説明

同軸ケーブル用コネクタ

【課題】 同軸ケーブルの編組外部導体を解きほぐさない半田付けで装着されたカバーインシュレータと、シグナルコンタクトおよびグランドコンタクトが固定保持されたベースインシュレータを合着するだけで同軸ケーブルの接続が完了する同軸ケーブル用コネクタの提供。
【解決手段】 ベースインシュレータには同軸ケーブル側との接続部が圧接接続構造であるシグナルコンタクト及びグランドコンタクトを固定保持させ、カバーインシュレータ1には、前記グランドコンタクトの接続部へ押し込まれる圧接部4と、同軸ケーブル7の編組外部導体6の編組を解きほぐさずに半田付けできるように立ち上がった半田付け部3が一体的に設けられたグランドプレート2を固定保持させ、同軸ケーブル7の編組外部導体を除去した部分と前記圧接部4をそれぞれベースインシュレータのシグナルコンタクトとグランドコンタクトの接続部へ押し込むように合着したとき合着を保持するロック機構を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多重同軸ケーブル用コネクタの、ケーブル接続構造の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
多数の同軸ケーブルを接続する多重同軸ケーブル用コネクタにおいては、同軸ケーブルの信号線(中心導体)が接続されるシグナルコンタクトと、同軸ケーブルの編組外部導体(グランド導体)が接続されるグランドコンタクトとが1組となって、多数組がコネクタのベースインシュレータに固定保持されている。
そして、これらコンタクトとケーブルとの接続は、コンタクトの後端部分が立ち上げられており、それにY字形の切れ込みが切られており、この切れ込みへ中心導体や外部導体接続用の導体が押し込まれて圧接接続するようになっている。
【0003】
図7は、このような圧接接続の例を示す図である。
コンタクトの後端立ち上がり部分のコンタクト接続部16にはY字形の切れ込み15が設けられており、この切れ込みの内縁は刃のようになっており、この部分へ絶縁被覆17がついたままの信号線18を押し込むと絶縁被覆17が破れてコンタクトと信号線18(中心導体)が接触する。切れ込みの幅は信号線の径よりも若干小さくしてあるので、信号線を押し込むことにより反力で信号線が圧挟され接続が得られる。
外部導体接続用の導体を押し込む場合も、絶縁被覆がないだけで信号線の場合と同様である。
【0004】
外部導体接続の第1の例としては、同軸ケーブルの編組外部導体とその外側の外部絶縁被覆との間に長手方向に沿って設けられているグランド線を、外部絶縁被覆を除去して引き出しその前方部分をグランドコンタクトのY字形切れ込みへ押し込み接続している(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
第2の例としては、整列した多数の同軸ケーブルに渡る板状の接地部材を設け、この接地部材にはケーブル1本1本に対応させて前方に延びる接地プレートが突き出しており、同軸ケーブルの方は外部被覆を除去した後、編組外部導体を編組状態から解きほぐして箒状にして接地部材に半田付けし、対応する前方の接地プレートをグランドコンタクトのY字状切れ込みに押し込むようにしている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2001−217019号公報(図9)
【特許文献2】特開平10−21977号公報(図4、5、7、8、10)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、外部導体接続の前記第1の例では、同軸ケーブルの中に設けられているグランド線が、同軸ケーブルと共に曲がるようなフレキシブルな柔らかい線であるうえ、その固定が同軸ケーブルの外部被覆でくるまれているだけなので、コンタクト接続部のY字形切れ込み部への押し込みも行いにくいうえ、押し込まれた後も安定しないという問題がある。
【0007】
また、第2の例においては、同軸ケーブルの編組外部導体の編組を同軸ケーブル1本毎に解きほぐして接地部材に半田付けしなければならず、この解きほぐしに手間がかかるという問題がある。
【0008】
本発明の課題は上記のような問題を解決するとともに、シグナルコンタクトとグランドコンタクトが固定保持された第1のハウジングに、同軸ケーブルの外部編組導体を解きほぐさずに半田付けされたグランドプレートが固定保持された第2のハウジングを合着すると同軸ケーブルの接続が完了する同軸ケーブル用コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記の課題を解決するために、下記の各構成を有する。
本発明の第1の構成(基本構成)は、第1のハウジングには、同軸ケーブル側への接続部が導体を押し込まれると反力によりこれを圧挟して電気接触する圧接構造となっているシグナルコンタクトおよびグランドコンタクトが固定保持されており、
第2のハウジングには、前記グランドコンタクトの接続部へ押し込まれる押し込み部と同軸ケーブルの編組外部導体が編組状態のまま半田付けされるように立ち上がった半田付け部とが一体的に設けられているグランドプレートが固定保持されており、
グランドプレートの押し込み部と、グランドプレートの半田付け部に編組外部導体が半田付けされた同軸ケーブルの先方の編組外部導体が除去された部分とを、それぞれグランドコンタクトとシグナルコンタクトの接続部へ押し込むように、第1のハウジングと第2のハウジングとを合着したときにこの合着を保持するロック機構を有することを特徴とする同軸ケーブル用コネクタである。
【0010】
本発明の第2の構成は、前記第1の構成において、第1のハウジングに、シグナルコンタクトと、グランドコンタクトの複数組が整列固定保持され、第2のハウジングのグランドプレートが複数本の同軸ケーブルに対応するよう複数の半田付け部と複数の押し込み部を第1のハウジングにおける整列状態に対応した整列状態で有することを特徴とする同軸ケーブル用コネクタである。
【0011】
本発明の第3の構成は、前記第1の構成又は第2の構成の第1のハウジングが、1個の基体の1面側と反対面側に背中合わせ状態で形成され、第1の構成又は第2の構成の第2のハウジングが、前記1面側と反対面側の両面に合着されるものであることを特徴とする同軸ケーブル用コネクタである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の同軸ケーブル用コネクタは、第2のハウジングに固定保持されたグランドプレートに同軸ケーブルの外部編組導体を解きほぐさずにそのまま半田付けできるように立ち上がった半田付け部を有しているので外部被覆を除去しただけでそのまま半田付けでき、編組導体を解きほぐす手間は不要となる。グランドコンタクトの接続部へ押し込まれる押し込み部は、第2のハウジングに固定保持されたグランドプレートと一体的に設けられているため安定して固定され、しっかりとしているためグランドコンタクトの接続部への切り込みも確実安定に行われ、押し込み後も安定した状態が得られる。
【0013】
更に、外部編組導体がグランドプレートの半田付け部に、半田付けされた状態の第2のハウジングを、グランドプレートの押し込み部と、同軸ケーブルの外部編組導体を除去された部分をそれぞれ第1のハウジングに固定保持されたグランドコンタクトの接続部とシグナルコンタクトの接続部に押し込まれるようにして合着したときは、この合着を保持するためのロック機構が設けられているため、同軸ケーブル用コネクタと同軸ケーブルの接続は完結し、完結までの工程が非常に簡単であるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施においては、複数の同軸ケーブルの編組外部導体が同電位でそれがそのまま各グランドコンタクトに伝わることが最も望ましいから、編組外部導体は片側だけでなく両側で半田付け部に半田付けされるのが最良の実施の形態である。
【実施例】
【0015】
以下、本発明の同軸ケーブル用コネクタの実施例を図面を参照して説明する。
図1は、本発明同軸ケーブル用コネクタの、複数の同軸ケーブルが装着されたカバーインシュレータ1(課題解決手段にいう、第2のハウジング)の内面を見た平面図である。カバーインシュレータ1にグランドプレート2が固定保持されている。図2はグランドプレート2の構造詳細図である。(a)は同軸ケーブルが配列される平面から見た平面図であり、(b)はこれを左側面から見た側面図であり、(c)は、(a)を下方即ち接続する同軸ケーブルの軸方向から見た正面図である。
【0016】
グランドプレート2は、固定保持部5でカバーインシュレータ1に固定保持される。半田付け部3は(a)の図では紙面の手前側に立ち上がっており、図1に示すようにこの半田付け部3に沿うように配置された同軸ケーブル7の編組外部導体6が編組状態のまま半田付け部3に半田付けされる。この部分より先方(図では上方)の同軸ケーブルは編組外部導体6が除去される。
【0017】
半田付け部3の付け根部分からは前方(図では上方)へ、圧接部4(課題解決手段にいう、押し込み部)がクランク状に延びており、このクランク状の横方向部分がグランドコンタクトの接続部の切れ込み部に押し込まれる部分である。
このようにグランドプレート2は、多数の同軸ケーブル7に渡って一体で形成されており、各同軸ケーブルに対応する半田付け部3も圧接部4も一体的に形成されている。
このため、圧接部はグランドコンタクトの切れ込み部に押し込む(圧入する)際にぐらつくことはない。
【0018】
図3は、シグナルコンタクト9とグランドコンタクト10が固定保持されたベースインシュレータ8(課題解決手段にいう、第1のハウジング)の構造図であり、(a)は同軸ケーブルの配列面で見た内側平面図であり、(b)は(a)のA−A側断面図である。この例は1個の基体の1面側と反対面側に中心線に関して対称に背中合わせでベースインシュレータ8が形成された例である。
【0019】
シグナルコンタクト9およびグランドコンタクト10の後端接続部はそれぞれY字形切れ込み部12および同11となっている。
Y字形切れ込み部12および同11は、図の(b)で見る通りY字形の切れ込みが設けられており、この部分にそれぞれ同軸ケーブル7の中心導体およびカバーインシュレータ1側グランドプレート2の圧接部4が押し込まれ圧接接続することになる。
【0020】
シグナルコンタクト9のY字形切れ込み部12は、ピッチを考慮して同軸ケーブル7の軸方向に対して斜めの向きになっている。このY字形切れ込み部12に同軸ケーブル7の信号線(中心導体)を絶縁被覆ごと押し込むことにより絶縁被覆が破れて信号線とシグナルコンタクト9との圧接接続が達成される。
【0021】
図4は、グランドコンタクト10の構造図である。
(a)はコンタクト配列平面で見た平面図であり、(b)はコンタクト配列方向((a)の下方)から見た側面図であり、(c)はコンタクト配列後方((a)の右方)から見た図である。
相手方コネクタとの接触は接触部13で(a)に示された面で行われる。
【0022】
図5は、シグナルコンタクト9の構造図である。
(a)は、図3の(a)においてシグナルコンタクト9を左側から見た場合に相当する側面図である。但し、(a)においては接触部14はベースインシュレータ8の中に入っていて見えない。図5の(c)は、(a)を上から見た平面図であり、(b)は(c)を左から見た正面図である。
【0023】
図1のカバーインシュレータ1と図3のベースインシュレータを合着した際には当然のことながら、図1の圧接部4は図3のY字形切り込み部11に押し込まれ、図1の同軸ケーブルで編組外部導体6を除去された先方部分(図では上方部分)は図3のシグナルコンタクト9のY字形切れ込み部12に押し込まれる位置関係でロックされることになる。
ロック機構は通常採用される構造のものであり、特に限定されるものではない。
【0024】
図6は、同軸ケーブル7の編組外部導体6がグランドプレート2の半田付け部3に半田付けされたカバーインシュレータ1とシグナルコンタクト9およびグランドコンタクト10が固定保持されたベースインシュレータ8とを合着させた状態の一部破断構造図である。(a)は平面図、(b)は(a)のA−A断面図である。
同軸ケーブルの先方編組外部導体が除去された部分((a)の図中、1点鎖線で示されている部分)はシグナルコンタクト9のY字形切れ込み部12へ絶縁被覆ごと押し込まれ、絶縁被覆が破れて中心導体がY字形切れ込み部12に圧挟されて圧接接続が形成される。
【0025】
カバーインシュレータ1側のグランドプレート2の圧接部4(図2参照)は、グランドコンタクト10(図4)のY字形切れ込み部11へ押し込まれてここでも圧接接続が形成される。
【0026】
図6の(b)では縦方向1点鎖線の右側は図が省略されているが、右側にも1点鎖線に関して対称な構造が存在する。即ち、両面からカバーインシュレータが合着されるものである。
勿論、片面だけのものも考えられるし、接続される同軸ケーブルの本数には限定はない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明同軸ケーブル用コネクタの、実施例の複数の同軸ケーブルが装着されたカバーインシュレータの内面を見た平面図である。
【図2】本発明実施例のカバーインシュレータに固定保持されるグランドプレートの構造詳細図である。
【図3】シグナルコンタクトとグランドコンタクトが固定保持された本発明実施例におけるベースインシュレータの構造図である。
【図4】図3のグランドコンタクトの構造図である。
【図5】図3のシグナルコンタクトの構造図である。
【図6】本発明実施例の、同軸ケーブルが装着されたカバーインシュレータとベースインシュレータが合着した状態を示す一部破断図である。
【図7】Y字形切れ込みを用いた圧接接続説明図である。
【符号の説明】
【0028】
1 カバーインシュレータ
2 グランドプレート
3 半田付け部
4 圧接部
5 固定保持部
6 編組外部導体
7 同軸ケーブル
8 ベースインシュレータ
9 シグナルコンタクト
10 グランドコンタクト
11 Y字形切れ込み部
12 Y字形切れ込み部
13 接触部
14 接触部
15 Y字形切れ込み
16 コンタクト接続部
17 絶縁被覆
18 信号線(中心導体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のハウジングには、同軸ケーブル側への接続部が導体を押し込まれると反力によりこれを圧挟して電気接触する圧接構造となっているシグナルコンタクトおよびグランドコンタクトが固定保持されており、
第2のハウジングには、前記グランドコンタクトの接続部へ押し込まれる押し込み部と同軸ケーブルの編組外部導体が編組状態のまま半田付けされるように立ち上がった半田付け部とが一体的に設けられているグランドプレートが固定保持されており、
グランドプレートの押し込み部と、グランドプレートの半田付け部に編組外部導体が半田付けされた同軸ケーブルの先方の編組外部導体が除去された部分とを、それぞれグランドコンタクトとシグナルコンタクトの接続部へ押し込むように、第1のハウジングと第2のハウジングとを合着したときにこの合着を保持するロック機構を有することを特徴とする同軸ケーブル用コネクタ。
【請求項2】
第1のハウジングに、シグナルコンタクトと、グランドコンタクトの複数組が整列固定保持され、第2のハウジングのグランドプレートが複数本の同軸ケーブルに対応するよう複数の半田付け部と複数の押し込み部を第1のハウジングにおける整列状態に対応した整列状態で有することを特徴とする請求項1記載の同軸ケーブル用コネクタ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2の第1のハウジングが、1個の基体の1面側と反対面側に背中合わせ状態で形成され、請求項1又は請求項2の第2のハウジングが、前記1面側と反対面側の両面に合着されるものであることを特徴とする同軸ケーブル用コネクタ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−338986(P2006−338986A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−160988(P2005−160988)
【出願日】平成17年6月1日(2005.6.1)
【出願人】(000231073)日本航空電子工業株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】