説明

合成樹脂製板状体

【課題】板厚を厚くすることなく十分な剛性を確保することができる合成樹脂製板状体を提供すること。
【解決手段】可動金型と固定金型とで形成されるキャビティ内に溶融した合成樹脂を射出して成形する合成樹脂射出成形により空力カバー1を作製するが、多数の凸部2を該凸部2同士の間に平板部が直線状に残らないような配列状態で形成し、該凸部2は面視が円形を呈し、縦断面が円弧状を呈する。そして、凸部高さH/凸部幅W1の最適値は、性能向上率の鈍化が始まる直前の約16.3%の例であるが、満足できる性能向上率から、凸部高さH/凸部幅W1が12%以上〜20.0%以内が適当な範囲であると考えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数の凸部を形成してなる合成樹脂製板状体に関し、特に自動車の底面を覆うもので空気抵抗の軽減を図るための空力カバー、自動車のプロテクターフェンダーやアンダーカバーなどの合成樹脂製板状体に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の合成樹脂製板状体は、一般に可動金型と固定金型とで形成されるキャビティ内に溶融した合成樹脂を射出して成形する合成樹脂射出成形により作製されており、板厚を厚くしたり、ビードを形成することで剛性を確保するのが一般的である。
【特許文献1】特開2002−60878号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、合成樹脂製板状体の板厚を増すことは重量増とコストアップが避けられないという問題があり、凹凸を形成する場合に凹溝間に平板部が直線状に残るように配列するのでは、剛性が十分には確保できない。
【0004】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、板厚を厚くすることなく十分な剛性を確保することができる合成樹脂製板状体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため第1の発明は、多数の凸部を形成してなる合成樹脂製板状体であって、前記凸部は凸部の高さH/凸部の幅W1が12%以上〜20%以内となるように形成すると共に凸部同士の間に平板部が直線状に残らないように配列するように、合成樹脂射出成形により作製したことを特徴とする。
【0006】
第2の発明は、多数の凸部を形成してなる合成樹脂製板状体であって、前記凸部は凸部の高さH/凸部の幅W1が12%以上〜20%以内となるように形成すると共に凸部同士の間に平板部が直線状に残らないように配列するように、樹脂パネルプレス成形により作製したことを特徴とする。
【0007】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記凸部の幅W1が10mm以上〜16mm以内であることを特徴とする。
【0008】
第4の発明は、第1又は第2の発明において、前記凸部同士の間隔Cが、間隔C/2と前記凸部の幅W1との和であるベース幅W2の75%以下であることを特徴とする。
【0009】
第5の発明は、第1又は第2の発明において、前記凸部は平面視六角形を呈し、且つ対角を形成する頂点を通る縦断面が円弧状を呈していることを特徴とする。
【0010】
第6の発明は、第1又は第2の発明において、前記凸部は平面視円形を呈し、且つ縦断面が円弧状を呈していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、板厚を厚くすることなく十分な剛性を確保することができる合成樹脂製板状体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。図1は凸部2が形成された空力カバー1の斜視図、図2は凸部2が形成された空力カバー1の部分斜視図、図3は凸部2が形成された空力カバー1の部分平面図である。
【0013】
板状体としての空力カバー1は自動車などの車体の底面側を覆うように固定されることで、この底面側を保護すると共に底面側の空気抵抗を低減させるための部材である。前記空力カバー1は、その周縁部3を除き、平面部には多数の凸部2が形成されている。そして、この空力カバー1は周縁部3に形成された取付片4に形成された取付孔5内にボルトを挿通して、凸部2が突出した面を上面として取付け面として、凹部が外気に接するように自動車の車体の底面に取り付けられる。
【0014】
この空力カバー1は可動金型と固定金型とで形成されるキャビティ内に溶融した合成樹脂を射出して成形する合成樹脂射出成形により作製する。この場合、平板部に多数の凸部を該凸部同士の間に平板部が直線状に残らないような配列状態で形成する。この凸部は等間隔で形成されるが、平面視が円形を呈し、縦断面が円弧状を呈しており、球の一部を構成する形状である。
【0015】
以上のような製造をする過程で、合成樹脂製の板状体の板厚を0.3mmとして、凸部2の幅W1を8mm、ベース幅W2を10mm、平面寸法(C/2)を1mmとして、凸部2の高さHを0.8mm〜3.0mmの間の0.1mm毎に変化させて製作した多数例の最大変位量から性能向上率を調査した。そして、凸部高さH/凸部幅W1の最適値は、性能向上率の鈍化が始まる直前の約16.3%の例であったが、満足できる性能向上率は105%以上と考えられ、凸部高さH/凸部幅W1が12%以上〜20.0%以内が適当な範囲であると考えられる。
【0016】
次に、前述の凸部高さH/凸部幅W1の最適値は、前述したように、性能向上率が約16.3%であるが、この凸部高さH/凸部幅W1の最適値が決まれば、最適な凸部2の幅W1が存在するはずであり、この幅W1が小さ過ぎても絶対的な高さが不足して強度はでないであろうし、かといって大き過ぎても板厚に対して平面的な要素が強くなってしまい強度は低下すると考えられるので、合成樹脂製の板状体の板厚を0.35mmとして、凸部2の幅W1を6mm〜20mmの間の2mm毎に変化させて製作した例の最大変位量からベースに対する性能差を調査した。
【0017】
この調査によれば、凸部幅W1を変化させていくと、ある幅W1で変位量が小さくなる割合が低下するところがあり、性能の向上が望める凸部幅W1は12mmの例の場合であり、満足できる凸部幅W1は10mm以上〜16mm以内が適当な範囲であると考えられる。
【0018】
最後に、凸部2の密度について説明するが、凸部2同士の間隔が離れれば、それだけ剛性は低下する。そこで、剛性(変位量の小ささ)に注目して検証する。即ち、合成樹脂製の板状体の板厚を0.3mm、凸部幅W1は8.0mm、凸部高さHは0.8mm、凸部高さH/凸部幅W1は10.0%として、ベース幅W2を10mm〜16mmの間の1mm毎の例の最大変位量から性能向上率を調査した。
【0019】
この調査によれば、凸部2の密度が高くなる、即ち平面寸法が小さくなるに従い、変位量が小さくなる傾向がある。但し、ベース幅W2が15mm(凸部幅W1の2倍弱)となると、性能向上率が逆転することとなり、この辺りが上限と考えられる。そこで、平面寸法(C/2)の2倍である凸部2同士の間隔(6.0mm)がベース幅W2(8.0mm)の75%以下が適切と考えられる。
【0020】
また、密度を変化させた際の材料伸び率については、実施する凸部の範囲では、絶対量は極僅かであり、成形性には大きな影響はなく、剛性だけを考えれば凸部同士の間隔を小さくゼロにするのが望ましい。しかし、実際の製作加工を行う上では、平面部は必要である。しかも、この平面部は凸部2同士間に直線状に残らないように配列するので(図3参照)、力学的な方向性が無くなり、剛性を大きく向上させることができる。
【0021】
なお、次に凸部20が形成された空力カバー1の部分斜視図である図4及び凸部20が形成された空力カバー1の部分平面図である図5に基づいて、第2の実施形態について説明する。
【0022】
空力カバー1に形成した凸部20は凸部20同士の間に平板部が直線状に残らないように配列状態で等間隔で形成され、この凸部20は平面視が正六角形を呈し、対角を形成する頂点を通る縦断面が円弧状を呈している。この場合、正六角形はその相互の間隔を限りなく狭くできる効率の良い形状でもある。
【0023】
但し、この第2の実施形態も第1の実施形態と同様に、凸部高さ/凸部幅W3は12%以上〜20.0%以内であり、凸部幅W3は10mm以上〜16mm以内であり、平面寸法(C/2)の2倍である凸部20同士の間隔がベース幅W4の75%以下である。
【0024】
以上の第1、第2の実施形態のように、凸部2や20を形成すると、0.3mm厚の合成樹脂製板でも、凸部を形成しない0.4mm厚の平板状の合成樹脂製板と同程度以上の剛性を発揮することができる。従って、ビードを十分突出させることができない場合やビードを板面全体には形成できない場合にも、凸部を形成することによって、板厚を厚くすることなく必要な剛性を確保することができ、重量の増大とコストアップを避けることができる。特に、凸部同士の間に平板部が直線状に残らないようにすると、力学的な方向性が無くなり、剛性を大きく向上させることができる。
【0025】
なお、以上のような空力カバー1の合成樹脂射出成形による場合に限らず、自動車のプロテクターフェンダーやアンダーカバーなどを樹脂パネルプレス成形により作製する場合にも、本発明を適用することができる。例えば、ガラス繊維入りの樹脂シートを加熱して、金型によりプレス成形することにより作製するが、この場合にも、前述の第3の実施形態と同様に、凸部を形成することにより、合成樹脂製の板状体においても、板厚を厚くすることなく必要な剛性を確保することができ、重量の増大とコストアップを避けることができる。
【0026】
また、自動車の触媒コンバータやマフラなどの断熱に好適に使用できるアルミニウム性のヒートインシュレータに多数のエンボス成形による凸部を形成しても、同様な効果が得られるものであり、本発明を適用してもよい。
【0027】
以上本発明の実施態様について説明したが、上述の説明に基づいて当業者にとって種々の代替例、修正又は変形が可能であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で前述の種々の代替例、修正又は変形を包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第1の実施形態の凸部が形成された空力カバーの斜視図である。
【図2】第1の実施形態の凸部が形成された空力カバーの部分斜視図である。
【図3】第1の実施形態の凸部が形成された空力カバーの部分平面図である。
【図4】第2の実施形態の凸部が形成された空力カバーの部分斜視図である。
【図5】第2の実施形態の凸部が形成された空力カバーの部分平面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 空力カバー
2、20 凸部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の凸部を形成してなる合成樹脂製板状体であって、前記凸部は凸部の高さH/凸部の幅W1が12%以上〜20%以内となるように形成すると共に凸部同士の間に平板部が直線状に残らないように配列するように、合成樹脂射出成形により作製したことを特徴とする合成樹脂製板状体。
【請求項2】
多数の凸部を形成してなる合成樹脂製板状体であって、前記凸部は凸部の高さH/凸部の幅W1が12%以上〜20%以内となるように形成すると共に凸部同士の間に平板部が直線状に残らないように配列するように、樹脂パネルプレス成形により作製したことを特徴とする合成樹脂製板状体。
【請求項3】
前記凸部の幅W1が10mm以上〜16mm以内であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の合成樹脂製板状体。
【請求項4】
前記凸部同士の間隔Cが、間隔C/2と前記凸部の幅W1との和であるベース幅W2の75%以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の合成樹脂製板状体。
【請求項5】
前記凸部は平面視六角形を呈し、且つ対角を形成する頂点を通る縦断面が円弧状を呈していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の合成樹脂製板状体。
【請求項6】
前記凸部は平面視円形を呈し、且つ縦断面が円弧状を呈していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の合成樹脂製板状体。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−23326(P2010−23326A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−186466(P2008−186466)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(592259037)株式会社深井製作所 (7)
【Fターム(参考)】