説明

合成ナフサ燃料を製造する方法およびその方法により製造された合成ナフサ燃料

【課題】典型的には30を越えるセタン価および良好な低温流動性質を有する水素化処理された合成ナフサ燃料を提供する。
【解決手段】本発明は、圧縮点火(CI)機関における使用のために適した合成ナフサ燃料の製造方法であって、少なくとも、COおよびH2のフィッシャー−トロプシュ(FT)合成反応生成物の少なくともフラクションまたはその誘導体を水素化処理し、該FT合成生成物の少なくともフラクションまたはその誘導体を水素化分解し、そしてこれらのプロセス生成物を分別して所望の合成ナフサ燃料特性を得る工程を含む上記方法を提供する。本発明はまた、該方法により製造された合成ナフサ燃料、および燃料組成物およびディーゼル含有燃料組成物用曇り点降下剤も提供し、しかして該燃料組成物および該降下剤は本発明の合成ナフサを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮点火(CI)燃焼機関において使用可能なナフサ燃料およびかかるナフサ燃料の製造方法に関する。一層特に、本発明は、COおよびH2の反応により(典型的にはフィッシャー−トロプシュ(FT)法により)製造される主としてパラフィン系の合成原油から製造されたナフサ燃料に関する。
【背景技術】
【0002】
FT炭化水素合成法の生成物、特にコバルトおよび/または鉄系接触法の生成物は、高割合のノルマルパラフィンを含有する。一次FT生成物は悪評高いほど不良な低温流動性質を与え、かかる生成物を低温流動性質が重要であるところにおいてたとえばディーゼル燃料、潤滑油基礎材料およびジェット燃料に用いることを困難にする。オクタン価とセタン価は通常逆関係にあり、すなわち、より高いオクタン価は典型的にはより低いセタン価に関連づけられる、ということが当該技術において知られている。ナフサフラクションは、凝固点および曇り点のような低い低温流動特性を固有的に有する、ということも知られている。かくして、FT法から得られしかも良好な低温流動特性およびCI機関燃料要件と適合可能なセタン価を有する合成ナフサ燃料を製造する方法に対する誘因がある。加えて、かかる合成ナフサ燃料は、受容され得る生分解性質を有し得る。
【0003】
本発明において記載される合成ナフサ燃料は、FT反応のような反応を通じて合成ガスから得られたパラフィン系合成原油から製造される。FT一次生成物は、メタンから1400を越える分子質量を有する種(主としてパラフィン系炭化水素およびオレフィンおよび酸素添加物のような比較的少量の他の種を含めて)までの広範囲の炭化水素にわたる。
【0004】
先行技術は、US5,378,348において、フィッシャー−トロプシュ反応器からの生成物を水素化処理および異性化することにより、−34℃またはそれ以下の凍結点を有するジェット燃料(この燃料のイソパラフィン特質に因り)が得られ得る、ということを教示する。ワックス質パラフィン供給物に関してこの増大した生成物分岐はノルマル(線状)パラフィンについてのものより小さいセタン価(燃焼)値と相応し、分岐の増大がパラフィン系炭化水素燃料のセタン価を低減することを表す。
【0005】
驚くべきことに、本出願人により、典型的には30を越えるセタン価および良好な低温流動性質を有する水素化処理された合成ナフサ燃料が製造され得ることが今般見出された。本発明の合成ナフサ燃料は、CI機関において、典型的にはディーゼル燃料が現在用いられているところにおいて、単独でまたは配合物にて用いられ得る。このことは、燃料品質および放出のより厳しい規格が満たされることに通じる。本発明の合成ナフサ燃料は、より低い放出物、良好な低温流動特性、低い芳香族化合物含有率および受容され得るセタン価を有するように、慣用のディーゼル燃料とブレンドされ得る。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
かくして、本発明の第1の観点によれば、CI機関における使用のために適した合成ナフサ燃料の製造方法であって、少なくともa)COおよびH2のフィッシャー−トロプシュ(FT)合成反応生成物の少なくともフラクションまたはその誘導体を水素化処理し、b)該FT合成生成物の少なくともフラクションまたはその誘導体を水素化分解し、そしてc)これらのプロセス生成物を分別して所望の合成ナフサ燃料特性を得る工程を含む上記方法が提供される。
【0007】
該方法は、分別されたプロセス生成物を所望比率にてブレンドしてCI機関における使用のための所望特性を有する合成ナフサ燃料を得る追加的工程を含み得る。
【0008】
上記に記載された方法は、所望特性のうちのいくつかが、
− 30を越える高セタン価を有する;
− 約5ppm未満の低硫黄含有率を有する;
− 良好な低温流動性質を有する;および
− 30%より多いイソパラフィンを有し、しかも該イソパラフィンがメチルおよび/またはエチル分岐イソパラフィンを含むを含む合成ナフサを製造し得る。
【0009】
本発明の更に別の観点によれば、30より高いセタン価を有する合成ナフサ燃料を製造する方法であって、(a)FT合成反応により合成ガスから得られた生成物を1種またはそれ以上の重質フラクションおよび1種またはそれ以上の軽質フラクションに分離し、(b)主として留出物をもたらす条件下で該重質フラクションを接触処理し、(c)工程(b)のナフサ生成物フラクションをやはり工程(b)において生成されている重質生成物フラクションから分離し、そして(d)随意に、工程(c)において得られたナフサ生成物を工程(a)の1種またはそれ以上の軽質フラクションの少なくとも一部またはその生成物とブレンドすること含む上記方法が提供される。
【0010】
工程(b)の接触処理は、水素化処理工程、たとえば水素化分解または温和な水素化分解であり得る。
【0011】
合成ナフサ燃料を製造する方法は、工程(d)に先立って、工程(a)の1種またはそれ以上の軽質フラクションの少なくともいくらかまたはその生成物を分別する1つまたはそれ以上の追加的工程を含み得る。
【0012】
合成ナフサ燃料を製造する方法は、工程(d)に先立って、工程(a)の1種またはそれ以上の軽質フラクションの少なくともいくらかまたはその生成物を水素化処理する追加的工程を含み得る。
【0013】
工程(a)の1種またはそれ以上の重質フラクションは約70℃ないし700℃の範囲の真沸点(TBP)を有し得るが、しかしそれは80℃ないし650℃の範囲にあり得る。
【0014】
1種またはそれ以上の軽質フラクションは、−70℃ないし350℃の範囲典型的には−10℃ないし340℃の範囲の真沸点(TBP)を有し得る。
【0015】
工程(d)の生成物は、30℃ないし200℃の範囲で沸騰し得る。工程(d)の生成物は、ASTM D86法により測定されるとき40℃ないし155℃の範囲で沸騰し得る。
【0016】
工程(d)の生成物は、ナフサ燃料であり得る。
【0017】
工程(d)の生成物は、−30℃典型的には−40℃未満そして−50℃未満さえの曇り点を有し得る。
【0018】
工程(d)の生成物は、工程(c)において得られたナフサ生成物フラクションを工程(a)の1種またはそれ以上の軽質フラクションの少なくとも一部またはその生成物と1:24と9:1典型的には2:1と6:1の間の容量比にてそして一つの具体的態様においては50:50の容量比にて混合することにより得られ得る。
【0019】
本発明は、更に、主として短鎖の線状および分岐状パラフィンを含むFT一次生成物からの、CI機関用に適した合成ナフサ燃料の製造方法に及ぶ。
【0020】
この方法において、FT法からのワックス質生成物は、少なくとも2種のフラクション、すなわち重質フラクションおよび少なくとも1種の軽質フラクションに分離される。軽質フラクションは、酸素のようなヘテロ原子の化合物を除去するためにおよびオレフィンを飽和するために温和な接触水素化に付され得、それによりナフサ、ディーゼル、溶媒および/またはそれらに対する配合成分として有用な物質を生成する。重質フラクションは先行の水素化処理なしに接触水素化処理され得て、良好な低温流動特性を有する生成物を生成する。この水素化処理された重質フラクションは水素化されたおよび/または水素化されていない軽質フラクションの全部または一部とブレンドされ得て、受容され得るセタン価により特徴づけられるナフサ燃料が分別後に得られる。
【0021】
水素化処理工程用に適した触媒は、商業的に入手でき、また所望の最終生成物の改善品質に向けて選択され得る。
【0022】
本発明の更なる観点によれば、30を越えるセタン価および−30℃未満の曇り点を有する合成ナフサ燃料であって、実質的に上記に記載されたようなイソパラフィン含有率を有する該ナフサ燃料が提供される。
【0023】
一つの具体的態様において、合成ナフサ燃料はFT生成物である。
【0024】
本発明は、10%から100%の上記に記載された合成ナフサ燃料を含む燃料組成物に及ぶ。
【0025】
典型的には、燃料組成物は、0から90%の1種またはそれ以上のディーゼル燃料を含み得る。
【0026】
燃料組成物は、少なくとも20%の合成ナフサ燃料を含み得、しかして該組成物は40より大きいセタン価および2℃未満の曇り点を有する。合成ナフサを曇り点降下剤として用いることは、燃料組成物について少なくとも2℃の曇り点降下をもたらすことになり得る。
【0027】
燃料組成物は、少なくとも30%の合成ナフサ燃料を含み得、しかして該組成物は40より大きいセタン価および0℃未満の曇り点を有する。合成ナフサを曇り点降下剤として用いることは、燃料組成物について少なくとも3℃の曇り点降下をもたらすことになり得る。
【0028】
燃料組成物は、少なくとも50%の合成ナフサ燃料を含み得、しかして該組成物は40より大きいセタン価および0℃未満一層典型的には−4℃未満の曇り点を有する。合成ナフサを曇り点降下剤として用いることは、燃料組成物について少なくとも4℃の曇り点降下一層典型的には少なくとも8℃の降下をもたらすことになり得る。
【0029】
燃料組成物は、少なくとも70%の合成ナフサ燃料を含み得、しかして該組成物は40より大きいセタン価および−10℃未満一層典型的には−15℃の曇り点を有する。合成ナフサを曇り点降下剤として用いることは、燃料組成物について少なくとも13℃の曇り点降下一層典型的には少なくとも18℃の降下をもたらすことになり得る。
【0030】
配合組成物は、更に、他の燃料特性を改善するために0から10%の添加剤を含み得る。
【0031】
添加剤は、潤滑改善剤を含み得る。潤滑改善剤は、組成物の0から0.5%典型的には組成物の0.00001%から0.05%を含み得る。ある具体的態様において、潤滑改善剤は、組成物の0.008%から0.02%を含む。
【0032】
燃料組成物は、ディーゼルとして、US 2−Dグレード(ASTM D975−94に規定されているようなディーゼル燃料油用低硫黄No.2−Dグレード)および/またはCARB(California Air Resources Board 1993規格)ディーゼル燃料および/または南アフリカ規格商業用ディーゼル燃料のような原油由来ディーゼルを含み得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明は、一次FT生成物のナフサおよび中質留出物(たとえば、30を越えるセタン価を有する一方、上記に記載されたような良好な低温流動性質をも有するナフサ燃料)への転化を記載する。
【0034】
FT法は、石炭、天然ガス、バイオマスまたは重質油流から誘導された合成ガスをメタンから1400を越える分子質量を有する種までの範囲の炭化水素に転化するために工業的に用いられる。
【0035】
主要生成物は線状パラフィン系物質であるけれども、分岐パラフィン、オレフィンおよび酸素添加成分のような他の種が生成物全候補者の一部を形成し得る。正確な生成物全候補者は、たとえばCatal.Rev.-Sci.Eng.,23(1&2),265〜278(1981)から明らかであるように、反応器の配置、操作条件および用いられる触媒に左右される。
【0036】
重質炭化水素の製造用の好ましい反応器はスラリー床または管状固定床反応器であり、一方操作条件は好ましくは160℃〜280℃(ある場合には、210〜260℃)および18〜50バール(ある場合には、20〜30バール)の範囲にある。
【0037】
触媒中の好ましい活性金属は、鉄、ルテニウムまたはコバルトを含む。各触媒はそれ自身の特有の生成物全候補者を与えるけれども、すべての場合において、生成物全候補者は、使用可能な生成物に更に改善される必要があるところの、あるワックス質の高パラフィン物質を含有する。FT生成物は、中質留出物、ナフサ、溶媒、潤滑油基礎材料、等のような一連の最終生成物に転化され得る。水素化分解、水素化処理および蒸留のような一連の過程から通常成るかかる転化は、FT仕上げ法と称され得る。
【0038】
本発明のFT仕上げ法は、FT法から誘導されたC5および一層高級の炭化水素から成る供給物流を用いる。この供給物は、少なくとも2種の個々のフラクションすなわち重質フラクションおよび少なくとも1種の軽質フラクションに分離される。これらの2種のフラクションの間のカット点は、好ましくは300℃未満典型的には約270℃である。
【0039】
下記の表は、10%精度でもって2種のフラクションの典型的組成を与える。
【0040】
【表1】

【0041】
>160℃のフラクションは、ノルマルナフサ範囲より高い温度で沸騰するかなりの量の炭化水素物質を含有する。160℃ないし270℃のフラクションは、軽質ディーゼル燃料とみなされ得る。このことは、270℃より重質のすべての物質が水素化処理たとえば水素化分解としてしばしば言及される接触法により軽質物質に転化される必要があることを意味する。
【0042】
この工程用の触媒は、二機能型である。すなわち、それらは分解のためのおよび水素化のための活性部位を含有する。水素化のために活性な触媒金属は、白金もしくはパラジウムのような第VIII族貴金属または硫化第VIII族卑金属たとえばニッケル、コバルト(硫化第VI族金属たとえばモリブデンを含んでいても含んでいなくてもよい)を含む。金属についての支持体は、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、バナジアおよび他の第III、IV、VAおよびVI族酸化物のようないかなる耐火性酸化物(単独でまたは他の耐火性酸化物と組み合って)でもあり得る。その代わりに、支持体は、部分的にまたは全体的にゼオライトから成り得る。しかしながら、本発明について、好ましい支持体は、無定形のシリカ−アルミナである。
【0043】
水素化分解についてのプロセス条件は、広範囲にわたって変動され得、そして通常、ナフサの収率を最適にするために広範な実験後に入念に選ばれる。これに関して、多くの化学反応においてように転化度と選択度の間の妥協があることに留意することが重要である。非常に高い転化度は、高収率のガスおよび低収率のナフサ燃料をもたらすことになる。それ故、>160℃の炭化水素の転化を最適にするために、プロセス条件を念入りに調和させることが重要である。表2は、好ましい条件のリストを与える。
【0044】
【表2】

【0045】
それにもかかわらず、水素化分解過程中転化されていない部分を再循環することにより、供給原料中の>370℃の物質のすべてを転化することが可能である。
【0046】
表1から明らかなように、160℃未満で沸騰するフラクション(軽質凝縮物)の大部分が既にナフサについての典型的沸騰範囲すなわち50〜160℃にある。このフラクションは、水素化処理に付されても付されなくてもよい。水素化処理により、ヘテロ原子は除去されそして不飽和化合物は水素化される。水素化処理は、水素化機能を有するいかなる触媒たとえば第VIII族貴金属または硫化卑金属もしくは第VI族金属またはそれらの組合わせによっても触媒される周知の工業法である。好ましい支持体は、アルミナおよびシリカである。
【0047】
表3は、水素化処理法についての典型的操作条件を与える。
【0048】
【表3】

【0049】
水素化処理されたフラクションは溶媒として有用なパラフィン系物質に分別され得るけれども、本出願人は、水素化処理されたフラクションがワックスの水素化分解から得られた生成物と直接的にブレンドされ得るということを今般驚くべきことに見出した。凝縮物流中に含有されている物質を水素化異性化することは可能であるけれども、本出願人は、このことは一層軽質の物質へのナフサ沸騰範囲の物質の小さいしかし有意的な損失に通じることを見出した。更に、異性化は分岐異性体の形成に通じ、しかしてこのことは対応するノルマルパラフィンのセタン価より小さいセタン価に通じる。
【0050】
FT仕上げ法についての重要なパラメーターは、生成物収率の最大化、生成物品質およびコストである。提案されたプロセススキームは単純でありそしてそれ故コスト効率的である一方、それは>30のセタン価を有するCI機関用に適した合成ナフサ燃料を良好な収率にて生成する。実際、本発明の方法は、受容され得るセタン価および優秀な低温流動性質の両者の独特の組合わせにより特徴づけられるところの、これまで調和されていない品質のCI機関における使用のためのナフサを生成することができる。
【0051】
合成ナフサ燃料の独特的特性に通じるのは、本発明のFT仕上げ法が操作されるやり方により直接的に引き起こされるところの合成ナフサ燃料の独特的組成である。
【0052】
図1の記載されたFT仕上げ法は、多数の配置にて結合され得る。本出願人は、これらをプロセス合成最適化として当該技術において知られているものにおける試行と考える。
【0053】
しかしながら、可能なプロセス配置が表4に概略されているFT一次生成物の仕上げについての特定的プロセス条件は、広範なかつ入念な実験および設計後に得られた。
【0054】
【表4】

【0055】
番号 図1の参照数字FT フィッシャー−トロプシュ 基本法は、添付の図1に概略されている。水素と一酸化炭素の混合物である合成ガスはFT反応器1に入り、しかしてそこで合成ガスはFT反応により炭化水素に転化される。
【0056】
軽質FTフラクションは管路7中に回収され、そして分別装置2および水素化処理装置3に通されても通されなくてもよい。水素化処理装置からの生成物9は、分別装置4において分離され得、またはその代わりに共通の分別装置6に送られる水素化分解装置の生成物16と混合され得る。
【0057】
ワックス質FTフラクションは管路13中に回収され、そして水素化分解装置5に送られる。分別2が考慮される場合、塔底カット12は水素化分解装置5に送られることになる。生成物16は、単独でまたは軽質フラクション9aと混合されて、分別装置6において分離される。
【0058】
プロセススキームに依存して、ナフサ19である軽質生成物フラクションが、分別装置6からまたは同等のフラクション10および17をブレンドすることにより得られる。これは、ナフサとして有用な典型的にはC5〜160℃のフラクションである。
【0059】
合成ディーゼル20である幾分重質のカットは、同様なやり方で分別装置6からまたは同等のフラクション11および18をブレンドすることにより得られ得る。このカットは、典型的には、ディーゼルとして有用な160〜370℃フラクションとして回収される。
【0060】
分別装置6からの重質の未転化物質21は、消滅まで水素化分解装置5に再循環される。その代わりに、この残渣は、合成潤滑油基礎材料の製造のために用いられ得る。少量のC1〜C4ガスもまた、分別装置4および6において分離される。
【0061】
次の例1〜9は、更に本発明を説明するのに役立つ。
【実施例】
【0062】
例において用いられている用語
LTFT 低温フィッシャー−トロプシュ
管状固定床またはスラリー床反応器において18〜50バールの圧力にて、この特許において先に記載されたような基本的プロセス条件を用いて、160℃と280℃の間の温度にて完了されたフィッシャー−トロプシュ合成。
【0063】
SR 直留
いかなる化学的変換法にも付されなかったところの、LTFTから直接的に得られた生成物。
【0064】
HT SR 水素化直留
この特許において先に記載されたような基本的プロセス条件を用いて水素化された後の、LTFTのSR生成物から得られた生成物。
【0065】
HX 水素化分解
この特許において先に記載されたような基本的プロセス条件を用いて水素化分解された後の、LTFTのSR生成物から得られた生成物。
【0066】
例1
直留(SR)ナフサを、軽質FT凝縮物の分別により製造した。この生成物は、表5に示された燃料特性を有していた。同表は、石油を基剤としたディーゼル燃料の基本性質を含んでいる。
【0067】
例2
水素化直留(HT SR)ナフサを、軽質FT凝縮物の水素化処理および分別により製造した。この生成物は、表5に示された燃料特性を有していた。
【0068】
例3
水素化分解(HX)ナフサを、重質FTワックスの水素化分解および分別により製造した。この生成物は、表5に示された燃料特性を有していた。
【0069】
例4
LTFTナフサを、例2および3に記載されたナフサをブレンドすることにより製造した。配合比は、容量により50:50であった。この生成物は、表5に示された燃料特性を有していた。
【0070】
【表5】

【0071】
注記
1.これらの燃料は、添加剤を含有しない;2.API手順14A1.3;3.相関された(参考文献: HP Sep 1987 p.81)
例5
例1に記載されたSRナフサを放出物について試験して、表6に示された結果が得られた。メルセデスベンツ407Tディーゼル機関がこの試験のために用いられ、しかしてその特性もまた表6に示されている。試験中測定された放出物は、慣用のディーゼル燃料について測定されたものより21.6%少ないCO、4.7%少ないCO2および20.0%少ないNOXであった。加えて、ボッシュ煤煙価により測定された微粒子放出は、慣用のディーゼル燃料について観測されたものより52%低かった。比燃料消費量は、慣用のディーゼルについて観測されたものより0.2%低かった。
【0072】
例6
例2に記載されたHT SRナフサを放出物について試験して、表6に示された結果が得られた。メルセデスベンツ407Tディーゼル機関がこの試験のために用いられ、しかしてその特性もまた表6に示されている。試験中測定された放出物は、慣用のディーゼル燃料について測定されたものより28.8%少ないCO、3.5%少ないCO2および26.1%少ないNOXであった。加えて、ボッシュ煤煙価により測定された微粒子放出は、慣用のディーゼル燃料について観測されたものより45%低かった。比燃料消費量は、慣用のディーゼルについて観測されたものより4.9%低かった。
【0073】
例7
例3に記載されたHXナフサを放出物について試験して、表6に示された結果が得られた。メルセデスベンツ407Tディーゼル機関がこの試験のために用いられ、しかしてその特性もまた表6に示されている。試験中測定された放出物は、慣用のディーゼル燃料について測定されたものより7.2%少ないCO、0.3%少ないCO2および26.6%少ないNOXであった。加えて、ボッシュ煤煙価により測定された微粒子放出は、慣用のディーゼル燃料について観測されたものより54%低かった。比燃料消費量は、慣用のディーゼルについて観測されたものより7.1%低かった。
【0074】
例8
例4に記載されたLTFTナフサを放出物について試験して、表6に示された結果が得られた。未改良メルセデスベンツ407Tディーゼル機関がこの試験のために用いられ、しかしてその特性もまた表6に示されている。試験中測定された放出物は、慣用のディーゼル燃料について測定されたものより25.2%少ないCO、4.4%少ないCO2および26.1%少ないNOXであった。加えて、ボッシュ煤煙価により測定された微粒子放出は、慣用のディーゼル燃料について観測されたものより45%低かった。比燃料消費量は、慣用のディーゼルについて観測されたものより4.6%低かった。
【0075】
【表6】

【0076】
例9
LTFTナフサを商業用南アフリカディーゼルと50:50の割合(容量)にてブレンドして、低温気象環境用に適した燃料を製造した。この燃料およびその成分の燃料特性は、表7に示されている。表8に、圧縮点火(CI)機関におけるこの燃料配合物の性能およびその成分の性能が示されている。50:50の配合物は、10%低い比燃料消費量、19%低いNOX放出物および21%低いボッシュ煤煙価を示す。他のパラメーターもまた有意である。
【0077】
該商業用ディーゼル燃料は、慣用の非冬季燃料グレードである。慣用的に、低温気象環境用ディーゼル燃料を製造する石油精製装置は、それらの生成物の終点(最終沸点)を下げるよう強いられる。こうすることにより、それらは低温流動特性を下げて、それを低温動作とより適合性にしおよび凍結可能性を下げる。このことは、ディーゼル燃料についてのみならず、ジェット燃料および他の製品(暖房用オイルのような)についても、より低い生産量レベルをもたらすことになる。
【0078】
LTFTナフサと商業用南アフリカディーゼルの配合物は、慣用の燃料の生産量を減じることなく製造され得る低温気象環境用に適した燃料である。該配合物は、受容され得るセタン価および引火点を含めて慣用の燃料の利点を保持し、また添加剤または性能損失なしに低温条件において用いられ得る。加えて、該配合物は、放出物に関して環境的利点を有し得る。
【0079】
表7および8に示された結果のいくつかは、例の終わりに添付図にてグラフ的に示されている。
【0080】
【表7】

【0081】
【表8】

【0082】
【表9】

【0083】
【表10】

【0084】
【表11】

【0085】
【表12】

【0086】
【表13】

【0087】
【表14】

【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】フィッシャー−トロプシュ基本法を概略的に示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CI機関に適した合成燃料の製造方法であって、少なくとも、合成ナフサをディーゼル燃料とブレンドする工程を含む方法。
【請求項2】
ナフサ燃料とディーゼル燃料を実質的に等しい割合(v/v)にてブレンドする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
合成ナフサ燃料が、少なくとも下記の工程を含む方法により製造される、請求項1または2に記載の方法:
a)COおよびHのフィッシャー−トロプシュ(FT)合成反応生成物の少なくとも凝縮物フラクションまたはその誘導体を水素化処理し、
b)該FT合成生成物の少なくともワックスフラクションまたはその誘導体を水素化分解し、
c)工程b)の水素化分解されたフラクションを分別して、所望の合成ナフサ燃料成分を得て、そして
d)工程c)の前記成分を工程a)の水素化処理されたフラクションと所望比率にてブレンドして、CI機関における使用のための所望特性を有する合成ナフサ燃料を得る。
【請求項4】
工程b)のワックスフラクションフラクションが、70℃ないし700℃の範囲の真沸点(TBP)を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
工程a)の凝縮物フラクションが、−70℃ないし350℃の範囲の真沸点(TBP)を有する、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
工程d)の燃料が、ASTM D86法により測定されるとき30℃ないし200℃の範囲で沸騰する、請求項3〜5のいずれか一に記載の方法。
【請求項7】
工程d)の燃料が、工程c)において得られた成分を工程a)の水素化処理された凝縮物の少なくとも一部またはその生成物と1:24と9:1の間の容量比にて混合することにより得られる、請求項3〜6のいずれか一に記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−283036(P2006−283036A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−165072(P2006−165072)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【分割の表示】特願2000−609522(P2000−609522)の分割
【原出願日】平成11年12月23日(1999.12.23)
【出願人】(501393313)サゾル テクノロジー(プロプライアタリー)リミティド (2)
【Fターム(参考)】