説明

合金材料の熱間等方圧加圧のための方法及びデバイス

【課題】熱間等方圧加圧を使用してビレットを形成する場合に、高価な粉体合金と熱間等方圧加圧に使用される容器との間における金属の拡散を防ぎ、又は最小限化する方法及び容器を提供する。
【解決手段】粉体(205)と容器(201)との間における拡散を制御するように、容器(201)上で粉体(205)と容器(201)との間に拡散バリア(220)が置かれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱間等方圧加圧を使用してビレットを形成するための方法及び容器に関し、より詳細には、高価な粉体合金と熱間等方圧加圧に使用される容器との間における金属の拡散を防ぐための方法及び容器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばマイクロ鋳造又はアトマイズなど、所定の粒度に形成された金属粉体から金属ビレットその他の物体を製造するための冶金技術が開発されている。通常、Ni(ニッケル)、Cr(クロム)、Co(コバルト)及びFe(鉄)で高度に合金化されたこれらの粉体は、100%理論密度に近い稠密塊に圧密化される。得られるビレットは、均質な組成と稠密ミクロ組織を有し、向上した靭性、強度、耐破壊性及び熱膨張係数を有する部品を製造することができ。かかる向上した特性は、例えば、高温及び/又は高応力条件が存在するタービンの回転部品の製造に特に有益である。
【0003】
こうした金属粉体の稠密塊への圧密化は、通例、熱間等方圧加圧(HIP)と呼ばれるプロセスで高圧及び高温下で実施される。一般に、粉体を容器(「缶」とも呼ばれる)に入れ、密封してその内容物を真空下に置く。容器を高温に付し、化学反応を避けるためにアルゴンのような不活性ガスを用いて外側を加圧する。金属粉体の処理には、例えば480℃〜1315℃の高温及び51MPa〜310MPa又はそれ以上の圧力が用いられる。粉体を封入した容器を加圧すると、所定の流体媒体(例えば不活性ガス)であらゆる方面及び方向から粉体に圧力が加わる。HIPプロセスの極端な温度及び圧力の下では、HIPプロセス中に粉体の体積が減少すると、容器は実質的に変形又は押し潰され、容器は圧粉体から生成したビレットの表面に結合した状態になる。
【0004】
図1及び図2に、HIPプロセスに従来の容器を使用したときに直面する問題を例示する。図1は、HIPプロセスの極端な温度及び圧力に付される前の容器101の一部の概略図である。容器101は、加圧成形すべき粉体混合物105を収容し、HIPプロセスの際に加圧用の流体(アルゴンなど)の進入を防ぐためシールをもたらす。加圧前は、上面100と底面135の間の壁110は基本的に真っ直ぐで変形していない。HIPプロセス前は、上面100及び底面135も変形していない。粉体105は容器101内にあり、容器に付着していない。
【0005】
図2は、HIPプロセスに付した後の容器101の同じ部分を示す。HIPプロセスの条件で、粉体が金属ビレット106へと変換されている。しかし、粉体から中実金属への密度の変化によって、体積にも劇的な変化が生じている。体積が減少すると、粉体105からビレット106への変化にともなって容器101も変形する。図2では、壁110が弓形に変形しているものを示すが、上面100及び底面135も変形を起こすことがある。
【0006】
HIPプロセス中には、目に見える変化が起きているほかに、ある種の顕微鏡的な事象も起きる。より詳細には、HIPプロセスが行われている数時間の間に、望ましくない拡散作用が起きる。HIPプロセス中、元素は容器から粉体へ、及び粉体から容器へと移動する。例えば、容器101は従来、低炭素鋼又は304SSなどのオーステナイトステンレス鋼から製造される。Fe及びC(炭素)は、容器から金属粉体へと拡散することがある。反対に、粉体中のCr及び他の元素は、容器へと拡散することがある。さらに、例えばCr、Ni及びFeなどを含む、望ましくない拡散層が、容器とビレットの間に形成される。したがって、成分の交差拡散によって、ビレットの表面付近に所望しない組成の領域が形成され、ビレットの形成に使用される非常に高価な高合金粉体の損失にもなる。
【0007】
残念なことに、上述の容器101の拡散作用により、ビレット106の所望の形状(又はビレット106から作製される最終的な部品の形状)に応じて、容器の表面から高価な材料を除去することが必要となる場合がある。やはり、元の粉体が高価なので、この損失は望ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6718809号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、HIP処理中、そのような拡散作用及び高価な粉体材料の損失を低減し、又は排除することを可能にする、改善されたデバイスが有用である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、熱間等方圧加圧を使用してビレットを形成するための改善された方法及び容器を提供する。方法及び容器によって、高価な粉体合金と熱間等方圧加圧に使用される容器との間における金属の拡散を防ぎ、又は制御する。本発明の目的及び利点は、以下の説明において一部を述べ、又は説明から明らかとすることができ、又は本発明の実施を通して知ることができる。
【0011】
1つの例示的な実施形態では、本発明は、粉体を加圧成形するための容器を提供する。容器は、容器上面、容器底面、及び、粉体を入れるための内部を画成するように、容器上面と容器底面との間にあってそれらをつなぐ外壁を含む。加圧成形中に容器を粉体から分離するように、容器上面、容器底面、及び外壁に沿って、拡散バリアが配置されている。
【0012】
別の例示的な実施形態では、粉体を加圧成形するための容器を提供する。容器は、容器上面、容器底面、及び、粉体を入れるための内部を画成するように、容器上面と容器底面との間にあってそれらをつなぐ外壁を含む。容器上面、容器底面、及び外壁のうちの1以上は、粉体と容器又はその部品との間における拡散を防ぐために、粉体と同じ合金組成から作製される。あるいは、容器上面、容器底面、及び外壁のうちの1以上は、HIPサイクル中、缶/ビレットの境界に有害な合金相を形成させない、粉体と同様の合金から作製される。
【0013】
本発明のさらに別の例示的な態様では、熱間等方圧加圧の際の材料の使用を改善するための方法が提供される。方法は、熱間等方圧加圧すべき粉体を入れるための容器を用意する段階を含む。容器は、上面、底面、及び、容器の内部を画成するように、上面と底面をつなぐ外壁を含む。方法はまた、熱間等方圧加圧中、粉体を容器から分離するように、容器に沿って拡散バリアを配置する段階も含む。粉体を容器の内部へと挿入する。次いで、容器と粉体との間における元素の拡散を防ぎ、又は最小限化しながら、容器に熱間等方圧加圧を行う。
【0014】
本発明のこれら及び他の特徴、態様及び利点は、以下の説明及び添付の特許請求の範囲を参照すると、より良く理解されるようになるであろう。本明細書に援用され、その一部を構成する添付の図面は、説明とともに本発明の実施形態を図示し、本発明の原理を説明するものである。
【0015】
当業者を対象とした、本発明の最良の実施形態を含む完全かつ実施可能な開示を、添付の図面を参照して本明細書に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】HIPプロセスを行う前の、容器の一側面に沿った概略的な断面図である。
【図2】HIPプロセスの圧力及び温度を受けた後の、図1の容器の一側面に沿った概略的な断面図である。
【図3】本発明による容器の例示的な実施形態の一側面に沿った概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書で説明する有利な改良を提供するために、本発明は、熱間等方圧加圧を使用してビレットを形成するための改善された方法及び容器を提供し、より詳細には、高価な粉体合金と熱間等方圧加圧に使用される容器との間の金属の拡散を防ぐための方法及び容器を提供する。本発明を説明するために、1以上の例が図面に図示されている本発明の実施形態を詳細に参照する。それぞれの例は、本発明の説明のために示されており、本発明を限定するものではない。実際、本発明の範囲又は精神から逸脱することなく、本発明に様々な修正及び変更を行うことができることは、当業者には明らかである。例えば、1つの実施形態の一部として図示又は説明された特徴を別の実施形態で使用して、さらに他の実施形態を実現することができる。したがって本発明は、そのような修正及び変更も、添付の特許請求の範囲及びその均等物の範囲内として含むものである。
【0018】
本発明による容器201の例示的な実施形態を図3に示す。図示のために、容器201の一側面が断面で示されている。容器201は、粉体205が内部にあり、HIPプロセスの変形を受ける前の状態で図3に示されている。
【0019】
容器201は、容器上面200、容器底面235、及び外壁210を含む。この例示的な実施形態では、容器201は、上記で述べたように、例えば304SSなどのオーステナイトステンレス鋼など従来の材料から作製することができる。図3に示すように、上面200、底面235、及び外壁210は単一部品として作製されている。しかし、容器201は、上面200、底面235、及び外壁210が1以上の別個の部品として形成される構成を含む、他の構成も含むことができる。
【0020】
容器201はまた、高価な粉体材料205を容器上面200、底面235、及び外壁210から分離する拡散バリア220も含む。拡散バリア220は、拡散を防ぐように働き、粉体205と容器201との間にある、容器201上の層又は内張りとして配置される。拡散バリア220は、粉体205が容器201へ、又は容器201が粉体205へと元素が移動するのを防ぎ、又は最小限化する。
【0021】
拡散バリア220は、拡散プロセスを防ぐように特に選択された1以上の材料から作製される。粉体205の組成、容器201、及びHIPプロセスの条件に従って、様々な材料を使用することができる。例えば、様々な金属窒化物、硫化物、炭化物、炭窒化物又は金属酸化物から、拡散バリア220を作製することができる。セラミック材料を使用することもできる。特定の用途では、拡散バリア220を、例えばタンタル、金、銀、又は銅などの金属のみから作製することができる。他の材料を適用することもできる。やはり、拡散バリア220の材料を選択する目的は、容器201と粉体205との間における材料の拡散を防ぎ、又は阻止することである。
【0022】
様々な技術を使用して、拡散バリア220を容器201の内部に沿って配置することができる。例えば、容器の内部に沿って置かれた金属箔から、拡散バリア220を作製することができる。箔は、容器201の形状に従って特に作製することができ、又は粉体205を容器201へと入れる前に、オーバーラッピングシートとして適用することができる。様々なめっき技術を使用して、拡散バリア220を容器201の内部で堆積することができる。例えば電気めっき又は無電解めっきを使用して、層220として所望の厚さのバリア材料を容器201に堆積することができる。化学蒸着を使用して、拡散バリア220を形成するように、所望の厚さの材料を容器201に堆積することもできる。例えばプラズマ溶射を含む、様々な技法によって、セラミックコーティングを適用することもできる。本明細書に開示された教示を使用して、当業者は、拡散バリア220を適用するために様々な他の方法を使用することもできることを理解するであろう。
【0023】
図1の従来の容器及び図3に示す本発明の例示的な実施形態では、容器の作製に使用される材料と粉体混合物の形成に使用される合金との組成の違いによって、HIPプロセス中の拡散の原動力がもたらされる。本発明のさらに別の例示的な実施形態では、容器と高価な粉体合金との間における成分の望ましくない交差拡散を防ぐために、HIP処理のための容器を、HIPプロセスでビレットの形成に使用される高価な粉体材料と同じ合金又は同様の合金から作製することができる。同じ又は同様の全体的な合金の組成を有する容器及び粉体を使用することによって、HIPプロセス中に拡散を引き起こす原動力が最小限化され、又は排除され、バリア220などの拡散バリアを省略することができる。さらに、そのように容器を作製することによって、容器をビレットの表面から除去する製造ステップを排除することができる。
【0024】
以上、本発明の特定の例示的な実施形態に関して詳細に説明してきたが、本明細書の開示内容に基づいて、これらの実施形態に当業者が様々な修正、変更及び均等物での置換を容易になし得ることは明らかであろう。したがって、本明細書の開示範囲は限定的なものではなく例示にすぎず、当業者に自明な修正、変更及び/又は追加を除外するものではない。
【符号の説明】
【0025】
100 上面
101 容器
105 粉体(混合物)
106 ビレット
110 壁
135 底面
200 (容器)上面
201 容器
205 粉体(混合物)
210 外壁
220 拡散バリア
235 (容器)底面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体(205)を加圧成形するための容器(201)であって、
容器上面(200)と、
容器底面(235)と、
前記粉体(205)を入れるための内部を画成するように、前記容器上面(200)と前記容器底面(235)との間にあってそれらをつなぐ外壁(210)と、
加圧成形中、前記容器(201)を前記粉体(205)から分離するように、前記容器上面(200)、前記底面(235)及び前記外壁(210)に沿って配置された拡散バリア(220)とを含む容器(201)。
【請求項2】
前記拡散バリア(220)が、前記容器上面(200)、前記容器底面(235)、及び前記外壁(210)上に配置された金属箔を含む、請求項1記載の粉体(205)を加圧成形するための容器(201)。
【請求項3】
前記拡散バリア(220)がセラミックコーティングを含む、請求項1記載の粉体(205)を加圧成形するための容器(201)。
【請求項4】
前記拡散バリア(220)が金属酸化物コーティングを含む、請求項1記載の粉体(205)を加圧成形するための容器(201)。
【請求項5】
前記拡散バリア(220)が、めっきによって前記容器上面(200)、前記容器底面(235)、及び前記外壁(210)上に配置される、請求項1記載の粉体(205)を加圧成形するための容器(201)。
【請求項6】
熱間等方圧加圧の際の材料の使用を改善するための方法であって、
上面(200)、底面、及び、容器(201)の内部を画成するように前記上面(200)と前記底面(235)をつなぐ外壁(210)を含む、熱間等方圧加圧すべき粉体(205)を入れるための前記容器(201)を用意する段階と、
熱間等方圧加圧中、前記粉体(205)を前記容器(201)から分離するように、前記容器(201)に沿って拡散バリア(220)を配置する段階と、
前記粉体(205)を前記容器(201)の内部へと挿入する段階と、
前記容器(201)と前記粉体(205)との間における元素の拡散を防ぎ、又は最小限化しながら、前記容器(201)に熱間等方圧加圧を行う段階とを含む方法。
【請求項7】
熱間等方圧加圧中、前記容器(201)と前記粉体(205)との間における元素の拡散を防ぎ、又は阻止する、前記拡散バリア(220)のための材料を選択する段階をさらに含む、請求項6記載の熱間等方圧加圧の際の材料の使用を改善するための方法。
【請求項8】
前記拡散バリア(220)が、前記容器(201)の前記上面(200)、前記底面(235)、及び前記外壁(210)上に配置された金属箔を含む、請求項6記載の熱間等方圧加圧の際の材料の使用を改善するための方法。
【請求項9】
前記拡散バリア(220)が金属酸化物コーティングを含む、請求項6記載の熱間等方圧加圧の際の材料の使用を改善するための方法。
【請求項10】
前記拡散バリア(220)が、金属窒化物、硫化物、炭化物、炭窒化物又は金属酸化物からなる群の1以上から作製される、請求項6記載の熱間等方圧加圧の際の材料の使用を改善するための方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−45927(P2011−45927A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186778(P2010−186778)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】