説明

合成ガス製造用触媒形状及び方法

【解決課題】水素及び一酸化炭素を製造するための改良された炭化水素類の接触部分酸化プロセスを開示する。
【解決手段】本プロセスは、担体上の貴金属又は遷移金属触媒の第1層及び担体上にウオッシュコーティングされた安定な無機金属酸化物上に担持された還元金属触媒の第2層を含む第1ステージ反応器と、シフト反応器である第2ステージ反応器とを具備する新規な触媒構造装置を利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素及び一酸化炭素を製造する炭化水素類の接触部分酸化プロセス及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化水素類を水素及び一酸化炭素含有ガスへ転化することは周知である。このようなプロセスの例としては、接触蒸気改質、自熱接触改質、接触部分酸化及び非接触部分酸化を挙げることができる。これらのプロセスのそれぞれは利点も欠点も有し、合成ガス(シンガス)としても知られている種々の比率での水素及び一酸化炭素を製造する。本発明は、接触部分酸化プロセスに関する。
【0003】
部分酸化プロセスは周知であり、種々の接触部分酸化プロセスがある。部分酸化は発熱反応であり、昇温された温度で、メタンなどの炭化水素ガス及び空気などの酸素含有ガスを触媒と接触させて、高濃度の水素及び一酸化炭素を含む反応生成物を製造する。これらのプロセスで用いられる触媒は、典型的には白金又はロジウムなどの貴金属、ニッケルなどの他の遷移金属であり、すべて適切な担体上にある。
【0004】
部分酸化プロセスは、天然ガスなどの炭化水素含有ガスを水素、一酸化炭素及び他の痕跡量の成分、たとえば二酸化炭素及び水に転化する。プロセスは、予熱された炭化水素類及び酸素含有ガスを燃焼チャンバに注入することにより典型的には実施され、燃焼チャンバ内では完全燃焼に対する化学量論量の酸素よりも少量の酸素で炭化水素類の酸化が生じる。この反応は、非常に高温、例えば700℃を超え、しばしば1000℃を超える高温で、150気圧以下の圧力で行われる。幾つかの反応において、蒸気又は二酸化炭素を燃焼チャンバに注入して合成ガス生成物を修飾したり、一酸化炭素に対する水素の比率を調節したりすることができる。
【0005】
さらに最近では、セラミックモノリス(例えば発泡体又はハニカム)担体上に堆積させた金属などの触媒の存在下で、高い空間速度にて、炭化水素ガスを酸素含有ガスと接触させる部分酸化プロセスが開示されている。モノリス担体は、白金、パラジウムもしくはロジウムなどの貴金属又はニッケル、コバルト、クロムなどの他の遷移金属で含浸されている。典型的には、これらのモノリス担体は、固体耐火材又はセラミック材料、例えばアルミナ、ジルコニア、マグネシアなどから調製される。これらの反応の運転中、炭化水素供給ガス及び酸素含有ガスは、最初に、400℃を超える温度、典型的には600℃を超える温度にて、100,000/hrの標準ガス時間あたり空間速度(GHSV)にて、金属触媒と接触する。
【0006】
メタン及び他の炭化水素類の部分酸化は発熱反応であり、理想条件下では2:1のH2:CO比率を有するシンガス混合物を得るために式1の化学量論及び1100℃未満の平衡温度に従って進行することができる。
CH4+1/2 O2→CO+2H2 (1)
接触部分酸化床において、部分酸化が床長の最初の数ミリメータ内で生じることが示唆されている。Hickman and Schmidt, Syngas Gas Formation by Direct Oxidation of Methane Over Pt Monoliths, 138 J. Catalysis 267, 275 (1992)参照。したがって、触媒床の小さな部分だけが反応に触媒作用を及ぼすために必要であると論理的に考えられる。
【0007】
しかし、我々は、接触部分酸化中の触媒の最初の数ミリメータにおける実際の温度は、予測されるものよりも遙かに高いことを見出した。触媒の最初の数ミリメータにおいて、ほぼ完全な酸素転化が達成され、触媒床の長さを増加させた場合に反応性能が改良されることを知見している。
【0008】
上述の観察に基づくと、直接部分酸化は、燃焼、部分酸化、蒸気及びCO2改質及び水性ガスシフト反応の組み合わせの効果であるらしい。供給ガスが触媒と最初に接触する(おそらく最初の数ミリメータだけで)反応ゾーンの前方で、式2に示すような燃焼などの酸化反応及び式1に示すような部分酸化反応は、互いに競合し、ほぼ完全な酸素転化を誘導する。
CH4+2O2→CO2+2H2O (2)
発熱酸化反応により放出される熱は、吸熱蒸気反応及びCO2改質反応(3)及び(4)を通して、いくらかの水性ガスシフト反応又は逆水性ガスシフト反応(5)と一緒に、燃焼反応から発生する蒸気又はCO2で未反応炭化水素種をシンガスにさらに転化するために十分なエネルギーを提供する。
CH4+H2O→CO+3H2 (3)
CH4+CO2→2CO2+2H2 (4)
H2O+CO←→CO2+H2 (5)
これは、1450℃を超える反応ゾーンの前方での過剰の熱が前層において極度に高い温度を生じさせることを説明する。改質反応の吸熱特性は、続く触媒を1100℃未満まで迅速に冷却する。結果として、触媒ゾーン温度は、前層において極度に高く、続いてより低い温度のダウンストリームとなる。
【0009】
大きな問題は、1450℃を超える高温で網状モノリス触媒を用いる場合に、部分酸化プロセスの運転時に生じ得る。我々は、部分安定化ジルコニア(PSZ)又はAl2O3から成るなどの網状モノリス担体は、高温及び熱ショックに対して非常に敏感であり、最終的には、反応後、触媒を不安定にして脆弱にすることを見出した。網状モノリスの脆弱性に起因するいくつかの潜在的な理由がある。中空のウェブタイプの構造は本来的に高温、PSZ材料の相転移などに弱い。しかし、反応温度を少なくとも1100℃に制御すると、部分安定化ジルコニア(PSZ)又はAl2O3などの網状モノリス担体は、機械的強度を維持し、優れた反応性を与えることができる。
【0010】
商業的に魅力的であろう条件下で炭化水素類の接触部分酸化に用いるための触媒に対する最も適切な固定配置は、触媒を網状モノリス構造の形態に保持することであることが見出されている。このようなプロセスに用いるための触媒は、網状モノリスの形態である耐火性酸化物担体上に担持されている1以上の触媒活性成分を含む。
【0011】
しかし、網状モノリス触媒を用いる場合に、部分酸化プロセスの運転時に問題が生じ得ることがわかってきた。特に、耐火性モノリス触媒構造は接触部分酸化プロセスにて現れる熱ショック及び高温に対して非常に敏感であり、特に空気よりも酸素を用いる場合には、構造の脆弱性を引き起こし、最終的には触媒の崩壊を誘発することがわかってきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の目的は、触媒の長期間安定性を達成するために部分酸化反応器ステージ1とシフト反応器ステージ2とを具備する接触部分酸化プロセスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、不活性担体上に分散された触媒活性金属の第1層及び担体上にウオッシュコーティング(washcoat)された安定な無機金属酸化物上又は内に担持されている遷移金属から本質的になる還元金属触媒の第2層の触媒組成物を含む第1ステージ反応器と、シフト反応器を具備する第2ステージ反応器とを具備する2ステージ反応器に、炭化水素含有供給ガス及び酸素含有ガスの混合物を接触させることにより、水素及び一酸化炭素を製造するための炭化水素類の部分酸化方法を提供する。本発明はさらに、第1ステージ反応器と第2ステージ反応器とを具備する装置も提供する。
【0014】
第2ステージ反応器は、シフト反応器であり、モノリス触媒及びシフト触媒からなる群より選択することができる。モノリス触媒は、セラミックモノリス上に配置されたセリアコーティングにより担持された金属から本質的になる金属触媒であってもよい。ここで、金属は、ニッケル、コバルト、鉄、白金、パラジウム、イリジウム、レニウム、ルテニウム、ロジウム及びオスミウムの少なくとも1から選択される。セラミックは、ジルコニア、アルミナ、イットリア、チタニア、マグネシア、セリア及びコージライトの少なくとも1から選択される。セリアコーティングは、セラミックモノリスに対して約5wt%と約30wt%との間の質量パーセントを有する。一実施形態において、セラミックは、ジルコニア、イットリア、チタニア、マグネシア、セリア及びコージライトの少なくとも1から選択される。
【0015】
第2の反応器におけるシフト触媒は、低温シフト触媒又は水性ガスシフト反応器触媒でよい。
供給ガス中で用いられる炭化水素類は、典型的には、1〜約4個の炭素原子を有するアルカン類である。最も好ましくは、炭化水素は、天然ガス及びメタンからなる群より選択される。
【0016】
本発明は、2ステージ反応器システムを用いて、炭化水素含有供給ガス流及び酸素含有供給ガス流の混合物から、水素及び一酸化炭素すなわち合成ガス(シンガス)を製造するための炭化水素類の部分酸化法を提供する。
【0017】
第1ステージ反応器は、2層を有する触媒組成物である。第1層は、不活性担体上に分散されている触媒活性金属である。第2層は、担体上にウオッシュコーティング(washcoat)されている安定な無機金属酸化物上又は内に担持されている遷移金属から本質的になる還元金属触媒である。第2ステージ反応器は、シフト反応器を具備する。本発明の目的のために、シフト反応器はモノリス触媒又はシフト反応器、たとえば低温シフト触媒もしくは水性ガスシフト触媒などでよい。炭化水素類含有ガス流及び酸素含有ガス流は、この2ステージ反応器に供給され、反応して水素及び一酸化炭素すなわち合成ガス(シンガス)を形成するであろう。
【0018】
本発明はまた、2ステージ反応器システムを具備し、水素及び一酸化炭素すなわち合成ガス(シンガス)を製造するための炭化水素類の部分酸化に用いられる反応器システムを提供する。
【0019】
第1ステージは、2層の触媒組成物を具備する。第1層は、不活性担体上に分散されている触媒活性金属であり、第2層は、担体上にウオッシュコーティング(washcoat)されている安定な無機金属酸化物上又は内に担持されている遷移金属から本質的になる還元金属触媒である。
【0020】
反応器システム内の第2ステージ反応器は、シフト反応器を具備する。シフト反応器は、モノリス触媒又は低温シフト触媒もしくは水性ガスシフト触媒から選択されてもよい。第2ステージ反応器内で用いられ得るモノリス触媒は、セラミックモノリス上に配置されているセリアコーティングにより担持されている金属から本質的になる金属触媒である。金属は、ニッケル、コバルト、鉄、白金、パラジウム、イリジウム、レニウム、ルテニウム。ロジウム及びオスミウムからなる群より選択される。セラミック材料は、ジルコニア、アルミナ、イットリア、チタニア、マグネシア、セリア及びコージライトからなる群より選択される。セリアコーティングは、セラミックモノリスに対して約5〜約30%の間の質量パーセンテージを有する。モノリス触媒の一実施形態において、セラミックは、ジルコニア、イットリア、チタニア、マグネシア、セリア及びコージライトからなる群より選択される。
【0021】
この金属触媒モノリスセラミックのさらなる記載は、同時係属中のJiangらの米国特許出願公開US2003/0007926A1(2003年1月9日公開)に見ることができる。
モノリス触媒の好ましい実施形態において、ジルコニウムモノリスは、約1〜20wt%のセリアで被覆されており、セリア被覆モノリス上に0.5〜5wt%ロジウムを担持する。
【0022】
水素及び一酸化炭素を製造するための炭化水素類の部分酸化装置は、不活性担体上に分散されている触媒活性金属の第1層及び担体上にウオッシュコーティング(washcoat)されている安定な無機金属酸化物上又は内に担持されている遷移金属から本質的になる還元金属触媒の第2層の触媒組成物を具備する第1ステージ反応器と、シフト反応器を具備する第2ステージ反応器とを具備する。
【0023】
供給物サイドでの第1層内で用いるために好ましい触媒物質は、球状、ペレット状及びリング状;馬車の車輪状、Saint-Gobain NorproのTy-Pak(登録商標)、Hex-Pak(商標)、Snowflake(登録商標)媒体及びNorton(登録商標)サドル(saddles)、細目金網(gauze wire)、ハニカムモノリス又はここに掲載したような許容可能な加工形状での他の適切な担体などの微粒子であるが、改良された機械的強度を有する網状モノリスも用いることができる。この機械的強度は、本発明の目的のために、圧壊負荷(crush loading)に物質が耐えることができる最大応力である「破壊強度」として示すことができる。圧壊負荷(crush loading)は、触媒物質を破砕又は緻密にする質量及び/又は圧力である。本発明の触媒物質は、炭化水素類の部分酸化プロセスの典型的な運転条件に耐えることができる破壊強度を有する。したがって、本発明の触媒物質は、炭化水素類の部分酸化プロセスの通常の運転中に破壊強度に負けない。製品サイドでの層状触媒は、部分酸化に触媒作用を及ぼすが、主として、高い合成ガス(シンガス)選択性と共に高レベルの炭素転化を達成するための改質反応及び水性ガスシフト反応を促進する。網状モノリスは、これらの後続の層、特に最後の層にとってより適切である。
【0024】
2以上の層が用いられる場合、任意の順番で重ねられてよい。ただし、第1層は、熱衝撃及び1100℃を超える高温に対してより安定であり、後続の層は合成ガス(シンガス)への後続の炭素の転化にさらに触媒作用を及ぼすことができる。モノリスの細孔構造及び粒子の粒径は、床を通しての顕著な圧力降下がないようにする。米国特許公開公報US 2003/0083198A1は、より良い流れ分布を達成するために、スタックされた直流配置に配設された第1ゾーン及び第2ゾーンを具備する固定床触媒系を教示する。ここで、第1ゾーン(上流区域)は第2ゾーン(下流区域)よりも供給流に対して大きな流れ抵抗を有する。しかし、本発明において、網状モノリスよりもむしろ大きな細孔サイズのハニカムを用いることによって、第1層(上流)は第2層よりも抵抗が弱くてもよい。ガス分布を改良するために、各触媒層の間に触媒的に不活性な物質を置いてもよい。
【0025】
活性金属焼結又は高温での機械的強度弱体化のいずれかからの網状モノリス触媒の保護は、燃焼触媒として第1層を用いて高温から網状モノリスをシールドすることによって達成される。この多層触媒のコンセプトを図4に示す。図4においてNGは天然ガスを示す。
【0026】
[第1触媒層]
第1触媒層は、望ましくは、約1000℃〜約1800℃の温度範囲にわたり、顕著な失活なしに、酸化雰囲気及び還元雰囲気中で効果的に作用し得るべきである。第1触媒層は、好ましくは、不活性担体上に分散している触媒的に活性な金属を含む。この触媒中で用いられる金属は、元素周期表のある種の遷移金属及び貴金属から選択される。活性金属は、ニッケル、コバルト、鉄、白金、パラジウム、イリジウム、レニウム、ルテニウム、ロジウム及びオスミウム及びこれらの組み合わせから選択される遷移金属又は貴金属からなる群より選択することができる。好ましい金属はニッケル及びロジウムである。
【0027】
この群の最も好ましい金属はロジウムである。金属は、金属形態、還元されるまでは金属酸化物、金属ハライド又は他の金属塩の形態で存在していてもよい。還元されると、後述するように、実質的に金属形態である。一般に、金属の約0.1wt%〜8wt%が担体上に堆積されるであろう。場合によっては、発熱反応触媒としてRh/Pt細目網状触媒を用いてもよい。
【0028】
米国特許出願公開US 2003/0198592A1公報は、炭化水素及び酸素供給物流を合成ガス(シンガス)に転化するための多数の直列配置反応ゾーン及び多数の炭化水素供給物を開示する。第1反応ゾーンは、供給炭化水素の正味部分酸化に触媒作用を及ぼし、後続のゾーンは水性ガスシフト反応、正味部分酸化、蒸気又は乾式改質のいずれかに触媒作用を及ぼす。最も選択的な触媒のいくつか、たとえばRhは、焼結などの問題及び炭素形成に対する制限された許容性ゆえに、熱に耐えることができず、活性を保持することができない。本発明は、混合金属酸化物などのより多くの熱的に安定な触媒又はスピネルもしくはペロブスカイトなどの安定な結晶構造、より好ましくはCoCr酸化物を反応器の前に置く、最も好ましくは、アルミナ又はジルコニア、好ましくは部分安定化ジルコニア(PSZ)などの耐火性担体上に担持された9.9wt% Co0.2Cr0.8酸化物/1wt% Rh/6.1wt% Ybを置くので、有利である。
【0029】
本発明のプロセスにおいて、第1触媒層に接触した直後に、発熱反応はほとんど完了する。後続層の主たる機能は、吸熱改質反応を有効にすることである。「正味部分酸化」触媒ゾーンは、燃焼触媒及び吸熱触媒を含む2層と考えられる。高温での本来的な相転移ゆえにPSZ網状物質は好ましくなく、明らかにAl2O3上のRhコーティングは第1層として7ヶ月を超える連続運転の後でさえ安定であることを指摘することは重要である。それは触媒活性並びに機械的強度を保持する。
【0030】
不活性担体の好ましい形態は、高温で十分な機械的強度と共に形状を維持することができる耐火性で実質的に不活性な剛性物質から作られる。典型的には、物質は、低い熱膨張率、良好な耐熱衝撃性及び高い融点を示す担体用に選択される。たとえば、コージライト物質は、1450℃付近の低い融点ゆえに、純酸素系部分酸化用の前層担体として適切ではない。
【0031】
このような担体の構築用の物質の数種の一般的なタイプが知られている。ハニカムモノリス担体は、種々の寸法及び形状で市販されている。ペレット又は顆粒タイプ触媒の適切な形状及び寸法もまた商業的に入手できる。いずれのタイプの担体構造も、アルミナ、ムライト、ジルコニア、部分安定化ジルコニア、セリア、シリカ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、Sialon(商標)(少量の酸化アルミナが添加された窒化ケイ素セラミック)、窒化アルミナ、窒化ホウ素、アルミノシリケート、マグネシウムアルミノシリケート及びこれらの混合物からなる群より選択される慣用の耐火性又はセラミック物質から作られる。セリアは、成形加工、プレス、押出加工、噴霧乾燥又はダイスタンプ法などを含む適宜のプロセスにより形成することができる。不活性担体もまた、高温で金属発泡体又は金属の焼成粒子として調製された金属モノリスを含む。最も好ましい担体は、ハニカム、球状、ペレット状、リング状、馬車の車輪形状、Saint-Gobain NorproのTy-Pak(登録商標)、Hex-Pak(商標)、Snowflake(登録商標)媒体及びNorton(登録商標)サドル(saddles)又は顆粒状の安定化アルミナ、炭化ケイ素又は部分安定化ジルコニアである。好ましくは、担体の表面積は、約0.1〜約50m2/gの比較的低い範囲である。
【0032】
[後続触媒層]
第1層の下の後続触媒層は、望ましくは、約1100℃以下の温度にわたり顕著な失活なしに酸化雰囲気及び還元雰囲気中で効果的に運転可能であるべきである。吸熱反応触媒は、このような目的について知られている任意の接触金属触媒を含む。本発明において用いられる金属触媒は、酸化セリウムでウオッシュコーティング(washcoat)されている部分安定化ジルコニアから主としてなり、貴金属又は遷移金属又はこれらの組み合わせを含浸してなるモノリス担体構造である。本明細書において「金属触媒」とは、金属、無機金属酸化物ウオッシュコーティング(washcoat)及びモノリス担体又はモノリス物質を含む触媒構造全体をいう。本発明で用いられる活性金属は、ニッケル、コバルト、鉄、白金、パラジウム、イリジウム、レニウム、ルテニウム、ロジウム及びオスミウム及びこれらの組み合わせからなる群より選択される遷移金属又は貴金属からなる群より選択される。好ましくは、活性金属はロジウム及び/又はニッケルである。
【0033】
モノリス担体は、一般に、隣接する通路の間に空隙を持つ不規則又は規則的パターンのいずれかで配設されている通路を有する単一構造ユニットから形成されるセラミック発泡体構造又は多孔性構造である。好ましくは、不規則通路を有するセラミック発泡体構造である。担体構造は、アルミナ、ムライト、ジルコニア、部分安定化ジルコニア、セリア、シリカ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、Sialon(商標)、少量の酸化アルミナが添加された窒化ケイ素セラミック、窒化アルミニウム又は窒化ホウ素、アルミノシリケート、マグネシウムアルミノシリケート及びこれらの混合物からなる群より選択される慣用の耐火性又はセラミック物質から作られる。金属発泡体として調製された金属モノリスもまた用いることができる。最も好ましい担体は、部分安定化ジルコニアまたは炭化ケイ素である。
【0034】
全体の触媒効率及び活性を改良するために、大きな表面積に活性金属を組み込むことが好ましい。担体の表面積は、含浸、ウオッシュコーティング(washcoating)、吸着、イオン交換、沈殿、共沈、沈着沈殿、ゾル−ゲル法、スラリーディップコーティング、マイクロ波加熱などによってγアルミナ、セリアなどの高表面積無機金属酸化物を蒸着させることにより増加させることができる。無機金属酸化物で物質をコーティングするプロセスは、物質を金属酸化物前駆体と接触させ、好ましくは前駆体で被覆された物質をコーティングと同等の条件に維持し、次いで、前駆体を酸化して金属酸化物含有物質を形成することを含む。分解可能な有機物質をウオッシュコーティング(washcoat)に添加して、次いで、有機物質を高温酸化雰囲気で分解することによってマクロポーラスを有するようにすることが好ましい。
【0035】
ウオッシュコーティング(washcoat)され得る安定高表面積無機酸化物は、元素周期表のIA、IIA、IIIA及びIVA族及び遷移金属から選択される1以上のカチオン、好ましくはIA、IIA、IIIA、IIIB、IVA、IVB族及びランタニド、より好ましくはセリア、アルミナ、ランタニウム、ジルコニウム及びバリウム及びこれらの混合物から選択される1以上のカチオンを含む酸化物から選択されるが、これらに限定されない。発泡体は、1以上の無機酸化物と同時に又は連続的に含浸されてもよい。
【0036】
適切には、含浸媒体は、水溶液、有機溶液、スラリー、ゾル、ゲル、無機酸化物粒子の懸濁液又は分散液、好ましくはコロイド状無機酸化物粒子のゾルの形態である。これらのウオッシュコーティング(washcoat)の前駆体は、熱分解により酸化物に分解し得る形態であれば任意の形態でよい。アルカリ金属の酸化物又は希土類酸化物などの安定化剤をウオッシュコーティング(washcoat)に添加して、反応又は予備処理中にウオッシュコーティング(washcoat)の焼結を防止してもよい。
【0037】
最も好ましい担体は、約5%〜約30%の無機金属酸化物、最も好ましくはセリアでウオッシュコーティング(washcoat)された部分安定化ジルコニア発泡体モノリスである。場合によっては、貴金属で被覆されたセラミックハニカム又は金属モノリスもまた吸熱反応触媒として使用することができる。
【0038】
一側面において、本発明は、水素及び一酸化炭素を製造するための炭化水素類の部分酸化法を提供する。本方法は、1〜20気圧の間の圧力にて、約5,000〜約500,000/hrの供給ガス標準ガス時間当たり空間速度で、約0.2〜約50.0m/sの線形速度で、炭化水素含有供給ガス及び酸素含有供給ガスの混合物を触媒的に有効な多層形状と接触させることを含む。さらに、供給ガス混合物は、蒸気及び/又はCO2を含んでいてもよい。反応装置の2ステージは、異なる温度で運転され、第1ステージは約800℃〜約100℃で運転され、第2ステージは約250℃〜約600℃で運転される。反応体ガス混合物は、約10〜約450℃の温度まで予熱されていてもよい。
【0039】
さて図面を参照すれば、図1は本発明の一体型2ステージ反応器の概略図である。ライン1、2及び3は、それぞれ、蒸気、天然ガス及び酸素をライン4を通して一体型2ステージ反応器Aに入れる。A1は、第1ステージ反応器であり、供給ガス流はそこに存在する触媒物質の2層を通して流れる。これらのガス流はA2に続けて流れ、ライン5を通して急冷用の水が入り、ライン6を通して蒸気が入る。急冷されたガス流は、区域A3に続けて入る。区域A3はシフト反応器であり、ガス流はライン7を通して2ステージ反応器を出て冷却ユニットBに入る。シフト反応器は、第2ステージ反応器に入る蒸気:炭素の比率を調節することによってより効率的な態様で運転することができる。冷却された生成物流は、ライン8を通してさらなる低温シフト反応器Cに流れ出る。ガス流はライン9を通して凝縮ユニットDに流れ、生成物ガス流中に存在する水は凝縮される。次いで、水が除かれたガス流は、ライン11を通って圧縮ユニットEに運ばれ、次いでライン12を通って分離ユニットFに運ばれる。この分離ユニットは、圧力スィング吸着シスステム又は膜システムであってよく、水素生成物を分離し、水素生成物はライン13を通して出る。残りはライン14を通って出て、主として一酸化炭素からなる。
【0040】
図2は、本発明の全体プロセスの概略図である。酸素、天然ガス及び蒸気は、それぞれライン15、16及び17を通って第1ステージ反応器Gに入る。第1ステージ反応器からの生成物ガス流は、ライン18を通って出る。ガス流が第2ステージ反応器Hに入る前に、それぞれライン19及び20を通って、水及び蒸気の両方ともライン18に入る。主として水素、一酸化炭素及び二酸化炭素からなる生成物ガス流は、ライン21を通して第2ステージ反応器を出て、熱交換器又は冷却ユニットIに進む。冷却された生成物ガス流はライン22を通って熱交換器を出て低温シフト反応器Jに入る。低温シフト反応器はさらに駆動して、残りの炭化水素及び一酸化炭素からさらに水素を製造し、水素はライン23、合成ガス(シンガス)圧縮器Kを通って出て、生成物ガス流はライン24を通って圧縮器を出てガス分離ユニットLに進み、ここで生成物ガス流を、ライン26を通って貯蔵庫Mに出る水素と、ライン25を通って出る排ガス(テイルガス)燃料に分離する。
【0041】
図3において、酸素、天然ガス及び蒸気は、それぞれライン27、28及び29を通って第1ステージモノリス反応器Nに入る。第1ステージ反応器からの生成物流はライン30を通って出る。このとき、水及び蒸気はライン31及び32を通ってライン30に送られる。次いで、ガス流を熱交換器又は冷却ユニットOが受け、冷却されたガス流はライン33を通って第2ステージ反応器に入る。主として水素及び一酸化炭素、いくらかの二酸化炭素からなる生成物流は、ライン35を通って合成ガス(シンガス)圧縮器Rに送られ、圧縮されたガス流はライン36を通って出て、圧力スィング吸着ユニット又は膜システムであってよいガス分離システムSに入る。排ガス(テイルガス)はライン37を通って出て、水素生成物はライン38を通って回収されTに貯蔵される。
【0042】
本発明を特定の実施形態に関して記載してきたが、本発明の多くの他の形態及び改変例は当業者には自明であろう。そのような自明な形態及び改変例は、本発明の技術的範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は、本発明の一体型2ステージ反応器の概略図である。
【図2】図2は、本発明の2ステージ反応器を用いる概略プロセススキームである。
【図3】図3は、本発明の2ステージ反応器を用いる別の概略プロセススキームである。
【図4】図4は、多層触媒のコンセプトを示す模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不活性担体上に分散されている触媒的に活性な金属の第1層と、担体上にウオッシュコーティング(washcoat)された安定な無機金属酸化物上又は内に担持されている遷移金属から本質的になる還元された金属触媒の第2層と、の触媒組成物を含む第1ステージ反応器、及びシフト反応器を具備する第2ステージ反応器を具備する2ステージ反応器に、炭化水素含有供給ガス及び酸素含有ガスの混合物を接触させることによる、水素及び一酸化炭素を製造するための炭化水素類の部分酸化方法。
【請求項2】
前記触媒的に活性な金属は、ニッケル、コバルト、鉄、白金、パラジウム、イリジウム、レニウム、ルテニウム、ロジウム、オスミウム及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記触媒的に活性な金属は、約0.1wt%〜約8.0wt%の範囲にある量で、前記不活性担体上に堆積している、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記不活性担体は、ハニカム形状、球状、ペレット形状、リング形状、荷馬車車輪形状、サドル形状及び顆粒形状からなる群より選択される形状を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記担体は、セラミック発泡モノリス、ハニカムモノリス、及び金属モノリスからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記担体は、部分的安定化ジルコニアモノリス担体上にウオッシュコーティング(washcoat)されたセリアである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記遷移金属は、ニッケル、コバルト、鉄、白金、パラジウム、イリジウム、レニウム、ルテニウム、ロジウム、オスミウム及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記遷移金属は、前記モノリス担体の約2wt%〜約4wt%である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記安定な無機金属酸化物は、元素周期表IA族、IIA族、IIIA族及びIVA族、遷移金属及びこれらの混合物から選択される1種以上のカチオンを含む酸化物群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記無機金属酸化物は、前記モノリス担体の約5wt%〜約30wt%である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第2ステージ反応器は、接触モノリス及びシフト反応器からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記第1ステージ反応器と前記第2ステージ反応器との間に存在する熱交換器をさらに具備する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記第1ステージ反応器と前記第2ステージ反応器との後段に存在する熱交換器をさらに具備する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載の2ステージ反応器を具備する、炭化水素含有供給ガス及び酸素含有ガスの混合物と接触することにより水素及び一酸化炭素を製造する炭化水素類の部分酸化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−74700(P2008−74700A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−241803(P2007−241803)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【出願人】(591051184)ザ・ビーオーシー・グループ・インコーポレーテッド (38)
【氏名又は名称原語表記】THE BOC GROUP INCORPORATED
【Fターム(参考)】