吊戸棚及びその製造方法
【課題】 低コストで耐荷重性能を向上させることができる吊戸棚及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明の吊戸棚10は、天板11と、背板15と、天板11の左右両端に固定された一対の側板12と、天板11の背面側下面端縁に沿って設けられ、左右両端部を側板12の内側面に突き合わせた状態で側板12と結合される固定用桟16とを備えている。固定用桟16と、側板12とが、この両部材の突き合わせ面30を左右方向に貫通する波釘20によって結合されている。
【解決手段】 本発明の吊戸棚10は、天板11と、背板15と、天板11の左右両端に固定された一対の側板12と、天板11の背面側下面端縁に沿って設けられ、左右両端部を側板12の内側面に突き合わせた状態で側板12と結合される固定用桟16とを備えている。固定用桟16と、側板12とが、この両部材の突き合わせ面30を左右方向に貫通する波釘20によって結合されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、システムキッチン等に用いられる吊戸棚及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
システムキッチンやシステム洗面化粧台等において、空間を有効活用するために吊戸棚が用いられることがある(例えば、特許文献1参照)。
上記吊戸棚は、天板と、底板と、天板及び底板の左右両端に固定された一対の側板と、背板とを有しており、その背面側が室内の壁面に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−169759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の吊戸棚において、当該吊戸棚を壁面に固定するための桟が、天板の背面側端縁や、側板の背面側端縁に設けられるものがある。前記吊戸棚は、この桟を前記壁面に当接固定することで、当該壁面に固定される。
前記桟を有する吊戸棚において、当該吊戸棚に作用する荷重を直接的に側板に負担させることで、天板、及び、天板と側板との間の接合部に作用する荷重を減少させて、前記吊戸棚の耐荷重性能を向上させるために、前記桟を前記側板に強固に結合したものがある。
【0005】
図10は、上記従来の吊戸棚の一例を示す図であり、背面側からみたときの分解斜視図である。図10に示す吊戸棚100は、天板101と、側板102と、背板103と、底板104と、背板103の背面側に設けられた固定用桟105とを備えている。
壁面に固定される固定用桟105は、横桟105aと縦桟105bとを組み合わせることで枠状に組み立てられ、予め背板103の背面に接着固定されている。なお、このとき各桟105a、105bは、背板103が天板101や側板102とともに吊戸棚として組み立てられたときに、各板101、102、104の背面側の端縁に沿って配置されるように接着固定される。
【0006】
この吊戸棚100は、図10に示すように、各板101〜104を仮組みし、仮組みした状態の吊戸棚100の四隅を、金型k2によって押圧固定し、さらに各板の接合部分に樹脂を注入することによって樹脂層を形成して接合固定される。
固定用桟105の縦桟105bは、その側端面からタッピングビス106をねじ込むことで、側板102と結合されている。このタッピングビス106による結合は、上記樹脂層を形成することによる各板101〜104の接合固定の後に行われる。
これによって、吊戸棚100は、当該吊戸棚100に作用する荷重が側板102で負担されるように構成されている。
【0007】
また、図11は、従来の吊戸棚の他の例を示す分解斜視図である。図11に示す吊戸棚200は、図10に示した吊戸棚100と同様、天板201、側板202、背板203、底板204、及び固定用桟205を備えて構成されている。固定用桟205は、横桟205aと縦桟205bとにより構成されている。また、この吊戸棚200は、側板202に沿う側面部206aと、背板203に沿う背面部206bとを有することでL字型に形成された固定用金具206が側板202に固定されている。
【0008】
固定用金具206の側面部206aには、ダボ206cが突設されており、側面部206aに形成された孔にこのダボ206cを差し込むことで、固定用金具206は、側板202に固定されている。背面部206bには、当該吊戸棚200を壁面に固定するためのタッピングビス等が貫通する孔部206dが設けられている。
この吊戸棚200は、各板201〜204を上述の金型k2を用いた樹脂層形成による接合固定の後、固定用桟205が背面側に接着固定される。
この吊戸棚200は、固定用金具206の孔部206dから背板203、横桟205bを貫通し、壁面にねじ込まれるタッピングビス等によって、壁面に固定される。つまり、吊戸棚200は、側板202に固定された固定用金具206を直接壁面に固定することで、当該吊戸棚200に作用する荷重が側板202で負担されるように構成されている。
【0009】
以上のように、従来の吊戸棚は、当該吊戸棚に作用する荷重を側板に負担させて、天板、及び、天板と側板との間の接合部に作用する荷重を減少させ、前記吊戸棚の耐荷重性能を向上させているが、図10に示す吊戸棚100では、横桟105aと縦桟105bとからなる固定用桟105を組み立てた上で側板102の側面にビスで固定するために作業性が悪く、また、図11に示す吊戸棚200では、天板等各板を接合固定した後に固定用桟を結合するために各板を接合固定した後の作業工数が多い上、固定用金具206といった付属部品が必要となり、コストが高くなるという問題を有していた。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、低コストで耐荷重性能を向上させることができる吊戸棚及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明は、背面が壁面に固定される吊戸棚であって、天板と、背板と、前記天板及び背板の左右両端に固定された一対の側板と、前記背板と前記壁面との間に介在した状態で前記天板の背面側下面端縁に沿って設けられ、左右両端部を前記一対の側板の内側面に突き合わせた状態で前記一対の側板と結合される固定用桟と、を備え、前記固定用桟と、前記側板とが、この両部材の突き合わせ面を左右方向に貫通する結合部材によって結合されていることを特徴としている。
【0012】
上記のように構成された吊戸棚によれば、固定用桟と、側板とが、この両部材の突き合わせ面を左右方向に貫通する結合部材によって結合されているので、固定用桟と、側板との間に上下方向のせん断力が作用したとしてもそのせん断力を受け止めることができ、側板に作用する荷重を、天板等を介することなく直接固定用桟に伝えることができる。
すなわち、前記両部材の突き合わせ面を左右方向に貫通する結合部材によって結合するといった簡易な構成で、側板に作用する荷重を直接固定用桟に伝えることができ、天板、及び、天板と側板との間の接合部に作用する荷重を減少させることができる。この結果、上記従来例のように、取付金具や、側板に沿う縦方向の桟等を設ける必要がなく、より低コストで、天板、及び、天板と側板との間の接合部に作用する荷重を減少させ、吊戸棚の耐荷重性能を向上させることができる。
【0013】
前記結合部材は、前記固定用桟と前記側板の背面に対して正面方向に打ち込まれる打ち込み部材よりなることが好ましい。
この場合、天板の背面側下面端縁に沿って設けられている固定用桟に対して、背面から正面方向に向かって打ち込み部材を打ち込むので、打ち込み部材を打ち込む際に、当該打ち込み部材の周囲には打ち込む作業を阻害する部材等がなく、その作業が容易となる。
【0014】
また、本発明は、天板と、背板と、底板と、端部が前記天板及び前記底板の端部に樹脂層を介して接合固定される一対の側板と、前記背板と前記壁面との間に介在した状態で前記天板の背面側下面端縁に沿って設けられ、左右両端部を前記一対の側板の内側面に突き合わせた状態で前記一対の側板と結合される固定用桟と、を備えた吊戸棚の製造方法であって、前記天板、前記背板、前記底板、及び前記側板を仮組みし、前記天板、及び前記底板の端部と、前記側板の端部との間に樹脂層を形成し各板を接合固定する接合工程と、前記接合工程の後、前記天板の背面側下面端縁に沿うように配置された前記固定用桟と前記側板の背面に対して、前記固定用桟と前記側板とを結合する打ち込み部材を正面方向に向けて打ち込むことで、当該打ち込み部材を前記固定用桟と前記側板との間の突き合わせ面に対して左右方向に貫通させ、前記固定用桟と前記側板とを結合する結合工程と、を備えていることを特徴としている。
【0015】
上記のように構成された吊戸棚の製造方法によれば、各板を接合した後に、打ち込み部材を、固定用桟と側板の背面から正面方向に向けて打ち込むので、打ち込み部材を打ち込む際に、当該打ち込み部材の周囲には打ち込む作業を阻害する部材等がなく、その作業が容易となる。また、上記従来例のように、取付金具や、側板に沿う縦方向の桟等を設ける必要がなく、その作業工数も低減される。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明の吊戸棚によれば、低コストで耐荷重性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態による吊戸棚を適用したシステムキッチンの斜視図である。
【図2】吊戸棚を背面側からみたときの斜視図である。
【図3】図2中、III−III線の一部矢視断面図である。
【図4】天板と側板との間の接合部分を示した断面図である。
【図5】(a)は、天板の接合面となる一端面を拡大した斜視図であり、(b)は、側板の接合面となる一端面を拡大した斜視図である。
【図6】(a)は、固定用桟と、側板との結合部分を拡大した斜視図であり、(b)は、その結合部分の断面図である。
【図7】吊戸棚を製造する工程を示す図である。
【図8】各板を接合固定する際の態様を示す斜視図である。
【図9】(a)は、天板と、側板とを木ダボにより接合した吊戸棚における、天板、側板、及び固定用桟の結合部分を拡大した斜視図であり、(b)は、その天板と、側板との間の結合部分の要部断面図である。
【図10】従来の吊戸棚の一例を示す図であり、背面側からみたときの分解斜視図である。
【図11】従来の吊戸棚の他の例を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の第一の実施形態による吊戸棚を適用したシステムキッチンの正面図である。このシステムキッチン1は、上面にシンクが設けられたキャビネット2と、その上方配置され背面が壁面Hに固定されている吊戸棚10とを備えている。
【0019】
図2は、第一の実施形態による吊戸棚を背面側からみたときの斜視図である。吊戸棚10は、天板11と、この天板11の左右両端に固定された一対の側板12と、一対の側板12の下端に固定された底板13とを備えている。吊戸棚10の正面側には、一対の側板12の正面側端部に固定され、正面側の開口には開き戸14が開閉自在に設けられている。
【0020】
図3は、図2中、III−III線の一部矢視断面図である。図2及び図3に示すように、吊戸棚10は、その背面側に背板15と、当該吊戸棚10を壁面Hに固定するための固定用桟16と、下側桟17とをさらに備えている。
背板15は、図3に示すように、天板11の背面側端部に形成された溝部11aに嵌め込まれている。また、他の板12、13においても、背板15を嵌め込むための溝部が背面側端部に形成されており、背板15は、各溝部に嵌め込まれて吊戸棚10の背面側に固定されている。
【0021】
各板11、12、13は、例えば、パーチクルボードにより形成されており、各板同士は、樹脂によって接合されている。
図4は、天板11と側板12との間の接合部分を示した断面図である。図4に示すように、両板11、12の間には、両者を接着している樹脂層Jが介在している。この樹脂層Jは、天板11の一端面と、側板12の一端面とを突き合わせたときに形成される樹脂を注入するための空間S1に樹脂を注入することで形成されている。なお、底板13と側板12との間の接合部分についても、図4に示す構成によって接合されている。
【0022】
図5(a)は、天板11の接合面となる一端面を拡大した斜視図であり、図5(b)は、側板12の接合面となる一端面を拡大した斜視図である。
天板11の一端面の両端部には、側板12の端面の形状と一致して当接するように形成された当接部11bと、当接部11bよりも内側に凹む凹部11cとが形成されている。
また、側板12の一端面には、天板11の下面11dに当接する縁部12aと、天板11の当接面11bにおける垂直面11b1に当接する段部12bと、天板11の当接面11bにおける傾斜面11b2に当接する傾斜面12cとが形成されている。
【0023】
上記構成の天板11及び側板12それぞれの一端面を互いに突き合わせた場合、天板11は、その下面11dと、当接部11bとが側板12における各部12a〜12cの両端部に当接する。このため、両板11、12の接合面には、天板11の凹部11cと側板12との間に、上述の樹脂を注入するための空間Sが形成される。なお、注入される樹脂は、凹部11cに一致して天板11の一端面の縁部に形成された面取部11eにより構成される、前記空間と外部を連通する通路S2(図4参照)から注入される。
【0024】
上述の各板11、12、13を樹脂によって接合するには、各板11、12、13及び背板15を組み立てた後、樹脂により接合する四隅を金型等で固定した上で、樹脂が注入されて接合される。
【0025】
図2及び図3に戻って、固定用桟16は、天板11の背面側下面端縁に沿って設けられている長尺の部材であり、その左右両端部が左右の側板12に突き合わされた状態で設けられている。また、固定用桟16は、図3に示すように、当該吊戸棚10の内側からねじ込まれる複数のタッピングビス18によって、壁面Hに固定される。固定用桟16は、吊戸棚10が壁面Hに固定された状態で、背板15と壁面Hとの間に介在して配置される。
【0026】
さらに、固定用桟16は、背板15に対しては接着剤によって接着されており、天板11に対しては多数のステープラ19によって結合固定されている。また、側板12に対しては、ステープラ19とともに、結合部材としての波釘によって結合されている。
【0027】
図6(a)は、固定用桟16と、側板12との結合部分を拡大した斜視図であり、図6(b)は、その結合部分の断面図である。
固定用桟16は、端面16aを側板12の内側面12に突き合わせた状態で側板12と結合されている。
波釘20は、固定用桟16と、側板12との突き合わせ面30を左右方向に貫通して設けられている。本実施形態では、左右端それぞれ一つずつの波釘20を設けた場合を示している。
波釘20は、突き合わせ面30に対して左右方向に貫通して設けられることで、固定用桟16と、側板12との結合部分に作用する上下方向のせん断力を受け止めることができ、前記せん断力が作用したとしても、固定用桟16と、側板12との間の結合を強固に維持することができる。
【0028】
波釘20は、図6(a)に示すように、固定用桟16と側板12の背面から正面方向に向けて打ち込まれることで、突き合わせ面30に対して左右方向に貫通して設けられている。
この場合、天板11の背面側下面端縁に沿って設けられている固定用桟16に対して、背面から正面方向に向かって波釘20を打ち込むので、波釘20を打ち込む際に、当該波釘20の周囲には打ち込む作業を阻害する部材等がなく、その作業が容易となる。
【0029】
ここで、吊戸棚10を使用したときに当該吊戸棚10に作用する荷重は、背面側下面端縁に沿って固定用桟16が設けられている天板11、及び上記波釘20によって結合されている左右一対の側板12に作用し、これら天板11、及び側板12を介して、壁面Hに固定された固定用桟16に作用する。これによって、吊戸棚10は、前記荷重を支持しつつ固定用桟16によって壁面Hに固定される。
【0030】
上記のように構成された吊戸棚10によれば、固定用桟16と、側板12とが、この両部材の突き合わせ面30を左右方向に貫通する波釘20によって結合されているので、固定用桟16と、側板12との間に上下方向のせん断力が作用したとしてもそのせん断力を受け止めることができ、側板12に作用する荷重を、天板11等を介することなく直接固定用桟16に伝えることができる。
すなわち、前記両部材12、16の突き合わせ面30を左右方向に貫通する波釘20によって結合するといった簡易な構成で、側板12に作用する荷重を直接固定用桟16に伝えることができ、天板11、及び、天板11と側板12との間の接合部に作用する荷重を減少させることができる。この結果、上記従来例のように、取付金具や、側板に沿う縦方向の桟等を設ける必要がなく、より低コストで、天板11、及び、天板11と側板12との間の接合部に作用する荷重を減少させ、吊戸棚10の耐荷重性能を向上させることができる。
【0031】
また、本実施形態では、天板11に作用する荷重を減少させることができるので、吊戸棚10全体としての耐荷重性能を低下させることなく、天板11の必要な強度を下げることができ、高価な材料が不要となる。従って、天板11の材質としては、強度の高い高価な材質を用いる必要がなく、安価で適度な強度を有するものを用いることができ、より低コスト化が可能となる。
【0032】
次に、本実施形態の吊戸棚10を製造する方法について説明する。図7は、本実施形態の吊戸棚10を製造する工程を示す図である。
本実施形態の吊戸棚10を製造するには、まず、天板11、底板13、側板12、及び背板15を用意し、天板、及び前記底板の左右両端と、前記側板の上下端とを突き合わせた状態で治具等を用いて仮組みする(ステップS1)。
次いで、互いに突き合わされた、天板11、及び底板13の左右両端と、側板12の上下端との間に樹脂層J(図4参照)を形成し、各板11〜13を接合固定する(ステップS2、接合工程)。
【0033】
図8は、各板11〜13を接合固定する際の態様を示す斜視図である。図8に示すように、各板11〜13を接合するための接合装置Kは、仮組みされた吊戸棚10の四隅の接合部分を覆いつつ固定する四つの固定用金型k1を有している。この固定用金型k1はそれぞれ、樹脂を接合部に供給するための供給装置(図示せず)を備えており、樹脂を各板の接合部の空間S(図4参照)に注入することができる。
仮組みされた吊戸棚10は、図中矢印Yの方向から接合装置Kに挿入されて四隅を押圧固定される。その後、前記供給装置によって、各接合部に樹脂が供給されて樹脂層Jが形成される。そして、吊戸棚10は、固定用金型k1による押圧固定が開放された後に、接合装置Kから取り出され、接合固定が完了する。なお、この接合装置Kは、上述のように、図中矢印Yの方向に吊戸棚10を順送することで、連続的に接合固定を行うことができる。
【0034】
各板11〜13を接合固定した後、波釘20を固定用桟16と側板12の背面から正面方向に向けて打ち込み、固定用桟16と側板12とを結合する(ステップS3、結合工程)。これによって、波釘20は、固定用桟16と、側板12との突き合わせ面30に対して左右方向に貫通して設けられ、本実施形態の吊戸棚10として完成する。
なお、固定用桟16は、上記仮組み時に所定の位置に仮止めしてもよいし、波釘20によって側板12と結合する際に仮止めしてもよい。
【0035】
上記吊戸棚10を製造する方法では、各板11〜13を接合した後に、波釘20を、固定用桟16と側板12の背面から正面方向に向けて打ち込むので、波釘20を打ち込む際に、当該波釘20の周囲には打ち込む作業を阻害する部材等がなく、その作業が容易となる。また、固定用桟16と側板12とを波釘20で結合するといったような簡易な構成で結合するので、上記従来例のように、取付金具や、側板に沿う縦方向の桟等を設ける必要がなく、その作業工数も低減される。
【0036】
また、結合工程(ステップS3)は、吊戸棚10の背面側から波釘20を打ち込む工程であるので、例えば、接合工程(ステップS2)の後、他の工程を介在させたとしても、行うことができる。従って、吊戸棚10全体としての製造工程における自由度が高まり、結果的に、生産スピードのアップ等、生産効率の向上を図ることができ、生産コストを低減することができる。
【0037】
なお、上記実施形態では、天板11と側板12との間を樹脂層Jによって接合固定した場合を例示したが、例えば、図9に示すように、天板11と側板12との間を木ダボにより接合した場合にも、同様に、上記波釘20によって固定用桟16と側板12とを結合してもよい。
図9(a)は、天板と、側板とを木ダボにより接合した吊戸棚における、天板、側板、及び固定用桟の結合部分を拡大した斜視図であり、図9(b)は、その天板と、側板との間の結合部分の要部断面図である。
天板11の端面には、木ダボ21が突設されている。また、側板12の内側面端部には、木ダボ21が挿入された孔部12gが形成されている。このように、天板11と側板12とは、木ダボ21を孔部12gに挿入固定することより結合されている。
このように、天板11と側板12とを木ダボ21によって結合している吊戸棚10においても、固定用桟16と側板12とを波釘20によって結合することで、より低コストで、吊戸棚10の耐荷重性能を向上させることができる。
【0038】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態では、固定用桟16と側板12とを結合する波釘20を、左右両端それぞれ一つずつ設けた場合を例示したが、例えば、固定用桟16の上下幅の寸法に応じて、より多数の波釘20を設けてもよい。
また、本実施形態では、固定用桟16と側板12とを波釘20によって結合した場合を例示したが、例えば、固定用桟16、又は側板12のいずれか一方から突設され、他方に形成された固定孔に挿入される突起部材によって結合することもできる。
【符号の説明】
【0039】
10 吊戸棚
11 天板
12 側板
12e 内側面
15 背板
16 固定用桟
20 波釘(結合部材、打ち込み部材)
30 突き合わせ面30
H 壁面
【技術分野】
【0001】
本発明は、システムキッチン等に用いられる吊戸棚及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
システムキッチンやシステム洗面化粧台等において、空間を有効活用するために吊戸棚が用いられることがある(例えば、特許文献1参照)。
上記吊戸棚は、天板と、底板と、天板及び底板の左右両端に固定された一対の側板と、背板とを有しており、その背面側が室内の壁面に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−169759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の吊戸棚において、当該吊戸棚を壁面に固定するための桟が、天板の背面側端縁や、側板の背面側端縁に設けられるものがある。前記吊戸棚は、この桟を前記壁面に当接固定することで、当該壁面に固定される。
前記桟を有する吊戸棚において、当該吊戸棚に作用する荷重を直接的に側板に負担させることで、天板、及び、天板と側板との間の接合部に作用する荷重を減少させて、前記吊戸棚の耐荷重性能を向上させるために、前記桟を前記側板に強固に結合したものがある。
【0005】
図10は、上記従来の吊戸棚の一例を示す図であり、背面側からみたときの分解斜視図である。図10に示す吊戸棚100は、天板101と、側板102と、背板103と、底板104と、背板103の背面側に設けられた固定用桟105とを備えている。
壁面に固定される固定用桟105は、横桟105aと縦桟105bとを組み合わせることで枠状に組み立てられ、予め背板103の背面に接着固定されている。なお、このとき各桟105a、105bは、背板103が天板101や側板102とともに吊戸棚として組み立てられたときに、各板101、102、104の背面側の端縁に沿って配置されるように接着固定される。
【0006】
この吊戸棚100は、図10に示すように、各板101〜104を仮組みし、仮組みした状態の吊戸棚100の四隅を、金型k2によって押圧固定し、さらに各板の接合部分に樹脂を注入することによって樹脂層を形成して接合固定される。
固定用桟105の縦桟105bは、その側端面からタッピングビス106をねじ込むことで、側板102と結合されている。このタッピングビス106による結合は、上記樹脂層を形成することによる各板101〜104の接合固定の後に行われる。
これによって、吊戸棚100は、当該吊戸棚100に作用する荷重が側板102で負担されるように構成されている。
【0007】
また、図11は、従来の吊戸棚の他の例を示す分解斜視図である。図11に示す吊戸棚200は、図10に示した吊戸棚100と同様、天板201、側板202、背板203、底板204、及び固定用桟205を備えて構成されている。固定用桟205は、横桟205aと縦桟205bとにより構成されている。また、この吊戸棚200は、側板202に沿う側面部206aと、背板203に沿う背面部206bとを有することでL字型に形成された固定用金具206が側板202に固定されている。
【0008】
固定用金具206の側面部206aには、ダボ206cが突設されており、側面部206aに形成された孔にこのダボ206cを差し込むことで、固定用金具206は、側板202に固定されている。背面部206bには、当該吊戸棚200を壁面に固定するためのタッピングビス等が貫通する孔部206dが設けられている。
この吊戸棚200は、各板201〜204を上述の金型k2を用いた樹脂層形成による接合固定の後、固定用桟205が背面側に接着固定される。
この吊戸棚200は、固定用金具206の孔部206dから背板203、横桟205bを貫通し、壁面にねじ込まれるタッピングビス等によって、壁面に固定される。つまり、吊戸棚200は、側板202に固定された固定用金具206を直接壁面に固定することで、当該吊戸棚200に作用する荷重が側板202で負担されるように構成されている。
【0009】
以上のように、従来の吊戸棚は、当該吊戸棚に作用する荷重を側板に負担させて、天板、及び、天板と側板との間の接合部に作用する荷重を減少させ、前記吊戸棚の耐荷重性能を向上させているが、図10に示す吊戸棚100では、横桟105aと縦桟105bとからなる固定用桟105を組み立てた上で側板102の側面にビスで固定するために作業性が悪く、また、図11に示す吊戸棚200では、天板等各板を接合固定した後に固定用桟を結合するために各板を接合固定した後の作業工数が多い上、固定用金具206といった付属部品が必要となり、コストが高くなるという問題を有していた。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、低コストで耐荷重性能を向上させることができる吊戸棚及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明は、背面が壁面に固定される吊戸棚であって、天板と、背板と、前記天板及び背板の左右両端に固定された一対の側板と、前記背板と前記壁面との間に介在した状態で前記天板の背面側下面端縁に沿って設けられ、左右両端部を前記一対の側板の内側面に突き合わせた状態で前記一対の側板と結合される固定用桟と、を備え、前記固定用桟と、前記側板とが、この両部材の突き合わせ面を左右方向に貫通する結合部材によって結合されていることを特徴としている。
【0012】
上記のように構成された吊戸棚によれば、固定用桟と、側板とが、この両部材の突き合わせ面を左右方向に貫通する結合部材によって結合されているので、固定用桟と、側板との間に上下方向のせん断力が作用したとしてもそのせん断力を受け止めることができ、側板に作用する荷重を、天板等を介することなく直接固定用桟に伝えることができる。
すなわち、前記両部材の突き合わせ面を左右方向に貫通する結合部材によって結合するといった簡易な構成で、側板に作用する荷重を直接固定用桟に伝えることができ、天板、及び、天板と側板との間の接合部に作用する荷重を減少させることができる。この結果、上記従来例のように、取付金具や、側板に沿う縦方向の桟等を設ける必要がなく、より低コストで、天板、及び、天板と側板との間の接合部に作用する荷重を減少させ、吊戸棚の耐荷重性能を向上させることができる。
【0013】
前記結合部材は、前記固定用桟と前記側板の背面に対して正面方向に打ち込まれる打ち込み部材よりなることが好ましい。
この場合、天板の背面側下面端縁に沿って設けられている固定用桟に対して、背面から正面方向に向かって打ち込み部材を打ち込むので、打ち込み部材を打ち込む際に、当該打ち込み部材の周囲には打ち込む作業を阻害する部材等がなく、その作業が容易となる。
【0014】
また、本発明は、天板と、背板と、底板と、端部が前記天板及び前記底板の端部に樹脂層を介して接合固定される一対の側板と、前記背板と前記壁面との間に介在した状態で前記天板の背面側下面端縁に沿って設けられ、左右両端部を前記一対の側板の内側面に突き合わせた状態で前記一対の側板と結合される固定用桟と、を備えた吊戸棚の製造方法であって、前記天板、前記背板、前記底板、及び前記側板を仮組みし、前記天板、及び前記底板の端部と、前記側板の端部との間に樹脂層を形成し各板を接合固定する接合工程と、前記接合工程の後、前記天板の背面側下面端縁に沿うように配置された前記固定用桟と前記側板の背面に対して、前記固定用桟と前記側板とを結合する打ち込み部材を正面方向に向けて打ち込むことで、当該打ち込み部材を前記固定用桟と前記側板との間の突き合わせ面に対して左右方向に貫通させ、前記固定用桟と前記側板とを結合する結合工程と、を備えていることを特徴としている。
【0015】
上記のように構成された吊戸棚の製造方法によれば、各板を接合した後に、打ち込み部材を、固定用桟と側板の背面から正面方向に向けて打ち込むので、打ち込み部材を打ち込む際に、当該打ち込み部材の周囲には打ち込む作業を阻害する部材等がなく、その作業が容易となる。また、上記従来例のように、取付金具や、側板に沿う縦方向の桟等を設ける必要がなく、その作業工数も低減される。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明の吊戸棚によれば、低コストで耐荷重性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態による吊戸棚を適用したシステムキッチンの斜視図である。
【図2】吊戸棚を背面側からみたときの斜視図である。
【図3】図2中、III−III線の一部矢視断面図である。
【図4】天板と側板との間の接合部分を示した断面図である。
【図5】(a)は、天板の接合面となる一端面を拡大した斜視図であり、(b)は、側板の接合面となる一端面を拡大した斜視図である。
【図6】(a)は、固定用桟と、側板との結合部分を拡大した斜視図であり、(b)は、その結合部分の断面図である。
【図7】吊戸棚を製造する工程を示す図である。
【図8】各板を接合固定する際の態様を示す斜視図である。
【図9】(a)は、天板と、側板とを木ダボにより接合した吊戸棚における、天板、側板、及び固定用桟の結合部分を拡大した斜視図であり、(b)は、その天板と、側板との間の結合部分の要部断面図である。
【図10】従来の吊戸棚の一例を示す図であり、背面側からみたときの分解斜視図である。
【図11】従来の吊戸棚の他の例を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の第一の実施形態による吊戸棚を適用したシステムキッチンの正面図である。このシステムキッチン1は、上面にシンクが設けられたキャビネット2と、その上方配置され背面が壁面Hに固定されている吊戸棚10とを備えている。
【0019】
図2は、第一の実施形態による吊戸棚を背面側からみたときの斜視図である。吊戸棚10は、天板11と、この天板11の左右両端に固定された一対の側板12と、一対の側板12の下端に固定された底板13とを備えている。吊戸棚10の正面側には、一対の側板12の正面側端部に固定され、正面側の開口には開き戸14が開閉自在に設けられている。
【0020】
図3は、図2中、III−III線の一部矢視断面図である。図2及び図3に示すように、吊戸棚10は、その背面側に背板15と、当該吊戸棚10を壁面Hに固定するための固定用桟16と、下側桟17とをさらに備えている。
背板15は、図3に示すように、天板11の背面側端部に形成された溝部11aに嵌め込まれている。また、他の板12、13においても、背板15を嵌め込むための溝部が背面側端部に形成されており、背板15は、各溝部に嵌め込まれて吊戸棚10の背面側に固定されている。
【0021】
各板11、12、13は、例えば、パーチクルボードにより形成されており、各板同士は、樹脂によって接合されている。
図4は、天板11と側板12との間の接合部分を示した断面図である。図4に示すように、両板11、12の間には、両者を接着している樹脂層Jが介在している。この樹脂層Jは、天板11の一端面と、側板12の一端面とを突き合わせたときに形成される樹脂を注入するための空間S1に樹脂を注入することで形成されている。なお、底板13と側板12との間の接合部分についても、図4に示す構成によって接合されている。
【0022】
図5(a)は、天板11の接合面となる一端面を拡大した斜視図であり、図5(b)は、側板12の接合面となる一端面を拡大した斜視図である。
天板11の一端面の両端部には、側板12の端面の形状と一致して当接するように形成された当接部11bと、当接部11bよりも内側に凹む凹部11cとが形成されている。
また、側板12の一端面には、天板11の下面11dに当接する縁部12aと、天板11の当接面11bにおける垂直面11b1に当接する段部12bと、天板11の当接面11bにおける傾斜面11b2に当接する傾斜面12cとが形成されている。
【0023】
上記構成の天板11及び側板12それぞれの一端面を互いに突き合わせた場合、天板11は、その下面11dと、当接部11bとが側板12における各部12a〜12cの両端部に当接する。このため、両板11、12の接合面には、天板11の凹部11cと側板12との間に、上述の樹脂を注入するための空間Sが形成される。なお、注入される樹脂は、凹部11cに一致して天板11の一端面の縁部に形成された面取部11eにより構成される、前記空間と外部を連通する通路S2(図4参照)から注入される。
【0024】
上述の各板11、12、13を樹脂によって接合するには、各板11、12、13及び背板15を組み立てた後、樹脂により接合する四隅を金型等で固定した上で、樹脂が注入されて接合される。
【0025】
図2及び図3に戻って、固定用桟16は、天板11の背面側下面端縁に沿って設けられている長尺の部材であり、その左右両端部が左右の側板12に突き合わされた状態で設けられている。また、固定用桟16は、図3に示すように、当該吊戸棚10の内側からねじ込まれる複数のタッピングビス18によって、壁面Hに固定される。固定用桟16は、吊戸棚10が壁面Hに固定された状態で、背板15と壁面Hとの間に介在して配置される。
【0026】
さらに、固定用桟16は、背板15に対しては接着剤によって接着されており、天板11に対しては多数のステープラ19によって結合固定されている。また、側板12に対しては、ステープラ19とともに、結合部材としての波釘によって結合されている。
【0027】
図6(a)は、固定用桟16と、側板12との結合部分を拡大した斜視図であり、図6(b)は、その結合部分の断面図である。
固定用桟16は、端面16aを側板12の内側面12に突き合わせた状態で側板12と結合されている。
波釘20は、固定用桟16と、側板12との突き合わせ面30を左右方向に貫通して設けられている。本実施形態では、左右端それぞれ一つずつの波釘20を設けた場合を示している。
波釘20は、突き合わせ面30に対して左右方向に貫通して設けられることで、固定用桟16と、側板12との結合部分に作用する上下方向のせん断力を受け止めることができ、前記せん断力が作用したとしても、固定用桟16と、側板12との間の結合を強固に維持することができる。
【0028】
波釘20は、図6(a)に示すように、固定用桟16と側板12の背面から正面方向に向けて打ち込まれることで、突き合わせ面30に対して左右方向に貫通して設けられている。
この場合、天板11の背面側下面端縁に沿って設けられている固定用桟16に対して、背面から正面方向に向かって波釘20を打ち込むので、波釘20を打ち込む際に、当該波釘20の周囲には打ち込む作業を阻害する部材等がなく、その作業が容易となる。
【0029】
ここで、吊戸棚10を使用したときに当該吊戸棚10に作用する荷重は、背面側下面端縁に沿って固定用桟16が設けられている天板11、及び上記波釘20によって結合されている左右一対の側板12に作用し、これら天板11、及び側板12を介して、壁面Hに固定された固定用桟16に作用する。これによって、吊戸棚10は、前記荷重を支持しつつ固定用桟16によって壁面Hに固定される。
【0030】
上記のように構成された吊戸棚10によれば、固定用桟16と、側板12とが、この両部材の突き合わせ面30を左右方向に貫通する波釘20によって結合されているので、固定用桟16と、側板12との間に上下方向のせん断力が作用したとしてもそのせん断力を受け止めることができ、側板12に作用する荷重を、天板11等を介することなく直接固定用桟16に伝えることができる。
すなわち、前記両部材12、16の突き合わせ面30を左右方向に貫通する波釘20によって結合するといった簡易な構成で、側板12に作用する荷重を直接固定用桟16に伝えることができ、天板11、及び、天板11と側板12との間の接合部に作用する荷重を減少させることができる。この結果、上記従来例のように、取付金具や、側板に沿う縦方向の桟等を設ける必要がなく、より低コストで、天板11、及び、天板11と側板12との間の接合部に作用する荷重を減少させ、吊戸棚10の耐荷重性能を向上させることができる。
【0031】
また、本実施形態では、天板11に作用する荷重を減少させることができるので、吊戸棚10全体としての耐荷重性能を低下させることなく、天板11の必要な強度を下げることができ、高価な材料が不要となる。従って、天板11の材質としては、強度の高い高価な材質を用いる必要がなく、安価で適度な強度を有するものを用いることができ、より低コスト化が可能となる。
【0032】
次に、本実施形態の吊戸棚10を製造する方法について説明する。図7は、本実施形態の吊戸棚10を製造する工程を示す図である。
本実施形態の吊戸棚10を製造するには、まず、天板11、底板13、側板12、及び背板15を用意し、天板、及び前記底板の左右両端と、前記側板の上下端とを突き合わせた状態で治具等を用いて仮組みする(ステップS1)。
次いで、互いに突き合わされた、天板11、及び底板13の左右両端と、側板12の上下端との間に樹脂層J(図4参照)を形成し、各板11〜13を接合固定する(ステップS2、接合工程)。
【0033】
図8は、各板11〜13を接合固定する際の態様を示す斜視図である。図8に示すように、各板11〜13を接合するための接合装置Kは、仮組みされた吊戸棚10の四隅の接合部分を覆いつつ固定する四つの固定用金型k1を有している。この固定用金型k1はそれぞれ、樹脂を接合部に供給するための供給装置(図示せず)を備えており、樹脂を各板の接合部の空間S(図4参照)に注入することができる。
仮組みされた吊戸棚10は、図中矢印Yの方向から接合装置Kに挿入されて四隅を押圧固定される。その後、前記供給装置によって、各接合部に樹脂が供給されて樹脂層Jが形成される。そして、吊戸棚10は、固定用金型k1による押圧固定が開放された後に、接合装置Kから取り出され、接合固定が完了する。なお、この接合装置Kは、上述のように、図中矢印Yの方向に吊戸棚10を順送することで、連続的に接合固定を行うことができる。
【0034】
各板11〜13を接合固定した後、波釘20を固定用桟16と側板12の背面から正面方向に向けて打ち込み、固定用桟16と側板12とを結合する(ステップS3、結合工程)。これによって、波釘20は、固定用桟16と、側板12との突き合わせ面30に対して左右方向に貫通して設けられ、本実施形態の吊戸棚10として完成する。
なお、固定用桟16は、上記仮組み時に所定の位置に仮止めしてもよいし、波釘20によって側板12と結合する際に仮止めしてもよい。
【0035】
上記吊戸棚10を製造する方法では、各板11〜13を接合した後に、波釘20を、固定用桟16と側板12の背面から正面方向に向けて打ち込むので、波釘20を打ち込む際に、当該波釘20の周囲には打ち込む作業を阻害する部材等がなく、その作業が容易となる。また、固定用桟16と側板12とを波釘20で結合するといったような簡易な構成で結合するので、上記従来例のように、取付金具や、側板に沿う縦方向の桟等を設ける必要がなく、その作業工数も低減される。
【0036】
また、結合工程(ステップS3)は、吊戸棚10の背面側から波釘20を打ち込む工程であるので、例えば、接合工程(ステップS2)の後、他の工程を介在させたとしても、行うことができる。従って、吊戸棚10全体としての製造工程における自由度が高まり、結果的に、生産スピードのアップ等、生産効率の向上を図ることができ、生産コストを低減することができる。
【0037】
なお、上記実施形態では、天板11と側板12との間を樹脂層Jによって接合固定した場合を例示したが、例えば、図9に示すように、天板11と側板12との間を木ダボにより接合した場合にも、同様に、上記波釘20によって固定用桟16と側板12とを結合してもよい。
図9(a)は、天板と、側板とを木ダボにより接合した吊戸棚における、天板、側板、及び固定用桟の結合部分を拡大した斜視図であり、図9(b)は、その天板と、側板との間の結合部分の要部断面図である。
天板11の端面には、木ダボ21が突設されている。また、側板12の内側面端部には、木ダボ21が挿入された孔部12gが形成されている。このように、天板11と側板12とは、木ダボ21を孔部12gに挿入固定することより結合されている。
このように、天板11と側板12とを木ダボ21によって結合している吊戸棚10においても、固定用桟16と側板12とを波釘20によって結合することで、より低コストで、吊戸棚10の耐荷重性能を向上させることができる。
【0038】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態では、固定用桟16と側板12とを結合する波釘20を、左右両端それぞれ一つずつ設けた場合を例示したが、例えば、固定用桟16の上下幅の寸法に応じて、より多数の波釘20を設けてもよい。
また、本実施形態では、固定用桟16と側板12とを波釘20によって結合した場合を例示したが、例えば、固定用桟16、又は側板12のいずれか一方から突設され、他方に形成された固定孔に挿入される突起部材によって結合することもできる。
【符号の説明】
【0039】
10 吊戸棚
11 天板
12 側板
12e 内側面
15 背板
16 固定用桟
20 波釘(結合部材、打ち込み部材)
30 突き合わせ面30
H 壁面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
背面が壁面に固定される吊戸棚であって、
天板と、
背板と、
前記天板及び背板の左右両端に固定された一対の側板と、
前記背板と前記壁面との間に介在した状態で前記天板の背面側下面端縁に沿って設けられ、左右両端部を前記一対の側板の内側面に突き合わせた状態で前記一対の側板と結合される固定用桟と、を備え、
前記固定用桟と、前記側板とが、この両部材の突き合わせ面を左右方向に貫通する結合部材によって結合されていることを特徴とする吊戸棚。
【請求項2】
前記結合部材は、前記固定用桟と前記側板の背面に対して正面方向に打ち込まれる打ち込み部材よりなる請求項1に記載の吊戸棚。
【請求項3】
天板と、背板と、底板と、端部が前記天板及び前記底板の端部に樹脂層を介して接合固定される一対の側板と、前記背板と前記壁面との間に介在した状態で前記天板の背面側下面端縁に沿って設けられ、左右両端部を前記一対の側板の内側面に突き合わせた状態で前記一対の側板と結合される固定用桟と、を備えた吊戸棚の製造方法であって、
前記天板、前記背板、前記底板、及び前記側板を仮組みし、前記天板、及び前記底板の端部と、前記側板の端部との間に樹脂層を形成し各板を接合固定する接合工程と、
前記接合工程の後、前記天板の背面側下面端縁に沿うように配置された前記固定用桟と前記側板の背面に対して、前記固定用桟と前記側板とを結合する打ち込み部材を正面方向に向けて打ち込むことで、当該打ち込み部材を前記固定用桟と前記側板との間の突き合わせ面に対して左右方向に貫通させ、前記固定用桟と前記側板とを結合する結合工程と、を備えていることを特徴とする吊戸棚の製造方法。
【請求項1】
背面が壁面に固定される吊戸棚であって、
天板と、
背板と、
前記天板及び背板の左右両端に固定された一対の側板と、
前記背板と前記壁面との間に介在した状態で前記天板の背面側下面端縁に沿って設けられ、左右両端部を前記一対の側板の内側面に突き合わせた状態で前記一対の側板と結合される固定用桟と、を備え、
前記固定用桟と、前記側板とが、この両部材の突き合わせ面を左右方向に貫通する結合部材によって結合されていることを特徴とする吊戸棚。
【請求項2】
前記結合部材は、前記固定用桟と前記側板の背面に対して正面方向に打ち込まれる打ち込み部材よりなる請求項1に記載の吊戸棚。
【請求項3】
天板と、背板と、底板と、端部が前記天板及び前記底板の端部に樹脂層を介して接合固定される一対の側板と、前記背板と前記壁面との間に介在した状態で前記天板の背面側下面端縁に沿って設けられ、左右両端部を前記一対の側板の内側面に突き合わせた状態で前記一対の側板と結合される固定用桟と、を備えた吊戸棚の製造方法であって、
前記天板、前記背板、前記底板、及び前記側板を仮組みし、前記天板、及び前記底板の端部と、前記側板の端部との間に樹脂層を形成し各板を接合固定する接合工程と、
前記接合工程の後、前記天板の背面側下面端縁に沿うように配置された前記固定用桟と前記側板の背面に対して、前記固定用桟と前記側板とを結合する打ち込み部材を正面方向に向けて打ち込むことで、当該打ち込み部材を前記固定用桟と前記側板との間の突き合わせ面に対して左右方向に貫通させ、前記固定用桟と前記側板とを結合する結合工程と、を備えていることを特徴とする吊戸棚の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−10993(P2011−10993A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159790(P2009−159790)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【出願人】(000108661)タカラスタンダード株式会社 (51)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【出願人】(000108661)タカラスタンダード株式会社 (51)
【Fターム(参考)】
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