説明

同時掘進シールド掘進機

【課題】シールドジャッキのストロークを短くでき、コストダウン、施工時間の短期化及び機長の短縮化を推進できる同時掘進シールド掘進機を提供する。
【解決手段】シールドジャッキ12を伸長させて既設のセグメントSを押圧することでシールドフレーム2を前進させながら、何れかのシールドジャッキ12を縮退させて縮退により生じたスペースにエレクタ11により新たなセグメントSを組み立てる同時掘進シールド掘進機1であって、シールドジャッキ12を、エレクタ11でセグメントSを1リング組み立てる際のセグメントSの組立順序の早い遅いに応じて、ジャッキブロック12X、12Yに分け、組立順序が遅いセグメントSを押圧するジャッキブロック12Xは、組立順序が早いセグメントSを押圧するジャッキブロック12Yのシールドジャッキ12よりも、設置位置が軸方向後方にずらされ且つストロークが短いシールドジャッキ12を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地山の掘進とセグメントの組立とを同時に行う同時掘進シールド掘進機に関する。
【背景技術】
【0002】
シールド掘進機は、シールドフレーム前部に設けたカッタで地山を掘削し、シールドフレーム内部に設けたエレクタによりセグメントをシールドフレーム内周面に沿ってリング状に組み立て、シールドフレーム内周面に周方向に間隔を隔てて設けた複数のシールドジャッキによって、エレクタで組み立てられたセグメント(既設セグメント)の前端面を押圧してシールドフレームを前進させるものである。
【0003】
ここで、シールドジャッキを伸長させることによるシールドフレームの前進と、エレクタによるセグメントの組立とを同時に行う同時掘進シールド掘進機として、エレクタでセグメントを1リング組み立てる際に組立順序が後のセグメントを押圧するシールドジャッキの設置位置を、組立順序が先のセグメントを押圧するシールドジャッキの設置位置よりも、トンネル軸方向後方にずらして配設したものが知られている(特許文献1)。このように、シールドジャッキの設置位置を軸方向にずらすことで、同時掘進中に、組立順序が後のセグメントを押圧するシールドジャッキを伸長させた際、そのジャッキの先端が既設セグメントに届かなくなることを回避できる。
【0004】
かかる同時掘進シールド掘進機は、各シールドジャッキを伸長させて既設セグメントを押圧することでシールドフレームを前進させながら、何れかのシールドジャッキを縮退させて縮退により生じたスペースにエレクタによって新たなセグメントを組み立てるのであるが、縮退させるシールドジャッキを、設置位置が前方のものから後方のものにかけて順次移行させることで、残りのシールドジャッキで常に既設セグメントを押圧し続けることが可能となり、セグメントの組立と地山の掘進とを同時に行える。
【0005】
上述した従来の同時掘進シールド掘進機は、各シールドジャッキのストロークが全て等しく設定されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−284586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、本発明者は、組立順序が後のセグメントを押圧するシールドジャッキは、組立順序が先のセグメントを押圧するシールドジャッキよりも設置位置が軸方向後方にずらされていることから、組立順序が先のセグメントを押圧するシールドジャッキよりストロークを短くしても、同時掘進が成立することを見出した。
【0008】
すなわち、上述した同時掘進シールド掘進機について、一部のシールドジャッキのストロークを短くすることが可能であり、ストロークの短いシールドジャッキは安価であることから、コストダウンの余地が存在する。また、シールドジャッキが無駄なストロークを有しているということは、伸縮のための時間も必要以上に掛かってしまうことを意味し、施工時間の長期化に繋がる。また、シールドジャッキのシールドフレーム内における収納スペースがシールドフレームの長さ(シールド掘進機の機長)を決定する要因となっている場合には、そのシールドジャッキのストローク即ち全長を短くできれば、シールド掘進機の機長の短縮化が可能となり、低コスト化及びカーブ掘進の性能向上に繋がる。
【0009】
以上の事情を考慮して創案された本発明の目的は、一部のシールドジャッキのストロークを短くでき、コストダウン、施工時間の短期化及び機長の短縮化を推進できる同時掘進シールド掘進機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明は、シールドフレームの内周面に沿って下側から上側に向けてセグメントをリング状に組み立てるエレクタと、前記シールドフレームの内周面に周方向に間隔を隔てて複数設置され前記エレクタで組み立てられた既設のセグメントの前端面を押圧するシールドジャッキとを備え、該シールドジャッキを伸長させて既設のセグメントを押圧することで前記シールドフレームを前進させながら、何れかのシールドジャッキを縮退させて縮退により生じたスペースに前記エレクタにより新たなセグメントを組み立てる同時掘進シールド掘進機であって、前記シールドジャッキを、前記エレクタでセグメントを1リング組み立てる際のセグメントの組立順序の早い遅いに応じて、夫々1本以上のシールドジャッキから成る複数のジャッキブロックに分け、組立順序が遅いセグメントを押圧するジャッキブロックは、組立順序が早いセグメントを押圧するジャッキブロックのシールドジャッキよりも、設置位置が掘進方向に対して軸方向後方にずらされ且つストロークが短いシールドジャッキを有するものである。
【0011】
前記エレクタは、セグメントを1リング組み立てる際、最後にキーセグメントを軸方向から挿入するものであり、前記組立順序が遅いセグメントを押圧するジャッキブロックのシールドジャッキは、前記キーセグメントを押圧するシールドジャッキを除き、前記組立順序が早いセグメントを押圧するジャッキブロックのシールドジャッキよりも、設置位置が軸方向後方にずらされ且つストロークが短く設定されていてもよい。
【0012】
前記キーセグメントを押圧するシールドジャッキは、セグメントを1リング組み立てる際の組立順序が最初のセグメントを押圧するシールドジャッキに対し、軸方向の設置位置が同じであり且つストロークが長く、該ストロークがセグメントの軸方向長さの一倍以上二倍未満であってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る同時掘進シールド掘進機によれば、一部のシールドジャッキのストロークを短くできるので、全てのシールドジャッキのストロークが等しいものと比べると、コストダウン、施工時間の短期化及び機長の短縮化を推進できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る同時掘進シールド掘進機の側断面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】図1、図2に示す同時掘進シールド掘進機によって組み立てられるセグメントの説明図である。
【図4】図1、図2に示す同時掘進シールド掘進機のセグメント組立及び掘進工程を示す説明図である。
【図5】図4の続きを示すセグメント組立及び掘進工程の説明図である。
【図6】図1、図2に示す同時掘進シールド掘進機のセグメント組立及び掘進工程を示す別の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0016】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る同時掘進シールド掘進機1は、筒状に形成されたシールドフレーム2と、シールドフレーム2内を前後に仕切る隔壁3と、隔壁3に回転可能に取り付けられ切羽を切削するビット4を有するカッタヘッド5と、カッタヘッド5を回転駆動するモータ6及びギヤ機構7等からなるカッタ駆動手段8と、カッタヘッド5と隔壁3との間に形成されビット4で切削された掘削土砂を取り込むカッタ室9とを備えている。
【0017】
また、この同時掘進シールド掘進機1は、カッタ室9に取り込まれた掘削土砂を隔壁3の後方に排出するスクリューコンベヤ等の排土装置10と、セグメントSをシールドフレーム2の内周面に沿ってリング状に組み立てるエレクタ11と、シールドフレーム2の内周面に周方向に間隔を隔てて複数設置され既設セグメントSの前端面を押圧するシールドジャッキ12と、シールドフレーム2の後部内周面に周方向に沿って設けられ既設セグメントSの外周面に当接するテールシール13とを備えている。
【0018】
図1、図2に示すように、エレクタ11は、シールドフレーム2に支持されたローラ14にトンネル周方向に回転可能に載置された旋回リング15と、旋回リング15に設けた支持ブロック16にトンネル径方向に移動可能に装着された略U字状の吊りビーム17と、吊りビーム17の略中央部にトンネル軸方向に移動可能に装着された把持部18とを備えており、把持部18に把持したセグメントSをトンネル軸方向、径方向、周方向に適宜移動させ、シールドフレーム2の内周面に沿って下側から上側に向けてリング状に組み立てるものである。
【0019】
詳しくは、旋回リング15には、リングギヤ19が同芯的に設けられており、リングギヤ19には、モータ(図示せず)の回転軸に取り付けたピニオンが噛合されている。モータを駆動することで旋回リング15がシールドフレーム2の周方向に旋回する。吊りビーム17は、一端が支持ブロック16に他端が吊りビーム17に連結されたジャッキ(図示せず)により、シールドフレーム2の径方向に移動される。把持部18は、一端が吊りビーム17に他端が把持部18に連結されたジャッキ(図示せず)により、シールドフレーム2の軸方向に移動される。
【0020】
図3に示すように、エレクタ11によって組み立てられるセグメントSは、本実施形態では、セグメントA1、セグメントA2、セグメントA3、セグメントA4、セグメントB、セグメントC、セグメントKの7種類のものがあり、セグメントA1、A2、A3、A4、B、C、Kの順番で組み立てられる。また、図3に示すセグメントSの配置のリングを甲組リングとすると、甲組リングのトンネル軸方向隣りのリングは、甲組リングのセグメントの配置を縦軸に対して略線対称とした乙組のセグメントSの配置となっていて、この乙組リングと前記甲組リングとがトンネル軸方向に交互に配置されている(所謂千鳥配置)。
【0021】
本実施形態の特徴は、図1、図2に示すように、エレクタ11でセグメントSを1リング組み立てる際のセグメントSの組立順序の早い遅いに応じて、シールドジャッキ12を二つのジャッキブロックに分け、組立順序が遅いセグメントSを押圧するジャッキブロック(遅押しジャッキブロック)12Xは、組立順序が早いセグメントSを押圧するジャッキブロック(早押しジャッキブロック)12Yのシールドジャッキ12よりも、設置位置が軸方向後方にずらされ且つストロークが短いシールドジャッキ12を有する点にある。
【0022】
図2、図4(a)において、白抜きのシールドジャッキ12は、早押しジャッキブロック12Yに属し、ハッチング及びドットのシールドジャッキ12は、遅押しジャッキブロック12Xに属し、ドットのシールドジャッキ12は、キーセグメントKを押圧するものである。また、図2の丸数字は、各シールドジャッキ12のジャッキ番号を表し、図4(a)の丸数字に対応する。
【0023】
エレクタ11は、既述のようにセグメントSをトンネル内の下側から上側に向けて組み立てるものなので、組立順序が早いセグメントSを押圧する早押しジャッキブロック12Yは、シールドフレーム2の下側に配置されたシールドジャッキ12(5番〜11番)から構成され、組立順序が遅いセグメントSを押圧する遅押しジャッキブロック12Xは、シールドフレーム2の上側に配置されたシールドジャッキ12(1番〜4番、12番〜14番)から構成されている。
【0024】
エレクタ11は、セグメントを1リング組み立てる際、図4(a)〜(e)、図5(f)、(g)に示すように、セグメントA1、A2、A3、A4、B、Cをトンネル径方向から既設セグメント側に移動して組み立てた後、図5(h)、(i)に示すように、最後にセグメントK(キーセグメント)をトンネル軸方向から挿入して組み立てる。
【0025】
そして、図2に示す遅押しジャッキブロック12Xのシールドジャッキ12(1番〜4番、12番〜14番)は、キーセグメントKを押圧する1番、2番、14番のシールドジャッキ12を除き、早押しジャッキブロック12Yのシールドジャッキ12(5番〜11番)よりも、設置位置が軸方向後方にずらされ且つストロークが短く設定されている。
【0026】
キーセグメントKを押圧するシールドジャッキ12(1番、2番、14番)は、セグメントSを1リング組み立てる際の組立順序が最初のセグメントSを押圧するシールドジャッキ12(7番、8番)に対し、軸方向の設置位置が同じであり且つストロークが長く、そのストロークがセグメントSの軸方向長さの一倍以上二倍未満となっている。
【0027】
そして、早押しジャッキブロック12Yのシールドジャッキ12(5番〜11番)のストロークもセグメントSの軸方向長さの一倍以上二倍未満となり、遅押しジャッキブロック12Xのシールドジャッキ12(3番、4番、12番、13番)のストロークもセグメントSの軸方向長さの一倍以上二倍未満となっている。
【0028】
図1に示すように、各シールドジャッキ12は、シールドフレーム2の内周面に周方向に沿って設けられたリングガーダ20に装着されたシリンダ21と、シリンダ21の後端面から出没するロッド22と、ロッド22の後端からトンネル径方向外方に延出された偏芯金物23と、偏芯金物23に設けられたシュー24と、シュー24の後端に設けられ既設セグメントSの前端面に当接する板状のスプレッダ25とを備えている。
【0029】
本実施形態の作用を図2、図4等を用いて述べる。
【0030】
図4(a)に示すように、各シールドジャッキ12を伸長させ、各ジャッキ12のスプレッダ25を先に組み立てられた1リングの既設セグメントSの前端面に当接させ、更に各シールドジャッキ12を伸長させることでシールドフレーム2(掘進機1)を前進させる。なお、L1は、リングガーダ20から既設セグメントSの前端面までの距離を示す。
【0031】
図4(b)に示すように、各シールドジャッキ12の伸長ストロークがセグメントSの軸方向長さYに所定の組立前方余裕W1を加えた長さとなるまでは、掘進のみを行い、セグメントSの組み立ては行わない。各シールドジャッキ12の伸長ストロークがY+W1の長さとなったなら、トンネル底部の7番及び8番のシールドジャッキ12を縮退させ、縮退によって空いたスペースにエレクタ11でセグメントA1を組み立てる。このとき、7番及び8番以外のシールドジャッキ12は、伸長を継続し、セグメントSの組み立てと掘進とを同時に行う。なお、L2>L1となることは勿論である。
【0032】
図4(c)に示すように、新たに組み立てたセグメントA1の前端面に7番及び8番のシールドジャッキ12のスプレッダ25を押し付け、9番及び10番のシールドジャッキ12を縮退させ、縮退によって空いたスペースにエレクタ11でセグメントA2を組み立てる。このとき、9番及び10番以外のシールドジャッキ12は、伸長を継続し、セグメントSの組み立てと掘進とを同時に行う。よってL3>L2となる。
【0033】
ここで、7番及び8番のシールドジャッキ12と9番及び10番のシールドジャッキ12とは軸方向の設置位置が等しく、図4(b)から図4(c)にかけて掘進を継続しているので、図4(b)において組み立てるセグメントA1の前方に組立前方余裕W1が確保されていれば、図4(c)において組み立てるセグメントA2の前方には当然より大きな組立前方余裕W2が確保されることになる。
【0034】
図4(d)に示すように、新たに組み立てたセグメントA2の前端面に9番及び10番のシールドジャッキ12のスプレッダ25を押し付け、5番及び6番のシールドジャッキ12を縮退させ、縮退によって空いたスペースにエレクタ11でセグメントA3を組み立てる。このとき、5番及び6番以外のシールドジャッキ12は、伸長を継続し、セグメントSの組み立てと掘進とを同時に行う。よってL4>L3となる。
【0035】
ここで、9番及び10番のシールドジャッキ12と5番及び6番のシールドジャッキ12とは軸方向の設置位置が等しく、図4(c)から図4(d)にかけて掘進を継続しているので、図4(c)において組み立てるセグメントA2の前方に組立前方余裕W2が確保されていれば、図4(d)において組み立てるセグメントA3の前方には当然より大きな組立前方余裕W3が確保されることになる。
【0036】
図4(e)に示すように、新たに組み立てたセグメントA3の前端面に5番及び6番のシールドジャッキ12のスプレッダ25を押し付け、11番及び12番のシールドジャッキ12を縮退させ、縮退によって空いたスペースにエレクタ11でセグメントA4を組み立てる。このとき、11番及び12番以外のシールドジャッキ12は、伸長を継続し、セグメントSの組み立てと掘進とを同時に行う。よってL5>L4となる。
【0037】
ここで、5番及び6番のシールドジャッキ12と11番のシールドジャッキ12とは軸方向の設置位置が等しく、図4(d)から図4(e)にかけて掘進を継続しているので、図4(d)において組み立てるセグメントA3の前方に組立前方余裕W3が確保されていれば、図4(e)において組み立てるセグメントA4と11番のシールドジャッキ12のスプレッダ25との間には、当然より大きな組立前方余裕W4が確保されることになる。
【0038】
また、12番のシールドジャッキ12は、遅押しジャッキブロック12Xに属し、設置位置が11番のシールドジャッキ12よりも軸方向後方にずらされているが、縮退状態にある12番のシールドジャッキ12のスプレッダ25と新たに組み立てるセグメントA4との間に所定の組立前方余裕W5が確保されるようにずらされているため、セグメントA4を組み立てる際に12番のシールドジャッキ12のスプレッダ25が邪魔になることはない。
【0039】
図5(f)に示すように、新たに組み立てたセグメントA4の前端面に11番及び12番のシールドジャッキ12のスプレッダ25を押し付け、3番及び4番のシールドジャッキ12を縮退させ、縮退によって空いたスペースにエレクタ11でセグメントBを組み立てる。このとき、3番及び4番以外のシールドジャッキ12は、伸長を継続し、セグメントSの組み立てと掘進とを同時に行う。よってL6>L5となる。
【0040】
ここで、12番のシールドジャッキ12と3番及び4番のシールドジャッキ12とは軸方向の設置位置が等しく、図4(e)から図5(f)にかけて掘進を継続しているので、図4(e)において組み立てるセグメントA4と12番のシールドジャッキ12のスプレッダ25との間に組立前方余裕W5が確保されていれば、図5(f)において組み立てるセグメントBと3番及び4番のシールドジャッキ12のスプレッダ25との間には、当然より大きな組立前方余裕W6が確保されることになる。
【0041】
図5(g)に示すように、新たに組み立てたセグメントBの前端面に3番及び4番のシールドジャッキ12のスプレッダ25を押し付け、13番及び14番のシールドジャッキ12を縮退させ、縮退によって空いたスペースにエレクタ11でセグメントCを組み立てる。このとき、13番及び14番以外のシールドジャッキ12は、伸長を継続し、セグメントSの組み立てと掘進とを同時に行う。よってL7>L6となる。
【0042】
ここで、3番及び4番のシールドジャッキ12と13番のシールドジャッキ12とは軸方向の設置位置が等しく、図5(f)から図5(g)にかけて掘進を継続しているので、図5(f)において組み立てるセグメントBと3番及び4番のシールドジャッキ12のスプレッダ25との間に組立前方余裕W6が確保されていれば、図5(g)において組み立てるセグメントCと13番のシールドジャッキ12のスプレッダ25との間には、当然より大きな組立前方余裕W7が確保されることになる。
【0043】
また、14番のシールドジャッキ12は、キーセグメントKを押圧するものであり、図5(g)に示すように、設置位置が13番のシールドジャッキ12よりも軸方向前方にずられているので、14番のシールドジャッキ12のスプレッダ25と新たに組み立てるセグメントCとの間に形成される組立前方余裕W8は、13番のシールドジャッキ12についての組立前方余裕W7よりも当然大きくなる。よって、セグメントCを組み立てる際に、14番のシールドジャッキ12のスプレッダ25が邪魔になることはない。
【0044】
なお、図5(g)にて組み立てられるセグメントCは、各シールドジャッキ12の伸長によりリングガーダ20から既設セグメントSの前端面までの距離がL6からL7となる間に組み立ててもよいが、距離がL7となった後に組み立てるようにしてもよい。前者によれば、セグメントCの組み立てと掘進とを同時に行うことになり、後者によれば、前記距離がL7となった掘進位置で掘進を停止した状態でセグメントCを組み立てることになる。
【0045】
また、1番及び2番のシールドジャッキ12は、キーセグメントKを押圧するものであり、トンネル軸方向の設置位置が5番〜11番の早押しジャッキブロック12Yのシールドジャッキ12の軸方向設置と同じであっても、ストロークが5番〜11番のシールドジャッキ12のストロークよりも長いため、図5(f)から図5(g)にかけて既設セグメントS(C、K)を押し切ることができ、シールドフレーム2を適切に前進させることができる。
【0046】
図5(h)に示すように、新たに組み立てたセグメントCの前端面に13番及び14番のシールドジャッキ12のスプレッダ25を当接させ、1番及び2番のシールドジャッキ12を縮退させ、縮退によって空いたスペースに、エレクタ11でキーセグメントKを正規の組立位置からトンネル軸方向前方にずらした位置に、トンネル径方向から挿入する。このとき、1番及び2番以外のシールドジャッキ12の伸長を停止し、掘進を停止してキーセグメントKの組み立てのみを行う。よって、リングガーダ20から既設セグメントSの前端面までの距離はL7のまま変わらない。
【0047】
ここで、1番及び2番のシールドジャッキ12は、トンネル軸方向の設置位置が3番、4番、12番、13番のシールドジャッキ12のトンネル軸方向の設置位置よりも前方にずらされているので、1番及び2番のシールドジャッキ12を縮退させることで、図5(h)において、キーセグメントKを正規の組立位置からトンネル軸方向前方にずらした位置に挿入するためのスペースを確保できる。
【0048】
図5(i)に示すように、正規の組立位置からトンネル軸方向前方にずらした位置に挿入されたキーセグメントKを、エレクタ11によってトンネル軸方向後方に移動させ、正規の組付位置に組み付ける。このとき、1番及び2番のシールドジャッキ12のスプレッダ25でエレクタ11に把持したキーセグメントKの前端面を押圧して組み付けるようにしてもよい。図5(i)は図4(a)と同じ状態(1リング進んだ状態)であり、以降、同じ工程の繰り返しとなる。
【0049】
以上述べたセグメントSの組立と掘進との関係を図6を用いて説明する。
【0050】
図6にて、Xはシールドジャッキ12の空振りストロークであり、YはセグメントSの軸方向長さであり、Z1〜Z3はシールドジャッキ12の掘進ストローク(シールドフレーム2の前進に寄与するストローク:実際のストロークから空振りストロークXを減じたもの)である。
【0051】
図6(a)にて、掘進を開始する。具体的には、カッタヘッド5を回転させつつ、各シールドジャッキ12を伸長させてシールドフレーム2を前進させる。シールドジャッキ12の掘進ストロークが図6(b)に示すようにZ1となるまで、即ちシールドジャッキ12の実際のストロークがセグメントSの軸方向長さYに所定の組立前方余裕W1を加えた長さとなるまで、掘進のみを行う。
【0052】
掘進に伴い、シールドジャッキ12の掘進ストロークが図6(b)に示すようにZ1となったなら、セグメントA1の組み立てを開始する。そして、掘進ストロークが図6(c)に示すようにZ2(>Z1)となるまでに、セグメントA2、A3を組み立て、その後、掘進ストロークが図6(d)に示すようにZ3(>Z2)となるまでに、セグメントA4、Bを組み立てる。セグメントA1、A2、A3、A4、Bを組み立てている間、掘進は継続されており、組立と掘進とが同時になされる。
【0053】
掘進ストロークがZ3となったなら掘進を停止し、シールドジャッキ12の掘進ストロークをZ3に保持する。そして、図6(e)に示すように、セグメントCを組み立て、その後、図6(f)に示すように、掘進ストロークをZ3に保持した状態で、キーセグメントKを組み立てる。図6(f)は図6(a)同じ状態(1リング進んだ状態)であり、以降、同じ工程の繰り返しとなる。
【0054】
以上述べたように、本実施形態に係る同時掘進シールド掘進機1によれば、セグメントSを1リング組み立てる際に組立順序が遅いセグメントSを押圧する3番、4番、12番、13番のシールドジャッキ12を、組立順序が早いセグメントSを押圧する5番〜11番のシールドジャッキ12よりも後方に設置したので、3番、4番、12番、13番のシールドジャッキ12のストロークを5番〜11番のシールドジャッキ12のストロークよりも短くしても、縮退させた各シールドジャッキ12のスプレッダ25とそれに対向する既設セグメントSとの間に、夫々適切な「組立前方余裕+セグメント長さ+押し余裕」の長さを確保でき、同時掘進が可能となる。
【0055】
すなわち、遅押しジャッキブロック12Xのシールドジャッキ(3番、4番、12番、13番)12を早押しジャッキブロック12Yのシールドジャッキ(5番〜11番)12よりもトンネル軸方向後方にずらして設置しているので、3番、4番、12番、13番のシールドジャッキ12のストロークを5番〜11番のシールドジャッキ12のストロークよりも短くしても、同時掘進の性能が犠牲にならない。そして、ストロークの短いシールドジャッキ12は安価であることから、全てのシールドジャッキ12のストロークが等しいものと比べると、コストダウンを推進できる。
【0056】
また、遅押しジャッキブロック12Xのシールドジャッキ(3番、4番、12番、13番)12のストロークを短くしているので、これらのシールドジャッキ(3番、4番、12番、13番)12について、余分なストロークを極限まで排除でき、伸縮のための時間が必要最低限で済むため、施工時間の短縮化に繋がる。すなわち、セグメントSの組立直前に組立部分のシールドジャッキ12を一般に縮限まで作動させるが、本実施形態のシールドジャッキ12は、組立セグメントの前方に不要なストロークを装備していないので、不要なストロークを縮める時間と組立後の不要なストロークを伸ばす時間が削減される。よって、その分、セグメントSを1リング組み立てるための組立時間(サイクルタイム)が短縮化され、更なる高速掘進化が可能となる。
【0057】
また、一部のシールドジャッキ(3番、4番、12番、13番)12のストロークを他のシールドジャッキ(5番〜11番)12のストロークよりも短くできるので、これら3番、4番、12番、13番のシールドジャッキ12の全長を短くできる。よって、これら3番、4番、12番、13番のシールドジャッキ12のシールドフレーム2内における収納スペースが、シールドフレーム2の長さ(シールド掘進機の機長)を決定する要因となっている場合には、それらのシールドジャッキ12の全長を短くすることで、シールド掘進機1の機長の短縮化が可能となり、低コスト化及びカーブ掘進の性能を向上させることができる。
【0058】
本発明は前記実施形態に限定されるものではない。
【0059】
前記実施形態ではシールドジャッキ12を、早押しジャッキブロック12Yと遅押しジャッキブロック12Xとの2つに分けたが、対応するセグメント12の組立順序の早い遅いに応じて3つ以上のブロックに分けてもよい。この場合、組立順序の遅いジャッキブロックのシールドジャッキ12をそれよりも組立順序の早いジャッキブロックのシールドジャッキ12に対して後方に設置し、組立順序の遅いジャッキブロックのシールドジャッキ12のストロークをそれよりも組立順序の早いジャッキブロックのシールドジャッキ12のストロークよりも短くする。
【0060】
また、前記実施形態では、各ジャッキブロック12X、12Yが複数のシールドジャッキ12から構成されるようにしたが、各ジャッキブロックは、1本以上のシールドジャッキ12から構成されていればよい。なお、ジャッキブロックを構成するシールドジャッキ12の本数を減らすに伴って、ジャッキブロックの数が増えることになる。
【0061】
また、本実施形態では、キーセグメントKを軸方向挿入タイプとしたが径方向挿入タイプとしてもよい。この場合、キーセグメントKを押圧するシールドジャッキ12は、それが属するジャッキブロック(図2の実施形態ではジャッキブロック12X)の他のシールドジャッキ(図2の実施形態では3番、4番、12番、13番)12と同じ軸方向設置位置及びストロークとなる。
【符号の説明】
【0062】
1 同時掘進シールド掘進機
2 シールドフレーム
11 エレクタ
12 シールドジャッキ
12X ジャッキブロック(遅押しジャッキブロック)
12Y ジャッキブロック(早押しジャッキブロック)
S セグメント
K キーセグメント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールドフレームの内周面に沿って下側から上側に向けてセグメントをリング状に組み立てるエレクタと、前記シールドフレームの内周面に周方向に間隔を隔てて複数設置され前記エレクタで組み立てられた既設のセグメントの前端面を押圧するシールドジャッキとを備え、
該シールドジャッキを伸長させて既設のセグメントを押圧することで前記シールドフレームを前進させながら、何れかのシールドジャッキを縮退させて縮退により生じたスペースに前記エレクタにより新たなセグメントを組み立てる同時掘進シールド掘進機であって、
前記シールドジャッキを、前記エレクタでセグメントを1リング組み立てる際のセグメントの組立順序の早い遅いに応じて、夫々1本以上のシールドジャッキから成る複数のジャッキブロックに分け、
組立順序が遅いセグメントを押圧するジャッキブロックは、組立順序が早いセグメントを押圧するジャッキブロックのシールドジャッキよりも、設置位置が掘進方向に対して軸方向後方にずらされ且つストロークが短いシールドジャッキを有する
ことを特徴とする同時掘進シールド掘進機。
【請求項2】
前記エレクタは、セグメントを1リング組み立てる際、最後にキーセグメントを軸方向から挿入するものであり、
前記組立順序が遅いセグメントを押圧するジャッキブロックのシールドジャッキは、前記キーセグメントを押圧するシールドジャッキを除き、前記組立順序が早いセグメントを押圧するジャッキブロックのシールドジャッキよりも、設置位置が軸方向後方にずらされ且つストロークが短く設定されている請求項1に記載の同時掘進シールド掘進機。
【請求項3】
前記キーセグメントを押圧するシールドジャッキは、セグメントを1リング組み立てる際の組立順序が最初のセグメントを押圧するシールドジャッキに対し、軸方向の設置位置が同じであり且つストロークが長く、該ストロークがセグメントの軸方向長さの一倍以上二倍未満である請求項2に記載の同時掘進シールド掘進機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate