同軸コネクタ
【課題】信号端子の製造工程を簡素化できる同軸コネクタを提供することである。
【解決手段】下ケース18は、絶縁体からなり板状をなしている。可動端子20は、高周波信号が印加され、下ケース18上に設けられている。外部端子14は、接地電位が印加され、下ケース18及び可動端子20上に設けられ、かつ、z軸方向に沿って延在する中心軸を有する筒状をなしている。可動端子20は、x軸方向に沿って延在している固定部42及び板ばね部44と、z軸方向から平面視したときに、下ケース18の外縁においてy軸方向に固定部42から突出しているリード部43a,43bと、を含んでいる。リード部43a,43bは、固定部42に対してz軸方向の負方向側に向かって折り曲げられることにより、下ケース18の下面まで引き出されている。
【解決手段】下ケース18は、絶縁体からなり板状をなしている。可動端子20は、高周波信号が印加され、下ケース18上に設けられている。外部端子14は、接地電位が印加され、下ケース18及び可動端子20上に設けられ、かつ、z軸方向に沿って延在する中心軸を有する筒状をなしている。可動端子20は、x軸方向に沿って延在している固定部42及び板ばね部44と、z軸方向から平面視したときに、下ケース18の外縁においてy軸方向に固定部42から突出しているリード部43a,43bと、を含んでいる。リード部43a,43bは、固定部42に対してz軸方向の負方向側に向かって折り曲げられることにより、下ケース18の下面まで引き出されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同軸コネクタに関し、より特定的には、高周波信号が印加される信号端子、及び、接地電位が印加される筒状の外部端子を備えている同軸コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の同軸コネクタとしては、例えば、特許文献1に記載の同軸コネクタが知られている。図12は、特許文献1に記載の同軸コネクタ500の断面構造図である。
【0003】
同軸コネクタ500は、図12に示すように、上ケース502、下ケース504、外部端子506、可動端子508及び固定端子510を備えている。下ケース504は、矩形状の板状部材である。上ケース502は、下ケース504上に重ねられ、円筒形状をなしている。外部端子506は、円筒形状をなしており、上ケース502上に取り付けられている。外部端子506は、接地電位に保たれる。
【0004】
固定端子510は、上ケース502と下ケース504とに挟まれている。可動端子508は、上ケース502と下ケース504とに挟まれており、先端において固定端子510に圧接している。可動端子508及び固定端子510には、高周波信号が流れる。
【0005】
また、同軸コネクタ500では、上ケース502の孔を介してプローブ600が上側から挿入される。これにより、可動端子508が押し下げられ、固定端子510から離れる。その結果、高周波信号は、可動端子508からプローブ600へと流れるようになる。
【0006】
ところで、特許文献1に記載の同軸コネクタ500は、可動端子508の製造工程が複雑であるという問題を有している。具体的には、図12に示すように、同軸コネクタ500では、可動端子508の端部をクランク状に2回折り曲げる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4442719号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の目的は、信号端子の製造工程を簡素化できる同軸コネクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一形態に係る同軸コネクタは、絶縁体からなる板状のケースと、高周波信号が印加される第1の信号端子であって、前記ケース上に設けられている第1の信号端子と、接地電位が印加される外部端子であって、前記ケース及び前記第1の信号端子上に設けられ、かつ、上下方向に沿って延在する中心軸を有する筒状をなしている外部端子と、を備えており、前記第1の信号端子は、水平方向に平行な所定方向に沿って延在している本体部と、上方から平面視したときに、前記ケースの外縁において前記所定方向に交差する交差方向の一方側に前記本体部から突出している第1の接続部と、を含んでおり、前記第1の接続部は、前記本体部に対して下側に向かって折り曲げられることにより、前記ケースの下面まで引き出されていること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、信号端子の製造工程を簡素化できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る同軸コネクタの外観斜視図である。
【図2】同軸コネクタの分解斜視図である。
【図3】同軸コネクタの分解斜視図である。
【図4】下ケース上に可動端子及び固定端子が取り付けられた状態の外観斜視図である。
【図5】上ケース上に可動端子及び固定端子が取り付けられた状態の外観斜視図である。
【図6】図6(a)は、相手方同軸コネクタが装着されていないときの同軸コネクタのxz平面における断面構造図である。図6(b)は、相手方同軸コネクタが装着されているときの同軸コネクタのxz平面における断面構造図である。
【図7】特許文献1に記載の同軸コネクタの可動端子の製造時の工程図である。
【図8】比較例に係る同軸コネクタの可動端子の製造時の工程図である。
【図9】可動端子の製造時の工程図である。
【図10】比較例に係る可動端子の外観斜視図である。
【図11】複数の可動端子が金属板に連結された状態を示した斜視図である。
【図12】特許文献1に記載の同軸コネクタの断面構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の一実施形態に係る同軸コネクタについて、図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る同軸コネクタ10の外観斜視図である。また、図2及び図3は、同軸コネクタ10の分解斜視図である。以下、この同軸コネクタ10の詳細について説明する。図1ないし図3において、外部端子14、上ケース16及び下ケース18が重ねられる方向をz軸方向とする。z軸方向の正方向は、下ケース18から外部端子14へと向かう方向である。z軸方向は、鉛直方向を意味している。また、可動端子20及び固定端子22が並ぶ方向をx軸方向とし、x軸方向とz軸方向に直交する方向をy軸方向とする。x軸方向の正方向は、可動端子20から固定端子22へと向かう方向である。x軸方向及びy軸方向は、水平方向に平行である。
【0014】
同軸コネクタ10は、図1に示すように、本体12、金属製(例えば、SUS301のステンレス)の可動端子20及び固定端子22を備え、2mm×2mm×0.9mmの大きさを有している。また、本体12は、図2に示すように、金属製の外部端子14、絶縁体(例えば、樹脂)からなる上ケース16及び下ケース18がz軸方向の正方向側から負方向側へとこの順に重ねられて構成されている。
【0015】
下ケース18は、図2に示すように、矩形の板状をなしており、z軸方向の正方向側の面に上ケース16を位置決めするための突起52a〜52dを有している。突起52aは、下ケース18のz軸方向の正方向側の主面上において、x軸方向の正方向側であってy軸方向の正方向側の角に設けられている。突起52bは、下ケース18のz軸方向の正方向側の主面上において、x軸方向の負方向側であってy軸方向の正方向側の角に設けられている。突起52cは、下ケース18のz軸方向の正方向側の主面上において、x軸方向の正方向側であってy軸方向の負方向側の角に設けられている。突起52dは、下ケース18のz軸方向の正方向側の主面上において、x軸方向の負方向側であってy軸方向の負方向側の角に設けられている。
【0016】
更に、図2に示すように、下ケース18のy軸方向に延在している2辺のそれぞれの中央部には、可動端子20及び固定端子22が外部に引き出されるための矩形の切り欠き部54,55が形成されている。また、切り欠き部54のx軸方向の正方向側の近傍には、可動端子20を固定するための固定面57が設けられている。一方、切り欠き部55のx軸方向の負方向側の近傍には、固定端子22を固定するための固定面58が設けられている。
【0017】
上ケース16は、図2及び図3に示すように、円筒部34、カバー部35及び突起40a,40bを備えている。カバー部35は、略円形の板状部材である。円筒部34は、カバー部35の中央においてz軸方向の正方向側へと突出している。円筒部34は、z軸方向の正方向側がすり鉢状に開口し、かつ、xy平面での断面が円形の穴34aを有している。この穴34aは上ケース16を貫通している。穴34aには、相手方同軸コネクタのプローブがすり鉢状開口側から挿入されることになる。
【0018】
突起40a,40bは、上ケース16と下ケース18との位置決めに用いられる。具体的には、突起40aは、カバー部35のz軸方向の負方向側の面に設けられており、突起52a,52bの間に嵌め込まれる。突起40bは、カバー部35のz軸方向の負方向側の面に設けられており、突起52c,52dの間に嵌め込まれる。
【0019】
また、図3に示すように、上ケース16のz軸方向の負方向側の面において、x軸方向の負方向側の端近傍に可動端子20を固定するための固定面37が設けられている。固定面37は、同軸コネクタ10が組み立てられたときに、固定面57と共に可動端子20を挟んで固定する。同様に、上ケース16のz軸方向の負方向側の面において、x軸方向の正方向側の端近傍に固定端子22を固定するための固定面39が設けられている。固定面39は、同軸コネクタ10が組み立てられたときに、固定面58と共に固定端子22を挟んで固定する。更に、固定面39のx軸方向の負方向側には、載置部38が設けられている。載置部38は、上ケース16のz軸方向の負方向側の面において、z軸方向の負方向側に突出するように設けられており、後述する固定端子22の固定部48及び接触部50a,50bが載置される。
【0020】
次に、可動端子20及び固定端子22について、図1ないし図5を参照しながら説明する。図4は、下ケース18上に可動端子20及び固定端子22が取り付けられた状態の外観斜視図である。また、図5は、上ケース16上に可動端子20及び固定端子22が取り付けられた状態の外観斜視図である。
【0021】
固定端子22は、平板状の金属板を打ち抜き、曲げ加工して形成されており、下ケース18上に設けられている。固定端子22は、図2及び図3に示すように、固定部48、リード部49及び接触部50a,50bにより構成されている。固定部48は、同軸コネクタ10が組み立てられたときに、固定面39と固定面58との間に挟まれることにより本体12に固定される平坦部分である。リード部49は、固定部48のx軸方向の正方向側に接続された部分がクランク状に折り曲げられて形成されており、図1及び図4に示すように、同軸コネクタ10が組み立てられたときに、切り欠き部55から本体12の外部に露出している。接触部50aは、図4及び図5に示すように、固定部48のx軸方向の負方向側の端部からy軸方向の正方向側に突出する部分がz軸方向の正方向側に折り曲げられて形成され、z軸方向の負方向側を向く部分において可動端子20と接触する。接触部50bは、図4及び図5に示すように、固定部48のx軸方向の負方向側の端部からy軸方向の負方向側に突出する部分がz軸方向の正方向側に折り曲げられて形成され、z軸方向の負方向側を向く部分において可動端子20と接触する。接触部50a,50bは、後述する枝部44a,44bに対応するように2つ設けられている。また、接触部50a,50bと固定部48との間の折れ線は、x軸方向と平行である。接触部50a,50b間の固定部48及び接触部50a,50bは、図5に示すように、接触部50a,50b及び固定部48に沿った形状を有する載置部38上に載置される。
【0022】
可動端子20は、ばね性を有する金属板を所定の形状に打ち抜き、曲げ加工して形成されており、下ケース18上に設けられている。可動端子20は、図2及び図3に示すように、固定部42、リード部(接続部)43a,43b及び板ばね部44を備えている。固定部42は、同軸コネクタ10が組み立てられたときに、固定面37と固定面57との間に挟まれることにより本体12に固定される平坦部分である。
【0023】
リード部43aは、下ケース18の外縁においてy軸方向の正方向側に固定部42から突出しており、固定部42に対してz軸方向の負方向側に向かって折り曲げられることにより、下ケース18の下面まで引き出されている。リード部43bは、下ケース18の外縁においてy軸方向の負方向側に固定部42から突出しており、固定部42に対してz軸方向の負方向側に向かって折り曲げられることにより、下ケース18の下面まで引き出されている。これにより、リード部43a,43bは、切り欠き部54から本体12の外部に露出している。また、リード部43a,43b及び固定部42は、x軸方向から平面視したときに、コ字型をなしている。
【0024】
板ばね部44は、図4に示すように、固定部42から固定端子22に向かってx軸方向に沿って延在しており、固定部42と共に本体部を構成している。また、板ばね部44は、固定端子22の接触部50a,50bと接触していると共に、その先端ta,tbにおいて下ケース18に摺動可能に接触している。より詳細には、板ばね部44は、先端ta,tb側(x軸方向の正方向側)において2つに枝分かれして形成されている枝部44a,44bを有している。固定端子22は、該枝部44a,44bの間に位置し、固定端子22の接触部50a,50bはそれぞれ、z軸方向から平面視したときに枝部44a,44bに重なるようにz軸方向の正方向にいくにしたがってy軸方向に広がっている。また、板ばね部44は、z軸方向の正方向側に突出するように湾曲している。そのため、枝部44a,44bはそれぞれ、接触部50a,50bに板ばね部44の付勢力により圧接している。これにより、可動端子20と固定端子22は、電気的に接続されている。
【0025】
以上のように構成された可動端子20及び固定端子22は、図5に示すように、まず、固定端子22が上ケース16に取り付けられてから、可動端子20が上ケース16に取り付けられる。これにより、枝部44a,44bのz軸方向の正方向側の部分と接触部50a,50bのz軸方向の負方向側の部分とが接触する。
【0026】
外部端子14は、相手方同軸コネクタの外導体と接触し、ステンレス(例えば、SUS301)の金属板を打ち抜き、曲げ加工、絞り加工等により形成され、上ケース16、下ケース18、可動端子20及び固定端子22上に設けられている。外部端子14は、図1及び図2に示すように、フラット部31、円筒部32及び脚部33a〜33dを備えている。
【0027】
フラット部31は、矩形の板状部材であり、上ケース16をz軸方向の正方向側から覆う。フラット部31のy軸方向の両端に位置する辺には、脚部33a〜33dが設けられている。脚部33a,33bは、フラット部31のy軸方向の正方向側の辺の両端からy軸方向の負方向側に向かって延在している板状体の一部をU字状に折り曲げて形成されており、図1に示すように、上ケース16及び下ケース18を挟み込んで固定する。脚部33c,33dは、フラット部31のy軸方向の負方向側の辺の両端からy軸方向の負方向側に向かって延在している板状体をU字状に折り曲げて形成されており、図1に示すように、上ケース16及び下ケース18を挟み込んで固定する。
【0028】
更に、フラット部31の中央部には、z軸方向に沿って延在する中心軸を有する円筒部32が設けられている。円筒部32は、円筒部34と同心となるように形成されており、相手方同軸コネクタの外導体と嵌合する。外部端子14は通常アースとして機能しており、外部端子14の外表面には必要に応じてめっきが施される。
【0029】
以上のように構成された同軸コネクタ10は、以下のように組み立てられる。まず、上ケース16がインサートモールド成形により外部端子14に対して一体的に成形される。次に、図5に示すように、固定端子22を位置合わせして上ケース16に取り付け、その後、可動端子20を位置合わせして上ケース16に取り付ける。なお、図5では、脚部33a〜33dは、折り曲げられているが、実際には、この段階において、脚部33a〜33dは、折り曲げられていない。
【0030】
次に、図3に示すように、上ケース16に対してz軸方向の負方向側から下ケース18を積み重ねる。
【0031】
最後に、外部端子14の脚部33a〜33dをカシメて、図1に示すような構造を有する同軸コネクタ10を得ることができる。
【0032】
次に、同軸コネクタ10の動作について図6を参照して説明する。図6(a)は、相手方同軸コネクタが装着されていないときの同軸コネクタ10のxz平面における断面構造図である。図6(b)は、相手方同軸コネクタが装着されているときの同軸コネクタ10のxz平面における断面構造図である。
【0033】
図6(a)に示すように、相手方同軸コネクタが装着されていないとき、可動端子20は、x軸方向の中央部がz軸方向の正方向側に膨らんだ状態である。これにより、枝部44a,44b(図6では枝部44aのみ記載)は、接触部50a,50b(図6では、接触部50aのみ記載)に、板ばね部44の付勢力により圧接しており、可動端子20と固定端子22とは、電気的に接続されている。このときには、可動端子20には、高周波信号が印加される。そして、可動端子20に印加された高周波信号は、固定端子22へと流れる。
【0034】
一方、相手方同軸コネクタが装着されるときには、外部端子14及び上ケース16を介して相手方同軸コネクタのプローブ130が、z軸方向の正方向側から負方向側へと挿入される。これにより、プローブ130は、板ばね部44に接触し、該板ばね部44をz軸方向の負方向側へと押し下げる。すなわち、板ばね部44は、プローブ130によりz軸方向の正方向側から押される。これにより、図6(b)に示すように、板ばね部44の枝部44a,44bは、接触部50a,50bから離れ、可動端子20と固定端子22との電気的接続が断たれる一方、プローブ130と可動端子20とが電気的に接続される。よって、可動端子20に印加された高周波信号は、プローブ130へと流れる。同時に、相手方同軸コネクタの外導体(図示せず)が外部端子14に嵌合して、外導体も外部端子14と電気的に接続される。このときには、外部端子14には、外導体を介して接地電位が印加される。
【0035】
また、相手方同軸コネクタを同軸コネクタ10から外すと、板ばね部44のx軸方向の中央部は、図6(a)に示すように、z軸方向の正方向側に復帰する。これにより、可動端子20と固定端子22とが再び電気的に接続する一方、プローブ130と可動端子20との電気的接続が断たれる。
【0036】
以上のように構成された同軸コネクタ10が奏する効果について以下に説明する。同軸コネクタ10は、可動端子20の製造工程を簡素化できる。図7は、特許文献1に記載の同軸コネクタ500の可動端子508の製造時の工程図である。図8は、比較例に係る同軸コネクタの可動端子608の製造時の工程図である。図9は、可動端子20の製造時の工程図である。
【0037】
特許文献1に記載の同軸コネクタ500の可動端子508は、クランク状に2回折り曲げられている。具体的には、図7(a)に示すように、可動端子508をダイD1上に載置し、上側からパンチP1を押しあてる。これにより、可動端子508の先端がV字型に加工される。更に、図7(b)に示すように、可動端子508をダイD2上に載置し、ストリッパST1により上側から押さえつけた状態で、上側からパンチP2を押しあてる。これにより、可動端子508の先端がクランク状に加工される。以上のように、特許文献1に記載の同軸コネクタ500では、可動端子508の作製のために、2回の折り曲げ加工を行う必要があった。
【0038】
また、クランク状をなす可動端子508の他に、コ字型に2回折り曲げられた可動端子608も存在する。具体的には、図8(a)に示すように、可動端子608をダイD21上に載置し、ストリッパST21により上側から押さえつけた状態で、上側からパンチP21を押しあてる。これにより、可動端子608の先端がL字型に加工される。更に、図8(b)に示すように、可動端子608をダイD22上に載置し、ストリッパST22により上側から押さえつけた状態で、上側からパンチP22を押しあてる。これにより、可動端子608の先端がコ字型に加工される。以上のように、比較例に係る可動端子608の作製のために、2回の折り曲げ加工を行う必要があった。
【0039】
一方、同軸コネクタ10では、1回の折り曲げ加工により、可動端子20を製造できる。より詳細には、図9(a)に示すように、固定部42をダイD11上に載置し、ストリッパST11により上側から押さえつけて、可動端子20を固定する。次に、図9(b)に示すように、パンチP11,P12を上側からリード部43a,43bに押しあてる。これにより、リード部43a,43bは、z軸方向の負方向側に折り曲げられる。以上のように、同軸コネクタ10では、可動端子20の作製を1回の折り曲げ加工により行うことができる。よって、同軸コネクタ10によれば、可動端子20の製造工程を簡素化できる。
【0040】
また、同軸コネクタ10によれば、以下の理由によっても可動端子20の製造工程を簡素化できる。図10は、比較例に係る可動端子220の外観斜視図である。図11は、複数の可動端子20が金属板150に連結された状態を示した斜視図である。
【0041】
一度の折り曲げ加工により作製可能な可動端子としては、例えば、図10の可動端子220が考えられる。可動端子220では、固定部242のx軸方向の負方向側に接続されている部分がz軸方向の負方向側に折り曲げられることによって、リード部243が形成されている。リード部243は、一度の折り曲げ加工により形成可能である。
【0042】
しかしながら、可動端子220では、依然として製造工程が複雑である。より詳細には、可動端子220は、連結部245a,245bを介して金属板250に連結された状態で作製される。そして、可動端子220は、上ケースに搭載後に、図10の点線においてカットされて、金属板250から切り離される。
【0043】
ここで、可動端子220では、リード部243が存在しているので、固定部242から直線的に延びる1本の連結部により、可動端子220と金属板250とを接続することができない。よって、可動端子220では、L字型の2本の連結部245a,245bが設けられている。このように、L字型の2本の連結部245a,245bが設けられていると、可動端子220が金属板250から切り離される際に、2本の連結部245a,245bのカットが必要である。その結果、可動端子220の製造工程が複雑となる。
【0044】
なお、可動端子220において、連結部245aのみが設けられることが考えられる。しかしながら、この場合には、可動端子220が対称構造ではなくなるので、同軸コネクタ10の特性インピーダンスが変動することやカット時に可動端子220が傾くこと等の問題が発生する。
【0045】
一方、同軸コネクタ10では、リード部43a,43bは、固定部42からy軸方向に延在している部分が折り曲げられて形成されている。そのため、固定部42からx軸方向に向かって延在している連結部152により、可動端子20と金属板150とが接続されることが可能である。よって、可動端子20が金属板150から切り離される際に、1本の連結部152のカットで済む。その結果、可動端子20の製造工程が簡素化される。
【0046】
更に、同軸コネクタ10では、低背化を図ることが可能である。以下に、図7ないし図9を参照しながら説明する。
【0047】
可動端子508には、図7に示すように、2箇所の折り曲げ部C1,C2が設けられている。この折り曲げ部C1,C2の間隔が近すぎると、折り曲げ加工時に、可動端子508に十分な力が加わらない。その結果、折り曲げ部C1,C2において可動端子508が所望の角度に折り曲げられない。よって、折り曲げ部C1,C2の間隔は十分に大きい必要がある。ただし、この場合には、可動端子508の高さが高くなり、同軸コネクタ500の低背化が図られない。
【0048】
また、可動端子608には、図8に示すように、2箇所の折り曲げ部C3,C4が設けられている。この折り曲げ部C3,C4の間隔が近すぎると、ダイD22の高さhが低くなってしまい、ダイD22の強度が不足してしまう。そのため、図8(c)における折り曲げ加工を行うことが困難になる。よって、折り曲げ部C3,C4の間隔は十分に大きい必要がある。ただし、この場合には、可動端子608の高さが高くなり、同軸コネクタの低背化が図られない。
【0049】
一方、同軸コネクタ10では、図9に示すように、可動端子20のリード部43a,43bは、1箇所の折り曲げ部しか有していない。そのため、可動端子508,608において発生した問題が発生しない。その結果、可動端子20のz軸方向の高さが低減され、同軸コネクタ10の低背化が図られる。
【0050】
また、同軸コネクタ10では、特性インピーダンスが所定の特性インピーダンス(例えば、50Ω)からずれることが抑制される。以下に、図10及び図11を参照しながら説明する。
【0051】
図10に示す可動端子220では、リード部243は、固定部242からx軸方向に延在している部分が折り曲げられている。そのため、連結部245a,245bは、x軸方向に延在している部分においてカットされる。よって、連結部245a,245bの一部が、可動端子220が金属板250から切り離された後も残存する。そして、連結部245a,245bの一部は、固定部242からy軸方向に延在している。これにより、同軸コネクタが組み立てられた場合に、連結部245a,245bは、外部端子と対向する。その結果、連結部245a,245bと外部端子との間に容量が形成され、同軸コネクタの特性インピーダンスが所定の特性インピーダンスからずれてしまう。
【0052】
一方、同軸コネクタ10では、図11に示すように、リード部43a,43bは、固定部42からy軸方向に延在している部分が折り曲げられて形成されている。そのため、連結部152は、固定部42との接続部分においてカットされる。よって、連結部152の一部が、可動端子20が金属板150から切り離された後に残存しない。よって、外部端子14と可動端子20との間に不要な容量が形成されない。その結果、同軸コネクタ10の特性インピーダンスが所定の特性インピーダンスからずれることが抑制される。
【0053】
また、同軸コネクタ10では、可動端子20を本体12に強固に固定することが可能である。以下に、図7及び図9を参照しながら説明する。
【0054】
同軸コネクタ500の可動端子508は、クランク形状をなしている。よって、可動端子508が同軸コネクタ500の本体に固定される際には、折り曲げ部C2よりも先端側において本体に固定することができない。したがって、同軸コネクタ500は、板ばね部508aと折り曲げ部C2との間の固定部508bにおいて、本体に固定されなければならない。
【0055】
しかしながら、同軸コネクタ500では、板ばね部508aの長さを十分に確保すること、及び、折り曲げ部C1より先端において水平方向に延在していることより、固定部508bの長さを長くすることが困難である。よって、可動端子508を広い面積で本体に固定することが困難であり、可動端子508が本体に強固に固定されない。
【0056】
一方、同軸コネクタ10では、リード部43a,43bは、固定部42からy軸方向に延在している部分が折り曲げられることにより形成されている。そのため、固定部42のx軸方向の負方向側には、リード部43a,43bが存在しない。そのため、板ばね部44のx軸方向の長さを十分に確保しつつ、固定部42のx軸方向の長さを長くすることが可能である。よって、可動端子20を広い面積で本体12に固定することが可能となり、可動端子20が本体12に強固に固定されるようになる。
【0057】
また、同軸コネクタ10では、2箇所のリード部43a,43bが設けられているので、回路基板に対して安定した姿勢で実装することが可能となる。
【0058】
また、同軸コネクタ10では、リード部43a,43bの先端において回路基板のランドに接続される。同軸コネクタ10においてリード部43a,43bがランドに接触する面積は、同軸コネクタ500において可動端子508のリード部がランドに接触する面積よりも小さい。すなわち、同軸コネクタ10における実装に用いられる部分の面積は、同軸コネクタ500における実装に用いられる部分の面積よりも小さい。その結果、同軸コネクタ10は、同軸コネクタ500よりも小型化が図られる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上のように、本発明は、同軸コネクタに有用であり、特に、信号端子の製造工程を簡素化できる点において優れている。
【符号の説明】
【0060】
10 同軸コネクタ
12 本体
14 外部端子
16 上ケース
18 下ケース
20 可動端子
22 固定端子
42 固定部
43a,43b リード部
44 板ばね部
【技術分野】
【0001】
本発明は、同軸コネクタに関し、より特定的には、高周波信号が印加される信号端子、及び、接地電位が印加される筒状の外部端子を備えている同軸コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の同軸コネクタとしては、例えば、特許文献1に記載の同軸コネクタが知られている。図12は、特許文献1に記載の同軸コネクタ500の断面構造図である。
【0003】
同軸コネクタ500は、図12に示すように、上ケース502、下ケース504、外部端子506、可動端子508及び固定端子510を備えている。下ケース504は、矩形状の板状部材である。上ケース502は、下ケース504上に重ねられ、円筒形状をなしている。外部端子506は、円筒形状をなしており、上ケース502上に取り付けられている。外部端子506は、接地電位に保たれる。
【0004】
固定端子510は、上ケース502と下ケース504とに挟まれている。可動端子508は、上ケース502と下ケース504とに挟まれており、先端において固定端子510に圧接している。可動端子508及び固定端子510には、高周波信号が流れる。
【0005】
また、同軸コネクタ500では、上ケース502の孔を介してプローブ600が上側から挿入される。これにより、可動端子508が押し下げられ、固定端子510から離れる。その結果、高周波信号は、可動端子508からプローブ600へと流れるようになる。
【0006】
ところで、特許文献1に記載の同軸コネクタ500は、可動端子508の製造工程が複雑であるという問題を有している。具体的には、図12に示すように、同軸コネクタ500では、可動端子508の端部をクランク状に2回折り曲げる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4442719号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の目的は、信号端子の製造工程を簡素化できる同軸コネクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一形態に係る同軸コネクタは、絶縁体からなる板状のケースと、高周波信号が印加される第1の信号端子であって、前記ケース上に設けられている第1の信号端子と、接地電位が印加される外部端子であって、前記ケース及び前記第1の信号端子上に設けられ、かつ、上下方向に沿って延在する中心軸を有する筒状をなしている外部端子と、を備えており、前記第1の信号端子は、水平方向に平行な所定方向に沿って延在している本体部と、上方から平面視したときに、前記ケースの外縁において前記所定方向に交差する交差方向の一方側に前記本体部から突出している第1の接続部と、を含んでおり、前記第1の接続部は、前記本体部に対して下側に向かって折り曲げられることにより、前記ケースの下面まで引き出されていること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、信号端子の製造工程を簡素化できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る同軸コネクタの外観斜視図である。
【図2】同軸コネクタの分解斜視図である。
【図3】同軸コネクタの分解斜視図である。
【図4】下ケース上に可動端子及び固定端子が取り付けられた状態の外観斜視図である。
【図5】上ケース上に可動端子及び固定端子が取り付けられた状態の外観斜視図である。
【図6】図6(a)は、相手方同軸コネクタが装着されていないときの同軸コネクタのxz平面における断面構造図である。図6(b)は、相手方同軸コネクタが装着されているときの同軸コネクタのxz平面における断面構造図である。
【図7】特許文献1に記載の同軸コネクタの可動端子の製造時の工程図である。
【図8】比較例に係る同軸コネクタの可動端子の製造時の工程図である。
【図9】可動端子の製造時の工程図である。
【図10】比較例に係る可動端子の外観斜視図である。
【図11】複数の可動端子が金属板に連結された状態を示した斜視図である。
【図12】特許文献1に記載の同軸コネクタの断面構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の一実施形態に係る同軸コネクタについて、図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る同軸コネクタ10の外観斜視図である。また、図2及び図3は、同軸コネクタ10の分解斜視図である。以下、この同軸コネクタ10の詳細について説明する。図1ないし図3において、外部端子14、上ケース16及び下ケース18が重ねられる方向をz軸方向とする。z軸方向の正方向は、下ケース18から外部端子14へと向かう方向である。z軸方向は、鉛直方向を意味している。また、可動端子20及び固定端子22が並ぶ方向をx軸方向とし、x軸方向とz軸方向に直交する方向をy軸方向とする。x軸方向の正方向は、可動端子20から固定端子22へと向かう方向である。x軸方向及びy軸方向は、水平方向に平行である。
【0014】
同軸コネクタ10は、図1に示すように、本体12、金属製(例えば、SUS301のステンレス)の可動端子20及び固定端子22を備え、2mm×2mm×0.9mmの大きさを有している。また、本体12は、図2に示すように、金属製の外部端子14、絶縁体(例えば、樹脂)からなる上ケース16及び下ケース18がz軸方向の正方向側から負方向側へとこの順に重ねられて構成されている。
【0015】
下ケース18は、図2に示すように、矩形の板状をなしており、z軸方向の正方向側の面に上ケース16を位置決めするための突起52a〜52dを有している。突起52aは、下ケース18のz軸方向の正方向側の主面上において、x軸方向の正方向側であってy軸方向の正方向側の角に設けられている。突起52bは、下ケース18のz軸方向の正方向側の主面上において、x軸方向の負方向側であってy軸方向の正方向側の角に設けられている。突起52cは、下ケース18のz軸方向の正方向側の主面上において、x軸方向の正方向側であってy軸方向の負方向側の角に設けられている。突起52dは、下ケース18のz軸方向の正方向側の主面上において、x軸方向の負方向側であってy軸方向の負方向側の角に設けられている。
【0016】
更に、図2に示すように、下ケース18のy軸方向に延在している2辺のそれぞれの中央部には、可動端子20及び固定端子22が外部に引き出されるための矩形の切り欠き部54,55が形成されている。また、切り欠き部54のx軸方向の正方向側の近傍には、可動端子20を固定するための固定面57が設けられている。一方、切り欠き部55のx軸方向の負方向側の近傍には、固定端子22を固定するための固定面58が設けられている。
【0017】
上ケース16は、図2及び図3に示すように、円筒部34、カバー部35及び突起40a,40bを備えている。カバー部35は、略円形の板状部材である。円筒部34は、カバー部35の中央においてz軸方向の正方向側へと突出している。円筒部34は、z軸方向の正方向側がすり鉢状に開口し、かつ、xy平面での断面が円形の穴34aを有している。この穴34aは上ケース16を貫通している。穴34aには、相手方同軸コネクタのプローブがすり鉢状開口側から挿入されることになる。
【0018】
突起40a,40bは、上ケース16と下ケース18との位置決めに用いられる。具体的には、突起40aは、カバー部35のz軸方向の負方向側の面に設けられており、突起52a,52bの間に嵌め込まれる。突起40bは、カバー部35のz軸方向の負方向側の面に設けられており、突起52c,52dの間に嵌め込まれる。
【0019】
また、図3に示すように、上ケース16のz軸方向の負方向側の面において、x軸方向の負方向側の端近傍に可動端子20を固定するための固定面37が設けられている。固定面37は、同軸コネクタ10が組み立てられたときに、固定面57と共に可動端子20を挟んで固定する。同様に、上ケース16のz軸方向の負方向側の面において、x軸方向の正方向側の端近傍に固定端子22を固定するための固定面39が設けられている。固定面39は、同軸コネクタ10が組み立てられたときに、固定面58と共に固定端子22を挟んで固定する。更に、固定面39のx軸方向の負方向側には、載置部38が設けられている。載置部38は、上ケース16のz軸方向の負方向側の面において、z軸方向の負方向側に突出するように設けられており、後述する固定端子22の固定部48及び接触部50a,50bが載置される。
【0020】
次に、可動端子20及び固定端子22について、図1ないし図5を参照しながら説明する。図4は、下ケース18上に可動端子20及び固定端子22が取り付けられた状態の外観斜視図である。また、図5は、上ケース16上に可動端子20及び固定端子22が取り付けられた状態の外観斜視図である。
【0021】
固定端子22は、平板状の金属板を打ち抜き、曲げ加工して形成されており、下ケース18上に設けられている。固定端子22は、図2及び図3に示すように、固定部48、リード部49及び接触部50a,50bにより構成されている。固定部48は、同軸コネクタ10が組み立てられたときに、固定面39と固定面58との間に挟まれることにより本体12に固定される平坦部分である。リード部49は、固定部48のx軸方向の正方向側に接続された部分がクランク状に折り曲げられて形成されており、図1及び図4に示すように、同軸コネクタ10が組み立てられたときに、切り欠き部55から本体12の外部に露出している。接触部50aは、図4及び図5に示すように、固定部48のx軸方向の負方向側の端部からy軸方向の正方向側に突出する部分がz軸方向の正方向側に折り曲げられて形成され、z軸方向の負方向側を向く部分において可動端子20と接触する。接触部50bは、図4及び図5に示すように、固定部48のx軸方向の負方向側の端部からy軸方向の負方向側に突出する部分がz軸方向の正方向側に折り曲げられて形成され、z軸方向の負方向側を向く部分において可動端子20と接触する。接触部50a,50bは、後述する枝部44a,44bに対応するように2つ設けられている。また、接触部50a,50bと固定部48との間の折れ線は、x軸方向と平行である。接触部50a,50b間の固定部48及び接触部50a,50bは、図5に示すように、接触部50a,50b及び固定部48に沿った形状を有する載置部38上に載置される。
【0022】
可動端子20は、ばね性を有する金属板を所定の形状に打ち抜き、曲げ加工して形成されており、下ケース18上に設けられている。可動端子20は、図2及び図3に示すように、固定部42、リード部(接続部)43a,43b及び板ばね部44を備えている。固定部42は、同軸コネクタ10が組み立てられたときに、固定面37と固定面57との間に挟まれることにより本体12に固定される平坦部分である。
【0023】
リード部43aは、下ケース18の外縁においてy軸方向の正方向側に固定部42から突出しており、固定部42に対してz軸方向の負方向側に向かって折り曲げられることにより、下ケース18の下面まで引き出されている。リード部43bは、下ケース18の外縁においてy軸方向の負方向側に固定部42から突出しており、固定部42に対してz軸方向の負方向側に向かって折り曲げられることにより、下ケース18の下面まで引き出されている。これにより、リード部43a,43bは、切り欠き部54から本体12の外部に露出している。また、リード部43a,43b及び固定部42は、x軸方向から平面視したときに、コ字型をなしている。
【0024】
板ばね部44は、図4に示すように、固定部42から固定端子22に向かってx軸方向に沿って延在しており、固定部42と共に本体部を構成している。また、板ばね部44は、固定端子22の接触部50a,50bと接触していると共に、その先端ta,tbにおいて下ケース18に摺動可能に接触している。より詳細には、板ばね部44は、先端ta,tb側(x軸方向の正方向側)において2つに枝分かれして形成されている枝部44a,44bを有している。固定端子22は、該枝部44a,44bの間に位置し、固定端子22の接触部50a,50bはそれぞれ、z軸方向から平面視したときに枝部44a,44bに重なるようにz軸方向の正方向にいくにしたがってy軸方向に広がっている。また、板ばね部44は、z軸方向の正方向側に突出するように湾曲している。そのため、枝部44a,44bはそれぞれ、接触部50a,50bに板ばね部44の付勢力により圧接している。これにより、可動端子20と固定端子22は、電気的に接続されている。
【0025】
以上のように構成された可動端子20及び固定端子22は、図5に示すように、まず、固定端子22が上ケース16に取り付けられてから、可動端子20が上ケース16に取り付けられる。これにより、枝部44a,44bのz軸方向の正方向側の部分と接触部50a,50bのz軸方向の負方向側の部分とが接触する。
【0026】
外部端子14は、相手方同軸コネクタの外導体と接触し、ステンレス(例えば、SUS301)の金属板を打ち抜き、曲げ加工、絞り加工等により形成され、上ケース16、下ケース18、可動端子20及び固定端子22上に設けられている。外部端子14は、図1及び図2に示すように、フラット部31、円筒部32及び脚部33a〜33dを備えている。
【0027】
フラット部31は、矩形の板状部材であり、上ケース16をz軸方向の正方向側から覆う。フラット部31のy軸方向の両端に位置する辺には、脚部33a〜33dが設けられている。脚部33a,33bは、フラット部31のy軸方向の正方向側の辺の両端からy軸方向の負方向側に向かって延在している板状体の一部をU字状に折り曲げて形成されており、図1に示すように、上ケース16及び下ケース18を挟み込んで固定する。脚部33c,33dは、フラット部31のy軸方向の負方向側の辺の両端からy軸方向の負方向側に向かって延在している板状体をU字状に折り曲げて形成されており、図1に示すように、上ケース16及び下ケース18を挟み込んで固定する。
【0028】
更に、フラット部31の中央部には、z軸方向に沿って延在する中心軸を有する円筒部32が設けられている。円筒部32は、円筒部34と同心となるように形成されており、相手方同軸コネクタの外導体と嵌合する。外部端子14は通常アースとして機能しており、外部端子14の外表面には必要に応じてめっきが施される。
【0029】
以上のように構成された同軸コネクタ10は、以下のように組み立てられる。まず、上ケース16がインサートモールド成形により外部端子14に対して一体的に成形される。次に、図5に示すように、固定端子22を位置合わせして上ケース16に取り付け、その後、可動端子20を位置合わせして上ケース16に取り付ける。なお、図5では、脚部33a〜33dは、折り曲げられているが、実際には、この段階において、脚部33a〜33dは、折り曲げられていない。
【0030】
次に、図3に示すように、上ケース16に対してz軸方向の負方向側から下ケース18を積み重ねる。
【0031】
最後に、外部端子14の脚部33a〜33dをカシメて、図1に示すような構造を有する同軸コネクタ10を得ることができる。
【0032】
次に、同軸コネクタ10の動作について図6を参照して説明する。図6(a)は、相手方同軸コネクタが装着されていないときの同軸コネクタ10のxz平面における断面構造図である。図6(b)は、相手方同軸コネクタが装着されているときの同軸コネクタ10のxz平面における断面構造図である。
【0033】
図6(a)に示すように、相手方同軸コネクタが装着されていないとき、可動端子20は、x軸方向の中央部がz軸方向の正方向側に膨らんだ状態である。これにより、枝部44a,44b(図6では枝部44aのみ記載)は、接触部50a,50b(図6では、接触部50aのみ記載)に、板ばね部44の付勢力により圧接しており、可動端子20と固定端子22とは、電気的に接続されている。このときには、可動端子20には、高周波信号が印加される。そして、可動端子20に印加された高周波信号は、固定端子22へと流れる。
【0034】
一方、相手方同軸コネクタが装着されるときには、外部端子14及び上ケース16を介して相手方同軸コネクタのプローブ130が、z軸方向の正方向側から負方向側へと挿入される。これにより、プローブ130は、板ばね部44に接触し、該板ばね部44をz軸方向の負方向側へと押し下げる。すなわち、板ばね部44は、プローブ130によりz軸方向の正方向側から押される。これにより、図6(b)に示すように、板ばね部44の枝部44a,44bは、接触部50a,50bから離れ、可動端子20と固定端子22との電気的接続が断たれる一方、プローブ130と可動端子20とが電気的に接続される。よって、可動端子20に印加された高周波信号は、プローブ130へと流れる。同時に、相手方同軸コネクタの外導体(図示せず)が外部端子14に嵌合して、外導体も外部端子14と電気的に接続される。このときには、外部端子14には、外導体を介して接地電位が印加される。
【0035】
また、相手方同軸コネクタを同軸コネクタ10から外すと、板ばね部44のx軸方向の中央部は、図6(a)に示すように、z軸方向の正方向側に復帰する。これにより、可動端子20と固定端子22とが再び電気的に接続する一方、プローブ130と可動端子20との電気的接続が断たれる。
【0036】
以上のように構成された同軸コネクタ10が奏する効果について以下に説明する。同軸コネクタ10は、可動端子20の製造工程を簡素化できる。図7は、特許文献1に記載の同軸コネクタ500の可動端子508の製造時の工程図である。図8は、比較例に係る同軸コネクタの可動端子608の製造時の工程図である。図9は、可動端子20の製造時の工程図である。
【0037】
特許文献1に記載の同軸コネクタ500の可動端子508は、クランク状に2回折り曲げられている。具体的には、図7(a)に示すように、可動端子508をダイD1上に載置し、上側からパンチP1を押しあてる。これにより、可動端子508の先端がV字型に加工される。更に、図7(b)に示すように、可動端子508をダイD2上に載置し、ストリッパST1により上側から押さえつけた状態で、上側からパンチP2を押しあてる。これにより、可動端子508の先端がクランク状に加工される。以上のように、特許文献1に記載の同軸コネクタ500では、可動端子508の作製のために、2回の折り曲げ加工を行う必要があった。
【0038】
また、クランク状をなす可動端子508の他に、コ字型に2回折り曲げられた可動端子608も存在する。具体的には、図8(a)に示すように、可動端子608をダイD21上に載置し、ストリッパST21により上側から押さえつけた状態で、上側からパンチP21を押しあてる。これにより、可動端子608の先端がL字型に加工される。更に、図8(b)に示すように、可動端子608をダイD22上に載置し、ストリッパST22により上側から押さえつけた状態で、上側からパンチP22を押しあてる。これにより、可動端子608の先端がコ字型に加工される。以上のように、比較例に係る可動端子608の作製のために、2回の折り曲げ加工を行う必要があった。
【0039】
一方、同軸コネクタ10では、1回の折り曲げ加工により、可動端子20を製造できる。より詳細には、図9(a)に示すように、固定部42をダイD11上に載置し、ストリッパST11により上側から押さえつけて、可動端子20を固定する。次に、図9(b)に示すように、パンチP11,P12を上側からリード部43a,43bに押しあてる。これにより、リード部43a,43bは、z軸方向の負方向側に折り曲げられる。以上のように、同軸コネクタ10では、可動端子20の作製を1回の折り曲げ加工により行うことができる。よって、同軸コネクタ10によれば、可動端子20の製造工程を簡素化できる。
【0040】
また、同軸コネクタ10によれば、以下の理由によっても可動端子20の製造工程を簡素化できる。図10は、比較例に係る可動端子220の外観斜視図である。図11は、複数の可動端子20が金属板150に連結された状態を示した斜視図である。
【0041】
一度の折り曲げ加工により作製可能な可動端子としては、例えば、図10の可動端子220が考えられる。可動端子220では、固定部242のx軸方向の負方向側に接続されている部分がz軸方向の負方向側に折り曲げられることによって、リード部243が形成されている。リード部243は、一度の折り曲げ加工により形成可能である。
【0042】
しかしながら、可動端子220では、依然として製造工程が複雑である。より詳細には、可動端子220は、連結部245a,245bを介して金属板250に連結された状態で作製される。そして、可動端子220は、上ケースに搭載後に、図10の点線においてカットされて、金属板250から切り離される。
【0043】
ここで、可動端子220では、リード部243が存在しているので、固定部242から直線的に延びる1本の連結部により、可動端子220と金属板250とを接続することができない。よって、可動端子220では、L字型の2本の連結部245a,245bが設けられている。このように、L字型の2本の連結部245a,245bが設けられていると、可動端子220が金属板250から切り離される際に、2本の連結部245a,245bのカットが必要である。その結果、可動端子220の製造工程が複雑となる。
【0044】
なお、可動端子220において、連結部245aのみが設けられることが考えられる。しかしながら、この場合には、可動端子220が対称構造ではなくなるので、同軸コネクタ10の特性インピーダンスが変動することやカット時に可動端子220が傾くこと等の問題が発生する。
【0045】
一方、同軸コネクタ10では、リード部43a,43bは、固定部42からy軸方向に延在している部分が折り曲げられて形成されている。そのため、固定部42からx軸方向に向かって延在している連結部152により、可動端子20と金属板150とが接続されることが可能である。よって、可動端子20が金属板150から切り離される際に、1本の連結部152のカットで済む。その結果、可動端子20の製造工程が簡素化される。
【0046】
更に、同軸コネクタ10では、低背化を図ることが可能である。以下に、図7ないし図9を参照しながら説明する。
【0047】
可動端子508には、図7に示すように、2箇所の折り曲げ部C1,C2が設けられている。この折り曲げ部C1,C2の間隔が近すぎると、折り曲げ加工時に、可動端子508に十分な力が加わらない。その結果、折り曲げ部C1,C2において可動端子508が所望の角度に折り曲げられない。よって、折り曲げ部C1,C2の間隔は十分に大きい必要がある。ただし、この場合には、可動端子508の高さが高くなり、同軸コネクタ500の低背化が図られない。
【0048】
また、可動端子608には、図8に示すように、2箇所の折り曲げ部C3,C4が設けられている。この折り曲げ部C3,C4の間隔が近すぎると、ダイD22の高さhが低くなってしまい、ダイD22の強度が不足してしまう。そのため、図8(c)における折り曲げ加工を行うことが困難になる。よって、折り曲げ部C3,C4の間隔は十分に大きい必要がある。ただし、この場合には、可動端子608の高さが高くなり、同軸コネクタの低背化が図られない。
【0049】
一方、同軸コネクタ10では、図9に示すように、可動端子20のリード部43a,43bは、1箇所の折り曲げ部しか有していない。そのため、可動端子508,608において発生した問題が発生しない。その結果、可動端子20のz軸方向の高さが低減され、同軸コネクタ10の低背化が図られる。
【0050】
また、同軸コネクタ10では、特性インピーダンスが所定の特性インピーダンス(例えば、50Ω)からずれることが抑制される。以下に、図10及び図11を参照しながら説明する。
【0051】
図10に示す可動端子220では、リード部243は、固定部242からx軸方向に延在している部分が折り曲げられている。そのため、連結部245a,245bは、x軸方向に延在している部分においてカットされる。よって、連結部245a,245bの一部が、可動端子220が金属板250から切り離された後も残存する。そして、連結部245a,245bの一部は、固定部242からy軸方向に延在している。これにより、同軸コネクタが組み立てられた場合に、連結部245a,245bは、外部端子と対向する。その結果、連結部245a,245bと外部端子との間に容量が形成され、同軸コネクタの特性インピーダンスが所定の特性インピーダンスからずれてしまう。
【0052】
一方、同軸コネクタ10では、図11に示すように、リード部43a,43bは、固定部42からy軸方向に延在している部分が折り曲げられて形成されている。そのため、連結部152は、固定部42との接続部分においてカットされる。よって、連結部152の一部が、可動端子20が金属板150から切り離された後に残存しない。よって、外部端子14と可動端子20との間に不要な容量が形成されない。その結果、同軸コネクタ10の特性インピーダンスが所定の特性インピーダンスからずれることが抑制される。
【0053】
また、同軸コネクタ10では、可動端子20を本体12に強固に固定することが可能である。以下に、図7及び図9を参照しながら説明する。
【0054】
同軸コネクタ500の可動端子508は、クランク形状をなしている。よって、可動端子508が同軸コネクタ500の本体に固定される際には、折り曲げ部C2よりも先端側において本体に固定することができない。したがって、同軸コネクタ500は、板ばね部508aと折り曲げ部C2との間の固定部508bにおいて、本体に固定されなければならない。
【0055】
しかしながら、同軸コネクタ500では、板ばね部508aの長さを十分に確保すること、及び、折り曲げ部C1より先端において水平方向に延在していることより、固定部508bの長さを長くすることが困難である。よって、可動端子508を広い面積で本体に固定することが困難であり、可動端子508が本体に強固に固定されない。
【0056】
一方、同軸コネクタ10では、リード部43a,43bは、固定部42からy軸方向に延在している部分が折り曲げられることにより形成されている。そのため、固定部42のx軸方向の負方向側には、リード部43a,43bが存在しない。そのため、板ばね部44のx軸方向の長さを十分に確保しつつ、固定部42のx軸方向の長さを長くすることが可能である。よって、可動端子20を広い面積で本体12に固定することが可能となり、可動端子20が本体12に強固に固定されるようになる。
【0057】
また、同軸コネクタ10では、2箇所のリード部43a,43bが設けられているので、回路基板に対して安定した姿勢で実装することが可能となる。
【0058】
また、同軸コネクタ10では、リード部43a,43bの先端において回路基板のランドに接続される。同軸コネクタ10においてリード部43a,43bがランドに接触する面積は、同軸コネクタ500において可動端子508のリード部がランドに接触する面積よりも小さい。すなわち、同軸コネクタ10における実装に用いられる部分の面積は、同軸コネクタ500における実装に用いられる部分の面積よりも小さい。その結果、同軸コネクタ10は、同軸コネクタ500よりも小型化が図られる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上のように、本発明は、同軸コネクタに有用であり、特に、信号端子の製造工程を簡素化できる点において優れている。
【符号の説明】
【0060】
10 同軸コネクタ
12 本体
14 外部端子
16 上ケース
18 下ケース
20 可動端子
22 固定端子
42 固定部
43a,43b リード部
44 板ばね部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体からなる板状のケースと、
高周波信号が印加される第1の信号端子であって、前記ケース上に設けられている第1の信号端子と、
接地電位が印加される外部端子であって、前記ケース及び前記第1の信号端子上に設けられ、かつ、上下方向に沿って延在する中心軸を有する筒状をなしている外部端子と、
を備えており、
前記第1の信号端子は、
水平方向に平行な所定方向に沿って延在している本体部と、
上方から平面視したときに、前記ケースの外縁において前記所定方向に交差する交差方向の一方側に前記本体部から突出している第1の接続部と、
を含んでおり、
前記第1の接続部は、前記本体部に対して下側に向かって折り曲げられることにより、前記ケースの下面まで引き出されていること、
を特徴とする同軸コネクタ。
【請求項2】
前記第1の信号端子は、
上方から平面視したときに、前記ケースの外縁において前記交差方向の他方側に前記本体部から突出している第2の接続部を、
更に含んでおり、
前記第2の接続部は、前記本体部に対して下側に向かって折り曲げられることにより、前記ケースの下面まで引き出されていること、
を特徴とする請求項1に記載の同軸コネクタ。
【請求項3】
前記同軸コネクタは、
前記ケースに固定されている第2の信号端子であって、前記第1の信号端子が圧接している第2の信号端子を、
更に備えており、
前記本体部は、前記外部端子を介して挿入されるプローブにより上側から押されることによって、前記第2の信号端子から離れること、
を特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の同軸コネクタ。
【請求項1】
絶縁体からなる板状のケースと、
高周波信号が印加される第1の信号端子であって、前記ケース上に設けられている第1の信号端子と、
接地電位が印加される外部端子であって、前記ケース及び前記第1の信号端子上に設けられ、かつ、上下方向に沿って延在する中心軸を有する筒状をなしている外部端子と、
を備えており、
前記第1の信号端子は、
水平方向に平行な所定方向に沿って延在している本体部と、
上方から平面視したときに、前記ケースの外縁において前記所定方向に交差する交差方向の一方側に前記本体部から突出している第1の接続部と、
を含んでおり、
前記第1の接続部は、前記本体部に対して下側に向かって折り曲げられることにより、前記ケースの下面まで引き出されていること、
を特徴とする同軸コネクタ。
【請求項2】
前記第1の信号端子は、
上方から平面視したときに、前記ケースの外縁において前記交差方向の他方側に前記本体部から突出している第2の接続部を、
更に含んでおり、
前記第2の接続部は、前記本体部に対して下側に向かって折り曲げられることにより、前記ケースの下面まで引き出されていること、
を特徴とする請求項1に記載の同軸コネクタ。
【請求項3】
前記同軸コネクタは、
前記ケースに固定されている第2の信号端子であって、前記第1の信号端子が圧接している第2の信号端子を、
更に備えており、
前記本体部は、前記外部端子を介して挿入されるプローブにより上側から押されることによって、前記第2の信号端子から離れること、
を特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の同軸コネクタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−105656(P2013−105656A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249635(P2011−249635)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】
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