説明

合成ネーブルオレンジ虫のフェロモン組成物および同一物の生産に関連する方法

本発明の1つ以上の実施形態は、ネーブルオレンジ虫のフェロモンを含む鱗翅目のフェロモンを作り出すための合成法を対象にする。その合成法は、新規で、効率的で、かつ環境的に無害な段階および手順を伴う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2008年10月22日に出願された、米国特許出願第12/255,951号の特許協力条約出願であり、その明細書は参照により本明細書にて本出願により組み込まれる。
【0002】
本発明の1つ以上の実施形態は、ネーブルオレンジ虫のフェロモンを合成するための組成物と方法、および害虫管理のためにそれらを用いるための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
世界中の食糧生産の必要性が増大する際には、害虫防除の新たな形態の必要性も増大する。従来の殺虫剤の増加する使用により、抵抗性の害虫が誘発され、自然の生態がひどく変化し、かつ環境が損なわれる。この問題は、殺虫剤の使用なしに、害虫管理における革新的な方法をもたらしてきた。提示されてきた方法のうち1つは、昆虫性フェロモンの使用である(シャニ,A.、「フェロモンを用いる統合害虫管理」、化学工学第28号(3)、30〜35ページ(1998年)(Shani, A., “Integrated pest management
using pheromones,” Chemtech
28(3), pp.30−35 (1998)))。
【0004】
性フェロモンは、生殖を行うために異性の種を引き付けるための、多くの昆虫の化学的伝達において用いられる。フェロモンは、4つの手段:監視、大量捕獲、引き付けて殺すこと、および伝達の撹乱つまり混乱を通じ、害虫防除に大いに有用である。「監視」法は害虫を中央領域に引き付け、それにより、殺虫剤の使用または不使用について十分に情報を得た上での決定を行うために、害虫集団の規模についての正確な情報を栽培者が得ることが可能になる。「大量捕獲」は害虫を共通領域に移動させて物理的に捕獲し、それにより、害虫の新たな世代の産出が妨げられる。「引き付けて殺すこと」は、害虫を中央に位置する容器に引き込んで殺虫剤により容器内で殺し、広い領域内で殺虫剤を散布する必要性を減らすことを可能にする。「伝達の撹乱」は、高濃度の性フェロモンが自然発生するフェロモンを遮るか昆虫内で受容体を飽和させ、自然な生殖手段の混乱および撹乱を引き起こすために起こり得る(シャニ(Shani)、1998年)。これらの手段の一つ一つのために、害虫の各個別の種は、巨大量を創出する際の代償に大幅に加わり得る、個々に適した組成物で処理される必要がある。
【0005】
フェロモンは比較的に非毒性で環境的に持続性でない(自然界ですぐに分解する)と考えられ、害虫による抵抗性を引き起こさない。こうした性質により、それは殺虫剤の代用物として優れた選択肢になる。より環境に優しい害虫管理の必要性のために、その産業は、フェロモンのより効率的かつ費用効果的な生産方法を開発する一方で、その生産のためのより環境的に無害な方法を利用することに力を入れている。
【0006】
木の堅果の生産の農業地帯におけるより蔓延する害虫のうち1つは、蛾類の鱗翅目:ネーブルオレンジ虫、アミエロイス・トランシテラ(Amyelosis transitella)として知られるメイガ類の幼虫である。木の堅果の産業は数十億ドル産業であるが、1%のみの耕作地が害虫防除のためにフェロモンを用いると試算している(シャニ(Shani)、1998年)。フェロモンを生産するための比較的に高い費用を伴い、経済的影響は、ネーブルオレンジ虫の性フェロモンを生産する効率的な方法を創出する強い必要性を引き起こす。
【0007】
ネーブルオレンジ虫の主要な性フェロモンのうち1つが単離されており、(Z,Z)−11,13−ヘキサデカジエナール(HDAL)が分析される。このフェロモンおよび他のものが研究論文に記載されており、アンドウI型フェロモンに属する(アンドウ・T.他、「鱗翅目性フェロモン」、最新化学の話題第239号:51〜96ページ、2004年(Ando T.et al., “Lepidopteran sex pheromones,” Top Curr Chem
239: 51−96, 2004))。HDALは、生体の蛾の交尾撹乱および監視に何らかの影響を及ぼすことに相関し得る、主要なフェロモンを結合するタンパク質(AtraPBP)に結合するための高い親和性を有すると、他の研究論文で示されてきた(リール他、「ネーブルオレンジ虫における独特なフェロモン化学:新規の性誘引剤および行動拮抗薬」、自然科学協会第92号:139〜146ページ(2005年)(Leal et al., “Unusual pheromone
chemistry in the navel orangeworm: novel sex
attractants and a behavioral antagonist,” Naturewissenshaften 92:139−146 (2005)))。
【0008】
HDALの合成の方法は、少なくとも7つの段階の方法を記載した1980年の刊行物に記載された(ソネット,P.E.およびR.R.・ヒース、「(Z,Z)−11,13−ヘキサジエナールの立体特異的合成、ネーブルオレンジ虫の雌性フェロモン、アミエロイス・トランシテラ、(鱗翅目:メイガ科)」、化学生態学誌第6号、221〜228ページ、1980年(Sonnett, P.E. and R.R. Heath, “Stereospecific synthesis of (Z,Z)−11,13−hexadienal, a Female Sex Pheromone of the Navel Orangeworm,
Amyelosis transitella, (Lepidoptera:Pyralidae)” Journal
of Chemical Ecology, 6,221−228, 1980))。米国特許第4,198,533号および第4,228,093号は、同様の7つ以上の反応段階の方法を記載している。フェロモンを作り出す工程において産業が直面する問題のうちいくつかは、毒性試薬の使用、市場で入手可能な精製された出発物質の欠如、および工程中の非効率性を含む。ネーブルオレンジ虫のフェロモンを合成するための、新しくかつより良い方法の必要性がある。
【0009】
本特許出願の時点において知られている限りでは、害虫防除における使用のためにネーブルオレンジ虫のフェロモンの合成組成物を作り出すための、本明細書における改善された方法は記載されていない。
【発明の概要】
【0010】
本発明の1つ以上の実施形態は、減った数の現在用いられている7つの合成段階を用いる、ネーブルオレンジ虫の性フェロモンを合成するための、新規でかつ改善された方法である。他の恩恵の中でも、こうした新規のフェロモンの合成経路は、反応体および中間体の安定性を改善している。
【0011】
従って、本発明の1つ以上の実施形態は、ハロ置換アルキルアルコール等の出発物質を含む、様々な中間体および最終生成物を形成するための方法を提供する。この出発物質から、一つの段階は、ハロ置換アルカナールを形成することを含む。別の段階は、ハロ置換ジアルコキシ置換アルキルを形成することを含む。別の段階は、ジアルキルオキシ置換アルキニルを形成することを含む。さらに別の段階は、ハロ置換アルキニルを形成することを含む。別の段階は、ジアルコキシ置換ジイニルを形成することを含む。最終段階は、最終フェロモンを形成することを含む。
【0012】
本発明の他の実施形態では、中間生成物を反応させて最終フェロモン生成物を形成する方法が提供される。出発物質に関する段階は、次の中間生成物を形成する酸化である。別の段階は、次の中間生成物を形成するO−アルキル−C−アルコキシの付加である。別の段階は、次の中間生成物を形成するアルキニル脱ハロゲン化である。さらに別の段階は、次の中間生成物を形成するハロゲン化である。別の段階は、次の中間生成物を生成する酸化的付加および還元的脱離の循環を行うことである。そして、最終段階は、フェロモンのシス−シス異性体を形成する還元および加水分解である。
【0013】
本発明の他の実施形態は、(Z,Z)−11,13−ヘキサデカジエナールを形成し、7つ未満の段階で中間生成物を利用する方法を提供する。本実施形態における出発物質は、10−クロロデカン−1−オールを利用する。次の段階は、10−クロロデカナールを利用する。別の段階は、10−クロロ−1,1−ジエトキシデカンを利用する。別の段階は、ブト−1−インを利用する。さらに別の段階は、12,12−ジエトキシドデス−1−インおよび1−ブロモブト−1−インを両方とも利用する。別の段階は、16,16−ジエトキシヘキサデカ−3,5−ジインを利用して最終フェロモンを形成する。
【0014】
本発明の他の実施形態は、様々な試薬を利用して(Z,Z)−11,13−ヘキサデカジエナールを形成する方法を提供する。従って、臭化ナトリウム、酢酸ナトリウム、2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシ(TEMPO)、酢酸エチル、および次亜塩素酸ナトリウムといったこれらの試薬が、最初の段階のための出発物質に用いられる。次の段階は、p−トルエンスルホン酸一水和物およびオルト蟻酸トリエチルを利用して、次の中間生成物を形成する。別の段階は、リチウムアセチリド、エチレンジアミン錯体、およびジメチルスルホキシド中のヨウ化ナトリウムといった試薬を利用して、別の中間生成物を形成する。別の段階は、追加的に臭化物を有する水中の水酸化カリウムといった試薬を利用して、反応体を形成する。さらに別の段階は、塩酸ヒドロキシルアミン、メタノール中の塩化銅(I)を含み、かつn−プロピルアミンを追加され、さらに別の中間生成物を形成する。最終段階は、シクロヘキセンおよびテトラヒドロフラン中のボラン−N,N−ジエチルアニリン錯体(DEANB)、氷酢酸、ならびに、水性硫酸またはテトラフルオロホウ酸金属の錯体類の何れかといった試薬を利用する。
【0015】
本発明の他の実施形態は、6つ未満の合成段階の方法を利用することにより、ネーブルオレンジ虫のフェロモンの安定異形、(Z,Z)−11,13−ヘキサデカジエナールを形成することを提供する。同様に、その実施形態は、出発物質、好ましくは10−クロロデカン−1−オールに酸化を行い、アルデヒドを形成するための方法を提供する。別の段階は、C−アルキオキシ−O−アルキルの付加手順を利用することによりアルデヒドを保護する。この中間生成物から、その化合物は、求核付加の使用により、末端アルキン、好ましくは、2,4−ヘキサジイン等の内部アルキンから随意に形成された1,3−ヘキサジインと反応し、次の中間生成物、16,16−ジエトキシヘキサデカ−3,5−ジインを形成する。この化合物は、その後、その方法におけるさらなる反応を経て、ジイン部分を立体特異的に減らしかつアルデヒドを脱保護し、最終フェロモンを作り出す。末端アルキンを形成する随意の段階を用いることは意図されていないが、5つ未満の合成段階の方法を可能にする市販の化合物を利用することが意図されている。
【0016】
本発明の実施形態は、エーテル中のナトリウムアミド等のアルカリ金属アミド類の試薬を利用し、内部アルキンを末端アルキンに随意に再配列し、次の中間生成物を形成する段階を提供する。
【0017】
本発明の別の実施形態は、(Z,Z)−11,13−ヘキサデカジエナール、ネーブルオレンジ虫の性フェロモンを形成するための合成試薬、出発物質、方法、および装置を全て利用する合成キットを提供する。
【0018】
本発明のこれらおよび他の実施形態は、本開示に鑑みて、当該技術分野における通常の技術を有する者により容易に想到されることになる。
【0019】
本発明の上記または他の態様、特徴、および利点は、下記の図面と併せて提示されている、その下記のより具体的な記載からより明白となることになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】ネーブルオレンジ虫の性フェロモンを作り出すための合成法の概説された反応体系である。段階Bの後、その反応体系は2つの別の経路に分散する。丸括弧内の番号は、それに直接に隣接する化学式を指定する。丸括弧内の文字は、それに矢印が伴う反応段階を指定する。
【図2】図1で示される合成法の概説された反応体系であり、体系1aとも命名される経路Iである。
【図3】図1で示される合成法の概説された反応体系であり、体系1bとも命名される経路IIである。
【図4】実施例1の化合物7、(Z,Z)−11,13−ヘキサデカジエナールのGCクロマトグラフである。
【図5】参照基準、(Z,Z)−11,13−ヘキサデカジエナールのGCクロマトグラフである。
【図6】酸化的付加および還元的脱離の反応の概略図表である。
【図7】実施例1に関する合成体系である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
合成フェロモン組成物がここで記載されることになる。下記の例示的な記載において、本発明の実施形態のより徹底した理解を与えるために、多数の特定の詳細が説明される。しかしながら、本明細書で記載されている特定の詳細の全ての態様を組み込むことなく本発明を実施することができることが、通常の技術を有する熟練工にとって明白となることになる。他の例では、当該技術分野における通常の技術を有する者に十分に知られている特定の特徴、分量、または測定結果は、本発明を曖昧にしないように詳細に記載されていない。読者は、本発明の実施例が本明細書で説明されているが、請求項、および任意の均等物の全範囲が本発明の境界範囲を定義するものであることに留意するべきである。
【0022】
本発明の実施は、他に示されない限り、当該技術分野の技術の範囲内にある化学の従来法を使用することになる。このような技術、方法、反応、および同様のものは、上級有機化学:反応、機構、および構造、ジェリー・マーチ編、第4版(ニューヨーク、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ、1985年)(Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms, and
structure, Ed. Jerry March 4th ed.
(New York, John Wiley and sons, 1985))、および、有機化学の技術および実験、アディソン・オールト、第5版(大学出版局、1998年)(Techniques and Experiments for Organic Chemistry , Addison Ault, 5th
ed. (University press, 1998))等の文献で十分に説明されている。
【0023】
本明細書で引用されている全ての刊行物および特許および特許出願は、参照により全体として本明細書により組み込まれる。
【0024】
本明細書および添付の請求項で用いられる際に、単数形「一」、「一つ」、および「その」は、本内容が他に明らかに規定しない限り、複数形の参照物を含む。
【0025】
その様々な形態における単語「好ましくは」の使用は読み易さのためであり、それ以上に請求項の内容として読み取るように用いられるべきでない。
【0026】
本発明および実施形態を記載する際に、下記の用語が使用されることになり、以下に示されるように定義されるように意図されている。任意の用語が十分に定義されていない場合、その時、当該技術分野で用いられる際の通常の用法が専門用語の理解のあらゆる欠落を埋めることになる。
【0027】
用語「置換」は、一つの部分内にある一つの原子または原子団の、別の原子または原子団による交換である。
【0028】
用語「置換された」は、特定の基または部分が1つ以上の置換基を有することを意味する。用語「非置換の」は、特定の基が置換基を全く有しないことを意味する。用語「随意に置換された」は、特定の基が非置換であるか、または1つ以上の置換基により置換されることを意味する。本発明の化合物において、ある基が「非置換」であると言われるか、または、化合物中の全ての原子の原子価を恐らく満たすことになるより少ない基で「置換」される場合、このような基における残りの原子価が水素により満たされることを理解されたい。例えば、末端エチル基が1つのさらなる置換基で置換される場合、当該技術分野における通常の技術を有する者は、このような基が炭素原子上に残された4つの開位置を有することを恐らく理解することになる。(8つの初期位置、C−C結合のために2つを引き、それに化合物の残部が結合される1つを引き、一つのさらなる置換基を引き、4つの開位置を残す)。同様に、本化合物中のエチル基が「二置換」されると言われる場合、当該技術分野における通常の技術を有する者は、末端エチル基が炭素原子上に残された3つの開位置を有することを意味すると恐らく理解することになる。
【0029】
用語「還元」は、還元体または原子が電子を得る際に、電子の転換が全くない場合があるにもかかわらず、最終生成物または原子の酸化容量を減少させることである。例えば、単純反応において下記のようになる:
【化1】

この例では、RおよびR’はアルキルであり、Hは一般的な還元剤である。
【0030】
用語「酸化」は、酸化体または原子が電子を失う際に、電子の転換が全くない場合があるにもかかわらず、最終生成物または原子の酸化容量を増加させることである。例えば、単純反応において下記のようになる:
【化2】

この例では、RおよびR’はアルキルであり、Oは一般的な酸化剤である。
【0031】
用語「TEMPO酸化」は、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシを安定ニトロキシルラジカルとして利用しており、これは酸化反応において触媒としての役割を果たす。それは、クロム系試薬の良い代用物である環境的に無害な反応を可能にする。TEMPO酸化の一例は、金属ハロゲン化物、酢酸金属、およびハロゲン化金属が、制御された濃度に保たれ、かつ大気温度より低い温度で3時間未満にわたって撹拌される状態で、出発物質と混合された触媒であるだろう。
【0032】
用語「ハロゲン化」は、アルキル基の分子ハロゲンとの反応である。アルキル基中の一つの水素原子は、一つのハロゲン原子により置換される。ハロゲンを水素または炭素−アルキル基の一部分と交換するような置換を逆転させることは、「脱ハロゲン化」と称される。ハロゲン化の例に関しては、単純反応において下記のようになる:
【化3】

【0033】
この例に関しては、Rはアルキル基であり、Xはハロゲンである。
【0034】
脱ハロゲン化(アルキル脱ハロゲン化)の例に関しては、下記のようになる:
【化4】

【0035】
この例に関しては、RおよびR’はアルキルであり、Xはハロゲンである。
【0036】
名前付きの「カディオ・ホトキェヴィチ」反応は、末端アルキンの銅(I)触媒カップリングと、非対称ジイニルへの接触を提供するハロゲン化アルキニルとを利用する(カディオ、P.;ホトキェヴィチ,W.、アセチレン類の化学、ウィーヘ,H.G.編;マルセル・デッカー:ニューヨーク、1969年;597〜647ページ(Cadiot, P.; Chodkiewicz, W.
Chemistry of Acetylenes; Viehe, H. G., Ed.;
Marcel Dekker: New York, 1969; pp 597−647))。その反応の一例は、この単純な体系にある:
【化5】

この例において、RおよびR’はアルキル基である。
【0037】
用語「酸化的付加」は、シグマ結合の金属への付加がある場合に、触媒された遷移金属類の有機金属反応において用いられる。その金属の酸化状態は+2に変化する。概略的な例に関する図6を参照されたい。この例では、RおよびR’はアルキル基であり、Xはハロゲンである。
【0038】
触媒された遷移金属類の有機金属反応において用いられる用語「還元的脱離」は、酸化的付加の逆であり、そこで、最初の有機金属錯体を再形成するシグマ結合の解離がある。その金属の酸化状態は−2に変化する。概略的な例に関する図6を参照されたい。この例では、RおよびR’はアルキル基であり、Xはハロゲンである。
【0039】
用語「付加」は、それにより(例えば)一対の電子が二重結合から除去され、かつ新たな基を分子に付着させるために用いられる反応を経ることができる二重結合を有する不飽和分子を指すために用いられる。例えば、O−アルキル−C−アルコキシの付加は、この単純な例でのように、アルデヒドをアセタールに変換する(本明細書ではアセタール化とも呼ばれる):
【化6】

この例において、RおよびR’はアルキル基である。
【0040】
用語「求核付加」は、化学化合物のπ結合が求核体の付加による2つの新たな共有結合の創出により除去される付加反応である。その求核体は、陰イオンでも、陽子等の求電子体を求める自由電子でもよい。例えば、下記の反応がある:
【化7】

RおよびR’はアルキル基であり、Xはハロゲンである。
この例では、アセチリド陰イオンが強力な求核体であるので、ハロゲン化物イオンを第一級ハロゲン化アルキルから転移させ、置換ジアルキニルを生成物として生じる場合がある。
【0041】
異性化とも呼ばれる三重結合の転移再配列は、それにより1つの分子が全く同じ原子を有する別の分子に変換されるが、これらの原子が再配列される過程である。その異性化が分子内で起こる場合、分子の炭素骨格が再配列されて最初の分子の構造異性体を生じる、有機反応である再配列反応と見なされる。例えば、下記の反応がある:
【化8】

【0042】
用語「加水分解」は、2つの分子断片が生成された各水分子に接合される反応、「濃縮」の逆つまり反対として用いられる。従って、その2つの分子断片は通常酸の存在下で水と反応し、その断片を別個の断片に分割する。一つの単純な例は、
【化9】

である。
この例において、RおよびR’はアルキルである。
【0043】
用語「シス」(Z)および「トランス」(E)は、C=C部分に関連する構成を有する幾何立体異性体とも呼ばれる。命名法においてZとしても知られる「シス」は、2−ブテンの例で見られるように、その平面の同一側にある置換炭素の構成要素を有するように、幾何平面上の炭素を構成する。例えば、下記のものである:
【化10】

【0044】
反対に、命名法においてEとしても知られる「トランス」は、トランス−2−ブテンの例で見られるように、その平面の反対側にある置換炭素の構成要素を有するように、幾何平面上の炭素を構成する。例えば、下記のものである:
【化11】

【0045】
用語「環境的に無害な」は、環境に対してそれほど負荷を引き起こさない合成反応において、化学物質を用いることを指す。これは、物理的環境、個人の労働環境、および同様のものを含むが、それらに限定されない。例えば、物理的環境に関しては、重金属の有害廃棄物処理および個人の労働環境、労働者により使用または創出された毒性化学物質への曝露、または臭気濃度の閾の不快さにおける問題点がある。
【0046】
用語「大気温度」は、いかなる異常な熱源も加えられない状態で、通常は20℃および27℃の温度の間で行われる工程の周辺における、空気およびまたは環境の常温である。
【0047】
用語「出発物質」は、各反応段階で反応体であるように用いられる化合物である。意味を成す場合、これを中間生成物と相互交換可能に用いることができる。例えば、化合物がそれに対する反応を受けている場合、それは反応体かつ出発物質である。化合物が反応の結果である場合、それは出発物質でないが、後続の反応段階で用いられる場合に出発物質となる場合があるだろう。
【0048】
用語「保護基」は、多段階有機合成の後続の化学反応において化学選択性を得るための、官能基部分の化学修飾である。反対に、保護基が除去されて官能基を活性化することを可能にする場合、これは脱保護と呼ばれる。例えば、非保護アルデヒドを修飾することができるだろう後続の合成段階においてアルデヒドが合成修飾に使用可能でないように、末端アルデヒドを有する化合物はアセタールに変換される。後続の合成段階の後に、アセタールはまた末端アルデヒドに変換され、官能基として使用可能である。
【0049】
用語「オキシ」または「オキソ」は、酸素、または、酸素の置換基を有する部分である。
【0050】
用語「ハロ」および/または「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を指す。
【0051】
用語「ハロゲン化物」は二元化合物であり、その中で1つの部分はハロゲン原子であり、他の部分はハロゲンより小さい電気陰性である元素またはラジカルであり、フッ化物、塩化物、臭化物、およびヨウ化物になる。
【0052】
用語「アセタール」は、アルコキシ部分のように、2つの単結合酸素と置換される炭素原子を指す。
【0053】
用語「アルデヒド」は、水素原子に結合され、かつ酸素原子に二重結合された末端炭素原子を指す。
【0054】
用語「アルキル」は、1個から16個までの炭素原子の直鎖基および分岐鎖基を含む、飽和脂肪族炭化水素ラジカルを指す。(CからCまでの)アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、2−プロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、および同様のものが挙げられる。
【0055】
用語「アルケニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素の二重結合を有する2個から16個までの炭素を含むアルキル部分を意味する。このような基における炭素−炭素の二重結合は、結果的に安定化合物をもたらすことになる2個から16個までの炭素鎖に沿ういかなるところにもあり得る。このような基は、前記アルケニル部分のE異性体およびZ異性体を両方とも含む場合があるだろう。このような基の例としては、エテニル、プロペニル、ブテニル、アリル、およびペンテニルが挙げられるが、それらに限定されない。
【0056】
本明細書で用いられる際に、用語「アルキニル」は、2個から16個までの炭素原子を含み、かつ、少なくとも1つの炭素−炭素の三重結合を有するアルキル部分を意味する。このような基における炭素−炭素の三重結合は、結果的に安定化合物をもたらすことになる2個から16個までの炭素鎖に沿ういかなるところにもあり得る。「内部アルキニル」は、三重結合された炭素対が、炭素鎖の端でない、炭素鎖上のどこかの位置で見つかる場合である。反対に、「末端アルキニル」は、三重結合された炭素対が炭素鎖の端で見つかる場合である。このような基の例としては、エチン、プロピン、1−ブチン、2−ブチン、1−ペンチン、2−ペンチン、1−ヘキシン、2−ヘキシン、および3−ヘキシンが挙げられるが、それらに限定されない。
【0057】
用語「アルカナール」は、末端上にアルデヒドを有する2個から16個の炭素を含むアルキル部分を意味する。
【0058】
用語「アルケナール」は、末端上にアルデヒドを有する2個から16個の炭素を含むアルケニル部分を意味する。
【0059】
本明細書で用いられる際に、用語「ジイニル」は、4個から16個までの炭素原子を含み、かつ、少なくとも2つの炭素−炭素の三重結合を有するアルキル部分を意味する。このような基における炭素−炭素の三重結合は、結果的に安定化合物をもたらすことになる4個から16個までの炭素鎖に沿ういかなるところにもあり得る。
【0060】
用語「アルコキシ」は、本明細書で用いられる際に、O−アルキル基が、1個から16個までの炭素原子を含有し、かつ直線状、分岐状、または環状である、前記アルキル基を意味する。このような基の例としては、メトキシ、エトキシ、n−プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、tert−ブトキシ、シクロペンチルオキシ、およびシクロヘキシルオキシが挙げられるが、それらに限定されない。
【0061】
用語「シクロアルケニル」は、環内に少なくとも1つのC=Cの二重結合を伴う合計で5個から8個の炭素環原子を有する、不飽和で単環式の環構造を意味する。このような基の例としては、シクロペンテニル、シクロヘキセニルが挙げられるが、それらに限定されない。
【0062】
本発明の1つ以上の実施形態によれば、ネーブルオレンジ虫のフェロモンのための合成の方法が図1、体系1に示されている。図2、概して体系1の経路Iを辿る体系1aに示される本発明の実施形態によれば、段階Aは化学式1、
【化12】

の化合物を用いる反応であり、段階Bは化学式2、
【化13】

の化合物を用いる反応であり、段階Cは化学式3、
【化14】

の化合物を用いる反応であり、段階Dは化学式5a、
【化15】

の化合物を用いる反応であり、段階Eは化学式4、
【化16】

の化合物を用い、かつ、化学式5b、
【化17】

の化合物を用いる反応であり、段階Fは化学式6、
【化18】

の化合物を用いる反応であり、化学式7、
【化19】

の最終化合物を形成し、式中、XおよびX’はハロゲンであり、Yは−OHであり、Y’は=Oであり、Rは[−CH−]、アルキルであり、RおよびRは−C≡CH、アルキニルであり、RはCH−[CH−、アルキルであり、Rは[−C≡C−]、アルキニルであり、Rは[−C≡C−]、アルキニルであり、Rは−C=C−C=C−、アルケニル、Rであり、Wは−O−アルキル、−O−R、−O−CH−CHであり、Rは、
【化20】

という構造により表される幾何的なシス構成であり、mは独立して5、6、7、8、9、10、11、12であり、nは独立して1、2、3であり、pは独立して1、2であり、qは独立して1、2である。
【0063】
本発明の別の実施形態は、Xが塩素であり、X’が臭素であり、Rが[−CH−]であり、Rが−C≡CHであり、RがCH−[CH−であり、Rが−C≡CHであり、Rが[−C≡C−]であり、Rが[−C≡C−]であり、RがRであり、Rが、
【化21】

という構造により表される幾何的なシス構成であり、Wが−O−CH−CHであり、mが10であり、nが1であり、pが1であり、qが2である場合である。
【0064】
図2の体系1a、および図3の体系1bの段階は同様の重複する段階を有するため、それらの段階は、合成経路を辿りやすいように同様の文字付けおよび番号付けを与えられている。2つの経路が他の文字および番号を分岐させるところは、段階のそれらの順序を示すために用いられる。アルファベット順および番号順は、示されている体系において意味を成す場合に用いられることになるが、その経路において見られるように、必ずしも通常のアルファベット順または番号順にはない。概して体系1の経路IIを辿る図3の体系1bで示されている本発明の実施形態によれば、段階Aは化学式1、
【化22】

の化合物を用いる反応であり、段階Bは化学式2、
【化23】

の化合物を用いる反応であり、段階Gは化学式8a、
【化24】

の化合物を用いる随意の反応であり、段階Hは化学式3、
【化25】

の化合物、および化学式8b、
【化26】

の化合物を用いる反応であり、段階Fは化学式6、
【化27】

の化合物を用いる反応であり、化学式7、
【化28】

の最終化合物を生成し、式中、Xはハロゲンであり、Yは−OHであり、Y’は=Oであり、Rは[−CH−]、またはアルキルであり、RはCH−[CH−、またはアルキルであり、Rは[−C≡C−]、またはアルキニルであり、Rは[−C≡C−]、またはアルキニルであり、Rは−C=C−C=C−、アルケニル、またはRであり、Wは−O−アルキル、−O−R、または−O−CH−CHであり、Rは、
【化29】

という構造により表される幾何的なシス構成であり、Rは−CH、またはアルキルであり、R10は≡C(−)、炭素アニオン、または脱陽子付加炭素であり、Mはナトリウム、リチウム、カリウム、マグネシウム等の、しかしそれらに限定されない金属であり、そこで、MおよびR10は共に塩を形成する場合があり、mは独立して5、6、7、8、9、10、11、または12であり、nは独立して1、2、または3であり、pは独立して1または2であり、qは独立して1または2である。
【0065】
本発明の別の実施形態は、Xが塩素であり、Rが[−CH−]であり、Rが−C≡CHであり、RがCH−[CH−であり、Rが[−C≡C−]であり、Rが[−C≡C−]であり、RがRであり、Wが−O−CH−CHであり、Rが、
【化30】

という構造により表される幾何的なシス構成であり、Rが−CHであり、R10が≡C(−)であり、Mがナトリウムであり、mが10であり、nが1であり、pが1であり、qが2である場合である。
【0066】
本発明の他の実施形態は、下記の段階において記載されている。
【0067】
体系1:段階A:
本発明の実施形態に係る、図1の体系1に示される合成の方法において、一般的に知られかつ通常得られる化学式(1)の化合物は、好ましくは酸化反応を用いて、最も好ましくはTEMPO酸化を用いて反応し、化学式(2)の化合物を形成する。化学式(1)の化合物は、好ましくはハロ置換アルキルアルコール、最も好ましくは10−クロロデカン−1−オールであり、化学式(2)の化合物は、好ましくはハロ置換アルカナール、最も好ましくは10−クロロデカン−1−アールである。
【0068】
本発明の実施形態に係る、体系1−段階Aに示される合成の方法は、様々な希釈剤を用いて実行される。適切な希釈剤は、実質的に全ての不活性有機溶媒である。これらのものとしては、好ましくは、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、石油エーテル、ベンゼン、リグロイン、ベンゼン、トルエン、キシレン、塩化メチレン、塩化エチレン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン、およびo−ジクロロベンゼン等の脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、および随意にハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、メチル−tert−アミルエーテル、グリコールジメチルエーテルとジグリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、およびジオキサン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、またはメチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸メチルまたは酢酸エチル等のエステル類、例えば、アセトニトリルまたはプロピオニトリル等のニトリル類、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、およびN−メチルピロリドン等のアミド類、ならびに、ジメチルスルホキシド、テトラメチレンスルホン、またはヘキサメチルリン酸トリアミドも挙げられる。最も好ましくは、その希釈剤は酢酸エチルである。
【0069】
本発明の実施形態に係る、図1の体系1の段階Aに示される合成の方法は、様々な試薬を用いて実行される。反応中において適切な試薬は、例えば、臭化ナトリウム、塩化ナトリウム、およびヨウ化ナトリウム等のハロゲン化アルカリ類、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、または酢酸カリウム等の酢酸金属類、好ましくは酢酸ナトリウム、ならびに、次亜塩素酸アルカリ金属類、好ましくは次亜塩素酸ナトリウムである。
【0070】
本発明の実施形態に係る、図1の体系1の段階Aに示される合成の方法は、好ましくは触媒、好ましくは環式ニトロシル第三級アミン類、最も好ましくは2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシを用いて実行される。
【0071】
本発明の実施形態に係る、図1の体系1の段階Aの合成の方法における反応温度を、広い範囲内で変化させることができる。概して、0℃と35℃との間で、好ましくは5℃と10℃との間で、その段階を実行することができる。
【0072】
本発明の実施形態に係る、図1の体系1の段階Aに示される合成の方法は、概して、大気圧または僅かな陽圧の下で実行される。しかしながら、昇圧または減圧の下で操作することが可能であることも意図されている。
【0073】
本発明の実施形態に係る、図1の体系1の段階Aにおける合成の方法を実行するために、その試薬は概して出発物質とほぼ当モル量にある。しかしながら、その試薬のうち1つまたは2つを僅かに超過または不足して有することが可能である。その触媒は、概して、反応に必要であるようなより低いモル量にある。その単離精製操作は、当該技術分野において知られている慣習的方法により実行される(実施例1を参照されたい)。
【0074】
体系1:段階B
本発明の実施形態に係る、図1の体系1に示される合成の方法において、化学式(2)の化合物は、好ましくはアルキル化反応、最も好ましくはO−アルキル−C−アルコキシ付加反応、特に好ましくはアセタール化反応を用いて反応し、化学式(3)の化合物を形成する。化学式(2)の化合物は、好ましくはハロ置換アルカナール、最も好ましくは10−クロロデカン−1−アールであり、化学式(3)の化合物は、好ましくはハロ置換ジアルコキシ置換アルキル、最も好ましくは10−クロロ−1,1−ジエトキシデカンである。
【0075】
本発明の実施形態に係る、図1の体系1の段階Bに示される合成の方法は、様々な希釈剤を用いて実行される。適切な希釈剤は、実質的に全ての不活性有機溶媒である。これらのものとしては、好ましくは、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、石油エーテル、ベンゼン、リグロイン、ベンゼン、トルエン、キシレン、塩化メチレン、塩化エチレン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン、およびo−ジクロロベンゼン等の脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、および随意にハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、メチル−tert−アミルエーテル、グリコールジメチルエーテルとジグリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、およびジオキサン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、またはメチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸メチルまたは酢酸エチル等のエステル類、例えば、アセトニトリルまたはプロピオニトリル等のニトリル類、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、およびN−メチルピロリドン等のアミド類、ならびに、ジメチルスルホキシド、テトラメチレンスルホン、またはヘキサメチルリン酸トリアミドも挙げられる。好ましくは、酢酸エチルの希釈剤である。
【0076】
本発明の実施形態に係る、図1の体系1の段階Bに示される合成の方法は、様々な試薬を用いて実行される。反応中において適切な試薬は、クロロアセトアルデヒドジメチルアセタール、アセトアルデヒドジメチルアセタール、オルト蟻酸トリメチル、オルト蟻酸トリアルキル類等のアセタール類、最も好ましくはオルト蟻酸トリエチル、ならびに、メタノール、エタノール、またはイソプロパノール等のアルコール類である。
【0077】
本発明の実施形態に係る、図1の体系1の段階Bに示される合成の方法は、好ましくは酸触媒、好ましくはメタンスルホン酸またはp−トルエンスルホン酸等の有機酸、最も好ましくはp−トルエンスルホン酸を用いて実行される。
【0078】
本発明の実施形態に係る、図1の体系1の段階Bの合成の方法における反応温度を、広い範囲内で変化させることができる。概して、0℃と60℃との間で、好ましくは15℃と25℃との間で、最も好ましくは大気温度で、その段階を実行することができる。
【0079】
本発明の実施形態に係る、図1の体系1の段階Bに示される合成の方法は、概して、大気圧または僅かな陽圧の下で実行される。しかしながら、昇圧または減圧の下で操作することが可能であることも意図されている。
【0080】
本発明の実施形態に係る、図1の体系1−段階Bにおける合成の方法を実行するために、その試薬は概して出発物質とほぼ当モル量にある。しかしながら、その試薬を僅かに超過または不足して有することが可能である。その触媒は、概して、反応に必要であるようなより低いモル量にある。その単離精製操作は、当該技術分野において知られている慣習的方法により実行される(実施例1を参照されたい)。
【0081】
体系1:経路I、段階C
本発明の実施形態に係る、図1の体系1の経路Iの段階Cに示される合成の方法において、化学式(3)の化合物は、好ましくはアルキル化反応、より好ましくはアルキニルの脱ハロゲン化反応を用いて反応し、化学式(4)の化合物を形成する。経路Iの実施形態は、体系1aとも呼ばれる。化学式(3)の化合物は、好ましくはハロ置換ジアルコキシ置換アルキル、最も好ましくは10−クロロ−1,1−ジエトキシデカンであり、化学式(4)の化合物は、好ましくはジアルコキシ置換アルキニル、最も好ましくは12,12−ジエトキシドデス−1−インである。
【0082】
本発明の実施形態に係る、図1の体系1の経路Iの段階Cに示される合成の方法は、様々な希釈剤を用いて実行される。適切な希釈剤は、実質的に全ての不活性有機溶媒である。これらのものとしては、好ましくは、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、石油エーテル、ベンゼン、リグロイン、ベンゼン、トルエン、キシレン、塩化メチレン、塩化エチレン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン、およびo−ジクロロベンゼン等の脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、および随意にハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、メチル−tert−アミルエーテル、グリコールジメチルエーテルとジグリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、およびジオキサン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、またはメチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸メチルまたは酢酸エチル等のエステル類、例えば、アセトニトリルまたはプロピオニトリル等のニトリル類、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、およびN−メチルピロリドン等のアミド類、ならびに、ジメチルスルホキシド、テトラメチレンスルホン、またはヘキサメチルリン酸トリアミドも挙げられる。最も好ましくは、ジメチルスルホキシドの希釈剤を用いる。
【0083】
本発明の実施形態に係る、図1の体系1の経路Iの段階Cに示される合成の方法は、様々な試薬を用いて実行される。反応中において適切な試薬は、有機金属アセチリド錯体類、好ましくはリチウムアセチリド、ナトリウムアセチリド、およびカリウムアセチリドの錯体、最も好ましくはリチウムアセチリド、エチレンジアミンの錯体である。
【0084】
本発明の実施形態に係る、図1の体系1の経路Iの段階Cに示される合成の方法は、好ましくは触媒、最も好ましくはハロゲン化金属、特に好ましくはヨウ化ナトリウムを用いて実行される。
【0085】
本発明の実施形態に係る、図1の体系1の経路Iの段階Cの合成の方法における反応温度を、広い範囲内で変化させることができる。概して、10℃と60℃との間で、好ましくは20℃と40℃との間で、最も好ましくは30℃で、その段階を実行することができる。
【0086】
本発明の実施形態に係る、図1の体系1の経路Iの段階Cに示される合成の方法は、概して、大気圧または僅かな陽圧の下で実行される。しかしながら、昇圧または減圧の下で操作することが可能であることも意図されている。
【0087】
本発明の実施形態に係る、図1の体系1の経路Iの段階Cの合成の方法からの収率を、広い範囲内で変化させることができる。好ましくはその範囲が恐らく50%より大きく、最も好ましくはその範囲が恐らく76%より大きく、特に好ましくはその範囲が恐らく90%より大きく、非常に特に好ましくは93%より大きいだろう。
【0088】
本発明の実施形態に係る、図1の体系1の経路Iの段階Cにおける合成の方法を実行するために、その試薬は概して出発物質とほぼ当モル量にある。しかしながら、その試薬を僅かに超過または不足して有することが可能である。その触媒は、概して、反応に必要であるようなより低いモル量にある。その単離精製操作は、当該技術分野において知られている慣習的方法により実行される(実施例1を参照されたい)。
【0089】
体系1:経路I、段階D
本発明の実施形態に係る、図1の体系1に示される合成の方法において、化学式(5a)の化合物は、好ましくは置換反応、最も好ましくはハロゲン化を用いて反応し、化学式(5b)の化合物を形成する。化学式(5a)の化合物は、好ましくはアルキニル、最も好ましくはブト−1−インであり、化学式(5b)の化合物は、好ましくはハロ置換アルキニル、最も好ましくは1−ブロモブト−1−インである。
【0090】
本発明の実施形態に係る、図1の体系1の経路Iの段階Dに示される合成の方法は、様々な希釈剤を用いて実行される。適切な希釈剤は、実質的に全ての不活性有機溶媒である。これらのものとしては、好ましくは、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、石油エーテル、ベンゼン、リグロイン、ベンゼン、トルエン、キシレン、塩化メチレン、塩化エチレン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン、およびo−ジクロロベンゼン等の脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、および随意にハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、メチル−tert−アミルエーテル、グリコールジメチルエーテルとジグリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、およびジオキサン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、またはメチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸メチルまたは酢酸エチル等のエステル類、例えば、アセトニトリルまたはプロピオニトリル等のニトリル類、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、およびN−メチルピロリドン等のアミド類、ならびに、ジメチルスルホキシド、テトラメチレンスルホン、またはヘキサメチルリン酸トリアミドも挙げられる。好ましくは、その希釈剤は水である。
【0091】
本発明の実施形態に係る、図1の体系1の経路Iの段階Dに示される合成の方法は、様々な試薬を用いて実行される。反応中において適切な試薬は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、および水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属類、最も好ましくは水酸化カリウム、ならびに、塩素、ヨウ素、および臭素等のハロゲン類、好ましくは臭素または塩素、最も好ましくは臭素である。
【0092】
本発明の実施形態に係る、図1の体系1の経路Iの段階Dの合成の方法における反応温度を、広い範囲内で変化させることができる。概して、10℃と85℃との間で、好ましくは15℃と25℃との間で、最も好ましくは大気温度で、その段階を実行することができる。
【0093】
本発明の実施形態に係る、図1の体系1の経路Iの段階Dに示される合成の方法は、概して、大気圧または僅かな陽圧の下で実行される。しかしながら、昇圧または減圧の下で操作することが可能であることも意図されている。
【0094】
本発明の実施形態に係る、図1の体系1の経路Iの段階Dにおける合成の方法を実行するために、その試薬は概して出発物質とほぼ当モル量にある。しかしながら、ハロゲン含有試薬を僅かに超過または不足して、かつ水酸化金属を大いに超過して有することが可能である。その単離精製操作は、当該技術分野において知られている慣習的方法により実行される(実施例1を参照されたい)。
【0095】
体系1:経路Iの段階E
本発明の実施形態に係る、図1の体系1の経路Iの段階Eに示される合成の方法において、化学式(5b)の化合物は、好ましくは酸化的付加および還元的脱離の循環、最も好ましくはカディオ・ホトキェヴィチ反応を用いて化学式(4)の化合物と反応し、化学式(6)の化合物を形成する。化学式(5b)の化合物は、好ましくはハロ置換アルキニル、最も好ましくは1−ブロモブト−1−インであり、化学式(4)の化合物は、ジアルコキシ置換アルキニル、最も好ましくは12,12−ジエトキシドデス−1−インである。化学式(6)の化合物は、好ましくはジアルコキシ置換ジイニル、最も好ましくは16,16−ジエトキシヘキサデカ−3,5−ジインである。
【0096】
本発明の実施形態に係る、図1の体系1の経路Iの段階Eに示される合成の方法は、様々な希釈剤を用いて実行される。適切な希釈剤は、実質的に全ての不活性有機溶媒である。これらのものとしては、好ましくは、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、石油エーテル、ベンゼン、リグロイン、ベンゼン、トルエン、キシレン、塩化メチレン、塩化エチレン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン、およびo−ジクロロベンゼン等の脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、および随意にハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、メチル−tert−アミルエーテル、グリコールジメチルエーテルとジグリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、およびジオキサン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、またはメチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸メチルまたは酢酸エチル等のエステル類、例えば、アセトニトリルまたはプロピオニトリル等のニトリル類、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、およびN−メチルピロリドン等のアミド類、ならびに、ジメチルスルホキシド、テトラメチレンスルホン、またはヘキサメチルリン酸トリアミド、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール類も挙げられる。好ましくは、メタノールおよびメチル−tert−ブチルエーテルの希釈剤である。
【0097】
本発明の実施形態に係る、図1の体系1の経路Iの段階Eに示される合成の方法は、様々な試薬を用いて実行される。反応中において適切な試薬は、N−メチルヒドロキシルアミンまたはN−エチルヒドロキシルアミン等のモノアミン類(第一級つまりアルキルヒドロキシルアミン類)、最も好ましくは塩酸ヒドロキシルアミン、ならびに、エチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン等の塩基アルキルアミン類、好ましくはn−プロピルアミンである。
【0098】
本発明の実施形態に係る、図1の体系1の経路Iの段階Eに示される合成の方法は、好ましくは触媒、最も好ましくはハロゲン化金属、特に好ましくは塩化銅(I)を用いて実行される。
【0099】
本発明の実施形態に係る、図1の体系1の経路Iの段階Eの合成の方法における反応温度を、広い範囲内で変化させることができる。概して、−40℃と25℃との間で、好ましくは0℃と−20℃との間で、最も好ましくは約0℃および約−20℃で、その段階を実行することができる。
【0100】
本発明の実施形態に係る、図1の体系1の経路Iの段階Eに示される合成の方法は、概して、大気圧または僅かな陽圧の下で実行される。しかしながら、昇圧または減圧の下で操作することが可能であることも意図されている。
【0101】
本発明の実施形態に係る、図1の体系1の経路I−段階Eにおける合成の方法を実行するために、その試薬は概して出発物質に対してモル量が超過している。その触媒は、概して、反応に必要であるようなより低いモル量にある。その単離精製操作は、当該技術分野において知られている慣習的方法により実行される(実施例1を参照されたい)。
【0102】
本発明の実施形態に係る、図1の体系1の経路Iの段階Eの合成の方法からの収率を、広い範囲内で変化させることができる。好ましくはその範囲が恐らく50%より大きく、最も好ましくはその範囲が恐らく約76%より大きく、特に好ましくはその範囲が恐らく87%より大きいだろう。
【0103】
体系1:経路IIの段階G
本発明の実施形態に係る、図1の体系1の経路IIの段階Gに示される合成の方法においては、化学式(8b)の化合物の市販性に基づく、本発明の実施形態に係る随意の段階、その合成の必要、および同様のものがある。経路IIの実施形態は、体系1bとも呼ばれる。化学式(8a)の化合物は、好ましくは三重結合の転移再配列反応、最も好ましくは異性化を用いて反応し、化学式(8b)の化合物を形成する。化学式(8a)の化合物は、好ましくは内部アルキン、最も好ましくは2,4−ヘキサジインであり、化学式(8b)の化合物は、末端アルキン、最も好ましくは1,3−ヘキサジインである。
【0104】
本発明の実施形態に係る、図1の体系1の経路IIの段階Gに示される合成の方法は、様々な希釈剤を用いて実行される。適切な希釈剤は、実質的に全ての不活性有機溶媒である。これらのものとしては、好ましくは、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、石油エーテル、ベンゼン、リグロイン、ベンゼン、トルエン、キシレン、塩化メチレン、塩化エチレン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン、およびo−ジクロロベンゼン等の脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、および随意にハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、メチル−tert−アミルエーテル、グリコールジメチルエーテルとジグリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、およびジオキサン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、またはメチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸メチルまたは酢酸エチル等のエステル類、例えば、アセトニトリルまたはプロピオニトリル等のニトリル類、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、およびN−メチルピロリドン等のアミド類、ならびに、ジメチルスルホキシド、テトラメチレンスルホン、またはヘキサメチルリン酸トリアミドも挙げられる。最も好ましくは、エーテルの希釈剤を用いる。
【0105】
本発明の実施形態に係る、図1の体系1の経路IIの段階Gに示される合成の方法は、様々な試薬を用いて実行される。反応中において適切な試薬は、アルカリ金属アミド類の強塩基類、ナトリウムアミド、およびカリウム3−アミノプロピルアミド等の塩基類、好ましくはナトリウムアミドである。
【0106】
本発明の実施形態に係る、図1の体系1の経路IIの段階Gの合成の方法における反応温度を、広い範囲内で変化させることができる。概して、−10℃と50℃との間で、好ましくは0℃と20℃との間で、最も好ましくは10℃で、その段階を実行することができる。
【0107】
本発明の実施形態に係る、図1の体系1の経路II−段階Gに示される合成の方法は、概して、大気圧または僅かな陽圧の下で実行される。しかしながら、昇圧または減圧の下で操作することが可能であることも意図されている。
【0108】
本発明の実施形態に係る、図1の体系1の経路IIの段階Gの合成の方法からの収率を、広い範囲内で変化させることができる。好ましくはその範囲が恐らく50%より大きく、最も好ましくはその範囲が恐らく約76%より大きく、特に好ましくはその範囲が恐らく90%より大きいだろう。
【0109】
本発明の実施形態に係る、図1の体系1の経路IIの段階Gにおける合成の方法を実行するために、その試薬は概して出発物質とほぼ当モル量にある。しかしながら、その試薬を僅かに超過または不足して有することが可能である。その単離精製操作は、当該技術分野において知られている慣習的方法により実行される(C.A.ブラウンおよびA.ヤマシタ(1975年)、「有機反応における水素化塩水類および超塩基類、IX、アセチレンジッパー、アルキン類のカリウム3−アミノプロピルアミドとの格別に容易な反熱力学的多位置型異性化」、米国化学会誌第97号(4):891〜892ページ(C. A. Brown and A. Yamashita (1975). "Saline hydrides and superbases in organic reactions. IX. Acetylene zipper.
Exceptionally facile contrathermodynamic multipositional isomerization of
alkynes with potassium 3−aminopropylamide".
J. Am. Chem. Soc. 97 (4): 891−892)を参照されたい)。
【0110】
体系1:経路IIの段階H
本発明の実施形態に係る、図1の体系1の経路IIの段階Hに示される合成の方法においては、化学式(3)の化合物は、好ましくは求核付加反応を用いて化学式(8b)の化合物と反応し、化学式(6)の化合物を形成する。その反応は、段階Gの反応とその場で随意に行われる。化学式(3)の化合物は、好ましくはハロ置換ジアルコキシ置換アルキル、最も好ましくは10−クロロ−1,1−ジエトキシデカンであり、化学式(8b)の化合物は、好ましくは末端アルキニル、最も好ましくは1,3−ヘキサジインであり、化学式(6)の化合物は、好ましくはジアルコキシ置換ジイニル、最も好ましくは16,16−ジエトキシヘキサデカ−3,5−ジインである。
【0111】
本発明の実施形態に係る、図1の体系1の経路IIの段階Hに示される合成の方法は、様々な希釈剤を用いて実行される。適切な希釈剤は、実質的に全ての不活性有機溶媒である。これらのものとしては、好ましくは、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、石油エーテル、ベンゼン、リグロイン、ベンゼン、トルエン、キシレン、塩化メチレン、塩化エチレン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン、およびo−ジクロロベンゼン等の脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、および随意にハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、メチル−tert−アミルエーテル、グリコールジメチルエーテルとジグリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、およびジオキサン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、またはメチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸メチルまたは酢酸エチル等のエステル類、例えば、アセトニトリルまたはプロピオニトリル等のニトリル類、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、およびN−メチルピロリドン等のアミド類、ならびに、ジメチルスルホキシド、テトラメチレンスルホン、またはヘキサメチルリン酸トリアミドも挙げられる。好ましくはアンモニアの希釈剤を用い、最も好ましくはエーテルの希釈剤を用いる。
【0112】
本発明の実施形態に係る、図1の体系1の経路IIの段階Hに示される合成の方法は、様々な試薬を用いて実行される。反応中において適切な試薬は、アルカリ金属アミド類の強塩基類、ナトリウムアミド、リチウムアミド、カリウムアミド、マグネシウムアミド、およびカリウム3−アミノプロピルアミド等の塩基類、好ましくはナトリウムアミドである。
【0113】
本発明の実施形態に係る、図1の体系1の経路IIの段階Hの合成の方法における反応温度を、広い範囲内で変化させることができる。概して、−10℃と50℃との間で、好ましくは0℃と20℃との間で、最も好ましくは10℃で、その段階を実行することができる。
【0114】
本発明の実施形態に係る、図1の体系1の経路IIの段階Hに示される合成の方法は、概して、大気圧または僅かな陽圧の下で実行される。しかしながら、昇圧または減圧の下で操作することが可能であることも意図されている。
【0115】
本発明の実施形態に係る、図1の体系1の経路IIの段階Hの合成の方法からの収率を、広い範囲内で変化させることができる。好ましくはその範囲が恐らく50%より大きく、最も好ましくはその範囲が恐らく約76%より大きく、特に好ましくはその範囲が恐らく85%より大きいだろう。
【0116】
本発明の実施形態に係る、図1の体系1の経路IIの段階Hにおける合成の方法を実行するために、その試薬は概して出発物質とほぼ当モル量にある。しかしながら、その試薬を僅かに超過または不足して有することが可能である。その単離精製操作は、当該技術分野において知られている慣習的方法により実行される。
【0117】
体系1:段階F
本発明の実施形態に係る、図1の体系1に示される合成の方法においては、化学式(6)の化合物は、好ましくは還元反応および加水分解反応、より好ましくはアルキン還元およびアセタール加水分解を用いて反応し、化合物(7)を形成する。化学式(6)の化合物は、好ましくはジアルコキシ置換ジイニル、最も好ましくは16,16−ジエトキシヘキサデカ−3,5−ジインであり、化学式(7)の化合物は、好ましくはネーブルオレンジ虫の性誘引フェロモン、最も好ましくはそのフェロモンのシス−シス異性体、特に好ましくは(Z,Z)−11,13−ヘキサデカジエン−1−アールである。
【0118】
本発明の実施形態に係る、図1の体系1の段階Fに示される合成の方法は、様々な希釈剤を用いて実行される。適切な希釈剤は、実質的に全ての不活性有機溶媒である。これらのものとしては、好ましくは、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、石油エーテル、ベンゼン、リグロイン、ベンゼン、トルエン、キシレン、塩化メチレン、塩化エチレン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン、およびo−ジクロロベンゼン等の脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、および随意にハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、メチル−tert−アミルエーテル、グリコールジメチルエーテルとジグリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、およびジオキサン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、またはメチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸メチルまたは酢酸エチル等のエステル類、例えば、アセトニトリルまたはプロピオニトリル等のニトリル類、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、およびN−メチルピロリドン等のアミド類、ならびに、ジメチルスルホキシド、テトラメチレンスルホン、またはヘキサメチルリン酸トリアミドも挙げられる。好ましくは、その希釈剤はテトラヒドロフランである。
【0119】
本発明の実施形態に係る、図1の体系1の段階Fに示される合成の方法は、様々な試薬を用いて実行される。反応中において適切な試薬は、2−メチルプロペン、2−ブテン、2−メチルブテン等のアルケン類、ならびに、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、およびシクロオクテン等のシクロアルケニル類、最も好ましくはシクロヘキセン、ボラン−THF、ボラン−硫化メチル、およびボラン−アミンの錯体を含む、ボラン錯体類等の有機金属錯体類、好ましくはボラン−N,N−ジエチルアニリン、蟻酸、トリフルオロ酢酸、および酢酸等の弱酸、好ましくは氷酢酸、ならびに、HClまたは硫酸等の含水強酸、好ましくは硫酸、あるいは、テトラフルオロホウ酸銅(II)またはホウフッ化ナトリウム等のテトラフルオロホウ酸金属錯体の何れかである。
【0120】
ボラン−N,N−ジエチルアニリンとともに好適な実施形態を用いる際の予想外の恩恵は、その試薬の貯蔵安定性、不快臭気の欠如、および効率的な反応である。ボラン−THFが大気温度で数カ月を過ぎた貯蔵に対して不安定である一方で、DEANBは大気温度で長期間にわたり安定である。DEANBは、ボラン硫化メチルを用いる場合のように不快臭気を有しない。DEANBは、ボランTHF等の代替物と同程度またはより良好である、高収率の立体特異的な生成物を与える。通常市販されているようなDEANBは、ボランTHF(1M)等の代替のボラン類より高いモル強度(5.6M)で販売されており、これは反応溶液中でより高い濃度を利用するさらなる効率を可能にする。別の効率はDEANBの反応性である。これにより、過剰量を必要とするボランTHFと比べ、ほぼ化学量論量の試薬(2:1)を用いてジシクロヘキシルボランを形成することが可能になる。
【0121】
図1の体系1の段階Fにおける本発明の実施形態によれば、含水強酸またはフルオロホウ酸金属錯体類等の加水分解剤と併せる有機金属還元剤の使用の際に効率が得られ、ジイニルにおける還元およびアセタールの加水分解の両方との化合物中の変換の組み合わせを可能にする。そのうえ、フルオロホウ酸金属錯体類の使用により、最終変換段階においてより高い収率が可能になる。
【0122】
本発明の実施形態に係る、図1の体系1−段階Fの合成の方法における反応温度を、広い範囲内で変化させることができる。概して、−10℃と80℃との間で、好ましくは5℃と60℃との間で、最も好ましくは約5℃および約60℃で、その段階を実行することができる。
【0123】
本発明の実施形態に係る、図1の体系1−段階Fに示される合成の方法は、概して、大気圧または僅かな陽圧の下で実行される。しかしながら、昇圧または減圧の下で操作することが可能であることも意図されている。
【0124】
本発明の実施形態に係る、図1の体系1の段階Fにおける合成の方法を実行するために、その試薬は概して出発物質に対してモル量が超過している。その単離精製操作は、当該技術分野において知られている慣習的方法により実行される(実施例1を参照されたい)。一般的な単離精製操作では、精製としても知られる、最終生成物の他の合成構成要素からの
分離または単離を、シリカゲル上での濃縮、順相LC、逆相HPLC、蒸留、または結晶化等のありふれた技術を実施して実行することができる。単離に用いられる結晶化技術は、重亜硫酸ナトリウムなどの塩付加物を用いる場合がある。その精製された最終生成物を塩付加物として保持し、より安定した生成物を作り出すことができる。塩基の適用により、その塩付加物を後に除去することができる。結晶化は、蒸留でのように熱を印加しないために有利であり、熱的に敏感な生成物とのより少ない分解を可能にすることができる。
【0125】
実施形態に係る、図1の体系1の段階Fの合成の方法からの収率を、広い範囲内で変化させることができる。好ましくはその範囲が恐らく50%より大きく、最も好ましくはその範囲が恐らく約76%より大きく、特に好ましくはその範囲が恐らく87%より大きいだろう。
【0126】
本発明の実施形態に係る合成の方法により、その最終生成物を、米国特許出願第2006/0280765号に記載されている通りの、昆虫を捕獲する方法、害虫を誘引するための方法、交尾を撹乱する方法において用い、かつ、同一物に対するアンドウI型およびII型の部類からの他のフェロモンと混ぜることが可能になる。
【0127】
本発明の実施形態に係る合成の方法は、本明細書に記載されている通りの全ての必要な試薬を含み得る合成キット、本明細書に記載されている通りの希釈剤、本明細書に記載されている通りの全ての中間体および出発物質、および本明細書に記載されている通りの反応段階を実行するための任意の必要な装置を見込む。
【0128】
本発明を実行するための特定の実施形態の下記の例は、例解目的のためにのみ提供され、本発明の範囲を限定することを決して目的としていない。
【実施例】
【0129】
本実施例の手順
下記の実施例の化合物の構造および純度を、陽子磁気共鳴分光法(H NMR)およびガスクロマトグラフィー(GC)により確認した。
【0130】
300メガヘルツの、300メガヘルツ(MHz)の磁界強度で動作するヴァリアン・マーキュリー・システム(Varian Mercury System)の分光器を用いて、陽子磁気共鳴(H NMR)スペクトルを決定した。内部テトラメチルシラン標準からの百万分率(ppm)の低磁場で、化学シフトを報告する。代替的には、H NMRスペクトルを残留陽子性溶媒信号:CHCl=7.26ppmに対して言及した。ピークの多重度を以下のように指定する:s=一重項、d=二重項、dd=複数二重項の二重項、t=三重項、q=四重項、qn=五重項、br=広幅共鳴、m=多重項。結合定数をヘルツで与える。SP(商標)−2380の30m×0.52mm×0.20μmのカラム(SP)、またはHP−Ultra2の25m×0.20mm×0.33μmのカラム(HP)を装着した、5890シリーズII・ヒューレット・パッカード・システム(5890 Series II Hewlett Packard System)上で、GCクロマトグラフィーを実行した。他に明示されない限り、10℃の勾配は40℃で始まり、2分にわたって保持され、その勾配を25分にわたって動かし、その温度を最大で250℃に2.0分にわたって至らせる。含水率をカール・フィッシャー(KF)装置を利用して試算した。保持時間(Rt)を分で与える。他に言及されない限り、窒素の僅かな陽圧の下で隔壁封止フラスコ内にて全ての反応を実行した。全ての商用試薬を、そのそれぞれの供給者(Su)から受け取ったままで用いた。下記の略語を本明細書で用いる:DEANB(ボラン−N,N−ジエチルアニリン錯体)、NaBr(臭化ナトリウム)、NaOAc(酢酸ナトリウム)、NaOCl(次亜塩素酸ナトリウム)、NaHCO(重炭酸ナトリウム)、NaHSO(重亜硫酸ナトリウム)、NaI(ヨウ化ナトリウム)、KOH(水酸化カリウム)、Br(臭素)、N(窒素)、MTBE(メチル−tert−ブチルエーテル)、HONH・HCl(塩酸ヒドロキシルアミン)、CuCl(塩化銅(I))、HSO(硫酸)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、MeOH(メタノール)、THF(テトラヒドロフラン)、EtOAc(酢酸エチル)、min.またはmin(分)、h(時間)。
【0131】
実施例1
実施例1の一般的な合成体系に関しては図7を参照されたい。
【0132】
実施例1:段階A
【化31】

O(40ml、蛇口)およびEtOAc(120ml、ACS試薬、ファームコ/AAPER(Pharmco/AAPER))中の10−クロロデカノール1(20.0g、103.77mMol、Su:ラヴィアーナ(Laviana)(品番:T−1094001))、NaBr(8.33g、80.94mMol、PA試薬、Su:アクロス(Acros))、NaOAc・3HO(21.18g、155.66mMol、ACS試薬、Su:アルドリッチ(Aldrich))、および2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシ(TEMPO)(162mg、1.04mMol(純度98%)、Su:アクロス(Acros))の溶液に、一滴ずつNaOCl(100ml、115.19mMol、7.11%w/v溶液、Su:アルドリッチ(Aldrich))を加えると同時に、10℃未満の内部温度と機械的撹拌を維持した。NaOClの濃度を滴定により決定した。その反応進行をGCにより監視し、その出発アルコールのうち3A%未満が残っている場合に完結したと見なした。5℃での2時間の撹拌の後に、水(60ml、HO、蛇口)をその反応混合物に投入してその反応を急冷し、必要に応じて含水NaHSO(〜1.0ml、2.0M)を用いて残りのNaOClを破壊した。残りのNaOClをKI−デンプン試験紙(Su:フィッシャー・サイエンティフィック(Fisher Scientific))で検査されたい。相分離の後に、水相をEtOAc(50ml)で抽出した。その混合した有機層をHO(120ml)で洗浄した。その結果として生じた有機相を減圧下(坩堝温度:〜35℃)で〜50mlの体積に濃縮した。未使用のEtOAc(100ml)をそれに投入し、その後、減圧下(坩堝温度:〜35℃)で50mlの最終体積に濃縮した。この結果として生じた溶液の含水率をカール・フィッシャー法により検査し(必要に応じて繰り返す、KF:0.4%未満)、淡黄色の溶液をさらなる精製なしに用いた。GC:カラムSP、出発状態:50℃(1.0分)、その後10℃/分の速度で250℃に上昇させ、1分にわたって250℃に保持される、Rt=10−クロロデカノール1に関して11.8分、Rt=10−クロロデカナール2に関して10.3分。1H NMR (CDCl3, 300 MHz): d 9.77 (t, J = 1.7 Hz, 1H), 3.53 (t, J = 6.7 Hz, 2H), 2.43 (dt, J = 7.5 Hz, J = 1.7 Hz, 2H), 1.77 (qn,
J = 7.5 Hz, 2 Hz), 1.63 (m, J = 7.2 Hz, 2H), 1.42 (m, J = 7.2 Hz, 2H), 1.30 (br s, 8H)。
【0133】
実施例1:段階B
【化32】

大気温度でEtOAc(50ml、103.77mMol、Su:段階Aから)中の10−クロロデカナール2の溶液に、Nの厚い層の下で、p−トルエンスルホン酸一水和物(200mg、1.04mMol(99%)、Su:アクロス(Acros))およびオルト蟻酸トリエチル(19ml、114.15mMol(98%)、Su:アクロス(Acros))を投入した。その反応をGCにより化合物2の消費に対して監視した(化合物2:GCで2.0面積%未満)。大気温度での3時間の撹拌の後に、HO(50ml)および飽和NaHCO(水溶液)(50ml)の溶液をその反応混合物に注ぎ込み、その反応を急冷した。相分離の後に、その水相をEtOAc(50ml)で抽出した。その混合した有機層をHO(50ml)および塩水(50ml)で洗浄した。その結果として生じた有機相を減圧下(坩堝温度:〜35℃)で50mlの体積に濃縮した。未使用のEtOAc(100ml)をそれに投入し、その後、減圧下(坩堝温度:〜35℃)で50mlの最終体積に濃縮した。その含水率をカール・フィッシャー法により検査した(必要に応じて繰り返す、KF:0.4%未満)。その結果として生じた溶液を、恒量(〜28g)を生成するまで減圧下(坩堝温度:〜35℃)で濃縮した。結果として生じた淡黄色の油をさらなる精製なしに用いた。GC:カラムSP、出発状態:50℃(1.0分)、その後10℃/分の速度で250℃に上昇させ、1分にわたって250℃に保持される、Rt:10−クロロデカナール2に関して10.3分、10−クロロ−1,1−ジエトキシデカン3に関して9.9分。1H NMR (CDCl3, 300 MHz): d 4.48 (t, J = 5.93, 1H), 3.6 (m, J = 7.03 Hz, 2H), 3.53 (t, J = 6.8
Hz, 2H), 3.5 (q, J = 7.03 Hz, 2H), 1.76 (qn, J = 6.85
Hz, 2H), 1.6 (m, J = 6.85 Hz, 2H), 1.4 (m, J = 6.85 Hz, 2H), 1.29 (br s, 10H), 1.20 (t, J = 7.03 Hz, 6H)。
【0134】
実施例1:段階C
【化33】

DMSO(100ml、無水(99.7%)、Su:アクロス(Acros))中のリチウムアセチリド、エチレンジアミン錯体(13.8g、134.90mMol(90%)、Su:アルドリッチ(Aldrich))、およびNaI(0.78g、5.19mMol(99%超過)、Su:アクロス(Acros))の薄黒い溶液に、10−クロロ−1,1−ジエトキシデカン3(27.48g、103.77mMol、Su:段階Bから)を投入すると同時に、Nの厚い層の下で、反応温度を約30℃に維持した。その添加漏斗をDMSO(15ml、無水、Su:アクロス(Acros))で洗い流した。その溶液をGCにより化合物3の消費に対して監視した(化合物3:GCで2.0面積%未満)。30℃での4時間の撹拌の後に、HO(200ml)をその反応混合物に投入し、その反応を急冷した。その水層をヘプタン(2×200ml)で抽出した。相分離の後に、その有機層をCelite(登録商標)521の栓(15g、Su:シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich))を通じて一つずつ濾過した。その混合した濾液をHO(100ml)および塩水(50ml)の溶液で洗浄した。ヘプタンを添加および除去することによって(KF=〜0.2%となるまで必要に応じて繰り返す)、この有機溶液中の水を共沸蒸留により通常の状態で除去した。その結果として生じた溶液を減圧下(坩堝温度:〜35℃)で濃縮し、24.6gの12,12−ジエトキシドデス−1−イン4を琥珀色の液体(段階AからCにわたって、Cの後で、93%の収率)として生じた。この物質をさらなる精製なしに用いた。GC:カラムSP、Rt:10−クロロ−1,1−ジエトキシデカン3に関して12.2分、12,12−ジエトキシドデス−1−イン4(5面積%未満)に関して11.1分。1H NMR (CDCl3, 400 MHz): d 4.48 (t, J = 5.60, 1H), 3.6 (m, J = 7.07 Hz, 2H), 3.5 (m, J = 7.07
Hz, 2H), 2.18 (dt, J = 7.10, 2.80 Hz, 2H), 1.94 (t, J
= 2.60 Hz, 1H), 1.6 (m, 2H), 1.52 (qn, J = 7.2 Hz,
2H), 1.4 (m, 2H), 1.29 (br s, 10H), 1.20 (t, J = 7.00
Hz, 6H)。
【0135】
実施例1:段階D
【化34】

O(400ml、蛇口)中のKOH(88.0g、1.57Mole、薄片、90%超過、Su:アルドリッチ(Aldrich))の溶液に、大気温度でBr(17.5ml、340mMole、試薬等級、Su:アルドリッチ(Aldrich))を投入した。気体分散用のフリット管を有するドレッシェル瓶(洗浄瓶)中のこの臭化/臭素酸カリウムの溶液を通じて、この水溶液の淡黄色が無色に変化するまで、大気温度で1−ブチン5a(5.4g、99.83mMol、98%超過、Su:アルドリッチ(Aldrich))を泡立てた。その結果として生じた水溶液をMTBE(200ml、ACS試薬、Su:ファームコ/AAPER(Pharmco/AAPER))で抽出した。水層および有機層の分離の後に、その有機溶媒(〜175ml)を通常の蒸留により除去し(蒸留物上端の温度:最大で60℃、坩堝温度:〜85℃)、MTBE中の1−ブロモブチン5bの淡黄色の溶液を生じた。GC:カラムHP、均一濃度で35℃(10分)、Rt:4.92分。1H NMR (CDCl3, 300 MHz): d 2.22 (q, J = 7.50, 2H), 1.15 (t, J = 7.50 Hz, 3H)。
【0136】
実施例1:段階E
【化35】

0℃でMeOH(80ml、試薬ACS、Su:ファームコ/AAPER(Pharmco/AAPER))中の塩酸ヒドロキシルアミン(7.6g、117.8mMol、99%、Su:アルドリッチ(Aldrich))および塩化銅(I)(0.39g、3.93mMol、97%、Su:アルドリッチ(Aldrich))の懸濁液に、Nの厚い層の下で、n−プロピルアミン(20ml、243.27mMol、98%、Su:アルドリッチ(Aldrich))を投入した。15分の撹拌の後に、MeOH(10ml)中の12,12−ジエトキシドデス−1−イン4(10g、39.3mMol、Su:段階Cから)の溶液を投入し、その添加漏斗をMeOH(5ml)で洗い流した。15分の撹拌の後に、その結果として生じた透明な溶液を−20℃に冷却した。MTBE(10.7ml、4.4M、47.2mMol、Su:段階Dから)中の1−ブロモブチン5bの溶液を3時間以内で一滴ずつ添加すると同時に、温度を−20℃未満に維持した。その反応を12,12−ジエトキシドデス−1−イン4(GCで3.0面積%未満)の消費に対して監視した。2時間後に、その結果として生じた反応混合物をヘプタン(3×200ml)で直接的に抽出した。その抽出したヘプタン層をシリカゲルの当て物(10g、重力等級、Su:シリサイクル(Silicycle))に通過させた。溶媒を減圧下で除去してジイン6を濃縮した(10.5g、87%の収率、GCで97.8%の面積%)。この物質をさらなる精製なしに用いた。GC:カラムSP、Rt:12,12−ジエトキシドデス−1−イン4(3面積%未満)に関して11.1、Rt:16,16−ジエトキシヘキサデカ−3,5−ジイン6に関して16.8。1H NMR (CDCl3, 300 MHz): d 4.48 (t, J = 5.85, 1H), 3.6 (m, J = 7.10 Hz, 2H), 3.5 (m, J = 7.10
Hz, 2H), 2.26 (m, J = 7.50 Hz, 2H), 1.6 (m, 2H), 1.5 (m, 2H), 1.4~1.25 (br , 12H), 1.20 (t, J = 7.05 Hz, 6H), 1.15 (t, J = 7.50 Hz,
3H)。
【0137】
実施例1:段階F
【化36】

THF(20ml{+/−0.2ml}、蒸留済み、Su:ファームコ/AAPER(Pharmco/AAPER))中のシクロヘキセン(10.6ml、104.84mMol、99%、Su:ジェイスター・リサーチ(J−Star Research))の溶液に、〜5℃にてNの厚い層の下でDEANB(9.1ml、51.39mMol、Su:アルドリッチ(Aldrich))を添加した。2時間の撹拌の後に、16,16−ジエトキシヘキサデカ−3,5−ジイン6(6.3g、20.56mMol、Su:段階Eから)を投入すると同時に、温度を〜5℃に維持した。溶液を〜2.5時間にわたって〜5℃で透明になるまで監視した。溶液を4時間にわたって大気温度で撹拌した。その溶液をGCにより化合物6の消費に対して監視した(化合物6:GCで2.0面積%未満)。氷酢酸(15.0ml、261mMol、ACS等級、Su:ファームコ/AAPER(Pharmco/AAPER))を投入した。その溶液を大気温度での4時間の撹拌の後に無色になるまで監視した。含水硫酸(100ml、4.0M、Su:アルドリッチ(Aldrich))を投入し、その結果として生じた溶液を60℃で2時間にわたって撹拌した。大気温度に冷却した後に、その溶液をヘプタン(2×100ml)で抽出した。その混合した有機層をHO(100ml)および飽和NaHCO(水溶液)(100ml、Su:ジェイスター・リサーチ(J−Star Research))でそれぞれ洗浄した。未精製の生成物(9.5g)を溶媒除去の後に得た。この粗生成物をヘプタン(100ml)中に再溶解させ、HO(100ml)で撹拌した。4時間の撹拌および相分離の後に、その有機層をシリカゲルの当て物(6.3g、重力等級、Su:シリサイクル(Silicycle))を通じて濾過し、濃縮して未精製の化合物7を生じた(5.4g、83%の収率)。真空蒸留により、129〜130℃/0.65mmHgで化合物7が生じた(1.55g、この段階に関して32%の収率)。GC:カラムSP、Rt:(11Z,13Z)−11,13−ヘキサデカジエン−1−アール7に関して14.3分、図4で示されている16,16−ジエトキシヘキサデカ−3,5−ジイン6(3面積%未満)に関して16.8分。1H NMR (CDCl3, 300 MHz): d 9.77 (t, J = 1.95 Hz, 1H), 6.23 (m, 2H), 5.44 (m, 2H), 2.42 (dt, J = 7.27, 1.80 Hz, 2H), 2.18 (m, 4H), 1.63 (m, J = 7.35
Hz, 2H), 1.4~1.25 (broad, 12H), 1.00 (t, J = 7.50 Hz, 3H)。
【0138】
上記合成により得られた化合物7は、図5で示されているGCおよびH NMRにより、標準のネーブルオレンジ虫のフェロモンの(Z,Z)−11,13−ヘキサデカジエン−1−アール(CAS番号:71317−73−2)と同一であると分かった。
【0139】
本発明は、様々な実施形態、好適な実施形態、特定の実施形態、特定の実施例、およびそれらの応用に関して記載されてきたものの、先述の詳細な記載により限定されるものとしてではなく、添付の請求項およびそれらの均等物により定義されるものとして本発明を理解されたい。当業者は、請求項で明記されている本発明の範囲から逸脱することなく、多数の修正および変化をそれらに対して行うことができるだろう。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(Z,Z)−11,13−ヘキサデカジエン−1−アールを合成するための方法であって、下記の段階:
臭化ナトリウム、酢酸ナトリウム、および水と酢酸エチル中の次亜塩素酸ナトリウムの存在下で、出発物質の10−クロロデカン−1−オールを2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシと反応させ、10−クロロデカナールを形成することと、
酢酸エチル中のパラトルエンスルホン酸の存在下で、前記10−クロロデカナールをオルト蟻酸トリエチルと反応させ、10−クロロ−1,1−ジエトキシデカンを形成することと、
ジエチルエーテルの存在下で、2,4−ヘキサジインをナトリウムアミドと随意に反応させ、1,3−ヘキサジインを形成することと、
ナトリウムアミドおよびジエチルエーテルの存在下で、1,3−ヘキサジインを前記10−クロロ−1,1−ジエトキシデカンと反応させ、16,16−ジエトキシヘキサデカ−3,5−ジインを形成することと、
前記16,16−ジエトキシヘキサデカ−3,5−ジインを、シクロヘキセンとTHF中のボラン−N,N−ジエチルアニリン錯体、酢酸、および、硫酸、テトラフルオロホウ酸銅(II)、およびホウフッ化ナトリウムから成る群から選択される試薬と反応させ、前記(Z,Z)−11,13−ヘキサデカジエン−1−アールを形成することと、
から成る、方法。
【請求項2】
化学式7のR−R−R−Y’(7)の性誘引フェロモンを合成するための方法であって、
化学式Y’−R−X(2)の化合物を段階Aにおいて生成することであって、前記段階Aが化学式Y−R−X(1)の化合物に対する酸化反応を含むことと、
化学式(3)、
【化1】

の化合物を段階Bにおいて生成することであって、前記段階Bが前記(2)に対するアルキル化反応を含むことと、
化学式R−R−R−Y’(7)の最終化合物を段階Fにおいて生成することであって、前記段階Fが化学式(6)、
【化2】

の初期化合物に対する還元反応および加水分解反応を含むことと、
を含み、式中、
Xはハロゲンであり、
Yは−OHであり、
Y’は=Oであり、
は[−CH−]、またはアルキルであり、
はCH−[CH−、またはアルキルであり、
は[−C≡C−]、またはアルキニルであり、
は[−C≡C−]、またはアルキニルであり、
は−C=C−C=C−、アルケニル、またはRであり、
Wは−O−アルキル、−O−R、または−O−CH−CHであり、
は、
【化3】

という構造により表される幾何的なシス構成であり、
は−CH、またはアルキルであり、
10は≡C(−)、炭素アニオン、または脱陽子付加炭素であり、
Mは金属、ナトリウム、リチウム、カリウム、またはマグネシウムであり、そこで、MおよびR10は共に塩を形成する場合があり、
mは独立して5、6、7、8、9、10、11、または12であり、
nは独立して1、2、または3であり、
pは独立して1または2であり、
qは独立して1または2である、方法。
【請求項3】
前記段階Aの前記酸化反応がTEMPO酸化である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記段階Bの前記アルキル化反応がO−アルキル−C−アルコキシ付加反応である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記段階Fの前記還元反応および前記加水分解反応がアルキン還元およびアセタール加水分解である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
化学式(6)の化合物を段階Hにおいて生成することであって、前記段階Hが(3)を化学式R−R−R10−M(8b)の化合物と反応させることを含むこと、
をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記段階Hが求核付加反応を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
化学式(4)、
【化4】

の化合物を段階Cにおいて生成することであって、前記段階Cが(3)に対するアルキル化反応を含むことと、
化学式(6)の化合物を段階Eにおいて生成することであって、前記段階Eが前記(4)を化学式R−R−X(5b)の化合物と反応させることを含むことと、
をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記段階Cの前記アルキル化反応がアルキニルの脱ハロゲン化反応である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記段階Eが酸化的付加および還元的脱離の循環を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記段階Eがカディオ・ホトキェヴィチ反応を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記(1)がハロ置換アルキルアルコールを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
前記(1)が10−クロロデカン−1−オールを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
前記(2)がハロ置換アルカナールを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項15】
前記(2)が10−クロロデカナールを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項16】
前記(3)がハロ置換ジアルコキシ置換アルキルを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項17】
前記(3)が10−クロロ−1,1−ジエトキシデカンを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項18】
前記(6)がジアルコキシ置換ジイニルを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項19】
前記(6)が16,16−ジエトキシヘキサデカ−3,5−ジインを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項20】
前記(7)が(Z,Z)−11,13−ヘキサデカジエン−1−アールである、請求項2に記載の方法。
【請求項21】
前記(8b)が末端ジイニルを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項22】
前記(8b)が1,3−ヘキサジインを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項23】
前記(8b)が、化学式R−R−R(8a)の化合物から異性化反応を通じて合成される、請求項6に記載の方法。
【請求項24】
前記(8a)が内部ジイニルを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記(8a)が2,4−ヘキサジインである、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記(5b)が1−ブロモブト−1−インを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項27】
前記(5b)が、化学式R−R(5a)の化合物からハロゲン化反応を通じて合成される、請求項8に記載の方法。
【請求項28】
前記(5a)がブト−1−インを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記(4)がジアルコキシ置換アルキニルを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項30】
前記(4)が12,12−ジエトキシドデス−1−インを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項31】
(Z,Z)−11,13−ヘキサデカジエン−1−アールを合成するための方法であって、下記の段階:
臭化ナトリウム、酢酸ナトリウム、および水と酢酸エチル中の次亜塩素酸ナトリウムの存在下で、出発物質の10−クロロデカン−1−オールを2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシと反応させ、10−クロロデカナールを形成することと、
酢酸エチル中のパラ−トルエンスルホン酸の存在下で、前記10−クロロデカナールをオルト蟻酸トリエチルと反応させ、10−クロロ−1,1−ジエトキシデカンを形成することと、
ヨウ化ナトリウムおよびジメチルスルホキシドの存在下で、前記10−クロロ−1,1−ジエトキシデカンをリチウムアセチリド、エチレンジアミン錯体と反応させ、12,12−ジエトキシドデス−1−インを形成することと、
ブト−1−インを水酸化カリウムおよび水中の臭化物と随意に反応させ、1−ブロモブト−1−インを形成することと、
塩酸ヒドロキシルアミン中で、かつn−プロピルアミンメタノール溶液中の塩化銅(I)を伴う前記12,12−ジエトキシドデス−1−インを前記1−ブロモブト−1−インと反応させ、16,16−ジエトキシヘキサデカ−3,5−ジインを形成することと、
前記16,16−ジエトキシヘキサデカ−3,5−ジインを、シクロヘキセンおよびTHF中のボラン−N,N−ジエチルアニリン錯体および酢酸および4M硫酸と反応させ、前記(Z,Z)−11,13−ヘキサデカジエン−1−アールを形成することと、
から成る、方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−506447(P2012−506447A)
【公表日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533307(P2011−533307)
【出願日】平成21年10月21日(2009.10.21)
【国際出願番号】PCT/US2009/061535
【国際公開番号】WO2010/048327
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(511102022)ステラ エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】