説明

合成樹脂製波付管

【課題】内層と外層との密着性を向上させ、耐候性を向上させることができるとともに、可塑剤に起因した不具合の発生を無くすことができる合成樹脂製波付管を提供する。
【解決手段】合成樹脂製波付管11は、機械的強度を有する内層12と、該内層12の外周に耐候性を有する材料よりなる外層13とを重ねてなる複層構造をなすとともに、管軸方向への断面が波形状をなす。前記内層12はポリエチレン又はポリスチレンよりなり、前記外層13はエチレン酢ビコポリマー(EVA)よりなる。また、外層13の管径方向に沿った厚みは、前記内層12の前記管径方向に沿った厚みよりも薄く形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械的強度を有する内層の外周に耐候性を有する材料よりなる外層を重ねてなる複層構造をなすとともに、管軸方向への断面が波形状をなす合成樹脂製波付管に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の合成樹脂製波付管としては、例えば、特許文献1に開示の二層管が挙げられる。この二層管は、管の主体をなすポリエチレン製の波付電線管(内層)と、耐候性及び自己消化性を有する塩化ビニル製の平滑電線管(外層)とからなる。また、前記波付電線管と、平滑電線管との間には、アース線が管軸方向に沿って内装されている。
【特許文献1】特開昭63−231084号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1に開示の二層管において、ポリエチレンと塩化ビニルとは互いの接着性が悪く、波付電線管と平滑電線管とが分離しやすい。このため、例えば、二層管の切断時や接続具への接続時に、平滑電線管が波付電線管から剥がれたり、撓んだりする不具合が発生する虞があった。また、塩化ビニルには、該塩化ビニルを製造する際に使用される可塑剤が含まれている。この可塑剤はブリードアウトしたり、気散する虞があり、ブリードアウトした場合には二層管のべたつきや汚れの原因となるとともに二層管の耐候性が低下し、気散した場合には平滑電線管が硬化してしまう不具合が発生していた。
【0004】
本発明は、前記従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、内層と外層との密着性を向上させ、耐候性を向上させることができるとともに、可塑剤に起因した不具合の発生を無くすことができる合成樹脂製波付管を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、機械的強度を有する内層の外周に耐候性を有する材料よりなる外層を重ねてなる複層構造をなすとともに、管軸方向への断面が波形状をなす合成樹脂製波付管であって、前記内層はポリエチレン又はポリスチレンよりなり、前記外層はエチレン酢ビコポリマー(EVA)よりなるとともに、前記外層の管径方向に沿った厚みが、前記内層の前記管径方向に沿った厚みよりも薄く形成されていることを要旨とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の合成樹脂製波付管において、前記外層の厚みは、前記内層の厚みの1/4以下に設定されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、内層と外層との密着性を向上させ、耐候性を向上させることができるとともに、可塑剤に起因した不具合の発生を無くすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1及び図2にしたがって説明する。
【0009】
図1及び図2に示すように、合成樹脂製波付管11は、円筒状をなす内層12の外周に外層13を重ねてなる二層管であるとともに、管軸方向に沿った断面が波形状をなす波付管である。合成樹脂製波付管11は、機械的強度を有する内層12の外周に外層13を設け、該外層13に耐燃性(自己消火性)を持たせたPF管であるとともに、可撓性を有するものである。前記内層12は、所要の機械的強度を有して合成樹脂製波付管11の主体を構成している。また、内層12はポリエチレン又はポリスチレンよりなる。前記ポリエチレンは、防湿性、耐水性、耐寒性に優れ、耐薬品性が高い性質を有するとともに、柔軟性を有し、また機械的強度が優れている。しかし、ポリエチレンは、接着性が良くないという欠点を有する。前記ポリスチレンは、耐水性、所要の耐薬品性を有するとともに、機械的強度に優れているが接着性が良くないという欠点を有する。
【0010】
一方、前記外層13は、エチレン酢ビコポリマー(EVA)よりなる。このEVAは、耐燃性、柔軟性、ゴム弾性に優れ、低温特性に富んだ熱可塑性樹脂である。また、EVAは、水、紫外線にも優れた安定性があり、耐候性に優れている。加えて、EVAは用途として接着剤や防湿ヒートシールコーディング剤等に用いられる性質上、前記ポリエチレンやポリスチレンに対して高い密着性を示すとともに、ポリエチレンやポリスチレンよりも軟質である。また、EVAは可塑剤を用いることなく製造されている。このため、外層13が、可塑剤のブリードアウトによってべたついたり、汚れたりすることがなく、また、可塑剤の気散によって硬化することもない。そして、外層13は、EVAそのもので製造してもよく、難燃剤をさらに添加した難燃EVAで製造してもよい。なお、難燃剤は添加剤のようにブリードアウトしたり、気散したりすることはない。
【0011】
合成樹脂製波付管11において、該合成樹脂製波付管11の管径方向に沿った厚みにおいて、前記外層13の厚みは、前記内層12の厚みよりも薄く形成されている。そして、外層13の厚みは、内層12の厚みの1/4以下に設定されていることが好ましい。これは、外層13の厚みが、内層12の厚みの1/4を超えると、波形状の隙間の間隔が狭くなって可撓性が低下して好ましくないためである。合成樹脂製波付管11においては、外層13と内層12を合わせた厚み(肉厚)は1.1mm以上に設定されるのが好ましく、1.1〜1.2mmに設定されるのがより好ましく、1.1〜1.18mmに設定されるのが特に好ましい。これは、合成樹脂製波付管11の肉厚が、1.1mm未満であると圧縮復元性が低下して可撓性が低下して好ましくないためである。なお、合成樹脂製波付管11の肉厚の好ましい範囲は、「呼び」サイズに合わせて変更される。また、合成樹脂製波付管11において、該合成樹脂製波付管11の周方向へ延びる凹部(谷部)と、周方向へ延びる凸部(山部)における厚みは若干異なるため、合成樹脂製波付管11の肉厚は凹部(谷部)と、凸部(山部)との厚みの平均値となっている。
【0012】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0013】
(1)合成樹脂製波付管11は、ポリエチレン又はポリスチレン製の内層12と、EVA製の外層13とからなる二層管である。前記EVAは、ポリエチレン又はポリスチレンに対する密着性が高く、また、可塑剤を含んでいない。このため、合成樹脂製波付管11は、その切断時や接続具への接続時に内層12と外層13とが剥離したり、撓んだりする不具合が発生することを防止することができる。また、外層13のEVA中には可塑剤が含まれていないため、可塑剤のブリードアウトが無く、べたつきや汚れ、さらには、可塑剤の気散による外層13の硬化といった不具合も発生することが防止できる。
【0014】
(2)また、外層13の厚みを内層12の厚みの1/4以下(薄く)とした。このため、外層13によって合成樹脂製波付管11の可撓性が損なわれることを防止することができる。
【0015】
(3)EVAは、優れた耐候性を有するため、紫外線や光エネルギーによって外層13が変色することが防止でき、合成樹脂製波付管11の見栄えが低下することを防止することができる。
【実施例】
【0016】
次に、実施例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
【0017】
(実施例1〜実施例11)
実施例1〜実施例11では、合成樹脂製波付管11の肉厚を変更して、可撓管の性能試験(圧縮復元性、耐燃性、耐屈曲復元性、引張強さ)を行い、各性能試験の性能に適合したものを○とし、適合しなかったものを×とした。その結果を表1に示す。なお、合成樹脂製波付管11の外層13と内層12との管径方向への厚みの比率を、実施例1〜4,6,7,9,10では2:8とし、実施例5,8,11では1:9とした。また、実施例1,3,5,6,7,8,9,10,11では外層13に難燃剤を添加した難燃EVAを用い、実施例2,4では外層13に難燃剤を添加しないEVAを用いた。
【0018】
【表1】

表1の結果に示されるように、合成樹脂製波付管11の肉厚が1.1030mmを超えると各性能試験に適合することが示された。また、外層13に難燃EVAを用いた合成樹脂製波付管11は、その耐燃性を確実とすることが示された。さらに、合成樹脂製波付管11の肉厚が1.10mmを超えると圧縮復元性が良好となることが示された。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態の合成樹脂製波付管を示す斜視図。
【図2】実施形態の合成樹脂製波付管を示す断面図。
【符号の説明】
【0020】
11…合成樹脂製波付管、12…内層、13…外層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械的強度を有する内層の外周に耐候性を有する材料よりなる外層を重ねてなる複層構造をなすとともに、管軸方向への断面が波形状をなす合成樹脂製波付管であって、
前記内層はポリエチレン又はポリスチレンよりなり、前記外層はエチレン酢ビコポリマー(EVA)よりなるとともに、前記外層の管径方向に沿った厚みが、前記内層の前記管径方向に沿った厚みよりも薄く形成されていることを特徴とする合成樹脂製波付管。
【請求項2】
前記外層の厚みは、前記内層の厚みの1/4以下に設定されている請求項1に記載の合成樹脂製波付管。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−268906(P2007−268906A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−98979(P2006−98979)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000243803)未来工業株式会社 (550)
【Fターム(参考)】