で或いは2種以上組み合わせて使用することができる。本発明で用いるアニオン界面活性剤の炭素鎖長は、好ましくは炭素数8〜18、更に好ましくは炭素数10〜16である。
アニオン界面活性剤を構成する塩としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等の金属塩、アンモニウム塩、又はモノ、ジ、トリいずれの低級アルカノールアミン塩等があげられる。
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩及びアルカンスルホン酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有するのが好ましい。これらアニオン界面活性剤を含有する台所用液体洗浄剤組成物は洗浄力に優れる。
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩及びアルカンスルホン酸塩から選ばれる少なくとも1種を含有するのが望ましい。これらアニオン界面活性剤を含有する台所用液体洗浄剤組成物は、特に洗浄力に優れると共に、低温安定性にも優れる。
【0013】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩としては、炭素数10〜16、好ましくは炭素数12〜14のアルキル基を有し、炭素数2〜4、好ましくは炭素数2のオキシアルキレン基が平均0.1〜5、更に好ましくは0.3〜4モル付加したものが好適である。オキシアルキレン基の平均付加モル数がこれらの範囲を外れると、洗浄力又は低温安定性が低下する場合がある。特開2001−172698号公報に開示されているようなポリオキシエチレン基の付加モル分布の狭いものを使用することもできるし、分布の広いものを使用することもできる。分布幅の狭いものの方が組成物の低温安定性が優れるので好ましい。
特に、エチレンオキサイドの付加モル数の分布が以下の式により定義されるナロー率が55%以上であるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩がより好ましい。ナロー率が55%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは65%以上であると、本発明の組成物の低温安定性がより良好になる。
ナロー率=Ymax-2+Ymax-1+Ymax+Ymax+1+Ymax+2
(ここで、エチレンオキサイドの付加モル数がiである割合をYiとし、式(1)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩の全量を基準にして、Yiがとる最大値をYmaxとし、
iがYmaxをとるときのエチレンオキサイドの付加モル数の値をnmaxとし、
nが(nmax−2)であるときのYiの値をYmax-2とし、
nが(nmax−1)であるときのYiの値をYmax-1とし、
nが(nmax+1)であるときのYiの値をYmax+1とし、
nが(nmax+2)であるときのYiの値をYmax+2とする。
但し、nmax-2、nmax-1又はnmaxがゼロのとき、Ymax-2、Ymax-1又はYmaxは算入しない。)
【0014】
このようなナロー率が高いポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、即ち、エチレンオキサイドの付加モル数分布が狭いポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩の製造方法としては、例えば、高級アルコールとエチレンオキサイドから常法により合成した反応生成物から、蒸留等により所望の分子量範囲、すなわち、所望のエチレンオキサイド付加モル数のポリオキシエチレンアルキルエーテル(アルコールエトキシレート)を分取し、ついで、これを硫酸化反応し、中和することにより得られる。また、特許第3312883号公報の実施例1に記載の方法、すなわち、特定の触媒を使用した方法により、ナロー率55%以上の狭いエチレンオキサイド付加モル数の分布をもったポリオキシエチレンアルキルエーテルを得ることができるので、これを硫酸化反応し、中和することによっても得られる。
【0015】
本発明において使用できるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩の原料となるアルコールとしては、例えば下記のものが挙げられる。
(a)シェルケミカルズ社製、商品名 ネオドール23(分岐率:20%)。これは、n−オレフィンから改良オキソ法により生成し、精留したものである。
(b)ブテンの3量体からオキソ法により得られるC13アルコール(分岐率:100%)
(c)中鎖アルコールからガーベット反応により得られる高級アルコール(分岐率100%)
(d)Sasol社製、商品名 Safol23(分岐率50%)。これは、石炭のガス化から得られるオレフィンをオキソ法によりアルコールを得、更に水素化したものである。
(e)P&G社製、商品名CO1270(分岐率0%)。これは天然油脂から合成された、C12/C14=70%/30%の天然高級アルコールである。
これらアルコールは、工業グレードで商業的に入手できる。
【0016】
上に記載の「分岐率」について、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩の原料となる1級高級アルコールを例に説明する。高級アルコールは、以下の(I)から(II)式で表される分岐高級アルコールと式(III)で表される直鎖高級アルコールとの混合物とする。
【0017】
【化1】

【0018】
式(I)〜(III)において、R1, R2, R5 は、炭素数1以上の直鎖アルキル基であり、R3、R4は炭素数2以上のアルキルであり、pは1であり、qは2〜3であり、rは、1以上の整数であり、各式における炭素数の合計はポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩のアルキルエーテル部分におけるアルキル基の炭素数に等しい。
「分岐率」は、上記式(I)〜(III)で表される化合物における炭化水素部分の全質量に対する、上記式(I)〜(III)で表される化合物における分岐アルキル基の質量の割合を表す。
【0019】
分岐率は、GC/MSを用い、下記条件で測定することができる。
<GC/MSの測定条件>
カラム:Ultra Alloy PY−1
温度:オーブン;昇温速度 10℃/分 50→310℃
注入口;310℃
検出器;310℃
キャリアガス:He
【0020】
アルカンスルホン酸塩としては、以下の式(1)で表すことができる化合物を用いることができる。
【0021】
【化2】

【0022】
式中m+nは7〜18、好ましくは10〜14である。
Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカノールアミン又はアンモニウムであり、具体的には、例えばナトリウム、カリウム、マグネシウム、アンモニウム、及び、モノ、ジ及びトリエタノールアミン塩である。Mがナトリウム、カリウム、マグネシウム、アンモニウムであると、洗浄力が向上するので好ましい。
【0023】
(C)成分としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩と、上記式(1)で表されるアルカンスルホン酸塩とを併用するのが特に好ましい。この場合、前者と後者とは、質量比にして4/3〜8/1となる量で含まれるのが好ましい。
(C)成分は、本発明の組成物の全量を基準として、好ましくは10〜50質量%、より好ましくは10〜30質量%、特に好ましくは15〜30質量%の量で含まれるのが好ましい。このような量で含まれると、食器洗浄において十分に満足できる泡持続性を発揮できる。
【0024】
〔(D)成分:両性又は半極性界面活性剤〕
本発明で使用することのできる両性又は半極性界面活性剤としては、台所用液体洗浄剤組成物に通常用いられているものであれば特に制限なく使用することができる。(D)成分としては、半極性界面活性剤が好ましい。
本発明で使用できる半極性界面活性剤としては、アミンオキシド型界面活性剤が好ましい。アミンオキシド型界面活性剤としては、例えば炭素数8〜26のアルキルアミンオキサイド、アルキルアミドアミンオキサイド、アルキルヒドロキシアミンオキサイド等があげられる。洗浄力の点から、アルキル基の炭素数は8〜16、更に10〜14である事が好ましい。最も好ましいアミンオキシド型界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミンオキシド、ヤシアルキルジメチルアミンオキシド又はラウリルアミドプロピルアミンオキシドである。例えばアロモックスDM12D-W(ライオンアクゾ社製)が市販されている。
本発明で使用できる半極性界面活性剤としては、下記一般式(2)で示されるものが挙げられ、これらは単独であるいは2種以上組み合わせて配合することができる。
【0025】
【化3】

【0026】
式(2)中のR1は、直鎖又は分岐の炭素数8〜16、好ましくは10〜14のアルキル又はアルケニル基である。R2、R3は炭素数1〜3のアルキル基またはヒドロキシアルキル基である。R4は、炭素数1〜4のアルキル基であり、Aは−CONH−、−NHCO−、−COO−、−OCO−、または−O−から選ばれる基であり、nは0または1の数である。
更なる洗浄力の点からアルキルジメチルアミンオキシド/アルキルアミドプロピルジメチルアミンオキシドが好ましく、炭素数が10〜14であるアルキルジメチルアミンオキシドが特に特に好ましい。
本発明の組成物の全量を基準として、(D)成分は、好ましくは1〜15質量%、より好ましくは2〜10質量%、特に好ましくは2〜8質量%の量で含まれるのが好ましい。このような量で含まれると、洗浄力と低温安定性を両立することができる。両性/半極性界面活性剤が少ないと洗浄力が低下し、多いと低温安定性が低下する。また、本発明の高洗浄力を達成する上で、前記アニオン界面活性剤と両性/半極性界面活性剤合計の重量比率は、7/1〜1/5が望ましく、さらに好ましくは6/1〜1/4であることが望ましい。
【0027】
本発明の組成物のpHは25℃で5.5以上である。好ましくは5.5〜7.5で、さらに好ましくは6.0〜7.0である。
(D)成分は、pHによって電荷が変化し、(C)成分との相互作用が変化する。pHが5.5未満の場合、(D)成分と(C)成分の相互作用が強すぎ、ゲル化または固化を起こしやすく、凍結復元性が低下する。さらに、酸性物質により製造設備やシンクの耐腐食性が低下する。7.5より大きい場合には、逆に相互作用が弱くなりすぎ、洗浄性能の向上効果が小さくなる場合がある。また、長期保存により(A)成分の水酸化物が生成し組成物に濁りが発生するが場合がある。
本発明の組成物のpHは、必要に応じpH調整剤によって5.5以上に調整する。pH調整剤としては、低温安定性を改善するハイドロトロープ効果を有する酸もしくはアルカリ剤を使用することが望ましい。酸としては、好ましくは、芳香族スルホン酸および芳香族カルボン酸。さらに好ましくは、p−トルエンスルホン酸、クメンスルホン酸、メタキシレンスルホン酸である。また、アルカリ剤としてはモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリアタノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられ、好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウムである。なお、本発明の組成物のpHは、本発明の組成物をガラス瓶に充填して25℃の恒温槽にて25℃に調整した後、ガラス電極を用いてpHを測定することにより求めることができる。
【0028】
〔任意成分〕
本発明の組成物は、上記(A)〜(D)成分に加え、台所用液体洗浄剤組成物に通常含まれている成分を含むことができる。このような成分としては、ノニオン界面活性剤;水酸化マグネシウム;芳香族スルホン酸塩等のハイドロトロープ剤;エタノール、イソプロパノール、ブチルカルビトール等の水溶性溶剤;グリコール酸、乳酸、りんご酸、クエン酸、酒石酸、グルコン酸等のヒドロキシカルボン酸や、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸等の多価カルボン酸やエチレンジアミン四酢酸、ニトリロ酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸等のアミノカルボン酸、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、ポリアクリル酸/ポリマレイン酸の共重合体等の高分子型カルボン酸型キレート剤;粘度調整剤、着色剤、酸化防止剤、防腐剤、殺菌剤、除菌剤、消炎剤、薬効成分、香料、天然抽出物等があげられる。
【0029】
〔(E)成分:ノニオン界面活性剤〕
ノニオン界面活性剤を添加することにより、起泡力を増強することができる。本発明に用いることのできるノニオン界面活性剤としては、台所用液体洗浄剤組成物に通常用いられているものであれば特に制限無く用いることができる。
特に、下記式(3)又は(4)で示される化合物が好ましい。
R−CONH−CH2CH2O−(EO)n−H ・・・(3)
[式中、R−COは炭素数6−18のアシル基であり、nはエチレンオキサイドの平均付加モル数を示し、nは0〜5である。]
式(3)において、R、炭素数5-17の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基の混合である。好ましくは直鎖のアルキル基であり、洗浄力と溶解性のバランスに優れた点から炭素数7-11が好ましい。又、炭素数9のものは(E)成分全体に対して好ましくは50%以
上、より好ましくは80%以上である。nは洗浄効果の点で好ましくは0-5、より好ましくは0-3である。
R−CH2CH2O−(EO)m−H ・・・(4)
[式中、Rは炭素数6−18のアルキル基であり、mはエチレンオキサイドの平均付加モル数を示し、mは0〜20である。]
式(4)において、R-は、炭素数6-18の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基の混合である。好ましくは直鎖のアルキル基であり、洗浄力と溶解性のバランスに優れた点から炭素数8-12が好ましい。
(E)成分は、本発明の組成物の全重量を基準にして2〜20質量%含まれるのが好ましく、3〜15質量%含まれるのがより好ましく、4〜10質量%が特に好ましい。
【0030】
〔(F)成分:水酸化マグネシウム〕
水酸化マグネシウムを添加することにより、洗浄力を向上させることができる。
本発明の組成物の全量を基準として、(F)成分は、好ましくは0.01〜2質量%、より好ましくは0.015〜1.5質量%、特に好ましくは0.02〜1.0質量%の量で含まれるのが好ましい。このような量で含まれると、洗浄力向上効果を十分に発揮できる。これより多い量が含まれると増粘してしまう。
【0031】
本発明の組成物の25℃における粘度(mPa・s)は50〜500がよい。好ましくは50〜300、さらに好ましくは80〜200がよい。50未満のとき、液たれの問題が生じることがある。500より大きい場合、容器からの吐出性が悪くなることがある。粘度調整剤としては、低温安定性を改善するハイドロトロープ効果を有する溶剤、有機塩、無機塩、高分子が好ましい。なお、本発明の組成物の粘度は、本発明の組成物をPS11瓶に90g充填し、25℃の恒温槽にて25℃に調整し、芝浦システム(株)製 ビスメトロンVDA型粘度計にNo.2ローターを設置し、恒温にした試料液をセットし、はじめにローターの回転数を60rpmに設定し、20秒後の粘度を測定することにより求めることができる。
【0032】
〔台所用液体洗浄剤組成物の製造方法〕
本発明の組成物は、先ず、(I)(A)酸化亜鉛又は水酸化亜鉛と(B)スルファミン酸とを、(B)/(A)=1.0以上になるモル当量比で水に溶解させて混合物を得る。(F)水酸化マグネシウムを用いるときは、工程(I)の時に混合し、その場合、モル当量比は(B)/((A)+(F))=1.0以上となるのが好ましい。次いで、(II)得られた混合物と、(C)アニオン界面活性剤と、(D)アミンオキシド型界面活性剤、(E)ノニオン界面活性剤とを混合することにより製造することができる。
尚、任意成分を加えた後の25℃におけるpHが、5.5未満となる場合は上記pH調整剤等によって最終的にpHを5.5以上、好ましくは5.5〜7.5に調整することが出来る。
【実施例】
【0033】
実施例及び比較例の組成物を調製するのに用いた成分を以下に示す。
(A)成分
・酸化亜鉛(分子量81.4、塩基価数2)
・水酸化亜鉛(分子量99.4、塩基価数2)
・硫酸亜鉛7水和物(比較用)
・塩化亜鉛(比較用)
(B)成分
・スルファミン酸(分子量97.1、酸価数1)
・塩酸(比較用、分子量36.5、酸価数1。試薬 純正化学(株)、35%。表1及び表2中の値は、純分としての数値を示す)
・硫酸(比較用、分子量98.1、酸価数2。試薬 純正化学(株)、95%。表1及び表2中の値は、純分としての数値を示す)
【0034】
(C)成分
・NRES:C12−14ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(平均EO鎖長2モル、ナロー率55%)
原料アルコールとして、シェルケミカルズジャパン株式会社製の「Neodol23」(C12/C13=40%/60%、分岐率20%)と、P&G社製の「CO1270」(C12/C14=70%/30%、分岐率0%)との混合物(炭素数12のアルコール/炭素数13のアルコール=50質量%/50質量%、分岐率:20質量%)を用い、公知の方法によりこれにエチレンオキサイドを付加し、次いで硫酸エステル塩としたものを使用した。
・SAS:第2級アルカンスルホン酸ナトリウム(クラリアントジャパン(株)製、商品名HOSTAPUR SAS 60、炭素数14〜17)
【0035】
(D)成分
・AX:C12アルキルジメチルアミンオキシド(ライオンアクゾ社製、商品名:アロモックスDM12D−W)
(E)成分
E−1:ポリオキシエチレンカプリル酸モノエタノールアミド(式(3)中、n=1)
E−2:ポリオキシエチレンカプリン酸モノエタノールアミド(式(3)中、n=1)
E−3:ポリオキシエチレンラウリン酸モノエタノールアミド(式(3)中、n=1)
E−4:ポリオキシエチレン(EO=15)ラウリルエーテル(式(4)中、m=15;ライオン(株)製、レオックスLC−150)
E−5:ポリオキシエチレン(2)ラウリン酸モノエタノールアミド(式(3)中、n=2;川研ファインケミカル(株)製、アミゼット2L−Y)
【0036】
<共通成分g> 質量%(組成物の全量を基準とする)
pTS−H :3.0
クエン酸−3Na :0.3
安息香酸Na :1.0
エタノール :5.0
PEG1000 :2.0
香料 :0.3
pH調整剤 :必要に応じ適量
水 :バランス
<共通成分h> 質量%(組成物の全量を基準とする)
クメンスルホン酸Na:3.5
グリコール酸 :1.0
エタノール :7.0
安息香酸Na :1.0
PEG1000 :2.0
香料 :0.2
pH調整剤 :必要に応じ適量
水 :バランス
<共通成分i> 質量%(組成物の全量を基準とする)
クメンスルホン酸Na:3.5
クエン酸−3Na :0.3
エタノール :7.0
安息香酸Na :2.0
PEG1000 :2.0
香料 :0.2
pH調整剤 :必要に応じ適量
水 :バランス
【0037】
[実施例及び比較例の組成物の調製]
工程(I)
(A)成分と(B)成分とを、水に溶解させて混合物を得た。このようにして得られた混合物の外観を以下のようにして評価した。結果を表1及び表2に示す。なお、表1及び表2中の数値は、組成物の全量を基準とした質量%である。
工程(II)
得られた混合物と、残りの成分とを混合し、台所用液体洗浄剤組成物を得た。尚、実施例1〜7、11〜13、および比較例1〜6、8、10は水酸化ナトリウムでpHを調整した。実施例8、9はp−トルエンスルホン酸でpH調整を行った。
【0038】
((A)と(B)との混合物の外観の評価方法)
工程(I)で得られた混合物をよく攪拌後、25℃にて静置させ、外観を肉眼で観察した。
評価基準
○:透明
×:溶け残りあり
尚、比較例7の組成物はスルファミン酸を含まないため、比較例9の組成物は(B)/(A)のモル当量比が1.0未満であり酸化亜鉛が溶けずにそのまま残ったため、(C)成分と(D)成分とを混合することができず、従って以降の評価は行えなかった。
【0039】
上で得られた台所用液体洗浄剤組成物の耐腐食性、凍結復元性、洗浄効果の持続性、洗浄力、除菌力を以下のようにして評価した。結果を表1及び表2に示す。
(耐腐食性の評価方法)
テストピース(SUS304,3×30×50mm)表面をサンドペーパーで磨き不動態膜を除去したあと、腐食性のない中性洗剤とエタノールで油分を取り除いた。次に50mlビーカーにテストピースを入れ、サンプルを30ml入れた。ビーカー口以外の上部をアルミホイルで覆い50℃の恒温槽に入れ、1日後のテストピースの状態を肉眼で観察した。結果を表1及び表2に示す。
評価基準
○:腐食性なし
×:いずれかの部分に錆あり
−:測定不能
【0040】
(凍結復元(保存安定性)の評価)
PS11瓶にサンプル80gを充填し、−20℃で24時間凍結後、0℃で24時間放置し、このサイクルを3回繰り返した。その後目視で析出物の有無を確認した。結果を表1及び表2に示す。
評価基準
○:サンプル全体が透明均一で、析出物や澱みがない
×:析出物又は澱みが見られる
−:測定不能
【0041】
(洗浄力の評価方法)
牛脂1gを、10cm×15cmのタッパ容器(底面が10cm×15cmであり、高さが5cmの直方体であって、一つの平面が開放しているプラスチック容器)全体に均一になるように塗布した。11.5cm×7.5cm×3cmの食器洗い用スポンジに、38gの水と、2gの実施例又は比較例の組成物とを取り、数回手で揉んだ後、牛脂を塗布したタッパ容器を、25℃の水道水で通常家庭で行われるのと同様にして洗浄した。洗浄後、25℃の水でよくすすぎ、その時のタッパ容器の表面を手で触ったときの感触で、洗浄力を下記の基準に基づき、評価した。結果を表1及び表2に示す。3点以上が合格。
評価基準:
5点:タッパ容器のいずれの部位を触っても、キュッキュッと音がするような摩擦感が
あり、油の残留によるぬるつきはまったく感じられない。
4点:タッパ容器の底面および側面を触ると摩擦感があり、油の残留によるぬるつきは
感じられないが、角の部位には僅かにぬるつきが残っている。
3点:タッパ容器の底面を触ると摩擦感があり、油の残留は認められないが、角の部位
に一部ぬるつきが残っている。
2点:タッパ容器に一部摩擦感があるが、側面や底面にぬるつきを感じられる。
1点:タッパ容器全体にぬるつきが感じられ、明らかに油が残留していることが分かる。
−:測定不能
【0042】
(除菌効果の評価)
寒天平板培地で37±1℃で18〜24時間培養した黄色ブドウ球菌(NBRC 12732)を、0.3%ニュートリエント培地、3°DH硬水に加え、菌濃度が約1.0×108cfu/mlである菌液を調製した。
次に、容量110mlのねじ口瓶に、直径2.4cm、高さ3cmの円柱状に加工した食器用スポンジを投入した。次いで、0.5mlの上記菌液を加え、滅菌ガラス棒を用いて該スポンジに均一に揉み込んだ。ねじ口瓶を密閉後25±1℃で1時間放置し、該スポンジに菌液を馴染ませた。そこへ、実施例及び比較例の台所用液体洗浄剤組成物を0.5mlずつ投入し、新しい滅菌ガラス棒を用いて該スポンジに均一に揉み込み、再び密閉し25±1℃で18時間放置した。放置後、ねじ口瓶に20mlのSCDLP培地不活化剤を添加し、新しい滅菌ガラス棒を用いて該スポンジに均一に揉み込み、菌の増殖を停止させた。
この液の10倍希釈系列を作製し、トリプチックソイ寒天培地で混釈平板培養した。培地上に出現したコロニー数を測定し、初発菌数(約1.0×108cfu/ml)の対数値から上記試験後の菌数の対数値を引くことにより得られる数値を用いて下記の基準で判断した。結果を表1及び表2に示す。
評価基準
完全に死滅 ◎
除菌活性値5以上 ○
除菌活性値2以上5未満 △
除菌活性値2未満 ×
測定不能 −
【0043】
(洗浄効果の持続性の評価)
洗浄剤組成物がどのような環境下で泡を立てることができるか、引いては洗浄効果がどの程度持続するかの指標として、洗浄剤濃度が低くかつ油が存在する状態を設定し、そのときの泡量を評価した。
まず、実施例及び比較例の液体洗浄剤組成物を濃度が0.2質量%になるように、水道水で希釈して希釈液を調製した。
内径3cm、高さ25cmのガラス製の円筒管に、先に調製した希釈液を20mL投入し、市販のオリーブ油(味の素株式会社製)を2g添加した。
ついで、25℃で恒温にした後、振盪機を用いて1分間振盪した。停止直後の泡の高さ(mm)を測定し、泡量を下記評価基準に基づいて評価した。結果を表1、2に示す。3点以上が合格
5点:泡の高さが40mm以上。
4点:泡の高さが30mm以上、40mm未満。
3点:泡の高さが20mm以上、30mm未満。
2点:泡の高さが10mm以上、20mm未満。
1点:泡の高さが10mm未満
−:測定不能
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)酸化亜鉛及び/又は水酸化亜鉛と、
(B)スルファミン酸と、
(C)アニオン界面活性剤と、
(D)両性又は半極性界面活性剤と
を含有し、
(B)成分と(A)成分とのモル当量比が、(B)/(A)=1.0以上であり、かつ、25℃におけるpHが5.5以上である台所用液体洗浄剤組成物。
【請求項2】
組成物中の(A)成分の量が0.01〜2質量%である、請求項1記載の台所用液体洗浄剤組成物。
【請求項3】
組成物中の(B)成分の量が0.025〜5質量%である、請求項1又は2記載の台所用液体洗浄剤組成物。
【請求項4】
(D)成分が、アミンオキシド型界面活性剤である請求項1〜3のいずれか1項記載の台所用液体洗浄剤組成物。
【請求項5】
更に、(E)ノニオン界面活性剤を含有する請求項1〜4のいずれか1項記載の台所用液体洗浄剤組成物。
【請求項6】
更に、(F)水酸化マグネシウムを含有する請求項1〜5のいずれか1項記載の台所用液体洗浄剤組成物。
【請求項7】
(I)(A)酸化亜鉛又は水酸化亜鉛と(B)スルファミン酸とを、(B)/(A)=1.0以上のモル当量比で水に溶解させて混合物を得る工程、及び(II)得られた混合物と、(C)アニオン界面活性剤と、(D)アミンオキシド型界面活性剤とを混合する工程を含む、台所用液体洗浄剤組成物の製造方法。

【公開番号】特開2011−38094(P2011−38094A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160422(P2010−160422)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】