説明

同位体濃縮の水素化ホウ素の合成方法及び同位体濃縮のボラン類の合成方法

本発明は、10B同位体濃縮のホウ酸又は11B同位体濃縮のホウ酸から同位体濃縮の水素化ホウ素金属塩、テトラデカヒドロウンデカボラン金属塩及びデカボランを合成する新規な方法を提供する。本発明は、同位体濃縮の水素化ホウ素ナトリウム又はリチウム、MB1114(式中、MはLi、Na、K又はアルキルアンモニウムである。)及びデカボランの合成に特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本願方法で中間体として製造される同位体濃縮の水素化ホウ素を用いて、同位体濃縮の水素化ホウ素化合物を合成する新規な方法、及び同位体濃縮の中性又は陰イオンのボラン類の製造方法を提供する。更に詳細には、本発明は、同位体濃縮のホウ酸から同位体濃縮の水素化ホウ素金属を合成する改良された方法、及び同位体濃縮の中性又は陰イオンのボラン類を製造する中間体としての同位体濃縮の水素化ホウ素金属を製造することを含んで成る、5〜96個のホウ素原子を含有する同位体濃縮の中性又は陰イオンのボラン類を合成する方法を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
大きな水素化ホウ素の化合物は、半導体の製造に於いて、ホウ素でドープしたP型の半導体の不純物領域に於ける重要な原料となってきた。さらに具体的には、高分子量の水素化ホウ素化合物、例えば少なくとも5個のホウ素原子クラスターを含有する水素化ホウ素化合物は、ホウ素原子注入用の好ましいホウ素原子供給原料である。
【0003】
最新の半導体技術に於いては、より微細で、より高速な素子の絶えまない開発が重要となっている。この過程をスケーリングと呼び、リソグラフ処理方法の絶えまない進歩によって推進されており、集積回路を有する半導体基板に於ける造作の更なる微細化に向けてその定義が塗り替えられている。一般に受け入れられているスケーリング理論は、半導体素子製造業者に同時に(即ち、各技術又はスケーリングの節目に)半導体素子設計全般に係る適切なサイズ変更を導入させることにより、普及してきた。イオン注入方法に最も影響するスケーリングとは、接合部の厚み(depth)のスケーリングであり、素子の寸法が小さくなればなるほど、接合部のより浅いものが必要とされようになる。集積回路技術のスケールとして、ますます浅い接合部が必要とされるのは、即ち「スケーリングの各段階に於けるイオン注入エネルギーの削減が求められている。」ということである。最新の0.13ミクロン以下の素子に求められる極めて浅い接合部は、「超浅接合部」又はUSJsと称される。
【0004】
ホウ素でドープしたP型接合部を製造する方法は、ホウ素を使用するイオン注入方法の困難さにより阻まれてきた。ホウ素原子は、軽い(分子量=10.8)ので、シリコン基板により深く浸透し、アニーリング又はその他の高温工程に於いて基板格子間に迅速に拡散する。
【0005】
ホウ素クラスター又はケージといったボラン類は、軽減した浸透性でホウ素を半導体基板に送達するための供給原料として研究されてきた。例えば、同一出願人による2003年6月26日に出願された国際特許出願PCT/US03/20197号に挙げられている様に、式:B(式中、100>n>5、及びm≦n+8である)で表される水素化ホウ素分子をイオン化してホウ素イオンを基板に注入してもよいし、また、前述の注入方法に用いられるイオン源によって基板に注入してもよい。ホウ素イオンの注入法に於いて使用される好ましい化合物には、デカボラン(B1014)及びオクタデカボラン(B1822)が含まれる。
【0006】
大きな水素化ホウ素の化合物、即ち5〜約100個のホウ素原子(さらに一般的には、10〜約100個又は5〜約25個のホウ素原子)を有するホウ素化合物は、半導体基板にホウ素原子を送達する分子イオン注入法に用いるのに好ましい。一般に、大きな水素化ホウ素の化合物には、2つ又はそれ以上の構造異性体、例えば、同じ化学式で表されるがケージ構造に於いてホウ素原子の構造配置が異なる2つ又はそれ以上の化合物、が存在する。さらに、ホウ素原子の数は同じであるが、水素原子の数が異なる2つ又はそれ以上の構造的に関連性のある水素化ホウ素化合物が、種々のサイズのホウ素クラスターとして単離されている。このような化合物は、通常、クロソ(closo)(B)、ニド(nido)(Bn+2)、アラクノ(arachno)(Bn+4)、ハイフォ(hypho)(Bn+6)、コンジャンクト(conjuncto)(Bn+8)等と言われている。このように、構造異性体及び水素の量が異なっている化合物を含む複数の異種水素化ホウ素が、n個のホウ素分子を有する水素化ホウ素としてよく知られている。種々の巨大多面体のボラン類、並びにn個のホウ素原子及び異なった数の水素を有する公知の化合物についての概説が提供されている、例えば、JemmisらのJ. Am.Chem.Soc.、v.123、4313−4323(2001)を参照されたい。
【0007】
国際特許出願WO03/044837号(Applied Materials, Inc, Santa Clara CA)には、11B濃縮の化合物を含む同位体濃縮のボロン化合物をイオン化して、基板に注入するイオン注入方法が記載されいる。当該’837号公報には、米国特許第6,086,837号(Cowanら) に記載の方法による、同位体濃縮のボラン類の製造についての記載があるが、これらの方法は、10B又は11B同位体濃縮のボランを製造する最新の工業的方法であると報告されている。
【0008】
Cowan(米国特許第6,086,837号)には、B−10(10B)濃縮のホウ酸を出発原料とするB−10濃縮のデカボランの製造方法が記載されいる。B−10又はB−11(11B)の何れかの濃縮の水素化ホウ素を製造するCowanの方法は、ホウ酸から出発して、多数の合成及び精製工程を包含している。更に詳細には、ホウ酸を水素化ホウ素アルカリ金属へ変換するCowanの方法は、有用なB−10濃縮の水素化ホウ素を得るためには時間のかかる多くの工程を要するので、相対的に収率が低くなるが、最終製品を得るには更なる反応を要するものとなっている。
【0009】
従って、Cowanの方法は、共沸蒸留方法を用いてホウ酸とメタノールからB−10ホウ酸メチルを製造することから出発する。ホウ酸メチルは、凍結再結晶化によって残余のメタノールから分離し、この工程を3回繰り返して80%の収率でホウ酸トリメチルを生成する。次いで、このホウ酸トリメチルを鉱油中の水素化ナトリウム懸濁液に220℃〜250℃にて加えて、12時間加熱する。安全のために、金属製の還流凝縮器が必要となる。生成された水素化ホウ素の単離には、特別な注意を要する。最初に、鉱油混合物を氷と水の混合物に注いで、水素ガスを発生してかなり発熱する工程で、過剰の水素化ナトリウムを分解する。次に、水素化ホウ素の水溶液を、デカンテーション又は分液漏斗を用いて鉱油から分離する。水素化ホウ素の水溶液は、60℃に加熱して窒素気流でパージするか、又は減圧下で除去するかの何れかによって、メタノールを除去しなければならない。得られた水溶液は、水酸化ナトリウム及びB−10濃縮の水素化ホウ素を包含している。この溶液に炭酸ガスをバブリングして、水酸化ナトリウムを炭酸ナトリウムに変換する。次いで、得られたスラリーをn−プロピルアミンで抽出して、n−プロピルアミンを蒸発させると、最終生成物が得られる。水素化ホウ素ナトリウムのn−プロピルアミンへの溶解度には限度があるので、相当な量の揮発性溶媒が必要である。通常、45〜65%の収率で得られる。Cowanに列挙されている方法では、同位体濃縮の水素化ホウ素ナトリウムを製造するのに合計10個の時間を要する工程を必要とする。
【0010】
Lippincottの米国特許第2,642,453号は、ホウ酸と第三級アルコールの縮合で、共沸物の分留による水の除去によって、ホウ酸トリ(tert−ブチル)等のような第三級アルコールのホウ酸エステルを製造する方法に関する。各種ホウ酸エステルの製造及び加水分解速度は、H.Steinberg及びD.L.Hunterの「Industry and Engineering Chemistry, v. 49, No. 2, (1957) p.174-181」 に記載されている。
【0011】
Kollonitschらの米国特許第3,063,791号は、中間体であるホウ酸トリアルキルを水素化アルミニウムアルカリ金属と接触させることによって、ホウ酸から天然存在度の同位体ベースの水素化ホウ素のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩を製造する方法に関する。Kollonitschは同位体濃縮の水素化ホウ素の合成方法を提供するものではない。
【0012】
Dunks及び共同研究者らには、出発物質の水素化ホウ素又はMBから、MB1114塩及びデカボラン(B1014)を製造する方法が記載されている。Dunksらの米国特許第4,115,520号、米国特許第4,115,521号及び米国特許第4,153,672号は、デカボロンの合成方法及びB1114の合成方法に関するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
同位体濃縮のボロンの合成については文献に報告があるが、それらの合成ルートは長く、多くの場合、化合物の収率は極めて低いものとなっている。従って、同位体濃縮のホウ酸から同位体濃縮の水素化ホウ素及び同位体濃縮のホウ素類を合成する新規な方法が望まれている。特に、同位体濃縮のMBH、MB1114、B1014を合成する新規な方法及び同位体濃縮の式:B(式中、nは12〜96で、m≦n+8である)の大きなボラン類を製造する方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(発明の要約)
本発明者らは、ここに同位体濃縮の水素化ホウ素金属、同位体濃縮のデカボラン及び同位体濃縮のテトラデカヒドロウンデカボラン金属塩(MB1114)の新規な製造方法を見出した。更に、テトラデカヒドロウンデカボラン金属塩及びデカボランの合成方法は、同位体濃縮の水素化ホウ素金属の本発明の製造方法を組み込んでいる。本発明は特に、同位体濃縮のMBH、MB1114及びB1014(式中、Mは1価又は2価の陽イオンである)の合成に有用である。
【0015】
一態様に於いて、本発明は同位体濃縮の水素化ホウ素金属を合成する改良された方法を提供し、この方法は以下の工程を包含している。
(a)同位体濃縮のホウ酸を供給する;
(b)同位体濃縮のホウ酸を、同位体濃縮のホウ酸エステルの形成を導く条件下で、アルコールと接触させる;及び
(c)同位体濃縮のホウ酸エステルを、同位体濃縮の水素化ホウ素金属の形成を導く条件下で、水素化アルミニウム金属で還元する。
【0016】
他の態様に於いて、本発明は同位体濃縮のテトラデカヒドロウンデカボラン金属塩を製造する改良された方法を提供し、この方法は以下の工程を包含している。
(a)本明細書で提供される何れかの方法によって製造される同位体濃縮の水素化ホウ素金属を供給する;及び
(b)同位体濃縮の水素化ホウ素金属の溶液を、テトラデカヒドロウンデカボラン金属塩の形成を導く条件下で、式:R−X又は同位体濃縮のBY(リガンド)の化合物と接触させる。
式中、Rはアルキル、アルケニル又はアラルキルであり;
Xは、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、アルキルスルホネート又はアリールスルホネートであり;
Yは、フルオロ、クロロ及びブロモであり;そして
リガンドは、存在しないか、エーテル、アミン又はピリジンである。
【0017】
更なる他の態様に於いて、本発明は同位体濃縮のデカボランを製造する方法を提供し、この方法は以下の工程を包含している。
(a)本明細書で提供される方法による同位体濃縮のテトラデカヒドロウンデカボラン金属塩を供給する;及び
(b)同位体濃縮のテトラデカヒドロウンデカボラン金属塩を、テトラデカヒドロウンデカボラン金属塩の酸化を導く条件下に、−10℃〜約50℃の温度で、少なくとも約0.6ボルトの電極電位を有する酸化剤と接触させる。
【0018】
本発明の方法は、文献に述べられている方法に比べてより少ない合成及び精製工程で、同位体濃縮の水素化ホウ素金属、同位体濃縮のテトラデカヒドロウンデカボラン金属塩及び同位体濃縮のデカボランを高収率で提供する。更に、この合成方法は、同位体濃縮のデカボラン、及び各種の大きな同位体濃縮のボラン又は同位体濃縮のボランの混合物(式中、それぞれのボランはn個のホウ素原子(12<n<100)を含有している)を製造する出発物質として使用するのに適切な、同位体濃縮のテトラデカヒドロウンデカボラン金属塩の製造に適しており、この方法は本発明方法による同位体濃縮のMBH、同位体濃縮のMB1114及び/又は同位体濃縮のB1014の少なくとも1つを製造することを包含している。好ましい合成方法は、実質的に同一の化学組成を有する混合物を生じ、例えば好ましい合成方法は、式:Bの化合物(1つ又はそれ以上の構造異性体が存在していてもよい)を供給する。
ある他の態様に於いて、それぞれがn個のホウ素原子及び異なった数の水素原子を含有しているボラン類の混合物を供給する合成方法も本発明によって意図されている。その理由の一つとして、このようなn個のホウ素原子を有する各種のボラン類の混合物は、注入工程でイオン化されると、式:Bの単一ボランよりなるボラン組成物として、実質的に同一な分子イオンの混合物を生ずることである。従って、B、Bなど(式中、n≠pであり、nとpの間の絶対差は約8以下である)のような2又はそれ以上のボラン化合物を供給する方法も本発明の意図するところである。
本発明のその他の様態を、以下に考察する。
【0019】
(発明の詳細な説明)
注目すべきことに、本発明者らは水素化ホウ素金属、デカボラン、テトラデカヒドロウンデカボラン金属塩及びこれらから製造される水素化ホウ素化合物を含む、水素化ホウ素及びその塩の新規な製造方法を見出した。本発明の方法は、同位体濃縮のボラン類及びホウ素含有化合物を製造するための効率的な合成方法を提供する。
【0020】
一態様に於いて、本発明は同位体濃縮の水素化ホウ素金属の合成方法を提供し、この方法は以下の工程を包含している。
(a)同位体濃縮のホウ酸を供給する;
(b)同位体濃縮のホウ酸を、同位体濃縮のホウ酸エステルの形成を導く条件下で、アルコールと接触させる;及び
(c)同位体濃縮のホウ酸エステルを、同位体濃縮の水素化ホウ素金属の形成を導く条件下で、水素化アルミニウム金属で還元する。
【0021】
本発明で提供される水素化ホウ素金属を合成するある好ましい方法に於いて、ホウ酸のエステル化によって製造される同位体濃縮のホウ酸エステルは、式Iで表される化合物である。
【0022】
【化004】

【0023】
式中、
それぞれのRは、直鎖又は分岐鎖のアルキル、シクロアルキル、シクロアルキル−アルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、ハロアルキル及びアルキルエーテルよりなる群から独立して選ばれるか、又は2つのR基が一緒になって、それぞれがアルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキル−アルキル、アリール、アラルキル及びアルコキシよりなる群から選ばれる1又はそれ以上の基で置換されていてもよい、α,ω−アルキレン基又は1,2−シクロアルキレン基を形成し;
nは1又は2である。そして
【0024】
n=1のとき、R’は、アルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、ハロアルキル、及びアルキルエーテルよりなる群から選ばれるか、又は
n=2のとき、R’は、それぞれがアルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキル−アルキル、アリール、アラルキル、及びアルコキシよりなる群から選ばれる1又はそれ以上の基で置換されていてもよい、α,ω−アルキレン基又は1,2−シクロアルキレン基である。
【0025】
本発明で提供される同位体濃縮の水素化ホウ素金属を合成する好ましい方法は、同位体濃縮のホウ酸エステルが、式:B(OR)(式中、Rは、直鎖又は分岐鎖のC1−10アルキル、フェニル、ベンジル、C3−8シクロアルキル、C3−8シクロアルキル−C1−10アルキル、C2−10アルケニル、C1−10アルコキシ、C1−10ハロアルキル及びC2−10アルキルエーテルよりなる群から、それぞれ独立して選ばれる。)で表される化合物である方法を含む。
【0026】
本発明で提供される同位体濃縮の水素化ホウ素金属を合成する他の好ましい方法は、同位体濃縮のホウ酸エステルが、式:B(OR)(式中、それぞれのRは同一であり、そしてRは、直鎖又は分岐鎖のC1−10アルキル、フェニル、ベンジル、C3−8シクロアルキル、C3−8シクロアルキル−C1−10アルキル、C2−10アルケニル、C1−10アルコキシ、C1−10ハロアルキル及びC2−10アルキルエーテルよりなる群から選ばれる。)で表される化合物である方法を含む。
【0027】
本発明で提供される同位体濃縮の水素化ホウ素金属の他の好ましい合成方法に於いて、同位体濃縮のホウ酸エステルが、式IIで表される化合物である。
【0028】
【化005】

【0029】
式中、R及びRは、水素、直鎖又は分岐鎖のアルキル、シクロアルキル、シクロアルキル−アルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、ハロアルキル及びアルキルエーテルから、それぞれ独立して選ばれ;そして
pは、1〜5から選ばれる整数である。
【0030】
同位体濃縮の水素化ホウ素金属の合成方法に使用するのに適した式IIのある好ましい同位体濃縮のホウ酸エステルは、式IIIで表される同位体濃縮のホウ酸エステルを含む。
【0031】
【化006】

【0032】
式中、R、Rx’、及びRは、水素、直鎖又は分岐鎖のC1−10アルキル、C1−10アルコキシ並びにC3−8シクロアルキルよりなる群から、それぞれ独立して選ばれるか、又はRx’及びRは、一緒になってα,ω−アルキレン基を形成し;そして、qは1又は2である。
式IIIの特に好ましい化合物は、R、Rx’及びRが、水素又は直鎖若しくは分岐鎖のC1−14アルキルよりなる群から選ばれる。
式IIIの特に好ましい化合物は、R、Rx’及びRがメチルで、qが1又は2である。
ホウ酸及び2−メチル−2,4−ペンタンジオールを縮合して製造される化合物、例えば二ホウ酸トリス(2−メチル−2,4−ペンタジオール)が、式IIIの特に好ましい化合物である。
【0033】
エステル化工程に於けるアルコール及び同位体濃縮のホウ酸の化学量論的比率は、特に限定されないが、ホウ酸がホウ酸エステルに完全に変換するのに有効な十分な量のアルコールを用いることが一般に好ましい。同位体濃縮のホウ酸を少なくとも3当量のアルコールと接触させることがより好ましい。
【0034】
ある特に好ましいエステル化工程に於いては、同位体濃縮のホウ酸を、少なくとも3当量の直鎖又は分岐鎖のC1−10アルカノール又は少なくとも1.5当量のC2−10アルカンジオールと接触させる。より好ましくは、同位体濃縮のホウ酸を、約3当量〜6当量の直鎖又は分岐鎖のC1−10アルカノール又は約1.5当量〜3当量のC2−10アルカンジオールと接触させる。ある特に好ましいエステル化工程に於いては、同位体濃縮のホウ酸を、約3当量の直鎖のC2−10アルカノール又は1.5当量の直鎖又は分岐鎖の1,2−C2−10アルカンジオールと接触させる。
【0035】
好ましいエステル化工程は、脱水条件下、例えば反応混合物から水を消費又は除去するような条件下で、同位体濃縮のホウ酸とアルコールを接触させることを含有してなる。水を除去する方法としてどのような方法も可能であるが、限定されない例として、モレキュラーシーブ、ケイ酸塩、(塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム等のような)無水塩、又は水又はその共沸物の分別蒸留が含まれる。一般に、水又は水と溶媒の共沸物の分別蒸留が、エステル化反応混合物から水を除去する好ましい方法である。
エステル化反応混合物から水を除去する好ましい方法は、トルエン、キシレン、メシチレン、ベンゼン、1,2−ジクロロエタン及びこれらの混合物から選ばれる少なくとも1つの溶媒と水との共沸物の分別蒸留を含む。
【0036】
エステル化工程は一般に、高い温度、例えば少なくとも約25℃の温度で行われる。より好ましくは、エステル化は約30℃、40℃、50℃、60℃、70℃より高い、又は約80℃より高い温度で行われる。ある特に好ましい態様に於いて、エステル化工程は、約90℃〜約200℃、約95℃〜約175℃、又は反応混合物を還流するのに十分な温度で実施される。
【0037】
本発明のある態様に於いて、同位体濃縮の水素化ホウ素合成の方法は、同位体濃縮のホウ酸エステル(例えば、B(OR))を水素化アルミニウム金属と溶媒の混合物と接触させることを含む、ホウ酸エステルの還元工程を包含する。一般的に好ましい水素化アルミニウム金属は、アルミニウム原子に結合した少なくとも1個の、そしてより好ましくは2、3又は4個の水素リガンドを含有してなる。好ましい水素化アルミニウム金属は、金属がリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等の第I族又は第II族金属であるような化合物である。特に好ましい水素化アルミニウム金属は、水素化アルミニウムリチウム(LAH)、水素化アルミニウムナトリウム及びこれらの混合物である。
【0038】
本発明で提供される方法は、水素化ホウ素金属及び重水素化ホウ素金属の製造に適している。従って、同位体濃縮の重水素化ホウ素金属を製造するために、アルミニウム原子に結合した少なくとも1個の、又はより好ましくは2、3若しくは4個の重水素リガンドを有する重水素化アルミニウム金属を、水素化アルミニウム金属に代えて、本発明方法で使用することができる。
【0039】
本発明の好ましい方法に於いて、同位体濃縮のホウ酸エステルを、少なくとも1つの水素化アルミニウム金属と少なくとも1つの有機液体(例えば、有機溶媒)の混合物に添加する。この還元工程で使用するのに適している好ましい溶媒は、オキシラン類、エーテル類、ポリエーテル類及びこれらの混合物であるが、これに限定されない。より好ましい溶媒は、1又は2個の環員酸素原子を有する5〜7員の複素環、(C1−10アルキル)エーテル類、Me(OCHCHOMe(式中、nは1〜約5である)及びこれらの混合物から、一般に選ばれる。溶媒が、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキサン、メチル−tert−ブチルエーテル、ジメトキシエタン、ジグライム、テトラグライム及びこれらの混合物から、選ばれることがより好ましい。ある態様に於いては、還元工程の溶媒は、ベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、直鎖又は分岐鎖のC5−10アルカン類、石油エーテル並びにこれらの混合物から選ばれる1つ以上の追加の炭化水素溶媒を更に含有していてもよい。
【0040】
同位体濃縮のホウ酸エステルは一般に、制御不能な発熱反応を防止するのに適した温度及び速度で、水素化アルミニウム金属/溶媒混合物に添加する。従って、好ましい還元工程は、同位体濃縮のボランを、約−78℃〜約200℃の温度で、水素化アルミニウム金属と接触させることを含んでいる。より好ましくは、同位体濃縮のボラン及び水素化アルミニウム金属を、約−50℃〜約50℃の温度で接触させ、次いでこの混合物を約50℃〜約150℃の温度で加熱する。本発明で提供される他の好ましい還元工程では、同位体濃縮のボラン及び水素化アルミニウム金属を、約0℃〜約30℃の温度で接触させ、次いでこの混合物を加熱還流する。本発明の更に他の好ましい還元工程では、同位体濃縮のボランを、混合物を混合物の沸点以下の温度に保持するのに適した速度で、水素化アルミニウム金属混合物に添加する。一般に、同位体濃縮のホウ酸エステルの全てを水素化アルミニウム金属混合物に添加した後、反応混合物を約1時間〜約48時間若しくはより好ましくは約1時間〜約24時間加熱還流するか、又は反応混合物を約2時間〜約12時間加熱する。
【0041】
本発明は、同位体濃縮のホウ酸から同位体濃縮の水素化ホウ素金属を合成する方法を提供する。従って、本発明は、ホウ酸に存在するホウ素原子の50%が10Bである、ホウ酸に存在するホウ素原子の少なくとも約80%が10Bである、ホウ酸に存在するホウ素原子の少なくとも約90%が10Bである、ホウ酸に存在するホウ素原子の少なくとも約95%が10Bである、又はより好ましくはホウ酸に存在するホウ素原子の少なくとも約99%が10Bである、同位体濃縮のホウ酸から出発して、同位体濃縮の水素化ホウ素金属を製造する方法を提供する。本発明は更に、ホウ酸に存在するホウ素原子の90%が11Bである、ホウ酸に存在する少なくとも約95%のホウ素原子が11Bである、又はより好ましくはホウ酸中に存在する少なくとも約99%のホウ素原子が11Bである、同位体濃縮のホウ酸から出発して、同位体濃縮の水素化ホウ素金属を製造する方法を提供する。
【0042】
ある他の態様に於いて、本発明は同位体濃縮のテトラデカヒドロウンデカボラン金属塩の製造方法を提供し、この方法は以下の工程を包含している。
(a)本明細書に記載の何れかの方法によって製造される同位体濃縮の水素化ホウ素金属を供給する;及び
(b)同位体濃縮の水素化ホウ素金属の溶液を、テトラデカヒドロウンデカボラン金属塩の形成を導く条件下で、式:R−X又は同位体濃縮のBY(リガンド)の化合物と接触させる。
式中、Rは、アルキル、アルケニル又はアラルキルであり;
Xは、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、アルキルスルホネート又はアリールスルホネートであり;
Yは、フルオロ、クロロ及びブロモであり;そして
リガンドは存在しないか、エーテル、アミン又はピリジンである。
【0043】
ある他の態様に於いて、本発明は同位体濃縮のテトラデカヒドロウンデカボラン金属塩の製造方法を提供し、この方法は以下の工程を包含している。
(a)同位体濃縮のホウ酸を供給する;
(b)同位体濃縮のホウ酸を、同位体濃縮のホウ酸エステルの形成を導く条件下で、アルコールと接触させる;
(c)同位体濃縮のホウ酸エステルを、同位体濃縮の水素化ホウ素金属の形成を導く条件下で、水素化アルミニウム金属で還元する;及び
(d)同位体濃縮の水素化ホウ素金属の溶液を、テトラデカヒドロウンデカボラン金属塩の形成を導く条件下で、式:R−X又は同位体濃縮のBY(リガンド)の化合物と接触させる。
式中、Rはアルキル、アルケニル又はアラルキルであり;
Xは、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、アルキルスルホネート又はアリールスルホネートであり;
Yは、フルオロ、クロロ及びブロモであり;そして
リガンドは存在しないか、エーテル、アミン又はピリジンである。
【0044】
同位体濃縮のテトラデカヒドロウンデカボラン金属塩を製造するある好ましい方法に於いて、同位体濃縮の水素化ホウ素金属を、直鎖若しくは分岐鎖のC1−10クロロアルカン、直鎖若しくは分岐鎖のC1−10ブロモアルカン、直鎖若しくは分岐鎖のC1−10ヨードアルカン、クロロC3−8シクロアルカン、クロロC5−8シクロアルケン、ブロモC3−8シクロアルカン、ブロモC5−8シクロアルケン、ヨードC3−8シクロアルカン、ヨードC5−8シクロアルケン、C6−10アラルキルメチルクロリド、C6−10アラルキルメチルブロミド、C6−10アラルキルメチルヨージド又はこれの混合物と接触させる。より好ましくは、式:R−Xの化合物は、直鎖又は分岐鎖のC1−10クロロアルカン、直鎖又は分岐鎖のC1−10ブロモアルカン、及び直鎖又は分岐鎖のC1−10ヨードアルカンから選ばれる化合物である。他の好ましい態様では、式:R−Xの化合物は、直鎖又は分岐鎖のC3−10クロロアルカン、直鎖又は分岐鎖のC3−10ブロモアルカン、及び直鎖又は分岐鎖のC3−10ヨードアルカンから選ばれる。同位体濃縮のテトラデカヒドロウンデカボラン金属塩を製造する特に好ましい方法では、式:R−Xの化合物は、臭化ブタン、ヨウ化ブタン、臭化ペンタン、ヨウ化ペンタン、臭化ヘキサン、ヨウ化へキサン、臭化ヘプタン、ヨウ化ヘプタン、臭化オクタン、ヨウ化オクタン、臭化ベンジル、ヨウ化ベンジル及びこれらの混合物よりなる群から選ばれる化合物のような、臭化アルカン又はヨウ化アルカンである。
【0045】
同位体濃縮のテトラデカヒドロウンデカボラン金属塩を製造するある他の好ましい方法に於いて、同位体濃縮のBY(リガンド)は、Yがフルオロで、リガンドがエーテルである化合物である。より好ましくは、例えばBY(リガンド)が、同位体濃縮のBF−テトラヒドロフラン又は同位体濃縮のBF−(OEt)であるように、リガンドがテトラヒドロフラン又はジエチルエーテルから選ばれる。
【0046】
同位体濃縮のテトラデカヒドロウンデカボラン金属塩を合成する好ましい方法に於いて、同位体濃縮の水素化ホウ素金属を、少なくとも約1当量の式:R−Xの化合物と接触させる。より好ましくは、水素化ホウ素金属を、約1当量〜約10当量の式:R−Xの化合物、約1.5当量〜約7.5当量の式:R−Xの化合物、又は約2当量〜約6当量の式:R−Xの化合物と接触させる。同位体濃縮のテトラデカヒドロウンデカボラン金属塩の他の好ましい合成方法では、同位体濃縮の水素化ホウ素金属を、約2、約2.5、約3、約3.5又は約4当量の式:R−Xの化合物と接触させる。同位体濃縮のテトラデカヒドロウンデカボラン金属塩のある特に好ましい合成方法では、同位体濃縮の水素化ホウ素金属を、約2.5当量の式:R−Xの化合物と接触させる。
【0047】
同位体濃縮のテトラデカヒドロウンデカボラン金属塩の好ましい合成方法に於いて、水素化ホウ素金属及び式:R−Xの化合物を、約50℃〜約200℃の温度で接触させる。より好ましくは、水素化ホウ素金属及び式:R−Xの化合物の混合物を、約60℃〜約180℃、約70℃〜約160℃、又は約80℃〜約140℃の温度で加熱する。更に他の好ましい態様では、この混合物を約80℃、約90℃、約100℃、約110℃、約120℃、約130℃又は約140℃の温度で過熱する。ある好ましい態様では、溶媒又は式:R−Xの化合物の蒸発による損失を防止するために、水素化ホウ素金属及び式:R−Xの化合物の混合物を加熱する反応装置に、蒸発物質を反応混合物へ戻す凝縮器又は他の仕掛けを設置する。
【0048】
水素化ホウ素金属及び式:R−Xの化合物の混合物は一般に、少なくとも1つの非反応性液体の存在下で加熱する。好ましい非反応性液体は、混合物を加熱する温度よりも高い沸点を有する有機溶媒である。より好ましくは、この溶媒はオキシラン類、ポリエーテル類、芳香族炭化水素類等から選ばれる。水素化ホウ素金属及び式:R−Xの化合物の混合物に添加するのに適したある好ましい溶媒は、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジグライム、トリグライム、テトラグライム、トルエン、キシレン及びこれらの混合物であるが、これに限定されない。
【0049】
他の好ましい態様に於いて、本発明は同位体濃縮のテトラデカヒドロウンデカボラン金属塩の合成方法を提供する。従って、本発明は、少なくとも約50%のホウ素原子が10Bである、少なくとも約80%のホウ素原子が10Bである、少なくとも約90%のホウ素原子が10Bである、少なくとも約95%のホウ素原子が10Bである、又はより好ましくは、少なくとも約99%のホウ素原子が10Bである、同位体濃縮のテトラデカヒドロウンデカボラン金属塩を製造する方法を提供する。本発明は更に、少なくとも約90%のホウ素原子が11Bである、少なくとも約95%のホウ素原子が11Bである、又はより好ましくは、少なくとも約99%のホウ素原子が11Bである、同位体濃縮のテトラデカヒドロウンデカボラン金属塩を製造する方法を提供する。
【0050】
更に他の態様に於いて、本発明は同位体濃縮のデカボランの製造方法を提供し、この方法は以下の工程を包含している。
(a)本明細書で述べられている方法による同位体濃縮のテトラデカヒドロウンデカボラン金属塩を供給する;及び
(b)同位体濃縮のテトラデカヒドロウンデカボラン金属塩を、テトラデカヒドロウンデカボラン金属塩の酸化を導く条件下に、−10℃〜50℃の温度で、少なくとも約0.6ボルトの電極電位を有する酸化剤と接触させる。
【0051】
更に詳細には、本発明は同位体濃縮のデカボランの製造方法を提供し、この方法は以下の工程を包含している。
(a)同位体濃縮のホウ酸を供給する;
(b)同位体濃縮のホウ酸を、同位体濃縮のホウ酸エステルの形成を導く条件下で、アルコールと接触させる;
(c)同位体濃縮のホウ酸エステルを、同位体濃縮の水素化ホウ素金属の形成を導く条件下で、水素化アルミニウム金属で還元する;
(d)同位体濃縮の水素化ホウ素金属の溶液を、テトラデカヒドロウンデカボラン金属塩の形成を導く条件下で、式:R−X又は同位体濃縮のBY(リガンド)の化合物と接触させる;
式中、Rは、アルキル、アルケニル又はアラルキルであり;
Xは、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、アルキルスルホネート又はアリールスルホネートであり;
Yは、フルオロ、クロロ及びブロモであり;そして
リガンドは、存在しないか、エーテル、アミン又はピリジンである;そして
(e)同位体濃縮のテトラデカヒドロウンデカボラン金属塩を、テトラデカヒドロウンデカボラン金属塩の酸化を導く条件下に、−10℃〜50℃の温度で、少なくとも約0.6ボルトの電極電位を有する酸化剤と接触させる。
【0052】
本発明の方法に用いるのに適した好ましい酸化条件は、Dunksらの米国特許第4,115,521号及び「Inorganic Chemistry, v. 20 (1981) p 1692」に記載されているものを含む。より詳細には、本明細書で提供される合成方法に適した酸化剤は、Ag+2/H、Au+3/H、Ce+4/H、CeOH+3/H、HClO/H、ClO/H、ClO/H、CO+3、Cr+4/H、Fe(フェナントロリン)+3/H、IO/H、MnO/H、NiO/H、Np+4、O/H、PbO/H、PbO/SO2−/H、Pu+4、Pu+5、RuO、Ti+3、U+5、及びV(OH)から選ばれる酸化剤である。
【0053】
他の好ましい態様に於いて、本発明は同位体濃縮のデカボランの合成方法を提供する。従って、本発明は、少なくとも約50%のホウ素原子が10Bである、少なくとも約80%のホウ素原子が10Bである、少なくとも約90%のホウ素原子が10Bである、少なくとも約95%のホウ素原子が10Bである、又はより好ましくは、少なくとも約99%のホウ素原子が10Bである、同位体濃縮のデカボランの製造方法を提供する。本発明は更に、少なくとも約90%のホウ素原子が11Bである、少なくとも約95%のホウ素原子が11Bである、又はより好ましくは、少なくとも約99%のホウ素原子が11Bである、同位体濃縮のデカボランの製造方法を提供する。
【0054】
同位体濃縮のデカボランのある好ましい合成方法は、次のようなフローチャートで図式的に示される。
【0055】
【化007】

【0056】
本明細書で使用されている、「ボラン」又は「水素化ホウ素」は、ホウ素及び水素を含有している化合物を示す。更に詳細には、ボラン又は水素化ホウ素は、式:B(式中、5≦n≦100及びm≦n+8であり、m及びnは巨大多面体のボラン類の電子価数規則(the electron counting rules)を満たしている)の水素化ホウ素化合物を示す様に意図されている。ある態様では、追加の元素が、水素化ホウ素化合物中に存在し得るが、一般に中性の水素化ホウ素化合物は、本質的にホウ素及び水素からなる。ボラン及び水素化ホウ素という用語は、異性体として実質的に純粋なボラン、式:Bの化合物の立体異性体の混合物、ジアステレオマー及び構造異性体、並びに式:B(m)i(式中、iは異なるボラン類に対応する数であり、そして(m)iは、iボラン化合物の各々に於ける、同一であっても異なっていても良い水素原子の数である)のボラン類の混合物を包含するように意図されている。水素化ホウ素陰イオンを含む塩は、安定な遊離塩を形成することが可能な陽イオン種から選ばれる陽イオンを含む。好ましい陽イオンは、1価及び2価の陽イオンを含み、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属、並びにトリアルキルアンモニウム及びテトラアルキルアンモニウム陽イオンなどのアンモニウム陽イオンを包含する。
【0057】
本明細書で使用される様な、「アルキル」という用語は、好ましくは1〜20の炭素原子、最も好ましくは1〜10の炭素原子(「低級アルキル」)を有する、1価の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基を示す。この用語は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、n−ヘキシル、2−メチルプロピル、3−メチルブチル等の基によって例示される。
【0058】
本明細書で使用される様な、「シクロアルカン」という用語は、3〜約10の環員炭素原子、又はさらに好ましくは5〜8の、又は5〜7の環員炭素原子を有する環状脂肪族炭化水素を示す。シクロアルカンは、1つ又はそれ以上のアルキル基の置換基で置換されてもよい。この用語は、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の化合物によって例示される。
【0059】
本明細書で使用される様な、「アラルキル」という用語は、少なくとも一つのアリール基で置換された1価の直鎖、分岐鎖、又は環状のアルキル基を示す(式中、「アリール」という用語は、フェニル、ビフェニル、1−ナフチル及び2−ナフチルのような芳香族環中に炭素のみを含有する芳香基を表わす)。具体的には、好ましいアラルキル基は、ベンジル、ナフチルメチル、フェネチル、2−フェニルエチル等である。
【0060】
本明細書で使用される様な、「ハロ」又は「ハロゲン」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨードを示す。
【0061】
1つ又はそれ以上の置換基を含有する上記の基のいずれに関しても、このような基は、立体的に実現可能でない、又は合成上実用的でない置換基若しくは置換の様式を含まないことが、当業者によって理解される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0062】
以下の実施例は本発明を説明するためのものであり、何ら本発明を限定するものではない。本明細書に記載の引例は全て、参照して本明細書に取り込む。
【実施例1】
【0063】
10Bホウ酸トリブチル)
ディーンスターク受液器及び還流凝縮器を備えた500mLの1口丸底フラスコに、10Bホウ酸(40g)、n−ブタノール(200g)、及びトルエン(約100mL)を投入した。混合物を加熱還流して、トルエン−水共沸物の蒸発によって水を混合物から除去した。ディーンスターク受液器を取り外した後、生成混合物を分別蒸留した。10Bホウ酸トリブチルが沸点226〜228℃(常圧)の留分として得られた(195g、単離収率87%)。
【実施例2】
【0064】
11B濃縮のホウ酸トリブチル)
11B濃縮のホウ酸から出発して、実施例1に述べられている方法に従って、11B濃縮のホウ酸トリブチルを製造した。
【実施例3】
【0065】
10B濃縮の二ホウ酸トリス(2−メチル−2,4−ペンタンジオール))
10B濃縮のホウ酸、2−メチル−2,4−ペンタンジオール及びトルエンを、ディーンスターク受液器及び還流凝縮器を備えた反応器中で、モル比1:1.5:1で混合した。反応混合物を加熱還流して、縮合反応によって生ずる水をトルエン−水共沸物として除去した。3モル当量の水がディーンスタークのトラップに回収されるまで混合物を過熱した。反応混合物は、実質的に定量的収率の生成物10B濃縮の二ホウ酸トリス(2−メチル−2,4−ペンタンジオレート)とトルエンを含有している。この混合物は直接、水素化ホウ素金属を合成する次の工程で、水素化アルミニウム金属と接触させてもよい。あるいは、減圧雰囲気下でトルエンを除去することによって、10B濃縮の二ホウ酸トリス(2−メチル−2,4−ペンタンジオール)を精製することができる。
【0066】
【化008】

【実施例4】
【0067】
10B濃縮のホウ酸の代わりに11B濃縮のホウ酸を用いて、実施例3の方法によって11B濃縮の二ホウ酸トリス(2−メチル−2,4−ペンタンジオール)を製造した。
【実施例5】
【0068】
11B濃縮の水素化ホウ素ナトリウム)
オーバーヘッドスターラー及び還流凝縮器を備えた5リットルの3口フラスコに、無水テトラヒドロフラン(1L)及び無水ジエチルエーテル(700mL)をアルゴン雰囲気下で投入した。水素化アルミニウムナトリウム(105g、純度約86%、1.77モル)を反応フラスコに添加し、圧力を同一にした添加ロートに実施例2で製造した11B濃縮のホウ酸トリブチルを投入した。撹拌下に、ホウ酸エステルを反応混合物に滴下し、反応混合物を徐々に加熱して還流させ、数時間還流を続ける。冷却して、11B濃縮の水素化ホウ素ナトリウムの粗製固体をアルゴン雰囲気の加圧下でろ過し、固体を無水トルエンで洗浄して副生成物であるアルミニウムブトキシドを除去して、トルエンをアルゴン雰囲気の加圧下でろ過して除去した。必要により、残余の副生成物、アルミニウムブトキシドを除去するために、トルエンでの洗浄及びろ過を繰り返す。
収量:55.5g、1.46モル、93.1%。
11BNMRスペクトルによって測定されたホウ素種は、11BHに対応する共鳴吸収(約37ppmに中心がある、1:4:6:4:1のクインテット)だけである。
必要により、11B濃縮のNa11BHは、ジグライムからの再結晶によって、又は液体アンモニアでの抽出によって更に精製することができる。得られる生成物は、出発物質である11B濃縮の11B(OH)、及び11B濃縮のホウ酸トリブチルの同位体純度を保持している。この製造法は、生成物の品質低下を伴わずに数キログラム量までスケールアップすることに成功している。
【実施例6】
【0069】
10B濃縮の水素化ホウ素リチウム)
丸底フラスコにアルゴン雰囲気下で、無水テトラヒドロフラン(40mL)中の水素化アルミニウムリチウム(5.5g)、無水ジエチルエーテル(70mL)、及び磁気撹拌棒を投入した。実施例3で製造された二ホウ酸トリス(2−メチル−2,4−ペンタンジオレート)を含有するトルエン溶液を、等圧にした滴下ロートから反応混合物に滴下した。次いで反応混合物を15時間加熱した。冷却後、沈殿物をろ過して副生成物であるアルミニウムアルコキシドを除去した。透明なろ液は、単一のホウ素種として10B濃縮の水素化ホウ素リチウムを含有している(約37ppmに単一な共鳴吸収(1:4:6:4:1のクインテット)を含む10BNMRスペクトルで証明される)。他のホウ素共鳴吸収は観察されなかった。1,4−ジオキサンを加えて、水素化ホウ素リチウムを溶液から沈殿させた。次いで、単離した固体を真空下で乾燥してこのジオキサンを除去すると、10B濃縮の水素化ホウ素リチウムが得られた。
【実施例7】
【0070】
(Na111114及び111014の製造)
Na11BH14は、Dunksらの米国特許第4,153,672号及び同第4,115,521号及び学術文献(Dunksらの「Inorganic Chemistry, v. 17, (1978) P 1514」及びDunksらの「Inorganic Chemistry, v. 20, (1981) p 1692」)に記載されている方法で、既にNa111114を経由して、B−11濃縮のデカボラン、111014に変換されている。得られる生成物は、出発物質である11B濃縮のNa11BHの同位体の純度を保持している。
【0071】
以下の方法を、11B濃縮の水素化ホウ素ナトリウムから11B濃縮のテトラデカヒドロウンデカボレート(1−)イオン、[111114を製造するために用いた。6リットルの4口丸底フラスコ(加熱マントル中に設置)に温度計を挿入した温度計アダプターを装備して、アルゴン源に接続した。オーバーヘッドスターラーを中央の口に挿入した。等圧にした添加漏斗を3番目の口に挿入した。最後に、冷水の凝縮器を4番目の口に挿入して、凝縮器の出口をアセトンを満たした洗浄器に繋げた。この装置を完全に乾燥してアルゴンでパージした。このフラスコに順次、11B濃縮の水素化ホウ素ナトリウム(58g、1.54モル)及び乾燥ジグライム(600mL)を投入した。この反応混合物を105℃に加熱して、n−ブロモペンタン(480mL、3.85モル)を添加漏斗から、反応混合物を105±5℃の温度に保ちながら、5時間かけて滴下した。反応混合物を、ガスの発生が実質的に終了するまで、更に加熱した。
【0072】
反応混合物を室温まで冷却した後、得られたスラリーをろ過して、ジエチルエーテルで洗浄した。合わせたろ液の揮発性化合物を真空下で除去した。得られた油状物を水に溶解して、塩化トリエチルアンモニウムを加えると、(HNEt)[111114]の沈殿物が得られる。標準的な単離収率は60〜67%である。
【0073】
B−11濃縮のデカボランに転換するため、トリエチルアンモニウム塩を最初に、水への溶解度を上げるためにカリウム又はナトリウム塩に変換する。デカボランへの変換は、Dunksらの米国特許第4,115,521号及び「Inorganic Chemistry, v. 20, (1981) p 1692」に記載されているように[111114]塩を酸化することによって達成される。また、11B濃縮の[B1114]のナトリウム塩は、Dunksらの米国特許第4,115,521号及び「Inorganic Chemistry, v. 20, (1981) p 1692」に記載されているように、溶媒ジグライムの除去に続いて、直接11B濃縮のデカボランにすることができる。
【0074】
本発明は、その好ましい態様について詳細に記載されているが、当業者であれば当該開示を考慮して本発明の精神及び範囲を逸脱することなく修正及び改良を行なうことができるものと理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)同位体濃縮のホウ酸を供給する;
(b)同位体濃縮のホウ酸を、同位体濃縮のホウ酸エステルの形成を導く条件下で、アルコールと接触させる;及び
(c)同位体濃縮のホウ酸エステルを、同位体濃縮の水素化ホウ素金属の形成を導く条件下で、水素化アルミニウム金属で還元する:
工程を含有してなる、同位体濃縮の水素化ホウ素金属を合成する方法。
【請求項2】
同位体濃縮のホウ酸エステルが、式I:
【化001】

(式中、
Rの各々は、直鎖又は分岐鎖のアルキル、シクロアルキル、シクロアルキル−アルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、ハロアルキル及びアルキルエーテルよりなる群からそれぞれ独立して選ばれるか、又は2つのR基は結合して、それぞれがアルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキル−アルキル、アリール、アラルキル及びアルコキシよりなる群から選ばれる1又はそれ以上の基で置換されていてもよい、α,ω−アルキレン基又は1,2−シクロアルキレン基を形成し;
nは、1又は2であり;そして
n=1のとき、R’は、アルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、ハロアルキル、及びアルキルエーテルよりなる群から選ばれるか、又はn=2のとき、R’は、それぞれがアルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキル−アルキル、アリール、アラルキル及びアルコキシよりなる群から選ばれる1又はそれ以上の基で置換されていてもよい、α,ω−アルキレン基又は1,2−シクロアルキレン基である)
で表される化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
同位体濃縮のホウ酸エステルが、式:B(OR)(式中、Rは、直鎖又は分岐鎖のC1−10アルキル、フェニル、ベンジル、C3−8シクロアルキル、C3−8シクロアルキル−C1−10アルキル、C2−10アルケニル、C1−10アルコキシ、C1−10ハロアルキル及びC2−10アルキルエーテルよりなる群からそれぞれ独立して選ばれる)で表される化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
同位体濃縮のホウ酸エステルが、式:B(OR)(式中、Rの各々は同一であり、そしてRは、直鎖又は分岐鎖のC1−10アルキル、フェニル、ベンジル、C3−8シクロアルキル、C3−8シクロアルキル−C1−10アルキル、C2−10アルケニル、C1−10アルコキシ、C1−10ハロアルキル及びC2−10アルキルエーテルよりなる群から選ばれる)で表される化合物である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
同位体濃縮のホウ酸エステルが、式II:
【化002】

(式中、
及びRは、水素、直鎖又は分岐鎖のアルキル、シクロアルキル、シクロアルキル−アルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、ハロアルキル及びアルキルエーテルよりなる群からそれぞれ独立して選ばれ;そして
pは、1〜5から選ばれる整数である)
で表される化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
同位体濃縮のホウ酸エステルが、式III:
【化003】

(式中、
qは、1又は2であり;そして
、Rx’及びRは、水素、直鎖又は分岐鎖のC1−10アルキル、C1−10アルコキシ、及びC3−8シクロアルキルよりなる群からそれぞれ独立して選ばれるか、又はR及びRは、結合してα,ω−アルキレン基を形成する)
で表される化合物である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
及びRが、水素及び直鎖又は分岐鎖のC1−4アルキルよりなる群から選ばれる、請求項6の方法。
【請求項8】
エステル化工程が、同位体濃縮のホウ酸を、少なくとも3当量の直鎖若しくは分岐鎖のC1−10アルカノール、又は少なくとも1.5当量のC2−10アルカンジオールと接触させることを包含してなる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
エステル化工程が、同位体濃縮のホウ酸を、少なくとも3当量の直鎖のC2−10アルカノール、又は少なくとも1.5当量の直鎖若しくは分岐鎖の1,2−C2−10アルカンジオールと接触させることを包含してなる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
エステル化工程が、同位体濃縮のホウ酸を、約3当量の直鎖のC2−10アルカノール、又は約1.5当量の直鎖若しくは分岐鎖の1,2−C2−10アルカンジオールと接触させることを包含してなる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
エステル化工程中で発生する水を、反応混合物から除去する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
水を、反応混合物から蒸留によって除去する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
水を、トルエン、キシレン、ベンゼン、1,2−ジクロロメタン又はこれらの混合物との共沸物として除去する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
エステル化工程を、約80℃を超える温度で実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
エステル化工程を、約95℃〜約175℃の温度で実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
還元工程が、ホウ酸エステルを水素化アルミニウム金属及び少なくとも1つの溶媒の混合物と接触させることを包含してなる、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1つの溶媒が、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキサン、メチル−tert−ブチルエーテル、ジメトキシエタン、ジグライム及びこれらの混合物よりなる群から選ばれる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
混合物が、ベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、直鎖又は分岐鎖のC5−10アルカン、石油エーテル及びこれらの混合物よりなる群から選ばれる、少なくとも1つの追加の炭化水素溶媒を包含してなる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
水素化アルミニウム金属が、水素化アルミニウム第I族金属、水素化アルミニウム第II族金属及びこれらの混合物から選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
水素化アルミニウム金属が、水素化アルミニウムリチウム又は水素化アルミニウムナトリウムである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
同位体濃縮のボランを、約−78℃〜約200℃の温度で水素化アルミニウム金属と接触させる、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
同位体濃縮のボラン及び水素化アルミニウム金属を、約−50℃〜約50℃の温度で接触させて、次いでこの混合物を約50℃〜約150℃の温度で加熱する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
同位体濃縮のボラン及び水素化アルミニウム金属を、約0℃〜約30℃の温度で接触させて、次いでこの混合物を加熱還流する、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
同位体濃縮のボランを、水素化アルミニウム金属の混合物に、混合物の沸点より低い温度に混合物を保持するのに適切な速度で添加する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
混合物を、約1時間〜48時間加熱還流する、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
混合物を、約2時間〜12時間加熱還流する、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
ホウ酸が、少なくとも約80%の10Bを含有してなる、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
ホウ酸が、少なくとも約90%の10Bを含有してなる、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
ホウ酸が、少なくとも約95%の10Bを含有してなる、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
ホウ酸が、少なくとも約99%の10Bを含有してなる、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
ホウ酸が、少なくとも約90%の11Bを含有してなる、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
ホウ酸が、少なくとも約95%の11Bを含有してなる、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
ホウ酸が、少なくとも約99%の11Bを含有してなる、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
(a)請求項1〜33の何れか一項に記載の方法による同位体濃縮の水素化ホウ素金属を供給する;及び
(b)同位体濃縮の水素化ホウ素金属の溶液を、テトラデカヒドロウンデカボラン金属塩の形成を導く条件下で、式:R−X又は同位体濃縮のBY(リガンド)の化合物と接触させる:
(式中、
Rは、アルキル、アルケニル又はアラルキルであり;
Xは、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、アルキルスルホネート又はアリールスルホネートであり;
Yは、フルオロ、クロロ及びブロモであり;そして
リガンドは存在しないか、エーテル、アミン又はピリジンである)
工程を含有してなる、同位体濃縮のテトラデカヒドロウンデカボラン金属塩を製造する方法。
【請求項35】
(a)同位体濃縮のホウ酸を供給する;
(b)同位体濃縮のホウ酸を、同位体濃縮のホウ酸エステルの形成を導く条件下で、アルコールと接触させる;
(c)同位体濃縮のホウ酸エステルを、同位体濃縮の水素化ホウ素金属の形成を導く条件下で、水素化アルミニウム金属で還元する;及び
(d)同位体濃縮の水素化ホウ素金属の溶液を、テトラデカヒドロウンデカボラン金属塩の形成を導く条件下で、式:R−X又は同位体濃縮のBY(リガンド)の化合物と接触させる:
(式中、
Rは、アルキル、アルケニル又はアラルキルであり;
Xは、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、アルキルスルホネート又はアリールスルホネートであり;
Yは、フルオロ、クロロ及びブロモであり;そして
リガンドは存在しないか、エーテル、アミン又はピリジンである)
工程を含有してなる、同位体濃縮のテトラデカヒドロウンデカボラン金属塩を製造する方法。
【請求項36】
同位体濃縮の水素化ホウ素金属を、直鎖若しくは分岐鎖のC1−10クロロアルカン、直鎖若しくは分岐鎖のC1−10ブロモアルカン、直鎖若しくは分岐鎖のC1−10ヨードアルカン、又は同位体濃縮の三フッ化ホウ素エーテルと接触させる、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
同位体濃縮の水素化ホウ素金属を、少なくとも約1当量の式:R−Xの化合物と接触させるか、又は同位体濃縮の水素化ホウ素金属を、少なくとも約1当量の式:BY(リガンド)の同位体濃縮の化合物と接触させる、請求項35〜36の何れか一項に記載の方法。
【請求項38】
同位体濃縮の水素化ホウ素金属を、少なくとも約2当量の式:R−Xの化合物と接触させるか、又は同位体濃縮の水素化ホウ素金属を、少なくとも約2当量の式:BY(リガンド)の同位体濃縮の化合物と接触させる、請求項35〜36の何れか一項に記載の方法。
【請求項39】
同位体濃縮の水素化ホウ素金属を、約2.5当量の式:R−Xの化合物と接触させるか、又は同位体濃縮の水素化ホウ素金属を、少なくとも約2.5当量の式:BY(リガンド)の同位体濃縮の化合物と接触させる、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
水素化ホウ素金属及び式:R−Xの化合物を、約50℃〜約200℃の温度で接触させるか、又は水素化ホウ素金属及び式:BY(リガンド)の同位体濃縮の化合物を、約50℃〜約200℃の温度で接触させる、請求項34〜39の何れか一項に記載の方法。
【請求項41】
水素化ホウ素金属及び式:R−Xの化合物を、約80℃〜約140℃の温度で接触させるか、又は水素化ホウ素金属及び式:BY(リガンド)の同位体濃縮の化合物を、約80℃〜約140℃の温度で接触させる、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
水素化ホウ素金属を、少なくとも1つのエーテル溶媒、少なくとも1つの炭化水素溶媒、又はこれらの混合物に溶媒和するか又は懸濁する、請求項34〜41の何れか一項に記載の方法。
【請求項43】
水素化ホウ素金属を、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジグライム、トリグライム、テトラグライム、トルエン、キシレン又はこれらの混合物に溶媒和するか又は懸濁する、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
テトラデカヒドロウンデカボラン金属塩が、少なくとも80%の10Bを含有してなる、請求項35に記載の方法。
【請求項45】
テトラデカヒドロウンデカボラン金属塩が、少なくとも90%の10Bを含有してなる、請求項35に記載の方法。
【請求項46】
テトラデカヒドロウンデカボラン金属塩が、少なくとも95%の10Bを含有してなる、請求項35に記載の方法。
【請求項47】
テトラデカヒドロウンデカボラン金属塩が、少なくとも99%の10Bを含有してなる、請求項35に記載の方法。
【請求項48】
テトラデカヒドロウンデカボラン金属塩が、少なくとも90%の11Bを含有してなる、請求項35に記載の方法。
【請求項49】
テトラデカヒドロウンデカボラン金属塩が、少なくとも95%の11Bを含有してなる、請求項35に記載の方法。
【請求項50】
テトラデカヒドロウンデカボラン金属塩が、少なくとも99%の11Bを含有してなる、請求項35に記載の方法。
【請求項51】
(a)請求項34〜50の何れか一項に記載の方法による同位体濃縮のテトラデカヒドロウンデカボラン金属塩を供給する;及び
(b)同位体濃縮のテトラデカヒドロウンデカボラン金属塩を、テトラデカヒドロウンデカボラン金属塩の酸化を導く条件下で、−10℃〜50℃の温度で、少なくとも0.6ボルトの電極電位を有する酸化剤と接触させる:
工程を含有してなる、同位体濃縮のデカボランを製造する方法。
【請求項52】
(a)同位体濃縮のホウ酸を供給する;
(b)同位体濃縮のホウ酸を、同位体濃縮のホウ酸エステルの形成を導く条件下で、アルコールと接触させる;
(c)同位体濃縮のホウ酸エステルを、同位体濃縮の水素化ホウ素金属の形成を導く条件下で、水素化アルミニウム金属で還元する;
(d)同位体濃縮の水素化ホウ素金属の溶液を、テトラデカヒドロウンデカボラン金属塩の形成を導く条件下で、式:R−X又は同位体濃縮のBY(リガンド)の化合物と接触させる;そして
(式中、
Rは、アルキル、アルケニル又はアラルキルであり;
Xは、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、アルキルスルホネート又はアリールスルホネートであり;
Yは、フルオロ、クロロ及びブロモであり;そして
リガンドは存在しないか、エーテル、アミン又はピリジンである)
(e)同位体濃縮のテトラデカヒドロウンデカボラン金属塩を、テトラデカヒドロウンデカボラン金属塩の酸化を導く条件下に、−10℃〜50℃の温度で、少なくとも0.6ボルトの電極電位を有する酸化剤と接触させる:
工程を含有してなる、同位体濃縮のデカボランを製造する方法。
【請求項53】
酸化剤が、Ag+2/H、Au+3/H、Ce+4/H、CeOH+3/H、HClO/H、ClO/H、ClO/H、CO+3、Cr+4/H、Fe(フェナントロリン)+3/H、IO/H、MnO/H、NiO/H、Np+4、O/H、PbO/H、PbO/SO2−/H、Pu+4、Pu+5、RuO、Ti+3、U+5、及びV(OH)から選ばれる、請求項51又は請求項52に記載の方法。
【請求項54】
デカボランが、少なくとも約80%の10Bを含有してなる、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
デカボランが、少なくとも約90%の10Bを含有してなる、請求項52に記載の方法。
【請求項56】
デカボランが、少なくとも約95%の10Bを含有してなる、請求項52に記載の方法。
【請求項57】
デカボランが、少なくとも約99%の10Bを含有してなる、請求項52に記載の方法。
【請求項58】
デカボランが、少なくとも約90%の11Bを含有してなる、請求項52に記載の方法。
【請求項59】
デカボランが、少なくとも約95%の11Bを含有してなる、請求項52に記載の方法。
【請求項60】
デカボランが、少なくとも約99%の11Bを含有してなる、請求項52に記載の方法。

【公表番号】特表2007−526868(P2007−526868A)
【公表日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551484(P2006−551484)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【国際出願番号】PCT/US2005/002629
【国際公開番号】WO2005/074531
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(506249314)エスイーエム・エクイップ インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】