説明

合成樹脂物品の圧縮成形装置

【課題】雌型組立体の交換時などの脱着を著しく容易にすること。
【解決手段】合成樹脂物品の圧縮成形装置は、上側型組立体12及び下側型組立体14を含んでいる。下側型組立体14は、雌型組立体80と、雌型組立体80を支持する支持部材75と、雌型組立体80を支持部材75に離脱自在に固着する摩擦係止体90とを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂物品、好適には飲料等を収容するための容器に適用される合成樹脂製容器蓋を圧縮成形する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂物品、例えば飲料等を収容するための容器に適用される合成樹脂製容器蓋の一つの典型例としては、天面壁と、天面壁の周縁から垂下するスカート壁とを備え、スカート壁の内周面には容器の開口部に形成された雄ねじに係合しうる雌ねじが形成されている形態のものを挙げることができる。このような合成樹脂製容器蓋は、一般に圧縮成形により一体成形される。合成樹脂製容器蓋を圧縮成形するための圧縮成形装置の典型例としては、相互に協動する上側型組立体及び下側型組立体と、上側型組立体及び下側型組立体を相互に接近及び離隔するよう相対移動させる型開閉手段と、上側型組立体に配設された弾性手段とを備えている。型開閉手段によって上側型組立体及び下側型組立体が相互に接近させられると両者の間に成形空間が形成され、成形空間に予め供給された合成樹脂素材が成形空間内で圧縮成形せしめられ、合成樹脂製容器蓋が成形される。上記弾性手段は圧縮成形時における成形圧力を規定する。
【0003】
型開閉手段はカム及びカムフォロワの組合せからなり、これらの組合せは、上側型組立体及び下側型組立体の各々に関連して配設されている。上側型組立体は、縦孔を有する静止枠体である円筒状のケースを備えている。ケースの下端には板状のポリウレタンからなる弾性体を介してストリッパが結合されている。弾性体及びストリッパにはケースの縦孔と共通の軸心を有する縦孔がそれぞれ形成されている。ケース、弾性体及びストリッパの縦孔内には、コア組立体が軸線方向に移動自在に挿入されている。コア組立体は、上端にカムフォロワを備えたロッド体と、ロッド体に対し弾性手段を構成する複数個の皿ばねを介して押さえ部材が初期荷重設定ボルトにより結合されている。この初期荷重設定ボルトによって皿ばね全体を所定量たわませておくことにより初期荷重が設定される。押さえ部材には、下端部が雄型を構成する雄型組立体が結合されている。上記の如く構成されたコア組立体は、カム及びカムフォロワの協働によって上記縦孔内を昇降せしめられ、成型時には下降させられてストリッパの下面から所定量下方に突出せしめられる。下側型組立体は、下端にカムフォロワを備えた柱状の支持体と、支持体の上端にねじ結合された雌型組立体とを備えている。雌型組立体の上端部には雌型(キャビティ)が配設されている。
【0004】
上側型組立体及び下側型組立体は、非成型時には、上記型開閉手段によって相互に離隔されているが、成型時には下側型組立体が上側型組立体に対して上側型組立体に向かって上昇させられることにより相互に接近させられ、雌型組立体の上面とストリッパの下面とが圧接される。次に型開閉手段によりコア組立体が下降させられて雄型がストリッパの下面から雌型の内部に突出せしめられることにより、雌型とストリッパの下面の一部と雄型との間に成形空間が形成されると共に予め供給された合成樹脂素材が成形空間内で圧縮成形せしめられ、所定形状の合成樹脂製容器蓋が成形される。合成樹脂製容器蓋の成型時には皿ばねが初期荷重設定位置から更に所定量たわませられ、所定の成型圧力が得られる。成形空間内で合成樹脂製容器蓋が成形され、冷却工程終了後、下側型組立体が型開閉手段によって下降させられて上側型組立体から離隔される。雌型はストリッパの下面から離隔されかつ合成樹脂製容器蓋から離型される。次いでコア組立体が型開閉手段によって上昇せしめられ、雄型がケースの縦孔内でストリッパの下面よりも上方に移動せしめられる。これにより雄型が合成樹脂製容器蓋から無理抜きされて離型される。合成樹脂製容器蓋はストリッパの下面によってストリップされた後、ストリッパの下面から自由落下せしめられる。なお上記上側型組立体及び下側型組立体からなる成型型手段は、回転支持体に周方向に間隔をおいて複数個配設され、回転支持体の回転により各成型型手段が、合成樹脂素材供給域、成型域、冷却域及び成型品排出域を一回転する毎にそれぞれ1個の合成樹脂製容器蓋が成型されるよう構成されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記圧縮成形装置において、下側型組立体の雌型組立体は支持体の上端にねじ結合されている。雌型組立体には一般に冷却水流路が配設されている。冷却水流路の一端及び他端は雌型組立体の一側部に開口し、これらの開口には、冷却水流路に冷却水を供給し排出するためのホースを離脱自在に接続するジョイントが配設されている。これらのジョイントは、雌型組立体が支持体に結合された状態でその周方向の位置が予め規定された所定位置に位置付けられなければならない。しかしながら雌型組立体は支持体にねじ結合されるため、一度の螺合作業によって確実に所定位置に位置付けることは実用上不可能であり、成型型手段毎に2〜3度の位置決め調整作業を遂行する必要がある。このため、最初の組立時はもちろんのこと、雌型組立体の交換時あるいは雌型組立体の清掃時等における脱着には著しく手間がかかり、したがって生産効率が著しく低下せしめられる。
【0006】
本発明の目的は、雌型組立体の交換時あるいは雌型組立体の清掃時の脱着を著しく容易に遂行でき、したがって生産効率を向上させることができる、新規な合成樹脂物品の圧縮成形装置を提供することである。
【0007】
本発明の他の目的は、雌型組立体の位置決めを著しく容易に遂行できる、新規な合成樹脂物品の圧縮成形装置を提供することである。
【0008】
本発明のその他の目的及び特徴は、本発明に従って構成された合成樹脂物品の圧縮成形装置の実施形態について添付図面を参照して詳細に説明する後の記載から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、
相互に協動する上側型組立体及び下側型組立体と、該上側型組立体及び該下側型組立体を相互に接近及び離隔するよう相対移動させる型開閉手段とを含み、該型開閉手段によって該上側型組立体及び該下側型組立体が相互に接近させられると両者の間に成形空間が形成されると共に供給された合成樹脂素材が該成形空間内で圧縮成形せしめられる合成樹脂物品の圧縮成形装置において、
該下側型組立体は、雌型組立体と、該雌型組立体を支持する支持部材と、該雌型組立体を該支持部材に離脱自在に固着する摩擦係止体とを含んでいる、
ことを特徴とする合成樹脂物品の圧縮成形装置、
が提供される。
該支持部材は、被係止孔を有する円筒部と、該円筒部の一端から半径方向外側に延び出すフランジ部とを備え、該摩擦係止体は、係止貫通孔を有する係止スリーブ部と、該係止スリーブ部の一端から半径方向外側に延び出すよう配設された環状フランジ部と、該係止貫通孔の外周を囲むよう形成された環状の密封空間部と、該環状フランジ部の外周面から内部に向かって延びるよう形成されかつ該外周面側に雌ねじ部を有する液体の充填用孔と、該充填用孔と該密封空間部とを接続する連通孔とを備え、該密封空間部、該連通孔及び該充填用孔の一部には非圧縮性液体が該充填用孔を介して充填され、該充填用孔の該雌ねじ部に密封加圧ねじが螺合されることにより該非圧縮性液体が封入され、該雌型組立体は、一端側に配設された雌型と、他端面から突出するよう配設された被支持ロッドとを備え、該摩擦係止体は、該係止スリーブ部が該支持部材の該被係止孔に離脱自在に嵌合されると共に該環状フランジ部が該支持部材の該フランジ部に重合され、該雌型組立体は、該被支持ロッドが該摩擦係止体の該係止貫通孔に離脱自在に嵌合されると共に該他端面が該環状フランジ部に重合され、該摩擦係止体の該密封加圧ねじを締め込むことにより該係止スリーブ部の内周面を該雌型組立体の該被支持ロッドに係止せしめかつ該係止スリーブ部の外周面を該支持部材に係止せしめて該雌型組立体は該摩擦係止体を介して該支持部材に離脱自在に固着される、ことが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に従って構成された合成樹脂物品の圧縮成形装置の好適実施形態を添付図面を参照して更に詳細に説明する。なお図1〜図9において実質上同一部分は同一符号で示してある。本発明に係る圧縮成形装置によって圧縮成形される合成樹脂物品は、それに限られるものではないが、図示の実施形態においては合成樹脂製容器蓋である。
【0011】
図1を参照して、全体を番号2で示す圧縮成形装置は、実質上鉛直に延びる軸4を中心として、図1の反時計方向に所定速度で電動モータでよい駆動源によって回転駆動させられる回転支持体6、合成樹脂素材供給手段7及び成形品搬出手段8を備えている。回転支持体6には、周方向に等間隔をおいて複数個の成形型手段10が装着されている。成形型手段10の各々は、後に詳述する如く、上側型組立体12と下側型組立体14とから構成されており、回転支持体6の回転に付随して円形搬送径路を通して移動させられる間に、型開閉手段によって所要通りに開閉動させられる。
【0012】
成形型手段10が符号Aで示す合成樹脂素材供給域にあるときに、開状態にある成形型手段10内に合成樹脂素材供給手段7から合成樹脂素材が供給される。合成樹脂素材供給手段7は、押出機7a、導管手段7b及びダイヘッド7cを備え、押出機7aから押し出された加熱溶融状態の合成樹脂素材は導管手段7bを通ってダイヘッド7cに供給され、ダイヘッド7cに設けられた図示しない押出開口を通して押し出される。ダイヘッド7cの押出開口に関連せしめて図示しない切断手段が設けられており、押出開口を通して押し出された合成樹脂素材は、切断手段によって切断され、合成樹脂素材供給域Aにおいて成形型手段10に供給される。次いで、成形型手段10が符号Bで示す成形域を通る間に成形型手段10が閉じられ、上記合成樹脂素材が所要形状の成形品である合成樹脂製容器蓋に圧縮成形される。成形型手段10が符号Cで示す冷却域を通過する間は、成形型手段10は閉状態に維持され、圧縮成形された合成樹脂製容器蓋が冷却される。成形型手段10は、冷却域Cの下流端から符号Dで示す成形品排出域に向けて移動する間に開かれ、合成樹脂製容器蓋は成形品排出域Dにおいて排出される。成形品排出域Dには成形品搬出手段8が配設されている。成形品搬出手段8は、成形された合成樹脂製容器蓋の移動経路の半径方向内側に沿って延びるエア噴射パイプ8aと、上記移動径路の下方に配設された搬出シュート8bとを備えている。成形型手段10が成形品排出域Dにおいて開かれると、合成樹脂製容器蓋は、成形型手段10から自由落下させられると同時に成形品搬出手段8のエア噴射パイプ8aから噴射されるエアによって搬出シュート8bに強制移動させられ、搬出シュート8bを通して搬出される。合成樹脂素材供給手段7及び成形品搬出手段8それら自体は周知の構成でよく、したがって詳細な説明は省略する。
【0013】
回転支持体6に装着された成形型手段10の各々は実質上同一の構成を有するので、以下それらのうちの一つの成形型手段10の構成について説明する。図2を参照して、成形型手段10は相互に協動する上側型組立体12及び下側型組立体14を備えている。上側型組立体12は、縦孔16を有する静止枠体である円筒状のケース18を備えている。ケース18は上記回転支持体6に結合されている。ケース18の下端には板状のポリウレタンからなる弾性体20を介してストリッパ22が結合されている。ケース18の下端にはフランジ24が一体に設けられ、他方ストリッパ22の上端にはフランジ26が一体に設けられている。フランジ24とフランジ26との間に弾性体20が介在され、ボルト28によりフランジ24とフランジ26とが弾性体20を介して締結されることにより、ケース18の下端にストリッパ22が結合される。ストリッパ22はボルト28(の非ねじ部)に対し相対移動自在である。弾性体20及びストリッパ22には、それぞれケース18の縦孔16と共通の軸心を有する縦孔20a及び22aが形成されている。
【0014】
ケース18、弾性体20及びストリッパ22の縦孔16、20a及び22a内には、コア組立体30が軸線方向に移動自在に挿入されている。コア組立体30は、上端にカムフォロワであるローラ31及び32を備えたロッド体34と、ロッド体34の下端にボルト36により結合されたキャップ状部材37と、キャップ状部材37の下端にねじ結合された雄型組立体38とを備えている。雄型組立体38の下端部は雄型40を構成している。圧縮成形装置2の上部位置には静止環状カムブロック42が配設されこのカムブロック42に環状カム44及び46が形成されている。ローラ31はカム44にまたローラ32はカム46に、それぞれ係合されている。成形型手段10が回転すると、ローラ31及び32と環状カム44及び46とが協動してコア組立体30を所要のとおりに昇降させる。
【0015】
下側型組立体14は、上端が開放され下端が底部48により規定された縦孔49を有する円筒状のケース50を備えている。ケース50は上記回転支持体6に昇降自在に支持されている。ケース50は下端にカムフォロワであるローラ52及び54を備えている。圧縮成形装置2の下部位置には静止環状カムブロック56が配設され、このカムブロック56に環状カム57及び58が形成されている。ローラ52はカム57にまたローラ54はカム58に、それぞれ係合されている。ケース50の縦孔49は、底部48から上端に向かって順次に内径が大きく形成された三つの縦孔49a、49b及び49cからなる。ケース50の縦孔49内には成形圧力を規定する弾性手段である流体ばねユニット60が離脱自在に収容されている。流体ばねユニット60は、シリンダ62と、シリンダ62内に配設されたピストン64と、シリンダ62とピストン64との間に充填された図示しない圧縮性流体(圧縮力を受けるとその容積が縮小され、圧縮力が解除されると元の容積に復帰する、弾性を有する流体であって、ばねと同様な弾性機能を有する)とから構成されている。図2に示すようにピストン64の一部(ピストンロッド)はシリンダ62の下端から突出している。またシリンダ62の、ピストン64と反対側の端面には、軸線方向に突出する雄ねじ部66が配設されている。流体ばねユニット60の好適例としては、明友エアマチック株式会社が輸入、販売している「リキッドダイスプリング」(商品名)を挙げるとができる。ケース50の縦孔49の底部48には高さ調整用のボルト68が螺合されている。流体ばねユニット60は、ピストン64の端面がケース50の縦孔49の底部48に装着されたボルト68の頭部上に載置されることによって、縦孔49内に収容される。シリンダ62は内径の最も小さな縦孔49a内に軸線方向に移動できるよう嵌合され、雄ねじ部66を含むシリンダ62の上端部は、縦孔49aよりも内径の大きな縦孔49b内に突出するよう位置付けられている。
【0016】
縦孔49cの内径が若干小さく形成された下端部には雌ねじ部70が形成されている。雌ねじ部70の内径は縦孔49bの内径よりも大きく規定され、雌ねじ部70の下端と縦孔49bの上端との間には肩部が形成されている。シリンダ62の雄ねじ部66には筒状部材72が離脱自在に結合されている。筒状部材72は、大径部72aと、小径部72bと、大径部72a及び小径部72b間に形成された肩部とを備えている。筒状部材72には軸線に沿って大径孔及び小径孔が形成され、大径孔は大径部72aの下端に開放され、小径孔は小径部72bの上端に開放されている。大径部72aの下端部、したがって大径孔の下端部には雌ねじ部72cが形成され、小径孔には雌ねじ部72dが形成されている。筒状部材72は、大径部72aの雌ねじ部72cがシリンダ62の雄ねじ部66に螺合されることによりシリンダ62に離脱自在に結合される。筒状部材72の肩部は縦孔49bの上端の肩部から若干上方に突出して位置付けられる。縦孔49cの下端部の雌ねじ部70には、初期荷重設定手段である中空雄ねじ部材74が離脱自在に螺合されている。中空雄ねじ部材74は、外周面に雄ねじが形成され、中心部には軸線方向に延在する貫通孔が形成され、軸線方向の上端部には、縦孔49cの開放上端から工具により螺合及び螺合解除操作ができるような係止溝が形成されている。筒状部材72の小径部72bは中空雄ねじ部材74の貫通孔に相対移動自在に挿入され、筒状部材72の肩部は中空雄ねじ部材74の下端面に当接されて上方への移動が阻止される。中空雄ねじ部材74が雌ねじ部70に所定量ねじ込まれることにより、該肩部を介して筒状部材72が所定量軸線方向下方に押し下げられる。中空雄ねじ部材74は、以上の如くして、流体ばねユニット60のシリンダ62をピストン64に対し所定量強制移動せしめた状態に保持しかつ上方への移動を阻止する。流体ばねユニット60内の圧縮性流体が所定量圧縮され、初期荷重が設定される。
【0017】
筒状部材72の小径部72bの上端には支持部材75が離脱自在に結合されている。支持部材75は、被係止孔76を有する円筒部77と、円筒部77の一端から半径方向外側に延び出すフランジ部78とを備えている。被係止孔76の一端はフランジ部78の一端に開放され、被係止孔76の他端は円筒部77の他端部に形成された底部により規定されている。被係止孔76の底部の中心部には貫通孔が形成されている。支持部材75は円筒部77がケース50の縦孔49c内に離脱自在に挿入され、円筒部77の下端が筒状部材72の小径部72bの上端に載置された状態で、ボルト79により離脱自在に結合される。支持部材75は、そのフランジ部78の下面とケース50の上端面との間に所定の隙間をおいて位置付けられる。筒状部材72、支持部材75及びボルト79は、流体ばねユニット60に結合される支持組付体を構成する。下側型組立体14は、雌型組立体80及び摩擦係止体90を備え、雌型組立体80は、後に詳述する如く、摩擦係止体90を介して支持部材75に離脱自在に結合されている。雌型組立体80には、雌型(キャビティ)82及び冷却水流路84が備えられている。雌型82は雌型組立体80の上端部に配設され、冷却水流路84は雌型82の周囲を囲むように配設されている。冷却水流路84の一端及び他端は雌型組立体80の一側部に開口し、これらの開口には、冷却水流路84に冷却水を供給し排出するための図示しないホースを離脱自在に接続するジョイント86及び88が配設されている。なお、成形型手段10が回転駆動させられると、ローラ52及び54と環状カム57及び58とが協動してケース50及び雌型組立体80を含む下側型組立体14を所要のとおりに昇降させる。上側型組立体12におけるローラ31及び32と環状カム44及び46、下側型組立体14におけるローラ52及び54と環状カム57及び58は型開閉手段を構成する。
【0018】
図6及び図7を参照して、上記摩擦係止体90は、係止貫通孔91を有する係止スリーブ部92と、係止スリーブ部92の一端から半径方向外側に延び出すよう配設された環状フランジ部93とを備えている。係止スリーブ部92及び環状フランジ部93の内部には、環状の密封空間部94が係止貫通孔91の外周を囲むように形成されている。環状フランジ部93には、液体の充填用孔95が、環状フランジ部93の外周面から内部に向かって延びるよう形成されている。充填用孔95の開放端側には雌ねじ部96が形成されている。環状フランジ部93の内部には、充填用孔95と密封空間部94とを接続する連通孔97が形成されている。密封空間部94、連通孔97及び充填用孔95の一部には圧力媒体である非圧縮性液体(例えばブレーキ用オイルの如く、圧縮力を受けても容積が実質上変わらず一定に維持される液体)が充填用孔95を介して充填され、充填用孔95の雌ねじ部96に密封加圧ねじ98が螺合されることにより非圧縮性液体が封入される。番号99は、密封加圧ねじ98の離脱を防止するための止めねじであって、環状フランジ部93の外周面の、充填用孔95の開放端側に形成された座部93aに離脱自在に螺合されている。
【0019】
図6及び図7と共に図2をも参照して、上記雌型組立体80には被支持ロッド89がその平坦に形成された下端面から突出するよう配設されている。摩擦係止体90は、その係止スリーブ部92が支持部材75の被係止孔76に離脱自在に嵌合されると共に環状フランジ部93が支持部材75のフランジ部78に重合されることにより、支持部材75に仮装着される。雌型組立体80は、その被支持ロッド89が摩擦係止体90の係止貫通孔91に離脱自在に嵌合されると共に雌型組立体80の下端面が摩擦係止体90の環状フランジ部93に重合されることにより摩擦係止体90に仮装着される。次いで摩擦係止体90の密封加圧ねじ98を締め込むことにより封入された非圧縮性液体を加圧する。これにより、摩擦係止体90の係止スリーブ部92の外周面が拡径されかつ係止スリーブ部92の内周面である係止貫通孔91の内周面が縮径されるので、摩擦係止体90は支持部材75にしっかりと摩擦係止(摩擦結合)され、雌型組立体80の被支持ロッド89は摩擦係止体90にしっかりと摩擦係止される。その結果、雌型組立体80は摩擦係止体90を介して支持部材75に離脱自在に結合される。摩擦係止体90の好適例としては、三木プーリ株式会社から製造販売されているフリクシヨンジョイント─ETPブッシュ・ポジロック(商品名)、形式名「ETP」を挙げることができる。上記の如く構成された上側型組立体12及び下側型組立体14は実質上共通の鉛直軸線上に位置付けられる。
【0020】
上述した如き下側型組立体14においては、合成樹脂素材の成形圧力を規定するための弾性手段として流体ばねユニット60が使用されているので、中空雄ねじ部材74を締め込むことにより容易かつ確実に(実質上誤差無く)初期荷重を設定することができる。したがって後述する成形時において流体ばねユニット60が所定量圧縮されることにより得られる成形圧力は実質上所定値にせしめられ、しかも長期にわたって所定の成形圧力が安定して確保される。その結果、装置の停止回数を低減することができ、したがって生産効率を向上させることができる。また従来の如く、所定の成型圧力を確保するためのシム調整作業及び皿ばねの交換作業を必要としないので、この面でも生産効率を向上させることができる。更には、流体ばねユニット60は筒状部材72を組み付けた状態でケース50の縦孔49内に挿入するだけでセットできるので、その装着作業及び取出作業は著しく容易である。したがってその交換作業が著しく容易となる。上記実施形態において、上記流体ばねユニット60はこれを下側型組立体14に配設したが、これに代えて上側型組立体12に配設する実施形態もあり、実質上同様な作用効果が得られる。上記流体ばねユニット60の圧縮性流体としては、比較的高い成型圧力を要する場合には液体が好適であり、比較的低い成型圧力の場合にはガス(例えば窒素ガス)が好適である。
【0021】
上述した如き下側型組立体14においてはまた、雌型組立体80が支持組付体の上端部を構成する支持部材75に摩擦係止体90を介して離脱自在に固着されるよう構成されているので、実質上ワンタッチで組み付けることが可能となった。その結果、雌型組立体80の交換時あるいは雌型組立体80の清掃時の脱着を著しく容易に遂行でき、したがって生産効率を向上させることができる。また従来の如くねじ結合する必要がなくなったので、すなわち雌型組立体80を回転させないで摩擦係止体90に対し軸線方向に挿入するのみで装着できるので、雌型組立体80の周方向の位置決めを著しく容易に遂行できる。したがってジョイント86及び88の位置を所定の位置に容易かつ正確に位置付けることができ、実用上きわめて有用である。
【0022】
次に図1〜図5を参照して、圧縮成形装置2の圧縮成型工程の概要を更に具体的に説明する。なお図3〜図5は、理解を容易にするため、各部材の断面のハッチングを省略して示している。この実施形態において、回転支持体6の回転駆動により成形型手段10が一回転したとき、先に述べた型開閉手段によって、上側型組立体12においては、ケース18及びケース18に結合されたストリッパ22は昇降させられずにコア組立体30のみが昇降させられ、下側型組立体14においては全体が昇降させられるよう構成されている。成形型手段10が合成樹脂素材供給域Aに移動させられると、上側型組立体12のコア組立体30は、上昇させられて所定の最上部に位置付けられ、下端部の雄型40はストリッパ22の下面よりも上方に位置付けられる。下側型組立体14は、下降させられて所定の最下部に位置付けられる。上側型組立体12と下側型組立体14とは最大限に離隔される。そして下側型組立体14の雌型82内には、合成樹脂素材供給手段7から合成樹脂素材100が供給される(図3−A参照)。次いで成形型手段10が成型域Bを通る間に、下側型組立体14が上昇させられてその雌型組立体80の上面が上側型組立体12のストリッパ22の下面に圧接させられる(いわゆる型締めが遂行される)。ストリッパ22側の弾性体20が所定量たわまされ、ストリッパ22のフランジ26はボルト28に沿って所定量上昇させられる(フランジ26の下面とボルト28の頭部との間には所定量の隙間が形成される)。他方、下側型組立体14の流体ばねユニット60も所定量圧縮させられ、支持部材75のフランジ部78の下面とケース50の上端面との間の隙間が初期設定隙間よりも所定量縮小される(図3−B参照)。
【0023】
成型域Bにおいては更に、コア組立体30が所定の最下部まで下降させられ、雌型82、ストリッパ22の下面の一部及び雄型40との間に成型空間が形成され、合成樹脂素材100が圧縮されて合成樹脂製容器蓋200が形成される(図4−A参照)。次いで成形型手段10が冷却域Cを通過する間は、コア組立体30と下側型組立体14との間に相対移動はなく、圧縮成型状態が保持され、その間に圧縮成型された合成樹脂製容器蓋200の冷却が遂行される。成形型手段10が冷却域Cの下流端から成形品排出域Dに向けて移動させられる間に、下側型組立体14が下降させられ、雌型82が合成樹脂製容器蓋200から離型させられ、合成樹脂製容器蓋200は雄型40に保持された状態にある(図4−B参照)。成形型手段10が成形品排出域Dに移動させられると、下側型組立体14は所定の最下部まで下降させられ、他方、コア組立体30は所定の最上部まで上昇させられ、雄型40がストリッパ22の下面よりも上方に位置付けられる。これにより雄型40が合成樹脂製容器蓋200から無理抜きされて離型されると共に合成樹脂製容器蓋200はストリッパ22によってストリップされ、自由落下せしめられると共にエアパイプ8aから噴射されるエアによって搬出シュート8bに強制移動させられ、搬出が完了する。以上の圧縮成型工程(サイクル)が各成形型手段10毎に繰り返し遂行され、合成樹脂製容器蓋200が連続して圧縮成型される。
【0024】
次に図8及び図9を参照して、本発明の他の実施形態であるストリッパ22について説明する。ストリッパ22には周方向に間隔をおいて少なくとも2個(実施形態も2個)のノックアウト300が配設されている。ノックアウト300の各々は、各々の下面302がストリッパ22の下面22bから所定量突出せしめられる作用位置(図9に示されている位置)と、各々の下面302がストリッパ22の下面22bと整合する非作用位置(図示せず)との間を移動自在に配設されると共にストリッパ22との間に配設された2個のばね部材304(図9にはそのうちの1個のみが示されている)によって作用位置に位置付けられるよう常時付勢されている。先に述べた型開閉手段によって上側型組立体12及び下側型組立体14が相互に接近させられて雌型組立体80の上面とストリッパ22の下面22bとが圧接されると、ノックアウト300の各々は対応するばね部材304に抗して作用位置から移動せしめられて非作用位置に位置付けられるよう構成されている。
【0025】
更に具体的に説明する。ストリッパ22は上記縦孔22a及び下面22bを含む円筒部22cを備えている。円筒部22cの、軸線を挟んだ対称位置には、それぞれ所定の周方向幅をもって下面22bから軸線方向に延びた所定の深さ位置に存在する底面22dを有する一対の取付溝22fが形成されている。底面22dの各々は軸線に直交する実質上同一平面上に位置付けられている。ストリッパ22には更に、取付溝22fの各々の底面22dから軸線方向に延びる大径孔22gと、大径孔22gの各々の底面から軸線方向に延びる小径孔22hとが形成されている。円筒部22cの上記対称位置には、軸線方向に長い長孔22iが軸線に直交しかつ一端が円筒部22cの外周面に開口し他端が縦孔22aの内周面に開口するよう形成されている。ノックアウト300の各々は、本体部306、ロッド部308及びストッパピン310を備えている。ノックアウト300の各々の本体部306は、対応する取付溝22fに対し軸線方向に移動自在にかつ離脱自在に嵌合されると共にストリッパ22の縦孔22aの内周面の一部及びストリッパ22の下面22bの一部を備えている。ノックアウト300の各々のロッド部308は、本体部306から軸線方向に突出しかつ対応する大径孔22gに対し軸線方向に移動自在にかつ離脱自在に嵌合される。ノックアウト300の各々のストッパピン310は、ロッド部308に対し、ロッド部308の軸線に直交しかつ両端部がロッド部308の外周面から突出するよう係止されると共に両端部が対応する長孔22iに移動自在に嵌合される。ノックアウト300の各々は、本体部306が対応する取付溝22fに、ロッド部308が対応する大径孔22gに、ストッパピン310の両端部が対応する長孔22iに、それぞれ嵌合されることによりストリッパ22に装着される。ストリッパ22の小径孔22hの各々には上記ばね部材304が挿入されている。ばね部材304の各々は、対応するノックアウト300のロッド部308に作用してノックアウト300を常時付勢し、ノックアウト300の各々の上記作用位置は、ストッパピン310の各々が対応する長孔22iの一端(図9の下端)に当接することにより規定されるよう構成されている。
【0026】
図1をも参照して、上記した如く成形型手段10が成形品排出域Dに移動させられると、コア組立体30は所定の最上部まで上昇させられ、雄型40がストリッパ22の下面よりも上方に位置付けられる。これにより雄型40が合成樹脂製容器蓋200から無理抜きされて離型されると共に合成樹脂製容器蓋200はストリッパ22によってストリップされ、搬出シュート8bに自由落下せしめられて搬出が完了する。この場合、従来においては、コア組立体30と合成樹脂製容器蓋200との間に真空が生成されると、合成樹脂製容器蓋200がストリッパ22の下面22bに吸着されて自由落下しない場合が生ずる。しかしながら本発明においては、ストリッパ22には、2個のノックアウト300が上記の如く配設されているので、例え上記の如く真空が生成されても、ノックアウト300の各々がばね部材304の各々によってストリッパ22の下面22bから下方に突出する作用位置に強制移動させられるので、合成樹脂製容器蓋200は、ストリッパ22の下面22bに吸着されることはなく、強制的に落下せしめられる。その結果、成型された合成樹脂製容器蓋200をストリッパ22の下面22bから円滑かつ確実に落下させることができる。合成樹脂製容器蓋200をストリッパ22の下面22bから円滑かつ確実に落下させることができることによって、成型品排出域Dに設けられている成型品排出のための図示しないガイドに衝突して落下せしめられるとが回避され、成型された合成樹脂物品である合成樹脂製容器蓋200の損傷及び変形を防止することができる。したがって、不良品の発生を低減することができる。
【0027】
以上、本発明を実施形態に基づいて添付図面を参照しながら詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく、更に他の種々の変形あるいは修正が可能である。例えば流体ばねユニット60をケース50内に、上記実施形態に対し上下を逆向きに収容する他の実施形態もある。その場合、シリンダ62の下端がボルト68上に載置され、ピストン64に雄ねじ部が形成される構成となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に従って構成された合成樹脂物品の圧縮成形装置の実施形態を示す簡略平面図。
【図2】図1に示す圧縮成形装置に備えられている上側型組立体及び下側型組立体の縦断面図。
【図3】図2に示す上側型組立体及び下側型組立体の離隔状態と接近状態(型締め状態)とを部分的に示す縦断面図。
【図4】図2に示す上側型組立体及び下側型組立体の成形状態と離隔状態(下側型組立体の離型状態)を部分的に示す縦断面図。
【図5】図2に示す上側型組立体及び下側型組立体の離隔状態であってコア組立体が上昇された状態(合成樹脂製容器蓋の抜き状態)を部分的に示す縦断面図。
【図6】図2に示す下側型組立体に備えられている摩擦係止体の正面図。
【図7】図6に示す摩擦係止体を左方から見た図。
【図8】本発明の他の実施形態であるストリッパの下面図。
【図9】図8のA−A矢視断面図。
【符号の説明】
【0029】
2 圧縮成形装置
10 成形型手段
12 上側型組立体
14 下側型組立体
18 ケース
20 弾性体
22 ストリッパ
28 ボルト
30 コア組立体
38 雄型組立体
40 雄型
49 縦孔
50 ケース
60 流体ばねユニット
74 中空雄ねじ部材(初期荷重設定手段)
75 支持部材
80 雌型組立体
82 雌型
90 摩擦係止体
100 合成樹脂素材
200 合成樹脂製容器蓋
300 ノックアウト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に協動する上側型組立体及び下側型組立体と、該上側型組立体及び該下側型組立体を相互に接近及び離隔するよう相対移動させる型開閉手段とを含み、該型開閉手段によって該上側型組立体及び該下側型組立体が相互に接近させられると両者の間に成形空間が形成されると共に供給された合成樹脂素材が該成形空間内で圧縮成形せしめられる合成樹脂物品の圧縮成形装置において、
該下側型組立体は、雌型組立体と、該雌型組立体を支持する支持部材と、該雌型組立体を該支持部材に離脱自在に固着する摩擦係止体とを含んでいる、
ことを特徴とする合成樹脂物品の圧縮成形装置。
【請求項2】
該支持部材は、被係止孔を有する円筒部と、該円筒部の一端から半径方向外側に延び出すフランジ部とを備え、
該摩擦係止体は、係止貫通孔を有する係止スリーブ部と、該係止スリーブ部の一端から半径方向外側に延び出すよう配設された環状フランジ部と、該係止貫通孔の外周を囲むよう形成された環状の密封空間部と、該環状フランジ部の外周面から内部に向かって延びるよう形成されかつ該外周面側に雌ねじ部を有する液体の充填用孔と、該充填用孔と該密封空間部とを接続する連通孔とを備え、該密封空間部、該連通孔及び該充填用孔の一部には非圧縮性液体が該充填用孔を介して充填され、該充填用孔の該雌ねじ部に密封加圧ねじが螺合されることにより該非圧縮性液体が封入され、
該雌型組立体は、一端側に配設された雌型と、他端面から突出するよう配設された被支持ロッドとを備え、該摩擦係止体は、該係止スリーブ部が該支持部材の該被係止孔に離脱自在に嵌合されると共に該環状フランジ部が該支持部材の該フランジ部に重合され、
該雌型組立体は、該被支持ロッドが該摩擦係止体の該係止貫通孔に離脱自在に嵌合されると共に該他端面が該環状フランジ部に重合され、該摩擦係止体の該密封加圧ねじを締め込むことにより該係止スリーブ部の内周面を該雌型組立体の該被支持ロッドに係止せしめかつ該係止スリーブ部の外周面を該支持部材に係止せしめて該雌型組立体は該摩擦係止体を介して該支持部材に離脱自在に固着される、請求項1記載の合成樹脂物品の圧縮成形装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−74110(P2008−74110A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−283192(P2007−283192)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【分割の表示】特願平10−259701の分割
【原出願日】平成10年9月14日(1998.9.14)
【出願人】(000228442)日本クラウンコルク株式会社 (382)
【Fターム(参考)】