説明

合わせガラス用中間膜及びそれを用いた合わせガラス

【課題】環境汚染の恐れがなく、接着性及び耐久性に優れ且つ高い透明性を有するフィルム強化ガラス及び合わせガラス等の透明接着剤層として有用な合わせガラス用中間膜;及び合わせガラスを提供する。
【解決手段】エチレン/酢酸ビニル共重合体に有機過酸化物を含有してなる合わせガラス用中間膜であって、有機過酸化物が下記式I:


で表され、且つ10時間半減期の温度が100℃以下であるパーオキシケタール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、鉄道車両、ビル、ショーケース等に使用される耐衝撃性、耐貫通性、防犯性等に優れたフィルム強化ガラスを含む合わせガラスの透明接着剤層として有用な中間膜、及び合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に自動車に用いるガラス、特にフロントガラスには、ガラス板の間に透明接着剤層(中間膜)を挟持させた構造の合わせガラスが使用されている。この透明接着剤層は、例えばPVB膜、EVA膜等から形成され、この透明接着剤層の存在により、合わせガラスの耐貫通性等が向上している。また外部からの衝撃に対し、破損したガラスの破片は透明接着剤層に貼着したままとなるので、その飛散を防止している。このため、例えば自動車の合わせガラスが、盗難や侵入等を目的として破壊されても窓の開放を自由にすることができないため、防犯用ガラスとしても有用である。このような合わせガラスは、例えば特許文献1に記載されている。
【0003】
一方、例えば自動車のドアガラス及び嵌め込みガラスは、一般に事故で破壊されることが少なく、従って上記フロントガラス程の耐貫通性等は必要としないので、僅かに強化された強度の低い1枚のガラス板が使用されている。ところが、このような1枚のガラス板のみを使用した場合、以下のような欠点がある。即ち、(1)耐衝撃性、耐貫通性等の点で合わせガラスに劣る、(2)盗難や侵入等を目的として破壊されると、割れて多数の破片となり、窓の開放を自由に行うことができる、等である。このため、ドアガラス及び嵌め込みガラス等にも、合わせガラスのような特性のガラスを使用することも検討されている。このような用途に適したガラスとして、ガラス板とプラスチックフィルムとを、透明接着剤層(中間膜)を介して接着したフィルム強化ガラスが、例えば特許文献2及び3に記載されている。本発明では、ガラス板とプラスチックフィルムとを、中間膜を介して接着した積層体(フィルム強化ガラス)も、2枚のガラス板を中間膜を介して接着した積層体も、共に合わせガラスと言う。
【0004】
このような合わせガラスの2枚ガラス板、或いはガラス板とプラスチックフィルムとを接着する透明接着剤層(即ち、合わせガラス用中間膜)は、上述のように、優れた接着性と、耐貫通性が求められていると共に、経時的に膜の透明性の低下或いは強度低下等がほとんど生じない等の特性、即ち優れた耐久性も求められている。
【0005】
また最近では、化学物質の環境汚染が問題になっており、上記透明接着剤層においても環境を汚染するような物質を使用することは避ける必要がある。例えば、上記特許文献2及び3の実施例には、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)を架橋する架橋剤(有機過酸化物)として、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサンが使用されている。この有機過酸化物を使用することによりEVAを比較的短時間に架橋して、優れた接着性と耐貫通性を得ることができる。しかしながら、上記有機過酸化物、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサンは、化学物質の審査及び製造等に関する法律(化審法)により第1種監視化学物質に指定され、その製造、輸入及びその他の定められた事項の届け出義務のある物質となっており、その使用が禁止される恐れがある。
【0006】
【特許文献1】特開2002−187746号公報
【特許文献2】特開2002−046217号公報
【特許文献3】特開2002−068785号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、合わせガラスにおいては、上記環境汚染の問題を考慮しながら、且つ合わせガラスの性能面、衝突時の安全性の面から、接着性、耐久性についてさらに向上させることが望まれている。
【0008】
このため、化審法の対象とならない有機過酸化物であって、EVAを架橋させて、従来より向上した接着性及び耐久性を有する有機過酸化物を探索することが必要である。
【0009】
本発明は、環境汚染の恐れのないフィルム強化ガラス及び合わせガラス等の透明接着剤層として有用な合わせガラス用中間膜を提供することをその目的とする。
【0010】
また、本発明は、環境汚染の恐れのないフィルム強化ガラス及び合わせガラス等として使用可能な合わせガラスを提供することをその目的とする。
【0011】
さらに、本発明は、環境汚染の恐れがなく、そして接着性及び耐久性に優れ且つ高い透明性を有するフィルム強化ガラス及び合わせガラス等の透明接着剤層として有用な合わせガラス用中間膜を提供することをその目的とする。
【0012】
さらにまた、本発明は、環境汚染の恐れがなく、そして接着性及び耐久性に優れ且つ高い透明性を有するフィルム強化ガラス及び合わせガラス等として使用可能な合わせガラスを提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的は、エチレン/酢酸ビニル共重合体に有機過酸化物を含有してなる合わせガラス用中間膜であって、有機過酸化物が下記式I:
【0014】
【化1】

【0015】
[但し、R1が、炭素原子数5〜10個の直鎖または分岐の炭化水素基を表し、R2が、炭素原子数2〜10個の直鎖または分岐の炭化水素基を表し、そしてR3及びR4が、それぞれ独立して炭素原子数2〜6個の直鎖または分岐の炭化水素基を表すか、或いはR3及びR4が、隣接する炭素原子と共に相互に結合して置換基(好ましくはアルキル基)を有していても良い炭素原子数3〜8個の環式基を形成している。]
で表され、且つ10時間半減期の温度が100℃以下であるパーオキシケタールであることを特徴とする合わせガラス用中間膜により達成される。
【0016】
本発明の合わせガラス用中間膜の好適態様を以下に列記する。
【0017】
(1)上記式Iにおいて、R1及びR2が、それぞれ独立して炭素原子数5〜8個の分岐の炭化水素基(好ましくはアルキル基)を表し、そしてR3及びR4が、隣接する炭素原子と共に相互の結合して置換基を有していても良い炭素原子数3〜8個の脂環式基を形成している。優れた接着性、向上した耐久性(例えば、経時的に透明性或いは強度の低下が小さい)が得られやすい。
【0018】
(2)有機過酸化物が、下記式II:
【0019】
【化2】

【0020】
[但し、R1が、炭素原子数5〜10個の直鎖または分岐の炭化水素基(好ましくはアルキル基)を表し、R2が、炭素原子数2〜10個の直鎖または分岐の炭化水素基(好ましくはアルキル基)を表し、そしてR5〜R9及びR5'〜R9'が、それぞれ独立して水素原子または炭素原子数1〜4個の直鎖または分岐の炭化水素基(好ましくはアルキル基)を表す。]
で表されるパーオキシケタールである。優れた接着性、向上した耐久性が得られやすい。
【0021】
上記式IIにおいて、R1及びR2が、それぞれ独立して炭素原子数5〜8個(特に6個)の分岐の炭化水素基(好ましくはアルキル基)を表す。またR1及びR2が同一であることが特に好ましい。
【0022】
(3)有機過酸化物が、エチレン/酢酸ビニル共重合体100質量部に対して0.1〜3.0質量部含まれている。優れた接着性、向上した耐久性が得られやすい。
【0023】
(4)さらに、トリアリル(イソ)シアヌレートが、エチレン/酢酸ビニル共重合体100質量部に対して0.1〜3.0質量部含まれている。特に、優れた接着性、向上した耐久性が得られやすい。
【0024】
(5)有機過酸化物とトリアリル(イソ)シアヌレートとの割合が、60:40〜40:60(有機過酸化物:トリアリル(イソ)シアヌレート)である。特に、優れた接着性、向上した耐久性が得られやすい。
【0025】
(6)エチレン/酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル単位が、エチレン酢酸ビニル共重合体100質量部に対して20〜35質量%の範囲である。
【0026】
(7)有機過酸化物を含有するエチレン/酢酸ビニル共重合体をカレンダ成形することにより得られる。
【0027】
(8)有機過酸化物を含有するエチレン/酢酸ビニル共重合体を含む液を塗工することにより得られる。
【0028】
本発明は、2枚の透明基板の間に、上記の合わせガラス用中間膜が挟持され、架橋一体化されてなることを特徴とする積層体にもある。
【0029】
上記積層体において、2枚の透明基板の一方がガラス板で、他方がプラスチックフィルムであるもの、及び2枚の透明基板が共にガラス板であるものが好ましい。フィルム強化ガラス及び合わせガラスとして有用である。
【発明の効果】
【0030】
本発明の合わせガラス用中間膜に使用されている架橋剤は、公知の有機過酸化物の中から、環境汚染の心配が無く、且つフィルム強化ガラス及び合わせガラス等の中間膜(透明接着剤層)として、架橋の際の高い反応性を維持しながら、接着性、耐久性を向上するように選択されたものである。特に、本発明の合わせガラス用中間膜においては、本発明の有機過酸化物を使用し、特定のエチレン酢酸ビニル共重合体、特定の架橋助剤を特定の割合で使用した場合に、接着性が向上すると共に、経時的に発生するヘイズの上昇、膜強度の低下を顕著に抑えることができ、耐久性に特に優れたものを得ることができる。
【0031】
従って、架橋後の合わせガラス用中間膜は、環境汚染の恐れが無く、特に接着性、耐久性の向上したもので、これを用いて得られる、フィルム強化ガラスを含む合わせガラスも同様に環境汚染の恐れが無く、特に接着性、透明性が向上している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明の合わせガラス用中間膜は、エチレン/酢酸ビニル共重合体を主成分とする材料に特定の有機過酸化物が含有した合わせガラス用中間膜であり、フィルム強化ガラスを含む合わせガラスの透明接着剤層として使用される。
【0033】
上記特定の有機過酸化物は、下記式I:
【0034】
【化3】

【0035】
[但し、R1が、炭素原子数5〜10個の直鎖または分岐の炭化水素基を表し、R2が、炭素原子数2〜10個の直鎖または分岐の炭化水素基(例、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基)を表し、そしてR3及びR4が、それぞれ独立して炭素原子数2〜6個の直鎖または分岐の炭化水素基を表すか、或いはR3及びR4が、隣接する炭素原子と共に相互に結合して置換基(例、アルキル基)を有していても良い炭素原子数3〜8個の環式基(例、脂環式基(シクロアルキル基)、シクロアルケニル基、アリール基)を形成している。]
で表され、且つ10時間半減期の温度が100℃以下であるパーオキシケタールである。10時間半減期の温度は、90℃以下(特に80〜90℃)であることが好ましい。これにより、良好な反応性で、エチレン/酢酸ビニル共重合体の緻密な3次元架橋が得られやすい。
【0036】
上記式Iのパーオキシケタールにおいて、R1及びR2が、それぞれ独立して炭素原子数5〜8個の分岐の炭化水素基(さらにアルキル基、特に分岐のアルキル基)を表すことが好ましい。またR1及びR2は共に同一の基であることが好ましい。さらに、R1及びR2の少なくとも一方がt−ヘキシル(即ち、1,1−ジメチルブチル基)、特に両方がt−ヘキシル(1,1−ジメチルブチル基)であることが好ましい。
【0037】
3及びR4は、隣接する炭素原子と共に相互に結合して置換基を有していても良い炭素原子数3〜8個(特に5個)の脂環式基を形成していることが好ましい。置換基は、一般に炭素原子数1〜4個の直鎖または分岐の炭化水素基(好ましくはアルキル基、特にメチル基)である。
【0038】
従って、上記式Iのパーオキシケタールは、下記式II:
【0039】
【化4】

【0040】
[但し、R1が、炭素原子数5〜10個の直鎖または分岐の炭化水素基(好ましくはアルキル基)を表し、R2が、炭素原子数2〜10個の直鎖または分岐の炭化水素基(好ましくはアルキル基)を表し、そしてR5〜R9及びR5'〜R9'が、それぞれ独立して水素原子または炭素原子数1〜4個の直鎖または分岐の炭化水素基(好ましくはアルキル基)を表す。]
で表されるパーオキシケタールであることが好ましい。上記式IIにおいて、R1及びR2が、それぞれ独立して5〜8個の分岐の炭化水素基(さらにアルキル基、特に分岐のアルキル基)を表すことが好ましい。また、R1及びR2の少なくとも一方がt−ヘキシル(1,1−ジメチルブチル基)、特に両方がt−ヘキシル(1,1−ジメチルブチル基)であることが好ましい。R5〜R9及びR5'〜R9'は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基であることが好ましい。特にR5〜R9及びR5'〜R9'の全てが水素であるか、R5〜R9及びR5'〜R9'の内3〜6個、中でも3個(特にR6,R6',R8)がメチル基で、他は水素原子であることが好ましい。
【0041】
本発明の上記パーオキシケタールとしては、特に1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサンが好ましい。
【0042】
このような特定の有機過酸化物を用いることにより高い架橋速度、優れた接着性、向上した耐久性、さらには高い透明性が得られやすい。特に上記式IIの化合物であることが好ましい。従来、良好な特性が得られるために使用されていた1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサンと異なり、本発明の上記式Iの化合物はケタールの酸素に結合するアルコキシ基の炭素数が大きいことから、体内蓄積等が起こり難いと考えられる。
【0043】
本発明の中間膜は、エチレン/酢酸ビニル共重合体を、トリアリル(イソ)シアヌレートと共に有機過酸化物により架橋したものであることが好ましい。これにより、高い架橋速度、優れた接着性、向上した耐久性、さらには高い透明性(低ヘイズ)が得られやすい。その場合、エチレン/酢酸ビニル共重合体を、後述する特定の酢酸ビニル含有量を有するものを使用し、有機過酸化物とトリアリル(イソ)シアヌレートを特定量使用することが好ましい。
【0044】
本発明の合わせガラスは、一般に、1枚のガラス板、上記合わせガラス用中間膜、及び1枚のガラス板若しくはプラスチックフィルムが順に積層された合わせガラス(フィルム強化ガラス)である。
【0045】
図1に、本発明の合わせガラスの実施形態の一例を示す。上記積層体は、ガラス板11A及びガラス板11Bとの間に、エチレン酢酸ビニル共重合体に上記式Iの特定の有機過酸化物が含有した合わせガラス用中間膜12が挟持され、架橋一体化されて構成されている。ガラス板11Bはプラスチックシートでも良い。本発明では、前者の積層体、及び後者の積層体(フィルム強化ガラス)共に、合わせガラスと言う。ガラス板11A及び11B共にプラスチックシートとしても良い。
【0046】
上記合わせガラスは、上記本発明の合わせガラス用中間膜を透明接着剤層として使用しているために、ガラス板とガラス板、またはガラス板とプラスチックフィルムとを強固に接着しており、なおかつ経時的に発生するヘイズの上昇、膜強度の低下を顕著に抑えることができる、優れた耐久性も有している。また、本発明の有機過酸化物は、従来のものに劣らないは高い架橋速度を示し、上記積層体の製造も容易に行うことができる。さらに、本発明で使用される特定の有機過酸化物は、上述のように環境汚染の恐れがほとんど無く、これを用いて得られる合わせガラスも同様に環境汚染の恐れは無い。また本発明の合わせガラスは、透明性が高く、接着性、耐久性に優れたものであるが、特に、特定のエチレン酢酸ビニル共重合体の使用、そして後述する量範囲での有機過酸化物の使用、さらに前記割合での有機過酸化物とTAICの使用により、特に向上した接着性、耐久性を得ることができる。
【0047】
本発明の合わせガラスは、一方がプラスチックフィルムの場合、耐衝撃性、耐貫通性、透明性等において適度な性能を有するように設計することもでき、このため、例えば各種車体、ビル等に装備される窓ガラス等のガラス、又はショーケース、ショーウインド等のガラスに使用することができる。共にガラス板の場合は、特に優れた耐衝撃性、向上した耐貫通性を示すように設計することができ、合わせガラスを含む種々な用途に使用することができる。
【0048】
一方がプラスチックフィルムの合わせガラス、例えば自動車のサイドガラス及び嵌め込みガラスの場合、フロントガラス程の厚さは必要としないため、プラスチックフィルム3の厚さは、0.02〜2mmの範囲が一般的であり、0.02〜1.2mmの範囲が好ましい。中間膜及びプラスチックフィルムの厚さは、当該ガラスを使用する場所等に応じて変えることができる。
【0049】
本発明で使用されるガラス板は、通常珪酸塩ガラスである。ガラス板厚は、フィルム強化ガラスの場合、それを設置する場所等により異なる。例えば、自動車のサイドガラス及び嵌め込みガラスに使用する場合、フロントガラスのように厚くする必要はなく、0.1〜10mmが一般的であり、0.3〜5mmが好ましい。前記1枚のガラス板1は、化学的に、或いは熱的に強化させたものである。
【0050】
自動車のフロントガラス等に適当な両方がガラス板である合わせガラスの場合は、ガラス板の厚さは、0.5〜10mmが一般的であり、1〜8mmが好ましい。
【0051】
本発明の中間膜(透明接着剤層)に用いられる有機樹脂としては、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)が使用される。さらに、ポリビニルアセタール系樹脂(例えば、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール(PVB樹脂)、変性PVB)、塩化ビニル樹脂を副次的に使用することもできる。その場合、特にPVBが好ましい。
【0052】
中間膜に用いられるEVAは、酢酸ビニル含有率が、一般に15〜40質量%であり、20〜35質量%、さらに22〜30質量%、特に24〜28質量%であることが好ましい。この酢酸ビニル含有率が、15質量%未満であると、高温で架橋硬化させる場合に得られる樹脂の透明度が充分でなく、逆に40質量%を超えると防犯用ガラスにした場合の耐衝撃性、耐貫通性が不足する傾向となる。特に、20〜35質量%、さらに22〜30質量%、特に24〜28質量%の範囲にすることにより、高い透明性を維持しながら、接着性、耐久性を向上させることができる。
【0053】
本発明の合わせガラス用中間層を形成する組成物には、上記EVAに、上記特定の式I又はIIで表される有機過酸化物(架橋剤)、必要に応じて架橋助剤、接着向上剤、可塑剤等の種々の添加剤を含有させることができる。
【0054】
式Iの有機過酸化物は、EVA100質量部に対して一般に0.5〜5.0質量部、好ましくは1.0〜3.0質量部、特に1.5〜2.5質量部含まれていることが好ましい。これにより、環境汚染の心配なく、優れた接着性、耐久性が得られる。また、さらに、トリアリル(イソ)シアヌレートを、EVA100質量部に対して一般に0.5〜5質量部、好ましくは1.0〜3.0質量部、特に1.5〜2.5質量部含まれていることが好ましい。高い透明性を維持しながら、接着性、耐久性を向上させることができる。トリアリル(イソ)シアヌレートは、トリアリルイソシアヌレート及びトリアリルシアヌレートの両方を表すが、トリアリルイソシアヌレートが特に好ましい。また有機過酸化物とトリアリル(イソ)シアヌレートとの割合は、60:40〜40:60(有機過酸化物:トリアリル(イソ)シアヌレート)、特に60:40〜52:48であることが好ましい。向上した耐貫通性が得られやすい。中間膜の層厚は、一般に10〜2000μm、好ましくは10〜1000μm、特に20〜500μmの範囲である。
【0055】
本発明の合わせガラスは透明性においても優れたものであるが、特に有機過酸化物を2.2〜3.0質量部、そして有機過酸化物とトリアリル(イソ)シアヌレートとの割合を60:40〜52:48にすることにより、低いヘイズが得られやすい。このような配合にすることにより、有機過酸化物とトリアリル(イソ)シアヌレートを液状でEVAに添加することができ、良好な分散が得られやすく、且つ架橋点が大幅に増大し、ポリエチレンの結晶化を防止することができ、ヘイズを格段に低下させることができると考えられる。
【0056】
前記の可塑剤としては、特に限定されるものではないが、一般に多塩基酸のエステル、多価アルコールのエステルが使用される。その例としては、ジオクチルフタレート、ジヘキシルアジペート、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、ブチルセバケート、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、トリエチレングリコールジペラルゴネートを挙げることができる。可塑剤は一種用いてもよく、二種以上組み合わせて使用しても良い。可塑剤の含有量は、EVA100質量部に対して5質量部以下の範囲が好ましい。
【0057】
本発明では、有機過酸化物としては上記特定の式I又はIIで表される有機過酸化物を使用するものであるが、この過酸化物以外にも、100℃以上の温度で分解してラジカルを発生するものであれば、どのようなものでも併用することもできる。有機過酸化物は、一般に、成膜温度、組成物の調整条件、硬化(貼り合わせ)温度、被着体の耐熱性、貯蔵安定性を考慮して選択される。特に、半減期10時間の分解温度が70℃以上のものが好ましい。
【0058】
この有機過酸化物の例としては、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン−3−ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、メチルエチルケトンパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキシル−2,5−ビスパーオキシベンゾエート、ブチルハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、ヒドロキシヘプチルパーオキサイド、クロロヘキサノンパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、クミルパーオキシオクトエート、コハク酸パーオキサイド、アセチルパーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレーオ及び2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルへキシルカーボネートを挙げることができる。
【0059】
本発明の中間膜は、膜の種々の物性(機械的強度、接着性、透明性等の光学的特性、耐熱性、耐光性、架橋速度等)の改良あるいは調整、特に機械的強度の改良のため、架橋助剤、アクリロキシ基含有化合物、メタクリロキシ基含有化合物及び/又はエポキシ基含有化合物を含んでいることが好ましい。
【0060】
使用するアクリロキシ基含有化合物及びメタクリロキシ基含有化合物としては、一般にアクリル酸あるいはメタクリル酸誘導体であり、例えばアクリル酸あるいはメタクリル酸のエステルやアミドを挙げることができる。エステル残基の例としては、メチル、エチル、ドデシル、ステアリル、ラウリル等の直鎖状のアルキル基、シクロヘキシル基、テトラヒドルフルフリル基、アミノエチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、3−クロロ−2−ヒドロキシプオピル基を挙げることができる。また、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールとアクリル酸あるいはメタクリル酸のエステルも挙げることができる。
【0061】
アミドの例としては、ジアセトンアクリルアミドを挙げることができる。
【0062】
多官能化合物(架橋助剤)としては、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等に複数のアクリル酸あるいはメタクリル酸をエステル化したエステル、さらに前述のトリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートを挙げることができる。
【0063】
エポキシ含有化合物としては、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、フェノール(エチレンオキシ)5グリシジルエーテル、p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、グリシジルメタクリレート、ブチルグリシジルエーテルを挙げることができる。
【0064】
上記架橋助剤、アクリロキシ基含有化合物、メタクリロキシ基含有化合物又はエポキシ基含有化合物は、それぞれEVA100質量部に対してそれぞれ一般に0.5〜5.0質量部、特に1.0〜4.0質量部含まれていることが好ましい。
【0065】
本発明では、上記中間膜とガラス板又はプラスチックフィルムとの接着力をさらに高めるために、接着向上剤として、シランカップリング剤を添加することができる。
【0066】
このシランカップリング剤の例として、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランを挙げることができる。これらシランカップリング剤は、単独で使用しても、又は2種以上組み合わせて使用しても良い。また上記化合物の含有量は、EVA100質量部に対して5質量部以下であることが好ましい。
【0067】
本発明の合わせガラス用中間膜(透明接着剤層)、例えば、上記EVA、有機過酸化物等を含む組成物は、通常の押出成形、又はカレンダ成形(カレンダリング)等により成形してシート状物を得る方法により製造することができる。また、上記EVA、有機過酸化物等を含む組成物を溶剤に溶解させ、この溶液を適当な塗布機(コーター)で適当な支持体上に塗布、乾燥して塗膜を形成することによりシート状物を得ることもできる。
【0068】
本発明の合わせガラス用中間膜をカレンダ成形により作製する方法の一例を図2に示す。上記EVA、有機過酸化物等を含む組成物(原料)を混練機11に投入し、混練後、混練物10をコンベア12で搬送して練りロール13に供給する。練りロール13でシート状になった混練物をコンベア14により搬送し、カレンダロール15(第1ロール15A、第2ロール15B、第3ロール15C、第4ロール15D)で平滑化し、平滑化されたシートをテイクオフロール16で取り出す。この後、エンボスロール17で表面をエンボス化し、5個の冷却ロール18で冷却して、得られたシート20を巻き取り機19で巻き取る。上記エンボス処理は適宜行われる。
【0069】
本発明の合わせガラス用中間膜、即ち、上記のようにして得られたシートは、合わせガラスに使用する場合、一般に100〜150℃(特に130℃付近)で、10分〜1時間(特に10〜40分)架橋させる。このような架橋は、合わせガラスを製造する際、透明基板(一般にガラス板)の間に挟持された状態で、脱気したのち、例えば80〜120℃の温度で予備圧着し、100〜150℃(特に130℃付近)で、10分〜1時間加熱処理することにより行われる。加熱処理は、例えば130℃で10〜40分間(雰囲気温度)が好ましい。架橋後の積層体は一般に室温で行われるが、特に、冷却は速いほど好ましい。
【0070】
本発明で使用されるプラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンアフタレート(PEN)フィルム、ポリエチレンブチレートフィルムを挙げることができ、PETフィルムが好ましい。
【0071】
プラスチックフィルムの表面にハードコート層を形成する場合、そのために使用される樹脂としては、紫外線硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂が使用される。ハードコート層の層厚は、一般に1〜50μm、好ましくは3〜20μmの範囲である。
【0072】
紫外線硬化性樹脂としては、公知の紫外線硬化性樹脂を使用することができ、その他ハードコート処理に適した低分子量且つ多官能な樹脂であれば、特に限定されるものではない。この紫外線硬化性樹脂は、例えばエチレン性二重結合を複数有するウレタンオリゴマー、ポリエステルオリゴマー又はエポキシオリゴマー等のオリゴマー、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETA)、ペンタエリスリトールテトラメタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPEHA)等の一官能又は多官能オリゴマー、樹脂は、反応性稀釈剤、光重合開始剤から一般に構成される。さらに種々の添加剤を含有させることができる。反応性稀釈剤としては、前記透明接着剤層で使用されたアクリロキシ基含有化合物、メタクリロキシ基含有化合物及び/又はエポキシ基含有化合物を用いることができ、光重合開始剤としても、前記透明接着剤層で使用された化合物を使用することができる。
【0073】
オリゴマー、反応性稀釈剤及び開始剤は、それぞれ一種用いても良く、二種以上組み合わせて用いてもよい。反応性稀釈剤の含有量は、紫外線硬化性樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部が一般的であり、0.5〜5質量部が好ましい。光重合開始剤の含有量は、紫外線硬化性樹脂100質量部に対して5質量部以下が好ましい。
【0074】
熱硬化性樹脂としては、反応性アクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等を利用することができ。前記紫外線硬化性樹脂も使用することもできる。
【0075】
紫外線硬化性樹脂を用いてハードコート層を形成する場合、紫外線硬化性樹脂をそのまま、又は有機溶剤で適当な濃度に稀釈して、得られた溶液を適当な塗布機(コーター)で適当なフィルム上に塗布し、必要により乾燥した後、直接又は剥離シートを介して(真空脱気後)UVランプにて紫外線を数秒〜数分間照射し、ハードコート層を形成することができる。UVランプとしては、高圧水銀灯、中圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプ等使用することができる。
【0076】
熱硬化性樹脂を用いてハードコート層を形成する場合、熱硬化性樹脂の有機溶剤溶液を、適当な塗布機(コーター)で適当なフィルム上に塗布し、必要により剥離シートを設け、ラミネータ等にて脱気後、熱硬化、熱圧着を行う。剥離シートを用いない場合は、加熱、圧着前に、60秒程度乾燥して塗布層の溶剤を蒸発させ表面が粘着しない程度に乾燥させることが好ましい。剥離シートを使用する場合も、少し乾燥して剥離シートを設けることが好ましい。
【0077】
本発明で得られる合わせガラスのガラス板の表面には、金属及び/又は金属酸化物からなる透明の導電層を設けても良い。
【0078】
本発明の合わせガラスは、1枚のガラス板、合わせガラス用中間膜及び1枚のガラス板若しくはプラスチックフィルムを積層させ、このサンドイッチ構造の合わせガラスを脱気したのち、加熱下に押圧する。その後、所望により、プラスチックフィルム上へハードコート処理することにより得ることができる。あるいは、前記積層後ハードコートを塗布、UV硬化後、加熱下押圧することもできる。その後、前記の架橋処理がなされる。
【0079】
上記のようにして得られた合わせガラスの側面には、バリヤ層を形成しても良い。バリヤ層の層厚は、一般に0.1〜20μm、1〜10μmが好ましい。
【0080】
こうして得られた合わせガラスは、以下のような用途に使用することができる。即ち、自動車の嵌め込みガラス、サイドガラス及びリヤガラス、鉄道車両、例えば普通車両、急行車両、特急車両及び寝台車両等の乗客出入り用開閉ドアの扉ガラス、窓ガラス及び室内ドアガラス、ビル等の建物における窓ガラス及び室内ドアガラス等、室内展示用ショーケース及びショーウィンド等である。好ましくは自動車のサイド又はリヤガラス、鉄道車両の窓ガラス、特に自動車のドアガラスに有用である。
【0081】
本発明の架橋(硬化)後合わせガラス用中間膜は、前述のように向上した接着性及び耐久性を有する。また合わせガラス用中間膜の反応性は、所定時間の硬化における膜の強靱性を示すキュアトルクとして評価することができる。キュアトルクは、0.4mm厚さの合わせガラス用中間膜形成用組成物のシートを130℃に設定し、キュアトルクメータ(IV型;JSR(株)製)にて、15分後の値を読みとることにより測定した。本発明の合わせガラス用中間膜のキュアトルクは、15分間という短時間で、高いキュアトルクを得ることができ、優れた反応性を示している。一般に80〜100N・cm、特に85〜95N・cmであり、従来に劣らない優れた性能を示している。本発明の合わせガラス用中間膜は、高いキュアトルクが経時的(例えば、耐湿熱試験後、長時間経過後)にほとんど低下することが無く、向上した耐久性を有している。
【0082】
また、本発明の合わせガラス用中間膜は、上記良好な反応性(耐貫通性)を保持しながら、高い接着強度を有している。即ち、その接着力は、15〜25N/cm、特に17〜23N/cmにあることが好ましい(試験方法は、後述する)。
【0083】
以下に実施例を示し、本発明ついてさらに詳述する。
【実施例】
【0084】
[比較例1]
下記の配合を原料として図2に示すカレンダ成形法により合わせガラス用中間膜(厚さ400μm)を得た。尚、カレンダロールの温度は80℃、加工速度は5m/分であった。
【0085】
(透明合わせガラス用中間膜形成用配合(質量部))
EVA(酢酸ビニル含有量28質量%) :100
架橋剤1(t−ブチルパーオキシ−2−エチルへキシルカーボネート;
10時間半減期の温度:90℃) :2.0
トリアリルイソシアヌレート :2.0
シランカップリング剤
(3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン) :0.5
ガラス板として、予め洗浄乾燥した厚さ5mmの珪酸塩ガラス板を2枚用意した。
【0086】
2枚のガラス板を上記で得られた透明合わせガラス用中間膜を介して積層し、これをゴム袋に入れて真空脱気し、110℃の温度で予備圧着した。次に、この予備圧着ガラスをオーブン中に入れ、温度130℃の条件下で30分間加熱処理し、次いで雰囲気温度が20℃/分で低下するよう冷却して、合わせガラスを製造した。
【0087】
[実施例1]
比較例1において、架橋剤1(t−ブチルパーオキシ−2−エチルへキシルカーボネート;10時間半減期の温度:90℃)の代わりに、架橋剤2(1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン;10時間半減期の温度:86.7℃)を同量用いた以外、同様にして合わせガラスを製造した。
【0088】
[実施例2]
比較例1において、架橋剤1(t−ブチルパーオキシ−2−エチルへキシルカーボネート;10時間半減期の温度:90℃)の代わりに、架橋剤3(1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン;10時間半減期の温度:87.1℃)を同量用いた以外、同様にして合わせガラスを製造した。
【0089】
[実施例3]
比較例1において、架橋剤1(t−ブチルパーオキシ−2−エチルへキシルカーボネート;10時間半減期の温度:90℃)2.0質量部の代わりに、架橋剤2(1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン;10時間半減期の温度:86.7℃)を1.7質量部用い、トリアリルイソシアヌレートの使用量を2.0質量部から1.7質量部に変更した以外、同様にして合わせガラスを製造した。
【0090】
[実施例4]
比較例1において、架橋剤1(t−ブチルパーオキシ−2−エチルへキシルカーボネート;10時間半減期の温度:90℃)2.0質量部の代わりに、架橋剤3(1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン;10時間半減期の温度:87.1℃)を1.7質量部用い、トリアリルイソシアヌレートの使用量を2.0質量部から1.7質量部に変更した以外、同様にして合わせガラスを製造した。
【0091】
<上記合わせガラス及び合わせガラス用中間膜の評価>
(1)接着強度
比較例1及び実施例1〜4と同様にして、一方のガラスの代わりに厚さ50mmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを用いて、同様にして合わせガラス(積層体)を作製し、これを2.5cm幅、長さ10cmの大きさに裁断し、引張試験機により引張速度100mm/分で、ガラス板/中間膜との180°剥離強度を測定した。3個のサンプル数について測定し、その平均値を接着強度とした。接着強度(N/cm)=平均剥離強度(N)/2.5(cm)。尚、測定は22±5℃の環境で行った。
【0092】
(2)キュアトルク
比較例1及び実施例1〜4と同様にして400μm厚さの合わせガラス用中間膜形成用組成物のシートを、剥離層を有するガラス板に形成し、シートを剥離し、そのシートを130℃に設定し、そのトルクをキュアトルクメータ(IV型;JSR(株)製)にて、15分後の値を読みとることにより測定した。
【0093】
(3)耐湿熱性(耐久性1)
比較例1及び実施例1〜4で得られた合わせガラスを、60℃、90%RHの環境下に2000時間放置し、放置前のヘイズ値と放置後のヘイズ値の差(Δヘイズ)を求めた。差が小さいほど耐湿熱性が良好である。
【0094】
ヘイズ値は、得られた合わせガラス3枚ずつカラーコンピュータSM−5(スガ試験機(株)製)を用いて測定して得た。各ヘイズ値は3枚の平均値である。
【0095】
(4)貯蔵安定性(耐久性2)
(2)で得られたシートを、常温で160時間放置し、その放置後のシートのキュアトルクをキュアトルクメータ(IV型;JSR(株)製)を用いて測定した。キュアトルクの維持率(%)を、
160時間放置後のキュアトルク/(2)で得られた放置前のキュアトルク×100から求めた。高いほど貯蔵安定性に優れている。
【0096】
測定結果を下記に示す。
【0097】
【表1】

【0098】
上記結果から明らかなように、本発明に従う実施例1〜4の合わせガラス用中間膜(合わせガラス)は、従来一般的に使用されている架橋剤を用いた合わせガラス用中間膜(比較例1)に匹敵するキュアトルク(優れた反応性)を有し、さらに、従来より向上した接着強度を有し、なおかつ耐湿熱性、耐湿熱性の耐久性においても向上している。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】図1は本発明の合わせガラスの実施形態の一例を示す。
【図2】図2は、本発明の合わせガラス用中間膜のカレンダ成形による作製方法の一例を示す。
【符号の説明】
【0100】
11A、11B ガラス板
12 合わせガラス用中間膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン/酢酸ビニル共重合体に有機過酸化物を含有してなる合わせガラス用中間膜であって、有機過酸化物が下記式I:
【化1】

[但し、R1が、炭素原子数5〜10個の直鎖または分岐の炭化水素基を表し、R2が、炭素原子数2〜10個の直鎖または分岐の炭化水素基を表し、そしてR3及びR4が、それぞれ独立して炭素原子数2〜6個の直鎖または分岐の炭化水素基を表すか、或いはR3及びR4が、隣接する炭素原子と共に相互に結合して置換基を有していても良い炭素原子数3〜8個の環式基を形成している。]
で表され、且つ10時間半減期の温度が100℃以下であるパーオキシケタールであることを特徴とする合わせガラス用の中間膜。
【請求項2】
上記式Iにおいて、R1及びR2が、それぞれ独立して炭素原子数5〜8個の分岐の炭化水素基を表し、そしてR3及びR4が、隣接する炭素原子と共に相互に結合して置換基を有していても良い炭素原子数3〜8個の脂環式基を形成している請求項1に記載の中間膜。
【請求項3】
有機過酸化物が、下記式II:
【化2】

[但し、R1が、炭素原子数5〜10個の直鎖または分岐の炭化水素基を表し、R2が、炭素原子数2〜10個の直鎖または分岐の炭化水素基を表し、そしてR5〜R9及びR5'〜R9'が、それぞれ独立して水素原子または炭素原子数1〜4個の直鎖または分岐の炭化水素基を表す。]
で表されるパーオキシケタールである請求項1に記載の中間膜。
【請求項4】
上記式IIにおいて、R1及びR2が、それぞれ独立して炭素原子数5〜8個の分岐の炭化水素基を表す請求項3に記載の中間膜。
【請求項5】
上記式I及びIIにおいて、炭化水素基がアルキル基である請求項1〜4のいずれか1項に記載の中間膜。
【請求項6】
有機過酸化物が、エチレン/酢酸ビニル共重合体100質量部に対して0.1〜3.0質量部含まれている請求項1〜5のいずれか1項に記載の中間膜。
【請求項7】
さらに、トリアリル(イソ)シアヌレートが、エチレン/酢酸ビニル共重合体100質量部に対して0.1〜3.0質量部含まれている請求項1〜6のいずれか1項に記載の中間膜。
【請求項8】
有機過酸化物とトリアリル(イソ)シアヌレートとの割合が、60:40〜40:60(有機過酸化物:トリアリル(イソ)シアヌレート)である請求項7に記載の中間膜。
【請求項9】
エチレン/酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル単位が、エチレン酢酸ビニル共重合体100質量部に対して20〜35質量%の範囲である請求項1〜8のいずれか1項に記載の中間膜。
【請求項10】
有機過酸化物を含有するエチレン/酢酸ビニル共重合体をカレンダ成形することにより得られる請求項1〜9のいずれか1項に記載の中間膜。
【請求項11】
有機過酸化物を含有するエチレン/酢酸ビニル共重合体を含む液を塗工することにより得られる請求項1〜9のいずれか1項に記載の中間膜。
【請求項12】
2枚の透明基板の間に、請求項1〜1のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜が挟持され、架橋一体化されてなることを特徴とする合わせガラス。
【請求項13】
2枚の透明基板の一方がガラス板で、他方がプラスチックフィルムである請求項12に記載の合わせガラス。
【請求項14】
2枚の透明基板が共にガラス板である請求項12記載の合わせガラス。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−331952(P2007−331952A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−162010(P2006−162010)
【出願日】平成18年6月12日(2006.6.12)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】