説明

同軸ケーブル、及び、該同軸ケーブルと配線基板との接続構造

【課題】 はんだ接合を行うことなく、配線基板と良好な電気的接合を得られると共に脱落することなく確実に保持され、また、配線基板への脱着を容易に行うことができる同軸ケーブルを提供することにある。
【解決手段】 信号用コネクタピン10、グラウンド用コネクタピン30は、その断面が略C形をした筒状の金属導体からなる中空構造を有し、その付け根近傍の中空部に樹脂12a、32aが充填され、更に、ピン先端13、33が先細テーバ状に形成されていることを特徴とする。これにより、信号用及びグラウンド用コネクタピン10、30は弾性変形をし、樹脂12a、32aが信号用及びグラウンド用コネクタピン10、30をスルーホール壁面に押し付けるように作用するので、同軸ケーブル100は、はんだ接合を行うことなく配線基板200に確実に接続され、配線基板200への脱着を容易に行うことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板に接続される同軸ケーブルに関し、特に、配線基板に設けられたスルーホール(貫通孔)に挿入され接続される接続部を備えた同軸ケーブルに関する。また、該同軸ケーブルを含む、同軸ケーブルと配線基板との接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のスルーホールが形成された配線基板は、例えば、半導体試験装置において被試験デバイスとのインターフェースとして用いられている。この半導体試験装置における配線基板には、所定の間隔(例えば、2.54mm)を有して信号用のスルーホールとグランド用のスルーホールとが形成されており、この一対を接続チャンネルとする複数の接続チャンネルが形成されている。各接続チャンネルには、一対のピン端子(又は、「コネクトピン」という)を先端に有する同軸ケーブルが接続され、この構成に基づいて所定の半導体試験が行われる。
【0003】
この信号用スルーホールとグラウンド用スルーホールとに同軸ケーブルを接続する方法としては、同軸ケーブルを構成する内部導体と外部導体とにそれぞれ接続され、所定の間隔(例えば、2.54mm)を有して平行に配置された一対のピン端子(信号用ピン端子、グラウンド用ピン端子)を信号用スルーホール、グラウンド用スルーホールにそれぞれ接続する方法が一般に採用されている。
【0004】
このような、接続構造を有する同軸ケーブルと配線基板とは、例えば、特許文献1の図2に記載されている。この同軸ケーブルと配線基板との接続構造では、同軸ケーブルの内部導体、誘電体、及び、外部導体がそれぞれ所定の長さだけ露出され、露出された内部導体と外部導体とには、それぞれ信号用端子とグランド用端子が取り付けられ、これらの周囲が樹脂モールドによるカバー部材によって覆われた構成をなしている。配線基板には、配線基板を貫通して形成された信号用電極としての信号用スルーホールと、グランド用電極としてのグラウンド用スルーホールとが、所定の間隔を有して形成されている。そして、同軸ケーブルは、その先端の信号用端子、グランド用端子が、信号用スルーホール、グラウンド用スルーホールに挿入されることによって配線基板に接続される。
【0005】
また、配線基板に形成されたスルーホールに、同軸ケーブル等が接続されるコンタクトを挿入した接続構造が公知であり、例えば、特許文献2には、コンタクトをスルーホールに圧入し、配線基板にコンタクトを保持させてコンタクトの抜け防止を図った、コンタクトと配線基板との接続構造が開示されている。
【特許文献1】特開2002−203618号公報
【特許文献2】特開2004−227800号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の図2に示された、同軸ケーブルと配線基板との接続構造では、同軸ケーブルは、その先端の信号用端子、グランド用端子が、信号用スルーホール、グラウンド用スルーホールに挿入され、配線基板に接続されるので、複数の同軸ケーブルを同一の配線基板へ確実に接続することができる。しかし、この接続構造では、信号用端子及びグランド用端子を各スルーホールに挿入した後、当該部分のはんだ付けを行う必要があった。これは、信号用端子及びグランド用端子を各スルーホールに挿入しただけでは、ピン端子と電極としてのスルーホールとの接続保持及び電気的接続が十分ではないので、配線基板における実装面の反対側から、各ピン端子と各スルーホールとのはんだ接合を行っていたものである。
【0007】
このように、従来の同軸ケーブルと配線基板との接続構造では、はんだ接合が行われているので、いったん同軸ケーブルを配線基板に接続(はんだ接合)した後に、同軸ケーブルを接続し直すことは大変困難であった。すなわち、いったん配線基板に接続された同軸ケーブルの接続位置を変更しようとした場合、はんだ接合したはんだを再度溶融させて同軸ケーブル先端の各ピン端子をスルーホールから抜く方法や、同軸ケーブル先端の各ピン端子を切断して同軸ケーブルを取り外す方法等を行っていた。前者の方法によれば、はんだを再度溶融させる手間がかかり、特に、近年普及しつつある鉛フリーはんだでは、その溶融温度が高い為、高価な配線基板を駄目にしてしまう虞がある。また、後者の方法によれば、同軸ケーブルを破損させるに加え、配線基板のスルーホールを塞ぐことになってしまう。
【0008】
これに対し、上記特許文献2には、配線基板に形成されたスルーホールに、同軸ケーブルの接続部として利用可能なコンタクトを圧入し、配線基板にコンタクトを保持させるようにした、コンタクトと配線基板との接続構造が開示されている。特に、特許文献2の図2に示される形態では、コンタクトの圧入部にV溝が形成されており、コンタクトをスルーホールに圧入すると前記圧入部が押し潰されて変形し、コンタクトがスルーホールから抜けるのを防止する。
【0009】
しかし、このコンタクトと配線基板との接続構造では、プレスフィットによりコンタクトをスルーホールへ圧入するので、専用のプレス装置や治具等が必要であった。また、コンタクトと配線基板との電気的接続は、押し潰されて変形したコンタクトの圧入部とスルーホールとを介してなされるが、該電気的接続が十分に確保されない虞が生じる。
【0010】
本発明は、上記のような種々の課題に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、はんだ接合を行うことなく、配線基板と良好な電気的接合を得られると共に脱落することなく確実に保持され、また、配線基板への脱着を容易に行うことができる同軸ケーブルを提供することにある。また、上記作用効果を有する、同軸ケーブルと配線基板との接続構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的達成のため、請求項1に記載の同軸ケーブルは、内部導体の外周を、誘電体、外部導体、及び、外被の順に被い形成され、複数のスルーホールが形成された配線基板に接続する接続部を備えた同軸ケーブルにおいて、前記接続部は、前記内部導体に接続されて前記スルーホールに挿入される第1のコネクタピンと、前記外部導体に接続されて前記スルーホールに挿入される第2のコネクタピンと、を含み、前記第1、第2のコネクタピンは、その断面が略C形をした筒状の金属導体からなる中空構造を有し、その付け根近傍の中空部に樹脂が充填され、更に、その先端が先細テーバ状に形成されていることを特徴としている。
【0012】
これにより、請求項1に記載の同軸ケーブルでは、前記第1、第2のコネクタピンが配線基板のスルーホールに挿入されると、前記第1、第2のコネクタピンは弾性変形をして、スルーホールの内周面(壁面)に押し付けられるので、前記第1、第2のコネクタピンがスルーホール内に確実に保持される。更に、コネクタピンの中空部に充填された樹脂が、前記第1、第2のコネクタピンをスルーホールの内周面(壁面)に押し付けるように作用する。この結果、はんだ接合を行うことなく配線基板に確実に接続され、配線基板への脱着を容易に行うことが可能となる。また、前記第1、第2のコネクタピンの断面が略C形に形成されているので、前記第1、第2のコネクタピンとスルーホールとは良好な電気的接合を得ることが可能である。
【0013】
また、請求項2に記載の同軸ケーブルは、更に、前記第1のコネクタピンと第2のコネクタピンとは、互いに略平行に配設されていることを特徴としている。これにより、請求項2に記載の同軸ケーブルは、多数のスルーホールが形成された高密度実装に対応した配線基板に接続することができ、更に、前記第1、第2のコネクタピンのスルーホールへの挿抜を同時に行うことができるので、配線基板への接続を更に容易に実施することが可能である。
【0014】
また、請求項3に記載の同軸ケーブルと配線基板との接続構造は、内部導体の外周を、誘電体、外部導体、及び、外被の順に被い形成された同軸ケーブルを、複数のスルーホールが形成された配線基板に接続する同軸ケーブルと配線基板との接続構造において、前記同軸ケーブルは、請求項1又は2に記載の同軸ケーブルで、前記第1、第2のコネクタピンの外径を前記スルーホールの内径より僅かに大きくし、前記第1、第2のコネクタピンの前記スルーホールへの挿抜を可能としたことを特徴としている。
【0015】
これにより、請求項3に記載の同軸ケーブルと配線基板との接続構造では、前記第1、第2のコネクタピンが前記スルーホールに挿入されると、前記第1、第2のコネクタピンは弾性変形をして、前記スルーホールの内周面(壁面)に押し付けられるので、前記第1、第2のコネクタピンが前記スルーホール内に確実に保持される。更に、コネクタピンの中空部に充填された樹脂が、前記第1、第2のコネクタピンを前記スルーホールの内周面(壁面)に押し付けるように作用する。この結果、前記同軸ケーブルは、はんだ接合を行うことなく、配線基板に確実に接続されるので、前記同軸ケーブルの配線基板への脱着を容易に行うことが可能である。また、前記第1、第2のコネクタピンの断面が略C形に形成されているので、前記第1、第2のコネクタピンと前記スルーホールとは良好な電気的接合を得ることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る同軸ケーブルの実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0017】
初めに、本発明の代表的な実施形態について、図1〜3を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る同軸ケーブル100の先端を示す、正面図、及び、左右の側面図、並び、各断面図である。図2は、信号用コネクタピン10、グラウンド用コネクタピン30等を示す、正面(断面)図、左右の側面図、及び、平面図である。図3は、本実施形態に係る同軸ケーブル100と配線基板200との接続構造を示す概念図(正面)である。
【0018】
先ず、本発明に係る同軸ケーブル100について、図1を参照して説明する。図1(B)は同軸ケーブル100の先端を示す正面(部分断面)図、図1(A)はその左側面(部分断面)図、図1(C)はその右側面(部分断面)図、更に、図1(A−1)、(B−1)、(C−1)は、X−X線における各断面図である。
【0019】
本発明に係る同軸ケーブル100は、ケーブル本体100aと、端部に形成されたコネクタ部100b(接続部)とにより略構成されている。ケーブル本体100aは、複数本の電線を拠り合わせて作られた内部導体1の周囲に絶縁材料からなる誘電体2を形成し、この誘電体2の外周に複数本の導体素線を横巻きに設けてシールド層3(外部導体)を形成し、更にシールド層3の外周にフッ素樹脂等の絶縁材料からなる外被4を形成して構成されている。
【0020】
コネクタ部100bは、図3に示す配線基板200に形成されたスルーホール210(210a、210b)に挿入されて接続される信号用コネクタピン10(第1のコネクタピン)と、グラウンド用コネクタピン30(第2のコネクタピン)とを備え、該信号用コネクタピン10とグラウンド用コネクタピン30とは、互いに略平行になるようにコネクタケース7に固定されている。
【0021】
信号用コネクタピン10は、図1(A−1)に示すように、その断面が略C形をした筒状の金属導体からなるピン端子で、ピン接合部11と、ピン本体12と、ピン先端13とを備える。ピン結合部11は、図1(A)、(B)に示すように、ケーブル本体100aの内部導体1を包み込むように内部導体1に接続されている。ピン本体12は、ピン結合部11からピン先端13にかけて直線状に延びる本体部分で、ピン先端13は、信号用スルーホール210a(図3参照)への滑らかな挿入を行えるように先細テーパー状に形成されている。
【0022】
信号用コネクタピン10は、薄板状の金属導体を図1(A)、(B)に示す中空構造に加工したもので、本実施形態では、その表面に厚さ0.2μmの金メッキを施した厚さ0.1mmのチタン銅が用いられている。また、本実施形態では、図1(A−1)に示すピン本体12の長い方の幅D1(以下、「ピン長幅D1」という)が0.92mmに、短い方の幅D2(以下、「ピン短幅D2」という)が0.68mmに形成されている。
【0023】
次に、グラウンド用コネクタピン30は、前記信号用コネクタピン10と同様に、その断面が略C形をした筒状の中空構造を有するグラウンド用のピン端子で、グラウンド接合部31(31a、31b)と、ピン本体32と、ピン先端33とを備えている。グラウンド用接合部31は、ケーブル本体100aのシールド層3を包み込むようにしてシールド層3と接続する接触部31aと、平板状の平板部31bとを備える。ピン本体32と、ピン先端33とは、前記信号用コネクタピン10のピン本体12及びピン先端12と同一に形成されている。すなわち、本実施形態では、表面に厚さ0.2μmの金メッキが施された厚さ0.1mmのチタン銅を用いて、ピン本体32のピン長幅D1を0.92mm、ピン短幅D2を0.68mmに形成している。
【0024】
信号用コネクタピン10とグラウンド用コネクタピン30とは、前述したように、互いに略平行になるように、ピン固定部70を介して、コネクタケース7に固定されている。ピン固定部70は樹脂で形成され、信号用コネクタピン10用の貫通孔71とグラウンド用コネクタピン30用の貫通孔73とを備える(図2(B)参照)。このピン固定部70により、信号用コネクタピン10とグラウンド用コネクタピン30とは互いに略平行に保持され、本実施形態では、信号用コネクタピン10とグラウンド用コネクタピン30との間隔P1(以下、「ピッチ間隔P1」という)が2.0mmに保持されている。なお、コネクタケース7は、樹脂で形成された箱形の基体で、オーバーモールド方式又は嵌め込み方式等を用いることが可能で、本実施形態では、嵌め込み方式を利用している。
【0025】
このように、本実施形態におけるコネクタ部100b(同軸ケーブル100の接続部)では、信号用コネクタピン10とグラウンド用コネクタピン30とは、2.0mmのピッチ間隔P1を有して、互いに略平行になるように、コネクタケース7に固定されているので、配線基板200への同軸ケーブル100の接続を、手作業によって容易に行うことができる。
【0026】
次に、信号用コネクタピン10及びグラウンド用コネクタピン30の更なる特徴部分について、図2を参照して説明する。図2(A)は信号用コネクタピン10の左側面を示し、図2(D)はグラウンド用コネクタピン30の右側面を示し、図2(C)は信号用コネクタピン10及びグラウンド用コネクタピン30の各Y−Y線における断面を示す正面断面図、図2(B)は固定部70をグラウンド接合部31側から見た平面図である。
【0027】
前述したように、信号用コネクタピン10、グラウンド用コネクタピン30のピン本体12、32は、断面が略C形をした筒状の中空構造をしており、ピン本体12には、図2(A)、(C)に示すように、ピン接合部11に近い、その付け根近傍の中空部に樹脂12aが充填されている(樹脂12aは弾性を有する樹脂であっても良い)。ピン本体32にも、図2(C)、(D)に示すように、グラウンド接合部31に近い、その付け根近傍の中空部に樹脂32aが同様に充填されている(樹脂32aは弾性を有する樹脂であっても良い)。なお、本実施形態では、液晶からなる樹脂12a、32aが用いられている。
【0028】
このように、本実施形態におけるコネクタ部100bでは、断面が略C形をした筒状の中空構造をした信号用コネクタピン10及びグラウンド用コネクタピン30の付け根近傍の中空部に樹脂12a、32aが充填されているので、後述するピン本体12、32の弾性変形による締付け効果を向上させることが可能である。
【0029】
次に、本発明に係る同軸ケーブル100の作用効果について、図3を参照して説明する。図3(A)は同軸ケーブル100が配線基板200に接続される前の状態を示し、図3(B)は同軸ケーブル100が配線基板200に接続された状態を示し、図3(C)は同軸ケーブル100が配線基板200から取り外された状態を示す。
【0030】
配線基板200は、例えば、半導体試験装置において被試験デバイスとのインターフェースとして用いられる配線基板である。配線基板200には、図3(A)、(B)、(C)に示すように、一対の信号用スルーホール210aとグランド用スルーホール210bとが形成され、一の接続チャンネルを構成している。なお、配線基板200には、当該接続チャンネル以外にも、図示しない対の信号用スルーホールとグランド用スルーホールとから構成される他の複数の接続チャンネルが形成されている。配線基板200の各接続チャンネルには、一対のピン端子(信号用コネクタピン10、グラウンド用コネクタピン30)を先端に有する同軸ケーブル100を介して被試験デバイスが接続され、所定の半導体試験が行われる。
【0031】
信号用スルーホール210a及びグランド用スルーホール210bは、配線基板200を貫通してなる、同一の円形(平面視)貫通孔で、所定の間隔P2(以下、「ホール間隔P2」という)を有して形成されている。信号用スルーホール210a、グランド用スルーホール210bには、図3(B)に示すように、同軸ケーブル100の信号用コネクタピン10、グラウンド用コネクタピン30が挿入され、同軸ケーブル100と配線基板200との接続がなされる。
【0032】
本実施形態では、信号用スルーホール210a及びグランド用スルーホール210bの内径Hが0.8mm、信号用スルーホール210aとグランド用スルーホール210bとのホール間隔P2が2.00mmとなっている。また、本実施形態における同軸ケーブル100(信号用コネクタピン10及びグラウンド用コネクタピン30)では、前述したように、ピン長幅D1が0.92mm、ピン短幅D2が0.68mm、ピッチ間隔P1が2.0mmに形成されている。すなわち、信号用コネクタピン10及びグラウンド用コネクタピン30のピン長幅D1は、内径Hより大きく、ピン短幅D2は内径Hより小さく、ピッチ間隔P1はホール間隔P2と同一である。
【0033】
このように、長幅D1は内径Hより大きく、ピン短幅D2は内径Hより小さく形成されているので、信号用スルーホール210a、グランド用スルーホール210bに、信号用コネクタピン10、グラウンド用コネクタピン30が挿入されると、信号用コネクタピン10及びグラウンド用コネクタピン30は、図3(B)に示すように、幅方向(図3における左右方向)に収縮するような弾性変形を行う。すなわち、信号用コネクタピン10及びグラウンド用コネクタピン30の断面は前述したように略C形に形成されているので、信号用スルーホール210a及びグランド用スルーホール210bの壁面(以下、「スルーホール壁面」という)から圧力を受け、この断面略C形の開口部が閉じるような弾性変形を行う。更に、信号用コネクタピン10及びグラウンド用コネクタピン30のピン本体12、32には、前述したように、その付け根近傍の中空部に樹脂12a、32aが充填されているので、ピン本体12、32と共に、樹脂12a、32aも弾性変形する。また、ピン先端13、33は、前述したように、先細のテーパー状に形成されているので、信号用スルーホール210a、グランド用スルーホール210bへの滑らかな挿入が可能である。
【0034】
このように、信号用スルーホール210a、グランド用スルーホール210bに、信号用コネクタピン10、グラウンド用コネクタピン30が挿入されて接続されると、ピン本体12、32は、その外周面(以下、「ピン外周面」という)とスルーホール壁面とは面接触した状態で、スルーホール壁面より圧力を受けることとなる。これにより、信号用コネクタピン10、グラウンド用コネクタピン30は、脱落することなく、信号用スルーホール210a、グランド用スルーホール210b内に固定される。更に、ピン外周面とスルーホール壁面とは面接触した状態で接続されるので、はんだ接合をすることなく、同軸ケーブル100と配線基板200とを良好に接続することが可能である。
【0035】
そして、この同軸ケーブル100と配線基板200との接続構造では、ピン本体12、32と樹脂12a、32aとの弾性力等を利用して固定接続するものであるので、ある大きさ以上の力を加えれば、図3(C)に示すように、同軸ケーブル100(信号用コネクタピン10、グラウンド用コネクタピン30)を配線基板200(信号用スルーホール210a、グランド用スルーホール210b)から引き抜くことが可能である。配線基板200から引き抜かれた同軸ケーブル100は、ピン本体12、32が接続される前の状態(図3(A)参照)に復元されるので、この取り外された同軸ケーブル100を再び配線基板200に接続することが可能である。すなわち、前述したように、配線基板200には、信号用スルーホール及びグランド用スルーホールからなる他の接続チャンネル(図示せず)が形成されているので、信号用スルーホール210a、グランド用スルーホール210bにいったん接続された同軸ケーブル100を、他の接続チャンネルに接続し直すことが可能である。
【0036】
このように、本実施形態における同軸ケーブル100と配線基板200との接続構造では、同軸ケーブル100の信号用コネクタピン10とグラウンド用コネクタピン30とは、その断面が略C形をした筒状の中空構造を有し、ピン長幅D1が配線基板200のスルーホール内径Hより僅かに大きく形成され、その付け根近傍の中空部に樹脂12a、32aが充填され、更に、ピン先端13、33が先細テーパー状に形成されているので、配線基板200(信号用スルーホール210a、グランド用スルーホール210b)への同軸ケーブル100(信号用コネクタピン10、グラウンド用コネクタピン30)の着脱(挿抜)が、手作業により可能となった。
【0037】
次に、前述した信号用コネクタピン10(ピン本体12、ピン先端13)及びグラウンド用コネクタピン30(ピン本体32、ピン先端33)と同一に形成したコネクタピン(実施例1)と、その比較例1とについて説明する。
【0038】
[実施例1]厚さ0.2μmの金メッキを施した厚さ0.1mmのチタン銅を用いて、前述した断面略C形中空構造を有するコネクタピン(ピン長幅D1が0.92mm、ピン短幅D2が0.68mm)を作成した。
【0039】
[比較例1]内径0.8mmのスルーホールに適用する、基板仮固定タイプのAMP社製接触子(型番172797−1)を、実施例1に対する比較例とした。
【0040】
[挿抜力試験]実施例1(コネクタピン)、比較例1(AMP社製接触子)のそれぞれについて、内径0.8mmのスルーホールが形成された厚さ2.2mmの配線基板を用いて挿抜力の測定を行った。
【0041】
図4(A)は実施例1のコネクタピンの挿抜力の平均値を示し、図4(B)は比較例1のAMP社製接触子の挿抜力の平均値を示す。図4(A)に示すように、実施例1のコネクタピンの挿抜力は1回目の挿抜、すなわち、接続後初めて引き抜く際の挿抜力が最も高く、2回目、3回と挿抜を繰り返すと、挿抜力は減少し、4回目以降は、約1kgf程度で安定する。前述したように、本実施形態の接続構造は、例えば、半導体試験装置において被試験デバイスとのインターフェースとして用いられるが、半導体試験装置での使用において良好な接続強度を満たしている。一方、比較例1のAMP社製接触子の挿抜力は、図4(B)に示すように、200〜300gfで、実施例1と比較してかなり小さい。
【0042】
続いて、上記実施例1のコネクタピンと配線基板との間の接触抵抗について説明する。実施例1のコネクタピンを内径0.8mmのスルーホールが形成された厚さ2.2mmの配線基板と接続した5つのサンプルを準備し、接触抵抗値の初期値(測定雰囲気温度22.6℃)、及び、熱衝撃試験後の接触抵抗値(測定雰囲気温度23.8℃)をそれぞれ測定した。なお、エイジング(熱衝撃試験)は、MIL−STD202−102に基づく温度サイクル試験(図5(A)参照)を25サイクル連続して実施した。また、接触抵抗値の測定は、HIOKI 3224mΩ HI TESTERを用いた。
【0043】
上記、接触抵抗値の初期値、及び、熱衝撃試験後の接触抵抗値の測定結果を、図5(B)に示す。図5(B)に示されるように、実施例1のコネクタピンと上記配線基板との接触抵抗は、初期値及び熱衝撃試験後共に良好であって、熱衝撃試験前後の接触抵抗値の変化量ρは、測定器の測定精度限界値付近の微小値であった。
【0044】
[第2の実施形態]次に、信号用コネクタピン10及びグラウンド用コネクタピン30の第2の実施形態について、図6を参照して説明する。図6は、第2の実施形態における同軸ケーブル100と配線基板200とを示す正面(部分断面)図である。
【0045】
第2の実施形態では、図6に示すように、信号用コネクタピン10(ピン本体12)、グラウンド用コネクタピン30(ピン本体32)にロック機構12b、32bが設けられている。ロック機構12b、32bは、ピン本体12、32に埋設可能に配設され、信号用コネクタピン10、グラウンド用コネクタピン30が、信号用スルーホール210a、グランド用スルーホール210bに挿入途中はピン本体12、32に埋設されているが、挿入が完了するとピン本体12、32から突出する(図6参照)。なお、第2の実施形態は、信号用コネクタピン10(ピン本体12)、グラウンド用コネクタピン30(ピン本体32)に、ロック機構12b、32bが追加配設されている以外は、前述した第1の実施形態と同一の構成であるので、その説明は省略する。
【0046】
このように、信号用コネクタピン10(ピン本体12)、グラウンド用コネクタピン30(ピン本体32)にロック機構12b、32bが配設されているので、同軸ケーブル100が配線基板200から脱落するのを更に効果的に防止できる。
【0047】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明に係る同軸ケーブル100では、コネクタ部100b(接続部)は、内部導体1に接続され、信号用スルーホール210aに挿入される信号用コネクタピン10(第1のコネクタピン)と、シールド層3(外部導体)に接続され、グラウンド用スルーホール210bに挿入されるグラウンド用コネクタピン30(第2のコネクタピン)と、を含み、信号用コネクタピン10、グラウンド用コネクタピン30は、その断面が略C形をした筒状の金属導体からなる中空構造を有し、その付け根近傍の中空部に樹脂12a、32aが充填され、更に、ピン先端13、33が先細テーバ状に形成されていることを特徴としている。
【0048】
これにより、信号用コネクタピン10、グラウンド用コネクタピン30が、信号用スルーホール210a、グランド用スルーホール210bに挿入されると、信号用コネクタピン10、グラウンド用コネクタピン30は弾性変形をして、スルーホール壁面に押し付けられるので、信号用コネクタピン10、グラウンド用コネクタピン30が信号用スルーホール210a、グランド用スルーホール210b内に確実に保持される。更に、信号用コネクタピン10、グラウンド用コネクタピン30の中空部に充填された樹脂12a、32aも、信号用コネクタピン10、グラウンド用コネクタピン30と共に弾性変形して、信号用コネクタピン10、グラウンド用コネクタピン30をスルーホール壁面に押し付けるように作用する。この結果、同軸ケーブル100は、はんだ接合を行うことなく配線基板200に確実に接続され、配線基板200への脱着を容易に行うことが可能となる。また、信号用コネクタピン10、グラウンド用コネクタピン30の断面が略C形に形成されているので、信号用コネクタピン10、グラウンド用コネクタピン30と信号用スルーホール210a、グランド用スルーホール210bとは良好な電気的接合を得ることが可能である。
【0049】
また、本発明に係る同軸ケーブル100は、更に、信号用コネクタピン10とグラウンド用コネクタピン30とは、互いに略平行に配設されていることを特徴としている。これにより、多数のスルーホールが形成された高密度実装に対応した配線基板200に接続することができ、更に、信号用コネクタピン10、グラウンド用コネクタピン30のスルーホールへの挿抜を同時に行うことができるので、配線基板200への接続を更に容易に実施することが可能である。
【0050】
また、本発明に係る同軸ケーブル100と配線基板200との接続構造は、信号用コネクタピン10及びグラウンド用コネクタピン30の外径(ピン信号用コネクタピン10及びグラウンド用コネクタピン30のピン長幅D1)を、信号用スルーホール210a及びグランド用スルーホール210bの内径Hより僅かに大きくし、信号用コネクタピン10、グラウンド用コネクタピン30の、信号用スルーホール210a、グランド用スルーホール210bへの挿抜を可能としたことを特徴としている。
【0051】
これにより、信号用コネクタピン10、グラウンド用コネクタピン30が、信号用スルーホール210a、グランド用スルーホール210bに挿入されると、信号用コネクタピン10及びグラウンド用コネクタピン30は弾性変形をして、スルーホール壁面に押し付けられるので、信号用コネクタピン10、グラウンド用コネクタピン30が、信号用スルーホール210a、グランド用スルーホール210b内に確実に保持される。更に、コネクタピンの中空部に充填された樹脂12a、32aも、信号用コネクタピン10、グラウンド用コネクタピン30と共に弾性変形して、信号用コネクタピン10、グラウンド用コネクタピン30をスルーホール壁面に押し付けるように作用する。この結果、同軸ケーブル100は、はんだ接合を行うことなく、配線基板200に確実に接続されるので、同軸ケーブル100の配線基板200への脱着を容易に行うことが可能である。また、信号用コネクタピン10及びグラウンド用コネクタピン30の断面が略C形に形成されているので、信号用コネクタピン10、グラウンド用コネクタピン30と、信号用スルーホール210a、グランド用スルーホール210bとは良好な電気的接合を得ることが可能である。
【0052】
なお、本発明の範囲は上述した実施形態や実施例に限定されることはなく、特許請求の範囲の記載に反しない限り、他の様々な実施形態に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明に係る同軸ケーブル、及び、該同軸ケーブルと配線基板との接続構造は、半導体試験装置で使用される他、同軸ケーブルと配線基板とを備える一般の電子機器においても適用することが可能である。また、同軸ケーブルに限られず、単一のケーブルにおいて前述した接続構造を利用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】同軸ケーブル100の先端を示す、左側面図(A)、正面図(B)、及び、右側面図(C)である。
【図2】信号用コネクタピン10の左側面図(A)、ピン固定部70の平面図(B)、信号用コネクタピン10、グラウンド用コネクタピン30等を示す正面(断面)図(C))、グラウンド用コネクタピン30の右側面図(D)である。
【図3】第1の実施形態に係る同軸ケーブル100と配線基板200との接続構造を示す概念図(正面)である。
【図4】実施例1の挿抜力の平均値(A)と、比較例1の挿抜力の平均値(B)とを示す。
【図5】熱衝撃試験の温度サイクル(A)と、実施例1の接触抵抗値の測定結果(B)とを示す。
【図6】第2の実施形態における同軸ケーブル100と配線基板200とを示す正面(部分断面)図である。
【符号の説明】
【0055】
1 内部導体、2 誘電体、3 シールド層、4 外被、7 コネクタケース、10 信号用コネクタピン、11 ピン結合部、12 ピン本体、12a 樹脂、12b ロック機構、13 ピン先端、30 グラウンド用コネクタピン、31 グラウンド接合部、31a 接触部、31b 平板部、32 ピン本体、32a 樹脂、32b ロック機構、33 ピン先端、70 ピン固定部、71、73 貫通孔、100 同軸ケーブル、100a ケーブル本体、100b コネクタ部、200 配線基板、210a 信号用スルーホール、210b グランド用スルーホール、D1 ピン長幅、D2 ピン短幅、H 内径、P1 ピッチ間隔、P2 ホール間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部導体の外周を、誘電体、外部導体、及び、外被の順に被い形成され、
複数のスルーホールが形成された配線基板に接続する接続部を備えた同軸ケーブルにおいて、
前記接続部は、前記内部導体に接続されて前記スルーホールに挿入される第1のコネクタピンと、前記外部導体に接続されて前記スルーホールに挿入される第2のコネクタピンと、を含み、
前記第1、第2のコネクタピンは、その断面が略C形をした筒状の金属導体からなる中空構造を有し、その付け根近傍の中空部に樹脂が充填され、更に、その先端が先細テーバ状に形成されていることを特徴とする同軸ケーブル。
【請求項2】
前記第1のコネクタピンと第2のコネクタピンとは、互いに略平行に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の同軸ケーブル。
【請求項3】
内部導体の外周を、誘電体、外部導体、及び、外被の順に被い形成された同軸ケーブルを、複数のスルーホールが形成された配線基板に接続する同軸ケーブルと配線基板との接続構造において、
前記同軸ケーブルは、請求項1又は2に記載の同軸ケーブルで、
前記第1、第2のコネクタピンの外径を前記スルーホールの内径より僅かに大きくし、前記第1、第2のコネクタピンの前記スルーホールへの挿抜を可能としたことを特徴とする同軸ケーブルと配線基板との接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−244895(P2006−244895A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−60420(P2005−60420)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【出願人】(000145530)株式会社潤工社 (71)
【Fターム(参考)】