説明

合成樹脂製壜体及びその成形方法

【課題】 本発明はホットパリソン法に伴う、二軸延伸ブロー成形による小型で厚肉の壜体に係る問題に鑑みてなされたものであって、特にブロー成形壜体の底部における局部的な延伸変形、そしてこの変形に伴う薄肉化を抑制することを技術的な課題とし、もって、ガラス瓶様の高品位な外観を呈する小型で厚肉の壜体を提供することを目的とする。
【解決手段】 射出成形による有底筒状の合成樹脂製プリフォームのホットパリソン法による2軸延伸ブロー成形による合成樹脂製壜体の成形方法において、プリフォームを、このプリフォームの底部の内周面の中央に相当する先端部中央に凸部を突設、配置したコア金型を有する射出成形金型を使用して射出成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二軸延伸ブロー成形による合成樹脂製壜体、特に底部を厚肉にした壜体及びその成形方法に関する。

【背景技術】
【0002】
従来から、ポリエチレンテレフタレート(以下PETと記す。)樹脂製の2軸延伸ブロー成形壜体は優れた透明性、機械強度、耐熱性、ガスバリア性等を有し、各種飲料用の容器等として広く利用されているが、さらに、化粧料用の小型のガラス瓶の代替としての使用が進展している。
そしてこの種のガラス瓶の代替としての壜体では、ガラス瓶の質感が現出するように周壁、特に底部を厚肉形成することが求められる。
例えば、特許文献1にはPET樹脂製の円筒状の筒状部を有する試験管状のプリフォームを2軸延伸ブロー成形したものであり、化粧用等での用途を想定した小型で厚肉の丸形壜体に係る発明が記載されている。
【0003】
また、小型で厚肉の胴部の平断面形状が矩形状の角形壜体については、試験管状のプリフォームの周壁が局部的に延伸変形(以降、簡便に偏延伸と記載する場合もある。)して周壁、特に胴部の角壁や底部のコーナー部の肉厚が薄くなってしまう等の課題があったが、このような課題は、本願発明の発明者らの検討の中で有底矩形筒状のプリフォームを使用することにより解決しつつある。
【0004】
ここで、2軸延伸ブロー成形方法には、ホットパリソン法とコールドパリソン法があり、ホットパリソン法はプリフォームが射出成形の予熱を維持し、連続的にブロー成形工程に移る方法で、一方コールドパリソン法はプリフォームの射出成形工程とブロー成形工程が分離され、射出成形したプリフォームを一旦冷却した後、再加熱してブロー成形する方法である。
【0005】
引用文献1には、プリフォームの底部の一部に厚肉領域を形成し、ホットパリソン法によれば二軸延伸ブロー成形で、厚肉領域の温度が比較的高温に保持されたまま局部的に延伸変形されることを利用し、底壁の内面の形状を全体として皿状、すなわち凹状に形成し、たとえば残留する内容液の注出ポンプによる注出性を良好することができるとした記載がある。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−286457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ホットパリソン法は、上記したようにプリフォームが射出成形の予熱を維持しつつ、連続的にブロー成形工程に移る方法であり、引用文献1に記載されるように、意図的に厚肉領域を形成し、周囲に比較して高温で延伸変形する当該部分の偏延伸性を積極的に利用することができる。
また、本願発明の発明者らの検討のなかでは、ホットパリソン法を採用することにより、前述したように有底矩形筒状のプリフォームを使用してガラス瓶様の小型で厚肉の角形壜体を2軸延伸ブロー成形する場合、プリフォームの周壁の角部で肉厚を厚くすることにより角部の延伸変形性を大きくして、壜体での胴部の周壁や底部底壁における肉厚をより均等化することができると云うような利点があることが分ってきた。
【0008】
しかしながらホットパリソン法は、反面、プリフォームの周壁に局所的に厚肉領域があったり、何らかの原因でプリフォームの射出成形後の冷却の進行が遅れるような領域があったりすると、当該領域が高温領域、所謂、ホットスポットとなり、連続的に実施される2軸延伸ブロー成形ではこのホットスポットが偏延伸し、壜体に意図しない薄肉領域が発生する、全体的な肉厚分布が不均一になってしまうと云う、問題を有する。
【0009】
図10は図11に示される試験管状のプリフォーム111の射出成形に使用する射出成形装置の要部を縦断して示す概略説明図ある。
金型41はキャビティ金型42とコア金型43から構成され、ノズル部47が断熱リング49を介して金型41に固定されており、
シャットオフピン48を上方に移動して樹脂流路が開くと(図10は閉状態を示している。)、ノズル部47の先端から射出された溶融樹脂は、ゲート45を介してキャビティ44を充填して、プリフォーム111が成形される。
【0010】
そして、ホットパリソン法では金型41内で適宜の時間冷却固化した後、射出成形の予熱を保持した状態で離型すると共に、プリフォーム111の底部115に延設されるゲート部117をカットして、連続工程で2軸延伸ブロー成形により壜体が成形される。
【0011】
ここで、プリフォーム111の底部115は上記したようにその外周面の中央に溶融樹脂で形成されるゲート部117が延設した状態で冷却されるので、底壁116の中央部はホットスポットHSとなる。
このため、ガラス瓶の質感が現出するように特に小型の壜体の底部を厚肉に成形しようとしてプリフォーム111の底部を厚肉すると、上記した連結するゲート部117に起因する金型内での冷却の遅延作用が相俟って、2軸延伸成形の初期に底部の中央に位置するホットスポットHS近傍で偏延伸が発生し、底部が逆に薄肉化してしまうと云う問題がある。
【0012】
そして、透明あるいは半透明な容器の場合には、上記のように壜体の底壁が薄肉化すると、その様子が外から見え、さらには肉厚の不均一性や延伸変形の不均一性に起因する光学的な斑が現出するため、ガラス瓶のようなクリアな透明感が損なわれ、商品としての外観体裁を大きく劣化させる恐れがある。このことは、特に高品位なパッケージングで製品の差別化を図るように意図された化粧料用等の容器では、大きな問題となる。
さらに、底部では上記したような局部的な延伸変形が集中すると、極端な場合には底部の重要な機能の一つである接地機能が損なわれ、壜体の起立姿勢が不安定になってしまう恐れもある。
【0013】
本発明は、こうしたホットパリソン法に伴う、二軸延伸ブロー成形による小型で厚肉の壜体に係る問題に鑑みてなされたものであって、特にブロー成形壜体の底部における局部的な延伸変形、そしてこの変形に伴う薄肉化を抑制することを技術的な課題とし、もって、ガラス瓶様の高品位な外観を呈する小型で厚肉の壜体を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は合成樹脂製壜体に係る発明と、その成形方法に係る発明からなり、以下、まず成形方法に係る発明について説明する。
本発明の成形方法に係る主たる構成は、射出成形による有底筒状の合成樹脂製プリフォームのホットパリソン法による2軸延伸ブロー成形による合成樹脂製壜体の成形方法において、
プリフォームを、このプリフォームの底部の内周面の中央に相当する先端部中央に凸部を突設、配置したコア金型を有する射出成形金型を使用して射出成形する、と云うものである。
【0015】
上記方法によれば、プリフォームの射出成形に際して、先端部中央に凸部を突設、配置したコア金型を使用することにより、この凸部によりプリフォームの底部の中央部の肉厚を部分的に薄肉に形成することができ、そしてコア金型の凸部によって当該部分の冷却が促進されるため、前述したプリフォームの底部に延設するゲート部に起因する金型内での冷却の遅延を緩和することができ、
ホットパリソン法による2軸延伸ブロー成形での、底部のホットスポットに起因する偏延伸を効果的に抑制することができ、壜体の底部の底壁の肉厚分布を均等に、厚肉化することが可能となる。
特に、この成形方法はガラス瓶様の小型で厚肉の壜体で、底部の肉厚を厚くするのに有効である。
【0016】
本発明の成形方法に係る他の構成は、上記主たる構成において、凸部の基端部の径を、コア金型の先端部に対向位置する射出成形金型のゲートの径に略等しくし、先端部に向けて縮径する形状とする、と云うものである。
【0017】
コア金型の先端部に突設する凸部の、径、突出高さ等の形状は、プリフォームの底部における冷却効果、2軸延伸ブロー成形における偏延伸の抑制効果、さらにはプリフォームの射出成形性等を考慮して適宜決めることができるものであるが、上記構成は凸部の標準的な形状を提示するものである。
基部の径をゲートの径に略等しくすることにより、ゲート部による冷却の遅延作用を効果的に抑制することができる。
【0018】
また、プリフォームを射出成形する際には、ゲートから射出される溶融樹脂が、コア金型の先端部に衝突するため、プリフォームの底部に流動斑による、所謂、ジェッティングが発生するが、コア金型の先端部に上記した形状の凸部を配設することにより、溶融樹脂の流動挙動をスムーズにすることができ、ジェッティングの発生を効果的に抑制することが可能となる。
特に、透明な壜体の場合には外側からも底部の状態を見ることになるので、このようなジェッティングは外観不良となり、その抑制は高品位な外観を保持するための重要な要件である。
【0019】
本発明の成形方法に係る他の構成は、上記主たる構成において、プリフォームの形状を、周壁の外周面の平断面形状を矩形状とした筒状部の上端に円筒状の口部を起立設した形状とする、と云うものである。
【0020】
上記構成は、特に小型で厚肉の角形壜体を提供するためのものであり、プリフォームの形状を、周壁の外周面の平断面形状を矩形状とした筒状部の上端に円筒状の口部を起立設した形状とすることにより(以下、矩形筒状プリフォームと記載する場合がある。)、平断面で見た場合、プリフォームの周壁の外周面から、金型キャビティの壜体の角壁に相当する位置に至る距離を小さくすることができ、角壁近傍における局部的な延伸変形を緩和することができる。
また、上記のように角壁近傍における局部的な延伸変形を緩和できる分、胴部の下端部と底壁から形成されるコーナー部における、顕著な局部延伸を緩和することができ、前述したホットスポットの発生の抑制効果も相俟って、角壁やコーナー部近傍での薄肉化を抑制することができ、ガラス瓶様の高品位な外観を呈する、小型で厚肉の角形壜体を提供することができる。
【0021】
次に本発明の合成樹脂製壜体について説明するが、これらは何れも上述した成形方法により成形するものである。
本発明の合成樹脂壜体に係る発明の構成は、胴部から底壁にかけての横方向の延伸倍率を2倍以下、縦方向の延伸倍率を1.2倍以下とし、また底部の底壁を3.5mm以上の厚肉に形成したものである、と云うものである。
【0022】
前述した、本発明のホットパリソン法による成形方法では、横方向の延伸倍率を2倍以下、縦方向の延伸倍率を1.2倍以下とした小さな延伸倍率の壜体で、底部の底壁を3.5mm以上の厚肉に形成した、小型で底部が厚肉の壜体を提供することができる。
【0023】
本発明の合成樹脂壜体に係る発明の他の構成は、前述した矩形筒状プリフォームを使用した成形方法によるものであり、
プリフォームの筒状部から相似状に延伸形成された、矩形筒状の胴部を有し、この胴部の上端に肩部を介して円筒状の口筒部を起立設し、下端を矩形状の底壁で塞いだ形状を有し、
胴部から底壁にかけての横方向の延伸倍率を2倍以下、縦方向の延伸倍率を1.2倍以下とし、また底部の底壁を3.5mm以上の厚肉に形成する、と云うものである。
【0024】
本発明の合成樹脂壜体に係る発明のさらに他の構成は、これも前述した矩形筒状プリフォームを使用した成形方法によるものであり、
プリフォームの筒状部から相似状に延伸形成された、矩形筒状の胴部を有し、この胴部の上端に肩部を介して円筒状の口筒部を起立設し、下端を矩形状の底壁で塞いだ形状を有し
底壁の中央部から胴部の周壁の4つ角壁の下端部に至る領域で、肉厚が底壁と角壁の下端部を略直角に屈曲連結するコーナー部近傍で増大する構成とし、縦断面でみてこのコーナー部の内周面を円弧状に角取りした形状とする、と云うものである。
【0025】
上記二つの構成は合成樹脂製の角形の壜体に係るものであり、角壁やコーナー部近傍での薄肉化を抑制したものであり、ガラス瓶様の高品位な外観を呈する、従来にない、小型で厚肉の角形壜体を提供するものである。

【発明の効果】
【0026】
本発明の合成樹脂製壜体及びその成形方法は上記した構成となっているが、本発明の成形方法にあっては、
プリフォームの射出成形に際して、先端部中央に凸部を突設、配置したコア金型を使用することにより、プリフォームの底部に延設するゲート部に起因する金型内でのホットスポットの発生を抑制することができ、
ホットパリソン法による2軸延伸ブロー成形での、底部のホットスポットに起因する偏延伸を効果的に抑制し、壜体の底部の底壁の肉厚分布を均等に、厚肉化することができ、ガラス瓶様の小型で厚肉の壜体で、底部の肉厚を厚くするのに極めて有効である。

【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の合成樹脂製壜体の一実施例の斜視図である。
【図2】図1の壜体の半縦断正面図である。
【図3】図1壜体の(a)は平面図、(b)は底面図である。
【図4】図2のA−A線に沿って示す平断面図である。
【図5】図1の壜体の、図3(a)のB−B線に沿って示す、下半分領域の半縦断面である。
【図6】図1の壜体を成形するのに使用したプリフォームの半縦断正面図である。
【図7】図6のプリフォームの(a)は平面図、(b)は図6のC−C線に沿って示す平断面図である。
【図8】図6のプリフォームを射出成形するための射出成形装置の要部を縦断して示す概略説明図である。
【図9】プリフォームの縦延伸工程を説明するための概略説明図で、(a)は図6のプリフォーム、(b)は比較例のプリフォームの縦延伸直前の状態、(c)は比較例のプリフォームの偏延伸状態を示すものである。
【図10】プリフォームを射出成形するための射出成形装置の要部を縦断して示す概略説明図である。
【図11】代表的なプリフォームの例を一部縦断して示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の合成樹脂製壜体およびその成形方法の実施形態について、実施例に沿って、図面を参照しながら説明する。
図1〜5は本発明の合成樹脂製壜体の一実施例を説明するためのものであり、図1は斜視図、図2は半縦断正面図、図3(a)は平面図、図3(b)は底面図、図4は図2中のA−A線に沿って示す平断面図、図5は図3(a)中のB−B線に沿って示す、壜体の下半分領域の縦断面である。
また、図6、7は上記実施例の壜体1を成形するために使用するプリフォーム11を示すものであり、図6は半縦断正面図、図7(a)は平面図、図7(b)は図6中のC−C線に沿って示す平断面図である。
また、図8は図6、7に示されるプリフォーム11を射出成形するための射出成形装置の要部を縦断して示す概略説明図である。
【0029】
この壜体1はPET樹脂製のホットパリソン法による二軸延伸ブロー成形により成形されたものであり、正方形筒状の胴部4を有し、この胴部4の上端から肩部3を介して円筒状の口筒部2を起立設し、また下端を正方形状の底壁6で塞いだ底部5を有する構成となっている。
全高さ82mm、横幅27mmで、胴部4の周壁の平均肉厚は3.2mm、底壁6の中央部の肉厚は4mmとした、透明、小型で厚肉の角形壜体である。
また、底壁6の周縁に沿って接地部7が周設されている。
【0030】
図6、7に示されるプリフォーム11は、壜体1の胴部4に成形される筒状部14を有し、この筒状部14の上端から円筒状の口部12を起立設し、また下端を正方形状の底壁16で塞いだ底部15を有する構成となっている。
また、図7(a)、(b)に示されるように筒状部14は外周面の平断面形状が正方形状、内周面の平断面形状が円形で、角壁14cにおける肉厚が厚くなるようにしている。なお、筒状部14の内周面は射出成形性を考慮し、口部12の円筒状の内周面を下方に延設するように形成したものとしている。
【0031】
このプリフォーム11の全高さは76mm、横幅19mm、筒状部14の肉厚は4.9mmである。
底壁16の中央部の肉厚は5.3mmであるが、底壁16の内面の中央には後述するコア金型43の先端部に配設される凸部43aにより、深さ1mmの凹部16aが形成されている。
このプリフォーム11の外周面と、2軸延伸ブロー成形された壜体1の外周面を基準として算出すると、胴部4における横方向の延伸倍率は1.4倍、胴部4から底部6にかけての縦方向の延伸倍率は1.1倍である。
【0032】
次に、図1〜5に示す実施例の壜体1の成形方法は概略次のようなホットパリソン法による2軸延伸ブロー成形によるものである。
(1)図8に示すような射出成形装置を使用して図6、7に示される矩形筒状のプリフォーム11を射出成形する。
(2)金型41内で適宜の時間冷却固化した後、離型すると共にゲート部17(図9(a)参照)をカットする。
(3)ゲート部17を取り除いたプリフォーム11を、射出成形での予熱を保持した状態で、連続的にブロー成形金型内にセットし(図示省略)、2軸延伸ブロー成形する。
【0033】
図8に示す射出成形装置は前述した図10の装置と概略同様なものであるが、図8に示されるように、先端部の中央に球弧状の凸部43aを突設したコア金型43を使用していることが特徴的である。
本実施例の壜体1の成形ではプリフォーム11の筒状部14の内径は10mmであるが、この凸部43aの基端部の径はゲート45の径に合せて4mm、そして突設高さを1mmとしている。
このように凸部43aを突設することにより、射出成形金型内での、ゲート45内の溶融樹脂(ゲート部17)の存在に起因するプリフォーム11の底部15の底壁16の中央部におけるホットスポットHSの発生を効果的に抑制することができる。
【0034】
また、プリフォーム11を射出成形する際には、ゲート45から射出される溶融樹脂が、コア金型43の先端部に衝突するため、プリフォーム11の底部15に流動斑による、所謂、ジェッティングが発生するが、
コア金型の先端部に上記したような形状の凸部43aを配設することにより、図8中、矢印で示した溶融樹脂の流動挙動Rfをスムーズにすることができ、ジェッティングの発生を効果的に抑制することができ、本実施例のような透明な壜体におけるジェッティングによる外観の劣化を効果的に抑制することができた。
【0035】
ここで、図9はプリフォームの縦延伸工程を説明するための概略説明図で、(a)は図6のプリフォーム、(b)は比較例のプリフォームの延伸直前の状態、(c)は比較例のプリフォームの偏延伸状態を示すものである。
【0036】
そして、ホットパリソン法では金型41内で適宜の時間冷却固化した後、射出成形の予熱を保持した状態で離型すると共に、プリフォーム11の底部15に延設されるゲート部17をカットして、連続工程で2軸延伸ブロー成形により壜体が成形される。
特に底部15の肉厚を厚くしたプリフォーム11では、先端部に凸部43aの配設のないコア金型43を使用する場合、射出成形金型内で、プリフォーム11の底壁16に延設するゲート部17に起因する、図9(b)中クロスハッチで示したホットスポットHSが発生し、延伸ピン51で縦延伸をすると図9(c)に示されるように、ホットスポットHS近傍で、底壁16が偏延伸し、壜体の底壁の肉厚が薄肉化してしまい、所望の肉厚を得ることができなくなってしまう。
【0037】
一方、本発明の成形方法にあるように、先端部に凸部43aを突設したコア金型43を使用する場合には、図9(a)に示されるような状態で、ホットスポットHSの発生が効果的に抑制され、偏延伸することなく、所望の肉厚を達成することができる。
【0038】
次に、本発明の成形方法により成形した図1〜5に示す実施例の角形の壜体1の特徴についてさらに説明する。
図4の壜体1の平断面図には、図7(b)に示されるプリフォーム11の平断面形状を二点鎖線で重ねるように示しているが、本実施例のようにプリフォーム11の筒状部14の周壁の外周面の平断面形状を矩形状にした矩形筒状プリフォームを使用することにより、筒状体14の外周面とパネル壁4pとの距離L1と角壁4cとの距離L2の差を小さくすることができ、角壁4c近傍でのプリフォーム11の周壁の局部的な延伸変形を抑制することができた。
【0039】
その結果、円筒状の筒状部を有するプリフォームを使用した従来の角形壜体に見られた角壁での薄肉化は解消され、図4の平断面図に示されるように胴部4の周壁において全周に亘って略均一な肉厚分布を達成することができた。
さらに、プリフォーム11の筒状体14の内周面を円形状にしてプリフォーム11の角部14cの肉厚を厚くした作用効果も相俟って、壜体1の角壁4cは円弧状に角取りしたようになっており、角壁4cでの肉厚t2はパネル4pの肉厚t1より厚くなっている。
【0040】
次に、壜体1の下半分の対角線方向の縦断面図が示されている図5には、図6に示されるプリフォーム11の縦断面形状を二点鎖線で、重ねるように示しているが、プリフォーム11の底壁16からコーナー部16cにかけて領域が、図中黒矢印の方向に横方向に加えて縦方向にも延伸変形されながら、壜体1の底壁6と角壁4cを直角に屈曲状に連接するコーナー部6cが成形される。
【0041】
本実施例の壜体1では、ホットパリソン法でプリフォーム11の比較的厚肉に形成されるコーナー部16c近傍の部分が比較的高温状態で延伸し易いこと、そして底壁16を半球殻状ではなく略平坦状に形成していることも相俟って、円筒状の筒状部を有するプリフォームを使用した従来の角形壜体のコーナー部に見られるような局部的な延伸変形の進行が解消されていると共に、さらにコーナー部6c近傍で肉厚が増大し、このコーナー部6cの内周面を円弧状に角取りした形状となっていることが分かる。
【0042】
以上、実施例に沿って本発明の実施の形態およびその作用効果を説明したが、本発明の実施の形態は上記実施例に限定されるものではない。
たとえば、上記実施例ではPET樹脂製の壜体について説明したが、本発明の構成はポリプロピレン樹脂製、1、4シクロヘキサンジメタノール(CHDM)成分を共重合成分として含むPET−G樹脂製、芳香族ポリオレフィン系樹脂製等の他の樹脂の二軸延伸ブロー成形壜体でも有効である。
また、上記実施例では小型で厚肉の底部を有する角形の壜体を例にその成形方法についても説明したが、本発明の成形方法は、円筒状の筒状部を有する試験管状のプリフォームから小型で厚肉の底部を有する丸形壜体を成形する際にも極めて有効である。

【産業上の利用可能性】
【0043】
以上説明したように、本発明はガラス瓶様の高品位な外観を呈する、小型で厚肉の合成樹樹脂製の壜体を提供するものであり、化粧料向け用途等での幅広い用途展開が期待される。

【符号の説明】
【0044】
1 ;壜体
2 ;口筒部
3 ;肩部
4 ;胴部
4p:パネル壁
4c;角壁
5 ;底部
6 ;底壁
6c;コーナー部
7 ;接地部
11,111;プリフォーム
12,112;口部
14、114;筒状部
14c;角部
15、115;底部
16、116;底壁
16a;凹部
16c;コーナー部
17、117;ゲート部
41;射出成形金型
42;キャビティ金型
43;コア金型
43a;凸部
44;キャビティ
45;ゲート
47;ノズル部
48;シャットオフピン
49;断熱リング
51;延伸ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形による有底筒状の合成樹脂製プリフォームをホットパリソン法により2軸延伸ブロー成形する合成樹脂製壜体の成形方法であって、前記プリフォーム(11)を、該プリフォーム(11)の底部(15)の内周面の中央に相当する先端部中央に凸部(43a)を突設、配置したコア金型(43)を有する射出成形金型(41)を使用して射出成形することを特徴とする成形方法。
【請求項2】
前記凸部(43a)の基端部の径を、コア金型(43)の先端部に対向位置する射出成形金型(41)のゲート(45)の径に略等しくし、先端部に向けて縮径する形状とした請求項1記載の成形方法。
【請求項3】
プリフォーム(11)の形状を、周壁の外周面の平断面形状を矩形状とした筒状部(14)の上端に円筒状の口部(12)を起立設した形状とした請求項1または2記載の成形方法。
【請求項4】
請求項1、2または3記載の成形方法により成形した壜体であり、胴部(4)から底壁(6)にかけての横方向の延伸倍率を2倍以下、縦方向の延伸倍率を1.2倍以下とし、また底部(5)底壁(6)を3.5mm以上の厚肉に形成したことを特徴とする合成樹脂製壜体。
【請求項5】
請求項3記載の成形方法により成形した壜体であり、プリフォーム(11)の筒状部(14)から相似状に延伸形成された、矩形筒状の胴部(4)を有し、該胴部(4)の上端に肩部(3)を介して円筒状の口筒部(2)を起立設し、下端を矩形状の底壁(6)で塞いだ形状を有し、
胴部(4)から底壁(6)にかけての横方向の延伸倍率を2倍以下、縦方向の延伸倍率を1.2倍以下とし、また底部(5)底壁(6)を3.5mm以上の厚肉に形成したことを特徴とする合成樹脂製壜体。
【請求項6】
請求項3記載の成形方法により成形した壜体であり、プリフォーム(11)の筒状部(14)から相似状に延伸形成された、矩形筒状の胴部(4)を有し、該胴部(4)の上端に肩部(3)を介して円筒状の口筒部(2)を起立設し、下端を矩形状の底壁(6)で塞いだ形状を有し、底壁(6)の中央部から胴部(4)の周壁の4つ角壁(4c)の下端部に至る領域で、肉厚が前記底壁(6)と角壁(4c)の下端部を略直角に屈曲連結するコーナー部(6c)近傍で増大する構成とし、縦断面でみて該コーナー部(6c)の内周面を円弧状に角取りした形状としたことを特徴とする合成樹脂製壜体。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−14020(P2013−14020A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146492(P2011−146492)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】