説明

合わせガラスの製造方法および合わせガラス

【課題】中間膜が異なる樹脂を積層してなる中間膜を用いて作製された合わせガラスの製造において、透明性に優れ、高い耐衝撃性能を有する合わせガラスの製造方法、および、合わせガラスの提供。
【解決手段】ゴム弾性を示す樹脂A(32)でなる層を熱接着性樹脂B(31,33)の層で狭持した3層構成の中間膜3と、ガラスとで積層体とし、該積層体のガラスと中間膜3との間を、脱気しながら減圧状態にして、該積層体を、熱接着性樹脂Bの融点以上、熱接着性樹脂Bの融点+10℃以下の温度範囲で一次加熱し、次いで減圧状態を大気圧に戻し、熱接着性樹脂Bの融点+10℃〜熱接着性樹脂Bの融点+15℃の温度範囲で二次加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合わせガラスに発生する光学的な欠陥を抑え、耐衝撃性能を向上させた、遮音性能を有する合わせガラスの製造方法、および、合わせガラスに関する
【背景技術】
【0002】
建物の多くの窓に、透明なガラス板が用いられている。ガラス板は耐久性のよい透明板で、採光性に優れているが、ダンピング性能が非常に小さい材料であるので、コインシデンス効果による遮音性能の低下は顕著である。そのため、中間膜で2枚以上のガラス板を積層してなる、合わせガラスが遮音性能を要求する窓に用いられてきた。これは、ダンピング性能を有する中間膜を使用して、窓ガラスの遮音性能を向上させるものである。即ち、中間膜は振動のエネルギーを熱エネルギーに変換して振動エネルギーを吸収する能力「制振性能」を兼ね備えているために使用されている。
【0003】
従来、建築用の合わせガラス用中間膜としては、透明性、接着性、耐衝撃性能の優れているポリビニルブチラール(以後PVBと略す)樹脂やエチレンビニルアセテート樹脂(以後EVAと略す)が多く用いられている。
【0004】
しかし建築用窓ガラスに使用される合わせガラスでは、透明性が高いこと、破損時の飛散防止の他に建物の内外の音に対する優れた遮音性が要求されている。一般に、JIS A 4706に規定されている、T−3等級の遮音性能を満足する窓ガラスの、厚みが最小となるガラス構成は、厚み6mmのガラス板2枚をPVBの中間膜で積層した合わせガラスである。この板厚が6mmのガラス板を2枚用いる合わせガラスは、重量が30kg/mとなり、この合わせガラスを嵌め込むサッシについても、窓ガラスの重さに相応する剛性力が必要となり、従って、開口部全体の重量は、通常の窓ガラスに比べると非常に重い。このため、作業性が悪く、材料費ばかりでなく、施工費用も高くなり、遮音特性の良い窓ガラスの軽量化が望まれていた。
【0005】
遮音性能の良い窓ガラスを軽量化する手段として、中間膜を厚くする、あるいは異なる厚みのガラス板を用いる等の方法があるが、製造費の上昇、目標とする遮音性能が得られない等、遮音窓としての実現が困難である。
【0006】
遮音性の良い窓ガラスの軽量化を中間膜の改善によって行う方法もある。例えば、特許文献1には、ポリビニルアセタール樹脂に関してその分子配列を変えて遮音性能を向上させる方法が開示されている。さらには、特許文献2には、可塑剤を含有させたポリビニルアセタール樹脂を3層構成にした中間膜が開示されている。
【0007】
また建物の窓に軽量で高性能の遮音性能を有する窓ガラスの提供を可能にする中間膜および該中間膜を用いる合わせガラスが特許文献3に開示されており、合わせガラスの遮音性能を向上させるためにポリスチレンとゴム系樹脂のブロック共重合でなる樹脂膜を2枚の透明樹脂で挟持させた樹脂製多層中間膜を用いて遮音性の高い合わせガラスを作製している。
【0008】
特許文献3のように中間膜の構造が多層になると、合わせガラスの作製段階で、虹色に見える光学的な欠陥(以後光学的欠陥と呼ぶ)が発生することがある。さらに耐衝撃性能はJIS R 3205記載のショットバッグ試験のL2−2を合格せず、PVBのみで作製される従来の合わせガラスよりも、力学的には低い性能であった。
【0009】
中間膜の構成に特徴のある合わせガラスの製造に関して、例えば特許文献4に加熱したまま減圧をリークすることが記載されている。
【特許文献1】特開平6−926号公報
【特許文献2】特開2004−2108号公報
【特許文献3】特開2007―091491号公報
【特許文献4】特開2003−146710号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
中間膜が異なる樹脂を積層してなる中間膜を用いて作製され合わせガラスの製造において、透明性に優れ、高い耐衝撃性能を有する合わせガラスの製造方法、および、合わせガラスの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の合わせガラスの製造方法は、2枚以上のガラスが中間膜を用いて積層される合わせガラスの製造方法において、(工程1)ゴム弾性を示す樹脂Aでなる層を熱接着性樹脂Bの層で狭持した3層構成の中間膜と、2枚以上のガラスとを用いて、ガラスの間に該中間膜を挿入して積層体とし、(工程2)該積層体のガラスと中間膜との間を、脱気しながら減圧状態にして、該積層体を、熱接着性樹脂Bの融点以上、熱接着性樹脂Bの融点+10℃以下の温度範囲で一次加熱し、次いで、(工程3)減圧状態を大気圧に戻し、熱接着性樹脂Bの融点+10℃〜熱接着性樹脂Bの融点+15℃の温度範囲で二次加熱することを特徴とする合わせガラスの製造方法である。
【0012】
また、本発明の合わせガラスの製造方法は、前記合わせガラスの製造方法において、熱接着性樹脂Bの膜の膜厚が0.01mm以上0.1mm以下を特徴とする合わせガラスの製造方法である。
【0013】
また、本発明の合わせガラスの製造方法は、前記合わせガラスの製造方法において、一次加熱中の脱気が、ゴム製の、真空バッグあるいはチューブを用いて行われることを特徴とする合わせガラスの製造方法である。
【0014】
また、本発明の合わせガラスの製造方法は、前記合わせガラスの製造方法において、一次加熱が、減圧状態の圧力が4×10Paに到達してから行われることを特徴とする合わせガラスの製造方法である。
【0015】
また、本発明の合わせガラスの製造方法は、前記合わせガラスの製造方法において、樹脂Aがスチレンとゴム系樹脂モノマーとの共重合体でなることを特徴とする合わせガラスの製造方法である。
【0016】
また、本発明の合わせガラスの製造方法は、前記合わせガラスの製造方法において、積層体を減圧状態にしているゴム製の真空バッグあるいはチューブと加熱体との間に、金属板を設けることを特徴とする合わせガラスの製造方法である。
【0017】
また本発明の合わせガラスは、1枚のガラスの板厚が板厚が3〜5mm、2枚のガラスの合計厚みが8〜10mmでなる2枚のガラスを用い、膜厚が0.2mm〜1mmの中間膜を用い、前記合わせガラスの製造方法によって製造され、JIS A 4706に規定される遮音等級T−3以上の遮音性能を有することを特徴とする合わせガラスである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の合わせガラスの製造方法を、ガラス2枚を用いて製造する場合について説明する。
【0019】
本発明の合わせガラスは、図1に示すように、ガラス2、中間膜3、ガラス4を重ね合わせた構成でなり、中間膜3は、図2に示すように、スチレンとゴム系樹脂モノマーとの共重合体でなる樹脂Aの膜を、熱接着性樹脂Bの膜で挟着させてなる3層構成のものが好適に用いられる。
【0020】
本発明の合わせガラスの製造方法は、図2に示す3層構成の中間膜を少なくとも1枚用い、少なくとも2枚以上のガラスを用いて製造される合わせガラスに適用できる。
【0021】
ガラスを3枚以上とするとき、図2に示す中間膜の他に、EVAやPVBを用いてもよい。
【0022】
樹脂Aとして、スチレンを5〜40重量%とゴム系樹脂モノマーを60〜95重量%で共重合させたものを用いることが好ましく、また、当該共重合体を水素添加したものが好ましい。
【0023】
特にスチレンとイソプレン・ブタジエンをブロック共重合させて水素添加したものが好ましい。
【0024】
ゴム系樹脂としては、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム等を用いることができる。
【0025】
熱接着性樹脂Bとして、合わせガラス用中間膜樹脂のPVB系(例えば積水化学工業株式会社製(商品名)S−LEC film)、EVA系(例えば積水化学工業株式会社製(商品名)S−LEC EN filmや東ソー株式会社製(商品名)メルセンG)、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル系、ウレタン系、塩化ビニル系から選ばれる1種以上の樹脂が好適に用いられる。
【0026】
樹脂Aの膜を熱接着性樹脂Bの膜で挟持した樹脂性多層中間膜において、熱接着性樹脂Bの膜の厚みは、樹脂Aの膜の厚みを1として、0.1〜1.0の範囲にすることが望ましく、また、樹脂Aの膜を熱接着性樹脂Bの膜で挟持して積層した多層中間膜の厚みは0.2mm以上とすることが望ましい。これは、この多層中間膜をガラス板2枚で挟持して作製される合わせガラスの遮音性能が有効とするためである。また、合わせガラスを作製するときの中間膜の取り扱いからも、厚みは0.2mm以上ある方が好ましい。
【0027】
ガラス板を多層中間膜で積層してなる合わせガラスにおいて、積層に用いる多層中間膜のロスファクター(損失係数)ηが大きいほど、ダンピング効果が大きく、遮音性能の高いことが期待される。 ロスファクターηは、部材に加えられる振動エネルギーをE、1サイクル中に熱に変換されるエネルギーをE´として、η=E´/2πEで求められ、振動エネルギーの吸収の程度を示す。
【0028】
従来合わせガラスに用いられているPVBの1kHzにおけるロスファクターηは、0.06であり、樹脂Aのロスファクターηは約0.1である。
また、遮音性能の温度依存性をタンデルタ(tanδ)でみると、PVBのタンデルタ(tanδ)が0.1〜0.2であるのに比べ、樹脂Aのタンデルタ(tanδ)は、0.4〜2.0で、温度によって変化するものの、PVB膜よりも大きな値を示す。
【0029】
前記タンデルタ(tanδ)は、動的粘弾性試験において求められ、貯蔵弾性率に対する損失弾性率の比として定義され、固体材料の粘弾性の測定に好適な装置により測定することができる。この装置として、例えば、オリエンテック社製 RHEOVibron DDV−III、が挙げられる。
【0030】
前記PVBと樹脂Aのタンデルタ(tanδ)の値は、引張りモード、振動周波数11Hz、昇温速度2℃/minの条件で貯蔵弾性率と弾性率を測定して求めた、温度範囲−25〜10℃の範囲に於ける値であり、樹脂Aのタンデルタ(tanδ)2.0は温度−15℃で示されるピーク値である。
【0031】
ロスファクターη、タンデルタ(tanδ)ともに、樹脂AのほうがPVBよりも大きく、樹脂Aを用いて合わせガラスを作製すれば、PVB膜を用いて作製される合わせガラスより遮音性能に優れたものとなった。1枚のガラスの板厚が4mm以上で、またロスファクターηが0.07以上で、タンデルタ(tanδ)が0.2以上の樹脂Aの膜を用い合わせガラスを作製すればJIS A 4706に規定される遮音等級T−3以上の遮音性能を有する合わせガラスが得られる。
【0032】
スチレンとゴム系樹脂モノマーとの共重合体でなる樹脂Aの膜を、熱接着性樹脂Bの膜で挟着させてなる中間膜を用い、以下のようにして合わせガラスを製造する。
【0033】
少なくとも2枚のガラスを用い、ガラスの間に前記中間膜を挟んで積層体を形成する(工程1)。この積層体を、工程2:積層体中(ガラスと中間膜との間)の空気を脱気しながら減圧状態にし、熱接着性樹脂Bの融点以上、熱接着性樹脂Bの融点+10℃以下の温度範囲で一次加熱する。
【0034】
図3のように、積層体42をゴム製の真空バッグ41の中に入れ、ゴム製の真空バッグ41内の空気を、真空ポンプ(図示せず)を用いて排気し、ゴム製の真空バッグ41内を減圧状態にすることにより、積層対中の空気を脱気して減圧状態にできる。
【0035】
あるいは、図4のように、積層体41の周辺エッジをチューブ43で覆い、チューブ内の空気を、真空ポンプ(図示せず)を用いて排気し、チューブ43内を減圧状態にすることにより、積層対中(ガラスと中間膜との間)の空気を脱気して減圧状態にできる。
【0036】
減圧状態は、減圧する圧力が4×10Paより大きいと、充分な脱気ができないで、空気が残留するので、4×10Pa以下にすることが望ましい。また、減圧の圧力が1×10Paより小さいと、圧力に到達するのに時間が係り生産性が悪くなるので、減圧状態の圧力は、1×10〜4×10Paとすることが望ましく、より望ましくは1×10〜4×10Paである。
【0037】
所定の減圧状態に到達した後、すぐに加熱を開始しても良いが、より好ましくは減圧状態を10分程度保持して、脱気が充分になされてから、加熱をすることを特徴とするが、望ましい。
【0038】
加熱は、減圧状態を保持したまま行うことが、脱気が充分に行えるので好ましい。
【0039】
加熱温度は、熱接着性樹脂Bの融点より低い温度で加熱すると、熱接着性樹脂Bの未融解部分や脱気不良が生じ、熱接着性樹脂Bの融点+10℃よりも高い温度で加熱すると、光学的欠陥が発生しやすいので、熱接着性樹脂Bの融点以上、熱接着性樹脂Bの融点+10℃以下の温度範囲で行うことが望ましい。
【0040】
加熱は、図3のように積層体41をゴム製の真空バッグ42に入れて減圧状態にする場合は、図5のように、積層体41を入れたゴム製の真空バッグ42を、金属板45に載置し、加熱装置46で加熱することが好ましい。
【0041】
図4のように、積層体41の周辺をゴム製のチューブで覆い、チューブ内を排気して減圧する場合は、図6のように、チューブ43を、積層体41に装着したまま、金属板45の上に載置し、加熱装置46で加熱することが好ましい。
【0042】
加熱装置46には、赤外線ヒータや電気ヒータを用いることができ、金属板にはアルミニウム板、ステンレス鋼板、鉄板、銅板等を用いることができる。中でも、アルミニウム板は、軽量で取り扱いやすく好ましい。
【0043】
金属板は、熱伝導が良いので、加熱装置の熱を受け、積層体を均一の温度分布で加熱することを可能にする。そのため、金属板は厚みが3mm以上とすることが好ましく、また、取り扱いやすさから、10mm以下とすることが望ましい。
【0044】
次に、工程3:工程2の減圧状態を大気圧に戻した後、熱接着性樹脂Bの融点+10℃〜熱接着性樹脂Bの融点+20℃の温度範囲で積層体を加熱する。
【0045】
図3〜6に示す、ゴム製の真空バッグ42やチューブ43を開放状態にして、積層体41を減圧の状態から大気圧の状態に戻す。
【0046】
大気圧の状態となった後、積層体41を、加熱装置46と金属板45とを用いて、熱接着性樹脂Bの融点+10℃〜熱接着性樹脂Bの融点+20℃の温度範囲で加熱する。
【0047】
加熱時間は特に限定するものではないが、10〜40分行うのが好ましく、より好ましくは20〜30分程度行う。
【0048】
熱接着性樹脂Bの融点+10℃以上の温度で加熱するのは、中間膜の未溶解部分を完全になくして、ガラスと中間膜との接着を強固とするためであり、熱接着性樹脂Bの融点+20℃以下の温度で加熱するのは、光学的欠陥の発生を防ぐためである。
【0049】
前記合わせガラスの製造方法で、板厚が4〜5mmのガラスを用い、膜厚が0.2mm〜1mmのスチレンとゴム系樹脂モノマーとの共重合体でなる樹脂Aの膜を、熱接着性樹脂Bの膜で挟着させてなる中間膜を用い、合わせガラスを製造することにより、従来のPVBを中間膜に用いて作製する合わせガラスが達成できなかった、JIS A 4706に規定される遮音等級T−3以上の遮音性能を有するものが作製でき、けいりょうで遮音特性の良い窓が実現される。
【実施例】
【0050】
実施例
樹脂Aの膜26には、ASTM D1238に準拠するメルトフローレートが2g/10minの、モノマーとしてのスチレンが12重量%、イソプレン・ブタジエンが88重量%でなるスチレン・イソプレン・ブタジエンブロック共重合体を水素添加してなる樹脂を用いた。
【0051】
熱接着性樹脂Bの膜には、ケン化EVA系の樹脂(東ソー株式会社製、商品名メルセンG7055)を用いた。
【0052】
厚みが0.05mmの熱接着性樹脂Bの膜の間に、樹脂Aの膜を成形して、3層構成の厚みが0.30mmの中間膜を作製した。
【0053】
中間膜のロスファクターηは0.13であり、またタンデルタ(tanδ)は0.8(0℃での値)であった。
【0054】
前記中間膜を、厚み4mm、サイズ1930mm×864mmのフロート板ガラス2枚の間に挿入して重ね、重ねたものを、ゴム製の真空バッグの下に厚み3mm、サイズ1260mm×2210mmのアルミ板を置き、上記積層体をゴム製の真空バッグ内に挿入し、4×10Pa以下で10分間減圧した後、オーブンに移し、熱接着性樹脂Bの膜の融点+5℃の80℃で40分間加熱した。
【0055】
次に、ゴム製の真空バッグをリークさせて減圧状態を大気圧に戻し、中間膜とガラスを積層したものをゴム製の真空バッグ内に挿入した状態で、熱接着性樹脂Bの膜の融点+15℃の90℃で加熱処理した。この加熱処理は20分間行った。
【0056】
加熱処理後、自然冷却して合わせガラスを得た。
【0057】
比較例1
二次加熱の温度を熱接着性樹脂Bの膜の融点+65℃の130℃、保持時間30分とした以外、実施例と同じ手順で合わせガラスを作製した。
【0058】
比較例2
二次加熱の温度を熱接着性樹脂Bの膜の融点+5℃80℃、保持時間30分とした以外、実施例と同じ手順で合わせガラスを作製した。
【0059】
比較例3
ゴム製の真空バッグの減圧状態を大気圧に戻さずに、減圧状態を保持したまま二次加熱を行った以外は実施例と同じ手順で合わせガラスを作製した。
[合わせガラスの特性評価]
次の項目について、実施例および比較例1〜3で作製した合わせガラスの評価を行った。
【0060】
評価結果を表1に示す。表1において、評価項目1が不良の比較例2、4〜6については、評価項目2〜4の評価を実施しなかった。
【0061】
評価項目1:JIS R 3205に準じて外観検査を行い、ヘーズの良否を判定した。
【0062】
評価項目2;ハロゲンランプで合わせガラスを照明し、合わせガラスの透過する光を、ハロゲンランプの光の入射角や、観察方向を変えながら、合わせガラスが色付いて観察される光学的欠陥がある場合を×、無い場合を○として評価した。
【0063】
評価項目3;JIS R 3205に準じてショットバッグ試験(L2−2)を行い、合否を判定した。
【0064】
評価項目4;JIS A 4706に準じて遮音性能を検査し、遮音等級T−3の合否を判定した。
物品の特性評価の結果を表1に示す。
【0065】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】合わせガラスの構成を示す断面図である。
【図2】本発明の合わせガラスに用いる中間膜の構成を示す断面図である。
【図3】真空バッグに積層体をいれて減圧状態とするところを示す概略図である。
【図4】チューブを用いて積層体を減圧状態とするところを示す概略図である。
【図5】真空バッグに入れられた積層体を加熱するところを示す概略断面図である。
【図6】チューブを用いて積層体を減圧状態とする場合の、積層体を加熱するところを示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0067】
1 合わせガラス
2 ガラス
3 中間膜
4 ガラス
31 熱接着性樹脂B
32 樹脂A
33 熱接着性樹脂B
41 積層体
42 真空バッグ
43 チューブ
45 金属板
46 加熱装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚以上のガラスが中間膜を用いて積層される合わせガラスの製造方法において、(工程1)ゴム弾性を示す樹脂Aでなる層を熱接着性樹脂Bの層で狭持した3層構成の中間膜と、2枚以上のガラスとを用いて、ガラスの間に該中間膜を挿入して積層体とし、(工程2)該積層体のガラスと中間膜との間を、脱気しながら減圧状態にして、該積層体を、熱接着性樹脂Bの融点以上、熱接着性樹脂Bの融点+10℃以下の温度範囲で一次加熱し、次いで、(工程3)減圧状態を大気圧に戻し、熱接着性樹脂Bの融点+10℃〜熱接着性樹脂Bの融点+15℃の温度範囲で二次加熱することを特徴とする合わせガラスの製造方法。
【請求項2】
熱接着性樹脂Bの膜の膜厚が0.01mm以上0.1mm以下を特徴とする請求項1に記載の合わせガラスの製造方法。
【請求項3】
一次加熱中の脱気が、ゴム製の、バッグあるいはチューブを用いて行われることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の合わせガラスの製造方法。
【請求項4】
一次加熱が、減圧状態の圧力が4×10Paに到達してから行われることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の合わせガラスの製造方法。
【請求項5】
樹脂Aがスチレンとゴム系樹脂モノマーとの共重合体でなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の合わせガラスの製造方法。
【請求項6】
積層体を減圧状態にしているゴム製のバッグあるいはチュウブと加熱体との間に、金属板を設けることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の合わせガラスの製造方法。
【請求項7】
1枚のガラスの板厚が3〜5mmで、2枚のガラスの板厚保の合計が8〜10mmでなる2枚のガラスを用い、膜厚が0.2mm〜1mmの中間膜を用い、請求項1乃至6のいずれかに記載の合わせガラスの製造方法によって製造され、JIS A 4706に規定される遮音等級T−3以上の遮音性能を有することを特徴とする合わせガラス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−256129(P2009−256129A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−106127(P2008−106127)
【出願日】平成20年4月15日(2008.4.15)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】