説明

合わせガラス体およびそれに用いる積層体

【課題】 互いに異なる曲率を有する2枚の曲面を有するガラス板の間に、重合性液晶化合物を含む組成物を固定してなる赤外線反射層が樹脂中間膜で挟み込んで配置された、良好な遮熱性能を有する合わせガラス体であって、樹脂中間膜および赤外線反射層におけるシワやワレが抑制された合わせガラス体の提供。
【解決手段】互いに異なる曲率を有する2枚の曲面を有するガラス板の間に、重合性液晶化合物を含む組成物を固定してなる赤外線反射層が樹脂中間膜で挟み込んで配置された、良好な遮熱性能を有する合わせガラス体において、曲率が大きい側のガラス板に接する樹脂中間体の厚みを曲率が小さい側のガラス板に接する樹脂中間体の厚みよりも厚くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合わせガラス体およびそれに用いる積層体に関する。本発明は、特に建材用窓、自動車用窓等に用いられる合わせガラス体、およびそれに貼付して用いる遮熱フィルムまたはこれらの合わせガラス体用中間膜として遮熱性能を高めるための積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境・エネルギーへの関心の高まりから省エネに関する工業製品へのニーズは高く、その一つとして住宅及び自動車等の窓ガラスの遮熱、つまり日光による熱負荷を減少させるのに効果のある、ガラス及びフィルムが求められている。日光による熱負荷を減少させるのには、太陽光スペクトルの赤外領域の太陽光線の透過を防ぐことが必要である。
【0003】
赤外光反射膜において、コレステリック液晶相を利用する方法が、遮熱性能を高める観点から提案されている(特許文献1〜9参照)。しかしこれを使い対象物に貼り合せることは薄くもろいこともあり、難しかった。特に自動車のフロントガラスなどの曲面を持つガラス(本発明においては、「ガラス」には、通常の狭義のガラス類の他、アクリル樹脂などのガラス代用物も含む)は液晶を含む赤外光反射膜の両側で曲率が異なり、その為に貼り合せが難しいものであった。すなわち、高い熱遮蔽性を備え、かつ自動車のフロントガラスにも使用可能な合わせガラスを安価に得ることは困難であった。
なお、特許文献8には、ポリビニルアセタール樹脂を主剤として成分を変えた膜を2層以上重ねることにより、透明性、耐候性、衝撃エネルギー吸収性、樹脂層界面での接着性、ガラス板との接触性等の合わせガラスに必要な基本性能を損なうことなく、コインシデンス効果の緩和によってTL値を高め、これにより優れた遮音性能を発揮させることができることが記載されている([0243]段落参照)。また、特許文献9には、無機微粒子を含むポリビニルアセタール樹脂を用いることにより、遮音性に優れた合わせガラス用中間膜であるとともに、太陽光を遮光もできる合わせガラス用中間膜、およびこの合わせガラス用中間膜を用いた遮音性および遮光性に優れた合わせガラスが提供できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−219543号公報
【特許文献2】特開2009−161406号公報
【特許文献3】特開2009−298661号公報
【特許文献4】特開2010−013311号公報
【特許文献5】特開2010−180089号公報
【特許文献6】特開昭59−223256号公報
【特許文献7】特表2008−542065号公報
【特許文献8】特開平6−000926号公報
【特許文献9】特開2007−008797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らが、互いに異なる曲率を有する2枚の曲面を有するガラス板の間に、重合性液晶化合物を含む組成物を固定してなる赤外線反射膜が樹脂中間膜で挟み込んで製造した合わせガラス体について、遮熱性能を検討した。このとき、新たな課題として、樹脂中間膜にシワが発生したり、赤外線反射層の膜ワレが発生したりすることが判明した。
本発明は、互いに異なる曲率を有する2枚の曲面を有するガラス板の間に、重合性液晶化合物を含む組成物を固定してなる赤外線反射層が樹脂中間膜で挟み込んで配置された、良好な遮熱性能を有する合わせガラス体であって、樹脂中間膜および赤外線反射層におけるシワやワレが抑制された合わせガラス体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明者が鋭意検討した結果、(1)曲率が大きい側のガラス板に接する樹脂中間体の厚みを曲率が小さい側のガラス板に接する樹脂中間体の厚みよりも厚くする、(2)曲率が大きい側のガラス板に接する樹脂中間体の組成と曲率が小さい側のガラス板に接する樹脂中間体の組成が異なるようにする、(3)曲率が大きい側のガラス板に接する樹脂中間体の添加剤と曲率が小さい側のガラス板に接する樹脂中間体の添加剤が異なるようにする、の少なくとも1つの態様により、樹脂中間膜のシワや赤外線反射膜のワレを防ぐことができることを見出し、本発明を解決するに至った。
【0007】
上記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1] 赤外線反射層と、該赤外線反射層の一方の表面側に配置された第一の樹脂中間膜と、該赤外線反射層の前記第一の樹脂中間膜が配置されている表面と反対側の表面側に配置された第二の樹脂中間膜とが積層されており、前記赤外線反射層が重合性液晶化合物を含む組成物を固定してなり、前記第一の樹脂中間膜の厚みが前記第二の樹脂中間膜の厚みよりも厚いことを特徴とする積層体と;該積層体の前記第一の樹脂中間膜に接し、かつ、少なくとも一部に曲面を有する第一のガラスと;該積層体の前記第二の樹脂中間膜に接し、かつ、少なくとも一部に曲面を有する第二のガラスと;が積層されており、前記第一のガラスの曲率が前記第二のガラスの曲率よりも大きいことを特徴とする合わせガラス体。
[2] 赤外線反射層と、該赤外線反射層の一方の表面側に配置された第一の樹脂中間膜と、該赤外線反射層の前記第一の樹脂中間膜が配置されている表面と反対側の表面側に配置された第二の樹脂中間膜とが積層されており、前記赤外線反射層が重合性液晶化合物を含む組成物を固定してなり、前記第一の樹脂中間膜の樹脂組成と前記第二の樹脂中間膜の樹脂組成が異なることを特徴とする積層体と;該積層体の前記第一の樹脂中間膜に接し、かつ、少なくとも一部に曲面を有する第一のガラスと;該積層体の前記第二の樹脂中間膜に接し、かつ、少なくとも一部に曲面を有する第二のガラスと;が積層されており、前記第一のガラスの曲率が前記第二のガラスの曲率よりも大きいことを特徴とする合わせガラス体。
[3] 赤外線反射層と、該赤外線反射層の一方の表面側に配置された第一の樹脂中間膜と、該赤外線反射層の前記第一の樹脂中間膜が配置されている表面と反対側の表面側に配置された第二の樹脂中間膜とが積層されており、前記赤外線反射層が重合性液晶化合物を含む組成物を固定してなり、前記第一の樹脂中間膜に含まれる添加剤と前記第二の樹脂中間膜に含まれる添加剤が異なることを特徴とする積層体と;該積層体の前記第一の樹脂中間膜に接し、かつ、少なくとも一部に曲面を有する第一のガラスと;該積層体の前記第二の樹脂中間膜に接し、かつ、少なくとも一部に曲面を有する第二のガラスと;が積層されており、前記第一のガラスの曲率が前記第二のガラスの曲率よりも大きいことを特徴とする合わせガラス体。
[4] 前記第一の樹脂中間膜に含まれる添加剤と前記第二の樹脂中間膜に含まれる添加剤が異なることを特徴とする[1]または[2]に記載の合わせガラス体。
[5] 前記第一の樹脂中間膜に含まれる添加剤として、熱線遮蔽用の微粒子および遮音用の微粒子の少なくとも一方を含むことを特徴とする[3]または[4]に記載の合わせガラス体。
[6] 前記赤外線反射層がコレステリック液晶相を固定してなる層を含むことを特徴とする[1]〜[5]のいずれか一項に記載の合わせガラス体。
[7] 前記コレステリック液晶相を固定してなる層が、前記第一の樹脂中間膜と接していることを特徴とする[6]に記載の合わせガラス体。
[8] 前記コレステリック液晶相を固定してなる層が、前記第二の樹脂中間膜と接していることを特徴とする[6]または[7]に記載の合わせガラス。
[9] 前記コレステリック液晶相を固定してなる層と、前記第二の樹脂中間膜の間に透明可塑性樹脂を含むことを特徴とする[6]または[7]に記載の合わせガラス体。
[10] 前記第一の樹脂中間膜と前記第二の樹脂中間膜が、いずれもポリビニルブチラールを含むことを特徴とする[1]〜[9]のいずれか一項に記載の合わせガラス体。
[11] 前記赤外線反射層が水平配向剤を含むことを特徴とする[1]〜[10]のいずれか一項に記載の合わせガラス体。
[12] 前記水平配向剤がフッ素系水平配向剤であることを特徴とする[1]〜[11]のいずれか一項に記載の合わせガラス体。
[13] 赤外線反射層と、該赤外線反射層の一方の表面側に配置された第一の樹脂中間膜と、該赤外線反射層の前記第一の樹脂中間膜が配置されている表面と反対側の表面側に配置された第二の樹脂中間膜とが積層されており、前記赤外線反射層が重合性液晶化合物を含む組成物を固定してなり、前記第一の樹脂中間膜の厚みが前記第二の樹脂中間膜の厚みよりも厚いことを特徴とする積層体。
[14] 赤外線反射層と、該赤外線反射層の一方の表面側に配置された第一の樹脂中間膜と、該赤外線反射層の前記第一の樹脂中間膜が配置されている表面と反対側の表面側に配置された第二の樹脂中間膜とが積層されており、前記赤外線反射層が重合性液晶化合物を含む組成物を固定してなり、前記第一の樹脂中間膜の樹脂組成と前記第二の樹脂中間膜の樹脂組成が異なることを特徴とする積層体。
[15] 赤外線反射層と、該赤外線反射層の一方の表面側に配置された第一の樹脂中間膜と、該赤外線反射層の前記第一の樹脂中間膜が配置されている表面と反対側の表面側に配置された第二の樹脂中間膜とが積層されており、前記赤外線反射層が重合性液晶化合物を含む組成物を固定してなり、前記第一の樹脂中間膜に含まれる添加剤と前記第二の樹脂中間膜に含まれる添加剤が異なることを特徴とする積層体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、互いに異なる曲率を有する2枚の曲面を有するガラス板の間に、重合性液晶化合物を含む組成物を固定してなる赤外線反射層が樹脂中間膜で挟み込んで配置された、良好な遮熱性能を有する合わせガラス体であって、樹脂中間膜および赤外線反射層におけるシワやワレが抑制された合わせガラス体を提供することが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の積層体の実施形態の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の合わせガラス体の実施形態の他の一例を示す概略図である。
【図3】図2の合わせガラス体の実施形態の断面の詳細を示す概略図である。
【図4】本発明の合わせガラス体の製造方法の実施形態の一例を示す概略図である。
【図5】本発明の合わせガラス体の製造方法の実施形態の他の一例を示す概略図である。
【図6】本発明の合わせガラス体の製造方法の実施形態の他の一例を示す概略図である。
【図7】実施例1の合わせガラス体に用いた積層体における、各層の光透過率のスペクトルを示した概略図である。
【図8】本発明の合わせガラス体の実施形態の他の一例を示す概略図である。
【図9】図8の合わせガラス体の実施形態の断面の詳細を示す概略図である。
【図10】本発明の積層体の製造方法の実施形態の一例を示す概略図である。
【図11】本発明の積層体の製造方法の実施形態の他の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0011】
[合わせガラス体]
本発明の合わせガラス体の第一の態様は、赤外線反射層と、該赤外線反射層の一方の表面側に配置された第一の樹脂中間膜と、該赤外線反射層の前記第一の樹脂中間膜が配置されている表面と反対側の表面側に配置された第二の樹脂中間膜とが積層されており、前記赤外線反射層が重合性液晶化合物を含む組成物を固定してなり、前記第一の樹脂中間膜の厚みが前記第二の樹脂中間膜の厚みよりも厚いことを特徴とする積層体と;該積層体の前記第一の樹脂中間膜に接し、かつ、少なくとも一部に曲面を有する第一のガラスと;該積層体の前記第二の樹脂中間膜に接し、かつ、少なくとも一部に曲面を有する第二のガラスと;が積層されており、前記第一のガラスの曲率が前記第二のガラスの曲率よりも大きいことを特徴とする。
本発明の合わせガラス体の第二の態様は、赤外線反射層と、該赤外線反射層の一方の表面側に配置された第一の樹脂中間膜と、該赤外線反射層の前記第一の樹脂中間膜が配置されている表面と反対側の表面側に配置された第二の樹脂中間膜とが積層されており、前記赤外線反射層が重合性液晶化合物を含む組成物を固定してなり、前記第一の樹脂中間膜の樹脂組成と前記第二の樹脂中間膜の樹脂組成が異なることを特徴とする積層体と;該積層体の前記第一の樹脂中間膜に接し、かつ、少なくとも一部に曲面を有する第一のガラスと;該積層体の前記第二の樹脂中間膜に接し、かつ、少なくとも一部に曲面を有する第二のガラスと;が積層されており、前記第一のガラスの曲率が前記第二のガラスの曲率よりも大きいことを特徴とする。
本発明の合わせガラス体の第三の態様は、赤外線反射層と、該赤外線反射層の一方の表面側に配置された第一の樹脂中間膜と、該赤外線反射層の前記第一の樹脂中間膜が配置されている表面と反対側の表面側に配置された第二の樹脂中間膜とが積層されており、前記赤外線反射層が重合性液晶化合物を含む組成物を固定してなり、前記第一の樹脂中間膜に含まれる添加剤と前記第二の樹脂中間膜に含まれる添加剤が異なることを特徴とする積層体と;該積層体の前記第一の樹脂中間膜に接し、かつ、少なくとも一部に曲面を有する第一のガラスと;該積層体の前記第二の樹脂中間膜に接し、かつ、少なくとも一部に曲面を有する第二のガラスと;が積層されており、前記第一のガラスの曲率が前記第二のガラスの曲率よりも大きいことを特徴とする。
このような前記第一〜第三の態様をとることによって、上述の本発明の効果を奏することができる。さらに、本発明の合わせガラス体は、遮音性能を従来よりも改善できることが好ましい。
以下、本発明の合わせガラス体の好ましい態様を説明する。本発明がこれらに限定されるものではないことは言うまでもない。
【0012】
<積層体>
本発明の合わせガラス体は、合わせガラス体が前記第一〜第三の態様である場合、それぞれ以下の第一〜第三の態様の積層体を含む。
本発明の積層体の第一の態様は、赤外線反射層と、該赤外線反射層の一方の表面側に配置された第一の樹脂中間膜と、該赤外線反射層の前記第一の樹脂中間膜が配置されている表面と反対側の表面側に配置された第二の樹脂中間膜とが積層されており、前記赤外線反射層が重合性液晶化合物を含む組成物を固定してなり、前記第一の樹脂中間膜の厚みが前記第二の樹脂中間膜の厚みよりも厚いことを特徴とする。
本発明の積層体の第二の態様は、赤外線反射層と、該赤外線反射層の一方の表面側に配置された第一の樹脂中間膜と、該赤外線反射層の前記第一の樹脂中間膜が配置されている表面と反対側の表面側に配置された第二の樹脂中間膜とが積層されており、前記赤外線反射層が重合性液晶化合物を含む組成物を固定してなり、前記第一の樹脂中間膜の樹脂組成と前記第二の樹脂中間膜の樹脂組成が異なることを特徴とする。
本発明の積層体の第三の態様は、赤外線反射層と、該赤外線反射層の一方の表面側に配置された第一の樹脂中間膜と、該赤外線反射層の前記第一の樹脂中間膜が配置されている表面と反対側の表面側に配置された第二の樹脂中間膜とが積層されており、前記赤外線反射層が重合性液晶化合物を含む組成物を固定してなり、前記第一の樹脂中間膜に含まれる添加剤と前記第二の樹脂中間膜に含まれる添加剤が異なることを特徴とする。
このような各態様の、重合性液晶化合物を含む組成物を固定してなる赤外線反射層が樹脂中間膜で挟み込んで配置された積層体を、互いに異なる曲率を有する2枚の曲面を有するガラス板の間に挟みこむことで、良好な遮熱性能を有する合わせガラス体であって、樹脂中間膜および赤外線反射層におけるシワやワレが抑制された合わせガラス体を得ることができる。さらに、このような第一〜第三の態様の積層体を用いることで、本発明の合わせガラス体の遮音性能も改善できることが好ましい。
【0013】
図1は、本発明の積層体の構造の一例を示す概略図であって、1は赤外線反射層を、3は第一の樹脂中間膜をそれぞれ示す。本発明における赤外線反射層とは、重合性液晶化合物を固定してなる層であって、かつ、赤外線を反射する能力を有する層であれば、特に定めるものではないが、コレステリック液晶相を固定してなる層(以下、「コレステリック液晶層」と呼ぶことがある)であることが好ましい。
本発明の積層体は、赤外線反射層1と第一の樹脂中間膜3の間に透明可塑性樹脂フィルムを含んでいても、含んでいなくてもよい。通常は、生産効率の観点から、赤外線反射層は、PETフィルム等の透明可塑性樹脂フィルムの上に設け、そのまま製品化し、最終製品である積層体の中に可塑性樹脂フィルムが残る構成とすることが好ましい。一方、あえて、該支持体を剥離する工程を採用することにより、積層体のさらなる薄膜化を達成してもよい。このような透明可塑性支持体を含まない、積層体は、膜の脆性に劣るため、製造がしにくいことが想定されていたが、本願発明者らの研究により、製造時の搬送張力および圧着条件を調整することによって、この問題を解決することができる。赤外線反射層1と第一の樹脂中間膜3は、隣接していてもよいし、他の構成層を有していてもよい。他の構成層としては、易接着層や粘着材層が挙げられる。
【0014】
本発明の積層体は、さらに、第二の樹脂中間膜3’を有する。図1では、第一の樹脂中間膜3、赤外線反射層1、透明可塑性樹脂フィルム2、第二の樹脂中間膜3’の順に積層するように設けられる。この場合、本発明では、前記赤外線反射層1と第二の樹脂中間膜3’の間に透明可塑性樹脂フィルムを含んでいなくてもよい。また、赤外線反射層1と第二の樹脂中間膜3’は、隣接していてもよいし、他の構成層を有していてもよい。
【0015】
(樹脂中間膜)
本発明の合わせガラス体では、第一および第二の樹脂中間膜の主成分を例えば共にPVBなどとした場合でも、第一および第二の樹脂中間膜の厚さや組成を変えること、および/または微粒子を添加した膜とすることで、コレステリック液晶膜を含め少なくとも3層の中間膜を配置することにより、遮熱性と、好ましくは遮音性を得る。
以下、樹脂中間膜について、本発明の合わせガラス体の第一〜第三の態様に対応させて説明する。
【0016】
本発明の合わせガラス体の第一の態様では、曲率半径の小さい側の樹脂中間膜を厚くすることで、遮熱性能を改善し、好ましくは遮音性能を改善する。コレステリック液晶膜の両側の樹脂中間膜の厚みの比は1.1から5倍であることが好ましい。また、薄い方の厚みを0.1〜5mm、厚い方の厚みを0.2〜5mmとすることが好ましい。さらに、薄い方の厚みを0.2〜2.0mm、厚い方の厚みを0.4〜3.0mmとすることがより好ましい。また、中間膜は複数のシートを重ねることによって厚膜化してもよい。
【0017】
なお、通常はコレステリック液晶膜の両側の樹脂中間膜(好ましくはPVB)の膜厚は同じである。
【0018】
本発明の合わせガラス体の第二の態様では、第一および第二の樹脂中間膜の樹脂組成が異なる態様とすることで、遮熱や遮音性能の効果を得ることができる。第一および第二の樹脂中間膜の樹脂組成が異なる態様とする場合、例えば特開平6−000926号公報や特開2007−008797号公報などに記載の樹脂から、第一および第二の樹脂中間膜をそれぞれ適当なものを選択して、遮熱や遮音性能の効果を得ることができる。それらの樹脂の組み合わせについては、特開平6−000926号公報や特開2007−008797号公報などに記載の態様を用いることができる。
【0019】
本発明で用いる第一および第二の樹脂中間膜は、主成分がポリビニルアセタール系の樹脂フィルムであることが好ましい。前記ポリビニルアセタール系の樹脂フィルムとしては特に制限はなく、例えば特開平6−000926号公報や特開2007−008797号公報などに記載のものを好ましく用いることができる。前記ポリビニルアセタール系の樹脂フィルムの中でも、本発明ではポリビニルブチラール樹脂フィルムを用いることが好ましい。前記ポリビニルブチラール樹脂フィルムは、それぞれ、ポリビニルブチラールを主成分とする樹脂フィルムであれば、特に定めるものは無く、広く公知の合わせガラス体用中間膜としてのポリビニルブチラール樹脂フィルムを採用できる。その中でも、本発明では、第一および第二の樹脂中間膜のそれぞれの樹脂組成のうち、一方は、異なる組成の層が複数積層されてなる中間膜とすることが遮音性能改善の観点から好ましい。なお、主成分である樹脂とは、前記樹脂中間膜の50質量%以上の割合を占める樹脂のことをいう。
【0020】
第一および第二の樹脂中間膜には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、他の添加剤を含んでいてもよい。
本発明の合わせガラス体の第三の態様では、前記第一の樹脂中間膜に含まれる添加剤と前記第二の樹脂中間膜に含まれる添加剤が異なることが好ましい。前記他の添加剤としては、例えば、熱線遮蔽用の微粒子および遮音用の微粒子、可塑剤を挙げることができ、本発明では熱線遮蔽用の微粒子および遮音用の微粒子の少なくとも一方を含むことが好ましい。前記熱線遮蔽用の微粒子および遮音用の微粒子としては、例えば、無機微粒子、金属微粒子を挙げることができる。このような微粒子を前記第一または第二の樹脂中間膜などの弾性体内に分散混在せしめることにより、遮熱の効果を得られる。同時に、このような構成により、音波の伝搬を阻害し、振動減衰効果を得ることが好ましい。前記微粒子の平均粒径は10nmないし1μm未満程度であることが好ましい。これ以上のサイズでは自動車用フロントガラスに使用するには透明性が不足する。従来1μm以上とされてきた微粒子のサイズをナノサイズレベルにすることにより、自動車のフロントガラスにも使用可能な透明性能を保持しつつ、遮音性能も同時に得ることが好ましい。また前記微粒子の構造は球状が望ましいが、真球でなくともよい。またその形状を変えることはしてもよい。また、前記微粒子は樹脂中間膜(好ましくはPVB)内で分散していることが望ましく、適当なカプセルに入れることや分散剤とともに添加することもよい。この場合の添加量は、特に制限はないが、樹脂成分の0.1〜10質量%であることも好ましい。
微粒子とコレステリック液晶膜とのハイブリット型の場合では、層設計上非遮蔽波長を作らないために通常遮光波長を重ねる。本発明では、遮光波長帯が重なった場合には吸収より反射の方が遮熱的に有利なため、本発明の合わせガラス体の第三の態様では、反射層が外側に有る層構成とするのが一般的である。すなわち、本発明の合わせガラス体の第三の態様では、微粒子を添加する層は、曲率の大きい第一のガラス側(自動車用フロントガラスであれば車内側)に配置される第一の樹脂中間層であることが、より好ましい。
【0021】
本発明に合わせガラス体が、前記第一の態様と前記第三の態様を共に満たす場合は、曲率の大きい第一のガラス側(自動車用フロントガラスであれば車内側)に配置される第一の樹脂中間層の厚みを厚くし、かつ、その厚い方の第一の樹脂中間層に微粒子を添加することが、遮熱および遮音の観点から好ましい。すなわち、具体的には、厚い方のPVBに金属や無機物の微粒子を添加してコレステリック液晶膜の赤外線の反射性能と、その反射波長より波長の長い領域の赤外線吸収性能を加えることによりさらなる熱遮蔽や好ましくは遮音性能の効果を得ることができる。
【0022】
前記無機微粒子としては、炭酸カルシウム、アルミナ、カオリンクレー、珪酸カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、タルク、長石粉、マイカ、バライト、炭酸バリウム、酸化チタン、シリカ、ガラスビ−ズ等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、混合して用いられてもよい。
【0023】
また、熱線遮蔽微粒子としては、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、インジウムドープ酸化亜鉛(IZO)、錫ドープ酸化亜鉛、珪素ドープ酸化亜鉛、アンチモン酸亜鉛、6ホウ化ランタン、6ホウ化セリウム、金微粉、銀微粉、白金微粉、アルミニウム微粉、鉄、ニッケル、銅、ステンレス、スズ、コバルト及びこれらを含む合金粉末等が挙げられる。遮光剤としては、カーボンブラック、赤色酸化鉄等が挙げられる。顔料としては、黒色顔料カーボンブラックと赤色顔料(C.I.Pigment red)と青色顔料(C.I.Pigment blue)と黄色顔料(C.I.Pigment yellow)の4種を混合してなる暗赤褐色の混合顔料等が挙げられる。
【0024】
上記可塑剤としては、特に限定されず、この種の中間膜用の可塑剤として一般的に用いられている公知の可塑剤を用いることができる。例えば、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート(3GH)、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)、トリエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエート(3G7)、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(4GO)、テトラエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエート(4G7)、オリゴエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(NGO)などが好適に用いられる。これらの可塑剤は、一般に、前記樹脂中間膜の主成分である樹脂(好ましくは、ポリビニルアセタール樹脂)100重量部に対して25〜70重量部の範囲で用いられる。
【0025】
(赤外線反射層)
本発明の積層体は、上述のとおり、前記赤外線反射層はコレステリック液晶相を固定してなる層であることが好ましい。
本発明では、前記コレステリック液晶相を固定してなる層が、4層以上の積層体であることが好ましい。本発明の積層体は、前記コレステリック液晶相を固定してなる層が、4層以上の積層体であることが好ましい。図9は、コレステリック液晶層の積層構成の一例を示したものであって、1は赤外線反射層の積層体全体を、3および3’は、それぞれ、第一および第二のポリブチラール樹脂フィルムを、15a、15b、16a及び16bは、各赤外線反射層を、をそれぞれ示している。
赤外線反射層15a、15b、16a及び16bは、コレステリック液晶相を固定してなる層であるので、当該コレステリック液晶相の螺旋ピッチに基づいて、特定の波長の光を反射する光選択反射性を示す。本発明の1つの実施形態では、隣接する赤外線反射層15aと15bは、それぞれのコレステリック液晶相の螺旋方向が互いに逆であるとともに、その反射中心波長λ15が同一である。また、同様に、隣接する赤外線反射層16aと16bは、それぞれのコレステリック液晶相の螺旋方向が互いに逆であるとともに、その反射中心波長λ16が同一である。本実施形態では、λ15≠λ16を満足するので、赤外線反射層15aと15bによって所定の波長λ15の左円偏光及右円偏光を選択反射するとともに、赤外線反射層16aと16bによって、波長λ15とは異なる波長λ16の左円偏光及び右円偏光を選択反射しており、全体として、反射特性の広帯域化が図れている。
【0026】
図9では、赤外線反射層15aと15bによる選択反射の中心波長λ15が、例えば1010〜1070nmの範囲にあり、赤外線反射層16aと16bによる選択反射の中心波長λ16が、例えば1190〜1290nmの範囲にあるなど、異なっていてもよい。選択反射波長がそれぞれ前記範囲である2組の赤外線反射層を利用することで、赤外線の反射効率を改善できる。太陽光エネルギー強度のスペクトル分布は、短波長であるほど高エネルギーであるという一般的傾向を示すが、赤外光波長域のスペクトル分布には、波長950〜1130nm、及び波長1130〜1350nmに、2つのエネルギー強度のピークが存在する。選択反射の中心波長が、1010〜1070nm(より好ましくは1020〜1060nm)の範囲にある少なくとも一組の赤外線反射層と、選択反射の中心波長が、1190〜1290nm(より好ましく波1200〜1280nm)の範囲にある少なくとも一組の赤外線反射層とを利用することにより、該2つのピークに相当する光をより効率的に反射することができ、その結果、遮熱性をより改善することができる。
【0027】
上記反射中心波長を示すコレステリック液晶相の螺旋ピッチは、一般的には、波長λ15で650〜690nm程度、波長λ16で760nm〜840nm程度である。また、各赤外線反射層の厚みは、1μm〜8μm程度(好ましくは3〜7μm程度)である。但し、これらの範囲に限定されるものではない。層の形成に用いる材料(主には重合性液晶化合物及びキラル剤)の種類及びその濃度等を調整することで、所望の螺旋ピッチの赤外線反射層を形成することができる。また層の厚みは、塗布量を調整することで所望の範囲とすることができる。
【0028】
上記した通り、隣接する赤外線反射層15aと15bは、それぞれのコレステリック液晶相の螺旋方向が互いに逆であり、同様に、隣接する赤外線反射層16aと16bは、それぞれのコレステリック液晶相の螺旋方向が互いに逆である。この様に、逆向きのコレステリック液晶相からなり、選択反射の中心波長が同一の赤外線反射層を近くに配置することで、同波長の左円偏光及び右円偏光の双方を反射することができる。
例えば、赤外線反射層16bを通過した光(波長λ16の右円偏光が反射され、左円偏光のみが透過した光)が、次に通過するのが16bではなく15aや15bのように、選択反射の中心波長がλ16ではない場合、波長λ16の左円偏光成分は螺旋ピッチのサイズが異なるコレステリック液晶層を通過することになる。この場合、波長λ16の左円偏光成分は、他の赤外線反射層中のコレステッリツク液晶相の旋光性の影響を僅かではあるが受けることになり、左円偏光成分の波長がシフトするなどの変化が生じる。当然のことながら、この現象は、「波長λ16の左円偏光成分」に限って起こるわけではなく、ある波長のある円偏光が、異なる螺旋ピッチのコレステリック液晶相を通過する場合に生じる変化である。本発明者が種々検討した結果、経験則的なデータではあるが、所定の螺旋ピッチのコレステリック液晶層によって反射されなかった一方の円偏光成分が、反射されないまま、螺旋ピッチが異なる他のコレステリック液晶層を通過する場合、通過する当該層の数が3以上になると、通過する円偏光成分への悪影響が顕著になり、その後に、当該円偏光を反射可能なコレステリック液晶層に到達しても、当該層による反射率が顕著に低下することがわかった。本発明では、選択反射の中心波長が互いに同一であり、且つ螺旋方向が互いに異なる一組の赤外線反射層は、隣接させて配置しなくても、本発明の効果が得られるが、当該一組の赤外線反射層の間に配置される、他の赤外線反射層(螺旋ピッチが異なるコレステリック液晶相を固定して形成された、選択反射の中心波長が異なる赤外線反射層)は、2以下であるのが好ましい。勿論、当該一組の赤外線反射層が隣接しているのが好ましい。
【0029】
各赤外線反射層は、種々の方法で形成することができる。一例は、後述する塗布により形成する方法であり、より具体的には、コレステリック液晶相を形成し得る硬化性液晶組成物を、支持体、配向層、又は赤外線反射層等の表面に塗布し、当該組成物をコレステリック液晶相とした後、硬化反応(例えば、重合反応や架橋反応等)を進行させることで硬化させて、形成することができる。
【0030】
コレステリック液晶層の態様は、上記態様に限定されるものではない。基板の一方の表面上に、5層以上赤外線反射層を積層した構成であってもよいし、また、基板の双方の表面上に、1組以上ずつ(合計で5層以上)赤外線反射層積層した構成であってもよい。また、同一の反射中心波長を示す2組以上の赤外線反射層を有する態様であってもよい。
赤外線反射層を構成する各層の厚さは、それぞれ、1〜10μmであることが好ましく、2〜7μmであることがより好ましい。赤外線反射層全体の厚さは、10〜50μmであることが好ましく、20〜40μmであることがより好ましい。
【0031】
また、本発明の積層体は、上記構成のほかに有機材料及び/又は無機材料を含む非光反射性の層を有していてもよい。本発明に利用可能な前記非光反射性の層の一例には、他の部材(例えば、ガラス板)と密着するのを容易とするための易接着層や粘着材層が含まれる。
また、本発明に利用可能な前記非光反射性の層の他の例には、コレステリック液晶相の赤外線反射層を形成する際に設けられてもよい下塗り層、及び赤外線反射層を形成する際に利用される、液晶化合物の配向方向をより精密に規定する配向層が含まれる場合がある。
【0032】
本発明の合わせガラス体は、前記コレステリック液晶相を固定してなる層が、前記第一の樹脂中間膜と接していることが好ましい。
一方、本発明の合わせガラス体は、前記コレステリック液晶相を固定してなる層が、前記第二の樹脂中間膜と接していることが好ましい。但し、本発明の合わせガラス体は、前記コレステリック液晶相を固定してなる層と、前記第二の樹脂中間膜の間に透明可塑性樹脂を含むことも好ましい。
【0033】
本発明における赤外光反射層では、各赤外線反射層の形成に、重合性液晶化合物を用いる。その中でも、硬化性の液晶組成物を用いるのが好ましい。前記液晶組成物の好ましい一例は、棒状液晶化合物、水平配向剤、光学活性化合物(キラル剤)、及び重合開始剤を含有するものである。各成分を2種以上含んでいてもよい。例えば、重合性の液晶化合物と非重合性の液晶化合物との併用が可能である。また、低分子液晶化合物と高分子液晶化合物との併用も可能である。更に、配向の均一性や塗布適性、膜強度を向上させるために、ムラ防止剤、ハジキ防止剤、及び重合性モノマー等の種々の添加剤から選ばれる少なくとも1種を含有していてもよい。また、前記液晶組成物中には、必要に応じて、さらに重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、色材、無機微粒子、金属微粒子、金属酸化物微粒子等を、光学的性能を低下させない範囲で添加することができる。
【0034】
棒状液晶化合物
本発明に使用可能な棒状液晶化合物の例は、棒状ネマチック液晶化合物である。前記棒状ネマチック液晶化合物の例には、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類及びアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。低分子液晶化合物だけではなく、高分子液晶化合物も用いることができる。
【0035】
本発明に利用する棒状液晶化合物は、重合性である。
重合性棒状液晶化合物は、重合性基を棒状液晶化合物に導入することで得られる。重合性基の例には、不飽和重合性基、エポキシ基、及びアジリジニル基が含まれ、不飽和重合性基が好ましく、エチレン性不飽和重合性基が特に好ましい。重合性基は種々の方法で、棒状液晶化合物の分子中に導入できる。重合性棒状液晶化合物が有する重合性基の個数は、好ましくは1〜6個、より好ましくは1〜3個である。重合性棒状液晶化合物の例は、Makromol.Chem.,190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許第4683327号明細書、同5622648号明細書、同5770107号明細書、国際公開WO95/22586号公報、同95/24455号公報、同97/00600号公報、同98/23580号公報、同98/52905号公報、特開平1−272551号公報、同6−16616号公報、同7−110469号公報、同11−80081号公報、及び特開2001−328973号公報などに記載の化合物が含まれる。2種類以上の重合性棒状液晶化合物を併用してもよい。2種類以上の重合性棒状液晶化合物を併用すると、配向温度を低下させることができる。
【0036】
配向制御剤
本発明では、前記液晶組成物中に、安定的に又は迅速にコレステリック液晶相となるのに寄与する配向制御剤として、水平配向剤を添加することが好ましい。水平配向剤としては、含フッ素(メタ)アクリレート系ポリマー、及び下記一般式(X1)〜(X3)で表される化合物が例示され、フッ素系のものがより好ましい。これらから選択される2種以上を含有していてもよい。これらの化合物は、層の空気界面において、液晶化合物の分子のチルト角を低減若しくは実質的に水平配向させることができる。尚、本明細書で「水平配向」とは、液晶分子長軸と膜面が平行であることをいうが、厳密に平行であることを要求するものではなく、本明細書では、水平面とのなす傾斜角が20度未満の配向を意味するものとする。液晶化合物が空気界面付近で水平配向する場合、配向欠陥が生じ難いため、可視光領域での透明性が高くなり、また赤外領域での反射率が増大する。一方、液晶化合物の分子が大きなチルト角で配向すると、コレステリック液晶相の螺旋軸が膜面法線からずれるため、反射率が低下したり、フィンガープリントパターンが発生してヘイズの増大や回折性を示したりするため好ましくない。
配向制御剤として利用可能な前記含フッ素(メタ)アクリレート系ポリマーの例は、特開2007−272185号公報の[0018]〜[0043]等に記載がある。
【0037】
以下、水平配向剤として利用可能な、下記一般式(X1)〜(X3)で表される化合物について、順に説明する。
【0038】
【化1】

【0039】
式中、R1、R2及びR3は各々独立して、水素原子又は置換基を表し、X1、X2及びX3は単結合又は二価の連結基を表す。R1〜R3で各々表される置換基としては、好ましくは置換もしくは無置換の、アルキル基(中でも、無置換のアルキル基又はフッ素置換アルキル基がより好ましい)、アリール基(中でもフッ素置換アルキル基を有するアリール基が好ましい)、置換もしくは無置換のアミノ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン原子である。X1、X2及びX3で各々表される二価の連結基は、アルキレン基、アルケニレン基、二価の芳香族基、二価のヘテロ環残基、−CO−、―NRa−(Raは炭素原子数が1〜5のアルキル基又は水素原子)、−O−、−S−、−SO−、−SO2−及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。二価の連結基は、アルキレン基、フェニレン基、−CO−、−NRa−、−O−、−S−及び−SO2−からなる群より選ばれる二価の連結基又は該群より選ばれる基を少なくとも二つ組み合わせた二価の連結基であることがより好ましい。アルキレン基の炭素原子数は、1〜12であることが好ましい。アルケニレン基の炭素原子数は、2〜12であることが好ましい。二価の芳香族基の炭素原子数は、6〜10であることが好ましい。
【0040】
【化2】

【0041】
式中、Rは置換基を表し、mは0〜5の整数を表す。mが2以上の整数を表す場合、複数個のRは同一でも異なっていてもよい。Rとして好ましい置換基は、R1、R2、及びR3で表される置換基の好ましい範囲として挙げたものと同様である。mは、好ましくは1〜3の整数を表し、特に好ましくは2又は3である。
【0042】
【化3】

【0043】
式中、R4、R5、R6、R7、R8及びR9は各々独立して、水素原子又は置換基を表す。R4、R5、R6、R7、R8及びR9でそれぞれ表される置換基は、好ましくは一般式(XI)におけるR1、R2及びR3で表される置換基の好ましいものとして挙げたものと同様である。
【0044】
本発明において配向制御剤として使用可能な、前記式(X1)〜(X3)で表される化合物の例には、特開2005−99248号公報に記載の化合物が含まれる。
なお、本発明では、配向制御剤として、前記一般式(X1)〜(X3)で表される化合物の一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0045】
本発明における赤外線反射層は、前記水平配向剤の添加量が、前記重合性液晶化合物に対して0.01〜10質量%であることが好ましく、0.01〜5質量%であることがより好ましく、0.01〜1質量%であることが特に好ましい。
特に、フッ素系水系配向剤を添加する場合、重合性液晶化合物に対し、0.01〜0.09質量%であることが好ましく、0.01〜0.06質量%であることがより好ましい。一方、非フッ素系水系配向剤を添加する場合、重合性液晶化合物に対し、0.1〜1質量%が好ましく、0.2〜0.6質量%がさらに好ましい。
【0046】
また、本発明における赤外線反射層は、前記水平配向剤の添加量を上記範囲に抑える観点から、前記水平配向剤がフッ素原子を含むことが好ましく、パーフルオロアルキル基を含むことがより好ましく、炭素数3〜10のパーフルオロアルキル基を含むことが特に好ましい。
なお、水平配向剤が非フッ素系である場合には、添加量が0.1質量%以上であれば、配向欠陥の問題が生じないため、好ましい。
【0047】
光学活性化合物(キラル剤)
前記液晶組成物は、コレステリック液晶相を示すものであることが好ましく、そのためには、光学活性化合物を含有しているのが好ましい。但し、上記棒状液晶化合物が不正炭素原子を有する分子である場合には、光学活性化合物を添加しなくても、コレステリック液晶相を安定的に形成可能である場合もある。前記光学活性化合物は、公知の種々のキラル剤(例えば、液晶デバイスハンドブック、第3章4−3項、TN、STN用カイラル剤、199頁、日本学術振興会第一42委員会編、1989に記載)から選択することができる。光学活性化合物は、一般に不斉炭素原子を含むが、不斉炭素原子を含まない軸性不斉化合物あるいは面性不斉化合物もカイラル剤として用いることができる。軸性不斉化合物または面性不斉化合物の例には、ビナフチル、ヘリセン、パラシクロファンおよびこれらの誘導体が含まれる。光学活性化合物(キラル剤)は、重合性基を有していてもよい。光学活性化合物が重合性基を有するとともに、併用する棒状液晶化合物も重合性基を有する場合は、重合性光学活性化合物と重合性棒状液晶合物との重合反応により、棒状液晶化合物から誘導される繰り返し単位と、光学活性化合物から誘導される繰り返し単位とを有するポリマーを形成することができる。この態様では、重合性光学活性化合物が有する重合性基は、重合性棒状液晶化合物が有する重合性基と、同種の基であることが好ましい。従って、光学活性化合物の重合性基も、不飽和重合性基、エポキシ基又はアジリジニル基であることが好ましく、不飽和重合性基であることがさらに好ましく、エチレン性不飽和重合性基であることが特に好ましい。
また、光学活性化合物は、液晶化合物であってもよい。
【0048】
前記液晶組成物中の光学活性化合物は、併用される液晶化合物に対して、1〜30モル%であることが好ましい。光学活性化合物の使用量は、より少なくした方が液晶性に影響を及ぼさないことが多いため好まれる。従って、キラル剤として用いられる光学活性化合物は、少量でも所望の螺旋ピッチの捩れ配向を達成可能なように、強い捩り力のある化合物が好ましい。この様な、強い捩れ力を示すキラル剤としては、例えば、特開2003−287623公報に記載のキラル剤が挙げられ、本発明に好ましく用いることができる。
【0049】
重合開始剤
前記赤外線反射層の形成に用いる液晶組成物は、重合性液晶組成物であるため、重合開始剤を含有しているのが好ましい。本発明では、紫外線照射により硬化反応を進行させるので、使用する重合開始剤は、紫外線照射によって重合反応を開始可能な光重合開始剤であるのが好ましい。光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許第二367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第二448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第二722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書記載)、アクリジン及びフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許第4239850号明細書記載)及びオキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書記載)等が挙げられる。
【0050】
光重合開始剤の使用量は、液晶組成物(塗布液の場合は固形分)の0.1〜20質量%であることが好ましく、1〜8質量%であることがさらに好ましい。
【0051】
(支持体)
ここで、発明の積層体を製造する際には、透明可塑性樹脂フィルム等の支持体が用いられるが、最終製品には、透明熱可塑性フィルムが残らない構成であっても、残る構成であってもよい。したがって、本発明の製造方法では、支持体を剥離する工程を含む場合は、本発明の支持体は、ロール トゥ ロールで製造するときに可塑性は必要であるが、透明であることは必ずしも必要ない。
【0052】
前記支持体を本発明の積層体および合わせガラス体が含む場合、前記支持体は透明可塑性樹脂フィルムであることが好ましい。
前記透明可塑性樹脂フィルムは、自己支持性があり、上記赤外線光反射層を支持するものであれば、なんら限定はない。透明可塑性樹脂フィルムのヘイズは、好ましくは3%以下であり、より好ましくは1%以下である。所定の光学特性を満足するように、生産工程を管理して製造される、λ/2板等の特殊の位相差板であってもよいし、また、面内レターデーションのバラツキが大きく、具体的には、波長1000nmの面内レターデーションRe(1000)のバラツキで表現すれば、Re(1000)のバラツキが20nm以上、また100nm以上であり、所定の位相差板としては使用不可能なポリマーフィルム等であってもよい。また樹脂基材の面内レターデーションについても特に制限はなく、例えば、波長1000nmの面内レターデーションRe(1000)が、800〜13000nmである位相差板等を用いることができる。
本発明で用いる透明可塑性樹脂フィルムは、ポリビニルブチラール樹脂フィルムとの圧着や合わせガラス時にポリビリルブチラール樹脂の伸縮に耐えうる剛性を有していることが好ましく、ヤング率はポリビニルブチラール樹脂の100倍〜1000倍程度が好ましい。このような構成とすることにより、反射ムラをより効果的に抑制することができる。
【0053】
可視光に対する透過性が高いポリマーフィルムとしては、液晶表示装置等の表示装置の部材として用いられる種々の光学フィルム用のポリマーフィルムが挙げられる。前記透明可塑性樹脂フィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル;ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリイミド、トリアセチルセルロース(TAC)、などを主成分とするフィルムが例示される。この中でも、ポリエチレンテレフタレートおよび/またはトリアセチルセルロースを主成分とするフィルムが好ましい。
【0054】
本発明では、透明可塑性樹脂フィルムの厚さが、30μm〜200μmであることが好ましく、100〜200μmであることがより好ましい。このような厚さとすることにより、反射ムラをより効果的に抑制することができる。
【0055】
(粘着材層)
上述のとおり本発明の積層体は、粘着材層を含んでいてもよい。
前記粘着材は、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、アクリル系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系、ポリビニルアルコール系など一般的な粘着材を用いることができる。本発明では、その中でもポリエステル系やアクリル系を用いることが好ましく、アクリル系を用いることがより好ましい。
前記粘着材は商業的に入手してもよく、本発明に好ましく用いられる粘着材の一例としては、サンリッツ(株)社製のPET−Wやパナック工業(株)社製のPD−S1などを挙げることができる。
粘着材層の厚みは、例えば、0.1〜5.0μmとすることができる。
【0056】
(易接着層)
易接着層は、例えば、赤外線反射層と粘着材層との接着性を改善する機能を有する。易接着層の形成に利用可能な材料としては、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂が挙げられる。ポリビニルブチラール樹脂は、ポリビニルアルコール(PVA)とブチルアルデヒドを酸触媒で反応させて生成するポリビニルアセタールの一種であり、下記構造の繰り返し単位を有する樹脂である。
【0057】
【化4】

【0058】
また、前記易接着層は、いわゆるアンダーコート層といわれる、アクリル樹脂、スチレン/アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等からなる層であってもよい。これらの材料からなる易接着層も塗布により形成することができる。なお、市販されているポリマーフィルムの中には、アンダーコート層が付与されているものもあるので、それらの市販品を基板として利用することもできる。さらに、前記易接着層には紫外線吸収剤や帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤などを添加してもよい。
なお、易接着層の厚みは、0.1〜5.0μmが好ましい。
【0059】
(下塗り層)
本発明の積層体は、赤外線反射層側に下塗り層を有していてもよい。赤外線反射層は、通常、支持体上に設けられることが好ましいが、このとき、支持体によっては、下塗り層を設けた上に赤外線反射層を設けることが好ましい場合があるためである。
下塗り層の形成に利用可能な材料の例には、アクリル酸エステル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水性ポリエステル等が含まれる。また、下塗り層の表面を中間膜と接着する態様では、下塗り層と中間膜との接着性が良好であるのが好ましく、その観点では、下塗り層は、ポリビニルブチラール樹脂も、前記材料とともに含有しているのが好ましい。また、下塗り層は、上記したように密着力を適度に調節する必要があるので、グルタルアルデヒド、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサン等のジアルデヒド類またはホウ酸等の硬膜剤を適宜用いて硬膜させることが好ましい。硬膜剤の添加量は、下塗り層の乾燥質量の0.2〜3.0質量%が好ましい。
下塗り層の厚みは、0.05〜0.5μmが好ましい。
【0060】
(配向層)
本発明の積層体は、コレステリック液晶相の赤外線反射層と第二の樹脂中間膜との間に配向層を有していてもよいが、本発明の積層体の製造方法では、支持体を剥離する場合はその際に一緒に剥離することもできる。
配向層は、コレステリック液晶相の赤外線反射層を製膜する際には、該赤外線反射層と隣接する必要があるので、コレステリック液晶相の赤外線反射層と基板又は下塗り層との間に設けるのが好ましい。但し、下塗り層が配向層の機能を有していてもよい。また、赤外線反射層の間に配向層を有していてもよい。
【0061】
本発明の積層体は、加工に際し、刃物を用いて切断したり、レーザー、ウオータージェットや熱によって切断したりしてもよい。
【0062】
<第一のガラスと第二のガラス>
本発明の合わせガラス体は、本発明の積層体の前記第一の樹脂中間膜に接し、かつ、少なくとも一部に曲面を有する第一のガラスと;該積層体の前記第二の樹脂中間膜に接し、かつ、少なくとも一部に曲面を有する第二のガラスと;が積層されており、前記第一のガラスの曲率が前記第二のガラスの曲率よりも大きいことを特徴とする。
【0063】
<合わせガラス体の製造方法>
本発明の合わせガラス体の製造方法は、特に制限はなく、いかなる方法で製造してもよい。その中でも、一度本発明の積層体を得てから、それをガラスと貼り合わせて合わせガラス体とする方法が好ましい。一方、一度も本発明の積層体の構成を経由せずに、あらかじめ部材の一部をガラスと貼り合わせたもの同士を貼り合わせて、合わせガラス体とする方法によって製造してもよい。
以下において、まず、一度本発明の積層体を得てから、それをガラスと貼り合わせて合わせガラス体とする方法を説明する。
【0064】
(積層体の製造方法)
本発明の積層体の製造方法は、支持体と赤外線反射層を含む積層体の赤外線反射層側に、第一の樹脂中間膜を積層する工程と、さらに赤外線反射層の反対側に第二の樹脂中間膜をセ気相する工程を含むことが好ましい。また、赤外線反射層は、重合性液晶化合物を含む組成物を固定してなり、さらに水平配向剤を含むことも好ましい。
さらに、本発明の積層体が、前記第一の樹脂中間膜と第二の樹脂中間膜との間にPET支持体などの転写用支持体を含まないような構成の場合は、第一の樹脂中間膜を積層後に支持体と赤外線反射層を含む積層体から支持体を剥離する工程を含むことも好ましい。以下、本発明の積層体の製造方法について説明する。
【0065】
図10は、第一の樹脂中間膜と赤外線反射層のみを必須構成要素とする積層体をインラインで製造する場合の製造方法の一例を示す図であって、図10中、11a・11bは、第一の熱圧着ローラをそれぞれ示し、一対となって熱圧着を行うものであり、12は支持体の剥ぎ取り用ローラであり、21は、支持体2と赤外線反射層1の積層体の送り出しローラであり、22は第一の樹脂中間膜の送り出しローラであり、23は支持体の巻き取りローラであり、24は第一の樹脂中間膜と赤外線反射層の積層体の巻き取りローラである。
【0066】
図10の(1)
本実施形態では、支持体2と赤外線反射層1の積層体が送り出しローラ21から送り出される。ここで、支持体2と赤外線反射層1の積層体は、支持体と赤外線反射層の間に他の構成層を含んでいてもよい。
一方、第一の樹脂中間膜は、別の送り出しローラ22から送り出され、支持体2と赤外線反射層1の積層体と積層される。第一のポリビニルブチラール樹脂を送り出すローラ22は、支持体2と赤外線反射層1の積層体の赤外線反射層側に設けられる。赤外線反射層1と第一の樹脂中間膜は隣接していてもよいし、それらの間に他の構成層を含んでいてもよい。この場合の他の構成層としては、粘着材層が挙げられる。
これらの積層体は、熱圧着ローラ11a・11bによって熱圧着される。
送り出しローラ22と熱圧着ローラの間の搬送張力は、好ましくは、50〜200g/cmであり、より好ましくは、50〜100g/cmである。このような範囲とすることにより、赤外線反射層の液晶化合物を壊さず、第二の樹脂中間膜にシワを発生させず、赤外線反射層と第二の樹脂中間膜の間の接着性を向上することができる。
また、このときの温度は、通常は、室温である。熱圧着ローラの温度は、例えば、赤外線反射層1と第一の樹脂中間膜3が隣接する場合、60〜120℃とすることができる。
圧着条件が0.7≦G/T<1であることが好ましく、0.7≦G/T<0.9であることがより好ましい。ここで、Tは前記第一の熱圧着ローラを通過する前の全体の厚みを表し、Gは前記第一の熱圧着ローラを通過した後の全体の厚みを表す。この構成となるように熱圧着することにより、赤外線反射層の液晶化合物を壊さず、第一の樹脂中間膜にシワを発生させず、赤外線反射層と第一の樹脂中間膜の間の接着性を向上することができる。
通常、樹脂中間膜は貼着の際に空気が逃げ易いように表面がエンボス加工などにより粗面状態にされている。貼り合わせた面は被着面に倣って平滑になり、光学性能が良くなるが、もう一方の面はガラス板等に貼り合わせる為に粗面状態を保持する必要がある。従って、前記熱圧着ローラの樹脂中間膜に接するローラの表面は粗面状態にして、樹脂中間膜の粗面状態を保つか、または積極的にエンボス加工することが好ましい。
【0067】
図10の(2)
次に、熱圧着された積層体から、必要に応じて巻き取りローラ23によって支持体2が剥ぎ取られる。支持体は、第一の樹脂中間膜と反対側の面に設けられているから、巻き取りローラの位置も、第一の樹脂中間膜の送り出しローラ22とは反対の側に設けられる。
熱圧着ローラと巻き取りローラの間の搬送張力は、好ましくは、50〜200g/cmであり、より好ましくは、100〜200g/cmである。このような範囲とすることにより、赤外線反射層の液晶化合物を壊さず、第二の樹脂中間膜にシワを発生させず、赤外線反射層と第二の樹脂中間膜の間の接着性を向上することができる。
また、このときの温度は、通常は、室温である。
なお、支持体を本発明の積層体が含む態様とする場合は、巻き取りローラ23による支持体の剥ぎ取りを行わずに、その他の工程を行えばよい。
【0068】
図10の(3)
最終的に、第一の樹脂中間膜と赤外線反射層の積層体は、巻き取りローラ24によって巻き取られる。このとき、いずれが内側になるように巻き取られてもよいが、赤外線反射層が内側となる方が好ましい。このような構成とすることにより、赤外線反射層の破壊をより効果的に抑制することが可能になる。
巻き取りローラ23と巻き取りローラ24の間の搬送張力は、好ましくは、50〜200g/cmであり、より好ましくは、50〜100g/cmである。このとき、積層体は支持体を含まないため、このときの搬送張力がきわめて重要となる。このような範囲とすることにより、赤外線反射層の液晶化合物を壊さず、第二の樹脂中間膜にシワを発生させず、赤外線反射層と第二の樹脂中間膜の間の接着性を向上することができる。
また、このときの温度は、通常は、室温である。
【0069】
第二の樹脂中間膜の圧着
本発明の積層体は、さらに、第二の樹脂中間膜を有する。このような積層体の製造方法について、図11に従って説明する。図11は、図10において、巻き取りローラ23によって支持体を剥ぎ取った後、さらに、第二の樹脂中間膜を圧着する場合の方法を示した概略図であって、13a・13bは第二の圧着ローラを、14は搬送ローラを、22’は第二の樹脂中間膜の送り出しローラをそれぞれ示している。
すなわち、図10において、巻き取りローラ23によって支持体を剥ぎ取ったあと、さらに、送り出しローラ22'によって送り出された第二の樹脂中間膜が積層される。第二の樹脂中間膜は、支持体が設けられていた側に設けられることから、巻き取りローラ23と送り出しローラ22'は同じ側に設けられる。
なお、支持体を本発明の積層体が含む態様とする場合は、巻き取りローラ23による支持体の剥ぎ取りを行わずに、その他の工程を行えばよい。
赤外線反射層1と第二の樹脂中間膜は隣接していてもよいし、それらの間に他の構成層を含んでいてもよい。この場合の他の構成層としては、粘着材層が挙げられる。粘着材層は、通常、第二の樹脂中間膜側に設けられている。
これらの積層体は、熱圧着ローラ13a・13bによって熱圧着される。
第二の熱圧着ローラから巻き取りローラ23までの搬送張力は、好ましくは、50〜200g/cmであり、より好ましくは、50〜100g/cmである。このような範囲とすることにより、赤外線反射層の液晶化合物を壊さず、第二の樹脂中間膜にシワを発生させず、赤外線反射層と第二の樹脂中間膜の間の接着性を向上することができる。
また、このときの温度は、通常は、室温である。熱圧着ローラの温度は、例えば、赤外線反射層1と第二の樹脂中間膜が隣接する場合、60〜120℃とすることができる。
圧着条件が0.6≦G’/T’<1であることが好ましく、0.7≦G’/T’<0.9であることがより好ましい。ここで、T’は前記第二の熱圧着ローラを通過する前の全体の厚みを表し、G’は前記第二の熱圧着ローラを通過した後の全体の厚みを表す。この構成となるように熱圧着することにより、赤外線反射層の液晶化合物を壊さず、第二の樹脂中間膜にシワを発生させず、赤外線反射層と第二の樹脂中間膜の間の接着性を向上することができる。
【0070】
耳切り
本発明の積層体の製造方法は、さらに、耳切りの工程を有していてもよい。耳切りは、通常、搬送中のフィルムにおいて、フィルムの幅方向の端部を切り落とす。これは、赤外線反射層とポリビニルブチラール樹脂フィルムなどの樹脂中間膜とでは、通常、熱収縮率が異なっている。そのため、同じ幅の赤外線反射層とポリビニルブチラール樹脂フィルムなどの樹脂中間膜を積層したとしても、熱圧着後の幅が異なっている場合がある。そのため、耳切りを行うことによって、フィルムの幅を揃えることができる。また、赤外線反射層は、上述のとおり、好ましくは塗布によって形成するため、端部の厚みが中心部に比べて薄くなりやすい。かかる観点からも耳切りを行うことによって、全面に渡って所望の厚さになっている品質の良い積層体を製造することができる。
【0071】
赤外線反射層の形成
支持体上に赤外線反射層が設けられた積層体は、公知の方法によって製造できるが、支持体の上に、所定の組成物を塗布して作製されるのが好ましい。製造方法の一例は、
(1)透明可塑性樹脂フィルム等の支持体の表面に、水平配向剤と重合性(硬化性の)液晶化合物を含む組成物を塗布して、コレステリック液晶相の状態にすること、
(2)前記重合性液晶組成物(以下、硬化性液晶組成物とも言う)に紫外線を照射して硬化反応を進行させ、コレステリック液晶相を固定して赤外線反射層を形成すること、
(3)前記赤外線反射層の最外層上に粘着材層を形成すること、
を少なくとも含む製造方法である。
(1)及び(2)の工程を、基板の一方の表面上で2回繰り返すことで図9に示す構成と同様の構成の赤外光反射層を作製することができる。また、(1)及び(2)の工程を基板の一方の表面上で4回繰り返すことで、さらに積層数を増やした赤外光反射膜を作製することができる。
【0072】
下塗り層、配向層の形成
前記下塗り層は、塗布により透明可塑性樹脂フィルム等の支持体の表面上に形成されることが好ましい。このときの塗布方法については特に限定はなく、公知の方法をもちいることができる。
前記配向層は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成等の手段で設けることができる。さらには、電場の付与、磁場の付与、或いは光照射により配向機能が生じる配向層も知られている。配向層は、ポリマーの膜の表面に、ラビング処理により形成するのが好ましい。配向膜は、後述する支持体と共に剥離することが好ましい。
【0073】
(1)工程
前記(1)工程では、まず、支持体又は下層の赤外線反射層の表面に、前記硬化性液晶組成物を塗布する。前記硬化性の液晶組成物は、溶媒に材料を溶解及び/又は分散した、塗布液として調製されるのが好ましい。前記塗布液の塗布は、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法等の種々の方法によって行うことができる。また、インクジェット装置を用いて、液晶組成物をノズルから吐出して、塗膜を形成することもできる。
【0074】
次に、表面に塗布され、塗膜となった硬化性液晶組成物を、コレステリック液晶相の状態にすることが好ましい。前記硬化性液晶組成物が、溶媒を含む塗布液として調製されている態様では、塗膜を乾燥し、溶媒を除去することで、コレステリック液晶相の状態にすることができる場合がある。また、コレステリック液晶相への転移温度とするために、所望により、前記塗膜を加熱してもよい。例えば、一旦等方性相の温度まで加熱し、その後、コレステリック液晶相転移温度まで冷却する等によって、安定的にコレステリック液晶相の状態にすることができる。前記硬化性液晶組成物の液晶相転移温度は、製造適性等の面から10〜250℃の範囲内であることが好ましく、10〜150℃の範囲内であることがより好ましい。10℃未満であると液晶相を呈する温度範囲にまで温度を下げるために冷却工程等が必要となることがある。また200℃を超えると、一旦液晶相を呈する温度範囲よりもさらに高温の等方性液体状態にするために高温を要し、熱エネルギーの浪費、基板の変形、変質等からも不利になる。
【0075】
(2)工程
次に、(2)の工程では、コレステリック液晶相の状態となった塗膜に、紫外線を照射して、硬化反応を進行させる。紫外線照射には、紫外線ランプ等の光源が利用される。この工程では、紫外線を照射することによって、前記液晶組成物の硬化反応が進行し、コレステリック液晶相が固定されて、赤外線反射層が形成される。
紫外線の照射エネルギー量については特に制限はないが、一般的には、100mJ/cm2〜800mJ/cm2程度が好ましい。また、前記塗膜に紫外線を照射する時間については特に制限はないが、硬化膜の充分な強度及び生産性の双方の観点から決定されるであろう。
【0076】
硬化反応を促進するため、加熱条件下で紫外線照射を実施してもよい。また、紫外線照射時の温度は、コレステリック液晶相が乱れないように、コレステリック液晶相を呈する温度範囲に維持するのが好ましい。また、雰囲気の酸素濃度は重合度に関与するため、空気中で所望の重合度に達せず、膜強度が不十分の場合には、窒素置換等の方法により、雰囲気中の酸素濃度を低下させることが好ましい。好ましい酸素濃度としては、10%以下が好ましく、7%以下がさらに好ましく、3%以下が最も好ましい。紫外線照射によって進行される硬化反応(例えば重合反応)の反応率は、層の機械的強度の保持等や未反応物が層から流出するのを抑える等の観点から、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがよりさらに好ましい。反応率を向上させるためには照射する紫外線の照射量を増大する方法や窒素雰囲気下あるいは加熱条件下での重合が効果的である。また、一旦重合させた後に、重合温度よりも高温状態で保持して熱重合反応によって反応をさらに推し進める方法や、再度紫外線を照射する(ただし、本発明の条件を満足する条件で照射する)方法を用いることもできる。反応率の測定は反応性基(例えば重合性基)の赤外振動スペクトルの吸収強度を、反応進行の前後で比較することによって行うことができる。
【0077】
上記工程では、コレステリック液晶相が固定されて、赤外線反射層が形成される。ここで、液晶相を「固定化した」状態は、コレステリック液晶相となっている液晶化合物の配向が保持された状態が最も典型的、且つ好ましい態様である。それだけには限定されず、具体的には、通常0℃〜50℃、より過酷な条件下では−30℃〜70℃の温度範囲において、該層に流動性が無く、また外場や外力によって配向形態に変化を生じさせることなく、固定化された配向形態を安定に保ち続けることができる状態を意味するものとする。本発明では、紫外線照射によって進行する硬化反応により、コレステリック液晶相の配向状態を固定する。
なお、本発明においては、コレステリック液晶相の光学的性質が層中において保持されていれば十分であり、最終的に赤外線反射層中の液晶組成物がもはや液晶性を示す必要はない。例えば、液晶組成物が、硬化反応により高分子量化して、もはや液晶性を失っていてもよい。
【0078】
赤外光反射板としてその他の重要な性能は、可視光の透過率とヘイズである。材料の選択及び製造条件等を調整して、用途に応じて、好ましい可視光の透過率及びヘイズを示す赤外光反射板を提供できる。例えば可視光の透過率が高い用途に用いられる態様では、可視光の透過率が90%以上であり、且つ赤外の反射率が上記反応を満足する赤外光反射板とすることができる。
【0079】
<第一のガラスおよび第二のガラスとの積層>
以上により得られた本発明の積層体を、前記第一のガラスまたは第二のガラスと積層するときの好ましい態様について、以下説明する。
あわせて、一度も本発明の積層体の構成を経由せずに、あらかじめ部材の一部をガラスと貼り合わせたもの同士を貼り合わせて、合わせガラス体とする方法による製造方法についても説明する。
【0080】
(実施態様1)
本発明の合わせガラス体は、曲率の小さいガラス/薄いPVB/支持体/コレステリック液晶膜/厚いPVB/曲率の大きいガラスという構成が好ましい態様の一つである。この態様を図2に示す。
実施態様1の合わせガラス体を製造する具体的な方法としては、プラスチックフイルムを支持体としてコレステリック液晶膜との積層体を作り、前記積層体の両面に厚みの異なるPVBを積層した更なる積層体を作る。その後、単葉のシート状態または長尺の巻物状態でこのような積層体を供給し、目的の対象物(例えば無機ガラス)に貼り合わせ、更にガラスに貼り付けた積層体の面の反対面に他のガラスを貼り付ける。この積層体とガラスとの貼り合わせを行う際には、一方のより厚いPVBを曲率半径の小さい側に貼りつけることが望ましい。
このとき、単葉のシート状態として、第一のガラスおよび第二のガラスと貼り付ける場合、図4に記載のように本発明の積層体には、縮みしろまたは熱圧縮後のカットしろ41を設けておくことが好ましい。さらに、よりガラスとPVBとの接着性や密着性を改善させる観点からは、単葉のシート状態の積層体を2方向から引張り、密着させることも好ましい。例えば図6に示すように曲率の大きい第一のガラスとPVBを貼り合わせるときに、該第一のガラスの曲面に沿って引っ張ることで、密着させることができる。また、曲率の小さい第二のガラスと本発明の積層体を貼り合わせるときにも同様に、第二のガラスの曲面に沿って2方向から引張り、ガラスに密着させてもよい。さらに、これらを組み合わせて、4方向から引っ張ってもよい。なお、このような貼り合わせ方法は、後述するその他の実施態様においても用いることができる。
【0081】
(実施態様2−1)
前記実施態様1と同様の、曲率の小さいガラス/薄いPVB/支持体/コレステリック液晶膜/厚いPVB/曲率の大きいガラスという構成を得るための具体的な方法として、本発明の積層体の構成を経由せずに、PVBの一方を他のガラスに貼りつけておき、その他の部材と貼り合わせる態様も好ましい製造方法として挙げることができる。具体的には、図4(A)に示すように、曲率の小さい方のガラスと、薄いPVBとを先に積層しておく。これと、図4(b)に示すような、PET支持体、コレステリック液晶膜、厚いPVB、曲率の大きなガラスをこの順に積層した部材と重ね合わせ、その後オートクレーブで熱圧着する方法などを挙げることができる。
【0082】
(実施態様2−2)
また、前記実施態様1と同様の構成を得るための具体的な方法として、まず、前記支持体とコレステリック液晶膜の積層体の片側のみにPVBを積層した積層体を供給し、目的の対象物(例えばガラス)に貼り付けた部材を用意する。次に、予めPVB膜のみを貼りつけた他のガラスの部材を用意する。PVB膜のみを貼りつけた他のガラスの部材のPVB側に、前記コレステリック液晶膜を含む積層体の液晶膜側を貼り合わせ、上記構成の合わせガラス体を得る製造方法を挙げることができる。
【0083】
(実施態様3)
本発明の合わせガラス体の構成は、曲率の小さいガラス/薄いPVB/コレステリック液晶膜/厚いPVB/大きいガラスであり、実施態様1や2の2つの実施例から支持体を除いた構成のものである。本実施態様3の合わせガラス体の具体的な構成は、下記実施態様4とあわせて、図2において支持体(例えば、PET支持体)層が無い構成となる。
合わせガラス等の用途によっては前記支持体を工程途中で剥ぎとって、膜構成が、薄いPVB/コレステリック液晶膜/厚いPVBの単葉シートとなるようにして、ガラスとの貼り合わせに供給してもよい。この場合は前記完成した合わせガラス体は、曲率の小さいガラス/薄いPVB/液晶膜/厚いPVB/曲率の大きいガラスとなる。また、厚いPVB膜は一方の曲率半径の小さいガラスに貼ることが望ましい。
【0084】
(実施態様4)
本発明の合わせガラス体の構成が、曲率の小さいガラス/薄いPVB/液晶膜/厚いPVB/曲率の大きいガラスである場合、このような構成の合わせガラスの製法は第二の実施態様と同じである態様も好ましい。
具体的には、前記支持体とコレステリック液晶膜の積層体の片側のみにPVBを積層した積層体から、支持体を剥がした後で、単葉のシート状態または長尺の巻物状態でコレステリック液晶膜とPVBの積層体を供給してもよい。この場合、ガラスに第二のPVBを予め貼っておき、2層のPVBフィルムの間にコレステリック液晶膜があるようにして、合わせガラス体を得る方法が好ましい。もちろん、前記支持体をはぎ取る前の前記支持体とコレステリック液晶膜の積層体の片側のみにPVBを積層した積層体を供給し、ガラスに貼り付ける前に前記支持体を剥ぎとってもよい。
支持体上のコレステリック液晶膜に、ニップロールを使用して熱と圧力によりPVBを貼着し、合わせガラス体を製造することもできる。このような態様で合わせガラス体を生産する際は、PVBをガラス側にしてPVBとコレステリック液晶膜の積層体をガラスと貼り、次に支持体をはぎ取り、その次に新たなPVBをコレステリック液晶膜の上に載せた後、もう一方のガラスを貼りつける製造方法が好ましい。また、もう一方のガラスに予めPVBを貼っておき、支持体をはぎ取った後のコレステリック液晶膜上に、ガラスとPVBを貼り合わせた部材を貼りつけて製造する製造方法も好ましい。
【0085】
(ガラス板との圧着)
本発明の合わせガラス体は、いずれの態様で合わせガラス体の構成を満たすように積層された場合も、ガラス板との貼り合わせにおいて最後に圧着を行って製造されることが好ましく、加熱圧着を行って製造されることがより好ましい。
ガラス板との貼りあわせは、例えば、真空バッグなどで減圧下において、温度80〜120℃、時間30〜60分で予備圧着した後、オートクレーブなどの加熱圧着用の装置中、1.0〜1.5MPaの加圧下で120〜150℃の温度で貼り合せ、2枚のガラスに積層体が挟まれた合わせガラス体とすることができる。また、粘着材等を用いて貼り合わせてもよい。このとき、1.0〜1.5MPaの加圧下で120〜150℃の温度での加熱圧着の時間は、20〜90分であることが好ましい。
加熱圧着終了後、放冷の仕方については特に制限はなく、適宜圧力を開放しながら放冷して、合わせガラス体を得てもよい。本発明では、加熱圧着終了後、圧力を保持した状態で降温を行うことが、得られる合わせガラス体のシワや割れをさらに改善する観点から好ましい。ここで、圧力を保持した状態で降温するとは、加熱圧着時(好ましくは130℃)の装置内部圧力から、40℃のときの装置内部圧力が加熱圧着時の75%〜100%となるように降温することを意味する。圧力を保持した状態で降温する方法としては、40℃まで降温したときの圧力が上記範囲内であれば特に制限はないが、圧力装置内部圧力が温度減少に伴って自然と低下していくように装置内部から圧力を漏らさずに降温する態様や、装置内部圧力が温度減少に伴って減少しないように外部からさらに加圧しながら降温する態様が好ましい。圧力を保持した状態で降温する場合、120〜150℃で加熱圧着した後、40℃まで1〜5時間かけて放冷することが好ましい。
本発明では、圧力を保持した状態で降温を行った後、次いで圧力を開放する工程を含むことが好ましい。具体的には、圧力を保持した状態で降温を行った後、オートクレーブ内の温度が40℃以下になった後に圧力を開放して降温することが好ましい。
以上より、本発明の合わせガラス体の製造方法は、前記第一のガラス、前記第一の樹脂中間膜、前記赤外線反射層、前記第二の樹脂中間膜および前記第二のガラスをこの順で積層する工程と、その後1.0〜1.5MPaの加圧下で120〜150℃の温度で加熱圧着する工程と、圧力を保持した状態で降温を行う工程と、圧力を開放する工程を含むことが好ましい。
【実施例】
【0086】
以下に実施例と比較例(なお比較例は公知技術というわけではない)を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0087】
[製造例1]
(下塗り層用塗布液の調製)
下記に示す組成の下塗り層用塗布液(S1)を調製した。
下塗り層用塗布液(S1)の組成:
アクリルエステル樹脂ジュリマーET−410
(東亞合成(株)製、固形分濃度30%) 50質量部
メタノール 50質量部
【0088】
(配向層用塗布液の調製)
下記に示す組成の配向層用塗布液(H1)を調製した。
配向層用塗布液(H1)の組成:
変性ポリビニルアルコールPVA203(クラレ社製) 10質量部
グルタルアルデヒド 0.5質量部
水 371質量部
メタノール 119質量部
【0089】
(重合性液晶を含む塗布液(重合性液晶組成物)の調製)
下記表に示す組成の重合性液晶を含む塗布液(R1)及び(L1)をそれぞれ調製した。
【0090】
重合性液晶を含む塗布液の組成(R1)
【表1】

【0091】
水平配向剤:(特開2005−99248号公報記載の化合物)
【化5】

【0092】
水平配向剤:
【化6】

【0093】
また、重合性液晶を含む塗布液(R1)のキラル剤LC−756を下記キラル剤化合物2に変更しただけで他は同様にして塗布液(L1)を調製した。
キラル剤:化合物2(特開2002−179668号公報に記載の化合物)
【化7】

【0094】
また、重合性液晶を含む塗布液(R1)のキラル剤LC−756の処方量を0.236質量部に変更しただけで他は同様にして塗布液(R2)を調製した。
【0095】
また、重合性液晶を含む塗布液(L1)のキラル剤化合物2の処方量を0.148質量部に変更しただけで他は同様にして塗布液(L2)を調製した。
【0096】
(塗布および製膜)
PETフィルム(下塗り層無し、富士フイルム(株)製、厚み:188μm、樹脂1)の表面上に、下塗り層用塗布液(S1)を、ワイヤーバーを用いて、乾燥後の膜厚が0.25μmになるように塗布した。その後、150℃で10分間加熱し、乾燥、固化し、下塗り層を形成した。
次いで、形成した下塗り層の上に、配向層用塗布液(H1)を、ワイヤーバーを用いて、乾燥後の膜厚が1.0μmになるように塗布した。その後、100℃で2分間加熱し、乾燥、固化し、配向層を形成した。配向層に対し、ラビング処理(レーヨン布、圧力:0.1kgf、回転数:1000rpm、搬送速度:10m/min、回数:1往復)を施した。
【0097】
次いで、調製した重合性液晶を含む塗布液(R1)、(R2)、(L1)、(L2)を用い、下記の手順にてコレステリック液晶相を固定し、赤外線反射層(以下、CL層とも言う)を製造した。
(1)各塗布液を、ワイヤーバーを用いて、乾燥後の膜の厚みが6μmになるように、前記PETフィルム上に、室温にて塗布した。
(2)室温にて30秒間乾燥させて溶剤を除去した後、125℃の雰囲気で2分間加熱し、その後95℃でコレステリック液晶相とした。次いで、フージョンUVシステムズ(株)製無電極ランプ「Dバルブ」(90mW/cm)にて、出力60%で6〜12秒間UV照射し、コレステリック液晶相を固定して、膜(赤外線反射層)を作製した。
(3)室温まで冷却した後、上記工程(1)及び(2)を繰り返し、4層積層されたコレステリック液晶相の赤外線反射層を作製した。
なお、塗布液は、(R1)、(R2)、(L1)、(L2)の順番に塗布を行なった。
【0098】
(表面処理)
得られた赤外線反射層(CL層)の表面を、下記の手順にて洗浄した。
2−ブタノンの入った容器に、上記で製膜した積層体を浸漬させ、40℃で10分間、洗浄処理をした。
【0099】
[実施例1、2、比較例1および2]
<合わせガラス体形態A>
(ポリビニルブチラールとの貼り合わせ)
上記製造例1で作成したPET支持体上のコレステリック液晶相を固定してなる赤外線反射層(図1の構成)に対して、ポリビニルブチラール(PVB1)を赤外線反射層の上に重ね合わせ、ドライラミネーター(大成ラミネーター製)に通してニップロールにより熱と圧力により積層体を作成した。また、PET支持体が上部ロール側になるようにセットし、その後、PET支持体を剥ぎ取った。さらに、PETを剥がした後の積層フィルムを巻き取った。
大きさ260mm×300mmの2枚の曲率が互いに異なる球面ガラスの間に、作製した前記積層フィルムと前記積層フィルムのPVB1が積層されていない側の表面上に新たに積層したPVB2とを、曲率が大きい側の球面ガラス/PVB1/液晶膜/PVB2/曲率が小さい側の球面ガラスとなるように重ね合わせ、真空ゴムバッグに重ねたサンプルを入れた。ゴムバッグ内を減圧し(約55torr)、ゴムバッグを加熱オーブンの中に入れて30分かけて95℃に昇温した。その後、95℃で40分予備圧着をおこなった。放冷後、合わせガラスサンプルをオートクレーブの中に入れて130℃、1.2MPaの条件で60分加熱圧着させることで合わせガラス体を作製した。その態様を図8に示す。
また、各実施例および比較例におけるPVB1とPVB2の厚みを下記表2に示す。
また、各実施例および比較例において、実施例1ではPVB1層のみに無機微粒子として、ITO微粒子、平均粒径35nm(三菱マテリアル化成株式会社製)を添加し、もう一方の中間膜には、組成の異なる複数の層からなる中間膜を用いた。
【0100】
[実施例3および比較例3]
<合わせガラス体形態B>
上記製造例1で作成したPET支持体上のコレステリック液晶相を固定してなる赤外線反射層(図1の構成)に対して、ポリビニルブチラール(PVB3)を赤外線反射層の上に重ね合わせ、ドライラミネーター(大成ラミネーター製)に通してニップロールにより熱と圧力により積層体を作成した。その後、支持体とコレステリック液晶膜とPVB3の積層体を搬送し、更にPET支持体側にPVB4を貼着し、コレステリック液晶膜とその両面にPVBが配置された積層体を作製した。
大きさ260mm×300mmの2枚の曲率が互いに異なる球面ガラスの間に、作製した積層体を、曲率が大きい側の球面ガラス/PVB3/液晶膜/PET支持体/PVB4/曲率が小さい側の球面ガラスとなるように重ね合わせた。その他の処理条件は合わせガラス体形態Aと同じである。その態様を図2〜4に示す。なお、このとき、縮みしろ、または熱圧着後のカットしろを図4に記載のように設けた。
また、各実施例および比較例におけるPVB3とPVB4の厚みを下記表2に示す。
【0101】
[評価]
(シワ、ワレの評価)
作成した合わせガラスは、ポリビニルブチラール樹脂フィルムのシワ、赤外線反射層の膜ワレを評価した。判定は○△×で行い、それぞれの評価基準を下記のようにした。
○: シワ、ワレが確認されない。
△: シワ、ワレが弱く確認できる。
×: シワ、ワレが顕著に確認できる。
【0102】
【表2】

【0103】
(遮熱性能)
実施例1において、熱線遮蔽微粒子を含有させた中間膜の遮熱性能を分光スペクトルにより測定し、液晶膜が有する遮熱性能と重ね合わせた。その結果を図7に示す。この結果から、幅広い帯域においての遮熱性能が得られたことが示された。
同様にその他の実施例においても検討したところ、遮熱性能は良好であった。
【0104】
(遮音性能)
特開平6−926号公報に記載の方法により試験したところ、各実施例の合わせガラス体は、各比較例の合わせガラス体よりも遮音性能に優れる傾向にあることがわかった。
【0105】
また、上記実施例において、水平配向剤としてフッ素系1以外の水平配向剤を用いたところ、フッ素系の水平配向剤を用いたときに遮熱性能に優れる傾向になることがわかった。
【0106】
[実施例4]
実施例1および2と同様にして、積層フィルムを製造した。
その後、大きさ260mm×300mmの2枚の球面ガラスの間に、作製した前記積層フィルムと前記積層フィルムのPVB1が積層されていない側の表面上に新たに積層したPVB2とを、ガラス/PVB1/液晶膜/PVB2/ガラスとなるように重ね合わせ、真空ゴムバッグに重ねたサンプルを入れた。ゴムバッグ内を減圧し(約55torr)、ゴムバッグを加熱オーブンの中に入れて30分かけて95℃に昇温した。その後、95℃で40分予備圧着をおこなった。放冷後、合わせガラスサンプルをオートクレーブの中に入れて130℃、1.2MPaの条件で60分加熱圧着させた。加熱圧着終了後、圧力を保持した状態でおよそ3時間かけて放冷し、オートクレーブ内の温度が40℃以下になったところで圧力を開放した。このとき、開放前の圧力は0.9MPaであった。
作成した合わせガラスについて、ポリビニルブチラール樹脂フィルムのシワと赤外線反射層の膜ワレを評価したところ、いずれも実施例1および2よりもさらに改善されていたことがわかった。また、この合わせガラス板の反射ムラを目視にて確認したところ、いずれも実施例1および2よりもさらに改善されていたことがわかった。
【符号の説明】
【0107】
1 赤外線反射層
2 支持体
3 第一の樹脂中間膜
3’ 第二の樹脂中間膜
11a、11b 第一の熱圧着ローラ
12 (転写用)支持体の剥ぎ取り用ローラ
13a、13b 第二の熱圧着ローラ
14 搬送ローラ
15a コレステリック液晶相を固定してなる赤外線反射層
15b コレステリック液晶相を固定してなる赤外線反射層
16a コレステリック液晶相を固定してなる赤外線反射層
16b コレステリック液晶相を固定してなる赤外線反射層
19 第一のガラス板(第二のガラス板よりも曲率が大きい)
19’ 第二のガラス板(第一のガラス板よりも曲率が小さい)
21 (転写用)支持体と赤外線反射層の積層体の送り出しローラ
22、22’ 樹脂中間膜の送り出しローラ
23 (転写用)支持体の巻き取りローラ
24 樹脂中間膜と赤外線反射層の積層体の巻き取りローラ
41 縮みしろ、または熱圧着後のカットしろ
51 コレステリック液晶相を固定してなる赤外線反射膜の光透過スペクトル
52 熱戦遮蔽微粒子を含有するPVB2の光透過スペクトル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線反射層と、
該赤外線反射層の一方の表面側に配置された第一の樹脂中間膜と、
該赤外線反射層の前記第一の樹脂中間膜が配置されている表面と反対側の表面側に配置された第二の樹脂中間膜とが積層されており、
前記赤外線反射層が重合性液晶化合物を含む組成物を固定してなり、
前記第一の樹脂中間膜の厚みが前記第二の樹脂中間膜の厚みよりも厚いことを特徴とする積層体と;
該積層体の前記第一の樹脂中間膜に接し、かつ、少なくとも一部に曲面を有する第一のガラスと;
該積層体の前記第二の樹脂中間膜に接し、かつ、少なくとも一部に曲面を有する第二のガラスと;
が積層されており、前記第一のガラスの曲率が前記第二のガラスの曲率よりも大きいことを特徴とする合わせガラス体。
【請求項2】
赤外線反射層と、
該赤外線反射層の一方の表面側に配置された第一の樹脂中間膜と、
該赤外線反射層の前記第一の樹脂中間膜が配置されている表面と反対側の表面側に配置された第二の樹脂中間膜とが積層されており、
前記赤外線反射層が重合性液晶化合物を含む組成物を固定してなり、
前記第一の樹脂中間膜の樹脂組成と前記第二の樹脂中間膜の樹脂組成が異なることを特徴とする積層体と;
該積層体の前記第一の樹脂中間膜に接し、かつ、少なくとも一部に曲面を有する第一のガラスと;
該積層体の前記第二の樹脂中間膜に接し、かつ、少なくとも一部に曲面を有する第二のガラスと;
が積層されており、前記第一のガラスの曲率が前記第二のガラスの曲率よりも大きいことを特徴とする合わせガラス体。
【請求項3】
赤外線反射層と、
該赤外線反射層の一方の表面側に配置された第一の樹脂中間膜と、
該赤外線反射層の前記第一の樹脂中間膜が配置されている表面と反対側の表面側に配置された第二の樹脂中間膜とが積層されており、
前記赤外線反射層が重合性液晶化合物を含む組成物を固定してなり、
前記第一の樹脂中間膜に含まれる添加剤と前記第二の樹脂中間膜に含まれる添加剤が異なることを特徴とする積層体と;
該積層体の前記第一の樹脂中間膜に接し、かつ、少なくとも一部に曲面を有する第一のガラスと;
該積層体の前記第二の樹脂中間膜に接し、かつ、少なくとも一部に曲面を有する第二のガラスと;
が積層されており、前記第一のガラスの曲率が前記第二のガラスの曲率よりも大きいことを特徴とする合わせガラス体。
【請求項4】
前記第一の樹脂中間膜に含まれる添加剤と前記第二の樹脂中間膜に含まれる添加剤が異なることを特徴とする請求項1または2に記載の合わせガラス体。
【請求項5】
前記第一の樹脂中間膜に含まれる添加剤として、熱線遮蔽用の微粒子および遮音用の微粒子の少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項3または4に記載の合わせガラス体。
【請求項6】
前記赤外線反射層がコレステリック液晶相を固定してなる層を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の合わせガラス体。
【請求項7】
前記コレステリック液晶相を固定してなる層が、前記第一の樹脂中間膜と接していることを特徴とする請求項6に記載の合わせガラス体。
【請求項8】
前記コレステリック液晶相を固定してなる層が、前記第二の樹脂中間膜と接していることを特徴とする請求項6または7に記載の合わせガラス。
【請求項9】
前記コレステリック液晶相を固定してなる層と、前記第二の樹脂中間膜の間に透明可塑性樹脂を含むことを特徴とする請求項6または7に記載の合わせガラス体。
【請求項10】
前記第一の樹脂中間膜と前記第二の樹脂中間膜が、いずれもポリビニルブチラールを含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の合わせガラス体。
【請求項11】
前記赤外線反射層が水平配向剤を含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の合わせガラス体。
【請求項12】
前記水平配向剤がフッ素系水平配向剤であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の合わせガラス体。
【請求項13】
赤外線反射層と、
該赤外線反射層の一方の表面側に配置された第一の樹脂中間膜と、
該赤外線反射層の前記第一の樹脂中間膜が配置されている表面と反対側の表面側に配置された第二の樹脂中間膜とが積層されており、
前記赤外線反射層が重合性液晶化合物を含む組成物を固定してなり、
前記第一の樹脂中間膜の厚みが前記第二の樹脂中間膜の厚みよりも厚いことを特徴とする積層体。
【請求項14】
赤外線反射層と、
該赤外線反射層の一方の表面側に配置された第一の樹脂中間膜と、
該赤外線反射層の前記第一の樹脂中間膜が配置されている表面と反対側の表面側に配置された第二の樹脂中間膜とが積層されており、
前記赤外線反射層が重合性液晶化合物を含む組成物を固定してなり、
前記第一の樹脂中間膜の樹脂組成と前記第二の樹脂中間膜の樹脂組成が異なることを特徴とする積層体。
【請求項15】
赤外線反射層と、
該赤外線反射層の一方の表面側に配置された第一の樹脂中間膜と、
該赤外線反射層の前記第一の樹脂中間膜が配置されている表面と反対側の表面側に配置された第二の樹脂中間膜とが積層されており、
前記赤外線反射層が重合性液晶化合物を含む組成物を固定してなり、
前記第一の樹脂中間膜に含まれる添加剤と前記第二の樹脂中間膜に含まれる添加剤が異なることを特徴とする積層体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−101999(P2012−101999A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17770(P2011−17770)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】